(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173661
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】放射パネルおよびこれを備えた空調システム
(51)【国際特許分類】
F24F 1/0093 20190101AFI20241205BHJP
F24F 5/00 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
F24F1/0093
F24F5/00 102
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024038743
(22)【出願日】2024-03-13
(31)【優先権主張番号】P 2023088469
(32)【優先日】2023-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川村 聡宏
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 満博
(72)【発明者】
【氏名】長谷部 弥
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 清
(72)【発明者】
【氏名】川上 梨沙
(72)【発明者】
【氏名】近藤 恒佑
(72)【発明者】
【氏名】山本 ミゲイル
(72)【発明者】
【氏名】中村 卓司
(72)【発明者】
【氏名】竹内 玄
(72)【発明者】
【氏名】菊川 和雅
【テーマコード(参考)】
3L050
【Fターム(参考)】
3L050BB02
3L050BC10
(57)【要約】
【課題】手間と時間とを要せずに、潜熱蓄熱材の潜熱を利用する空調システムを実現する。
【解決手段】本発明に係る放射パネル10は、建築物の室内において天井面を構成し、内部に潜熱蓄熱材を収容する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の室内において天井面を構成し、内部に潜熱蓄熱材を収容する放射パネル。
【請求項2】
熱媒が流通する配管を収容する溝が設けられている、請求項1に記載の放射パネル。
【請求項3】
前記放射パネルは、前記放射パネルの平面視において、略長方形形状を有し、
前記溝は、前記放射パネルの短手方向に沿って延びている、請求項2に記載の放射パネル。
【請求項4】
前記放射パネルは、樹脂部材で構成されている、請求項1に記載の放射パネル。
【請求項5】
外側に張り出し、他の部材に係合可能とされた張出部が設けられている、請求項1に記載の放射パネル。
【請求項6】
前記潜熱蓄熱材を収容する部分に取り囲まれた場所において、前記放射パネルの一方の面に前記放射パネルの内部側に向かって凹んだ凹部が設けられ、前記一方の面と、前記一方の面と対向する前記放射パネルの他方の面とが接合されている、請求項1に記載の放射パネル。
【請求項7】
前記放射パネルの面のうち前記天井面を構成する第1面には、前記放射パネルの内部側に向かって凹んだ凹部が設けられ、
前記凹部には、天井裏空間に一端が固定されたワイヤが貫通する開口部が設けられ、
前記凹部の内部には、前記ワイヤの他端に設けられた留め具が収容される、請求項1に記載の放射パネル。
【請求項8】
前記放射パネルの面のうち前記天井面を構成する第1面と対向する第2面には、前記放射パネルの外縁に向かって前記第1面側に傾斜する傾斜領域が設けられている、請求項1に記載の放射パネル。
【請求項9】
前記傾斜領域には、前記放射パネルの内部と外部とを連通する貫通孔が設けられている、請求項8に記載の放射パネル。
【請求項10】
前記放射パネルの内圧が所定以上となった場合に、前記放射パネルの内圧を解放する内圧開放部が設けられている、請求項1に記載の放射パネル。
【請求項11】
前記潜熱蓄熱材は、硫酸ナトリウム十水和物である、請求項1に記載の放射パネル。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の放射パネルと、
少なくとも一部が前記放射パネルに接して配置され、熱媒が流通する配管と、
前記熱媒を循環させる循環装置と、
を備える、空調システム。
【請求項13】
請求項3に記載の複数の放射パネルと、
少なくとも一部が前記放射パネルに接して配置され、熱媒が流通する配管と、
前記熱媒を循環させる循環装置と、
を備え、
複数の前記放射パネルは、前記放射パネルの短手方向に並設され、
前記配管は、前記放射パネルの短手方向に沿って延びている、空調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射パネルおよびこれを備えた空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、省エネルギー化等の観点から、放射式空調と、蓄熱技術とを組み合わせた空調システムが注目されている。蓄熱技術の中でも潜熱蓄熱材を用いたシステムは、小さな体積で大きな熱量を蓄熱・蓄冷することが可能である。また、放射式空調と潜熱蓄熱材とを組み合わせることで、放射空調システムの冷却面の表面温度を潜熱蓄熱材が相変化する温度帯に維持することが容易となり、安定した室内環境を構築できる。潜熱蓄熱材を蓄熱・蓄冷する方法として、例えば、ヒートポンプ等の機械的な熱源や自然エネルギーを活用する方法が挙げられる。主に電力需要が小さい時間帯、熱需要が少ない時間帯に、潜熱蓄熱材の蓄熱・蓄冷を行うことで、電力消費量や熱負荷のピークシフトに活用できる。
【0003】
放射式空調と潜熱技術とを組み合わせた例として、特許文献1には、潜熱蓄熱材と顕熱蓄熱材とを組み合わせた蓄熱媒体を、天井面を形成する放射パネルの裏側の天井裏空間に配置し、放射式空調を行う空調システムが開示されている。吸熱特性に優れた顕熱蓄熱材と、放熱特性に優れた潜熱蓄熱材とを併用することで、不安定な自然エネルギーを有効に活用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の通り、特許文献1に開示されている空調システムでは、天井面を形成する放射パネルの裏側に潜熱蓄熱材を含む蓄熱体が配置されている。しかしながら、放射パネルの裏側に潜熱蓄熱材を配置する場合、施工工程が複雑になり、その施工に手間と時間がかかってしまう。
【0006】
本発明の目的は、潜熱蓄熱材の潜熱を利用する空調システムにおいて、施工性に優れた放射パネルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る放射パネルは、建築物の室内において天井面を構成し、内部に潜熱蓄熱材を収容することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る放射パネルは、施工性に優れる。本発明に係る放射パネルには、パネルの内部に潜熱蓄熱材が収容されているため、パネルの裏側に潜熱蓄熱材を配置する施工が不要となり、簡便にかつ短時間で、潜熱蓄熱材の潜熱を利用する空調システムを構築できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態の空調システムの構成を示す概略図である。
【
図2】第1実施形態のる空調システムを構成する放射パネルの配置を模式的に示す平面図である。
【
図3】第1実施形態の空調システムを構成する放射パネルの斜視図である。
【
図4】第1実施形態の空調システムを構成する放射パネルを上側から見た平面図である。
【
図7】第2実施形態の空調システムを構成する放射パネルの斜視図である。
【
図8】第2実施形態の空調システムを構成する放射パネルを上側から見た平面図である。
【
図12】第2実施形態の空調システムを構成する放射パネルの配置を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る放射パネルを備えた空調システムの実施形態の一例について詳細に説明する。以下で説明する実施形態はあくまでも一例であって、本発明は以下の実施形態に限定されない。また、以下で説明する複数の実施形態、変形例を選択的に組み合わせてなる形態は本発明に含まれている。
【0011】
[第1実施形態]
図1は、本実施形態の空調システム1の構成を示す概略図であり、空調システム1が設けられた建築物Mの1つの階層を側方から見た断面図である。
図2は、空調システム1を構成する放射パネル10の配置を模式的に示す図であり、放射パネル10を上方から見た平面図である。なお、
図2では、4つの放射パネル10が配置されている様子を図示している。建築物Mは、例えば、大型店舗やオフィス等であり、1層以上の階層を有する。なお、建築物Mの階層数は、特に限定されない。
【0012】
図1に示すように、空調システム1は、内部に潜熱蓄熱材20を収容する複数の放射パネル10を有する放射式(輻射式)空調である。空調システム1は、放射パネル10の他、断熱材30と、熱媒が流通する配管40と、熱媒を循環させる循環装置50とを備える。放射パネル10は、建築物Mの居室2の天井に配置され、断熱材30は、放射パネル10の上面10B(第2面)を覆うように配置されている。
【0013】
空調システム1は、冷暖房機能を有し、ユーザの操作に基づき、または居室2の温度に基づいて自動で、冷房運転モードまたは暖房運転モードを実行する。冷房運転モードにおいては、空調システム1は、例えば、電気需要が小さい夜間の時間帯に循環装置50により熱媒(冷水)を配管40に循環させる。すると、配管40を介して熱媒と放射パネル10との間で熱交換が行われる。その結果、放射パネル10が冷却され、放射パネル10内部に収容される潜熱蓄熱材20が凝固する。そして、気温が上昇する日中の時間帯においては、潜熱蓄熱材20が居室2にいる滞在者W、図示しない機器をはじめ、居室2の壁、および床等の熱を吸収する。これにより、居室2の室温を低下させることができる。
【0014】
図1および
図2に示すように、放射パネル10は、居室2の天井面を形成する天井ボード3の間に配置されている。すなわち、放射パネル10の下面10A(第1面)は、天井ボード3から室内側へ露出しており、居室2の天井面の一部を形成している。放射パネル10の下面10Aが天井面を形成することで、居室2内の空気と潜熱蓄熱材20との間で熱の授受が容易となる。放射パネル10は、天井ボード3の間に室外側から挿入され、ボルト(図示せず)等を介して、天井ボード3に固定されている。なお、天井ボード3の材質は、特に限定されず、例えば岩綿吸音板である。
【0015】
放射パネル10は、建築物Mの所定の階層の天井側の上部躯体4の下面4Aに接触せず、さらに建築物Mの外壁や側壁の壁面に接触しないように配置されることが好ましい。これにより、放射パネル10から熱伝導によって上部躯体4の下面4Aや前述の各壁面から逃げる熱を少なくしつつ、居室2空間内の空気の温度を調節することができる。
【0016】
放射パネル10は、例えば、システム天井に用いられる天井ボード3などのサイズ(600mm×600mmなど)に合わせた大きさ、または複数枚の放射パネル10を組み合わせると当該サイズとなる大きさであることが好ましい。この場合、既存の天井ボード3と放射パネル10との入れ替えが可能となり、空調システム1を容易に導入することができる。
【0017】
図2に示すように、本実施形態では、放射パネル10は平面視略長方形状を有し、放射パネル10の長手方向の長さは、天井ボード3の一辺の長さと一致している。また、放射パネル10の短手方向の長さは、放射パネル10の長手方向の長さの半分である。つまり、2つの放射パネル10を並べると、天井ボード3の大きさと一致する。
【0018】
本実施形態では、居室2の天井面において、天井面全体の面積に対する、放射パネル10の面積の合計の割合(敷設率)は、50%である。なお、敷設率は、居室2の熱需要に応じて適宜変更可能であり、例えば、25%以上である。また、敷設率は100%、すなわち、放射パネル10が実質的に天井面の全域を形成していてもよい。
【0019】
放射パネル10は、放射パネル10の下面10Aと、天井ボード3の下面3Aとが同一平面上に位置するように設けられている。これにより、居室2内部から天井面を見上げた際、放射パネル10と天井ボード3との境界が目立ちにくくなり、意匠性が向上する。
【0020】
放射パネル10は、鉄等を主成分とする金属で構成されていてもよいが、樹脂で構成されていることが好ましい。この場合、放射パネル10の製造コストを低減することができる。放射パネル10を構成する樹脂としては、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリプロピレン(PP)等が挙げられる。放射パネル10を樹脂部材で構成する場合、放射パネル10は、ブロー成形によって作製することができる。この方法は、本実施形態のように中空構造を有する形状を成形する場合に有効である。
【0021】
放射パネル10は、内部に一続きとなった空間が形成されており、潜熱蓄熱材20を収容する。換言すると、潜熱蓄熱材20を収容する容器の外壁が、放射パネル10の外壁を構成し、当該容器の外壁の少なくとも一部が天井面を形成する。これにより、放射パネル10の裏側に潜熱蓄熱材20を配置する施工が不要となり、手間と時間とを要せずに、潜熱蓄熱材20の潜熱を利用する空調システムを実現できる。
【0022】
放射パネル10に収容される潜熱蓄熱材20は、固相と液相との間で相変化可能な蓄熱材である。潜熱蓄熱材20は、液相から固相へ相変化することで蓄えている潜熱を放出し、固相から液相へ相変化することで熱を潜熱として蓄える。
【0023】
空調システム1を冷房に用いる場合、潜熱蓄熱材20として、16℃~22℃程度で相変化が生じる潜熱蓄熱材が用いられる。また、潜熱蓄熱材20は不燃性であることが好ましい。潜熱蓄熱材20としては、例えば、硫酸ナトリウム十水和物(Na2SO4・10H2O)、酢酸ナトリウム三水和物(CH3COONa・3H2O)、リン酸水素二ナトリウム十二水和物(Na2HPO4・12H2O)、炭酸ナトリウム十水和物(Na2CO3・10H2O)、チオ硫酸ナトリウム五水和物(Na2S2O3・5H2O)等が挙げられ、中でも硫酸ナトリウム十水和物であることが好ましい。
【0024】
断熱材30は、放射パネル10の上面10Bを覆うように配置されている。断熱材30を配置することで、放射パネル10からの冷放射が、天井裏空間に逃げることが抑制される。断熱材30としては、例えば、ウレタンやフェノールフォーム、発泡スチロール等が挙げられる。また、断熱材30は、多層構造を有していてもよい。
【0025】
配管40には、循環装置50により循環される熱媒が流通する。配管40は、樹脂で構成されていてもよいが、例えば、銅またはステンレスのように熱伝導性を有する金属で構成されていることが好ましい。さらには金属の劣化を抑制する観点から樹脂の間に金属膜が挟み込まれた三層管(例えば、アルミ三層管)を用いることがより好ましい。本実施形態では、配管40を流通する熱媒は、冷温水である。
【0026】
図1および
図2に示すように、配管40の一部は、放射パネル10の上面10Bに保持されている。より詳細には、配管40の一部は、放射パネル10の長手方向に沿って放射パネル10の上面10Bに形成された溝101,102,103(
図3参照)に収容、つまり挿入され、保持されている。配管40の直径は、放射パネル10の上面10Bに形成された溝101,102,103の幅と略同一である。
【0027】
図2に示す例では、配管40は、4つの配管41,42,43,44を含む。4つの配管41,42,43,44は、4つの放射パネル11,12,13,14にそれぞれ配置されている。そして、配管41と配管42とは、配管継手45で接続され、配管42と配管43とは、配管継手46で接続され、配管43と配管44とは、配管継手47で接続されている。
【0028】
また、
図2に示すように、4つの配管41,42,43,44は、放射パネル10の上面10Bを蛇行するように配置されている。放射パネル10の上面10Bにおいて、配管40を蛇行して配置することで、配管40と放射パネル10の上面10Bとが接する面積を大きくすることができる。これにより、配管40を介して、熱媒と放射パネル10との間で熱交換を効率よく行うことができる。
【0029】
4つの配管41,42,43,44は、複数の直線領域と複数の湾曲領域とを有する。直線領域は、放射パネル10の長手方向に沿って配置されている。詳しくは後述するが、放射パネル10の上面10Bに形成された溝101,102,103(
図3参照)は、放射パネル10の短手方向において等間隔で形成されている。そのため、直線領域は、放射パネル10の短手方向において等間隔で配置されている。湾曲領域は、放射パネル10の短手方向において、互いに間隔を空けて隣り合う直線領域同士を連結している。
【0030】
また、
図2に示すように、4つの配管41,42,43,44は、実質的に同一形状を有する4つの配管部材を反転または回転させて配置することにより構成されていてもよい。この場合、配管40を放射パネル10に組み付ける際の施工性が向上する。
【0031】
循環装置50は、配管40と接続され、配管40を流通する熱媒を循環させる。循環装置50の構成は、冷温水を配管40に循環させることができ、冷温水と熱交換できれば、特に限定されない。循環装置50は、例えば、チラー、クーリングタワーで構成される。循環装置50の配置場所は特に限定されないが、本実施形態では、循環装置50は建築物Mの屋上に配置されている。なお、循環装置50を構成する装置の少なくとも一部が屋内または地中に設けられていてもよい。
【0032】
以下、
図3および
図4を参照しながら、放射パネル10について詳説する。
図3は、放射パネル10の斜視図であり、
図4は、放射パネル10の平面図である。
【0033】
図3および
図4に示す通り、放射パネル10の上面10Bには、放射パネル10の長手方向に沿って延びる3つの溝101,102,103と、溝101,102,103によって区画された4つの凸部111,112,113,114と、溝101,102,103の長手方向両端にそれぞれ位置する第1領域121および第2領域122とが設けられている。
【0034】
ここで、放射パネル10の下面10Aの形状は特に限定されず、平坦な形状であってもよく、溝が設けられていてもよい。或いは、放射パネル10の上面10Bと同じ構成が設けられていてもよい。本実施形態では、放射パネル10の下面10Aは、後述する第2凹部150および第3凹部160が設けられている領域を除き、平坦な形状を有する。
【0035】
溝101,102,103は、放射パネル10の長手方向に沿って、互いに平行に設けられている。溝101,102,103は、上記の通り、配管40を内部に収容し、保持する機能を有する。本実施形態では、放射パネル10の長手方向において、溝101,102,103の長さは、互いに同一である。溝101,102,103の長さは特に限定されないが、例えば、放射パネル10の長さの30%以上、80%以下である。
【0036】
溝101は、放射パネル10の短手方向中央に配置されている。そして、放射パネル10の短手方向において、溝102および溝103は、溝101から等距離の位置にそれぞれ配置されている。溝101,102,103を等間隔に配置することで、溝101,102,103に挿入される配管40についても等間隔に設けることができる。その結果、配管40を放射パネル10に組み付ける際の施工性が向上する。
【0037】
溝101,102,103の幅は、互いに同一である。溝101,102,103の幅は、配管40の直径に応じて適宜設定可能であり、例えば、放射パネル10の短手方向の長さの3%以上、20%以下である。なお、本明細書において、「幅」とは、特に断らない限り、放射パネル10の上面10Bにおける幅を意味する。
【0038】
凸部111,112,113,114は、放射パネル10の長手方向に沿って、互いに平行に設けられている。凸部111は、溝101,102により区画され、凸部112は、溝101,103により区画されている。また、凸部113は、溝102を挟んで凸部111と放射パネル10の短手方向に対向配置され、凸部114は、溝103を挟んで凸部112と放射パネル10の短手方向に対向配置されている。つまり、溝101は凸部111と凸部112とを分断し、溝102は凸部111と凸部113とを分断し、溝103は凸部112と凸部114とを分断している。この結果、溝101に収容された配管40は、凸部111と凸部112とで挟持され、溝102に収容された配管40は、凸部111と凸部113とで挟持され、溝103に収容された配管40は、凸部112と凸部114とで挟持される。
【0039】
凸部111,112,113,114の上面は、後述する第1凹部140が形成されている領域を除き、平坦な形状を有する。しかしながら、凸部111,112,113,114の上面の形状はこれに限られず、放射パネル10の直上に対流が生じない空気層を設けてもよい。例えば、放射パネル10と、放射パネル10の上面10Bに配置される断熱材30(
図1参照)との間に対流が生じない空気層を設けるべく、放射パネル10の上面10Bに凹凸を設けた構成としてもよい。これにより、放射パネル10からの冷放射が、天井裏空間に逃げることがより抑制される。
【0040】
凸部111,112,114の幅は、放射パネル10の長手方向にわたって略同一である。一方、凸部113の幅は、放射パネル10の長手方向において異なる。具体的には、放射パネル10の長手方向両端における凸部113の幅は、放射パネル10の長手方向中央における凸部113の幅よりも小さい。
【0041】
本実施形態では、凸部111,112の幅は、凸部113,114の幅よりも大きい。また、凸部111の幅と凸部112の幅は、互いに同一である。なお、凸部111,112の幅は、特に限定されないが、例えば、それぞれ放射パネル10の短手方向の長さの20%以上、40以下である。
【0042】
凸部113において、放射パネル10の長手方向の端部の側面には、放射パネル10の内部と外部とを連通する開口部115が設けられている。開口部115から放射パネル10の内部に潜熱蓄熱材を流入させることができる。なお、開口部115の個数は1個に限定されず、複数個設けられていてもよい。また、開口部115には蓋(図示せず)が設けられている。
【0043】
本実施形態では、放射パネル10の長手方向両端には、溝101から溝102へ、また溝102から溝103へ配管40が湾曲させられる、第1領域121および第2領域122が設けられている。第1領域121および第2領域122は、一方では溝101から溝102へ配管40が湾曲させられる他、他方では溝102から溝103へ配管40が湾曲させられる。このため、第1領域121および第2領域122の上面は、溝101,102,103の底面に比べ、同一もしくはより低い高さとされる。なお本実施形態では、
第1領域121および第2領域122の上面は、溝101,102,103の底面とは、同一の高さとなるように構成されている。なお、放射パネル10の上面10Bに第1領域121および第2領域122を設けず、配管40の湾曲領域の形状に合わせた溝を設けてもよい。
【0044】
放射パネル10は、放射パネル10の長手方向の両端において、第1領域121および第2領域122の外縁、つまり放射パネル10の下面10Aの周縁よりも外側に張り出した張出部131,132がそれぞれ設けられている。張出部131,132の下面は、放射パネル10が天井ボード3(
図1参照)の間に配置された際に、天井ボード3の上面や図示しない桟と重なり、係合可能とされている。これにより、放射パネル10が天井ボード3や桟に支持され、放射パネル10が天井ボード3の隙間から落下することが防止される。張出部131,132の形状、大きさは、放射パネル10の大きさ、重量や、天井ボード3の形状に合わせて適宜設定可能である。本実施形態では、張出部131,132は、放射パネル10の短手方向に沿って、連続して設けられている。
【0045】
図5および
図6をさらに参照しながら、放射パネル10について詳説する。
図5は、
図4におけるAA線断面図であり、
図6は、
図4におけるBB線断面図である。
【0046】
図5に示すように、溝101,102,103の深さは、互いに同一であり、配管40が嵌り込み、移動が規制されるように配管40の少なくとも半径以上、より好ましくは直径以上とされている。溝101,102,103の深さは、例えば、放射パネル10の最大高さの30%以上、70%以下である。上記の通り、本実施形態では、溝101,102,103の底面と第1領域121および第2領域122の上面とは、同一の高さを有する。
【0047】
図5に示すように、溝101,102,103は、断面視U字型である。溝101,102,103の壁面は、凸部111,112,113,114の側壁を構成している。そのため、凸部111,112,113,114の側壁は、湾曲した形状を有する。なお、溝101,102,103の形状は、配管40を保持可能であれば特に限定されない。例えば、溝101,102,103は、深さ方向にわたって均一な幅を有する形状であってもよい。
【0048】
図5に示すように放射パネル10は、凸部114の外縁、つまり放射パネル10の下面10Aの周縁よりも外側に張り出した張出部133が設けられている。張出部133は、張出部131,132と同様に、放射パネル10が天井ボード3の間に配置された際、張出部133の下面が天井ボード3や桟と重なり、係合可能とされている。これにより、放射パネル10が天井ボード3に支持され、放射パネル10が天井ボード3の隙間から落下することが防止される。なお、本実施形態では、凸部113に張出部を設けられていないが、凸部113に張出部を設けてもよい。
【0049】
図4に示すように、凸部111,112の上面には、放射パネル10の内部側に凹んだ第1凹部140が複数設けられている。第1凹部140を設けることで、放射パネル10の耐圧強度が向上する。その結果、潜熱蓄熱材20の相変化に伴い内圧が変化した場合であっても、放射パネル10の変形を抑制できる。
【0050】
本実施形態では、凸部111,112の上面には、それぞれ4つの第1凹部140が、放射パネル10の長手方向において等間隔に設けられている。つまり、第1凹部140は、凸部111,112、すなわち放射パネル10の潜熱蓄熱材20を収容する部分に取り囲まれた場所において、放射パネル10の内部側に向かって凹むようにして設けられている。なお、第1凹部140は、平面視円形状を有する。しかしながら、第1凹部140は、平面視矩形状であってもよい。
【0051】
図5に示すように、第1凹部140の壁面は、溝底に向かって次第に径が小さくなるように傾斜している。また、第1凹部140の底面は、放射パネル10の上面10Bと略平行となるように設けられている。第1凹部140の深さは、放射パネル10の最大高さの約50%である。つまり、第1凹部140は、放射パネル10の厚み方向において、ほぼ中間位置まで形成されている。
【0052】
放射パネル10の下面10Aには、放射パネル10の平面視において、第1凹部140と重なる位置に、放射パネル10の内部側に凹んだ第2凹部150が設けられている。つまり、第2凹部150は、第1凹部140と同じ数だけ設けられている。したがって、第2凹部150は、放射パネル10の潜熱蓄熱材20を収容する部分に取り囲まれた場所において、第1凹部140同様、放射パネル10の内部側に向かって凹むようにして設けられている。第2凹部150は、第1凹部140同様に、平面視円形状を有する。また、第2凹部150の壁面は、第1凹部140と同様に、溝底に向かって次第に径が小さくなるように傾斜している。なお、第1凹部140および第2凹部150の個数、大きさは、放射パネル10の大きさ、重量に応じて適宜設定可能である。
【0053】
第2凹部150は、底面が第1凹部140の底面と接するように設けられている。第1凹部140の底面と第2凹部150の底面とが接触、より具体的には接合されることで、放射パネル10の耐圧強度がより向上する。その結果、潜熱蓄熱材20の相変化に伴い内圧が変化した場合であっても、放射パネル10の変形がより抑制される。なお、本実施形態では、放射パネル10の上面10Bに第1凹部140、放射パネル10の下面10Aに第2凹部150をそれぞれ備えた構成とした。しかしながら、第1凹部140と第2凹部150は、いずれか一方だけ有する構成とし、放射パネル10の上面10Bと下面10Aが接合される構成としてもよい。
【0054】
図4および
図6に示すように、放射パネル10の下面10Aには、第2凹部150とは異なる位置に、第3凹部160が設けられている。具体的には、放射パネル10の平面視において、第2凹部150および第3凹部160は、千鳥状に配置されている。第2凹部150および第3凹部160を千鳥状に配置することで、放射パネル10の耐圧強度をより向上させることができる。
【0055】
第3凹部160は、放射パネル10の内部側に向かって凹み、第3凹部160の底面が、溝101,102,103の底面または、第1領域121および第2領域122の上面と接するように設けられている。つまり、第3凹部160は、溝101,102,103の底面や、第1領域121および第2領域122、すなわち放射パネル10の潜熱蓄熱材20を収容する部分に取り囲まれた場所において、放射パネル10の内部側に向かって凹むようにして設けられる。これにより、下面10Aは、第3凹部160で対向する放射パネル10の上面10Bと接触、より具体的には接合されている。本実施形態では、第3凹部160は、第2凹部150と同一の形状を有する。
【0056】
上記の通り、本実施形態の空調システム1は、下面が天井面の少なくとも一部を形成する放射パネル10を備える。そして、放射パネル10は、内部に潜熱蓄熱材20が収容されている。これにより、放射パネル10の裏側に潜熱蓄熱材20を配置する施工が不要となり、手間と時間とを要せずに、潜熱蓄熱材20の潜熱を利用する空調システムを実現できる。
【0057】
なお、本発明は上記の実施形態およびその変形例に限定されるものではなく、本願の特許請求の範囲に記載された事項の範囲内において種々の変更や改良が可能であることは勿論である。
【0058】
例えば、上記の実施形態においては、放射パネル10の下面10Aに第2凹部150を設けているが、第2凹部150を設けずに、第1凹部140の底面が、放射パネル10の下面10Aと接するようにしてもよい。この場合、第2凹部150を設けることなく、放射パネル10の耐圧強度を向上させることができる。
【0059】
また、放射パネル10の第1凹部140および第2凹部150、または第3凹部160は、放射パネル10の上面10Bと下面10Aを接触、接合させるために設けているものに過ぎない。このため、放射パネル10の潜熱蓄熱材20を収容する部分に取り囲まれた場所において、放射パネル10の上面10Bと下面10Aを接合できるものであればよい。このため、例えば、放射パネル10の第1凹部140および第2凹部150、または第3凹部160の底面に貫通孔を設け、天井裏空間に一端が固定されたワイヤ等を当該貫通孔に通過させてもよい。これにより、放射パネル10が天井ボード3の隙間から落下することを防止できる。
【0060】
[第2実施形態]
次に、
図7~
図12を参照しながら、本実施形態の空調システム1Xおよび空調システム1Xに用いられる放射パネル10Xについて説明する。以下では、第1実施形態と共通する構成については同じ符号を用いて重複する説明を省略し、主に第1実施形態との相違点を説明する。
【0061】
まず、
図7~
図11を参照しながら、本実施形態の放射パネル10Xについて詳説する。
図7は、放射パネル10Xの斜視図であり、
図8は、放射パネル10Xを上側から見た平面図であり、
図9は、
図8のCC線断面図である。
【0062】
図7および
図8に示す通り、放射パネル10Xは、第1実施形態の放射パネル10と同様に、略直方体形状を有し、居室側に配置される下面10A(第1面)と、下面10Aに対向する上面10B(第2面)とを有する。
【0063】
また、放射パネル10Xは、第1実施形態の放射パネル10と同様に、内部に一続きとなった空間が形成されており、潜熱蓄熱材20を収容する。放射パネル10Xは、鉄等を主成分とする金属で構成されていてもよいが、樹脂で構成されていることが好ましい。この場合、放射パネル10Xの製造コストを低減することができる。放射パネル10Xを構成する樹脂としては、第1実施形態の放射パネル10と同様に、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリプロピレン(PP)等が挙げられる。放射パネル10Xを樹脂部材で構成する場合、放射パネル10Xは、ブロー成形によって作製することができる。
【0064】
放射パネル10Xの上面10Bには、放射パネル10Xの短手方向に沿って延びる6つの凸部201~206が設けられている。なお、凸部の数は6つに限定されず、5つ以下でもよいし、7つ以上でもよい。
【0065】
凸部201~206はそれぞれ均一な幅を有し、放射パネル10Xの長手方向において等間隔で配置されている。凸部201~206の幅は、例えば、10mm以上、100mm以下であり、30mm以上、80mm以下であってもよい。なお、凸部201~206の幅は、それぞれ異なっていてもよい。例えば、放射パネル10Xの長手方向外側に配置される凸部201,206の幅を、放射パネル10Xの長手方向中央側に配置される凸部202~205の幅よりも小さく、または大きくしてもよい。
【0066】
本実施形態では、凸部201~206は、放射パネル10Xの外端までは設けられていない。つまり、放射パネル10Xの短手方向において、凸部201~206の長さは、放射パネル10Xの長さよりも短く構成されている。なお、凸部201~206の少なくとも一部は、放射パネル10Xの外端までは設けられていてもよい。
【0067】
放射パネル10Xの短手方向において、凸部201,206の長さは、凸部202~205の長さよりも短く構成されている。凸部201,206の長さは、例えば、凸部202~205の長さの50%以上、90%以下である。
【0068】
放射パネル10Xの上面視において、放射パネル10Xの面積に対する、凸部201~206が設けられている領域の面積の合計は、例えば、20%以上、80%以下であり、30%以上、70%以下であってもよい。この場合、放射パネル10Xの耐久性を確保しつつ、内部に十分な量の潜熱蓄熱材20を収容することができる。
【0069】
凸部201~206の高さは、例えば、10mm以上、100mm以下であり、10mm以上、50mm以下であってもよい。なお、凸部201~206の高さとは、放射パネル10Xの上面10Bのうち、凸部201~206が設けられていない領域から、凸部201~206の頂部までの、放射パネル10Xの厚み方向に沿った長さを指す。
【0070】
6つ凸部201~206の中央部には、放射パネル10Xの短手方向に沿って延びる溝210がそれぞれ設けられている。つまり、溝210は、放射パネル10Xの長手方向において等間隔に配置されている。
【0071】
溝210は、各凸部201~206の延伸方向の全域にわたって設けられている。つまり、溝210は、放射パネル10Xの短手方向に沿って延びている。詳しくは後述するが、空調システム1Xにおいて、溝210が放射パネル10Xの短手方向に沿って延びている複数の放射パネル10Xを、放射パネル10Xの短手方向に並設ことにより、溝210に保持される配管40X(
図12参照)の直線領域を、放射パネル10Xの短手方向に沿って配置できる。これにより、配管40X同士を接続する配管継手45X(
図12参照)の個数を減らすことができ、低コスト化および施工性の向上が図られる。
【0072】
溝210は、配管40X(
図12参照)を内部に収容し、保持する機能を有する。溝210の幅は、配管40Xの直径と略同一である。また、溝210は、溝210の底面が、放射パネル10Xの上面10Bのうち、凸部201~206が設けられていない領域の高さと略同一となる深さを有することが好ましい。つまり、溝210の底面と、放射パネル10Xの上面10Bのうち凸部201~206が設けられていない領域とは、同一平面上に位置している。
【0073】
図9に示すように、本実施形態では、溝210は、断面視U字型である。なお、溝210の形状は、配管40Xを保持可能であれば特に限定されない。例えば、溝210は、深さ方向にわたって均一な幅を有する形状であってもよい。
【0074】
図7および
図8に示すように、放射パネル10Xの上面10Bには、放射パネル10Xの外縁に向かって下面10A側に傾斜する傾斜領域220が設けられている。本実施形態では、傾斜領域220は、放射パネル10Xの長手方向の一端にのみ設けられている。なお、傾斜領域220は、放射パネル10Xの長手方向の両端に設けられてもよい。また、傾斜領域220は、放射パネル10Xの短手方向の一端または両端に設けられてもよい。
【0075】
傾斜領域220の傾斜角度は、例えば、下面10A(水平面)に対して、10°以上、45°以下である。詳しくは後述するが、傾斜領域220には、放射パネル10Xの内圧が所定以上となった場合に、放射パネル10Xの内圧を解放する内圧開放部230が設けられている。下面10Aに対する傾斜領域220の傾斜角度を10°以上、45°以下とすることで、内圧開放部230が作動した際、放射パネル10Xの内部に収容されている潜熱蓄熱材20が、内圧開放部230を介して多量に漏れ出すことを抑制できる。
【0076】
本実施形態では、放射パネル10Xの平面視において、傾斜領域220は、放射パネル10Xの短手方向の中央部に設けられている。放射パネル10Xの短手方向における、傾斜領域220の長さは、例えば、放射パネル10Xの長さの5%以上、80%以下であり、10%以上、50%以下であってもよい。
【0077】
放射パネル10Xの上面10Bの外縁には、放射パネル10Xの下面10Aの周縁よりも外側に張り出した張出部240,241が設けられている。張出部240,241の下面は、放射パネル10Xが天井ボード3(
図12参照)の間に配置された際に、天井ボード3の上面や図示しない桟と重なり、係合可能とされている。これにより、放射パネル10Xが天井ボード3や桟に支持され、放射パネル10Xが天井ボード3の隙間から落下することが防止される。
【0078】
張出部240,241の形状、大きさは、放射パネル10Xの大きさ、重量や、天井ボード3の形状に合わせて適宜設定可能である。本実施形態では、張出部240,241は、放射パネル10Xの長手方向両端にそれぞれ設けられ、放射パネル10Xの短手方向に沿って延伸している。また、放射パネル10Xの短手方向において、張出部240の中央部には、傾斜領域220が配置されている。つまり、張出部240は、傾斜領域220により分断されている。
【0079】
放射パネル10Xの下面10Aには、放射パネル10Xの内部側に向かって凹んだ凹部250が複数設けられている。凹部250を設けることで、放射パネル10Xの耐圧強度が向上する。その結果、放射パネル10X内部の潜熱蓄熱材20の相変化に伴い、内圧が変化した場合であっても、放射パネル10Xの変形を抑制できる。
【0080】
本実施形態では、凹部250は、溝210と重なる位置に設けられた第1凹部251と、凸部201~206が設けられていない位置に設けられた第2凹部252と、角部に設けられた2つの外側凹部253とに分類される。詳しくは後述するが、外側凹部253には、放射パネル10Xが天井ボード3から落下することを防止するための落下防止機構が設けられている。
【0081】
第1凹部251と第2凹部252とは、放射パネル10Xの長手方向において互いに交互に配置されている。また、第2凹部252は、放射パネル10Xの長手方向において、隣り合う第1凹部251の中間の位置に配置されている。本実施形態では、3つの第1凹部251、または3つの第2凹部252が、放射パネル10Xの短手方向に沿って、所定の間隔を空けて配置されている。
【0082】
第1凹部251と第2凹部252とは、千鳥状に配置されている。第1凹部251と第2凹部252とを千鳥状に配置することで、放射パネル10Xの耐圧強度をより向上させることができる。
【0083】
第1凹部251および第2凹部252は、平面視円形状を有し、放射パネル10Xの内部側に向かって凹むようにして設けられている。なお、第1凹部251および第2凹部252は、平面視矩形形状を有していてもよい。また、本実施形態では、第1凹部251および第2凹部252は、同一形状を有する。
【0084】
第1凹部251および第2凹部252の壁面は、放射パネル10Xの内側にいくにつれて、凹部250の径が次第に小さくなるように傾斜している。なお、第1凹部251および第2凹部252の個数、大きさは、放射パネル10Xの大きさ、重量に応じて適宜設定可能である。
【0085】
第1凹部251は、溝210の底面に当接し、第2凹部252は、放射パネル10Xの上面10Bに当接していることが好ましい。この場合、放射パネル10Xの耐圧強度がより向上する。
【0086】
なお、本実施形態では、放射パネル10Xの下面10Aにのみ凹部250を設けているが、放射パネル10Xの下面10Aに加えて、上面10Bに凹部250を設けてもよい。その場合、放射パネル10Xの平面視において、放射パネル10Xの上面10Bに設けられた凹部250を、放射パネル10Xの下面10Aに設けられた凹部250と重なる位置に設けてもよい。
【0087】
次に、
図10をさらに参照しながら、放射パネル10Xに設けられている内圧開放部230について詳説する。
図10は、
図8のDD線断面図であって、内圧開放部230の近傍を拡大して示す図である。
【0088】
図7および
図10に示すように、放射パネル10Xの傾斜領域220には、放射パネル10Xの内圧が所定以上となった場合に、放射パネル10Xの内圧を解放する内圧開放部230が設けられている。
【0089】
本実施形態では、内圧開放部230は、傾斜領域220に設けられた貫通孔231と、貫通孔231を封止する封止栓232とで構成されている。内圧開放部230は、放射パネル10Xの内圧が所定以上となった場合、封止栓232が貫通孔231から外れることにより、放射パネル10Xの内圧を解放する。
【0090】
貫通孔231は、平面視円形形状を有する。貫通孔231の大きさは、放射パネル10Xの大きさ等に応じて適宜設定可能であるが、例えば、10mm以上、50mm以下の直径を有する。貫通孔231は、放射パネル10Xの内部に潜熱蓄熱材20を流入させるための注液口としても機能する。
【0091】
封止栓232は、シリコンゴム等の弾性部材から構成されている。封止栓232の強度、形状により、内圧開放部230を作動させる内圧を調整できる。例えば、封止栓232の強度を低下させることにより、封止栓232が変形し易くなるため、より低い内圧であっても、内圧開放部230を作動させることができる。
【0092】
本実施形態では、封止栓232は、円筒形状の筒部233と、筒部233の軸方向両側にそれぞれ設けられ、筒部233よりも外径の大きい拡径部234とを有する。封止栓232を貫通孔231に取り付けた際、拡径部234の一方は、放射パネル10Xの内部に配置され、拡径部234の他方は、放射パネル10Xの外側に配置される。なお、封止栓232は、拡径部234を有していなくてよい。
【0093】
拡径部234の外径は、例えば、筒部233の外径の1.1倍以上、2.0倍以下の大きさである。拡径部234の外径を大きくすることで、封止栓232が貫通孔231から外れにくくなる。
【0094】
なお、本実施形態では、内圧開放部230は、貫通孔231と、貫通孔231を封止する封止栓232により構成されているが、内圧開放部230の構成は、建築部材の内圧が所定以上となった場合に、内圧を解放可能であればこれに限定されない。例えば、内圧開放部230は、他の部分よりも薄肉に構成された薄肉部であってもよい。当該薄肉部は、内圧が所定以上となった場合に変形または破断する易変形部として機能し、当該薄肉部が変形または破断することにより、内圧が解放される。また、内圧開放部230は、ブリーザキャップのように液体は漏洩しないが通気が可能な弁により構成されていてもよい。
【0095】
次に、
図11をさらに参照しながら、放射パネル10Xの落下防止機構について説明する。
図11は、
図8のEE線断面図であり、放射パネル10Xの落下防止機構としての留め具260が設けられている領域の断面図である。
【0096】
図8および
図11に示すように、放射パネル10Xの角部の下面10Aには、外側凹部253が設けられている。本実施形態では、外側凹部253は、放射パネル10Xの4つの角部のうち、短手方向一方側の2つの角部にのみ設けられている。なお、外側凹部253は、放射パネル10Xの4つの角部の下面10Aにそれぞれ設けられていてもよい。
【0097】
図11に示すように、外側凹部253の底面253Aの中央部には、放射パネル10Xの上側空間と下側空間とを連通する開口部254が設けられている。開口部254には、後述するワイヤ261が通過する。開口部254は、例えば、平面視円形形状を有し、ワイヤ261の外径よりも一回り大きい外径を有する。
【0098】
図11に示すように、外側凹部253の内部には、留め具260が収容されている。留め具260は、天井裏空間に一端が固定されたワイヤ261の他端に接続されている。外側凹部253の内部に留め具260を配置することで、放射パネル10Xは留め具260により支持されるため、放射パネル10Xが天井ボード3から落下することを防止できる。
【0099】
留め具260は、例えば、円板形状を有する。留め具260の下面と、放射パネル10Xの下面10Aとは、同一平面上に位置するように設けられていることが好ましい。これにより、居室2内部から天井面を見上げた際、放射パネル10Xと留め具260との境界が目立ちにくくなり、意匠性が向上する。
【0100】
留め具260は、鉄等を主成分とする金属で構成されていてもよいし、樹脂で構成されていてもよい。
【0101】
次に、
図12を参照しながら、第2実施形態の空調システム1Xにおける放射パネル10Xの配置について説明する。
図12は、空調システム1Xを構成する放射パネル10Xの配置を模式的に示す図であり、放射パネル10Xを上方から見た平面図である。なお、
図12では、4つの放射パネル10Xが配置されている様子を図示している。
【0102】
図12に示すように、配管40Xの一部は、放射パネル10Xの上面10Bに保持されている。より詳細には、配管40Xの一部は、放射パネル10Xの短手方向に沿って放射パネル10Xの上面10Bに形成された溝110(
図7参照)に収容、つまり挿入され、保持されている。配管40Xの直径は、放射パネル10Xの上面10Bに形成された溝110の幅と略同一である。
【0103】
図12に示す例では、配管40Xは、2つの配管41X,42Xを含む。配管41Xは、2つの放射パネル11X,12Xに配置され、配管42Xは、2つの放射パネル13X,14Xに配置されている。そして、配管41Xと配管42Xとは、配管継手45Xで接続されている。
【0104】
また、
図12に示すように、2つの配管41X,42Xは、放射パネル10Xの上面10Bを蛇行するように配置されている。放射パネル10Xの上面10Bにおいて、配管40Xを蛇行して配置することで、配管40Xと放射パネル10Xの上面10Bとが接する面積を大きくすることができる。これにより、配管40Xを介して、熱媒と放射パネル10Xとの間で熱交換を効率よく行うことができる。
【0105】
2つの配管41X,42Xは、複数の直線領域と複数の湾曲領域とを有する。上記の通り、放射パネル10Xは、放射パネル10Xの短手方向に沿って延びる6つの溝210を有している。そのため、配管41X,42Xの直線領域は、放射パネル10Xの短手方向に沿って配置されている。
【0106】
一般に、配管40Xが、天井に設けられたメインバーやメインクロスバーを跨ぐ際に、配管40X同士を接合する配管継手45Xが必要となる。
図12に示すように、配管40Xの直線領域を放射パネル10Xの短手方向に沿って配置することにより、配管40Xが天井に設けられたメインバーやメインクロスバーを跨ぐ回数が減り、配管継手45Xの個数を削減できる。その結果、空調システム1Xの低コスト化や、施工性の向上を実現できる。
【0107】
また、配管40Xが、天井に設けられたメインバーやメインクロスバーを跨ぐ際、メインバーやメインクロスバーの近傍において、配管40Xがメインバーやメインクロスバーの高さ分だけ浮き上がる。これにより、配管40Xと放射パネル10Xとが接しない領域が生じ、放射パネル10Xの内部の潜熱蓄熱材20を効率よく冷却できない場合がある。
図12に示すように、配管40Xの直線領域を放射パネル10Xの短手方向に沿って配置することにより、配管40Xと放射パネル10Xとが接する面積を大きくでき、配管40Xを介して、熱媒と放射パネル10Xとの間で熱交換を効率よく行うことができる。
【符号の説明】
【0108】
1,1X 空調システム、2 居室、3 天井ボード、3B 下面、4 上部躯体、4B 下面、10,10X,11,11X,12,12X,13,13X,14,14X 放射パネル、10A 上面、10B 下面、20 潜熱蓄熱材、30 断熱材、40,40X,41,41X,42,42X,43,44 配管、45,45X,46,47 配管継手、50 循環装置、101,102,103 溝、111,112,113,114 凸部、115 開口部、121 第1領域、122 第2領域、131,132,133 張出部、140 第1凹部、150 第2凹部、160 第3凹部、201,202,203,204,205,206 凸部、210 溝、220 傾斜領域、230 内圧開放部、231 貫通孔、232 封止栓、233 筒部、234 拡径部、240,241 張出部、250 凹部、251 第1凹部、252 第2凹部、253 外側凹部、253A 底面、254 開口部、260 留め具、261 ワイヤ