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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024001737
(43)【公開日】2024-01-10
(54)【発明の名称】ショベル
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/22 20060101AFI20231227BHJP
   E02F 9/26 20060101ALI20231227BHJP
   B66C 23/00 20060101ALI20231227BHJP
   B66C 13/22 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
E02F9/22
E02F9/26 B
B66C23/00 C
B66C13/22 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022100592
(22)【出願日】2022-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】山本 泰広
【テーマコード(参考)】
2D003
2D015
3F204
3F205
【Fターム(参考)】
2D003AA01
2D003AB01
2D003AB02
2D003AB03
2D003AC11
2D003BA01
2D003BA07
2D003BB12
2D003CA02
2D003DA02
2D003DA04
2D003DB02
2D003DB04
2D003DB05
2D003FA02
2D015HA03
2D015HB02
2D015HB04
2D015HB05
3F204AA09
3F204BA02
3F204CA03
3F204DA04
3F204EB08
3F205AA07
3F205CA07
(57)【要約】
【課題】吊り荷の揺れを抑制できるショベルを提供すること。
【解決手段】ショベル100は、下部走行体1と、下部走行体1に旋回可能に搭載される上部旋回体3と、上部旋回体3に取り付けられる、吊り荷を吊るフック6eを有するアタッチメントATと、コントローラ30と、を備える。コントローラ30は、走行中における吊り荷の揺れを抑制するためにアクチュエータを動作させる。アクチュエータは、例えば、走行油圧モータ2M、旋回油圧モータ2A、ブームシリンダ7、及びアームシリンダ8のうちの少なくとも一つである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部走行体と、
前記下部走行体に旋回可能に搭載される上部旋回体と、
前記上部旋回体に取り付けられる、吊り荷を吊るフックを有するアタッチメントと、
制御装置と、を備え、
前記制御装置は、走行中における前記吊り荷の揺れを抑制するためにアクチュエータを動作させる、
ショベル。
【請求項2】
前記アクチュエータは、走行油圧モータ、旋回油圧モータ、ブームシリンダ、及びアームシリンダのうちの少なくとも一つである、
請求項1に記載のショベル。
【請求項3】
前記吊り荷の揺れに関する物理量を検出する検出装置を備え、
前記制御装置は、前記検出装置が検出した物理量に基づいて前記アクチュエータを動作させるタイミングを決定する、
請求項1に記載のショベル。
【請求項4】
前記制御装置は、前記フックに対して前記吊り荷が前方に揺れたときに前記下部走行体を加速させること若しくはアームを開くことによって、又は、前記フックに対して前記吊り荷が後方に揺れたときに前記下部走行体を減速させること若しくは前記アームを閉じることによって、前記吊り荷の揺れを抑制する、
請求項1に記載のショベル。
【請求項5】
前記制御装置は、前記フックに対して前記吊り荷が左方に揺れたときに前記上部旋回体を左旋回させることによって、又は、前記フックに対して前記吊り荷が右方に揺れたときに前記上部旋回体を右旋回させることによって、前記吊り荷の揺れを抑制する、
請求項1に記載のショベル。
【請求項6】
走行油圧モータを操作する走行操作装置を備え、
前記制御装置は、吊り作業が行われているときに、前記走行操作装置が出力する走行指令に対する前記走行油圧モータの応答性を低下させる、
請求項1から請求項5の何れかに記載のショベル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ショベルに関する。
【背景技術】
【0002】
アタッチメントに吊り荷を吊るためのフックを有するショベルが知られている(特許文献1参照。)。
【0003】
このショベルは、ブームが操作されたときに、ブーム角度の検出値とアーム角度の検出値とに基づいてフックの位置を演算し、そのフックが常に同一鉛直線上で移動するようにアームを自動的に開閉させるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-226862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、フックで吊り荷を吊った状態で走行が行われると、吊り荷の揺れが発生する又は吊り荷の揺れが大きくなるおそれがある。
【0006】
そこで、吊り荷の揺れを抑制できるショベルを提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の実施形態に係るショベルは、下部走行体と、前記下部走行体に旋回可能に搭載される上部旋回体と、前記上部旋回体に取り付けられる、吊り荷を吊るフックを有するアタッチメントと、制御装置と、を備え、前記制御装置は、走行中における前記吊り荷の揺れを抑制するためにアクチュエータを動作させる。
【発明の効果】
【0008】
上述のショベルは、吊り荷の揺れを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】ショベルの側面図である。
図2】ショベルの制御システムの構成例を概略的に示す図である。
図3】ショベルの油圧システムの構成例を概略的に示す図である。
図4A】アームシリンダの操作に関する油圧システムの一部の図である。
図4B】ブームシリンダの操作に関する油圧システムの一部の図である。
図4C】バケットシリンダの操作に関する油圧システムの一部の図である。
図4D】旋回油圧モータの操作に関する油圧システムの一部の図である。
図4E】左走行油圧モータの操作に関する油圧システムの一部の図である。
図4F】右走行油圧モータの操作に関する油圧システムの一部の図である。
図5】揺れ抑制システムの構成例を概略的に示す図である。
図6】吊り荷重量の算出に関するパラメータを説明する模式図である。
図7】電磁弁に入力される走行指令の時間的推移の一例を示すグラフである。
図8】吊り点の位置と吊り荷の重心の位置との関係を示すグラフである。
図9】揺れ抑制部が吊り荷の揺れを抑制する様子を説明する概念図である。
図10】揺れ抑制部が吊り荷の揺れを抑制する様子を説明する概念図である。
図11】吊り荷の揺れを抑制するために下部走行体を自動的に前進させるショベルの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本開示の実施形態に係るショベル100について説明する。最初に、図1を参照して、ショベル100の概要について説明する。図1は、ショベル100の側面図である。
【0011】
ショベル100は、下部走行体1と、旋回機構2を介して旋回自在に下部走行体1に搭載される上部旋回体3と、アタッチメントATを構成するブーム4、アーム5、及び、バケット6と、キャビン10とを備える。
【0012】
下部走行体1は、左右一対のクローラが走行油圧モータ2M(図2参照)でそれぞれ油圧駆動されることにより、ショベル100を走行させる。走行油圧モータ2Mは、左走行油圧モータ2ML及び右走行油圧モータ2MRを含む。つまり、左走行油圧モータ2ML及び右走行油圧モータ2MRは、被駆動部としての下部走行体1(クローラ)を駆動する。
【0013】
上部旋回体3は、旋回油圧モータ2A(図2参照)で駆動されることにより、下部走行体1に対して旋回する。つまり、旋回油圧モータ2Aは、被駆動部としての上部旋回体3を駆動する旋回駆動部であり、上部旋回体3の向きを変化させることができる。
【0014】
尚、上部旋回体3は、旋回油圧モータ2Aの代わりに、電動アクチュエータとしての旋回用電動機により電気駆動されてもよい。つまり、旋回用電動機は、旋回油圧モータ2Aと同様、被駆動部としての上部旋回体3を駆動する旋回駆動部であり、上部旋回体3の向きを変化させることができる。
【0015】
ブーム4は、上部旋回体3の前部中央に回動可能に取り付けられ、ブーム4の先端には、アーム5が回動可能に取り付けられ、アーム5の先端には、エンドアタッチメントとしてのバケット6が回動可能に取り付けられている。ブーム4、アーム5、及びバケット6は、油圧アクチュエータとしてのブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9によりそれぞれ油圧駆動される。
【0016】
尚、バケット6は、エンドアタッチメントの一例であり、アーム5の先端には、作業内容等に応じて、バケット6の代わりに、他のエンドアタッチメント、例えば、法面用バケット、浚渫用バケット、又はブレーカ等が取り付けられてもよい。
【0017】
バケットシリンダ9のロッド側端部とバケット6とは、バケットリンク6aによって連結されている。具体的には、バケットリンク6aの上端部は、バケットシリンダトップピン6bを介してバケットシリンダ9のロッド側端部及びアームリンク6cに回動可能に連結されている。バケットリンク6aの下端部は、バケットピン6dを介してバケット6の後面にあるブラケットに回動可能に連結されている。また、バケットリンク6aには、クレーン作業(吊り作業)用のフック6eが収納可能に且つ回動可能に取り付けられている。
【0018】
フック6eは、掘削作業時には、主にバケットリンク6aで構成されるフック収納部6f内に収納される。バケット6の動作を妨げることがないようにするためである。一方、フック6eは、吊り作業時にはフック収納部6fから引っ張り出され、フック収納部6fからその先端が突出するように構成されている。図1は、フック収納部6fから引っ張り出された状態のフック6eを示している。
【0019】
フック収納部6fには、フック6eの収納状態を検出する検出装置(図示せず)が設けられていてもよい。例えば、検出装置は、フック収納部6f内にフック6eが存在する場合に導通状態となり、フック収納部6f内にフック6eが存在しない場合に遮断状態となるスイッチであり、フック6eが収納されるフック収納部6fに設けられている。尚、検出装置の検出信号は、後述するコントローラ30に取り込まれる。
【0020】
キャビン10は、操作者が搭乗する運転室であり、上部旋回体3の前部左側に設けられている。
【0021】
次に、図1に加えて、図2を参照し、ショベル100の具体的な構成について説明する。図2は、ショベル100の制御システムの構成例を概略的に示す図である。尚、図2において、機械的動力伝達ライン、作動油ライン、パイロットライン、電気信号ラインは、それぞれ、二重線、実線、破線、点線で示されている。
【0022】
ショベル100の駆動系は、エンジン11と、レギュレータ13と、メインポンプ14と、コントロールバルブユニット17を含む。また、ショベル100の油圧駆動系は、下部走行体1、上部旋回体3、ブーム4、アーム5、及びバケット6のそれぞれを油圧駆動する走行油圧モータ2M、旋回油圧モータ2A、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9等の油圧アクチュエータを含む。
【0023】
エンジン11は、油圧駆動系における動力源であり、例えば、上部旋回体3の後部に搭載される。具体的には、エンジン11は、コントローラ30による直接的或いは間接的な制御下で、予め設定される目標回転数で一定回転し、メインポンプ14及びパイロットポンプ15を駆動する。エンジン11は、例えば、ディーゼルエンジンである。
【0024】
レギュレータ13は、メインポンプ14の吐出量を制御する。例えば、レギュレータ13は、コントローラ30からの制御指令に応じて、メインポンプ14の斜板の角度(傾転角)を調節する。レギュレータ13は、例えば、左レギュレータ13L及び右レギュレータ13Rを含む(図3参照)。
【0025】
メインポンプ14は、例えば、上部旋回体3の後部に搭載され、作動油ラインを通じてコントロールバルブユニット17に作動油を供給する。メインポンプ14は、エンジン11により駆動される。メインポンプ14は、例えば、可変容量式油圧ポンプであり、コントローラ30の制御下で、レギュレータ13により斜板の傾転角が調節されることでピストンのストローク長が調整され、吐出流量(押しのけ容積)が制御される。メインポンプ14は、例えば、左メインポンプ14L及び右メインポンプ14Rを含む(図3参照)。
【0026】
コントロールバルブユニット17は、例えば、上部旋回体3の中央部に搭載され、操作者による操作装置26に対する操作に応じて、油圧駆動系の制御を行う油圧制御装置である。コントロールバルブユニット17は、作動油ラインを介してメインポンプ14と接続され、メインポンプ14から供給される作動油を、操作装置26の操作状態に応じて、複数の油圧アクチュエータ(走行油圧モータ2M、旋回油圧モータ2A、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9)のそれぞれに選択的に供給する。具体的には、コントロールバルブユニット17は、メインポンプ14から油圧アクチュエータのそれぞれに供給される作動油の流量と流れる方向を制御する制御弁171~176を含む。より具体的には、制御弁171は、左走行油圧モータ2MLに対応し、制御弁172は、右走行油圧モータ2MRに対応し、制御弁173は、旋回油圧モータ2Aに対応する。また、制御弁174は、バケットシリンダ9に対応し、制御弁175は、ブームシリンダ7に対応し、制御弁176は、アームシリンダ8に対応する。制御弁175は、例えば、制御弁175L及び制御弁175Rを含み、制御弁176は、例えば、制御弁176L、176Rを含む(図3参照)。
【0027】
ショベル100の操作系は、パイロットポンプ15及び操作装置26を含む。また、ショベル100の操作系は、コントローラ30によるマシンコントロール機能に関する構成として電磁弁31を含む。
【0028】
パイロットポンプ15は、例えば、上部旋回体3の後部に搭載され、パイロットラインを介して制御弁171~176のそれぞれのパイロットポートにパイロット圧を供給する。パイロットポンプ15は、例えば、固定容量式油圧ポンプであり、エンジン11により駆動される。
【0029】
操作装置26は、キャビン10内の運転席の近くに設けられ、操作者が各種動作要素(下部走行体1、上部旋回体3、ブーム4、アーム5、及びバケット6等)の操作を行うための操作入力手段である。換言すれば、操作装置26は、操作者がそれぞれの動作要素を駆動する油圧アクチュエータ(走行油圧モータ2M、旋回油圧モータ2A、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9等)の操作を行うための操作入力手段である。制御弁171~176のそれぞれのパイロットポートには、操作装置26の操作内容(操作方向及び操作量)に応じたパイロット圧が入力される。図示例では、操作装置26は、上部旋回体3(旋回油圧モータ2A)及びアーム5(アームシリンダ8)を操作するレバー装置である左操作レバー26L(図4A参照)と、ブーム4(ブームシリンダ7)及びバケット6(バケットシリンダ9)を操作するレバー装置である右操作レバー26R(図4B参照)と、下部走行体1のクローラ(走行油圧モータ2M)を操作する走行操作装置26D(図4E参照)とを含む。走行操作装置26Dは、左クローラ(左走行油圧モータ2ML)を操作する左走行レバー26DL(図4E参照)と、右クローラ(右走行油圧モータ2MR)を操作する右走行レバー26DR(図4F参照)とを含む。走行操作装置26Dは、左クローラ(左走行油圧モータ2ML)を操作する左走行ペダル、及び、右クローラ(右走行油圧モータ2MR)を操作する右走行ペダルを含んでいてもよい。
【0030】
図示例では、操作装置26は、電気信号を出力する電気式であり、操作装置26からの電気信号は、コントローラ30に入力され、コントローラ30は、入力される電気信号に応じて、制御弁171~176のそれぞれのパイロットポートに作用するパイロット圧を制御することにより、操作装置26に対する操作内容に応じた、各種油圧アクチュエータの動作を実現する。具体的には、パイロットポンプ15と制御弁171~176のそれぞれのパイロットポートとの間には、コントローラ30からの電気信号に応じて動作する電磁弁31が配置されている。そして、操作装置26が操作されると、コントローラ30は、その操作量(例えば、レバー操作量)に対応する電気信号によって電磁弁31を制御してパイロット圧を増減させることで、操作装置26に対する操作の内容に合わせて、制御弁171~176のそれぞれを動作させることができる。尚、制御弁171~176は、コントローラ30からの指令により駆動する電磁ソレノイド式スプール弁であってよい。
【0031】
ショベル100の制御系は、コントローラ30と、吐出圧センサ28と、操作センサ29と、電磁弁31と、表示装置40と、入力装置42と、音出力装置43と、記憶装置47と、ブーム角度センサS1と、アーム角度センサS2と、バケット角度センサS3と、機体傾斜センサS4と、旋回状態センサS5と、撮像装置S6と、測位装置Q1と、通信装置T1とを含む。
【0032】
コントローラ30(制御装置の一例)は、例えば、キャビン10内に設けられ、ショベル100の駆動制御を行う。コントローラ30は、その機能が任意のハードウェア、ソフトウェア、或いは、その組み合わせにより実現されてよい。例えば、コントローラ30は、CPU(Central Processing Unit)と、ROM(Read Only Memory)と、RAM(Random Access Memory)と、不揮発性の補助記憶装置と、各種入出力インターフェース等を含むマイクロコンピュータを中心に構成される。コントローラ30は、例えば、ROMや不揮発性の補助記憶装置に格納される各種プログラムをCPU上で実行することにより各種機能を実現する。
【0033】
図示例では、コントローラ30は、操作者等の所定操作により予め設定される作業モード等に基づき、目標回転数を設定し、エンジン11を一定回転させる駆動制御を行う。コントローラ30は、必要に応じてレギュレータ13に対して制御指令を出力し、メインポンプ14の吐出量を変化させてもよい。
【0034】
コントローラ30は、操作者による操作装置26を通じたショベル100の手動操作をガイド(案内)するマシンガイダンス機能に関する制御を行うように構成されていてもよい。また、コントローラ30は、操作者による操作装置26を通じたショベル100の手動操作を自動的に支援するマシンコントロール機能に関する制御を行うように構成されていてもよい。この場合、コントローラ30は、マシンガイダンス機能及びマシンコントロール機能に関する機能部として、マシンガイダンス部50を含んでいてもよい。また、コントローラ30は、荷重処理部60を含んでいてもよい。
【0035】
尚、コントローラ30の機能の一部は、他のコントローラ(制御装置)により実現されてもよい。すなわち、コントローラ30の機能は、複数のコントローラにより分散される態様で実現されてもよい。例えば、マシンガイダンス機能及びマシンコントロール機能は、専用のコントローラ(制御装置)により実現されてもよい。
【0036】
吐出圧センサ28は、メインポンプ14の吐出圧を検出する。吐出圧センサ28により検出された吐出圧に対応する検出信号は、コントローラ30に取り込まれる。吐出圧センサ28は、例えば、左吐出圧センサ28L及び右吐出圧センサ28Rを含む(図3参照)。
【0037】
操作センサ29は、操作装置26の操作内容(操作方向及び操作量)を検出する。操作センサ29の検出信号は、コントローラ30に取り込まれる。操作センサ29は、例えば、左操作レバー26Lの前後方向(アーム操作方向)における操作内容を検出する操作センサ29LA(図4A参照)、右操作レバー26Rの前後方向(ブーム操作方向)における操作内容を検出する操作センサ29RA(図4B参照)、右操作レバー26Rの左右方向(バケット操作方向)における操作内容を検出する操作センサ29RB(図4C参照)、左操作レバー26Lの左右方向(旋回操作方向)における操作内容を検出する操作センサ29LB(図4D参照)、左走行レバー26DLの操作内容を検出する操作センサ29DL(図4E参照)、及び、右走行レバー26DRの操作内容を検出する操作センサ29DR(図4F参照)を含む。
【0038】
図示例では、操作センサ29は、操作装置26の操作量(傾倒量)や傾倒方向を検出可能な傾斜センサであるが、エンコーダ又はポテンショメータ等の任意のセンサであってもよい。
【0039】
電磁弁31は、パイロットポンプ15と制御弁171~176のそれぞれのパイロットポートとを接続するパイロットラインに設けられ、その流路面積(作動油が通流可能な断面積)を変更できるように構成される。電磁弁31は、コントローラ30から入力される制御指令に応じて動作する。これにより、コントローラ30は、操作者により操作装置26が操作されていない場合であっても、パイロットポンプ15から吐出されるパイロット油を、電磁弁31を介し、制御弁171~176のそれぞれのパイロットポートに供給できる。図示例では、電磁弁31は、図4A図4Fに示すように、電磁弁31AL~電磁弁31FL及び電磁弁31AR~電磁弁31FRを含む。
【0040】
表示装置40は、キャビン10内の運転席に着座した操作者から視認し易い場所に設けられ、コントローラ30による制御下で、各種情報を表示する。表示装置40は、車載通信ネットワークを介してコントローラ30に接続されていてもよいし、一対一の専用線を介してコントローラ30に接続されていてもよい。
【0041】
入力装置42は、キャビン10内の運転席に着座した操作者の手が届く範囲に設けられ、操作者による各種操作入力を受け付け、操作入力に応じた信号をコントローラ30に出力する。入力装置42は、例えば、各種情報を表示する表示装置40の画面上に実装されるタッチパネル、レバー装置のレバー部の先端に設けられるノブスイッチ、表示装置40の周囲に設置されるボタンスイッチ、レバー、トグルスイッチ、又は、回転ダイヤル等である。入力装置42に対する操作に対応する信号は、コントローラ30に取り込まれる。
【0042】
また、入力装置42は、モードスイッチ42aを有する。モードスイッチ42aは、ショベル100の作業モードを切り替えるためのスイッチである。作業モードは、ショベル100による作業の種別を意味し、例えば、クレーンモード及び通常モード等を含む。尚、モードスイッチ42aは、表示装置40の画面上に表示されるソフトウェアスイッチであってもよく、表示装置40の周辺に設置されたハードウェアスイッチであってもよく、キャビン10内の別の位置に設置されたスイッチであってもよい。
【0043】
音出力装置43は、例えば、キャビン10内に設けられ、コントローラ30と接続され、コントローラ30による制御下で、音を出力する。音出力装置43は、例えば、スピーカ又はブザー等である。音出力装置43は、コントローラ30からの音出力指令に応じて各種情報を聴覚的に出力する。
【0044】
記憶装置47は、例えば、キャビン10内に設けられ、コントローラ30による制御下で、各種情報を記憶する。記憶装置47は、例えば、半導体メモリ等の不揮発性記憶媒体である。記憶装置47は、ショベル100の動作中に各種機器が出力する情報を記憶してもよく、ショベル100の動作が開始される前に各種機器を介して取得する情報を記憶してもよい。記憶装置47は、例えば、通信装置T1等を介して取得される、或いは、入力装置42等を通じて設定される目標点に関するデータを記憶していてもよい。目標点は、例えば、目標施工面上の点、又は、吊り作業の際に利用される目標吊り点等である。目標点に関するデータは、ショベル100の操作者により設定(保存)されてもよいし、施工管理者等により設定されてもよい。
【0045】
目標吊り点は、フック6eに吊された吊り荷の重心の真上に設定される点であり、コントローラ30は、フック6e(吊り点)の位置を目標吊り点に合わせることにより、吊り荷の揺れを抑制できる。
【0046】
ブーム角度センサS1は、ブーム4に取り付けられ、ブーム4の上部旋回体3に対する回動角度(以下、「ブーム角度」)、例えば、側面視において、上部旋回体3の旋回平面(旋回軸に垂直な平面)に対してブーム4の両端の点(連結ピンの中心点)を結ぶ直線が成す角度を検出する。ブーム角度センサS1は、例えば、ロータリエンコーダ、加速度センサ、6軸センサ、IMU(Inertial Measurement Unit:慣性計測装置)、又は、それらの組み合わせ等である。また、ブーム角度センサS1は、可変抵抗器を利用したポテンショメータ、ブーム角度に対応する油圧シリンダ(ブームシリンダ7)のストローク量を検出するシリンダセンサ等で構成されていてもよい。アーム角度センサS2及びバケット角度センサS3についても同様である。ブーム角度センサS1によるブーム角度に対応する検出信号は、コントローラ30に取り込まれる。
【0047】
アーム角度センサS2は、アーム5に取り付けられ、アーム5のブーム4に対する回動角度(以下、「アーム角度」)、例えば、側面視において、ブーム4の両端の点(連結ピンの中心点)を結ぶ直線に対してアーム5の両端の点(連結ピンの中心点)を結ぶ直線が成す角度を検出する。アーム角度センサS2によるアーム角度に対応する検出信号は、コントローラ30に取り込まれる。
【0048】
バケット角度センサS3は、バケット6に取り付けられ、バケット6のアーム5に対する回動角度(以下、「バケット角度」)、例えば、側面視において、アーム5の両端の点(連結ピンの中心点)を結ぶ直線に対してバケット6の支点(連結ピンの中心点)と先端(刃先)とを結ぶ直線が成す角度を検出する。バケット角度センサS3によるバケット角度に対応する検出信号は、コントローラ30に取り込まれる。
【0049】
機体傾斜センサS4は、水平面に対する機体(上部旋回体3又は下部走行体1)の傾斜状態を検出する。機体傾斜センサS4は、例えば、上部旋回体3に取り付けられ、ショベル100(すなわち、上部旋回体3)の前後方向及び左右方向の2軸回りの傾斜角度(以下、「前後傾斜角」及び「左右傾斜角」)を検出する。機体傾斜センサS4は、例えば、ロータリエンコーダ、加速度センサ、6軸センサ、IMU、又は、それらの組み合わせ等である。機体傾斜センサS4による傾斜角度(前後傾斜角及び左右傾斜角)に対応する検出信号は、コントローラ30に取り込まれる。
【0050】
旋回状態センサS5は、上部旋回体3の旋回状態に関する情報を出力する。旋回状態センサS5は、例えば、上部旋回体3の旋回角速度を検出する。旋回状態センサS5は、旋回角度を検出してもよい。旋回状態センサS5は、例えば、ジャイロセンサ、レゾルバ、又はロータリエンコーダ等である。旋回状態センサS5による上部旋回体3の旋回角速度に対応する検出信号は、コントローラ30に取り込まれる。
【0051】
空間認識装置としての撮像装置S6は、ショベル100の周辺を撮像する。図示例では、撮像装置S6は、ショベル100の前方を撮像するカメラS6F、ショベル100の左方を撮像するカメラS6L、ショベル100の右方を撮像するカメラS6R、及び、ショベル100の後方を撮像するカメラS6Bを含む。尚、撮像装置S6は、直接、コントローラ30と通信可能に接続されてもよい。
【0052】
図示例では、カメラS6Fは、キャビン10の天井、すなわち、キャビン10の内部に取り付けられている。カメラS6Fは、キャビン10の屋根、ブーム4の側面等、キャビン10の外部に取り付けられていてもよい。カメラS6Lは、上部旋回体3の上面左端に取り付けられ、カメラS6Rは、上部旋回体3の上面右端に取り付けられ、カメラS6Bは、上部旋回体3の上面後端に取り付けられている。
【0053】
撮像装置S6(カメラS6F、カメラS6B、カメラS6L、及びカメラS6R)のそれぞれは、例えば、広い画角をもたらす単眼の広角カメラである。撮像装置S6のそれぞれは、ステレオカメラ又は距離画像カメラ等であってもよい。撮像装置S6のそれぞれによる撮像画像は、表示装置40を介してコントローラ30に取り込まれる。
【0054】
空間認識装置としての撮像装置S6は、物体検知装置として機能してもよい。この場合、撮像装置S6は、ショベル100の周囲に存在する物体を検知してよい。検知対象の物体には、例えば、人、動物、車両、建設機械、建造物、及び穴等が含まれうる。物体検知装置としての撮像装置S6は、撮像装置S6又はショベル100から認識された物体までの距離を算出してもよい。物体検知装置としての撮像装置S6は、ステレオカメラ又は距離画像センサ等であってもよい。具体的には、撮像装置S6は、CCD又はCMOS等の撮像素子を有する単眼カメラであり、撮像した画像を表示装置40に出力する。
【0055】
ショベル100には、撮像装置S6に加えて、空間認識装置として、例えば、超音波センサ、ミリ波レーダ、LIDAR、赤外線センサ等の他の物体検知装置が設けられてもよい。空間認識装置としてのミリ波レーダ、超音波センサ、又はレーザレーダ等は、多数の信号(レーザ光等)を物体に向けて発し、その反射信号を受信することで、反射信号から物体の距離及び方向を検出してもよい。
【0056】
ブームシリンダ7にはブームロッド圧センサS7R及びブームボトム圧センサS7Bが取り付けられている。アームシリンダ8にはアームロッド圧センサS8R及びアームボトム圧センサS8Bが取り付けられている。バケットシリンダ9にはバケットロッド圧センサS9R及びバケットボトム圧センサS9Bが取り付けられている。ブームロッド圧センサS7R、ブームボトム圧センサS7B、アームロッド圧センサS8R、アームボトム圧センサS8B、バケットロッド圧センサS9R、及びバケットボトム圧センサS9Bは、集合的に「シリンダ圧センサ」とも称される。
【0057】
ブームロッド圧センサS7Rはブームシリンダ7のロッド側油室の圧力(以下、「ブームロッド圧」とする。)を検出し、ブームボトム圧センサS7Bはブームシリンダ7のボトム側油室の圧力(以下、「ブームボトム圧」とする。)を検出する。アームロッド圧センサS8Rはアームシリンダ8のロッド側油室の圧力(以下、「アームロッド圧」とする。)を検出し、アームボトム圧センサS8Bはアームシリンダ8のボトム側油室の圧力(以下、「アームボトム圧」とする。)を検出する。バケットロッド圧センサS9Rはバケットシリンダ9のロッド側油室の圧力(以下、「バケットロッド圧」とする。)を検出し、バケットボトム圧センサS9Bはバケットシリンダ9のボトム側油室の圧力(以下、「バケットボトム圧」とする。)を検出する。
【0058】
旋回油圧モータ2Aは、第1ポート2A1及び第2ポート2A2を有している。油圧センサ21は、旋回油圧モータ2Aの第1ポート2A1の作動油の圧力を検出する。油圧センサ22は、旋回油圧モータ2Aの第2ポート2A2の作動油の圧力を検出する。油圧センサ21及び油圧センサ22のそれぞれにより検出された圧力に対応する検出信号は、コントローラ30に取り込まれる。
【0059】
また、第1ポート2A1は、リリーフ弁23を介して作動油タンクと接続される。リリーフ弁23は、第1ポート2A1側の圧力が所定のリリーフ圧に達した場合に開き、第1ポート2A1側の作動油を作動油タンクに排出する。同様に、第2ポート2A2は、リリーフ弁24を介して作動油タンクと接続される。リリーフ弁24は、第2ポート2A2側の圧力が所定のリリーフ圧に達した場合に開き、第2ポート2A2側の作動油を作動油タンクに排出する。
【0060】
測位装置Q1は、上部旋回体3の位置を測定するように構成されている。図示例では、測位装置Q1は、GNSS(Global Navigation Satellite System)コンパスであり、上部旋回体3の位置及び向きを検出し、上部旋回体3の位置及び向きに対応する検出信号は、コントローラ30に取り込まれる。尚、上部旋回体3の向きは、上部旋回体3に取り付けられた方位センサ等の別の装置により検出されてもよい。
【0061】
通信装置T1は、移動体通信網、衛星通信網、又はインターネット網等を含む任意の通信ネットワークを通じて外部機器と通信を行うように構成されている。具体的には、通信装置T1は、LTE(Long Term Evolution)、4G(4th Generation)、又は、5G(5th Generation)等の移動体通信規格に対応する移動体通信モジュール、又は、衛星通信網に接続するための衛星通信モジュール等で構成されていてもよい。
【0062】
マシンガイダンス部50は、マシンガイダンス機能を実行するように構成されている。図示例では、マシンガイダンス部50は、目標点と制御点(例えば、エンドアタッチメントの作業部位)との距離等の作業情報を、表示装置40又は音出力装置43等を通じて、操作者に伝える。目標点に関するデータは、記憶装置47に予め記憶されている。目標点に関するデータは、基準座標系で表現されている。基準座標系は、例えば、世界測地系である。世界測地系は、地球の重心に原点をおき、X軸をグリニッジ子午線と赤道との交点の方向に、Y軸を東経90度の方向に、そして、Z軸を北極の方向にとる三次元直交XYZ座標系である。操作者は、入力装置42を通じ、施工現場の任意の点を基準点と定めた上で、その基準点と目標点との間の相対的な位置関係を設定してもよい。エンドアタッチメントの作業部位は、例えば、バケット6の爪先、バケット6の背面、又は、フック6e等である。マシンガイダンス部50は、表示装置40又は音出力装置43等を通じて、作業情報を操作者に通知し、操作者による操作装置26を通じたショベル100の操作をガイドする。
【0063】
また、マシンガイダンス部50は、マシンコントロール機能を実行するように構成されていてもよい。マシンガイダンス部50は、例えば、操作者が手動で操作を行っているときに、目標点と制御点(エンドアタッチメントの作業部位における点)とが一致するように、旋回油圧モータ2A、走行油圧モータ2M、ブーム4、アーム5、及び、バケット6の少なくとも一つを自動的に動作させてもよい。
【0064】
図示例では、マシンガイダンス部50は、ブーム角度センサS1、アーム角度センサS2、バケット角度センサS3、機体傾斜センサS4、旋回状態センサS5、撮像装置S6、測位装置Q1、通信装置T1、及び入力装置42等から情報を取得する。そして、マシンガイダンス部50は、取得した情報に基づき、目標点と制御点との間の距離を算出し、音出力装置43からの音及び表示装置40に表示される画像により、目標点と制御点との間の距離の大きさを操作者に通知したり、制御点と目標点とが一致するように、アクチュエータの動作を自動的に制御したりする。マシンガイダンス部50は、マシンガイダンス機能及びマシンコントロール機能に関する機能要素として、位置算出部51、距離算出部52、情報伝達部53、及び自動制御部54を含む。
【0065】
位置算出部51は、所定の測位対象の位置を算出する。例えば、位置算出部51は、制御点の基準座標系における座標を算出する。具体的には、位置算出部51は、下部走行体1の走行距離、上部旋回体3の旋回角度、並びに、ブーム4、アーム5、及びバケット6のそれぞれの回動角度(ブーム角度、アーム角度、及びバケット角度)等から制御点の座標を算出する。
【0066】
距離算出部52は、2つの測位対象間の距離を算出するように構成されている。図示例では、距離算出部52は、制御点と目標点との間の距離を算出する。例えば、距離算出部52は、フック6e上の制御点と目標吊り点との間の距離、又は、バケット6の爪先上の制御点と目標施工面上の点との間の距離等を算出する。
【0067】
情報伝達部53は、表示装置40又は音出力装置43等の通知手段を通じて、各種情報をショベル100の操作者に伝達(通知)する。情報伝達部53は、距離算出部52により算出された各種距離等の大きさをショベル100の操作者に通知してもよい。例えば、情報伝達部53は、表示装置40による視覚情報及び音出力装置43による聴覚情報の少なくとも一方を用いて、制御点と目標点との間の距離の大きさを操作者に伝えてもよい。
【0068】
具体的には、情報伝達部53は、音出力装置43による断続音を用いて、制御点と目標点との間の距離の大きさを操作者に伝えてもよい。この場合、情報伝達部53は、その距離が小さくなるほど、断続音の間隔を短くし、その距離が大きくなるほど、断続音の間隔を長くしてよい。また、情報伝達部53は、連続音を用いてもよく、音の高低又は強弱等を変化させながら、その距離の大きさの違いを表すようにしてもよい。また、情報伝達部53は、バケット6の先端部における制御点が目標施工面よりも低い位置になった、つまり、目標施工面を超えてしまった場合、音出力装置43を通じて警報を発してもよい。この警報は、例えば、断続音より顕著に大きい連続音である。
【0069】
また、情報伝達部53は、制御点と目標点との間の距離の大きさ等を作業情報として表示装置40に表示させてもよい。表示装置40は、コントローラ30による制御下で、撮像装置S6から受信した画像データと共に、情報伝達部53から受信した作業情報を表示してもよい。情報伝達部53は、アナログメータの画像又はバーグラフインジケータの画像等を用いて、その距離の大きさを操作者に伝えるようにしてもよい。
【0070】
自動制御部54は、アクチュエータを自動的に動作させることで操作者による操作装置26を通じたショベル100の手動操作を自動的に支援する。具体的には、自動制御部54は、複数の油圧アクチュエータのそれぞれに対応する制御弁のパイロットポートに作用するパイロット圧を個別に且つ自動的に調整することができる。これにより、自動制御部54は、それぞれの油圧アクチュエータを自動的に動作させることができる。自動制御部54によるマシンコントロール機能に関する制御は、例えば、入力装置42に含まれる所定のスイッチが押下された場合に実行されてよい。所定のスイッチは、例えば、マシンコントロールスイッチ(以下、「MC(Machine Control)スイッチ」)であり、ノブスイッチとして操作装置26(例えば、アーム5の操作に用いるレバー装置)の把持部の先端に配置されていてもよい。以下の説明は、MCスイッチが押下されている場合に実行されるマシンコントロール機能に関する。
【0071】
例えば、自動制御部54は、MCスイッチ等が押されている場合、掘削作業を支援するために、アームシリンダ8の動作に合わせて、ブームシリンダ7及びバケットシリンダ9の少なくとも一つを自動的に伸縮させる。具体的には、自動制御部54は、操作者が手動でアーム5の閉じ操作(以下、「アーム閉じ操作」)を行っている場合に、目標施工面における目標点とバケット6の爪先又は背面等の作業部位における制御点とが一致するようにブームシリンダ7及びバケットシリンダ9の少なくとも一つを自動的に伸縮させる。この場合、操作者は、例えば、アーム5の操作に対応するレバー装置をアーム閉じ方向に操作するだけで、バケット6の爪先等を目標施工面に一致させながら、アーム5を閉じることができる。
【0072】
或いは、自動制御部54は、MCスイッチ等が押されている場合、走行を伴う吊り作業を支援するために、下部走行体1の走行動作に合わせて、旋回油圧モータ2A、ブームシリンダ7、及びアームシリンダ8の少なくとも一つを自動的に動作させる。具体的には、自動制御部54は、操作者が手動で走行操作(前進操作)を行っている場合に、目標吊り点とフック6eにおける制御点(吊り点)とが一致するように旋回油圧モータ2A、ブームシリンダ7、及びアームシリンダ8の少なくとも一つを自動的に動作させる。この場合、操作者は、例えば、走行操作に対応するレバー装置を前進方向に操作するだけで、フック6eにおける制御点(吊り点)を目標吊り点に一致させながら、すなわち、吊り荷の揺れを抑えながら、下部走行体1を前進させることができる。
【0073】
図示例では、自動制御部54は、走行中にMCスイッチ等が押下されている場合、フック6eに吊された吊り荷の前後方向(X軸方向)における揺れを抑制するために走行油圧モータ2Mの回転を自動的に増減させ、或いは、ブームシリンダ7及びアームシリンダ8の少なくとも一つを自動的に伸縮させる。これにより、操作者等は、MCスイッチが押下された状態で走行操作に用いるレバー装置を操作するだけで、走行中の吊り荷の前後方向における揺れを抑制することができる。また、自動制御部54は、走行中にMCスイッチ等が押下されている場合、フック6eに吊された吊り荷の左右方向(Y軸方向)における揺れを抑制するために旋回油圧モータ2Aを自動的に回転させる。これにより、操作者等は、MCスイッチが押下された状態で走行操作に用いるレバー装置を操作するだけで、走行中の吊り荷の左右方向における揺れを抑制することができる。
【0074】
次に、図3を参照して、ショベル100の油圧システムについて説明する。図3は、ショベル100の油圧システムの構成例を概略的に示す図である。尚、図3において、機械的動力伝達ライン、作動油ライン、パイロットライン、及び電気信号ラインは、図2等の場合と同様、それぞれ、二重線、実線、破線、及び点線で示されている。
【0075】
油圧システムは、エンジン11により駆動される左メインポンプ14Lから左センタバイパス油路C1L及び左パラレル油路C2Lを経て作動油タンクまで作動油を循環させ、且つ、エンジン11により駆動される右メインポンプ14Rから右センタバイパス油路C1R及び右パラレル油路C2Rを経て作動油タンクまで作動油を循環させる。
【0076】
左センタバイパス油路C1Lは、左メインポンプ14Lを起点として、コントロールバルブユニット17内に配置される制御弁171、制御弁173、制御弁175L、及び制御弁176Lを順に通過し、作動油タンクに至る。
【0077】
右センタバイパス油路C1Rは、右メインポンプ14Rを起点として、コントロールバルブユニット17内に配置される制御弁172、制御弁174、制御弁175R、及び制御弁176Rを順に通過し、作動油タンクに至る。
【0078】
制御弁171は、左メインポンプ14Lから吐出される作動油を左走行油圧モータ2MLへ供給し、且つ、左走行油圧モータ2MLが吐出する作動油を作動油タンクに排出させるスプール弁である。
【0079】
制御弁172は、右メインポンプ14Rから吐出される作動油を右走行油圧モータ2MRへ供給し、且つ、右走行油圧モータ2MRが吐出する作動油を作動油タンクへ排出させるスプール弁である。
【0080】
制御弁173は、左メインポンプ14Lから吐出される作動油を旋回油圧モータ2Aへ供給し、且つ、旋回油圧モータ2Aが吐出する作動油を作動油タンクへ排出させるスプール弁である。
【0081】
制御弁174は、右メインポンプ14Rから吐出される作動油をバケットシリンダ9へ供給し、且つ、バケットシリンダ9内の作動油を作動油タンクへ排出させるスプール弁である。
【0082】
制御弁175は、制御弁175L及び制御弁175Rを含む。制御弁175Lは、左メインポンプ14Lが吐出する作動油をブームシリンダ7へ供給し、且つ、ブームシリンダ7内の作動油を作動油タンクへ排出させるスプール弁である。制御弁175Rは、右メインポンプ14Rが吐出する作動油をブームシリンダ7へ供給し、且つ、ブームシリンダ7内の作動油を作動油タンクへ排出させるスプール弁である。
【0083】
制御弁176は、制御弁176L及び制御弁176Rを含む。制御弁176Lは、左メインポンプ14Lが吐出する作動油をアームシリンダ8へ供給し、且つ、アームシリンダ8内の作動油を作動油タンクへ排出させるスプール弁である。制御弁176Rは、右メインポンプ14Rが吐出する作動油をアームシリンダ8へ供給し、且つ、アームシリンダ8内の作動油を作動油タンクへ排出させるスプール弁である。
【0084】
制御弁171~176のそれぞれは、パイロットポートに作用するパイロット圧に応じて、油圧アクチュエータに供給される作動油の流量を調整したり、流れる方向を切り替えたりする。
【0085】
左パラレル油路C2Lは、左センタバイパス油路C1Lと並行するように配置され、制御弁173、制御弁175L、及び制御弁176Lのそれぞれに左メインポンプ14Lが吐出する作動油を供給できるように構成されている。これにより、左パラレル油路C2Lは、制御弁171、制御弁173、又は制御弁175Lの何れかによって左センタバイパス油路C1Lを通る作動油の流れが制限或いは遮断された場合に、より下流の制御弁に作動油を供給できる。
【0086】
右パラレル油路C2Rは、右センタバイパス油路C1Rと並行するように配置され、制御弁174、制御弁175R、及び制御弁176Rのそれぞれに右メインポンプ14Rが吐出する作動油を供給できるように構成されている。これにより、右パラレル油路C2Rは、制御弁172、制御弁174、又は制御弁175Rの何れかによって右センタバイパス油路C1Rを通る作動油の流れが制限或いは遮断された場合に、より下流の制御弁に作動油を供給できる。
【0087】
左レギュレータ13Lは、コントローラ30による制御下で、左メインポンプ14Lの斜板の傾転角を調節することによって、左メインポンプ14Lの吐出量を調節できるように構成されている。右レギュレータ13Rは、コントローラ30による制御下で、右メインポンプ14Rの斜板の傾転角を調節することによって、右メインポンプ14Rの吐出量を調節できるように構成されている。
【0088】
左吐出圧センサ28Lは、左メインポンプ14Lの吐出圧を検出し、検出された吐出圧に対応する検出信号は、コントローラ30に取り込まれる。右吐出圧センサ28Rについても同様である。これにより、コントローラ30は、左メインポンプ14Lの吐出圧に応じて左レギュレータ13Lを制御することができ、且つ、右メインポンプ14Rの吐出圧に応じて右レギュレータ13Rを制御することができる。
【0089】
左センタバイパス油路C1Lには、最も下流にある制御弁176Lと作動油タンクとの間には、左絞り18Lが設けられる。これにより、左メインポンプ14Lにより吐出された作動油の流れは、左絞り18Lで制限される。そして、左絞り18Lは、左レギュレータ13Lを制御するための左制御圧を発生させる。右センタバイパス油路C1Rには、最も下流にある制御弁176Rと作動油タンクとの間には、右絞り18Rが設けられる。これにより、右メインポンプ14Rにより吐出された作動油の流れは、右絞り18Rで制限される。そして、右絞り18Rは、右レギュレータ13Rを制御するための右制御圧を発生させる。
【0090】
左制御圧センサ19Lは、左制御圧を検出し、検出された左制御圧に対応する検出信号は、コントローラ30に取り込まれる。右制御圧センサ19Rは、右制御圧を検出し、検出された右制御圧に対応する検出信号は、コントローラ30に取り込まれる。
【0091】
コントローラ30は、左吐出圧センサ28Lにより検出される左メインポンプ14Lの吐出圧に応じて、左レギュレータ13Lを制御し、左メインポンプ14Lの吐出量を調節してよい。例えば、コントローラ30は、左メインポンプ14Lの吐出圧の増大に応じて、左レギュレータ13Lを制御し、左メインポンプ14Lの斜板傾転角を調節することにより、左メインポンプ14Lの吐出量を減少させてよい。右レギュレータ13Rについても同様である。これにより、コントローラ30は、吐出圧と吐出量との積で表されるメインポンプ14の吸収馬力がエンジン11の出力馬力を超えないように、メインポンプ14の全馬力制御を行うことができる。
【0092】
また、コントローラ30は、左制御圧センサ19Lにより検出される左制御圧に応じて、左レギュレータ13Lを制御することにより、左メインポンプ14Lの吐出量を調節してよい。例えば、コントローラ30は、左制御圧が大きいほど左メインポンプ14Lの吐出量を減少させ、左制御圧が小さいほど左メインポンプ14Lの吐出量を増大させる。右メインポンプ14Rの吐出量についても同様である。
【0093】
具体的には、ショベル100における油圧アクチュエータが何れも操作されていない待機状態(図3に示す状態)の場合、左メインポンプ14Lが吐出する作動油は、左センタバイパス油路C1Lを通って左絞り18Lに至る。そして、左メインポンプ14Lが吐出する作動油の流れは、左絞り18Lの上流で発生する左制御圧を増大させる。その結果、コントローラ30は、左メインポンプ14Lの吐出量を許容最小吐出量まで減少させ、左メインポンプ14Lが吐出した作動油が左センタバイパス油路C1Lを通過する際の圧力損失(ポンピングロス)を抑制する。右メインポンプ14Rが吐出した作動油が右センタバイパス油路C1Rを通過する際の圧力損失(ポンピングロス)についても同様である。
【0094】
一方、何れかの油圧アクチュエータが操作装置26を通じて操作された場合、左メインポンプ14Lが吐出する作動油は、操作対象の油圧アクチュエータに対応する制御弁を介して、操作対象の油圧アクチュエータに流れ込む。そして、左メインポンプ14Lが吐出する作動油の流れは、左絞り18Lに至る量を減少或いは消失させ、左絞り18Lの上流で発生する左制御圧を低下させる。その結果、コントローラ30は、左メインポンプ14Lの吐出量を増大させ、操作対象の油圧アクチュエータに十分な作動油を循環させ、操作対象の油圧アクチュエータを確実に駆動させることができる。右メインポンプ14Rが吐出する作動油についても同様である。
【0095】
次に、図4A図4Fを参照し、コントローラ30がアクチュエータを動作させるための構成について説明する。図4A図4Fは、油圧システムの一部を抜き出した図である。具体的には、図4Aは、アームシリンダ8の操作に関する油圧システム部分を抜き出した図であり、図4Bは、ブームシリンダ7の操作に関する油圧システム部分を抜き出した図である。図4Cは、バケットシリンダ9の操作に関する油圧システム部分を抜き出した図であり、図4Dは、旋回油圧モータ2Aの操作に関する油圧システム部分を抜き出した図である。図4Eは、左走行油圧モータ2MLの操作に関する油圧システム部分を抜き出した図であり、図4Fは、右走行油圧モータ2MRの操作に関する油圧システム部分を抜き出した図である。
【0096】
図4A図4Fに示すように、油圧システムは、電磁弁31を含む。電磁弁31は、電磁弁31AL~電磁弁31FL及び電磁弁31AR~電磁弁31FRを含む。
【0097】
電磁弁31は、パイロットポンプ15とコントロールバルブユニット17内の対応する制御弁のパイロットポートとを接続する管路に配置され、開口面積を変更することにより、その管路の流路面積を変更できるように構成されている。本実施形態では、電磁弁31は、電磁比例弁であり、コントローラ30が出力する制御指令に応じて動作する。そのため、コントローラ30は、操作者による操作装置26の操作に応じ、又は、操作者による操作装置26の操作とは無関係に、パイロットポンプ15が吐出するパイロット油を、電磁弁31を介し、コントロールバルブユニット17内の対応する制御弁のパイロットポートに供給できる。そして、コントローラ30は、電磁弁31が生成するパイロット圧を、対応する制御弁のパイロットポートに作用させることができる。
【0098】
この構成により、コントローラ30は、特定の操作装置26に対する操作が行われている場合に加え、特定の操作装置26に対する操作が行われていない場合であっても、その特定の操作装置26に対応する油圧アクチュエータを動作させることができる。また、コントローラ30は、特定の操作装置26に対する操作が行われている場合であっても、その特定の操作装置26に対応する油圧アクチュエータの動作を強制的に停止させることができる。
【0099】
例えば、図4Aに示すように、左操作レバー26Lは、アーム5を操作するために用いられる。具体的には、左操作レバー26Lは、パイロットポンプ15が吐出するパイロット油を利用し、前後方向への操作に応じたパイロット圧を制御弁176のパイロットポートに作用させる。より具体的には、左操作レバー26Lは、アーム閉じ方向(後方向)に操作された場合に、操作量に応じたパイロット圧を制御弁176Lの右側パイロットポートと制御弁176Rの左側パイロットポートに作用させる。また、左操作レバー26Lは、アーム開き方向(前方向)に操作された場合には、操作量に応じたパイロット圧を制御弁176Lの左側パイロットポートと制御弁176Rの右側パイロットポートに作用させる。
【0100】
操作装置26にはスイッチSWが設けられている。本実施形態では、スイッチSWは、スイッチSW1及びスイッチSW2を含む。スイッチSW1は、左操作レバー26Lの先端に設けられた押しボタンスイッチである。操作者は、スイッチSW1を押しながら左操作レバー26Lを操作できる。スイッチSW1は、右操作レバー26Rに設けられていてもよく、キャビン10内の他の位置に設けられていてもよい。スイッチSW2は、左走行レバー26DLの先端に設けられた押しボタンスイッチである。操作者は、スイッチSW2を押しながら左走行レバー26DLを操作できる。スイッチSW2は、右走行レバー26DRに設けられていてもよく、キャビン10内の他の位置に設けられていてもよい。
【0101】
操作センサ29LAは、操作者による左操作レバー26Lに対する前後方向への操作の内容を検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。
【0102】
電磁弁31ALは、コントローラ30が出力する制御指令(電流指令)に応じて動作する。そして、パイロットポンプ15から電磁弁31ALを介して制御弁176Lの右側パイロットポート及び制御弁176Rの左側パイロットポートに導入されるパイロット油によるパイロット圧を調整する。電磁弁31ARは、コントローラ30が出力する制御指令(電流指令)に応じて動作する。そして、パイロットポンプ15から電磁弁31ARを介して制御弁176Lの左側パイロットポート及び制御弁176Rの右側パイロットポートに導入されるパイロット油によるパイロット圧を調整する。電磁弁31ALは、制御弁176L及び制御弁176Rを任意の弁位置で停止できるようにパイロット圧を調整可能である。同様に、電磁弁31ARは、制御弁176L及び制御弁176Rを任意の弁位置で停止できるようにパイロット圧を調整可能である。
【0103】
この構成により、コントローラ30は、操作者によるアーム閉じ操作に応じ、パイロットポンプ15が吐出するパイロット油を、電磁弁31ALを介し、制御弁176Lの右側パイロットポート及び制御弁176Rの左側パイロットポートに供給できる。また、コントローラ30は、操作者によるアーム閉じ操作とは無関係に、パイロットポンプ15が吐出するパイロット油を、電磁弁31ALを介し、制御弁176Lの右側パイロットポート及び制御弁176Rの左側パイロットポートに供給できる。すなわち、コントローラ30は、操作者によるアーム閉じ操作に応じ、或いは、操作者によるアーム閉じ操作とは無関係に、アーム5を閉じることができる。このように、電磁弁31ALは、「アーム用電磁弁」又は「アーム閉じ用電磁弁」として機能する。
【0104】
また、コントローラ30は、操作者によるアーム開き操作に応じ、パイロットポンプ15が吐出するパイロット油を、電磁弁31ARを介し、制御弁176Lの左側パイロットポート及び制御弁176Rの右側パイロットポートに供給できる。また、コントローラ30は、操作者によるアーム開き操作とは無関係に、パイロットポンプ15が吐出するパイロット油を、電磁弁31ARを介し、制御弁176Lの左側パイロットポート及び制御弁176Rの右側パイロットポートに供給できる。すなわち、コントローラ30は、操作者によるアーム開き操作に応じ、或いは、操作者によるアーム開き操作とは無関係に、アーム5を開くことができる。このように、電磁弁31ARは、「アーム用電磁弁」又は「アーム開き用電磁弁」として機能する。
【0105】
また、この構成により、コントローラ30は、操作者によるアーム閉じ操作が行われている場合であっても、必要に応じて、制御弁176の閉じ側のパイロットポート(制御弁176Lの左側パイロットポート及び制御弁176Rの右側パイロットポート)に作用するパイロット圧を減圧し、アーム5の閉じ動作を強制的に停止させることができる。操作者によるアーム開き操作が行われているときにアーム5の開き動作を強制的に停止させる場合についても同様である。
【0106】
或いは、コントローラ30は、操作者によるアーム閉じ操作が行われている場合であっても、必要に応じて、電磁弁31ARを制御し、制御弁176の閉じ側のパイロットポートの反対側にある、制御弁176の開き側のパイロットポート(制御弁176Lの右側パイロットポート及び制御弁176Rの左側パイロットポート)に作用するパイロット圧を増大させ、制御弁176を強制的に中立位置に戻すことで、アーム5の閉じ動作を強制的に停止させてもよい。操作者によるアーム開き操作が行われている場合にアーム5の開き動作を強制的に停止させる場合についても同様である。
【0107】
また、以下の図4B図4Fを参照しながらの説明を省略するが、操作者によるブーム上げ操作又はブーム下げ操作が行われている場合にブーム4の動作を強制的に停止させる場合、操作者によるバケット閉じ操作又はバケット開き操作が行われている場合にバケット6の動作を強制的に停止させる場合、及び、操作者による旋回操作が行われている場合に上部旋回体3の旋回動作を強制的に停止させる場合、についても同様である。また、操作者による走行操作が行われている場合に下部走行体1の走行動作を強制的に停止させる場合についても同様である。
【0108】
また、コントローラ30は、アーム操作(アーム閉じ操作及びアーム開き操作)の応答性を良くするため、アーム操作が行われる前から微小なパイロット圧を制御弁176の両側のパイロットポートに作用させるように構成されていてもよい。ブーム操作(ブーム上げ操作及びブーム下げ操作)等の他の操作についても同様である。すなわち、コントローラ30は、より多くのパイロット油を使用することにより、油圧アクチュエータの応答性を高めることができる。
【0109】
また、図4Bに示すように、右操作レバー26Rは、ブーム4を操作するために用いられる。具体的には、右操作レバー26Rは、パイロットポンプ15が吐出するパイロット油を利用し、前後方向への操作に応じたパイロット圧を制御弁175のパイロットポートに作用させる。より具体的には、右操作レバー26Rは、ブーム上げ方向(後方向)に操作された場合に、操作量に応じたパイロット圧を制御弁175Lの右側パイロットポートと制御弁175Rの左側パイロットポートに作用させる。また、右操作レバー26Rは、ブーム下げ方向(前方向)に操作された場合には、操作量に応じたパイロット圧を制御弁175Rの右側パイロットポートに作用させる。
【0110】
操作センサ29RAは、操作者による右操作レバー26Rに対する前後方向への操作の内容を検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。
【0111】
電磁弁31BLは、コントローラ30が出力する制御指令(電流指令)に応じて動作する。そして、パイロットポンプ15から電磁弁31BLを介して制御弁175Lの右側パイロットポート及び制御弁175Rの左側パイロットポートに導入されるパイロット油によるパイロット圧を調整する。電磁弁31BRは、コントローラ30が出力する制御指令(電流指令)に応じて動作する。そして、パイロットポンプ15から電磁弁31BRを介して制御弁175Rの右側パイロットポートに導入されるパイロット油によるパイロット圧を調整する。電磁弁31BLは、制御弁175L及び制御弁175Rを任意の弁位置で停止できるようにパイロット圧を調整可能である。また、電磁弁31BRは、制御弁175Rを任意の弁位置で停止できるようにパイロット圧を調整可能である。
【0112】
この構成により、コントローラ30は、操作者によるブーム上げ操作に応じ、パイロットポンプ15が吐出するパイロット油を、電磁弁31BLを介し、制御弁175Lの右側パイロットポート及び制御弁175Rの左側パイロットポートに供給できる。また、コントローラ30は、操作者によるブーム上げ操作とは無関係に、パイロットポンプ15が吐出するパイロット油を、電磁弁31BLを介し、制御弁175Lの右側パイロットポート及び制御弁175Rの左側パイロットポートに供給できる。すなわち、コントローラ30は、操作者によるブーム上げ操作に応じ、或いは、操作者によるブーム上げ操作とは無関係に、ブーム4を上げることができる。このように、電磁弁31BLは、「ブーム用電磁弁」又は「ブーム上げ用電磁弁」として機能する。
【0113】
また、コントローラ30は、操作者によるブーム下げ操作に応じ、パイロットポンプ15が吐出するパイロット油を、電磁弁31BRを介し、制御弁175Rの右側パイロットポートに供給できる。また、コントローラ30は、操作者によるブーム下げ操作とは無関係に、パイロットポンプ15が吐出するパイロット油を、電磁弁31BRを介し、制御弁175Rの右側パイロットポートに供給できる。すなわち、コントローラ30は、操作者によるブーム下げ操作に応じ、或いは、操作者によるブーム下げ操作とは無関係に、ブーム4を下げることができる。このように、電磁弁31BRは、「ブーム用電磁弁」又は「ブーム下げ用電磁弁」として機能する。
【0114】
また、図4Cに示すように、右操作レバー26Rは、バケット6を操作するためにも用いられる。具体的には、右操作レバー26Rは、パイロットポンプ15が吐出するパイロット油を利用し、左右方向への操作に応じたパイロット圧を制御弁174のパイロットポートに作用させる。より具体的には、右操作レバー26Rは、バケット閉じ方向(左方向)に操作された場合に、操作量に応じたパイロット圧を制御弁174の左側パイロットポートに作用させる。また、右操作レバー26Rは、バケット開き方向(右方向)に操作された場合には、操作量に応じたパイロット圧を制御弁174の右側パイロットポートに作用させる。
【0115】
操作センサ29RBは、操作者による右操作レバー26Rに対する左右方向への操作の内容を検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。
【0116】
電磁弁31CLは、コントローラ30が出力する制御指令(電流指令)に応じて動作する。そして、パイロットポンプ15から電磁弁31CLを介して制御弁174の左側パイロットポートに導入されるパイロット油によるパイロット圧を調整する。電磁弁31CRは、コントローラ30が出力する制御指令(電流指令)に応じて動作する。そして、パイロットポンプ15から電磁弁31CRを介して制御弁174の右側パイロットポートに導入されるパイロット油によるパイロット圧を調整する。電磁弁31CLは、制御弁174を任意の弁位置で停止できるようにパイロット圧を調整可能である。同様に、電磁弁31CRは、制御弁174を任意の弁位置で停止できるようにパイロット圧を調整可能である。
【0117】
この構成により、コントローラ30は、操作者によるバケット閉じ操作に応じ、パイロットポンプ15が吐出するパイロット油を、電磁弁31CLを介し、制御弁174の左側パイロットポートに供給できる。また、コントローラ30は、操作者によるバケット閉じ操作とは無関係に、パイロットポンプ15が吐出するパイロット油を、電磁弁31CLを介し、制御弁174の左側パイロットポートに供給できる。すなわち、コントローラ30は、操作者によるバケット閉じ操作に応じ、或いは、操作者によるバケット閉じ操作とは無関係に、バケット6を閉じることができる。このように、電磁弁31CLは、「バケット用電磁弁」又は「バケット閉じ用電磁弁」として機能する。
【0118】
また、コントローラ30は、操作者によるバケット開き操作に応じ、パイロットポンプ15が吐出するパイロット油を、電磁弁31CRを介し、制御弁174の右側パイロットポートに供給できる。また、コントローラ30は、操作者によるバケット開き操作とは無関係に、パイロットポンプ15が吐出するパイロット油を、電磁弁31CRを介し、制御弁174の右側パイロットポートに供給できる。すなわち、コントローラ30は、操作者によるバケット開き操作に応じ、或いは、操作者によるバケット開き操作とは無関係に、バケット6を開くことができる。このように、電磁弁31CRは、「バケット用電磁弁」又は「バケット開き用電磁弁」として機能する。
【0119】
また、図4Dに示すように、左操作レバー26Lは、旋回機構2を操作するためにも用いられる。具体的には、左操作レバー26Lは、パイロットポンプ15が吐出するパイロット油を利用し、左右方向への操作に応じたパイロット圧を制御弁173のパイロットポートに作用させる。より具体的には、左操作レバー26Lは、左旋回方向(左方向)に操作された場合に、操作量に応じたパイロット圧を制御弁173の左側パイロットポートに作用させる。また、左操作レバー26Lは、右旋回方向(右方向)に操作された場合には、操作量に応じたパイロット圧を制御弁173の右側パイロットポートに作用させる。
【0120】
操作センサ29LBは、操作者による左操作レバー26Lに対する左右方向への操作の内容を検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。
【0121】
電磁弁31DLは、コントローラ30が出力する制御指令(電流指令)に応じて動作する。そして、パイロットポンプ15から電磁弁31DLを介して制御弁173の左側パイロットポートに導入されるパイロット油によるパイロット圧を調整する。電磁弁31DRは、コントローラ30が出力する制御指令(電流指令)に応じて動作する。そして、パイロットポンプ15から電磁弁31DRを介して制御弁173の右側パイロットポートに導入されるパイロット油によるパイロット圧を調整する。電磁弁31DLは、制御弁173を任意の弁位置で停止できるようにパイロット圧を調整可能である。同様に、電磁弁31DRは、制御弁173を任意の弁位置で停止できるようにパイロット圧を調整可能である。
【0122】
この構成により、コントローラ30は、操作者による左旋回操作に応じ、パイロットポンプ15が吐出するパイロット油を、電磁弁31DLを介し、制御弁173の左側パイロットポートに供給できる。また、コントローラ30は、操作者による左旋回操作とは無関係に、パイロットポンプ15が吐出するパイロット油を、電磁弁31DLを介し、制御弁173の左側パイロットポートに供給できる。すなわち、コントローラ30は、操作者による左旋回操作に応じ、或いは、操作者による左旋回操作とは無関係に、旋回機構2を左旋回させることができる。このように、電磁弁31DLは、「旋回用電磁弁」又は「左旋回用電磁弁」として機能する。
【0123】
また、コントローラ30は、操作者による右旋回操作に応じ、パイロットポンプ15が吐出するパイロット油を、電磁弁31DRを介し、制御弁173の右側パイロットポートに供給できる。また、コントローラ30は、操作者による右旋回操作とは無関係に、パイロットポンプ15が吐出するパイロット油を、電磁弁31DRを介し、制御弁173の右側パイロットポートに供給できる。すなわち、コントローラ30は、操作者による右旋回操作に応じ、或いは、操作者による右旋回操作とは無関係に、旋回機構2を右旋回させることができる。このように、電磁弁31DRは、「旋回用電磁弁」又は「右旋回用電磁弁」として機能する。
【0124】
また、図4Eに示すように、左走行レバー26DLは、左クローラ1CLを操作するために用いられる。具体的には、左走行レバー26DLは、パイロットポンプ15が吐出するパイロット油を利用し、前後方向への操作に応じたパイロット圧を制御弁171のパイロットポートに作用させる。より具体的には、左走行レバー26DLは、前進方向(前方向)に操作された場合に、操作量に応じたパイロット圧を制御弁171の左側パイロットポートに作用させる。また、左走行レバー26DLは、後進方向(後方向)に操作された場合には、操作量に応じたパイロット圧を制御弁171の右側パイロットポートに作用させる。
【0125】
操作センサ29DLは、操作者による左走行レバー26DLに対する前後方向への操作の内容を電気的に検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。
【0126】
電磁弁31ELは、コントローラ30が出力する電流指令に応じて動作する。そして、電磁弁31ELは、パイロットポンプ15から電磁弁31ELを介して制御弁171の左側パイロットポートに導入されるパイロット油によるパイロット圧を調整する。電磁弁31ERは、コントローラ30が出力する電流指令に応じて動作する。そして、電磁弁31ERは、パイロットポンプ15から電磁弁31ERを介して制御弁171の右側パイロットポートに導入されるパイロット油によるパイロット圧を調整する。電磁弁31EL、31ERは、制御弁171を任意の弁位置で停止できるようにパイロット圧を調整可能である。
【0127】
この構成により、コントローラ30は、操作者による左前進操作とは無関係に、パイロットポンプ15が吐出するパイロット油を、電磁弁31ELを介し、制御弁171の左側パイロットポートに供給できる。すなわち、左クローラ1CLを前進させることができる。また、コントローラ30は、操作者による左後進操作とは無関係に、パイロットポンプ15が吐出するパイロット油を、電磁弁31ERを介し、制御弁171の右側パイロットポートに供給できる。すなわち、左クローラ1CLを後進させることができる。このように、電磁弁31ELは、「左走行用電磁弁」又は「左前進用電磁弁」として機能し、電磁弁31ERは、「左走行用電磁弁」又は「左後進用電磁弁」として機能する。
【0128】
また、図4Fに示すように、右走行レバー26DRは、右クローラ1CRを操作するために用いられる。具体的には、右走行レバー26DRは、パイロットポンプ15が吐出するパイロット油を利用し、前後方向への操作に応じたパイロット圧を制御弁172のパイロットポートに作用させる。より具体的には、右走行レバー26DRは、前進方向(前方向)に操作された場合に、操作量に応じたパイロット圧を制御弁172の右側パイロットポートに作用させる。また、右走行レバー26DRは、後進方向(後方向)に操作された場合には、操作量に応じたパイロット圧を制御弁172の左側パイロットポートに作用させる。
【0129】
操作センサ29DRは、操作者による右走行レバー26DRに対する前後方向への操作の内容を電気的に検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。
【0130】
電磁弁31FLは、コントローラ30が出力する電流指令に応じて動作する。そして、電磁弁31FLは、パイロットポンプ15から電磁弁31FLを介して制御弁172の左側パイロットポートに導入されるパイロット油によるパイロット圧を調整する。電磁弁31FRは、コントローラ30が出力する電流指令に応じて動作する。そして、電磁弁31FRは、パイロットポンプ15から電磁弁31FRを介して制御弁172の右側パイロットポートに導入されるパイロット油によるパイロット圧を調整する。電磁弁31FL、31FRは、制御弁172を任意の弁位置で停止できるようにパイロット圧を調整可能である。
【0131】
この構成により、コントローラ30は、操作者による右前進操作とは無関係に、パイロットポンプ15が吐出するパイロット油を、電磁弁31FLを介し、制御弁172の右側パイロットポートに供給できる。すなわち、右クローラ1CRを前進させることができる。また、コントローラ30は、操作者による右後進操作とは無関係に、パイロットポンプ15が吐出するパイロット油を、電磁弁31FRを介し、制御弁172の左側パイロットポートに供給できる。すなわち、右クローラ1CRを後進させることができる。このように、電磁弁31FLは、「右走行用電磁弁」又は「右前進用電磁弁」として機能し、電磁弁31FRは、「右走行用電磁弁」又は「右後進用電磁弁」として機能する。
【0132】
また、ショベル100は、バケットチルト機構を自動的に動作させる構成を備えていてもよい。この場合、バケットチルト機構を構成するバケットチルトシリンダに関する油圧システム部分は、ブームシリンダ7の操作に関する油圧システム部分等と同じように構成されてもよい。
【0133】
また、操作装置26の形態として電気式操作レバーに関する説明を記載したが、電気式操作レバーではなく油圧式操作レバーが採用されてもよい。この場合、油圧式操作レバーの操作量は、圧力センサによって圧力の形で検出されてコントローラ30へ入力されてもよい。また、油圧式操作レバーとしての操作装置26と各制御弁のパイロットポートとの間には電磁弁が配置されてもよい。電磁弁は、コントローラ30からの電気信号に応じて動作するように構成される。この構成により、油圧式操作レバーとしての操作装置26を用いた手動操作が行われると、操作装置26は、操作量に応じてパイロット圧を増減させることで各制御弁を移動させることができる。また、各制御弁は電磁スプール弁で構成されていてもよい。この場合、電磁スプール弁は、電気式操作レバーの操作量に対応するコントローラ30からの電気信号に応じて動作する。
【0134】
次に、図5を参照して、吊り荷の揺れを抑制する揺れ抑制システムの詳細について説明する。図5は、揺れ抑制システムの構成例を概略的に示す図である。図2で示したように、コントローラ30は、アタッチメントATに掛かる荷重を検出する機能に関する機能部としての荷重処理部60を含む。以下では、吊り作業が行われるときのショベル100の動作の一例について説明する。
【0135】
荷重処理部60は、フック6eに吊された吊り荷の重量である吊り荷重量を算出するように構成されている。図示例では、荷重処理部60は、第1重量算出部61、第2重量算出部62、及び揺れ抑制部63を有する。
【0136】
第1重量算出部61及び第2重量算出部62のそれぞれは、吊り荷重量を算出するように構成されている。第1重量算出部61と第2重量算出部62とは、吊り荷重量の算出方法が異なっている。第1重量算出部61は、ブームシリンダ7の推力に基づいて吊り荷重量を算出する。第2重量算出部62は、旋回油圧モータ2Aの推力に基づいて吊り荷重量を算出する。
【0137】
荷重処理部60は、第1重量算出部61による吊り荷重量の算出と、第2重量算出部62による吊り荷重量の算出とを切り替えることができるように構成されている。尚、第1重量算出部61による吊り荷重量の算出と、第2重量算出部62による吊り荷重量の算出とは同時並行で行われてもよい。この場合、荷重処理部60は、第1重量算出部61及び第2重量算出部62のそれぞれで算出された吊り荷重量のうちの一方を選択して出力するように構成されていてもよい。また、荷重処理部60は、第1重量算出部61及び第2重量算出部62のそれぞれで算出された吊り荷重量に基づいて最終的に出力する吊り荷重量を算出してもよい。例えば、荷重処理部60は、第1重量算出部61で算出された吊り荷重量と第2重量算出部62で算出された吊り荷重量との平均値を吊り荷重量として出力してもよい。
【0138】
次に、図5及び図6を参照し、ショベル100の第1重量算出部61が吊り荷重量を算出する方法について説明する。図6は、吊り荷重量の算出に関するパラメータを説明する模式図である。具体的には、図6の上図は、ショベル100の側面図である。図6の下図は、アーム5、バケット6、及びバケットシリンダ9の側面図であり、図6の上図の一部を拡大した図に相当する。
【0139】
ピンP1は、上部旋回体3とブーム4とを連結するピンである。ピンP2は、上部旋回体3とブームシリンダ7とを連結するピンである。ピンP3は、ブーム4とブームシリンダ7とを連結するピンである。ピンP4は、ブーム4とアームシリンダ8とを連結するピンである。ピンP5は、アーム5とアームシリンダ8とを連結するピンである。ピンP6は、ブーム4とアーム5とを連結するピンである。ピンP7は、アーム5とバケット6とを連結するピンである。吊り点P8は、吊り荷SLを吊るワイヤWRが掛けられるフック6e上の点である。重心G1は、ブーム4の重心である。重心G2は、アーム5の重心である。重心G3は、バケット6の重心である。重心G4は、吊り荷SLの重心である。基準線L1は、ピンP7を通りバケット6の開口面と平行な線である。距離D1は、ピンP1とブーム4の重心G1との間の距離である。距離D2は、ピンP1とアーム5の重心G2との間の距離である。距離D3は、ピンP1とバケット6の重心G3との間の距離である。距離D4は、ピンP1と吊り荷SLの重心G4との距離である。距離Dcは、ピンP2とピンP3とを結ぶ直線からピンP1までの距離である。また、ブロック矢印で示される検出値Fbは、ブームシリンダ7のシリンダ圧の検出値である。また、ブロック矢印で示される力W1aは、ピンP1とブーム4の重心G1とを結ぶ直線に対して垂直な方向における、ブーム4の重力の成分である。ブロック矢印で示される力W2aは、ピンP1とアーム5の重心G2とを結ぶ直線に対して垂直な方向おける、アーム5の重力の成分である。ブロック矢印で示される力W3は、バケット6の重力であり、ブロック矢印で示される力W4は、吊り荷SLの重力である。尚、ブーム4、アーム5、及びバケット6のそれぞれの重量は既知である。
【0140】
ピンP7及び吊り点P8のそれぞれの位置は、ブーム角度及びアーム角度により算出される。すなわち、ピンP7及び吊り点P8のそれぞれの位置は、ブーム角度センサS1及びアーム角度センサS2のそれぞれの検出値に基づいて算出される。
【0141】
また、図6の下図に示すように、ピンP7とバケット6の重心G3との位置関係(ピンP7と重心G3とを結ぶ直線と基準線L1との間の角度θ4、及び、ピンP7と重心G3との間の距離D4等)は、既知の値である。すなわち、荷重処理部60は、ブーム角度センサS1、アーム角度センサS2、及びバケット角度センサS3のそれぞれの出力に基づいて、バケット6の重心G3の位置を推定できる。
【0142】
また、ピンP1回りの各モーメントとブームシリンダ7との釣り合いの式は、以下の式(1)で表すことができる。
【0143】
W4D4+W1aD1+W2aD2+W3D3=FbDc・・・(1)
式(1)を力W4について展開すると、以下の式(2)で表すことができる。
【0144】
W4=(FbDc-(W1aD1+W2aD2+W3D3))/D4・・・(2)
ここで、ブームシリンダ7のシリンダ圧の検出値Fbは、ブームロッド圧センサS7R及びブームボトム圧センサS7Bのそれぞれの出力に基づいて算出される。距離Dcと力W1aとは、ブーム角度センサS1の出力に基づいて算出される。力W2aと距離D2と距離D4とは、ブーム角度センサS1の出力とアーム角度センサS2の出力とに基づいて算出される。距離D1及び力W3は既知の値である。また、バケット6の重心G3の位置を推定したことにより、距離D3も推定される。
【0145】
よって、吊り荷重量である力W4は、ブームシリンダ7のシリンダ圧の検出値(ブームロッド圧センサS7R及びブームボトム圧センサS7Bのそれぞれの検出値)、ブーム角度(ブーム角度センサS1の検出値)、及び、アーム角度(アーム角度センサS2の検出値)に基づいて算出される。すなわち、荷重処理部60は、吊り荷重量である力W4を算出できる。
【0146】
また、上述の例では、荷重処理部60は、ブーム角度センサS1、アーム角度センサS2、及び、バケット角度センサS3のそれぞれの出力に基づいてバケット6の重心G3の位置を推定している。しかしながら、典型的には吊り作業中はバケット6が完全に閉じた状態にあるため、荷重処理部60は、バケット6が完全に閉じているときのバケット角度(固定値)に基づいてバケット6の重心G3の位置を推定してもよい。
【0147】
次に、ショベル100の第2重量算出部62が吊り荷重量を算出する方法について説明する。ここで、上部旋回体3を旋回させる際の旋回トルクτの運動方程式は、以下の式(3)で表すことができる。尚、アタッチメント角θは、ブーム角度、アーム角度、及びバケット角度に基づいて決まる角度である。
【0148】
【数1】
また、フック6eに吊り荷SLが吊されていない場合(空荷の場合)における上部旋回体3を旋回させる際の旋回トルクτの運動方程式は、以下の式(4)で表すことができる。
【0149】
【数2】
また、フック6eに吊り荷SLが吊されている場合に上部旋回体3を旋回させる際の旋回トルクτの運動方程式は、以下の式(5)で表すことができる。
【0150】
【数3】
ここで、式(4)及び式(5)より、吊り荷SLがある場合の旋回トルクτと吊り荷SLがない場合の旋回トルクτとの間の差Δτは、以下の式(6)で表すことができる。
【0151】
【数4】
ここで、式(6)における吊り荷重量M以外のパラメータは、既知或いは計測可能であるため、第2重量算出部62は、吊り荷重量Mを算出することが可能である。
【0152】
すなわち、第2重量算出部62は、上部旋回体3の旋回動作中に、上部旋回体3の旋回駆動力(旋回トルク)を算出する。上部旋回体3の旋回駆動力は、旋回油圧モータ2Aの一方のポートにおける作動油の圧力と他方のポートにおける作動油の圧力との間の圧力差、すなわち、油圧センサ21で検出した圧力と油圧センサ22で検出した圧力との間の差に基づいて算出される。
【0153】
また、第2重量算出部62は、姿勢センサの出力に基づいてアタッチメントの姿勢を特定する。姿勢センサは、例えば、ブーム角度センサS1、アーム角度センサS2、バケット角度センサS3、機体傾斜センサS4、及び旋回状態センサS5等のうちの少なくとも一つである。図示例では、第2重量算出部62は、ブーム角度センサS1、アーム角度センサS2、及びバケット角度センサS3のそれぞれの出力に基づき、アタッチメント角(ブーム角度、アーム角度、バケット角度)を取得する。また、第2重量算出部62は、旋回状態センサS5の出力に基づき、上部旋回体3の旋回角速度及び旋回角度を取得する。尚、第2重量算出部62は、機体傾斜センサS4の出力に基づき、機体の傾斜角度を取得してもよい。
【0154】
また、第2重量算出部62は参照テーブルを有している。参照テーブルには、アタッチメントの姿勢と旋回駆動力と吊り荷重量Mとの関係が参照可能に記憶されている。第2重量算出部62は、算出した旋回駆動力と姿勢センサの出力とを参照キーとして参照テーブルを参照して吊り荷重量Mを導き出すことができる。
【0155】
また、第2重量算出部62は、旋回駆動力に基づいて旋回イナーシャ(旋回モーメント)を導き出し、導き出した旋回イナーシャに基づいて吊り荷重量Mを算出してもよい。
【0156】
ここで、吊り荷SLが吊されていない場合の旋回イナーシャは、アタッチメントの姿勢及び既知の情報(各部の重心の位置及び重量等)に基づいて算出されてもよい。また、吊り荷SLが吊されている場合の旋回イナーシャは、旋回駆動力に基づいて算出されてもよい。
【0157】
吊り荷SLが吊されていない場合の旋回イナーシャと吊り荷SLが吊されている場合の旋回イナーシャとの差(増分)は、吊り荷SLの重量に基づく。したがって、第2重量算出部62は、吊り荷SLが吊されていない場合の旋回イナーシャと吊り荷SLが吊されている場合の旋回イナーシャとを対比して吊り荷重量Mを算出できる。換言すれば、第2重量算出部62は、この旋回イナーシャの増分に基づいて吊り荷重量Mを算出できる。
【0158】
尚、旋回駆動力には慣性モーメント及び旋回遠心力の影響が含まれている。そのため、第2重量算出部62における吊り荷重量Mの算出方法は、吊り荷SLの重量を計算する際に複雑な補正を必要とせず、吊り荷重量Mを直接求めることを可能にする。
【0159】
尚、上述の説明では、第2重量算出部62は、上部旋回体3が旋回する場合の吊り荷重量Mを算出しているが、上部旋回体3が旋回するとともにアタッチメントが旋回方向以外の方向に動く場合に、アタッチメントの移動速度を考慮して吊り荷重量Mを算出してもよい。例えば、第2重量算出部62は、バケット6が旋回軸から遠ざかる場合、バケット6が旋回軸に近づく場合、バケット6が旋回軸に平行に上方に移動する場合、又は、バケット6が旋回軸に平行に下方に移動する場合に、バケット6の移動速度を考慮して吊り荷重量Mを算出してもよい。
【0160】
揺れ抑制部63は、吊り荷SLの揺れを抑制するように構成されている。具体的には、揺れ抑制部63は、吊り荷SLの揺れを未然に抑制できるように構成されている。より具体的には、揺れ抑制部63は、吊り作業が行われている場合に、操作装置26の感度を下げるように構成されている。換言すれば、揺れ抑制部63は、吊り作業が行われている場合の走行速度の変化を緩やかにできるように構成されている。図示例では、揺れ抑制部63は、モードスイッチ42aによって作業モードがクレーンモードに切り替えられている場合には、操作装置26からの電気信号に応じてコントローラ30が電磁弁31に対して所定の制御周期で繰り返し出力する制御指令の最大変動幅を抑制する。
【0161】
図7は、電磁弁31に入力される走行指令の時間的推移の一例を示すグラフである。具体的には、図7は、走行操作装置26D(左走行レバー26DL)が前進方向に操作されているときに、走行操作装置26D(左走行レバー26DL)からの電気信号に応じてコントローラ30が電磁弁31(電磁弁31EL)に対して出力する制御指令(走行指令(前進指令))の時間的推移を示している。より具体的には、図7では、通常モードが選択されているとき(吊り作業が行われていないとき)の走行指令(前進指令)の時間的推移が破線で示され、クレーンモードが選択されているとき(吊り作業が行われているとき)の走行指令(前進指令)の時間的推移が実線で示されている。尚、図7に示す例では、通常モードが選択されているときの左走行レバー26DLの操作内容は、クレーンモードが選択されているときの左走行レバー26DLの操作内容と同じである。
【0162】
具体的には、揺れ抑制部63は、クレーンモードが選択されているときの走行指令の最大変動幅を、通常モードが選択されているときの走行指令の最大変動幅よりも小さくするように構成されている。
【0163】
そのため、揺れ抑制部63は、図7に示すように、クレーンモードが選択されている場合には、左走行レバー26DLの操作方向又は操作量が急変したときであっても、走行指令の値が急変してしまうのを抑制できる。
【0164】
したがって、揺れ抑制部63は、ショベル100の走行中に生じるキャビン10の振動によって運転席に着座する操作者の体が揺すられて操作者が左走行レバー26DLを意図しない方向に急操作したり意図しない傾倒量で操作したりした場合であっても、ショベル100の前進速度が急変してしまうのを抑制できる。その結果、揺れ抑制部63は、ショベル100の前進速度の急変によって吊り荷SLの揺動が発生したり増大したりしてしまうのを抑制できる。
【0165】
また、揺れ抑制部63は、クレーンモードが選択されている場合には、左操作レバー26Lがアーム閉じ方向に操作されているときに左操作レバー26Lからの電気信号に応じてコントローラ30が電磁弁31ALに対して出力する制御指令(アーム閉じ指令)、左操作レバー26Lが左旋回方向に操作されているときに左操作レバー26Lからの電気信号に応じてコントローラ30が電磁弁31DLに対して出力する制御指令(左旋回指令)、及び、右操作レバー26Rがブーム上げ方向に操作されているときに右操作レバー26Rからの電気信号に応じてコントローラ30が電磁弁31BLに対して出力する制御指令(ブーム上げ指令)の値の急変についても同様に抑制できる。後進指令、アーム開き指令、右旋回指令、及びブーム下げ指令の値の急変についても同様である。
【0166】
また、揺れ抑制部63は、吊り荷SLの揺れを未然に抑制すべく、又は、既に発生している吊り荷SLの揺れを抑制すべく、アクチュエータを自動的に動作させるように構成されていてもよい。アクチュエータを自動的に動作させることは、操作装置26を通じた操作とは無関係にアクチュエータを動作させることを意味する。図示例では、アクチュエータは、旋回油圧モータ2A、走行油圧モータ2M、ブームシリンダ7、及びアームシリンダ8のうちの少なくとも一つである。以下では、アクチュエータを自動的に動作させる機能は「揺れ抑制機能」とも称される。
【0167】
図8は、ショベル100が走行しているときの吊り点P8の位置と吊り荷SLの重心G4の位置との関係を示すグラフである。具体的には、図8の上図は、揺れ抑制機能が実行されない場合における、吊り点P8の位置と吊り荷SLの重心G4の位置との間のX軸方向における距離xの時間的推移を示す。図8の下図は、揺れ抑制機能が実行される場合における距離xの時間的推移を示す。尚、図8のグラフは、重心G4が吊り点P8の真下にあるときに距離xがゼロとなり、重心G4が吊り点P8よりも+X方向(キャビン10から離れる方向)に移動したときに距離xが正値となり、重心G4が吊り点P8よりも-X方向(キャビン10に近づく方向)に移動したときに距離xが負値となるように表されている。
【0168】
図9及び図10は、ショベル100の走行中に揺れ抑制部63が揺れ抑制機能によって吊り荷SLの揺れを抑制する様子を説明する概念図である。具体的には、図9の左図は、揺れ抑制機能が実行されない場合に前後方向(X軸方向)に揺動する吊り荷SLの様子を示している。図9の右図は、揺れ抑制機能が実行されて前後方向における吊り荷SLの揺動が抑制される様子を示している。図10の左図は、揺れ抑制機能が実行されない場合に左右方向(Y軸方向)に揺動する吊り荷SLの様子を示している。図10の右図は、揺れ抑制機能が実行されて左右方向における吊り荷SLの揺動が抑制される様子を示している。尚、図9及び図10では、明瞭化のため、吊り荷SLの重心G4の位置が黒丸で示されている。また、図8のグラフにおける縦軸は、図9における吊り点P8の位置と吊り荷SLの重心G4の位置との間のX軸方向における距離xに対応しているが、図10における吊り点P8の位置と吊り荷SLの重心G4の位置との間のY軸方向における距離yにも対応し得る。この場合、図8の縦軸における「x」は「y」で置き換えられる。
【0169】
揺れ抑制機能が実行されない場合、前後方向又は左右方向における吊り荷SLの揺動は、図8の上図に示すように実質的に自由揺動となる。このため、図9の左図に示すように、前後方向に揺動する吊り荷SLは、位置SLaと位置SLbとの間を揺動する。尚、図9に示す例では、位置SLaは、吊り荷SLが前方に最も揺動したときの吊り荷SLの位置であり、位置SLbは、吊り荷SLが後方に最も揺動したときの吊り荷SLの位置である。また、図10の左図に示すように、左右方向に揺動する吊り荷SLは、位置SLaと位置SLbとの間を揺動する。尚、図10に示す例では、位置SLaは、吊り荷SLが左方に最も揺動したときの吊り荷SLの位置であり、位置SLbは、吊り荷SLが右方に最も揺動したときの吊り荷SLの位置である。
【0170】
ここで、図9に示す例において、吊り荷SLが位置SLaに向かって動けば、ブーム4のフートピン回りのトルクは増える。また、吊り荷SLが位置SLbに向かって動けば、ブーム4のフートピン回りのトルクは減る。揺れ抑制部63は、例えば、ブームロッド圧センサS7R及びブームボトム圧センサS7Bの検出値に基づいてブーム4のフートピン回りのトルクを所定周期で繰り返し算出し、算出したトルクの変化に基づいて前後方向荷揺動する吊り荷SLの重心G4の位置の変化を検出する。
【0171】
図示例では、揺れ抑制部63は、ブーム4のフートピン回りのトルクの揺動の周期に基づいて吊り荷SLの揺動の周期T0を導き出す。また、揺れ抑制部63は、吊り荷SLの揺動の周期T0に基づいて吊り点P8と吊り荷SLの重心G4との間の長さLTを算出する。周期T0と長さLTとの関係は、例えば、式(7)で表すことができる。尚、gは重力加速度を表している。
【0172】
T0=2π√(LT/g)・・・(7)
揺れ抑制部63は、算出した長さLTから吊り荷SLの揺動の揺れ幅である振幅X0を算出してもよい。
【0173】
また、揺れ抑制部63は、算出したトルクの統計値(例えば、中央値又は平均値等)に基づき、吊り荷SLが揺動していないときのトルク(静止トルク)を算出(推定)できる。また、揺れ抑制部63は、吊り荷SLの重心G4がフック6eの直下にあるという前提で、推定した静止トルクに基づいて吊り荷SLの重量を算出することができる。
【0174】
また、揺れ抑制部63は、算出した吊り荷SLの重量と、ブーム4のフートピン回りのトルクとに基づき、吊り荷SLの重心G4の位置を算出することができる。すなわち、揺れ抑制部63は、吊り荷SLの揺動の揺れ幅である振幅X0を算出することができる。また、揺れ抑制部63は、吊り荷SLの重心G4の位置と、吊り点P8と吊り荷SLの重心G4との間の長さLTとに基づき、吊り荷SLの揺動の角度を算出することができる。
【0175】
尚、揺れ抑制部63による吊り荷SLの重心G4の位置の変化を検出する方法はこれに限られない。揺れ抑制部63は、カメラS6Fで撮像したバケット6及び吊り荷SLの画像に基づいて吊り荷SLの重心G4の位置の変化を検出してもよい。
【0176】
その上で、揺れ抑制部63は、図8の下図及び図9に示すように、検出した吊り荷SLの重心G4の位置の変化に応じて決まる所望のタイミングでアームシリンダ8を動作させることにより、吊り荷SLの前後方向における揺動を抑制してもよい。尚、吊り荷SLの前後方向における揺動に関する物理量(周期又は振幅等)は、シリンダ圧センサにより検出された圧力に基づいて算出されてもよく、カメラS6Fで撮像した吊り荷SLの画像に基づいて算出されてもよい。
【0177】
具体的には、揺れ抑制部63は、図8の下図に示すように、時刻t1においてアームシリンダ8の収縮(アーム開き動作)を開始させ、時刻t2においてアームシリンダ8の収縮(アーム開き動作)を停止させてもよい。尚、揺れ抑制部63は、アームシリンダ8を収縮させると同時にブームシリンダ7を収縮させてもよい。すなわち、揺れ抑制部63は、アーム5を開くと同時にブーム4を下げてもよい。図9の右図のブロック矢印で示すように、吊り点P8を目標吊り点P8tまで前方に水平移動させるためである。また、時刻t1は、吊り荷SLが後方に揺動した状態から吊り点P8の真下にある状態(重心G4が吊り点P8の真下に位置する状態)に戻った時点である。また、時刻t2は、仮に揺れ抑制機能が実行されていなければ吊り荷SLが前方に最も揺動した状態になる時点、すなわち、図9の左図に示すように吊り荷SLが位置SLaに達する時点である。
【0178】
このように、揺れ抑制部63は、仮に揺れ抑制機能が実行されていなければ吊り荷SLの揺れの大きさが最大となっていたタイミングで吊り荷SLの重心G4の真上に吊り点P8を到達させるようにアームシリンダ8を収縮させてもよい。これにより、揺れ抑制部63は、前後方向における吊り荷SLの揺動を抑制できる。
【0179】
或いは、図10に示すように、揺れ抑制部63は、検出した吊り荷SLの重心G4の位置の変化に応じて決まる所望のタイミングで旋回油圧モータ2Aを動作させることにより、吊り荷SLの左右方向における揺動を抑制してもよい。尚、吊り荷SLの左右方向における揺動に関する物理量(周期又は振幅等)は、油圧センサ21及び油圧センサ22のそれぞれにより検出された圧力に基づいて算出されてもよく、カメラS6Fで撮像したバケット6及び吊り荷SLの画像に基づいて算出されてもよい。具体的には、揺れ抑制部63は、図8の下図に示すように、時刻t1において旋回油圧モータ2Aの回転(左旋回動作)を開始させ、時刻t2において旋回油圧モータ2Aの回転(左旋回動作)を停止させてもよい。図10の右図のブロック矢印で示すように、吊り点P8を目標吊り点P8tまで左方に水平移動させるためである。尚、時刻t1は、吊り荷SLが右方に揺動した状態から吊り点P8の真下にある状態(重心G4が吊り点P8の真下に位置する状態)に戻った時点である。また、時刻t2は、仮に揺れ抑制機能が実行されていなければ吊り荷SLが左方に最も揺動した状態になる時点、すなわち、図10の左図に示すように吊り荷SLが位置SLaに達する時点である。
【0180】
このように、揺れ抑制部63は、仮に揺れ抑制機能が実行されていなければ吊り荷SLの揺れの大きさが最大となっていたタイミングで吊り荷SLの重心G4の真上に吊り点P8を到達させるように旋回油圧モータ2Aを回転させてもよい。これにより、揺れ抑制部63は、左右方向における吊り荷SLの揺動を抑制できる。
【0181】
尚、前後方向における吊り荷SLの揺動を抑制するための揺れ抑制機能は、走行油圧モータ2Mを回転させることによって実現されてもよい。走行油圧モータ2Mを回転させることによっても吊り点P8を吊り荷SLの重心G4の真上に移動させることができるためである。
【0182】
また、前後方向における吊り荷SLの揺動を抑制するための揺れ抑制機能は、走行油圧モータ2Mの回転とアームシリンダ8の伸縮とを組み合わせることによって実現されてもよく、走行油圧モータ2Mの回転とブームシリンダ7の伸縮とアームシリンダ8の伸縮とを組み合わせることによって実現されてもよい。
【0183】
また、図8の下図に示す例では、揺れ抑制部63は、時刻t1においてアクチュエータの動きを開始させ、時刻t2においてアクチュエータの動きを停止させることにより、すなわち、アクチュエータの1回の動作により、吊り荷SLの揺れを抑制している。しかしながら、揺れ抑制部63は、複数回のアクチュエータの動作によって吊り荷SLの揺れを段階的に抑制するように構成されていてもよい。
【0184】
図11は、前後方向における吊り荷SLの揺れを抑制するために下部走行体1を自動的に前進させるショベル100の側面図である。図11は、明瞭化のため、下部走行体1を前進させる前のショベル100の状態を二点鎖線で示し、下部走行体1を前進させた後のショベル100の状態を実線で示している。なお、図11に示す例では、下部走行体1の前進方向は、下部走行体1の向きにかかわらず、前方(キャビン10から見てバケット6が存在する方向)である。
【0185】
図11に示す例では、揺れ抑制部63は、前後方向における吊り荷SLの揺れが生じていることを検知した場合に、目標吊り点P8tの座標を決定(算出)するように構成されている。具体的には、揺れ抑制部63は、吊り荷SLの揺れに関する物理量を検出する検出装置の出力に基づいて吊り荷SLの重心G4の位置、又は、吊り荷SLの揺動の周期若しくは振幅等を算出する。検出装置は、ブーム角度センサS1、アーム角度センサS2、バケット角度センサS3、機体傾斜センサS4、旋回状態センサS5、撮像装置S6、ブームロッド圧センサS7R、ブームボトム圧センサS7B、アームロッド圧センサS8R、アームボトム圧センサS8B、バケットロッド圧センサS9R、及びバケットボトム圧センサS9B等のうちの少なくとも一つである。
【0186】
また、揺れ抑制部63は、吊り荷SLが前方に最も揺動したとき(吊り荷SLが位置SLaにあるとき)の吊り荷SLの重心G4aの座標を算出することにより、目標吊り点P8tの座標を決定するように構成されている。図示例では、目標吊り点P8tは、重心G4aの真上に位置する点であり、且つ、現在の吊り点P8と同じ高さを有する点である。
【0187】
また、揺れ抑制部63は、現在の吊り点P8が目標吊り点P8tに達するように下部走行体1を前進させるべく左走行油圧モータ2ML及び右走行油圧モータ2MRを回転させるように構成されている。図示例では、揺れ抑制部63は、吊り荷SLの揺動の振幅が大きいほど、大きい加速度で下部走行体1を前進させる。尚、揺れ抑制部63は、下部走行体1を複数回に分けて段階的に前進させることにより、吊り荷SLの揺動を抑制するように構成されていてもよい。
【0188】
また、揺れ抑制部63は、吊り点P8と吊り荷SLの重心G4との間の長さLTから吊り荷SLの揺動の揺れ幅である振幅を算出するように構成されていてもよい。この場合、揺れ抑制部63は、その振幅に基づき、下部走行体1を前進させる際の加速度を決定してもよい。
【0189】
また、図11に示す例では、揺れ抑制部63は、ショベル100の停止中(走行していないとき)に発生した吊り荷SLの揺れを抑制するために、下部走行体1を前進させている。しかしながら、揺れ抑制部63は、ショベル100の走行中に発生した吊り荷SLの揺れをショベル100の走行中に抑制するために、前進中の下部走行体1を加速させ又は減速させてもよい。この場合、揺れ抑制部63によって吊り荷SLの揺れが抑制された後、ショベル100は、等速で前進を継続することにより、吊り荷SLの揺れを抑えながら前進することができる。
【0190】
上述のように、本開示の実施形態に係るショベル100は、図1に示すように、下部走行体1と、下部走行体1に旋回可能に搭載される上部旋回体3と、上部旋回体3に取り付けられる、吊り荷SLを吊るフック6eを有するアタッチメントATと、制御装置としてのコントローラ30と、を備えている。そして、コントローラ30は、走行中における吊り荷SLの揺れを抑制するためにアクチュエータを動作させるように構成されている。
【0191】
この構成は、走行中の吊り荷SLの揺れを抑制できるという効果をもたらす。走行中の吊り荷SLの揺れは、典型的には、走行動作に起因する吊り荷SLの揺れである。但し、走行中の吊り荷SLの揺れは、強風等の他の現象に起因する吊り荷SLの揺れであってもよい。すなわち、走行中の吊り荷SLの揺れは、走行動作が開始される前の、下部走行体1が停止しているときに発生した揺れであってもよい。
【0192】
また、コントローラ30は、典型的には、吊り荷SLの揺れが発生した後でその揺れを抑制するためにアクチュエータを動作させるが、吊り荷SLの揺れが発生する前にその揺れを未然に抑制するためにアクチュエータを動作させてもよい。例えば、コントローラ30は、走行動作を開始又は停止させることによって発生することが予測される吊り荷SLの揺れに関する物理量(例えば、揺れの周期及び振幅等)を推定し、推定した物理量に基づき、その揺れを未然に抑制するためにアクチュエータを動作させてもよい。
【0193】
また、「アクチュエータを動作させる」ことは、動作していないアクチュエータの動作を開始させることに加え、操作者による操作装置26に対する操作に応じて既に動作しているアクチュエータの動作を変化させることを含む。例えば、「アクチュエータを動作させる」ことは、操作者による走行操作装置26Dに対する操作に応じた走行速度を上回るように下部走行体1を加速させること、又は、操作者による走行操作装置26Dに対する操作に応じた走行速度を下回るように下部走行体1を減速させること等を含む。また、アクチュエータは、例えば、旋回油圧モータ2A、走行油圧モータ2M、ブームシリンダ7、及びアームシリンダ8の少なくとも一つである。
【0194】
コントローラ30は、典型的には、所望の時点において吊り点P8が目標吊り点P8tに到達するようにアクチュエータを動作させる。所望の時点は、目標吊り点P8tの真下に吊り荷SLの重心G4が達する時点である。
【0195】
ショベル100は、吊り荷SLの揺れに関する物理量を検出する検出装置を備えていてもよい。検出装置は、ブーム角度センサS1、アーム角度センサS2、バケット角度センサS3、機体傾斜センサS4、旋回状態センサS5、撮像装置S6、ブームロッド圧センサS7R、ブームボトム圧センサS7B、アームロッド圧センサS8R、アームボトム圧センサS8B、バケットロッド圧センサS9R、及びバケットボトム圧センサS9B等のうちの少なくとも一つである。そして、コントローラ30は、検出装置が検出した物理量に基づいてアクチュエータを動作させるタイミングを決定するように構成されていてもよい。図9及び図10に示す例では、コントローラ30は、所望の時点において吊り点P8が目標吊り点P8tに到達するようにアクチュエータを動作させるタイミングを決定する。
【0196】
コントローラ30は、前進走行中にフック6eに対して吊り荷SLが前方に揺れたときに下部走行体1を加速させること若しくはアーム5を開くことにより、又は、前進走行中にフック6eに対して吊り荷SLが後方に揺れたときに下部走行体1を減速させること若しくはアーム5を閉じることにより、前後方向における吊り荷SLの揺れを抑制するように構成されていてもよい。尚、前方は、キャビン10から見てバケット6が存在する方向であり、後方は、キャビン10から見てカウンターウェイトが存在する方向である。
【0197】
換言すれば、コントローラ30は、後進走行中にフック6eに対して吊り荷SLが前方に揺れたときに下部走行体1を減速させること若しくはアーム5を開くことにより、又は、後進走行中にフック6eに対して吊り荷SLが後方に揺れたときに下部走行体1を加速させること若しくはアーム5を閉じることにより、前後方向における吊り荷SLの揺れを抑制するように構成されていてもよい。この構成により、コントローラ30は、前後方向における吊り荷SLの揺れをショベル100の走行中に抑制できる。
【0198】
コントローラ30は、走行中にフック6eに対して吊り荷SLが左方に揺れたときに上部旋回体3を左旋回させることによって、又は、走行中にフック6eに対して吊り荷SLが右方に揺れたときに上部旋回体3を右旋回させることによって、吊り荷SLの揺れを抑制するように構成されていてもよい。この構成により、コントローラ30は、左右方向における吊り荷SLの揺れをショベル100の走行中に抑制できる。
【0199】
また、ショベル100は、走行油圧モータ2Mを操作する走行操作装置26Dを備えていてもよい。そして、コントローラ30は、吊り作業が行われているときに、走行操作装置26Dが出力する走行指令に対する走行油圧モータ2Mの応答性を低下させるように構成されていてもよい。
【0200】
図7に示す例では、コントローラ30における荷重処理部60の揺れ抑制部63は、モードスイッチ42aによって作業モードがクレーンモードに切り替えられている場合には、操作装置26(左走行レバー26DL)からの電気信号に応じてコントローラ30が電磁弁31ELに対して所定の制御周期で繰り返し出力する制御指令の最大変動幅を抑制している。
【0201】
この構成により、コントローラ30は、走行中のショベル100の振動等により、操作者が意図しない操作量で又は意図しない操作方向に操作装置26を操作してしまった場合に、操作装置26に対する操作の通りにアクチュエータが動いてしまうのを抑制できる。そのため、コントローラ30は、アクチュエータの動きが不安定化してしまうのを抑制でき、ひいては、そのようなアクチュエータの不安定な動きによって吊り荷SLの揺動が引き起こされてしまうのを抑制できる。
【0202】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳説した。しかしながら、本発明は、上述した実施形態に制限されることはなく、後述する実施形態に制限されることもない。上述した或いは後述する実施形態は、本発明の範囲を逸脱することなしに、種々の変形又は置換等が適用され得る。また、別々に説明された特徴は、技術的な矛盾が生じない限り、組み合わせが可能である。
【0203】
例えば、空間認識装置(撮像装置S6)によりショベル100の周囲に設定される所定範囲内において人が検知されている場合、コントローラ30は、操作装置26が操作されても、吊り作業を開始させないように構成されていてもよい。
【0204】
また、吊り荷SLが揺れている際、吊り荷SLの揺れを止めるために作業者が吊り荷SLに近づくことがある。コントローラ30は、吊り荷SLの揺れが検知されている最中に空間認識装置(撮像装置S6)によりショベル100又は吊り荷SLの周囲に設定される所定範囲内において人が検知されている場合、警報等を出力して作業者又は操作者等の注意を喚起するように構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0205】
1・・・下部走行体 2・・・旋回機構 2A・・・旋回油圧モータ 2A1・・・第1ポート 2A2・・・第2ポート 2M・・・走行油圧モータ 2ML・・・左走行油圧モータ 2MR・・・右走行油圧モータ 3・・・上部旋回体 4・・・ブーム 5・・・アーム 6・・・バケット 6a・・・バケットリンク 6b・・・バケットシリンダトップピン 6c・・・アームリンク 6d・・・バケットピン 6e・・・フック 6f・・・フック収納部 7・・・ブームシリンダ 8・・・アームシリンダ 9・・・バケットシリンダ 10・・・キャビン 11・・・エンジン 13・・・レギュレータ 14・・・メインポンプ 15・・・パイロットポンプ 17・・・コントロールバルブユニット 18L・・・左絞り 18R・・・右絞り 19L・・・左制御圧センサ 19R・・・右制御圧センサ 21、22・・・油圧センサ 23、24・・・リリーフ弁 26・・・操作装置 26D・・・走行操作装置 26DL・・・左走行レバー 26DR・・・右走行レバー 26L・・・左操作レバー 26R・・・右操作レバー 28・・・吐出圧センサ 29、29DL、29DR、29LA、29LB、29RA、29RB、・・・操作センサ 30・・・コントローラ 31、31AL~31FL、31AR~31FR・・・電磁弁 40・・・表示装置 42・・・入力装置 42a・・・モードスイッチ 43・・・音出力装置 47・・・記憶装置 50・・・マシンガイダンス部 51・・・位置算出部 52・・・距離算出部 53・・・情報伝達部 54・・・自動制御部 60・・・荷重処理部 61・・・第1重量算出部 62・・・第2重量算出部 63・・・揺れ抑制部 100・・・ショベル 171~176・・・制御弁 AT・・・アタッチメント Q1・・・測位装置 S1・・・ブーム角度センサ S2・・・アーム角度センサ S3・・・バケット角度センサ S4・・・機体傾斜センサ S5・・・旋回状態センサ S6・・・撮像装置 S6B、S6F、S6L、S6R・・・カメラ S7B・・・ブームボトム圧センサ S7R・・・ブームロッド圧センサ S8B・・・アームボトム圧センサ S8R・・・アームロッド圧センサ S9B・・・バケットボトム圧センサ S9R・・・バケットロッド圧センサ SL・・・吊り荷 T1・・・通信装置 WR・・・ワイヤ
図1
図2
図3
図4A
図4B
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図4F
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図11