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特開2024-173705電解コンデンサ用電解液及び電解コンデンサ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173705
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】電解コンデンサ用電解液及び電解コンデンサ
(51)【国際特許分類】
   H01G 9/035 20060101AFI20241205BHJP
【FI】
H01G9/035
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024076386
(22)【出願日】2024-05-09
(31)【優先権主張番号】P 2023091441
(32)【優先日】2023-06-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】石川 咲里
(72)【発明者】
【氏名】内橋 賢吾
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 比祐吾
(57)【要約】
【課題】本発明は電解液の蒸散を抑制することで、コンデンサの寿命を長期化することのできる電解コンデンサを提供する。
【解決手段】エポキシ基を有する重合体(A)、溶剤(B)及び電解質(C)を含む電解コンデンサ用電解液であって、前記エポキシ基を有する重合体(A)が構成単量体としてエポキシ基を有する(メタ)アクリルモノマー(a1)を含む電解コンデンサ用電解液、又は、エポキシ基を有する重合体(A)を架橋させてなるゲル、溶剤(B)及び電解質(C)を含む電解コンデンサ用電解液であって、前記エポキシ基を有する重合体(A)が構成単量体としてエポキシ基を有する(メタ)アクリルモノマー(a1)を含む電解コンデンサ用電解液。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ基を有する重合体(A)、溶剤(B)及び電解質(C)を含む電解コンデンサ用電解液であって、前記エポキシ基を有する重合体(A)が構成単量体としてエポキシ基を有する(メタ)アクリルモノマー(a1)を含む電解コンデンサ用電解液。
【請求項2】
エポキシ基を有する重合体(A)を架橋させてなるゲル、溶剤(B)及び電解質(C)を含む電解コンデンサ用電解液であって、前記エポキシ基を有する重合体(A)が構成単量体としてエポキシ基を有する(メタ)アクリルモノマー(a1)を含む電解コンデンサ用電解液。
【請求項3】
前記エポキシ基を有する(メタ)アクリルモノマー(a1)の含有量が前記エポキシ基を有する重合体(A)を構成する全単量体の合計重量に対して2~100重量%である請求項1又は2に記載の電解コンデンサ用電解液。
【請求項4】
前記エポキシ基を有する重合体(A)が、構成単量体として、更にエポキシ基を有さない(メタ)アクリルモノマー(a2)を含む請求項1又は2に記載の電解コンデンサ用電解液。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の電解コンデンサ用電液を含む電解コンデンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電解コンデンサ用電解液及び該電解液を含む電解コンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
電解コンデンサは、様々な電気製品及び電子製品において広く用いられており、その用途は電荷の蓄積、ノイズの除去及び位相の調整等多岐に渡っている。近年、電解コンデンサは、通信基地局等の長期安定稼働が求められる機器での使用が増加しており、それに伴い、長寿命化のニーズが高まっている。しかしながら、電解コンデンサは、長期間使用すると、内部にある電解液が蒸散し、ドライアップする問題を抱えており、長寿命化には電解液の蒸散抑制の向上が求められている。
【0003】
例えば、特許文献1には、電解液溶媒をγ-ブチロラクトンとスルホランの混合溶媒とすることにより、電解液の蒸散を抑制することで、コンデンサの寿命を長期化させることができる技術が開示されている。
また、特許文献2には、封口部材の外面をモールド樹脂層で覆うことで密閉性が高まり、電解液の蒸散を抑制させることで、コンデンサの小形化と爆発に対する安全化を図ることが開示されている。
【0004】
しかし、特許文献1及び2に記載の電解コンデンサは、電解液の蒸散を抑制するものの、長期で使用すると、電解液の蒸散が少なからず発生したり、電解コンデンサ外装部分の断熱性が高まり、コンデンサ内部の放熱が困難となったりするという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-68006号公報
【特許文献2】特開昭60-245106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は電解液の蒸散を抑制することで、コンデンサの寿命を長期化することのできる電解コンデンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。
即ち、本発明の一態様は、エポキシ基を有する重合体(A)、溶剤(B)及び電解質(C)を含む電解コンデンサ用電解液であって、前記エポキシ基を有する重合体(A)が構成単量体としてエポキシ基を有する(メタ)アクリルモノマー(a1)を含む電解コンデンサ用電解液である。
また、本発明の一態様は、エポキシ基を有する重合体(A)を架橋させてなるゲル、溶剤(B)及び電解質(C)を含む電解コンデンサ用電解液であって、前記エポキシ基を有する重合体(A)が構成単量体としてエポキシ基を有する(メタ)アクリルモノマー(a1)を含む電解コンデンサ用電解液である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の電解コンデンサ用電解液を用いることで、電解液の蒸散を抑制し、寿命を長期化することのできる電解コンデンサを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一実施形態に係る電解コンデンサ用電解液は、エポキシ基を有する重合体(A)、溶剤(B)及び電解質(C)を含む。
【0010】
本発明におけるエポキシ基を有する重合体(A)について説明する。以下において、エポキシ基を有する重合体(A)を単に重合体(A)とも記載する。
前記エポキシ基を有する重合体(A)は構成単量体としてエポキシ基を有する(メタ)アクリルモノマー(a1)を含む。
【0011】
なお、本発明おいて、「(メタ)アクリロイル」は「アクリロイル」と「メタクリロイル」との双方又はいずれかを意味し、「(メタ)アクリレート」は「アクリレート」と「メタクリレート」との双方又はいずれかを意味し、「(メタ)アクリル」は「アクリル」と「メタクリル」との双方又はいずれかを意味する。
【0012】
エポキシ基を有する(メタ)アクリルモノマー(a1)としては、エポキシ基を有する(メタ)アクリルモノマーであれば特に制限はない。具体的にはエポキシ基を有する炭素数4~50の(メタ)アクリルモノマー{例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレ-ト及び4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル等}等が挙げられ、ゲル化の観点からエポキシ基を有する炭素数4~10の(メタ)アクリルモノマーが好ましく、より好ましくはグリシジル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテルである。
なお、エポキシ基を有する(メタ)アクリルモノマー(a1)は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0013】
本発明における重合体(A)は、構成単量体としてエポキシ基を有する(メタ)アクリルモノマー(a1)以外に、エポキシ基を有さない(メタ)アクリルモノマー(a2)を含むことがゲル化性及び溶媒(B)に対する溶解性の観点から好ましい。
なお、エポキシ基を有さない(メタ)アクリルモノマー(a2)は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0014】
エポキシ基を有さない(メタ)アクリルモノマー(a2)としては、単官能(メタ)アクリレート、多官能(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0015】
単官能(メタ)アクリレートとしては、炭素数4~22のアルキル(メタ)アクリレート{例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート等}、炭素数4~22のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート{例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等}、炭素数4~22のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート{例えば、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、2-ブトキシエチル(メタ)アクリレート等}、重合度2~1000のポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート{例えば、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等}、アルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート{例えば、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート等}及び(メタ)アクリル酸等が挙げられる。
【0016】
多官能(メタ)アクリレートとしては、2官能(メタ)アクリレート{例えば、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート等}、3官能(メタ)アクリレート{例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等}及び4官能以上の(メタ)アクリレート{例えば、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等}等が挙げられる。
【0017】
エポキシ基を有さない(メタ)アクリルモノマー(a2)のうち、溶媒(B)に対する溶解性の観点から単官能(メタ)アクリレートが好ましく、より好ましくは、アルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート及びアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートからなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマーであり、特に好ましくはブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート及びメトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートからなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマーである。
【0018】
本発明における重合体(A)は、構成単量体としてエポキシ基を有する(メタ)アクリルモノマー(a1)及びエポキシ基を有さない(メタ)アクリルモノマー(a2)以外のモノマー(a3)を含んでいてもよい。
前記のモノマー(a3)としては、ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、2-エチルヘキシルビニルエーテル、2-ヒロドキシブチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、アセトキシエチルビニルエーテル及びアセトキシブチルビニルエーテル等が挙げられる。
なお、前記モノマー(a3)は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0019】
重合体(A)の数平均分子量(以下、Mnと略記する)は、1,000以上であることが好ましく、更に好ましくは3,000以上であり、特に好ましくは5,000以上である。
また、重合体(A)のMnは、100,000以下であることが好ましく、更に好ましくは80,000以下であり、特に好ましくは50,000以下である。
Mnが1,000以上であると電解液の耐電圧の観点で好ましく、100,000以下であると電解液の素子への含浸性の観点で好ましい。
なお、本発明におけるMnは実施例に記載のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により以下の条件で測定する。
【0020】
[数平均分子量測定]
装置:「HLC-8120GPC」[東ソー(株)製]
カラム:「Guardcolumn HXL-H」(1本)、「TSKgel GMHXL」(2本)[いずれも東ソー(株)製]
試料溶液:0.25重量%のテトラヒドロフラン溶液
溶液注入量:100μL
流量:1mL/分
測定温度:40℃
検出装置:屈折率検出器
基準物質:標準ポリスチレン
【0021】
重合体(A)のエポキシ当量は120~10000(g/eq、以下同じ)であることが好ましく、更に好ましくは120~1000、特に好ましくは160~500である。なお、エポキシ当量は、JIS K7236:2001に規定の方法で測定することができる。
【0022】
前記エポキシ基を有する(メタ)アクリルモノマー(a1)の含有量はゲル化性の観点から前記エポキシ基を有する重合体(A)を構成する全単量体の合計重量に対して好ましくは2~100重量%であり、更に好ましくは30~100重量%であり、特に好ましくは50~80重量%である。
前記エポキシ基を有さない(メタ)アクリルモノマー(a2)を含む場合、エポキシ基を有さない(メタ)アクリルモノマー(a2)の含有量は、ゲル化性及び溶媒(B)に対する溶解性の観点から前記エポキシ基を有する重合体(A)を構成する全単量体の合計重量に対して好ましくは98重量%以下であり、更に好ましくは70重量%以下であり、特に好ましくは20~50重量%である。
【0023】
前記エポキシ基を有する重合体(A)は、エポキシ基を有する(メタ)アクリルモノマー(a1)及び必要によりエポキシ基を有さない(メタ)アクリルモノマー(a2)及び/又は前記モノマー(a3)を公知の方法(特開平5-117330号公報等に記載の方法)を用いて重合することで合成することができる。例えば、前記モノマー(a1)等の単量体を溶剤(トルエン等)中でラジカル開始剤(アゾビスイソブチロニトリル等)とともに反応させる溶液重合法により合成し、その後重合に用いた溶剤を減圧乾燥により留去することで得ることができる。
【0024】
また、本発明の一実施形態に係る電解コンデンサ用電解液は、エポキシ基を有する重合体(A)を架橋させてなるゲル、溶剤(B)及び電解質(C)を含む。
前記エポキシ基を有する重合体(A)を架橋させてなるゲルは、前記重合体(A)のエポキシ基を開環(架橋反応)させることでゲル化するもの(すなわち、ゲルとなるもの)である。架橋反応は公知の方法を用いて行うことができる。例えば、前記重合体(A)、溶剤(B)及び電解質(C)を含む電解液を必要により架橋剤及び触媒の存在下、加熱して反応させることで、エポキシ基を有する重合体(A)を架橋させてなるゲルを得ることができる。
【0025】
前記架橋剤としては、水、ジオール、ジアミン及びジカルボン酸(酸無水物を含む)が挙げられる。また、アルコール、モノアミン及びモノカルボン酸等の活性水素化合物はエポキシを有する重合体(A)と反応しうるので架橋剤ではないが、エポキシ基を有する重合体(A)を架橋させうるものである。
前記触媒としては、第三級アミン等が挙げられる。
【0026】
本発明における溶剤(B)としては、アルコール溶剤[モノオール(メチルアルコール、エチルアルコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピルアルコール及びブチルアルコール等)、ジオール(エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール及びポリエチレングリコール(Mn:600以下)等)等]、アミド溶剤(N-メチルホルムアミド、N-エチルホルムアミド及びN,N-ジメチルホルムアミド等)、ラクトン溶剤(α-アセチル-γ-ブチロラクトン、β-ブチロラクトン、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン及びδ-バレロラクトン等)、ニトリル溶剤(アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、アクリロニトリル、メタクリルニトリル及びベンゾニトリル等)、スルホキシド溶剤(ジメチルスルホキシド、メチルエチルスルホキシド及びジエチルスルホキシド)及びスルホン溶剤(スルホラン及びエチルメチルスルホン等)等が挙げられる。なお、前記ジオールは架橋剤として作用する場合もある。
これらの溶剤のうち、電解質及び重合体の溶解性と溶剤の誘電率の観点から好ましくはアルコール溶剤、ラクトン溶剤及びスルホン溶剤であり、更に好ましくはジオール、γ-ブチロラクトン及びスルホランであり、特に好ましくはエチレングリコール、プロピレングリコール、γ-ブチロラクトン及びスルホランであり、封口ゴムへの浸食性の観点から、最も好ましくはエチレングリコールである。
これらの溶剤(B)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、重合体の溶解性と封口ゴムへの浸食性の観点から、エチレングリコールとスルホランを併用することが最も好ましい。
【0027】
前記の溶剤(B)は、エチレングリコールを含むことが好ましい。また、溶剤(B)の合計重量に対するエチレングリコールの重量比率は、10~100重量%であることが好ましく、更に好ましくは30~100重量%である。
【0028】
本発明における電解質(C)には電解コンデンサ用電解液に用いられる公知の電解質を使用することができるが、好ましくはカルボキシレートアニオンとアンモニウム、第1級アンモニウム、第2級アンモニウム、第3級アンモニウム、第4級アンモニウム及びアミジニウムからなる群から選ばれるカチオンとからなる電解質である。前記の電解質(C)は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0029】
カルボキシレートアニオンとしては、カルボン酸のカルボキシ基から水素イオンを除いたアニオンであって、化学式量が好ましくは500以下のものであり、飽和脂肪族ポリカルボン酸(シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、2-メチルアゼライン酸、セバシン酸、1,5-オクタンジカルボン酸、4,5-オクタンジカルボン酸、1,9-ノナンジカルボン酸、1,10-デカンジカルボン酸、1,6-デカンジカルボン酸、5,6-デカンジカルボン酸、1,11-ウンデカンジカルボン酸、1,12-ドデカンジカルボン酸、1,13-トリデカンジカルボン酸、1,14-テトラデカンジカルボン酸、1,15-ペンタデカンジカルボン酸、メチルマロン酸、エチルマロン酸、プロピルマロン酸、ブチルマロン酸、ペンチルマロン酸、ヘキシルマロン酸、ジメチルマロン酸、ジエチルマロン酸、メチルプロピルマロン酸、メチルブチルマロン酸、エチルプロピルマロン酸、ジプロピルマロン酸、メチルコハク酸、エチルコハク酸、2,2-ジメチルコハク酸、2,3-ジメチルコハク酸、2-メチルグルタル酸、3-メチルグルタル酸、3-メチル-3-エチルグルタル酸、3,3-ジエチルグルタル酸、3,3-ジメチルグルタル酸及び3-メチルアジピン酸等);飽和脂肪族モノカルボン酸(ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、2,2-ジメチルへプタン酸、ラウリル酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸及びウンデカン酸等);不飽和脂肪族モノカルボン酸[(メタ)アクリル酸、クロトン酸及びオレイン酸等];不飽和脂肪族ポリカルボン酸(マレイン酸、フマール酸、イタコン酸及びシトラコン酸等);芳香族モノカルボン酸(安息香酸、ケイ皮酸、ナフトエ酸、トルイル酸、エチル安息香酸、プロピル安息香酸、イソプロピル安息香酸、ブチル安息香酸、イソブチル安息香酸、第2ブチル安息香酸、第3ブチル安息香酸、ヒドロキシ安息香酸、エトキシ安息香酸、プロポキシ安息香酸、イソプロポキシ安息香酸、ブトキシ安息香酸、イソブトキシ安息香酸、第2ブトキシ安息香酸、第3ブトキシ安息香酸、アミノ安息香酸、N-メチルアミノ安息香酸、N-エチルアミノ安息香酸、N-プロピルアミノ安息香酸、N-イソプロピルアミノ安息香酸、N-ブチルアミノ安息香酸、N-イソブチルアミノ安息香酸、N-第2ブチルアミノ安息香酸、N-第3ブチルアミノ安息香酸、N,N-ジメチルアミノ安息香酸及びN,N-ジエチルアミノ安息香酸等);及び芳香族ポリカルボン酸(フタル酸、イソフタル酸及びテレフタル酸等)等のカルボン酸のカルボキシ基から水素イオンを除いたアニオンが挙げられる。なお、前記カルボキシレートアニオンによりエポキシ基を有する重合体(A)の架橋反応が進む場合がある。
前記のカルボキシレートアニオンの内、耐電圧の観点から好ましいのは飽和脂肪族ポリカルボン酸及び不飽和脂肪族ポリカルボン酸のカルボキシ基から水素イオンを除いたアニオンである。
【0030】
前記のカチオンとしては、アンモニウム、第1級アンモニウム、第2級アンモニウム、第3級アンモニウム、第4級アンモニウム及びアミジニウム等が挙げられる。
アンモニウムとしては、無置換アンモニウムが挙げられる。
第1級アンモニウムとしては、例えば、炭素数1~3のアンモニウム(メチルアンモニウム、エチルアンモニウム、プロピルアンモニウム及びイソプロピルアンモニウム等)等が挙げられる。
第2級アンモニウムとしては、例えば、炭素数2~6のアンモニウム(ジメチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、メチルエチルアンモニウム、メチルプロピルアンモニウム及びメチルイソプロピルアンモニウム等)等が挙げられる。
第3級アンモニウムとしては、例えば、炭素数3~9のアンモニウム(トリメチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、ジメチルエチルアンモニウム、ジメチルプロピルアンモニウム、メチルモルホリニウム及びジメチルイソプロピルアンモニウム等)等が挙げられる。
第4級アンモニウムとしては、例えば、炭素数4~12のアンモニウム(テトラメチルアンモニウム、エチルトリメチルアンモニウム、ジエチルジメチルアンモニウム、トリエチルメチルアンモニウム及びテトラエチルアンモニウム等)等が挙げられる。
【0031】
アミジニウムは、前記カルボキシレートアニオンと塩を形成するアミジニウムであれば特に限定されることなく使用することができる。
アミジニウムとしては、イミダゾリニウム、イミダゾリニウムが有する水素原子を炭素数1~4のアルキル基で置換したカチオン(1,2,3,4-テトラメチルイミダゾリニウム、1,3,4-トリメチル-2-エチルイミダゾリニウム、1,3-ジメチル-2,4-ジエチルイミダゾリニウム及び1,2-ジメチル-3,4-ジエチルイミダゾリニウム等)、イミダゾリウム及びイミダゾリウムが有する水素原子を炭素数1~4のアルキル基で置換したカチオン(1,3-ジメチルイミダゾリウム、1,3-ジエチルイミダゾリウム、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム及び1,2,3-トリメチルイミダゾリウム等)等が挙げられる。
【0032】
前記のカチオンの内、耐電圧の観点から好ましいのはアンモニウム、第1級アンモニウム、第2級アンモニウム及び第3級アンモニウムであり、更に好ましいのは無置換アンモニウム、第1級アンモニウム及び第3級アンモニウムである。
【0033】
本発明の電解コンデンサ用電解液は、必要に応じてホウ酸化合物(D)を含有していてもよい。
前記のホウ酸化合物(D)としては、ホウ酸及びホウ酸エステル等が挙げられる。
前記のホウ酸エステルとしては、ホウ酸アルキル(ホウ酸トリエチル等の炭素数1~6のホウ酸アルキル等)及びホウ酸アリール(ホウ酸トリフェニル等)等が挙げられる。
これらの内、耐電圧の観点から好ましいのはホウ酸である。
【0034】
本発明の電解コンデンサ用電解液において、電解コンデンサ用電解液の合計重量に対する重合体(A)の重量比率はゲル化性の観点から0.5~40重量%であることが好ましく、更に好ましくは1~30重量%であり、特に好ましくは5~20重量%である。
電解コンデンサ用電解液の合計重量に対する重合体(A)を架橋させてなるゲルの重量比率はゲル化性の観点から0.5~40重量%であることが好ましく、更に好ましくは1~30重量%であり、特に好ましくは5~20重量%である。
電解コンデンサ用電解液の合計重量に対する前記の溶剤(B)の重量比率は、導電率の観点から、50~99重量%であることが好ましく、更に好ましくは60~80重量%である。
電解コンデンサ用電解液の合計重量に対する電解質(C)の重量比率は、導電率の観点から0.5~40重量%であることが好ましく、更に好ましくは5~30重量%である。
【0035】
電解コンデンサ用電解液にホウ酸化合物(D)を使用する場合、電解コンデンサ用電解液の合計重量に対するホウ酸化合物(D)の重量比率は、耐電圧の観点から0.01~10重量%であることが好ましく、更に好ましくは0.5~5重量%である。
【0036】
電解コンデンサ用電解液の合計重量に対する架橋剤の重量比率は、好ましくは0~10重量%であり、更に好ましくは0~5重量%である。
【0037】
電解コンデンサ用電解液の合計重量に対する触媒の重量比率は、好ましくは0~5重量%であり、更に好ましくは0~1重量%である。
【0038】
本発明の電解コンデンサ用電解液は、必要に応じてその他の添加剤を更に含有していてもよい。
その他の添加剤の具体例としては、ガス発生抑制剤(o-ニトロ安息香酸、p-ニトロ安息香酸、m-ニトロ安息香酸、o-ニトロフェノール及びp-ニトロフェノールなどのニトロ化合物)及び耐電圧向上剤(ポリエチレングリコール(Mn:600以上)、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール及びマンニトール等)が挙げられる。
これらのうち耐電圧を向上させる目的で耐電圧向上剤が好ましく用いられ、マンニトールを用いることが更に好ましい。
【0039】
電解コンデンサ用電解液の合計重量に対するその他の添加剤の合計の重量比率は、好ましくは10重量%以下であり、更に好ましくは5重量%以下、特に好ましくは3重量%以下である。
【0040】
本発明の一実施形態に係る電解コンデンサ用電解液は、電解コンデンサ及びハイブリッド型電解コンデンサ用として好適である。
【0041】
本発明の電解コンデンサ用電解液の製造方法は、特に限定はされない。例えば、エポキシ基を有する重合体(A)、溶剤(B)及び電解質(C)並びに必要に応じてホウ酸化合物(D)、架橋剤、触媒及びその他添加剤を、20~100℃の温度範囲で、公知の機械的混合方法(例えばメカニカルスターラーやマグネティックスターラーを用いる方法)を用いることによって均一混合することで、製造することができる。必要により、エポキシ基を有する重合体(A)のエポキシ基を開環重合(架橋反応)させることでゲル化させることもできる。また、ゲル化は、コンデンサ素子内に電解液を入り込ませる前でも、コンデンサ素子内に電解液を入り込ませた後からでも行うことができる。
【0042】
本発明の電解コンデンサは、コンデンサ素子と一対のリード線と外装体とを有する。一対のリード線はそれぞれ、一端がコンデンサ素子に接続される。外装体はリード線の他方の端部を外部に導出するようにして、コンデンサ素子を封入している。
外装体は、筒状のケースと、上記ケースの外周面に設けられた絞り加工部と、リード線を挿通させるための貫通孔を有する封口体とで構成される。上記ケースには、本発明の電解コンデンサ用電解液が含浸されたコンデンサ素子が収納される。一端がコンデンサ素子に接続されたリード線は、それぞれ、上記封口体の貫通孔に挿通され、上記絞り加工部で圧縮されることで封止される。
【0043】
本発明の一実施形態におけるコンデンサ素子は、表面に誘電体層を有する陽極箔を有する。陽極箔はアルミニウム箔をエッチング処理により粗面化し、更にその表面に誘電体である陽極酸化皮膜を化成処理することにより形成される。
【0044】
コンデンサ素子は陽極箔に加えて更に、陰極箔及びセパレータを有する。一態様において、コンデンサ素子は、陽極箔と、陽極箔の表面に形成された誘電体層と、セパレータと、陰極箔とが順に積層された積層体が、巻回した構造を有する。
【0045】
本発明の電解コンデンサにおいては、コンデンサ素子に本発明の電解コンデンサ用電解液が含浸され電解コンデンサが作製される。
【0046】
本発明の好ましい一実施形態の電解コンデンサは、例えば、本発明の電解コンデンサ用電解液を駆動用電解液としてセパレータに含浸し、必要により加熱によってエポキシ基を有する重合体(A)のエポキシ基を開環重合(架橋反応)させることでゲル化(架橋)を行い、得ることができる。
【0047】
本発明は、以下の構成を含んでもよい。
<1>
エポキシ基を有する重合体(A)、溶剤(B)及び電解質(C)を含む電解コンデンサ用電解液であって、前記エポキシ基を有する重合体(A)が構成単量体としてエポキシ基を有する(メタ)アクリルモノマー(a1)を含む電解コンデンサ用電解液。
<2>
エポキシ基を有する重合体(A)を架橋させてなるゲル、溶剤(B)及び電解質(C)を含む電解コンデンサ用電解液であって、前記エポキシ基を有する重合体(A)が構成単量体としてエポキシ基を有する(メタ)アクリルモノマー(a1)を含む電解コンデンサ用電解液。
<3>
前記エポキシ基を有する(メタ)アクリルモノマー(a1)の含有量が前記エポキシ基を有する重合体(A)を構成する全単量体の合計重量に対して2~100重量%である<1>又は<2>に記載の電解コンデンサ用電解液。
<4>
前記エポキシ基を有する重合体(A)が、構成単量体として、更にエポキシ基を有さない(メタ)アクリルモノマー(a2)を含む<1>~<3>いずれかに記載の電解コンデンサ用電解液。
<5>
<1>~<4>いずれかに記載の電解コンデンサ用電液を含む電解コンデンサ。
【実施例0048】
以下本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0049】
また、製造例及び比較製造例で合成した重合体(A)のMnは、GPCを用いて以下の条件で測定した。
装置 : 東ソー(株)製 HLC-8120
カラム : TSK GEL GMH6 2本 〔東ソー(株)製〕
測定温度 : 40℃
試料溶液 : 0.25重量%のTHF溶液
溶液注入量 : 100μl
検出装置 : 屈折率検出器
基準物質 : 東ソー製 標準ポリスチレン(TSKstandard POLYSTYRENE)12点(重量平均分子量: 500 1050 2800 5970 9100 18100 37900 96400 190000 355000 1090000 2890000)
【0050】
<製造例1:重合体(A-1)の合成>
撹拌機、温度計及び冷却管を取り付けたフラスコに、メチルイソブチルケトン[和光純薬工業(株)製]228重量部、グリシジルメタクリレート[東京化成工業(株)製]100重量部及びノルマルドデシルメルカプタン[アルケマ(株)製]1重量部を投入し、90℃まで加熱した。ここに予め調製しておいた2,2-アゾビス(2,4ジメチルバレロニトリル)[V-65、和光純薬工業(株)製]1重量部をメチルイソブチルケトン5重量部に溶解させた溶液を2時間かけて滴下した。滴下終了後、更に90℃で3時間保持した。その後100℃まで昇温し、同温度0.5kPaの条件で減圧乾燥によりメチルイソブチルケトンを留去し、重合体(A-1)を合成した。
【0051】
<製造例2:重合体(A-2)の合成>
製造例1において、グリシジルメタクリレートの投入量を100重量部から60重量部に変更し、2-ヒドロキシエチルメタクリレート[東京化成工業(株)製]40重量部を追加した以外は製造例1と同様にして行い重合体(A-2)を合成した。
【0052】
<製造例3:重合体(A-3)の合成>
製造例2において、グリシジルメタクリレートの投入量を60重量部から20重量部に変更し、2-ヒドロキシエチルメタクリレートの投入量を40重量部から80重量部に変更した以外は製造例2と同様にして行い重合体(A-3)を合成した。
【0053】
<製造例4:重合体(A-4)の合成>
製造例2において、グリシジルメタクリレートの投入量を60重量部から2重量部に変更し、2-ヒドロキシエチルメタクリレートの投入量を40重量部から98重量部に変更した以外は製造例2と同様にして行い重合体(A-4)を合成した。
【0054】
<製造例5:重合体(A-5)の合成>
製造例2において、グリシジルメタクリレートの投入量を60重量部から1重量部に変更し、2-ヒドロキシエチルメタクリレートの投入量を40重量部から99重量部に変更した以外は製造例2と同様にして行い重合体(A-5)を合成した。
【0055】
<製造例6:重合体(A-6)の合成>
製造例2において、2-ヒドロキシエチルメタクリレート40重量部に代えて、ブチルメタクリレート[ライトエステルNB、共栄社化学(株)製]40重量部を使用した以外は製造例2と同様にして行い重合体(A-6)を合成した。
【0056】
<製造例7:重合体(A-7)の合成
製造例2において、2-ヒドロキシエチルメタクリレート40重量部に代えて、イソブチルメタクリレート[IBMA、(株)日本触媒製]40重量部を使用した以外は製造例2と同様にして行い重合体(A-7)を合成した。
【0057】
<製造例8:重合体(A-8)の合成>
製造例2において、2-ヒドロキシエチルメタクリレート40重量部に代えて、2-メトキシエチルメタクリレート[東京化成工業(株)製]40重量部を使用した以外は製造例2と同様にして行い重合体(A-8)を合成した。
【0058】
<製造例9:重合体(A-9)の合成>
製造例2において、2-ヒドロキシエチルメタクリレート40重量部に代えて、ポリエチレン[n(オキシエチレン基の繰り返し数)=4.5]グリコールモノメタクリレート[ブレンマーPE-200、日油(株)製]40重量部を用いた以外は製造例2と同様にして行い重合体(A-9)を合成した。
【0059】
<製造例10:重合体(A-10)の合成>
製造例2において、2-ヒドロキシエチルメタクリレート40重量部に代えて、メトキシポリエチレン[n(オキシエチレン基の繰り返し数)=9]グリコールメタクリレート[ブレンマーPME-400、日油(株)製]40重量部を用いた以外は製造例2と同様にして行い重合体(A-10)を合成した。
【0060】
<製造例11:重合体(A-11)の合成>
製造例2において、グリシジルメタクリレート60重量部に代えて、グリシジルアクリレート60重量部[東京化成工業(株)製]を使用し、2-ヒドロキシエチルメタクリレート40重量部に代えて、ブチルアクリレート[ライトエステルNB、共栄社化学(株)製]40重量部を用いた以外は製造例2と同様にして行い重合体(A-11)を合成した。
【0061】
<製造例12:重合体(A-12)の合成>
製造例11において、ブチルアクリレート40重量部に代えて、イソブチルアクリレート[AIB、(株)日本触媒製]40重量部を用いた以外は製造例11と同様にして行い重合体(A-12)を合成した。
【0062】
<製造例13:重合体(A-13)の合成>
製造例11において、ブチルアクリレート40重量部に代えて、2-ヒドロキシエチルアクリレート[BHEA、(株)日本触媒製]40重量部を用いた以外は製造例11と同様にして行い重合体(A-13)を合成した。
【0063】
<製造例14:重合体(A-14)の合成>
製造例11において、ブチルアクリレート40重量部に代えて、ヒドロキシブチルアクリレート[東京化成工業(株)製]40重量部を用いた以外は製造例11と同様にして行い重合体(A-14)を合成した。
【0064】
<製造例15:重合体(A-15)の合成>
製造例11において、ブチルアクリレート40重量部に代えて、ポリエチレン[n(オキシエチレン基の繰り返し数)=4.5]グリコールモノアクリレート[ブレンマーAE-200、日油(株)製]40重量部を用いた以外は製造例11と同様にして行い重合体(A-15)を合成した。
【0065】
<製造例16:重合体(A-16)の合成>
製造例11において、ブチルアクリレート40重量部に代えて、メトキシポリエチレン[n(オキシエチレン基の繰り返し数)=9]グリコールアクリレート[ブレンマーAME-400、日油(株)製]40重量部を用いた以外は製造例11と同様にして行い重合体(A-16)を合成した。
【0066】
<製造例17:重合体(A-17)の合成>
製造例13において、グリシジルアクリレートの投入量を60重量部から30重量部に変更し、4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル[4HBAGE、(株)新菱製]30重量部を追加した以外は製造例13と同様にして行い重合体(A-17)を合成した。
【0067】
<製造例18:重合体(A-18)の合成>
製造例2において、グリシジルメタクリレート60重量部に代えて、4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル60重量部を用いた以外は製造例2と同様にして行い重合体(A-18)を合成した。
【0068】
<比較製造例1:重合体(A’-1)の合成>
製造例1において、グリシジルメタクリレート100重量部に代えて、2-ヒドロキシエチルメタクリレート60重量部及びメタクリル酸[東京化成工業(株)製]40重量部を用いた以外は製造例1と同様にして行い比較用の重合体(A’-1)を合成した。
【0069】
<溶解性の評価>
製造例1~18及び比較製造例1で合成した重合体(A)1g、エチレングリコール、γ-ブチロラクトン又はスルホラン4.0gを9mLの透明なバイアル管へ充填し、0.5-10分間撹拌し、撹拌後の溶液状態を目視で確認した。表1に評価結果を示す。固体の溶け残りがなければ溶解性が良好であると判断して「〇」、固体の溶け残りが認められた場合は「×」と示した。
【0070】
重合体(A-1)~(A-18)及び比較用の重合体(A’-1)の配合、エポキシ当量及び数平均分子量を表1に示す。
【0071】
【表1】
【0072】
<電解質(C)の合成>
<製造例19:電解質(C-1)の調製>
フタル酸[和光純薬工業(株)製]18.6重量部をメタノール150重量部に分散させた分散液にトリエチルアミン[東京化成工業(株)製]11.4重量部を滴下して、室温で3時間撹拌することで、フタル酸トリエチルアミン塩のメタノール溶液を得た。得られた溶液を減圧下(1.0kPa以下)110℃の条件で加熱蒸留し、溶媒のメタノールを除去することで、電解質(C-1)(フタル酸トリエチルアンモニウム塩)を得た。
【0073】
<製造例20:電解質(C-2)の調製>
容器にメタノール80重量部と1,6-デカンジカルボン酸20重量部を投入し、撹拌しながらアンモニアガス2.5重量部を吹き込み中和した。その後減圧下(0.5kPa)80℃の条件でメタノールを除去することで、電解質(C-2)(1,6-デカンジカルボン酸二アンモニウム塩)を得た。
【0074】
<製造例21:電解質(C-3)の調製>
容器にメタノール200重量部とアゼライン酸[和光純薬工業(株)製]48.5重量部を投入し、炭酸アンモニウム[キシダ化学(株)製]29.2重量部を投入し中和した。減圧下(0.5kPa)80℃の条件でメタノールを除去することで、電解質(C-3)(アゼライン酸アンモニウム塩)を得た。
【0075】
<製造例22:電解質(C-4)の調製>
容器にメタノール200重量部と2,2-ジメチルへプタン酸40.8重量部を投入し、炭酸アンモニウム29.2重量部を投入し中和した。減圧下(0.5kPa)80℃の条件でメタノールを除去することで、電解質(C-4)(2,2-ジメチルへプタン酸アンモニウム塩)を得た。
【0076】
<製造例23:電解質(C-5)の調製>
容器にフタル酸18.6重量部をメタノール150重量部に分散させた分散液を投入し、4-メチルモルホリン[東京化成工業(株)製]11.4重量部を滴下して、室温で3時間撹拌することで、フタル酸メチルモルホリニウム塩のメタノール溶液を得た。得られた溶液を減圧下(1.0kPa以下)110℃の条件で加熱蒸留し、溶媒のメタノールを除去することで、電解質(C-5)(フタル酸メチルモルホリニウム塩)を得た。
【0077】
<コンデンサ用電解液の調製>
<実施例1~26、比較例1~3>
エポキシ基を有する重合体(A)、有機溶剤(B)、電解質(C)及び必要によりホウ酸化合物(D)を、表2に記載の重量部数の組成で混合し、電解コンデンサ用電解液(実施例1~26)及び比較のコンデンサ用電解液(比較例1~3)を調製した。
【0078】
【表2】
【0079】
<ゲル化性の評価>
実施例1~26及び比較例1~3で調製した電解コンデンサ用電解液約5gを9mLの透明なバイアル管へ充填し、120℃、90分間オーブンで加熱することによりゲル化させた。室温に冷却後、バイアル管を45°傾けた際の電解液の外観を目視で観察した。表2に評価結果を示す。ここで、傾けた際に電解液の液面が変化しなければ(液が流動しなければ)ゲル化性が良好であると判断して「〇」、液面が変化していれば「×」と示した。
【0080】
<電解コンデンサの作製>
実施例1~26及び比較例1~3で作製した電解コンデンサ用電解液をコンデンサ素子に含侵させ、外装ケースに収容し、封止した。その後、温度を120℃、90分間オーブンで加熱することにより、電解液中に含まれる重合体(A)のエポキシ基が開環重合し、3次元構造を形成することを利用して、ゲル電解液を含む電解コンデンサを作製した。
【0081】
<電解液減少率>
耐久試験前後のコンデンサ重量を測定し、重量変化から電解液の減少率を求め、下記のように評価した。耐久試験は電解コンデンサを145℃、2000時間、恒温槽に放置して行った。結果を表3に示す。
【0082】
〇: 初期と比較して耐久試験後の電解液減少率が5%未満
△: 初期と比較して耐久試験後の電解液減少率が5%以上10%未満
×: 初期と比較して耐久試験後の電解液減少率が10%以上
【0083】
<ESR維持率、静電容量維持率>
初期及び耐久試験後のESR(等価直列抵抗)及び静電容量を、JIS C 5101-1:2019に準拠してESRは100kHz、20℃、静電容量は120Hz、20℃の条件で測定した。耐久試験後に初期評価と同様に再度ESRと静電容量の測定を行い、初期と耐久試験後のESRの上昇及び静電容量の低下を下記のように評価した。結果を表3に示す。
【0084】
ESR維持率
〇:初期と比較して耐久試験後のESRの上昇が10%未満
△:初期と比較して耐久試験後のESRの上昇が10%以上20%未満
×:初期と比較して耐久試験後のESRの上昇が20%以上
【0085】
静電容量維持率
〇:初期と比較して耐久試験後の静電容量の低下が3%未満
△:初期と比較して耐久試験後の静電容量の低下が3以上10%未満
×:初期と比較して耐久試験後の静電容量の低下が10%以上
【0086】
【表3】
【0087】
本発明の実施例1~26の電解コンデンサ用電解液は、エポキシ基を有する重合体(A)を含み、加熱によってゲル状となるため、優れたESR維持率及び容量維持率を示した。
一方、比較例1~3の電解コンデンサ用電解液はエポキシ基を有する重合体(A)を含まず、電解液が液状のままであり、電解液減少率、ESR維持率及び静電容量維持率の少なくとも1つが劣っていた。電解液減少率、ESR維持率及び静電容量維持率を高く維持できたのは、電解液をゲル化することによりその蒸散を抑制できたからだと推察する。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明の電解コンデンサ用電解液を用いた電解コンデンサは、高い導電率を保持しつつ高温での耐電圧も高い電解液を用いているため、高い駆動電圧が要求される電気製品及び電子製品の部品として好適に使用できる。
本発明の電解コンデンサ用電解液は、外気温の影響を受け、かつ、駆動時に高温になりやすいノートパソコン等のモバイル用途、特に車載用途の電解コンデンサ用電解液として好適である。