(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173668
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】毛髪浸透型及び/又は毛髪被覆型乳化組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/06 20060101AFI20241205BHJP
A61Q 5/12 20060101ALI20241205BHJP
A61K 8/42 20060101ALI20241205BHJP
A61K 8/63 20060101ALI20241205BHJP
A61K 8/36 20060101ALI20241205BHJP
A61K 8/44 20060101ALI20241205BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20241205BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20241205BHJP
A61K 8/64 20060101ALI20241205BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
A61K8/06
A61Q5/12
A61K8/42
A61K8/63
A61K8/36
A61K8/44
A61K8/34
A61K8/37
A61K8/64
A61K8/73
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024051736
(22)【出願日】2024-03-27
(31)【優先権主張番号】P 2023089277
(32)【優先日】2023-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】592218300
【氏名又は名称】学校法人神奈川大学
(71)【出願人】
【識別番号】500578146
【氏名又は名称】株式会社ミロット
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】田嶋 和夫
(72)【発明者】
【氏名】今井 洋子
(72)【発明者】
【氏名】宮坂 佳那
(72)【発明者】
【氏名】福田 敏夫
(72)【発明者】
【氏名】目野(小松) 亜衣
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AC111
4C083AC112
4C083AC251
4C083AC252
4C083AC421
4C083AC422
4C083AC581
4C083AC582
4C083AC641
4C083AC642
4C083AC692
4C083AC852
4C083AD281
4C083AD282
4C083AD411
4C083AD412
4C083AD491
4C083AD492
4C083BB53
4C083CC33
4C083DD31
4C083DD33
4C083EE28
4C083EE29
(57)【要約】
【課題】キューティクルに吸着しても乳化粒子の破壊が起こりにくく、多くの有効成分をコルテックス内に効率よく浸透できると共に、毛髪表面をコーティングして保護できる、毛髪浸透型及び/又は毛髪被覆型乳化組成物を提供する。
【解決手段】毛髪浸透型及び/又は毛髪被覆型乳化組成物は、油相と、水相と、ナノ粒子とを含み、前記ナノ粒子は、自発的に閉鎖小胞体を形成する両親媒性物質により形成された閉鎖小胞体および水酸基を有する重縮合ポリマーの粒子の少なくとも一方である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
油相と、
水相と、
ナノ粒子と
を含み、
前記ナノ粒子は、自発的に閉鎖小胞体を形成する両親媒性物質により形成された閉鎖小胞体および水酸基を有する重縮合ポリマーの粒子の少なくとも一方である、毛髪浸透型及び/又は毛髪被覆型乳化組成物。
【請求項2】
前記毛髪浸透型及び/又は毛髪被覆型乳化組成物は、O/W型エマルションである、請求項1に記載の毛髪浸透型及び/又は毛髪被覆型乳化組成物。
【請求項3】
前記ナノ粒子は、前記油相と前記水相との界面に存在する、請求項1に記載の毛髪浸透型及び/又は毛髪被覆型乳化組成物。
【請求項4】
前記ナノ粒子は、コルテックス細胞に対する親和性を有する、請求項1に記載の毛髪浸透型及び/又は毛髪被覆型乳化組成物。
【請求項5】
前記ナノ粒子は、セラミドおよびステロールの少なくとも一方を有する、請求項1に記載の毛髪浸透型及び/又は毛髪被覆型乳化組成物。
【請求項6】
前記ナノ粒子は、不飽和脂肪酸と塩基性アミノ酸と、セラミドおよびステロールの少なくとも一方とを有する、請求項1に記載の毛髪浸透型及び/又は毛髪被覆型乳化組成物。
【請求項7】
前記不飽和脂肪酸は、一価不飽和脂肪酸または多価不飽和脂肪酸である、請求項6に記載の毛髪浸透型及び/又は毛髪被覆型乳化組成物。
【請求項8】
前記塩基性アミノ酸は、リシンおよびL-アルギニンの少なくとも一方である、請求項6に記載の毛髪浸透型及び/又は毛髪被覆型乳化組成物。
【請求項9】
前記セラミドは、ヒト型セラミド、植物性セラミドおよび擬似セラミドからなる群より選択される1種以上である、請求項6に記載の毛髪浸透型及び/又は毛髪被覆型乳化組成物。
【請求項10】
前記ステロールは、コレステロールおよびフィトステロールの少なくとも一方である、請求項6に記載の毛髪浸透型及び/又は毛髪被覆型乳化組成物。
【請求項11】
前記ナノ粒子は、フィタントリオールおよびジラウロイルグルタミン酸リシンNaを有する、請求項1に記載の毛髪浸透型及び/又は毛髪被覆型乳化組成物。
【請求項12】
前記ナノ粒子は、疎水化ヒドロキシプロピルメチルセルロースを有する、請求項1に記載の毛髪浸透型及び/又は毛髪被覆型乳化組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪浸透型及び/又は毛髪被覆型乳化組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
現代女性の髪は、毎日のシャンプーやドライヤー、紫外線などの物理的ストレス、ヘアカラ-剤やパーマ剤のようなヘアメイク剤の頻繁な使用による化学的ストレスを受け、さらには昨今では多くの精神的ストレスも受けているのが実態である。このようなストレスが毛髪を構成する毛幹、頭皮、毛根といった各部位に多くの影響を与え、細胞や細胞間脂質、細胞膜複合体(CMC)などの構造変化や破壊を起こさせることで機能性低下を引き起こし、結果として、すべすべ感がない、つやがない、コシがない、弾力がない、ハリがない、パサつきがある、枝毛や切れ毛がある、細い、くせ毛がある、本数が減少する、などといったヘアダメ-ジ現象が今日まで数多く観察されている。
【0003】
これらに対処するため、例えば特許文献1~2のように、これまでに種々研究がなされてきたが、毛幹、中でも毛幹の85%を占めるコルテックスについては多量の補修成分による補修が必須となることから、技術的側面も踏まえ従来から充分な研究がなされてこなかった。そのため、未だコルテックスのダメージを充分解消するに至っていない。
【0004】
コルテックスがストレスを受けると、細胞間脂質のCMCが自身の構造変化や破壊により流失し、この流出に伴い細胞内の潤い成分である天然保湿因子(NMF)、水分、ペプチドの流失が起こると共に、細胞本体の繊維状結晶性タンパクや非結晶性タンパクの変性や破壊が起こり、結果的に髪の潤い、弾力、こし、太さ、硬さ、ハリが失われてしまう。このような現象を抑制して美しい髪を保つには、多量の有効成分を確実にコルテックスに送達しCMCや細胞をしっかり補修改善することが必要である。
【0005】
そのためには、多量の有効成分を運搬するビヒクルが重要で、ベシクルやヘキソソーム、キューボソームなどの分子集合体ではなくエマルションが最適である。しかしながら、従来の分子乳化で得られるエマルションは、キューティクルに吸着した際、すぐに破壊されるため、有効成分をコルテックスに送達させるのが難しい。したがって、毛髪への吸着により破壊が起こりにくく、多くの有効成分をコルテックスに届けることの可能なキャリアーエマルションの創出が望まれている。
【0006】
また、特許文献3には、自発的に閉鎖小胞体を形成する両親媒性物質により形成された閉鎖小胞体、または水酸基を有する重縮合ポリマー粒子が水中に分散された育毛用外用剤が記載されている。しかしながら、特許文献3では、毛根に作用する育毛技術に関する発明であり、毛髪については検討されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2023-010657号公報
【特許文献2】特開2021-172621号公報
【特許文献3】特開2014-125480号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、キューティクルに吸着しても乳化粒子の破壊が起こりにくく、多くの有効成分をコルテックス内に効率よく浸透できると共に、毛髪表面をコーティングして保護できる、毛髪浸透型及び/又は毛髪被覆型乳化組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
[1] 油相と、水相と、ナノ粒子とを含み、前記ナノ粒子は、自発的に閉鎖小胞体を形成する両親媒性物質により形成された閉鎖小胞体および水酸基を有する重縮合ポリマーの粒子の少なくとも一方である、毛髪浸透型及び/又は毛髪被覆型乳化組成物。
[2] 前記毛髪浸透型及び/又は毛髪被覆型乳化組成物は、O/W型エマルションである、上記[1]に記載の毛髪浸透型及び/又は毛髪被覆型乳化組成物。
[3] 前記ナノ粒子は、前記油相と前記水相との界面に存在する、上記[1]または[2]に記載の毛髪浸透型及び/又は毛髪被覆型乳化組成物。
[4] 前記ナノ粒子は、コルテックス細胞に対する親和性を有する、上記[1]~[3]のいずれか1つに記載の毛髪浸透型及び/又は毛髪被覆型乳化組成物。
[5] 前記ナノ粒子は、セラミドおよびステロールの少なくとも一方を有する、上記[1]~[4]のいずれか1つに記載の毛髪浸透型及び/又は毛髪被覆型乳化組成物。
[6] 前記ナノ粒子は、不飽和脂肪酸と塩基性アミノ酸と、セラミドおよびステロールの少なくとも一方とを有する、上記[1]~[5]のいずれか1つに記載の毛髪浸透型及び/又は毛髪被覆型乳化組成物。
[7] 前記不飽和脂肪酸は、一価不飽和脂肪酸または多価不飽和脂肪酸である、上記[6]に記載の毛髪浸透型及び/又は毛髪被覆型乳化組成物。
[8] 前記塩基性アミノ酸は、リシンおよびL-アルギニンの少なくとも一方である、上記[6]または[7]に記載の毛髪浸透型及び/又は毛髪被覆型乳化組成物。
[9] 前記セラミドは、ヒト型セラミド、植物性セラミドおよび擬似セラミドからなる群より選択される1種以上である、上記[6]~[8]のいずれか1つに記載の毛髪浸透型及び/又は毛髪被覆型乳化組成物。
[10] 前記ステロールは、コレステロールおよびフィトステロールの少なくとも一方である、上記[6]~[8]のいずれか1つに記載の毛髪浸透型及び/又は毛髪被覆型乳化組成物。
[11] 前記ナノ粒子は、フィタントリオールおよびジラウロイルグルタミン酸リシンNaを有する、上記[1]~[4]のいずれか1つに記載の毛髪浸透型及び/又は毛髪被覆型乳化組成物。
[12] 前記ナノ粒子は、疎水化ヒドロキシプロピルメチルセルロースを有する、上記[1]~[4]のいずれか1つに記載の毛髪浸透型及び/又は毛髪被覆型乳化組成物。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、キューティクルに吸着しても乳化粒子の破壊が起こりにくく、多くの有効成分をコルテックス内に効率よく浸透できると共に、毛髪表面をコーティングして保護できる、毛髪浸透型及び/又は毛髪被覆型乳化組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、実施例1の乳化組成物に浸漬させて得られた試料毛断面を蛍光顕微鏡で観察した画像である。
【
図2】
図2は、実施例1の乳化組成物に浸漬せずに、水に6時間浸漬させた損傷毛の断面を蛍光顕微鏡で観察した画像である。
【
図3】
図3は、比較例1の乳化組成物に浸漬させて得られた試料毛断面を蛍光顕微鏡で観察した画像である。
【
図4】
図4は、実施例2の乳化組成物に浸漬させて得られた試料毛断面を蛍光顕微鏡で観察した画像である。
【
図5】
図5は、実施例3の乳化組成物に浸漬させて得られた試料毛断面を蛍光顕微鏡で観察した画像である。
【
図6】
図6は、実施例4の乳化組成物に浸漬させて得られた試料毛断面を蛍光顕微鏡で観察した画像である。
【
図7】
図7は、実施例5の乳化組成物に浸漬させて得られた試料毛断面を蛍光顕微鏡で観察した画像である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施形態に基づき詳細に説明する。
【0013】
実施形態の毛髪浸透型及び/又は毛髪被覆型乳化組成物は、油相と、水相と、ナノ粒子とを含み、ナノ粒子は、自発的に閉鎖小胞体を形成する両親媒性物質により形成された閉鎖小胞体および水酸基を有する重縮合ポリマーの粒子の少なくとも一方である。
【0014】
毛髪浸透型及び/又は毛髪被覆型乳化組成物は、油相と水相とナノ粒子とを含み、O/W型エマルションである。ナノ粒子は、自発的に閉鎖小胞体を形成する両親媒性物質により形成された閉鎖小胞体(以下、単に閉鎖小胞体ともいう)および水酸基を有する重縮合ポリマーの粒子(以下、単に重縮合ポリマーの粒子ともいう)の少なくとも一方である。このような毛髪浸透型及び/又は毛髪被覆型乳化組成物は、閉鎖小胞体および重縮合ポリマーの粒子の少なくとも一方を用いた、いわゆる三相乳化法を適用した乳化組成物であり、O/W型(水中油滴型)エマルションである。
【0015】
閉鎖小胞体は、水性成分中で自発的に閉鎖小胞体を形成する性質を有する。重縮合ポリマーの粒子とは、重縮合ポリマーの単粒子、および重縮合ポリマーの単粒子同士が連なったものを包含する一方で、単粒子化される前の重縮合ポリマーの凝集体(網目構造を有する)は包含しない。
【0016】
毛髪浸透型及び/又は毛髪被覆型乳化組成物では、内相である油相の周囲に、複数の閉鎖小胞体および複数の重縮合ポリマーの粒子の少なくとも一方が存在し、さらにその外側に、外相である水相が存在する。すなわち、複数のナノ粒子が油相と水相との界面に存在すると共に、水相が連続相である。このように、毛髪浸透型及び/又は毛髪被覆型乳化組成物では、油相が水相中に分散している。
【0017】
毛髪浸透型及び/又は毛髪被覆型乳化組成物は、ナノ粒子がナノ粒子よりも大きい粒子状の油相の周囲に多数存在する、乳化粒子(三相乳化粒子)を多数含有する。乳化粒子の周囲には、水相が存在し、多数の乳化粒子は水相中に分散される。
【0018】
閉鎖小胞体および重縮合ポリマーの粒子は、いわゆる三相乳化能を有する粒子として知られており、ナノ粒子は、閉鎖小胞体および重縮合ポリマーの粒子の少なくとも一方である。
【0019】
粒子状の油相の表面にナノ粒子が多数存在する、すなわち油相の表面が多数のナノ粒子で覆われることで、油相同士には斥力が発生する。油相間に発生する斥力は、油相間に発生する引力よりも大きい。そのため、水相中での油相同士の凝集、すなわち乳化粒子同士の凝集が抑制され、油相の分散性が維持および向上する。
【0020】
このような三相乳化法は、ナノ粒子が、ファンデルワールス力により内相である油相に付着することで、油相(内相)と水相(外相)との界面に介在し、油相と水相の乳化を可能とするものである。三相乳化機構は、親水性部分および疎水性部分をそれぞれ水相および油相に向け、油水界面張力を下げることで乳化状態を維持する、界面活性剤による乳化機構とは全く異なる(例えば特許3855203号公報参照)。
【0021】
ナノ粒子は、閉鎖小胞体のみでもよいし、重縮合ポリマーの粒子のみでもよいし、閉鎖小胞体および重縮合ポリマーの粒子でもよい。
【0022】
毛髪浸透型及び/又は毛髪被覆型乳化組成物は、上記のように、界面活性剤による乳化機構と全く異なる三相乳化技術を適用している。そのため、毛髪浸透型及び/又は毛髪被覆型乳化組成物は、界面活性剤を含まなくても、安定した乳化状態を維持できる。このように、毛髪浸透型及び/又は毛髪被覆型乳化組成物では、従来の界面活性剤を用いた乳化組成物に比べて、界面活性剤の量を大幅に減少でき、場合によっては界面活性剤を含まない。
【0023】
また、乳化粒子は三相乳化の構造を有するため、ナノ粒子を含む乳化粒子は、キューティクルに吸着しても破壊が起こりにくく、多くの有効成分をコルテックス内に効率よく浸透できると共に、毛髪表面をコーティングして保護できる。
【0024】
毛髪浸透型及び/又は毛髪被覆型乳化組成物の油相は、油性成分であり、水相とは混ざり合わない。油相は、固形油でもよいし、固形油と液状油との混合油でもよいが、液状油であることが好ましい。液状油は常温(25℃)で液体状の油であり、固形油は、常温で固体状の油である。
【0025】
液状油としては、植物油(オリーブ油、アボガド油、ツバキ油、マカデミアナッツ油、月見草油、ホホバ油、ナタネ油、卵黄油、ゴマ油、ヒマシ油、サフラワー油、綿実油、大豆油、茶実油、コメヌカ油、小麦胚芽油、胚芽油、落花生油、ヒマワリ油、アーモンド油、タートル油、トウモロコシ油、ミンク油、パーシック油、サザンカ油、アマニ油、エノ油、カヤ油等)、中鎖脂肪酸トリグリセリド、炭化水素油(スクワレン、スクワラン、流動パラフィン等)、エステル油(メトキシケイヒ酸エチルヘキシル、エチルヘキサン酸セチル、リンゴ酸ジイソステアリル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸エチルヘキシル、パルミチン酸オクチル、イソパルミチン酸オクチル、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソトリデシル、ラウリル酸メチルヘプチル、ラウリン酸ヘキシル、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、トリエチルヘキサノイン、ジカプリン酸ネオペンチルリコール、オクタン酸セチル、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソプロピル、オレイン酸イソデシル、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル、テトラ2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリット、コハク酸2-エチルヘキシル、セバシン酸ジエチル等)、シリコーン油(シクロペンタシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、メチルポリシロキサン、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等)が挙げられる。
【0026】
固形油としては、シア脂、ヤシ油、ワセリン、ミツロウ、ステアリルアルコール、セタノール、ベヘニルアルコール、マカデミアナッツ油脂肪酸フィトステリル、ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/ベヘニル)、イソステアリン酸水添ヒマシ油等が挙げられる。
【0027】
毛髪浸透型及び/又は毛髪被覆型乳化組成物における油相の平均粒径は、毛髪浸透型及び/又は毛髪被覆型乳化組成物の用途などに応じて適宜選択される。毛髪浸透型及び/又は毛髪被覆型乳化組成物は、三相乳化によるものであるため、界面活性剤を利用した従来の乳化組成物と比較して、油相の平均粒径を広い範囲内で制御することができる。油相の平均粒径は、粒度分布測定装置FPAR(大塚電子(株)社製)を用いて動的光散乱法により測定し、Contin解析により得られることができる。
【0028】
毛髪浸透型及び/又は毛髪被覆型乳化組成物に含まれる油相の含有割合は、毛髪浸透型及び/又は毛髪被覆型乳化組成物の用途などに応じて適宜選択される。油相の含有割合は、例えば、3.0質量%以上、5.0質量%以上、10.0質量%以上である。
【0029】
毛髪浸透型及び/又は毛髪被覆型乳化組成物の水相は、水性成分であり、油相とは混ざり合わず、連続相であり、複数の乳化粒子を分散させる。水相は、例えば水である。
【0030】
毛髪浸透型及び/又は毛髪被覆型乳化組成物に含まれる水相の含有割合は、毛髪浸透型及び/又は毛髪被覆型乳化組成物の用途などに応じて適宜選択される。水相の含有割合は、例えば、60.0質量%以上、75.0質量%以上であってもよく、また、95.0質量%以下、90.0質量%以下であってもよい。
【0031】
毛髪浸透型及び/又は毛髪被覆型乳化組成物のナノ粒子は、親水性であり、コルテックス細胞に対する親和性を有する。
【0032】
このようなナノ粒子が閉鎖小胞体である場合、自発的に閉鎖小胞体を形成する両親媒性物質(以下、単に両親媒性物質ともいう)は、水中において自発的に閉鎖小胞体の形成能を有する両親媒性物質であり、例えば、水中で二分子膜を形成可能な(つまり、水中でベシクルを形成可能な)ものである。両親媒性物質としては、下記式(1)で表されるポリオキシエチレン硬化ひまし油の誘導体が好適である。
【0033】
【0034】
式(1)中、エチレンオキシドの平均付加モル数であるE(E=L+M+N+X+Y+Z)は、好ましくは3以上100以下である。
【0035】
両親媒性物質の好適例としては、上記の他に、リン脂質やリン脂質誘導体など、特に疎水基と親水基とがエステル結合したものが挙げられる。
【0036】
リン脂質としては、下記式(3)で表される構成のうち、炭素鎖長12のDLPC(1,2-Dilauroyl-sn-glycero-3-phospho-rac-1-choline)、炭素鎖長14のDMPC(1,2-Dimyristoyl-sn-glycero-3-phospho-rac-1-choline)、炭素鎖長16のDPPC(1,2-Dipalmitoyl-sn-glycero-3-phospho-rac-1-choline)が好適である。
【0037】
【0038】
また、下記式(4)で表される構成のうち、炭素鎖長12のDLPG(1,2-Dilauroyl-sn-glycero-3-phospho-rac-1-glycerol)のNa塩またはNH4塩、炭素鎖長14のDMPG(1,2-Dimyristoyl-sn-glycero-3-phospho-rac-1-glycerol)のNa塩またはNH4塩、炭素鎖長16のDPPG(1,2-Dipalmitoyl-sn-glycero-3-phospho-rac-1-glycerol)のNa塩またはNH4塩が好適である。
【0039】
【0040】
さらに、リン脂質の好適例としては、卵黄レシチンまたは大豆レシチンなどのレシチンが挙げられる。
【0041】
また、両親媒性物質の好適例としては、脂肪酸エステルが挙げられる。脂肪酸エステルとしては、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステルが好適である。
【0042】
ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、脂肪酸が飽和不飽和を問わず、直鎖脂肪酸または分岐脂肪酸であり、その脂肪酸とポリグリセリンとのエステルであることが好ましく、その中でも、モノミリスチン酸ポリグリセリル、ジミリスチン酸ポリグリセリル、トリミリスチン酸ポリグリセリル、モノパルミチン酸ポリグリセリル、ジパルミチン酸ポリグリセリル、トリパルミチン酸ポリグリセリル、モノステアリン酸ポリグリセリル、ジステアリン酸ポリグリセリル、トリステアリン酸ポリグリセリル、モノイソステアリン酸ポリグリセリル、ジイソステアリン酸ポリグリセリル、トリイソステアリン酸ポリグリセリル、ペンタイソステアリン酸ポリグリセリル、モノオレイン酸ポリグリセリル、ジオレイン酸ポリグリセリル、トリオレイン酸ポリグリセリル、ペンタオレイン酸ポリグリセリル、ポリリシノレン酸ポリグリセリルがより好ましい。
【0043】
ショ糖脂肪酸エステルとしては、ショ糖ラウリン酸エステル、ショ糖ミリスチン酸エステル、ショ糖パルミチン酸エステル、ショ糖ステアリン酸エステル、ショ糖オレイン酸エステルが好ましい。
【0044】
ナノ粒子が重縮合ポリマーの粒子である場合、水酸基を有する重縮合ポリマー(以下、単に重縮合ポリマーともいう)は、天然高分子、合成高分子、または半合成高分子のいずれでもよい。その中でも、重縮合ポリマーは、安全性に優れ、一般的に安価である点で、天然高分子であることが好ましく、乳化機能に優れる点で、糖ポリマーであることがより好ましい。
【0045】
糖ポリマーは、セルロース、デンプンなどのグルコシド構造を有するポリマーである。例えば、リボース、キシロース、ラムノース、フコース、グルコース、マンノース、グルクロン酸、グルコン酸などの単糖類の中からいくつかの糖を構成要素として微生物が産生するもの、キサンタンガム、アラビアゴム、グアーガム、カラヤガム、カラギーナン、ペクチン、フコイダン、クインシードガム、トラントガム、ローカストビーンガム、ガラクトマンナン、カードラン、ジェランガム、フコゲル、カゼイン、ゼラチン、デンプン、コラーゲン、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸誘導体、シロキクラゲ多糖体などの天然高分子、メチルセルロース、エチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、セルロース結晶体、デンプン・アクリル酸ナトリウムグラフト重合体、疎水化ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどの半合成高分子、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸塩、ポリエチレンオキシドなどの合成高分子が好ましい。
【0046】
また、ナノ粒子は、セラミドおよびステロールの少なくとも一方を有することが好ましい。なかでも、毛髪成分との親和性が高いことから、ナノ粒子は、不飽和脂肪酸、塩基性アミノ酸、ならびにセラミドおよびステロールの少なくとも一方を有することが好ましい。ナノ粒子は、両親媒性油剤であるセラミドおよびステロールについて、セラミドのみを有してもよいし、ステロールのみを有してもよいし、セラミドおよびステロールを有してもよい。
【0047】
不飽和脂肪酸としては、毛髪成分との親和性が高いことから、一価不飽和脂肪酸または多価不飽和脂肪酸であることが好ましい。なかでも、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸であることがより好ましい。
【0048】
塩基性アミノ酸としては、毛髪成分との親和性が高いことから、リシンおよびL-アルギニンの少なくとも一方であることが好ましい。塩基性アミノ酸は、リシンのみでもよいし、L-アルギニンのみでもよいし、リシンおよびL-アルギニンを併用してもよい。
【0049】
セラミドとしては、毛髪成分との親和性が高いことから、ヒト型セラミド、植物性セラミドおよび擬似セラミドからなる群より選択される1種以上であることが好ましい。なかでも、セラミド2、セラミド3、セラミド5、糖セラミド、疑似セラミドであることがより好ましい。例えば、セラミドは、ヒト型セラミドのみでもよいし、植物性セラミドおよび擬似セラミドを併用してもよい。
【0050】
ステロールとしては、毛髪成分との親和性が高いことから、コレステロールおよびフィトステロールの少なくとも一方であることが好ましい。ステロールは、コレステロールのみでもよいし、フィトステロールのみでもよいし、コレステロールおよびフィトステロールを併用してもよい。
【0051】
また、ナノ粒子は、不飽和脂肪酸と塩基性アミノ酸と、セラミドおよびステロールの少なくとも一方とのみからなってもよい。
【0052】
セラミド、ステロール、不飽和脂肪酸はCMC成分であり、塩基性アミノ酸はコルテックス細胞成分であることから、ナノ粒子は、優れた生体適合性を有し、さらにはコルテックス細胞に対する優れた親和性を有する。
【0053】
また、ナノ粒子は、自身が有する不飽和脂肪酸および塩基性アミノ酸について、不飽和脂肪酸および塩基性アミノ酸を含み、水中で自発的にナノ粒子化するイオン性両親媒性物質を有することが好ましい。この場合、ナノ粒子は、イオン性両親媒性物質とセラミドおよびステロールの少なくとも一方とのみからなってもよい。また、イオン性両親媒性物質としては、不飽和脂肪酸および塩基性アミノ酸のみからなってもよい。
【0054】
また、上記以外のナノ粒子としては、フィタントリオールおよびジラウロイルグルタミン酸リシンNaを有する。この場合、ナノ粒子は、フィタントリオールおよびジラウロイルグルタミン酸リシンNaのみからなってもよい。
【0055】
ナノ粒子の平均粒子径は、好ましくは8nm以上800nm以下、より好ましくは8nm以上500nm以下、さらに好ましくは8nm以上400nm以下である。ナノ粒子の平均粒子径が上記範囲であると、毛髪浸透型及び/又は毛髪被覆型乳化組成物を実現するための三相乳化の乳化剤としてナノ粒子が良好であり、毛髪浸透型及び/又は毛髪被覆型乳化組成物の乳化性を向上できる。
【0056】
ナノ粒子の平均粒子径は、粒度分布測定装置FPAR(大塚電子(株)社製)を用いて動的光散乱法により測定し、Contin解析により求めることができる。
【0057】
毛髪浸透型及び/又は毛髪被覆型乳化組成物に含まれるナノ粒子の含有割合は、毛髪浸透型及び/又は毛髪被覆型乳化組成物の用途などに応じて適宜選択される。
【0058】
また、毛髪浸透型及び/又は毛髪被覆型乳化組成物は、キューティクルに吸着しても乳化粒子の破壊が起こりにくく、多くの有効成分をコルテックス内に効率よく浸透できると共に、毛髪表面をコーティングして保護できることを阻害しない限りにおいて、上記成分に加えて、各種成分をさらに含んでもよい。
【0059】
次に、上記の毛髪浸透型及び/又は毛髪被覆型乳化組成物の製造方法について説明する。
【0060】
毛髪浸透型及び/又は毛髪被覆型乳化組成物の製造方法では、三相乳化手法に基づき、複数のナノ粒子が水性成分中に分散している分散液を撹拌機などで撹拌しながら、油性成分を分散液に添加することによって、複数の乳化粒子が形成され、水相中に分散している複数の乳化粒子を含有する毛髪浸透型及び/又は毛髪被覆型乳化組成物が得られる。乳化粒子について、滴状の油相の表面が複数のナノ粒子で覆われている。
【0061】
ナノ粒子が水性成分中に分散している分散液の調製方法の一例としては、特許第3855203号に記載の方法である。
【0062】
また、ナノ粒子が水性成分中に分散している分散液の調製方法の他例として、加熱溶解工程および撹拌工程を有する方法である。
【0063】
加熱溶解工程では、不飽和脂肪酸とセラミドおよびステロールの少なくとも一方とを加熱溶解して混合液を得る。混合液には、不飽和脂肪酸と、セラミドおよびステロールの少なくとも一方とが溶解されている。加熱溶解工程における加熱溶解の温度は、不飽和脂肪酸と、セラミドおよびステロールの少なくとも一方とが十分に溶解できる温度であり、かつこれらの物質が変性しない温度であれば、特に限定されるものではない。
【0064】
また、加熱溶解工程において、不飽和脂肪酸と、セラミドおよびステロールの少なくとも一方と共溶媒とを加熱溶解して混合液を得てもよい。不飽和脂肪酸と、セラミドおよびステロールの少なくとも一方とを加熱溶解するときに、共溶媒を用いることで、混合液を得やすくなる。共溶媒は、ブチレングリコール、ジプロピレングリコールまたはペンタンジオールであることが好ましい。
【0065】
加熱溶解工程の後に行われる撹拌工程では、加熱溶解工程で得られた混合液と塩基性アミノ酸水溶液とを撹拌することで、ナノ粒子が分散している分散液を得る。また、撹拌工程では、加熱した塩基性アミノ酸水溶液を混合液と混合してもよい。撹拌工程における撹拌速度や撹拌温度などの撹拌条件は、混合液と塩基性アミノ酸水溶液との撹拌によってナノ粒子を得ることができれば、特に限定されるものではない。
【0066】
以上、実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本開示の概念および特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含み、本開示の範囲内で種々に改変することができる。
【実施例0067】
次に、実施例および比較例について説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0068】
(実施例1)
まず、表1に示す量のオレイン酸とコレステロールとセラミド2とを150℃に加温し溶解させて、混合液を得た。続いて、混合液に対して、85℃に加温したL-アルギニン水溶液(水溶液中のL-アルギニン量および水量は表1に示す量)を添加して混合し、85℃で10分間撹拌した。撹拌後、水溶液を25℃まで冷却することで、オレイン酸とコレステロールとセラミド2とL-アルギニンとから構成されるナノ粒子が分散されているナノ粒子分散液を得た。続いて、三相乳化手法に基づき、ナノ粒子分散液をホモミキサーで10000rpm、25℃で撹拌しながら、表1に示す量のトリ(カプリル・カプリン酸)グリセリルおよびナイルレッド(後述する蛍光顕微鏡観察用の蛍光色素)を添加して20分間撹拌することで、乳化組成物を得た。
【0069】
(比較例1)
まず、表2に示す量の水と界面活性剤であるヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリドを混合し、続いて、この溶液をホモミキサーで10000rpm、25℃で撹拌しながら、表2に示す量のトリ(カプリル・カプリン酸)グリセリルおよびナイルレッドを添加して3分間撹拌することで、乳化組成物を得た。
【0070】
実施例1および比較例1の乳化組成物の毛髪浸透性及び毛髪被覆性を以下のように評価した。
【0071】
まず、評価を行うために使用する損傷毛を次のようにして用意した。健常毛(毛束黒髪100%、BS-B-A、株式会社ビューラックス)について、洗浄剤(ポリオキシエチレン(2)ラウリル硫酸Na8%水溶液)を用いて洗浄し、続いて、水道水ですすぎ後、乾燥させた。次に、毛に対して、ブリーチ剤(ビューティーン、ベースアップブリーチ、ホーユー株式会社)を用いたブリーチ剤塗布と水道水によるすすぎと乾燥とによる損傷作業を合計3回繰り返すことで、損傷毛を得た。
【0072】
重量測定した損傷毛1束を乳化組成物25gに25℃、6時間浸漬させた。続いて、乳化組成物から取り出した損傷毛をイオン交換水500mLですすぎ、その後、デシケーター内で自然乾燥させた。こうして、試料毛を得た。試料毛について、重量測定を行った。その後、試料毛を樹脂に包埋させた試料について、試料毛の長手方向に対して垂直に、厚さ10μmで切断した。切断した試料における試料毛断面を蛍光顕微鏡(BX53、オリンパス)で観察した。表1~2には、乳化組成物への浸漬前の毛(損傷毛1束、水分を含まない)の重量、乳化組成物への浸漬後の毛(試料毛1束、水分を含まない)の重量、および重量の増加量を示す。また、表1~2には、試料毛断面を蛍光顕微鏡で観察した画像を基に評価した結果についても示す。損傷毛に対する乳化組成物の毛髪浸透性について、以下のようにランク付けした。ランク○のみが毛髪浸透性に優れ、ランク△およびランク×は毛髪浸透性不良と判断した。
【0073】
○:コルテックス内への蛍光試薬の浸透を確認した。
△:コルテックス内への蛍光試薬の浸透をわずかに確認した。
×:コルテックス内への蛍光試薬の浸透を確認しなかった。
【0074】
【0075】
【0076】
また、
図1は、実施例1の乳化組成物に浸漬させて得られた試料毛断面を蛍光顕微鏡で観察した画像である。また、
図2は、参考例として、実施例1の乳化組成物に浸漬せずに、水に6時間浸漬させた損傷毛の断面を蛍光顕微鏡で観察した画像である。また、
図3は、比較例1の乳化組成物に浸漬させて得られた試料毛断面を蛍光顕微鏡で観察した画像である。
図1に示すように、実施例1の乳化組成物は、コルテックス層に浸透していた。さらには、実施例1の乳化組成物は、キューティクルへの吸着を確認したことから、毛髪表面をコーティングしていた。一方、
図2に示すように、実施例1の乳化組成物の代わりに、水に浸漬させた損傷毛では、コルテックス層の蛍光を確認できなかった。また、
図3に示すように、比較例1の乳化組成物では、キューティクルへの吸着を明確に確認したが、コルテックス層への浸透は非常にわずかであった。また、重量測定では、実施例1および比較例1で重量が増加した。以上から、実施例1の乳化組成物は、コルテックス層に良好に浸透すると共に毛髪表面を良好にコーティングし、その結果として重量が増加していることから、優れた毛髪浸透性及び毛髪被覆性を有する乳化組成物であった。一方、比較例1でも重量が増加していたが、乳化組成物の大部分がキューティクルに吸着していることから、比較例1の乳化組成物の毛髪浸透性は不良であった。
【0077】
(実施例2)
実施例1と同様の乳化組成物を用いた。そして、損傷毛の浸漬時間を30分にした以外は実施例1と同様にして、浸漬前後の毛束の重量変化、毛髪浸透性及び毛髪被覆性の評価を行った。表5~6に結果を示す。また、
図4は、実施例2の乳化組成物に浸漬させて得られた試料毛断面を蛍光顕微鏡で観察した画像である。このように、乳化組成物への損傷毛の浸漬時間を短くしても、実施例1と同様に、乳化組成物の毛髪浸透効果及び毛髪被覆効果がみられた。
【0078】
(実施例3)
ナノ粒子分散液を6000rpmで撹拌したこと以外は実施例1と同様にして、乳化組成物を用いた。そして、実施例2と同様にして、浸漬前後の毛束の重量変化、毛髪浸透性及び毛髪被覆性の評価を行った。表5~6に結果を示す。また、
図5は、実施例3の乳化組成物に浸漬させて得られた試料毛断面を蛍光顕微鏡で観察した画像である。また、実施例3のエマルションの平均粒子径は、397.6nmであった。このように、エマルションの平均粒子径を変え、損傷毛の浸漬時間を短くしても、実施例1と同様に、乳化組成物の毛髪浸透効果及び毛髪被覆効果がみられた。
【0079】
(実施例4)
まず、表3に示す量の1,2-ペンタンジオールとフィタントリオールとジラウロイルグルタミン酸リシンナトリウム液(30%水溶液)とを溶解させ、続いて表3に示す量の水を添加して混合することで、フィタントリオールとジラウロイルグルタミン酸リシンNaとから構成されるナノ粒子が分散されているナノ粒子分散液を得た。続いて、三相乳化手法に基づき、ナノ粒子分散液をホモミキサーで10000rpm、25℃で撹拌しながら、表3に示す量のトリ(カプリル・カプリン酸)グリセリルおよびナイルレッドを添加して20分間撹拌することで、乳化組成物を得た。そして、実施例2と同様にして、浸漬前後の毛束の重量変化、毛髪浸透性及び毛髪被覆性の評価を行った。表5~6に結果を示す。また、
図6は、実施例4の乳化組成物に浸漬させて得られた試料毛断面を蛍光顕微鏡で観察した画像である。このように、乳化組成物の種類を変え、損傷毛の浸漬時間を短くしても、実施例1と同様に、乳化組成物の毛髪浸透効果及び毛髪被覆効果がみられた。
【0080】
【0081】
(実施例5)
まず、疎水化ヒドロキシプロピルメチルセルロースがナノ粒子化している0.5%水溶液と水とを混合することで、ナノ粒子分散液を得た。続いて、三相乳化手法に基づき、ナノ粒子分散液をホモミキサーで6000rpm、25℃で撹拌しながら、表4に示す量のトリ(カプリル・カプリン酸)グリセリルおよびナイルレッドを添加して20分間撹拌することで、乳化組成物を得た。そして、実施例2と同様にして、浸漬前後の毛束の重量変化、毛髪浸透性及び毛髪被覆性の評価を行った。表5~6に結果を示す。また、
図7は、実施例5の乳化組成物に浸漬させて得られた試料毛断面を蛍光顕微鏡で観察した画像である。このように、乳化組成物の種類を変え、損傷毛の浸漬時間を短くしても、実施例1と同様に、乳化組成物の毛髪浸透効果及び毛髪被覆効果がみられた。
【0082】
【0083】
【0084】
【0085】
(実施例6)
まず、表7に示す量のオレイン酸とコレステロールとセラミド2とを150℃に加温し溶解させて、混合液を得た。続いて、混合液に対して、85℃に加温したL-アルギニン水溶液(水溶液中のL-アルギニン量および水量は表1に示す量)を添加して混合し、85℃で10分間撹拌した。撹拌後、水溶液を25℃まで冷却することで、オレイン酸とコレステロールとセラミド2とL-アルギニンとから構成されるナノ粒子が分散されているナノ粒子分散液を得た。続いて、三相乳化手法に基づき、ナノ粒子分散液をホモミキサーで6000rpm、25℃で撹拌しながら、表7に示す量のトリ(カプリル・カプリン酸)グリセリルを添加して20分間撹拌して粗乳化を行った後、高圧乳化装置(SUGINO社製 Star Burst mini HJP-25001)にて噴射圧力150MPaで3回乳化処理を行うことで、乳化組成物を得た。
【0086】
実施例6で得られた乳化組成物について、次の官能評価を行った。まず、20代~50代の女性7名について、シャンプーで洗髪した。続いて、実施例6で得られた乳化組成物を毛髪になじませた後にすすぎを行った。乾かした毛髪の使用感触について、毛髪の指通りおよび毛髪のしっとり感を質問した。その結果、毛髪の指通りについては、全員が良いと回答した。毛髪のしっとり感については、6名が良いと回答し、1名が悪いと回答した。こうした結果から、実施例6の乳化組成物は、一般的な毛髪コンディショニング製剤(カチオン性コンディショナー(カチオン性界面活性剤を使用))と同等以上の使用感触を示す毛髪浸透型及び/又は毛髪被覆型の乳化組成物であることがわかった。
【0087】
このように、本発明の毛髪浸透型及び/又は毛髪被覆型乳化組成物は、キューティクルに吸着しても乳化粒子の破壊が起こりにくく、多くの有効成分をコルテックス内に効率よく浸透できることに加えて、毛髪表面をコーティングし保護することが可能である。すなわち、本発明の毛髪浸透型及び/又は毛髪被覆型乳化組成物は、カチオン性コンディショナーの代替となることが可能である。
【0088】