(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173675
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】感光性フィルム
(51)【国際特許分類】
G03F 7/095 20060101AFI20241205BHJP
G03F 7/004 20060101ALI20241205BHJP
G03F 7/027 20060101ALI20241205BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20241205BHJP
C08G 73/10 20060101ALI20241205BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
G03F7/095
G03F7/004 512
G03F7/027 514
H05K1/03 610H
C08G73/10
G03F7/20 501
G03F7/20 521
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024060802
(22)【出願日】2024-04-04
(31)【優先権主張番号】P 2023090447
(32)【優先日】2023-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古味 百子
(72)【発明者】
【氏名】小椋 一郎
(72)【発明者】
【氏名】入澤 真治
【テーマコード(参考)】
2H197
2H225
4J043
【Fターム(参考)】
2H197CA05
2H197CE01
2H197HA03
2H225AC33
2H225AC36
2H225AC65
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2H225AC70
2H225AD06
2H225AD07
2H225AN54P
2H225CA12
2H225CA13
2H225CB06
2H225CC01
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2H225CD05
2H225DA02
4J043PA01
4J043PA02
4J043PA04
4J043PB02
4J043PC035
4J043PC036
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4J043QB15
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4J043RA05
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4J043UA042
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4J043UB121
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4J043VA011
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4J043XA13
4J043YB06
4J043YB19
4J043YB29
4J043ZB11
4J043ZB22
(57)【要約】
【課題】アンダーカット耐性に優れる感光性フィルム等の提供。
【解決手段】支持体と、支持体上に設けられた感光性樹脂組成物層と、を備える感光性フィルムであって、感光性樹脂組成物層が、第1の感光性樹脂組成物からなる第1の感光性樹脂組成物層と、第1の感光性樹脂組成物層上に設けられた第2の感光性樹脂組成物からなる第2の感光性樹脂組成物層と、を支持体側からこの順で有し、第1及び第2の感光性樹脂組成物は、それぞれ、(A)ポリイミド及びポリイミド前駆体からなる群より選ばれる1種類以上の樹脂、(B)光ラジカル発生剤、及び(C)光架橋剤、を含み、第2の感光性樹脂組成物層の吸光度と第1の感光性樹脂組成物層の吸光度との差が、0.05以上0.5以下である、感光性フィルム。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、
支持体上に設けられた感光性樹脂組成物層と、を備える感光性フィルムであって、
感光性樹脂組成物層が、第1の感光性樹脂組成物からなる第1の感光性樹脂組成物層と、第1の感光性樹脂組成物層上に設けられた第2の感光性樹脂組成物からなる第2の感光性樹脂組成物層と、を支持体側からこの順で有し、
第1及び第2の感光性樹脂組成物は、それぞれ、
(A)ポリイミド及びポリイミド前駆体からなる群より選ばれる1種類以上の樹脂、
(B)光ラジカル発生剤、並びに
(C)光架橋剤、を含み、
第2の感光性樹脂組成物層の吸光度と第1の感光性樹脂組成物層の吸光度との差(第2の感光性樹脂組成物層の吸光度-第1の感光性樹脂組成物層の吸光度)が、0.05以上0.5以下である、感光性フィルム。
【請求項2】
(A)成分が、下記式(A-1)で表される構造単位を含有する、請求項1に記載の感光性フィルム。
【化1】
(式中、Aはそれぞれ独立に4価の有機基を表し、Bは2価の有機基を表し、R
1及びR
2はそれぞれ独立に、水素原子又は1価の有機基を表す。)
【請求項3】
式(A-1)のR1及びR2はそれぞれ独立に、少なくとも一つがラジカル反応性基である、請求項2に記載の感光性フィルム。
【請求項4】
ラジカル反応性基は、それぞれ独立に、下記式(A-2)で表される、請求項3に記載の感光性フィルム。
【化2】
(式(A-2)において、R
4a、R
5a及びR
6aは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素原子数1~3の脂肪族炭化水素基を表し、Xは、2価の有機基を表す。*は、結合手を表す。)
【請求項5】
(B)成分が、(B-1)反応性に富む光ラジカル発生剤と、(B-2)深部硬化性に優れる光ラジカル発生剤とを含む、請求項1に記載の感光性フィルム。
【請求項6】
第1の感光性樹脂組成物に含まれる(B)成分の含有量が、第2の感光性樹脂組成物に含まれる(B)成分の含有量よりも少ない、請求項1に記載の感光性フィルム。
【請求項7】
第1の感光性樹脂組成物中の(B)成分の含有量が、第1の感光性樹脂組成物中の(A)成分100質量部に対して、0.03質量部以上5質量部以下である、請求項1に記載の感光性フィルム。
【請求項8】
第2の感光性樹脂組成物中の(B)成分の含有量が、第2の感光性樹脂組成物中の(A)成分100質量部に対して、0.05質量部以上8質量部以下である、請求項1に記載の感光性フィルム。
【請求項9】
第1の感光性樹脂組成物層の吸光度が、0.2以上1.5以下である、請求項1に記載の感光性フィルム。
【請求項10】
第2の感光性樹脂組成物層の吸光度が、0.3以上1.5以下である、請求項1に記載の感光性フィルム。
【請求項11】
第1の感光性樹脂組成物の不揮発成分を100質量%としたときの第1の感光性樹脂組成物中の(B-1)成分の含有量をb1-1とし、第2の感光性樹脂組成物中の(B-1)成分の含有量をb2-1としたとき、b1-1/b2-1が、0.1以上3以下である、請求項1に記載の感光性フィルム。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の感光性フィルムの感光性樹脂組成物層の硬化物を含む絶縁層を備える、半導体パッケージ基板。
【請求項13】
請求項12に記載の半導体パッケージ基板を備える、半導体装置。
【請求項14】
回路基板上に、請求項1~11のいずれか1項に記載の感光性フィルムの感光性樹脂組成物層を積層する工程と、
感光性樹脂組成物層に活性光線を照射する工程と、
感光性樹脂組成物層を現像する工程と、を含む、半導体パッケージ基板の製造方法。
【請求項15】
回路基板上に、第2の感光性樹脂組成物を塗布し、第2の感光性樹脂組成物層を形成する工程と、
第2の感光性樹脂組成物層上に、第1の感光性樹脂組成物を塗布し、第1の感光性樹脂組成物層を形成する工程と、
第1及び第2の感光性樹脂組成物層に活性光線を照射する工程と、
第1及び第2の感光性樹脂組成物層を現像する工程と、を含む、半導体パッケージ基板の製造方法であって、
第1及び第2の感光性樹脂組成物が、
(A)ポリイミド及びポリイミド前駆体からなる群より選ばれる1種類以上の樹脂、
(B)光ラジカル発生剤、並びに
(C)光架橋剤、をそれぞれ含み、
第1の感光性樹脂組成物層と第2の感光性樹脂組成物層との吸光度の差が、0.05以上0.5以下である、半導体パッケージ基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性フィルム、それを用いた半導体パッケージ基板の製造方法、及び半導体パッケージ基板;並びに半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体デバイスの絶縁層には、耐熱性及び絶縁性に優れる、感光性ポリイミド樹脂またはその前駆体を含む、ネガ型の感光性樹脂組成物が用いられることがあった(例えば特許文献1参照)。また、近年通信機器における通信の高速化、大容量化に伴い、通信機器の半導体パッケージ基板等の絶縁層形成、あるいはウェハーレベルパッケージ(WLP)等の再配線層に使用される感光性樹脂組成物においては、優れた解像性が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、ポリイミド樹脂を含む絶縁層の膜厚を厚くして形成したい場合がある。しかしながら、ネガ型感光性樹脂組成物は、一般に解像性が低いことが知られており、特に膜厚が厚い絶縁層に穴(ビアホール)を形成する場合、下層部の解像性が低下することにより、ビアホールの断面が逆テーパ形状になるという問題がより顕在化する。
【0005】
具体的には、露光は、一般に、感光性樹脂組成物層の露光面からラジカルによる架橋が進行し、感光性樹脂組成物層の露光面から離れた位置に行くにつれてラジカルによる架橋の進行が少なくなる。架橋の進行が少なくないと現像液に対する溶解性が劣るため、感光性樹脂組成物層を厚み方向の平面で切った断面において、穴の断面形状は、露光面に形成される開口部の径よりも、最も奥に形成される底部の径が大きい逆テーパ状となり、特に感光性樹脂組成物層の膜厚が厚い場合に顕著になりうる。このとき、穴の最上部に相当する開口部の半径と穴の最奥部に相当する底部の半径との差(底部の半径-最上部の半径)を「アンダーカット」と呼び、開口形状が逆テーパ状になりにくい性質を「アンダーカット耐性」に優れるということがある。
【0006】
本発明は、前記の課題に鑑みて創案されたもので、アンダーカット耐性に優れる硬化物を得ることができる感光性フィルム;感光性フィルムを用いた半導体パッケージ基板の製造方法;並びに、半導体パッケージ基板及び半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、前記の課題を解決するべく鋭意検討を行った。その結果、本発明者は、感光性樹脂組成物層として第1及び第2の感光性樹脂組成物層を有し、第1及び第2の感光性樹脂組成物層の吸光度の差が0.05以上0.5以下となるように、第1の感光性樹脂組成物層を構成する第1の感光性樹脂組成物、及び第2の感光性樹脂組成物に含まれる(A)ポリイミド及びポリイミド前駆体からなる群より選ばれる1種類以上の樹脂、(B)光ラジカル発生剤、並びに(C)光架橋剤を調整することにより、前記の課題を解決できることを見い出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明は、下記のものを含む。
【0008】
[1] 支持体と、
支持体上に設けられた感光性樹脂組成物層と、を備える感光性フィルムであって、
感光性樹脂組成物層が、第1の感光性樹脂組成物からなる第1の感光性樹脂組成物層と、第1の感光性樹脂組成物層上に設けられた第2の感光性樹脂組成物からなる第2の感光性樹脂組成物層と、を支持体側からこの順で有し、
第1及び第2の感光性樹脂組成物は、それぞれ、
(A)ポリイミド及びポリイミド前駆体からなる群より選ばれる1種類以上の樹脂、
(B)光ラジカル発生剤、並びに
(C)光架橋剤、を含み、
第2の感光性樹脂組成物層の吸光度と第1の感光性樹脂組成物層の吸光度との差(第2の感光性樹脂組成物層の吸光度-第1の感光性樹脂組成物層の吸光度)が、0.05以上0.5以下である、感光性フィルム。
[2] (A)成分が、下記式(A-1)で表される構造単位を含有する、[1]に記載の感光性フィルム。
【化1】
(式中、Aはそれぞれ独立に4価の有機基を表し、Bは2価の有機基を表し、R
1及びR
2はそれぞれ独立に、水素原子又は1価の有機基を表す。)
[3] 式(A-1)のR
1及びR
2はそれぞれ独立に、少なくとも一つがラジカル反応性基である、[2]に記載の感光性フィルム。
[4] ラジカル反応性基は、それぞれ独立に、下記式(A-2)で表される、[3]に記載の感光性フィルム。
【化2】
(式(A-2)において、R
4a、R
5a及びR
6aは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素原子数1~3の脂肪族炭化水素基を表し、Xは、2価の有機基を表す。*は、結合手を表す。)
[5] (B)成分が、(B-1)反応性に富む光ラジカル発生剤と、(B-2)深部硬化性に優れる光ラジカル発生剤とを含む、[1]~[4]のいずれかに記載の感光性フィルム。
[6] 第1の感光性樹脂組成物に含まれる(B)成分の含有量が、第2の感光性樹脂組成物に含まれる(B)成分の含有量よりも少ない、[1]~[5]のいずれかに記載の感光性フィルム。
[7] 第1の感光性樹脂組成物中の(B)成分の含有量が、第1の感光性樹脂組成物中の(A)成分100質量部に対して、0.03質量部以上5質量部以下である、[1]~[6]のいずれかに記載の感光性フィルム。
[8] 第2の感光性樹脂組成物中の(B)成分の含有量が、第2の感光性樹脂組成物中の(A)成分100質量部に対して、0.05質量部以上8質量部以下である、[1]~[7]のいずれかに記載の感光性フィルム。
[9] 第1の感光性樹脂組成物層の吸光度が、0.2以上1.5以下である、[1]~[8]のいずれかに記載の感光性フィルム。
[10] 第2の感光性樹脂組成物層の吸光度が、0.3以上1.5以下である、[1]~[9]のいずれかに記載の感光性フィルム。
[11]
第1の感光性樹脂組成物の不揮発成分を100質量%としたときの第1の感光性樹脂組成物中の(B-1)成分の含有量をb
1-1とし、第2の感光性樹脂組成物中の(B-1)成分の含有量をb
2-1としたとき、b
1-1/b
2-1が、0.1以上3以下である、[1]~[10]のいずれかに記載の感光性フィルム。
[12] [1]~[11]のいずれかに記載の感光性フィルムの感光性樹脂組成物層の硬化物を含む絶縁層を備える、半導体パッケージ基板。
[13] [12]に記載の半導体パッケージ基板を備える、半導体装置。
[14] 回路基板上に、[1]~[11]のいずれかに記載の感光性フィルムの感光性樹脂組成物層を積層する工程と、
感光性樹脂組成物層に活性光線を照射する工程と、
感光性樹脂組成物層を現像する工程と、を含む、半導体パッケージ基板の製造方法。
[15] 回路基板上に、第2の感光性樹脂組成物を塗布し、第2の感光性樹脂組成物層を形成する工程と、
第2の感光性樹脂組成物層上に、第1の感光性樹脂組成物を塗布し、第1の感光性樹脂組成物層を形成する工程と、
第1及び第2の感光性樹脂組成物層に活性光線を照射する工程と、
第1及び第2の感光性樹脂組成物層を現像する工程と、を含む、半導体パッケージ基板の製造方法であって、
第1及び第2の感光性樹脂組成物が、
(A)ポリイミド及びポリイミド前駆体からなる群より選ばれる1種類以上の樹脂、
(B)光ラジカル発生剤、並びに
(C)光架橋剤、をそれぞれ含み、
第1の感光性樹脂組成物層と第2の感光性樹脂組成物層との吸光度の差が、0.05以上0.5以下である、半導体パッケージ基板の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、アンダーカット耐性に優れる硬化物を得ることができる感光性フィルム;感光性フィルムを用いた半導体パッケージ基板の製造方法;並びに、半導体パッケージ基板及び半導体装置を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態及び例示物を示して、本発明について詳細に説明する。ただし、本発明は、以下に挙げる実施形態及び例示物に限定されるものでは無く、特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
【0011】
[感光性フィルム]
本発明の感光性フィルムは、支持体と、支持体上に設けられた感光性樹脂組成物層と、を備える感光性フィルムであって、感光性樹脂組成物層が、第1の感光性樹脂組成物からなる第1の感光性樹脂組成物層と、第1の感光性樹脂組成物層上に設けられた第2の感光性樹脂組成物からなる第2の感光性樹脂組成物層と、を支持体側からこの順で有し、第1及び第2の感光性樹脂組成物が、それぞれ、(A)ポリイミド及びポリイミド前駆体からなる群より選ばれる1種類以上の樹脂、(B)光ラジカル発生剤、並びに(C)光架橋剤を含み、第2の感光性樹脂組成物層の吸光度と第1の感光性樹脂組成物層の吸光度との差が、0.05以上0.5以下である。このような感光性フィルムを用いることにより、アンダーカット耐性に優れる硬化物が得られるようになる。また、通常は、通常、限界解像性に優れ、銅箔との間の密着性に優れる硬化物を得ることも可能になる。
【0012】
本発明の感光性フィルムは、支持体、第1の感光性樹脂組成物層、及び第2の感光性樹脂組成物層の順で有するので、回路基板等の積層対象部材上に感光性樹脂組成物層を積層させる際、第2の感光性樹脂組成物層が積層対象部材と接合する。よって、感光性樹脂組成物層に穴を形成するにあたって、第2の感光性樹脂組成物層は穴の最奥部に位置する。本発明では、第2の感光性樹脂組成物層の吸光度と第1の感光性樹脂組成物層の吸光度との差が0.05以上0.5以下であるから、第2の感光性樹脂組成物層の吸光度が第1の感光性樹脂組成物層の吸光度よりも大きい。したがって、第2の感光性樹脂組成物層も第1の感光性樹脂組成物層と同等にラジカルにより架橋が進行し、感光性樹脂組成物層の膜厚が厚くても、アンダーカット耐性に優れるようになる。
【0013】
前記の感光性フィルムの感光性樹脂組成物層は、ポジ型の感光性樹脂組成物、又はネガ型の感光性樹脂組成物層として用いることができるが、アンダーカット耐性の観点から、ネガ型であることが好ましい。よって、感光性樹脂組成物層を構成する第1及び第2の感光性樹脂組成物は、ネガ型の感光性樹脂組成物として用いうる。
【0014】
<支持体>
感光性フィルムは、支持体を備え、この支持体上に第1の感光性樹脂組成物層が形成される。
【0015】
支持体としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、トリアセチルアセテートフィルム等が挙げられ、特にポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。
【0016】
市販の支持体としては、例えば、王子製紙社製の「アルファンMA-410」、「E-200C」、タマポリ社製の「GF-1」、「GF-8」、及び信越フィルム社製ポリプロピレンフィルム、などのポリプロピレンフィルム;帝人社製の「PS-25」等のPSシリーズなどのポリエチレンテレフタレートフィルム;が挙げられるが、これらに限られたものではない。これらの支持体は、除去を容易にするため、シリコーンコート剤または非シリコーンコート剤等の剥離剤を表面に塗布してあることが好ましい。このような剥離剤によって表面を処理された支持体としては、例えば、リンテック社製「AL-5」等が挙げられる。
【0017】
支持体の厚さは、5μm~100μmの範囲であることが好ましく、10μm~50μmの範囲であることがより好ましい。
【0018】
<感光性樹脂組成物層>
感光性フィルムは、感光性樹脂組成物層を備える。感光性樹脂組成物層は、支持体側から順に第1の感光性樹脂組成物層、及び第2の感光性樹脂組成物層を備える。第1の感光性樹脂組成物層は、第1の感光性樹脂組成物を含み、第2の感光性樹脂組成物層は、第2の感光性樹脂組成物を含み、これらは、第1及び第2の感光性樹脂組成物層の吸光度の差が0.01以上0.5以下となるように成分の種類及び/又はその配合比が異なる。
【0019】
第1の感光性樹脂組成物層の吸光度としては、好ましくは0.2以上、より好ましくは0.3以上、さらに好ましくは0.33以上、又は0.35以上であり、好ましくは1.5以下、より好ましくは1.3以下、さらに好ましくは1.2以下である。吸光度は、365nmでの吸光度であり、吸光度の測定の詳細は、後述する実施例に記載の方法にて測定することができる。
【0020】
第2の感光性樹脂組成物層の吸光度としては、好ましくは0.3以上、より好ましくは0.33以上、さらに好ましくは0.35以上であり、好ましくは1.5以下、より好ましくは1.3以下、さらに好ましくは1.2以下である。吸光度は、365nmでの吸光度であり、吸光度の測定の詳細は、後述する実施例に記載の方法にて測定することができる。
【0021】
第2の感光性樹脂組成物層の吸光度と、第1の感光性樹脂組成物層の吸光度との差(第2の感光性樹脂組成物層の吸光度-第1の感光性樹脂組成物層の吸光度)は、0.05以上であり、好ましくは0.06以上、より好ましくは0.07以上である。上限は0.5以下であり、好ましくは0.45以下、より好ましくは0.4以下である。第2の感光性樹脂組成物層の吸光度と第1の感光性樹脂組成物層の吸光度との差は、例えば、第1及び第2の感光性樹脂組成物層に含まれる、(A)ポリイミド及びポリイミド前駆体からなる群より選ばれる1種類以上の樹脂の種類及び含有量のいずれか、並びに(B)光ラジカル発生剤の種類及び含有量のいずれかを調整することで斯かる範囲内に調整可能になる。特に、第1及び第2の感光性樹脂組成物層に含まれる、(B)光ラジカル発生剤の種類及び含有量のいずれかを調整することで斯かる範囲内に調整することが容易になる。
【0022】
第1の感光性樹脂組成物層の厚さとしては、好ましくは10μm以上、より好ましくは15μm以上、さらに好ましくは20μm以上であり、好ましくは100μm以下、より好ましくは75μm以下、さらに好ましくは50μm以下である。
【0023】
第2の感光性樹脂組成物層の厚さとしては、好ましくは10μm以上、より好ましくは15μm以上、さらに好ましくは20μm以上であり、好ましくは100μm以下、より好ましくは75μm以下、さらに好ましくは50μm以下である。
【0024】
感光性樹脂組成物層の厚み(第1の感光性樹脂組成物層及び第2の感光性樹脂組成物層の合計厚み。以下「膜厚」と称することがある。)としては、好ましくは20μm以上、より好ましくは30μm以上、さらに好ましくは40μm以上、特に好ましくは50μm以上であり、好ましくは150μm以下、より好ましくは120μm以下、さらに好ましくは100μm以下、特に好ましくは80μm以下である。
【0025】
第1の感光性樹脂組成物層は、第1の感光性樹脂組成物を含み、第2の感光性樹脂組成物層は、第2の感光性樹脂組成物を含む。第1及び第2の感光性樹脂組成物は、それぞれ、(A)ポリイミド及びポリイミド前駆体からなる群より選ばれる1種類以上の樹脂、(B)光ラジカル発生剤、並びに(C)光架橋剤を含む。以下、(A)ポリイミド及びポリイミド前駆体からなる群より選ばれる1種類以上の樹脂を、「ポリイミド系樹脂」ということがある。
【0026】
第1及び第2の感光性樹脂組成物は、必要に応じて、さらに(D)その他の添加剤、及び(E)溶剤を含んでいてもよい。以下、第1及び第2の感光性樹脂組成物に含まれ得る各成分について説明する。
【0027】
以下の説明において、化合物又は基についていう「置換基を有していてもよい」という用語は、別に断らない限り、該化合物又は基の水素原子が置換基で置換されていない場合、及び、該化合物又は基の水素原子の一部又は全部が置換基で置換されている場合の双方を意味する。
【0028】
以下の説明において、用語「有機基」は、別に断らない限り、骨格原子として少なくとも炭素原子を含む基をいい、直鎖状、分岐状又は環状のいずれであってもよい。
【0029】
-(A)ポリイミド系樹脂-
第1及び第2の感光性樹脂組成物は、(A)成分として、(A)ポリイミド及びポリイミド前駆体からなる群より選ばれる1種類以上の樹脂(ポリイミド系樹脂)を含む。(A)成分におけるポリイミドは、分子内に複数のイミド構造を含有する樹脂である。また、(A)成分におけるポリイミド前駆体は、加熱により閉環してポリイミドを形成できる樹脂である。(A)成分を用いることにより、感光性フィルムの限界解像性を良好にできる。
【0030】
(A)成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。よって、(A)成分は、ポリイミドのみを含んでいてもよく、ポリイミド前駆体のみを含んでいてもよく、ポリイミド及びポリイミド前駆体の組み合わせを含んでいてもよい。中でも、(A)成分としては、限界解像性の観点から、ポリイミド前駆体を含むことが好ましい。
【0031】
ポリイミド前駆体としては、アミック酸構造単位及びアミック酸エステル構造単位からなる群より選ばれる1種以上の構造単位を、複数含有する樹脂を用いうる。アミック酸構造単位とは、カルボン酸二無水物とジアミン化合物とを反応させて得られる構造を有する構造単位を表す。アミック酸構造単位は、通常カルボキシ基を含有する。アミック酸エステル構造単位とは、このカルボキシ基の一部又は全部をエステル化して得られる構造を有する構造単位、もしくはこのカルボキシ基の一部又は全部をエチレン性不飽和結合を含有するエポキシ化合物のエポキシ基を反応させて得られる構造を有する構造単位を表す。エチレン性不飽和結合とは、非芳香族性の炭素-炭素不飽和結合を表し、例えば、非芳香族性の炭素-炭素二重結合及び炭素-炭素三重結合を表す。
【0032】
ポリイミド前駆体は、限界解像性を向上させる観点から、ポリアミック酸エステル構造単位に、インダン骨格を含有することが好ましい。インダン骨格とは、下記式(a1-1)に示す骨格を表す。ポリアミック酸エステル構造単位がインダン骨格を含有する場合、感光性樹脂組成物層の非露光部の現像液に対する溶解性を高められる。よって、現像時間を短縮することができ、更に好ましくは解像性を改善することができる。「解像性」とは、別に断らない限り、露光及び現像によって感光性樹脂組成物に径の小さい穴を形成できる性質を表す。一般に、形成できる穴の径が小さいほど、解像性に優れる。中でも、ポリイミド前駆体は、下記式(a1-2)に示すトリメチルインダン骨格を含有することが好ましい。ポリアミック酸エステル構造単位は、インダン骨格を、ジアミン化合物に由来する構造部分に含むことが好ましい。
【化3】
【0033】
カルボン酸二無水物は、2つの酸無水物基(即ち、-CO-O-CO-)と、この酸無水物基に結合した脂肪族炭素又は芳香族炭素と、を含有するカルボン酸の二無水物を表す。カルボン酸二無水物の具体例としては、脂肪族酸二無水物、及び芳香族酸二無水物が挙げられる。脂肪族酸二無水物は、2つの酸無水物基と、この酸無水物基に結合した脂肪族炭素と、を含有するカルボン酸の二無水物を表す。芳香族酸二無水物は、2つの酸無水物基と、この酸無水物基に結合した芳香族炭素と、を含有するカルボン酸の二無水物を表す。脂肪族酸二無水物の具体例としては、脂肪族テトラカルボン酸二無水物が挙げられる。芳香族酸二無水物の具体例としては、芳香族テトラカルボン酸二無水物が挙げられる。これらテトラカルボン酸二無水物は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
脂肪族酸二無水物における脂肪族炭素は、通常は、飽和脂肪族炭素である。好ましくは、酸無水物基は飽和脂肪族鎖に結合し、それら結合した酸無水物基と飽和脂肪族鎖とによって環構造が形成される。この環構造は、通常、酸素原子及び炭素原子からなる複素環であり、5員環又は6員環が好ましく、5員環が更に好ましい。また、脂肪族酸二無水物は、酸無水物基が直接結合する部位以外の部位においては、不飽和脂肪族鎖及び芳香族鎖を含有していてもよい。
【0035】
脂肪族酸二無水物の分子量は、好ましくは400以下である。分子量を斯かる範囲内とすることで、現像時の第1の感光性樹脂組成物層の膨潤を抑制したり、残膜率を効果的に高めたりできる。
【0036】
脂肪族酸二無水物としては、例えば、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-エンド-3-エンド-5-エクソ-6-エクソ-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-エクソ-3-エクソ-5-エクソ-6-エクソ-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、2-(3,4-ジカルボキシ-1,2,3,4-テトラヒドロ-1-ナフチル)こはく酸二無水物、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロフリル)-3-メチル-3-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸二無水物などが挙げられる。中でも、2-(3,4-ジカルボキシ-1,2,3,4-テトラヒドロ-1-ナフチル)こはく酸二無水物、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロフリル)-3-メチル-3-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
【0037】
芳香族酸二無水物の具体例としては、例えば、4,4’-オキシジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-パラターフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-メタターフェニルテトラカルボン酸二無水物、デカハイドロ-ジメタノナフタレンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
【0038】
ジアミン化合物としては、例えば、ビス[2-(3-アミノプロポキシ)エチル]エーテル、1,4-ブタンジオール-ビス(3-アミノプロピル)エ-テル、3,9-ビス(3-アミノプロピル)-2,4,8,10-テトラスピロ-5,5-ウンデカン、1,2-ビス(2-アミノエトキシ)エタン、1,2-ビス(3-アミノプロポキシ)エタン、トリエチレングリコール-ビス(3-アミノプロピル)エーテル、ポリエチレングリコール-ビス(3-アミノプロピル)エーテル、3,9-ビス(3-アミノプロピル)-2,4,8,10-テトラスピロ-5,5-ウンデカン、1,4-ブタンジオール-ビス(3-アミノプロピル)エ-テル等が挙げられる。ジアミン化合物は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。また、ジアミン化合物としては、芳香環を含有するジアミン化合物を用いてもよい。中でも、ジアミン化合物は、インダン骨格を含有することが好ましい。インダン骨格を含有するジアミン化合物としては、例えば、以下の式(a2-1)~(a2-10)に示すジアミン化合物が挙げられる。中でも、式(a2-4)~式(a2-7)に示すジアミン化合物が好ましく、式(a2-4)に示すジアミン化合物が更に好ましい。
【化4】
【0039】
エチレン性不飽和結合を含有するエポキシ化合物としては、エチレン性不飽和結合及びエポキシ基を含有する化合物を用いることができる。エポキシ基はグリシジル基として含まれていてもよい。エチレン性不飽和結合を含有するエポキシ化合物の例を挙げると、例えば、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル、3,4-エポキシシクロヘキシルメチルメタアクリレート等が挙げられる。エチレン性不飽和結合を含有するエポキシ化合物は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
ポリイミド前駆体は、当該ポリイミド前駆体の分子に、ラジカル反応性基を含有することが好ましい。ラジカル反応性基は、熱又は光により生じたラジカルによって重合を生じうる反応性基を表し、例えば、非芳香族性の炭素-炭素不飽和結合を含有する基が挙げられる。ラジカル反応性基を含有するポリイミド前駆体を用いる場合、露光によってポリイミド前駆体が架橋して、感光性樹脂組成物層の現像液に対する溶解性を効果的に低下させることができる。ラジカル反応性基は、例えば、アミック酸エステル構造単位のエステル化部分に含有されていてもよい。
【0041】
なお、ポリアミック酸エステル構造単位が、カルボキシ基の一部又は全部をエチレン性不飽和結合を含有するエポキシ化合物のエポキシ基を反応させて得られる構造を有する構造単位である場合、エポキシ化合物がエチレン性不飽和結合を含有するので、エポキシ化合物残基は、エチレン性不飽和結合を含有しうる。よって、エポキシ化合物残基は、ラジカル反応性基として機能できる。
【0042】
ポリイミド前駆体の一実施形態としては、下記式(A-1)で表され構造単位を含むことが好ましい。
【化5】
(式(A-1)において、Aは4価の有機基を表し、Bは2価の有機基を表し、R
1及びR
2はそれぞれ独立に、水素原子又は1価の有機基を表す。)
【0043】
式(A-1)において、Aは4価の有機基を表す。Aの炭素原子数は、好ましくは6~40である。4価の有機基としては、脂肪族炭化水素基を含有する4価の有機基、芳香族炭化水素基を含有する4価の有機基が挙げられる。
【0044】
4価の有機基が含有する脂肪族炭化水素基は脂肪族炭素を含有し、この脂肪族炭素に前記式(A-1)中に示されるカルボニル基が結合する。前記の脂肪族炭素は、通常、飽和脂肪族炭素である。好ましくは、4価の有機基は飽和脂肪族鎖を含有し、その飽和脂肪族鎖に前記式(A-1)中に示されるカルボニル基が結合する。この飽和脂肪族鎖は、前記式(A-1)中に示される2つのカルボニル基を連結する炭素原子数が2又は3の炭素鎖を含有することが好ましく、炭素原子数が2の炭素鎖を含有することが好ましい。前記式(A-1)中に示される2つのカルボニル基を連結する炭素原子数が2の炭素鎖を含有する飽和脂肪族鎖は、5員環を形成する酸無水物基を含有する脂肪族酸二無水物をジアミン化合物と反応させて得ることができる。また、前記式(A-1)中に示す2つのカルボニル基を連結する炭素原子数が3の炭素鎖を含有する飽和脂肪族鎖は、6員環を形成する酸無水物基を含有する脂肪族酸二無水物をジアミン化合物と反応させて得ることができる。
【0045】
芳香族炭化水素基は、芳香族を含有し、この芳香族に前記(A-1)中に示されるカルボニル基が結合する。詳細は、前記式(A-1)中の-COOR1基及び-COOR2基と-CONH-基とが互いにオルト位置にある芳香族基、又は脂環式脂肪族基(R1及びR2は式(A-1)中のR1及びR2と同じである。)等が挙げられる。
【0046】
Aの一実施形態としては、例えば、置換基を有していてもよい4価の脂肪族炭化水素基が挙げられる。4価の脂肪族炭化水素基は、飽和脂肪族炭化水素基であってもよく、不飽和脂肪族炭化水素基であってもよい。また、4価の脂肪族炭化水素基は、鎖状炭化水素基でもよく、環状炭化水素基(即ち、脂環式炭化水素基)であってもよく、その組み合わせであってもよい。さらに、鎖状炭化水素基は、直鎖状及び分岐状のいずれでもよい。中でも、4価の脂肪族炭化水素基は、現像性を特に高める観点から、脂肪族炭素環を含有することが好ましく、この脂肪族炭素環に前記式(A-1)中に示されるカルボニル基が結合していることがより好ましい。脂肪族炭素環に結合するカルボニル基の数は、好ましくは2以上である。
【0047】
Aにおいて4価の有機基が有していてもよい置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基等の、直鎖状、分岐状、又は環状の、炭素原子数1~10のアルキル基;ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基等のアルケニル基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等の、ハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等の、炭素原子数1~10の、アルコキシ基;ヒドロキシ基;トリフルオロメチル基等の、ハロゲン原子置換アルキル基;等が挙げられる。これらの置換基は、結合して環を形成していてもよい。上述の置換基は、さらに置換基(以下、「二次置換基」という場合がある。)を有していてもよい。置換基は、1種類でもよく、2種類以上でもよい。
【0048】
Aの式量の範囲は、好ましくは328以下である。Aの式量が前記範囲にある場合、通常は、現像時の感光性樹脂組成物の膨潤を抑制したり、残膜率を効果的に高めたりできる。
【0049】
Aの例としては、下記の式(a3-1)~式(a3-12)に示す基が挙げられる。式中、*は結合手を表す。
【化6】
【0050】
式(A-1)において、Bは、2価の有機基を表す。2価の有機基は、芳香環を含有していてもよい。また、2価の有機基は、芳香環を含有することが好ましい。また、2価の有機基は、インダン骨格を含有していてもよい。2価の有機基は、インダン骨格に加えて更に芳香環を含有していてもよい。
【0051】
Bが表す2価の有機基としては、例えば、以下に例示する(a4-1)~(a4-30)の基が挙げられる。また、(a4-1)~(a4-30)の基を2種以上組み合わせた基を、2価の有機基として用いてもよい。中でも、Bとしては、(a4-2)、(a4-21)~(a4-30)の基が好ましく、(a4-2)、(a4-24)~(a4-27)の基がより好ましく、(a4-2)、又は(a4-24)の基が更に好ましい。式中、*は結合手を表す。
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【0052】
上述した2価の有機基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、4価の有機基が有していてもよいものと同じ例が挙げられる。置換基は、1種類でもよく、2種類以上でもよい。
【0053】
式(A-1)において、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素原子又は1価の有機基を表す。1価の有機基としては、例えば、ラジカル反応性基、炭素原子数1~4の飽和脂肪族基が挙げられ、ラジカル反応性基が好ましい。ラジカル反応性基としては、例えば、エチレン性不飽和結合を含有する基を用いてもよい。ラジカル反応性基の具体例としては、ビニル基、アリル基、プロパギル基、エチニル基、フェニルエチニル基、ブテニル基、マレイミド基、ナジイミド基、(メタ)アクリロイル基、後述する式(A-2)で表される基、等が挙げられる。「(メタ)アクリロイル基」とは、メタクリロイル基、アクリロイル基及びこれらの組み合わせを包含する。式(A-1)のR1及びR2は、それぞれ独立に少なくとも一つがラジカル反応性基であることが好ましく、両方がラジカル反応性基であることがより好ましい。
【0054】
ラジカル反応性基としては、下記式(A-2)で表される基が好ましい。よって、R
1及びR
2は、それぞれ独立に、下記式(A-2)で表される基であることが好ましい。
【化11】
(式(A-2)において、R
4a、R
5a及びR
6aは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素原子数1~3の脂肪族炭化水素基を表し、Xは、2価の有機基を表す。*は、結合手を表す。)
【0055】
式(A-2)において、R4a~R6aは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素原子数1~3の脂肪族炭化水素基を表す。炭素原子数1~3の脂肪族炭化水素基としては、例えば、炭素原子数1~3のアルキル基が挙げられる。炭素原子数1~3のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、2-プロピル基等が挙げられ、中でもメチル基が好ましい。
【0056】
式(A-2)において、Xは、2価の有機基を表す。2価の有機基は、酸素原子、及び窒素原子等のヘテロ原子を含んでいてもよい。ヘテロ原子は、置換基として有することが好ましい。2価の有機基としては、置換基を有していてもよい2価の脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基等が挙げられる。中でも、2価の有機基としては、置換基を有していてもよい2価の脂肪族炭化水素基が好ましい。
【0057】
置換基を有していてもよい2価の脂肪族炭化水素基は、直鎖状、分枝状、又は環状であってもよい。また、2価の脂肪族炭化水素基は飽和であってもよく、不飽和であってもよい。2価の脂肪族炭化水素基の炭素原子数としては、好ましくは1~10、より好ましくは1~5である。2価の脂肪族炭化水素基としては、例えばアルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基等が挙げられる。
【0058】
アルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、へキシレン基等が挙げられる。
【0059】
アルケニレン基としては、例えば、エテニレン基、プロペニレン基、ブテニレン基、ペンテニレン基、へキセニレン基等が挙げられる。
【0060】
アルキニレン基としては、例えば、エチニレン基、プロピニレン基等が挙げられる。
【0061】
中でも、置換基を有していてもよい2価の脂肪族炭化水素基としては、置換基を有していてもよい炭素原子数1~10のアルキレン基が好ましく、置換基を有していてもよい炭素原子数1~5のアルキレン基がより好ましく、置換基を有していてもよい炭素原子数1~3のアルキレン基がさらに好ましく、エチレン基、プロピレン基、又は2-ヒドロキシプロピレン基が特に好ましい。
【0062】
置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基の炭素原子数としては、好ましくは6~20、より好ましくは6~15である。置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基としては、例えば、アリーレン基が挙げられ、アリーレン基としては例えば1,2-フェニレン基、1,3-フェニレン基、1,4-フェニレン基、ナフチレン基、アントラセニレン基、ビフェニレン基、9,9-ジフェニル-9H-フルオレニレン基等が挙げられる。
【0063】
2価の脂肪族炭化水素基及び2価の芳香族炭化水素基は置換基を有していてもよい。置換基としては、Aにおいて4価の有機基が有していてもよい置換基と同じ例が挙げられ、中でも、ヒドロキシ基が好ましい。置換基は、1種類でもよく、2種類以上でもよい。
【0064】
式(A-2)としては、例えば、以下に例示する(a5-1)~(a5-6)の基が挙げられる。中でも、式(A-2)としては、(a5-1)の基、(a5-3)の基、又は(a5-4)の基が好ましく、(a5-1)の基がより好ましい。式中、*は結合手を表す。
【化12】
【0065】
(A)成分は、下記式(A-3)で表される構造単位を有することが好ましい。
【化13】
(式(A-3)中、A
1aは、脂肪族炭化水素基を含有する4価の有機基を表し、B
aは、2価の有機基を表し、R
1a及びR
2aは、それぞれ独立に、エチレン性不飽和結合を含有する1価の有機基を表す。
【0066】
式(A-3)において、A1aは、脂肪族炭化水素基を含有する4価の有機基を表す。A1aは、式(A-1)におけるAが表す脂肪族炭化水素基を含有する4価の有機基と同じである。
【0067】
式(A-3)において、Baは2価の有機基を表し、式(A-1)におけるBと同じである。
【0068】
式(A-3)において、R
1a及びR
2aは、それぞれ独立に、エチレン性不飽和結合を含有する1価の有機基を表す。エチレン性不飽和結合を含有する1価の有機基としては、例えば、ビニル基、アリル基、プロパギル基、エチニル基、フェニルエチニル基、ブテニル基、マレイミド基、ナジイミド基、(メタ)アクリロイル基、式(A-3a)で表される基、等が挙げられる。R
1a及びR
2aは、それぞれ独立に、下記式(A-3a)で表されることが好ましい。
【化14】
(式(A-3a)において、R
4b、R
5b及びR
6bは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素原子数1~3の脂肪族炭化水素基を表し;p
aは、0~10の整数を表し;*は、結合手を表す。)
【0069】
式(A-3a)において、R4b~R6bは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素原子数1~3の脂肪族炭化水素基を表し、式(A-2)中のR4a~R6aと同じである。
【0070】
式(A-2)において、paは、0~10の整数を表し、0~5の整数が好ましく、0~3の整数がより好ましく、0がさらに好ましい。
【0071】
(A)成分は、下記式(A-4a)又は下記式(A-4b)で表される構造単位を有することが好ましい。
【化15】
(式(A-4a)及び式(A-4b)において、A
2aはそれぞれ独立に4価の有機基を表し、R
11及びR
12はそれぞれ独立に、水素原子又は1価の有機基を表し、R
13はそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表し、Xaはそれぞれ独立に、単結合、下記式(a6-1)で表される基、又は式(a6-2)で表される基を表し、Xbはそれぞれ独立に、単結合、式(a6-3)で表される基、又は式(a6-4)で表される基を表す。m1は1~5の整数を表す。)
【化16】
(式(a6-1)~(a6-4)において、*は結合手を表す。)
【0072】
式(A-4a)及び式(A-4b)において、A2aは、それぞれ独立に、4価の有機基を表す。A2aは、式(A-1)におけるAと同じである。
【0073】
式(A-4a)及び式(A-4b)において、R11及びR12は、それぞれ独立に、水素原子又は1価の有機基を表す。R11及びR12は、式(A-1)におけるR1及びR2と同じである。
【0074】
式(A-4a)及び式(A-4b)において、Xaは、それぞれ独立に、単結合、式(a6-1)で表される基、又は式(a6-2)で表される基を表す。式(a6-1)で表される基としては、例えば、1,2-フェニレン基、1,3-フェニレン基、1,4-フェニレン基等が挙げられる。式(a6-2)で表される基としては、例えば、下記の(a6-2-1)~(a6-2-6)の基が挙げられる。中でも、Xaとしては、式(a6-1)で表される基が好ましく、1,4-フェニレン基がより好ましい。下記の式中、*は結合手を表す。
【化17】
【0075】
式(A-4a)及び式(A-4b)において、Xbは、それぞれ独立に、単結合、式(a6-3)で表される基、又は式(a6-4)で表される基を表す。式(a6-3)で表される基としては、例えば、1,2-フェニレン基、1,3-フェニレン基、1,4-フェニレン基等が挙げられる。式(a6-4)で表される基としては、例えば、以下の(a6-4-1)~(a6-4-3)の基が挙げられる。中でも、Xbとしては、単結合が好ましい。下記の式中、*は結合手を表す。
【化18】
【0076】
式(A-4a)及び式(A-4b)において、R13は、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表し、メチル基を表すことが好ましい。
【0077】
式(A-4a)及び式(A-4b)において、m1は、それぞれ独立に、1~5の整数を表し、1~3の整数を表すことが好ましく、2又は3を表すことがより好ましく、3を表すことがさらに好ましい。
【0078】
(A)成分は、下記式(A-5a)又は下記式(A-5b)で表される構造単位を有することが好ましい。
【化19】
(式(A-5a)及び式(A-5b)において、A
3aはそれぞれ独立に脂肪族炭化水素基を含有する4価の有機基を表し、R
1b及びR
2bはそれぞれ独立に、エチレン性不飽和結合を含有する1価の有機基を表し、R
13aはそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表し、Xa
1はそれぞれ独立に、単結合、下記式(a7-1)で表される基、又は式(a7-2)で表される基を表し、Xb
1はそれぞれ独立に、単結合、式(a7-3)で表される基、又は式(a7-4)で表される基を表す。m2は1~5の整数を表す。)
【化20】
(式(a7-1)~(a7-4)において、*は結合手を表す。)
【0079】
式(A-5a)及び式(A-5b)において、A3aは、それぞれ独立に、4価の有機基を表す。A3aは、式(A-1)におけるAと同じである。
【0080】
式(A-5a)及び式(A-5b)において、R1a及びR1bは、それぞれ独立に、エチレン性不飽和結合を含有する1価の有機基を表す。R1a及びR1bは、式(A-3)におけるR1a及びR2aと同じである。
【0081】
式(A-5a)及び式(A-5b)において、Xa1は、それぞれ独立に、単結合、式(a6-1)で表される基、又は式(a6-2)で表される基を表す。Xa1は、式(A-4a)及び式(A-4b)におけるXaと同じである。
【0082】
式(A-5a)及び式(A-5b)において、Xb1は、それぞれ独立に、単結合、式(a6-3)で表される基、又は式(a6-4)で表される基を表す。Xb1は、式(A-4a)及び式(A-4b)におけるXbと同じである。
【0083】
式(A-5a)及び式(A-5b)において、R13aは、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表し、メチル基を表すことが好ましい。
【0084】
式(A-5a)及び式(A-5b)において、m2は、それぞれ独立に、1~5の整数を表し、m2は式(A-4a)及び式(A-4b)におけるm1と同じである。
【0085】
(A)成分は、下記式(A-6a)又は下記式(A-6b)で表される構造単位を有することが好ましい。
【化21】
(式(A-6a)及び式(A-6b)において、A
4aはそれぞれ独立に脂肪族炭化水素基を含有する4価の有機基を表し、R
1c及びR
2cはそれぞれ独立に、エチレン性不飽和結合を含有する1価の有機基を表す。)
【0086】
式(A-6a)及び式(A-6b)において、A4aは、それぞれ独立に、4価の有機基を表す。A4aは、式(A-1)におけるAと同じである。
【0087】
式(A-6a)及び式(A-6b)において、R1c及びR1cは、それぞれ独立に、エチレン性不飽和結合を含有する1価の有機基を表す。R1c及びR1cは、式(A-3)におけるR1a及びR2aと同じである。
【0088】
ポリイミド前駆体は、インダン骨格を有する構造単位と、インダン骨格を含有しない構造単位とを含有する共重合体であってもよい。例えば、式(A-1)で表されるインダン骨格を含む構造単位に加えて、式(A-1)で表されるインダン骨格を含まない構造単位を含んでいてもよい。また、ポリイミド前駆体は、複数の異なる式(A-1)で表される構造単位を有する共重合体であってもよい。
【0089】
ポリイミド前駆体は、上述したアミック酸構造単位及びアミック酸エステル構造単位以外の任意の構造単位を含有していてもよい。よって、ポリイミド前駆体は、式(A-1)で表される構造単位と、任意の構造単位とを含有する共重合体であってもよい。中でも、ポリイミド前駆体は、アミック酸構造単位及びアミック酸エステル構造単位を多く含有することが好ましく、よって、任意の構造単位が少ないことが好ましい。例えば、ポリイミド前駆体の全質量100%に対して、アミック酸構造単位及びアミック酸エステル構造単位の質量が、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは90質量%以上である。ポリイミド前駆体は、繰り返し単位として上述したアミック酸構造単位及び/又はアミック酸エステル構造単位のみを含んでいてもよく、任意の構造単位を含まなくてもよい。また、ポリイミド前駆体が含有するアミック酸構造単位及び/又はアミック酸エステル構造単位は、1種類でもよく、2種類以上でもよい。
【0090】
式(A-1)で表される構造単位は、下記式(a-1)~式(a-31)のいずれかで表されることが特に好ましい。よって、ポリイミド前駆体は、下記式(a-1)~式(a-31)で表される構造単位からなる群より選ばれる1以上の構造単位を含有することが好ましく、下記式(a-6)で表される構造単位、及び下記式(a-26)で表される構造単位のいずれかを含有することがより好ましい。
【化22】
【化23】
【化24】
【化25】
【化26】
【化27】
【化28】
【化29】
【0091】
式(A-1)で表される構造単位の繰り返し数は、通常2以上であり、好ましくは5~200、より好ましくは5~150、更に好ましくは5~100、特に好ましくは5~70である。
【0092】
式(A-1)で表される構造単位を有するポリイミド前駆体の具体例としては、以下の(Aa-1)~(Aa-31)の繰り返し単位を含む化合物を挙げることができる。但し、式(A-1)で表されるアミック酸エステル構造単位を有するポリイミド前駆体は、これら具体例に限定されるものではない。式中、nは、5~200の整数を表す。
【化30】
【化31】
【化32】
【化33】
【化34】
【化35】
【化36】
【化37】
【0093】
ポリイミド前駆体は、紫外線を高い透過率で透過させることができる。一例において、厚み60μmのポリイミド前駆体の層の波長365nmにおける全光線透過率は、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、更に好ましくは95%以上である。全光線透過率は、後述する実施例の合成例1に記載の方法で測定できる。
【0094】
ポリイミド前駆体の製造方法は、特に制限はない。ポリイミド前駆体は、例えば、脂肪族酸二無水物とジアミン化合物とを反応させてポリアミック酸を得ること、並びに、ポリアミック酸とエチレン性不飽和結合を含有するエポキシ化合物とを反応させること、を含む方法によって製造しうる。脂肪族酸二無水物、ジアミン化合物、及び、エチレン性不飽和結合を含有するエポキシ化合物としては、例えば、上述したものを用いうる。ポリイミド前駆体の製造方法については、特許第3921734号公報、特開平11―15152号公報、特開2015-209461号公報、特開2015-214680号公報、特開2017-219850号公報、又は特開2018-146964号公報に記載の方法を参照しうる。
【0095】
ポリイミドとしては、上述したポリイミド前駆体を閉環してイミド構造を形成させた構造を含有する樹脂を用いうる。また、ポリイミドは、当該ポリイミドの分子に、ラジカル反応性基を含有していてもよい。ラジカル反応性基を含有するポリイミドを用いる場合、露光によってポリイミドが架橋して、第1及び第2の感光性樹脂組成物の現像液に対する溶解性を効果的に低下させることができる。好ましいポリイミドとしては、下記式(A-7)で表される構造を含む化合物が挙げられる。ポリイミドは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【化38】
【0096】
(式(A-7)において、Aai1は式(A-1)中のAと同じであり、Bai1は式(A-1)中のBと同じであり、nai1は、5~200の整数を表す。)
【0097】
ポリイミドの具体例としては、以下の繰り返し構造を含む化合物を挙げることができる。但し、ポリイミドは、これら具体例に限定されるものではない。
【化39】
【0098】
(A)成分の重量平均分子量は、限界解像性の観点から、好ましくは5000以上、より好ましくは10000以上、さらに好ましくは30000以上であり、好ましくは100万以下、より好ましくは50万以下、さらに好ましくは20万以下である。樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、ポリスチレン換算の値として測定できる。
【0099】
第1の感光性樹脂組成物中の(A)成分の含有量は、厚い感光性樹脂組成物層に露光及び現像によって効果的に穴を形成する観点から、第1の感光性樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上であり、好ましくは98質量%以下、より好ましくは97質量%以下、更に好ましくは95質量%以下である。
【0100】
第2の感光性樹脂組成物中の(A)成分の含有量は、厚い感光性樹脂組成物層に露光及び現像によって効果的に穴を形成する観点から、第2の感光性樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上であり、好ましくは98質量%以下、より好ましくは97質量%以下、更に好ましくは95質量%以下である。
【0101】
感光性樹脂組成物層全体の(A)成分の含有量は、厚い感光性樹脂組成物層に露光及び現像によって効果的に穴を形成する観点から、感光性樹脂組成物層の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上であり、好ましくは98質量%以下、より好ましくは97質量%以下、更に好ましくは95質量%以下である。
【0102】
なお、本発明において、第1の感光性樹脂組成物中の各成分の含有量は、別途明示のない限り、第1の感光性樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%としたときの値であり、不揮発成分とは、第1の感光性樹脂組成物中の溶剤を除く不揮発成分全体を意味する。第2の感光性樹脂組成物中の各成分の含有量は、別途明示のない限り、第2の感光性樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%としたときの値であり、不揮発成分とは、第2の感光性樹脂組成物中の溶剤を除く不揮発成分全体を意味する。また、感光性樹脂組成物層全体中の各成分の含有量は、別途明示のない限り、感光性樹脂組成物層(第1及び第2の感光性樹脂組成物層)中の不揮発成分を100質量%としたときの値であり、不揮発成分とは、感光性樹脂組成物層中の溶剤を除く不揮発成分全体を意味する。
【0103】
<(B)光ラジカル発生剤>
第1及び第2の感光性樹脂組成物は、(B)成分として(B)光ラジカル発生剤を含有する。(B)成分からは、(A)成分に該当するものは除かれる。(B)成分は、活性光線の照射を受けてラジカルを生じ、このラジカルによって架橋反応が進行しうる。(B)成分は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0104】
(B)成分は、一般に、(B-1)反応性に富む光ラジカル発生剤と、(B-2)深部硬化性に優れる光ラジカル発生剤とに分類することができる。積層対象部材上に感光性フィルムを積層して半導体パッケージ基板を作製するにあたって、通常、感光性樹脂組成物層の第2の感光性樹脂組成物層が回路基板に接合するように積層させるので、第2の感光性樹脂組成物層は、積層時において感光性樹脂組成物層の最下層に位置する。感光性樹脂組成物層の合計厚みは、通常、その厚みが厚いため、最下層である第2の感光性樹脂組成物層には光が届きにくい。このため、露光によって生じるビアの形状が逆テーパー状になる傾向にある。第1及び第2の感光性樹脂組成物に含まれる(B)成分としては、(B-1)成分のみを含んでいてもよく、(B-2)成分のみを含んでいてもよいが、アンダーカット耐性を向上させ、限界解像性を向上させる観点から、(B-1)成分と、(B-2)成分とを含むことが好ましい。
【0105】
(B-1)反応性に富む光ラジカル発生剤としては、オキシムエステル構造を含む光ラジカル発生剤が挙げられる。(B-1)成分としては、例えば、オキシムエステル系光ラジカル発生剤等が挙げられる。
【0106】
オキシムエステル系光ラジカル発生剤としては、例えば、2-(ベンゾイルオキシイミノ)-1-[4-(フェニルチオ)フェニル]オクタン-1-オン(OXE01)、[1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)カルバゾール-3-イル]エチリデンアミノ]アセテート(OXE02)、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)等が挙げられる。
【0107】
(B-1)反応性に富む光ラジカル発生剤は、市販品を用いてもよい。反応性に富む光ラジカル発生剤の市販品の具体例としては、BASF社製の「IrgacureTPO」、「Irgacure OXE-01」、「Irgacure OXE-02」;ADEKA社製の「N-1919」等が挙げられる。
【0108】
本発明において、(B-2)深部硬化性に優れる光ラジカル発生剤としては、340nm~420nmの波長領域に吸収の極大値を有する、または、365nmにおける吸光係数が4000ml/gcm以下である。(B-2)成分としては、例えば、アシルホスフィン系光ラジカル発生剤、アミノケトン系光ラジカル発生剤、α-ヒドロキシケトン系光ラジカル発生剤、ベンゾイン系光ラジカル発生剤、ベンジルケタール系光ラジカル発生剤等が挙げられる。
【0109】
アシルホスフィン系光ラジカル発生剤としては、例えば、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ジフェニルホスフィンオキシド、ポリオキシエチレングリセリンエーテルトリス[フェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィネート](Polymeric TPO-L)等が挙げられる。
【0110】
アミノケトン系光ラジカル発生剤としては、例えば、2-メチル-1-フェニル-2-モルホリノプロパン-1-オン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン、2-メチル-1-(4-ヘキシルフェニル)-2-モルホリノプロパン-1-オン、2-エチル-2-(ジメチルアミノ)-1-(4-モルフォリノフェニル)ブタン-1-オン、2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-1-(4-モルフォリノフェニル)ブタン-1-オン、2-(ジメチルアミノ)-2-(4-メチルフェニルメチル)-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン、2-メチル-1-(9,9-ジブチルフルオレン-2-イル)-2-モルホリノプロパン-1-オン等のα-アミノケトン系光ラジカル発生剤が挙げられる。
【0111】
α-ヒドロキシケトン系光ラジカル発生剤としては、例えば、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパノン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパノン、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)ベンジル]フェニル}-2-メチルプロパン-1-オン等が挙げられる。
【0112】
ベンゾイン系光ラジカル発生剤としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等が挙げられる。
【0113】
ベンジルケタール系光ラジカル発生剤としては、例えば、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン等が挙げられる。
【0114】
(B-2)深部硬化性に優れる光ラジカル発生剤は、市販品を用いてもよい。深部硬化性に優れる光ラジカル発生剤の市販品の具体例としては、IGM社製の「Omnirad907」、「Omnirad369」、「Omnirad379」、「Omnirad379EG」、「Omnirad819」、「OmniradTPO」等が挙げられる。
【0115】
第1の感光性樹脂組成物中の(B)成分の含有量は、アンダーカット耐性及び限界解像性を向上させる観点から、第1の感光性樹脂組成物中の(A)成分100質量部に対して、好ましくは0.03質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上、さらに好ましくは0.5質量部以上であり、好ましくは5質量部以下、より好ましくは4質量部以下、さらに好ましくは3質量部以下である。
【0116】
第1の感光性樹脂組成物中の(B-1)成分の含有量は、アンダーカット耐性及び限界解像性を向上させる観点から、第1の感光性樹脂組成物中の(A)成分100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.2質量部以上、さらに好ましくは0.3質量部以上であり、好ましくは2質量部以下、より好ましくは1.5質量部以下、さらに好ましくは1質量部以下である。
【0117】
第1の感光性樹脂組成物中の(B-2)成分の含有量は、アンダーカット耐性及び限界解像性を向上させる観点から、第1の感光性樹脂組成物中の(A)成分100質量部に対して、好ましくは0.03質量部以上、より好ましくは0.05質量部以上、さらに好ましくは0.1質量部以上であり、好ましくは1質量部以下、より好ましくは0.8質量部以下、さらに好ましくは0.5質量部以下である。
【0118】
第1の感光性樹脂組成物中の(B)成分の含有量としては、アンダーカット耐性及び限界解像性を向上させる観点から、第1の感光性樹脂組成物の不揮発成分を100質量%としたとき、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、さらに好ましくは0.5質量%以上であり、好ましくは5質量%以下、より好ましくは4質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下である。
【0119】
第1の感光性樹脂組成物中の(B-1)成分の含有量は、アンダーカット耐性及び限界解像性を向上させる観点から、第1の感光性樹脂組成物の不揮発成分を100質量%としたとき、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、さらに好ましくは0.5質量%以上であり、好ましくは5質量%以下、より好ましくは4質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下である。
【0120】
第1の感光性樹脂組成物中の(B-2)成分の含有量は、アンダーカット耐性及び限界解像性を向上させる観点から、第1の感光性樹脂組成物の不揮発成分を100質量%としたとき、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、さらに好ましくは0.5質量%以上であり、好ましくは5質量%以下、より好ましくは4質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下である。
【0121】
第1の感光性樹脂組成物の不揮発成分を100質量%としたときの第1の感光性樹脂組成物中の(B-1)成分の含有量をb1-1とし、第1の感光性樹脂組成物中の(B-2)成分の含有量をb2-1としたとき、b1-1/b1-2が、好ましくは0.5以上、より好ましくは1以上、さらに好ましくは1.5以上、2以上であり、好ましくは15以下、より好ましくは12以下、さらに好ましくは10以下である。第1の感光性樹脂組成物に含まれる(B-1)成分及び(B-2)成分の量比を斯かる範囲内となるように(B-1)成分及び(B-2)成分の量を調整することで、アンダーカット耐性に優れる硬化物を得ることができる。
【0122】
第2の感光性樹脂組成物中の(B)成分の含有量は、アンダーカット耐性及び限界解像性を向上させる観点から、第2の感光性樹脂組成物中の(A)成分100質量部に対して、好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上、さらに好ましくは0.5質量部以上であり、好ましくは8質量部以下、より好ましくは5質量部以下、さらに好ましくは4質量部以下である。
【0123】
第2の感光性樹脂組成物中の(B-1)成分の含有量は、アンダーカット耐性及び限界解像性を向上させる観点から、第2の感光性樹脂組成物中の(A)成分100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.3質量部以上、さらに好ましくは0.5質量部以上であり、好ましくは5質量部以下、より好ましくは4質量部以下、さらに好ましくは3質量部以下である。
【0124】
第2の感光性樹脂組成物中の(B-2)成分の含有量は、アンダーカット耐性及び限界解像性を向上させる観点から、第2の感光性樹脂組成物中の(A)成分100質量部に対して、好ましくは0.03質量部以上、より好ましくは0.05質量部以上、さらに好ましくは0.1質量部以上であり、好ましくは1質量部以下、より好ましくは0.8質量部以下、さらに好ましくは0.5質量部以下である。
【0125】
第2の感光性樹脂組成物中の(B)成分の含有量としては、アンダーカット耐性及び限界解像性を向上させる観点から、第2の感光性樹脂組成物の不揮発成分を100質量%としたとき、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、さらに好ましくは0.5質量%以上であり、好ましくは5質量%以下、より好ましくは4質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下である。
【0126】
第1の感光性樹脂組成物の不揮発成分を100質量%としたときの第1の感光性樹脂組成物中の(B)成分の含有量をb1-0とし、第2の感光性樹脂組成物中の(B)成分の含有量をb2-0としたとき、b1-0/b2-0が、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.3以上、さらに好ましくは0.5以上、0.6以上であり、好ましくは3以下、より好ましくは2以下、さらに好ましくは1.5以下、1以下、0.9以下である。第1及び第2の感光性樹脂組成物に含まれる(B)成分の量比を斯かる範囲内となるように(B)成分の量を調整することで、アンダーカット耐性に優れる硬化物を得ることができる。
【0127】
第2の感光性樹脂組成物中の(B-1)成分の含有量は、アンダーカット耐性及び限界解像性を向上させる観点から、第2の感光性樹脂組成物の不揮発成分を100質量%としたとき、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.5質量%以上であり、好ましくは5質量%以下、より好ましくは4質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下である。
【0128】
第2の感光性樹脂組成物中の(B-2)成分の含有量は、アンダーカット耐性及び限界解像性を向上させる観点から、第2の感光性樹脂組成物の不揮発成分を100質量%としたとき、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.03質量%以上、さらに好ましくは0.1質量%以上であり、好ましくは1.5質量%以下、より好ましくは1質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以下である。
【0129】
第2の感光性樹脂組成物の不揮発成分を100質量%としたときの第2の感光性樹脂組成物中の(B-1)成分の含有量をb2-1とし、第2の感光性樹脂組成物中の(B-2)成分の含有量をb2-2としたとき、b2-1/b2-2が、好ましくは1以上、より好ましくは2以上、さらに好ましくは2.5以上、3以上であり、好ましくは20以下、より好ましくは15以下、さらに好ましくは13以下、10以下である。第2の感光性樹脂組成物に含まれる(B-1)成分及び(B-2)成分の量比を斯かる範囲内となるように(B-1)成分及び(B-2)成分の量を調整することで、アンダーカット耐性に優れる硬化物を得ることができる。
【0130】
第1の感光性樹脂組成物の不揮発成分を100質量%としたときの第1の感光性樹脂組成物中の(B-1)成分の含有量をb1-1とし、第2の感光性樹脂組成物中の(B-1)成分の含有量をb2-1としたとき、b1-1/b2-1が、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.3以上、さらに好ましくは0.5以上であり、好ましくは3以下、より好ましくは1.5以下、さらに好ましくは1以下である。第1及び第2の感光性樹脂組成物に含まれる(B-1)成分の量比を斯かる範囲内となるように調整することで、第1及び第2の感光性樹脂組成物層の吸光度の差を所定の範囲内に容易に調整可能になり、アンダーカット耐性に優れる硬化物を得ることができる。
【0131】
第1の感光性樹脂組成物の不揮発成分を100質量%としたときの第1の感光性樹脂組成物中の(B-2)成分の含有量をb1-2とし、第2の感光性樹脂組成物中の(B-2)成分の含有量をb2-2としたとき、b1-2/b2-2が、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.5以上、さらに好ましくは0.8以上であり、好ましくは3以下、より好ましくは1.5以下、さらに好ましくは1.3以下である。第1及び第2の感光性樹脂組成物に含まれる(B-2)成分の量比を斯かる範囲内となるように調整することで、第1及び第2の感光性樹脂組成物層の吸光度の差を所定の範囲内に容易に調整可能になり、アンダーカット耐性に優れる硬化物を得ることができる。
【0132】
感光性樹脂組成物層中の(B)成分の含有量としては、アンダーカット耐性及び限界解像性を向上させる観点から、感光性樹脂組成物層の不揮発成分を100質量%としたとき、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、さらに好ましくは0.5質量%以上であり、好ましくは5質量%以下、より好ましくは4質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下である。
【0133】
感光性樹脂組成物層中の(B)成分の含有量は、アンダーカット耐性及び限界解像性を向上させる観点から、感光性樹脂組成物層中の(A)成分100質量部に対して、好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上、さらに好ましくは0.5質量部以上であり、好ましくは8質量部以下、より好ましくは5質量部以下、さらに好ましくは3質量部以下である。
【0134】
感光性樹脂組成物層中の(B-1)成分の含有量は、アンダーカット耐性及び限界解像性を向上させる観点から、感光性樹脂組成物層中の(A)成分100質量部に対して、好ましくは0.03質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上、さらに好ましくは0.5質量部以上であり、好ましくは5質量部以下、より好ましくは4質量部以下、さらに好ましくは3質量部以下である。
【0135】
感光性樹脂組成物層中の(B-2)成分の含有量は、アンダーカット耐性及び限界解像性を向上させる観点から、感光性樹脂組成物層中の(A)成分100質量部に対して、好ましくは0.03質量部以上、より好ましくは0.05質量部以上、さらに好ましくは0.1質量部以上であり、好ましくは3質量部以下、より好ましくは1質量部以下、さらに好ましくは0.5質量部以下である。
【0136】
第1の感光性樹脂組成物に含まれる(B)成分の含有量は、アンダーカット耐性を向上させる観点から、第2の感光性樹脂組成物に含まれる(B)成分の含有量よりも少ないことが好ましい。具体的には、(A)成分100質量部に対しての第1の感光性樹脂組成物に含まれる(B)成分の含有量をb1とし、(A)成分100質量部に対しての第2の感光性樹脂組成物に含まれる(B)成分の含有量をb2としたとき、b2-b1が、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.15以上、さらに好ましくは0.2以上であり、好ましくは2以下、より好ましくは1.5以下、さらに好ましくは1以下である。
【0137】
-(C)光架橋剤-
第1及び第2の感光性樹脂組成物は、(C)成分として、(C)光架橋剤を含む。この(B)架橋剤には、(A)成分及び(B)成分に該当するものは含めない。第1及び第2の感光性樹脂組成物は、活性光線の照射を受けて(B)光ラジカル発生剤からラジカルが生じると、(C)光架橋剤の架橋反応が生じて現像液への溶解性を効果的に低下させることができる。よって、第1及び第2の感光性樹脂組成物の露光部と非露光部との間の現像液に対する溶解性の差を効果的に大きくできる。したがって、現像時に、架橋反応が進行した部分以外において第1及び第2の感光性樹脂組成物を選択的に除去することが可能となり、ネガ型のパターンを有利に形成することができる。また、結果として現像後の膜厚及び解像性を確保することが可能になる。(C)光架橋剤は、1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0138】
(C)光架橋剤としては、露光時に、架橋反応を進行させることが可能な化合物を用いうる。(C)光架橋剤は、エチレン性不飽和結合を含有するので、通常、このエチレン性不飽和結合が架橋反応を生じうる。(C)光架橋剤としては、エチレン性不飽和結合を含有し、そのエチレン性不飽和結合のα位の炭素原子の少なくとも一つがカルボニル基又は芳香族基と結合している化合物がより好ましい。エチレン性不飽和結合のα位の炭素原子とは、炭素-炭素不飽和結合で結合している炭素原子に隣接した1番目の炭素原子を示す。
【0139】
(C)光架橋剤は、一般に、エチレン性不飽和結合を含有する基を含む。以下、「エチレン性不飽和結合を含有する基」を、「エチレン性不飽和基」ということがある。エチレン性不飽和基は、通常、1価の基であり、例えば、ビニル基、アリル基、プロパギル基、ブテニル基、エチニル基、フェニルエチニル基、マレイミド基、ナジイミド基、(メタ)アクリロイル基が挙げられる。光ラジカル重合の反応性の観点から、(メタ)アクリロイル基、フェニルエチニル基が好ましく、(メタ)アクリロイル基が特に好ましい。(B)架橋剤は、エチレン性不飽和結合を含むので、光ラジカル重合が可能であるが、一般的な条件下で光ラジカル重合を行う上では、エチレン性不飽和結合のα位の少なくとも一つにカルボニル基又は芳香族基を有する化合物が好ましい。
【0140】
(C)光架橋剤の1分子当たりのエチレン性不飽和結合の数は、通常1つ以上である。限界解像性の観点から、(C)光架橋剤の1分子当たりのエチレン性不飽和結合の数は、好ましくは2つ以上であり、更に好ましくは3つ以上である。上限は特に制限はないが20つ以下とし得る。(C)光架橋剤が1分子当たり2個以上のエチレン性不飽和基を含む場合、それらのエチレン性不飽和基は、同じでもよく、異なっていてもよい。
【0141】
(C)光架橋剤としては、下記式(C-1)で表される化合物が好ましい。
【化40】
式中、R
1cは、それぞれ独立に、水素原子、又は炭素原子数1~4の直鎖状もしくは分岐状アルキル基を表し、Zは、それぞれ独立に、酸素原子を含んでもよい炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基、酸素原子を含んでもよいアリーレン基、又は酸素原子を含んでもよい炭素原子数2~20の直鎖状もしくは分岐状のアルケニレン基を表し、A
1cは、炭素原子数1~10の直鎖状、環状もしくは分岐状のnc価の有機基を表す。ncは2~20の正の整数を示す。
【0142】
R1cは、それぞれ独立に、水素原子、又は炭素原子数1~4の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基を表す。炭素原子数1~4の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、1-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基等が挙げられる。中でも、R1cとしては、水素原子、メチル基が好ましい。
【0143】
Zは、それぞれ独立に、酸素原子を含んでもよい炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基、酸素原子を含んでもよいアリーレン基、又は酸素原子を含んでもよい炭素原子数2~20の直鎖状もしくは分岐状のアルケニレン基を表す。炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基としては、炭素原子数1~10の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基が好ましく、炭素原子数1~6の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基がより好ましい。このようなアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、へキシレン基等が挙げられ、メチレン基が好ましい。また、アルキレン基は酸素原子を含むオキシアルキレン基でもよく、このような基の具体例としては、例えば以下に示すものが挙げられる。式中、「*」は結合手を表し、c1は1~20の整数を表し、c2は1~10の整数を表し、c3は1~19の整数を表し、c4は1~9の整数を表す。
【化41】
【0144】
酸素原子を含んでもよいアリーレン基としては、炭素原子数6~20のアリーレン基が好ましく、炭素原子数6~15のアリーレン基がより好ましく、炭素原子数6~10のアリーレン基がさらに好ましい。このようなアリーレン基としては、例えば、フェニレン基、ナフチレン基等が挙げられる。また、アリーレン基は酸素原子を含んでいてもよく、このような基の具体例としては、例えば以下に示すものが挙げられる。式中、「*」は結合手を表し、c5は1~3の整数を表す。
【化42】
【0145】
酸素原子を含んでもよい炭素原子数2~20の直鎖状もしくは分岐状のアルケニレン基としては、炭素原子数2~10の直鎖状もしくは分岐状のアルケニレン基が好ましく、炭素原子数2~6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニレン基がより好ましい。このようなアルケニレン基としては、例えば、エテニレン基、プロペニレン基、ブテニレン基、ペンテニレン基、へキセニレン基等が挙げられる。また、アルケニレン基は酸素原子を含むオキシアルケニレン基でもよく、このような基の具体例としては、例えば以下に示すものが挙げられる。式中、「*」は結合手を表し、c6は1~10の整数を表す。アルケニレン基としてはプロペニレン基が好ましい。
【化43】
【0146】
中でも、Zとしては、酸素原子を含んでもよい炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基が好ましく、オキシアルキレン基及びメチレン基がより好ましい。
【0147】
A
1cは、炭素原子数1~10の直鎖状、環状もしくは分岐状のnc価の有機基を表す。nc価の有機基としては、例えば、酸素原子を含んでもよいnc基価の炭化水素基、ビスフェノールに由来するnc価の基、フルオレンに由来するnc価の基、トリシクロデカンに由来nc価の基、又はイソシアヌル基に由来するnc価の基が挙げられる。酸素原子を含んでもよいnc価の炭化水素基としては、酸素原子を含んでもよいnc価の脂肪族炭化水素基、酸素原子を含んでもよいnc価の芳香族炭化水素基が挙げられ、酸素原子を含んでもよいnc価の脂肪族炭化水素基が好ましく、例えばncが2の場合、アルキレン基が好ましい。A
1cが表す基の具体例としては、例えば以下に示すものが挙げられる。式中、「*」は結合手を表す。
【化44】
【0148】
ncは2~20の正の整数を表し、好ましくは2~8の正の整数を示し、より好ましくは2~6の正の整数を示し、さらに好ましくは2~5の正の整数を示し、さらに好ましくは3又は4、もしくは2又は3を示す。
【0149】
(C)光架橋剤は、下記式(C-2)で表される化合物であってもよい。
【化45】
式(C-2)中、R
2cは、それぞれ独立に水素原子、又はメチル基を表す。
【0150】
R2cは、それぞれ独立に水素原子又はメチル基を表し、メチル基が好ましい。
【0151】
(C)光架橋剤の具体例としては、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート等に加えて、以下の(CL-1)~(CL-11)の化合物を挙げることができる。但し、(C)成分はこれらに限定されるものではない。
【化46】
【化47】
【0152】
(C)光架橋剤は、市販品を用いてもよい。市販品としては、例えば、新中村化学社製のNKエステル-D-TMP、4G、9G、14G、23G、DCP、TMPT、A-TMPT;巴工業社製のSR209;東亜合成社製のM-940、M-933;日本化薬社製のDPHA(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート)、サートマー・ジャパン社製のCN2301、CN2304等が挙げられる。
【0153】
第1の感光性樹脂組成物中の(C)成分の含有量は、アンダーカット耐性及び限界解像性を向上させる観点から、第1の感光性樹脂組成物中の(A)成分100質量部に対して、好ましくは2質量部以上、より好ましくは4質量部以上、さらに好ましくは5質量部以上であり、好ましくは15質量部以下、より好ましくは10質量部以下、さらに好ましくは8質量部以下である。
【0154】
第1の感光性樹脂組成物中の(C)成分の含有量は、アンダーカット耐性及び限界解像性を向上させる観点から、第1の感光性樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、さらに好ましくは3質量%以上であり、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは8質量%以下である。
【0155】
第2の感光性樹脂組成物中の(C)成分の含有量は、アンダーカット耐性及び限界解像性を向上させる観点から、第2の感光性樹脂組成物中の(A)成分100質量部に対して、好ましくは2質量部以上、より好ましくは4質量部以上、さらに好ましくは5質量部以上であり、好ましくは15質量部以下、より好ましくは10質量部以下、さらに好ましくは8質量部以下である。
【0156】
第2の感光性樹脂組成物中の(C)成分の含有量は、アンダーカット耐性及び限界解像性を向上させる観点から、第2の感光性樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、さらに好ましくは3質量%以上であり、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは8質量%以下である。
【0157】
感光性樹脂組成物層中の(C)成分の含有量は、アンダーカット耐性及び限界解像性を向上させる観点から、感光性樹脂組成物層の不揮発成分を100質量%としたとき、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、さらに好ましくは3質量%以上であり、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは8質量%以下である。
【0158】
感光性樹脂組成物層中の(C)成分の含有量は、アンダーカット耐性及び限界解像性を向上させる観点から、感光性樹脂組成物層中の(A)成分100質量部に対して、好ましくは2質量部以上、より好ましくは4質量部以上、さらに好ましくは5質量部以上であり、好ましくは15質量部以下、より好ましくは10質量部以下、さらに好ましくは8質量部以下である。
【0159】
-(D)任意の添加剤-
第1及び第2の感光性樹脂組成物は、上述した(A)~(C)成分以外に、任意の成分として、(D)任意の添加剤を含んでいてもよい。(D)成分としての(D)任意の添加剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0160】
(D)任意の添加剤としては、例えば、増感剤;光重合開始助剤;密着助剤;フッ素系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤等の界面活性剤;熱可塑性樹脂;フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、アイオディン・グリーン、ジアゾイエロー、クリスタルバイオレット、酸化チタン、カーボンブラック、ナフタレンブラック等の着色剤;ハイドロキノン、フェノチアジン、メチルハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、カテコール、ピロガロール等の重合禁止剤;ベントン、モンモリロナイト等の増粘剤;シリコーン系、フッ素系、ビニル樹脂系の消泡剤;エポキシ樹脂、アンチモン化合物、リン系化合物、芳香族縮合リン酸エステル、含ハロゲン縮合リン酸エステル等の難燃剤;フェノール系樹脂、シアネートエステル系樹脂等の熱硬化樹脂等が挙げられる。
【0161】
-(E)溶剤-
第1及び第2の感光性樹脂組成物は、上述した(A)~(D)成分といった不揮発成分に組み合わせて、任意の成分として、(E)溶剤を含んでいてもよい。(E)溶剤は、揮発性成分であり、(A)~(D)成分の少なくともいずれかの成分を均一に溶解させうるものを用いることが好ましい。
【0162】
(E)溶剤としては、例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、及びトリエチレングリコールジメチルエーテル等の、炭素原子数2以上9以下のエーテル化合物溶剤;アセトン、及びメチルエチルケトン等の、炭素原子数2以上6以下のケトン化合物溶剤;ノルマルペンタン、シクロペンタン、ノルマルヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、及びデカリン等の、炭素原子数5以上10以下の飽和炭化水素化合物溶剤;ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、及びテトラリン等の、炭素原子数6以上10以下の芳香族炭化水素化合物溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、γ-ブチロラクトン、及び安息香酸メチル等の、炭素原子数3以上9以下のエステル化合物溶剤;クロロホルム、塩化メチレン、及び1,2-ジクロロエタン等の、炭素原子数1以上10以下の含ハロゲン化合物溶剤;アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、及びN-メチル-2-ピロリドン等の、炭素原子数2以上10以下の含窒素化合物溶剤;並びに、ジメチルスルホキシド等の、含硫黄化合物溶剤;が挙げられる。
【0163】
また、(E)溶剤としては、例えば、N-エチル-2-ピロリドン、テトラヒドロフラン、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルアミド、ピリジン、シクロペンタノン、α-アセチル-γ-ブチロラクトン、テトラメチル尿素、1,3-ジメチル-2-イミダゾリノン、N-シクロヘキシル-2-ピロリドン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アニソール、酢酸エチル、乳酸エチル、及び乳酸ブチルなどが挙げられる。
【0164】
(E)溶剤は、1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0165】
第1の感光性樹脂組成物中の(E)溶剤の量は、(E)溶剤を含めた第1の感光性樹脂組成物全体を100質量%とした場合、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、さらに好ましくは3質量%以上であり、好ましくは40質量%以下、より好ましくは35質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下である。
【0166】
第2の感光性樹脂組成物中の(E)溶剤の量は、(E)溶剤を含めた第2の感光性樹脂組成物全体を100質量%とした場合、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、さらに好ましくは3質量%以上であり、好ましくは40質量%以下、より好ましくは35質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下である。
【0167】
<その他の層>
感光性フィルムは、必要に応じて、その他の層を含んでいてもよい。斯かるその他の層としては、第1の感光性樹脂組成物層と第2の感光性樹脂組成物層との間に設けられた、第1及び第2の感光性樹脂組成物層とは異なる感光性樹脂組成物層が挙げられる。この感光性樹脂組成物層は複数の層で形成されていてもよい。第1及び第2の感光性樹脂組成物層とは異なる感光性樹脂組成物層は、(A)~(E)成分のいずれかを含んでいればよい。感光性フィルムが、前記の第1及び第2の感光性樹脂組成物層とは異なる感光性樹脂組成物層を有していても、支持体と隣接する第1の感光性樹脂組成物層の吸光度と、感光性樹脂組成物層の最外層である第2の感光性樹脂組成物層の吸光度との差が0.05以上0.5以下であればよい。また、これら感光性樹脂組成物層の合計厚みは、感光性樹脂組成物層の厚みの範囲内であることが好ましい。
【0168】
また、感光性フィルムは、その他の層として、例えば、第2の感光性樹脂組成物層の第1の感光性樹脂組成物層と接合していない面(即ち、第1の感光性樹脂組成物層とは反対側の面)に設けられた保護フィルムを有していてもよい。保護フィルムを積層することにより、第2の感光性樹脂組成物層の表面へのゴミ等の付着やキズを抑制することができる。
【0169】
保護フィルムとしては、例えば、上記の支持体と同様の材料により形成されたフィルムを用いることができる。保護フィルムの厚さは、特に限定されないが、1μm~40μmの範囲であることが好ましく、5μm~30μmの範囲であることがより好ましく、10μm~30μmの範囲であることが更に好ましい。
【0170】
<感光性フィルムの製造方法>
本発明の感光性フィルムは、先述のとおり、支持体、第1の感光性樹脂組成物層、及び第2の感光性樹脂組成物層との順で有し、必要に応じて、保護フィルム等を有する。
斯かる感光性フィルムの製造方法は、
(1)支持体上に、第1の感光性樹脂組成物を溶解した第1の樹脂ワニスを塗布、乾燥させ、支持体上に第1の感光性樹脂組成物層を有する第1の樹脂シートを形成する工程、
(2)保護フィルム上に、第2の感光性樹脂組成物を溶解した第2の樹脂ワニスを塗布、乾燥させ、保護フィルム上に第2の感光性樹脂組成物層を有する第2の樹脂シートを形成する工程、及び
(3)第1の樹脂シートと第2の樹脂シートとを、第1の感光性樹脂組成物層と第2の感光性樹脂組成物層とが接合するように、ラミネートする工程、を含む。
【0171】
-工程(1)-
工程(1)では、溶剤に第1の感光性樹脂組成物を溶解した第1の樹脂ワニスを調製し、この第1の樹脂ワニスを支持体上に塗布し、更に乾燥させて第1の感光性樹脂組成物層を形成させる。溶剤については上記したとおりである。
【0172】
第1の樹脂ワニスの塗布方式としては、例えば、グラビアコート方式、マイクログラビアコート方式、リバースコート方式、キスリバースコート方式、ダイコート方式、スロットダイ方式、リップコート方式、コンマコート方式、ブレードコート方式、ロールコート方式、ナイフコート方式、カーテンコート方式、チャンバーグラビアコート方式、スロットオリフィス方式、スピンコート方式、スリットコート方式、スプレーコート方式、ディップコート方式、ホットメルトコート方式、バーコート方式、アプリケーター方式、エアナイフコート方式、カーテンフローコート方式、オフセット印刷方式、刷毛塗り方式、スクリーン印刷法による全面印刷方式等が挙げられる。中でも、樹脂ワニスの塗布方式としてはスピンコート方式が好ましい。
【0173】
第1の樹脂ワニスは、数回に分けて塗布してもよいし、1回で塗布してもよく、また異なる方式を複数組み合わせて塗布してもよい。中でも、均一塗工性に優れる、ダイコート方式が好ましい。また、異物混入等をさけるために、クリーンルーム等の異物発生の少ない環境で塗布工程を実施することが好ましい。
【0174】
乾燥は、加熱、熱風吹きつけ等の公知の方法により実施してよい。乾燥条件は特に限定されないが、第1の感光性樹脂組成物層中の溶剤の含有量が10質量%以下、好ましくは5質量%以下となるように乾燥させる。第1の樹脂ワニス中の溶剤の沸点によっても異なるが、例えば30質量%~60質量%の溶剤を含む第1の樹脂ワニスを用いる場合、50℃~150℃で3分間~10分間乾燥させることにより、第1の感光性樹脂組成物層を形成することができる。
【0175】
-工程(2)-
工程(2)では、溶剤に第2の感光性樹脂組成物を溶解した第2の樹脂ワニスを調製し、この第2の樹脂ワニスを保護フィルム上に塗布し、更に乾燥させて第2の感光性樹脂組成物層を形成させる。溶剤については上記したとおりである。工程(2)は、工程(1)と同様の方法にて行うことができる。
【0176】
-工程(3)-
工程(3)では、第1の樹脂シートと第2の樹脂シートとを、第1の感光性樹脂組成物層と第2の感光性樹脂組成物層とが接合するようにラミネートする。これにより支持体、第1の感光性樹脂組成物層、第2の感光性樹脂組成物層、及び保護フィルムの順で構成される感光性フィルムが形成される。感光性フィルムは、積層対象部材に積層するにあたって、保護フィルムを剥がすことによって使用可能となる。
【0177】
ラミネートは、真空ラミネート法により実施してよい。真空ラミネート法において、ラミネート温度は、好ましくは60℃~160℃、より好ましくは80℃~140℃の範囲であり、ラミネート圧力は、好ましくは0.098MPa~1.77MPa、より好ましくは0.29MPa~1.47MPaの範囲であり、ラミネート時間は、好ましくは20秒間~400秒間、より好ましくは30秒間~300秒間の範囲である。ラミネートは、好ましくは圧力26.7hPa以下の減圧条件下で実施する。
【0178】
ラミネートは、市販の真空ラミネーターによって行うことができる。市販の真空ラミネーターとしては、例えば、名機製作所社製の真空加圧式ラミネーター、ニッコー・マテリアルズ社製のバキュームアップリケーター、バッチ式真空加圧ラミネーター等が挙げられる。
【0179】
感光性フィルムの製造方法としては、上記した製造方法以外に、例えば、支持体上に形成した第1の感光性樹脂組成物層上に第2のワニスを塗布、乾燥させることで、第1の感光性樹脂組成物層上に第2の感光性樹脂組成物層を形成してもよい。塗布、乾燥については、上記したとおりである。
【0180】
<感光性フィルムの特性等>
本発明の感光性フィルムの感光性樹脂組成物層は、膜厚が厚くても、アンダーカット耐性に優れるという特性を示す。シリコンウエハ上に感光性樹脂組成物層を作製する。その感光性樹脂組成物層に、露光パターンの開口径が20μm、30μm、40μm、50μm、60μm、及び70μmの丸穴(ビアホール)を描画させるマスクを用い、露光量を200mJ/cm2、300mJ/cm2、400mJ/cm2、及び500mJ/cm2にそれぞれ設定し、現像を行って各丸穴を形成する。そして限界開口ビアのアンダーカット(底部の半径と最上部の半径との差(底部の半径-最上部の半径))を求める。このとき、アンダーカットは、好ましくは4μm以下、より好ましくは2μm未満にでき、特に好ましくはアンダーカットを無くすることができる。アンダーカット耐性の評価は、後述する実施例に記載の方法に従って測定することができる。
【0181】
本発明の感光性フィルムの感光性樹脂組成物層は、通常、膜厚が厚くても、限界解像性に優れるという特性を示す。よって、本発明の感光性フィルムを用いることで、露光及び現像によって径の小さい穴を形成できる。限界解像性の程度は、限界開口ビアの開口径と感光性樹脂組成物層の膜厚とのアスペクト比によって評価できる。例えば、シリコンウエハ上に感光性樹脂組成物層を作製する。その感光性樹脂組成物層に、露光パターンの開口径が20μm、30μm、40μm、50μm、60μm、及び70μmの丸穴(ビアホール)を描画させるマスクを用い、露光量を200mJ/cm2、300mJ/cm2、400mJ/cm2、及び500mJ/cm2にそれぞれ設定し、現像を行って各丸穴を形成する。そして、丸穴の底部の径を観察して、残渣及び剥離が無く開口できた開口径が最小サイズの丸穴(限界開口ビア)を特定する。限界開口ビアの径のアスペクト比(膜厚(μm)/ビア径(μm))は好ましくは0.5以上、より好ましくは0.7以上、より好ましくは0.8以上、さらに好ましくは0.9以上、特に好ましくは1.0以上である。上限は特に限定されないが、好ましくは1.5以下である。限界解像性の評価は、後述する実施例に記載の方法に従って測定することができる。
【0182】
本発明の感光性フィルムの感光性樹脂組成物層の硬化物は、通常、銅箔等の金属との間の密着性に優れるという特性を示す。例えば、銅箔が積層されたシリコンウエハ上に感光性樹脂組成物層を作製する。その感光性樹脂組成物層に、露光パターンの開口径が70μmの丸穴を描画させるマスクを用い、露光量200mJ/cm2にて露光、現像を行って丸穴を形成し、この丸穴の断面観察を行う。丸穴の底(ビア底)の端から銅箔との間の剥がれの有無、剥がれの長さを測定する。そのとき剥がれの長さは、好ましくは4μm以下、より好ましくは2μm以下、さらに好ましくは2μm未満、特に好ましくは剥がれをなくすことができる。密着性は、後述する実施例に記載の方法にて測定することができる。
【0183】
本発明の感光性フィルムの用途は、特に限定されない。例えば、感光性フィルムは感光性樹脂組成物層を有するので、PID(Photo Imaginable Dielectric)として有用である。また、感光性フィルムは、絶縁樹脂シート(プリプレグ等)、シリコンウェハ、回路基板(積層板用途、多層プリント配線板用途等)、ソルダーレジスト、バッファーコート膜、アンダーフィル材、ダイボンディング材、半導体封止材、穴埋め樹脂、部品埋め込み樹脂等の、感光性樹脂組成物層が用いられる用途の広範囲に使用できる。
【0184】
好ましい例を挙げると、感光性フィルムは、絶縁層形成用に用いてもよい。具体例を挙げると、感光性フィルムは、プリント配線板(感光性樹脂組成物層の硬化物を絶縁層として備えるプリント配線板)の絶縁層の形成用に用いてもよい。
【0185】
例えば、感光性フィルムは、層間絶縁層形成用に用いてもよい。具体例を挙げると、感光性フィルムは、感光性樹脂組成物層の硬化物を層間絶縁層として備えるプリント配線板の、前記層間絶縁層の形成用に用いてもよい。
【0186】
例えば、感光性フィルムは、メッキ形成用に用いてもよい。具体例を挙げると、感光性フィルムは、感光性樹脂組成物層の硬化物を含む絶縁層とその絶縁層上に形成されたメッキとを備えるプリント配線板の、前記絶縁層の形成用に用いてもよい。
【0187】
例えば、感光性フィルムは、ソルダーレジスト形成用に用いてもよい。具体例を挙げると、感光性フィルムは、感光性樹脂組成物層の硬化物をソルダーレジストとして備えるプリント配線板の、前記ソルダーレジストの形成用に用いてもよい。
【0188】
例えば、感光性フィルムは、ウェハレベルパッケージの再配線形成層の形成用に用いてもよい。具体例を挙げると、感光性フィルムは、感光性樹脂組成物層の硬化物を再配線形成層として備えるウェハレベルパッケージの、前記再配線形成層の形成用に用いてもよい。
【0189】
例えば、感光性フィルムは、ファンアウトウェハレベルパッケージの再配線形成層の形成用に用いてもよい。具体例を挙げると、感光性フィルムは、感光性樹脂組成物層の硬化物を再配線形成層として備えるファンアウトウェハレベルパッケージの、前記再配線形成層の形成用に用いてもよい。
【0190】
例えば、感光性フィルムは、ファンアウトパネルレベルパッケージの再配線形成層の形成用に用いてもよい。具体例を挙げると、感光性フィルムは、感光性樹脂組成物層の硬化物を再配線形成層として備えるファンアウトパネルレベルパッケージの、前記再配線形成層の形成用に用いてもよい。
【0191】
例えば、感光性フィルムは、バッファーコート用に用いてもよい。具体例を挙げると、感光性フィルムは、感光性樹脂組成物層の硬化物をバッファーコート膜として備える半導体装置の、前記バッファーコート膜の形成用に用いてもよい。
【0192】
例えば、感光性フィルムは、ディスプレイの絶縁層の形成用に用いてもよい。具体例を挙げると、感光性フィルムは、感光性樹脂組成物層の硬化物を絶縁層として備えるディスプレイの、前記絶縁層の形成用に用いてもよい。
【0193】
[積層体]
本発明の積層体は、第1の感光性樹脂組成物からなる第1の感光性樹脂組成物層と、第1の感光性樹脂組成物層上に設けられた、第2の感光性樹脂組成物からなる第2の感光性樹脂組成物層とを備える。積層体における、第1及び第2の感光性樹脂組成物、並びに第1及び第2の感光性樹脂組成物層については上記したとおりである。
【0194】
積層体は、上記感光性フィルムの製造方法における工程(1)~(3)終了後、支持体及び保護フィルムを剥離することで得られる。支持体等の剥離方法については公知の方法にて行うことができる。
【0195】
[半導体パッケージ基板]
半導体パッケージ基板は、上述した感光性樹脂組成物層の硬化物(第1及び第2の感光性樹脂組成物の硬化物)により形成された絶縁層を備える。よって、絶縁層は、感光性樹脂組成物層の硬化物を含み、好ましくは感光性樹脂組成物層の硬化物のみを含む。上述した感光性フィルムを用いる場合、当該絶縁層を厚く形成することができる。具体的な絶縁層の厚みの範囲は、感光性樹脂組成物層の厚みの範囲と同じでありうる。この絶縁層は、再配線形成層、層間絶縁層、バッファーコート膜またはソルダーレジストとして使用することが好ましい。
【0196】
第1の例において、半導体パッケージ基板は、上述の感光性フィルムを用いて製造することができ、感光性樹脂組成物層の硬化物は絶縁層として用いられる。具体的には、第1の例に係る半導体パッケージ基板の製造方法は、
(I)回路基板上に、感光性フィルムの感光性樹脂組成物層を積層する工程と、
(II)感光性樹脂組成物層に活性光線を照射する工程と、
(III)感光性樹脂組成物層を現像する工程と、
をこの順に含む。
【0197】
<工程(I)>
工程(I)では、回路基板と、感光性樹脂組成物層における第2の感光性樹脂組成物層とが接合するように積層させる。
【0198】
回路基板としては、例えば、ガラスエポキシ基板、金属基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板等の支持基板を備える基板が挙げられる。ここで回路基板とは、上記のような支持基板の片面又は両面にパターン加工された導体層(回路)が形成された基板をいう。また、導体層と絶縁層とを交互に積層してなる多層プリント配線板において、該多層プリント配線板の最外層の片面又は両面がパターン加工された導体層(回路)となっている基板も、ここでいう回路基板に含まれる。導体層表面には、黒化処理、銅エッチング等により予め粗化処理が施されていてもよい。
【0199】
感光性フィルムと回路基板との積層は、第2の感光性樹脂組成物層が回路基板に接合するように行う。感光性フィルムが保護フィルムを有している場合には、該保護フィルムを除去した後で積層を行う。また、感光性フィルムは、回路基板の片面に積層してもよく、両面に積層してもよい。例えば、必要に応じて感光性フィルム及び回路基板をプレヒートし、感光性フィルムを加圧及び加熱しながら回路基板に圧着することにより、積層を行ってもよい。感光性フィルムにおいては、真空ラミネート法により減圧下で回路基板に積層する方法が好適に用いられる。
【0200】
積層の条件は、特に限定されるものではない。例えば、圧着温度(ラミネート温度)を好ましくは50℃~120℃とし、圧着圧力を好ましくは1kgf/cm2~11kgf/cm2(9.8×104N/m2~107.9×104N/m2)、圧着時間を好ましくは5秒間~300秒間とし、空気圧を20mmHg(26.7hPa)以下とする減圧下で積層することが好ましい。また、積層工程は、バッチ式であってもよく、ロールを用いる連続式であってもよい。真空ラミネート法は、市販の真空ラミネーターを使用して行うことができる。市販の真空ラミネーターとしては、例えば、ニッコー・マテリアルズ社製バキュームアップリケーター、名機製作所社製真空加圧式ラミネーター、日立インダストリイズ社製ロール式ドライコータ、日立エーアイーシー社製真空ラミネーター等を挙げることができる。
【0201】
<工程(II)>
回路基板上に感光性樹脂組成物層が設けられた後、次いで、マスクパターンを通して、感光性樹脂組成物層の所定部分に活性光線を照射する露光工程を行う。活性光線としては、例えば、紫外線、可視光線、電子線、X線等が挙げられ、特に紫外線が好ましい。紫外線の照射量は、通常、10mJ/cm2~1000mJ/cm2である。露光方法にはマスクパターンを回路基板に密着させて行う接触露光法と、密着させずに平行光線を使用して露光する非接触露光法とがあるが、どちらを用いてもかまわない。
【0202】
工程(II)では、マスクパターンとして、例えば、丸穴パターン等のビアパターンを用いうる。例えば、所望のビア径(開口径)を有するビアホールの潜像を形成できるマスクパターンを用いうる。前記のビア径(開口径)は、好ましくは100μm以下、より好ましくは90μm以下、さらに好ましくは80μm以下である。下限は特に限定されないが、0.1μm以上、0.5μm以上等でありうる。
【0203】
露光後、必要に応じて、加熱処理を行ってもよい。加熱処理によれば、感光性樹脂組成物層の露光された部分(露光部)の現像液に対する溶解性を速やかに低下させることができる。
【0204】
<工程(III)>
露光工程後、感光性樹脂組成物層の露光されなかった部分(非露光部)を現像液により除去する現像工程を行うことにより、感光性樹脂組成物層に穴が形成されて、所望のパターンを得ることができる。現像は、通常ウェット現像により行う。
【0205】
上記ウェット現像の場合、現像液としては、通常、アルカリ性溶液、水系現像液、有機溶剤等の、安全かつ安定であり操作性が良好な現像液が用いられる。また、現像方法としては、スプレー、揺動浸漬、ブラッシング、スクラッピング等の公知の方法が適切に採用される。
【0206】
現像液として使用されるアルカリ性水溶液としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム等の炭酸塩又は重炭酸塩、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム等のアルカリ金属リン酸塩、ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム等のアルカリ金属ピロリン酸塩の水溶液や、水酸化テトラアルキルアンモニウム等の金属イオンを含有しない有機塩基の水溶液が挙げられる。金属イオンを含有せず、半導体チップに影響を与えないという点で、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)の水溶液が好ましい。
【0207】
これらのアルカリ性水溶液には、現像効果の向上のため、界面活性剤、消泡剤等の添加剤を含んでいてもよい。上記アルカリ性水溶液のpHは、例えば、8~12の範囲であることが好ましく、9~11の範囲であることがより好ましい。また、上記アルカリ性水溶液の塩基濃度は、0.1質量%~10質量%とすることが好ましい。上記アルカリ性水溶液の温度は、感光性樹脂組成物層の現像性に合わせて適宜選択することができ、20℃~50℃とすることが好ましい。
【0208】
現像液として使用される有機溶剤は、例えば、アセトン、酢酸エチル、炭素原子数1~4のアルコキシ基を有するアルコキシエタノール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、シクロペンタノン、シクロヘキサノンである。
【0209】
このような有機溶剤の濃度は、現像液全量に対して2質量%~90質量%であることが好ましい。また、このような有機溶剤の温度は、現像性にあわせて調節することができる。さらに、このような有機溶剤は単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。単独で用いる有機溶剤系現像液としては、例えば、1,1,1-トリクロロエタン、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、γ-ブチロラクトンが挙げられる。
【0210】
パターン形成においては、必要に応じて、2種類以上の現像方法を併用して用いてもよい。現像の方式には、ディップ方式、バトル方式、スプレー方式、高圧スプレー方式、ブラッシング、スラッピング等があり、高圧スプレー方式が解像度向上のためには好適である。スプレー方式を採用する場合のスプレー圧としては、0.05MPa~0.3MPaが好ましい。
【0211】
<熱硬化(ポストベーク)工程>
上記工程(III)の終了後、必要に応じて、熱硬化(ポストベーク)工程を行う。上述した工程(I)~(III)において感光性樹脂組成物層の硬化が進行することはありうるが、熱硬化工程により感光性樹脂組成物層の硬化を更に進行させて、より機械的強度に優れる絶縁層を得ることができる。熱硬化工程としては、クリーンオーブンを用いた加熱工程等が挙げられる。熱硬化時の雰囲気は、空気中であってもよく、窒素などの不活性気体雰囲気下でもよい。また、加熱の条件は、第1及び第2の感光性樹脂組成物層中の樹脂成分の種類、含有量などの要素に応じて適切に選択しうる。具体的な加熱の条件は、好ましくは150℃~300℃で20分間~300分間の範囲、より好ましくは170℃~250℃で30分間~240分間の範囲で選択される。
【0212】
<任意の工程>
半導体パッケージ基板の製造方法は、硬化した感光性樹脂組成物層として絶縁層を形成した後、さらに穴あけ工程及びデスミア工程を含んでもよい。これらの工程は、半導体パッケージ基板の製造に用いられる、当業者に公知の各種方法に従って実施してよい。
【0213】
絶縁層を形成した後、所望により、回路基板上に形成された絶縁層に穴あけ工程を行って、ビアホール及びスルーホールを形成してもよい。穴あけ工程は、例えば、ドリル、レーザー、プラズマ等の公知の方法により、また必要によりこれらの方法を組み合わせて行うことができる。中でも、炭酸ガスレーザー、YAGレーザー等のレーザーによる穴あけ工程が好ましい。
【0214】
デスミア工程は、絶縁層にデスミア処理を施す工程である。穴あけ工程において形成されたビアホール及びスルーホール等の開口の内部には、一般に、樹脂残渣(スミア)が付着している。斯かるスミアは、電気接続不良の原因となりうるため、この工程においてスミアを除去する処理(デスミア処理)を実施することが好ましい。
【0215】
デスミア処理は、乾式デスミア処理、湿式デスミア処理又はこれらの組み合わせによって実施してよい。
【0216】
乾式デスミア処理としては、例えば、プラズマを用いたデスミア処理等が挙げられる。プラズマを用いたデスミア処理は、市販のプラズマデスミア処理装置を使用して実施することができる。市販のプラズマデスミア処理装置の中でも、半導体パッケージ基板の製造用途に好適な例として、ニッシン社製のマイクロ波プラズマ装置、積水化学工業社製の常圧プラズマエッチング装置等が挙げられる。
【0217】
湿式デスミア処理としては、例えば、酸化剤溶液を用いたデスミア処理等が挙げられる。酸化剤溶液を用いてデスミア処理する場合、膨潤液による膨潤処理、酸化剤溶液による酸化処理、中和液による中和処理をこの順に行うことが好ましい。膨潤液としては、例えば、アトテックジャパン社製の「スウェリング・ディップ・セキュリガンスP」、「スウェリング・ディップ・セキュリガンスSBU」等を挙げることができる。膨潤処理は、ビアホール等の開口を形成された基板を、60℃~80℃に加熱した膨潤液に5分間~10分間浸漬させることにより行うことが好ましい。酸化剤溶液としては、アルカリ性過マンガン酸水溶液が好ましく、例えば、水酸化ナトリウムの水溶液に過マンガン酸カリウム又は過マンガン酸ナトリウムを溶解した溶液を挙げることができる。酸化剤溶液による酸化処理は、膨潤処理後の基板を、60℃~80℃に加熱した酸化剤溶液に10分間~30分間浸漬させることにより行うことが好ましい。アルカリ性過マンガン酸水溶液の市販品としては、例えば、アトテックジャパン社製の「コンセントレート・コンパクトCP」、「ド-ジングソリューション・セキュリガンスP」等が挙げられる。中和液による中和処理は、酸化処理後の基板を、30℃~50℃の中和液に3分間~10分間浸漬させることにより行うことが好ましい。中和液としては、酸性の水溶液が好ましく、市販品としては、例えば、アトテックジャパン社製の「リダクションソリューション・セキュリガントP」が挙げられる。
【0218】
乾式デスミア処理と湿式デスミア処理を組み合わせて実施する場合、乾式デスミア処理を先に実施してもよく、湿式デスミア処理を先に実施してもよい。
【0219】
絶縁層を、再配線形成層、層間絶縁層、及びソルダーレジストのいずれとして形成する場合でも、熱硬化工程後に、穴あけ工程及びデスミア工程を行ってもよい。また、半導体パッケージ基板の製造方法では、更に、導体層形成工程を行ってもよい。
【0220】
導体層形成工程は、絶縁層上に導体層を形成する工程である。導体層は、絶縁層形成後にスパッタにより導体層を形成してもよい。また、導体層は、無電解メッキと電解メッキとを組み合わせて形成してもよい。さらに、導体層とは逆パターンのメッキレジストを形成し、無電解メッキのみで導体層を形成してもよい。その後のパターン形成の方法として、例えば、当業者に公知のサブトラクティブ法、セミアディティブ法などを用いることができる。
【0221】
第2の例に係る半導体パッケージ基板は、第1及び第2の感光性樹脂組成物を用いて製造することができ、第1及び第2の感光性樹脂組成物の硬化物は絶縁層として用いられる。第1及び第2の感光性樹脂組成物については上記したとおりである。具体的には、第2の例に係る半導体パッケージ基板の製造方法は、
(a)回路基板上に、第2の感光性樹脂組成物を塗布、乾燥させ、第2の感光性樹脂組成物層を形成する工程と、
(b)第2の感光性樹脂組成物層上に、第1の感光性樹脂組成物を塗布、乾燥させ、第1の感光性樹脂組成物層を形成する工程と、
(c)第1及び第2の感光性樹脂組成物層に活性光線を照射する工程と、
(d)第1及び第2の感光性樹脂組成物層を現像する工程と、
をこの順に含む。
【0222】
工程(a)では、第2の感光性樹脂組成物を含む第2の樹脂ワニスを直接に回路基板上に塗布、乾燥させ、回路基板上に第2の感光性樹脂組成物層を形成する。第2の樹脂ワニスについて上記したとおりである。
【0223】
第2の樹脂ワニスの塗布方式は、感光性フィルムの製造方法における、第2の樹脂ワニスの塗布方式と同じである。
【0224】
工程(b)では、第1の感光性樹脂組成物を含む第1の樹脂ワニスを第1の感光性樹脂組成物層上に塗布、乾燥させ、第2の感光性樹脂組成物層上に第1の感光性樹脂組成物層を形成する。第1の樹脂ワニスについて上記したとおりである。
【0225】
第1の樹脂ワニスの塗布方式は、感光性フィルムの製造方法における、第1の樹脂ワニスの塗布方式と同じである。
【0226】
工程(c)は、工程(II)と同じである。工程(d)は、工程(III)と同じである。
【0227】
第3の例に係る半導体パッケージ基板は、上述の感光性フィルム又は第1及び第2の感光性樹脂組成物を用いて製造することができ、感光性樹脂組成物層の硬化物は再配線形成層として用いられる。具体的には、第3の例に係る半導体パッケージ基板の製造方法は、
(A)基材に仮固定フィルムを積層する工程、
(B)半導体チップを、仮固定フィルム上に仮固定する工程、
(C)半導体チップ上に封止層を形成する工程、
(D)基材及び仮固定フィルムを半導体チップから剥離する工程、
(E)半導体チップの基材及び仮固定フィルムを剥離した面に、絶縁層としての再配線形成層を形成する工程、
(F)再配線形成層上に、導体層としての再配線層を形成する工程、並びに、
(G)再配線層上にソルダーレジスト層を形成する工程、
を含む。また、前記の半導体パッケージ基板の製造方法は、
(H)複数の半導体パッケージ基板を、個々の半導体パッケージ基板にダイシングし、個片化する工程、
を含んでいてもよい。
【0228】
<工程(A)>
工程(A)は、基材に仮固定フィルムを積層する工程である。基材と仮固定フィルムとの積層条件は、特に限定されるものではないが、例えば、圧着温度(ラミネート温度)を好ましくは70℃~140℃とし、圧着圧力を好ましくは1kgf/cm2~11kgf/cm2、圧着時間を好ましくは5秒間~300秒間とし、空気圧を20mmHg以下とする減圧下でラミネートするのが好ましい。また、ラミネート工程は、バッチ式であってもロールを用いる連続式であってもよい。真空ラミネート法は、市販の真空ラミネーターを使用して行うことができる。市販の真空ラミネーターとしては、例えば、ニッコー・マテリアルズ社製バキュームアップリケーター、名機製作所社製真空加圧式ラミネーター、日立インダストリイズ社製ロール式ドライコータ、日立エーアイーシー社製真空ラミネーター等を挙げることができる。
【0229】
基材としては、例えば、シリコンウェハ;ガラスウェハ;ガラス基板;銅、チタン、ステンレス、冷間圧延鋼板(SPCC)等の金属基板;FR-4基板等の、ガラス繊維にエポキシ樹脂等をしみこませ熱硬化処理した基板;BT樹脂等のビスマレイミドトリアジン樹脂からなる基板;などが挙げられる。
【0230】
仮固定フィルムは、半導体チップから剥離でき、且つ、半導体チップを仮固定することができる任意の材料を用いうる。市販品としては、日東電工社製「リヴァアルファ」等が挙げられる。
【0231】
<工程(B)>
工程(B)は、半導体チップを、仮固定フィルム上に仮固定する工程である。半導体チップの仮固定は、例えば、フリップチップボンダー、ダイボンダー等の装置を用いて行うことができる。半導体チップの配置のレイアウト及び配置数は、仮固定フィルムの形状、大きさ、目的とする半導体パッケージ基板の生産数等に応じて適切に設定できる。例えば、複数行で、かつ複数列のマトリックス状に半導体チップを整列させて、仮固定してもよい。
【0232】
<工程(C)>
工程(C)は、半導体チップ上に封止層を形成する工程である。封止層は、絶縁性を有する任意の材料を用いることができ、上述した第1及び/又は第2の感光性樹脂組成物を用いてもよい。封止層は、通常、半導体チップ上に封止用樹脂組成物層を形成する工程と、この樹脂組成物層を熱硬化させて封止層を形成する工程とを含む方法で形成する。
【0233】
封止用樹脂組成物層の形成は、圧縮成型法によって行うことが好ましい。圧縮成型法では、通常、半導体チップ及び封止用樹脂組成物を型に配置し、その型内で封止用樹脂組成物に圧力及び必要に応じて熱を加えて、半導体チップを覆う封止用樹脂組成物層を形成する。
【0234】
圧縮成型法の具体的な操作は、例えば、下記のようにし得る。圧縮成型用の型として、上型及び下型を用意する。また、前記のように仮固定フィルム上に仮固定された半導体チップに、封止用樹脂組成物を塗布する。封止用樹脂組成物を塗布された半導体チップを、基材及び仮固定フィルムと一緒に、下型に取り付ける。その後、上型と下型とを型締めして、封止用樹脂組成物に熱及び圧力を加えて、圧縮成型を行う。
【0235】
また、圧縮成型法の具体的な操作は、例えば、下記のようにしてもよい。圧縮成型用の型として、上型及び下型を用意する。下型に、封止用樹脂組成物を載せる。また、上型に、半導体チップを、基材及び仮固定フィルムと一緒に取り付ける。その後、下型に載った封止用樹脂組成物が上型に取り付けられた半導体チップに接するように上型と下型とを型締めし、熱及び圧力を加えて、圧縮成型を行う。
【0236】
成型条件は、封止用樹脂組成物の組成により異なり、良好な封止が達成されるように適切な条件を採用できる。例えば、成型時の型の温度は、封止用樹脂組成物が優れた圧縮成型性を発揮できる温度が好ましく、好ましくは80℃以上、より好ましくは100℃以上、特に好ましくは120℃以上であり、好ましくは200℃以下、より好ましくは170℃以下、特に好ましくは150℃以下である。また、成形時に加える圧力は、好ましくは1MPa以上、より好ましくは3MPa以上、特に好ましくは5MPa以上であり、好ましくは50MPa以下、より好ましくは30MPa以下、特に好ましくは20MPa以下である。キュアタイムは、好ましくは1分以上、より好ましくは2分以上、特に好ましくは5分以上であり、好ましくは60分以下、より好ましくは30分以下、特に好ましくは20分以下である。通常、封止用樹脂組成物層の形成後、型は取り外される。型の取り外しは、封止用樹脂組成物層の熱硬化前に行ってもよく、熱硬化後に行ってもよい。
【0237】
圧縮成型法は、カートリッジ内に充填した封止用樹脂組成物を下型に吐出させることによって行ってもよい。
【0238】
<工程(D)>
工程(D)は、基材及び仮固定フィルムを半導体チップから剥離する工程である。剥離方法は、仮固定フィルムの材質に応じた適切な方法を採用することが望ましい。剥離方法としては、例えば、仮固定フィルムを加熱、発泡又は膨張させて剥離する方法が挙げられる。また、剥離方法としては、例えば、基材を通して仮固定フィルムに紫外線を照射して、仮固定フィルムの粘着力を低下させて剥離する方法が挙げられる。
【0239】
仮固定フィルムを加熱、発泡又は膨張させて剥離する方法において、加熱条件は、通常、100℃~250℃で1秒間~90秒間又は5分間~15分間である。また、紫外線を照射して仮固定フィルムの粘着力を低下させて剥離する方法において、紫外線の照射量は、通常、10mJ/cm2~1000mJ/cm2である。
【0240】
<工程(E)>
工程(E)は、半導体チップの基材及び仮固定フィルムを剥離した面に、絶縁層としての再配線形成層を形成する工程である。再配線形成層は、上述した感光性フィルム又は第1及び第2の感光性樹脂組成物を用いて形成しうる。再配線形成層の形成方法は、第1の例における工程(I)と同様の方法で感光性樹脂組成物層を形成してもよく、第2の例における工程(a)及び工程(b)と同様の方法で感光性樹脂組成物層を形成することを含みうる。
【0241】
再配線形成層を形成するとき、半導体チップと再配線層とを層間接続するために、再配線形成層にビアホールを形成してもよい。
【0242】
ビアホールは、通常、再配線形成層の形成のための感光性樹脂組成物層の表面に、マスクパターンを通して活性光線を照射する露光工程と、活性光線が照射されていない非露光部を現像して除去する現像工程と、を行うことで形成することができる。活性光線の照射量及び照射時間は、感光性樹脂組成物層に応じて適切に設定できる。露光方法としては、例えば、マスクパターンを感光性樹脂組成物層に密着させて露光する接触露光法、マスクパターンを感光性樹脂組成物層に密着させずに平行光線を使用して露光する非接触露光法等が挙げられる。露光及び現像の方法は、第1の例で説明した通りに行いうる。
【0243】
ビアホールの形状は、特に限定されないが、一般的には円形(略円形)とされる。ビアホールのトップ径は、好ましくは100μm以下、より好ましくは90μm以下、さらに好ましくは80μm以下であり、好ましくは0.1μm以上、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1.0μm以上である。ここで、ビアホールのトップ径とは、再配線形成層の表面でのビアホールの開口の直径をいう。
【0244】
感光性樹脂組成物層を形成し、必要に応じてビアホールを形成した後で、熱硬化工程を行ってもよい。熱硬化の方法は、第1の例で説明した通りに行いうる。
【0245】
<工程(F)>
工程(F)は、再配線形成層上に、導体層としての再配線層を形成する工程である。再配線形成層上に再配線層を形成する方法は、第1の例における絶縁層上への導体層の形成方法と同様でありうる。また、工程(E)及び工程(F)を繰り返し行い、再配線層及び再配線形成層を交互に積み上げて(ビルドアップ)もよい。
【0246】
<工程(G)>
工程(G)は、再配線層上にソルダーレジスト層を形成する工程である。ソルダーレジスト層の材料は、絶縁性を有する任意の材料を用いることができる。中でも、半導体パッケージ基板の製造のしやすさの観点から、感光性樹脂及び熱硬化性樹脂が好ましい。また、上述した第1又は第2の感光性樹脂組成物を用いてもよい。
【0247】
また、工程(G)では、必要に応じて、バンプを形成するバンピング加工を行ってもよい。バンピング加工は、半田ボール、半田めっきなどの方法で行うことができる。また、バンピング加工におけるビアホールの形成は、工程(E)と同様に行うことができる。
【0248】
半導体パッケージ基板の製造方法は、工程(A)~(G)以外に、工程(H)を含んでいてもよい。工程(H)は、複数の半導体パッケージ基板を個々の半導体パッケージ基板にダイシングし、個片化する工程である。半導体パッケージ基板を個々の半導体パッケージ基板にダイシングする方法は特に限定されない。
【0249】
[半導体装置]
半導体装置は、上述した半導体パッケージ基板を備える。半導体パッケージ基板が実装される半導体装置としては、例えば、電気製品(例えば、コンピューター、携帯電話、スマートフォン、タブレット型デバイス、ウェラブルデバイス、デジタルカメラ、医療機器、及びテレビ等)及び乗物(例えば、自動二輪車、自動車、電車、船舶及び航空機等)等に供される各種半導体装置が挙げられる。
【実施例0250】
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の記載において、量を表す「部」及び「%」は、別途明示のない限り、それぞれ「質量部」及び「質量%」を意味する。また、以下に説明する操作は、別途明示の無い限り、常温常圧(25℃1気圧)大気中で行った。
【0251】
[合成例1:ポリマーA-1の合成]
窒素気流下、1L容量のセパラブルフラスコに、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロフリル)-3-メチル-3-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物(MCTC)105.6g及びγブチロラクトン500gを入れ溶解させた。ここに1-(4-アミノフェニル)-1,3,3-トリメチルインダンアミン(PIDA)104.3gを加え、50℃で20時間反応を行い、ポリアミド酸を得た。ここにグリシジルメタクリレート111.3gと4-メトキシフェノール0.42gを加え、50℃で20時間反応させ、ポリイミド前駆体であるポリマーA-1の溶液(固形分33%)を得た。ポリマーA-1の分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(標準ポリスチレン換算)で測定したところ、重量平均分子量(Mw)は16,000であった。以下にポリイミド前駆体であるポリマーA-1の構造単位を示す(nは5~200の整数を表す。)。
【化48】
【0252】
[合成例2:ポリマーA-2の合成]
撹拌機、コンデンサー及び内部温度計を取りつけた平底ジョイントを備えた乾燥反応器中で水分を除去しながら、オキシジフタル酸二無水物 20.0g(64.5ミリモル)をジグリム 140mL中に懸濁させた。2-ヒドロキシエチルメタクリレート 16.8g(129ミリモル)、ヒドロキノン 0.05g、純水 0.05g及びピリジン 10.7g(135ミリモル)を続いて添加し、60℃の温度で18時間撹拌した。次いで、混合物を-20℃まで冷却した後、塩化チオニル 16.1g(135.5ミリモル)を90分かけて滴下した。ピリジニウムヒドロクロリドの白色沈澱が得られた。次いで、混合物を室温まで温め、2時間撹拌した後、ピリジン 9.7g(123ミリモル)及びN-メチルピロリドン(NMP) 25mLを添加し、透明溶液を得た。次いで、得られた透明溶液に、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル 11.8g(58.7ミリモル)をNMP 100mL中に溶解させたものを、1時間かけて滴下により添加した。次いで、メタノール 5.6g(17.5ミリモル)と3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシトルエン 0.05gを加え、混合物を2時間撹拌した。次いで、4リットルの水の中でポリイミド前駆体であるポリマーA-2を沈殿させ、水-ポリイミド前駆体樹脂混合物を500rpmの速度で15分間撹拌した。ポリマーA-2を濾過して取得し、4リットルの水の中で再度30分間撹拌し再び濾過した。次いで、得られたポリマーA-2を減圧下、45℃で3日間乾燥した。得られたポリマーA-2の重量平均分子量は24,800、数平均分子量は10,500であった。以下にポリイミド前駆体であるポリマーA-2の構造単位を示す。
【化49】
【0253】
[合成例3:ポリイミドA-3の合成]
窒素気流下、1L容量のセパラブルフラスコに2,2-ビス [4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ) フェニル]プロパン二無水物(BPADA)104gをγブチロラクトン383gに入れ溶解させた。ここに5,5’-メチレンビス(2-アミノ安息香酸)(MBAA)60.1gを加え、50℃で20時間反応を行い、ポリアミド酸(ポリイミド前駆体)を得た。ここにトルエン55gを加え、共沸脱水を5時間行った。その後、反応溶液の温度が204℃になるまで加熱してトルエンを除き、ポリイミド溶液を得た。室温に冷却後、グリシジルメタクリレート59.6gと4-メトキシフェノール0.45gを加え、100℃で5時間反応させ、ポリイミド溶液(A-3)を得た(固形分33%)。ポリイミド溶液(A-3)の分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(標準ポリスチレン換算)で測定したところ、重量平均分子量(Mw)は30,000であった。以下にポリイミドであるポリマーA-3の構造単位を示す。
【化50】
【0254】
[実施例1~13及び比較例1~4]
(第1及び第2の感光性樹脂組成物の調製)
後述する表に示す試薬を、表に示す量(質量部)で混合し、高速回転ミキサーを用いて攪拌して、ワニス状の第1の感光性樹脂組成物を調製した。第1の感光性樹脂組成物と同様に、ワニス状の第2の感光性樹脂組成物も調製した。表において、各試薬の量は、前記の合成例で製造した(A)成分溶液に含まれる固形分(ポリイミド前駆体)を100質量部とした各試薬の固形分の量を表す。表中、固形分含有量とは、(A)成分を100質量部に換算した場合の含有量を表す。(B-1)成分の添加量とは、(A)成分を100質量部としたときの感光性樹脂組成物中の(B-1)成分の含有量を表し、(B-2)成分の添加量とは、(A)成分を100質量部としたときの感光性樹脂組成物中の(B-2)成分の含有量を表し、(B)成分の添加量とは、(A)成分を100質量部としたときの感光性樹脂組成物中の(B)成分の含有量を表す。なお、ポリマーA-2は、固形分33%のγ-ブチロラクトン溶液として用いた。
【0255】
(感光性フィルムの製造)
支持体としてPETフィルム(東レ社製「ルミラーT6AM」、厚み38μm)を用意した。各実施例及び比較例で調製した第1の感光性樹脂組成物を、かかる支持体に、乾燥後の感光性樹脂組成物層の厚みが30μmになるよう、ダイコーターにて均一に塗布し、80℃から120℃で6分間乾燥して、第1の感光性樹脂組成物層を形成した。これを感光性シートAと称する。
【0256】
同様に、支持体としてPETフィルム(東レ社製「ルミラーT6AM」、厚み38μm)を用意した。各実施例及び比較例で調製した第2の感光性樹脂組成物を、かかる支持体に、乾燥後の感光性樹脂組成物層の厚みが30μmになるよう、ダイコーターにて均一に塗布し、80℃から120℃で6分間乾燥して、第2の感光性樹脂組成物層を形成した。これを感光性シートBと称する。
【0257】
これら、第1および第2の感光性樹脂組成物層が接合するように、感光性シートA、Bを、マニュアル式真空加圧ラミネーター(ニッコー・マテリアルズ社製、ダイヤフラムラミネーター「V-160」)を用いてラミネートすることで、60μmの2層構成の感光性樹脂組成物層を得た。圧着条件は、真空引きの時間30秒間、圧着温度60℃、圧着圧力0.7MPa、加圧時間180秒間とした。
【0258】
(吸光度の測定)
感光性シートA、Bを用意した(比較例1のみ感光性シートBのみ用意した。)。感光性シートA、Bにおける第1及び第2の感光性樹脂組成物層を3cm角に切り出し、リファレンスを支持体として使用したPETフィルム「ルミラーT6AM」として、全光線透過率を3点測定した。測定に使用したシートの厚みを計測し、3点の透過率の平均値を厚み30μmに換算したものを吸光度とした。ここで、第1及び第2の感光性樹脂組成物層の吸光度は、各々の感光性樹脂組成物層について波長365nmの全光線透過率T(%)を測定し、次式により求めた。
吸光度=2-log(T)
【0259】
【0260】
表中の各試薬の詳細は、下記の通りである。
(A)成分
・ポリマーA-1:合成例1で合成したポリマーA-1
・ポリマーA-2:合成例2で合成したポリマーA-2
・ポリマーA-3:合成例3で合成したポリマーA-3
(B)成分
(B-1)成分
・Irgacure OXE02:オキシムエステル系光ラジカル発生剤、下記式に示す光重合開始剤(BASF社製「Irgacure OXE02」)
【化51】
・Irgacure OXE01:オキシムエステル系光ラジカル発生剤、下記式に示す光重合開始剤(BASF社製「Irgacure OXE01」)
【化52】
(B-2)成分
・Omnirad819:(アシルホスフィン系光ラジカル発生剤、IGM社製、「Omnirad819」)
・OmniradTPO:(アシルホスフィン系光ラジカル発生剤、IGM社製、「OmniradTPO」)
(C)成分
・TMPT:下記式に示す4官能以下の光架橋剤(新中村化学工業社製「TMPT」)
【化53】
・DPHA:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、日本化薬社製、5又は6官能
・A-TMPT:下記式に示す4官能以下の光架橋剤(新中村化学工業社製「A-TMPT」)
【化54】
・M-933:ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、東亞合成社製
【0261】
<限界解像性の評価>
シリコンウエハ上に5μmの厚みで銅めっきを積層し、1%塩酸水溶液で60秒間粗化処理した基板上に、感光性フィルムの第2の感光性樹脂組成物層が銅層の表面と接するように配置し、真空ラミネーター(名機製作所社製、MVLP5000/600-IIW)を用いて積層し、銅めっき、第2の感光性樹脂組成物層、第1の感光性樹脂組成物層、及び支持体がこの順に積層された積層体を形成した(比較例1は、銅めっき、第2の感光性樹脂組成物層、及び支持体がこの順に積層された積層体)。圧着条件は、真空引きの時間30秒間、圧着温度80℃、圧着圧力0.7MPa、加圧時間30秒間とした。室温にて30分間静置した後、前記積層体から支持体を剥がし取った。支持体を剥がし取った積層体を、紫外線(波長365nm、強度40mW/cm2)で露光を行った。露光量は200mJ/cm2の範囲を設定した。露光パターンは開口径20μm、30μm、40μm、50μm、60μm、70μmの丸穴(ビア)を描画させる石英ガラスマスクを使用した。室温にて5分間静置した後、100℃、3分間の加熱処理を行った。該積層板上の感光性樹脂組成物層の全面に、現像液として23℃のシクロペンタノンをスプレー圧0.1MPaにて30秒から100秒の間の最適時間でスプレー現像を行い、続いて、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートをスプレー圧0.1MPaにて30秒間スプレーリンスを行った。さらに180℃、180分間の加熱処理を行って感光性樹脂組成物層を硬化させた。これを評価サンプルと称する。この評価サンプルのビアの底部の径を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察(倍率1000倍)し、残渣、剥離が無い開口可能な最小サイズを限界開口ビアとした。以下の評価基準で評価した。
〇:限界開口ビア径のアスペクト比(膜厚(μm)/ビア径(μm))が1.0以上
△:限界開口ビア径のアスペクト比(膜厚(μm)/ビア径(μm))が0.5以上1.0未満
×:限界開口ビア径のアスペクト比(膜厚(μm)/ビア径(μm))が0.5未満
【0262】
また、露光量を300mJ/cm2、400mJ/cm2、及び500mJ/cm2の範囲に設定した場合についても同様に評価した。
【0263】
<断面形状(アンダーカット耐性)の評価>
アンダーカットの観察に関しては、評価サンプルを、SEMで開口径が70μmのビアを観察(倍率2000倍)した。ビアの断面の最上部の半径(μm)と底部の半径(μm)とをSEMにより測定し、底部の半径と最上部の半径との差(底部の半径-最上部の半径)を求め、求めた値をアンダーカットとし、以下の評価基準で評価した。
◎:アンダーカットが無い。
〇:アンダーカットが2μm未満。
△:アンダーカットが2μm以上4μm以下。
×:アンダーカットが4μmより大きい、又は開口径が70μmのビアが開口していない。
【0264】
<密着性の評価>
シリコンウエハ上に5μmの厚みで銅めっきを積層し、1%塩酸水溶液で60秒間粗化処理した基板上に、感光性フィルムの第2の感光性樹脂組成物層が銅層の表面と接するように配置し、真空ラミネーター(ニッコー・マテリアルズ社製、VP160)を用いて積層し、銅めっき、第2の感光性樹脂組成物層、第1の感光性樹脂組成物層、及び支持体がこの順に積層された積層体を形成した。圧着条件は、真空引きの時間30秒間、圧着温度60℃、圧着圧力0.7MPa、加圧時間30秒間とした。室温にて30分間静置した後、前記積層体から支持体を剥がし取った。支持体を剥がし取った積層体を、紫外線(波長365nm、強度40mW/cm2)で露光を行った。露光量は200mJ/cm2の範囲を設定した。露光パターンは開口径70μmの丸穴(ビア)を描画させる石英ガラスマスクを使用した。室温にて5分間静置した後、100℃、3分間の加熱処理を行った。該積層板上の感光性樹脂組成物層の全面に、現像液として23℃のシクロペンタノンをスプレー圧0.1MPaにて30秒から100秒の間の最適時間でスプレー現像を行い、続いて、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートをスプレー圧0.1MPaにて30秒間スプレーリンスを行った。さらに170℃、180分間の加熱処理を行って感光性樹脂組成物層を硬化させた。ビアの底部の径をSEMで70μmの丸穴の断面を観察(倍率2000倍)し、基板と感光性フィルムの感光性樹脂組成物層との間の剥がれ(以下、基板と感光性フィルムの感光性樹脂組成物層との間の剥がれをハロイングということがある。)の有無を確認した。ハロイングがみられる場合、ビア側面からの剥がれの距離を測定し、それをハロイング距離とし、以下の評価基準で評価した。
◎:ハロイングが無い。
〇:ハロイング距離が2μm未満。
△:ハロイング距離が2μm以上4μm以下。
×:ハロイング距離が4μmより大きい、又はビア径が70μmのビアが開口していない。
【0265】