(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024017371
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】発泡体用樹脂組成物およびその利用
(51)【国際特許分類】
C08J 9/08 20060101AFI20240201BHJP
C08L 71/02 20060101ALI20240201BHJP
C08L 33/14 20060101ALI20240201BHJP
C08K 5/109 20060101ALI20240201BHJP
B32B 5/18 20060101ALI20240201BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
C08J9/08 CEY
C08J9/08 CEZ
C08L71/02
C08L33/14
C08K5/109
B32B5/18
B32B27/18 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022119958
(22)【出願日】2022-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】神山 博志
【テーマコード(参考)】
4F074
4F100
4J002
【Fターム(参考)】
4F074AA48
4F074AA76H
4F074AH03
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4F074BA22
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4F074BB22
4F074BB23
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4F100AK01A
4F100AK25
4F100AK25A
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4J002GC00
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4J002GN00
4J002GQ00
4J002GT00
(57)【要約】
【課題】生地への染み込み、および/または生地からの染み出しを抑制し得る発泡体用樹脂組成物を提供する。
【解決手段】反応性ケイ素基を有する基材樹脂(A)、および非加熱型発泡剤(B)を含み、かつ、粘度が30Pa・s以上である、発泡体用樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応性ケイ素基を有する基材樹脂(A)、および非加熱型発泡剤(B)を含み、かつ、粘度が30Pa・s以上である、発泡体用樹脂組成物。
【請求項2】
前記基材樹脂(A)が、アクリル樹脂を含む、請求項1に記載の発泡体用樹脂組成物。
【請求項3】
前記アクリル樹脂のガラス転移温度が、70℃以上である、請求項2に記載の発泡体用樹脂組成物。
【請求項4】
前記基材樹脂(A)が、ポリオキシアルキレン系重合体を含む、請求項1に記載の発泡体用樹脂組成物。
【請求項5】
前記非加熱型発泡剤(B)が、二炭酸ジエステルを含む、請求項1に記載の発泡体用樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の発泡体用樹脂組成物を発泡および硬化させてなる、発泡体。
【請求項7】
発泡倍率が、10倍以上である、請求項6に記載の発泡体。
【請求項8】
基材、および前記基材の少なくとも一部に積層された請求項7に記載の発泡体を含む、発泡積層体。
【請求項9】
前記基材が、繊維を含む生地である、請求項8に記載の発泡積層体。
【請求項10】
前記生地が、編み生地である、請求項9に記載の発泡積層体。
【請求項11】
請求項1~5のいずれか1項に記載の発泡体用樹脂組成物と、シラノール縮合触媒および/または発泡触媒とを混合する工程を含む、発泡体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡体用樹脂組成物およびその利用に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、熱硬化性樹脂を用いた発泡体として、変性シリコーン樹脂を用いた発泡体が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、加水分解性基を有するケイ素基を有し、主鎖がオキシアルキレン系単位からなる重合体である基材樹脂(A)と、シラノール縮合触媒(B)と、重炭酸塩等を含む化学発泡剤(C)とを含有する発泡体用樹脂組成物を加熱により硬化させた発泡体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記発泡体用樹脂組成物は、常温下にて、基材としての生地と接触させた状態で発泡体とすると、生地への染み込み、および/または生地からの染み出しが発生する問題が生じる場合があることを、本発明らは見出した。
【0006】
そこで、本発明の一態様は、生地への染み込み、および/または生地からの染み出しを抑制し得る発泡体用樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、発泡体用樹脂組成物の粘度を特定の範囲内とすることにより、常温下でも、前記発泡体用樹脂組成物の生地への染み込みおよび/または生地からの染み出しを抑制できることを初めて見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
したがって、本発明の一態様は、反応性ケイ素基を有する基材樹脂(A)、および非加熱型発泡剤(B)を含み、かつ、粘度が30Pa・s以上である、発泡体用樹脂組成物である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、生地への染み込み、および/または生地からの染み出しを抑制し得る発泡体用樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〔1.本発明の概要〕
上述した通り、本発明者らは、変性シリコーン樹脂を含む発泡体用樹脂組成物について検討した。その結果、従来の発泡体用樹脂組成物は、常温下にて、基材としての生地と接触させた状態で発泡させると、生地への染み込み、および/または生地からの染み出しが発生する場合があるという問題を独自に見出した。
【0011】
そこで、本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、発泡体用樹
脂組成物の粘度を調整することにより、前記課題を解決できることを見出した。具体的には、反応性ケイ素基を有する基材樹脂(A)、および非加熱型発泡剤(B)を含み、かつ、粘度が30Pa・s以上である、発泡体用樹脂組成物とすることにより、常温下でも、前記発泡体用樹脂組成物の生地への染み込みおよび/または生地からの染み出しを抑制できることを初めて見出した。
【0012】
本発泡体用樹脂組成物は、生地への染み込みおよび/または生地からの染み出しを抑制でき、取り扱い性に優れるため、発泡体を利用する種々の分野において、有利である。
【0013】
〔2.発泡体用樹脂組成物〕
本発明の一実施形態に係る発泡体用樹脂組成物(以下、本発泡体用樹脂組成物とも称する。)は、反応性ケイ素基を有する基材樹脂(A)、および非加熱型発泡剤(B)を含み、かつ、粘度が30Pa・s以上である。本発泡体用樹脂組成物が上述した構成を有することにより、生地への染み込みおよび/または生地からの染み出しを抑制することができる。
【0014】
本明細書において、「生地への染み込み」とは、発泡体用樹脂組成物が生地の内部に入り込むことを意味する。また、本明細書において「生地からの染み出し」とは、生地の内部に入り込んだ樹脂組成物が、生地の表面(例えば、生地の染み込んだ側と反対側)から漏れ出すことを意味する。本明細書において、「生地」とは、通常の樹脂組成物が染み込み、あるいは染み出し得る材料を意味する。「生地」の一例としては、不織布および織布等の布地が挙げられる。なお、これらの評価方法は、後述する実施例において記載する。
【0015】
本発泡体用樹脂組成物の粘度は、30Pa・s以上であり、好ましくは40Pa・s以上であり、より好ましくは50Pa・s以上であり、さらに好ましくは60Pa・s以上である。本発泡体用樹脂組成物が前記粘度範囲を有することにより、生地への染み込みおよび/または生地からの染み出しを抑制することができる。粘度の上限は特に限定されないが、取扱性の観点から、例えば、200Pa・s以下であってもよい。前記粘度は、後述する実施例に記載の方法によって測定することができる。
【0016】
<基材樹脂(A)>
基材樹脂(A)は、反応性ケイ素基を有する樹脂である。基材樹脂(A)は、分子鎖中に反応性ケイ素基を少なくとも1個有することが好ましい。基材樹脂(A)が反応性ケイ素基を有することにより、当該反応性ケイ素基間でシラノール縮合反応が生じ、基材樹脂(A)が高分子状態となって硬化する。基材樹脂(A)はガラス転移温度が室温以下の液状樹脂であることが好ましい。
【0017】
基材樹脂(A)に含まれる反応性ケイ素基の数は、1分子中に1.0個以上3.0個以下が好ましく、1.1個以上2.5個以下がより好ましく、1.2個以上2.0個以下がさらに好ましい。基材樹脂(A)は、硬化性、柔軟性の観点から、主鎖もしくは分岐部の分岐鎖の両末端に反応性ケイ素基を有することが好ましい。
【0018】
また、基材樹脂(A)は、主鎖もしくは分岐部の分子鎖の両末端に反応性ケイ素基を有する重合体および、分子鎖の片末端のみに反応性ケイ素基を有する重合体を含んでいてもよい。分子鎖の片末端のみに反応性ケイ素基を有する重合体は、1分子中に平均して、好ましくは1.0個以下、より好ましくは0.3個以上1.0個以下、さらに好ましくは0.4個以上1.0個以下、特に好ましくは0.5個以上1.0個以下の反応性ケイ素基を有する。
【0019】
基材樹脂(A)100重量部における、分子鎖の両末端に反応性ケイ素基を有する重合
体の含有量は、30重量部以上100重量部以下が好ましい。基材樹脂(A)100重量部における、分子鎖の片末端のみに反応性ケイ素基を有する重合体の含有量は、0重量部以上30重量部以下が好ましい。
【0020】
(アクリル樹脂)
基材樹脂(A)はさらに、ガラス転移温度が室温以上のアクリル樹脂を含むことが好ましい。基材樹脂(A)がアクリル樹脂を含むことにより、発泡体用樹脂組成物の粘度を向上させられるだけでなく、発泡体の耐シュリンク性が向上する。これは、ガラス転移温度が室温以上のアクリル樹脂が架橋構造に組み込まれることによる急激な粘度上昇の効果である。
【0021】
アクリル樹脂の含有量は、耐シュリンク性の観点から、基材樹脂(A)100重量部中のアクリル樹脂の量は、3重量部以上80重量部以上が好ましく、5重量部以上50重量部以下がより好ましく、5重量部以上30重量部以下がさらに好ましい。
【0022】
前記アクリル樹脂のガラス転移温度は、室温以上が好ましく、70℃以上がより好ましく、80℃以上がさらに好ましく、90℃以上が特に好ましい。アクリル樹脂のガラス転移温度が前記範囲であれば、発泡体用樹脂組成物の粘度を30Pa・s以上に制御しやすい。ガラス転移温度の上限は特に限定されないが、取り扱い性の観点から、例えば、180℃以下であり得る。
【0023】
前記アクリル樹脂としては例えば、(メタ)アクリル酸エステル単量体を、単独、または複数組み合わせてラジカル重合して得られる(メタ)アクリル酸エステル系(共)重合体等が挙げられる。
【0024】
前記(メタ)アクリル酸エステル系単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸n-ペンチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸n-ヘプチル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸トルイル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸3-メトキシブチル、(メタ)アクリル酸3-(トリメトキシシリル)プロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸2-アミノエチル、3-((メタ)アクリロイルオキシ)-n-プロピルトリメトキシシラン、3-((メタ)アクリロイルオキシ)-n-プロピルジメトキシメチルシラン、(メタ)アクリロイルオキシメチルトリメトキシシラン、(メタ)アクリロイルオキシメチルトリエトキシシラン、(メタ)アクリロイルオキシメチルジメトキシメチルシラン、(メタ)アクリロイルオキシメチルジエトキシメチルシラン、イソボロニルメタクリレート、および(メタ)アクリル酸のエチレンオキサイド付加物等の(メタ)アクリル酸系単量体が挙げられる。(メタ)アクリル酸エステル系単量体は、これらに限定されない。
【0025】
前記(メタ)アクリル酸エステル系(共)重合体は、(メタ)アクリル酸エステル系単量体とともに、ビニル系単量体を共重合することもできる。
【0026】
ビニル系単量体としては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレン、クロルスチレン、スチレンスルホン酸、およびスチレンスルホン酸塩等のスチレン系単量
体;ビニルトリメトキシシラン、およびビニルトリエトキシシラン等のケイ素含有ビニル系単量体;無水マレイン酸、マレイン酸、並びにマレイン酸のモノアルキルエステルおよびジアルキルエステル等のマレイン酸またはマレイン酸誘導体;フマル酸、並びにフマル酸のモノアルキルエステルおよびジアルキルエステル等のフマル酸またはフマル酸誘導体;マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、ヘキシルマレイミド、オクチルマレイミド、ドデシルマレイミド、ステアリルマレイミド、フェニルマレイミド、およびシクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系単量体;アクリロニトリル、およびメタクリロニトリル等のニトリル基含有ビニル系単量体;アクリルアミド、およびメタクリルアミド等のアミド基含有ビニル系単量体;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、および桂皮酸ビニル等のビニルエステル類;エチレン、およびプロピレン等のアルケン類;ブタジエン、およびイソプレン等の共役ジエン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、塩化アリル、アリルアルコール等が挙げられる。これらは単独で重合させてもよく、複数を共重合させてもよい。
【0027】
(メタ)アクリル酸エステル系(共)重合体としては、物性等の点から(メタ)アクリル酸エステル系単量体の(共)重合体、スチレン系単量体と(メタ)アクリル酸系単量体との共重合体が好ましく、(メタ)アクリル酸エステル系単量体の(共)重合体がより好ましく、アクリル酸エステル系単量体の(共)重合体がさらに好ましい。
【0028】
(メタ)アクリル酸エステル系(共)重合体の製造方法は、特に限定されない。(メタ)アクリル酸エステル系(共)重合体は、公知の方法により製造することができる。ただし、重合開始剤としてアゾ系化合物、過酸化物等を用いる通常のフリーラジカル重合法で得られる重合体は、分子量分布の値が一般に2より大きく、粘度が高くなりやすい。従って、分子量分布が狭く、粘度の低い(メタ)アクリル酸エステル系(共)重合体であって、高い割合で分子鎖末端に架橋性官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル系(共)重合体を得るためには、リビングラジカル重合法を用いることが好ましい。
【0029】
「リビングラジカル重合法」の中でも、有機ハロゲン化物、およびハロゲン化スルホニル化合物等を開始剤として用い、遷移金属錯体を触媒として用いて(メタ)アクリル酸エステル系単量体を重合する「原子移動ラジカル重合法」は、前記の「リビングラジカル重合法」の特徴に加えて、官能基変換反応に比較的有利なハロゲン等を末端に有し、開始剤および触媒の設計の自由度が大きいことから、特定の官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体の製造方法としてさらに好ましい。この原子移動ラジカル重合法は、例えば、Matyjaszewskiら、ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカルソサエティー(J.Am.Chem.Soc.)1995年、117巻、5614頁等に記載されている。
【0030】
反応性ケイ素基を有する(メタ)アクリル酸エステル系(共)重合体の製造方法としては、例えば、特公平3-14068号公報、特公平4-55444号公報、および特開平6-211922号公報等に、連鎖移動剤を用いたフリーラジカル重合法を用いた製法が開示されている。また、特開平9-272714号公報等に、原子移動ラジカル重合法を用いた製法が開示されている。反応性ケイ素基を有する(メタ)アクリル酸エステル系(共)重合体の製造方法は、これらの方法に限定されない。前記の反応性ケイ素基を有する(メタ)アクリル酸エステル系(共)重合体は、単独で使用されてもよく、2種以上を併用されてもよい。
【0031】
本願明細書において、「(メタ)アクリル酸」とは「アクリル酸および/またはメタクリル酸」を表す。「(共)重合体」とは「重合体および/または共重合体」を表す。
【0032】
前記アクリル樹脂は上述した方法により合成したものを用いてもよいし、市販品を用い
てもよい。
【0033】
(反応性ケイ素基)
基材樹脂(A)中に含有される反応性ケイ素基は、ケイ素原子に結合したヒドロキシ基または加水分解性基を有し、シラノール縮合触媒によって加速される反応によりシロキサン結合を形成することにより架橋しうる基である。反応性ケイ素基としては、下記式(1a)で示されるものが挙げられる。
【0034】
-Si(R1a)3-a(X)a・・・(1a)
(R1aはそれぞれ独立に、炭素原子数1以上20以下の炭化水素基、または、-OSi(R’)3(R’は、それぞれ独立に炭素原子数1以上20以下の炭化水素基である)で示されるトリオルガノシロキシ基であり、R1aとしての炭化水素基は、置換されていてもよく、且つヘテロ含有基を有してもよい。また、Xは、それぞれ独立にヒドロキシ基または加水分解性基である。さらに、aは1以上3以下の整数である。)
加水分解性基としては、特に限定されず、従来公知の加水分解性基であればよい。具体的には、例えば水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、酸アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基、アルケニルオキシ基等が挙げられる。これらの内では、水素原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基、および、アルケニルオキシ基が好ましく、加水分解性が穏やかで取扱いやすいという観点からアルコキシ基が特に好ましい。
【0035】
加水分解性基およびヒドロキシ基は、1個のケイ素原子に1個以上3個以下の範囲で結合することができる。加水分解性基やヒドロキシ基が反応性ケイ素基中に2個以上結合する場合には、それらは同じであってもよいし、異なってもよい。
【0036】
前記式(1a)におけるaは、2または3が好ましく、硬化性の点と、硬化と発泡とが同時に進行する点とから、3が好ましい。
【0037】
また前記式(1a)におけるR1aの具体例としては、例えばメチル基、エチル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基等のアリール基、ベンジル基等のアラルキル基、R’がメチル基、フェニル基等である-OSi(R’)3で示されるトリオルガノシロキシ基、クロロメチル基、メトキシメチル基等が挙げられる。これらの中ではメチル基、およびメトキシメチル基が特に好ましい。
【0038】
前記式(1a)で表される反応性ケイ素基のより具体的な例示としては、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリイソプロポキシシリル基、ジメトキシメチルシリル基、ジエトキシメチルシリル基、ジイソプロポキシメチルシリル基、(メトキシメチル)ジメトキシシリル基が挙げられる。活性が高く良好な硬化性が得られることから、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、ジメトキシメチルシリル基が好ましく、トリメトキシシリル基がより好ましい。
【0039】
基材樹脂(A)の主鎖構造としては、直鎖状であっても、分岐構造を有していても構わないが、分岐であるほうが硬化性の観点から好ましい。基材樹脂の主鎖構造が分岐構造である場合、基材樹脂(A)は3つ以上の末端を有するのが好ましい。つまり、基材樹脂(A)が、主鎖構造において分岐を有し、且つ3つ以上の末端を有する樹脂を含むのが好ましい。
【0040】
基材樹脂(A)の分子量は、粘度および反応性のバランスの点から、数平均分子量Mnとして1500以上が好ましく、3000以上がより好ましい。数平均分子量Mnの上限
値には特に限定は無いが、50000以下が好ましく、30000以下がより好ましく、20000以下がさらに好ましい。また、基材樹脂(A)は、2種類以上の組み合わせでもよい。また、その際、主剤として用いる重合体以外の重合体は、粘度および架橋構造の調整を目的とする場合は、前記条件以外のものでもよい。
【0041】
ガラス転移温度が室温以上のアクリル樹脂の分子量は、生物濃縮性の点から、数平均分子量Mnとして1000以上が好ましく、2000以上がより好ましく、3000以上が特に好ましい。数平均分子量Mnの上限値には特に限定は無いが、20000以下が好ましく、10000以下がより好ましく、8000以下がさらに好ましい。
【0042】
基材樹脂(A)の末端における反応性ケイ素基は、ヒドロキシ基末端のオキシアルキレンをイソシアネートシラン化合物で末端変性することにより導入することができる。別の方法としてはヒドロキシ基末端にアリル基等の炭素-炭素不飽和結合を有する基を導入した後に、アルコキシシランによるヒドロシリル化を行うことにより、基材樹脂(A)の末端に反応性ケイ素基を導入することもできる。さらに、ポリイソシアネート変性品の末端をイソシアネート基とした場合は、活性水素を有するアミノシラン等で末端変性することで、基材樹脂(A)の末端に反応性ケイ素基を導入することができる。
【0043】
以上説明した、基材樹脂(A)における反応性ケイ素基、または反応性ケイ素基を含む末端基としては、発泡体の発泡倍率を高くしやすいことから、トリメトキシシリル基、(メトキシメチル)ジメトキシシリル基、下記式(1)~(4)で表される基であることが好ましい。
【0044】
【0045】
【0046】
【0047】
(式(1)~式(3)中、R1はそれぞれ独立に、炭素原子数1以上20以下の炭化水素基であり、R1としての炭化水素基は、置換されていてもよく、且つヘテロ含有基を有してもよく、Xはヒドロキシ基または加水分解性基であり、aは1、2、または3であり
、R4は2価の連結基であり、R4が有する2つの結合手は、それぞれ、連結基内の炭素原子、酸素原子、窒素原子、または硫黄原子に結合しており、R2、およびR3は、それぞれ独立に水素原子、炭素原子数1以上20以下のアルキル基、炭素原子数6以上20以下のアリール基、炭素原子数7以上20以下のアラルキル基、またはシリル基のいずれかである。)
-R5-CH2-Si(R1)3-a(X)a・・・(4)
(式(4)中、R1、およびaは、式(1)~式(3)におけるR1、およびaと同様であり、R5はヘテロ原子である。)
式(1)~(3)で表される構造では、前記のように、-Si(R1)3-a(X)aで表される反応性ケイ素基に、炭素-炭素二重結合が隣接している。このため、式(1)~(3)で表される構造においては、炭素-炭素二重結合が電子吸引基として作用し、反応性ケイ素基の活性が向上する。その結果、式(1)~(3)で表される末端基を有する基材樹脂(A)および、当該基材樹脂(A)を含む発泡体用樹脂組成物は、硬化反応性に優れると考えられる。
【0048】
R4は2価の連結基である。R4が有する2つの結合手は、それぞれ、連結基内の炭素原子、酸素原子、窒素原子、または硫黄原子に結合している。2価の連結基の具体的としては、-(CH2)n-、-O-(CH2)n-、-S-(CH2)n-、-N-(CH2)n-、-O-C(=O)-N-(CH2)n-、および-N-C(=O)-N-(CH2)n-等が挙げられる。これらの中では、-O-(CH2)n-、-O-C(=O)-N-(CH2)n-および-N-C(=O)-N-(CH2)n-が好ましく、-O-(CH2)n-がより好ましく、-O-CH2-が、原料を入手しやすいためさらに好ましい。nとしては、0以上10以下の整数が好ましく、0以上5以下の整数がより好ましく、0以上2以下の整数がさらに好ましく、0または1が特に好ましく、1が最も好ましい。
【0049】
R2およびR3は、それぞれ独立に水素、炭素原子数1以上20以下のアルキル基、炭素原子数6以上20以下のアリール基、炭素原子数7以上20以下のアラルキル基、およびシリル基のいずれかである。具体的には、水素;メチル基、エチル基、およびシクロヘキシル等のアルキル基;フェニル基、およびトリル基等のアリール基;ベンジル基、およびフェネチル基等のアラルキル基;トリメチルシリル基等のシリル基、が挙げられる。これらの中では、水素、メチル基、およびトリメチルシリル基が好ましく、水素、およびメチル基がより好ましく、水素がさらに好ましい。前記式(1)~(3)で表される構造としては、それぞれ、下記式(5)~(7)が挙げられる。
【0050】
【0051】
【0052】
【0053】
R1、X、およびaは前記の記載と同様である。
【0054】
式(1)~式(4)において、R1としての炭化水素基は、式(1a)におけるR1aとしての炭化水素基と同様である。
【0055】
R1としての炭化水素基としては、例えば、メチル基、およびエチル基等のアルキル基;クロロメチル基、およびメトキシメチル基等のヘテロ含有基を有するアルキル基;シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基等のアリール基;ベンジル基等のアラルキル基;等を挙げることができる。R1としては、メチル基、メトキシメチル基、およびクロロメチル基が好ましく、メチル基、およびメトキシメチル基がより好ましく、メトキシメチル基がさらに好ましい。
【0056】
式(1)~式(4)におけるXとしては、式(1a)について上述した通りである。
【0057】
式(4)におけるR5としてのヘテロ原子としては、本発明の目的と阻害しない限り特に限定されない。ヘテロ原子の具体例としては、O、NおよびSが挙げられる。
【0058】
以下、基材樹脂(A)の主鎖構造について説明する。
【0059】
(主鎖構造)
基材樹脂(A)の主鎖構造は、上述した通り、直鎖状であってもよいし、分岐鎖を有していてもよい。
【0060】
基材樹脂(A)の主鎖骨格を構成する重合体としては、例えば、ポリオキシアルキレン系重合体、炭化水素系重合体、ポリエステル系重合体、ビニル系(共)重合体、(メタ)アクリル酸エステル系(共)重合体、グラフト重合体、ポリサルファイド系重合体、ポリアミド系重合体、ポリカーボネート系重合体、ウレタン結合および/またはウレア結合を有する重合体(ウレタンプレポリマー)、ジアリルフタレート系重合体等が挙げられる。
【0061】
ポリオキシアルキレン系重合体としては、例えば、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレン、ポリオキシテトラメチレン、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン共重合体、およびポリオキシプロピレン-ポリオキシブチレン共重合体等が挙げられる。
【0062】
炭化水素系重合体としては、例えば、エチレン-プロピレン系共重合体、ポリイソブチレン、イソブチレンとイソプレンとの共重合体、ポリクロロプレン、ポリイソプレン、イソプレンまたはブタジエンとアクリロニトリルおよび/またはスチレン等との共重合体、ポリブタジエン、イソプレンまたはブタジエンとアクリロニトリルおよびスチレンとの共重合体、これらのポリオレフィン系重合体に水素添加して得られる水添ポリオレフィン系重合体等が挙げられる。
【0063】
ポリエステル系重合体としては、例えば、アジピン酸等の2塩基酸とグリコールとの縮合反応で得られる重合体、およびラクトン類の開環重合で得られる重合体等のエステル結合を有する重合体が挙げられる。
【0064】
ビニル系(共)重合体としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル、酢酸ビニル、アクリロニトリル、およびスチレン等のビニル系単量体を、単独、または複数組み合わせてラジカル重合して得られる(共)重合体が挙げられる。
【0065】
グラフト重合体としては、例えば、前記の各種重合体中で、ビニル系単量体を重合して得られる重合体が挙げられる。
【0066】
ポリアミド系重合体としては、例えば、ε-カプロラクタムの開環重合で得られるナイロン6、ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の縮重合で得られるナイロン6・6、ヘキサメチレンジアミンとセバシン酸との縮重合で得られるナイロン6・10、ε-アミノウンデカン酸の縮重合で得られるナイロン11、ε-アミノラウロラクタムの開環重合で得られるナイロン12、および前記のナイロンのうち2成分以上の成分を有する共重合ナイロン等が挙げられる。
【0067】
ポリカーボネート系重合体としては、例えば、ビスフェノールAと塩化カルボニルより縮重合して製造される重合体等が挙げられる。
【0068】
ウレタン結合および/またはウレア結合を有する重合体(ウレタンプレポリマー)としては、例えば、ポリオールと過剰量のポリイソシアネート化合物とを反応させて得られる分子末端にイソシアネート基を有する液状高分子化合物等が挙げられる。
【0069】
基材樹脂(A)の主鎖骨格を構成する重合体の中で、ポリイソブチレン、水添ポリイソプレン、および水添ポリブタジエン等の飽和炭化水素系重合体、ポリオキシアルキレン系重合体、は、比較的ガラス転移温度が低く、得られる硬化物が耐寒性に優れることから好ましい。
【0070】
基材樹脂(A)の主鎖への反応性ケイ素基の導入は公知の方法で行えばよい。例えば以下の方法があげられる。
【0071】
方法I:ヒドロキシ基等の官能基を有する有機重合体に、この官能基に対して反応性を示す活性基および不飽和基を有する化合物を反応させ、不飽和基を有する有機重合体を得る。次いで、得られた不飽和基を有する有機重合体に、ヒドロシリル化によって、反応性ケイ素基を有するヒドロシラン化合物を反応させる。
【0072】
方法Iにおいて使用し得る反応性を示す活性基および不飽和基を有する化合物としては、例えば、アリルグリシジルエーテル等の不飽和基含有エポキシ化合物、塩化アリル、塩化メタリル、臭化ビニル、臭化アリル、臭化メタリル、ヨウ化ビニル、ヨウ化アリル、およびヨウ化メタリル等の炭素-炭素二重結合を有する化合物が挙げられる。
【0073】
また、炭素-炭素三重結合を有する化合物としては、塩化プロパルギル、1-クロロ-2-ブチン、4-クロロ-1-ブチン、1-クロロ-2-オクチン、1-クロロ-2-ペンチン、1,4-ジクロロ-2-ブチン、5-クロロ-1-ペンチン、6-クロロ-1-ヘキシン、臭化プロパルギル、1-ブロモ-2-ブチン、4-ブロモ-1-ブチン、1-ブロモ-2-オクチン、1-ブロモ-2-ペンチン、1,4-ジブロモ-2-ブチン、5-ブロモ-1-ペンチン、6-ブロモ-1-ヘキシン、ヨウ化プロパルギル、1-ヨード-2-ブチン、4-ヨード-1-ブチン、1-ヨード-2-オクチン、1-ヨード-2-
ペンチン、1,4-ジヨード-2-ブチン、5-ヨード-1-ペンチン、および6-ヨード-1-ヘキシン等の炭素-炭素三重結合を有するハロゲン化炭化水素化合物が挙げられる。これらの中では、塩化プロパルギル、臭化プロパルギル、およびヨウ化プロパルギルがより好ましい。
【0074】
炭素-炭素三重結合を有するハロゲン化炭化水素化合物と同時に、塩化ビニル、塩化アリル、塩化メタリル、臭化ビニル、臭化アリル、臭化メタリル、ヨウ化ビニル、ヨウ化アリル、およびヨウ化メタリル等の炭素-炭素三重結合を有するハロゲン化炭化水素以外の不飽和結合を有する炭化水素化合物を使用してもよい。
【0075】
方法Iにおいて使用し得るヒドロシラン化合物としては、例えば、ハロゲン化シラン類、アルコキシシラン類、アシロキシシラン類、およびケトキシメートシラン類等が挙げられる。ヒドロシラン化合物は、これらに限定されない。
【0076】
ハロゲン化シラン類としては、例えば、トリクロロシラン、メチルジクロロシラン、ジメチルクロロシラン、およびフェニルジクロロシラン等が挙げられる。
【0077】
アルコキシシラン類としては、例えば、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、トリイソプロポキシシラン、ジメトキシメチルシラン、ジエトキシメチルシラン、ジイソプロポキシメチルシラン、(メトキシメチル)ジメトキシシラン、フェニルジメトキシシラン、および1-[2-(トリメトキシシリル)エチル]-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン等が挙げられる。
【0078】
アシロキシシラン類としては、例えば、メチルジアセトキシシラン、およびフェニルジアセトキシシラン等が挙げられる。
【0079】
ケトキシメートシラン類としては、例えば、ビス(ジメチルケトキシメート)メチルシラン、およびビス(シクロヘキシルケトキシメート)メチルシラン等が挙げられる。
【0080】
これらの中では、ハロゲン化シラン類、およびアルコキシシラン類が特に好ましい。アルコキシシラン類は、加水分解性が穏やかで取り扱いやすいために最も好ましい。
【0081】
アルコキシシラン類の中では、入手しやすい点、硬化性、および貯蔵安定性に優れる発泡体用樹脂組成物を得やすい点、発泡体用樹脂組成物を用いて引張強度に優れる発泡体を製造しやすい点等からジメトキシメチルシランが好ましい。また、硬化性に優れる発泡体用樹脂組成物を得やすい点から、トリメトキシシラン、およびトリエトキシシランも好ましい。
【0082】
方法II:メルカプト基および反応性ケイ素基を有する化合物を、ラジカル開始剤および/またはラジカル発生源存在下でのラジカル付加反応によって、方法Iと同様にして得られた不飽和基を有する有機重合体の不飽和基部位に導入する方法。
【0083】
方法IIにおいて使用し得るメルカプト基および反応性ケイ素基を有する化合物としては、例えば、3-メルカプト-n-プロピルトリメトキシシラン、3-メルカプト-n-プロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプト-n-プロピルトリエトキシシラン、3-メルカプト-n-プロピルメチルジエトキシシラン、メルカプトメチルトリメトキシシラン、およびメルカプトメチルトリエトキシシラン等が挙げられる。メルカプト基および反応性ケイ素基を有する化合物は、これらに限定されない。
【0084】
方法III:分子中にヒドロキシ基、エポキシ基、およびイソシアネート基等の官能基
を有する有機重合体に、これらの官能基に対して反応性を示す官能基および反応性ケイ素基を有する化合物を反応させる方法。
【0085】
方法IIIにおいて採用し得る、ヒドロキシ基を有する有機重合体と、イソシアネート基および反応性ケイ素基を有する化合物とを反応させる方法としては、特に限定されないが、例えば、特開平3-47825号公報に示される方法等が挙げられる。
【0086】
方法IIIにおいて使用し得る、イソシアネート基および反応性ケイ素基を有する化合物としては、例えば、3-イソシアナト-n-プロピルトリメトキシシラン、3-イソシアナト-n-プロピルメチルジメトキシシラン、3-イソシアナト-n-プロピルトリエトキシシラン、3-イソシアナト-n-プロピルメチルジエトキシシラン、イソシアネトメチルトリメトキシシラン、イソシアナトメチルトリエトキシシラン、イソシアナトメチルジメトキシメチルシラン、およびイソシアナトメチルジエトキシメチルシラン等があげられる。イソシアネート基および反応性ケイ素基を有する化合物はこれらに限定されない。
【0087】
トリメトキシシラン等の1つのケイ素原子に3個の加水分解性基が結合しているシラン化合物は不均化反応が進行する場合がある。不均化反応が進むと、ジメトキシシランのような不安定な化合物が生じ、取り扱いが困難となることがある。しかし、3-メルカプト-n-プロピルトリメトキシシラン、3-イソシアナト-n-プロピルトリメトキシシランでは、このような不均化反応は進行しない。このため、ケイ素含有基としてトリメトキシシリル基等の3個の加水分解性基が1つのケイ素原子に結合している基を用いる場合には、方法IIまたは方法IIIの方法を用いることが好ましい。
【0088】
一方、下記式(2a)で表されるシラン化合物は不均化反応が進まない。
【0089】
H-(SiR2a
2O)mSiR2a
2-R3a-SiX3・・・(2a)
ここで、式(2a)において、Xは式(1a)と同じである。2m+2個のR2aはそれぞれ独立に式(1a)のR1aと同じである。R3aは、炭素原子数1以上20以下の置換または非置換の2価の炭化水素基を示す。mは0以上19以下の整数を示す。
【0090】
このため、方法Iで、3個の加水分解性基が1つのケイ素原子に結合している基を導入する場合には、式(2a)で表されるシラン化合物を用いることが好ましい。入手性およびコストの点から、2m+2個のR2aとしては、それぞれ独立に、炭素原子数1以上20以下の炭化水素基が好ましく、炭素原子数1以上8以下の炭化水素基がより好ましく、炭素原子数1以上4以下の炭化水素基がさらに好ましい。R3aとしては、炭素原子数1以上12以下の2価の炭化水素基が好ましく、炭素原子数2以上8以下の2価の炭化水素基がより好ましく、炭素原子数2の2価の炭化水素基がさらに好ましい。mは1が最も好ましい。
【0091】
式(2a)で示されるシラン化合物としては、例えば、1-[2-(トリメトキシシリル)エチル]-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、1-[2-(トリメトキシシリル)プロピル]-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、および1-[2-(トリメトキシシリル)ヘキシル]-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン等が挙げられる。
【0092】
前記の方法Iまたは方法IIIにおいて、末端にヒドロキシ基を有する有機重合体と、イソシアネート基および反応性ケイ素基を有する化合物とを反応させる方法は、比較的短い反応時間で高い転化率が得られるために好ましい。さらに、方法Iで得られた反応性ケイ素基を有する有機重合体は、方法IIIで得られる反応性ケイ素基を有する有機重合体
よりも低粘度であり、作業性のよい発泡体用樹脂組成物が得られること、また、方法IIで得られる反応性ケイ素基を有する有機重合体は、メルカプトシランに基づく臭気が強いことから、方法Iが特に好ましい。
【0093】
(ポリオキシアルキレン系重合体)
これらの中でも、基材樹脂(A)はポリオキシアルキレン系重合体を含むことが好ましい。
【0094】
ポリオキシアルキレン系重合体の主鎖構造は下記式(3a)で示される繰り返し単位からなるのが好ましい。
【0095】
-R4a-O-・・・(3a)
ここで、式(3a)において、R4aは炭素原子数1以上14以下の直鎖状または分岐状アルキレン基を示し、炭素原子数2以上4以下がより好ましい。
【0096】
式(3a)で示される繰り返し単位としては、例えば、-CH2O-、-CH2CH2O-、-CH2CH(CH3)O-、-CH2CH(C2H5)O-、-CH2C(CH3)2O-、および-CH2CH2CH2CH2O-等が挙げられる。
【0097】
ポリオキシアルキレン系重合体の主鎖は、1種類だけの繰り返し単位からなっていてもよく、2種類以上の繰り返し単位からなっていてもよい。ポリオキシアルキレン系重合体は、非晶質且つ比較的低粘度であるポリオキシプロピレン系重合体であることが好ましい。
【0098】
ポリオキシアルキレン系重合体(A1)の合成法としては、例えば、KOH等のアルカリ触媒による重合法;特開昭61-215623号に示される有機アルミニウム化合物とポルフィリンとを反応させて得られる錯体等の遷移金属化合物-ポルフィリン錯体触媒による重合法;特公昭46-27250号公報、特公昭59-15336号公報、米国特許第3278457号、米国特許3278458号、米国特許3278459号、米国特許3427256号、米国特許3427334号、および米国特許3427335号等に示される複合金属シアン化物錯体触媒(例えば、亜鉛ヘキサシアノコバルテートグライム錯体(触媒))による重合法;特開平10-273512号公報に示されるポリホスファゼン塩からなる触媒を用いる重合法;特開平11-060722号公報に示されるホスファゼン化合物からなる触媒を用いる重合法等が挙げられる。ポリオキシアルキレン系重合体(A1)の合成方法は、これらに限定されない。
【0099】
これらの合成法の中では、複合金属シアン化物錯体触媒の存在下、開始剤にアルキレンオキシドを反応させる重合法が分子量分布の狭い重合体を得られることから好ましい。
【0100】
複合金属シアン化物錯体触媒としては、Zn3[Co(CN)6]2(亜鉛ヘキサシアノコバルテート錯体)、等が挙げられる。また、これらにアルコールおよび/またはエーテルが有機配位子として配位した触媒も使用できる。
【0101】
開始剤としては、少なくとも2個の活性水素基を有する化合物が好ましい。活性水素含有化合物は、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリオキシプロピレントリオールおよびグリセリン等の多価アルコール、数平均分子量500以上20,000以下の直鎖状または分岐鎖状のポリエーテル化合物等が挙げられる。
【0102】
アルキレンオキシドとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、およびイソブチレンオキシド等が挙げられる。
【0103】
反応性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体としては、例えば、特公昭45-36319号公報、特公昭46-12154号公報、特開昭50-156599号公報、特開昭54-6096号公報、特開昭55-13767号公報、特開昭55-13468号公報、特開昭57-164123号公報、特公平3-2450号公報、米国特許3632557号、米国特許4345053号、米国特許4366307号、米国特許4960844号等の各公報に提案されている重合体が挙げられる。また、特開昭61-197631号公報、特開昭61-215622号公報、特開昭61-215623号公報、特開昭61-218632号公報、特開平3-72527号公報、特開平3-47825号公報、特開平8-231707号公報の各公報に提案されている数平均分子量6,000以上、分子量分布(Mw/Mn)が1.6以下、または1.3以下の高分子量で分子量分布が狭い反応性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体等も好ましい。このような反応性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体は単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0104】
ポリオキシアルキレン系重合体としては、市販品を用いることもできる。市販品の例としては、カネカMSポリマー(登録商標)S810、S257、S327、S203H、S303H(いずれも株式会社カネカ製);サイリル(登録商標)SAX220、SAT350、SAT400、SAX510,SAX520、SAX580、SAX590、SAX750(いずれも株式会社カネカ製);エクセスター(登録商標)ES-S2410、ES-S2420、ES-S3630(いずれもAGC株式会社製);GENIOSIL(登録商標)STP-E10、STP-E15、STP-E-30、STP-E-35(いずれもWacker製)が挙げられる。
【0105】
<非加熱型発泡剤(B)>
本発泡体用樹脂組成物は、非加熱型発泡剤を含む。発泡剤が非加熱型であることにより、本発泡体用樹脂組成物を常温下にて発泡させることができる。
【0106】
非加熱型発泡剤(B)としては、上述した基材樹脂(A)を常温下にて良好に硬化させつつ発泡させることができれば特に限定されず、周知の非加熱型発泡剤の中から基材樹脂(A)の硬化速度と発泡速度のバランスを考慮して適宜選択することができる。
【0107】
前記非加熱型発泡剤は、二炭酸ジエステルを含むことが好ましい。二炭酸ジエステルは常温下にて、基材樹脂(A)の硬化反応の速度に応じた好ましい速度で分解して、短時間で本発泡体用樹脂組成物を発泡させることができる。
【0108】
二炭酸ジエステルは、下記式(B1)で表される。
【0109】
Rb-O-CO-O-CO-O-Rb・・・(B1)
式(B1)中、Rbは有機基である。Rbとしての有機基は、炭化水素基であるのが好ましい。2つのRbは、同一であっても異なっていてもよく、同一であるのが好ましい。
【0110】
Rbとしての、炭化水素基の炭素原子数は、1以上16以下が好ましく、1以上12以下がより好ましく、1以上8以下がさらに好ましく、1以上6以下が特に好ましい。
【0111】
Rbとしての炭化水素基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基等の脂環式基、アラルキル基、およびアリール基が挙げられる。アルキル基について、直鎖状でも分岐鎖状でもよく、直鎖状が好ましい。
【0112】
アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基
、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、およびn-ドデシル基等が挙げられる。
【0113】
シクロアルキル基の具体例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロへプチル基、およびシクロオクチル基等が挙げられる。
【0114】
アラルキル基の具体例としては、ベンジル基、フェネチル基、ナフタレン-1-イルメチル基、およびナフタレン-2-イルメチル基等が挙げられる。
【0115】
アリール基の具体例としては、フェニル、ナフタレン-1-イル基、ナフタレン-2-イル基、4-フェニルフェニル基、3-フェニルフェニル基、および2-フェニルフェニル基等が挙げられる。
【0116】
式(B1)で表される二炭酸ジエステルとしては、二炭酸ジメチル、二炭酸ジエチル、二炭酸ジ-n-プロピル、二炭酸ジイソプロピル、二炭酸ジ-n-ブチル、二炭酸ジイソブチル、二炭酸ジ-sec-ブチル、二炭酸ジ-tert-ブチル、二炭酸ジ-n-ペンチル、および二炭酸ジ-n-ヘキシルが好ましい。入手が容易であること、分子量が小さく単位重量当たりの発泡量が多いことから、二炭酸ジエステルとしては、二炭酸ジメチル、二炭酸ジエチル、二炭酸ジ-n-プロピル、および二炭酸ジイソプロピルが好ましく、二炭酸ジメチル、および二炭酸ジエチルがより好ましい。さらに加水分解物の揮発性および毒性の観点により二炭酸ジエチルが好ましい。
【0117】
その他の非加熱型発泡剤(B)は、さらに炭酸塩または重炭酸塩が挙げられる。なお、発泡体用樹脂組成物が、非加熱型発泡剤(B)として炭酸塩または重炭酸塩を含む場合、通常、発泡体用樹脂組成物は、非加熱型発泡剤とともに水を含む。炭酸塩または重炭酸塩は、水と反応することにより良好に発泡する。
【0118】
炭酸塩または重炭酸塩の好ましい例としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、および炭酸水素アンモニウム等の水に対して易溶な炭酸塩または重炭酸塩が挙げられる。これらの水に易溶な炭酸塩または重炭酸塩は、速やかに発泡し、安価である点で有用である。
【0119】
また、発泡体が急速に発泡するのを抑制する観点から、水に対して難溶である炭酸塩または重炭酸塩も、好ましく使用できる。ここで、水に対して難溶であるとは、20℃における水に対する溶解度が2g/100g以下であることを意味する。
【0120】
炭酸塩または重炭酸塩としては、2種以上を組み合わせて用いることができる。また、水に対して易溶である炭酸塩または重炭酸塩と、水に対して難溶である炭酸塩または重炭酸塩とを組み合わせて用いることもできる。
【0121】
以下、上述した20℃における水に対して所定の範囲内の溶解度を示す炭酸塩および重炭酸塩を、総称として「難溶性炭酸塩」とも称する。難溶性炭酸塩の20℃における水に対する溶解度は、1.5g/100g以下が好ましく、1.0g/100g以下がより好ましく、0.5g/100gがさらに好ましく、0.2g/100g以下が特に好ましい。
【0122】
難溶性炭酸塩の20℃における水に対する溶解度は、例えば、0.0001g/100g以上が好ましく、0.0005g/100g以上がより好ましく、0.001g/10
0g以上がさらに好ましく、0.002g/100g以上が特に好ましい。
【0123】
発泡体用樹脂組成物が上述した難溶性炭酸塩を含む場合、発泡体用樹脂組成物は、通常、非加熱型発泡剤(B)とともに、水を含む。発泡体用樹脂組成物において、上述した難溶性炭酸塩と、水とが反応することにより、炭酸ガスの発生による発泡が生じる。
【0124】
発泡体用樹脂組成物が、前記の難溶性炭酸塩を非加熱型発泡剤(B)として含有する場合、難溶性炭酸塩が水に対して溶解しにくいことによって炭酸ガスの発生が徐々に進行するため、発泡体用樹脂組成物の急速な発泡を抑制しやすい。
【0125】
このため、非加熱型発泡剤(B)として難溶性炭酸塩を含む発泡体用樹脂組成物を用いる場合、発泡体用樹脂組成物の形状が所定の形状になり、且つ均一な発泡セルを形成できるまでの十分な時間を確保でき、発泡体の安定した連続製造が容易である。
【0126】
難溶性炭酸塩としては、前記の範囲内の水に対する溶解度を有する炭酸塩または重炭酸塩であれば特に限定されない。難溶性炭酸塩について、炭酸イオンまたは重炭酸イオンに対するカウンターイオンは、有機カチオンであっても無機カチオンであってもよい。入手が容易で安価である点からは、難溶性炭酸塩が、炭酸イオンまたは重炭酸イオンと無機カチオンとからなる塩であるのが好ましい。水への溶解度の低さの点から、難溶性炭酸塩としては、炭酸イオンと無機カチオンとからなる塩、つまり、無機炭酸塩が好ましい。
【0127】
無機カチオンとしては、金属カチオンであっても、非金属カチオンであってもよい。難溶性炭酸塩の入手が容易であること、および難溶性炭酸塩の水に対する溶解度が低い傾向があることから、無機カチオンとしては金属カチオンが好ましい。
【0128】
以上より、難溶性炭酸塩としては、炭酸金属塩または重炭酸金属塩が好ましい。
【0129】
難溶性炭酸塩が炭酸金属塩または重炭酸金属塩である場合、炭酸金属塩または重炭酸金属塩に含まれる好ましい金属元素としては、Li、Be、Na、Mg、Ca、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Sr、Y、Cd、Ba、およびPb等が挙げられる。これらの中では、炭酸金属塩または重炭酸金属塩の取り扱いが容易である点から、Mg、Ca、Fe、Zn、Rb、Sr、およびYが好ましい。
【0130】
炭酸金属塩が前記の好ましい金属元素を含む場合、炭酸金属塩の20℃での水への溶解度は以下の通りである。
炭酸リチウム:1.3g/100g
炭酸マグネシウム:1.0g/100g
炭酸べリリウム、および炭酸カルシウム:0.2g/100g
炭酸マンガン(II)、炭酸鉄(II)、炭酸コバルト(II)、炭酸ニッケル(II)、炭酸銅(II)、炭酸亜鉛、炭酸ストロンチウム、炭酸イットリウム(III)、炭酸カドミウム、炭酸バリウム、および炭酸鉛(II):0.1g/100g未満
また、発泡反応後に発泡体中に残存する、炭酸金属塩または重炭酸金属塩に由来する成分が、発泡体から溶出しにくい点から、炭酸金属塩または重炭酸金属塩に含まれる金属元素の標準酸化還元電位が、-2.90V以上0.80V以下であるのが好ましい。
【0131】
例えば、上述した炭酸金属塩に含まれる好ましい金属元素であるLi、Ba、Sr、Ca、Na、Mg、Y、Be、Mn、Zn、Fe、Cd、Co、Ni、Pb、およびCuについて標準酸化還元電位は、例えば、特開2019-210424号公報に記載される通りである。
【0132】
以上説明した難溶性炭酸塩としては、入手が容易である点、取り扱いが容易である点、発泡反応後に発泡体中に残存する、難溶性炭酸塩に由来する成分が発泡体から溶出しにくい点等から、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸亜鉛、炭酸イットリウム、および炭酸ビスマスからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。発泡反応後に残存する、難溶性炭酸塩に由来する成分としては、カルボン酸金属等がある。
【0133】
非加熱型発泡剤(B)が炭酸塩または重炭酸塩を含む場合、非加熱型発泡剤(B)が、炭酸塩または重炭酸塩とともに酸性化合物を含んでもよい。特に、非加熱型発泡剤(B)が、酸解離定数pKaが3.0以下の酸性化合物を含んでもよい。なお、ブレンステッドの定義による酸性を示す化合物を、「酸性化合物」として定義する。
【0134】
ここで、酸性化合物が複数のpKaを示す化合物である場合、当該複数のpKaの値のうち、炭酸のpKa1(=6.35)以下の範囲の1つ以上のpKaの値が、全て3.0以下である化合物を、「酸解離定数pKaが3.0以下の酸性化合物」として定義する。
【0135】
具体的には、例えば、サリチル酸は、2.97のpKa1と、13超のpKa2とを示す。従って、サリチル酸では、炭酸のpKa1(=6.35)以下の範囲のpKaの値は、2.97のみである。2.97は、3.0以下の値であるため、サリチル酸は、「酸解離定数pKaが3.0以下の酸性化合物」に該当する。また、pKaは、水中での値である。
【0136】
酸解離定数pKaが3.0以下の酸性化合物としては、有機酸が好ましい。有機酸としては、カルボン酸あるいはスルホン酸が好ましく、例えば、サリチル酸、塩素化酢酸、フッ素化酢酸、p-トルエンスルホン酸等が挙げられる。これらの中でもサリチル酸が特に好ましい。pKaが3.0以下の酸性化合物を選定することにより配合中のpHが低くなり、硬化反応(シラノール縮合反応)の進行と、適度な速度での炭酸ガス発生反応の進行とを両立させやすい。これらのうち、基材樹脂(A)の硬化反応(シラノール縮合反応)が適切に進行するpH領域で炭酸ガスが発生することが好ましいことから、非加熱型発泡剤(B)としては、二炭酸ジエステルと、炭酸塩または重炭酸塩と、上述した有機酸との混合物が好ましく、二炭酸ジエステルと、炭酸塩または重炭酸塩と、酸性化合物との混合物がより好ましく、二炭酸ジエステルと、難溶性炭酸塩と、サリチル酸との混合物が特に好ましい。
【0137】
非加熱型発泡剤(B)の使用量は、発泡体の発泡倍率を勘案して適宜選択され得る。非加熱型発泡剤(B)の含有量は、基材樹脂(A)100重量部に対して2重量部以上200重量部以下が好ましく、5重量部以上170重量部以下がより好ましく、5重量部以上130重量部以下がさらに好ましく、5重量部以上100重量部以下が特に好ましい。
【0138】
非加熱型発泡剤(B)としての二炭酸ジエステルの含有量は、基材樹脂(A)100重量部に対して1重量部以上30重量部以下が好ましく、2重量部以上20重量部以下がより好ましく、3重量部以上12重量部以下が特に好ましい。
【0139】
非加熱型発泡剤(B)が、二炭酸ジエステルとともに、炭酸塩または重炭酸塩と、酸性化合物とを組み合わせて含む場合、それぞれの好ましい含有量は以下の通りである。
【0140】
非加熱型発泡剤(B)としての炭酸塩または重炭酸塩の含有量は、基材樹脂(A)100重量部に対して、1重量部以上100重量部以下が好ましく、1重量部以上80重量部以下がより好ましく、2重量部以上70重量部以下が特に好ましい。
【0141】
非加熱型発泡剤(B)としての酸性化合物(特に酸性化合物)の含有量は、基材樹脂(A)100重量部に対して、1重量部以上100重量部以下が好ましく、1重量部以上90重量部以下がより好ましく、3重量部以上80重量部以下が特に好ましい。
【0142】
炭酸塩または重炭酸塩と酸性化合物との当量比は、炭酸塩または重炭酸塩/酸性化合物として1/1以上3/1以下であることが好ましく、1/1以上2/1以下であることがより好ましい。炭酸塩または重炭酸塩の官能基数が酸性化合物の官能基数より少ないと、酸性化合物が残存して湿気による錆発生の原因となる場合がある。
【0143】
なお、酸性化合物の1分子中の官能基数は、炭酸のpKa1(=6.35)以下のpKaを示す官能基の数である。つまり、酸性化合物の1分子中の官能基数とは、炭酸塩または重炭酸塩と反応して炭酸ガスを発生させ得る官能基の数である。
【0144】
以上非加熱型発泡剤(B)について説明したが、非加熱型発泡剤による発泡に加え、発泡体用樹脂組成物に物理発泡剤を加えて発泡を補助してもよい。物理発泡剤の沸点は、発泡性、作業性、および安全性の点から、100℃以下が好ましく、50℃以下がより好ましい。物理発泡剤の具体例としては、炭化水素(例えば、LPG(プロパン)、ブタン等)、ハロゲン化炭化水素(例えばクロロフルオロカーボン(CFC)、ハイドロフルオロカーボン(HFC)、ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)、フルオロオレフィン(FO)、クロロフルオロオレフィン(CFO)、ハイドロフルオロオレフィン(HFO)、ハイドロクロロフルオロフルオロオレフィン(HCFO))、エーテル(例えば、ジエチルエーテル)、二酸化炭素、窒素、および空気等が挙げられる。これらの物理発泡剤の中では、環境適合性の観点から、炭化水素、エーテル、二酸化炭素、窒素、および空気が好ましい。
【0145】
本発泡体用樹脂組成物は、発泡および硬化させて発泡体とする場合、シラノール縮合触媒および/または発泡触媒と混合してもよい。
【0146】
以下、シラノール縮合触媒および発泡触媒について詳述する。
【0147】
<シラノール縮合触媒>
シラノール縮合触媒としては、縮合触媒として使用し得るものである限り、特に制限はなく、任意のものを使用し得る。非加熱型発泡剤(B)として二炭酸ジエステルを用いる場合、二炭酸ジエステルの発泡反応により発生する炭酸の影響による触媒活性の低下が生じにくい点から、中性あるいは弱酸性のシラノール縮合触媒が好ましい。なお、炭酸は二酸化炭素が水に溶解することで発生する。
【0148】
シラノール縮合触媒の例としては、4価の錫化合物類、2価の錫化合物物類、上述した2価の錫化合物類と後述のラウリルアミン等のアミン系化合物との反応物および混合物、モノアルキル錫類、チタン酸エステル類、有機アルミニウム化合物、カルボン酸金属塩、カルボン酸金属塩と後述のラウリルアミン等のアミン系化合物との反応物および混合物、キレート化合物、飽和脂肪族第一級アミン類、飽和脂肪族第二級アミン類、飽和脂肪族第三級アミン類、脂肪族不飽和アミン類、芳香族アミン類、これらのアミン類以外のその他のアミン類、これらのアミン類とカルボン酸等との塩、アミン系化合物と有機錫化合物との反応物および混合物、過剰のポリアミンと多塩基酸とから得られる低分子量ポリミド樹脂、過剰のポリアミンとエポキシ化合物との反応生成物、アミノ基を有するシランカップリング剤、アミノ基を有するシランカップリング剤を変性した誘導体等が挙げられる。
【0149】
シラノール縮合触媒の具体例としては、例えば、特開2022-54103号公報に記載のものが使用できる。
【0150】
シラノール縮合触媒の含有量は、基材樹脂(A)100重量部に対して90重量部以下が好ましく、0.05重量部以上80重量部以下がさらに好ましく、0.05重量部以上20重量部以下がより好ましく、1重量部以上15重量部以下がさらにより好ましい。シラノール縮合触媒の含有量が80重量部よりも多いと、得られた発泡体の圧縮により底付きする場合がある。シラノール縮合触媒の量を調整することにより、発泡体用樹脂組成物の硬化性を調整することができる。
【0151】
<発泡触媒>
本発泡体用樹脂組成物は、発泡触媒、および/または発泡触媒として作用するシラノール縮合触媒を含んでいてもよい。
【0152】
発泡触媒は、非加熱型発泡剤の分解による発泡を促進させる成分である。発泡触媒は、基材樹脂(A)、および非加熱型発泡剤(B)を含む発泡体用樹脂組成物に添加された場合に、当該発泡体用樹脂組成物の発泡を促進する化合物であれば特に限定されない。
【0153】
典型的には、発泡触媒としては、有機または無機の塩基性化合物が好ましく挙げられる。このため、シラノール縮合触媒として上述した塩基性の触媒は、発泡触媒としての作用を奏する場合がある。
【0154】
例えば、発泡体用樹脂組成物が、シラノール縮合触媒として前記塩基性のシラノール縮合触媒のような発泡触媒としての作用を奏する成分を含有する場合、便宜上、発泡体用樹脂組成物が、シラノール縮合触媒と発泡触媒との双方を含んでいるとしてもよい。
【0155】
発泡触媒として作用し得るシラノール縮合触媒の好適な例としては、ビス(N,N-ジメチルアミノ-2-エチル)エーテル、トリエチレンジアミンおよびN,N,N’,N’-テトラメチルヘキサメチレンジアミン、N-エチルモルホリン、テトラメチルエチレンジアミン、ジアミノビシクロオクタン、1,2-ジメチルイミダゾール、1-メチルイミダゾールおよび1,8-ジアザビシクロ-[5.4.0]-7-ウンデセン(DBU)、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)等の活性水素を含有しない第三級アミン類、ジメチルエタノールアミンジエチルエタノールアミン、ジメチルヘキサノールアミン等の、水酸基、チオール基、カルボキシ基等の活性水素含有基を有する活性水素を含有する第三級アミンが挙げられる。
【0156】
シラノール縮合触媒に該当しない発泡触媒としては、例えば、3-(ジメチルアミノ)プロピルウレア、1,3-ビス(ジメチノアミノ)プロピルウレア、2-[[2-(ジメチルアミノ)エチル]メチルアミノ]エタノール等が挙げられる。
【0157】
シラノール縮合触媒に該当しない発泡触媒の含有量は、基材樹脂(A)100重量部に対して0.05重量部以上20重量部以下が好ましく、0.1重量部以上10重量部以下がより好ましく、0.5重量部以上5重量部以下がさらに好ましい。
【0158】
発泡触媒として作用するシラノール縮合触媒の含有量は、上述したシラノール縮合触媒の含有量と同様である。
【0159】
<水>
本発泡体用樹脂組成物は、発泡および硬化させて発泡体とする場合、上述したシラノール縮合触媒および発泡触媒に加えて、さらに水を混合してもよい。水は、非加熱型発泡剤(B)の発泡反応および基材樹脂(A)の硬化反応を促進させる働きがある。ただし、本発泡体用樹脂組成物が水を含まない場合でも、硬化および発泡は進行し得る。
【0160】
発泡体用樹脂組成物が水を含む場合、水の含有量は、基材樹脂(A)100重量部に対して1重量部以上70重量部以下が好ましく、2重量部以上60重量部以下がより好ましく、2重量部以上50重量部以下がさらに好ましい。水の含有量が上述した範囲内であると、十分に発泡させつつ良好に硬化を進行させやすく、微細且つ緻密な発泡セルを有し、柔軟性に優れる発泡体を得やすい。
【0161】
水の含有量は、非加熱型発泡剤1重量部に対して、0.05重量部以上が好ましく、0.1重量部以上であるのがより好ましい。水の含有量が上述した範囲であれば、非加熱型発泡剤を良好に水と反応させ、特に良好な発泡を生じさせることができるとともに、基材樹脂(A)が有する反応性ケイ素基間の加水分解縮合反応が良好に進行する。
【0162】
特に、発泡体用樹脂組成物が非加熱型発泡剤(B)として二炭酸ジエステルのみを含む場合、発泡体用樹脂組成物中の水の含有量は、二炭酸ジエステル1重量部に対して0.05重量部以上0.5重量部以下であることが好ましく、0.05重量部以上0.3重量部以下であることがより好ましい。
【0163】
この場合、特に良好な発泡を生じさせながらも、発泡体作成後の発泡体中の水の含有量を少なくでき、発泡体製造時の水等の揮発性成分を除去するための乾燥工程を省略することができる。
【0164】
発泡体中の水の含有量の低減する観点からは、発泡体用樹脂組成物中の水の含有量は、二炭酸ジエステル1重量部に対して、0重量部以上0.05重量部以下であってもよいし、0重量部以上0.03重量部以下であってもよいし、0重量部、つまり水を含まなくてもよい。
【0165】
なお、二炭酸ジエステル1モルは、水1モルと反応し、炭酸ガス(二酸化炭素)2モルを発生させる。このため、二炭酸ジエステルを、発泡体用樹脂組成物中の水によって効率よく発泡させる観点からは、二炭酸ジエステルと、水とのモル比が、二炭酸ジエステル:水として0.8:1~1:0.8であるのが好ましく、0.9:1~1:0.9であるのがより好ましく、0.95:1~1:0.95であるのがさらに好ましい。
【0166】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0167】
<その他添加剤>
本発泡体用樹脂組成物には、発泡体の柔軟性および成形加工性を調整する目的で可塑剤、反応性調整剤、染料等の添加材を添加することができる。また、本発泡体用樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない限り、耐光性安定剤、紫外線吸収剤、貯蔵安定剤、気泡調整剤、潤滑剤、難燃剤等を必要に応じて添加してもよい。前記その他の添加剤の具体例としては、例えば、特開2022-54103号公報に記載のものが使用できる。
【0168】
〔3.発泡体〕
本発明の一実施形態に係る発泡体(以下、本発泡体とも称する。)は、本発泡体用樹脂組成物を、公知の方法に従って発泡および硬化させてなる。本発泡体用樹脂組成物を発泡および硬化させる場合、上述した通りシラノール縮合触媒および/または発泡触媒を用いてもよい。
【0169】
本発泡体の発泡倍率は10倍以上が好ましく、10倍以上30倍以下がより好ましく、
10倍以上25倍以下がさらに好ましい。発泡倍率が10倍以上であると、発泡体が十分に軽くなる。また、発泡倍率が30倍以下であれば、生地への染み込みおよび/または生地からの染み出しが発生しにくい。発泡倍率は、基材樹脂(A)、および/または非加熱型発泡剤(B)の含有量を変化させることにより調整できる。
【0170】
発泡体の形状は特に限定されない。発泡体の形状としては、シート状、棒状、正多面体状(例えば、立方体状、正四面体状、正八面体状等)、円盤状、球状、半球状、不定形状等が挙げられる。
【0171】
発泡体の密度は、特に限定されない。発泡体の密度は、発泡体の用途、および発泡体に要求される性能に応じて適宜決定される。発泡体の密度は、例えば、150kg/m3以下が好ましく、100kg/m3以下がより好ましく、75kg/m3以下がさらに好ましく、50kg/m3以下が特に好ましい。密度が前記範囲であると、軽量であり日常的な持ち運びが容易であって、建築物等への発泡体の施工または、種々の物品に対する発泡体の取り付け等が容易である。発泡体の密度の下限は、特に限定されない。発泡体の密度は、例えば、10kg/m3以上が好ましく、20kg/m3以上がより好ましい。
【0172】
発泡体の硬度は、特に限定されない。発泡体の硬度は、発泡体の用途、および発泡体に要求される性能に応じて適宜決定される。発泡体の硬度は、23℃で測定されたアスカーFP硬度として、50以下が好ましく、15以下がより好ましく、10以下がさらに好ましく、0が特に好ましい。
【0173】
発泡体の引張物性は、特に限定されない。発泡体の引張物性は、発泡体の用途、および発泡体に要求される性能に応じて適宜決定される。発泡体の引張物性のうち、引張強度は10kPa以上が好ましく、20kPa以上がより好ましく、30kPa以上がさらに好ましい。また、引張伸びは、50%以上が好ましく、90%以上がより好ましく、110%以上がさらに好ましい。
【0174】
本発泡体は様々な用途に使用できる。本発泡体は、例えば、防音材、制振材、クッション材等として、輸送機器、寝具・寝装品、家具、各種機器、建材、包装材、医療・介護、洗浄用スポンジ、トイレタリー、履物、化粧用具、雑貨、衣料、スポーツ、玩具・遊具等の用途に好適に利用できる。
【0175】
好ましい用途として、例えば輸送機器用途としては、自動車・建築機械・鉄道車両・船舶・航空機等の座席、チャイルドシート、ヘッドレスト、アームレスト、フットレスト、ヘッドライナー、バイク・自転車等のサドル・ライダークッション、カスタムカー用のベッドマット、キャンピングカー用クッション等のクッション材や表皮材・表皮裏打ち材、天井材、ハンドル、ドアトリム、インストルメントパネル、ダッシュボード、ドアパネル、ピラー、コンソールボックス、クォータートリム、サンバイザー、フレキシブルコンテナー、フロントミラー、ハーネス、ダストカバー等の芯材や表皮材・表皮裏打ち材、フロアクッション等の制振吸音材、ヘルメット内張り、クラッシュパッド、センタピラガーニッシュ等の緩衝材、エネルギー吸収バンパー、ガード防音材、車両ワックス用スポンジ等が挙げられる。
【0176】
寝具・寝装品用途としては、枕、掛け布団、敷布団、ベッド、マットレス、ベッドマット、ベッドパッド、クッション、ベビーベッド、ベビー用首まくら等のクッション材、表皮材・表皮裏打ち材等が挙げられる。
【0177】
家具用途としては、椅子、座イス、座布団、ソファー、ソファークッション・シートクッション等の各種クッション、カーペット・マット類、コタツ敷・掛け布団、便座マット
等のクッション材、表皮材・表皮裏打ち材等が挙げられる。
【0178】
各種機器用途としては、液晶、電子部品等のシール・緩衝材、ロボットの皮膚、導電性クッション材、帯電防止性クッション材、圧力感知材等が挙げられる。
【0179】
建材用途としては、床や屋根等の断熱材、床および壁等の衝撃吸収材等が挙げられる。
【0180】
包装材用途としては、緩衝材、クッション材、衝撃吸収材等の梱包資材が挙げられる。
【0181】
医療・介護用途としては、再生医療用細胞シート、人工皮膚、人工骨、人工軟骨、人工臓器、その他生体適合材料、薬液染み出しパッド、止血パッド、気液分離フィルター(留置針フィルター)、貼布剤、医療用液体吸収用具、マスク、圧迫パッド、手術用ディスポ製品、低周波治療器用電極パッド、床ずれ予防マットレス、体位変換クッション、車椅子用クッション、車椅子の座面、シャワー椅子等の介護用品、入浴介護用枕、拘縮用手のひらプロテクター、テーピング、ギブス用ライナー、義肢・義足用ライナー、入れ歯台、その他、歯科用品、衝撃吸収パッド、ヒッププロテクター、肘・膝用プロテクター、創傷被覆材等が挙げられる。
【0182】
各種洗浄用スポンジ用途としては、清掃用クリーナー、食器洗浄用クリーナー、身体洗浄用クリーナー、靴磨クリーナー、洗車用クリーナー等が挙げられる。
【0183】
トイレタリー用途としては、オムツ、生理用ナプキン等の吸収材、サイドギャザーや各種液体フィルター等が挙げられる。
【0184】
履物用途としては、靴の表皮材、裏打ち、中敷、靴擦れ防止パッド、各種靴パッド、インナブーツ、スリッパ、スリッパ芯、サンダル、サンダル中敷等が挙げられる。
【0185】
化粧用具用途としては、化粧用パフ、アイカラーチップ等が挙げられる。
【0186】
各種雑貨用途としては、バスピロー等の風呂用品、マッサージ用パフ、マウスパッド、キーボード用アームレスト、滑り止めクッション、文具(ペングリップ、浸透印材)、デスク用小まくら、耳栓、綿棒、ホットパック用シート、コールドパック用シート、湿布、めがねパッド、水中眼鏡用パッド、顔面プロテクター、腕時計パッド、ヘッドホーンイヤーパット、イヤホン、氷枕カバー、折りたたみまくら等の芯材、クッション材、表皮材、表皮裏打ち材、両面テープ基材、芳香剤、スタンプ台等の吸着媒体等が挙げられる。
【0187】
衣料用途としては、肩・ブラジャー等のパッド材や、防寒材等のライナーや断熱材等が挙げられる。
【0188】
スポーツ用途としては、スポーツ用プロテクター類、ボルダリング(2~3mの岩を登るクライミング・ミニ岩登り)マット、ビート板、高飛び用のクッション材、体操競技または運動用の着地マット、キッズマット等のクッション材、表皮材・表皮裏打ち材、スキーブーツ、スノーボードブーツ等のライナー等が挙げられる。
【0189】
玩具・遊具用途としては、ハンドエクササイザー、ヒーリンググッズ、キーホルダー、ぬいぐるみ、マネキンボデイー、ボール、マッサージボール等のクッション材、詰め物、表皮材・表皮裏打ち材、装飾品、怪獣等の特殊形状物、各種物品形状の型取りまたはモデル作製用等の注型材料、注型法における物品形状の型取り材料、型からのモデルサンプル作製材料、装飾品作製材料、怪獣の特殊造型・造型物等が挙げられる。
【0190】
本発泡体は生地への染み込み、および/または生地からの染み出しを抑制し得るため、上述した用途の中でも、生地と接触する用途に用いられることが好ましい。そのような用途としては例えば、衣料用途、スポーツ用途、雑貨用途等が挙げられる。これらの中でも特に生地と接触しやすいため、より好ましくは衣料用途であり、さらに好ましくは肩またはブラジャー等のパッド材である。
【0191】
〔4.発泡積層体〕
本発明の一実施形態に係る発泡積層体は、基材、および前記基材の少なくとも一部に積層された本発泡体を含む。本発泡体は、基材の外部に積層されていてもよいし、基材の内部に積層されていてもよい。また、本発泡体は、基材の片面に積層されていてもよいし、基材の両面に積層されていてもよい。なお、前記発泡積層体において、引張物性およびアスカー強度については、上述した〔3.発泡体〕に記載されている事項を適宜援用することができる。
【0192】
基材としては、例えば、生地(例えば、不織布、織布、編み布等の布地)、ガラス、プラスチック、金属等が挙げられるが、これらの中でも生地であることが好ましい。生地の種類は特に限定されず、例えば炭素繊維、無機繊維、金属繊維等の無機繊維、リヨセル等の精製繊維、レーヨン、キュプラ、ポリノジック等の再生繊維、アセテート、トリアセテート、プロミックス等の半合成繊維、アクリル、アクリル系繊維、ビニロン、ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリクラール、アラミド、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリアミド66(PA66)、やウレタン等の合成繊維、コットン、セルロース系繊維、麻(亜麻、苧麻、大麻、黄麻)等の植物繊維やウール、羊毛、獣毛(アンゴラ、カシミア、モヘヤ、アルパカ、キャメルなど)、絹、等の動物繊維である天然繊維、ダウン、フェザーなどの羽毛、などが挙げられる。これらの中でも、前記基材は上述した繊維を含む生地であることがより好ましく、前記基材は繊維から構成された生地であることがさらに好ましい。また、前記基材は、上述した繊維を編んだ編み生地であることがよりさらに好ましく、編み生地の中でも伸縮性のある編み生地が特に好ましい。
【0193】
〔5.発泡体の製造方法〕
本発泡体の製造方法は、本発泡体用樹脂組成物と、シラノール縮合触媒および/または発泡触媒とを混合する工程を含む。好ましくは、本発泡体用樹脂組成物と、シラノール縮合触媒および発泡触媒とが混合される。発泡体用樹脂組成物、シラノール縮合触媒および発泡触媒については上述した通りである。
【0194】
前記シラノール縮合触媒および/または発泡触媒は、本発泡体用樹脂組成物と混合される前に、同一の溶液としてあらかじめ混合されていてもよいし、別々の溶液であってもよい。好ましくは、前記シラノール触媒と発泡触媒は別々の溶液である。
【0195】
本発泡体の製造方法は、例えば、発泡体用樹脂組成物を型枠に充填した後に、型枠内で発泡、および硬化を行うバッチ式であってもよく、連続的に移動する帯状の支持体上で、発泡体用樹脂組成物の発泡および硬化を連続的に行う連続式であってもよい。本発泡体の製造方法は、好ましくはバッチ式である。
【0196】
発泡体用樹脂組成物を硬化および発泡させる温度は特に限定されない。発泡体用樹脂組成物を硬化および発泡させる温度は、例えば、-10℃以上40℃以下が好ましく、0℃以上37℃以下がより好ましい。かかる温度条件であれば、発泡体を使用する現場での、発泡体用樹脂組成物を用いる発泡体の製造が容易である。
【0197】
硬化および発泡が完了する時間に特に制限はない。例えば、12分以下が好ましく、1
0分以下がより好ましい。
【0198】
このようにして製造された発泡体は、好ましくは乾燥された後に発泡体製品として、流通、販売される。
【0199】
乾燥の温度および時間の条件は、発泡体用樹脂組成物に由来するか、硬化反応により副生する水、アルコール等を所望する程度まで低減できればよく、特に制約はない。乾燥条件は、例えば約80℃雰囲気下で約1時間であればよい。また、乾燥の温度および時間の条件は、例えば約60℃雰囲気下で約12時間であってもよい。
【0200】
ただし、上述した通り、化学発泡剤(B)として二炭酸ジエステルのみを用い、水(C)の使用量を低めに設定する場合、乾燥を行うことなく製品とすることが可能である。
【0201】
すなわち、本発明の一態様は、以下を含む。
<1>反応性ケイ素基を有する基材樹脂(A)、および非加熱型発泡剤(B)を含み、かつ、粘度が30Pa・s以上である、発泡体用樹脂組成物。
<2>前記基材樹脂(A)が、アクリル樹脂を含む、<1>に記載の発泡体用樹脂組成物。
<3>前記アクリル樹脂のガラス転移温度が、70℃以上である、<1>または<2>に記載の発泡体用樹脂組成物。
<4>前記基材樹脂(A)が、ポリオキシアルキレン系重合体を含む、<1>~<3>のいずれかに記載の発泡体用樹脂組成物。
<5>前記非加熱型発泡剤(B)が、二炭酸ジエステルを含む、<1>~<4>のいずれかに記載の発泡体用樹脂組成物。
<6><1>~<5>のいずれかに記載の発泡体用樹脂組成物を発泡および硬化させてなる、発泡体。
<7>発泡倍率が、10倍以上である、<6>に記載の発泡体。
<8>基材、および前記基材の少なくとも一部に積層された<6>または<7>に記載の発泡体を含む、発泡積層体。
<9>前記基材が、繊維を含む生地である、<8>に記載の発泡積層体。
<10>前記生地が、編み生地である、<9>に記載の発泡積層体。
<11><1>~<5>のいずれかに記載の発泡体用樹脂組成物と、シラノール縮合触媒および/または発泡触媒とを混合する工程を含む、発泡体の製造方法。
【実施例0202】
以下、本発明を実施例に基づいてより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0203】
〔測定および評価方法〕
実施例および比較例における測定および評価を、以下の方法で行った。
【0204】
(粘度評価)
得られた樹脂組成物の23℃、20rpmにおける粘度をレオメータ(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製)を用いて測定した。測定時、ペルチェプレートギャップは、0.3mmとした。
【0205】
(発泡倍率)
発泡倍率は、発泡剤を配合せず発泡させていない非発泡体の重量と、発泡剤を配合して発泡させた発泡体の重量とを測定し、単位体積当たりの非発泡体重量を発泡体重量で除すことにより算出した。
【0206】
(生地染み込み評価)
段ボール板の上に白生地(双日ファッション株式会社販売 品番:330 品名:40天竺 センターアイランドRUV カラー:オフホワイト)および黒生地(双日ファッション株式会社販売 品番:479 品名:テンセルベア天竺(シルケットバイト) カラー:ブラック)を静置した。各生地の上に発泡倍率の異なる樹脂組成物を置いた。発泡倍率10倍の樹脂組成物は4.3g、発泡倍率20倍の樹脂組成物は2.2g、発泡倍率30倍の樹脂組成物は1.5gを置き、その上に深さが15mmで直径6cmの円筒形のポリプロピレン製カップを設置した。さらにその上から1kgの錘を設置して固定した。室温で24hr放置した後、生地への染み込み/染み出しを下記基準に基づいて評価した。○:樹脂組成物が生地へ染み込まず、段ボールにも付着していない。
△:樹脂組成物が生地へ染み込んだが、段ボールには付着していない。
×:樹脂組成物が生地から染み出し、段ボールに付着している。
【0207】
(引張物性)
発泡体(厚さ15mm×φ60mmのパット)をチャック間40mmで挟み、200mm/minの速度で引張を行って、引張物性を測定した。
【0208】
(アスカー硬度)
発泡体のアスカー硬度はアスカー硬度計FP型(高分子計器株式会社製)を使用して、23℃、アスカー硬度計の測定面が発泡体に密着するように押付けた荷重条件で測定した。
【0209】
(基材樹脂(A))
基材樹脂(A)であるポリマーAおよびポリマーBを、以下の方法に従って製造した。
【0210】
<ポリマーA>
分子量約3,000のポリオキシプロピレントリオールを開始剤とし、亜鉛ヘキサシアノコバルテートグライム錯体触媒にてプロピレンオキシドの重合を行い、数平均分子量が16,400(送液システムとして東ソー製HLC-8120GPCを用い、カラムは東ソー製TSK-GEL Hタイプを用い、溶媒はTHFを用いて測定したポリスチレン換算分子量)のヒドロキシ基末端ポリオキシプロピレンを得た。続いてこのヒドロキシ基末端ポリオキシプロピレンのヒドロキシ基に対して1.2倍当量のNaOMeのメタノール溶液を添加してメタノールを留去し、さらに1.5倍当量の3-クロロ-1-プロペンを添加して末端のヒドロキシ基をアリル基に変換した。次に得られたアリル基末端ポリオキシプロピレン重合体100重量部に対して白金ジビニルジシロキサン錯体(白金換算で3重量%のイソプロピルアルコール溶液)36ppmを加え撹拌しながら、トリエトキシシラン3.3重量部をゆっくりと滴下し、90℃で2時間反応させた。さらにメタノール30重量部、HCl12ppmを添加して末端のエトキシ基をメトキシ基に変換した後、過剰のメタノールを除去することにより、末端にトリメトキシシリル基を1分子中に2.1個有する分岐状の反応性ケイ素基含有ポリオキシプロピレンを得た。
【0211】
<ポリマーB>
ポリマーAを60重量部と、メタクリル酸メチル(MMA)、メタクリル酸ステアリル(SMA)、メタクリル酸3-(トリメトキシシリル)プロピル(TSMA)、イソボロニルメタクリレート(iBOMA)、及び(3-メルカプトプロピル)トリメトキシシラン(A189Z)の共重合体40重量部と、共重合体の溶媒であるイソブチルアルコール27重量部とを、ロータリーエバポレーターを用いて脱気及び均一混合して、反応性ケイ素基含有ポリオキシプロピレンとアクリル樹脂とのブレンドである固形分100%のポリマーBを得た。
【0212】
上記共重合体の共重合比率(質量比)は、MMA/SMA/TSMA/iBOMA/A189Zとして、20.6/10/10/60/1.8である。また、上記共重合体のガ
ラス転移温度は104℃である。上記重合体の数平均分子量は、4,400(送液システムとして東ソー製HLC-8120GPCを用い、カラムは東ソー製TSK-GEL Hタイプを用い、溶媒はTHFを用いて測定したポリスチレン換算分子量)である。
【0213】
〔実施例1〕
基材樹脂(A)としてポリマーB、非加熱型発泡剤(B)(二炭酸ジエチル(富士フィルム和光純薬株式会社製))、および整泡剤(エボニック・デグサ・ジャパン株式会社製の「TEGOSTAB B8244」)を混合し、A溶液(発泡体用樹脂組成物)を調製した。A溶液の粘度は、142Pa・sであった。さらに、調製したA溶液と、シラノール縮合触媒として錫触媒(商品名:ネオスタンU700、日東化成株式会社製)を3.7重量部(粘度0.1Pa・s)含むB溶液(粘度0.1Pa・s)、および発泡触媒として3-ジメチルアミノプロピルウレア(エボニック・デグサ・ジャパン株式会社製 商品名:DABCO NE1070)1.3重量部と水4.2重量部とを混合して得られたC溶液(粘度0.005Pa・s)を加えた。得られた混合物を、東京理化器械株式会社製撹拌機マゼラZZ-2221をディスパーとして用いて、下記のディスパー条件で23℃下、15秒間混合して、実施例1の発泡体を得た。
・撹拌回転数:610rpm
・撹拌翼:ディスクエッジを交互に上下に幅10mm×曲げ長さ5mmで折り曲げた直径4cm円形ディスパー
実施例1の発泡体の発泡倍率は10倍であった。また、各原料の添加量は、表1に記載の通りである。
【0214】
〔実施例2〕
各原料の添加量を、表1に記載の通りとした以外は実施例1と同様にして、実施例2の発泡体を得た。実施例2の樹脂組成物の粘度は68Pa・sであった。また、実施例2の発泡体の発泡倍率は20倍であった。
【0215】
〔実施例3〕
各原料の添加量を、表1に記載の通りとした以外は実施例1と同様にして、発泡体を得た。実施例3の樹脂組成物の粘度は35Pa・sであった。また、実施例3の発泡体の発泡倍率は30倍であった。
【0216】
〔比較例1〕
A溶液に対して、ポリマーBに加えて、ポリマーAをさらに加えたこと、および各原料の添加量を、表1に記載の通りとした以外は実施例1と同様にして、発泡体を得た。比較例1の樹脂組成物の粘度は7Pa・sであった。また、比較例1の発泡体の発泡倍率は30倍であった。
【0217】
実施例1~3および比較例1の組成を表1に示す。表1中、各成分の含有量は重量部である。また、実施例1~3および比較例1の試験結果を表2に示す。
【0218】
【0219】
【0220】
<結果-1>
表2より、樹脂組成物の粘度が30Pa・s以上である実施例1~3の樹脂組成物は、生地への染み込みが抑制されることが分かった。一方、比較例1では、樹脂組成物が生地から染み出し、段ボールに付着していた。また、実施例1~3より、樹脂組成物の粘度が高いほど生地への染み込みが抑制されることが分かった。白生地は伸び率が低く、黒生地は伸び率が高い特性を有するが、これらの生地の特性に関わらず、結果の違いは見られなかった。なお、B溶液およびC溶液の粘度は樹脂組成物に対して少量であるため、樹脂組成物の粘度への影響は無視できると考えられる。以上より、本発明の一実施形態に係る発泡体用樹脂組成物によれば、生地への染み込みおよび/または生地からの染み出しを抑制できることが示された。
〔実施例4〕
実施例2で製造した発泡体用樹脂組成物2.2gを日東電工株式会社製NITOFLON(ニトフロン)(商標)のフッ素樹脂フィルム上に置き、その上に深さが15mmで直径6cmの円筒形のポリプロピレン製カップを設置した。さらにその上から1kgの錘を設置して固定した。室温で24hr放置した後に、ポリプロピレン製カップから離型した生地に包含されていない発泡体(厚さ15mm×φ60mmのパット)を得た。
〔実施例5〕
実施例2で製造した発泡体用樹脂組成物2.2gを白生地(双日ファッション株式会社販売 品番:330 品名:40天竺 センターアイランドRUV カラー:オフホワイト)内に置き、その上に深さが15mmで直径6cmの円筒形のポリプロピレン製カップを設置した。さらにその上から1kgの錘を設置して固定した。室温で24hr放置した後に、ポリプロピレン製カップから離型した生地に包含された発泡体(厚さ15mm×φ60mmのパット)を得た。
【0221】
〔比較例2〕
市販品であるウレタン発泡体 サンゴパン AGP200(Saint-gobain製Norseal(登録商標))を比較例2の発泡体(厚さ15mm)として用いた。
【0222】
実施例2および4、ならびに比較例2の発泡体のアスカー硬度、および引張物性を測定した結果について、表3に結果を示す。
【0223】
【0224】
<結果-2>
表3より、樹脂組成物の粘度が30Pa・s以上である実施例2の樹脂組成物を生地に包含せずに発泡させた実施例4の発泡体と比べて、実施例2の樹脂組成物を白生地(双日ファッション株式会社販売 品番:330 品名:40天竺 センターアイランドRUV カラー:オフホワイト)内で発泡させた実施例5の発泡積層体は、発泡体のみの実施例4と同程度の柔らかさを維持したまま、引張強度が大幅に向上した。柔らかい発泡体は、洗濯機内等で他の衣類との絡み合うことにより引き裂かれやすいという課題がある。この課題を、伸縮性のある生地で柔らかい発泡体を包含することで、柔らかさを維持したまま引張強度(耐洗濯性)を実用レベルまで改善することができた。
【0225】
一方、比較例2のウレタン発泡体ではアスカー硬度が0となる柔らかい発泡体を作製することは困難であった。
【0226】
以上より、本発明の一実施形態に係る発泡体用樹脂組成物を発泡させた発泡体、および発泡体用樹脂組成物を基材(例えば、伸縮性のある生地)内で発泡させた発泡積層体では、柔らかさを維持したまま引張強度(耐洗濯性)を向上できることが示された。
本発泡体用樹脂組成物は、防音材、制振材、クッション材等として、輸送機器、寝具・寝装品、家具、各種機器、建材、包装材、医療・介護等の用途に好適に利用できる。