(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173627
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】作業支援方法および作業支援システム
(51)【国際特許分類】
H01L 21/02 20060101AFI20241205BHJP
G06F 3/01 20060101ALI20241205BHJP
G06F 3/04815 20220101ALI20241205BHJP
G08B 21/02 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
H01L21/02 Z
G06F3/01 510
G06F3/04815
G08B21/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】28
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024000707
(22)【出願日】2024-01-05
(31)【優先権主張番号】P 2023089491
(32)【優先日】2023-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】清水 進二
(72)【発明者】
【氏名】顔 宏修
【テーマコード(参考)】
5C086
5E555
【Fターム(参考)】
5C086AA22
5C086AA53
5C086BA20
5C086CA08
5C086CA11
5C086CA12
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5C086FA18
5E555AA27
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5E555BA01
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5E555DC84
5E555DD08
5E555EA07
5E555EA10
5E555EA22
5E555FA00
(57)【要約】
【課題】暗い環境であっても作業者が周囲の状況の変化を認識することができる作業支援方法および作業支援システムを提供する。
【解決手段】スマートグラスの空間認識部によって正常状態の対象箇所を含む空間をスキャンして取得される空間メッシュを基準空間メッシュとして事前登録する。適宜のタイミングにてスマートグラスによって空間をスキャンして取得した対象空間メッシュと基準空間メッシュとを比較し、双方の差分が所定の閾値以上である場合には警告を発報する。空間認識部は、深度センサーを用いて空間をスキャンすることによって空間メッシュを作成する。対象空間メッシュと基準空間メッシュとの差分が閾値以上である場合は、対象箇所に正常状態から何らかの変化が生じている場合である。このような場合には、警告が発報されるため、暗い状況であっても作業者は周囲の状況の変化を認識することができる。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
産業機器に対して所定の作業を行うときの作業支援方法であって、
表示部、通信部および空間認識部を備えた携帯端末によって正常状態の所定箇所を含む空間をスキャンして取得されるメッシュデータである基準空間メッシュを登録する事前登録工程と、
所定のタイミングで前記所定箇所を含む空間を前記携帯端末によってスキャンして対象空間メッシュを取得する空間認識工程と、
前記対象空間メッシュと前記基準空間メッシュとを比較する比較工程と、
前記対象空間メッシュと前記基準空間メッシュとの差分が所定の閾値以上である場合には警告を発報する発報工程と、
を備える作業支援方法。
【請求項2】
請求項1記載の作業支援方法において、
前記携帯端末を装着した作業者の周辺の照度が所定の基準値以下となったときに前記空間認識工程を実行する作業支援方法。
【請求項3】
請求項1記載の作業支援方法において、
前記所定箇所に変更があったときには前記基準空間メッシュを更新して再登録する作業支援方法。
【請求項4】
請求項1記載の作業支援方法において、
前記産業機器は、基板に所定の処理を行う基板処理装置であり、
前記所定箇所は、前記基板処理装置の内部である作業支援方法。
【請求項5】
請求項1記載の作業支援方法において、
前記産業機器は、基板に所定の処理を行う基板処理装置であり、
前記所定箇所は、前記基板処理装置が配置されるイエロールームの内部である作業支援方法。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の作業支援方法において、
前記携帯端末は、スマートグラスである作業支援方法。
【請求項7】
産業機器に対して所定の作業を行うときの作業支援方法であって、
表示部、通信部および空間認識部を備えた携帯端末によって正常状態の所定箇所を含む空間をスキャンして取得されるメッシュデータである基準空間メッシュを登録する事前登録工程と、
所定のタイミングで前記所定箇所を含む空間を前記携帯端末によってスキャンして対象空間メッシュを取得する空間認識工程と、
前記対象空間メッシュと前記基準空間メッシュとを比較する比較工程と、
前記対象空間メッシュと前記基準空間メッシュとの差分が所定の閾値以上である場合に、前記比較工程にて検出した前記基準空間メッシュからの前記対象空間メッシュの変化箇所を危険箇所として登録する事後登録工程と、
を備える作業支援方法。
【請求項8】
請求項7記載の作業支援方法において、
前記事後登録工程にて登録された危険箇所が誤検知であることを確認した作業者からの入力に応答して当該誤検知である危険箇所の登録を削除する作業支援方法。
【請求項9】
請求項7記載の作業支援方法において、
前記対象空間メッシュと前記基準空間メッシュとの差分が所定の閾値未満である場合に、危険箇所を確認した作業者からの入力に応答して当該危険箇所を登録する補正登録工程をさらに備える作業支援方法。
【請求項10】
請求項7から請求項9のいずれかに記載の作業支援方法において、
前記携帯端末を装着した作業者が前記危険箇所に接近したことが検知されたときに警告を発報する発報工程をさらに備える作業支援方法。
【請求項11】
請求項10記載の作業支援方法において、
前記産業機器は、基板に所定の処理を行う基板処理装置であり、
前記携帯端末は、スマートグラスである作業支援方法。
【請求項12】
産業機器に対して複数の作業者が所定の作業エリアにて作業を行うときの作業支援方法であって、
表示部、通信部および空間認識部を備えた携帯端末をそれぞれが装着した複数の作業者のいずれかからの入力に応答して前記作業エリアに生じた変化箇所を危険箇所としてサーバに登録する登録工程と、
前記複数の作業者のそれぞれが装着する前記携帯端末が前記登録工程にて登録された前記危険箇所についての情報を前記サーバから取得する取得工程と、
を備える作業支援方法。
【請求項13】
請求項12記載の作業支援方法において、
前記複数の作業者のいずれかが前記危険箇所に接近したことが検知されたときに警告を発報する発報工程をさらに備える作業支援方法。
【請求項14】
請求項12または請求項13記載の作業支援方法において、
前記産業機器は、基板に所定の処理を行う基板処理装置であり、
前記携帯端末は、スマートグラスである作業支援方法。
【請求項15】
産業機器に対して携帯端末を用いて所定の作業を行うときの作業支援システムであって、
表示部、通信部および空間認識部を備えた携帯端末と、
前記携帯端末によって正常状態の所定箇所を含む空間をスキャンして取得されるメッシュデータである基準空間メッシュを記憶する記憶部と、
所定のタイミングで前記所定箇所を含む空間を前記携帯端末によってスキャンして取得された対象空間メッシュと前記基準空間メッシュとを比較する比較部と、
前記対象空間メッシュと前記基準空間メッシュとの差分が所定の閾値以上である場合には警告を発報する警告発報部と、
を備える作業支援システム。
【請求項16】
請求項15記載の作業支援システムにおいて、
前記携帯端末を装着した作業者の周辺の照度が所定の基準値以下となったときに前記対象空間メッシュを取得する作業支援システム。
【請求項17】
請求項15記載の作業支援システムにおいて、
前記所定箇所に変更があったときには前記基準空間メッシュを更新して前記記憶部に再格納する作業支援システム。
【請求項18】
請求項15記載の作業支援システムにおいて、
前記産業機器は、基板に所定の処理を行う基板処理装置であり、
前記所定箇所は、前記基板処理装置の内部である作業支援システム。
【請求項19】
請求項15記載の作業支援システムにおいて、
前記産業機器は、基板に所定の処理を行う基板処理装置であり、
前記所定箇所は、前記基板処理装置が配置されるイエロールームの内部である作業支援システム。
【請求項20】
請求項15から請求項19のいずれかに記載の作業支援システムにおいて、
前記携帯端末は、スマートグラスである作業支援システム。
【請求項21】
産業機器に対して携帯端末を用いて所定の作業を行うときの作業支援システムであって、
表示部、通信部および空間認識部を備えた携帯端末と、
前記携帯端末によって正常状態の所定箇所を含む空間をスキャンして取得されるメッシュデータである基準空間メッシュを記憶する記憶部と、
所定のタイミングで前記所定箇所を含む空間を前記携帯端末によってスキャンして取得された対象空間メッシュと前記基準空間メッシュとを比較する比較部と、
前記対象空間メッシュと前記基準空間メッシュとの差分が所定の閾値以上である場合に、前記比較部によって検出された前記基準空間メッシュからの前記対象空間メッシュの変化箇所を危険箇所として登録するサーバと、
を備える作業支援システム。
【請求項22】
請求項21記載の作業支援システムにおいて、
前記サーバに登録された危険箇所が誤検知であることを確認した作業者からの入力に応答して当該誤検知である危険箇所を前記サーバから削除する作業支援システム。
【請求項23】
請求項21記載の作業支援システムにおいて、
前記対象空間メッシュと前記基準空間メッシュとの差分が所定の閾値未満である場合に、危険箇所を確認した作業者からの入力に応答して当該危険箇所を前記サーバに登録する作業支援システム。
【請求項24】
請求項21から請求項23のいずれかに記載の作業支援システムにおいて、
前記携帯端末を装着した作業者が前記危険箇所に接近したことを検知したときに警告を発報する警告発報部をさらに備える作業支援システム。
【請求項25】
請求項24記載の作業支援システムにおいて、
前記産業機器は、基板に所定の処理を行う基板処理装置であり、
前記携帯端末は、スマートグラスである作業支援システム。
【請求項26】
産業機器に対して複数の作業者が所定の作業エリアにて作業を行うときの作業支援システムであって、
表示部、通信部および空間認識部を備えた携帯端末をそれぞれが装着した複数の作業者のいずれかからの入力に応答して前記作業エリアに生じた変化箇所を危険箇所として登録するサーバと、
前記複数の作業者のそれぞれが装着する前記携帯端末が前記サーバに登録された前記危険箇所についての情報を前記サーバから取得する作業支援システム。
【請求項27】
請求項26記載の作業支援システムにおいて、
前記複数の作業者のいずれかが前記危険箇所に接近したことを検知したときに警告を発報する警告発報部をさらに備える作業支援システム。
【請求項28】
請求項26または請求項27記載の作業支援システムにおいて、
前記産業機器は、基板に所定の処理を行う基板処理装置であり、
前記携帯端末は、スマートグラスである作業支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に所定の処理を行う基板処理装置等の産業機器に対してメンテナンス作業等の所定の作業を行うときの作業支援方法および作業支援システムに関する。基板処理装置によって処理対象となる基板には、例えば、半導体基板、液晶表示装置用基板、flat panel display(FPD)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、または、太陽電池用基板などが含まれる。
【背景技術】
【0002】
従来より、半導体デバイスの製造工程では、半導体基板等の基板に対して種々の処理を行う基板処理装置が用いられている。基板処理装置としては、例えば基板洗浄装置、熱処理装置、検査装置等が使用されている。典型的には、広いクリーンルームに多数の基板処理装置が整然と配置されることが多い。それらの基板処理装置に対しては適宜のタイミングでメンテナンスが行われる。特許文献1には、クリーンルーム内に比較的高い密度で多数の基板処理装置を並べるとともに、基板処理装置のメンテナンスを行うことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
基板処理装置のメンテナンスを行う際には、作業者が装置の内部にまで入って作業を行うことがある。通常、基板処理装置の内部にはほとんど照明がなく、暗い状況での作業となる。暗い環境では周囲の状況確認が難しくなり、異物が存在していても作業者はそれに気づかないこともある。異物に気づかないまま作業者が作業を行うと危険な場合もある。
【0005】
また、典型的には、多数の基板処理装置が配置されるクリーンルームの床にはグレーチングと称される四角形のパンチング板が並べて敷き詰められている。クリーンルームの床下には基板処理装置のための配管や配線が設けられており、その保守のために一部のグレーチングが外されていることがある。通常、グレーチングを外したところの周囲にはコーンを配置して注意喚起を行うのであるが、その作業が忘れられていることもある。そうすると、グレーチングが外されていることに作業者が気づかずに床下に転落する危険性がある。特に、クリーンルーム内でもイエロールームと称される紫外線がカットされたエリアでは薄暗い環境であるために、グレーチングが外れていても作業者が気づかない可能性が高くなる。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、暗い環境であっても作業者が周囲の状況の変化を認識することができる作業支援方法および作業支援システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、この発明の第1の態様は、産業機器に対して所定の作業を行うときの作業支援方法において、表示部、通信部および空間認識部を備えた携帯端末によって正常状態の所定箇所を含む空間をスキャンして取得されるメッシュデータである基準空間メッシュを登録する事前登録工程と、所定のタイミングで前記所定箇所を含む空間を前記携帯端末によってスキャンして対象空間メッシュを取得する空間認識工程と、前記対象空間メッシュと前記基準空間メッシュとを比較する比較工程と、前記対象空間メッシュと前記基準空間メッシュとの差分が所定の閾値以上である場合には警告を発報する発報工程と、を備える。
【0008】
また、第2の態様は、第1の態様に係る作業支援方法において、前記携帯端末を装着した作業者の周辺の照度が所定の基準値以下となったときに前記空間認識工程を実行する。
【0009】
また、第3の態様は、第1または第2の態様に係る作業支援方法において、前記所定箇所に変更があったときには前記基準空間メッシュを更新して再登録する。
【0010】
また、第4の態様は、第1から第3のいずれかの態様に係る作業支援方法において、前記産業機器は、基板に所定の処理を行う基板処理装置であり、前記所定箇所は、前記基板処理装置の内部である。
【0011】
また、第5の態様は、第1から第3のいずれかの態様に係る作業支援方法において、前記産業機器は、基板に所定の処理を行う基板処理装置であり、前記所定箇所は、前記基板処理装置が配置されるイエロールームの内部である。
【0012】
また、第6の態様は、第1から第5のいずれかの態様に係る作業支援方法において、前記携帯端末は、スマートグラスである。
【0013】
また、第7の態様は、産業機器に対して所定の作業を行うときの作業支援方法において、表示部、通信部および空間認識部を備えた携帯端末によって正常状態の所定箇所を含む空間をスキャンして取得されるメッシュデータである基準空間メッシュを登録する事前登録工程と、所定のタイミングで前記所定箇所を含む空間を前記携帯端末によってスキャンして対象空間メッシュを取得する空間認識工程と、前記対象空間メッシュと前記基準空間メッシュとを比較する比較工程と、前記対象空間メッシュと前記基準空間メッシュとの差分が所定の閾値以上である場合に、前記比較工程にて検出した前記基準空間メッシュからの前記対象空間メッシュの変化箇所を危険箇所として登録する事後登録工程と、を備える。
【0014】
また、第8の態様は、第7の態様に係る作業支援方法において、前記事後登録工程にて登録された危険箇所が誤検知であることを確認した作業者からの入力に応答して当該誤検知である危険箇所の登録を削除する。
【0015】
また、第9の態様は、第7または第8の態様に係る作業支援方法において、前記対象空間メッシュと前記基準空間メッシュとの差分が所定の閾値未満である場合に、危険箇所を確認した作業者からの入力に応答して当該危険箇所を登録する補正登録工程をさらに備える。
【0016】
また、第10の態様は、第7から第9のいずれかの態様に係る作業支援方法において、前記携帯端末を装着した作業者が前記危険箇所に接近したことが検知されたときに警告を発報する発報工程をさらに備える。
【0017】
また、第11の態様は、第7から第10のいずれかの態様に係る作業支援方法において、前記産業機器は、基板に所定の処理を行う基板処理装置であり、前記携帯端末は、スマートグラスである。
【0018】
また、第12の態様は、産業機器に対して複数の作業者が所定の作業エリアにて作業を行うときの作業支援方法において、表示部、通信部および空間認識部を備えた携帯端末をそれぞれが装着した複数の作業者のいずれかからの入力に応答して前記作業エリアに生じた変化箇所を危険箇所としてサーバに登録する登録工程と、前記複数の作業者のそれぞれが装着する前記携帯端末が前記登録工程にて登録された前記危険箇所についての情報を前記サーバから取得する取得工程と、を備える。
【0019】
また、第13の態様は、第12の態様に係る作業支援方法において、前記複数の作業者のいずれかが前記危険箇所に接近したことが検知されたときに警告を発報する発報工程をさらに備える。
【0020】
また、第14の態様は、第12または第13の態様に係る作業支援方法において、前記産業機器は、基板に所定の処理を行う基板処理装置であり、前記携帯端末は、スマートグラスである。
【0021】
また、第15の態様は、産業機器に対して携帯端末を用いて所定の作業を行うときの作業支援システムにおいて、表示部、通信部および空間認識部を備えた携帯端末と、前記携帯端末によって正常状態の所定箇所を含む空間をスキャンして取得されるメッシュデータである基準空間メッシュを記憶する記憶部と、所定のタイミングで前記所定箇所を含む空間を前記携帯端末によってスキャンして取得された対象空間メッシュと前記基準空間メッシュとを比較する比較部と、前記対象空間メッシュと前記基準空間メッシュとの差分が所定の閾値以上である場合には警告を発報する警告発報部と、を備える。
【0022】
また、第16の態様は、第15の態様に係る作業支援システムにおいて、前記携帯端末を装着した作業者の周辺の照度が所定の基準値以下となったときに前記対象空間メッシュを取得する。
【0023】
また、第17の態様は、第15または第16の態様に係る作業支援システムにおいて、前記所定箇所に変更があったときには前記基準空間メッシュを更新して前記記憶部に再格納する。
【0024】
また、第18の態様は、第15から第17のいずれかの態様に係る作業支援システムにおいて、前記産業機器は、基板に所定の処理を行う基板処理装置であり、前記所定箇所は、前記基板処理装置の内部である。
【0025】
また、第19の態様は、第15から第17のいずれかの態様に係る作業支援システムにおいて、前記産業機器は、基板に所定の処理を行う基板処理装置であり、前記所定箇所は、前記基板処理装置が配置されるイエロールームの内部である。
【0026】
また、第20の態様は、第15から第19のいずれかの態様に係る作業支援システムにおいて、前記携帯端末は、スマートグラスである。
【0027】
また、第21の態様は、産業機器に対して携帯端末を用いて所定の作業を行うときの作業支援システムにおいて、表示部、通信部および空間認識部を備えた携帯端末と、前記携帯端末によって正常状態の所定箇所を含む空間をスキャンして取得されるメッシュデータである基準空間メッシュを記憶する記憶部と、所定のタイミングで前記所定箇所を含む空間を前記携帯端末によってスキャンして取得された対象空間メッシュと前記基準空間メッシュとを比較する比較部と、前記対象空間メッシュと前記基準空間メッシュとの差分が所定の閾値以上である場合に、前記比較部によって検出された前記基準空間メッシュからの前記対象空間メッシュの変化箇所を危険箇所として登録するサーバと、を備える。
【0028】
また、第22の態様は、第21の態様に係る作業支援システムにおいて、前記サーバに登録された危険箇所が誤検知であることを確認した作業者からの入力に応答して当該誤検知である危険箇所を前記サーバから削除する。
【0029】
また、第23の態様は、第21または第22の態様に係る作業支援システムにおいて、前記対象空間メッシュと前記基準空間メッシュとの差分が所定の閾値未満である場合に、危険箇所を確認した作業者からの入力に応答して当該危険箇所を前記サーバに登録する。
【0030】
また、第24の態様は、第21から第23のいずれかの態様に係る作業支援システムにおいて、前記携帯端末を装着した作業者が前記危険箇所に接近したことを検知したときに警告を発報する警告発報部をさらに備える。
【0031】
また、第25の態様は、第21から第24のいずれかの態様に係る作業支援システムにおいて、前記産業機器は、基板に所定の処理を行う基板処理装置であり、前記携帯端末は、スマートグラスである。
【0032】
また、第26の態様は、産業機器に対して複数の作業者が所定の作業エリアにて作業を行うときの作業支援システムにおいて、表示部、通信部および空間認識部を備えた携帯端末をそれぞれが装着した複数の作業者のいずれかからの入力に応答して前記作業エリアに生じた変化箇所を危険箇所として登録するサーバと、前記複数の作業者のそれぞれが装着する前記携帯端末が前記サーバに登録された前記危険箇所についての情報を前記サーバから取得する。
【0033】
また、第27の態様は、第26の態様に係る作業支援システムにおいて、前記複数の作業者のいずれかが前記危険箇所に接近したことを検知したときに警告を発報する警告発報部をさらに備える。
【0034】
また、第28の態様は、第26または第27の態様に係る作業支援システムにおいて、前記産業機器は、基板に所定の処理を行う基板処理装置であり、前記携帯端末は、スマートグラスである作業支援システム。
【発明の効果】
【0035】
第1から第6の態様に係る作業支援方法によれば、正常状態の所定箇所を含む空間をスキャンして取得された基準空間メッシュと所定のタイミングで所定箇所を含む空間をスキャンして取得される対象空間メッシュとの差分が所定の閾値以上である場合には警告を発報するため、所定箇所に変化が生じているときには警告が発報されることとなり、暗い環境であっても作業者が周囲の状況の変化を認識することができる。
【0036】
特に、第2の態様に係る作業支援方法によれば、携帯端末を装着した作業者の周辺の照度が所定の基準値以下となったときに空間認識工程を実行するため、暗い環境になったときに確実に周囲の確認を行うことができる。
【0037】
第7から第11の態様に係る作業支援方法によれば、正常状態の所定箇所を含む空間をスキャンして取得された基準空間メッシュと所定のタイミングで所定箇所を含む空間をスキャンして取得される対象空間メッシュとの差分が所定の閾値以上である場合には基準空間メッシュからの対象空間メッシュの変化箇所を危険箇所として登録するため、作業者の周囲に変化が生じているときには変化箇所が自動で危険箇所として登録されることとなり、暗い環境であっても作業者が周囲の状況の変化を認識することができる。
【0038】
特に、第9の態様に係る作業支援方法によれば、対象空間メッシュと基準空間メッシュとの差分が所定の閾値未満である場合に、危険箇所を確認した作業者からの入力に応答して当該危険箇所を登録するため、危険箇所の登録精度をより高めることができる。
【0039】
第12から第14の態様に係る作業支援方法によれば、複数の作業者のいずれかからの入力に応答して作業エリアに生じた変化箇所を危険箇所としてサーバに登録し、複数の作業者のそれぞれが装着する携帯端末が登録された危険箇所についての情報をサーバから取得するため、複数の作業者の全員が危険箇所についての情報を共有することができ、暗い環境であっても作業者が周囲の状況の変化を認識することができる。
【0040】
第15から第20の態様に係る作業支援システムによれば、正常状態の所定箇所を含む空間をスキャンして取得される基準空間メッシュと所定のタイミングで所定箇所を含む空間をスキャンして取得された対象空間メッシュとの差分が所定の閾値以上である場合には警告を発報するため、所定箇所に変化が生じているときには警告が発報されることとなり、暗い環境であっても作業者が周囲の状況の変化を認識することができる。
【0041】
特に、第16の態様に係る作業支援システムによれば、携帯端末を装着した作業者の周辺の照度が所定の基準値以下となったときに対象空間メッシュを取得するため、暗い環境になったときに確実に周囲の確認を行うことができる。
【0042】
第21から第25の態様に係る作業支援システムによれば、正常状態の所定箇所を含む空間をスキャンして取得される基準空間メッシュと所定のタイミングで所定箇所を含む空間をスキャンして取得された対象空間メッシュとの差分が所定の閾値以上である場合には基準空間メッシュからの対象空間メッシュの変化箇所を危険箇所として登録するため、作業者の周囲に変化が生じているときには変化箇所が自動で危険箇所として登録されることとなり、暗い環境であっても作業者が周囲の状況の変化を認識することができる。
【0043】
特に、第23の態様に係る作業支援システムによれば、対象空間メッシュと基準空間メッシュとの差分が所定の閾値未満である場合に、危険箇所を確認した作業者からの入力に応答して当該危険箇所を登録するため、危険箇所の登録精度をより高めることができる。
【0044】
第26から第28の態様に係る作業支援システムによれば、複数の作業者のいずれかからの入力に応答して作業エリアに生じた変化箇所を危険箇所としてサーバに登録し、複数の作業者のそれぞれが装着する携帯端末がサーバに登録された危険箇所についての情報をサーバから取得するため、複数の作業者の全員が危険箇所についての情報を共有することができ、暗い環境であっても作業者が周囲の状況の変化を認識することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図1】本発明に係る作業支援システムの概略構成を模式的に示す図である。
【
図2】複数の基板処理装置のレイアウトの一例を示す平面図である。
【
図3】基板処理装置の配置の一例を示す平面図である。
【
図8】スマートグラス、サーバ、作業支援端末および基板処理装置の制御部の機能的構成を示すブロック図である。
【
図9】本発明に係る作業支援方法の手順を示すフローチャートである。
【
図10】正常状態の対象箇所についての基準空間メッシュの一例を示す図である。
【
図11】
図10と同じ対象箇所について作成した空間メッシュの一例を示す図である。
【
図12】警告発報部が表示させる警告メッセージの一例を示す図である。
【
図13】第3実施形態の作業支援方法の手順を示すフローチャートである。
【
図14】第3実施形態における危険箇所の追加登録および削除を説明するための図である。
【
図15】第4実施形態における危険箇所についての位置情報の共有を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について詳細に説明する。以下において、相対的または絶対的な位置関係を示す表現(例えば、「一方向に」、「一方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」、「同軸」、など)は、特に断らない限り、その位置関係を厳密に表すのみならず、公差もしくは同程度の機能が得られる範囲で相対的に角度または距離に関して変位された状態も表すものとする。また、等しい状態であることを示す表現(例えば、「同一」、「等しい」、「均質」、など)は、特に断らない限り、定量的に厳密に等しい状態を表すのみならず、公差もしくは同程度の機能が得られる差が存在する状態も表すものとする。また、形状を示す表現(例えば、「円形状」、「四角形状」、「円筒形状」、など)は、特に断らない限り、幾何学的に厳密にその形状を表すのみならず、同程度の効果が得られる範囲の形状を表すものとし、例えば凹凸または面取りなどを有していてもよい。また、構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、「有する」、といった各表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的表現ではない。また、「A、BおよびCのうちの少なくとも一つ」という表現には、「Aのみ」、「Bのみ」、「Cのみ」、「A、BおよびCのうち任意の2つ」、「A、BおよびCの全て」が含まれる。
【0047】
<第1実施形態>
図1は、本発明に係る作業支援システムの概略構成を模式的に示す図である。本発明に係る作業支援システムは、基板処理装置50と、それとは異なる種類の基板処理装置90と、スマートグラス10と、サーバ70と、作業支援端末80と、を備える。スマートグラス10および基板処理装置50,90のコントローラは無線通信にて情報通信網5(例えば、インターネット)に接続されている。また、作業支援端末80およびサーバ70は有線にて情報通信網5に接続されている。情報通信網5に接続された機器間では相互に情報の送受信が可能であり、例えばスマートグラス10と作業支援端末80との間で情報の授受を行うことができる。なお、各機器と情報通信網5とを無線で接続するか有線で接続するかは上記の例に限定されるものではなく、適宜の形態とすることができる(例えば、作業支援端末80と情報通信網5とを無線で接続しても良い)。
【0048】
図2は、複数の基板処理装置50および基板処理装置90のレイアウトの一例を示す平面図である。
図2に示すように、複数の基板処理装置50および複数の基板処理装置90はクリーンルーム40内に配置されている。クリーンルーム40は、例えば半導体デバイスの製造工場内に設けられ、一定の空気清浄度が確保されるとともに温度および湿度が管理された部屋である。クリーンルーム40の一部のエリアはイエロールーム49とされている。イエロールーム49は例えばフォトリソグラフィー工程のために紫外線がカットされたエリアである。イエロールーム49内は、人間の目には黄色く薄暗い環境である。クリーンルーム40内の通常のエリアとイエロールーム49とは、壁によって仕切られ、その壁には双方で行き来するためのドア44が設けられている。なお、クリーンルーム40内の通常のエリアには例えば蛍光灯等の一般的な照明設備が設けられている。
【0049】
複数の基板処理装置50は、クリーンルーム40内の通常のエリアに並べて配置されている。基板処理装置50は、外部環境からの光の影響を受けない処理を行う装置であり、例えば基板洗浄装置である。一方、複数の基板処理装置90は、イエロールーム49内に配置されている。基板処理装置90は、レジスト等の感光性物質を扱う処理(例えば、フォトリソグラフィー処理)を行う装置であり、例えばコータ・デベロッパである。レジストは一般的な蛍光灯等に微量に含まれる紫外線によっても化学反応を引き起こすため、基板処理装置90は紫外線が完全にカットされたイエロールーム49に配置するのである。
【0050】
図3は、基板処理装置90の配置の一例を示す平面図である。イエロールーム49を含むクリーンルーム40の床には複数のグレーチング47が規則正しく並べて敷き詰められている。グレーチング47は、四角形のパンチング板である。各グレーチング47は取り外すことが可能である。クリーンルーム40の床下には、基板処理装置50または基板処理装置90のための配管および配線が設けられている。
【0051】
図4は、基板処理装置50の構成を示す側面図である。また、
図5は、基板処理装置50の平面図である。基板処理装置50は、例えば基板を1枚ずつ洗浄する枚葉式の基板洗浄装置である。基板処理装置50は、インデクサ51、複数の処理ユニット52、移載ロボット56および主搬送ロボット57を有する。
【0052】
インデクサ51には、複数の基板Wを収容したキャリアCが載置される。インデクサ51には、例えば3つのキャリアCを載置することが可能である。移載ロボット56は、複数のキャリアCの並び方向に沿ったスライド移動、昇降動作、旋回動作およびハンドの進退動作が可能に構成されている。インデクサ51に載置されたキャリアCからは移載ロボット56によって未処理の基板Wが取り出される。また、インデクサ51に載置されたキャリアCには移載ロボット56によって処理済みの基板Wが収納される。キャリアCは、例えば、基板Wを密閉空間に収納するFOUP(front opening unified pod)である。
【0053】
第1実施形態では、例えば3個の処理ユニット52が積層されて1つの積層体を構成する。そして、基板処理装置50の主搬送ロボット57の周囲に例えば4つの積層体が配置される。すなわち、1つの基板処理装置50は、例えば12個(=3×4)の処理ユニット52を含む。
【0054】
4つの積層体の中心に配置された主搬送ロボット57は、昇降動作、旋回動作および搬送アームAMの進退動作が可能に構成されている。主搬送ロボット57は、12個の全ての処理ユニット52に対して基板Wの受け渡しを行うことができる。主搬送ロボット57は、移載ロボット56から未処理の基板Wを受け取って12個の処理ユニット52のいずれかに搬入する。また、主搬送ロボット57は、処理ユニット52から処理済みの基板Wを搬出して移載ロボット56に渡す。
【0055】
また、基板処理装置50は、制御部55を備える。制御部55は、一般的なコンピュータであり、装置内に設けられた上記の移載ロボット56、主搬送ロボット57および各処理ユニット52の動作を制御する。制御部55は、装置の壁面に設けられた入出力インターフェイスであるタッチパネルおよび装置外部と通信を行う通信部を有する。なお、
図4,5では、図示の便宜上、制御部55をインデクサ51内に記載しているが、これに限定されるものではなく、制御部55は基板処理装置50内の適宜の位置に設けられる。
【0056】
図6は、処理ユニット52の概略構成を示す図である。処理ユニット52は、処理チャンバー60と、回転保持部61と、吐出ノズル65と、を備える。処理チャンバー60は、中空の筐体である。処理チャンバー60の内側に、回転保持部61および吐出ノズル65等が設けられる。また、処理チャンバー60には図示省略の搬出入口が設けられている。その搬出入口はシャッターによって開閉される。搬出入口が開放されている状態にて、主搬送ロボット57による処理チャンバー60に対する基板Wの搬入および搬出が行われる。基板Wの処理中は搬出入口は閉鎖される。さらに、処理チャンバー60には、図示省略の給気機構および排気機構が設けられている。
【0057】
回転保持部61は、スピンチャック62およびスピンモータ63を備える。スピンチャック62は、基板Wを水平姿勢(基板Wの主面の法線が鉛直方向に沿う姿勢)にて保持する基板保持部である。スピンチャック62は、例えば真空吸着式のチャックである。スピンチャック62は、基板Wの直径よりも小さな径の円板形状を有する。スピンチャック62は、基板Wの下面の中央部を吸着保持する。基板Wの下面がスピンチャック62に吸着保持された状態では、基板Wの周縁部が、スピンチャック62の外周端よりも外側にはみ出ている。なお、スピンチャック62は、挟持式のメカニカルチャックなどの他の形態のチャックであってもよい。
【0058】
スピンチャック62は、モータ軸を介してスピンモータ63と連結される。すなわち、スピンモータ63のモータ軸の上端がスピンチャック62の下面中央部に接続される。スピンチャック62に基板Wが吸着保持されている状態にてスピンモータ63がモータ軸を回転させると、鉛直方向に沿った回転軸まわりで水平面内にて基板Wおよびスピンチャック62が回転する。
【0059】
スピンチャック62の周囲を囲むようにカップ64が設けられる。カップ64は、図示省略の昇降機構によって昇降可能とされる。カップ64は円筒形状を有しており、カップ64の上部は上に向かうほどスピンチャック62に近付くように傾斜している。ただし、カップ64の上端部分の内径は基板Wの直径よりも大きい。基板Wの処理時には、カップ64の上端はスピンチャック62に保持された基板Wの高さ位置よりも高い。従って、スピンモータ63によって回転される基板Wから遠心力によって飛散した液体はカップ64によって受け止められて回収される。カップ64によって回収された液体はカップ64の底部に設けられた排液管から排出される。なお、カップ64は、回収口を目的別に複数設けた多段構造のものであっても良い。
【0060】
吐出ノズル65は、スピンチャック62に保持された基板Wに処理液を吐出する。処理液とは、各種の薬液および純水を含む概念の用語である。薬液としては、例えば、エッチング処理を行うための液、または、パーティクルを除去するための液などが含まれ、具体的には、SC-1液(水酸化アンモニウムと過酸化水素水と純水との混合溶液)、SC-2液(塩酸と過酸化水素水と純水との混合溶液)、または、フッ酸などが用いられる。吐出ノズル65は、図示省略の駆動機構によってスピンチャック62の上方の処理位置とカップ64よりも外方の待機位置との間で移動される。処理位置にて吐出ノズル65がスピンチャック62に保持された基板Wに薬液を吐出することによって、例えば基板Wのエッチング処理が進行する。また、吐出ノズル65が基板Wに純水を吐出することによって、基板Wの純水リンス処理が進行する。
【0061】
基板処理装置50,90に対して操作等の作業を行う作業者はスマートグラス10を装着する。スマートグラス10は、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)方式のウェアラブル端末の一種である。スマートグラス10は、AR(Augmented Reality:拡張現実)またはMR(Mixed Reality:複合現実)を実現するためのデバイスでもある。スマートグラス10としては、例えば、マイクロソフト社製の「HoloLens」(登録商標)を用いることができる。
【0062】
図7は、スマートグラス10の外観を示す斜視図である。スマートグラス10は、バイザー11およびヘッドバンド12を備える。作業者はヘッドバンド12を頭に付けることによってスマートグラス10を装着する。作業者は、自らの頭の大きさに合わせてヘッドバンド12の長さを調整することが可能とされている。また、ヘッドバンド12には、電源ボタン、明るさボタンおよびボリュームボタン等が設けられている。
【0063】
バイザー11は、各種センサーとディスプレイとを含む。そのディスプレイは、シースルーホログラフィックレンズである。すなわち、ディスプレイはホログラムによって立体映像を作業者の視野空間に表示することが可能であるとともに、通常の眼鏡レンズと同じように現実の物体からの光を透過する。従って、スマートグラス10を装着した作業者は、ディスプレイを通して現実の物体を視認しつつ表示された立体映像を見ることも可能である。
【0064】
バイザー11のセンサーには、例えば主にバイザー11の前方を撮像する複数の可視光カメラ、作業者の視線を追跡する赤外線カメラ、対象物までの距離を測定する深度センサー、および、慣性測定センサー等が含まれる。赤外線カメラは、スマートグラス10の装着者の眼球の動きを測定して視線を追跡する。深度センサーは、例えば、ToF(Time of Flight)方式によって対象物までの距離を測定する。慣性測定センサーは、加速度計、ジャイロスコープ、磁力計等によって構成される。
【0065】
また、スマートグラス10には、CPUおよびメモリ等を備えたコンピュータが内蔵されている。スマートグラス10には、無線通信機構も設けられており、スマートグラス10のコンピュータはその無線通信機構を使用して情報通信網5に接続する。さらに、スマートグラス10には、マイクロフォン、スピーカーおよびバッテリー等も設けられている。
【0066】
図8は、スマートグラス10、サーバ70、作業支援端末80および基板処理装置50の制御部55の機能的構成を示すブロック図である。スマートグラス10は、撮像部21、通信部22、表示部23、記憶部24および空間認識部25を備える。撮像部21は、上述したバイザー11に設けられた可視光カメラを含む。撮像部21は、例えば前方および斜め前方を撮像する4台の可視光カメラを含んでおり、スマートグラス10を装着した作業者の視野範囲を撮像することができる。
【0067】
通信部22は、上述したスマートグラス10の無線通信機構を含む。通信部22は、情報通信網5を介して作業支援端末80およびサーバ70とデータの送受信を行う。また、通信部22は、近距離であれば基板処理装置50の制御部55と直接にデータの送受信を行うことも可能である。すなわち、通信部22は、直接にまたは情報通信網5を介して基板処理装置50の制御部55にデータやコマンドを送信することができる。
【0068】
表示部23は、上述したバイザー11のディスプレイを含む。表示部23はホログラフィック処理装置を有しており、ホログラム技術によって所定の空間位置に立体映像を表示する。なお、表示部23が表示する立体映像は三次元形状のものに限定されず、ドキュメントのような二次元のものであっても良い。
【0069】
記憶部24は、スマートグラス10に搭載されたメモリおよびストレージを含む。スマートグラス10が備えるメモリおよびストレージは、例えばそれぞれDRAM(Dynamic Random Access Memory)およびUFS(Universal Flash Strage)である。記憶部24は、スマートグラス10のコンピュータが使用するアプリケーションやデータを格納する。
【0070】
空間認識部25は、上述したスマートグラス10の深度センサーを含む。深度センサーは、対象物までの距離を測定することができる。空間認識部25は、深度センサーによって空間をスキャンすることにより、空間マッピングを行うことができる。具体的には、空間認識部25は、空間をスキャンすることによってメッシュデータである空間メッシュを作成する。
【0071】
また、スマートグラス10は、比較部31および警告発報部36を備える。これらの比較部31および警告発報部36は、スマートグラス10のCPUが所定の処理プログラムを実行することによって実現される機能処理部である。比較部31および警告発報部36の処理内容についてはさらに後述する。
【0072】
基板処理装置50の制御部55は、吐出ノズル65等の処理ユニット52に設けられた機構の動作を制御する。基板処理装置50の制御部55は、スマートグラス10の通信部22と通信可能であり、スマートグラス10から送信された操作指示のコマンドに従って処理ユニット52に設けられた各種機構の動作を制御することも可能である。なお、基板処理装置90にも制御部55と同様の制御部が設けられている。
【0073】
作業支援端末80およびサーバ70は、例えば基板処理装置50および/または基板処理装置90を製造してその保守点検を請け負うベンダーの工場内に設置されている。作業支援端末80およびサーバ70は、情報通信網5を介してスマートグラス10と通信可能とされている。また、作業支援端末80とサーバ70とは情報通信網5を介して相互に通信可能とされている。
【0074】
作業支援端末80およびサーバ70は、一般的なコンピュータシステムである。すなわち、作業支援端末80およびサーバ70は、各種演算処理を行う回路であるCPU、基本プログラムを記憶する読み出し専用のメモリであるROM、各種情報を記憶する読み書き自在のメモリであるRAM、制御用ソフトウェアやデータなどを記憶しておく記憶部(例えば、磁気ディスクまたはSSD)および情報通信網5と通信を行う通信部を備えている。
【0075】
作業支援端末80は、例えばベンダー側の作業支援員がクリーンルーム40内の作業者の作業を支援するためのコンピュータである。作業支援員は、作業支援端末80からクリーンルーム40内の作業者が装着するスマートグラス10に種々の情報を送信することができる。
【0076】
サーバ70は、本発明に係る作業支援システムにおいて、スマートグラス10および作業支援端末80からのリクエストに応じて所定の処理を実行するコンピュータである。サーバ70は、比較的容量の大きな記憶部74を備えている。スマートグラス10および作業支援端末80によって作成された大きなサイズのデータは記憶部74に格納されても良い。
【0077】
次に、上述した構成を有する作業支援システムを用いた作業支援方法について説明する。
図9は、本発明に係る作業支援方法の手順を示すフローチャートである。まず、事前の準備処理として、スマートグラス10を用いてクリーンルーム40内のいずれかの箇所についての正常状態の空間メッシュを作成して登録しておく(ステップS1)。登録の対象となる箇所は、例えば、基板処理装置50の外壁、内部およびクリーンルーム40の床等である。第1実施形態では、例えば、スマートグラス10の空間認識部25によって基板処理装置50の内部を含む空間をスキャンしてメッシュデータである空間メッシュを作成する。
【0078】
空間メッシュを作成するためのスマートグラス10の操作としては、スマートグラス10を装着した作業者がスキャンモードをオンにすれば良い。作業者は、例えば表示部23によって立体映像として表示されたメニュー画面から手のジェスチャーによってスキャンモードを選択する。その手のジェスチャーは撮像部21によって撮像されて検知され、スマートグラス10のコンピュータはその検知結果からスキャンモードが選択されたことを認識してスキャンモードをオンにする。或いは、作業者は、スマートグラス10に設けられた所定のボタンを押すことによってスキャンモードをオンにするようにしても良い。スキャンモードがオンになると、スマートグラス10の空間認識部25は空間のスキャンを開始する。
【0079】
ステップS1では、スマートグラス10の空間認識部25は正常状態である対象箇所を含む空間をスキャンして空間メッシュを作成する。正常状態とは、異物等の存在しない安全かつ恒常的な状態のことである。空間認識部25によって正常状態の対象箇所を含む空間をスキャンして取得された空間メッシュは基準空間メッシュとして記憶部24に記憶される。これにより、正常状態の対象箇所についての基準空間メッシュが登録されることとなる。なお、基準空間メッシュのデータ量が大きい場合には、例えばサーバ70の記憶部74に格納するようにしても良い。
【0080】
図10は、正常状態の対象箇所についての基準空間メッシュの一例を示す図である。同図に示すように、スマートグラス10の空間認識部25によって作成される空間メッシュは、多数の三角形メッシュによって表される。曲面や平面を含む種々の形状が多数の三角形の連結した集合によって表現される。凹凸を含む複雑な形状は高密度の三角形によって表され、逆に平坦な形状は比較的低い密度の三角形によって表される。
【0081】
正常状態の対象箇所を含む空間をスキャンすることによって基準空間メッシュを作成して登録するタイミングは、例えば基板処理装置50をクリーンルーム40に導入したときである。また、登録した対象箇所に変更があったときには、その都度スマートグラス10による空間のスキャンを行って基準空間メッシュを更新して再登録するのが好ましい。例えば、基板処理装置50の内部に新たに棚を設置したときには、その棚が存在している状態が新たな正常状態であるため、棚が設けられている基板処理装置50の内部を含む空間を空間認識部25によってスキャンして基準空間メッシュを更新する。
【0082】
次に、スマートグラス10を装着した作業者が例えば基板処理装置50に対してメンテナンス作業を行うときに、適宜のタイミングにてスマートグラス10によって空間をスキャンして空間メッシュを作成する(ステップS2)。空間メッシュを作成する対象となるのは、作業者が作業を行う予定の領域を含む空間である。例えば、第1実施形態では、作業者が基板処理装置50の内部に入り込んで作業を行うため、スマートグラス10の空間認識部25によって基板処理装置50の内部を含む空間をスキャンして空間メッシュを作成する。また、例えば、作業者が基板処理装置50の外部ではあるが近傍にて作業を行うときには、空間認識部25によって基板処理装置50の外壁およびクリーンルーム40の床を含む空間をスキャンして空間メッシュを作成する。
図11は、
図10と同じ対象箇所について作成した空間メッシュの一例を示す図である。
【0083】
ステップS2の空間メッシュを作成するタイミングは、例えば作業者が作業を行うに際して安全確認を実行しようとしたときに手動でスキャンモードをオンにすれば良い。或いは、スマートグラス10を装着した作業者の周辺が暗くなったことを認識したスマートグラス10が自動で空間メッシュを作成するようにしても良い。具体的には、スマートグラス10の撮像部21が撮像した画像の輝度が所定値以下であったときには、スマートグラス10は作業者の周辺の照度が基準値以下になって暗くなったものと判断する。そして、それをトリガーとしてスマートグラス10は空間メッシュを作成する。
【0084】
その後、スマートグラス10の比較部31がステップS2で作成された空間メッシュ(対象空間メッシュ)とステップS1で登録されている基準空間メッシュとを比較する(ステップS3)。比較部31は、対象空間メッシュと基準空間メッシュとを比較して双方の差分を抽出する。上記の例であれば、
図11に示す対象空間メッシュのうち領域D1の三角形メッシュが
図10の基準空間メッシュと相違する。比較部31は、対象空間メッシュと基準空間メッシュとの差分として領域D1を抽出することとなる。
【0085】
続いて、比較部31は、対象空間メッシュと基準空間メッシュとの差分が所定の閾値以上であるか否かを判定する(ステップS4)。上記の例であれば、比較部31は、
図11の対象空間メッシュと
図10の基準空間メッシュとの差分である領域D1を数値化した差分値が閾値以上となっているか否かを判定する。
【0086】
判定の結果、対象空間メッシュと基準空間メッシュとの差分が閾値以上である場合は、基準空間メッシュが登録されたときの正常状態に比較して対象空間メッシュが作成されたときには対象箇所に異物等の何らかの変化が生じているときである(例えば、基板処理装置50の内部に新たに機材が設けられている)。この場合はステップS4からステップS5に進み、警告発報部36が警告を発報する。具体的には、例えば、警告発報部36が表示部23に警告メッセージを立体映像として表示させる。
図12は、警告発報部36が表示させる警告メッセージの一例を示す図である。警告メッセージが表示されることにより、作業者は周囲の状況の変化を認識することができてその変化に注意を払うこととなり、作業者の安全を確保することができる。第1実施形態の例であれば、作業者は、基板処理装置50の内部に新たに設けられた機材を認識して注意を払うことができ、基板処理装置50の内部でも安全に作業を行うことができる。
【0087】
一方、対象空間メッシュと基準空間メッシュとの差分が閾値未満である場合は、基準空間メッシュが登録されたときの正常状態と比較して対象空間メッシュが作成されたときにも対象箇所に大きな変化が生じていないときである。この場合はステップS4からステップS6に進み、作業者は所望の作業を続行する。作業者の周囲の環境には正常状態から大きな変化は生じていないため、作業者は安全に作業を行うことができる。
【0088】
第1実施形態においては、スマートグラス10の空間認識部25によって正常状態の対象箇所を含む空間をスキャンして取得される空間メッシュを基準空間メッシュとして予め登録している。そして、適宜のタイミングにてスマートグラス10によって空間をスキャンして取得した空間メッシュ(対象空間メッシュ)と基準空間メッシュとを比較し、双方の差分が所定の閾値以上である場合には警告を発報している。対象空間メッシュと基準空間メッシュとの差分が閾値以上である場合は、対象箇所に正常状態から何らかの変化が生じている場合である。このような場合には、警告が発報されるため、作業者は周囲の状況に正常状態から変化が生じていることを認識することができ、作業者の安全を確保することができる。
【0089】
ここで、典型的な公知のカメラによって正常状態の対象箇所を事前に撮像しておいた画像と、その後の適宜のタイミングにて当該カメラによって対象箇所を撮像した画像とを画像処理技術によって比較することにより、双方の差分を検出して警告を発報することも可能ではある。しかしながら、基板処理装置50の内部のように暗い環境下においては典型的なカメラでは鮮明な画像を撮像することはできない。このため、対象箇所に正常状態から何らかの変化が生じていたとしても、その変化を差分として検出できないことがある。
【0090】
第1実施形態においては、スマートグラス10の空間認識部25が深度センサーを用いて空間をスキャンすることによって空間メッシュを作成している。深度センサーは、基板処理装置50の内部のように暗い環境であっても対象箇所の形状を捉えて空間メッシュを作成することができる。このため、スマートグラス10は、対象空間メッシュと基準空間メッシュとの差分を正確に抽出することができ、その差分の大きさに基づいて正しく警告を発報することができる。すなわち、第1実施形態のようにすれば、基板処理装置50の内部のように暗い環境であっても作業者が周囲の状況の変化を正しく認識することができるのである。
【0091】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態における作業支援システムの構成の構成は第1実施形態と同じである。また、第2実施形態における作業支援方法の手順も概ね第1実施形態と同じである。第2実施形態では、作業者がイエロールーム49内にて作業を行っている。
【0092】
第2実施形態においても、スマートグラス10の空間認識部25によって正常状態のイエロールーム49内の空間をスキャンして取得される空間メッシュを基準空間メッシュとして事前に登録しておく。イエロールーム49内も暗い環境なのではあるが、空間認識部25は深度センサーを用いて空間をスキャンするため、正確にイエロールーム49内の空間メッシュを作成することができる。第2実施形態では、例えば、空間認識部25によってイエロールーム49の床を含む空間をスキャンして基準空間メッシュを作成して登録しておく。
【0093】
次に、適宜のタイミングにてスマートグラス10によってイエロールーム49内の空間をスキャンして対象空間メッシュを作成する。そして、第1実施形態と同様に、比較部31が対象空間メッシュと基準空間メッシュとを比較して双方の差分を抽出し、その差分が所定の閾値以上であるか否かを判定する。判定の結果、対象空間メッシュと基準空間メッシュとの差分が所定の閾値以上である場合には、警告発報部36が警告を発報する。
【0094】
第2実施形態の例では、イエロールーム49の床下に設けられた配管等の保守ために一部のグレーチング47が外されているとする。このような場合であっても、対象空間メッシュと基準空間メッシュとの差分が閾値以上となるため、警告が発報されることとなり、作業者はグレーチング47が外れていることを認識することができ、作業者の転落を防止して安全を確保することができる。
【0095】
第2実施形態においても、スマートグラス10の空間認識部25が深度センサーを用いて空間をスキャンすることによって空間メッシュを作成している。深度センサーは、イエロールーム49内のように暗い環境であっても対象箇所の形状を捉えて空間メッシュを作成することができる。このため、スマートグラス10は、対象空間メッシュと基準空間メッシュとの差分を正確に抽出することができ、その差分の大きさに基づいて正しく警告を発報することができる。すなわち、第2実施形態のようにすれば、イエロールーム49内のように暗い環境であっても作業者が周囲の状況の変化を正しく認識することができる。
【0096】
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態について説明する。第3実施形態における作業支援システムの構成は第1実施形態と同じである。第3実施形態では、スマートグラス10による空間メッシュの差分検出をさらに補正することによって、異物や開口部等の危険箇所をより正確に認識できるようにしている。
【0097】
図13は、第3実施形態の作業支援方法の手順を示すフローチャートである。
図13のステップS11からステップS14までの工程は、
図9のステップS1からステップS4までの工程と概ね同様である。すなわち、まず基板処理装置50(または基板処理装置90)の周辺の作業エリアについての正常状態(安全な状態)の空間メッシュを作成して登録する(ステップS11)。第1実施形態と同様に、スマートグラス10を装着した作業者がスキャンモードをオンにすると、スマートグラス10の空間認識部25が作業エリアのスキャンを実行する。スキャンにより作成された正常状態の空間メッシュは基準空間メッシュとして記憶部24に登録される。
【0098】
次に、スマートグラス10を装着した作業者が適宜のタイミングでスマートグラス10によって上記の作業エリアをスキャンして空間メッシュを作成する(ステップS12)。適宜のタイミングとしては、例えば作業前の事前点検時等が好適である。そして、スマートグラス10の比較部31がステップS12で作成された空間メッシュ(対象空間メッシュ)とステップS11で登録されている基準空間メッシュとを比較する(ステップS13)。比較部31は、対象空間メッシュと基準空間メッシュとを比較して双方の差分を抽出する。続いて、比較部31は、対象空間メッシュと基準空間メッシュとの差分が所定の閾値以上であるか否かを判定する(ステップS14)。具体的には、比較部31は、当該差分を数値化した差分値が閾値以上となっているか否かを判定する。
【0099】
第3実施形態においては、対象空間メッシュと基準空間メッシュとの差分が閾値以上である場合には、ステップS14からステップS15に進み、スマートグラス10が当該差分を危険箇所として登録する。対象空間メッシュと基準空間メッシュとの差分が閾値以上であることは、基準空間メッシュが作成されたときから新たな異物または開口部等の危険箇所が生じている可能性を示している。異物としては、例えば工具や部品等が例示される。開口部は、例えばグレーチング47が取り外されて生じる穴である。これはいずれも作業者が気づかずに接触すると危険な箇所である。スマートグラス10は、対象空間メッシュと基準空間メッシュとの差分(例えば、
図11の領域D1)が閾値以上であるときには基準空間メッシュからの対象空間メッシュの変化箇所を危険箇所と判定し、その危険箇所の位置情報を例えばサーバ70の記憶部74に登録する。
【0100】
次に、スマートグラス10によって誤検知された危険箇所を作業者が削除する(ステップS16)。スマートグラス10が基準空間メッシュからの対象空間メッシュの変化箇所を危険箇所として検知したときに誤検知を行うことがある。スマートグラス10による誤検知は以下のような事情によって生じるものと考えられる。ステップS12で空間メッシュを作成するときには、スマートグラス10を装着した作業者がスキャンモードをオンにした状態で基板処理装置50の周辺を含む作業エリア内を歩き回ることになる。このときに作業者の歩き方によって作成される空間メッシュに差異が生じることがある。例えば、作業者が早足で歩いたときには、スマートグラス10が高速でスキャンを行うことになり、比較的密度の粗い三角形の集合によって空間メッシュが形成される。逆に、作業者がゆっくり歩いたときには、スマートグラス10が低速でスキャンを行うことになり、比較的密度の高い三角形の集合によって空間メッシュが作成されることとなる。このように同じエリアについて作成された空間メッシュであっても、作業者の歩き方によってばらつきが生じることがあり、そのばらつきに起因して差分の計算に誤差が生じ、結果として異物等が存在しない空間を危険箇所として誤検知することがある。
【0101】
作業者は、ステップS15でスマートグラス10によってサーバ70に登録された危険箇所が誤検知であることを目視等で確認したときには、その誤検知された危険箇所を手動で削除する。例えば、スマートグラス10によってサーバ70に登録された危険箇所の位置に異物等が存在せずに安全であることを目視で確認した作業者はその危険箇所を手動でサーバ70から削除する。具体的には、作業者は、例えばスマートグラス10の表示部23によって立体映像として表示された操作画面に対して手のジェスチャーによって誤検知された危険箇所を削除する操作を行い、その入力操作に応答してスマートグラス10がサーバ70から当該危険箇所を削除する。また、誤検知ではないものの、スマートグラス10によって危険箇所として検知された異物等が危険ではないと作業者が確認したときにも、その危険箇所を上記と同様にして削除するようにしても良い。
【0102】
次に、スマートグラス10には検知されなかったものの、作業者が目視によって見つけた危険箇所を登録する(ステップS17)。スマートグラス10の空間認識部25が備える深度センサーの解像度では面積が小さい異物(例えば、一辺が50cm以下の異物)を検知できない可能性がある。また、ステップS12で空間メッシュを作成するときに、スマートグラス10の視野外に新たな異物または開口部等の危険箇所が追加されていることもある。これらの場合には、スマートグラス10が検知することができない危険箇所が存在することになる。そのようなスマートグラス10が検知することができなかった異物または開口部等の危険箇所を作業者が目視等で確認した場合には、作業者はその危険箇所を手動でサーバ70に登録する。具体的には、作業者は、例えばスマートグラス10の表示部23によって立体映像として表示された操作画面に対して手のジェスチャーによって目視で見つけた危険箇所を追加する操作を行う。このときには、例えば、危険箇所を示す仮想のオブジェクトを作業者が目視で見つけた危険箇所の位置に手のジェスチャーで設置するようにしても良い。そして、その入力操作に応答してスマートグラス10が追加された危険箇所の位置情報をサーバ70に登録する。
【0103】
新たに見出された危険箇所の登録および誤検知された危険箇所の削除が完了した後、スマートグラス10を装着した作業者が作業エリア内にて危険箇所に近付いたときには警告発報部36が警告を発報する(ステップS18)。具体的には、スマートグラス10を装着した作業者が作業エリア内にてスキャンモードをオンにすると、スマートグラス10が作業エリア内をスキャンすることによって空間メッシュを作成し、その空間メッシュと過去に作成された空間メッシュとを比較することによって作業者の位置が特定される。その特定された作業者の位置とサーバ70に登録された危険箇所の位置とが所定の距離以下(例えば、1m以下)に接近したことがスマートグラス10によって検知されたときに警告発報部36が警告を発報する。警告発報部36は、例えば
図12のような警告メッセージを表示部23に立体映像として表示させる。警告メッセージが表示されることにより、作業者は近くに異物または開口部等の危険箇所が存在していることを認識することができて注意を払うことになり、作業者の安全を確保することができる。
【0104】
図14は、第3実施形態における危険箇所の追加登録および削除を説明するための図である。作業エリア101には基板処理装置50が配置されている。ステップS12で作業前の事前点検等を行う作業者は、スマートグラス10を装着してスキャンモードをオンにした状態で作業エリア101内を歩き回る。作業者は、例えば矢印AR14に示すような経路に沿って基板処理装置50の周辺を歩く。これにより、基板処理装置50の周辺を含む作業エリア101についての空間メッシュ(対象空間メッシュ)が作成される。なお、予め正常状態での作業エリア101についての空間メッシュ(基準空間メッシュ)が作成されて記憶部24に登録されている。
【0105】
開口部105は、作業エリア101が正常な状態において基準空間メッシュが作成された後に、例えばグレーチング47が取り外されて出来た穴である。作業前の事前点検等を行う作業者が開口部105に近付くと、作成された対象空間メッシュと基準空間メッシュとの差分が所定の閾値以上となることがある。これは、スマートグラス10が新たに生じた変化である開口部105を検知できたことを意味する。そして、スマートグラス10は、基準空間メッシュからの対象空間メッシュの変化箇所である開口部105を危険箇所と判定し、その危険箇所の位置情報(つまり、開口部105の位置情報)をサーバ70に登録する。
【0106】
また、異物106は、例えば基準空間メッシュが作成された後に作業エリア101に置かれた工具である。作業者が異物106に近付くと、作成された対象空間メッシュと基準空間メッシュとの差分が所定の閾値以上となることがある。これは、スマートグラス10が新たに生じた変化である異物106を検知できたことを意味する。そして、スマートグラス10は、基準空間メッシュからの対象空間メッシュの変化箇所である異物106を危険箇所と判定し、その危険箇所の位置情報(つまり、異物106の位置情報)をサーバ70に登録する。
【0107】
一方、領域107は、異物等が何も存在しない安全な箇所である。作業前の事前点検等を行う作業者が安全な領域107に近付いたときに、作成された対象空間メッシュと基準空間メッシュとの差分が所定の閾値以上となることがある。この場合も上記と同様に、スマートグラス10は、基準空間メッシュからの対象空間メッシュの変化箇所である領域107を危険箇所と判定し、領域107の位置情報をサーバ70に登録する。しかし、これはスマートグラス10の誤検知である。このような誤検知が生じる理由は上述した通りである。作業者は、サーバ70に登録された危険箇所である領域107が安全であって誤検知であることを目視等で確認したときには、その誤検知された危険箇所の登録を手動でサーバ70から削除する。作業者は、装着しているスマートグラス10を使用して誤検知された危険箇所の登録を削除する。
【0108】
また、異物108は、異物106と同様に、基準空間メッシュが作成された後に作業エリア101に置かれた工具である。ところが異物108が小さい等の場合には、作業者が異物108に近付いたとしても、作成された対象空間メッシュと基準空間メッシュとの差分が所定の閾値未満となることがある。この場合は、スマートグラス10が異物108を危険箇所として検知できていない。このような場合であっても、作業者が目視等で異物108を確認したときには、作業者は手動で異物108を危険箇所としてサーバ70に登録する。作業者は、装着しているスマートグラス10を使用して異物108の位置情報をサーバ70に登録する。比較的大きな危険箇所についてはスマートグラス10が検知して自動で登録され、スマートグラス10が検知できない比較的小さな危険箇所については作業者が手動で登録するのである。
【0109】
このようにして作業エリア101内に存在している異物または開口部等の危険箇所が過不足無くサーバ70に登録されることとなる。その後、スマートグラス10を装着した作業者が作業エリア101内に入り、危険箇所(
図14の例では、開口部105、異物106、異物108)から一定の距離以下に近付いたときには、警告発報部36が警告を発報する。警告を認識した作業者は、近くに異物または開口部等の危険箇所が存在していると知って注意を払う。その結果、作業者の安全を確保することができる。
【0110】
第3実施形態においては、スマートグラス10によって基準空間メッシュからの対象空間メッシュの変化箇所を危険箇所としてその位置情報をサーバ70に登録している。そして、スマートグラス10によって登録された危険箇所が誤検知である場合には作業者がその危険箇所の登録を削除する。その一方、スマートグラス10が検知できなかった危険箇所を作業者が目視等で確認したときには、作業者はその危険箇所を手動で登録する。すなわち、スマートグラス10による危険箇所の自動登録に対して作業者の目視等での確認による補正(登録の削除および追加)を加えるのである。これにより、危険箇所の登録精度を高めることができ、スマートグラス10を装着した作業者は確実に危険箇所を認識することができる。
【0111】
<第4実施形態>
次に、本発明の第4実施形態について説明する。第4実施形態における作業支援システムの構成は第1実施形態と同じである。第4実施形態においては、同じ作業エリア内で複数の作業者が作業を行っている場合に、危険箇所についての情報を共有する。
【0112】
図15は、第4実施形態における危険箇所についての位置情報の共有を説明するための図である。作業エリア111には基板処理装置50が配置されている。作業エリア111内では3人の作業者が作業を行っている。3人の作業者は全員スマートグラス10を装着して作業を行っている。3人の作業者のそれぞれは、基板処理装置50に対する直接の作業を行っていても良いし、基板処理装置50とは直接関わりの無い作業を行っていても良い。
【0113】
3人の作業者のうちの作業者P1が1箇所のグレーチング47を取り外すことによって開口部115が形成される。開口部115を形成した作業者P1は、スマートグラス10を用いて開口部115を危険箇所としてサーバ70に登録する。具体的には、作業者P1は、例えばスマートグラス10の表示部23によって立体映像として表示された操作画面に対して手のジェスチャーによって開口部115の位置情報を入力する操作を行う。作業者P1が装着するスマートグラス10は、その入力操作に応答して開口部115の位置情報をサーバ70に登録する。
【0114】
次に、新たな危険箇所の位置情報の登録を受けたサーバ70は、3人の作業者のうちの残る作業者P2および作業者P3が装着するスマートグラス10に対してその新たに登録された危険箇所の位置情報を配信する。これにより、作業者P2および作業者P3のそれぞれが装着するスマートグラス10はサーバ70に新たに登録された危険箇所についての位置情報を取得することとなる。すなわち、開口部115を形成した作業者P1が装着するスマートグラス10が登録した危険箇所についての位置情報を他の作業者P2および作業者P3が装着するスマートグラス10が共有するのである。
【0115】
スマートグラス10を装着したいずれかの作業者が作業エリア111内にて危険箇所である開口部115に近付いたときには警告発報部36が警告を発報する。具体的には、スマートグラス10を装着した作業者が作業エリア111内にてスキャンモードをオンにすると、スマートグラス10が作業エリア111内をスキャンすることによって空間メッシュを作成し、その空間メッシュと過去に作成された空間メッシュとを比較することによって作業者の位置が特定される。その特定された作業者の位置と危険箇所である開口部115の位置とが所定の距離以下(例えば、1m以下)に接近したことがスマートグラス10によって検知されたときに警告発報部36が警告を発報する。警告発報部36は、例えば
図12のような警告メッセージを表示部23に立体映像として表示させる。警告メッセージが表示されることにより、作業者は近くに異物または開口部等の危険箇所が存在していることを認識することができて注意を払うことになり、作業者の安全を確保することができる。
【0116】
第4実施形態においては、作業エリア111内にて複数の作業者がスマートグラス10を装着して作業を行っており、そのうちの一人の作業者が作業エリア111に生じた変化箇所を危険箇所としてその位置情報をスマートグラス10を用いてサーバ70に登録する。サーバ70に新たな危険箇所が登録されると、他の作業者が装着するスマートグラス10が新たに登録された危険箇所についての位置情報をサーバ70から取得する。これにより、作業エリア111内にて作業を行っている複数の作業者の全員が作業エリア111内に生じた危険箇所についての位置情報を共有することができ、各作業者は確実に危険箇所を認識することができる。
【0117】
<変形例>
以上、本発明の実施の形態について説明したが、この発明はその趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、第1および第2実施形態において、対象空間メッシュと基準空間メッシュとの差分が閾値以上である場合に、警告を発報するのに加えて、対象空間メッシュを新たな基準空間メッシュとして登録するか否かを作業者が選択できるようにしても良い。具体的には、スマートグラス10の表示部23が警告メッセージとともに登録更新するか否かの選択ボタンまたは選択のためのプルダウンを立体映像として表示する。作業者は、手のジェスチャーによって対象空間メッシュを新たな基準空間メッシュとして登録するか否かを選択することができる。その手のジェスチャーは撮像部21によって撮像されて検知され、スマートグラス10のコンピュータはその検知結果から作業者の選択を実行する。スマートグラス10は、対象空間メッシュと基準空間メッシュとの差分が閾値以上である場合に警告を発報するものの、その対象空間メッシュの状態が安全であるか危険であるかまでをも判断することはできない。作業者は、対象空間メッシュの状態が安全かつ恒常的な状態である場合には、その対象空間メッシュを新たな基準空間メッシュとして登録する選択を行っても良い。
【0118】
また、第1実施形態においては、作業者の周辺の照度が基準値以下となったときに自動的に空間メッシュを作成していたが、これに代えて、作業者がクリーンルーム40の床を移動しようとするときにスマートグラス10が自動で空間メッシュを作成するようにしても良い。具体的には、作業者が装着するスマートグラス10の撮像部21が撮像した画像中に床の露出を検知したときに、スマートグラス10が自動で空間メッシュを作成するようにしても良い。このようにすれば、クリーンルーム40内の通常のエリアにおいてグレーチング47が外されている場合であっても、自動で対象空間メッシュが作成されて、その対象空間メッシュと基準空間メッシュとの差分が閾値以上であるときには警告が発報されるため、作業者はグレーチング47が外れていることを認識することができる。
【0119】
また、警告発報部36は、表示部23に警告メッセージを表示させるのに加えて、または代えて、スマートグラス10のスピーカーから警告音を発するようにしても良い。
【0120】
また、上記各実施形態においては、比較部31および警告発報部36がスマートグラス10に設けられていたが、これに限定されるものではなく、比較部31および警告発報部36は作業支援端末80、サーバ70または基板処理装置50の制御部55に設けられていても良い。
【0121】
また、第4実施形態においては、グレーチング47を取り外して開口部115を形成した作業者がその開口部115を危険箇所として登録していたが、工具等の異物を置いた作業者がその異物を危険箇所として登録するようにしても良い。或いは、自ら危険箇所を形成はしていないものの、新たな危険箇所に気がついた作業者がその危険箇所をサーバ70に登録するようにしても良い。すなわち、作業エリアに生じた変化箇所を危険箇所として作業者が登録する形態であれば良い。
【0122】
また、第3および第4実施形態において、スマートグラス10を装着した作業者が作業エリアに進入するときに、サーバ70に登録されている危険箇所をスマートグラス10の表示部23がリスト形式にして表示するようにしても良い。このようにすれば、作業エリアに入ろうとする作業者は事前にエリア内の危険箇所を確認することができる。
【0123】
また、上記各実施形態においては、作業者はスマートグラス10を使用していたが、これに限定されるものではなく、スマートグラス10に代えてタブレット端末やスマートフォン等の携帯端末を用いるようにしても良い。すなわち、撮像部および通信部等を備えた携帯端末であれば良い。もっとも、タブレット端末等を使用するとそれを持つ作業者の手が塞がることになるため、スマートグラス10等のウェアラブル端末を用いるのが好ましい。
【0124】
また、クリーンルーム40内の通常のエリアに設置される基板処理装置50は基板洗浄装置に限定されるものではなく、熱処理装置、露光装置、塗布現像装置、計測装置または検査装置等の基板に所定の処理を行う装置であれば良い。基板処理装置50が基板洗浄装置である場合には、基板を1枚ずつ洗浄する枚葉式の洗浄装置であっても良いし、複数の基板を一括して洗浄するバッチ式の洗浄装置であっても良い。
【0125】
さらに、本発明に係る作業支援技術の対象となるのは、基板処理装置に限定されるものではなく、何らかの処理を行う産業機器であれば良い。このような産業機器としては、例えば、印刷処理装置、成膜装置、医療用装置、および、外観検査装置等が例示される。
【符号の説明】
【0126】
5 情報通信網
10 スマートグラス
21 撮像部
22 通信部
23 表示部
24 記憶部
25 空間認識部
31 比較部
36 警告発報部
40 クリーンルーム
47 グレーチング
49 イエロールーム
50,90 基板処理装置
52 処理ユニット
56 移載ロボット
57 主搬送ロボット
60 処理チャンバー
61 回転保持部
65 吐出ノズル
70 サーバ
80 作業支援端末
101,111 作業エリア
105,115 開口部
106,108 異物
W 基板