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特開2024-173681光学系、撮像装置および光学系の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173681
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】光学系、撮像装置および光学系の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/18 20060101AFI20241205BHJP
   G02B 13/00 20060101ALI20241205BHJP
   G02B 13/18 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
G02B5/18
G02B13/00
G02B13/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024063175
(22)【出願日】2024-04-10
(31)【優先権主張番号】P 2023089275
(32)【優先日】2023-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110412
【弁理士】
【氏名又は名称】藤元 亮輔
(74)【代理人】
【識別番号】100104628
【弁理士】
【氏名又は名称】水本 敦也
(74)【代理人】
【識別番号】100121614
【弁理士】
【氏名又は名称】平山 倫也
(72)【発明者】
【氏名】森 健太朗
【テーマコード(参考)】
2H087
2H249
【Fターム(参考)】
2H087KA01
2H087LA01
2H087PA02
2H087PA04
2H087PA06
2H087PA17
2H087PA19
2H087PB02
2H087PB06
2H087PB08
2H087QA02
2H087QA07
2H087QA12
2H087QA14
2H087QA17
2H087QA21
2H087QA22
2H087QA25
2H087QA26
2H087QA37
2H087QA41
2H087QA45
2H087QA46
2H087RA34
2H087RA44
2H087RA46
2H249AA03
2H249AA13
2H249AA51
2H249AA63
(57)【要約】
【課題】回折面を有し、小型かつ高い光学性能を有する光学系を提供する。
【解決手段】光学系Lは、回折面と1面以上の平面ではない屈折面とを含む光学系であり、回折面の光路差関数をψ、回折次数をm、回折面の設計波長をλ、入射波長をλ、面の光路差分散をP(λ)、設計波長における面の光路差関数をψとし、面の光路差関数ψ (λ)、回折面の光路差関数ψおよび回折面が特定の条件を満足する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回折面と1面以上の平面ではない屈折面とを含む光学系であって、
前記回折面の光路差関数をψ、回折次数をm、前記回折面の設計波長をλ、入射波長をλ、面の光路差分散をP(λ)、前記設計波長における前記面の光路差関数をψとし、前記面の光路差関数ψ (λ)と前記回折面の光路差関数ψを、
【数1】

と定義するとき、前記回折面が、
【数2】

なる条件を満足することを特徴とする光学系。
【請求項2】
基準波長をd線、主分散をF線とC線、前記面の光路差関数の分散率をdψ 0,dとするとき、
【数3】

なる条件を満足することを特徴とする請求項1に記載の光学系。
【請求項3】
基準波長をd線、主分散をg線とF線し、前記回折面の光路差関数の分散率をdψg,Fとするとき、
【数4】

なる条件を満足することを特徴とする請求項1に記載の光学系。
【請求項4】
回折光学素子に設けられた前記回折面における焦点距離をfmoe、前記回折光学素子を含む前記光学系の焦点距離をfとするとき、
0.4<fmoe / f<30.0
なる条件を満足することを特徴とする請求項1に記載の光学系。
【請求項5】
前記光学系のうち最も像側のレンズ面から像面までのバックフォーカスをskd、前記光学系のうち最も物体側のレンズ面から像面までの光学全長をTLとするとき、
0.04<skd/TL<0.30
なる条件を満足することを特徴とする請求項1に記載の光学系。
【請求項6】
前記面の光路差分散P(λ)を最適化変数として設計されたことを特徴とする請求項1に記載の光学系。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の光学系と、
前記光学系を介して被写体を撮像する撮像素子とを有することを特徴とする撮像装置。
【請求項8】
回折面と1面以上の平面ではない屈折面とを含む光学系の製造方法であって、
前記光学系は、前記回折面の光路差関数をψ、回折次数をm、前記回折面の設計波長をλ、入射波長をλ、面の光路差分散をP(λ)、前記設計波長における前記面の光路差関数をψとし、前記面の光路差関数ψ (λ)と前記回折面の光路差関数ψを、
【数5】

と定義するとき、前記回折面が、
【数6】

なる条件を満足する前記光学系を製造することを特徴とする光学系の製造方法。
【請求項9】
1つまたは複数のプロセッサによって実施される方法であって、
回折面の光路差関数をψ、回折次数をm、前記回折面の設計波長をλ、入射波長をλ、面の光路差分散をP(λ)、前記設計波長における前記面の光路差関数をψとし、前記面の光路差関数ψ (λ)と前記回折面の光路差関数ψを、
【数7】

【数8】

とするとき、
前記回折次数mと、前記設計波長λと、前記入射波長λとを取得するステップと、
前記光路差分散P(λ)と、前記面の光路差関数ψと、前記ステップにおいてそれぞれ取得された前記回折次数m、前記設計波長λおよび前記入射波長λとに基づいて、前記回折面の光路差関数ψを出力するステップと、を含むことを特徴とする方法。
【請求項10】
1つまたは複数のプロセッサによって実施される方法であって、
回折面の光路差関数をψ、回折次数をm、前記回折面の設計波長をλ、入射波長をλ、面の光路差分散をP(λ)、前記設計波長における前記面の光路差関数をψとし、前記面の光路差関数ψ (λ)と前記回折面の光路差関数ψを、
【数9】

とするとき、
前記入射波長λを取得するステップと、
前記入射波長λが前記設計波長λの場合と前記設計波長λ以外の場合とで異なる前記光路差分散P(λ)を入力するステップと、
入力された前記光路差分散P(λ)と、前記回折次数mと、前記設計波長λと、前記入射波長λと、前記面の光路差関数ψとに基づいて、前記回折面の光路差関数ψを出力するステップと、を含むことを特徴とする方法。
【請求項11】
前記1つまたは複数のプロセッサに請求項9または10に記載の方法に従う処理を実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項12】
回折面を含む光学系を設計するための設計方法であって、
前記回折面の光路差関数をψ、回折次数をm、前記回折面の設計波長をλ、入射波長をλ、面の光路差分散をP(λ)、前記設計波長における前記面の光路差関数をψ、前記面の光路差関数をψ (λ)と前記回折面の光路差関数をψとするとき、
【数10】

【数11】

なる式によって前記回折面の光路差関数ψを算出することを特徴とする設計方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回折面を有する光学系に関する。
【背景技術】
【0002】
光路差関数を用いて回折面を幾何光学的に表現する方法が非特許文献1や特許文献1に開示されている。また、その方法を用いて設計された回折面を含む様々な光学系も知られている。
【0003】
また、特許文献2~4には、入射光のサブ波長の形状寸法を有するナノ構造を含むメタサーフェスレンズが開示されている。メタサーフェスレンズの光の偏向作用は回折面と同様に一般化スネルの法則で扱えるが、メタサーフェスレンズは従来知られている回折面と異なり、その分散を制御できることが知られている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】宮前 博,「回折レンズ系の幾何光学的取り扱い」,光学,27,513(1998)
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第7086709号公報
【特許文献2】米国特許公開2022/0082794号公報
【特許文献3】米国特許公開2022/0206186号公報
【特許文献4】米国特許10,670,782号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
非特許文献および特許文献1に開示された光路差関数による回折面を用いた光学系は、回折面の分散が波長のみで決まるため、回折面の分散を制御できないという課題を有する。特許文献2、3はメタサーフェスにより分散制御を行う例を開示しているが、その説明は定性的であり、具体的に実施可能な数値が開示されておらず、幾何光学的な光学設計ができないという課題を有する。
【0007】
特許文献4には、メタ原子の位相遅延量を波長ごとに計算し、メタサーフェス素子の分散を制御するようにメタ原子を配置した、分散制御されたメタサーフェス素子の設計および製造方法が開示されている。しかしながら、電磁場解析をベースとした素子の設計方法を、屈折面等との組み合わせで構成される光学系の設計に用いることは効率的ではない。従来の回折面を用いた光学設計と同様に、幾何光学的な取扱いによる光学設計が望まれる。
【0008】
本発明は、分散制御された回折面を用いた光学設計を可能とし、小型かつ高い光学性能を有する光学系を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一側面としての光学系は、回折面と1面以上の平面ではない屈折面とを含む光学系であり、回折面の光路差関数をψ、回折次数をm、回折面の設計波長をλ、入射波長をλ、面の光路差分散をP(λ)、設計波長における面の光路差関数をψとし、面の光路差関数ψ 0(λ)と回折面の光路差関数ψを、
【0010】
【数1】
【0011】
と定義するとき、回折面が、
【0012】
【数2】
【0013】
なる条件を満足することを特徴とする。なお、上記光学系を有する撮像装置、上記光学系の製造方法、回折面の光路差関数をプロセッサに出力させる方法およびプログラムも本発明の他の一側面を構成する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、分散制御された回折面を用いた光学設計を可能とし、小型かつ高い光学性能を有する光学系を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】設計波長における面の光路差関数の傾きを示す図。
図2】面の光路差関数の傾きを示す図。
図3】実施例1の光学系の断面図。
図4】実施例1の光学系の収差図。
図5】実施例2の光学系の断面図。
図6】実施例2の光学系の収差図。
図7】実施例3の光学系の断面図。
図8】実施例3の光学系の収差図。
図9】実施例1~3の光学系を用いた撮像装置を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。まず具体的な実施例1~3の説明に先立って各実施例に共通する事項について説明する。
【0017】
最初に実施例の分散制御された回折面を用いた光学設計と従来の回折面を用いた光学設計との違いを明確にするために、先に従来の回折面の光路差関数による光学設計の取り扱いを説明する。回折面による光線の偏向作用は以下の回折格子の式に従うことが知られている。
【0018】
【数3】
【0019】
ここで、Nは入射媒質の屈折率、θは入射角、N’は射出媒質の屈折率、θ’は射出角、mは回折次数、λは入射波長、Pは格子ピッチである。
【0020】
式(1)を設計波長における面の光路差関数ψを用いて表現する。図1は、光路差関数の傾き|∇ψ|の関係を示す。図1から、この光路差関数の傾き|∇ψ|は格子ピッチPと回折格子の設計波長λを用いて以下のように表現できる。
【0021】
【数4】
【0022】
式(2)を使うと、式(1)は以下のように表せる。
【0023】
【数5】
【0024】
式(3)は従来から知られている一般化スネルの法則の回折面表現である。光線方向単位ベクトルを用いて式(3)の一般化スネルの法則をベクトル表示すると以下のように表現できる。
【0025】
【数6】
【0026】
ここで、
【0027】
は入射光線方向単位ベクトル、
【0028】
は光学面における光線通過点の面法線単位ベクトル、
【0029】
は射出光線方向単位ベクトルである。従来、回折面を含む光学系の光線追跡は式(4)を用いて計算することが通常であった。なお、設計波長における面の光路差関数ψ0の表現は、使用頻度の高い回転対称面である場合、以下の多項式で表すことが通常である。
【0030】
【数7】
【0031】
ここで、hは光軸からの距離を示している。
【0032】
従来の回折面の特徴として、分散が波長のみで決まることが挙げられる。この説明のために、従来の回折面のアッベ数ν0を導出する。これにより、従来の回折面の考え方と実施例の分散制御された回折面との考え方の差が明確になる。
【0033】
これまでの説明から、回折面の光路差関数ψは、設計波長における面の光路差関数ψを用いて以下のように表現できることは明らかである。
【0034】
【数8】
【0035】
従来の回折面のアッベ数を導出するために、式(6)を波長λで微分すると、以下の式を得る。
【0036】
【数9】
【0037】
アッベ数ν0は、波長が変化したときの光路差関数ψの相対変化として定義できる。このため、式(7)の両辺を光路差関数ψで除して式(6)を用いて整理すると、従来の回折面のアッベ数ν0を以下のように導出できる。
【0038】
【数10】
【0039】
なお、アッベ数の逆数を分散率という.
式(8)の右辺から明らかなように、従来の回折面の分散は波長のみで決定される。具体的に基準波長をd線(0.58756μm)、主分散をF線(0.48613μm)とC線(0.65627μm)とするとき、従来の回折面のアッベ数ν0,dは以下の数値になる。
【0040】
【数11】
【0041】
次に、本発明の分散制御された回折面の光学設計の取り扱いについて説明する。近年の微細加工技術の発展により、分散制御されたメタサーフェスレンズが登場してきている。最も単純な、単一材料の円柱ピラーで作製されたメタサーフェスレンズは色位相分散の自由度が不足しているため、基本的には従来の回折レンズと略同じ分散特性となる。しかし、様々な構造のメタ原子を用意する等の方法により、基準波長における位相遅延量は同じでも、他波長における位相遅延量をメタ原子の構造ごとに異ならせることができる。分散制御されたメタサーフェスレンズは、そのようなメタ原子により、回折面の分散制御を実現している。
【0042】
分散制御がされた回折面を用いた光学設計を可能にするために、この効果を幾何光学的に表現する。前述のメタサーフェスによる回折面の分散制御は、特性の異なる様々なメタ原子の配置により、波長ごとに格子ピッチの異なる屈折率分布型の回折格子を実現させているとみなせる。図2は、この場合の面の光路差関数の傾き|∇ψ (λ)| の関係を示す。図2から、面の光路差関数の傾き|∇ψ 0(λ)|は、格子ピッチP(λ)と回折格子の設計波長λ0を用いて以下のように表現できる。
【0043】
【数12】
【0044】
ここで、P(λ)は、面の光路差分散とする。格子ピッチと面の光路差関数の傾きは波長の関数であることを明示的に表すために(λ)を付記した.
この考え方に基づくと、回折格子の式(1)は以下のように書き換えられる。
【0045】
【数13】
【0046】
式(11)は式(10)を用いて表現すると、分散制御された回折面に対応した一般化スネルの法則として以下のように表せる。
【0047】
【数14】
【0048】
光線方向単位ベクトルを用いて式(12)をベクトル表示すると、以下のように表現できる。
【0049】
【数15】
【0050】
式(13)を用いることで、分散制御された回折面を用いた光学系の光線追跡と光学設計が可能になる。なお、面の光路差分散をP(λ)=1とすると、従来の回折面を扱う式(4)と一致する。
【0051】
分散制御された回折面のアッベ数ν を導出し、従来の回折面のアッベ数νとの違いを説明する。これまでの説明から、光路差関数ψは、面の光路差関数ψ (λ)を用いて以下のように表現できることは明らかである。
【0052】
【数16】
【0053】
分散制御された回折面のアッベ数を導出するために、式(14)を波長λで微分すると、以下の式を得る。
【0054】
【数17】
【0055】
アッベ数ν は波長が変化したときの光路差関数ψの相対変化として定義できる。このため、式(15)の両辺を光路差関数ψで除して式(14)を用いて整理すると、分散制御された回折面のアッベ数ν を以下のように導出できる。
【0056】
【数18】
【0057】
式(16)の右辺の第二項に面の光路差関数の波長分散項があることが、従来の回折面のアッベ数との違いである。この項の存在が分散制御された回折面の特徴である。すなわち、分散制御された回折面とは、アッベ数ν 0に対して、波長の項のみではなく、波長に依存した面の光路差関数の項を追加することで、光路差関数の自由度も利用してアッベ数ν 0の値を制御することである。これにより、従来の回折面に対して、さらに色収差を補正することが可能である。
【0058】
以上から、面の光路差関数の波長分散を制御することで、回折面の分散を制御できることが分かる。
【0059】
以上が実施例の分散制御された回折面を用いた光学系を設計可能とするための考え方である。したがって、各実施例の光学系は、回折面と1面以上の平面ではない屈折面を含む光学系において以下の特徴を有する。回折面の光路差関数をψ、回折次数をm、回折面の設計波長をλ、入射波長をλ、面の光路差分散をP(λ)、設計波長における面の光路差関数をψとし、面の光路差関数ψ (λ)と回折面の光路差関数ψを以下のように定義する。
【0060】
【数19】
【0061】
このとき、前述の回折面が、以下の条件を満足することを特徴とする。
【0062】
【数20】
【0063】
式(C1)の条件は、分散制御された回折面を用いた光学設計を可能にし、小型かつ高い光学性能を得るための条件を示している。式(C1)の条件を満足する回折面を設定することで、分散制御された回折面を用いた光学設計が可能になる。従来の回折面は色分散がガラスに比べて大きく、光学系全体として色収差を補正するには多数の屈折レンズが必要であった。分散制御された回折面を用いることで色収差補正に適した分散とすることができ、小型かつ高い光学性能を持つ光学系を得ることができる。
【0064】
実施例1~3(これらに対応する数値例1~3)の光学系は、式(C1)の条件を満足するため、分散制御された回折面を用いた光学設計を可能にし、小型かつ高い光学性能を持つ光学系として構成されている。
【0065】
各実施例において、以下の条件のうち少なくとも1つを満足することが好ましい。
【0066】
基準波長をd線とし、主分散をF線とC線とした場合において、面の光路差関数の分散率をdψ 0,dとする。この場合において、以下の条件を満足するように面の光路差関数の分散率dψ 0,dを設定することが好ましい。
【0067】
【数21】
【0068】
式(C2)の条件は分散制御された回折面を用いて、小型かつ高い光学性能を持つ光学系を得やすくするための条件を示している。面の光路差関数の分散率dψ 0,dが式(C2)の下限値を下回ると、回折面で発生する負の分散が大きくなりすぎる。そのため、光学系全系としての色補正が困難になり、高い光学性能を得ることが困難になるため、好ましくない。面の光路差関数の分散率dψ 0,dが式(C2)の上限値を上回ると、分散制御の回折面で発生する分散が通常のガラスと同様の正の分散になり、光学系の小型化が困難になるため、好ましくない。
【0069】
式(C2)の数値範囲を以下のようにすると、より好ましい。
【0070】
【数22】
【0071】
式(C2)の数値範囲を以下のようにすると、さらに好ましい。
【0072】
【数23】
【0073】
また、基準波長をd線とし、主分散をg線とF線とした場合に、光路差関数の分散率をdψg,Fとするとき、以下の条件を満足するように回折面の光路差関数の分散率dψg,Fを設定することが好ましい。
【0074】
【数24】
【0075】
式(C3)の条件は、分散制御された回折面を用いて小型かつ高い光学性能を持つ光学系を得やすくするための条件を示している。光路差関数の分散率dψg,Fが式(C3)の下限値を下回ると、g線とF線の傾きが通常の回折面の傾きに近くなる。この結果、特に屈折面と組み合わせたときに2次スペクトルの補正が困難になり、高い光学性能を得ることが困難になるため、好ましくない。光路差関数の分散率dψg,Fが式(C3)の上限値を上回ると、分散制御の回折面で発生する分散が通常のガラスと同様の正の分散になり、光学系の小型化が困難になるため、好ましくない。
【0076】
式(C3)の数値範囲を以下のようにすると、より好ましい。
【0077】
【数25】
【0078】
式(C3)の数値範囲を以下のようにすると、さらに好ましい。
【0079】
【数26】
【0080】
また、分散制御回折光学素子の回折面における焦点距離をfmoe、該回折光学素子を含む光学系全系の焦点距離をfとするとき、以下の条件を満足するように焦点距離fmoeを設定することが好ましい。
【0081】
0.4<|fmoe|/ f<30.0 (C4)
式(C4)の条件は、分散制御された回折面を用いて、小型かつ高い光学性能を持つ光学系を得やすくするための条件を示している。回折面における焦点距離fmoeが式(C4)の下限値を下回ると、球面収差やコマ収差といった諸収差が多く発生して高い光学性能を得ることが困難になるため、好ましくない。回折面における焦点距離fmoeが式(C4)の上限値を上回ると、光学系の小型化を得ることが困難になるため、好ましくない。
【0082】
式(C4)の数値範囲を以下のようにすると、より好ましい。
【0083】
0.6<|fmoe|/ f<20.0 (C4a)
式(C4)の数値範囲を以下のようにすると、さらに好ましい。
【0084】
0.8<|fmoe|/ f<15.0 (C4b)
また、光学系の最も像側のレンズ面から像面までのバックフォーカスをskd、最も物体側のレンズ面から像面までの光学全長(レンズ全長)をTLとするとき、以下の条件を満足するようにバックフォーカスskdを設定することが好ましい。
【0085】
0.04<skd/TL<0.30 (C5)
ここにいうバックフォーカスとは、光学系と像面との間に軸上光線および軸外光線に対する屈折力が実質的に0とみなせるガラスブロックが配置された場合は、前述のガラスブロックを除いて空気換算した値である。
【0086】
式(C5)の条件は、小型の光学系を得やすくするための条件を示している。skd/TLが式(C5)の下限値を下回るようにバックフォーカスが短いと、光学系と像面との距離が短くなりすぎて、カバーガラスの配置が困難になったり像面に配置される撮像素子からの熱による光学系の熱変化が無視できなくなったりする等の不都合が生じやすい。このため、好ましくない。skd/TLが式(C5)の上限値を上回るようにバックフォーカスが長いと、光学系の小型化が困難になるため、好ましくない。
【0087】
式(C5)の数値範囲を以下のようにすると、より好ましい。
【0088】
0.06<skd/TL<0.25 (C5a)
式(C5)の数値範囲を以下のようにすると、さらに好ましい。
【0089】
0.08<skd/TL<0.20 (C5b)
また、面の光路差分散P(λ)を最適化変数として、各実施例の光学系を設計(製造)することで、光学系の色収差補正に適した回折面の分散特性を設定することが容易になるため、好ましい。
【0090】
次に実施例1~3について説明する。実施例3の後には、実施例1~3のそれぞれに対応する数値例1~3を示している。図3図5および図7はそれぞれ、実施例1、2および3の光学系Lを示している。Oは光学系Lの光軸を示している。MOEは光路差関数による光学設計がなされた回折光学素子、SPは開口絞り、GBはガラスブロック、IPは像面を示している。像面IPには、CCDセンサやCMOSセンサ等の撮像素子の撮像面(受光面)や銀塩フィルムのフィルム面(感光面)が配置される。
【実施例0091】
実施例1(数値例1)の光学系は、焦点距離8.30mm、Fナンバー4.0、半画角23.5度の光学系である。該光学系Lは、物体側から像側へ順に配置された、分散制御された回折光学素子MOEと、開口絞りSPと、正の屈折力の非球面レンズL1と、負の屈折力の非球面レンズL2とを有する。
【0092】
回折光学素子MOEは、正の屈折力を有し、その光路差関数は色収差が発生しないように面の光路差分散が規定されている。これにより、色収差を発生させずに光束を収束させることができ、光学系の小型化と高画質化を達成している。
【0093】
開口絞りSPは、光学系のFナンバーを決める役割を有する。開口絞りSPより像側には、物体側に凸形状の正メニスカス非球面レンズL1と像側に凸形状の負メニスカス非球面レンズL2が配置されている。回折光学素子MOEでは色収差が発生しないが、回折面1面でコマ収差や像面湾曲といった単色収差を補正することはできない。このため、2枚の非球面レンズL1、L2によりコマ収差や像面湾曲等の諸収差を効果的に補正している。
【0094】
また、最も像側の非球面レンズL2は、像面IPに近い位置に配置されており、像面湾曲や歪曲といった諸収差を効果的に補正している。
【0095】
数値例1は、式(C1)~(C5)の条件を全て満足している。これにより、数値例1の光学系Lは、小型かつ高い光学性能をする。なお、数値例1の面の光路差分散は厳密には1.0より非常に小さい小数点以下の桁で0とはならないが、実質的に1とみなすことができる。このことは後述する他の数値例でも同じである。
【0096】
図4は、数値例1の光学系Lの縦収差(球面収差、非点収差、歪曲および色収差)を示している。球面収差図において、FnoはFナンバーを示し、実線はd線(波長587.6nm)に対する球面収差を、二点鎖線はg線(波長435.8nm)に対する球面収差をそれぞれ示している。非点収差図において、実線Sはサジタル像面での非点収差を、破線Mはメリディオナル像面での非点収差を示している。歪曲収差図は、d線における歪曲収差を示している。色収差図は、g線における倍率色収差を示している。ωは半画角(°)である。
【実施例0097】
実施例2の光学系Lは、焦点距離200mm、Fナンバー4.0、半画角6.17度の光学系であり、分散制御された回折光学素子MOEを有する。
【0098】
光学系Lは、物体側から像側へ順に配置された以下の光学素子を有する。両凸形状の正レンズと像側に凸形状の負メニスカスレンズの接合レンズL1と、正の屈折力を有して通常の回折面の分散よりも弱い負の分散になるように面の光路差分散が規定された回折光学素子MOEと、物体側に凸形状の正メニスカスレンズL2とを有する。また、開口絞りSPと、両凹形状の負レンズL3と、像側に凸形状の負メニスカスレンズと像側に凸形状の正メニスカスレンズの接合レンズL4と、両凸形状の正レンズL5と、像側に凸形状の負メニスカスレンズL6とを有する。
【0099】
回折光学素子MOEを用いた構成により、効果的に軸上光束を収束させつつ色収差を補正し、光学系Lの小型化と高性能化を達成している。また、最も像側に負メニスカスレンズL6をバックフォーカスが短くなる位置に配置している。これにより、像面湾曲や歪曲等の諸収差を効果的に補正している。
【0100】
数値例2は、式(C1)~(C5)の条件を全て満足している。これにより、数値例2の光学系Lは、小型かつ高い光学性能をする。図6は、数値例2の光学系Lの縦収差を示している。
【実施例0101】
実施例3の光学系Lは、焦点距離27mm、Fナンバー3.5、半画角38.71度の光学系であり、分散制御された回折光学素子MOEを有する。
【0102】
光学系Lは、物体側から像側に順に配置された以下の光学素子を有する。物体側に凸形状の負メニスカスレンズL1と、両凸形状の正レンズと両凹形状の負レンズの接合レンズL2と、開口絞りSPと、物体側に凸形状の負メニスカスレンズと両凸形状の正レンズL3とを有する。さらに、正の屈折力を有し、通常の回折面の分散よりも弱い負の分散になるように面の光路差分散が規定された回折光学素子MOEと、像側に凸形状の負メニスカスレンズL4とを有する。
【0103】
回折光学素子MOEを用いた構成により、効果的に色収差を補正し、光学系Lの小型化と高性能化を達成している。また、最も像側に負メニスカスレンズL4をバックフォーカスが短くなる位置に配置している。これにより、像面湾曲や歪曲等の諸収差を効果的に補正している。
【0104】
数値例3は、式(C1)~(C5)の条件を全て満足している。これにより、数値例3の光学系Lは、小型かつ高い光学性能をする。図8は、数値例3の光学系Lの縦収差を示している。
【0105】
なお、各実施例において、収差補正については画像処理による補正を行ってもよい。また、回折光学素子の光路差関数を実現する構造は、メタサーフェスが1つの層からなる、いわゆる単層型のメタサーフェスであってもよいし、複数の層からなる、いわゆる積層型のメタサーフェスであってもよい。ガラスブロックGBは、ローパスフィルタやIRカットフィルタ等であってもよい。
【0106】
以下に数値例1~3を示す。各数値例において、iは物体側から数えた面の順序を示し、rはi番目の光学面(第i面)の曲率半径(mm)、dは第i面と第(i+1)面との間の光軸に沿った軸上間隔(mm)を示す。また、ndおよびνdはそれぞれ、i番目の光学部材の材料のd線における屈折率およびd線を基準とするアッベ数である。
【0107】
d線を基準とするアッベ数νdは、d線(587.6nm)、F線(486.1nm)、C線(656.3nm)における屈折率をNd、NF、NCとするとき、
νd=(Nd-1)/(NF-NC)
で表される。有効径は、第i面において結像に寄与する光線が通る領域の半径(mm)を示している。
【0108】
BFはバックフォーカス(mm)を表し、式(C5)のskdに相当する。バックフォーカスは、光学系の最終面(最も像側の面)から近軸像面までの光軸上の距離を空気換算長により表記したものとする。「レンズ全長」は、光学系の最前面(最も物体側の面)から最終面までの光軸上の距離にバックフォーカスを加えた長さであり、式(C5)の光学全長TLに相当する。
【0109】
面番号に付された「*」は、その面が非球面形状を有する面であることを意味する。非球面形状は、xを光軸方向での面頂点からの変位量、hを光軸に直交する方向における光軸からの高さ、光の進行方向を正とし、Rを近軸曲率半径、kを円錐定数、A4~A10を非球面係数とするとき、以下の式で表される。なお、円錐定数と非球面係数の「e±M」は、×10-Mを意味する。
【0110】
x=(h2/R)/[1+{1-(1+k)(h/R)21/2
+A4・h4+A6・h6+A8・h8+A10・h10
また、設計波長における面の光路差関数は、U2~U10を面の光路差関数係数とするとき、以下の式で表される。
【0111】
ψ0=U2・h+U4・h+U6・h+U8・h+U10・h10
面番号に付された(回折)は、面の光路差関数による光学設計がなされた面を意味する。
【0112】
数値例1~3の前述した式(C2)~(C5)に関する値を表1にまとめて示す。
(数値例1)
単位 mm

面データ
面番号 r d nd νd 有効径
1 ∞ 1.00 1.45867 67.9 4.02
2(回折) ∞ 1.40 3.45
3(絞り) ∞ 0.10 1.80
4* 5.249 0.84 1.53504 55.7 1.76
5* 5.830 4.03 1.49
6* -5.666 0.94 1.53504 55.7 4.85
7* -13.238 0.20 5.61
8 ∞ 0.50 1.51633 64.1 7.50
9 ∞ 0.40 7.50
像面 ∞

非球面データ
第2面(回折面)
設計波長 0.58756 [μm]
U 2=-5.74195e-02 U 4= 4.82532e-03 U 6=-1.48309e-04 U 8= 7.34398e-06

面の光路差分散
【0113】
【数27】
【0114】
第4面
K =-2.03720e+00 A 4= 4.95415e-02 A 6=-4.78711e-03 A 8= 7.21202e-03
A10=-2.39213e-03

第5面
K =-9.00000e+01 A 4= 1.08601e-01 A 6=-6.76262e-02 A 8= 7.61853e-02
A10=-3.32147e-02

第6面
K = 5.77917e-01 A 4=-1.12096e-02 A 6= 2.16691e-03 A 8=-1.71105e-04
A10= 1.38988e-05

第7面
K = 8.52623e+00 A 4=-2.28992e-02 A 6= 4.42728e-03 A 8=-4.87943e-04
A10= 2.36572e-05

各種データ
焦点距離 8.30
Fナンバー 4.00
半画角[°] 23.45
像高 3.60
レンズ全長 9.23
BF 0.93

入射瞳位置 2.35
射出瞳位置 -5.07
前側主点位置 -1.94
後側主点位置 -7.90

単レンズデータ
レンズ 始面 焦点距離
1 1 8.71
2 4 65.51
3 6 -19.35

(数値例2)
単位 mm

面データ
面番号 r d nd νd 有効径
1 61.911 8.68 1.48749 70.2 50.00
2 -222.009 3.00 1.71700 47.9 49.42
3 -2123.992 13.31 48.52
4(回折) ∞ 3.00 1.51633 64.1 43.29
5 ∞ 0.50 42.41
6 54.277 4.80 1.43875 94.9 40.42
7 184.876 2.05 39.35
8(絞り) ∞ 13.00 38.63
9 -573.923 2.00 1.88300 40.8 29.45
10 60.092 60.85 28.14
11 -36.149 2.50 1.43875 94.9 32.19
12 -474.734 4.44 1.59270 35.3 34.98
13 -72.341 0.50 36.04
14 84.046 5.40 1.50137 56.4 37.91
15 -150.289 32.69 38.09
16 -114.359 2.50 1.80810 22.8 38.22
17 -550.552 17.68 38.79
18 ∞ 2.30 1.51633 64.1 45.00
19 ∞ 0.80 45.00
像面 ∞

非球面データ
第4面(回折面)
設計波長 0.58756 [μm]
U 2=-7.35292e-04 U 4= 6.05791e-08 U 6=-4.57447e-12 U 8= 3.81537e-15

面の光路差分散
【0115】
【数28】
【0116】
各種データ
焦点距離 200.00
Fナンバー 4.00
半画角[°] 6.17
像高 21.64
レンズ全長 179.22
BF 20.00

入射瞳位置 37.07
射出瞳位置 -117.74
前側主点位置 -100.38
後側主点位置 -199.20

単レンズデータ
レンズ 始面 焦点距離
1 1 100.31
2 2 -346.00
3 4 680.00
4 6 173.18
5 9 -61.51
6 11 -89.34
7 12 143.41
8 14 108.34
9 16 -179.08

(数値例3)
単位 mm

面データ
面番号 r d nd νd 有効径
1 13.135 1.20 1.48749 70.2 16.05
2 7.897 3.54 13.03
3 12.791 3.90 1.80440 39.6 11.39
4 -14.146 0.70 1.87400 35.3 9.51
5 10.511 2.93 7.38
6(絞り) ∞ 1.57 8.27
7 17.749 2.50 1.83400 37.2 9.12
8 10.021 5.45 1.62041 60.3 10.48
9 -12.483 5.26 12.27
10(回折) ∞ 1.40 1.45867 67.9 16.05
11 ∞ 10.41 16.55
12 -10.557 1.44 1.59270 35.3 18.92
13 -25.297 6.18 24.72
14 ∞ 2.30 1.51633 64.1 39.95
15 ∞ 0.80 42.05
像面 ∞

非球面データ
第10面(回折面)
設計波長 0.58756 [μm]
U 2=-1.57703e-03 U 4= 5.74967e-06 U 6=-6.03016e-08 U 8= 7.50090e-10

面の光路差分散
【0117】
【数29】

【0118】
各種データ
焦点距離 27.00
Fナンバー 3.50
半画角[°] 38.71
像高 21.64
レンズ全長 48.80
BF 8.50

入射瞳位置 9.80
射出瞳位置 -23.50
前側主点位置 6.80
後側主点位置 -26.20

単レンズデータ
レンズ 始面 焦点距離
1 1 -43.92
2 3 8.93
3 4 -6.81
4 7 -32.36
5 8 9.87
6 10 317.05
7 12 -31.72
【0119】
【表1】
【0120】
図9は、上記各実施例の光学系を撮像光学系として用いた撮像装置としてのデジタルスチルカメラを示している。20はカメラ本体、21は実施例1~3のいずれかの光学系によって構成された撮像光学系である。22はカメラ本体20に内蔵され、撮像光学系21により形成された光学像(被写体像)を撮像するCCDセンサやCMOSセンサ等の撮像素子である。23は撮像素子22からの撮像信号を処理することで生成された画像データを記録する記録部であり、24は画像データを表示する背面ディスプレイである。
【0121】
各実施例の光学系を用いることで、小型で高い光学性能を有するカメラを得ることができる。なお、カメラは、クイックターンミラーを有する一眼レフカメラであってもよいし、クイックターンミラーを有さないミラーレスカメラであってもよい。
【0122】
また1つまたは複数のプロセッサに、上記各実施例で説明した式を用いて回折面の光路差関数ψを出力または算出させる方法や該方法に従う処理を実行させるプログラムも本発明の実施例として含まれる。さらには上記各実施例で説明した式を用いて回折面を含む光学系を設計する設計方法も、本発明の実施例として含まれる。
【0123】
以上の実施の形態には、以下の構成を含む。
【0124】
(構成1)
回折面と1面以上の平面ではない屈折面とを含む光学系であって、
前記回折面の光路差関数をψ、回折次数をm、前記回折面の設計波長をλ、入射波長をλ、面の光路差分散をP (λ)、前記設計波長における前記面の光路差関数をψとし、前記面の光路差関数ψ 0 (λ)と前記回折面の光路差関数ψを、
【0125】
【数30】
【0126】
と定義するとき、前記回折面が、
【0127】
【数31】
【0128】
なる条件を満足することを特徴とする光学系。
(構成2)
基準波長をd線、主分散をF線とC線とし、前記面の光路差関数の分散率をdψ 0,dとするとき、
【0129】
【数32】
【0130】
なる条件を満足することを特徴とする構成1に記載の光学系。
(構成3)
基準波長をd線、主分散をg線とF線とし、前記回折面の光路差関数の分散率をdψg,Fとするとき、
【0131】
【数33】
【0132】
なる条件を満足することを特徴とする構成1または2に記載の光学系。
(構成4)
回折光学素子に設けられた前記回折面における焦点距離をfmoe、前記回折光学素子を含む前記光学系の焦点距離をfとするとき、
0.4<fmoe / f<30.0
なる条件を満足することを特徴とする構成1から3のいずれか1つに記載の光学系。
(構成5)
前記光学系のうち最も像側のレンズ面から像面までのバックフォーカスをskd、前記光学系のうち最も物体側のレンズ面から像面までの光学全長をTLとするとき、
0.04<skd/TL<0.30
なる条件を満足することを特徴とする構成1から4のいずれか1つに記載の光学系。
(構成6)
前記面の光路差分散P(λ)を最適化変数として設計されたことを特徴とする構成1から5のいずれか1つに記載の光学系。
(構成7)
構成1から6のいずれか1つに記載の光学系と、
前記光学系を介して被写体を撮像する撮像素子とを有することを特徴とする撮像装置。
【0133】
以上説明した各実施例は代表的な例にすぎず、本発明の実施に際しては、各実施例に対して種々の変形や変更が可能である。
【符号の説明】
【0134】
L 光学系
MOE 回折光学素子
SP 開口絞り
IP 像面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9