(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173693
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】組成物、光学フィルム、層、光学フィルター、光学素子、固体撮像装置、およびカメラモジュール
(51)【国際特許分類】
G02B 5/22 20060101AFI20241205BHJP
G02B 5/28 20060101ALI20241205BHJP
C09B 67/20 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
G02B5/22
G02B5/28
C09B67/20 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024068670
(22)【出願日】2024-04-19
(31)【優先権主張番号】P 2023089798
(32)【優先日】2023-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004178
【氏名又は名称】JSR株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000004008
【氏名又は名称】日本板硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】生井 準人
(72)【発明者】
【氏名】大崎 仁視
(72)【発明者】
【氏名】下河 広幸
(72)【発明者】
【氏名】櫻本 貴士
(72)【発明者】
【氏名】土屋 駿
(72)【発明者】
【氏名】川部 泰典
(72)【発明者】
【氏名】内田 洋介
(72)【発明者】
【氏名】二村 聡太
(72)【発明者】
【氏名】長屋 勝也
(72)【発明者】
【氏名】久保 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】新毛 勝秀
(72)【発明者】
【氏名】高城 智孝
(72)【発明者】
【氏名】増田 一瞳
(72)【発明者】
【氏名】井上 輝英
(72)【発明者】
【氏名】蔡 雷
【テーマコード(参考)】
2H148
【Fターム(参考)】
2H148CA04
2H148CA12
2H148CA17
2H148CA27
2H148GA05
2H148GA19
(57)【要約】
【課題】外観および再分散性に優れる組成物であって、高い可視光透過率および低い近赤外線透過率を有し、かつ、高温高湿環境下においても耐久性に優れる光学フィルムや光学フィルターを形成することができる組成物を提供すること。
【解決手段】ホスホン酸成分と銅成分とを含む光吸収性化合物(A)、および、ポリアリレートを含む重合体(B1)を含有する、組成物(D)。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホスホン酸成分と銅成分とを含む光吸収性化合物(A)、および、ポリアリレートを含む重合体(B1)を含有する、組成物(D)。
【請求項2】
さらに紫外線吸収性化合物(U)を含有する、請求項1に記載の組成物(D)。
【請求項3】
さらに前記化合物(A)以外の色素(C)を含有する、請求項1に記載の組成物(D)。
【請求項4】
組成物(D)の透過スペクトル(但し、波長800nmにおける透過率が10%±1%となるように調整した組成物(D)の透過スペクトル)が、下記(i)~(iv)の要件を満たす、請求項1に記載の組成物(D)。
(i)波長800~1100nmの範囲における透過率の平均値が10%以下である
(ii)波長460~580nmの範囲における透過率の平均値が80%以上である
(iii)波長680~780nmの範囲に、透過率が50%となる第1カットオフ波長を有する
(iv)波長320~380nmの範囲に、透過率が50%となる第2カットオフ波長を有する
【請求項5】
前記透過スペクトルが、さらに下記(v)の要件を満たす、請求項4に記載の組成物(D)。
(v)波長900~1100nmの範囲における透過率の標準偏差が0.5%以下である
【請求項6】
請求項1に記載の組成物(D)から形成された光学フィルム。
【請求項7】
透過スペクトルが、下記(I)~(V)の要件を満たす、請求項1に記載の組成物(D)から形成された層(D1)。
(I)波長460~580nmの範囲における透過率の平均値が80%以上である
(II)波長800~1100nmの範囲における透過率の平均値が5%以下である
(III)波長680~730nmの範囲に、透過率が50%となる第3カットオフ波長を有する
(IV)波長340~400nmの範囲に、透過率が50%となる第4カットオフ波長を有する
(V)波長950nmにおける透過率の最大値が1%以下である
【請求項8】
請求項1に記載の組成物(D)から形成された層(D1)を有する光学フィルター。
【請求項9】
請求項1に記載の組成物(D)から形成された層(D1)と、
前記化合物(A)以外の色素(C)と、重合体(B2-1)、および、光または熱によって硬化する硬化性化合物(B2-2)から選ばれる少なくとも1種とを含有する組成物(D2)から形成された層(D2)とを有する、
光学フィルター。
【請求項10】
誘電体多層膜を有する、請求項8に記載の光学フィルター。
【請求項11】
請求項8~10のいずれか一項に記載の光学フィルターを有する光学素子。
【請求項12】
請求項8~10のいずれか一項に記載の光学フィルターを有する固体撮像装置。
【請求項13】
請求項8~10のいずれか一項に記載の光学フィルターを有するカメラモジュール。
【請求項14】
組成物(D)であって、
該組成物(D)は、ホスホン酸成分と銅成分とを含む光吸収性化合物(A)、および、ポリアリレートを含む重合体(B1)を含有し、
前記組成物(D)の固形分の含有量が、15~85質量%であり、
前記組成物(D)中の前記重合体(B1)の含有量が5~70質量%であり、
前記化合物(A)1質量部に対する前記重合体(B1)の含有量が0.5~6質量部である、
組成物(D)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組成物、光学フィルム、層、光学フィルター、光学素子、固体撮像装置、およびカメラモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、カメラ機能付き携帯電話などの固体撮像装置には、カラー画像の固体撮像素子であるCCDやCMOSイメージセンサーが使用されている。これら固体撮像素子は、その受光部において人間の目では感知できない近赤外線に感度を有するシリコンフォトダイオードが使用されている。これらの固体撮像素子では、人間の目で見て自然な色合いにさせる視感度補正を行うことが必要であり、特定の波長領域の光線を選択的に透過もしくはカットする光学フィルター(例えば近赤外線カットフィルター)を用いることが多い。
【0003】
このような近赤外線カットフィルターとしては、従来から、各種方法で製造されたフィルターが使用されている。例えば、基材としてリン酸ガラスに酸化銅を分散させた吸収ガラスを用いた吸収ガラス型光学フィルター(例:特許文献1参照)や、樹脂フィルム中に近赤外線吸収色素を添加した光学フィルター(例:特許文献2参照)が知られている。
【0004】
近年、固体撮像装置の高性能化に伴い、カメラ画像のゴーストやフレアの低減が強く求められている。ゴーストやフレアの低減には光学フィルターの近赤外線吸収性能を高めることが効果的であることが知られており、これを達成可能な近赤外線カットフィルターとして、吸収ガラス基材上に近赤外線吸収色素を含有する樹脂層を有する構成の光学フィルター(例:特許文献3参照)、樹脂フィルム中に複数種の近赤外線吸収色素を添加した光学フィルター(例:特許文献4参照)、ホスホン酸銅系錯体と近赤外線吸収色素とを含有する樹脂層を透明ガラス基板上に有する光学フィルター(例:特許文献5参照)等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2011/071157号
【特許文献2】特開2011-100084号公報
【特許文献3】国際公開第2014/030628号
【特許文献4】特開2019-032371号公報
【特許文献5】特開2020-129150号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、吸収ガラスを用いた光学フィルターは、落下時の「割れ」の問題を回避できず、近赤外線吸収色素のみで広範囲の近赤外波長域を吸収させる構成では可視光透過率の低下が顕著となっていた。
また、ホスホン酸銅系錯体と近赤外線吸収色素とを用いた光学フィルターは、優れた分光特性(高い可視光透過率と低い近赤外線透過率の両立)を達成可能なことが知られているが、従来の光学フィルターでは、ホスホン酸銅系錯体の高温高湿条件下での耐久性に課題があり、実用に耐えるものは得られていなかった。
さらに、従来のホスホン酸銅系錯体を含む組成物は、透明性の高い外観を有さない場合や、溶媒中に再分散させた際に不透明な濁りが発生する場合があり、外観や再分散性の点で改良の余地があることがわかった。
【0007】
本発明は以上のことに鑑みてなされた発明であり、外観および再分散性に優れる組成物であって、高い可視光透過率および低い近赤外線透過率を有し、かつ、高温高湿環境下においても耐久性に優れる光学フィルムや光学フィルターを形成することができる組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、下記構成例によれば前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
[1] ホスホン酸成分と銅成分とを含む光吸収性化合物(A)、および、ポリアリレートを含む重合体(B1)を含有する、組成物(D)。
【0010】
[2] さらに紫外線吸収性化合物(U)を含有する、[1]に記載の組成物(D)。
[3] さらに前記化合物(A)以外の色素(C)を含有する、[1]または[2]に記載の組成物(D)。
【0011】
[4] 組成物(D)の透過スペクトル(但し、波長800nmにおける透過率が10%±1%となるように調整した組成物(D)の透過スペクトル)が、下記(i)~(iv)の要件を満たす、[1]~[3]のいずれかに記載の組成物(D)。
(i)波長800~1100nmの範囲における透過率の平均値が10%以下である
(ii)波長460~580nmの範囲における透過率の平均値が80%以上である
(iii)波長680~780nmの範囲に、透過率が50%となる第1カットオフ波長を有する
(iv)波長320~380nmの範囲に、透過率が50%となる第2カットオフ波長を有する
【0012】
[5] 前記透過スペクトルが、さらに下記(v)の要件を満たす、[4]に記載の組成物(D)。
(v)波長900~1100nmの範囲における透過率の標準偏差が0.5%以下である
【0013】
[6] [1]~[5]のいずれかに記載の組成物(D)から形成された光学フィルム。
【0014】
[7] 透過スペクトルが、下記(I)~(V)の要件を満たす、[1]~[5]のいずれかに記載の組成物(D)から形成された層(D1)。
(I)波長460~580nmの範囲における透過率の平均値が80%以上である
(II)波長800~1100nmの範囲における透過率の平均値が5%以下である
(III)波長680~730nmの範囲に、透過率が50%となる第3カットオフ波長を有する
(IV)波長340~400nmの範囲に、透過率が50%となる第4カットオフ波長を有する
(V)波長950nmにおける透過率の最大値が1%以下である
【0015】
[8] [1]~[5]のいずれかに記載の組成物(D)から形成された層(D1)を有する光学フィルター。
【0016】
[9] [1]~[5]のいずれかに記載の組成物(D)から形成された層(D1)と、
前記化合物(A)以外の色素(C)と、重合体(B2-1)、および、光または熱によって硬化する硬化性化合物(B2-2)から選ばれる少なくとも1種とを含有する組成物(D2)から形成された層(D2)とを有する、
光学フィルター。
【0017】
[10] 誘電体多層膜を有する、[8]または[9]に記載の光学フィルター。
【0018】
[11] [8]~[10]のいずれかに記載の光学フィルターを有する光学素子。
[12] [8]~[10]のいずれかに記載の光学フィルターを有する固体撮像装置。
[13] [8]~[10]のいずれかに記載の光学フィルターを有するカメラモジュール。
【0019】
[14] 組成物(D)であって、
該組成物(D)は、ホスホン酸成分と銅成分とを含む光吸収性化合物(A)、および、ポリアリレートを含む重合体(B1)を含有し、
前記組成物(D)の固形分の含有量が、15~85質量%であり、
前記組成物(D)中の前記重合体(B1)の含有量が5~70質量%であり、
前記化合物(A)1質量部に対する前記重合体(B1)の含有量が0.5~6質量部である、
組成物(D)。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、外観および再分散性に優れる組成物を提供することができる。
また、本発明によれば、高い可視光透過率および低い近赤外線透過率を有し、かつ、高温高湿環境下においても耐久性に優れる光学フィルムおよび光学フィルターを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、本発明に係る光学フィルターを有する光学素子、固体撮像装置またはモジュールの一例を示す概略模式図である。
【
図2】
図2は、本発明に係る光学フィルターを有するレンズを有さない光学素子、固体撮像装置またはモジュールの一例を示す概略模式図である。
【
図3】
図3は、実施例A1で得られた組成物1の分光透過率スペクトルである。
【
図4】
図4は、実施例A3で得られた組成物3の分光透過率スペクトルである。
【
図5】
図5は、実施例A5で得られた組成物5の分光透過率スペクトルである。
【
図6】
図6は、実施例A6で得られた組成物6の分光透過率スペクトルである。
【
図7】
図7は、実施例A1で得られた層(D1-A1)の分光透過率スペクトルである。
【
図8】
図8は、実施例A3で得られた層(D1-A3)の分光透過率スペクトルである。
【
図9】
図9は、実施例A6で得られた層(D1-A6)の分光透過率スペクトルである。
【
図10】
図10は、実施例A8で得られた層(D1-A8)の分光透過率スペクトルである。
【
図11】
図11は、実施例P1で得られた基材の分光透過率スペクトルである。
【
図12】
図12は、実施例P2で得られた基材の分光透過率スペクトルである。
【
図13】
図13は、実施例P3で得られた基材の分光透過率スペクトルである。
【
図14】
図14は、実施例P4で得られた基材の分光透過率スペクトルである。
【
図15】
図15は、実施例P1で得られた光学フィルターの分光透過率スペクトルである。
【
図16】
図16は、実施例P2で得られた光学フィルターの分光透過率スペクトルである。
【
図17】
図17は、実施例P3で得られた光学フィルターの分光透過率スペクトルである。
【
図18】
図18は、実施例P4で得られた光学フィルターの分光透過率スペクトルである。
【
図19】
図19は、実施例P5で得られた光学フィルターの分光透過率スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。以下の記載は、本発明の代表的な実施形態に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されることはない。
【0023】
本明細書において、数値範囲を示す「~」とは、その前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
本明細書において、数値範囲を示す「~」とは、その前後いずれか一方に記載される単位は特に断りがない限り同じ単位を示すことを意味する。
【0024】
本発明の実施形態において「透過」とは、対象となる波長または波長領域において、透過率が、好ましくは50%以上、より好ましくは60%以上、さらに好ましくは70%以上であることを指す。「遮蔽」とは、対象となる波長または波長領域において、透過率が、好ましくは10%未満、より好ましくは5%未満、さらに好ましくは1%未満であることを指す。また、「光線」とは、特段の規定が無い限り全光線を示す。
【0025】
≪組成物(D)≫
本発明の一実施形態に係る組成物(D)(以下「本組成物1」ともいう。)は、ホスホン酸成分と銅成分とを含む光吸収性化合物(A)、および、ポリアリレートを含む重合体(B1)を含有する組成物である。
また、本発明の他の実施形態に係る組成物(D)(以下「本組成物2」ともいう。)は、ホスホン酸成分と銅成分とを含む光吸収性化合物(A)、および、ポリアリレートを含む重合体(B1)を含有し、本組成物2中の固形分の含有量が、15~85質量%であり、本組成物2中の前記重合体(B1)の含有量が5~70質量%であり、前記化合物(A)1質量部に対する前記重合体(B1)の含有量が0.5~6質量部である、組成物である。
以下、本組成物1および本組成物2を総合して、「本組成物」ともいう。
本組成物は、該本組成物中における化合物(A)の凝集を抑制し、光吸収性化合物(A)の劣化を抑制することが可能である。また、本組成物は、外観および再分散性に優れる。
【0026】
また、本組成物、特に本組成物2によれば、溶液流延法(ソルベントキャスティング法)などにより、光学フィルムや層(D1)を形成する際に、キャリア(支持体)へのムラのない流延と、所定の条件下での好ましい乾燥スピードと、光学フィルムや層(D1)内におけるムラやヘイズを抑制することができる。
【0027】
本組成物1中の固形分の含有量は、好ましくは15~85質量%、より好ましくは30~85質量%、さらに好ましくは40~85質量%である。
本組成物2中の固形分の含有量は、15~85質量%であり、好ましくは30~85質量%、より好ましくは40~85質量%である。
【0028】
本組成物中の固形分の含有量は、本組成物の乾燥質量であり、本組成物中の溶媒以外の成分の含有量であり、以下のようにして求める。
本組成物の質量M1を測定する。次に、該組成物を加熱オーブン内で加熱して、乾燥させ、固形分だけを残す。その残存した固形分の重量m1を測定する。m1/M1×100の値を、本組成物中の固形分の含有量とする。
【0029】
なお、本組成物1については、溶媒を除去した、固形状組成物であってもよく、このような固形状の組成物も、本組成物の一実施形態である。
該固形状の組成物の具体的な形態は、例えば、顆粒状、粉末状、ペレット状が挙げられる。本組成物を流通等させる場合には、固形状の組成物の方が、溶媒を含む組成物よりも簡便に、また、コスト的にも有利に流通させることができる。
なお、固形状の組成物は、下記第2溶媒などの溶媒に再分散させることで、容易に液状に戻すことができる。
【0030】
<光吸収性化合物(A)>
前記光吸収性化合物(A)は、ホスホン酸成分と銅成分とを含む化合物であり、これらの成分を含めば、特に限定されないが、ホスホン酸成分を含む銅錯体であることが好ましい。
本組成物に用いる化合物(A)は、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0031】
化合物(A)は、原材料として、銅化合物およびホスホン酸(ホスホン酸化合物)を用いて合成することができる。
但し、銅化合物と、ホスホン酸化合物との反応過程を詳細に明らかにすること、得られた反応生成物(化合物(A))の構造を特定することは、非常に難しい。これらの事情があるため、化合物(A)は、ホスホン酸成分と銅成分とを含む化合物と表す。該化合物(A)は、例えば、ホスホン酸銅化合物であり、例えば、ホスホン酸化合物と銅化合物との錯体である。
【0032】
化合物(A)は、例えば、ホスホン酸成分とリン酸エステル成分と銅成分とを含む化合物(例:ホスホン酸-リン酸エステル-銅化合物)であってもよく、ホスホン酸成分と銅成分とを含む化合物と、ホスホン酸成分とリン酸エステル成分と銅成分とを含む化合物との混合物であってもよく、これらの化合物の錯体であってもよい。
これらの化合物(A)は、(近)赤外線領域に広い吸収帯を有し、該化合物(A)を用いることで、(近)赤外線領域の透過率が低いながらも、可視光透過率の高い光学フィルムや層(D1)を容易に形成することができる。
【0033】
また、ホスホン酸、ホスフィン酸、リン酸エステル、リン酸、ホスフィン酸、メタリン酸およびピロリン酸などは、いずれもリン原子を含む化合物であり、化合物(A)は、ホスホン酸以外に、ホスフィン酸、リン酸エステル、リン酸、ホスフィン酸、メタリン酸およびピロリン酸などから選ばれる少なくとも1種の成分を含んでいてもよい。
【0034】
本組成物中の化合物(A)の含有量は、好ましくは5~75質量%、より好ましくは7~65質量%、さらに好ましくは8~55質量%である。
化合物(A)の含有量が前記範囲にあることで、本組成物中において、化合物(A)が凝集し難く、適切に分散され、本組成物から光学フィルムや層(D1)を形成する際にも、光学フィルムや層(D1)を形成中に化合物(A)が凝集し難く、化合物(A)が十分に分散された光学フィルムや層(D1)を形成することができるため、所望の分光特性を有する光学フィルムや層(D1)を容易に形成することができる。
【0035】
(銅成分)
前記銅成分とは、化合物(A)を合成する際に用いる原材料である銅化合物由来の成分であり、銅イオン、銅錯体、および銅を含有する化合物などを含む概念である。
化合物(A)に含まれる銅成分は、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0036】
銅成分は、近赤外線領域の光の一部に対する好ましい吸収特性を有し得る。具体的には、二価の銅イオンのd軌道における電子の遷移によって、このエネルギーに対応する近赤外線領域の波長の光を選択的に吸収することにより、優れた近赤外線吸収特性が発揮されると考えられる。銅成分は、例えば一種類以上の配位子によって六配位の構造を有していてもよく、このような銅成分は、近赤外線領域の光の吸収能力の向上が見込める。
【0037】
銅成分の原材料としては特に限定されないが、例えば、酢酸銅、安息香酸銅、ピロリン酸銅、ステアリン酸銅などの有機酸の銅化合物およびこれら銅化合物の水和物が挙げられ、これらの1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0038】
化合物(A)中の銅成分の含有量は、近赤外線領域の光の吸収能力に優れる化合物を容易に得ることができる等の点から、銅原子の含有量として、好ましくは0.5~40質量%、より好ましくは1~20質量%、さらに好ましくは2~15質量%である。
【0039】
(ホスホン酸成分)
前記ホスホン酸成分とは、化合物(A)を合成する際に用いる原材料であるホスホン酸(ホスホン酸化合物)由来の成分である。
化合物(A)に含まれるホスホン酸成分は、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0040】
前記ホスホン酸化合物としては、例えば、下記式(a1)で表される化合物、下記式(a2)で表される化合物が挙げられる。
前記ホスホン酸化合物としては、1種または2種以上の下記式(a1)で表される化合物を用いてもよく、1種または2種以上の下記式(a2)で表される化合物を用いてもよく、1種または2種以上の下記式(a1)で表される化合物と、1種または2種以上の下記式(a2)で表される化合物とを用いてもよい。
【0041】
例えば、下記式(a1)で表される化合物を用いて得られる化合物(A)は、波長800~1200nmの範囲の光の吸収能は高いが、波長700nmおよび波長350nm近傍の光吸収能が低い傾向にある。このため、該化合物(A)を用いた光学フィルムや層(D1)を透過する光は、ヒトの視感度との一致性では少し不十分な場合がある。
一方で、下記式(a2)で表される化合物を用いて得られる化合物(A)は、波長800~1200nmの範囲の光の吸収能は比較的低いが、波長700nmおよび波長350nm近傍の光吸収能が比較的高い傾向にある。
これらの特性を補完しあう等の点からは、本組成物は、下記式(a1)で表される化合物と下記式(a2)で表される化合物とを用いた化合物(A)を含むことが好ましく、また、下記式(a1)で表される化合物を用いた化合物(A)と、下記式(a2)で表される化合物を用いた化合物(A)とを併用することが好ましい。
【0042】
【0043】
式(a1)において、R1は、アルキル基またはアルキル基における少なくとも一つの水素原子がハロゲン原子で置換されたハロゲン化アルキル基である。
化合物(A)を合成する際に用いる原材料として、前記式(a1)で表されるホスホン酸化合物を用いると、得られる化合物(A)を含む本組成物から形成された光学フィルムや層(D1)の透過帯域の長波長側が波長700nm付近となり、該光学フィルムや層(D1)が所望の透過率特性を有しやすい。
【0044】
前記式(a1)で表されるホスホン酸化合物としては、例えば、メチルホスホン酸、エチルホスホン酸、n-プロピルホスホン酸、イソプロピルホスホン酸、n-ブチルホスホン酸、イソブチルホスホン酸、sec-ブチルホスホン酸、tert-ブチルホスホン酸、n-ヘキシルホスホン酸、ブロモメチルホスホン酸が挙げられる。
【0045】
【0046】
式(a2)において、R2は、アリール基、または、アリール基における少なくとも一つの水素原子がハロゲン原子、ニトロ基およびヒドロキシ基から選ばれる少なくとも1つで置換された基である。
化合物(A)を合成する際に用いる原材料として、前記式(a2)で表されるホスホン酸化合物を用いると、得られる化合物(A)を含む本組成物から形成された光学フィルムや層(D1)が所望の透過率特性をより有しやすい。
【0047】
前記式(a2)で表されるホスホン酸化合物としては、例えば、フェニルホスホン酸、ブロモフェニルホスホン酸、ベンジルホスホン酸、フルオロフェニルホスホン酸、ヨードフェニルホスホン酸、ニトロフェニルホスホン酸、ヒドロキシフェニルホスホン酸、トリルホスホン酸、キシリルホスホン酸、ナフチルホスホン酸が挙げられる。
【0048】
化合物(A)中のホスホン酸成分の含有量は、可視光領域の光の透過能力に優れる化合物を容易に得ることができる等の点から、好ましくは1~60質量%、より好ましくは2~40質量%、さらに好ましくは4~28質量%である。
【0049】
(リン酸エステル成分)
化合物(A)は、リン酸エステル成分をさらに含有していてもよく、化合物(A)の溶媒中での凝集をより抑制することができる等の点から、リン酸エステル成分を有していることが好ましい。
化合物(A)がリン酸エステル成分を有することで、リン酸エステル成分の働きにより、本組成物および該本組成物から形成される光学フィルムや層(D1)中において、化合物(A)が適切に分散しやすい。
【0050】
前記リン酸エステル成分は、化合物(A)の分散剤として機能していてもよく、その一部が銅成分などの金属成分と反応して化合物を形成していてもよい。
例えば、リン酸エステル成分は、銅成分と一部錯体を形成していてもよい。
【0051】
前記リン酸エステル成分とは、化合物(A)を合成する際に用い得る原材料であるリン酸エステル化合物由来の成分である。
化合物(A)に含まれるリン酸エステル成分は、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0052】
前記リン酸エステル化合物としては、例えば、ポリオキシアルキル基を有する化合物が挙げられる。該リン酸エステル化合物としては、例えば、下記式(b1)で表されるリン酸ジエステル、下記式(b2)で表されるリン酸モノエステルが挙げられ、これらが任意の比率で混合されたリン酸エステルであってもよい。
【0053】
【化3】
[式中、R
21、R
22およびR
3はそれぞれ独立に、-(CH
2CH
2O)
nR
4で表される1価の官能基であり、nは、1~25の整数であり、R
4は、炭素数6~25のアルキル基であり、R
21、R
22およびR
3は、互いに同一の基であってもよく、異なる基であってもよい。]
【0054】
前記リン酸エステル化合物としては、第一工業製薬(株)製の、プライサーフ A208N(ポリオキシエチレンアルキル(C12、C13)エーテルリン酸エステル)、プライサーフ A208F(ポリオキシエチレンアルキル(C8)エーテルリン酸エステル)、プライサーフ A208B(ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸エステル)、プライサーフ A219B(ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸エステル)、プライサーフ A212C(ポリオキシエチレントリデシルエーテルリン酸エステル、プライサーフ A215C(ポリオキシエチレントリデシルエーテルリン酸エステル);日光ケミカルズ(株)製の、NIKKOL DDP-2(ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル)、NIKKOL DDP-4(ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル)、NIKKOL DDP-6(ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル)が挙げられる。
【0055】
化合物(A)がリン酸エステル成分を含む場合、化合物(A)中のリン酸エステル成分の含有量は、化合物(A)の溶媒中での凝集をより抑制することができる等の点から、好ましくは0.5~50質量%、より好ましくは1~30質量%、さらに好ましくは2~25質量%である。
【0056】
(化合物(A)の合成方法)
化合物(A)の合成方法は特に制限されないが、例えば、前記銅化合物と、前記ホスホン酸化合物と、必要により前記リン酸エステル化合物とを混合・撹拌することで合成することができる。なお、この合成の際には、溶媒(以下「第1溶媒」ともいう。)を用いることが好ましい。
前記リン酸エステル化合物を用いる場合、化合物(A)の合成方法としては、第1溶媒に溶解させた前記銅化合物と、前記リン酸エステル化合物とを混合・撹拌したa液と、第1溶媒に溶解させた前記ホスホン酸化合物のb液とを混合・撹拌することで合成することが好ましい。
前記合成の際に用いる各原材料の使用量は、化合物(A)中の、各原材料由来の成分の含有量が前記範囲となるような量で用いることが好ましい。
【0057】
前記第1溶媒としては特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、2-ブタノール、tert-ブタノール、n-ペンタノール、イソペンタノール、2-メチルブタノール、2-ペンタノール、tert-ペンタノール、3-メトキシブタノール、n-ヘキサノール、2-メチルペンタノール、1-ヘキサノール、2-ヘキサノール、2-エチルブタノール、1-ヘプタノール、2-ヘプタノール、3-ヘプタノール、n-オクタノール、2-エチルヘキサノール、2-オクタノール、n-ノニルアルコール、2,6-ジメチル-4-ヘプタノール、n-デカノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール、ジアセトンアルコールなどのアルコール類;ヘプタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどのケトン類;シクロペンタン、シクロヘキサン、キシレン、トルエンなどの炭化水素類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド類;テトラヒドロフラン(THF)、オキセタンなどの複素環式化合物類;塩化メチレン(ジクロロメタン)、クロロホルム、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、ジクロロベンゼンなどの塩素系溶媒;が挙げられる。
前記第1溶媒は、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0058】
前記第1溶媒としては、前記a液とb液とを混合・撹拌した際に、反応生成物(化合物(A))が析出するように、いわゆる該化合物(A)に対する貧溶媒を用いてもよい。このような貧溶媒を用いることで、化合物(A)の固形分を溶媒と分離して取り出し易い。
【0059】
化合物(A)は、前記a液とb液とを混合・撹拌して得られた反応生成物を、例えば、ろ過により第1溶媒から分離することで、固形状の化合物(A)として得ることができる。さらに、このように分離して得た固形状の反応生成物を、さらに、該反応生成物の貧溶媒に投入して、数分~数時間撹拌し、再析出した沈殿をろ過等により溶媒と分離してもよい。この再析出とろ過による分離とは、1回または2回以上繰り返してもよい。
なお、化合物(A)は、例えば、前記a液とb液とを混合・撹拌して得られた第1溶媒を含む反応生成物をそのまま本組成物を調製する際の原材料として用いてもよい。
【0060】
なお、化合物(A)は、ホスホン酸成分および銅成分以外の成分を含まないということではない。例えば、水や酢酸イオン(CH3COO-)なども、銅イオンに配位することが可能であるので、反応生成物には、これらなども含まれていてもよく、第1溶媒が含まれていてもよい。
【0061】
<ポリアリレートを含む重合体(B1)>
ポリアリレートを含む重合体(B1)としては特に制限されないが、例えば、二価フェノール由来の構成単位と芳香族ジカルボン酸由来の構成単位とを含む重合体が挙げられ、その好適例としては、下記式(I)で表されるポリアリレートを含む重合体(B1a)が挙げられる。
ポリアリレートを含む重合体(B1)を用いることでホスホン酸銅系錯体を含有した光学フィルターとした場合でも高温高湿条件下での耐久性が向上する。また、ポリアリレートを含む重合体(B1)を用いることで、外観および再分散性に優れる本組成物を容易に得ることもできる。
本組成物に用いる重合体(B1)は、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0062】
【0063】
なお、式(I)中、l、mおよびnは、l+m+n=100(モル%)であり、l=0~100、m=0~100、n=0~100である。
l:mは、0:100~90:10(モル比)であることが好ましい。
また、前記lは、好ましくは50~70モル%である。
lが前記範囲にあると、溶剤溶解性および耐衝撃性に優れる重合体(B1)を容易に得ることができる。
【0064】
前記二価フェノールとしては、例えば、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(以下「ビスフェノールA」ともいう。)と、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン(以下「ビスフェノールTMC」ともいう。)と、4,4-ジヒドロキシビフェニル(以下「ビフェノール」ともいう。)が挙げられる。
ビスフェノールAは、安価な化合物であり、該ビスフェノールA由来の構成単位を含むことで、機械特性、特に耐衝撃性に優れる重合体(B1a)を容易に得ることができる。
ビスフェノールTMCは、シクロヘキサン環に3個のメチル置換基を有するため、該ビスフェノールTMC由来の構成単位を含むことで、溶剤溶解性および耐熱性に優れる重合体(B1a)を容易に得ることができる。
さらに、ビフェノールは剛直な構造のため、該ビフェノール由来の構成単位を含むことで、耐熱性および熱間剛性に優れる重合体(B1a)を容易に得ることができる。
【0065】
前記二価フェノールは、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
前記二価フェノールとしては、ビスフェノールA、ビスフェノールTMCおよびビフェノールから選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましく、これらから選ばれる少なくとも2種を用いることがより好ましく、ビスフェノールA、ビスフェノールTMCおよびビフェノールを用いることが特に好ましい。
【0066】
前記芳香族ジカルボン酸としては、フタル酸が好ましい。
該フタル酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、またはこれらの混合物などが挙げられる。
これらの中でも、重合体(B1a)を合成する際に、良好な合成反応を進めることができる等の点から、イソフタル酸とテレフタル酸の混合物を用いることが好ましい。この場合、テレフタル酸とイソフタル酸との混合比率は、得られる重合体(B1a)の性能にバランスよく優れる等の点から、モル比で、テレフタル酸/イソフタル酸=8/2~2/8であることが好ましく、より好ましくは7/3~3/7である。最も好ましいのは、両者の等モル混合物である。
【0067】
また、重合体(B1)としては、芳香族ジカルボン酸由来の構成単位の一部を、本発明の効果を阻害しない範囲で、1種または2種以上の他の脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位で置き換えてもよい。このような脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、ジカルボキシメチルシクロヘキサン、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、グルタル酸、ドデカン二酸が挙げられる。
【0068】
重合体(B1)を重合する方法は特に制限されないが、界面重合法であることが好ましい。界面重合法によれば、溶液重合法と比較して反応が速く、例えば、原料としてイソフタル酸ハライドを用いる場合、該イソフタル酸ハライドの加水分解を最小限に抑えることができるため、高分子量の重合体(B1)を容易に合成することができる。また、界面重合法によれば、得られる重合体(B1)の粘度をコントロールすることができ、さらに、不純物量の少ない重合体(B1)を容易に合成することができる。
【0069】
重合体(B1)を重合する方法の具体例としては、特許第5355330号公報や特許第5749621号公報に記載の方法が挙げられる。
【0070】
重合体(B1)中のポリアリレートの含有量は、好ましくは70~100質量%、より好ましくは90~100質量%、特に好ましくは100質量%である。つまり、重合体(B1)は、ポリアリレートである(ポリアリレートのみからなる)ことが特に好ましい。
重合体(B1)中のポリアリレートの含有量が100質量%以外の場合、該重合体(B1)に含まれる重合体(B1)以外の成分としては、重合体(B1)を合成する際に用いた原料(未反応成分)や添加剤等が挙げられる。
【0071】
本組成物1中の、重合体(B1)の含有量は、好ましくは5~70質量%、より好ましくは8~60質量%、さらに好ましくは10~50質量%である。
また、本組成物2中の、重合体(B1)の含有量は、5~70質量%であり、好ましくは8~60質量%、より好ましくは10~50質量%である。
本組成物中の重合体(B1)の含有量が前記範囲にあると、外観および再分散性に優れる本組成物を容易に得るこができ、本組成物中において、化合物(A)が凝集し難く、適切に分散され、本組成物から光学フィルムや層(D1)を形成する際にも、光学フィルムや層(D1)を形成中に化合物(A)が凝集し難く、化合物(A)が十分に分散された光学フィルムや層(D1)を形成することができるため、所望の分光特性を有する光学フィルムや層(D1)を容易に形成することができる。
【0072】
本組成物1において、化合物(A)1質量部に対する重合体(B1)の含有量は、好ましくは0.5~6質量部、より好ましくは0.8~5.5質量部、さらに好ましくは1.0~5.0質量部である。
本組成物2において、化合物(A)1質量部に対する重合体(B1)の含有量は、0.5~6質量部であり、好ましくは0.8~5.5質量部、より好ましくは1.0~5.0質量部である。
化合物(A)1質量部に対する重合体(B1)の含有量が前記範囲にあると、外観および再分散性に優れる本組成物を容易に得るこができ、本組成物中において、化合物(A)が凝集し難く、適切に分散され、本組成物から光学フィルムや層(D1)を形成する際にも、光学フィルムや層(D1)を形成中に化合物(A)が凝集し難く、化合物(A)が十分に分散された光学フィルムや層(D1)を形成することができるため、所望の分光特性を有する光学フィルムや層(D1)を容易に形成することができる。
【0073】
<その他の成分>
本組成物1は、本発明の効果を損なわない範囲において、前記化合物(A)および重合体(B1)以外のその他の成分を含んでいてもよい。また、本組成物2は、本発明の効果を損なわない範囲において、前記化合物(A)、重合体(B1)および溶媒(第2溶媒)以外のその他の成分を含んでいてもよい。
該その他の成分としては、例えば、前記化合物(A)以外の色素(C)、紫外線吸収性化合物(U)、溶媒(第2溶媒)、光安定化剤、シランカップリング剤、酸化防止剤、密着促進剤、蛍光消光剤、前記重合体(B1)以外の重合体、可塑剤、フィラーが挙げられる。また、キャスト成形等により本組成物から光学フィルムや層(D1)を形成する場合などの際には、該光学フィルムや層(D1)の形成を容易にするために、レベリング剤、消泡剤、剥離促進剤等も、その他の成分として挙げられる。
これらその他の成分はそれぞれ、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0074】
これらその他の成分は、本組成物を調製する際に、化合物(A)および重合体(B1)とともに混合してもよいし、化合物(A)や重合体(B1)を合成する際に添加してもよい。
【0075】
前記重合体(B1)以外の重合体としては、例えば、環状(ポリ)オレフィン系重合体、ポリエーテル系重合体、ポリイミド系重合体、ポリエステル系重合体、ポリカーボネート系重合体、ポリアミド(アラミド)系重合体、ポリサルホン系重合体、ポリエーテルサルホン系重合体、ポリパラフェニレン系重合体、ポリアミドイミド系重合体、ポリエチレンナフタレート(PEN)系重合体、フッ素化芳香族ポリマー系重合体、(変性)アクリル系重合体、エポキシ系重合体が挙げられる。
これらの重合体の具体例としては、国際公開第2019/168090号に記載の樹脂等が挙げられる。
また、前記重合体(B1)以外の重合体としては、後述する重合体(B2-1)を用いてもよい。
本組成物において、重合体(B1)100質量部に対する重合体(B1)以外の重合体の含有量は、好ましくは50質量部以下、より好ましくは40質量部以下、さらに好ましくは5質量部以上30質量部以下である。
【0076】
〔色素(C)〕
色素(C)としては、前記化合物(A)および後述の紫外線吸収性化合物(U)以外の化合物であれば特に制限されず、本組成物の用途に応じて、従来公知の色素の中から、適宜選択すればよい。
本組成物に色素(C)を用いる場合、本組成物に用いる色素(C)は、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0077】
色素(C)としては、可視光吸収剤、(近)赤外線吸収剤が好ましく、可視光領域(例:430~580nm)の光を十分に透過し、近赤外波長領域(例:700~1100nm)の光を十分に吸収する能力を有する(近)赤外線吸収剤が好ましい。
なお、色素(C)は溶剤可溶型の色素化合物であることが好ましい。
【0078】
色素(C)としては、無機化合物、有機化合物および有機無機化合物のいずれでも特に制限はなく、例えば、染料や色素として用いられている種々公知の化合物を用いることができる。
これらの化合物としては、例えば、アゾ系化合物、アゾメチン系化合物、アゾピリドン系化合物、ピラゾロンアゾ系化合物、インドール系化合物、アントラキノン系化合物、キノフタロン系化合物、クマリン系化合物、ジピロメテン系化合物、ピロロピロール系化合物、ジケトピロロピロール系化合物、ジフェニルメタン系化合物、トリアリールメタン系化合物、キサンテン系化合物、アクリジン系化合物、ポリメチン系化合物、オキソノール系化合物、メロシアニン系化合物、アリーリデン系化合物、ベンジリデン系化合物、シアニン系化合物、スクアリリウム系化合物、クロコニウム系化合物、ペリレン系化合物、ジオキサジン系化合物、フタロシアニン系化合物、ポルフィリン系化合物、テトラアザポルフィリン系化合物、サブフタロシアニン系化合物、これらの金属キレート化合物、金属ジチオラート系化合物が挙げられる。
なお、ポリメチン系化合物は、オキソノール系化合物、メロシアニン系化合物、アリーリデン系化合物、ベンジリデン系化合物、シアニン系化合物、スクアリリウム系化合物、クロコニウム系化合物を除くポリメチン化合物であり、フタロシアニン系化合物はポルフィリン系化合物、テトラアザポルフィリン系化合物を除くフタロシアニン系化合物である。
【0079】
これらの中でも、アゾメチン系化合物、アゾピリドン系化合物、ピラゾロンアゾ系化合物、インドール系化合物、アントラキノン系化合物、クマリン系化合物、ジピロメテン系化合物、トリアリールメタン系化合物、キサンテン系化合物、ポリメチン系化合物、メロシアニン系化合物、ベンジリデン系化合物、シアニン系化合物、スクアリリウム系化合物、クロコニウム系化合物、ペリレン系化合物、ジオキサジン系化合物、フタロシアニン系化合物、ポルフィリン系化合物、テトラアザポルフィリン系化合物、サブフタロシアニン系化合物、および、これらの金属キレート化合物から選ばれる少なくとも1種が好ましく、
アゾメチン系化合物、アゾピリドン系化合物、ピラゾロンアゾ系化合物、インドール系化合物、クマリン系化合物、ジピロメテン系化合物、トリアリールメタン系化合物、キサンテン系化合物、ポリメチン系化合物、メロシアニン系化合物、シアニン系化合物、スクアリリウム系化合物、クロコニウム系化合物、フタロシアニン系化合物、ポルフィリン系化合物、テトラアザポルフィリン系化合物、サブフタロシアニン系化合物、および、これらの金属キレート化合物から選ばれる少なくとも1種がさらに好ましい。
【0080】
具体的な色素の構造については、例えば、「新版染料便覧」(有機合成化学協会編;丸善、1970)、「色素ハンドブック」(大河原他編;講談社、1986)などに記載されている。
【0081】
本組成物が色素(C)を含有する場合、その含有量は、重合体(B1)100質量部に対し、好ましくは0.05~10質量部、より好ましくは0.1~5質量部、さらに好ましくは0.2~2質量部である。
色素(C)の含有量が前記範囲にあると、該色素(C)の有する光吸収特性が十分に発揮され、所望の光学特性を有する光学フィルムや層(D1)を容易に形成することができる。
【0082】
〔紫外線吸収性化合物(U)〕
本組成物は、(近)紫外線領域の少なくとも一部の光を吸収する紫外線吸収性化合物(U)を含んでいてもよい。
本組成物が該化合物(U)を含むことで、重合体(B1)や化合物(A)の劣化を抑制することができる。
本組成物に化合物(U)を用いる場合、本組成物に用いる化合物(U)は、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0083】
化合物(U)は、所望の波長範囲の光を吸収すること、特定の溶媒に対し相溶性を有すること、本組成物中において良好に分散すること、および耐環境性に優れていること等の観点から選択することが好ましい。また、紫外線の吸収幅を広くするために、最大吸収波長の異なる化合物(U)を2種以上用いてもよい。
【0084】
化合物(U)の例としては、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸系化合物、シアノアクリレート系化合物およびトリアジン系化合物が挙げられる。
化合物(U)の具体例としては、特開2012-18395公報の[0258]~[0259]段落に記載された化合物、特開2007-72163号公報に記載された化合物が挙げられる。
【0085】
化合物(U)としては、市販品を用いてもよく、該市販品としては、例えば、Tinuvin PS、Tinuvin 99-2、Tinuvin 234、Tinuvin 326、Tinuvin 329、Tinuvin 900、Tinuvin 928、Tinuvin 400、Tinuvin 405、Tinuvin 460、Tinuvin 477、Tinuvin 479、Tinuvin 1577(いずれもBASF社製)が挙げられる。
【0086】
本組成物が化合物(U)を含有する場合、その含有量は、重合体(B1)100質量部に対し、好ましくは0.1~5質量部である。
化合物(U)の含有量が前記範囲にあると、該化合物(U)の有する光吸収特性が十分に発揮され、所望の光学特性を有する光学フィルムや層(D1)を容易に形成することができる。
【0087】
〔溶媒(第2溶媒)〕
本組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、第2溶媒を含有してもよく、第2溶媒を含有していることが好ましい。
本組成物1および本組成物2は、1種または2種以上の第2溶媒を含有することが好ましい。
本組成物に第2溶媒を用いる場合、本組成物に用いる第2溶媒は、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0088】
なお、本組成物は、化合物(A)を合成する際に用い得る第1溶媒を含んでいてもよい。
本組成物が該第1溶媒を含む場合、その含有量は、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下である。
【0089】
前記第2溶媒としては特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、2-ブタノール、tert-ブタノール、n-ペンタノール、イソペンタノール、2-メチルブタノール、2-ペンタノール、tert-ペンタノール、3-メトキシブタノール、n-ヘキサノール、2-メチルペンタノール、1-ヘキサノール、2-ヘキサノール、2-エチルブタノール、1-ヘプタノール、2-ヘプタノール、3-ヘプタノール、n-オクタノール、2-エチルヘキサノール、2-オクタノール、n-ノニルアルコール、2,6-ジメチル-4-ヘプタノール、n-デカノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール、ジアセトンアルコールなどのアルコール類;アセトン、ヘプタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどのケトン類;ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、キシレン、トルエンなどの炭化水素類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド類;テトラヒドロフラン(THF)、オキセタンなどの複素環式化合物類;塩化メチレン(ジクロロメタン)、クロロホルム、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、ジクロロベンゼンなどの塩素系溶媒;ジエチルエーテルなどのエーテル類;ギ酸エチル、酢酸メチルなどのエステル類;が挙げられる。
【0090】
第2溶媒は、重合体(B1)の特性や、本組成物の安定性、光学フィルムや層(D1)を形成する際の工程の安定性、光学フィルムや層(D1)に求められる特性などを考慮して決定してもよい。
光学フィルムや層(D1)を形成する際に、溶液流延法などを用いる場合、第2溶媒としては、低沸点の溶媒(例:塩素系溶媒)が好ましい。
【0091】
溶液流延法によって光学フィルムや層(D1)を形成する場合、流延後に溶媒を除去することで光学フィルムや層(D1)を形成することから、沸点の比較的低い溶媒を第2溶媒として選択することが好ましく、この場合沸点が115℃以下の溶媒が好ましく、80℃以下の溶媒がより好ましく、70℃以下の溶媒がさらに好ましく、60℃以下の溶媒が特に好ましい。
また、第2溶媒として、沸点の高い溶媒を用いた場合、光学フィルムや層(D1)を形成する際に、溶媒が光学フィルムや層(D1)内に過剰に残存する可能性がある。このような残存溶媒の多い光学フィルムや層(D1)をカメラモジュールに用いると、一部の溶媒が蒸発して電子部品や光学部品に悪影響をもたらす可能性がある。
一方で、第2溶媒の沸点が30℃未満であると、本組成物を調製する際に該溶媒が蒸発して粘度が上昇したり、ポットライフが著しく短くなることがある。
【0092】
以上のことから、第2溶媒の沸点は、好ましくは30~115℃、より好ましくは30~80℃、さらに好ましくは35~70℃、特に好ましくは35~60℃である。
このような第2溶媒としては、例えば、アセトン(56℃)、クロロホルム(61℃)、塩化メチレン(40℃)、ジエチルエーテル(35℃)、ギ酸エチル(52℃)、ヘキサン(69℃)、メタノール(65℃)、酢酸メチル(57℃)、ペンタン(36℃)、テトラヒドロフラン(66℃)、メチルエチルケトン(80℃)、トルエン(111℃)が好ましい。
【0093】
本組成物が第2溶媒を含む場合、その含有量は、好ましくは15~85質量%、より好ましくは20~70質量%である。
【0094】
〔光安定化剤〕
本組成物は、紫外線を含む光の作用によって、重合体(B1)や化合物(A)が劣化することを抑制する等の目的で、光安定化剤を含んでいてもよい。
本組成物に光安定化剤を用いる場合、本組成物に用いる光安定化剤は、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0095】
光安定化剤としては、例えば、ヒンダードアミン系光安定化剤(HALS)が挙げられる。
ヒンダードアミン系光安定化剤としては、例えば、(株)ADEKA製のアデカスタブシリーズが挙げられる。
【0096】
本組成物が光安定化剤を含む場合、その含有量は、重合体(B1)や化合物(A)の劣化を十分に抑制できる等の点から、重合体(B1)100質量部に対して、好ましくは0.001~20質量部、より好ましくは0.01~10質量部、さらに好ましくは0.1~5質量部である。
【0097】
〔シランカップリング剤〕
本組成物は、シランカップリング剤を含んでいてもよい。
シランカップリング剤を用いることで、本組成物中の化合物(A)と、重合体(B1)との結びつきを強くし、耐候性などを向上させることできると考えられる。また、例えば、被着体(例:ガラスなどの無機質系支持体)上に本組成物から光学フィルムや層(D1)を形成する場合、該支持体と光学フィルムや層(D1)との剥離が起こることを抑制することができる。
本組成物にシランカップリング剤を用いる場合、本組成物に用いるシランカップリング剤は、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0098】
シランカップリング剤としては、例えば、アルコキシシランモノマーまたはその加水分解物が挙げられる。
該アルコキシシランモノマーとしては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-N’-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アニリノプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、N-2-(N-ビニルベンジルアミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシランが挙げられる。
【0099】
本組成物がシランカップリング剤を含む場合、その含有量は、耐候性に優れる本組成物を容易に得ることができ、被着体との密着性に優れる光学フィルムや層(D1)を容易に形成することができる等の点から、重合体(B1)100質量部に対して、好ましくは0.1~20質量部、より好ましくは1~10質量部である。
【0100】
<本組成物の調製方法>
本組成物は、化合物(A)、重合体(B1)、および、必要により前記その他の成分を混合することで調製することができる。
この際の混合順等は特に制限されないが、重合体(B1)を適量の第2溶媒に溶解して得られた溶液と、前記のようにして得られた化合物(A)とを、混合・撹拌することが好ましい。この際には、例えば、室温で5~60分間程度撹拌して、得られた組成物中に凝集や塊が視認できない程度に、撹拌することが好ましい。
【0101】
なお、得られる本組成物中の化合物(A)の濃度を調整する目的も含め、前記のようにして得られた組成物から、第2溶媒を蒸留等によって一定程度除去してもよい。該蒸留は、除去対象の第2溶媒の沸点やその近傍、または該沸点以上の温度で行うことが好ましいが、例えば85℃を超える温度で蒸留をすると、化合物(A)に熱的なダメージが生じる可能性がある。従って、該蒸留を行う場合には、85℃以下の温度で行うことが好ましい。一方で、選択される第2溶媒の沸点の関係上、実質的な沸点を低下させる目的で、減圧を伴う蒸留(減圧蒸留)を行ってもよい。
【0102】
<本組成物の光学特性>
本組成物は、化合物(A)が分散した液状の場合、一定の透過スペクトルを有していてもよく、透過スペクトルに関する特性である下記要件(i)~(iv)を満たすことが好ましい。本組成物の透過スペクトルに関する特性を測定する際は、例えば、本組成物を透過する光の物理的な光路長が1±0.25mmとなるような石英製の透明セルに入れて行う。ここで、物理的光路長とは、媒質の屈折率を考慮しない長さである。
なお、本組成物の透過スペクトルに関する特性は、波長800nmにおける透過率が10±1%となるように、必要により溶媒量を調整(溶媒の除去または添加)した測定用サンプルを用い、温度が25±5℃の環境下で行った時の特性であり、具体的には、下記実施例における「組成物の透過スペクトルの測定」に記載の方法で測定される。
【0103】
要件(i):波長800~1100nmの範囲における透過率の平均値が10%以下である。
該透過率の平均値は、好ましくは8%以下、より好ましくは6%以下である。
波長800~1100nmの範囲における透過率の平均値が前記範囲にある本組成物を用いることで、十分な赤外線の遮蔽性を有する光学フィルムや層(D1)を容易に形成することができ、該光学フィルムや層(D1)を有する撮像装置等は、撮像素子に到達する光を、一般的に赤外線域の光を感知しないヒトの視感度に近い光とすることが可能である。
【0104】
化合物(A)を含む本組成物を用いて、層(D1)等を形成する場合、その層(D1)等の厚みによって、得られる透過スペクトルが変化する。例えば、波長800~1100nmの範囲内の透過率をより低下させたい時は、層(D1)等の厚みを厚くし、波長460~580nmの可視光領域の一部の透過率を増加させたい時は、層(D1)等の厚みを薄くする、などによって、求める透過率の特性に応じて、厚みを調整してもよい。
【0105】
なお、本発明において、波長A~Bnmの透過率の平均値(平均透過率)は、Anm以上Bnm以下の、1nm刻みの各波長における透過率を測定し、その透過率の合計を、測定した透過率の数(波長範囲、B-A+1)で除した値である。
【0106】
要件(ii):波長460~580nmの範囲における透過率の平均値が80%以上である。
波長460~580nmの範囲における透過率の平均値が前記範囲にある本組成物を用いることで、可視光領域の光の透過性に優れる光学フィルムや層(D1)を容易に形成することができ、該光学フィルムや層(D1)を有する撮像装置等は、より明るい像を容易に得ることができる。
【0107】
要件(iii):波長680~780nmの範囲に、透過率が50%となる第1カットオフ波長を有する。
第1カットオフ波長が前記範囲にある本組成物を用いることで、赤外線域に属する光の遮蔽性に優れる光学フィルムや層(D1)を容易に形成することができ、該光学フィルムや層(D1)を有する撮像装置等は、撮像素子に到達する光を、一般的に赤外線域の光を感知しないヒトの視感度に近い光とすることが可能である。
【0108】
要件(iv):波長320~380nmの範囲に、透過率が50%となる第2カットオフ波長を有する。
第2カットオフ波長が前記範囲にある本組成物を用いることで、紫外線域に属する光の遮蔽性に優れる光学フィルムや層(D1)を容易に形成することができ、該光学フィルムや層(D1)を有する撮像装置等は、撮像素子に達する光を、一般的に紫外線域の光を感知しないヒトの視感度に近いものとすることができ、また、撮像素子に達する光に波長の短い光が含まれることによる、パープルフリンジなどの色にじみが生じる影響を低減することができる。
【0109】
本組成物は、前記要件(i)~(iv)に加え、下記要件(v)~(vii)を満たしていてもよく、下記要件(v)~(vii)を満たすことが好ましい。
【0110】
要件(v):波長900~1100nmの範囲における透過率の標準偏差が0.5%以下である。
該標準偏差は、好ましくは0.3%以下である。
化合物(A)の濃度や量を調整して、波長800~1200nmの範囲の光の吸収性を高めようとする場合、波長900~1100nmにおける透過率のばらつきが小さく、透過スペクトルがよりフラットであることの方が、この範囲の光の吸収性を容易に低減することができる。
前記標準偏差が前記範囲を超える場合は、例えば波長800~1200nmの範囲の光の透過率を充分に低減させた場合であっても、一部の波長範囲の透過率の低下が十分ではない場合が生じる可能性がある。
【0111】
なお、本発明において、波長A~Bnmの透過率の標準偏差は、Anm以上Bnm以下の、1nm刻みの各波長における透過率を測定した時の、これらの透過率の標準偏差である。
【0112】
要件(vi):波長300~1200nmの範囲において、透過率が50%以上である帯域波長の幅が350~420nmである。
要件(vi)は、いわゆる透過帯域の幅を特定し、該波長の幅が前記範囲にあると、可視光域等の透過帯域が十分長くなり、透過帯域の一部が遮蔽されることが起こり難く、また、透過帯域以外の光を十分に遮蔽し易くなる傾向にある。
【0113】
要件(vii):波長1100~1200nmの範囲における透過率の平均値が10%以下である。
該透過率の平均値は、好ましくは8%以下である。
化合物(A)を含む組成物の場合、波長1100nm以上の範囲の光の透過率が高くなる傾向にあるが、本組成物によれば、この要件(vii)を容易に満たすことができ、この要件(vii)を満たす本組成物は、例えば、波長800~1100nmの範囲の光の透過率を充分に低減し、かつ、波長1100nm以上の透過率を低く抑えることができる傾向にある。
【0114】
≪光学フィルムおよび層(D1)≫
本発明に係る光学フィルムおよび層(D1)は、本組成物から形成される。該光学フィルムは、本組成物から従来公知の方法により製膜して得られる膜状のものを指し、層(D1)と同義である。そのため、以下の層(D1)に関する記載は、光学フィルムにも適用することができる。以下では、光学フィルムおよび層(D1)を「層(D1)等」ともいう。
【0115】
層(D1)等を、例えば、撮像装置やカメラモジュール内に搭載する用途に用いる場合、層(D1)等の厚みが薄いほど撮像装置やカメラモジュールの低背位化に有利である。一方、層(D1)等の厚みが過剰に薄いと、例えば、剛性や機械的強度が著しく低下するため、層(D1)等のハンドリングが困難になる場合がある。
これらのことを考慮すると、層(D1)等の厚みは、好ましくは230μm以下、より好ましくは35~220μm、さらに好ましくは50~210μmである。
【0116】
層(D1)等は、230μm以下の厚みとした時に、層(D1)等の主面(面積の最も大きい面)に対し、入射角0°の光を入射させた際の透過スペクトルにおいて、以下の特性(I)~(V)を有していてもよく、以下の特性(I)~(V)を有していることが好ましい。
ここで、層(D1)等の透過スペクトルに関する特性、特に下記特性(I)~(VIII)は、具体的には、下記実施例における「層(D1-A1)の透過スペクトルの測定」に記載の方法で得られる。
【0117】
特性(I):波長460~580nmの範囲における透過率の平均値が80%以上であり、好ましくは85%以上である。
特性(I)を満たす層(D1)等を有する撮像装置などは、該層(D1)等を透過して、撮像素子等に到達する可視光域の光の光束が大きくなり、より明るい像を容易に形成することができる。
【0118】
特性(II):波長800~1100nmの範囲における透過率の平均値が5%以下であり、好ましくは3%以下である。
特性(II)を満たす層(D1)等は、近赤外線域の光を十分に遮蔽することができ、該層(D1)等を有する撮像装置などは、撮像素子等に到達する光を、一般的に近赤外線域の光を感知しないヒトの視感度に近いものとすることができる。
【0119】
特性(III):波長680~730nmの範囲に、透過率が50%となる第3カットオフ波長を有する。該第3カットオフ波長は、好ましくは680~720nmの範囲にある。
第3カットオフ波長が前記範囲にある層(D1)等は、近赤外線域の光の遮蔽性に優れ、該層(D1)等を有する撮像装置などは、撮像素子等に到達する光を、一般的に近赤外線域の光を感知しないヒトの視感度に近いものとすることができる。
また、第3カットオフ波長と第1カットオフ波長との差の絶対値は、好ましくは10~60nm、より好ましくは15~55nmである。
第3カットオフ波長と第1カットオフ波長との差の絶対値が前記範囲にある層(D1)等は、時間経過とともに、著しい化合物(A)の凝集がなく、シェルフライフに優れる。
【0120】
特性(IV):波長340~400nmの範囲に、透過率が50%となる第4カットオフ波長を有する。該第4カットオフ波長は、好ましくは350~400nmの範囲、より好ましくは360~400nmの範囲にある。
特性(IV)を満たす層(D1)等は、紫外線域の光の遮蔽性に優れ、該層(D1)等を有する撮像装置などは、撮像素子等に到達する光を、一般的に紫外線域の光を感知しないヒトの視感度に近いものとすることができ、また、撮像素子等に達する光に波長の短い光が含まれることによる、パープルフリンジなどの色にじみが生じる影響を低減することができる。
【0121】
特性(V):波長950nmにおける透過率の最大値が1%以下であり、好ましくは0.5%以下、より好ましくは0.2%以下である。
特性(V)を満たす層(D1)等は、波長900~1100nmにおける近赤外線域の光を、該近赤外線による悪影響が生じないレベルにまで遮蔽可能である。
【0122】
さらに、層(D1)等は、230μm以下の厚みとした時に、層(D1)等の主面に対し、入射角0°の光を入射させた際の透過スペクトルにおいて、以下の特性(VI)~(VIII)を有していてもよく、以下の特性(VI)~(VIII)を有していることが好ましい。これらの特性は、赤外線領域の光の遮蔽性を表す指標であり、層(D1)等の評価指標として重視される場合がある。
【0123】
特性(VI):波長800nmにおける透過率が3%以下
特性(VII):波長1000nmにおける透過率が0.5%以下
特性(VIII):波長1100nmにおける透過率が0.5%以下
【0124】
<層(D1)等の形成方法>
層(D1)等の形成方法は特に制限されず、本組成物を用いる以外は、従来公知の方法で形成することができる。
【0125】
単層の層(D1)等を形成する方法としては、例えば、溶融成形、流延法(キャスティング法)、押出成形法、カレンダー法が挙げられる。これらの中でも、該層(D1)等を光学部品に用いる場合には、光学部品に求められる平滑性や低ヘイズ性、量産性を考慮して、また、本組成物に含まれる化合物(A)の熱的性質等の点から、溶融成形、流延法が好ましい。
【0126】
・溶融成形
前記溶融成形としては、具体的には、本組成物を溶融混練りして得られたペレットを溶融成形する方法;本組成物を溶融成形する方法;溶剤を含む液状の本組成物から溶剤を除去して得られたペレットを溶融成形する方法などが挙げられる。溶融成形方法としては、射出成形、溶融押出成形またはブロー成形などを挙げることができる。
【0127】
・流延法
前記流延法では、例えば、平滑なガラス板や金属製ベルト等の支持体の主面上に、液状の本組成物を、ディスペンサやダイなどを用いて流延させ、次いで、乾燥させることで塗膜を形成し、その後、該塗膜を支持体から剥離することで、層(D1)等を形成することができる。
また、剥離した層(D1)等を必要により、ポストキュアしてもよい。
【0128】
前記本組成物を流延させる支持体の主面には、例えば、剥離促進剤(例:フッ素化合物を含む表面処理剤)を塗布しておき、得られる塗膜を支持体から剥離しやすくしてもよい。
【0129】
なお、所定の厚みの層(D1)等を形成するために、例えば、任意の形状のフレーム(枠)を、前記支持体の主面上に配置しておき、その枠内に、所定量の本組成物を流延することで、形成される層(D1)等の厚みをコントロールすることもできる。
【0130】
また、量産性に適した層(D1)等の形成方法としては、例えば、複数のローラー等によって連続的に移動する平滑な金属製のベルト等の支持体上に、スリットダイ等によって、溶媒を含む本組成物を塗布し、支持体上で該溶媒の少なくとも一部を蒸発させて、塗布した本組成物を乾燥、固化させることで塗膜を形成し、その後、該塗膜を支持体から剥離することで、層(D1)等を形成することができる。得られた層(D1)等は、必要により、例えば、オーブン内を通過させて溶媒を完全に近い程度に蒸発させてもよい(ポストキュア)。
なお、得られた層(D1)等は、必要により、延伸させてもよく、巻き取りローラー等で巻き取ってもよい。
【0131】
≪光学フィルター≫
本発明に係る光学フィルター(以下「本フィルター」ともいう。)は、前記層(D1)を有するフィルターであり、所望の光学特性を有する光学フィルターを容易に得ることができる等の点から、本フィルターは、さらに誘電体多層膜を有することが好ましい。なお、以下では、本フィルターを構成する誘電体多層膜以外の層(膜)を「基材(i)」ともいう。
本フィルターに含まれる層(D1)は1層でもよく、本フィルターは、同一または異なる層(D1)を2層以上有していてもよい。
【0132】
本フィルターは、本発明の効果がより発揮される等の点から、可視光領域の光を透過し、近赤外線領域の光を遮蔽する、所謂、近赤外線カットフィルターであるか、または、可視光領域の光および近赤外線領域の一部の光を透過し、透過させたい一部の近赤外線領域の光以外の近赤外線領域の光を遮蔽する、所謂、デュアルバンドパスフィルターであることが好ましく、近赤外線カットフィルターであることがより好ましい。
【0133】
本フィルターを、例えば、撮像装置やカメラモジュール内に搭載する用途に用いる場合、本フィルターの厚みが薄いほど撮像装置やカメラモジュールの低背位化に有利である。一方、本フィルターの厚みが過剰に薄いと、例えば、剛性や機械的強度が著しく低下する場合がある。
これらのことを考慮すると、本フィルターの厚みは、好ましくは60~300μm、より好ましくは70~280μm、さらに好ましくは80~250μmである。
【0134】
<基材(i)>
基材(i)は、層(D1)を有すれば特に制限されず、単層であっても、多層であってもよい。
また、基材(i)は、オーバーコート層および機能膜から選ばれる少なくとも1種を、1層または2層以上有してもよい。
【0135】
前記基材(i)は、前記層(D1)として、前記化合物(A)、前記重合体(B1)および前記色素(C)を含む層(D1-1)を含有する基材(i-1)であることが好ましく、または、
前記基材(i)は、前記層(D1)として、前記色素(C)を含まない層(D1-2)と、前記化合物(A)以外の色素(C)を含み、かつ、前記化合物(A)を含まない層(D2)とを含有する基材(i-2)であることが好ましい。
【0136】
前記基材(i-1)は、2層以上の層(D1-1)を有していてもよく、さらに、前記層(D1-2)および後述の層(D2)から選ばれる少なくとも1種の層を1層または2層以上有していてもよい。
また、前記基材(i-2)は、2層以上の層(D1-2)を有していてもよく、2層以上の層(D2)を有していてもよい。
前記層(D1-1)および(D1-2)は、前記色素(C)を含むまたは含まないことが限定された以外は、前記層(D1)の欄に記載の層と同様の層である。
【0137】
前記基材(i)は、ガラス支持体上に層(D1)が積層されていてもよく、さらに、層(D2)が積層されていることが好ましい。このような基材(i)において、ガラス支持体、層(D1)、層(D2)の積層の順番は特に問わず、また、ガラス支持体、層(D1)および層(D2)はそれぞれ、2層以上であってもよい。
前記ガラス支持体としては特に制限されないが、フツリン酸塩系ガラス、近赤外線吸収ガラス(例:リン酸塩系ガラス等にCuO等を添加した吸収型のガラス)、ソーダライムガラス、ホウケイ酸ガラス、無アルカリガラス、石英ガラス、サファイヤガラス等からなるガラス支持体が挙げられる。なお、前記「リン酸塩系ガラス」には、ガラスの骨格の一部がSiO2で構成されるケイリン酸塩ガラスも含まれるものとする。
【0138】
前記基材(i)の厚みは、所望の用途に応じて適宜選択することができ、特に制限されないが、得られる光学フィルターの入射角依存性を低減するように適宜選択することが望ましく、好ましくは20~230μm、さらに好ましくは35~220μm、特に好ましくは50~210μmである。
基材(i)の厚みが前記範囲にあると、該基材(i)を用いた光学フィルターを薄型化および軽量化することができ、固体撮像装置等の様々な用途に好適に用いることができる。
【0139】
本フィルターの用途にもよるが、基材(i)は、以下の(α)~(ε)を満たすことが好ましい。なお、以下の(α)~(ε)は、基材(i)の主面に対し、0°の方向から入射した光を測定した時の透過率に関する。
【0140】
(α):波長350~450nm、好ましくは375~435nm、より好ましくは400~420nmにおいて、透過率が50%未満から50%超となる波長が存在する。
【0141】
(β):波長430~570nm(可視領域)における、透過率の平均値が70%以上、好ましくは72.5%以上、より好ましくは75%以上である。
該透過率の平均値は高い方が好ましいため、その上限は特に制限されず、100%であってもよい。
【0142】
(γ):波長600~700nmにおいて、透過率が50%超から50%未満となる波長(IR50)が存在する。
IR50は、好ましくは610nm以上、より好ましくは615nm以上、さらに好ましくは620nm以上、特に好ましくは630nm以上、好ましくは700nm未満、より好ましくは690nm以下、さらに好ましくは690nm未満、特に好ましくは685nm以下の範囲に存在することが望ましい。
このような波長が存在する場合、幅広く、急峻な近赤外線吸収と高い可視光透過率を両立した基材(i)を容易に得ることができ、不要な近赤外線を選択的に効率よくカットすることができるとともに、基材(i)上に誘電体多層膜を製膜した際、可視光波長~近赤外線波長領域付近の光学特性の入射角依存性を低減することができ、ゴーストや色シェーディングが低減された良好なカメラ画像を容易に得ることができる。
【0143】
(δ):波長700~800nmにおいて、透過率の平均値が、1%以下、好ましくは0.75%以下、より好ましくは0.5%以下ある。
【0144】
(ε):波長800~1100nmにおいて、透過率の最大値が、40%以下、好ましくは35%以下、より好ましくは30%以下である。
【0145】
〔層(D2)〕
前記層(D2)は、前記色素(C)を含み、かつ、前記化合物(A)を含まない層であれば特に制限されないが、前記色素(C)と、重合体(B2-1)、および、光または熱によって硬化する硬化性化合物(B2-2)から選ばれる少なくとも1種とを含有する組成物(D2)から形成された層(D2)であることが好ましい。
層(D2)を有する本フィルターは、色素(C)の吸収特性により、化合物(A)を含み、かつ、色素(C)を含まない本フィルターよりも急峻なカットオフ特性を達成でき、本フィルターに入射する光の入射角度による分光特性の変化が少ない傾向にある。
【0146】
層(D2)を、例えば、撮像装置やカメラモジュール内に搭載する用途に用いる場合、層(D2)の厚みが薄いほど撮像装置やカメラモジュールの低背位化に有利である。一方、層(D2)の厚みが過剰に薄いと、目標とする分光特性を達成するために、色素(C)の層(D2)中の濃度を高くせざるを得ない場合があり、例えば、色素(C)の析出や保存安定性が課題となる場合がある。
これらのことを考慮すると、層(D2)の厚みは、好ましくは1~120μm、より好ましくは2~110μm、さらに好ましくは3~100μmである。
【0147】
[色素(C)]
該色素(C)は、前記本組成物の欄に記載した色素(C)と同様の色素である。
組成物(D2)に用いる色素(C)は、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0148】
組成物(D2)中の色素(C)の含有量は、重合体(B2-1)および硬化性化合物(B2-2)の合計100質量部に対し、好ましくは0.05~10質量部、より好ましくは0.1~5質量部、さらに好ましくは0.2~2質量部である。
色素(C)の含有量が前記範囲にあると、該色素(C)の有する光吸収特性が十分に発揮され、形成される層(D2)を有する本フィルターは、所望の光学特性を有する。
【0149】
[重合体(B2-1)]
重合体(B2-1)は、後述の硬化性化合物(B2-2)以外の重合体であれば特に限定されない。
組成物(D2)に重合体(B2-1)を用いる場合、用いる重合体(B2-1)は、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0150】
重合体(B2-1)としては、例えば、熱安定性や層(D2)の成形性を確保し、かつ、100℃以上程度の蒸着温度で行う高温蒸着で誘電体多層膜を形成し得る層を容易に得ることができる等の点から、ガラス転移温度(Tg)が、好ましくは110~380℃、より好ましくは110~370℃、特に好ましくは120~360℃である重合体が挙げられる。
また、重合体(B2-1)のTgが140℃以上であると、誘電体多層膜をより高温で蒸着形成し得る層が得られるため、特に好ましい。
【0151】
重合体(B2-1)としては、当該重合体からなる厚さ0.1mmの板の全光線透過率(JIS K 7375:2008)が、好ましくは75~95%、さらに好ましくは78~95%、特に好ましくは80~95%となる重合体を用いることが望ましい。
全光線透過率が前記範囲にある重合体(B2-1)を用いると、透明性に優れる層(D2)や光学フィルターを容易に得ることができる。
【0152】
重合体(B2-1)のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定される、ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは15,000~350,000、より好ましくは30,000~250,000であり、数平均分子量(Mn)は、好ましくは10,000~150,000、より好ましくは20,000~100,000である。
【0153】
重合体(B2-1)としては、例えば、環状(ポリ)オレフィン系重合体、ポリエーテル系重合体、ポリイミド系重合体、ポリエステル系重合体、ポリカーボネート系重合体、ポリアミド(アラミド)系重合体、ポリサルホン系重合体、ポリエーテルサルホン系重合体、ポリパラフェニレン系重合体、ポリアミドイミド系重合体、ポリエチレンナフタレート(PEN)系重合体、フッ素化芳香族ポリマー系重合体、(変性)アクリル系重合体、エポキシ系重合体が挙げられる。
これらの重合体の具体例としては、国際公開第2019/168090号に記載の樹脂等が挙げられる。
また、重合体(B2-1)としては、前記重合体(B1)を用いてもよい。
【0154】
組成物(D2)が重合体(B2-1)を含有する場合、その含有量は、組成物(D2)の粘度(塗工性)等の点から、好ましくは5~30質量%、より好ましくは10~25質量%である。
【0155】
[硬化性化合物(B2-2)]
硬化性化合物(B2-2)は、光または熱によって硬化する化合物であれば特に限定されない。
組成物(D2)に化合物(B2-2)を用いる場合、用いる化合物(B2-2)は、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0156】
化合物(B2-2)としては、例えば、エポキシ系化合物、アリルエステル系硬化性化合物、シルセスキオキサン系光硬化性化合物、アクリル系光硬化性化合物、アクリル系熱硬化性化合物、ビニル系光硬化性化合物が挙げられる。これらの中でも、エポキシ系化合物、シルセスキオキサン系光硬化性化合物、アクリル系光硬化性化合物、アクリル系熱硬化性化合物が好ましい。
【0157】
化合物(B2-2)としては、該化合物(B2-2)を含む組成物(D2)から得られる厚さ0.1mmの層(D2)の全光線透過率(JIS K 7375:2008)が、好ましくは75~95%、さらに好ましくは78~95%、特に好ましくは80~95%となるような化合物であることが望ましい。
【0158】
化合物(B2-2)としては、例えば、熱安定性および層(D2)の成形性を確保し、かつ、100℃以上程度の蒸着温度で行う高温蒸着で誘電体多層膜を形成し得る層を容易に得ることができる等の点から、ガラス転移温度(Tg)が、好ましくは110~380℃、より好ましくは110~370℃、さらに好ましくは120~360℃である層(D2)を形成することができる化合物が望ましい。
また、Tgが140℃以上である層(D2)を形成することができる化合物を用いると、高温での成形や処理が可能な層(D2)が得られるため、より好ましい。
【0159】
(エポキシ系化合物)
前記エポキシ系化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸オキシラニル(シクロ)アルキルエステル、α-アルキルアクリル酸オキシラニル(シクロ)アルキルエステルおよび不飽和結合を有するグリシジルエーテル化合物等のオキシラニル基を有する不飽和化合物;オキセタニル基を有する(メタ)アクリル酸エステル等のオキセタニル基を有する不飽和化合物が挙げられる。
【0160】
(メタ)アクリル酸オキシラニル(シクロ)アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸2-メチルグリシジル、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、(メタ)アクリル酸3,4-エポキシブチル、(メタ)アクリル酸6,7-エポキシヘプチル、(メタ)アクリル酸3,4-エポキシシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸3,4-エポキシシクロヘキシルメチルが挙げられる。
α-アルキルアクリル酸オキシラニル(シクロ)アルキルエステルとしては、例えば、α-エチルアクリル酸グリシジル、α-n-プロピルアクリル酸グリシジル、α-n-ブチルアクリル酸グリシジル、α-エチルアクリル酸6,7-エポキシヘプチル、α-エチルアクリル酸3,4-エポキシシクロヘキシルが挙げられる。
不飽和結合を有するグリシジルエーテル化合物としては、例えば、o-ビニルベンジルグリシジルエーテル、m-ビニルベンジルグリシジルエーテル、p-ビニルベンジルグリシジルエーテルが挙げられる。
オキセタニル基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、3-((メタ)アクリロイルオキシメチル)オキセタン、3-((メタ)アクリロイルオキシメチル)-3-エチルオキセタン、3-((メタ)アクリロイルオキシメチル)-2-メチルオキセタン、3-((メタ)アクリロイルオキシエチル)-3-エチルオキセタン、2-エチル-3-((メタ)アクリロイルオキシエチル)オキセタン、3-メチル-3-(メタ)アクリロイルオキシメチルオキセタン、3-エチル-3-(メタ)アクリロイルオキシメチルオキセタンが挙げられる。
【0161】
これらの中でも、特に、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸2-メチルグリシジル、メタクリル酸-3,4-エポキシシクロヘキシル、メタクリル酸-3,4-エポキシシクロヘキシルメチル、3-メタクリロイルオキシメチル-3-エチルオキセタン、3-メチル-3-メタクリロイルオキシメチルオキセタンまたは3-エチル-3-メタクリロイルオキシメチルオキセタンが、重合性等の点から好ましい。
【0162】
(シルセスキオキサン系光硬化性化合物)
前記シルセスキオキサン系光硬化性化合物としては、下記式(1)で表される化合物が好ましい。
[RSiO3/2]n (1)
(式(1)中、Rは、(メタ)アクリロイル基、グリシジル基、オキセタニル基またはビニル基のいずれか一つを有する有機官能基であり、nは8、10、12または14である。)
【0163】
また、前記シルセスキオキサン系光硬化性化合物としては、下記式(2)で表されるケイ素化合物を、有機極性溶媒および塩基性触媒存在下で加水分解反応させると共に一部を縮合させ、得られた加水分解生成物をさらに非極性溶媒および塩基性触媒存在下で再縮合させてなる化合物も好ましい。
RSiX3 (2)
(式(2)中、Rは、(メタ)アクリロイル基、グリシジル基、オキセタニル基またはビニル基のいずれか一つを有する有機官能基であり、Xは加水分解性基である。)
【0164】
式(1)および(2)における(メタ)アクリロイル基、グリシジル基、オキセタニル基またはビニル基のいずれか一つを有する有機官能基の一例としては、下記式(3)、(4)、(5)または(6)で表される有機官能基が挙げられる。
【0165】
【化5】
(式(3)および(4)中、mは1~3の整数であり、式(3)中、R
1は水素原子またはメチル基である。)
【0166】
【化6】
(式(6)中、R
5、R
6、R
7、R
8およびR
9は、相互に独立に、水素原子、フッ素原子、炭素数1~4のアルキル基、フェニル基または炭素数1~4のパーフルオロアルキル基であり、nは1~6の整数である。)
【0167】
(アクリル系光硬化性化合物)
前記アクリル系光硬化性化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレート類;これらの水酸基へのエチレンオキシドまたはプロピレンオキシド付加物であるポリ(メタ)アクリレート類;分子内に2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有するオリゴエステル(メタ)アクリレート類;オリゴエーテル(メタ)アクリレート類;オリゴウレタン(メタ)アクリレート類;オリゴエポキシ(メタ)アクリレート類が挙げられる。
【0168】
これらの中でも、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレートが好ましい。
【0169】
前記アクリル系光硬化性化合物の市販品としては、例えば、東亞合成(株)製の、アロニックス M-400、M-408、M-450、M-305、M-309、M-310、M-315、M-320、M-350、M-360、M-208、M-210、M-215、M-220、M-225、M-233、M-240、M-245、M-260、M-270、M-1100、M-1200、M-1210、M-1310、M-1600、M-221、M-203、TO-924、TO-1270、TO-1231、TO-595、TO-756、TO-1343、TO-902、TO-904、TO-905、TO-1330;日本化薬(株)製の、KAYARAD D-310、D-330、DPHA、DPCA-20、DPCA-30、DPCA-60、DPCA-120、DN-0075、DN-2475、SR-295、SR-355、SR-399E、SR-494、SR-9041、SR-368、SR-415、SR-444、SR-454、SR-492、SR-499、SR-502、SR-9020、SR-9035、SR-111、SR-212、SR-213、SR-230、SR-259、SR-268、SR-272、SR-344、SR-349、SR-601、SR-602、SR-610、SR-9003、PET-30、T-1420、GPO-303、TC-120S、HDDA、NPGDA、TPGDA、PEG400DA、MANDA、HX-220、HX-620、R-551、R-712、R-167、R-526、R-551、R-712、R-604、R-684、TMPTA、THE-330、TPA-320、TPA-330、KS-HDDA、KS-TPGDA、KS-TMPTA;共栄社化学(株)製の、ライトアクリレート PE-4A、DPE-6A、DTMP-4A;(株)レゾナック製の、FA-511AS、FA-512AS;新中村化学工業(株)製の、NKエステル A-TMM-3LM-N、A-DPH;が挙げられる。
【0170】
化合物(B2-2)としてアクリル系光硬化性化合物を用いる場合、該アクリル系光硬化性化合物とともに、通常、光重合開始剤を用いる。
化合物(B2-2)としてアクリル系光硬化性化合物を用いる場合、アクリル系光硬化性化合物と光重合開始剤とを含む組成物(D2)を用いてもよく、アクリル系光硬化性化合物と光重合開始剤とを反応・硬化させ、得られた硬化物を含む組成物(D2)を用いてもよい。
【0171】
前記光重合開始剤としては、光照射により分解してラジカルを発生してアクリル系光硬化性化合物の重合を開始することができる化合物であることが好ましく、具体例としては、アセトフェノン、アセトフェノンベンジルケタール、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、キサントン、フルオレノン、ベンズアルデヒド、フルオレン、アントラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3-メチルアセトフェノン、4-クロロベンゾフェノン、4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、チオキサントン、ジエチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルフォスフィンオキシド、オリゴ(2-ヒドロキシ-2-メチル-1-(4-(1-メチルビニル)フェニル)プロパノン)が挙げられる。
【0172】
前記光重合開始剤の市販品としては、例えば、BASF社製の、Irgacure 184、369、651、500、819、907、784、2959、CGI1700、CGI1750、CGI1850、CG24-61、ダロキュア1116、1173、ルシリンTPO;UCB社製の、ユベクリルP36;フラテツリ・ランベルティ社製の、エザキュアー KIP150、KIP65LT、KIP100F、KT37、KT55、KTO46、KIP75/B;が挙げられる。
【0173】
光重合開始剤の使用量は、アクリル系光硬化性化合物を十分に硬化させることができる等の点から、アクリル系光硬化性化合物100質量部に対し、好ましくは0.5~15質量%、より好ましくは1~8質量%である。
【0174】
(アクリル系熱硬化性化合物)
前記アクリル系熱硬化性化合物としては特に制限されないが、不飽和カルボン酸および不飽和カルボン酸無水物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物(a1)と、オキシラニル基含有不飽和化合物およびオキセタニル基含有不飽和化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物(a2)とを用いて得られた共重合体(a12)であることが好ましい。このような共重合体(a12)は化合物(a1)および(a2)を含有してなる不飽和混合物を溶媒中、重合開始剤の存在下でラジカル共重合することによって製造することができる。
【0175】
化合物(a1)は、ラジカル重合性を有する不飽和カルボン酸および/または不飽和カルボン酸無水物であり、例えば、モノカルボン酸、ジカルボン酸、ジカルボン酸の無水物、多価カルボン酸のモノ〔(メタ)アクリロイルオキシアルキル〕エステル、両末端にカルボキシ基と水酸基とを有するポリマーのモノ(メタ)アクリレート、カルボキシ基を有する多環式化合物およびその無水物が挙げられる。
【0176】
オキシラニル基を有する不飽和化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジル、α-エチル(メタ)アクリル酸グリシジル、α-n-プロピル(メタ)アクリル酸グリシジル、α-n-ブチル(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸-3,4-エポキシブチル、(メタ)アクリル酸-6,7-エポキシヘプチル、α-エチル(メタ)アクリル酸-6,7-エポキシヘプチル、(メタ)アクリル酸-3,4-エポキシシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸-3,4-エポキシシクロヘキシルメチル、o-ビニルベンジルグリシジルエーテル、m-ビニルベンジルグリシジルエーテル、p-ビニルベンジルグリシジルエーテルが挙げられる。これらの中でも、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸-6,7-エポキシヘプチル、o-ビニルベンジルグリシジルエーテル、m-ビニルベンジルグリシジルエーテル、p-ビニルベンジルグリシジルエーテル、メタクリル酸-3,4-エポキシシクロヘキシル、メタクリル酸-3,4-エポキシシクロヘキシルメチルなどが共重合反応性および得られる層(D2)の耐熱性、耐薬性を高める等の点から好ましい。
オキセタニル基含有不飽和化合物としては、前記オキシラニル基を有する不飽和化合物のオキシラニル基をオキセタニル基に置換した化合物等が挙げられる。
【0177】
共重合体(a12)における、化合物(a1)から誘導される構成単位の質量に対する、化合物(a2)から誘導される構成単位の質量の比((a2)/(a1))は、好ましくは1以上、より好ましくは1.1以上、さらに好ましくは1.2以上である。
(a2)/(a1)が前記範囲にあると、低温保管安定性が高く、長期の保管が可能であり、耐熱性、耐薬性などに優れる組成物(D2)を容易に得ることができる。
【0178】
化合物(a2)から誘導される構成単位の含有量は、共重合体(a12)を構成する全構成単位100質量%に対し、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上である。
該構成単位の含有量が前記範囲にあると、低温保管安定性が高く、長期の保管が可能であり、耐熱性、耐薬性などに優れる組成物(D2)を容易に得ることができる。
【0179】
共重合体(a12)は、化合物(a1)および(a2)以外に、これらと共重合可能な他の不飽和化合物(a3)から誘導される構成単位を有していてもよい。
【0180】
前記化合物(a3)としては、ラジカル重合性を有する不飽和化合物であれば特に制限されないが、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸環状アルキルエステル、(メタ)アクリル酸アリールエステル、不飽和ジカルボン酸ジエステル、水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル、ビシクロ不飽和化合物、マレイミド化合物、不飽和芳香族化合物、共役ジエン、テトラヒドロフラン骨格、フラン骨格、テトラヒドロピラン骨格、ピラン骨格および(ポリ)アルキレングリコール骨格から選ばれる少なくとも1種の骨格を有する不飽和化合物、フェノール性水酸基を有する不飽和化合物が挙げられる。
【0181】
化合物(a1)から誘導される構成単位の含有量は、耐熱性、耐薬性に優れる層(D2)を容易に形成することができる等の点から、化合物(a1)、(a2)および(a3)から誘導される構成単位の合計100質量%に対し、好ましくは5~40質量%、より好ましくは5~25質量%である。
【0182】
化合物(a2)から誘導される構成単位の含有量は、耐熱性、耐薬性に優れる層(D2)を容易に形成することができる等の点から、化合物(a1)、(a2)および(a3)から誘導される構成単位の合計100質量%に対し、好ましくは10~80質量%、より好ましくは20~60質量%である。
【0183】
化合物(a3)として脂環構造を有する不飽和化合物を用いる場合、該不飽和化合物から誘導される構成単位の含有量は、耐熱性により優れる層(D2)を容易に形成することができる等の点から、化合物(a1)、(a2)および(a3)から誘導される構成単位の合計100質量%に対し、好ましくは10~80質量%、より好ましくは20~60質量%である。
【0184】
アクリル系熱硬化性化合物のポリスチレン換算の重量平均分子量Mwは、好ましくは2×103~1×105、より好ましくは5×103~5×104である。
また、アクリル系熱硬化性化合物の分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは5.0以下、より好ましくは3.0以下である。
【0185】
アクリル系熱硬化性化合物は、例えば、化合物(a1)、化合物(a2)および化合物(a3)を、適当な溶媒中、ラジカル重合開始剤の存在下で重合することによって合成することができる。
【0186】
[添加剤]
組成物(D2)には、本発明の効果を損なわない範囲において、前記色素(C)、重合体(B2-1)および化合物(B2-2)以外の添加剤を含んでいてもよい。
該添加剤としては、例えば、前記紫外線吸収性化合物(U)、溶媒、前記光安定化剤、前記シランカップリング剤、酸化防止剤、密着促進剤、蛍光消光剤、可塑剤、フィラーが挙げられる。また、キャスト成形等により組成物(D2)から層(D2)を形成する場合には、該層(D2)の形成を容易にするために、レベリング剤、消泡剤、剥離促進剤等を添加剤として用いることもできる。
これら添加剤はそれぞれ、1種を用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0187】
これら添加剤は、組成物(D2)を調製する際に、色素(C)、重合体(B2-1)および化合物(B2-2)とともに混合してもよいし、重合体(B2-1)や化合物(B2-2)を合成する際に添加してもよい。
【0188】
(溶媒)
組成物(D2)は、色素(C)と、重合体(B2-1)および化合物(B2-2)から選ばれる少なくとも1種とを、1種または2種以上の溶媒中で混合することで調製することが好ましい。
【0189】
前記溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどのケトン類;
酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類;
イソプロピルアルコール、エチルアルコールなどのアルコール類;
ベンゼン、トルエン、キシレン、メトキシベンゼン、1,2-ジメトキベンゼンなどの芳香族炭化水素類;
フェノール、パラクロロフェノールなどのフェノール類;
クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素類;
ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル等のジエチレングリコールアルキルエーテル類;
プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル等のプロピレングリコールモノアルキルエーテル類;
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチエーテルアセテート、プロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;
2-メトキシプロピオン酸メチル、2-メトキシプロピオン酸エチル、2-メトキシプロピオン酸n-プロピル、2-メトキシプロピオン酸n-ブチル、2-エトキシプロピオン酸メチル、2-エトキシプロピオン酸エチル、2-エトキシプロピオン酸n-プロピル、2-エトキシプロピオン酸n-ブチル、2-n-プロポキシプロピオン酸メチル、2-n-プロポキシプロピオン酸エチル、2-n-プロポキシプロピオン酸n-プロピル、2-n-プロポキシプロピオン酸n-ブチル、2-n-ブトキシプロピオン酸メチル、2-n-ブトキシプロピオン酸エチル、2-n-ブトキシプロピオン酸n-プロピル、2-n-ブトキシプロピオン酸n-ブチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-メトキシプロピオン酸n-プロピル、3-メトキシプロピオン酸n-ブチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸n-プロピル、3-エトキシプロピオン酸n-ブチル、3-n-プロポキシプロピオン酸メチル、3-n-プロポキシプロピオン酸エチル、3-n-プロポキシプロピオン酸n-プロピル、3-n-プロポキシプロピオン酸n-ブチル、3-n-ブトキシプロピオン酸メチル、3-n-ブトキシプロピオン酸エチル、3-n-ブトキシプロピオン酸n-プロピル、3-n-ブトキシプロピオン酸n-ブチル等のアルコキシプロピオン酸アルキル類;が挙げられる。
【0190】
組成物(D2)として、アクリル系光硬化性化合物を用いる場合、該組成物(D2)の粘度が、通常0.1~50,000mPa・秒/25℃、好ましくは0.5~10,000mPa・秒/25℃となるように溶媒を用いることが好ましい。
【0191】
(レベリング剤)
前記レベリング剤としては特に制限されないが、例えば、シリコーン系、フッ素系のレベリング剤が挙げられる。
レベリング剤を用いる場合、用いるレベリング剤は、1種でもよく、2種以上でもよい。
シリコーン系レベリング剤としては、例えば、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルアルキルシロキサン、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、(メタ)アクリル基を有するポリシロキサンが挙げられる。
レベリング剤を用いる場合、その使用量は、組成物(D2)の固形分100質量%に対し、好ましくは10質量%以下、より好ましくは3質量%以下である。
【0192】
(酸化防止剤)
前記酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系、硫黄系、リン系の各酸化防止剤が挙げられる。
酸化防止剤を用いる場合、用いる酸化防止剤は、1種でもよく、2種以上でもよい。
酸化防止剤を用いる場合、その使用量は、組成物(D2)の固形分100質量%に対し、好ましくは10質量%以下、より好ましくは3質量%以下である。
【0193】
[層(D2)の形成方法]
層(D2)の形成方法は特に制限されず、組成物(D2)を用いる以外は、従来公知の方法で形成することができる。
組成物(D2)として、前記重合体(B2-1)等の重合体を用いる場合、前記層(D1)の形成方法と同様の方法で層(D2)を形成することができる。
【0194】
組成物(D2)として、例えば、前記アクリル系光硬化性化合物等の光硬化性化合物を用いる場合、光、好ましくは紫外線または電子線を照射して、該組成物(D2)を硬化させることで、層(D2)を形成することができる。
例えば、紫外線を照射する場合、紫外線の照射光量は、好ましくは0.01~10J/cm2、より好ましくは0.1~2J/cm2である。また、例えば、電子線を照射する場合、電子線の照射条件としては、加速電圧が、好ましくは10~300kV、電子密度が、好ましくは0.02~0.30mA/cm2、電子線照射量が、好ましくは1~10Mradである条件が挙げられる。
なお、溶媒を含む光硬化性の組成物(D2)を用いる場合、例えば、0~200℃で溶媒(揮発成分)を乾燥させた後、光を照射することが好ましい。
【0195】
〔基材(i)の製造方法〕
前記基材(i)の製造方法としては特に制限されず、従来公知の方法で製造することができる。
前記基材(i)が、層(D1)の単層である場合、該基材(i)は、前記層(D1)の形成方法と同様の方法で製造することができる。
前記基材(i)が、例えば、層(D1)および(D2)を有する場合、例えば、以下の積層方法1~3を含む方法で製造することができる。
【0196】
・積層方法1
予め、層(D1)および層(D2)を、前記と同様の方法で、それぞれ独立に形成し、形成した層(D1)と層(D2)とを、直接貼合する方法、または接着層を介して貼合する方法。
この場合、層(D2)は、重合体(B2-1)を用いた組成物(D2)から形成される層であることが好ましい。
直接貼合する方法としては、層(D1)および/または層(D2)の貼合面に、例えば、層(D1)および層(D2)に含まれる重合体の双方に溶解性を有する溶剤を塗布して、両層を貼合し、乾燥させる方法が挙げられる。
前記接着層としては、層(D1)と層(D2)とを接着することができれば特に限定されないが、例えば、熱可塑性樹脂層、光硬化性樹脂層、熱硬化性樹脂層が挙げられる。以下の接着層も同様の層が挙げられる。
これらの中でも、特に、熱可塑性樹脂層を介して接着させる方法が、貼合時の硬化収縮が少ない等の点で好ましい。熱可塑性樹脂層を介して接着させる際は、例えば、層(D1)および層(D2)に含まれる重合体の双方に溶解性を有する溶剤に熱可塑性樹脂を溶解させることで得た樹脂溶液を、層(D1)および/または層(D2)上に塗布して、両層を貼合し、乾燥させる方法が挙げられる。
【0197】
・積層方法2
予め、層(D1)を、前記と同様の方法で形成した後、形成した層(D1)上に、組成物(D2)を塗布し、塗布した組成物(D2)に熱をかけることで、層(D2)を形成する方法。
この場合、層(D2)は、アクリル系熱硬化性化合物等の熱硬化性化合物を用いた組成物(D2)から形成される層であることが好ましい。
この方法2の際には、層(D2)を塗布する前に、層(D1)上に、中間層を設けてもよく、層(D1)表面に対し、所望の表面処理(例:コロナ処理やプラズマ処理等の表面処理)をしてもよい。
【0198】
前記塗布の方法は特に制限されず、公知の方法を採用することができるが、例えば、スプレー法、ロールコート法、回転塗布法(スピンコート法)、スリットダイ塗布法(スリット塗布法)、バー塗布法、印刷法(例:インクジェット印刷)が挙げられる。以下の塗布の方法も同様の方法が挙げられる。
【0199】
前記熱をかける際の加熱条件は、用いる組成物(D2)や層(D1)に応じて適宜設定すればよいが、例えば、120~200℃の加熱温度で、5分~1時間加熱する条件が挙げられる。
【0200】
前記中間層としては、例えば、熱可塑性樹脂層、光硬化性樹脂層、熱硬化性樹脂層が挙げられる。以下の中間層も同様の層が挙げられる。
【0201】
・積層方法3
予め、層(D1)を、前記と同様の方法で形成した後、形成した層(D1)上に、組成物(D2)を塗布し、塗布した組成物(D2)に光を照射することで、層(D2)を形成する方法。
この場合、層(D2)は、アクリル系光硬化性化合物等の光硬化性化合物を用いた組成物(D2)から形成される層であることが好ましい。
この方法2の際には、層(D2)を塗布する前に、層(D1)上に、中間層を設けてもよく、層(D1)表面に対し、所望の表面処理をしてもよい。
【0202】
前記光を照射する際の照射条件は、例えば、前記層(D2)の形成方法の欄に記載の紫外線や電子線を照射する条件と同様の条件が挙げられる。
【0203】
なお、前記積層方法1~3において、層(D1)および/または層(D2)は2層以上あってもよい。2層以上である層(D1)の層間や2層以上である層(D2)の層間には、前記と同様に接着層や中間層を設けてもよい。
また、積層方法2または3において、層(D1)と層(D2)の形成する順番が逆、つまり、予め層(D2)を形成した後、形成した層(D2)上に層(D1)を形成してもよい。
【0204】
〔オーバーコート層および機能膜〕
前記基材(i)は、本発明の効果を損なわない範囲において、オーバーコート層や機能膜(例:反射防止膜、ハードコート膜、帯電防止膜)を有していてもよい。
【0205】
前記オーバーコート層や機能膜の厚みは、好ましくは0.1~20μm、さらに好ましくは0.5~10μm、特に好ましくは0.7~5μmである。
【0206】
前記オーバーコート層や機能膜を形成する材料は、層(D1)や層(D2)で用いられる重合体を主成分として含有する組成物であってもよい。ただし、前記オーバーコート層や機能膜には、化合物(A)および色素(C)を含まないものとする。
また、前記オーバーコート層や機能膜は、前記積層方法1のように貼合することで形成してもよく、前記積層方法2または3のように塗布することで形成してもよい。
【0207】
オーバーコート層や機能膜を有する基材(i)を製造する方法としては特に制限されず、従来公知の方法で製造することができるが、例えば、反射防止剤、オーバーコート剤、中間層剤および帯電防止剤等から選ばれる少なくとも1種のコーティング剤を、バーコーター等を用い、該オーバーコート層や機能膜を形成したい被着体に塗布した後、紫外線照射等により硬化する方法が挙げられる。
なお、前記塗布する前には、形成されるオーバーコート層や機能膜の密着性を上げる目的で、被着体にコロナ処理やプラズマ処理等の表面処理をしてもよい。
【0208】
前記コーティング剤としては、例えば、紫外線(UV)/電子線(EB)硬化型化合物や熱硬化型化合物を含むコーティング剤が挙げられる。
これらの化合物の具体例としては、ビニル系、ウレタン系、ウレタンアクリレート系、アクリレート系、エポキシ系、エポキシアクリレート系化合物が挙げられる。
【0209】
また、前記コーティング剤は、重合開始剤を含んでいてもよい。
該重合開始剤としては、公知の光重合開始剤または熱重合開始剤を用いることができ、光重合開始剤と熱重合開始剤を併用してもよい。該重合開始剤は、1種を用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
重合開始剤の配合割合は、コーティング剤の全量を100質量%とした場合、好ましくは0.1~10質量%、より好ましくは0.5~10質量%、さらに好ましくは1~5質量%である。重合開始剤の配合割合が前記範囲にあると、硬化特性および取り扱い性に優れるコーティング剤を容易に得ることができ、所望の硬度を有するオーバーコート層や機能膜を容易に得ることができる。
【0210】
さらに、前記コーティング剤には、有機溶剤を加えてもよく、該有機溶剤としては、公知の溶剤を使用することができる。
該有機溶剤の具体例としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、オクタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、γ-ブチロラクトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエステル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のエーテル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミド類;が挙げられる。
これら有機溶剤は、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0211】
〔誘電体多層膜〕
前記誘電体多層膜としては、高屈折率材料層と低屈折率材料層とを交互に積層した積層体が挙げられる。
本フィルターの用途にもよるが、本フィルターを近赤外線の少なくとも一部を遮蔽するフィルターとする場合、該誘電体多層膜は、近赤外線を反射する能力を備える積層体であることが好ましい。
【0212】
誘電体多層膜は、前記基材(i)の片面に設けてもよいし、両面に設けてもよい。基材(i)の片面に誘電体多層膜を設ける場合、製造コストや製造容易性に優れる。また、基材(i)の両面に誘電体多層膜を設ける場合、高い強度を有し、反りやねじれが生じにくい光学フィルターを容易に得ることができる。本フィルターを固体撮像素子用途等に使用する場合、反りやねじれが小さいフィルターが好ましいことから、誘電体多層膜を前記基材(i)の両面に設けることが好ましい。
【0213】
前記高屈折率材料層を構成する材料としては、屈折率が1.7以上の材料を用いることができ、屈折率が通常は1.7~2.5の材料が選択される。このような材料としては、例えば、酸化チタン、酸化ジルコニウム、五酸化タンタル、五酸化ニオブ、酸化ランタン、酸化イットリウム、酸化亜鉛、硫化亜鉛または酸化インジウム等を主成分とし、酸化錫および/または酸化セリウム等を少量(例えば、主成分に対して0~10質量%)含有させたものが挙げられる。
【0214】
前記低屈折率材料層を構成する材料としては、屈折率が1.6以下の材料を用いることができ、屈折率が通常は1.2~1.6の材料が選択される。このような材料としては、例えば、シリカ、アルミナ、フッ化ランタン、フッ化マグネシウムおよび六フッ化アルミニウムナトリウムが挙げられる。
【0215】
高屈折率材料層と低屈折率材料層とを積層する方法については、これらの材料層を積層した誘電体多層膜が形成される限り特に制限はない。例えば、基材(i)上に、直接、CVD法、スパッタ法、真空蒸着法、イオンアシスト蒸着法またはイオンプレーティング法等により、高屈折率材料層と低屈折率材料層とを交互に積層した誘電体多層膜を形成することができる。
【0216】
誘電体多層膜を、近赤外線を反射する能力を備える誘電体多層膜とする場合、高屈折率材料層および低屈折率材料層の各層の厚さは、通常、遮断しようとする近赤外線波長をλ(nm)とすると、0.1λ~0.5λの厚さが好ましい。λ(nm)の値としては、例えば700~1400nm、好ましくは750~1300nmである。厚さがこの範囲であると、屈折率(n)と膜厚(d)との積(n×d)がλ/4で算出される光学膜厚(nd)と、高屈折率材料層および低屈折率材料層の各層の厚さとがほぼ同じ値となって、反射・屈折の光学特性の関係から、特定波長の遮断・透過を容易にコントロールできる傾向にある。
【0217】
誘電体多層膜における高屈折率材料層と低屈折率材料層との合計の積層数は、本フィルター全体として6~70層であることが好ましく、10~60層であることがより好ましい。各層の厚み、本フィルター全体としての誘電体多層膜の厚みや合計の積層数が前記範囲にあると、十分な製造マージンを確保できる上に、本フィルターの反りや誘電体多層膜のクラックを低減することができる。
【0218】
基材(i)の吸収特性に合わせて、高屈折率材料層および低屈折率材料層を構成する材料種、高屈折率材料層および低屈折率材料層の各層の厚さ、積層の順番、積層数を適切に選択すると、可視光領域に十分な透過率を確保した上で近赤外線領域に十分な光線カット特性を有し、かつ、斜め方向から近赤外線が入射した際の反射率を低減した本フィルターを容易に得ることができる。
【0219】
<本フィルターの用途>
本フィルターは、層(D1)を有するため、高い可視光透過率および低い近赤外線透過率を有し、かつ、高温高湿環境下においても優れた耐久性を有する。
【0220】
このような本フィルターを用いることで、RGBバランスが良好で、ゴーストや色シェーディングが低減された良好なカメラ画像を得ることができる。
したがって、本フィルターは、カメラモジュールのCCDやCMOSイメージセンサー等の固体撮像素子の視感度補正用として有用である。特に、本フィルターは、デジタルスチルカメラ、スマートフォン用カメラ、携帯電話用カメラ、デジタルビデオカメラ、ウェアラブルデバイス用カメラ、PCカメラ、監視カメラ、自動車用カメラ、テレビ、カーナビゲーション、携帯情報端末、ビデオゲーム機、携帯ゲーム機、指紋認証システム、デジタルミュージックプレーヤー等に有用である。さらに、本フィルターは、自動車や建物等のガラス板等に装着される熱線カットフィルターなどとしても有用である。
【0221】
≪光学素子、固体撮像装置およびカメラモジュール≫
本発明に係る光学素子、固体撮像装置およびカメラモジュールは、本フィルターを有すれば特に制限されず、従来公知の構成とすればよい。
該固体撮像装置の好適例としては、カメラモジュールが挙げられる。
ここで、固体撮像装置およびカメラモジュールは、CCDやCMOSイメージセンサー等の固体撮像素子を備えたイメージセンサーであり、具体的にはデジタルスチルカメラ、スマートフォン用カメラ、携帯電話用カメラ、ウェアラブルデバイス用カメラ、デジタルビデオカメラ等の用途に用いることができる。
【0222】
前記光学素子、固体撮像装置およびカメラモジュールの構成としては、
図1のようにレンズを有する構成でもよいし、
図2のようにレンズを有さない構成でもよい。
本フィルターを、光学素子、固体撮像装置やモジュールに用いる場合の各部材の配置の一例を
図1に示す。この
図1では、本フィルター1は、レンズ32、撮像素子(イメージセンサー)24と共に構成される。光学フィルター1は、
図1(A)のようにレンズ32の前方(レンズ32の撮像素子24とは反対側)に位置しても、
図1(B)のようにレンズ32の後方(レンズ32の撮像素子24側)に位置してもよい。
また、本フィルターは、
図2(A)のようにフレネルゾーンプレートやフレネルレンズ、メタレンズなどのレンズとしての役割を有する光学素子33を用いたレンズレス固体撮像装置に用いてもよい。
【実施例0223】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されない。
【0224】
<重合体B1-1~B1-4>
下記表1に記載の数値(モル比)で原料である二価フェノール成分および芳香族ジカルボン酸ハライドを用い、特許第5355330号公報、および、特許第5749621号公報の記載と同様の手順にて重合体を得た。
【0225】
【0226】
表1中の二価フェノール成分、および芳香族ジカルボン酸ハライドとしては、それぞれ以下の製品を用いた。
ビスフェノールA:[2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン](三井化学(株)製、「ビスフェノールA」)
ビスフェノールTMC:[ビスフェノール-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン](本州化学工業(株)製、「BisP-TMC」)
ビフェノール:[4,4-ジヒドロキシビフェニル](本州化学工業(株)製「ビフェノール」)
イソフタル酸クロライド:(イハラニッケイ化学工業(株)製、「イソフタロイルクロライド」)
【0227】
<重合体B2-1-1>
下記式(a)で表される8-メチル-8-メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン(以下「DNM」ともいう。)100g、1-ヘキセン(分子量調節剤)18gおよびトルエン(開環重合反応用溶媒)300gを、窒素置換した反応容器に仕込み、得られた溶液を80℃に加熱した。次いで、反応容器内の溶液に、重合触媒として、トリエチルアルミニウムのトルエン溶液(0.6mol/リットル)0.2gと、メタノール変性の六塩化タングステンのトルエン溶液(濃度0.025mol/リットル)0.9gとを添加し、得られた溶液を80℃で3時間加熱撹拌することにより開環重合反応させて開環重合体溶液を得た。この重合反応における重合転化率は97%であった。
【0228】
【0229】
得られた開環重合体溶液1,000gをオートクレーブに仕込み、この開環重合体溶液に、RuHCl(CO)[(C6H5)3]3を0.12g添加し、水素ガス圧100kg/cm2、反応温度165℃の条件下で、3時間加熱撹拌して水素添加反応を行った。得られた反応溶液(水素添加重合体溶液)を冷却した後、水素ガスを放圧した。得られた反応溶液を大量のメタノール中に注いで凝固物を分離回収し、該凝固物を乾燥することで、水素添加重合体を得た。得られた重合体は、数平均分子量(Mn)が32,000、重量平均分子量(Mw)が137,000であり、ガラス転移温度(Tg)が165℃であった。これを重合体B2-1-1とする。
【0230】
<重合体B2-1-2>
日本ゼオン(株)製のZEONOR(Mn:18,000、Mw:38,000)を重合体B2-1-2とした。
【0231】
<重合体B2-1-3>
3Lの4つ口フラスコに、2,6-ジフルオロベンゾニトリル35.12g(0.253mol)、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン87.60g(0.250mol)、炭酸カリウム41.46g(0.300mol)、N,N-ジメチルアセトアミド443gおよびトルエン111gを添加した。続いて、4つ口フラスコに、温度計、撹拌機、窒素導入管付き三方コック、ディーンスターク管および冷却管を取り付けた。
【0232】
次いで、フラスコ内を窒素置換した後、得られた溶液を140℃で3時間反応させ、生成する水をディーンスターク管から随時取り除いた。水の生成が認められなくなったところで、徐々に温度を160℃まで上昇させ、そのままの温度で6時間反応させた。
【0233】
室温(25℃)まで冷却後、生成した塩をろ紙で除去し、ろ液をメタノールに投じて再沈殿させ、ろ別によりろ物(残渣)を単離した。得られたろ物を60℃で一晩真空乾燥し、白色粉末(以下「重合体B2-1-3」ともいう。)を得た(収率95%)。得られた重合体B2-1-3は、数平均分子量(Mn)が75,000、重量平均分子量(Mw)が188,000であり、ガラス転移温度(Tg)が285℃であった。
【0234】
<重合体B2-1-4>
温度計、撹拌器、窒素導入管、側管付き滴下ロート、ディーンスターク管および冷却管を備えた500mLの5つ口フラスコに、窒素気流下、1,4-ビス(4-アミノ-α,α-ジメチルベンジル)ベンゼン27.66g(0.08モル)および4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル7.38g(0.02モル)を入れて、γ-ブチロラクトン68.65gおよびN,N-ジメチルアセトアミド17.16gに溶解させた。得られた溶液を、氷水バスを用いて5℃に冷却し、同温に保ちながら1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物22.62g(0.1モル)およびイミド化触媒としてトリエチルアミン0.50g(0.005モル)を一括添加した。添加終了後、180℃に昇温し、随時留出液を留去させながら、6時間還流させた。反応終了後、内温が100℃になるまで空冷した後、N,N-ジメチルアセトアミド143.6gを加えて希釈し、撹拌しながら冷却し、固形分濃度20質量%のポリイミド樹脂溶液264.16gを得た。このポリイミド樹脂溶液の一部を1Lのメタノール中に注ぎ入れてポリイミドを沈殿させた。ろ別したポリイミドをメタノールで洗浄した後、100℃の真空乾燥機中で24時間乾燥させて白色粉末(以下「重合体B2-1-4」ともいう。)を得た。得られた重合体B2-1-4のIRスペクトルを測定したところ、イミド基に特有の1704cm-1、1770cm-1の吸収が見られた。重合体B2-1-4は、ガラス転移温度(Tg)が310℃であり、対数粘度を測定したところ、0.87であった。
【0235】
なお、重合体B2-1-4の対数粘度は、下記の方法により測定した。
ポリイミド樹脂溶液の一部を無水メタノールに投入してポリイミド樹脂を析出させ、ろ過して未反応単量体から分離した。80℃で12時間真空乾燥して得られたポリイミド0.1gをN-メチル-2-ピロリドン20mLに溶解し、キャノン-フェンスケ粘度計を使用して30℃における対数粘度(μ)を下記式により求めた。
【0236】
μ={ln(ts/t0)}/C
t0:溶媒の流下時間
ts:希薄高分子溶液の流下時間
C:0.5g/dL
【0237】
<重合体B2-1-5>
温度計、撹拌機、および還流冷却器を備えた反応器にイオン交換水14863質量部、48質量%水酸化ナトリウム水溶液5772質量部を加え、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン2148質量部およびナトリウムハイドロサルファイト4質量部を溶解し、塩化メチレン8518質量部を加えた後、撹拌しながら23~27℃にてホスゲン1000質量部を60分間かけて吹き込んだ。ホスゲン吹き込み終了後、p-tert-ブチルフェノール38質量部を加え、さらにトリエチルアミン2質量部を添加して20~27℃で40分間撹拌して反応を終了した。生成物を含む塩化メチレン層を希塩酸および純水にて洗浄後、塩化メチレンを蒸発させ、下記式(7)で表される繰り返し単位を有するポリカーボネートを得た。得られたポリカーボネートの粘度平均分子量は21,000であり、ガラス転移温度(Tg)は174℃であった。得られたポリカーボネートを重合体B2-1-5とする。
【0238】
【0239】
<重合体B2-2-1>
冷却管と撹拌機とを備えたフラスコに、下記不飽和混合物の質量100質量部に対し、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)が7質量部、および、ジエチレングリコールエチルメチルエーテルが200質量部となるように予め仕込んだ。
そこに、メタクリル酸20質量%、メタクリル酸グリシジル30質量%、およびメタクリル酸メチル50質量%を含む不飽和混合物を100質量部投入し、窒素置換した後、ゆるやかに撹拌を始めた。溶液の温度を70℃に上昇させ、この温度を4時間保持し、重合を終結させた。
その後、反応生成溶液を多量のメタノールに滴下し、反応物を凝固させた。この凝固物を水洗後、テトラヒドロフランに再溶解し、多量のメタノールで再度凝固させた。この再溶解-凝固操作を計3回行った後、得られた凝固物を60℃で48時間真空乾燥し、目的とする重合体B2-2-1を得た。
【0240】
[実施例A1]
酢酸銅一水和物(以下「CAM」ともいう。関東化学(株)製)4.88gと、第1溶媒としてエタノール(関東化学(株)製、電子工業用ELグレード)195.12gとを混合して、3時間撹拌を行い、酢酸銅溶液を得た。次に、得られた酢酸銅溶液に、リン酸エステル化合物(第一工業製薬(株)製、製品名:プライサーフ A208N)を2.572g加えて30分間撹拌し、酢酸銅-リン酸エステル溶液であるa1液を得た。
次に、n-ブチルホスホン酸(以下「BPA」ともいう。)2.886gと、40gのエタノールとを加えて10分間撹拌し、ホスホン酸溶液であるb1液を得た。
【0241】
a1液を撹拌しながら該a1液にb1液を加え、室温で15分間撹拌して反応させて、リン酸エステル-ホスホン酸-銅溶液であるc1液を得た。c1液には、反応により生成したと考えられる固形物が沈殿していたことを目視で確認できた。反応生成物は、ホスホン酸、リン酸エステルおよび銅成分の一部の成分または全てを含む化合物であると考えられる。
前記沈殿を含むc1液に対して、吸引ろ過を行って反応生成物の固形物を得た。固形状の反応生成物を、200gのエタノールに加えて、室温で10分間撹拌を行ったうえで、再度吸引ろ過を行い、一回精製された固形状の化合物A-1を得た。
【0242】
重合体B1-1 3.22gを、第2溶媒としてのトルエン80gに加えて、室温で10分間撹拌し、溶液を得た。得られた溶液に、化合物A-1を追加して、室温でさらに10分間撹拌して、溶液に化合物A-1が分散されたd1液を得た。
d1液には、化合物A-1の固形物は視認できず、化合物A-1が分散している状態となっていた。このことから、固形状の化合物A-1には、分散作用のあるリン酸エステルも一定量含まれており、トルエン溶媒中の化合物A-1の分散に、リン酸エステルが寄与していると考えられる。
【0243】
その後、d1液をフラスコに入れ、60℃に温度設定されたオイルバス(東京理化器械(株)製、型式:OSB-2100)で加温しながら、ロータリーエバポレータ(東京理化器械(株)製、型式:N-1110SF)を用いて脱溶媒処理を行うことで、d1液の精製を行った。その際、真空ポンプを用いて、フラスコ内を、突沸に気を付けながら常圧より段階的に減圧し、最終的に100hPaに至るまで減圧した。その後、溶媒量がある程度減少したことを確認して作業を終了し、11.45gの組成物1を得た。
組成物1は、ホスホン酸、リン酸エステルおよび銅成分の一部または全てを含む化合物A-1が分散されており、組成物1の外観は透明な緑色であることが確認できた。
表2において、透明な緑色である外観を有する組成物に対して、「外観」を○と表記した。
【0244】
以上のプロセスにおいて、銅成分の供給源としての酢酸銅一水和物の使用により、化合物A-1(特にホスホン酸銅化合物)の生成に伴い、副生物として酢酸が生成したと考えられる。しかしながら、得られた組成物1には、酢酸特有の匂いは感じられず、酢酸が十分に除去されていたことが示唆された。これはエタノールのような貧溶媒との作用による化合物A-1の析出と、ろ過による精製または洗浄プロセス、蒸留による溶媒除去プロセスが有効に機能した結果であると考えられる。
【0245】
(固形分の算出)
組成物1 10g(M1)を正確に測り取り、予め質量を測定したアルミニウム製のシャーレに入れて、表面温度を180℃に設定したホットプレート上にシャーレを静置した。そのまま、10分間程度、静置を続け、シャーレ内の液状成分がほぼ完全に揮発したことを確認した。乾燥した組成物1が入ったままのシャーレの質量を測定し、該測定した質量からシャーレの質量を差し引いた質量m1を測定し、m1/M1×100を組成物1の固形分(質量%)として算出した。
【0246】
組成物1の固形分は80.3質量%であった。固形分m1以外の成分を溶媒と考えると、組成物1中の溶媒の含有量は19.7質量%であると算出される。
さらに、組成物1を100質量%とした場合、投入した重合体B1-1は、投入した重合体B1-1の質量と得られた組成物1の質量とから28.1質量%であるので、溶媒の19.7質量%と重合体B1-1の28.1質量%を差し引いた52.2質量%が化合物A-1であると算出される。化合物A-1が全て銅錯体化合物であるとみなす時、組成物1に含まれる化合物A-1(銅錯体化合物)は52.2質量%であると算出される。
また、組成物1の固形分に対する化合物A-1(銅錯体化合物)の比は0.65であり、重合体B1-1に対する化合物A-1(銅錯体化合物)の比は1.86であった。
【0247】
(再分散性の評価)
組成物1が、再分散性を有しているかを確認するために、蒸留に用いた溶媒と同じ溶媒(第2溶媒)で組成物1の固形分が10質量%になるように、溶媒の量を調整し、組成物1を再分散させた。その結果、再分散後の組成物1は、緑色の透明性の高い外観を有しており、不透明な濁りが発生していない良好な状態となっていること、つまり再分散性が良好であることを確認した。
表2において、十分に明るい照明のもと、目視観測して、濁りのない透明性の高い再分散性を示した組成物を○と示す。
【0248】
(組成物の透過スペクトルの測定)
石英セル(StarnaScientific社製、型番:20/C/Q1、光路長:1mm、光路幅:10mm、外寸:長さ3.5mm、幅12.5mm、高さ45mm、容量:0.31mL)に、組成物1を入れて、紫外可視近赤外分光光度計(日本分光(株)製、型番:V770)を用いて、石英セルの面に対し0°の入射角の光を照射し、波長300~1200nmの範囲の各波長に対する透過率を測定した。
なお、透過スペクトル測定用のサンプルは、波長800nmにおける透過率が10%±1%となるように、組成物1の濃度を、組成物1の調製の際に用いた第2溶媒と同じ溶媒を適量追加することによって調整した。
組成物1の透過スペクトルを
図3に示す。また、該透過スペクトルから看取できる特定の波長または波長域におけるパラメータを表3に示す。
【0249】
(層(D1)の作製)
表面防汚コーティング剤(ダイキン工業(株)製、製品名:オプツールDSX、有効成分の濃度:20質量%)0.1gと、ハイドロフルオロエーテル含有液(3M社製、製品名:ノベック7100)19.9gとを混合し、5分間撹拌して、フッ素処理剤(有効成分の濃度:0.1質量%)を調製した。このフッ素処理剤を、130mm×100mm×0.70mmの寸法を有するホウケイ酸ガラス(SCHOTT社製、製品名:D263 T eco)の一方の主面に塗布した。その後、そのガラス基板を室温で24時間放置してフッ素処理剤の塗膜を乾燥させ、その後、ノベック7100を含んだ無塵布で軽くガラス表面を拭きあげて余分なフッ素処理剤を取り除いた。このようにしてフッ素処理基板を作製した。
次に、作製したフッ素処理基板のフッ素処理をした主面の中心部の50mm×50mmの範囲にディスペンサを用いて組成物1を塗布して塗膜を形成した。得られた塗膜を室温低湿環境下で十分に乾燥させた後、85℃で3時間焼成を行った。その後得られた塗膜を基板から引き剥がし、厚さ155μmの光学フィルムである層(D1-A1)を作製した。
【0250】
(層(D1-A1)の透過スペクトルの測定)
紫外可視近赤外分光光度計(日本分光(株)製、型番:V770)を用いて、得られた層(D1-A1)の主面に対し0°の入射角の光を照射し、波長300~1200nmの範囲の各波長に対する、該層(D1-A1)の透過率を測定した。
層(D1-A1)の透過スペクトルを
図7に示す。また、該透過スペクトルから看取できる特定の波長または波長域におけるパラメータを表4に示す。
【0251】
[実施例A2]
実施例A1において、化合物A(反応生成物)および組成物の原材料として以下の原材料を用いた以外は、実施例A1と同様の条件と方法により、化合物(反応生成物)A-2を得、また、固形分が76.6質量%であり、溶媒の含有量が23.4質量%である、12.33gの組成物2を作製した。組成物2中の化合物A-2(銅錯体化合物)の含有量は49.8質量%であり、重合体B1-2の含有量は26.8質量%であり、組成物2の固形分に対する化合物A-2(銅錯体化合物)の比は0.65であり、重合体B1-2に対する化合物A-2(銅錯体化合物)の比は1.85であった。
また、実施例A1と同様の条件と方法によって、組成物2の外観および再分散性を評価したところ、いずれも良好であった。結果を表2に示す。
【0252】
原材料
第1溶媒:メタノール
酢酸銅一水和物 4.88g
ホスホン酸:n-ブチルホスホン酸 2.835g
リン酸エステル:プライサーフ A208N 2.829g
重合体(B1):重合体B1-2 3.31g
第2溶媒:トルエン
【0253】
[実施例A3]
実施例A1において、化合物A(反応生成物)および組成物の原材料として以下の原材料を用いた以外は、実施例A1と同様の条件と方法により、化合物A-3を得、また、固形分が75.9質量%であり、溶媒の含有量が24.1質量%である、15.22gの組成物3を作製した。組成物3中の化合物A-3(銅錯体化合物)の含有量は41.7質量%であり、重合体B1-1の含有量は34.2質量%であり、組成物3の固形分に対する化合物A-3(銅錯体化合物)の比は0.55であり、重合体B1-1に対する化合物A-3(銅錯体化合物)の比は1.22であった。
また、実施例A1と同様の条件と方法によって、組成物3の外観と再分散性を評価したところ、いずれも良好であった。結果を表2に示す。
【0254】
実施例A1と同様の条件と方法によって、組成物3の透過スペクトルを測定した。組成物3の透過スペクトルを
図4に示す。また、透過スペクトルから看取できる特定の波長または波長域におけるパラメータを表3に示す。
さらに、実施例A1と同様の条件と方法によって、厚さ182μmの層(D1-A3)を作製し、該層(D1-A3)の透過スペクトルを測定した。実施例A3に係る層(D1-A3)の透過スペクトルを
図8に示す。また、該透過スペクトルから看取できる特定の波長または波長域におけるパラメータを表4に示す。
【0255】
原材料
第1溶媒:メタノール
酢酸銅一水和物 4.88g
ホスホン酸:n-ブチルホスホン酸 2.780g
リン酸エステル:プライサーフ A208F(第一工業製薬(株)製) 3.086g
重合体(B1):重合体B1-1 5.20g
第2溶媒:トルエン
【0256】
[実施例A4]
実施例A1において、化合物A(反応生成物)および組成物の原材料として以下の原材料を用いた以外は、実施例A1と同様の条件と方法により、化合物A-4を得、また、固形分が78.7質量%であり、溶媒の含有量が21.3質量%である、19.08gの組成物4を作製した。組成物4中の化合物A-4(銅錯体化合物)の含有量は31.2質量%であり、重合体B1-2の含有量は47.5質量%であり、組成物4の固形分に対する化合物A-4(銅錯体化合物)の比は0.40であり、重合体B1-2に対する化合物A-4(銅錯体化合物)の比は0.66であった。
また、実施例A1と同様の条件と方法によって、組成物4の外観と再分散性を評価したところ、いずれも良好であった。結果を表2に示す。
【0257】
原材料
第1溶媒:エタノール
酢酸銅一水和物 4.88g
ホスホン酸:n-ブチルホスホン酸 2.886g
リン酸エステル:プライサーフ A208N 2.572g
重合体(B1):重合体B1-2 9.06g
第2溶媒:トルエン
【0258】
[実施例A5]
実施例A1において、化合物A(反応生成物)および組成物の原材料として以下の原材料を用いた以外は、実施例A1と同様の条件と方法により、化合物A-5を得、また、固形分が80.7質量%であり、溶媒の含有量が19.3質量%である、37.88gの組成物5を作製した。組成物5中の化合物A-5(銅錯体化合物)の含有量は16.1質量%であり、重合体B1-1の含有量は64.6質量%であり、組成物5の固形分に対する化合物A-5(銅錯体化合物)の比は0.20であり、重合体B1-1に対する化合物A-5(銅錯体化合物)の比は0.25であった。
また、実施例A1と同様の条件と方法によって、組成物5の外観と再分散性を評価したところ、いずれも良好であった。結果を表2に示す。
【0259】
実施例A1と同様の条件と方法によって、組成物5の透過スペクトルを測定した。組成物5の透過スペクトルを
図5に示す。また、該透過スペクトルから看取できる特定の波長または波長域におけるパラメータを表3に示す。
【0260】
原材料
第1溶媒:エタノール
酢酸銅一水和物 4.88g
ホスホン酸:n-ブチルホスホン酸 2.835g
リン酸エステル:プライサーフ A208N 2.829g
重合体(B1):重合体B1-1 24.47g
第2溶媒:トルエン
【0261】
[実施例A6]
実施例A1において、化合物A(反応生成物)および組成物の原材料として以下の原材料を用い、d1液の精製(減圧蒸留)条件を以下のように変更した以外は、実施例A1と同様の条件と方法により、化合物A-6を得、また、固形分が81.9質量%であり、溶媒の含有量が18.1質量%である、11.30gの組成物6を作製した。組成物6中の化合物A-6(銅錯体化合物)の含有量は52.9質量%であり、重合体B1-3の含有量は29.0質量%であり、組成物6の固形分に対する化合物A-6(銅錯体化合物)の比は0.65であり、重合体B1-3に対する化合物A-6(銅錯体化合物)の比は1.82であった。
実施例A1と同様の条件と方法によって、組成物6の外観と再分散性を評価したところ、いずれも良好であった。結果を表2に示す。
【0262】
実施例A1と同様の条件と方法によって、組成物6の透過スペクトルを測定した。組成物6の透過スペクトルを
図6に示す。また、該透過スペクトルから看取できる特定の波長または波長域におけるパラメータを表3に示す。
さらに、実施例A1と同様の条件と方法によって、厚さ168μmの層(D1-A6)を作製し、該層(D1-A6)の透過スペクトルを測定した。実施例A6に係る層(D1-A6)の透過スペクトルを
図9に示す。また、該透過スペクトルから看取できる特定の波長または波長域におけるパラメータを表4に示す。
【0263】
原材料
第1溶媒:エタノール
酢酸銅一水和物 4.88g
ホスホン酸:n-ブチルホスホン酸 2.886g
リン酸エステル:プライサーフ A208N 2.572g
重合体(B1):重合体B1-3 3.28g
第2溶媒:塩化メチレン
【0264】
精製(減圧蒸留)条件
オイルバス温度:30℃
蒸留容器内圧力:500hPa
【0265】
[実施例A7]
実施例A1において、化合物A(反応生成物)および組成物の原材料として以下の原材料を用い、d1液の精製(減圧蒸留)条件を以下のように変更した以外は、実施例A1と同様の条件と方法により、化合物A-7を得、また、固形分が75.8質量%であり、溶媒の含有量が24.2質量%である、14.23gの組成物7を作製した。組成物7中の化合物A-7(銅錯体化合物)の含有量は42.1質量%であり、重合体B1-1の含有量は33.7質量%であり、組成物7の固形分に対する化合物A-7(銅錯体化合物)の比は0.55であり、重合体B1-1に対する化合物A-7(銅錯体化合物)の比は1.25であった。
また、実施例A1と同様の条件と方法によって、組成物7の外観と再分散性を評価したところ、いずれも良好であった。結果を表2に示す。
【0266】
原材料
第1溶媒:エタノール
酢酸銅一水和物 4.88g
ホスホン酸:n-ブチルホスホン酸 2.886g
リン酸エステル:プライサーフ A208N 2.572g
重合体(B1):重合体B1-1 4.80g
第2溶媒:塩化メチレン
【0267】
精製(減圧蒸留)条件
オイルバス温度:30℃
蒸留容器内圧力:500hPa
【0268】
[実施例A8]
実施例A1において、化合物A(反応生成物)および組成物の原材料として以下の原材料を用い、d1液の精製(減圧蒸留)条件を以下のように変更した以外は、実施例A1と同様の条件と方法により、化合物A-8を得、また、固形分が68.4質量%であり、溶媒の含有量が31.6質量%である、24.14gの組成物8を作製した。組成物8中の化合物A-8(銅錯体化合物)の含有量は28.1質量%であり、重合体B1-2の含有量は40.3質量%であり、組成物8の固形分に対する化合物A-8(銅錯体化合物)の比は0.41であり、重合体B1-2に対する化合物A-8(銅錯体化合物)の比は0.70であった。
また、実施例A1と同様の条件と方法によって、組成物8の外観と再分散性を評価したところ、いずれも良好であった。結果を表2に示す。
【0269】
さらに、実施例A1と同様の条件と方法によって、厚さ126μmの層(D1-A8)を作製し、該層(D1-A8)の透過スペクトルを測定した。実施例A8に係る層(D1-A8)の透過スペクトルを
図10に示す。また、該透過スペクトルから看取できる特定の波長または波長域におけるパラメータを表4に示す。
【0270】
原材料
第1溶媒:エタノール
酢酸銅一水和物 4.88g
ホスホン酸:n-ブチルホスホン酸 3.284g
リン酸エステル:NIKKOL DDP-2(日光ケミカルズ(株)製) 3.088g
重合体(B1):重合体B1-2 9.74g
第2溶媒:塩化メチレン
【0271】
精製(減圧蒸留)条件
オイルバス温度:30℃
蒸留容器内圧力:500hPa
【0272】
[実施例A9]
実施例A1において、化合物A(反応生成物)および組成物の原材料として以下の原材料を用いた以外は、実施例A1と同様の条件と方法により、化合物A-9を得、また、固形分が56.9質量%であり、溶媒の含有量が43.1質量%である、16.50gの組成物9を作製した。組成物9中の化合物A-9(銅錯体化合物)の含有量は36.0質量%であり、重合体B1-3の含有量は20.9質量%であり、組成物9の固形分に対する化合物A-9(銅錯体化合物)の比は0.63であり、重合体B1-3に対する化合物A-9(銅錯体化合物)の比は1.72であった。
また、実施例A1と同様の条件と方法によって、組成物9の外観と再分散性を評価したところ、いずれも良好であった。結果を表2に示す。
【0273】
原材料
第1溶媒:エタノール
酢酸銅一水和物 4.88g
ホスホン酸:n-ブチルホスホン酸 2.886g
リン酸エステル:プライサーフ A208N 2.572g
重合体(B1):重合体B1-3 3.45g
第2溶媒:トルエン
【0274】
[実施例A10]
実施例A1において、化合物A(反応生成物)および組成物の原材料として以下の原材料を用い、重合体(B1)を第2溶媒であるトルエンに混合して溶液を得る際に、26.1mgの紫外線吸収性化合物(U-1)を添加した以外は、実施例A1と同様の条件と方法により、化合物A-9を得、また、固形分が54.6質量%であり、溶媒の含有量が45.4質量%である、21.52gの組成物10を作製した。組成物10中の化合物A-10(銅錯体化合物)の含有量は24.3質量%であり、重合体B1-3の含有量は30.3質量%であり、組成物10の固形分に対する化合物A-10(銅錯体化合物)の比は0.45であり、重合体B1-3に対する化合物A-10(銅錯体化合物)の比は0.80であり、重合体B1-3に対する紫外線吸収性化合物(U-1)の比は4.0×10-3であった。
また、実施例A1と同様の条件と方法によって、組成物10の外観と再分散性を評価したところ、いずれも良好であった。結果を表2に示す。
【0275】
原材料
第1溶媒:エタノール
酢酸銅一水和物 4.88g
ホスホン酸:メチルホスホン酸 2.019g
リン酸エステル:プライサーフ A208N 2.572g
重合体(B1):重合体B1-3 6.52g
紫外線吸収性化合物(U-1) 26.1mg
第2溶媒:トルエン
【0276】
[実施例A11]
実施例A1において、化合物A(反応生成物)および組成物の原材料として以下の原材料を用いた以外は、実施例A1と同様の条件と方法により、化合物A-11を得、また、固形分が65.7質量%であり、溶媒の含有量が34.3質量%である、25.72gの組成物11を作製した。組成物11中の化合物A-11(銅錯体化合物)の含有量は22.0質量%であり、重合体B1-1の含有量は43.7質量%であり、組成物11の固形分に対する化合物A-11(銅錯体化合物)の比は0.33であり、重合体B1-1に対する化合物A-11(銅錯体化合物)の比は0.50であった。
また、実施例A1と同様の条件と方法によって、組成物11の外観と再分散性を評価したところ、いずれも良好であった。結果を表2に示す。
【0277】
原材料
第1溶媒:エタノール
酢酸銅一水和物 4.88g
ホスホン酸:エチルホスホン酸 2.259g
リン酸エステル:プライサーフ A208N 2.829g
重合体(B1):重合体B1-1 11.25g
第2溶媒:トルエン
【0278】
[実施例A12]
実施例A1において、化合物A(反応生成物)および組成物の原材料として以下の原材料を用いた以外は、実施例A1と同様の条件と方法により、化合物A-12を得、また、固形分が65.1質量%であり、溶媒の含有量が34.9質量%である、16.33gの組成物12を作製した。組成物12中の化合物A-12(銅錯体化合物)の含有量は41.2質量%であり、重合体B1-1の含有量は23.9質量%であり、組成物12の固形分に対する化合物A-12(銅錯体化合物)の比は0.63であり、重合体B1-1に対する化合物A-12(銅錯体化合物)の比は1.72であった。
また、実施例A1と同様の条件と方法によって、組成物12の外観と再分散性を評価したところ、いずれも良好であった。結果を表2に示す。
【0279】
原材料
第1溶媒:エタノール
酢酸銅一水和物 4.88g
ホスホン酸:n-ブチルホスホン酸 3.284g
リン酸エステル:NIKKOL DDP-2 3.088g
重合体(B1):重合体B1-1 3.91g
第2溶媒:トルエン
【0280】
[実施例A13]
実施例A1において、化合物A(反応生成物)および組成物の原材料として以下の原材料を用いた以外は、実施例A1と同様の条件と方法により、化合物A-13を得、また、固形分が62.8質量%であり、溶媒の含有量が37.2質量%である、16.75gの組成物13を作製した。組成物13中の化合物A-13(銅錯体化合物)の含有量は39.6質量%であり、重合体B1-2の含有量は23.2質量%であり、組成物13の固形分に対する化合物A-13(銅錯体化合物)の比は0.63であり、重合体B1-2に対する化合物A-13(銅錯体化合物)の比は1.71であった。
また、実施例A1と同様の条件と方法によって、組成物13の外観と再分散性を評価したところ、いずれも良好であった。結果を表2に示す。
【0281】
原材料
第1溶媒:メタノール
酢酸銅一水和物 4.88g
ホスホン酸:n-ブチルホスホン酸 3.334g
リン酸エステル:NIKKOL DDP-2 2.984g
重合体(B1):重合体B1-2 3.88g
第2溶媒:トルエン
【0282】
[実施例A14]
実施例A1において、化合物A(反応生成物)および組成物の原材料として以下の原材料を用い、重合体(B1)を第2溶媒であるトルエンに混合して溶液を得る際に、36.1mgの紫外線吸収性化合物(U-1)を添加した以外は、実施例A1と同様の条件と方法により、化合物A-14を得、また、固形分が62.1質量%であり、溶媒の含有量が37.9質量%である、24.93gの組成物14を作製した。組成物14中の化合物A-14(銅錯体化合物)の含有量は25.9質量%であり、重合体B1-4の含有量は36.2質量%であり、組成物14の固形分に対する化合物A-14(銅錯体化合物)の比は0.42であり、重合体B1-4に対する化合物A-14(銅錯体化合物)の比は0.71であり、重合体B1-4に対する紫外線吸収性化合物(U-1)の比は4.0×10-3であった。
また、実施例A1と同様の条件と方法によって、組成物14の外観と再分散性を評価したところ、いずれも良好であった。結果を表2に示す。
【0283】
原材料
第1溶媒:エタノール
酢酸銅一水和物 4.88g
ホスホン酸:n-ヘキシルホスホン酸 3.472g
リン酸エステル:プライサーフ A208N 2.572g
重合体(B1):重合体B1-4 9.03g
紫外線吸収性化合物(U-1) 36.1mg
第2溶媒:トルエン
【0284】
[実施例A15]
実施例A1において、化合物A(反応生成物)および組成物の原材料として以下の原材料を用いた以外は、実施例A1と同様の条件と方法により、化合物A-15を得、また、固形分が35.0質量%であり、溶媒の含有量が65.0質量%である、30.02gの組成物15を作製した。組成物15中の化合物A-15(銅錯体化合物)の含有量は19.3質量%であり、重合体B1-3の含有量は15.7質量%であり、組成物15の固形分に対する化合物A-15(銅錯体化合物)の比は0.55であり、重合体B1-3に対する化合物A-15(銅錯体化合物)の比は1.23であった。
また、実施例A1と同様の条件と方法によって、組成物15の外観と再分散性を評価したところ、いずれも良好であった。結果を表2に示す。
【0285】
原材料
第1溶媒:エタノール
酢酸銅一水和物 4.88g
ホスホン酸:n-ブチルホスホン酸 2.943g
リン酸エステル:プライサーフ A208N 2.315g
重合体(B1):重合体B1-3 4.71g
第2溶媒:トルエン
【0286】
[実施例A16]
実施例A1において、化合物A(反応生成物)および組成物の原材料として以下の原材料を用いた以外は、実施例A1と同様の条件と方法により、化合物A-16を得、また、固形分が40.3質量%であり、溶媒の含有量が59.7質量%である、70.25gの組成物16を作製した。組成物16中の化合物A-16(銅錯体化合物)の含有量は8.2質量%であり、重合体B1-1の含有量は32.1質量%であり、組成物16の固形分に対する化合物A-16(銅錯体化合物)の比は0.20であり、重合体B1-1に対する化合物A-16(銅錯体化合物)の比は0.26であった。
また、実施例A1と同様の条件と方法によって、組成物16の外観と再分散性を評価したところ、いずれも良好であった。結果を表2に示す。
【0287】
原材料
第1溶媒:エタノール
酢酸銅一水和物 4.88g
ホスホン酸:n-ブチルホスホン酸 2.943g
リン酸エステル:プライサーフ A208N 2.315g
重合体(B1):重合体B1-1 22.53g
第2溶媒:トルエン
【0288】
[実施例A17]
実施例A1において、化合物A(反応生成物)および組成物の原材料として以下の原材料を用いた以外は、実施例A1と同様の条件と方法により、化合物A-17を得、また、固形分が20.6質量%であり、溶媒の含有量が79.4質量%である、44.81gの組成物17を作製した。組成物17中の化合物A-17(銅錯体化合物)の含有量は13.3質量%であり、重合体B1-2の含有量は7.3質量%であり、組成物17の固形分に対する化合物A-17(銅錯体化合物)の比は0.64であり、重合体B1-2に対する化合物A-17(銅錯体化合物)の比は1.81であった。
また、実施例A1と同様の条件と方法によって、組成物17の外観と再分散性を評価したところ、いずれも良好であった。結果を表2に示す。
【0289】
原材料
第1溶媒:エタノール
酢酸銅一水和物 4.88g
ホスホン酸:n-ブチルホスホン酸 2.886g
リン酸エステル:プライサーフ A208N 2.572g
重合体(B1):重合体B1-2 3.28g
第2溶媒:トルエン
【0290】
[実施例A18]
実施例A1において、化合物A(反応生成物)および組成物の原材料として以下の原材料を用いた以外は、実施例A1と同様の条件と方法により、化合物A-18を得、また、固形分が17.8質量%であり、溶媒の含有量が82.2質量%である、63.57gの組成物18を作製した。組成物18中の化合物A-18(銅錯体化合物)の含有量は9.5質量%であり、重合体B1-3の含有量は8.3質量%であり、組成物18の固形分に対する化合物A-18(銅錯体化合物)の比は0.53であり、重合体B1-3に対する化合物A-18(銅錯体化合物)の比は1.14であった。
また、実施例A1と同様の条件と方法によって、組成物18の外観と再分散性を評価したところ、いずれも良好であった。結果を表2に示す。
【0291】
原材料
第1溶媒:エタノール
酢酸銅一水和物 4.88g
ホスホン酸:n-ブチルホスホン酸 2.886g
リン酸エステル:プライサーフ A208N 2.572g
重合体(B1):重合体B1-3 5.29g
第2溶媒:トルエン
【0292】
[実施例A19]
実施例A1において、化合物A(反応生成物)および組成物の原材料として以下の原材料を用いた以外は、実施例A1と同様の条件と方法により、化合物A-19を得、また、固形分が70.6質量%であり、溶媒の含有量が29.4質量%である、23.88gの組成物19を作製した。組成物19中の化合物A-19(銅錯体化合物)の含有量は24.0質量%であり、重合体B1-1およびB1-2の合計含有量は46.6質量%であり、組成物19の固形分に対する化合物A-19(銅錯体化合物)の比は0.34であり、重合体B1-1およびB1-2の合計に対する化合物A-19(銅錯体化合物)の比は0.51であった。
また、実施例A1と同様の条件と方法によって、組成物19の外観と再分散性を評価したところ、いずれも良好であった。結果を表2に示す。
【0293】
原材料
第1溶媒:エタノール
酢酸銅一水和物 4.88g
ホスホン酸:エチルホスホン酸 2.259g
リン酸エステル:プライサーフ A208N 2.829g
重合体(B1):各50質量%の重合体B1-1と重合体B1-2との混合物 11.14g
第2溶媒:トルエン
【0294】
[実施例A20]
実施例A1において、化合物A(反応生成物)および組成物の原材料として以下の原材料を用いた以外は、実施例A1と同様の条件と方法により、化合物A-20を得、また、固形分が64.2質量%であり、溶媒の含有量が35.8質量%である、12.31gの組成物20を作製した。組成物20中の化合物A-20(銅錯体化合物)の含有量は48.3質量%であり、重合体B1-2の含有量は15.9質量%であり、組成物20の固形分に対する化合物A-20(銅錯体化合物)の比は0.75であり、重合体B1-2に対する化合物A-20(銅錯体化合物)の比は3.03であった。
また、実施例A1と同様の条件と方法によって、組成物20の外観と再分散性を評価した。
組成物20は、凝集などを確認できない緑色の透明な液状であり、外観の評価は問題ないものと判断した(評価:○)。しかしながら、組成物20の再分散において、液中で該組成物20を構成する成分のわずかな凝集が確認でき、用途や仕様により許容できるが、組成物1~19と比較して再分散性は若干劣ると判断し、表2において△と表記した。
【0295】
原材料
第1溶媒:エタノール
酢酸銅一水和物 4.88g
ホスホン酸:n-ブチルホスホン酸 2.886g
リン酸エステル:プライサーフ A208N 2.572g
重合体(B1):重合体B1-2 1.96g
第2溶媒:トルエン
【0296】
[比較例a1]
実施例A1において、化合物A(反応生成物)および組成物の原材料として以下の原材料を用い、重合体(B1)を添加しなかった以外は、実施例A1と同様の条件と方法により、化合物A-21を得、また、固形分が57.7質量%であり、溶媒の含有量が42.3質量%である、10.31gの組成物21を作製した。組成物21中の化合物A-21(銅錯体化合物)の含有量は57.7質量%であり、組成物21の固形分に対する化合物A-21(銅錯体化合物)の比は1であった。
また、実施例A1と同様の条件と方法によって、組成物21の外観と再分散性を評価した。
組成物21は、凝集などを確認できない緑色の透明な液状であり、外観の評価は問題ないものと判断した(評価:○)。しかしながら、組成物21の再分散において、液中で該組成物21を構成する成分の凝集が確認でき、再分散性は良いとは言えない結果であり、表2において×と表記した。このことから、重合体(B1)を用いないと、再分散の際に凝集が生じ、適切な組成物が得られないことが示唆された。
【0297】
原材料
第1溶媒:エタノール
酢酸銅一水和物 4.88g
ホスホン酸:n-ブチルホスホン酸 2.886g
リン酸エステル:プライサーフ A208N 2.572g
重合体(B1):なし
第2溶媒:トルエン
【0298】
【0299】
表2中の略字はそれぞれ以下の化合物を表す。
CAM:酢酸銅一水和物
BPA:n-ブチルホスホン酸
MPA:メチルホスホン酸
EPA:エチルホスホン酸
HPA:n-ヘキシルホスホン酸
紫外線吸収性化合物(U-1):下記式(U-1)で表される化合物(ジクロロメタン中での吸収極大波長364nm)
【0300】
【0301】
【0302】
【0303】
<実施例D1-1>
表5に記載の通り、重合体B1-1を100質量部、前記実施例A11で得られた化合物A-11を50質量部、および溶媒としてジクロロメタンを加えて混合し、固形分濃度が20質量%の溶液(層(D1)形成用組成物D1-1)を調製した。
【0304】
<実施例D1-2~D1-5、および比較例D1-6~D1-9>
実施例D1-1において、重合体(B1)、重合体(B2-1)、化合物A、その他化合物として紫外線吸収性化合物(U-1)の種類および使用量を表5のように変更した以外は、実施例D1-1と同様にして層(D1)形成用組成物D1-2~D1-9を調製した。
【0305】
【0306】
<調製例D2-1>
表6に記載の通り、重合体B2-1-1を100質量部、近赤外線吸収色素C-1を0.07質量部、近赤外線吸収色素C-2を0.07質量部、および溶媒としてジクロロメタンを加えて混合し、固形分濃度が20質量%の溶液(層(D2)形成用組成物D2-1)を調製した。
【0307】
<調製例D2-2およびD2-3>
調製例D2-1において、重合体(B2-1)、および、近赤外線吸収色素の添加量を表6のように変更した以外は、調製例D2-1と同様にして層(D2)形成用組成物D2-2およびD2-3を調製した。
【0308】
【0309】
表6中の近赤外線吸収色素C-1は、下記式(C-1)で表される化合物(ジクロロメタン中での吸収極大波長711nm)である。
【0310】
【0311】
表6中の近赤外線吸収色素C-2は、下記式(C-2)で表される化合物(ジクロロメタン中での吸収極大波長738nm)である。
【0312】
【0313】
表6中の近赤外線吸収色素C-3は、下記式(C-3)で表される化合物(ジクロロメタン中での吸収極大波長715nm)である。
【0314】
【0315】
表6中の近赤外線吸収色素C-4は、下記式(C-4)で表される化合物(ジクロロメタン中での吸収極大波長776nm)である。
【0316】
【0317】
<調製例D2-4>
重合体B2-2-1を100質量部、前記近赤外線吸収色素C-1を0.70質量部、前記近赤外線吸収色素C-2を0.70質量部、界面活性剤として信越化学工業(株)製KF-643を0.40質量部、密着促進剤としてγ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランを1.8質量部、および溶媒としてシクロペンタノンおよびジクロロメタンを加えて混合し、固形分濃度が22質量%の溶液(層(D2)形成用組成物D2-4)を調製した。
【0318】
<調製例D2-5>
トリシクロデカンジメタノールジアクリレートを100質量部、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンを5質量部、前記近赤外線吸収色素C-1を1.40質量部、前記近赤外線吸収色素C-2を1.40質量部、界面活性剤として信越化学工業(株)製KF-643を0.20質量部、および溶媒としてメチルエチルケトンを加えて混合し、固形分濃度が35質量%の溶液(層(D2)形成用組成物D2-5)を調製した。
【0319】
<調製例E1>
トリシクロデカンジメタノールジアクリレートを100質量部、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンを5質量部、界面活性剤として信越化学工業(株)製KF-643を0.20質量部、および溶媒としてメチルエチルケトンを加えて混合し、固形分濃度が35質量%の溶液(組成物E1)を調製した。
【0320】
[実施例P1]
層(D1)形成用組成物D1-1を平滑なガラス板上にキャストし、20℃で8時間乾燥した後、ガラス板から剥離した。剥離した塗膜をさらに減圧下120℃で8時間乾燥して、層(D1)として厚さ0.10mm、縦60mm、横60mmの層D1-1を作製した。
【0321】
層(D2)形成用組成物D2-1を平滑なガラス板上にキャストし、20℃で8時間乾燥した後、ガラス板から剥離した。剥離した塗膜をさらに減圧下100℃で8時間乾燥して、層(D2)として厚さ0.10mm、縦60mm、横60mmの層D2-1を作製した。
【0322】
層D1-1上にメチル-n-ペンチルケトンを液膜厚2.0μmとなるようにバーコーターで塗布した後、メチル-n-ペンチルケトンを塗布した面上に層D2-1をラミネーター((株)ユーボン製、製品名;ラミーマン IKO-650E)を用いて貼合し、厚さ0.2mmの基材EX1-Subを作製した。
【0323】
基材EX1-Subの主面の一方に組成物E1をバーコーターで塗布し、オーブン中70℃で2分間加熱し、溶剤を揮発除去した。この際、乾燥後の厚みが2μmとなるように、バーコーターの塗布条件を調整した。
次に、コンベア式露光機を用いて露光(露光量500mJ/cm
2、200mW)を行い、組成物E1を硬化させ、基材EX1-Sub上にオーバーコート層を形成した。同様に、基材EX1-Subの主面の他方にも組成物E1からなるオーバーコート層を形成し、基材EX1-Stackを得た。この基材の分光透過率を日本分光(株)製、製品名:「V-7300」を用いて測定した。得られた透過スペクトルを
図11に示す。
【0324】
続いて、得られた基材EX1-Stackの主面の一方(層(D2)上に形成されたオーバーコート層上)に誘電体多層膜(I)を形成し、さらに該基材の主面の他方(層(D1)上に形成されたオーバーコート層上)に誘電体多層膜(II)を形成し、厚さ約0.209mmの光学フィルターを作製した。
【0325】
誘電体多層膜(I)は、蒸着温度100℃でシリカ(SiO2)層とチタニア(TiO2)層とが交互に積層されてなる(合計26層)。誘電体多層膜(II)は、蒸着温度100℃でシリカ(SiO2)層とチタニア(TiO2)層とが交互に積層されてなる(合計20層)。誘電体多層膜(I)および(II)のいずれにおいても、シリカ層およびチタニア層は、基材側からチタニア層、シリカ層、チタニア層、・・・シリカ層、チタニア層、シリカ層の順で交互に積層されており、光学フィルターの最外層をシリカ層とした。
【0326】
誘電体多層膜(I)および(II)の設計は、以下のようにして行った。
各層の厚さと層数については、可視光域の反射防止効果と所望とする近赤外線域のカット性能とを達成できるよう、基材の屈折率の波長依存特性に合わせて光学薄膜設計ソフト(EssentialMacleod、ThinFilmCenter社製)を用いて最適化を行った。最適化を行う際、本実施例P1においてはソフトへの入力パラメータ(Target値)を下記表7の通りとした。
【0327】
【0328】
膜構成最適化の結果、実施例P1では、誘電体多層膜(I)は、物理膜厚約31~157nmのシリカ層と物理膜厚約10~95nmのチタニア層とが交互に積層されてなる、積層数26の多層蒸着膜であった。
誘電体多層膜(II)は、物理膜厚約37~194nmのシリカ層と物理膜厚約12~114nmのチタニア層とが交互に積層されてなる、積層数20の多層蒸着膜であった。
最適化を行った膜構成の一例を表8に示す。
【0329】
【0330】
<光学特性>
得られた光学フィルターの主面の垂直方向から入射した光の透過率を、日本分光(株)製、製品名:「V-7300」を用いて測定し、波長450~580nmにおける平均透過率および波長800~1000nmにおける平均透過率を算出した。結果を表11に示し、得られた透過スペクトルを
図15に示す。
【0331】
<耐久性>
85℃/85%RHに設定した恒温恒湿オーブン(エスペック(株)製:SH-222)中に3cm角にカットした光学フィルターを入れて1000時間静置した。1000時間後の各波長領域における分光特性を「V-7300」を用いて測定し、波長450~580nmにおける平均透過率および波長800~1000nmにおける平均透過率を算出した。結果を表11に示す。
恒温恒湿オーブンに入れる前後の前記各平均透過率の値の差から、光学フィルターの耐久性を評価することができる。
【0332】
[実施例P2]
実施例P1において、層(D1)形成用組成物D1-1に代えて層(D1)形成用組成物D1-2を用いて層D1-2を作製し、層(D2)形成用組成物D2-1に代えて層(D2)形成用組成物D2-2を用いて、厚さ0.05mmの層D2-2をそれぞれ作製した。
作製した層D1-2および層D2-2を用いたこと以外は、実施例P1と同様にして基材EX2-Stackおよび光学フィルターを作製した。
作製した基材の分光透過率を実施例P1と同様にして測定した。得られた透過スペクトルを
図12に示す。
また、作製した光学フィルターを用い、実施例P1と同様にして、光学特性および耐久性を評価した。結果を表11に示し、得られた透過スペクトルを
図16に示す。
【0333】
[実施例P3]
実施例P1において、層(D2)形成用組成物D2-1に代えて層(D2)形成用組成物D2-3を用いて層D2-3を作製したこと以外は、実施例P1と同様にして基材EX3-Stackおよび光学フィルターを作製した。
作製した基材の分光透過率を実施例P1と同様にして測定した。得られた透過スペクトルを
図13に示す。
また、作製した光学フィルターを用い、実施例P1と同様にして、光学特性および耐久性を評価した。結果を表11に示し、得られた透過スペクトルを
図17に示す。
【0334】
[実施例P4]
実施例P1において、層(D1)形成用組成物D1-1に代えて層(D1)形成用組成物D1-3を用いて厚さ0.20mmの層D1-4を作製した。
層D1-4の主面の一方に層(D2)形成用組成物D2-4をバーコーターで塗布し、オーブン中70℃で3分間加熱し、溶剤を揮発除去することで層D2-4を形成した。この際、乾燥後の厚みが10μmとなるように、バーコーターの塗布条件を調整した。次いで、オーブン中150℃で20分間加熱することで層D2-4を硬化させ、基材EX4-Stackを得た。
作製した基材の分光透過率を実施例P1と同様にして測定した。得られた透過スペクトルを
図14に示す。
【0335】
続いて、実施例P1と同様にして、基材EX4-Stackの硬化した層D2-4が形成された面に誘電体多層膜(I)を形成し、基材EX4-Stackの主面の他方に誘電体多層膜(II)を形成することで、厚さ約0.215mmの光学フィルターを作製した。
作製した光学フィルターを用い、実施例P1と同様にして、光学特性および耐久性を評価した。結果を表11に示し、得られた透過スペクトルを
図18に示す。
【0336】
[実施例P5]
実施例P4において、層(D1)形成用組成物D1-3を用いて厚さ0.20mmの層D1-4を作製する代わりに、層(D1)形成用組成物D1-3を用いて厚さ0.10mmの層D1-5を作製したこと以外は実施例P4と同様にして、基材EX5-Stackを作製した。
【0337】
続いて、得られた基材EX5-Stackの硬化した層D2-4が形成された面に誘電体多層膜(III)を形成し、さらに該基材の主面の他方に誘電体多層膜(IV)を形成することで、厚さ約0.114mmの光学フィルターを作製した。
【0338】
誘電体多層膜(III)は、蒸着温度100℃でシリカ(SiO2)層とチタニア(TiO2)層とが交互に積層されてなる(合計38層)。誘電体多層膜(IV)は、蒸着温度100℃でシリカ(SiO2)層とチタニア(TiO2)層とが交互に積層されてなる(合計8層)。誘電体多層膜(III)および(IV)のいずれにおいても、シリカ層およびチタニア層は、基材側からチタニア層、シリカ層、チタニア層、・・・シリカ層、チタニア層、シリカ層の順で交互に積層されており、光学フィルターの最外層をシリカ層とした。
【0339】
誘電体多層膜(III)および(IV)の設計は、最適化を行う際の入力パラメータを下記表9のようにした以外は実施例P1と同様に行った。
【0340】
【0341】
膜構成最適化の結果、実施例P5では、誘電体多層膜(III)は、物理膜厚約27~174nmのシリカ層と物理膜厚約10~101nmのチタニア層とが交互に積層されてなる、積層数38の多層蒸着膜であった。
誘電体多層膜(IV)は、物理膜厚約12~107nmのシリカ層と物理膜厚約12~78nmのチタニア層とが交互に積層されてなる、積層数8の多層蒸着膜であった。
最適化を行った膜構成の一例を表10に示す。
【0342】
【0343】
作製した光学フィルターを用い、実施例P1と同様にして、光学特性および耐久性を評価した。結果を表11に示し、得られた透過スペクトルを
図19に示す。
【0344】
[実施例P6]
層(D1)形成用組成物D1-4を平滑なガラス板上にキャストし、20℃で8時間乾燥した後、ガラス板から剥離した。剥離した塗膜をさらに減圧下120℃で8時間乾燥して、厚さ0.10mm、縦60mm、横60mmの層D1-6Aを作製した。さらに、同様の手順で、厚さ0.10mm、縦60mm、横60mmの層D1-6Bを作製した。
【0345】
層D1-6A上にメチル-n-ペンチルケトンを液膜厚2.0μmとなるようにバーコーターで塗布した後、メチル-n-ペンチルケトンを塗布した面上に層D1-6Bをラミネーター((株)ユーボン製、製品名;ラミーマン IKO-650E)を用いて貼合し、層(D1)として層D1-6を作製した。
【0346】
続いて、層D1-6の主面の一方に、実施例P4と同様にして層D2-4を形成し、硬化することで、基材EX6-Stackを得た。
【0347】
実施例P1と同様にして、基材EX6-Stackの硬化した層D2-4が形成された面に誘電体多層膜(I)を形成し、基材EX6-Stackの主面の他方に誘電体多層膜(II)を形成することで、光学フィルターを作製した。
作製した光学フィルターを用い、実施例P1と同様にして、光学特性および耐久性を評価した。結果を表11に示す。
【0348】
[実施例P7]
実施例P4において、層(D1)形成用組成物D1-3に代えて層(D1)形成用組成物D1-5を用いた以外は、実施例P4と同様にして厚さ0.20mmの層D1-7を作製した。
層D1-7の主面の一方に層(D2)形成用組成物D2-5をバーコーターで塗布し、オーブン中70℃で2分間加熱し、溶剤を揮発除去することで層D2-7を形成した。この際、乾燥後の厚みが5μmとなるように、バーコーターの塗布条件を調整した。
次に、コンベア式露光機を用いて露光(露光量500mJ/cm2、200mW)を行い、層D2-7を硬化させ、基材EX7-Stackを得た。
【0349】
実施例P1と同様にして、基材EX7-Stackの硬化した層D2-7が形成された面に誘電体多層膜(I)を形成し、基材EX7-Stackの主面の他方に誘電体多層膜(II)を形成することで、光学フィルターを作製した。
作製した光学フィルターを用い、実施例P1と同様にして、光学特性および耐久性を評価した。結果を表11に示す。
【0350】
[実施例P8]
層(D1)形成用組成物D1-1を平滑なガラス板上にキャストし、20℃で8時間乾燥した後、ガラス板から剥離した。剥離した塗膜をさらに減圧下120℃で8時間乾燥して、厚さ0.07mm、縦60mm、横60mmの層D1-8Aを作製した。さらに、同様の手順で、厚さ0.07mm、縦60mm、横60mmの層D1-8Bを作製した。
【0351】
層D1-8A上にメチル-n-ペンチルケトンを液膜厚2.0μmとなるようにバーコーターで塗布した後、メチル-n-ペンチルケトンを塗布した面上に層D1-8Bをラミネーター((株)ユーボン製、製品名;ラミーマン IKO-650E)を用いて貼合し、層(D1)として厚さ0.14mmの層D1-8を作製した。
【0352】
層(D2)形成用組成物D2-2を平滑なガラス板上にキャストし、20℃で8時間乾燥した後、ガラス板から剥離した。剥離した塗膜をさらに減圧下100℃で8時間乾燥して、層(D2)として厚さ0.03mm、縦60mm、横60mmの層D2-8を作製した。
【0353】
重合体B2-1-1を100質量部、および溶媒としてジクロロメタンを加えて混合し、固形分濃度が20質量%の溶液を作成した。この溶液を平滑なガラス板上にキャストし、20℃で8時間乾燥した後、ガラス板から剥離した。剥離した塗膜をさらに減圧下100℃で8時間乾燥して、厚さ0.03mm、縦60mm、横60mmのフィルムF-1を作製した。
【0354】
層D1-8の主面の一方の上に、メチル-n-ペンチルケトンを液膜厚2.0μmとなるようにバーコーターで塗布した後、メチル-n-ペンチルケトンを塗布した面上に層D2-8をラミネーター((株)ユーボン製、製品名;ラミーマン IKO-650E)を用いて貼合した。続いて、層D1-8の主面の他方の面上に同様にしてフィルムF-1を貼合し、厚さ0.20mmの基材EX8-Subを作製した。
【0355】
続いて、得られた基材EX8-Subの両面に、実施例P1と同様にオーバーコート層を形成し、基材EX8-Stackを得た。
作製した基材EX8-Stackを用いたこと以外は、実施例P1と同様にして光学フィルターを作製した。この際、得られた基材EX8-Stackの主面の一方(層D2-8上に形成されたオーバーコート層上)に誘電体多層膜(I)を形成し、さらに該基材の主面の他方(フィルムF-1上に形成されたオーバーコート層上)に誘電体多層膜(II)を形成した。
作製した光学フィルターを用い、実施例P1と同様にして、光学特性および耐久性を評価した。結果を表11に示す。
【0356】
[比較例P1]
実施例P3において、層(D1)形成用組成物D1-1に代えて層(D1)形成用組成物D1-6を用いて層D1-9を作製した。
作製した層D1-9を用いたこと以外は、実施例P3と同様にして基材EX9-Stackおよび光学フィルターを作製した。
作製した基材の分光透過率を実施例P3と同様にして測定した。
また、作製した光学フィルターを用い、実施例P3と同様にして、光学特性および耐久性を評価した。結果を表11に示す。
【0357】
[比較例P2]
実施例P3において、層(D1)形成用組成物D1-1に代えて層(D1)形成用組成物D1-7を用いて層D1-10を作製した。
作製した層D1-10を用いたこと以外は、実施例P3と同様にして基材EX10-Stackおよび光学フィルターを作製した。
作製した基材の分光透過率を実施例P3と同様にして測定した。
また、作製した光学フィルターを用い、実施例P3と同様にして、光学特性および耐久性を評価した。結果を表11に示す。
【0358】
[比較例P3]
実施例P3において、層(D1)形成用組成物D1-1に代えて層(D1)形成用組成物D1-8を用いて層D1-11を作製した。
作製した層D1-11を用いたこと以外は、実施例P3と同様にして基材EX11-Stackおよび光学フィルターを作製した。
作製した基材の分光透過率を実施例P3と同様にして測定した。
また、作製した光学フィルターを用い、実施例P3と同様にして、光学特性および耐久性を評価した。結果を表11に示す。
【0359】
[比較例P4]
実施例P3において、層(D1)形成用組成物D1-1に代えて層(D1)形成用組成物D1-9を用いて層D1-12を作製した。
作製した層D1-12を用いたこと以外は、実施例P3と同様にして基材EX12-Stackおよび光学フィルターを作製した。
作製した基材の分光透過率を実施例P3と同様にして測定した。
また、作製した光学フィルターを用い、実施例P3と同様にして、光学特性および耐久性を評価した。結果を表11に示す。
【0360】
重合体(B1)中のポリアリレートの含有量は、好ましくは70~100質量%、より好ましくは90~100質量%、特に好ましくは100質量%である。つまり、重合体(B1)は、ポリアリレートである(ポリアリレートのみからなる)ことが特に好ましい。
重合体(B1)中のポリアリレートの含有量が100質量%以外の場合、該重合体(B1)に含まれるポリアリレート以外の成分としては、重合体(B1)を合成する際に用いた原料(未反応成分)や添加剤等が挙げられる。
色素(C)としては、無機化合物、有機化合物および有機無機化合物のいずれでも特に制限はなく、例えば、染料や色素として用いられている種々公知の化合物を用いることができる。
これらの化合物としては、例えば、アゾ系化合物、アゾメチン系化合物、アゾピリドン系化合物、ピラゾロンアゾ系化合物、インドール系化合物、アントラキノン系化合物、キノフタロン系化合物、クマリン系化合物、ジピロメテン系化合物、ピロロピロール系化合物、ジケトピロロピロール系化合物、ジフェニルメタン系化合物、トリアリールメタン系化合物、キサンテン系化合物、アクリジン系化合物、ポリメチン系化合物、オキソノール系化合物、メロシアニン系化合物、アリーリデン系化合物、ベンジリデン系化合物、シアニン系化合物、スクアリリウム系化合物、クロコニウム系化合物、ペリレン系化合物、ジオキサジン系化合物、フタロシアニン系化合物、ポルフィリン系化合物、テトラアザポルフィリン系化合物、サブフタロシアニン系化合物、これらの金属キレート化合物、金属ジチオラート系化合物が挙げられる。
なお、ポリメチン系化合物は、オキソノール系化合物、メロシアニン系化合物、アリーリデン系化合物、ベンジリデン系化合物、シアニン系化合物、スクアリリウム系化合物、クロコニウム系化合物を除くポリメチン系化合物であり、フタロシアニン系化合物はポルフィリン系化合物、テトラアザポルフィリン系化合物を除くフタロシアニン系化合物である。
光重合開始剤の使用量は、アクリル系光硬化性化合物を十分に硬化させることができる等の点から、アクリル系光硬化性化合物100質量部に対し、好ましくは0.5~15質量部、より好ましくは1~8質量部である。