(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173715
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】画像コンテンツデータを使用してインクジェットプリンタにおけるインクジェット動作を制御するためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/04 20060101AFI20241205BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
B41J2/04
B41J2/01 451
B41J2/01 401
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024079137
(22)【出願日】2024-05-15
(31)【優先権主張番号】18/326,138
(32)【優先日】2023-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】596170170
【氏名又は名称】ゼロックス コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141553
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 信彦
(72)【発明者】
【氏名】シーミット プラハラジ
(72)【発明者】
【氏名】ジェイソン エム.ルフェーブル
(72)【発明者】
【氏名】ダグラス ケイ.ハーマン
(72)【発明者】
【氏名】ヴァルン サンビー
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
【Fターム(参考)】
2C056EA04
2C056EB27
2C056EB49
2C056EB58
2C056EC07
2C056EC42
2C056FA13
2C056HA46
2C056HA47
2C056HA58
2C057AF23
2C057AF40
2C057AL31
2C057AL38
2C057AM21
2C057AN05
(57)【要約】 (修正有)
【課題】1つ以上の画像に吐出されるインク液滴のインク液滴変動を低減する。
【解決手段】プリンタによって生み出される1つ以上のインク画像に少なくとも1つのインク液滴を吐出するインクジェットの発射信号波形を調整する。公称インク液滴体積と最大インク液滴体積偏差とを使用して、許容可能なインク液滴体積の範囲が識別される。この識別された範囲外のインクジェットに対する発射信号は、これらのインクジェットによって吐出されるインク液滴を許容可能なインク液滴体積の範囲内にシフトするように調整される。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリンタであって、
複数の印刷ヘッドであって、各印刷ヘッドは、基材がプロセス方向に各印刷ヘッドを通過する際に、前記基材上にインク液滴を吐出するように構成されている、複数の印刷ヘッドと、
複数の印刷ヘッドドライバであって、各印刷ヘッドドライバは、前記複数の印刷ヘッドにおける前記印刷ヘッドのうちの1つに1対1の対応で動作可能に接続されており、各印刷ヘッドドライバは、前記印刷ヘッドドライバに動作可能に接続された1つの前記印刷ヘッド内のインクジェットを動作させるように構成されている、複数の印刷ヘッドドライバと、
各印刷ヘッドドライバに動作可能に接続されたコントローラと、を備え、前記コントローラは、
印刷ジョブにおいて印刷される各インク画像のインク画像コンテンツデータを受信し、
公称インク液滴体積を中心としたインク液滴体積の範囲外の体積を有するインク液滴を吐出する、動作されるべきインクジェットを識別し、
前記公称インク液滴体積を中心とした前記インク液滴体積の範囲外にあると識別された各インクジェットについて、発射信号波形調整を識別するように構成されており、
各印刷ヘッドドライバは、識別された前記発射信号波形調整を使用して、前記印刷ヘッドドライバに動作可能に接続されている、前記公称インク液滴体積を中心とした前記インク液滴体積の範囲外にあると識別された前記インクジェットのための発射信号を生成するように更に構成されている、プリンタ。
【請求項2】
前記識別された発射信号波形調整が、前記公称インク液滴体積を中心とした前記インク液滴体積の範囲外にあると識別された前記インクジェットのための発射信号を生成するために少なくとも前記印刷ヘッドドライバによって使用される波形の振幅の変化である、請求項1に記載のプリンタ。
【請求項3】
前記コントローラが、
前記インク画像コンテンツデータ内の少なくとも1つのインク画像に少なくとも1つのインク液滴を吐出する各インクジェットについて、インクジェット動作の周波数を識別すること、
前記少なくとも1つのインク画像に少なくとも1つのインク液滴を吐出する各インクジェットによって吐出されたインクジェット液滴体積を識別すること、
前記少なくとも1つのインク画像に少なくとも1つのインク液滴を吐出する前記インクジェットについての識別された前記インク液滴体積を使用して、前記公称インク液滴体積を識別すること、及び
最大インク液滴体積偏差を使用して、前記公称インク液滴体積を中心とした前記インク液滴体積の範囲を識別することによって、前記インク液滴体積の範囲を識別するように更に構成されている、請求項1に記載のプリンタ。
【請求項4】
前記コントローラが、
前記少なくとも1つのインク画像に少なくとも1つのインク液滴を吐出する前記インクジェットについての前記識別された液滴体積の平均インク液滴体積を識別することによって、前記公称液滴体積を識別するように更に構成されている、請求項3に記載のプリンタ。
【請求項5】
前記最大インク液滴体積偏差が、前記公称インク液滴体積の所定の百分率である、請求項4に記載のプリンタ。
【請求項6】
前記インク液滴体積の範囲が、前記公称インク液滴体積の±10%の前記公称インク液滴体積である、請求項5に記載のプリンタ。
【請求項7】
前記コントローラが、
識別されたインクジェット動作周波数に、インク液滴体積変動対印刷領域被覆率関数を適用することによって、前記少なくとも1つのインク画像に少なくとも1つのインク液滴を吐出する各インクジェットについて、前記インク液滴体積を識別するように更に構成されている、請求項3に記載のプリンタ。
【請求項8】
印刷体積変動対印刷領域被覆率関数が、74KHz~77KHzの範囲の共振周波数を有する印刷ヘッドに対応する、請求項7に記載のプリンタ。
【請求項9】
前記コントローラが、
前記インク画像コンテンツデータ内の複数のインク画像に少なくとも1つのインク液滴を吐出する複数のインクジェットについて、前記インクジェット動作の周波数を識別するように構成されている、請求項3に記載のプリンタ。
【請求項10】
前記コントローラが、
ゼロ発射信号周波数と最大インクジェット発射信号周波数との間の線形スケールと、前記インクジェットがインクを吐出する領域被覆率の百分率とを使用して、前記インクジェット動作の周波数を識別するように更に構成されている、請求項9に記載のプリンタ。
【請求項11】
プリンタを動作させるための方法であって、
印刷ジョブにおいて印刷される各インク画像のインク画像コンテンツデータを受信することと、公称インク液滴体積を中心としたインク液滴体積の範囲外の体積を有するインク液滴を吐出するように動作される複数の印刷ヘッドにおけるインクジェットを識別することと、
前記公称インク液滴体積を中心とした前記インク液滴体積の範囲外にあると識別された各インクジェットについて、発射信号波形調整を識別することと、
識別された前記発射信号波形調整を使用して、前記公称インク液滴体積を中心とした前記インク液滴体積の範囲外にあると識別された前記インクジェットのための発射信号を生成することと、を含む、方法。
【請求項12】
前記発射信号波形調整の前記識別が、
前記公称インク液滴体積を中心とした前記インク液滴体積の範囲外にあると識別された前記インクジェットのための発射信号を生成するために使用される波形の振幅を変化させることを更に含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記インク液滴体積の範囲の前記識別が、
前記インク画像コンテンツデータ内の少なくとも1つのインク画像に少なくとも1つのインク液滴を吐出する各インクジェットについて、インクジェット動作の周波数を識別することと、
前記少なくとも1つのインク画像に少なくとも1つのインク液滴を吐出する各インクジェットによって吐出されたインクジェット液滴体積を識別することと、
前記少なくとも1つのインク画像に少なくとも1つのインク液滴を吐出する前記インクジェットについての識別された前記インク液滴体積を使用して、前記公称インク液滴体積を識別することと、
最大インク液滴体積偏差を使用して、前記公称インク液滴体積を中心とした前記インク液滴体積の範囲を識別することと、を更に含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記公称液滴体積の前記識別が、
前記少なくとも1つのインク画像に少なくとも1つのインク液滴を吐出する前記インクジェットについての前記識別された液滴体積の平均インク液滴体積を識別することを更に含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記最大インク液滴体積偏差の前記識別が、
前記公称インク液滴体積に所定の百分率を乗算することを更に含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記インク液滴体積の範囲の前記識別が、
前記最大インク液滴体積偏差を識別するために、前記公称インク液滴体積に10%を乗算することと、
前記インク液滴体積の範囲の終点を識別するために、前記公称インク液滴体積に前記最大インク液滴体積偏差を加算し、前記公称インク液滴体積から前記最大インク液滴体積偏差を減算することと、を更に含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記少なくとも1つのインク画像に少なくとも1つのインク液滴を吐出する各インクジェットについての前記インク液滴体積の前記識別が、
識別されたインクジェット動作周波数に、インク液滴体積変動対印刷領域被覆率関数を適用することを更に含む、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
印刷体積変動対印刷領域被覆率関数が、74KHz~77KHzの範囲の共振周波数を有する印刷ヘッドに対応する、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記インクジェット動作周波数の前記識別が、
前記インク画像コンテンツデータ内の複数のインク画像に少なくとも1つのインク液滴を吐出する複数のインクジェットについて、前記インクジェット動作の周波数を識別することを更に含む、請求項13に記載の方法。
【請求項20】
ゼロ発射信号周波数と最大インクジェット発射信号周波数との間の線形スケールと、前記インクジェットがインクを吐出する領域被覆率の百分率とを使用して、前記インクジェット動作の周波数を識別することを更に含む、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概してインクジェットプリンタに関し、より具体的には、発射信号を用いて操作されるインクジェットを有する印刷ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタは、基材上にインク画像を生み出すように操作される1つ以上の印刷ヘッドを含む。印刷ヘッドは、典型的にはインクジェットのアレイを有し、これらのインクジェットは、トランスデューサを起動させ、インクジェットからインクの液滴を吐出させる発射信号を受信するトランスデューサを含む。高周波数でインクジェットを動作させることは、ノズルにおける共振効果を悪化させる。これらの共振効果は、吐出されたインク液滴体積対領域被覆率のグラフに急勾配をもたらす。この勾配は、高周波数でのインクジェットの動作と結合された、
図8に示されるもののような典型的な二重液滴吐出波形の相互作用から生じる予想される挙動である。異なる動作周波数を有する2つの印刷ヘッドについての液滴体積対領域被覆率のグラフを
図9に示す。より高い周波数で動作することができるインクジェットを有する印刷ヘッドは、その印刷ヘッドのデータ点に当てはめられた線に対して、より急な液滴体積対領域被覆率の勾配を有する。より高い周波数で動作する印刷ヘッド内でインクジェットの動作を、液滴体積対領域被覆率の勾配がより緩やかになるように調整することができれば、その印刷ヘッドによって印刷されるインク画像の画質にとって有益であろう。
【発明の概要】
【0003】
新しいインクジェットプリンタは、高周波数で動作する印刷ヘッド内でインクジェットを、液滴体積対領域被覆率の勾配がより緩やかになるように動作させるように構成されている。プリンタは、複数の印刷ヘッドであって、各印刷ヘッドは、基材がプロセス方向に各印刷ヘッドを通過する際に基材上にインク液滴を吐出するように構成されている、複数の印刷ヘッドと、複数の印刷ヘッドドライバであって、各印刷ヘッドドライバは、複数の印刷ヘッド内の印刷ヘッドのうちの1つに1対1の対応で動作可能に接続されており、各印刷ヘッドドライバは、印刷ヘッドドライバに動作可能に接続された1つの印刷ヘッド内でインクジェットを動作させるように構成されている、複数の印刷ヘッドと、各印刷ヘッドドライバに動作可能に接続されたコントローラと、を含む。コントローラは、印刷ジョブにおいて印刷される各インク画像のインク画像コンテンツデータを受信し、公称インク液滴体積を中心としたインク液滴体積の範囲外の体積を有するインク液滴を吐出する、動作されるべきインクジェットを識別し、公称インク液滴体積を中心としたインク液滴体積の範囲外であると識別された各インクジェットのための発射信号波形調整を識別するように構成されている。各印刷ヘッドドライバは、識別された発射信号波形調整を使用して、印刷ヘッドドライバに動作可能に接続されている、公称インク液滴体積を中心としたインク液滴体積の範囲外にあると識別されたインクジェットのための発射信号を生成するように更に構成されている。
【0004】
プリンタ動作の方法は、高周波数で動作する印刷ヘッド内のインクジェットを、液滴体積対領域被覆率の勾配がより緩やかになるように動作させる。この方法は、印刷ジョブにおいて印刷される各インク画像のインク画像コンテンツデータを受信することと、公称インク液滴体積を中心としたインク液滴体積の範囲外の体積を有するインク液滴を吐出するように動作される複数の印刷ヘッドにおけるインクジェットを識別することと、公称インク液滴体積を中心としたインク液滴体積の範囲外にあると識別された各インクジェットについて、発射信号波形調整を識別することと、識別された発射信号波形調整を使用して、公称インク液滴体積を中心としたインク液滴体積の範囲外にあると識別されたインクジェットのための発射信号を生成することと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0005】
高周波数で動作する印刷ヘッド内のインクジェットを、液滴体積対領域被覆率の勾配がより緩やかになるように動作させる、プリンタ及びプリンタ動作の方法の前述の態様及び他の特徴は、添付の図面に関連して以下の記載で説明される。
【
図1】高周波数で動作する印刷ヘッド内のインクジェットを、液滴体積対領域被覆率の勾配がより緩やかになるように動作させるプリンタの図である。
【
図2】異なる色のインクを吐出するように構成された印刷ヘッド内のインクジェットの動作周波数に対するインク液滴体積のグラフである。
【
図3】インク画像の典型的な色分解の印刷中の印刷ヘッド内の各インクジェットの動作周波数のグラフである。
【
図4】
図3に示されるインクジェットの吐出された液滴体積のヒストグラムを描写する。
【
図5】発射信号波形が調整された後の
図4のインクジェットの吐出された液滴体積のヒストグラムを描写する。
【
図6】
図1の印刷ヘッド内のインクジェットのうちのいくつかに対して波形調整が実行された後の、補正された液滴体積対領域被覆率曲線のグラフである。
【
図7】液滴体積対領域被覆率の勾配がより緩やかになるように発射信号波形を調整するために使用されるプロセスの流れ図である。
【
図9】インク液滴体積変動対印刷領域被覆率のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本実施形態の一般的な理解のために、図面を参照する。図面では、同様の参照番号が、同様の要素を指定するために図面を通じて使用されている。
【0007】
高周波数で動作する印刷ヘッド内のインクジェットを、液滴体積対領域被覆率の勾配がより緩やかになるように動作させるように構成された印刷システム10が、
図1に示されている。例示されるように、プリンタ10は、媒体シート供給部S
1又はS
2のうちの1つから取り出された媒体シートの表面上にインク画像を直接形成するプリンタであり、シートSは、アクチュエータ40のうちの1つ以上を動作させるコントローラ80によってプリンタ10を通って移動され、アクチュエータ40は、コンベヤ52のローラ又は少なくとも1つの駆動ローラに動作可能に接続されており、コンベヤ52は、プリンタの印刷ゾーンPZを通過する媒体搬送部42の一部分を備える。本明細書で使用される場合、「印刷ゾーン」という用語は、プリンタ内の印刷ヘッドアセンブリのいずれかに対向する媒体搬送部の部分を意味する。
【0008】
プリンタ10は、外部データソースによってプリンタに送信された印刷ジョブを実行するように構成されている。本明細書で使用される場合、「印刷ジョブ」という用語は、プリンタによって生み出されるインク画像のためのインク画像コンテンツデータと、インク画像を生み出すためにプリンタが動作される印刷ジョブパラメータとを意味する。インク画像コンテンツデータは、走査システムなどの外部データソース又はオンライン若しくはワークステーション接続のいずれかから、コントローラ80に送信される。インク画像コンテンツデータは、モジュール34A~34D内の印刷ヘッドに送出されるインクジェット吐出器発射信号を生成するように処理される。インク画像コンテンツデータとともに、コントローラはまた、印刷ジョブを実行するための媒体の重量、媒体の寸法、印刷速度、媒体の種類、各シートの各面上に生み出されるインク領域被覆率、各シートの各面上に生み出される画像の位置、媒体の色、繊維状媒体の媒体繊維配向、印刷ゾーンの温度及び湿度、媒体の含水量、媒体製造業者者などを識別する印刷ジョブパラメータを受信する。本文書で使用される場合、「印刷ジョブパラメータ」という用語は、印刷ジョブのための非画像コンテンツデータを意味し、「インク画像コンテンツデータ」という用語は、媒体シート上に印刷されるインク画像における画素を形成する各吐出されたインク液滴の色及び体積を識別するデジタルデータを意味する。
【0009】
一実施形態では、プリンタ10の各印刷ヘッドモジュールは、プリンタによって印刷され得るクロスプロセス方向において、最も広い媒体の幅に対応する幅を有するたった1つの印刷ヘッドを有する。他の実施形態では、印刷ヘッドモジュールは、複数の印刷ヘッドを有し、各印刷ヘッドが、プリンタが印刷することができるクロスプロセス方向において、最も広い媒体の幅未満の幅を有する。これらのモジュールでは、印刷ヘッドは、単一の印刷ヘッドよりも広い媒体が印刷されることを可能にするずらされた印刷ヘッドのアレイ状に配置されている。追加的に、モジュール内、又はモジュール間の印刷ヘッドはまた、印刷ヘッドによってクロスプロセス方向に吐出された液滴の密度が、クロスプロセス方向において、印刷ヘッド内のインクジェット間の最小の間隔よりも大きくなり得るように組み合わせることができる。プリンタ10は、2つのみの媒体シート供給部を伴って描写されているが、プリンタは、各々が異なる種類又はサイズの媒体を含む、3つ以上のシート供給部で構成することができる。
【0010】
媒体搬送部42は、紙シート、封筒、又は印刷画像を受け取るのに適した任意の他の物品などの印刷媒体を印刷ゾーンを通して移動させるためのベルトを含み、したがって、印刷ヘッドは、移動する媒体上にインク液滴を吐出して、媒体上に印刷画像を形成することができる。ベルトは、その中に穴を有し、ベルトは、コンベヤ52内の真空プレナム上を移動するので、ベルトの表面を通して吸引力を生成することができる。各印刷媒体は、ベルトの表面上の穴の一部分と係合し、ベルトがプリンタを通って移動するときに、吸引力が印刷媒体をベルトの表面に保持して、印刷媒体がベルトの表面に対して滑るか、又は別様に移動するのを防止する。各印刷媒体を移動ベルトの表面に対して定位置に保持することにより、プリンタは、印刷ヘッドの動作のタイミングを制御して、印刷ヘッドが各印刷媒体上の適切な場所に印刷画像を形成することを確実にし、印刷媒体がプリンタに詰まり又は他の機械的な問題を引き起こさないことを確実にすることができる。大規模プリンタ構成では、ベルトが、複数の印刷媒体を同時に搬送することが多い。
【0011】
図1を続けて参照すると、基材上の印刷された画像は、インク画像がシートS上に固定された後、画像乾燥機30の下を通過する。画像乾燥機30は、インク画像を加熱し、画像をウェブに少なくとも部分的に固定するために、赤外線ヒータ、加熱空気送風機、エアリターン、又はこれらの構成要素の組み合わせを含むことができる。赤外線加熱器は、ウェブの表面上の印刷された画像に赤外線熱を加えて、インク中の水又は溶媒を蒸発させる。加熱空気送風機は、扇風機、又は他の加圧空気源を使用して、インク上に加熱空気を方向付けて、インクからの水又は溶媒の蒸発を補う。次いで、空気が収集され、空気戻りによって排気されて、プリンタ内の他の構成要素との乾燥機空気流の干渉を低減する。
【0012】
二重経路72は、基材が完全に又は部分的に印刷され、乾燥機30を通過した後に媒体搬送部42からシートを受容し、そのシートを、印刷ヘッドを通過するプロセス方向の移動の方向とは反対の方向にローラの回転によって移動させるように提供される。二重経路72の位置76において、コントローラによってインバータを動作させて、印刷された基材を選択的に裏返してから、媒体搬送部42によって搬送されているジョブストリームに合流させて、印刷された基材の反対側を印刷することができる。インバータが動作されない場合、基材は反転されず、基材がジョブストリームに合流された後、追加の画像部分が基材の印刷側に印刷される。枢動部材88の移動により、二重経路72へのアクセスが提供される。枢動部材88の回転は、枢動部材88に動作可能に接続されたアクチュエータ40を選択的に動作させるコントローラ80によって制御される。
図1に示されるように、枢動部材88が反時計回りに回転されるとき、媒体搬送部42からの基材は、二重経路72に方向転換される。枢動部材88を方向転換位置から時計回り方向に回転させることにより、二重経路72へのアクセスが閉じられるため、媒体搬送部上の基材は、容器56に移動する。別の枢動部材86が、二重経路72にある位置76と媒体搬送部42との間に位置決めされている。コントローラ80が、アクチュエータを動作させて、枢動部材86を反時計回り方向に回転させると、二重経路72からの基材は、媒体搬送部42上でジョブストリームに合流する。枢動部材86を時計回り方向に回転させることにより、媒体搬送部42への二重経路アクセスが閉じられる。
【0013】
図1に更に示されるように、二重経路72に方向転換されなかった印刷済み媒体シートSは、媒体搬送部によって、これらのシートが収集されるシート容器56に運ばれる。印刷されたシートが容器56に到達する前に、これらのシートは、光学センサ84を通り過ぎる。光学センサ84は、印刷されたシートの画像データを生成する。光学センサ84は、デジタルカメラ、LED及び光検出器のアレイ、又は通過表面の画像データを生成するように構成された他のデバイスであり得る。この画像データは、印刷されたインク画像の画質を評価するためにコントローラ80によって解析される。一実施形態では、コントローラ80は、画質を評価し、印刷ジョブの媒体シート上の印刷画像における縞を検出するように構成されている。加えて、テストパターン画像が印刷されたシートが、印刷ジョブ中に間隔を置いて挿入される。これらのテストパターン画像は、コントローラ80によって分析されて、存在する場合、テストパターンにインクを吐出するように動作された、どのインクジェットが実際にインクを吐出したかを判定し、インクジェットがインク液滴を吐出した場合、インク液滴が適切な質量でその意図された位置に降着したかどうかを判定する。吐出すると想定されたインク液滴を吐出しない、又は正しい質量を有していない滴を吐出する、若しくは誤った位置に降着する任意のインクジェットは、本明細書では動作不能なインクジェットと呼ばれる。コントローラは、コントローラに動作可能に接続されたデータベース92に、動作不能なインクジェットを識別するデータを記憶することができる。テストパターンが印刷されたこれらのシートは、ランタイムミッシングインクジェット(run-time missing inkjet、RTMJ)シートと呼ばれることがあり、これらのシートは、印刷ジョブの出力から廃棄される。ユーザは、ユーザインターフェース50を動作させて、動作不能なインクジェットの数及び動作不能なインクジェットが位置する印刷ヘッドを識別するインターフェース上に表示されるレポートを取得することができる。
図1は、シート容器に収集されている印刷済みシートを示しているが、これらのシートは、媒体シートの折り畳み、丁合、綴じ、及びステープル留めなどの作業を実施する他の処理ステーション(図示せず)に方向付けることができる。
【0014】
機械又はプリンタ10の様々なサブシステム、構成要素及び機能の動作及び制御は、コントローラ又は電子サブシステム(electronic subsystem、ESS)80の助けを借りて実施される。ESS又はコントローラ80’は、印刷ヘッドモジュール34A~34D(したがって印刷ヘッド)、アクチュエータ40、及び乾燥機30の構成要素に動作可能に接続されている。ESS又はコントローラ80は、例えば、電子データ記憶装置を伴う中央処理装置(central processor unit、CPU)、及びディスプレイ又はユーザインターフェース(user interface、UI)50を有する自己完結型コンピュータである。ESS又はコントローラ80は、例えば、センサ入力及び制御回路、並びに画素配置及び制御回路を含む。加えて、CPUは、走査システム又はオンライン若しくはワークステーション接続(図示せず)などの画像入力源と、印刷ヘッドモジュール34A~34Dとの間の画像コンテンツデータの流れを読み出し、捕捉し、準備し、かつ管理する。したがって、ESS又はコントローラ80は、印刷プロセスを含む他の全ての機械サブシステム及び機能を操作及び制御するための主要なマルチタスクプロセッサである。加えて、各印刷ヘッドモジュール34A~34Dは、モジュール内の各印刷ヘッドのための印刷ヘッドドライバを含む。印刷ヘッドドライバは、印刷ヘッドドライバに動作可能に接続された印刷ヘッド内のインクジェットのための発射信号を生成する。以下でより詳細に説明するように、コントローラ80が、波形調整を必要とする印刷ヘッドドライバに動作可能に接続された印刷ヘッド内の1つ以上のインクジェットを識別していない限り、印刷ヘッドドライバは、
図8に示されるもののような所定の波形を有する発射信号を生成する。コントローラ80は、波形調整を必要とするインクジェットの識別と、印刷ヘッドドライバが適切に発射信号を生成することができるように、それらのインクジェットのための波形調整とを提供する。
【0015】
コントローラ80は、プログラム命令を実行する汎用又は専用のプログラマブルプロセッサを用いて実装することができる。プログラムされた機能を実施するために必要とされる命令及びデータは、プロセッサ又はコントローラに関連付けられたメモリ内に記憶され得る。プロセッサ、それらのメモリ、及びインターフェース回路は、以下に説明される動作を実施するようにコントローラを構成する。これらの構成要素は、印刷回路カード上に提供され得るか、又は特定用途向け集積回路(application specific integrated circuit、ASIC)内の回路として提供され得る。回路の各々は、別個のプロセッサで実装することができるか、又は複数の回路は、同じプロセッサ上に実装することができる。代替的に、回路は、超大規模集積回路(very large scale integrated、VLSI)内に提供される個別の構成要素又は回路で実装することができる。また、本明細書に説明される回路は、プロセッサ、ASIC、個別の構成要素、又はVLSI回路の組み合わせで実装することができる。
【0016】
動作中、生み出されるインク画像のインク画像コンテンツデータは、走査システム又はオンライン若しくはワークステーション接続のいずれかからコントローラ80に送信される。インク画像コンテンツデータは、モジュール34A~34D内の印刷ヘッドに送出されるインクジェット吐出器発射信号を生成するように処理される。以下でより詳細に説明するように、印刷される単一のインク画像のインク画像コンテンツデータ又は所定数のインク画像のインク画像コンテンツデータを解析して、どのインクジェットが高領域被覆率になるようにインク液滴を吐出し、どのインクジェットが低領域被覆率になるようにインク液滴を吐出するかを識別する。これらの識別されたインクジェットの動作は、液滴体積対領域被覆率のグラフを平坦化するように調整される。
【0017】
インク画像コンテンツデータとともに、コントローラは、媒体の重量、媒体の寸法、印刷速度、媒体の種類、各シートの各面上に生み出されるインク領域被覆率、各シートの各面上に生み出される画像の位置、媒体の色、繊維状媒体の媒体繊維配向、印刷ゾーンの温度及び湿度、媒体の含水量、並びに媒体の製造業者を識別する印刷ジョブパラメータを受信する。本文書で使用される場合、「印刷ジョブパラメータ」という用語は、印刷ジョブのための非画像コンテンツデータを意味し、「インク画像コンテンツデータ」という用語は、媒体シート上に印刷されるインク画像における画素を形成する各吐出されたインク液滴の色及び体積を識別するデジタルデータを意味する。
【0018】
図2は、74KHz~77KHzの範囲の共振周波数で印刷ヘッドを用いてインクジェットを動作させるように構成された印刷ヘッド内のインクジェットを動作させるためのデータ点を描写する。インクジェットが共振周波数より上の周波数で動作される場合、インク液滴体積対領域被覆率百分率を比較するデータ点に当てはめられた曲線の勾配は、共振周波数範囲より下のインクジェット周波数に対するインク液滴体積対領域被覆率百分率を比較するデータ点に当てはめられた曲線の勾配より速く変化する。共振周波数範囲のいずれかの側でのこれらの変化は、より低い共振周波数を有する印刷ヘッドに対するインク液滴体積対領域被覆率百分率の勾配よりも急である。したがって、液滴体積対領域被覆率百分率の勾配の変化が比較的小さい周波数範囲でインクジェットを動作させることができれば、画像品質にとって有利であろう。本明細書で使用される場合、「共振周波数」又は「共振周波数範囲」という用語は、それぞれ単一の周波数又は周波数範囲を意味し、これらはそれぞれ、印刷ヘッド内のインクジェットによって吐出されるインク液滴の所定のインク液滴体積を画像品質を低下させる体積に変更することなく印刷ヘッド内のインクジェットを動作させることができる最高周波数又は周波数範囲である。
【0019】
図3のグラフは、インク画像の典型的な色分解を形成するための印刷ヘッド内の各インクジェットの発射周波数を描写する。グラフにおいて、インクジェット発射周波数は、印刷ヘッド内のインクジェットの最大発射周波数に対して正規化されているので、1.0の周波数は、100%の領域被覆率に対応する。
図9の液滴体積対領域被覆率のグラフを使用して、
図3のグラフに使用される色分解において各液滴体積を吐出するインクジェットの数のヒストグラムを生み出すことができる。そのようなヒストグラムが、
図4に示されている。1つ以上の画像を形成する吐出された液滴体積の範囲は、そのようなヒストグラムから識別することができる。公称液滴体積は、インク液滴体積のこの範囲からの中間点又は平均吐出液滴体積として識別される。次に、最大インク液滴偏差を識別して、インクジェットのインク液滴体積の範囲を設定し、範囲外のインクジェットが、画像品質に影響を及ぼす大きなインク液滴変動を示さないようにする。範囲外のインクジェットの動作を移行させるために、インクジェットが、識別された範囲内の体積を有するインク液滴を吐出して、公称液滴体積からの著しい偏差を軽減するように、それらの発射波形が変更される。例えば、公称液滴体積の10%の最大インク液滴変動を使用することができる。
図4のヒストグラムでは、公称液滴体積は、約3.2plであるので、
図4のヒストグラムに課された範囲は、約2.88plから約3.52plまで広がり、ヒストグラム内の2本の破線によって示されている。したがって、この範囲外のインクジェットは、この液滴体積範囲内に分散される必要がある。この許容範囲外の任意のインクジェットの発射信号波形は、インクジェットの液滴体積を許容範囲内にするように調整される。波形の1つの調整は、波形の振幅を変更することによって達成される。吐出された液滴体積と0.2pl/Vの動作電圧との間の線形関係を仮定することによって、許容範囲外のインクジェットの振幅波形が調整される。調整された波形を用いてこれらのインクジェットを動作させることは、新しい液滴体積504に対する範囲外のインクジェットの再分散を示す、
図5に提示されるヒストグラムをもたらす。
【0020】
許容範囲外のインクジェットに対して決定された波形調整は、印刷ジョブ内で印刷される各インク画像に対して識別され得るか、又は数百の画像など、印刷ジョブ内の所定数の画像の平均に対して識別され得る。この波形調整はまた、公称液滴体積からの大きな偏差に関連する欠陥を軽減する。補正された液滴体積対領域被覆率曲線を、
図6に示す。
図6のグラフ内の矢印は、波形調整によって生み出された液滴体積対領域被覆率曲線の変化を示す。ここでも、最大発射周波数は、100%の領域被覆率に相関し、ゼロ周波数は、0%の領域被覆率に相関し、線形スケーリングがこれら2つの点の間で使用される。
【0021】
図1に示されるプリンタを動作させるためのプロセスが、
図7に示される。プロセスの説明において、プロセスがいくつかのタスク又は機能を実施しているという記述は、コントローラ又は汎用プロセッサが、データを操作して、又はプリンタ内の1つ以上の構成要素を動作させてタスク若しくは機能を実施するために、コントローラ又はプロセッサに動作可能に接続された非一時的コンピュータ可読記憶媒体に記憶されたプログラム命令を実行することを指す。上述したコントローラ80は、そのようなコントローラ又はプロセッサとすることができる。代替的に、コントローラは、2つ以上のプロセッサ並びに関連する回路及び構成要素とともに実装され得、これらは各々、本明細書に説明される1つ以上のタスク又は機能を形成するように構成されている。加えて、方法の工程は、図に示される順序又は処理が説明される順序にかかわらず、任意の実行可能な時系列順序で実施され得る。
【0022】
図7は、プリンタで1つ以上の画像を印刷するプリンタ10の印刷ヘッド内のインクジェットの波形調整を識別するためにプリンタ10を動作させるプロセス700の流れ図である。プロセス700は、印刷ジョブのインク画像コンテンツデータ及び印刷ジョブパラメータを受信することによって開始する(ブロック704)。単一の画像又は所定数の画像の平均のいずれかについて、インクジェット動作の周波数が各インクジェットについて判定される(ブロック708)。経験的に判定されたインク液滴変動対印刷領域被覆率を使用して、識別された動作周波数でインクジェットによって吐出されるインク液滴体積を識別し(ブロック712)、1つ以上のインク画像を形成するために使用されるインク液滴体積の範囲を識別するために使用されるヒストグラムが生成される(ブロック716)。公称インク液滴体積は、吐出されたインク液滴体積の範囲にわたる平均インク液滴体積など、このインク液滴体積の範囲内で識別され、最大インク液滴体積偏差は、前述の10%値など、その公称体積を使用して識別される。公称インク液滴体積及び最大インク液滴体積偏差は、全てのインクジェットが分散されるインク液滴体積の範囲を識別するために使用される(ブロック720)。識別された範囲外のインクジェットに対する発射信号波形は、これらのインクジェットを、識別された範囲内に分散させるように調整される(ブロック724)。これらの修正された波形は、インク画像又は所定数のインク画像の印刷中にインクジェットを動作させるために使用される(ブロック732)。適切なインク液滴体積範囲の識別及び対応する波形調整は、更なるインク画像が印刷されなくなるまで継続する(ブロック736)。
【0023】
上記で開示した装置及び他の特徴、並びに機能、又はそれらの代替物の変形は、望ましくは多くの他の異なるシステム又は用途に組み込まれ得ることが理解されるであろう。以下の「特許請求の範囲」によって包含されることも意図される、様々な現在予期されない代替、修正、変形、又は改善が、後に当業者によって行われ得る。
【外国語明細書】