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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173670
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】受信装置
(51)【国際特許分類】
   H04B 7/08 20060101AFI20241205BHJP
【FI】
H04B7/08 022
H04B7/08 052C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024053817
(22)【出願日】2024-03-28
(31)【優先権主張番号】P 2023090771
(32)【優先日】2023-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001025
【氏名又は名称】弁理士法人レクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】羽深 貴光
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ダイバーシティアンテナを用いたデータ受信の時間短縮及び消費電力の低減を図る受信装置を提供する。
【解決手段】第1のアンテナANT1及び第2のアンテナANT2と、アンテナ切替部11と、ベースバンド信号を得る周波数変換部15と、周波数検波部17と、データ再生部20と、同期検出部21と、信号強度取得部22と、信号強度に基づいてアンテナ切替部による切り替えを制御する切替制御部23と、を有する。切替制御部は、同期検出前は第1の所定時間おきに切り替えるようにアンテナ切替部を制御し、一方のアンテナで受信及び同期検出が行われた場合、同期検出部に同期検出状態を維持させるとともに、アンテナ切替部に受信アンテナを切り替えさせ、第2の所定時間経過後に、第1のアンテナ及び第2のアンテナの各々による受信の信号強度を比較した比較結果に基づいて、受信アンテナを第1のアンテナ又は第2のアンテナの一方に固定させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリアンブル及び前記プリアンブルに続くデータ本体部からなるデータパケットを変調した無線送信波を受信する受信装置であって、
第1のアンテナ及び第2のアンテナと、
前記無線送信波の受信に用いる受信アンテナを、前記第1のアンテナ及び前記第2のアンテナのいずれか一方に選択的に切り替えるアンテナ切替部と、
前記無線送信波を前記第1のアンテナ又は前記第2のアンテナにより受信して得られた受信信号に周波数変換を施してベースバンド信号を得る周波数変換部と、
前記ベースバンド信号に周波数検波を施して周波数検波信号を得る周波数検波部と、
前記周波数検波信号からDCオフセットを除去するオフセット除去部と、
前記DCオフセットが除去された前記周波数検波信号に基づいてデータ判定を行い、復調データを生成するデータ再生部と、
前記復調データと所定のプリアンブルパターンのデータとの相関をとることにより同期検出を行う同期検出部と、
前記ベースバンド信号に基づいて、前記受信信号の信号強度を取得する信号強度取得部と、
前記アンテナ切替部による受信アンテナの切り替えを制御する切替制御部と、
を有し、
前記切替制御部は、
前記同期検出部による同期検出がなされる前は第1の所定時間おきに受信アンテナの切り替えを行うように前記アンテナ切替部を制御し、
前記第1のアンテナ及び前記第2のアンテナのうちの一方のアンテナが受信アンテナである際に受信された前記無線送信波で前記同期検出部による同期検出が行われた場合、前記同期検出部に状態保持信号を供給して同期検出状態を維持させるとともに、受信アンテナを他方のアンテナに切り替えるように前記アンテナ切替部を制御し、
前記アンテナ切替部により前記他方のアンテナへの切り替えが行われてから第2の所定時間経過後に、前記受信信号が前記第1のアンテナによって受信されたときの信号強度である第1の信号強度と、前記受信信号が前記第2のアンテナによって受信されたときの信号強度である第2の信号強度と、を比較した比較結果に基づいて、受信アンテナを前記第1のアンテナ及び前記第2のアンテナのいずれかに一方に固定するべく前記アンテナ切替部を制御することを特徴とする受信装置。
【請求項2】
前記データ再生部は、前記DCオフセットが除去された前記周波数検波信号からシンボルタイミング値を抽出し、当該シンボルタイミング値を用いてデータ判定を行い、
前記切替制御部は、前記状態保持信号を前記データ再生部に供給し、前記同期検出部による同期検出がおこなわれたときの前記シンボルタイミング値を保持させることを特徴とする請求項1に記載の受信装置。
【請求項3】
前記DCオフセットを検出するオフセット検出部を有し、
前記切替制御部は、前記状態保持信号を前記オフセット検出部に供給し、前記同期検出部による同期検出がおこなわれたときの前記DCオフセットの値を保持させることを特徴とする請求項1に記載の受信装置。
【請求項4】
前記信号強度取得部は、I相及びQ相の前記ベースバンド信号に基づいて、前記受信信号のRSSI値を算出し、
前記切替制御部は、前記受信信号が前記第1のアンテナによって受信されたときの前記RSSI値及び前記受信信号が前記第2のアンテナによって受信されたときの前記RSSI値を保持する保持部を有し、前記RSSI値を比較した比較結果に基づいて前記アンテナ切替部を制御することを特徴とする請求項1に記載の受信装置。
【請求項5】
前記無線送信波は、前記データパケットをFSK変調方式で変調した変調波であり、
前記周波数検波部は、前記ベースバンド信号に含まれる周波数変化を振幅変化に変換することにより、前記周波数検波信号を得ることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1に記載の受信装置。
【請求項6】
前記信号強度取得部は、
前記I相及びQ相の前記ベースバンド信号に基づいて前記受信信号の大きさを表すレベル値信号を生成する信号レベル算出部と、
前記レベル値信号と、前記レベル値信号を平均化した平均化信号を生成する平均化回路と、
前記レベル値信号の変動量を検出する変動量検出部と、
を含み、
前記レベル値信号の変動量が閾値以上である場合には、前記レベル値信号に基づいて前記RSSI値を算出し、
前記レベル値信号の変動量が前記閾値未満である場合には、前記平均化信号に基づいて前記RSSI値を算出する、
ことを特徴とする請求項4に記載の受信装置。
【請求項7】
前記信号強度取得部は、
信号レベルの対数変換を行う対数変換回路を含み、
前記レベル値信号の変動量が前記閾値以上である場合には、前記レベル値信号を遅延させた信号の信号レベルを対数変換することにより前記RSSI値を算出し、
前記レベル値信号の変動量が前記閾値未満である場合には、前記平均化信号を遅延させた信号の信号レベルを対数変換することにより前記RSSI値を算出する、
ことを特徴とする請求項6に記載の受信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受信装置に関し、特にダイバーシティ受信を行う受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
移動通信において高品質伝送を実現する手段として、ダイバーシティ受信技術が用いられている。ダイバーシティ受信を、周波数偏移変調(FSK:Frequency Shift Keying)を用いた通信システムに適用する場合、ダイバーシティ受信技術の一つであるアンテナダイバーシティが採用される。
【0003】
アンテナダイバーシティでは、プリアンブル及びデータ本体部からなるデータパケットのプリアンブルの部分を複数のアンテナで受信して受信電波強度(RSSI:Received Signal Strength Indicator)を取得し、取得した受信電波強度の高いアンテナでデータ本体部を受信する(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-59277号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
アンテナダイバーシティ受信機では、所定の時間間隔でアンテナの切り替えを行い、受信を希望する信号波(以下、希望波と称する)の探索を行う。そして、希望波がアンテナに入力され、同期検出が行われたタイミングでRSSI値を保持する。例えば、第1のアンテナ及び第2のアンテナを有するアンテナダイバーシティ受信機において、最初に第2のアンテナを用いて希望波を受信する場合、同期検出を行った後に、RSSI値を保持する。同期状態をクリア(初期化)した後、受信するアンテナを第1のアンテナに切り替え、第1のアンテナによる希望波の受信を行う。第1のアンテナに入力された希望波に基づいて同期検出が行われた場合又は同期検出されずに所定時間が経過した場合に、取得したRSSI値を第1のアンテナのRSSI値として保持する。第1のアンテナのRSSI値と第2のアンテナで取得したRSSI値とを比較し、大きなRSSI値を得られた方のアンテナをその後のデータを受信するアンテナとして決定する。その後、同期状態を初期化して、最終的に決定されたアンテナで再び同期検出を行い、データ部分を受信する。
【0006】
このように、従来のアンテナダイバーシティ受信機では、アンテナの切り替えを同期検出毎に行う。このため、データ部分を受信するアンテナを決定するまでには、アンテナの数×同期検出時間の分の時間が必要となる。また、最後のアンテナ切り替え時に同期状態が初期化されるため、再び同期状態となるまでにもう一度同期検出の時間が必要となる。
【0007】
アンテナダイバーシティの受信はデータパケットのプリアンブルの部分で行うことを前提としているため、アンテナ決定までに要する時間が長くなると、その分だけ長いプリアンブルが必要となる。したがって、データの送信時間及び受信時間が長くなってしまうという問題があった。また、データの送受信に要する時間が長いため、消費電力も大きくなってしまうという問題があった。
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、ダイバーシティアンテナを用いたデータ受信の時間短縮及び消費電力の低減を図ることが可能な受信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る受信装置は、プリアンブル及びデータ本体部からなるデータパケットを変調した無線送信波を受信する受信装置であって、第1のアンテナ及び第2のアンテナと、前記無線送信波の受信に用いる受信アンテナを、前記第1のアンテナ及び前記第2のアンテナのいずれか一方に選択的に切り替えるアンテナ切替部と、前記無線送信波を前記第1のアンテナ又は前記第2のアンテナにより受信して得られた受信信号に周波数変換を施してベースバンド信号を得る周波数変換部と、前記ベースバンド信号に周波数検波を施して周波数検波信号を得る周波数検波部と、前記周波数検波信号からDCオフセットを除去するオフセット除去部と、前記DCオフセットが除去された前記周波数検波信号に基づいてデータ判定を行い、復調データを生成するデータ再生部と、前記復調データと所定のプリアンブルパターンのデータとの相関をとることにより同期検出を行う同期検出部と、前記ベースバンド信号に基づいて、前記受信信号の信号強度を取得する信号強度取得部と、前記受信信号の信号強度に基づいて、前記アンテナ切替部による受信アンテナの切り替えを制御する切替制御部と、を有し、前記切替制御部は、前記同期検出部による同期検出がなされる前は第1の所定時間おきに受信アンテナの切り替えを行うように前記アンテナ切替部を制御し、前記第1のアンテナ及び前記第2のアンテナのうちの一方のアンテナで前記無線送信波の受信が行われ、前記同期検出部による同期検出が行われた場合、前記同期検出部に状態保持信号を供給して同期検出状態を維持させるとともに、受信アンテナを他方のアンテナに切り替えるように前記アンテナ切替部を制御し、前記アンテナ切替部により前記他方のアンテナへの切り替えが行われてから第2の所定時間経過後に、前記受信信号が前記第1のアンテナによって受信されたときの信号強度である第1の信号強度と、前記受信信号が前記第2のアンテナによって受信されたときの信号強度である第2の信号強度と、を比較した比較結果に基づいて、受信アンテナを前記第1のアンテナ及び前記第2のアンテナのいずれかに一方に固定するべく前記アンテナ切替部を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る受信装置によれば、ダイバーシティアンテナを用いたデータ受信の時間短縮及び消費電力の低減を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施例に係る受信装置の構成を示すブロック図である。
図2】RSSI検出回路の構成を示すブロック図である。
図3】平均化回路の構成を示すブロック図である。
図4】アンテナスイッチ制御回路の構成を示すブロック図である。
図5】ステートマシンの状態遷移図である。
図6】データ再生回路の構成を示すブロック図である。
図7】同期検出回路の構成を示すブロック図である。
図8】アンテナダイバーシティ制御のタイムチャートである
図9】比較例の受信装置の構成を示すブロック図である。
図10】比較例のアンテナスイッチ制御回路の構成を示すブロック図である。
図11】比較例の受信装置の受信動作を示すタイムチャートである。
図12】比較例の平均化回路の構成を示すブロック図である。
図13】比較例のRSSI検出回路におけるRSSI値の時間変化を示すタイムチャートである。
図14】本実施例のRSSI検出回路におけるRSSI値の時間変化を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施例について、図面を参照して説明する。なお、以下の各実施例における説明及び添付図面においては、実質的に同一又は等価な部分には同一の参照符号を付している。
【0013】
図1は、本発明の実施例に係る受信装置100の構成を示すブロック図である。受信装置100は、プリアンブル及びプリアンブルに続くデータ本体部からなるデータパケットを変調した無線変調波を受信する受信装置である。本実施例では、無線変調波は、FSK(Frequency Shift Keying)変調方式で変調されており、図示せぬ送信装置から受信装置100に向けて送信される。
【0014】
受信装置100は、アンテナAT1、アンテナAT2、アンテナスイッチ11、LNA(Low Noise Amplifier)回路12、第1MIX回路13、ADC(Analog to Digital Converter)14A、ADC14B、第2MIX回路15、LPF(Low Pass Filter)16A、LPF16B、周波数検波回路17、DCオフセット検出回路18、DCオフセット除去回路19、データ再生回路20、同期検出回路21、RSSI(Received Signal Strength Indicator)検出回路22、及びアンテナスイッチ制御回路23を含む。
【0015】
アンテナAT1は、送信装置から送信された無線変調波を受信するために設けられた第1のアンテナである。アンテナAT2は、送信装置から送信された無線変調波を受信するために設けられた第2のアンテナである。アンテナAT1及びアンテナAT2は、所定の間隔をあけて配置されている。
【0016】
アンテナスイッチ11は、アンテナAT及びAT2とLNA回路12との間に設けられている。アンテナスイッチ11は、アンテナ制御信号ACSの供給を受け、これに応じてアンテナAT1及びAT2のうちのいずれか一方がLNA回路12に接続されるように、接続先の切り替えを行う。アンテナAT又はアンテナAT2によって受信された無線変調波は、受信信号RSとしてアンテナスイッチ11に入力され、アンテナスイッチ11を経由してLNA回路12に供給される。
【0017】
LNA回路12は、アンテナAT1又はAT2によって受信され、アンテナスイッチ11を経由して供給された受信信号RSを低雑音で増幅する低雑音増幅器である。LNA回路12は、受信信号RSを増幅した増幅信号ASを第1MIX回路13に供給する。
【0018】
第1MIX回路13は、LNA回路12から供給された増幅信号ASを、図示せぬ局部発振器からの局部発振信号と混合する混合器である。第1MIX回路13は、増幅信号ASをIF(Inter Mediate)周波数(中間周波数)に周波数変換し、位相が90度異なるI相(In-phase)のIF信号IS及びQ相(Quadrature)のIF信号QSを生成する。
【0019】
ADC14A及び14Bは、第1MIX回路13の後段に設けられたAD変換器である。ADC14Aは、第1MIX回路13により生成されたI相のIF信号ISに対してアナログデジタル変換を行い、デジタルIF信号DIS(I相)を生成する。ADC14Bは、第1MIX回路13により生成されたQ相のIF信号QSに対してアナログデジタル変換を行い、デジタルIF信号DQS(Q相)を生成する。
【0020】
第2MIX回路15は、ADC14A及び14Bにより生成されたデジタルIF信号DIS(I相)及びデジタルIF信号DQS(Q相)を、図示せぬ局部発振器からの局部発振信号と混合する混合器である。第1MIX回路13は、デジタルIF信号DIS(I相)及びデジタルIF信号DQS(Q相)を周波数変換し、ベースバンド信号BIS(I相)及びBQS(Q相)を生成する。
【0021】
LPF16A及び16Bは、予め定められた遮断周波数で通過帯域を制限することにより、所望の周波数チャネルの信号成分のみを抽出するローパスフィルタである。LPF16Aは、第2MIX回路15から出力されたI相のベースバンド信号BISの遮断周波数以下の周波数成分(低域成分)を通過させ、I相の低域ベースバンド信号LISを出力する。LPF16Bは、第2MIX回路15から出力されたQ相のベースバンド信号BQSの遮断周波数以下の周波数成分(低域成分)を通過させ、Q相の低域ベースバンド信号LQSを出力する。
【0022】
周波数検波回路17は、FSK変調されている周波数変調信号の検波を行う検波回路である。周波数検波回路17は、低域ベースバンド信号LIS(I相)及びLQS(Q相)に含まれる周波数変化を振幅変化に変換し、周波数検波信号FDSを生成する。
【0023】
DCオフセット検出回路18は、周波数検波信号FDSに対して変曲点検出等の処理を行うことによりDCオフセットを検出する検出回路である。DCオフセット検出回路18は、変曲点検出により周波数検波信号FDSから変曲点情報を抽出し、変曲点情報の平均化を行うことによりDCオフセット情報DOIを生成する。
【0024】
DCオフセット除去回路19は、DCオフセット検出回路18により生成されたDCオフセット情報DOIに基づいて、周波数検波信号FDSからDCオフセットを除去する。DCオフセットが除去された周波数検波信号FDSは、DCオフセット除去後の周波数検波信号ODSとしてデータ再生回路20に供給される。
【0025】
データ再生回路20は、DCオフセット除去後の周波数検波信号ODSからシンボルタイミング値を抽出し、そのシンボルタイミングでデータ判定を行うことにより、復調データDDを生成する。
【0026】
同期検出回路21は、プリアンブル検出等による同期検出を行う回路である。同期検出回路21は、データ再生回路20により生成された復調データDDに基づいて同期検出を行い、同期検出信号SDSを生成する。同期検出信号SDSは、アンテナスイッチ制御回路23に供給される。
【0027】
RSSI検出回路22は、LPF16A及び16Bによる通過帯域の制限を経たベースバンド信号である低域ベースバンド信号LIS(I相)及びLQS(Q相)の入力を受け、これらに基づいて、受信信号RSのRSSI値(電力検出値)RVを算出する。
【0028】
図2は、RSSI検出回路22の構成を示すブロック図である。RSSI検出回路22は、信号レベル算出回路221、平均化回路222及びログ変換回路223を含む。
【0029】
信号レベル算出回路221は、低域ベースバンド信号LIS(I相)及びLQS(Q相)に基づいて、受信信号RSの大きさ(信号レベル)を算出する。具体的には、信号レベル算出回路221は、低域ベースバンド信号LIS(I相)及びLQS(Q相)の各々の2乗の和である“(LIS)+(LQS)”の平方根を算出することにより、受信信号RSの大きさを表すレベル値信号LVSを生成する。
【0030】
平均化回路222は、レベル値信号LVSの入力を受け、これを平均化する回路である。平均化回路222は、ノイズによるRSSI値の変動を抑えるために設けられている。平均化回路222は、平均化されたレベル値信号LVSを収束レベル値信号CVSとしてログ変換回路223に供給する。
【0031】
ログ変換回路223は、収束レベル値信号CVSを対数変換することにより、RSSI値RVを算出する。
【0032】
図3は、平均化回路222の構成を示すブロック図である。平均化回路222は、変動量検出回路2220、平均化信号生成部2221、第1遅延回路2222、バッファ2223、比較回路2227、閾値記憶部2228及びセレクタ2229を含む。
【0033】
変動量検出回路2220は、入力信号であるレベル値信号LVSの所定期間における変動量を算出する回路である。変動量検出回路2220は、第2遅延回路2224、加算器2225及び絶対値取得回路2226から構成されている。
【0034】
第2遅延回路2224は、レベル値信号LVSを所定期間だけ遅延させて出力する。加算器2225は、入力信号であるレベル値信号LVSと、第2遅延回路2224によってレベル値信号LVSを遅延された遅延レベル値信号と、入力信号であるレベル値信号LVSに“-1”の係数をかけた信号と、を加算した結果、すなわち遅延レベル値信号と入力信号との差分に相当する信号を出力する。絶対値取得回路2226は、加算器2225の出力の絶対値を取得し、変動量AVとして比較回路2227に供給する。
【0035】
閾値記憶部2228は、変動量比較のための所定の閾値THを記憶する。閾値記憶部2228から読み出された閾値THは、比較回路2227に供給される。
【0036】
比較回路2227は、変動量検出回路2220から出力された変動量AVと閾値THとを比較し、比較結果を示す比較結果信号CRSを出力する。比較結果信号CRSは、変動量AVが閾値TH以上である場合には“1”(論理レベル1)、変動量AVが閾値TH未満である場合には“0”(論理レベル0)に信号レベルが変化する信号である。
【0037】
第1遅延回路2222は、セレクタ2229の出力信号を遅延させ、収束レベル値信号CVSとして出力する。収束レベル値信号CVSは、平均化回路222から出力されてログ変換回路223に供給されるとともに、バッファ2223を介してフィードバックされ、平均化信号生成部2221に供給される。
【0038】
平均化信号生成部2221は、レベル値信号LVSと、バッファ2223を介してフィードバック供給された第1遅延回路2222の出力信号(CVS)と、に基づいて、レベル値信号LVSを平均化した信号を生成する。平均化信号生成部2221は、例えば加算器等から構成され、バッファ2223からの出力信号に負の係数をかけた信号と、入力信号であるレベル値信号LVSと、の差分に基づいて、レベル値信号LVSを平均化した信号を生成する。
【0039】
セレクタ2229の“1”側入力端には、入力信号であるレベル値信号LVSがそのまま入力される。一方、セレクタ2229の“0”側入力端には、平均化信号生成部2221によって生成された、レベル値信号LVSを平均化した信号が入力される。
【0040】
上記の通り、変動量AVが閾値TH以上である場合、上記の通り比較結果信号CRSの信号レベルが“1”となるため、レベル値信号LVSそのものがセレクタ2229から出力され、第1遅延回路2222に供給される。一方、変動量AVが閾値TH未満である場合、上記の通り比較結果信号CRSの信号レベルが“0”となるため、平均化信号生成部2221の出力信号がセレクタ2229から出力され、第1遅延回路2222に供給される。
【0041】
かかる構成により、本実施例の平均化回路222では、入力信号(レベル値信号LVS)の変動量が小さい(閾値未満である)場合には、出力信号(収束レベル値信号CVS)をフィードバックさせることにより信号の平均化を行う一方、入力信号(レベル値信号LVS)の変動量が大きい(閾値以上である)場合には、入力信号自体を遅延させた信号が収束レベル値信号CVSとして出力される。
【0042】
再び図1を参照すると、アンテナスイッチ制御回路23は、アンテナ制御信号ACSをアンテナスイッチ11に供給することにより、アンテナスイッチ11の切替制御を行う回路である。アンテナスイッチ制御回路23は、同期検出回路21から供給された同期検出信号SDS及びRSSI検出回路22から供給されたRSSI値RVに基づいて、アンテナ制御信号ACSを生成する。また、アンテナスイッチ制御回路23は、同期検出回路21による同期検出状態を解消するための信号である同期クリア信号SCSを生成し、同期検出回路21に供給する。
【0043】
図4は、アンテナスイッチ制御回路23の構成を示すブロック図である。アンテナスイッチ制御回路23は、第1アンテナRSSI保持回路31、第2アンテナRSSI保持回路32、比較回路33及び制御回路34を有する。
【0044】
第1アンテナRSSI保持回路31及び第2アンテナRSSI保持回路32は、それぞれアンテナ制御信号ACS及び同期検出信号SDSの供給を受け、これらの信号に基づいてRSSI値RVを保持する回路である。第1アンテナRSSI保持回路31は、アンテナ制御信号ACSに基づいて第1のアンテナであるアンテナAT1が受信アンテナとして選択され且つ同期検出信号SDSの信号レベルがHレベル(論理レベル1)である場合に、RSSI検出回路22から供給されたRSSI値RVを保持する。第2アンテナRSSI保持回路32は、アンテナ制御信号ACSに基づいて第2のアンテナであるアンテナAT2が受信アンテナとして選択され且つ同期検出信号SDSの信号レベルがHレベル(論理レベル1)である場合に、RSSI検出回路22から供給されたRSSI値RVを保持する。
【0045】
比較回路33は、第1アンテナRSSI保持回路31によって保持されたRSSI値であるRSSI値RV1と、第2アンテナRSSI保持回路32によって保持されたRSSI値であるRSSI値RV2と、の大小を比較し、その比較結果CRを出力する。
【0046】
制御回路34は、ステートマシン41、タイマ42、アンテナ制御信号生成回路43、同期クリア信号生成回路44及び状態保持信号生成回路45から構成されている。
【0047】
ステートマシン41は、同期検出信号SDS及び比較結果CRの供給を受け、これらに基づいてアンテナ制御のための状態遷移を行う。ステートマシン41は、現在の状態を示す状態信号SSを生成し、タイマ42及びアンテナ制御信号生成回路43に供給する。
【0048】
タイマ42は、ステートマシン41から供給された状態信号SSに応じて、所定時間を計時するためのカウントを行う。タイマ42は、例えば図示せぬクロック信号のクロックタイミングに応じてカウントを行い、所定時間分のカウントを終えると、これを示すタイマ値TVを出力する。本実施例では、タイマ42は、状態信号SSの信号レベルに応じて時間T1又は時間T2のカウントを行う。
【0049】
アンテナ制御信号生成回路43は、ステートマシン41から供給された状態信号SS及びタイマ42から供給されたタイマ値TVに基づいて、アンテナ制御信号ACSを生成する。
【0050】
同期クリア信号生成回路44は、ステートマシン41から供給された状態信号SS及びタイマ42から供給されたタイマ値TVに基づいて、同期クリア信号SCSを生成する。
【0051】
図5は、ステートマシン41の状態遷移を示す図である。ステートマシン41は、3つの状態を持ち、同期検出信号SDSの信号レベル、タイマ42のタイマ値TV、及び無線変調波(受信信号RS)の受信完了等の条件により、状態遷移を行う。
【0052】
第1の状態ST1は、同期検出前の状態である。ステートマシン41は、第1の状態ST1であることを示す状態信号SSを、タイマ42及びアンテナ制御信号生成回路43に供給する。タイマ42は、これに応じて時間T1を計時するためのカウントを繰り返し行う。アンテナ制御信号生成回路43は、信号レベルが時間T1の間隔でHレベル(論理レベル1)及びLレベル(論理レベル0)に繰り返し変化するアンテナ制御信号ACSを生成し、アンテナスイッチ11に供給する。
【0053】
同期検出回路21によって同期検出が行われ、同期検出されたことを示す同期検出信号SDSがステートマシン41に供給されると、ステートマシン41は、第2の状態ST2に移行する。
【0054】
第2の状態ST2は、同期検出後の状態である。ステートマシン41は、第2の状態ST2であることを示す状態信号SSを、タイマ42及びアンテナ制御信号生成回路43に供給する。タイマ42は、これに応じて時間T2を計時するためのカウントを行う。アンテナ制御信号生成回路43は、同期検出がされたときのアンテナ制御信号ACSの信号レベルを反転させた信号レベルを有するアンテナ制御信号ACSを出力する。
【0055】
ステートマシン41は、タイマ42の計時によって時間T2が満了すると、第3の状態ST3に移行する。
【0056】
第3の状態ST3は、信号強度の高いアンテナの探索が完了した状態である。ステートマシン41は、比較回路33からRSSI値RV1及びRSSI値RV2のいずれか一方が他方より大きいことを示す比較結果CRの供給を受けると、これに応じて当該一方のRSSI値に対応するアンテナ(すなわち、RSSI値RV1であればアンテナTA1、RSSI値RV2であればアンテナTA2)を選択すべきことを示す状態信号SSをアンテナ制御信号生成回路43に供給する。アンテナ制御信号生成回路43は、ステートマシン41から供給された状態信号SSに応じて、より大きいRSSI値を得られたアンテナに受信アンテナを固定するようにアンテナスイッチ11を制御するアンテナ制御信号ACSを生成し、アンテナスイッチ11に供給する。
【0057】
ステートマシン41は、無線変調波(データパケット)の受信が完了した場合又は受信途中で同期が外れた場合、第1の状態ST1に移行する。受信装置100は、再び希望波の探索を行う。
【0058】
図6は、データ再生回路20の構成を示すブロック図である。データ再生回路20は、シンボルタイミング生成回路51及びデータ判定回路52を有する。
【0059】
シンボルタイミング生成回路51は、DCオフセット除去後の周波数検波信号ODSから、デジタルデータのデータ値“1”及び“0”を判定するための最適タイミングであるシンボルタイミングSYTを生成する。
【0060】
データ判定回路52は、シンボルタイミングSYTでデータ判定を行った結果(“1”又は“0”)を示す復調データDDを生成する。
【0061】
図7は、同期検出回路21の構成を示すブロック図である。同期検出回路21は、復調データDDと所定のプリアンブルパターンPPとの相関をとる相関器53を含む。同期検出回路21は、復調データDDとプリアンブルパターンPPとの相関がある閾値以上の相関値となった場合に、Hレベル(論理レベル1)の同期検出信号SDSを出力する。
【0062】
また、同期検出回路21は、同期クリア信号SCSの供給を受けて同期状態をクリアする機能を有する。すなわち、同期検出回路21は、Hレベル(論理レベル1)の同期クリア信号SCSに応じて、同期検出信号SDSの信号レベルをLレベル(論理レベル0)に変化させる。なお、同期検出回路21は、Hレベル(論理レベル1)の状態保持信号SHSが供給されている場合、同期クリア信号SCSを無視するように動作する。すなわち、Hレベルの状態保持信号SHSが同期検出回路21に供給されている場合、受信装置100は、同期検出回路21への同期クリア信号SCSの供給の有無にかかわらず、同期状態を維持する。
【0063】
次に、本実施例の受信装置100が実行するアンテナダイバーシティ受信の動作について、図8のタイムチャートを参照して説明する。
【0064】
まず、同期検出前の状態のアンテナスイッチ制御回路23Aは、時間T1毎に信号レベルがHレベル及びLレベルに変化するアンテナ制御信号ACSを出力する。これにより、時間T1毎に受信アンテナがアンテナAT1及びAT2に切り替えられ、希望波の探索が行われる。なお、ここではアンテナ制御信号ACSがHレベルのときにアンテナAT1、LレベルのときにアンテナAT2が選択する場合を例として示している。
【0065】
同期検出回路21によって同期検出が行われ、同期検出信号SDSがHレベルになると、受信装置100は、プリアンブルを含む希望波を受信したと判定し、同期検出タイミングでRSSI検出回路22が検出したRSSI値RVを、第1アンテナRSSI保持回路31又は第2アンテナRSSI保持回路32に保持させる。図6では、Hレベルのアンテナ制御信号ACSによってアンテナTA2が選択されている状態でデータパケットのプリアンブルに相当する部分の無線変調波がアンテナTA2に入力され、同期検出が行われた場合を示している。第2アンテナRSSI保持回路32は、同期検出のタイミングでRSSI値RV2を保持する。ステートマシン41は、第2の状態ST2に移行する。
【0066】
アンテナスイッチ制御回路23は、アンテナ制御信号ACSの信号レベルを変化させ、アンテナスイッチ11による受信アンテナの切り替えを実行させる。ここでは、アンテナTA2で同期検出が行われているため、アンテナAT1への切り替えが行われる。
【0067】
RSSI検出回路22は、アンテナTA1に入力された受信信号RSに基づいて、RSSI値RVを検出する。第1アンテナRSSI保持回路31は、RSSI検出回路22により検出されたRSSI値RVを、RSSI値RV1として保持する。
【0068】
タイマ42は、時間T2を計時するためのカウントを行う。時間T2が満了すると、ステートマシン41は、第3の状態ST3に移行する。
【0069】
比較回路33は、第2アンテナRSSI保持回路32によって保持されたRSSI値RV2と、第1アンテナRSSI保持回路31によって保持されたRSSI値RV1と、を比較し、比較結果CRを出力する。図6では、RSSI値RV2の方がRSSI値RV1よりも大きい場合(図中では、それぞれ“0x08”及び“0×04”)を示している。
【0070】
アンテナスイッチ制御回路23は、比較結果CRに基づいて、値の大きいRSSI値が得られたアンテナを、プリアンブル以降のデータ受信に採用する受信アンテナとして決定し、アンテナ制御信号ACSをホールド(すなわち、信号値を保持)する。
【0071】
図8に示す例では、RSSI値RV2の方がRSSI値RV1よりも大きいため、アンテナTA2を受信アンテナとして決定される。このため、アンテナスイッチ制御回路23は、アンテナ制御信号ACSの信号値を変化させて受信アンテナをアンテナTA2に切り替えるようにアンテナスイッチ11を制御した後、その状態(すなわち、アンテナTA2が選択された状態)を維持させるべく、アンテナ制御信号ACSの信号値を固定する。
【0072】
なお、仮にRSSI値RV1がRSSI値RV2よりも大きかった場合、アンテナスイッチ制御回路23は、アンテナTA1を受信アンテナとして決定し、アンテナTA1が選択されている状態でアンテナ制御信号ACSをホールドし、アンテナスイッチ11のその状態を維持させる。
【0073】
タイマ42は、時間T1を計時するためのカウントを行い、時間T1が満了すると、計時動作を停止する。状態保持信号生成回路45は、ステートマシン41が第1の状態ST1である期間及び第2の状態ST2である期間において、タイマ42による時間T1の計時が満了するまで、Hレベル(論理レベル1)の状態保持信号SHSを出力する。
【0074】
状態保持信号SHSがHレベルである期間において、DCオフセット検出回路18は、同期検出信号SDSがHレベルになったときのシンボルタイミングSYTの値を保持する。また、状態保持信号SHSがHレベルであるため、同期クリア信号SCSは無視され、受信装置100は、同期状態(同期検出がされた状態)を継続する。
【0075】
無線変調波(データパケット)の受信を完了した場合、又は受信途中で同期が外れた場合、ステートマシン41は、第1の状態ST1に移行する。受信装置100は、再び希望波の探索を行う。
【0076】
以上のようなルーチンにより、受信装置100は、アンテナダイバーシティ受信の動作を行う。本実施例の受信装置100は、RSSI値取得のための最初の同期検出がなされた後、状態保持信号SHSを同期検出回路21に供給することにより、同期状態を維持する。かかる構成によれば、ステートマシン41の状態が第2の状態ST2から第3の状態ST3に移行した後に再び同期検出を行う必要がないため、データパケットの受信時間を短縮することができる。
【0077】
図9は、本実施例の受信装置100とは異なり、状態保持信号による同期状態の維持を行わない比較例の受信装置200の構成を示すブロック図である。
【0078】
比較例の受信装置200では、図1に示す本実施例の受信装置100とは異なり、アンテナスイッチ制御回路23Aが状態保持信号SHSの出力を行わない。このため、RSSI値RVを検出する段階で同期検出回路21によって検出された同期検出状態は、同期クリア信号SCSの供給に応じて解消される。
【0079】
図10は、比較例のアンテナスイッチ制御回路23Aの構成を示すブロック図である。アンテナスイッチ制御回路23Aは、本実施のアンテナスイッチ制御回路23とは異なり、状態保持信号生成回路45を有しない。このため、状態保持信号SHSは出力されない。
【0080】
図11は、比較例の受信装置200が実行するアンテナダイバーシティ受信の動作を示すタイムチャートである。
【0081】
受信装置200は、希望波を受信するまでの間、ステートマシン41が第1の状態ST1である区間において、アンテナスイッチ制御回路23Aは、アンテナ制御信号ACSの信号レベルを時間T1おきに切り替える。これにより、希望波の探索が行われる。
【0082】
希望波が入力され、同期検出回路21による同期検出が行われると、受信装置200は、プリアンブルを含む希望波を受信したと判定し、同期検出タイミングでRSSI検出回路22が検出したRSSI値RVを、第1アンテナRSSI保持回路31又は第2アンテナRSSI保持回路32に保持させる。図9に示す例では、アンテナTA2が受信アンテナに設定されている状態で同期検出が行われ、RSSI検出回路22によるRSSI値RVの検出が行われているため、第2アンテナRSSI保持回路32がこれをRSSI値RV2として保持する。
【0083】
ステートマシン41は、第2の状態ST2に移行する。同期クリア信号生成回路44は1パルスの同期クリア信号SCSを生成し、同期検出回路21に供給する。これにより、同期検出状態がクリア(解消)される。アンテナスイッチ制御回路23は、アンテナ制御信号ACSの信号レベルを変化させる。アンテナスイッチ11は、これに応じて受信アンテナをアンテナTA1に切り替える。
【0084】
RSSI検出回路22は、アンテナTA1に入力された受信信号RSに基づいて、RSSI値RVを検出する。第1アンテナRSSI保持回路31は、RSSI検出回路22により検出されたRSSI値RVを、RSSI値RV1として保持する。
【0085】
同期検出回路21による同期検出が行われた場合又はタイマ42の計時による時間T1が満了した場合、ステートマシン41は、第3の状態ST3に移行する。同期クリア信号生成回路44は1パルスの同期クリア信号SCSを生成し、同期検出回路21に供給する。
【0086】
比較回路33は、第2アンテナRSSI保持回路32によって保持されたRSSI値RV2と、第1アンテナRSSI保持回路31によって保持されたRSSI値RV1と、を比較する。ここでは、RSSI値RV2の方がRSSI値よりも大きいため、アンテナスイッチ制御回路23は、アンテナTA2を受信アンテナとして決定し、受信アンテナをアンテナTA2に切り替えるようにアンテナスイッチ11を制御した後、アンテナ制御信号ACSをホールドする。
【0087】
比較例の受信装置200では、本実施例の受信装置100とは異なり同期検出回路21に状態保持信号が供給されないため、ステートマシン41の状態が第1の状態ST1から第2の状態ST2に遷移したタイミング、及び第2の状態ST2から第3の状態ST3に遷移したタイミング(且つ第2の状態ST2と第3の状態ST3とでアンテナ制御信号ACSの信号レベルが異なる場合)に、同期クリア信号SCSに応じて同期検出状態が解消される。
【0088】
したがって、比較例の受信装置200は、ステートマシン41が第3の状態ST3に遷移した直後から、最終的に決定された受信アンテナで再同期を行い、データ部分を受信する動作となる。
【0089】
これに対し、本実施例の受信装置100では、上記の通りステートマシン41が第2の状態ST2及び第3の状態ST3においてタイマ42による時間T1の計時が満了するまでの間、DCオフセットの検出、シンボルタイミングの抽出及び同期検出が行われた状態に保持される。このため、第3の状態ST3において、最終的に決定された受信アンテナで再同期を行う必要がない。
【0090】
したがって、本実施例の受信装置100では、受信アンテナの決定までに要する時間は、最初の同期検出期間(すなわち、第1の状態ST1において、アンテナTA1又はTA2で行うRSSI値RV取得の際に同期検出信号SDSがHレベルになるまでの期間)+時間T2(すなわち、第2の状態ST2から第3の状態ST3に遷移するまでの時間)でよいことになる。
【0091】
よって、本実施例の受信装置100によれば、アンテナダイバーシティに必要なプリアンブル数(長さ)を削減し、データパケットの送受信に要する時間を短縮することができる。また、当該送受信に要する時間の短縮により、通信システムにおける消費電力の低減を図ることが可能となる。
【0092】
また、本実施例の受信装置100では、RSSI検出回路22を構成する平均化回路222が、図3に示すような構成を有する。これにより、RSSI値RVが収束する時間を短縮し、アンテナ決定までの時間を短縮することができる。これについて、以下説明する。
【0093】
アンテナダイバーシティでは、信号のプリアンブル区間において、アンテナの切り替え、RSSI値の取得、及び取得したRSSI値に基づくアンテナの選択を行い、その後のデータ部分を受信する動作を行う。ここで、1つのアンテナについてRSSI値を取得する際には、アンテナ切り替え後にRSSI値が受信したレベルに応じた値に収束するのを待って、RSSI値の取得及び判定を行う。
【0094】
平均化回路222は、ノイズによるRSSI値の変動を抑える役割を果たしている。ノイズによるRSSI値の変動を抑えることは、取得するRSSI値の精度を向上させ、最終的に決定するアンテナの選択精度を上げることにつながる。
【0095】
図12は、本実施例の平均化回路222とは異なり、変動量検出回路を有しない比較例の平均化回路222Aの構成を示すブロック図である。平均化回路222Aは、平均化信号生成部2221A、遅延回路2222A及びバッファ2223Aからなる無限インパルス応答フィルタ(Infinite impulse response filter)によって構成されている。
【0096】
図13は、比較例の平均化回路222Aを有するRSSI検出回路における各種信号及びRSSI値RVの時間変化を示すタイムチャートである。
【0097】
比較例の平均化回路222Aでは、受信信号の大きさの変動量が大きいか否かにかかわらず、フィードバックループ(無限インパルス応答フィルタ)を介して入力信号を平均化して出力する。このため、アンテナの切り替え時においてレベル値信号LVSが急激に変化しても、収束レベル値信号CVS及びRSSI値の変化が直ちには追従せず、RSSI値が一定レベルに収束するまでに要する時間(以下、平均化収束時間と称する)が長くなる。
【0098】
ダイバーシティのアンテナ決定までに要する時間は、RSSI値の収束時間によって制限される。このため、比較例の回路では、アンテナ決定までに要する時間が長くなる。また、アンテナダイバーシティの受信はデータパケットのプリアンブルの部分で行うことを前提としているため、アンテナ決定までに要する時間が長くなると、その分だけ長いプリアンブルが必要となる。したがって、データの送受信に要するが長くなり、消費電力も大きくなってしまう。
【0099】
これに対し、本実施例の平均化回路222は、図3に示すように、変動量検出回路2220を有し、受信信号の大きさの変動量が閾値TH以上である場合には、フィードバックループを介さずに、入力信号(LVS)を遅延させた信号をそのまま出力する。そして、変動量が閾値TH未満になった場合には、フィードバックループを介して平均化した信号を出力する。これにより、スタート地点を最終収束値付近に設定して平均化を行うことができるため、RSSI値RVの平均化収束時間を短縮することができる。
【0100】
図14は、本実施例の平均化回路222を有するRSSI検出回路22における各種信号及びRSSI値RVの時間変化を示すタイムチャートである。アンテナの切り替え時にレベル値信号LVSの信号レベルが急激に変化した場合にも、その変化に追従して収束レベル値信号CVS及びRSSI値RVが急峻に変化する。このため、図12に示す比較例の場合と比べて、RSSI値RVの平均化収束時間を大幅に短縮することができる。
【0101】
したがって、本実施例の平均化回路222の構成によれば、RSSI値RVの収束時間を短縮しつつノイズによる変動を抑えることができる。これにより、受信アンテナ決定までに要する時間を短縮し、アンテナダイバーシティに必要なプリアンブル数をより削減し、データパケットの送受信に要する時間をより短縮することが可能となる。またその結果、通信システムにおける消費電力を低減することが可能となる。
【0102】
なお、本発明は上記実施形態に限定されない。例えば、上記各実施例では、受信装置100がアンテナTA1及びTA2という2つのアンテナを備える場合を例として説明した。しかし、アンテナの本数はこれに限られず、2以上のアンテナを有する場合にも本実施例の受信装置100の構成を適用することが可能である。
【0103】
また、上記実施例では、ステートマシン41の状態が第2の状態ST2である場合に、タイマ42が時間T2を計測するためのカウントを行う場合を例として説明した。しかし、タイマ42が計測する時間はこれに限られず、ステートマシン41が第1の状態ST1や第3の状態ST3である場合と同じ時間T1を計測するものであってもよい。
【0104】
また、平均化回路222の上記構成は、上記実施例の受信装置100のように、RSSI値取得のための最初の同期検出がなされた後、状態保持信号SHSを同期検出回路21に供給して同期状態を維持する構成だけでなく、このような構成を有しない受信装置(例えば、図9に示すような比較例の受信装置200)にも適用することが可能である。
【0105】
また、本実施例の平均化回路222によれば、アンテナダイバーシティにおける受信アンテナの切り替え時だけでなく、例えばフェージング環境や周囲の電波状況が動的に変化するような環境において、安定した受信を行えるようになるまでに要する時間を短縮することが可能となる。
【符号の説明】
【0106】
100 受信装置
11 アンテナスイッチ
12 LNA回路
13 第1MIX回路
14A,14B ADC
15 第2MIX回路
16A,16B LPF
17 周波数検波回路
18 DCオフセット検出回路
19 DCオフセット除去回路
20 データ再生回路
21 同期検出回路
22 RSSI検出回路
23 アンテナスイッチ制御回路
31 第1アンテナRSSI保持回路
32 第2アンテナRSSI保持回路
33 比較回路
34 制御回路
41 ステートマシン
42 タイマ
43 アンテナ制御信号生成回路
44 同期クリア信号生成回路
45 状態保持信号生成回路
51 シンボルタイミング生成回路
52 データ判定回路
53 相関器
221 信号レベル算出回路
222 平均化回路
223 ログ変換回路
2221 平均化信号生成部
2222 第1遅延回路
2223 バッファ
2224 第2遅延回路
2225 加算器
2226 絶対値取得回路
2227 比較回路
2228 閾値記憶部
2229 セレクタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14