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特開2024-173665遮水シート及び遮水シートの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173665
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】遮水シート及び遮水シートの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20241205BHJP
   E04D 5/00 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
C08J5/18 CES
E04D5/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024048474
(22)【出願日】2024-03-25
(31)【優先権主張番号】P 2023089434
(32)【優先日】2023-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000108719
【氏名又は名称】タキロンシーアイ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000207562
【氏名又は名称】タキロンシーアイシビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106404
【弁理士】
【氏名又は名称】江森 健二
(74)【代理人】
【識別番号】100112977
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 有子
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 春花
(72)【発明者】
【氏名】高原 源太朗
(72)【発明者】
【氏名】舩田 悠太
【テーマコード(参考)】
4F071
【Fターム(参考)】
4F071AA18
4F071AA19
4F071AA82
4F071AA84
4F071AA88
4F071AB03
4F071AE09
4F071AF08Y
4F071AF09Y
4F071AF15Y
4F071AF20Y
4F071AH19
4F071BA01
4F071BB06
4F071BC01
4F071BC12
(57)【要約】
【課題】石油由来の第1のポリオレフィン樹脂と、植物由来の第2のポリオレフィン樹脂と、を含み、環境特性及び引張強さ等の機械的特性に優れる遮水シート、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】(A)成分として、石油由来のエチレン単位を含む第1のポリオレフィン樹脂と、(B)成分として、植物由来のエチレン単位を含む第2のポリオレフィン樹脂と、を含むオレフィン樹脂組成物に由来した遮水シート等であって、オレフィン樹脂組成物のバイオマス度を5~40%の範囲内の値とし、かつ、JIS K6251に準拠してなる引張強さを2800N/cm2以上の値とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)成分として、石油由来のエチレン単位を含む第1のポリオレフィン樹脂と、(B)成分として、植物由来のエチレン単位を含む第2のポリオレフィン樹脂と、を含むオレフィン樹脂組成物に由来した遮水シートであって、
ASTM D6866に準拠してなる、前記オレフィン樹脂組成物のバイオマス度を5~40%の範囲内の値とし、かつ、JIS K6251:2017に準拠してなる引張強さを2800N/cm2以上の値とすることを特徴とする遮水シート。
【請求項2】
JIS K7127:1999に準拠して測定した1%割線弾性係数を、30~190N/mm2以下の値とすることを特徴とする請求項1に記載の遮水シート。
【請求項3】
前記オレフィン樹脂組成物の全体量を100重量%としたときに、(C)成分として、補強材料を含み、当該補強材料の配合量を、0.1~30重量%の範囲内の値とすることを特徴とする請求項1又は2に記載の遮水シート。
【請求項4】
前記(A)成分が、石油由来のエチレンと、炭素数3~12のα-オレフィンと、の共重合体であることを特徴とする請求項1又は2に記載の遮水シート。
【請求項5】
前記(B)成分が、植物由来のエチレンと、炭素数3~12のα-オレフィンと、の共重合体であることを特徴とする請求項1又は2に記載の遮水シート。
【請求項6】
厚さを0.5~30mmの範囲内の値とすることを特徴とする請求項1又は2に記載の遮水シート。
【請求項7】
下記工程(1)~(2)を含むことを特徴とする遮水シートの製造方法。
工程(1):(A)成分として、石油由来のエチレン単位を含む第1のポリオレフィン樹脂と、(B)成分として、植物由来のエチレン単位を含む第2のポリオレフィン樹脂と、を含むオレフィン樹脂組成物を混合し、ASTM D6866に準拠してなるバイオマス度を5~40%の範囲内の値とする工程
工程(2):前記オレフィン樹脂組成物に由来してなる遮水シートを形成し、当該遮水シートの、JIS K6251:2017に準拠してなる引張強さを2800N/cm2以上の値とする工程
【請求項8】
前記工程(1)において、前記オレフィン樹脂組成物の全体量を100重量%としたときに、(C)成分として、補強材料を含み、当該補強材料の配合量を、0.1~30重量%の範囲内の値とすることを特徴とする請求項7に記載の遮水シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遮水シート及び遮水シートの製造方法に関する。
より詳しくは、環境特性(CO2排出量の低減等)に優れるともに、引張強さ等の機械的特性にも優れた遮水シート(土木用シート等と称する場合がある。)、及び、そのような遮水シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、廃棄物処分場(産業廃棄物処分場や一般廃棄物処分場等を含む。) の造成地や貯水池、或いは、その造成現場等において、降雨や散水によって廃棄物から出る浸出水(汚水)が処分場外の土中に移行するのを遮断するため、所定の遮水施工がなされている。そして、このような廃棄物処分場では、一般的に、遮水施工をしたのちに、廃棄物が収容される。
又、ビルの屋上や家屋の屋根上に、雨水の浸透防止のために、漏水に伴う、室内設備等に悪影響を与えることから、それぞれ所定の遮水施工がなされている。
このような遮水施工のための遮水シートは、廃棄物等による引込荷重など処分場内で発生すると想定される引張応力に対して強く、損傷が起こりにくいことが求められる。
【0003】
例えば、熱融着性、引張強さに優れ、かつ下地形状追随性が比較的良好なことから、
特定の高圧法低密度ポリエチレン又は/及び低圧法直鎖状低密度ポリエチレンを基体とし、これに特定の低圧法直鎖状超低密度ポリエチレン及びエチレン-酢酸ビニル共重合体を加えた材料を用いて成形されるシートが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
より具体的には、(A)メルトフローレートが0.1~10g/10分(190℃)の高圧法低密度ポリエチレン又は/及び低圧法直鎖状低密度ポリエチレン100重量部に対して、(B)密度0.890~0.914g/cm3 の直鎖状超低密度ポリエチレンを2~50重量部と、(C)メルトフローレート0.8~40g/10分(190℃)であって、酢酸ビニル単位10~40重量%のエチレン-酢酸ビニル共重合体1~30重量部と、を配合して成る遮水シートである。
【0004】
又、所定のエチレン-α-オレフィン共重合体の密度、メルトインデックス、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比を制限したうえに、無機フィラーを、1~20重量%含有してなるポリオレフィン系土木用遮水シートが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
より具体的には、メタロセン触媒を用いて重合してなる、(a)エチレンと、炭素原子数3~12のα-オレフィンとの共重合体であって、(b)密度が0.86g/cm3~0.88g/cm3、(c)メルトインデックスが0.5~5g/分、かつ(d)重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比が1.5~5であるエチレン-α-オレフィン共重合体に、平均粒径が1~20μmの無機フィラーを、1~20重量%含有してなるポリオレフィン系土木用遮水シートである。
【0005】
更に、硫酸バリウムと、他の無機化合物及び金属粉から選ばれる1種以上を所定量含有し、シートの1%割線弾性係数を制限し、かつ、密度、メルトフローレート、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比を制限したエチレン-α-オレフィン共重合体を所定量含有する合成樹脂製土木用シートが提案されている(例えば、特許文献3参照)。
より具体的には、硫酸バリウムと、他の無機化合物及び金属粉から選ばれる1種以上とを下記(a)の重量比で15~50重量%含有し、かつ下記(b)の要件を満たす合成樹脂製土木用シートであって、該合成樹脂がメタロセン触媒を用いて重合して得られる、(a)エチレンと炭素原子数3~12のα-オレフィンとの共重合体であって、(b)密度が0.86~0.94g/cm3であり、(c)メルトフローレート(MFR)が0.5~5g/10分、(d)重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が1.5~5であるエチレン-α-オレフィン共重合体を1~99重量%含有する合成樹脂製土木用シートである。
(a)硫酸バリウム:他の無機化合物及び金属粉から選ばれる1種以上=100:0~50:50
(b)シートの1%割線弾性係数が30~200MPaである
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8-143723号公報(特許請求の範囲等)
【特許文献2】特開平9-157456号公報(特許請求の範囲等)
【特許文献3】特許第4185375号公報(特許請求の範囲等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一方、近年、環境配慮型製品が求められており、環境負荷を低減する製品が望まれている。
しかしながら、特許文献1~3の遮水シート等は、それぞれ、石油由来のオレフィン樹脂のみから構成されていることから、CO2排出量の低減という環境特性を満足することができなかった。
又、石油由来のオレフィン樹脂の使用量によるが、そればかり使用した場合、資源の枯渇化が促進されるといった問題を引き起こしやすいという懸念があった。
この問題を解決するために、包装業界などでは、オレフィン樹脂として、植物由来のオレフィンを用いることが検討されている。
しかしながら、植物由来のオレフィンは、石油由来のオレフィンよりも引張強さなどの機械的強度が劣るため、植物由来のオレフィンを遮水シートの材料として用いる場合、石油由来オレフィンを用いた従来の製品よりも機械的特性が低下し、遮水シートに必要な耐久性を満たさないという懸念があった。
【0008】
そこで、発明者らは、鋭意研究し、石油由来のエチレン単位を有する第1のポリオレフィン樹脂と、植物由来のエチレン単位を有する第2のポリオレフィン樹脂と、を含むとともに、バイオマス度(植物度と称する場合もある。)が規定されたオレフィン樹脂組成物に由来した遮水シートを形成し、かつ、その引張強さ等を規定することによって、環境特性(CO2排出量の低減)と、引張強さ等の機械的特性という特性を、それぞれ両立させて満足することを見出し、本発明を完成させたものである。
すなわち、本発明は、少なくとも石油由来の第1のポリオレフィン樹脂と、植物由来の第2のポリオレフィン樹脂と、を含み、環境特性及び引張強さ等の機械的特性に優れた遮水シート、及びそのような遮水シートの効率的な製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、(A)成分として、石油由来のエチレン単位を含む第1のポリオレフィン樹脂と、(B)成分として、植物由来のエチレン単位を含む第2のポリオレフィン樹脂と、を含むオレフィン樹脂組成物に由来した遮水シートであって、ASTM D6866に準拠してなる、オレフィン樹脂組成物のバイオマス度を5~40%の範囲内の値とし、かつ、JIS K6251:2017に準拠してなる引張強さを2800N/cm2以上の値とすることを特徴とする遮水シートが提供され、上述した問題を解決することができる。
すなわち、遮水シートにおいて、環境特性(CO2排出量の低減)及び引張強さ等の機械的特性に優れるともに、遮水性や取扱性等にも優れた遮水シートを提供することができる。
【0010】
又、本発明の遮水シートを構成するに当たり、JIS K7127:1999に準拠して測定した応力-ひずみ曲線において、ひずみが1%時の応力値を、断面積及び歪みで除した値として算出した1%割線弾性係数を30~190N/mm2の範囲内の値とすることが好ましい。
このように構成することによって、機械的特性に優れるともに、ひいては、遮水シートの引張強さ及び斜面に設置した際にかかる遮水シートの張力を所定範囲に精度良く調整することが容易となる。
【0011】
又、本発明の遮水シートを構成するに当たり、オレフィン樹脂組成物の全体量を100重量%としたときに、(C)成分として、補強材料を含み、当該補強材料の配合量を、0.1~30重量%の範囲内の値とすることが好ましい。
このように構成することによって、遮水シートの耐候性や耐久性を、著しく向上させることができ、ひいては、長期間にわたって、所定範囲に調整することが容易となる。
【0012】
又、本発明の遮水シートを構成するに当たり、(A)成分が、石油由来のエチレンと、炭素数3~12のα-オレフィンと、の共重合体であることが好ましい。
このように構成することによって、(A)成分の、(B)成分に対する相溶性を向上させたり、更には得られる遮水シートの耐熱性や機械的特性等を所定範囲に精度良く調整したりすることが容易となる。
【0013】
又、本発明の遮水シートを構成するに当たり、(B)成分が、植物由来のエチレンと、炭素数3~12のα-オレフィンと、の共重合体であることが好ましい。
このように構成することによって、(B)成分の、(A)成分に対する相溶性を向上させたり、更には得られる遮水シートの耐熱性や機械的特性等を所定範囲に精度良く調整したりすることが容易となる。
【0014】
又、本発明の遮水シートを構成するに当たり、厚さを0.5~30mmの範囲内の値とすることが好ましい。
このように構成することによって、遮水シートとしての取り使いや製造等が容易になるばかりか、耐熱性や強度等の機械的特性を所定範囲に調整することが更に容易になる。
【0015】
又、本発明の別の態様は、下記工程(1)~(2)を含むことを特徴とする遮水シートの製造方法である。
工程(1):(A)成分として、石油由来のエチレン単位を含む第1のポリオレフィン樹脂と、(B)成分として、植物由来のエチレン単位を含む第2のポリオレフィン樹脂と、を含むオレフィン樹脂組成物を混合し、ASTM D6866に準拠してなるバイオマス度を5~40%の範囲内の値とする工程
工程(2):オレフィン樹脂組成物に由来してなる遮水シートを形成し、当該遮水シートの、JIS K6251:2017に準拠してなる引張強さを2800N/cm2以上の値とする工程
すなわち、所定の遮水シートの製造方法によって、環境特性(CO2排出量の低減)に優れるともに、引張強さ等の機械的特性に優れた遮水シートを効率的に提供することができる。
【0016】
又、本発明の遮水シートの製造方法を実施するに当たり、工程(1)において、オレフィン樹脂組成物の全体量を100重量%としたときに、(C)成分として、補強材料を含み、当該補強材料の配合量を、0.1~30重量%の範囲内の値とすることが好ましい。
このように実施することによって、遮水シートの耐候性や耐久性を、著しく向上させることができ、ひいては、長期間にわたって、所定範囲に調整することが容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1(a)は、遮水シートの、廃棄物処分場での使用態様を説明するために供する図であり、図1(b)は、遮水シートの接合状態を説明するために供する側面図であり、図1(c)は、遮水シートの接合状態を説明するために供する上面図であり、図1(d)は、実際の廃棄物処分場での使用態様を説明するために供する図(写真)である。
図2図2(a)~(d)は、遮水シートの構成(単層構造、同種及び異種の多層構造等)を説明するために供する図である。
図3図3は、遮水シートのバイオマス度(%)と、環境特性の評価(相対値)との関係を説明するために供する図である。
図4図4は、遮水シートのバイオマス度(%)と、引張強さとの関係を説明するために供する図である。
図5図5は、遮水シートのバイオマス度(%)と、接合部せん断強度との関係を説明するために供する図である。
図6図6は、オレフィン樹脂組成物中の(B)成分の配合量と、遮水シートのバイオマス度との関係を説明するために供する図である。
図7図7は、遮水シートのバイオマス度(%)と、遮水性の評価(相対値)との関係を説明するために供する図である。
図8図8(a)は、遮水シートのバイオマス度(%)と、遮水シートの1%割線弾性係数との関係を説明するために供する図であり、図8(b)は、遮水シートの1%割線弾性係数と、引張強さとの関係を説明するために供する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[第1の実施形態]
第1の実施形態は、(A)成分として、石油由来のエチレン単位を含む第1のポリオレフィン樹脂と、(B)成分として、植物由来のエチレン単位を含む第2のポリオレフィン樹脂と、を含むオレフィン樹脂組成物に由来した遮水シートであって、ASTM D6866に準拠してなる、オレフィン樹脂組成物のバイオマス度を5~40%の範囲内の値とし、かつ、JIS K6251:2017に準拠してなる引張強さを2800N/cm2以上の値とすることを特徴とする遮水シートである。
以下、適宜図面を参照しつつ、具体的に、第1の実施形態の遮水シートを説明する。
【0019】
1.遮水シートの基本構成
遮水シートの基本構成としては、図1(a)に示すように、廃棄物処分場の造成地14等の斜面の表面に、敷設する遮水シート10(長尺状の遮水シートをロール状に席巻してなる樹脂シートも含む。以下、同様である。)である。
かかる遮水シートは、用途に応じて、図2(a)~(d)のような構成を採用している。
そして、通常、かかる遮水シートが敷設された廃棄物処分場の造成地14において、溜まる水は、排水管を通じて場外に排水される。
【0020】
一方、遮水シート10は、廃棄物処分場の造成地14に直接的又は間接的に敷設されて、廃棄物12から流れ出す水(汚染水)が土中に染み出さないようにし、敷設面に対する遮水効果を、長期間に渡って発揮できる、所定オレフィン樹脂組成物に由来した樹脂シートである。
そして、かかる遮水シートは、(A)成分として、石油由来のエチレン単位を含む第1のポリオレフィン樹脂と、(B)成分として、植物由来のエチレン単位を含む第2のポリオレフィン樹脂と、を含むオレフィン樹脂組成物に由来し、遮水性や環境特性に優れるとともに、所定の引張強さ等の機械的特性を有することを基本構成とする。
【0021】
2.オレフィン樹脂組成物
遮水シートを構成するオレフィン樹脂組成物は、必須構成成分として、(A)成分として、石油由来のエチレン単位を含む第1のポリオレフィン樹脂と、(B)成分として、植物由来のエチレン単位を含む第2のポリオレフィン樹脂と、をそれぞれ含んでなる樹脂組成物である。
すなわち、所定のオレフィン樹脂組成物を用いるのは、所定の機械的特性や耐久性等を発揮できるためである。
そして、(A)成分として、石油由来のエチレン単位を含む第1のポリオレフィン樹脂のみでは、環境特性を全く考慮していないため、それを考慮してなる植物由来のエチレン単位を含む第2のポリオレフィン樹脂を配合し、かつ、両者のバランスによって、所定の機械的特性や耐久性等を維持せんとするためである。
【0022】
(1)(A)成分
1)種類
(A)成分を構成する、石油由来のエチレン単位を構成するモノマーの種類は、所定触媒(チーグラーナッタ触媒や、メタロセン触媒等)を用いて、少なくともエチレン単位を含む第1のポリオレフィン樹脂が重合して得られるエチレンモノマーであれば特に制限されるものではない。
又、(A)成分は、後述する(B)成分と異なり、植物を原料とするエチレン単位を実質的に含まない、石油由来樹脂である。
又、(A)成分を構成する、石油由来のエチレン単位を構成するモノマーの種類として、エチレンモノマーと共重合する、炭素数3~12のα-オレフィンを共重合モノマーとして配合することが好ましい。
この理由は、(A)成分をエチレン系共重合体として、かかる(A)成分と、(B)成分との相溶性を向上させたり、(A)成分の各種機械的特性や、熱特性、或いは、重合性等についても、向上できたりするためである。
従って、このような、炭素数3~12のα-オレフィンとして、プロピレン、1-ブテン、イソブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、2-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン等の単独又は二つ以上の組み合わせを配合することが好ましい。
【0023】
2)バイオマス度
(A)成分を構成する第1のポリオレフィン樹脂のバイオマス度は、基本的に、C12の同位体であるC14を含んでいないことから、実質的に0%である。
但し、(B)成分との相溶性等が更に良好になることから、(A)成分としての第1のポリオレフィン樹脂のバイオマス度は、1%以下であることがより好ましく、0.1%以下であることが更に好ましい。
なお、第1のポリオレフィン樹脂のバイオマス度は、後述する第2のポリオレフィン樹脂等のバイオマス度と同様に、ASTM D6866に準拠して測定することができる。
【0024】
3)配合量
(A)成分を構成する第1のポリオレフィン樹脂の配合量を、併用する(B)成分の配合量も考慮して、遮水シートを構成するオレフィン樹脂組成物のバイオマス度が5~40%の範囲内の値となるように定めることが好ましい。
この理由は、かかるバイオマス度が、5%未満の値になったり、逆に、40%を超えた値になると、引張強さ等の機械的特性と、環境特性と、を両立することが難しくなる場合があるためである。
従って、バイオマス度が7~30%の範囲内の値となるように定めることがより好ましく、8~20%の範囲内の値となるように定めることが更に好ましい。
より具体的には、かかるバイオマス度を調整すべく、第1のポリオレフィン樹脂の配合量/第2のポリオレフィン樹脂の配合量の比率を、重量換算で、95/5~60/40の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる第1のポリオレフィン樹脂の配合量/第2のポリオレフィン樹脂の配合量の比率が、95/5を超えた値になると、バイオマス度が低いため、環境負荷の低減が不十分になる場合があるためである。
一方、かかる第1のポリオレフィン樹脂の配合量/第2のポリオレフィン樹脂の配合量の比率が、60/40未満の値になると、引張強さが小さく、処分場内の遮水シートにかかる応力に対する耐久性が低くなり、損傷が起こりやすい場合があるためである。
従って、オレフィン樹脂組成物の全体量を100重量%としたときに、第1のポリオレフィン樹脂の配合量を、60~95重量%とすることが好ましく、70~93重量%とすることがより好ましく、75~90重量%とすることが更に好ましい。
なお、後述する第2のポリオレフィンのバイオマス度は、使用するバイオマス由来ペレットの純度によって多少変動する。そのため、第1のポリオレフィン樹脂の配合量と第2のポリオレフィン樹脂の配合量は、使用するバイオマス由来ペレットの純度に準じて、遮水シートを構成するオレフィン樹脂組成物が所望のバイオマス度になるように設定することが好ましい。
【0025】
4)重量平均分子量/メルトフローレート
(A)成分を構成する第1のポリオレフィン樹脂において、その重量平均分子量は特に限定されず、所望の物性に合わせて適宜変更することができる。
又、遮水シートの機械的特性、耐久性の関係から、その重量平均分子量を、12万~20万の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる第1のポリオレフィン樹脂の重量平均分子量が12万未満の値になったり、逆に、20万を超えた値になると、第2のポリオレフィン樹脂との相溶性が低下し、第1の実施形態の遮水シートの遮水性、引張強さ等の機械的特性、耐久性等が著しく低下する場合があるためである。
従って、第1のポリオレフィン樹脂の配合量において、その重量平均分子量を、15万~19万の範囲内の値とすることがより好ましく、16万~18.5万の範囲内の値とすることが更に好ましい。
なお、明確化のために、第1のポリオレフィン樹脂の重量平均分子量を、後述する第2のポリオレフィン樹脂のそれよりも、小さい値とすることが好ましい。
【0026】
又、(A)成分を構成する第1のポリオレフィン樹脂において、JIS K7210:1999に準拠してなるメルトフローレート(MFR)を、190℃、2.16kg荷重の条件において、1~3g/10分の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる第1のポリオレフィン樹脂のメルトフローレートが、1g/10分未満の値では流動性が悪く、第2のポリオレフィン樹脂との相溶性が低下する場合があるためである。
又、かかる第1のポリオレフィン樹脂のメルトフローレートが、3g/10分を超えた値では、粘性が低すぎて成形しづらい場合があるためである。
従って、かかる第1のポリオレフィン樹脂のメルトフローレートを、1.3~2.8g/10分の範囲内の値とすることがより好ましく、1.5~2.5g/10分の範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0027】
5)密度
(A)成分を構成する第1のポリオレフィン樹脂において、その密度は特に限定されず、所望の物性に合わせて適宜変更することができるが、遮水シートの強度の観点から、通常0.88~0.94g/cm3の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる第1のポリオレフィン樹脂の密度が、0.88g/cm3未満の値又は、0.94g/cm3を超えた値になると、第2のポリオレフィン樹脂との相溶性が低下し、第1の実施形態の遮水シートの遮水性、引張強さ等の機械的特性、耐久性等が著しく低下する場合があるためである。
従って、第1のポリオレフィン樹脂において、その密度を、0.90~0.915g/cm3の範囲内の値とすることがより好ましく、0.905~0.912g/cm3の範囲内の値とすることが更に好ましい。
なお、明確化のために、第1のポリオレフィン樹脂の密度を、第2のポリオレフィン樹脂の密度よりも、大きい値とすることが好ましい。
【0028】
6)融点
(A)成分を構成する第1のポリオレフィン樹脂が、DSC(示差走査熱量計)等を用いて、結晶の融解ピークを示す場合、そのピーク値の温度に相当する融点を有していると判断される。
又、その融点は特に限定されず、所望の物性に合わせて適宜変更することができるが、通常、85~125℃の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる第1のポリオレフィン樹脂の融点が、85℃未満の値になったり、逆に、125℃を超えた値になると、オレフィン樹脂組成物の機械的特性等が著しく低下したり、第2のポリオレフィン樹脂との相溶性が低下したりする場合があるためである。
従って、第1のポリオレフィン樹脂において、その融点を、87~120℃の範囲内の値とすることがより好ましく、90~115℃の範囲内の値とすることがより好ましい。
なお、明確化のために、第1のポリオレフィン樹脂の融点を、第2のポリオレフィン樹脂の融点よりも、小さい値とすることが好ましい。
【0029】
又、(A)成分を構成する第1のポリオレフィン樹脂が、DSC等を用いて測定した融解エンタルピー(ΔH)を、90~130mJ/mgの範囲内の値とすることが好ましい。
更に言えば、(A)成分を構成する第1のポリオレフィン樹脂は、結晶化度の値を、30~50%の範囲内の値に制限することが好ましい。
そして、第1のポリオレフィン樹脂の融解エンタルピー(ΔH)や結晶化度を、第2のポリオレフィン樹脂のそれらの値よりも、小さくすることが好ましい。
【0030】
7)弾性率(1%割線弾性係数)
(A)成分を構成する第1のポリオレフィン樹脂の1%割線弾性係数(以下、単に、弾性率と称する場合がある。)は特に限定されず、所望の物性に合わせて適宜変更することができる。
又、オレフィン樹脂組成物の機械的特性や取扱性等の観点から、その1%割線弾性係数を、80~180N/mm2の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる第1のポリオレフィン樹脂の弾性率が、80N/mm2未満の値になったり、逆に、180N/mm2を超えた値になると、オレフィン樹脂組成物の機械的特性や取扱性等が著しく低下したり、第2のポリオレフィン樹脂との相溶性が低下したりする場合があるためである。
従って、第1のポリオレフィン樹脂において、その弾性率を、90~170N/mm2の範囲内の値とすることがより好ましく、100~120N/mm2の範囲内の値とすることが更に好ましい。
又、1%割線弾性係数は、実施例1に示すように、かかる第1のポリオレフィン樹脂を、所定方法によりフィルム化し、JIS K7127:1999に準拠して測定した応力-ひずみ曲線において、ひずみが1%時の応力値を、断面積及び歪みで除した値として算出した。
なお、より具体的な算出方法については、実施例1に示す。
【0031】
8)ヘイズ
又、(A)成分を構成する第1のポリオレフィン樹脂の透明性を示す指標であって、JIS K7136:2000に準拠してなるヘイズ値を0.5~15%の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる第1のポリオレフィン樹脂のヘイズが、0.5%未満の値になったり、逆に、15%を超えた値になると、オレフィン樹脂組成物の製造時の歩留まり、機械的特性、更には、取扱性等が著しく低下したり、併用する第2のポリオレフィン樹脂との相溶性が低下したりする場合があるためである。
従って、第1のポリオレフィン樹脂において、そのヘイズを、1~12%の範囲内の値とすることがより好ましく、3~10%の範囲内の値とすることが更に好ましい。
なお、明確化のために、第1のポリオレフィン樹脂のヘイズを、第2のポリオレフィン樹脂のヘイズよりも、大きい値とすることが好ましい。
【0032】
(2)(B)成分
1)種類
(B)成分は、植物を原料として得られるアルコールから製造されるエチレンモノマー(一部、オリゴマーを含む場合がある。以下、同様である。)に由来したオレフィン重合体であって、植物原料に由来するエチレン単位を含むことを意味する。
すなわち、(B)成分は、植物を原料としてなるエチレンモノマーを、配位-挿入重合等によって、所定特性を有する第2のポリオレフィン樹脂としてなる重合体である。
従って、(B)成分である第2のポリオレフィン樹脂として、LLDPE(共重合体を含む。)等の市販品を用いることもできる。
【0033】
そのような市販品としては、例えば、ブラスケムス社製の下記LLDPE、LDPE、HDPEが挙げられる。
より具体的には、SLL118(バイオマス度:87%、LLDPEであって、1ーブテンとの共重合体)、SLL118/21(バイオマス度:87%、LLDPEであって、1ーブテンとの共重合体)、SLL318(バイオマス度:87%、LLDPEであって、1ーブテンとの共重合体)、SLH118(バイオマス度:84%、LLDPE)、SLH218(バイオマス度:84%、LLDPEであって、1ーヘキセンとの共重合体)、SLH082/30AF(バイオマス度:84%、LLDPEであって、1ーヘキセンとの共重合体)、SBC818(バイオマス度:95%、LDPE)、SPB208(バイオマス度:95%、LDPE)、SEB853(バイオマス度:95%、LDPE)、SPB681(バイオマス度:95%、LDPE)、STN7006(バイオマス度:95%、LDPE)、SGF4960(バイオマス度:96%、HDPE)、SHC7260(バイオマス度:96%、HDPE)、SHD7255LSーL(バイオマス度:96%、HDPE)等の少なくとも一つが挙げられる。
【0034】
又、(B)成分を構成する第2のポリオレフィン樹脂は、ISCC PLUS認証などにより認証されたマスバランス方式を採用して製造したポリオレフィン樹脂であってもよい。
マスバランス方式によりバイオマス製品と割り当てたポリオレフィン樹脂は、石油化学工業における各種製品の製造、使用、廃棄全体を対象とすれば環境負荷低減に寄与しており、(B)成分を構成する第2のポリオレフィン樹脂に準じて使用することができる。
【0035】
又、(B)成分を構成する第2のポリオレフィン樹脂において、植物由来のエチレンモノマー成分と共重合する、炭素数3~12のα-オレフィンを、共重合成分として、配合することが好ましい。
この理由は、かかる共重合成分を配合することによって、(B)成分を構成する第2のポリオレフィン樹脂と、(A)成分との間の相溶性を向上させたり、或いは、(B)成分の各種機械的特性や、熱特性等についても、向上させたりできるためである。
従って、(A)成分に配合する、炭素数3~12のα-オレフィンと同様のモノマーが配合可能であるが、特に、(B)成分において、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン等の単独又は二つ以上の組み合わせを配合することが好ましい。
【0036】
2)バイオマス度
(B)成分を構成する第2のポリオレフィン樹脂のバイオマス度は、基本的に、環境配慮の観点から、80~100%の範囲内の値であることが好ましい。
但し、(A)成分との相溶性等が更に良好になることから、(B)成分を構成する第2のポリオレフィン樹脂のバイオマス度を、85~98%の範囲内の値とすることがより好ましく、90~96%の範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0037】
3)配合量
又、(B)成分を構成する第2のポリオレフィン樹脂の配合量を、併用する(A)成分を構成する第1のポリオレフィン樹脂の配合量を考慮して、遮水シートを構成するオレフィン樹脂組成物のバイオマス度が5~40%となるように定めることが好ましい。
この理由は、かかるバイオマス度が、5%未満の値になったり、逆に、40%を超えた値になると、引張強さ等の機械的特性と、環境特性と、を両立することが難しくなる場合があるためである。
従って、バイオマス度が7~30%の範囲内の値となるように定めることがより好ましく、8~20%の範囲内の値となるように定めることが更に好ましい。
より具体的には、第2のポリオレフィン樹脂の配合量/第1のポリオレフィン樹脂の配合量の比率を、例えば、重量換算で、5/95~40/60の範囲内の値とし、得られるオレフィン樹脂組成物のバイオマス度を所定範囲内の値に調整することが好ましい。
この理由は、かかる第2のポリオレフィン樹脂の配合量/第1のポリオレフィン樹脂の配合量の比率が、5/95未満の値になるとバイオマス度が低いため、環境負荷の低減が不十分になる場合があるためである。
一方、かかる第2のポリオレフィン樹脂の配合量/第1のポリオレフィン樹脂の配合量の比率が、40/60を超えた値になると、引張強さが小さく、処分場内の遮水シートにかかる応力に対する耐久性が低くなり、損傷が起こりやすい場合があるためである。
従って、オレフィン樹脂組成物の全体量を100重量%としたときに、第2のポリオレフィン樹脂の配合量を、5~40重量%とすることが好ましく、7~30重量%とすることがより好ましく、10~25重量%とすることが更に好ましい。
又、第2のポリオレフィンのバイオマス度は、使用するバイオマス由来ペレットの純度によって変動する場合がある。
そのため、第1のポリオレフィン樹脂の配合量と第2のポリオレフィン樹脂の配合量は、使用するバイオマス由来ペレットの純度に準じて、遮水シートを構成するオレフィン樹脂組成物が所望のバイオマス度になるように設定することが好ましい。
なお、遮水シートを構成するオレフィン樹脂組成物のバイオマス度が10%以上であれば有機資源協会のバイオマスマークを付与することができる。
【0038】
ここで、図3に言及し、(B)成分等を含んでなる遮水シートのバイオマス度(%)と、CO2排出量に基づく環境特性の評価(相対値)との関係を説明する。
すなわち、図3の横軸に、遮水シートのバイオマス度(%)が採って示してあり、縦軸に、CO2排出量をもとにした遮水シートの環境特性の評価の値が採って示してある。
又、かかるCO2排出量をもとにした環境特性は、実施例1に示す基準により評価し、◎を5点、〇を3点、△を1点、×を0点として、環境特性の評価の値(相対値)を算出したものである。
そして、図3中の特性曲線が示すように、遮水シートのバイオマス度(%)が0~40%の範囲では、バイオマス度(%)が増えるにつれて、遮水シートの環境特性の評価の値が、増加する傾向が見られている。
又、遮水シートのバイオマス度(%)が40%より大きい値の範囲では、バイオマス度(%)にかかわらず、環境特性の評価結果が、ほぼ変わらない傾向である。
よって、遮水シートのバイオマス度(%)を所定範囲内の値に制限することによって、遮水シートのCO2排出量を所定範囲内の値に調整することができる。
なお、後述するように、遮水シートのバイオマス度は、図4に示すように、遮水シートの引張強さと、図5に示すように、遮水シートの接合部せん断強度と、図6に示すように、オレフィン樹脂組成物中の(B)成分の配合量と、それぞれ所定の相関関係があることが判明している。
【0039】
4)重量平均分子量/メルトフローレート
(B)成分を構成する第2のポリオレフィン樹脂において、その重量平均分子量は特に限定されず、所望の物性に合わせて適宜変更することができるが、遮水シートの機械的特性、耐久性の関係から、通常、17万~25万の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる第2のポリオレフィン樹脂の重量平均分子量が17万未満の値になったり、逆に、25万を超えた値になると、第1のポリオレフィン樹脂との相溶性が低下し、得られる遮水シートの遮水性、引張強さ等の機械的特性、耐久性等が著しく低下する場合があるためである。
従って、第2のポリオレフィン樹脂の配合量において、その重量平均分子量を、18万~24万の範囲内の値とすることがより好ましく、19万~22万の範囲内の値とすることが更に好ましい。
なお、明確化のために、第2のポリオレフィン樹脂の重量平均分子量を、第1のポリオレフィン樹脂のそれよりも、大きい値とすることが好ましい。
【0040】
一方、(B)成分を構成する第2のポリオレフィン樹脂において、JIS K7210:1999に準拠してなるメルトフローレート(MFR)を、190℃、2.16kg荷重の条件において、1.8~2.7g/10分の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる第1のポリオレフィン樹脂のメルトフローレートが、1.8g/10分未満の値では流動性が悪く、第1のポリオレフィン樹脂との相溶性が低下する場合があるためである。
一方、かかる第1のポリオレフィン樹脂のメルトフローレートが、2.7g/10分を超えた値では、粘性が低すぎて成形しづらい場合があるためである。
従って、かかる第2のポリオレフィン樹脂のメルトフローレートを、2~2.6g/10分の範囲内の値とすることがより好ましく、2.1~2.5g/10分の範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0041】
5)密度
(B)成分を構成する第2のポリオレフィン樹脂において、その密度は特に限定されず、所望の物性に合わせて適宜変更することができるが、遮水シートの強度の観点から、通常、0.9~0.93g/cm3の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる第2のポリオレフィン樹脂の密度が、0.9g/cm3未満の値になったり、逆に、0.93g/cm3を超えた値になると、第1のポリオレフィン樹脂との相溶性が低下し、得られる遮水シートの遮水性、引張強さ等の機械的特性、耐久性等が著しく低下する場合があるためである。
従って、第2のポリオレフィン樹脂において、その密度を、0.905~0.925g/cm3の範囲内の値とすることがより好ましく、0.91~0.92g/cm3の範囲内の値とすることが更に好ましい。
なお、明確化のために、第2のポリオレフィン樹脂の密度を、第1のポリオレフィン樹脂の密度よりも、大きい値とすることが好ましい。
【0042】
6)融点
(B)成分を構成する第2のポリオレフィン樹脂が、DSC等を用いて、結晶の融解ピークを示す場合、そのピーク値の温度に相当する融点を有していると判断される。
又、その融点は特に限定されず、所望の物性に合わせて適宜変更することができるが、通常、95~135℃の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる第2のポリオレフィン樹脂の融点が、95℃未満の値になったり、135℃を超えた値になると、オレフィン樹脂組成物の機械的特性等が著しく低下したり、第1のポリオレフィン樹脂との相溶性が低下したりする場合があるためである。
従って、第2のポリオレフィン樹脂において、その融点を、105~132℃の範囲内の値とすることがより好ましく、120~130℃の範囲内の値とすることが更に好ましい。
なお、明確化のために、第2のポリオレフィン樹脂の融点を、第1のポリオレフィン樹脂のそれよりも、大きい値とすることが好ましい。
【0043】
又、(B)成分を構成する第2のポリオレフィン樹脂が、DSC等を用いて測定した融解エンタルピー(ΔH)を、110~150mJ/mgの範囲内の値とすることが好ましい。
更に言えば、(B)成分を構成する第2のポリオレフィン樹脂は、結晶化度の値を、35~50%の範囲内の値に制限することが好ましい。
そして、第2のポリオレフィン樹脂の融解エンタルピー(ΔH)や結晶化度を、第1のポリオレフィン樹脂のそれらの値よりも、大きくすることが好ましい。
【0044】
7)弾性率(1%割線弾性係数)
(B)成分を構成する第2のポリオレフィン樹脂の1%割線弾性係数は特に限定されず、所望の物性に合わせて適宜変更することができる。
又、オレフィン樹脂組成物の機械的特性や取扱性等の観点から、その1%割線弾性係数を、180~250N/mm2の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる第2のポリオレフィン樹脂の弾性率が、180N/mm2未満の値になったり、逆に、250N/mm2を超えた値になると、オレフィン樹脂組成物の機械的特性や取扱性等が著しく低下したり、併用する第1のポリオレフィン樹脂との相溶性が低下したりする場合があるためである。
従って、第2のポリオレフィン樹脂において、その弾性率を、185~230N/mm2の範囲内の値とすることがより好ましく、190~210N/mm2の範囲内の値とすることが更に好ましい。
なお、1%割線弾性係数は、上述したように、かかる第2のポリオレフィン樹脂を所定方法によりフィルム化し、JIS K7127:1999に準拠して得られる応力-ひずみ曲線から算出した。
【0045】
8)ヘイズ
又、(B)成分を構成する第2のポリオレフィン樹脂の透明性を示す指標であって、JIS K7136:2000に準拠してなるヘイズ値を0.5~15%の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる第2のポリオレフィン樹脂のヘイズが、0.5%未満の値になったり、逆に、15%を超えた値になると、オレフィン樹脂組成物の透明性や機械的特性等が著しく低下したり、併用する第1のポリオレフィン樹脂との相溶性が低下したりする場合があるためである。
従って、第2のポリオレフィン樹脂において、そのヘイズを、1~12%の範囲内の値とすることがより好ましく、2~10%の範囲内の値とすることが更に好ましい。
なお、明確化のために、第2のポリオレフィン樹脂のヘイズを、第1のポリオレフィン樹脂のヘイズよりも、小さい値とすることが好ましい。
【0046】
(3)(C)成分
1)種類
(C)成分は、補強材料(但し、典型例であるカーボンブラックやカーボン繊維等の炭素化合物と称する場合がある。)であって、当該補強材料を、第1のポリオレフィン樹脂及び第2のポリオレフィン樹脂の混合物であるポリオレフィン樹脂組成物に対して、配合することが好ましい。
従って、(C)成分の種類としては、優れた軽量性、経済性、取り扱い性、機械的強度、耐候性等を発揮しやすいことから、ポリビニルアルコール系合成繊維、ポリプロピレン繊維、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、レーヨン繊維、アクリル繊維、カーボン繊維等の少なくとも一つからなる炭素化合物の繊維が代表的である。又、ガラス繊維等の無機繊維も使用することが可能である。
又、優れた軽量性、経済性、混合分散性、機械的強度、耐候性等を発揮しやすいばかりか、多層化が容易なことから、カーボンナノチューブ、グラフェン、グラファイト、カーボンブラック(ファーネスカーボンブラック、アセチレンカーボンブラック)等の少なくとも一つからなる炭素化合物の粒子や粉体であることが好ましく、カーボンブラックであることが特に好ましい。
【0047】
2)配合量
オレフィン樹脂組成物の全体量を100重量%としたときに、(C)成分として、補強材料を配合し、当該補強材料の配合量を0.1~30重量%の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる補強材料の配合量が、0.1重量%未満の値になると、遮水シートにおける耐候性や強度の機械的特性等を向上させるという効果が得られない場合があるためである。
一方、かかる補強材料の配合量が、30重量%を超えると、得られる遮水シートの引張強さが著しく低下し、引張応力による耐久性が低くなる場合があるためである。
従って、かかる補強材料の配合量を0.5~15重量%の範囲内の値とすることがより好ましく、1~10重量%の範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0048】
3)平均粒径/平均繊維長等
又、補強材料が、カーボン繊維等の繊維である場合、その平均繊維径を3~500nmの範囲内の値とし、かつ、その平均繊維長さを1~1000μmの範囲内の値とすることが好ましい。
一方、補強材料が、カーボン粒子等の粒子や粒状である場合、その平均粒径を3~500nmの範囲内の値とすることが好ましく、10~300nmの範囲内の値とすることがより好ましく、20~150nmの範囲内の値とすることが更に好ましい。
なお、繊維の平均繊維径や平均長さ、或いは、粒子等の平均粒径は、JIS Z8901:2006に準拠して、電子顕微鏡写真から実測し、それを画像解析することによって、算出することができる。
【0049】
(4)添加剤
又、添加剤として、(A)成分や(B)成分以外の高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高圧法ポリエチレンやポリプロピレンなどの各種のポリオレフィン樹脂や、天然ゴム、合成ゴム、熱可塑性エラストマーなどの樹脂成分の他、粘着付与剤、架橋剤、炭酸カルシウム、タルク、シリカ、金属繊維などの各種フィラーや酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、難燃化剤、着色剤等を必要に応じて配合してもよい。
【0050】
そして、これらの添加剤を配合する場合、その配合量は、添加剤の種類にもよるものの、通常、オレフィン樹脂組成物を100重量%としたときに、0.1~20重量%の範囲内の値とすることが好ましく、0.5~10重量%の範囲内の値とすることがより好ましく、1~5重量%の範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0051】
(5)オレフィン樹脂組成物のバイオマス度
(A)成分と(B)成分を混合してなるオレフィン樹脂組成物のバイオマス度は、そのままオレフィン樹脂組成物を遮水シートとした場合は、遮水シートのバイオマス度となる。すなわち、ASTM D6866に準拠して、C14の加速器質量分析計(AMS)を用いて測定することができる。
そして、かかるオレフィン樹脂組成物のバイオマス度を5~40%の範囲内の値とすることを特徴とする。
この理由は、かかるオレフィン樹脂組成物のバイオマス度が、5%未満の値になると、環境特性(CO2削減)への配慮が少なくなって、環境特性への考慮が不十分となる場合があるためである。特に、遮水シートを構成するオレフィン樹脂組成物のバイオマス度が10%以上であれば有機資源協会のバイオマスマークを付与することができるため、オレフィン樹脂組成物のバイオマス度は10%以上であることが望まれる。
一方、かかるオレフィン樹脂組成物のバイオマス度が、40%を超えると、引張強さ等の機械的特性等が過度に低下する場合があるためである。
従って、かかるオレフィン樹脂組成物のバイオマス度を、7~30%の範囲内の値とすることがより好ましく、8~20%の範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0052】
(6)オレフィン樹脂組成物の熱特性
(A)成分と(B)成分を混合してなるオレフィン樹脂組成物の熱特性、例えば、結晶ピークを示す融点や結晶ピークの面積に相当する結晶エンタルピー等の値は、そのままオレフィン樹脂組成物を遮水シートとした場合、基本的に、遮水シートの熱特性と同一視することができる。
従って、かかるオレフィン樹脂組成物の熱特性については、遮水シートとして、後述する。
【0053】
(7)オレフィン樹脂組成物の機械的特性
(A)成分と(B)成分を混合してなるオレフィン樹脂組成物の機械的特性、例えば、弾性率や引張強さ等の値は、そのままオレフィン樹脂組成物を遮水シートとした場合、基本的に、遮水シートの機械的特性と同一視することができる。
従って、かかるオレフィン樹脂組成物の機械的特性については、遮水シートとして、後述する。
【0054】
(8)オレフィン樹脂組成物の流動特性
(A)成分と(B)成分を混合してなるオレフィン樹脂組成物の流動特性、例えば、メルトフローレートについては、そのままオレフィン樹脂組成物を遮水シートとした場合、基本的に、遮水シートのメルトフローレートと同一視することができる。
従って、かかるオレフィン樹脂組成物の流動特性については、遮水シートとして、後述する。
【0055】
5.遮水シートの特性
(1)基本構成
1)単層
遮水シート10は、図2(a)に示すように、所定の第1のオレフィン樹脂とともに、所定のバイオマス度を有する第2のオレフィン樹脂等を含む所定のオレフィン樹脂組成物に由来してなる樹脂シートであって、所定の機械的特性(引張強さ等)を有する限り、基本的に単層であっても良い。
このように単層構造の遮水シートであれば、廃棄物処分場での施工や、製造自体も、相対的に容易かつ安定的であるばかりか、所定の遮水性や、機械的特性(引張強さ等)の調整についても、容易となる。
なお、図2(a)は、所定の第1のオレフィン樹脂10b中に、補強材料10aを含有してなる遮水シート10の態様を示している。
【0056】
2)多層構造体
又、遮水シートは、図2(b)に示すように、所定のオレフィン樹脂組成物に由来してなる樹脂シートを、複数(10,10´)を準備し、それらを積層して含む同種多層構造体30であっても良い。
遮水シートは共押出成形や、熱ラミネート、もしくは、かかる遮水シートの基本構成としての樹脂層を、通常、2~50層の範囲となるように複数用意し、それらを直接的に熱プレスして多層構造体を構成したり、或いは、接着剤等を介して、間接的に積層してなる同種多層構造体とすることも好ましい。
このように多層構造体の遮水シートであれば、より幅広い用途に対応することができ、要求される各種特性を満足させやすくなる。
従って、複数の遮水シートを積層して、多層構造の遮水シートを構成する場合、積層数を、積層数を2~50枚の範囲内の値とすることが好ましく、3~20枚の範囲内の値とすることがより好ましく、4~10枚の範囲内の値とすることが更に好ましい。
なお、図2(b)は、所定の第1のオレフィン樹脂10b中に、補強材料を含有してなる単層の遮水シート10、10´を複数準備し、それらを積層してなる同種多層構造体30の態様を示している。
【0057】
又、図2(c)に示すように、本発明の補強材料含有遮水シート10とし、その片面に、補強材料非含有樹脂シート、或いは、着色剤(酸化チタンや、酸化亜鉛、或いは、その他の顔料)を含む異種遮水シート24を積層してなる、異種多層構造体32の態様も好ましい。
例えば上層を白色、下層を黒色とする遮水シートや、上層を非導電性、下層を導電性とする異種多層構造の遮水シートが挙げられる。
この理由は、遮水シート全体として、表面と、裏面が識別しやすくなるとともに、遮水シートが敷設後に損傷した場合、表面白層が削られ、裏面の黒色が出てくることによって、遮水シートの損傷をすぐに発見することができるためである。
このように異種材料からなる樹脂層を含む多層構造の遮水シートであれば、更に汎用性が拡大し、より幅広い用途に対応することができ、要求される各種特性を満足させやすくなる。
なお、図2(c)は、所定の第1のオレフィン樹脂10b中に、補強材料10aを含有してなる単層の遮水シート10と、所定の第1のオレフィン樹脂24bと、白色系の酸化チタンや酸化亜鉛等の顔料24aを含んでなる遮水シート24を準備し、それらを積層してなる、異種多層構造体32の態様を示している。
そして、言うまでもなく、異種遮水シート24の替わりに、他の樹脂層や、織布層、不織布層、金属層、セラミックス層、木材との積層体からなる多層構造体とすることも好ましい。
【0058】
更に、図2(d)には、中間層として、補強材料を含有してなる単層の遮水シート10と、その両面に、所定の第1のオレフィン樹脂と、酸化チタン等の顔料を含んでなる遮水シート24、24´をそれぞれ準備し、それらを積層してなる、サンドイッチ構造の多層構造体34の態様を示している。
その他、例えば、3層構造の遮水シートとし、中間層に、第1の実施形態の樹脂シートを用い、その表面側と、背面側に、それぞれ異種材料の樹脂シートを用い、サンドイッチ構造の遮水シートとすることも好ましい。
そして、言うまでもなく、遮水シート24、24´の一方あるいは、両方の替わりに、他の樹脂層や、織布層、不織布層、金属層、セラミックス層、木材との積層体からなる多層構造体とすることも好ましい。
【0059】
その上、廃棄物処分場の造成地等は、通常、広大な面積を有していることから、その広大な面積に対応させて、所定単位面積を有する遮水シートを、多数枚用意することが好ましい。
そして、図1(b)~(c)に示すように、自走式融着機又は手動式融着機、押出溶接機 (図示せず)を用いて、所定単位面積を有する遮水シート10及び10′の端部等に沿って、それらを一部重ねた状態で、接合部22及び22′等の複数箇所で熱溶着して接合して、所定の遮水性を発揮する、大面積の遮水シートとすることも好ましい。
【0060】
(2)引張強さ
遮水シートにつき、廃棄物最終処分場整備の計画・設計・管理要領(2010改訂版、全国都市清掃会議、以下、管理要領と称する場合がある。)に基づき、JIS K6251:2017に準拠してなる引張強さ(単位:N/cm)を、遮水シートの厚さで除した、材質由来の引張強さを2800N/cm2以上の値とすることを特徴とする。
この理由は、かかる遮水シートの引張強さが、2800N/cm2未満の値になると、引張応力に対する耐久性が低く、遮水シートの損傷が起こりやすいためである。
従って、遮水シートの引張強さが、2800N/cm2以上となるように、同種の材料から基本的に構成されてなる遮水シートの引張強さの調整層を、片面又は両面に設けることも好ましい。
又、かかる遮水シートの引張強さが、933N/cm2以上であれば、上述した管理要領の合成樹脂系・中弾性タイプに記載されている、遮水シートの厚さで除していない引張強さが140N/cm以上という要件を十分満足するという利点もある。
なお、本発明の遮水シートでは、試験片が破断する直前の応力が最大となるため、最大応力値が引張強さに相当する。
【0061】
但し、かかる遮水シートの引張強さの値を過度に大きくすると、過度に剛性が大きくなり、取り扱いづらくなる。更に使用可能なオレフィン樹脂組成物の種類の選択範囲が過度に狭くなる場合がある。
従って、かかる遮水シートの引張強さの値を3500~6000N/cm2の範囲内の値とすることがより好ましく、3800~4500N/cm2の範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0062】
ここで、図4に言及して、遮水シートのバイオマス度(%)と、引張強さとの関係を説明する。
すなわち、図4の横軸に、遮水シートのバイオマス度(%)が採って示してあり、縦軸に、遮水シートの引張強さの値が採って示してある。
そして、図4中の特性曲線が示すように、遮水シートのバイオマス度(%)5~20%程度までは、配合割合が多くなるにつれて、若干遮水シートの引張強さの値がほぼ変わらない傾向が見られている。
次いで、バイオマス度(%)が20%を超えて、40%程度までは、それが多くなるにつれて、若干遮水シートの引張強さの値が若干小さくなる傾向が見られている。
そして、遮水シートのバイオマス度(%)が40%を超えると、それが多くなるにつれて、遮水シートの引張強さの値が、明らかに低下する傾向が見られている。
よって、遮水シートのバイオマス度(%)を所定範囲内の値に制限することによって、遮水シートの引張強さを所定値以上の値を得ることができる。
【0063】
(3)接合部せん断強度
遮水シートにつき、JIS K6850:1999に準拠し、接合部せん断強度を80N/cm以上の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる接合部せん断強度が、80N/cm未満の値になると、接合部の強度が低く、処分場内で発生する引張応力により接合部が破断する可能性が高くなるためである。
但し、かかる遮水シート同士の接合部せん断強度の値を過度に大きくなるような設計をすると、使用可能なオレフィン樹脂組成物の種類の選択範囲が過度に狭くなる場合がある。
従って、かかる遮水シートの接合部せん断強度を80~250N/cmの範囲内の値とすることがより好ましく、100~220N/cmの範囲内の値とすることが更に好ましい。
又、かかる遮水シートの接合部せん断強度が80N/cm以上であれば、上述した管理要領の合成樹脂系・中弾性タイプを満足するという利点もある。
【0064】
又、接合部せん断強度については、以下のように測定した。
すなわち、得られた2枚の遮水シートをJIS K6850:1999に準拠し、100mm重ねて、自走式融着機(製造会社:ライスター、製品名:ツイニー)を用いて融着温度460℃、速度2.0m/分、圧力580Nの条件、気温31℃の下で接合部を熱融着し、規格に準拠した試験片を得た。
次いで、かかる試験片につき、引張試験機にて引張速度50mm/分、室温(23℃)にて試験片が破断に至るまでの最大荷重を求めて、接合部せん断力強度を算出した。
【0065】
ここで、図5に言及して、遮水シートのバイオマス度(%)と、遮水シートの接合部せん断強度との関係を説明する
すなわち、図5の横軸に、遮水シートのバイオマス度(%)が採って示してあり、縦軸に、遮水シートの接合部せん断強度の値(N/cm)が採って示してある。
そして、図5中の特性曲線が示すように、遮水シートのバイオマス度(%)が多くなるにつれて、遮水シートの接合部せん断強度の値が、最大15%以下の若干ではあるが、徐々に低下する傾向が見られている。
よって、遮水シートのバイオマス度(%)を所定範囲内の値に制限することによって、遮水シートの所定接合部せん断強度(80N/cm)以上の値を得ることができる。
逆に言えば、遮水シートのバイオマス度(%)が低いほど、遮水シートの接合部せん断強度の値を大きくできると言える。
【0066】
そして、更に、図6に言及して、オレフィン樹脂組成物中の(B)成分の配合量と、遮水シートのバイオマス度との関係を説明する。
すなわち、オレフィン樹脂組成物中の(B)成分の配合量は、遮水シートのバイオマス度と、強い相関関係がある。
従って、(B)成分の配合量が、例えば、40重量%以上であれば、遮水シートのバイオマス度を30%以上の所定値とすることができる。
よって、図6の特性曲線から判断して、(B)成分の配合量を調整することにより、遮水シートのバイオマス度を所望範囲とし、ひいては、図4に示すように、遮水シートの引張強さや、図5に示すように、遮水シートの接合部せん断強度を、それぞれ所定範囲内の値に調整しやすくなると言える。
【0067】
(4)厚さ
遮水シートにつき、JIS K6250:2019に準拠して測定される厚さを0.5~30mmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる厚さが、0.5mm未満の値になると、引張強さ等の機械的特性や取扱性が著しく低下したり、或いは、歩留まりの関係で、製造コスト等が増加する場合があるためである。
一方、かかる厚さが、30mmを超えると、敷設面に対する追従性や取扱性が低下したり、更には、原材料の使用量との関係で、製造コスト等が過度に増加し、経済的に不利となったりする場合があるためである。又、厚くなると単位重量が増えるため、運搬性や施工性が低下する。
従って、遮水シートの厚さを1~10mmの範囲内の値とすることがより好ましく、1.5~5mmの範囲内の値とすることが更に好ましい。
そして、かかる遮水シートが、上述した管理要領を満足するためには、遮水シートの厚さを1.5mm以上の値にすることが好ましい。
【0068】
(5)遮水性
遮水シートにつき、その遮水性は、JIS Z0208:1976に準拠してなる透湿度(g/m2/hr)を指標として評価することができる。
すなわち、かかる透湿度を0.1mg/m2/hr以下の値とすることによって、良好な遮水性を発揮する遮水シートとすることができる。
この理由は、かかる透湿度が、0.1mg/m2/hrを超えた値になると、十分な遮水性を発揮することができない場合があるためである。
一方、かかる透湿度が、過度に小さくなると、原料の選択の幅が過度に狭くなったり、或いは、取り扱い性が低下したり、製造コスト等が増加し、経済的に不利となる場合があるためである。
従って、遮水シートの透湿度を0.0001~0.05mg/m2/hrの範囲内の値とすることがより好ましく、0.001~0.01mg/m2/hrの範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0069】
又、遮水シートにつき、その遮水性は、上述した管理要領に準拠してなる透湿度(g/m2・hr)から得られる透水係数(cm/sec)を指標として評価することができる。
すなわち、かかる透水係数を1×10-9cm/sec以下の値とすることによって、良好な遮水性を発揮する遮水シートとすることができる。
この理由は、かかる透水係数が、1×10-9cm/secを超えた値になると、十分な遮水性を発揮することができない場合があるためである。
一方、かかる透水係数が、過度に小さくなると、原料の選択の幅が過度に狭くなったり、或いは、製造コスト等が増加し、経済的に不利となる場合があるためである。
従って、遮水シートの透水係数を1×10-14~1×10-9cm/secの範囲内の値とすることがより好ましく、1×10-13~1×10-9cm/secの範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0070】
ここで、図7に言及して、遮水シートのバイオマス度(%)と、遮水シートの遮水性との関係を説明する。
すなわち、図7の横軸に、遮水シートのバイオマス度(%)が採って示してあり、縦軸に、遮水シートにおける遮水係数をもとにした遮水性の評価の値が採って示してある。
又、かかる遮水係数をもとにした遮水性は、実施例1に示す基準により評価し、◎を5点、〇を3点、△を点1、×を0点として、遮水性の評価の値(相対値)を算出したものである。
そして、図7中の特性曲線が示すように、植物原料に由来するポリオレフィンを含む遮水シートにおいても充分な遮水性が得られることがわかる。
【0071】
(6)弾性率(1%割線弾性係数)
遮水シートにつき、JIS K7127:1999に準拠して、算出される23℃における1%割線弾性係数を30~190N/mm2の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる遮水シートの1%割線弾性係数が、30N/mm2未満の値になると強度が弱くなる場合があるためである。
又、逆に、190N/mm2を超えた値になると、過度に剛性が大きくなり、取り扱いづらくなる場合があるためである。
従って、遮水シートの1%割線弾性係数を80~150N/mm2の範囲内の値とすることがより好ましく、110~140N/mm2の範囲内の値とすることが更に好ましい。
又、遮水シートの1%割線弾性係数を、このような範囲内の値とすることにより、機械的特性に優れるともに、ひいては、遮水シートの引張強さ及び斜面に設置した際にかかる遮水シートの張力を所定範囲に精度良く調整したりすることが容易となる。
【0072】
なお、遮水シートを構成する、(A)成分のポリオレフィン樹脂の弾性率よりも、(B)成分の第2のポリオレフィン樹脂の弾性率のほうが大きいため、(B)成分の第2のポリオレフィン樹脂の割合が過度に高いと弾性率が過度に高くなる場合がある。
【0073】
又、廃棄物処分場においては、図1(a)及び(d)に示すように、法面の遮水シート10を固定するための固定工16と呼ばれる重しが使用され、一般的に、固定工には、コンクリート等の材料が使用される。
そして、固定工として使用されるコンクリートの量と遮水シートの1%割線弾性係数の値とには相関関係があることが知られており、1%割線弾性係数が小さいほどコンクリート使用量が少なくて良い傾向がある。
よって、上述した(A)成分である第1のポリオレフィン樹脂に対して、(B)成分のポリオレフィン樹脂を配合し、かつ、両者のバランスによって、遮水シートの1%割線弾性係数の値を抑えることにより、固定工におけるコンクリート使用量を少なくすることができる場合がある。
【0074】
ここで、図8(a)に言及して、遮水シートのバイオマス度と、遮水シートの弾性率(1%割線弾性係数)との関係を説明する。
すなわち、図8(a)の横軸に、遮水シートのバイオマス度(%)が採って示してあり、縦軸に、遮水シートの1%割線弾性係数の値が採って示してある。
そして、図8(a)中の特性曲線が示すように、遮水シートのバイオマス度(%)が0~40%の範囲では、バイオマス度(%)が増えるにつれて、遮水シートの1%割線弾性係数の値が、増加する傾向が見られている。
又、遮水シートのバイオマス度(%)が40%より大きい値の範囲であっても、バイオマス度(%)が増えるにつれて、1%割線弾性係数の値は増えるが、増加率は少し低下する傾向である。
よって、遮水シートのバイオマス度(%)を所定範囲内の値に制限することによって、1%割線弾性係数が、所定値以下の1%割線弾性係数を有する遮水シートを得られることが理解される。
なお、かかる弾性率(1%割線弾性係数)は、周囲温度、例えば、室温(23℃)と、0℃によって、変わることが予想されるが、所定の相関関係をもって変化すること知られている。
とすれば、遮水シートのバイオマス度(%)を所定範囲内の値に制限することによって、異なる周囲温度の1%割線弾性係数を調整できることに疑義はない。
【0075】
一方、温度低下等の安全性を考慮して、廃棄物最終処分場遮水システムハンドブックに準じて、0℃における1%割線弾性係数を所定の範囲内の値とすることが好ましい。
より具体的には、遮水シートにつき、JIS K7127:1999に準拠して、0℃における1%割線弾性係数を150~350N/mm2の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる遮水シートの1%割線弾性係数が、150N/mm2未満の値になると強度が弱くなる場合があるためである。
逆に、350N/mm2を超えた値になると、過度に剛性が大きくなり、取り扱いづらくなる場合があるためである。
従って、遮水シートの1%割線弾性係数を180~250N/mm2の範囲内の値とすることがより好ましく、200~240N/mm2の範囲内の値とすることが更に好ましい。
又、遮水シートの1%割線弾性係数を、このような範囲内の値とすることにより、機械的特性に優れるともに、ひいては、遮水シートの引張強さ及び斜面に設置した際にかかる遮水シートの張力を所定範囲に精度良く調整したりすることが容易となる。
【0076】
更に、図8(b)に言及して、遮水シートの1%割線弾性係数と、遮水シートの引張強さとのバイオマス度が5%以上の場合における、関係を説明する。
すなわち、図8(b)の横軸に、バイオマス度が5%以上の場合における、遮水シートの1%割線弾性係数の値が採って示してあり、縦軸に、バイオマス度が5%以上の場合における、遮水シートの引張強さの値が採って示してある。
そして、図8(b)中の特性曲線から、かかる1%割線弾性係数の値と、引張強さの値との関係において、優れた相関関係があることが理解される。
従って、かかる1%割線弾性係数の値を制限することによって、引張強さの値についても、所定範囲内に制御しやすくなると言える。
逆に言えば、引張強さの値を所定範囲内の値に制限することによって、1%割線弾性係数の値を、間接的ではあるが、より精度良く制御できると理解される。
【0077】
(7)引張伸び
遮水シートにつき、上述した管理要領に基づき、JIS K6251:2017に準拠してなる長手方向及び幅方向における平均引張伸び率(以下、単に引張伸び率と称する場合もある。)を500%~750%未満の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる引張伸び率が、500%未満の値になると、引張強さなどの機械的強度が低下し、地盤沈下等が発生した際に損傷しやすくなる場合があるためである。
一方、かかる遮水シートの引張伸び率の値が750%以上の値となると、使用可能なオレフィン樹脂組成物の種類の選択範囲が過度に狭くなる場合があるためである。
従って、かかる遮水シートの引張伸び率の値を520~700%の範囲内の値とすることがより好ましく、540~670%の範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0078】
(8)剛軟度
又、遮水シートにつき、JIS L1096:2010に準拠してなる剛軟度(ガーレー剛軟度と称する場合もある。)を140mN~230mN未満の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる剛軟度が、140mN未満の値になると、引張強さなどの機械的強度が低下し、衝撃に弱くなる場合があるためである。
一方、かかる剛軟度が、230mN以上の値であると、使用可能なオレフィン樹脂組成物の種類の選択範囲が過度に狭くなる場合があるためである。
従って、かかる遮水シートの剛軟度を150~220mNの範囲内の値とすることがより好ましく、170~210mNの範囲内の値とすることが更に好ましい。
なお、剛軟度は、JIS L1096:2010に規定されたガーレー法に準拠し、得られた遮水シートの剛軟度(mN)を裏表各3回ずつ測定して得られた平均値を、遮水シートの剛軟度(mN)の値とした。
より具体的には、遮水シートの長手方向において長さ89mm、幅25mmの試験片を6つ作成した。得られた試験片のうち、3つは表面、他の3つは裏面の剛軟度(mN)を室温(23℃)で測定し、その平均値を、遮水シートの剛軟度(mN)の値とした。
【0079】
(9)固定工
又、廃棄物最終処分場遮水システムハンドブックによれば、遮水シートを、法面に対して敷設するにあたり、現場において、その小段部及び天端部における矩形溝に、遮水シートと、固定工と呼ばれるコンクリート等の重しとを流し込んで打設し、遮水シートを固定することが知られている。
このとき、固定工サイズは、法面下方向に働く、遮水シートの自重による張力T1(N/m)と、遮水シートが温度変化により熱収縮することによる熱応力T2(N/m)と、遮水シート上の積載物の荷重で圧縮されたことによる第1引込力T3-1(N/m)と、当該積載物上で作業する重機等の荷重増加で圧縮されたことによる第2引込力T3-2(N/m)と、から算出されることが知られている。
すなわち、固定工サイズ(m)を、遮水シートの総合張力(N/m)と等しい重量を有する固定工の大きさとして、下記式(3)から求めることができる。
なお、固定工サイズは、固定工の幅を1mとし、当該幅方向に沿って垂直な平面で切断してなる形状を、正方形とした場合の1辺の長さとしている。
【0080】
【数1】
【0081】
具体的には、固定工サイズは、当該固定工をコンクリートブロック(比重:23kN/m3)として、0.7m以下とすることが好ましい。
この理由は、このような固定工サイズとすることにより、固定工サイズを直接的に理解でき、ひいては、固定工の小型化を、より容易に行うことができるためである。
従って、固定工サイズを0.65m以下とすることがより好ましく、0.63以下とすることが更に好ましい。
一方、固定工が過度に小さい場合に、遮水シートの総合張力以外の要因の影響が大きくなり、ズレ等の不具合が発生する場合があることから、固定工サイズは、0.3m以上とすることが好ましく、0.35m以上とすることがより好ましく、0.4m以上とすることが更に好ましい。
以下、固定工サイズの求め方について具体的に説明する。
【0082】
まず、固定工に対して働く、遮水シートの総合張力(N/m)を、T1、T2、T3-1、T3-2のそれぞれの値に、所定の影響割合を掛けて、下記式(3-1)から求めることができる。
【0083】
【数2】
【0084】
又、T1は、法面下方向に働く、遮水シートの自重による、幅1m当たりの遮水シートの張力である。
具体的には、T1(N/m)は、幅1m当たりの遮水シートの重量W1(N/m)と、遮水シートと当該遮水シート直下の部材との摩擦係数μ1と、法面の傾斜角θ(°)と、から、下記式(3-2)から求めることができる。
【0085】
【数3】
【0086】
従って、T1は、300N/m以下であることが好ましく、200N/m以下であることがより好ましく、100N/m以下であることが更に好ましい。
なお、T1が負の値となった場合には、張力は働かないため、T1を0として計算する。
【0087】
又、T2は、T2は、遮水シートが温度変化により熱収縮することにより、固定工に働く、幅1m当たりの遮水シートの熱応力に相当する張力である。
具体的には、T2(N/m)は、上述した熱応力に関する下記式(4)から求めることができる。
【0088】
【数4】
【0089】
この理由は、遮水シートの熱応力(T2)を算出して、具体的に制限することによって、固定工における熱応力の発生を抑制し、ひいては、その大きさを小型化、軽量化することができるためである。
従って、上述したように、熱応力(T2)を1000~10000N/mの範囲内の値とすることが好ましく、1300~8000N/mの範囲内の値とすることがより好ましく、1500~7000N/mの範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0090】
又、遮水シートの熱応力T2を算出する際に用いる最低気温tbは、基本的に、使用する各地の気温に合わせて設定されることが好ましいものの、通常、-45~5℃の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、このような最低気温に基づいて、遮水シートの熱応力T2を算出することで、近年の環境変化に基づく冬場の気温低下を考慮しても、日本各地(例えば、東京、札幌、沖縄)にそれぞれ適した、安全、確実な固定工を備えた遮水シートの提供が容易になるためである。
従って、遮水シートは、最低気温tbが-45~5℃の地域で使用される構成とすることが好ましく、-30~0℃の地域で使用される構成とすることがより好ましく、-20~-5℃の地域で使用される構成とすることが更に好ましい。
【0091】
又、遮水シートの熱応力T2を算出する際に用いる最高気温taは、基本的に、使用する各地の気温に合わせて設定されることが好ましいものの、通常、30~50℃の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、このような最高気温に基づいて、遮水シートの熱応力T2を算出することで、近年の環境変化に基づく夏場の気温上昇を考慮しても、日本各地(例えば、東京、札幌、沖縄)のいずれにも適した、固定工を備えた遮水シートの提供が容易になるためである。
従って、遮水シートは、最高気温taが30~50℃の地域で使用される構成とすることが好ましく、33~48℃の地域で使用される構成とすることがより好ましく、35~45℃の地域で使用される構成とすることが更に好ましい。
【0092】
又、遮水シートの熱応力T2を算出する際に用いる遮水シートの断面積A(m2)は、JIS K6250:2019に準拠して測定される厚さ(m)と、遮水シートの幅(m)との積によって求めることができる。
具体的には、通常、幅を1mとした場合の遮水シートの断面積を0.0003~0.01m2の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、このような断面積とすることにより、熱応力T2をより精度良く算出でき、ひいては、固定工サイズをより精度よく調整することができるためである。
従って、遮水シートの断面積Aを0.0004~0.005m2の範囲内の値とすることがより好ましく、0.0005~0.0025m2の範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0093】
又、遮水シートの熱応力T2を算出する際に用いる遮水シートの弾性係数の温度依存指数αは、JIS K7139:2009に準拠する、ダンベル形試験片及び短冊形片を用いた引張試験において、-25℃、0℃、20℃、40℃、60℃の5種類の温度環境下において測定された弾性係数の関係から求めることができる。
具体的には、通常、遮水シートの弾性係数の温度依存指数αを0.003~0.03の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、このような温度依存指数とすることにより、遮水シートを使用する場所の気温等によらず、より汎用的に使用することができるためである。
従って、遮水シートの弾性係数の温度依存指数αを0.005~0.02の範囲内の値とすることがより好ましく、0.008~0.015の範囲内の値とすることが更に好ましい。
ここで、一例として、温度依存指数αは、遮水シートの材料に基づいて、EPDM:0.01程度であり、PE(熱可塑性エラストマーを含む):0.013程度、PP(熱可塑性エラストマーを含む):0.013程度、HDPE:0.01程度、PVC:0.034程度であり、TPU:0.0056程度である。
【0094】
又、遮水シートの熱応力T2を算出する際に用いる遮水シートの線膨張係数β(1/℃)は、JIS K7197:1991に準拠する、熱膨張率試験によって求めることができる。
具体的には、通常、遮水シートの線膨張係数βを0.1×10-4~3×10-4/℃の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、このような線膨張係数とすることにより、遮水シートを使用する場所の気温等によらず、より汎用的に使用することができるためである。
従って、遮水シートの線膨張係数βを0.4×10-4~2.5×10-4の範囲内の値とすることがより好ましく、0.8×10-4~2×10-4の範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0095】
又、遮水シートの枚数nとしては、遮水シートを使用する用途や敷設場所等によって、適宜選択することが好ましいが、通常、2枚以上とすることが好ましい。
この理由は、このような枚数とすることにより、鋭利な積載物等により、上層の遮水シートに穴が開いたような場合であっても、その下の層によって、所定の遮水効果を維持することが可能なためである。
従って、遮水シートの枚数としては、基本的には、2枚で充分な遮水効果を発揮するものの、破れた場合等を考慮して、2~10枚とすることがより好ましく、3~5枚とすることが更に好ましい。
なお、下地の種類等によって、1枚とすることも好ましい。
【0096】
又、T3-1は、遮水シート上の積載物の荷重で圧縮されたことにより、固定工に働く、幅1m当たりの遮水シートの引込力(以降、第1引込力と称する場合がある。)に相当する張力である。
すなわち、T3-1は、遮水シート上に廃棄物等の積載物を載せることで、遮水シートが圧縮された際に、圧縮された部分を、その周囲の部分が引き戻すことにより、固定工に働く、遮水シートの引込力に相当する張力である。
ここで、T3-1は、種々の算出方法があるものの、いずれの場合も、固定工サイズの算出にあたり、算出方法の違いは、ほとんど影響がないことが分かっている。
例えば、T3-1(N/m)は、幅1m当たりの積載物の重量W2(N/m)と、遮水シートと当該遮水シート直下の部材との摩擦係数μ2と、法面の傾斜角θ(°)と、遮水シートと積載物との角度δ(°)と、から、下記式(3-3)から求めることができる。
【0097】
【数5】
【0098】
従って、第1引込力T3-1は、5000~15000N/mの範囲内の値とすることが好ましく、6000~12000N/mの範囲内の値とすることがより好ましく、7000~10000N/mの範囲内の値とすることが更に好ましい。
なお、δは、遮水シートと積載物との角度であり、廃棄物等の積載物は、法面に沿って投入されることから、非常に小さい値となるため、tanδは、実質的に0として計算することができる。
【0099】
ここで、遮水シートの表面から、2層目について、同じ荷重が掛かった場合であっても、当該荷重によって発生する引込力は、1層目に対して、小さくなることが知られている。
そのため、遮水シートが複数の層からなる場合に、2層目について、0.3~0.6の負担率を掛けて計算することが好ましい。
従って、一例として、2層目の負担率を0.45とし、3層目以降の負担率を0.3とすることが好ましい。
【0100】
又、T3-2は、積載物上の重機の荷重で圧縮されたことにより、固定工に働く、幅1m当たりの遮水シートの引込力(以降、第2引込力と称する場合がある。)に相当する張力である。
すなわち、T3-2は、積載物上で作業するブルドーザ等の重機が接近することで、遮水シートが圧縮された際に、圧縮された部分を、その周囲の部分が引き戻すことにより、固定工に働く、遮水シートの引込力に相当する張力である。
ここで、T3-2は、種々の算出方法があるものの、いずれの場合も、固定工サイズの算出にあたり、算出方法の違いは、ほとんど影響がないことが分かっている。
例えば、T3-2(N/m)は、幅1m当たりの積載物の重量W3(N/m)と、遮水シートと当該遮水シート直下の部材との摩擦係数μ3と、法面の傾斜角θ(°)と、遮水シートと積載物との角度δ(°)と、から、下記式(3-4)から求めることができる。
【0101】
【数6】
【0102】
従って、第2引込力T3-2は、500~3000N/mの範囲内の値とすることが好ましく、800~2500N/mの範囲内の値とすることがより好ましく、1000~2000N/mの範囲内の値とすることが更に好ましい。
なお、δは、遮水シートと積載物との角度であり、廃棄物等の積載物は、法面に沿って投入されることから、非常に小さい値となるため、tanδは、実質的に0として計算することができる。
【0103】
[第2の実施形態]
第2の実施形態は、下記工程(1)及び(2)を含む遮水シートの製造方法である。
工程(1):(A)成分として、石油由来のエチレン単位を含む第1のポリオレフィン樹脂と、(B)成分として、植物由来のエチレン単位を含む第2のポリオレフィン樹脂と、を含むオレフィン樹脂組成物を混合し、当該オレフィン樹脂組成物の、ASTM D6866に準拠してなるバイオマス度を5~40%の範囲内の値とする工程
工程(2):オレフィン樹脂組成物に由来してなる遮水シートを形成し、当該遮水シートの、JIS K6251:2017に準拠してなる引張強さを2800N/cm2以上の値とする工程
以下、適宜図面を参照しつつ、具体的に、第2の実施形態の遮水シートの製造方法を説明する。
【0104】
1.工程(1)
(1)工程(1)は、所定のオレフィン樹脂組成物を準備する工程である。
すなわち、(A)成分として、石油由来のエチレン単位を含む第1のポリオレフィン樹脂と、(B)成分として、植物由来のエチレン単位を含む第2のポリオレフィン樹脂と、を含むオレフィン樹脂組成物を、それぞれ製造したり、市販品を購入とすることにより、準備する。
次いで、それらの原料樹脂等を秤量したのち、所定割合で混合し、ASTM D6866に準拠してなるバイオマス度を5~40%の範囲内の値とする工程である。
なお、(A)成分として、石油由来のエチレン単位を含む第1のポリオレフィン樹脂や、(B)成分として、植物由来のエチレン単位を含む第2のポリオレフィン樹脂の内容については、第1の実施形態で説明した内容と同様とできることから、再度の説明は省略する。
【0105】
(2)又、工程(1)において、オレフィン樹脂組成物の全体量を100重量%としたときに、(C)成分として、補強材料を含む場合には、当該補強材料の配合量を、0.1~30重量%の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、このように所定量の補強材料を配合することによって、遮水シートの耐候性や機械的特性等を、更に向上させ、ひいては、所定範囲に調整することが容易となる場合があるためである。
又、このような補強材料を所定量配合することにより、得られる遮水シートを黒色化したり、グレー色化したりすることが容易になって、遮水シートの装飾性、光遮蔽性等についても、向上させられる場合があるためである。
【0106】
2.工程(2)
工程(2)は、所定のオレフィン樹脂組成物から、所定厚さの遮水シートを形成する工程である。
すなわち、イクストルーダ―、フィルム成形機、Tダイ押出機、プレス装置、キャスティング法、インフレーション成形機等の公知の製膜方法の少なくとも一つによって、所定の遮水シートを形成する工程である。
【0107】
3.他の工程
(1)遮水シートの遮水性等の検査工程
得られた遮水シートにつき、JIS Z0208:1976に準拠して、遮水性の指標となる透湿度(g/m2・hr)を測定し、透湿度から、後述する方法により、透水係数k(cm/sec)を算出し、当該透水係数が、所定範囲内の値であることを検査する工程を含むことが好ましい。
すなわち、得られた遮水シートにつき、透水係数が、例えば、1×10-9cm/sec以下の値であることを確認することが好ましい。
なお、遮水性の指標となる透水係数とともに、或いは、かわりに、透湿度を遮水性の指標とすることもできる。
【0108】
(2)遮水シートの巻き取り工程/切断工程
得られた遮水シートにつき、長尺状の場合、それを巻き取り、ロール状とする工程を含むことが好ましい。
又、得られた遮水シートを所定形状に打ち抜く切断工程を含むことも好ましい。
なお、巻き取り機によって、遮水シートが巻き取られる方向を長手方向と称し、長手方向と直交する方向を幅方向と称する場合がある。
【0109】
(3)遮水シートの機械的特性の評価工程
得られた遮水シートにつき、その機械的特性を評価する工程を含むことが好ましい。
すなわち、得られた遮水シートにつき、JIS K6251:2017に準拠してなる引張強さ(単位:N/cm)を、遮水シートの厚さで除した、材質由来の引張強さを測定し、例えば、2800N/cm2以上の値であることを確認し、評価することが好ましい。
又、得られた遮水シートにつき、JIS K7127:1999に準拠して測定した1%割線弾性係数が30~190N/mm2以下の値であることを確認し、評価することが好ましい。
【0110】
(4)他のシートの積層工程
得られた遮水シートにつき、その表面や、背面に加工処理をすべく、積層工程を含んでもよい。
すなわち、例えば、得られた遮水シートと同種又は異種のシートとを、熱溶着や接着剤などを用い、複数積層させ、多層構造体の遮水シートとする工程を含んでもよい。
又、得られた遮水シートと、他の樹脂層や、金属層、セラミックス層、不織布、木材とを、接着剤などを用い、積層させ、多層構造体とすることも好ましい。
【0111】
(5)遮水シートの熱応力の評価工程
得られた遮水シートにつき、その熱応力T2を評価する工程を含むことが好ましい。
すなわち、式(4)で算出される熱応力T2が1000~10000N/mの範囲内の値であることを確認し、評価することが好ましい。
この理由は、遮水シートの熱応力(T2)を算出して、具体的に制限することによって、固定工における熱応力の発生を抑制し、ひいては、その大きさを小型化、軽量化することができるためである。
従って、遮水シートの熱応力(T2)を1300~8000N/mの範囲内の値とすることがより好ましく、1500~7000N/mの範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0112】
(6)固定工の打設工程
又、後工程として、廃棄物処分場等となる所定場所に、固定工を打設する工程を含むことが好ましい。
具体的には、所定場所において、法面と、固定工の矩形溝とを成形する。
次いで、得られた遮水シートや保護マット等からなる遮水工と呼ばれる部材を、法面に敷設し、矩形溝において、コンクリート等の重しを流し込むことにより、遮水シートを固定することが好ましい。
【実施例0113】
以下、本発明を実施例に基づいて、更に詳細に説明する。
【0114】
[実施例1]
1.遮水シートの製造
(1)オレフィン樹脂組成物の準備
(A)成分として、石油由来のエチレン単位を含む第1のポリオレフィン樹脂(市販品:プライムポリマー(株)製、エボリューSP1022(密度:0.905~0.912g/cm3、MFR:1.5~2.5g/10分(190℃、2.16kg荷重)、融点:97℃、113.6℃、バイオマス度:0%、樹脂色:無色透明、表1中、TYP1と称する。)を準備した。
【0115】
同様に、(B)成分として、植物由来のエチレン単位を含む第2のポリオレフィン樹脂(市販品:ブラスケムス社製、SLH218(密度:0.916g/cm3、コモノマー:1-ヘキセン、MFR:2.3g/10分(190℃、2.16kg荷重)、融点:126℃、バイオマス度:84%、樹脂色:無色透明、表1中、TYP2と称する。)を準備した。
【0116】
次いで、オレフィン樹脂組成物のバイオマス度が8.4%となるように、重量換算で、(A)成分と(B)成分の比率が90:10になるように秤量し混合した。
更に、オレフィン樹脂組成物の全体量100重量%に対して、カーボンブラック含有マスターバッチ(東京インキ(株)製、PEX 9BB047 BLACK、平均粒径10~300nm、カーボンブラックの濃度40%)が6.7重量%となるように均一に混合し、補強材料を含むオレフィン樹脂組成物とした。
【0117】
(2)遮水シートの形成
Tダイコーターを用い、吐出温度200℃、圧力:6kg/cm2の条件で、準備したオレフィン樹脂組成物を原材料として、平均厚さ1.5mmの長尺状シート(単層)を製造した。
【0118】
2.遮水シートの評価
(1)遮水性(評価1)
得られた遮水シートにつき、JIS Z0208:1976に準拠して、遮水性の指標となる透湿度を測定し、次式(1)により透水係数k(cm/sec)を算出し、下記基準に沿って、評価した。
【0119】
【数7】
【0120】
◎:透水係数が、1×10-12cm/sec未満の値である。
〇:透水係数が、1×10-12cm/sec~1×10-11cm/sec未満の値である。
△:透水係数が、1×10-11cm/sec~1×10-9cm/sec未満の値である。
×:透水係数が、1×10-9cm/sec以上の値である。
【0121】
(2)1%割線弾性係数(評価2)
得られた遮水シートを短冊状試験片(幅2.5cm、長さ16cm)に打ち抜き、1%割線弾性係数の試験片とした。得られた試験片をJIS K7127:1999に準拠して、引張試験機(株式会社東洋精機製作所製、ストログラフVG10E)を用いて、引張速度1mm/分、試験片のつかみ間距離100mm、室温(23℃)の条件で長手方向に引張り試験を行い、SSカーブを得た。
この時、1%歪み(チャック移動距離1mm)を付与した際の応力を算出し、次式(2)に示すように、その値を試験片の断面積及び歪みで除した値より1%割線弾性係数を求めた。測定は3回行い、その平均値を1%割線弾性係数の値とした。
【0122】
【数8】
【0123】
(3)引張強さ(評価3)
得られた遮水シートをJIS K6251:2017に準拠して規定されたダンベル3号形で遮水シートの長手方向、幅方向において各3回打ち抜き、遮水シートの試験片とした。
次いで、引張試験機にて引張速度50mm/分、試験片のつかみ間距離を60mm、室温(23℃)とし、試験片が破断に至るまでの最大荷重(PA)を求め、次式により引張強さ(TA)を算出し、更にその数値を遮水シートの厚さで除した、材質由来の引張強さ(TB)を求めた。長手方向、幅方向の平均値を引張強さ(Tav)として評価した。
A=PA/W
A:引張強さ(単位:N/cm)
A:最大荷重(単位:N)
W:試験片の幅(0.5cm)
【0124】
B=TA/t
B:引張強さ(単位:N/cm2
t:遮水シートの厚さ(単位:cm)
【0125】
(4)接合部せん断強度(評価4)
得られた遮水シートを、自走式融着機(ライスター社製、ツイニー)を用いて、融着温度460℃、圧力580(N)、速度2.0m/minの条件で、気温31℃の下、熱融着した。次いで、融着した遮水シートを、シート接合部が試験片の長さ方向の中央に位置するように幅2.5cm、長さ16cmの短冊状に打ち抜き、接合部せん断力の試験片とした。
【0126】
次いで、かかる試験片につき、JIS K6850:1999に準拠し、引張試験機にて、室温(23℃)、引張速度50mm/分、試験片が破断に至るまでの最大荷重(P)を求めて、次式により接合部せん断力(T)を算出した。測定は3回行い、その平均値を接合部せん断強度の値とした。
=P/W
:接合部せん断強度(単位:N/cm)
:最大荷重(単位:N)
W:試験片の幅(2.5cm)
【0127】
(5)環境特性(評価5)
(A)成分である、石油由来のエチレン単位を含む第1のポリオレフィン樹脂のCO2の排出量を100%としたときに、(B)成分である、植物由来のエチレン単位を含む第2のポリオレフィン樹脂のCO2の排出量は、30%であり、第2のポリオレフィン樹脂は、CO2の排出量を70%削減できることが判明している。
従って、(A)成分と(B)成分の重量の割合から、CO2の排出量とその削減率を算出することが可能であり、算出したCO2の排出量の削減率を下記基準に沿って評価した。
◎:CO2の排出量の削減率が、15%以上の値である。
〇:CO2の排出量の削減率が、7%以上の値である。
△:CO2の排出量の削減率が、5%以上の値である。
×:CO2の排出量の削減率が、5%未満の値である。
【0128】
[実施例2~3]
実施例2~3において、石油由来の第1のポリオレフィン樹脂(TYP1)と、植物由来のエチレン単位を含む第2のポリオレフィン樹脂(TYP2)との配合比率を、重量換算で、80:20、及び、70:30とし、オレフィン樹脂組成物のバイオマス度を16.8%及び25.2%とした以外は、実施例1と同様に、遮水シートを製造し、評価した。
【0129】
[実施例4~6]
実施例4~6において、石油由来の第1のポリオレフィン樹脂として、プライムポリマー(株)製、エボリューSP2020(密度:0.916g/cm3、MFR:2.3g/10分、融点116℃、樹脂色:無色透明、表1中、TYP3と称する。)を用いたほかは、実施例1~3と同様に、それぞれ遮水シートを製造し、評価した。
【0130】
[比較例1]
比較例1において、石油由来の第1のポリオレフィン樹脂のみ(TYP1)を用い、植物由来のエチレン単位を含む第2のポリオレフィン樹脂を全く用いなかった以外は、実施例1と同様に、それぞれ遮水シートを製造し、評価した。
【0131】
[比較例2]
又、比較例2において、植物由来のエチレン単位を含む第2のポリオレフィン樹脂のみ(TYP2)を用い、石油由来の第1のポリオレフィン樹脂を全く用いなかった以外は、実施例1と同様に、それぞれ遮水シートを製造し、評価した。
【0132】
[比較例3~5]
又、比較例3~5において、(A)成分としての石油由来のエチレン単位を含む第1のポリオレフィン樹脂(TYP1)と、同じく石油由来のエチレン単位を含む第2のポリオレフィン樹脂(TYP3)を用い、それらの配合比率を、90:10、70:30、及び、50:50とした以外は、実施例1と同様に、それぞれ、遮水シートを製造し、評価した。
【0133】

【表1】
【産業上の利用可能性】
【0134】
本発明の遮水シート及びその製造方法によれば、(A)成分として、石油由来のエチレン単位を含む第1のポリオレフィン樹脂と、(B)成分として、植物由来のエチレン単位を含む第2のポリオレフィン樹脂と、を含むオレフィン樹脂組成物を用い、オレフィン樹脂組成物のバイオマス度を所定範囲内の値とし、かつ、引張強さが所定値以上とする遮水シートとすることによって、環境特性(CO2排出量の低減等)や引張強さ等の機械的特性において、それぞれ優れた特性を得ることができるようになった。
【0135】
又、補強材料を配合しなくとも、あるいは、補強材料の種類や配合量を所定範囲で変えても、遮水性、バイオマス度、引張強さ、接合部せん断強度、環境特性、弾性率の値や、評価値は、ほとんど変わらないことも確認した。
【0136】
よって、本発明の遮水シート等は、廃棄物産業処分等で用いられる遮水シートのみならず、トンネル工事やダム現場等の湧水状況で使用される湧水遮断シート、ビルの屋上や家屋の屋根等で用いられる雨水の浸透防止シート、或いは一般的な防水シート、更には、それらから得られる袋状物等の幅広い用途で、使用されることが期待される。
【符号の説明】
【0137】
10、10′:遮水シート
10a:カーボンブラック
10b:オレフィン樹脂
12:廃棄物
14:廃棄物処分場の造成地
16:固定工
22、22′:接合部
24、24´:異種遮水シート
24a:顔料
24b:第1のオレフィン樹脂
30:同種多層構造体
32:異種多層構造体
34:サンドイッチ構造の多層構造体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8