(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173699
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】医薬組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/192 20060101AFI20241205BHJP
A61K 31/166 20060101ALI20241205BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20241205BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241205BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20241205BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
A61K31/192
A61K31/166
A61P29/00
A61P43/00 121
A61K9/20
A61K47/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024072763
(22)【出願日】2024-04-26
(31)【優先権主張番号】P 2023090619
(32)【優先日】2023-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002819
【氏名又は名称】大正製薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】桑田 亜矢
(72)【発明者】
【氏名】西島 正道
(72)【発明者】
【氏名】後藤 佳奈
【テーマコード(参考)】
4C076
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA36
4C076BB01
4C076CC04
4C076DD60
4C076FF36
4C076FF46
4C206AA01
4C206AA02
4C206DA22
4C206GA07
4C206GA22
4C206KA01
4C206KA04
4C206MA54
4C206NA03
4C206NA05
4C206ZA07
4C206ZA08
4C206ZC75
(57)【要約】
【課題】
本発明の目的は、ナプロキセン又はその塩及びエテンザミド又はその塩を含有し、保存安定性に優れた、医薬組成物を提供することである。
【解決手段】
(A)ナプロキセン又はその塩、(B)エテンザミド又はその塩、及び(C)カフェイン又はその塩を含有することを特徴とする医薬組成物、
(A)ナプロキセン又はその塩及び(B)エテンザミド又はその塩を含有する医薬組成物の変色抑制方法であって、(C)カフェイン又はその塩を含有させることを特徴とする、前記医薬組成物の変色抑制方法、である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ナプロキセン又はその塩、(B)エテンザミド又はその塩、及び(C)カフェイン又はその塩を含有することを特徴とする医薬組成物。
【請求項2】
(C)が無水カフェインである請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
医薬組成物が、固形製剤である請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
(A)ナプロキセン又はその塩及び(B)エテンザミド又はその塩を含有する医薬組成物の変色抑制方法であって、(C)カフェイン又はその塩を含有させることを特徴とする、前記医薬組成物の変色抑制方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナプロキセン又はその塩を含有した医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ナプロキセンは、プロピオン酸系の非ステロイド性解熱鎮痛消炎剤(NSAIDs)であり、発熱や炎症を引き起こす原因となるプロスタグランジンの生合成を抑制することによって、消炎、鎮痛、解熱作用を有する(非特許文献1)。現在NSAIDsは副作用が比較的少ないことから医療用だけでなく一般用医薬品においても解熱鎮痛薬及び感冒薬の主成分として多用されている。そのため、ナプロキセンの一般用医薬品への適用が期待される。ナプロキセンは上記のような薬理作用を有し、ナプロキセン自体の持つ薬効をさらに高めるための検討がなされている。例えば、ナプロキセンと特定の医薬成分の組合わせにより、解熱鎮痛消炎効果が増強させることが報告されている(特許文献1、2)。また制酸剤等の塩基性化合物との組み合わせにより、崩壊性が改善することが報告されている。(特許文献3)
しかしながら、ナプロキセンとエテンザミドとを配合した医薬組成物について、製剤の安定性に直接影響を与えるような相互作用が生じるか否かについては知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-76305号公報
【特許文献2】特開2018-76306号公報
【特許文献3】特開2018-76310号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】ナイキサン錠100mgインタビューフォーム
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、ナプロキセンと解熱鎮痛成分であるエテンザミドを配合した製剤の安定性を確認したところ、驚くべきことに経時的に外観変化を及ぼすことを発見した。
【0006】
したがって、本発明の目的は、ナプロキセン又はその塩及びエテンザミド又はその塩を含有し、保存安定性に優れた、医薬組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく種々の検討を行ったところ、特定の成分を配合することにより、外観変化を抑制できることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は
(1)(A)ナプロキセン又はその塩、(B)エテンザミド又はその塩、及び(C)カフェイン又はその塩を含有することを特徴とする医薬組成物、
(2)(C)が無水カフェインである(1)に記載の医薬組成物、
(3)医薬組成物が、固形製剤である(1)又は(2)に記載の医薬組成物、
(4)(A)ナプロキセン又はその塩及び(B)エテンザミド又はその塩を含有する医薬組成物の変色抑制方法であって、(C)カフェイン又はその塩を含有させることを特徴とする、前記医薬組成物の変色抑制方法、
である。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、保存安定性に優れたナプロキセン又はその塩及びエテンザミド又はその塩を含有する医薬組成物の製造が可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明のナプロキセン又はその塩を含有する医薬組成物について詳述し説明する。
<(A)成分>
本発明の医薬組成物中における(A)成分であるナプロキセンは、ナプロキセンのみならず、ナプロキセンの薬学上許容される塩、さらには水やアルコール等との溶媒和物が含まれる。これらは公知の化合物であり、公知の方法により製造できるほか、市販のものを用いることができる。本発明において、ナプロキセン又はその塩としては、ナプロキセンが好ましい。
発明の医薬組成物に用いられるナプロキセンは、その化学名が、(2S)-2-(6-メトキシナフタレン-2-イル)プロパン酸((2S)-2-(6-Methoxynaphthalen-2-yl)propanoic acid)であり、分子式がC14H14O3で、その分子量は230.26である。ナプロキセンは、プロピオン酸系の非ステロイド性消炎鎮痛剤としてすでに公知の消炎鎮痛剤であり、関節リウマチ、変形性関節症、痛風発作、強直性脊椎炎、腰痛症、肩関節周囲炎、頸肩腕症候群、腱・腱鞘炎、月経困難症、帯状疱疹の疾患の消炎、鎮痛、解熱や、外傷後並びに手術後の消炎、鎮痛、歯科・口腔外科領域における抜歯並びに小手術後の消炎、鎮痛などを目的として広く使用されているものである。
本発明の医薬組成物におけるナプロキセンの薬学的に許容される塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、メグルミン塩、トリス塩、塩基性アミノ酸の塩等が挙げられる。
本発明の医薬組成物におけるナプロキセン又はその塩の配合量は、その薬効を示す量であれば特に限定されるものではないが、服用者の性別、年齢、症状等によって適宜決定すればよく、15歳以上の成人1日当たりの服用量として、通常10~1200mg、好ましくは15~900mg、より好ましくは20~600mgである。
また、医薬組成物全質量に対し、ナプロキセンの含有量は、1~90質量%が好ましく、5~80質量%がより好ましく、15~70質量%がさらに好ましい。
【0011】
<(B)成分>
本発明の医薬組成物におけるエテンザミド(2-エトキシベンザミド)は、サリチル酸系の非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)であり、解熱鎮痛成分として使用される。
本発明の医薬組成物におけるエテンザミドの薬学的に許容される塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、メグルミン塩、トリス塩、塩基性アミノ酸の塩等が挙げられる。
本発明の医薬組成物におけるエテンザミドの配合量は、その薬効を示す量であれば特に限定されるものではないが、服用者の性別、年齢、症状等によって適宜決定すればよく、15歳以上の成人1日当たりの服用量として、150~1500mgが好ましく、200~1500mgがより好ましく、250~1500mgがさらに好ましい。
また、医薬組成物全質量に対し、エテンザミドの含有量は、4~90質量%が好ましく、4-82質量%がより好ましく、10~82質量%がさらに好ましく、20~82質量%が特に好ましく、20~70質量%が最も好ましい。
【0012】
<(C)成分>
(A)成分と(B)成分との組み合わせにおいて(C)成分を併用することで、外観変化の生じ難い医薬組成物が製造可能となる。
(C)成分としては、外観変化を抑制する点から、カフェイン又はその塩であり、そのうちカフェイン水和物、無水カフェインが好ましく、無水カフェインがより好ましい。
(C)成分は1種単独で用いてもよいし、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
本発明の医薬組成物における(C)成分は特に限定されないが、日本薬局方に適合するものが好ましい。また、その薬学的に許容される塩類を用いることができ、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。本発明の医薬組成物におけるの薬学的に許容される塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、メグルミン塩、トリス塩、塩基性アミノ酸の塩等が挙げられる。
本発明の医薬組成物中におけるカフェイン又はその塩の1日あたりの15歳以上の服用量(配合量)は、特に限定されないが、50~250mgが好ましい。
本発明の医薬組成物中におけるカフェイン又はその塩の含有量は無水物の場合、ナプロキセン及びエテンザミドの外観変化抑制の観点から(A)成分及び(B)成分の合計値1質量部に対して、好ましくは0.01~1.0質量部、より好ましくは0.02~0.5質量部、特に好ましくは0.02~0.45質量部である。
本発明の医薬組成物全質量に対し、C成分の含有量は外観変化の観点から10~90質量%が好ましく、2~50質量%がより好ましく、2~30質量%がさらに好ましい。また、課題発生の観点からA成分1質量部に対してB成分は0.1~10質量部が好ましく、0.4~5質量部がより好ましい。
【0013】
本発明の医薬組成物は、通常、日本薬局方の製剤通則に規定されている剤形であれば特に限定されないが、外観変化の観点から好ましくは錠剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、丸剤、カプセル剤、特に好ましくは錠剤、散剤、細粒剤、顆粒剤であり、最も好ましくは錠剤である。日本薬局方の製剤通則に規定されている錠剤には、口腔内崩壊錠、チュアブル錠、発泡錠、分散錠及び溶解錠、フィルムコーティング錠、糖衣錠、積層錠などが含まれる。また、錠剤に割線や識別性向上のためのマーク、刻印を設けることができる。さらに、本製剤の錠剤は、丸錠であってもよいし、異型錠であってもよい。また、本製剤はミニタブレットでもよい。
【0014】
本発明の医薬組成物中には本発明の効果を損なわない質的、量的範囲で、通常用いられる他の有効成分、賦形剤、崩壊剤、結合剤、流動化剤、滑沢剤、酸味剤、甘味剤、矯味剤、清涼化剤、着色剤、発泡剤、界面活性剤、可塑剤、コーティング剤などを配合することができる。
【0015】
本発明の医薬組成物に配合できる他の有効成分としては、例えば、解熱鎮痛剤、抗ヒスタミン剤、鎮咳剤、気管支拡張剤、去痰剤、催眠鎮静剤、ビタミン類、アミノ酸類、抗炎症剤、胃粘膜保護剤、生薬類、漢方処方、カフェイン類等が挙げられ、これらからなる群より選ばれる1種又は2種以上を含有しても良い。
【0016】
本発明の医薬組成物に配合できる崩壊剤としては、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスポビドン、カルメロース、カルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、アルファー化デンプン等が挙げられ、結合剤としては、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、ゼラチン、アルファー化デンプン、ポリビニルピロリドン、プルラン等が挙げられ、滑沢剤としては、ショ糖脂肪酸エステル、硬化油、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム等が挙げられる。なお、本発明において、本発明の効果を損なわない範囲で、香料を配合することができる。
本発明の錠剤には、従来行われている錠剤の製造方法により、製造することができる。すなわち、本製剤は、医薬有効成分と上述のような添加剤を混合機などの適当な混合機で混合して錠剤用混合末を製造した後、当該混合末を直接圧縮打錠する方法、または、顆粒を圧縮打錠する方法等により製造することができる。顆粒の製造方法は、乾式造粒法(スラッグ法、ローラーコンパクター法)、湿式造粒法により製造することができ、特に限定はしないが好ましくは湿式造粒法である。湿式造粒法としては、撹拌造粒法、流動層造粒法、押し出し造粒法、転動造粒法、噴霧造粒等で製造すればよいが、好ましくは攪拌造粒法、流動層造粒法である。錠剤用混合末または当該混合末の顆粒を圧縮打錠する機械としては、単発打錠機、ロータリー式打錠機等を用いることができる。
【実施例0017】
以下に実施例及び比較例を挙げ、本発明をより詳しく説明するが、本発明はこれら実施例等に限定されるものではない。
【0018】
(固形製剤の調製)
(実施例1~7、比較例1~4)
表1に記載の配合組成で混合末の各原料成分を秤量した後、均一に混合し製剤を得た。
【0019】
【0020】
(試験例)
<評価方法>
実施例1~7及び比較例1~4の製剤について、以下の試験方法により保存安定性(外観変化)の評価を行った。
保存安定性(外観評価)
得られた製剤を、密栓した状態(気密容器)で、室温6000Lx条件下に14日間保存した後、保存開始直後及び14日間保存後におけるサンプルの外観変化(変色)の有無を目視にて観察した。本発明の外観変化の程度は5段階で評価した。また製造直後との相対評価で実施し、変化がない場合を0(変化なし)、認識できるごくわずかな外観の変化があった場合を1(ごくわずかに変化あり)、認識できるわずかな外観の変化があった場合を2(わずかに変化あり)、認識できる変化があった場合を3(変化あり)、認識できる明らかな変化があった場合を4(著しい変化あり)とし、3人の平均値を算出した。2以下を許容とした。
(結果)
それぞれの外観の変化の結果を表2に示す。
【0021】
【0022】
表2に示すように、ナプロキセンを配合した比較例1と比較して、ナプロキセン及びエテンザミドを配合した比較例2では、明らかな変色が確認された。本発明の無水カフェインを配合した実施例1~7では、バレイショデンプンやデンプングリコール酸ナトリウムを配合した比較例3、4と比べて大幅な変色抑制効果が明らかとなった。