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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173685
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】ワイヤロープの振れ角検出装置
(51)【国際特許分類】
   B66C 13/22 20060101AFI20241205BHJP
【FI】
B66C13/22 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024064368
(22)【出願日】2024-04-12
(31)【優先権主張番号】P 2023090630
(32)【優先日】2023-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2024029410
(32)【優先日】2024-02-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】504005781
【氏名又は名称】株式会社日立プラントメカニクス
(74)【代理人】
【識別番号】100102211
【弁理士】
【氏名又は名称】森 治
(72)【発明者】
【氏名】中野 浩一
(72)【発明者】
【氏名】川尻 栄作
(72)【発明者】
【氏名】古賀 久之
(72)【発明者】
【氏名】松本 卓
(72)【発明者】
【氏名】河原 康人
【テーマコード(参考)】
3F204
【Fターム(参考)】
3F204AA02
3F204CA03
3F204EB02
3F204EB08
(57)【要約】
【課題】簡単な機構で、クレーンにおけるつり具を支持するワイヤロープの振れ角を正確に検出することができるようにしたワイヤロープの振れ角検出装置を提供すること。
【解決手段】ワイヤロープ3と連動機構4を介して接続されて、クレーン1の加速度成分α及び機械的振動成分が加わったワイヤロープ3の振れ角θを検出する第一のセンサS1と、クレーン1の本体側に固定して配置されて、クレーン1の加速度成分α及び機械的振動成分を検出する第二のセンサS2と、第一のセンサS1の出力と第二のセンサS2の出力を合成することでワイヤロープ3の振れ角θを算出する演算機構とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クレーンにおけるつり具を支持するワイヤロープの振れ角を検出するワイヤロープの振れ角検出装置であって、
前記ワイヤロープと連動機構を介して接続されて、クレーンの加速度成分及び機械的振動成分が加わったワイヤロープの振れ角を検出する第一のセンサと、
前記クレーンの本体側に固定して配置されて、クレーンの加速度成分及び機械的振動成分を検出する第二のセンサと、
前記第一のセンサの出力と第二のセンサの出力を合成することでワイヤロープの振れ角を算出する演算機構とを備えてなる
ことを特徴とするワイヤロープの振れ角検出装置。
【請求項2】
前記第一のセンサは、軸方向がクレーンの走行方向及び横行方向とそれぞれ一致する2つの回転軸を有するジンバル機構を介してクレーンの本体側に配置されることを特徴とする請求項1に記載のワイヤロープの振れ角検出装置。
【請求項3】
前記軸方向がクレーンの横行方向と一致する回転軸と、ワイヤロープのヘッドシーブ及び/又はエコライザシーブの軸方向がクレーンの横行方向と一致する回転軸とが同一水平面内に位置するように配置されていることを特徴とする請求項2に記載のワイヤロープの振れ角検出装置。
【請求項4】
前記軸方向がクレーンの走行方向と一致する回転軸と、ワイヤロープのヘッドシーブ及び/又はエコライザシーブの軸方向がクレーンの走行方向と一致する回転軸とが同一水平面内に位置するように配置されていることを特徴とする請求項2に記載のワイヤロープの振れ角検出装置。
【請求項5】
前記第一のセンサ及び第二のセンサが、2軸傾斜センサであることを特徴とする請求項1、2、3又は4に記載のワイヤロープの振れ角検出装置。
【請求項6】
前記連動機構が、平行四辺形のリンク構造をしてなることを特徴とする請求項1、2、3又は4に記載のワイヤロープの振れ角検出装置。
【請求項7】
前記ワイヤロープを、連動機構に固定保持するようにしてなることを特徴とする請求項1、2、3又は4に記載のワイヤロープの振れ角検出装置。
【請求項8】
前記ワイヤロープを、連動機構に摺動可能に保持するようにしてなることを特徴とする請求項1、2、3又は4に記載のワイヤロープの振れ角検出装置。
【請求項9】
前記ワイヤロープを、連動機構にワイヤロープを含む直交する2面でそれぞれ回転可能に保持するようにしてなることを特徴とする請求項1、2、3又は4に記載のワイヤロープの振れ角検出装置。
【請求項10】
前記ワイヤロープを保持する連動機構のワイヤロープの保持位置の反対側にカウンタウエイトを設けるようにしたことを特徴とする請求項1、2、3又は4に記載のワイヤロープの振れ角検出装置。
【請求項11】
前記ワイヤロープを、連動機構にワイヤロープの上昇及び/又は下降を許容するガイド部材を介して保持するようにしてなることを特徴とする請求項1、2、3又は4に記載のワイヤロープの振れ角検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレーンにおけるつり具を支持するワイヤロープの振れ角を検出する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
クレーンにおいては、つり荷を運搬する場合におけるつり荷の巻き上げ時、クレーンの横行あるいは走行時につり荷の振れが発生するが、つり荷の振れを抑制することが、搬送時間の短縮化等の効率面、挟まれ事故の防止等の安全面等から求められている。
【0003】
このため、例えば、自動クレーンにおいては、このつり荷の振れ、すなわち、つり具を支持するワイヤロープの振れ角を検出し、振れを抑制する制御を行うようにしている。
【0004】
このワイヤロープの振れ角を検出する装置として、つり具の上方に設けたつり具側シーブと、クレーンのクラブトロリに垂直方向に取り付けられ2方向に回転可能な手段を備えたセンサベースと、センサベースの下端に一端を接続し、つり具側シーブに緊張した検出ロープと、センサベースの上面に配設したクレーンの横行及び走行方向の傾斜角を検出する傾斜計と、クレーンのクラブトロリに取り付けたクレーンの横行及び走行方向の加速度を検出する加速度計と、傾斜計の検出値に加速度計の検出値を整合加算することにより傾斜計の検出値の検出誤差成分を除去する演算手段とを備えたクレーンのつり具振れ角検出装置が提案され、実用化されている(特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5-57526号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に記載のクレーンのつり具振れ角検出装置は、検出ロープ等の多くの構成部材が必要になり、構造も複雑なため、そのメンテナンスに手数を要するという問題があった。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑み、簡単な機構で、クレーンにおけるつり具を支持するワイヤロープの振れ角を正確に検出することができるようにしたワイヤロープの振れ角検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明のワイヤロープの振れ角検出装置は、クレーンにおけるつり具を支持するワイヤロープの振れ角を検出するワイヤロープの振れ角検出装置であって、前記ワイヤロープと連動機構を介して接続されて、クレーンの加速度成分及び機械的振動成分が加わったワイヤロープの振れ角を検出する第一のセンサと、前記クレーンの本体側に固定して配置されて、クレーンの加速度成分及び機械的振動成分を検出する第二のセンサと、前記第一のセンサの出力と第二のセンサの出力を合成することでワイヤロープの振れ角を算出する演算機構とを備えてなることを特徴とする。
【0009】
この場合において、前記第一のセンサは、軸方向がクレーンの走行方向及び横行方向とそれぞれ一致する2つの回転軸を有するジンバル機構を介してクレーンの本体側に配置されるようにすることができる。
【0010】
また、前記軸方向がクレーンの横行方向と一致する回転軸と、ワイヤロープのヘッドシーブ及び/又はエコライザシーブの軸方向がクレーンの横行方向と一致する回転軸とが同一水平面内に位置するように配置されるようにしたり、前記軸方向がクレーンの走行方向と一致する回転軸と、ワイヤロープのヘッドシーブ及び/又はエコライザシーブの軸方向がクレーンの走行方向と一致する回転軸とが同一水平面内に位置するように配置されるようにしたりすることができる。
【0011】
また、前記第一のセンサ及び第二のセンサには、2軸傾斜センサを用いることができる。
【0012】
また、前記連動機構が、平行四辺形のリンク構造をしてなるようにすることができる。
【0013】
また、前記ワイヤロープを、連動機構に固定保持するようにしたり、連動機構に摺動可能に保持するようにしたりすることができる。
【0014】
また、前記ワイヤロープを、連動機構にワイヤロープを含む直交する2面でそれぞれ回転可能に保持するようにしてなるようにすることができる。
【0015】
また、前記ワイヤロープを保持する連動機構のワイヤロープの保持位置の反対側にカウンタウエイトを設けるようにしてなるようにすることができる。
【0016】
また、前記ワイヤロープを、連動機構にワイヤロープの上昇及び/又は下降を許容するガイド部材を介して保持するようにすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明のワイヤロープの振れ角検出装置は、クレーンの加速度成分及び機械的振動成分が加わったワイヤロープの振れ角を検出する第一のセンサの出力と、クレーンの加速度成分及び機械的振動成分を検出する第二のセンサの出力を、演算機構を用いて合成することでワイヤロープの振れ角を算出することにより、簡単な機構で、クレーンにおけるつり具を支持するワイヤロープの振れ角を正確に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明のワイヤロープの振れ角検出装置を適用した天井クレーンの一例を示す説明図で、(a)はクラブトロリを正面から見た天井クレーンの要部図、(b)はクラブトロリを側面から見た天井クレーンの要部図、(c)はワイヤロープの振れ角検出装置の一実施例を示す斜視図である。
図2】本発明のワイヤロープの振れ角検出装置の一実施例を示す模式図で、(a)は正面図、(b1)は同右側面図、(b2)は(a)のX-X矢視図である。
図3】同ワイヤロープの振れ角検出装置の構成図である。
図4】同ワイヤロープの振れ角検出装置を用いてワイヤロープの振れ角を検出した結果を示すグラフである。
図5】同ワイヤロープの振れ角検出装置の連動機構の動作説明図で、(a1)~(a2)は図2に記載した連動機構の動作説明図、(b1)~(b2)はアームを平行四辺形のリンク構造とした連動機構の動作説明図である。
図6】本発明のワイヤロープの振れ角検出装置の第1変形実施例を示す模式図で、(a)は正面図、(b1)は同右側面図、(b2)は(a)のY-Y矢視図である。
図7】本発明のワイヤロープの振れ角検出装置の第2変形実施例を示す模式図で、(a)は正面図、(b1)は同右側面図、(b2)は(a)のZ-Z矢視図である。
図8】本発明のワイヤロープの振れ角検出装置の第3変形実施例を示す模式図である。
図9】同ワイヤロープの振れ角検出装置の模式図で、(a)は平面図、(b)は要部の正面断面図、(c)は(b)のA-A矢視図である。
図10】本発明のワイヤロープの振れ角検出装置の第4変形実施例を示す模式図である。
図11】同ワイヤロープの振れ角検出装置の模式図で、(a)は要部の正面断面図、(b)は(a)のA-A矢視図である。
図12】ワイヤロープのガイド部材の例を示す説明図である。
図13】ワイヤロープのガイド部材のワイヤロープと滑車の隙間を減少させる機構の例を示す説明図である。
図14】ワイヤロープのガイド部材のワイヤロープと滑車の隙間を減少させる機構の例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明のワイヤロープの振れ角検出装置の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【0020】
図1図5に、本発明のワイヤロープの振れ角検出装置の一実施例を示す。
クレーン1、例えば、天井クレーンには、荷物をつり上げて搬送する作業中に、移動時の加速度やレールの段差による機械的振動等が印加される。
このワイヤロープの振れ角検出装置は、クレーン1の移動時の加速度や機械的振動等による影響を軽減することで、クレーン1におけるつり具2を支持するワイヤロープ3の振れ角を正確に検出することができるようにしたもので、ワイヤロープ3と連動機構4を介して接続されて、クレーン1の加速度成分α及び機械的振動成分が加わったワイヤロープ3の振れ角θを検出する第一のセンサ(可動側センサ)S1と、クレーン1の本体側、具体的には、クラブトロリ11に固定して配置されて、クレーン1の加速度成分α及び機械的振動成分を検出する第二のセンサ(固定側センサ)S2と、第一のセンサS1の出力と第二のセンサS2の出力を合成することでワイヤロープ3の振れ角θを算出する演算機構とを備えるようにしている。
ここで、第一のセンサS1及び第二のセンサS2の出力には、さらに、建屋やレールの傾斜によるクレーン1の傾斜成分が含まれる場合があるが、これらは、第一のセンサS1の出力と第二のセンサS2の出力を合成することで相殺することができる。
【0021】
第一のセンサS1及び第二のセンサS2には、例えば、マイクロマシン技術(MEMS(Micro Electro Mechanical Systems))を使った傾斜計を用いることができ、より具体的には、同種の2軸傾斜センサ(例えば、センサテック社製の「2軸傾斜センサ ECN-122シリーズ」)を好適に用いることができる。このほか、日本航空電子社製の1軸のサーボ加速度計型傾斜センサを直交配置し、これを可動側、固定側に配置して使用することもできる。
【0022】
第一のセンサS1と第二のセンサS2は、演算機構により第一のセンサS1の出力と第二のセンサS2の出力を合成することで、クレーン1の加速度成分α及び機械的振動成分(さらに、クレーン1の傾斜成分が含まれる場合は、当該成分)を相殺し、クレーンの移動時の加速度や機械的振動による影響を軽減するようにする。
この場合、第一のセンサS1及び第二のセンサS2が拾うクレーン1の加速度成分α及び機械的振動成分(さらに、クレーン1の傾斜成分が含まれる場合は、当該成分)に差が出ないようにするために、第一のセンサS1と第二のセンサS2は、近接して配置するようにする。
【0023】
ワイヤロープ3と連動機構4を介して接続される第一のセンサS1は、軸方向がクレー
ンの走行方向及び横行方向とそれぞれ一致する2つの回転軸51、52を有するジンバル機構5を介してクレーン1の本体側、具体的には、クラブトロリ11に配置されるようにしている。
これにより、第一のセンサS1は、ワイヤロープ3に倣って走行方向及び横行方向に揺動することで、ワイヤロープ3の振れに対して自在に傾斜追従可能となり、ワイヤロープ3の振れ角θを検出することができる。
【0024】
ジンバル機構5の軸方向がクレーン1の横行方向と一致する回転軸51と、ワイヤロープ3の傾斜、移動を円滑にするヘッドシーブ6(及び/又はエコライザシーブ)の軸方向がクレーン1の横行方向と一致する回転軸61とが同一水平面内に位置するように配置されるようにしている。
これにより、図5(a1)~(a2)に示すように、クレーン1の荷物をつり上げて搬送する作業中に、つり具2の振れに伴ってワイヤロープ3が振れると、ワイヤロープ3に結合された連動機構4のアームが、ワイヤロープ3に倣って振れ、ジンバル機構5の回転軸51とヘッドシーブ6の回転軸61が平行に配置されているため、(一定の範囲内では)ワイヤロープ3と連動機構4のアームが略平行四辺形を形成するように動くことで、ワイヤロープ3の振れ角θが正確に第一のセンサS1に伝達される。
【0025】
ここで、図5(b1)~(b2)に示すように、連動機構4のアームを平行四辺形のリンク構造とすることにより、ワイヤロープ3に結合された連動機構4の結合部の摺動余裕(隙間)、傾きによる誤差や摩耗の問題が軽減され、ワイヤロープ3の振れ角θをより正確に第一のセンサS1に伝達されるようにすることができる。
【0026】
ところで、本実施例においては、ジンバル機構5の軸方向がクレーン1の走行方向と一致する回転軸52と、ワイヤロープ3のヘッドシーブ6の軸方向がクレーン1の走行方向と一致する回転軸62とは、高さが異なる位置に配置されるようにしているが、図6に示す第1変形実施例のように、2つの軸を同一水平面内に位置するように配置されるようにしたり、図7に示す第2変形実施例のように、回転軸51、52及び回転軸61、62の4つの軸を同一水平面内に位置するように配置されるようにしたりすることができる。
これにより、ワイヤロープ3の振れ角θがより正確に第一のセンサS1に伝達されるようにすることができる。
なお、本実施例のように、回転軸の高さが異なる位置に配置される場合は、必要に応じて、振れ角を補正する機能を設けることもできる。
【0027】
クレーン1のワイヤロープ3は、ワイヤロープ3を上部で微動可能に保持するヘッドシーブ6と、ワイヤロープ3を巻き取るワイヤドラム7と、つり具2のフックシーブとの3点で逆三角形を形成しており、つり具2の巻き上げ高さに従って、三角形の上辺と他の2辺の角度、すなわち、ワイヤロープ3の角度が変化する。
このため、図3に示すように、演算機構により第一のセンサS1の出力と第二のセンサS2の出力を合成することで、クレーン1の加速度成分α及び機械的振動成分(さらに、クレーン1の傾斜成分が含まれる場合は、当該成分)を相殺した後に、つり具2の巻き上げ高さ情報によって計算で求められるワイヤロープ3の角度の変化(誤差δ1)を加減算することで、つり具2の巻き上げ高さによるワイヤロープ3の角度の変化(誤差δ1)を除去する。
さらに、建屋内のクレーン1の位置による角度の差異(傾きδ2)を予め用意したテーブル等により修正、除去する。
これにより、より正確な振れ角θ’の情報を得ることができる。
【0028】
また、第一のセンサS1の出力と第二のセンサS2の出力信号の処理に当たっては、加減算等の計算処理の前後に、適宜、フィルタ回路を設けて、信号中の雑音成分を除去する
。計算処理にコンピュータやPLCを使用する場合は、簡単な移動平均処理や、周波数特性や位相特性を考慮したデジタルフィルタを使用して雑音成分を除去することができる。
【0029】
このワイヤロープの振れ角検出装置を用いてワイヤロープの振れ角を検出した結果の一例を図4に示す。
図4に示す結果からも明らかなとおり、このワイヤロープの振れ角検出装置は、クレーンの加速度成分及び機械的振動成分(さらに、クレーン1の傾斜成分が含まれる場合は、当該成分)が加わったワイヤロープの振れ角を検出する第一のセンサの出力と、クレーンの加速度成分及び機械的振動成分(さらに、クレーン1の傾斜成分が含まれる場合は、当該成分)を検出する第二のセンサの出力を、演算機構を用いて合成することでワイヤロープの振れ角を算出することにより、簡単な機構で、クレーンにおけるつり具を支持するワイヤロープの振れ角を正確に検出することができることを確認した。
【0030】
ところで、上記のワイヤロープの振れ角検出装置は、ワイヤロープ3の移動がほとんどないヘッドシーブ6(及び/又はエコライザシーブ)の近傍位置で、ワイヤロープ3を連動機構4のクリップ41によって、連動機構4に固定保持するようにしたものであるが、上昇及び/又は下降するワイヤロープ3の振れ角を検出する場合は、クリップ41によってワイヤロープ3を摺動可能に保持することでワイヤロープ3の上昇及び/又は下降を許容するようにしたり、クリップ41に代えて、図12図14に示すように、ワイヤロープ3を、連動機構4にワイヤロープ3の上昇及び/又は下降を許容するガイド部材8を介して保持するようにする。
【0031】
具体的には、図8図9に示す第3変形実施例のように、クリップ41によってワイヤロープ3を摺動可能に保持することでワイヤロープ3の上昇及び/又は下降を許容するとともに、ワイヤロープ3を、連動機構4にワイヤロープ3を含む直交する2面でそれぞれ回転可能に保持するようにする。
ここで、クリップ41は、ワイヤロープ3を摺動可能に保持できるように、ワイヤロープ3に対して角度測定に誤差を与えない程度の間隙を有する口径で、上下にR面取りを施した貫通孔41aを備えるようにする。
また、このクリップ41は、連動機構4にワイヤロープ3を含む直交する2面でそれぞれ回転可能に保持できるように、ワイヤロープ3及び連動機構4を含む面の回転軸42、この面と直交するワイヤロープ3を含む面の回転軸43を有するジンバル機構(ユニバーサル機構)を介して、連動機構4に配置されるようにしている。
回転軸42、43には、必要に応じて、無給油ブッシュやボールベアリング等の軸受部材を設けることができる。
これにより、ワイヤロープ3が急激に動作した時に、クリップ41にワイヤロープ3が噛み合って、ワイヤロープ3の摺動動作が妨げられることを防止するとともに、貫通孔41aをワイヤロープ3に対して角度測定に誤差を与えない程度の間隙を有する口径にすること(必要以上に大きな口径にしないこと)で、つり荷の振り子運動の左右の最大振幅点において、移動方向が逆転する状態で不感帯が発生することを防止することができる。
また、連動機構4にワイヤロープ3を含む直交する2面でそれぞれ回転可能に保持するようにすることで、クリップ41がワイヤロープ3の傾きに応じてワイヤロープ3の方向に向き、ワイヤロープ3との接触圧力及び摩擦を最小にしてワイヤロープ3の摺動動作が妨げられることを防止することができる。
【0032】
ところで、第3変形実施例では、ワイヤロープ3を摺動可能に保持する連動機構4のクリップ41は、片持ち形式で支持されているため、回転軸43の回転方向で「固渋」(回転部分が固着し、ロックすること。)が発生するおそれがある。
【0033】
これに対処するために、図10図11に示す第4変形実施例のように、ワイヤロープ
3を摺動可能に保持する連動機構4のワイヤロープの保持位置、すなわち、クリップ41の反対側に、カウンタウエイト44を設けるようにすることができる。
ここで、カウンタウエイト44の重量は、回転軸43(回転軸43の両端支持軸受43a、43b)を挟んだ、クリップ41側と、カウンタウエイト44側の力のモーメントが等しくなるように設定することが好ましい。
これにより、回転軸43の回転方向で固渋が発生することがなく、連動機構4に自己平衡機能を持たせ、連動機構4の安定した動作を確保することができる。
【0034】
また、図12(a)に示すように、上昇及び/又は下降する2本のワイヤロープ3をガイド部材8の滑車81で支持し、滑車81を取り付けた平面板82に垂直に連動機構4のアームを取り付け、連動機構4をジンバル機構5に接続することで、2本のワイヤロープ3を含む面内方向のワイヤロープ3の傾き及び当該面に垂直な方向のワイヤロープ3の傾きが第一のセンサS1に伝達されるようにすることができる。
この場合、2本のワイヤロープ3の昇降方向は、2本が同じ方向であっても、逆方向であってもよいが、逆方向の時に、平面板82から連動機構4のアームをねじる力が発生するため、平面板82とアームを強固に接続するか、回転自在に接続するようにする必要がある。
また、この点を考慮して、ワイヤロープ3の昇降方向が異なる場合は、図12(b)に示すように、上昇するワイヤロープ3を2本と下降するワイヤロープ3を1本(又は上昇するワイヤロープ3を1本と下降するワイヤロープ3を2本)を交互に配置し、ガイド部材8の滑車81で支持し、滑車81を取り付けた平面板82に垂直に連動機構4のアームを取り付け、連動機構4をジンバル機構5に接続することで、ねじれを打ち消し、平面板82から連動機構4のアームをねじる力が発生することを防止することができる。
【0035】
ここで、ワイヤロープ3の動きが、ワイヤロープ3を支持する滑車81を介して滑車81を取り付けた平面板82に正確に伝達されるように、ガイド部材8に、ワイヤロープ3と滑車81の接触状態を安定的に維持するための機構として、ワイヤロープ3と滑車81の隙間を減少させる機構を設けることができる。
これにより、ワイヤロープ3と滑車81の隙間が減少し、ワイヤロープ3の動きが、ガイド部材8を介して連動機構4に正確に伝達され、ワイヤロープ3の振れ角の検出精度が向上するものとなる。
【0036】
このワイヤロープ3と滑車81の隙間を減少させる機構としては、図13(a)に示すように、対向配置してワイヤロープ3を支持する滑車81の一方を、他方の滑車81に向けて付勢するばね部材からなる加圧機構83のほか、図13(b1)及び(b2)に示すように、ワイヤロープ3を支持する滑車81の間隔を狭めるとともに、高さ位置を異ならせて配置するようにすることが挙げられる。
【0037】
このほか、上記機構としては、図14(a)に示すように、対向配置してワイヤロープ3を支持する滑車81の一方を、他方の滑車81に向けて付勢する錘部材84aからなる加圧機構84が挙げられる。
この錘部材からなる加圧機構84は、より具体的には、図14(b)に示すように、錘部材84aを上下可動にガイドする固定ピン84bと、錘部材84aの上下動に合わせて揺動するリンクアーム84cとからなり、リンクアーム84cに取り付けた一方の滑車81が、錘部材84aがその重量で下方に移行することによって、他方の滑車81に向けて付勢されるように構成したり、図14(c)に示すように、錘部材84aを上下可動にガイドする固定ピン84bと、錘部材84aに形成した一方の滑車81の傾斜ガイド溝84dとからなり、傾斜ガイド溝84dに配設した一方の滑車81が、錘部材84aがその重量で下方に移行することによって、他方の滑車81に向けて付勢されるように構成したりすることができる。
【0038】
以上、本発明のワイヤロープの振れ角検出装置について、その実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明のワイヤロープの振れ角検出装置は、簡単な機構で、クレーンにおけるつり具を支持するワイヤロープの振れ角を正確に検出することができることから、各種クレーンの用途に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0040】
1 クレーン
11 クラブトロリ
2 つり具
3 ワイヤロープ
4 連動機構
41 クリップ
41a 貫通孔
42 回転軸
43 回転軸
43a、43b 両端支持軸受
44 カウンタウエイト
5 ジンバル機構
51 回転軸(軸方向がクレーンの横行方向と一致する回転軸)
52 回転軸(軸方向がクレーンの走行方向と一致する回転軸)
6 ヘッドシーブ
61 回転軸(軸方向がクレーンの横行方向と一致する回転軸)
62 回転軸(軸方向がクレーンの走行方向と一致する回転軸)
7 ワイヤドラム
8 ガイド部材
S1 第一のセンサ(可動側センサ)
S2 第二のセンサ(固定側センサ)
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