(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173716
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】二軸延伸ポリエチレンフィルム及びラミネートフィルム並びに包装体
(51)【国際特許分類】
C08J 5/18 20060101AFI20241205BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20241205BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20241205BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
C08J5/18 CES
B32B27/32
B32B27/18 Z
B32B27/18 D
B65D65/40 D
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024079630
(22)【出願日】2024-05-15
(31)【優先権主張番号】P 2023091361
(32)【優先日】2023-06-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】592184876
【氏名又は名称】フタムラ化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100201879
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 大輝
(74)【代理人】
【識別番号】100188086
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 五郎
(72)【発明者】
【氏名】岡本 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 達也
(72)【発明者】
【氏名】寺本 靖丈
【テーマコード(参考)】
3E086
4F071
4F100
【Fターム(参考)】
3E086BA04
3E086BA13
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(57)【要約】
【課題】アンチブロッキング剤を特段の調整を加えることなく適宜使用しながらフィルム表面の耐ブロッキング性や滑り性等で良好な性能が得られる二軸延伸ポリエチレンフィルム及びラミネートフィルム並びに包装体を提供する。
【解決手段】ポリエチレン樹脂を主体として、アンチブロッキング剤を含む縦(MD)方向及び横(TD)方向の二軸方向に延伸されてなる延伸フィルムであって、延伸フィルムには、JIS K 7122(2012)に準拠した示差走査熱量測定により測定された全体の融解熱量に対する40℃以上の融解熱量の割合が40%以上である界面活性剤が0.05重量%超過かつ4重量%以下含まれる、或いはJIS K 7122(2012)に準拠した示差走査熱量測定により測定された全体の融解熱量に対する40℃以上の融解熱量の割合が90%以上である高分子型帯電防止剤が0.25重量%以上かつ1.25重量%以下含まれる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレン樹脂を主体として、アンチブロッキング剤を含む縦(MD)方向及び横(TD)方向の二軸方向に延伸されてなる延伸フィルムであって、
前記延伸フィルムには、JIS K 7122(2012)に準拠した示差走査熱量測定により測定された全体の融解熱量に対する40℃以上の融解熱量の割合が40%以上である界面活性剤が0.05重量%超過かつ4重量%以下含まれる、或いはJIS K 7122(2012)に準拠した示差走査熱量測定により測定された全体の融解熱量に対する40℃以上の融解熱量の割合が90%以上である高分子型帯電防止剤が0.25重量%以上かつ1.25重量%以下含まれる
ことを特徴とする二軸延伸ポリエチレンフィルム。
【請求項2】
前記延伸フィルムが、前記界面活性剤を含有する基材層と、前記基材層の両側に配置され前記アンチブロッキング剤を含有する表層とを備える請求項1に記載の二軸延伸ポリエチレンフィルム。
【請求項3】
前記基材層が前記界面活性剤を0.06重量%以上かつ4重量%以下含む請求項2に記載の二軸延伸ポリエチレンフィルム。
【請求項4】
前記延伸フィルムが、基材層と、前記基材層の両側に配置され前記アンチブロッキング剤を含有する表層とを備え、前記表層の少なくとも一方に前記高分子型帯電防止剤を含有する請求項1に記載の二軸延伸ポリエチレンフィルム。
【請求項5】
前記表層の少なくとも一方が前記高分子型帯電防止剤を5重量%以上かつ25重量%以下含む請求項4に記載の二軸延伸ポリエチレンフィルム。
【請求項6】
前記延伸フィルムのJIS K 7125(1999)に準拠して測定した動摩擦係数が0.9以下である請求項1ないし5のいずれか1項に記載の二軸延伸ポリエチレンフィルム。
【請求項7】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の前記二軸延伸ポリエチレンフィルムに、ポリエチレン樹脂を主体としたシーラントフィルムが積層されてなることを特徴とするラミネートフィルム。
【請求項8】
請求項6に記載の前記二軸延伸ポリエチレンフィルムに、ポリエチレン樹脂を主体としたシーラントフィルムが積層されてなることを特徴とするラミネートフィルム。
【請求項9】
請求項7に記載のラミネートフィルムよりなる包装体。
【請求項10】
請求項8に記載のラミネートフィルムよりなる包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二軸延伸ポリエチレンフィルム及び二軸延伸ポリエチレンフィルムを使用したラミネートフィルム並びに包装体に関し、特に耐ブロッキング性及び滑り性等の性能に優れた二軸延伸ポリエチレンフィルム及びラミネートフィルム並びに包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題に対する意識の高まりから様々な分野で環境に配慮した取り組みがなされており、例えば、使用後の製品を回収し、再度製品として加工して利用するリサイクルが、環境問題に対応した代表的な取り組みの1つとして知られている。
【0003】
一般に、食品等の包装分野では、高い要求品質の実現のために複数の異なる種類の合成樹脂フィルムを積層した積層フィルムが使用される。環境に配慮する観点から、この種の積層フィルムにおいても、リサイクル等により環境負荷の低減を図ることが望まれる。通常、廃棄後の積層フィルムをリサイクルする際は、異なる種類のフィルムが積層されていることから、フィルムを構成する樹脂を再溶融しても相溶化しない樹脂の混合物となってリサイクル資源の品質が大きく低下するため、リサイクル材料として不向きであった。
【0004】
そこで、このような問題を解決すべく、積層フィルムの基材層をヒートシール層と単一素材とした積層フィルムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この種の積層フィルムは、ヒートシール層を構成するポリエチレン系樹脂を基材層及びその外面に積層させた表層に用いているため、再溶融による相溶化が良好となり、リサイクル材料として利用することが可能となる。
【0005】
ポリエチレン樹脂を主体とした二軸延伸フィルム等の積層フィルムは、ポリプロピレン樹脂製のフィルムと比較して柔軟で融点が低く耐ブロッキング性等のフィルム性能に劣る傾向があることが知られている。ポリエチレン樹脂製のフィルムにおいて、耐ブロッキング性の改善を図る場合、フィルム表層にアンチブロッキング剤が添加される。アンチブロッキング剤は、平均粒径や添加量の調整等により耐ブロッキング性を向上させることができる。
【0006】
しかしながら、アンチブロッキング剤の平均粒径が大きいと、フィルム表面の突起高さが増加し、アンチブロッキング剤の添加量を増やすと突起数が多くなり、フィルム表層に印刷を施す場合にインキ抜けが発生し易くなる。インキ抜けの発生を防止するためには、アンチブロッキング剤の平均粒径を小さくすることやアンチブロッキング剤の添加量を少なくすることが考えられるが、平均粒径が小さくなることやアンチブロッキング剤の添加量が少なくなると耐ブロッキング性や滑り性の低下等の別の問題が発生する懸念がある。
【0007】
このように、ポリエチレン樹脂製のフィルムにおいて、耐ブロッキング性や滑り性等のフィルム性能の向上を図る場合に、使用するアンチブロッキング剤の粒径や添加量を調整する等で対応するには限界があった。そこで、リサイクル材料として利用可能な二軸延伸ポリエチレンフィルムとして、単層や積層を問わず単一素材(モノマテリアル)で構成するに際し、使用するアンチブロッキング剤の特段の調整を行うことなくフィルム表面の耐ブロッキング性や滑り性等の改善を図ることが求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、前記の点に鑑みなされたものであって、アンチブロッキング剤を特段の調整を行うことなく適宜使用しながらフィルム表面の耐ブロッキング性や滑り性等で良好な性能が得られる二軸延伸ポリエチレンフィルム及びラミネートフィルム並びに包装体を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、第1の発明は、ポリエチレン樹脂を主体として、アンチブロッキング剤を含む縦(MD)方向及び横(TD)方向の二軸方向に延伸されてなる延伸フィルムであって、前記延伸フィルムには、JIS K 7122(2012)に準拠した示差走査熱量測定により測定された全体の融解熱量に対する40℃以上の融解熱量の割合が40%以上である界面活性剤が0.05重量%超過かつ4重量%以下含まれる、或いはJIS K 7122(2012)に準拠した示差走査熱量測定により測定された全体の融解熱量に対する40℃以上の融解熱量の割合が90%以上である高分子型帯電防止剤が0.25重量%以上かつ1.25重量%以下含まれることを特徴とする二軸延伸ポリエチレンフィルムに係る。
【0011】
第2の発明は、第1の発明において、前記延伸フィルムが、前記界面活性剤を含有する基材層と、前記基材層の両側に配置され前記アンチブロッキング剤を含有する表層とを備える二軸延伸ポリエチレンフィルムに係る。
【0012】
第3の発明は、第2の発明において、前記基材層が前記界面活性剤を0.06重量%以上かつ4重量%以下含む二軸延伸ポリエチレンフィルムに係る。
【0013】
第4の発明は、第1の発明において、前記延伸フィルムが、基材層と、前記基材層の両側に配置され前記アンチブロッキング剤を含有する表層とを備え、前記表層の少なくとも一方に前記高分子型帯電防止剤を含有する二軸延伸ポリエチレンフィルムに係る。
【0014】
第5の発明は、第4の発明において、前記表層の少なくとも一方が前記高分子型帯電防止剤を5重量%以上かつ25重量%以下含む二軸延伸ポリエチレンフィルムに係る。
【0015】
第6の発明は、第1ないし5の発明のいずれかにおいて、前記延伸フィルムのJIS K 7125(1999)に準拠して測定した動摩擦係数が0.9以下である二軸延伸ポリエチレンフィルムに係る。
【0016】
第7の発明は、第1ないし5の発明のいずれかの二軸延伸ポリエチレンフィルムを用いたラミネートフィルムであって、前記二軸延伸ポリエチレンフィルムに、ポリエチレン樹脂を主体としたシーラントフィルムが積層されてなることを特徴とするラミネートフィルムに係る。
【0017】
第8の発明は、第6の発明の二軸延伸ポリエチレンフィルムを用いたラミネートフィルムであって、前記二軸延伸ポリエチレンフィルムに、ポリエチレン樹脂を主体としたシーラントフィルムが積層されてなることを特徴とするラミネートフィルムに係る。
【0018】
第9の発明は、第7の発明のラミネートフィルムよりなる包装体に係る。
【0019】
第10の発明は、第8の発明のラミネートフィルムよりなる包装体に係る。
【発明の効果】
【0020】
第1の発明に係る二軸延伸ポリエチレンフィルムによると、ポリエチレン樹脂を主体として、アンチブロッキング剤を含む縦(MD)方向及び横(TD)方向の二軸方向に延伸されてなる延伸フィルムであって、前記延伸フィルムには、JIS K 7122(2012)に準拠した示差走査熱量測定により測定された全体の融解熱量に対する40℃以上の融解熱量の割合が40%以上である界面活性剤が0.05重量%超過かつ4重量%以下含まれる、或いはJIS K 7122(2012)に準拠した示差走査熱量測定により測定された全体の融解熱量に対する40℃以上の融解熱量の割合が90%以上である高分子型帯電防止剤が0.25重量%以上かつ1.25重量%以下含まれることから、アンチブロッキング剤を特段の調整を行うことなく適宜使用しながら前記延伸フィルムに添加する界面活性剤或いは高分子型帯電防止剤によりフィルムに所望の耐ブロッキング性及び滑り性を付与し、これにより加工適性に優れたフィルムを得ることができる。
【0021】
第2の発明に係る二軸延伸ポリエチレンフィルムによると、第1の発明において、前記延伸フィルムが、前記界面活性剤を含有する基材層と、前記基材層の両側に配置され前記アンチブロッキング剤を含有する表層とを備えるため、基材層に含有された界面活性剤が表層を通過してフィルム表面に移行して、所望の耐ブロッキング性及び滑り性をフィルム表面に付与することができる。
【0022】
第3の発明に係る二軸延伸ポリエチレンフィルムによると、第2の発明において、前記基材層が前記界面活性剤を0.06重量%以上かつ4重量%以下含むため、基材層への界面活性剤の添加量を所定量に調整してフィルム表面に所望の耐ブロッキング性及び滑り性を付与することができる。
【0023】
第4の発明に係る二軸延伸ポリエチレンフィルムによると、第1の発明において、前記延伸フィルムが、基材層と、前記基材層の両側に配置され前記アンチブロッキング剤を含有する表層とを備え、前記表層の少なくとも一方に前記高分子型帯電防止剤を含有するため、表層に含有された高分子型帯電防止剤により所望の耐ブロッキング性及び滑り性をフィルム表面に付与することができる。
【0024】
第5の発明に係る二軸延伸ポリエチレンフィルムによると、第4の発明において、前記表層の少なくとも一方が前記高分子型帯電防止剤を5重量%以上かつ25重量%以下含むため、表層への高分子型帯電防止剤の添加量を所定量に調整してフィルム表面に所望の耐ブロッキング性及び滑り性を付与することができる。
【0025】
第6の発明に係る二軸延伸ポリエチレンフィルムによると、第1ないし第5の発明のいずれかにおいて、前記延伸フィルムのJIS K 7125(1999)に準拠して測定した動摩擦係数が0.9以下であるため、良好な滑り性が得られる。
【0026】
第7の発明に係るラミネートフィルムによると、第1ないし第5の発明のいずれかの二軸延伸ポリエチレンフィルムに、ポリエチレン樹脂を主体としたシーラントフィルムが積層されてなるため、単一素材(モノマテリアル)を達成してリサイクルを容易としつつ、耐ブロッキング性を向上させたラミネートフィルムとすることができる。
【0027】
第8の発明に係るラミネートフィルムによると、第6の発明の二軸延伸ポリエチレンフィルムに、ポリエチレン樹脂を主体としたシーラントフィルムが積層されてなるため、単一素材(モノマテリアル)を達成してリサイクルを容易としつつ、耐ブロッキング性を向上させたラミネートフィルムとすることができる。
【0028】
第9の発明に係る包装体によると、第7の発明のラミネートフィルムよりなるため、包装体をリサイクルが容易なラミネートフィルムで構成してリサイクル可能とすることができる。
【0029】
第10の発明に係る包装体によると、第8の発明のラミネートフィルムよりなるため、包装体をリサイクルが容易なラミネートフィルムで構成してリサイクル可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明の一実施形態に係る二軸延伸ポリエチレンフィルムに含まれる界面活性剤全体の融解熱量を算出するための説明図である。
【
図2】同二軸延伸ポリエチレンフィルムに含まれる界面活性剤の40℃以上の融解熱量を算出するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の一実施形態に係る二軸延伸ポリエチレンフィルムは、ポリエチレン樹脂を主体として、アンチブロッキング剤を含む縦(MD)方向及び横(TD)方向の二軸方向に延伸されてなる延伸フィルムである。本発明の二軸延伸ポリエチレンフィルムは、印刷や蒸着等が施されるラミネートフィルムの基材フィルムとして使用することができる。このラミネートフィルムは、例えば食品、日用品、部品等の種々の物品の包装体として好適に使用される。
【0032】
本発明の二軸延伸ポリエチレンフィルムは、ポリエチレン系樹脂を主原料とする単一素材(モノマテリアル)で構成される。そのため、リサイクル材料としても好適に利用することができる。なお、ここでいう単一素材とは、各層の主原料が同種の樹脂材料であることを意味し、各種添加剤等が少量含有されることは許容される。
【0033】
二軸延伸ポリエチレンフィルムに用いられる樹脂原料としてのポリエチレン系樹脂は、石油由来、バイオマス由来、マテリアルリサイクル由来、ケミカルリサイクル由来等のポリエチレン系樹脂から適宜選択され、エチレンの単独重合体又はエチレンと炭素数3以上のα-オレフィン、例えば、プロピレン、1-ブテン、1-ヘプテン、1-ヘキセン、1-オクテン等のα-オレフィンとのランダム共重合体である。ポリエチレン系樹脂は、上記の1種ないし2種以上の混合物を用いることもできる。
【0034】
ポリエチレン系樹脂のメルトフローレート(MFR)は特に制限されない。例えば、JIS K 7210に準拠し、190℃、荷重2.16kgの条件で測定されたMFRが0.1~30g/10分、特には0.1~20g/10分のポリエチレン系樹脂が好ましく用いられる。使用されるポリエチレン系樹脂のMFRが低すぎる場合、押出機の圧力が過度に高くなり、生産性が低下するきらいがある。MFRが高すぎる場合、樹脂の溶融粘度が低くなり、延伸時に破断しやすくなり、フィルム化が難しくなるきらいがある。
【0035】
二軸延伸ポリエチレンフィルムに用いられる樹脂原料には、本発明の目的を損なわない範囲で、エチレン・α-オレフィンランダム共重合体エラストマー等のポリオレフィン系エラストマーを適宜配合することができる。また、同様に酸化防止剤、中和剤、防曇剤、滑剤、核剤、着色剤等の添加剤も適宜配合することができる。
【0036】
本発明の二軸延伸ポリエチレンフィルムに添加されるアンチブロッキング剤は、種類等は特に限定されず、有機系又は無機系の粒子、あるいはこれらの混合物が好ましく用いられる。有機系粒子は、例えば、乳化重合又は懸濁重合等により得られる。有機系粒子としては、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリアミド等が挙げられる。無機微粒子としては、例えば、シリカ、ゼオライト、タルク等が挙げられる。これらのアンチブロッキング剤は1種又は2種以上を組み合わせて用いられてもよい。フィルムの耐ブロッキング性、透視感等の観点から、有機系粒子ではポリメチルメタクリレート、また、無機系粒子ではシリカ、ゼオライトが好ましく用いられる。
【0037】
アンチブロッキング剤の平均粒径は特に限定されない。使用可能なアンチブロッキング剤の平均粒径は、添加対象の層厚等に応じて設定される。例えば、層厚が薄い場合は、平均粒径が比較的小径のアンチブロッキング剤が適しており、比較的大径のアンチブロッキング剤が適さない傾向がある。一方、層厚が厚い場合は、平均粒径が比較的大径のアンチブロッキング剤が適しており、比較的小径のアンチブロッキング剤が適さない傾向がある。具体的には、1~15μm、好ましくは1~13μm程度の範囲から、層厚に適した平均粒径のアンチブロッキング剤が適宜選択される。使用するアンチブロッキング剤の平均粒径が小さすぎると、耐ブロッキング性能が不十分となるおそれがあり、平均粒径が大きすぎると脱落や透視感の悪化等が発生しやすくなる。
【0038】
アンチブロッキング剤の添加量は特に制限されない。添加量が多すぎる場合にはコストの増大やフィルムの透視感の悪化、フィルム成形後のアンチブロッキング剤の脱落等が生じやすくなる。添加量が少なすぎると、所望する耐ブロッキング性等の性能が得られないおそれがある。このため、例えば、アンチブロッキング剤の適切な添加量は500~30000ppm、好ましくは1000~20000ppmの濃度となる程度がよいと考えられる。アンチブロッキング剤の添加方法は特に制限されず、例えば、高濃度のマスターバッチを、フィルムの樹脂原料に混合したり、ドライブレンドで混合する等、公知の方法で添加することができる。
【0039】
包装用資材等に用いられる二軸延伸ポリエチレンフィルムでは、通常、アンチブロッキング剤を添加して耐ブロッキング性能が付与される。従来、アンチブロッキング剤の平均粒径が大きいと、耐ブロッキング性が向上する一方で、フィルム表層に印刷を施す場合にインキ抜けが発生し易くなる傾向があった。これに対し、インキ抜け防止を目的としてアンチブロッキング剤の平均粒径を小さくすると、フィルム表面の耐ブロッキング性や滑り性の低下等が問題となり、使用するアンチブロッキング剤の粒径の調整等でフィルム性能の向上に対応するには限界があった。そこで、本発明者らは、アンチブロッキング剤の粒径の調整によらずに所望する耐ブロッキング性や滑り性等のフィルム性能を得ることを目的として鋭意検討を重ねた。その結果、フィルムの樹脂原料に界面活性剤を添加するに際し、該界面活性剤の融解熱量が一定条件を満たす界面活性剤を選択することにより、フィルムの滑り性や耐ブロッキング性の向上に寄与することを見出した。すなわち、界面活性剤は、界面活性剤全体の融解熱量に対する40℃以上の融解熱量の割合が40%以上であり、延伸フィルムに0.05重量%超過かつ4重量%以下含まれることを要する。
【0040】
樹脂原料に添加される界面活性剤は、ラウリルジエタノールアミン、ミリスチルジエタノールアミン、パルミチルジエタノールアミン、オレイルジエタノールアミン、ステアリルジエタノールアミン等の脂肪族アミン化合物及びこれらのエステル化合物である脂肪族アミンエステル化合物、ラウリルジエタノールアミド、ミリスチルジエタノールアミド、パルミチルジエタノールアミド、オレイルジエタノールアミド、ステアリルジエタノールアミド等の脂肪族アミド化合物及びこれらのエステル化合物である脂肪族アミドエステル化合物、グリセリンモノオレート、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート等の多価アルコール、ソルビタンラウレート、ソルビタンパルミテート、ソルビタンオレート、ソルビタンステアレート等のソルビタン脂肪酸エステル類、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩等のスルホン酸類、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩等の硫酸エステル類、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩等のリン酸エステル類があり、適宜選択されて使用される。
【0041】
界面活性剤の融解熱量は、JIS K 7122(2012)に準拠した示差走査熱量測定(DSC)により測定される。界面活性剤全体の融解熱量は、
図1に示すように、測定により得られたDSC曲線Rと、DSC曲線Rの平坦な部分であるベースラインから低温側へ引いた直線Lとで囲まれたピーク面積Mを求めることにより算出される。界面活性剤の融解熱量のうち、一定の温度以上の融解熱量が大きい界面活性剤は、高温環境下での性状変化が小さいため、例えば夏場の高温環境下でのフィルム保管時の耐ブロッキング性能の低下が抑制されると考えられる。そこで、後述の実施例から、界面活性剤全体に対する界面活性剤の40℃以上の融解熱量の割合が40%以上である場合に、アンチブロッキング剤の特段の調整なしに所望するブロッキング性能等が得られる。界面活性剤全体に対する界面活性剤の40℃以上の融解熱量の割合は、
図2の斜線部に示すように、全ピーク面積M(
図1)に対する40℃以上の領域のピーク面積M1を求めることにより算出される。後述の実施例から、40℃以上の融解熱量の割合が小さい、すなわち40℃未満の融解熱量の割合が大きいと、高温環境下でのフィルム保管時に、フィルム表面に移行した界面活性剤が融解し易くなり、フィルム表面がべたつくことによって、所望する耐ブロッキング性が得られなくなるきらいがある。そこで、好ましい40℃以上の融解熱量の割合は40%以上である。なお、
図2中の符号L1は前記直線L(
図1)の一部を示す。
【0042】
上記融解熱量の条件を満たす界面活性剤は、当該二軸延伸ポリエチレンフィルムに0.05重量%超過かつ4重量%以下、好ましくは0.1重量%以上かつ3重量%以下含有される。界面活性剤が、少なすぎると耐ブロッキング性能を十分に補うことが困難となり、多すぎると動摩擦係数が高くなることによりフィルムの滑り性が悪化するおそれがある。
【0043】
また、発明者らは、フィルムの樹脂原料に高分子型帯電防止剤を添加し、該高分子型帯電防止剤の融解熱量が一定条件を満たす高分子型帯電防止剤を選択することにより、フィルムの滑り性や耐ブロッキング性の向上に寄与することも見出した。すなわち、高分子型帯電防止剤は、高分子型帯電防止剤全体の融解熱量に対する40℃以上の融解熱量の割合が90%以上であり、延伸フィルムに0.25重量%以上かつ1.25重量%以下含まれることを要する。
【0044】
樹脂原料に添加される高分子型帯電防止剤は、親水性ポリマーと変性ポリオレフィンの共重合体からなる。親水性ポリマーとしては、一般的にポリエーテルと称されるものが好ましく、ポリエーテルジオール、ポリエーテルジアミン、ポリエーテルエステルアミド、ポリエーテルアミドイミド、ポリエーテルウレタン、ポリエーテルエステル、ポリエーテルアミド及びこれらの変性物等が挙げられる。また、変性ポリオレフィンとしては、適宜のポリオレフィンにおいて、その変性基としてカルボニル基、カルボキシル基、アミノ基、水酸基等が導入され、これらを少なくとも片末端に含有したポリオレフィンが挙げられる。好ましくはカルボキシル基変性ポリオレフィンが挙げられる。
【0045】
高分子型帯電防止剤の融解熱量は、JIS K 7122(2012)に準拠した示差走査熱量測定(DSC)により測定される。高分子型帯電防止剤全体の融解熱量は、
図1と同様のピーク面積Mを求めることにより算出される。高分子型帯電防止剤の融解熱量のうち、一定温度以上の融解熱量の大きい高分子型帯電防止剤についても、熱安定性に優れることから、高温環境下でのフィルム保管時の耐ブロッキング性能の低下が抑制されると考えられる。そこで、後述の実施例から、高分子型帯電防止剤全体に対する高分子型帯電防止剤の40℃以上の融解熱量の割合が90%以上である場合にも、アンチブロッキング剤の特段の調整なしに所望するブロッキング性能等が得られる。高分子型帯電防止剤全体に対する高分子型帯電防止剤の40℃以上の融解熱量の割合は、界面活性剤の40℃以上の融解熱量の割合と同様に、全ピーク面積M(
図1参照)に対する40℃以上の領域のピーク面積M1(
図2参照)を求めることにより算出される。高分子型帯電防止剤の40℃以上の融解熱量の割合が小さい、すなわち40℃未満の融解熱量の割合が大きいと、高温環境下でのフィルム保管時に、フィルム表面で高分子型帯電防止剤が融解し易くなり、フィルム表面がべたつくことによって、所望する耐ブロッキング性が得られなくなるきらいがある。そこで、好ましい40℃以上の高分子型帯電防止剤の融解熱量の割合は90%以上である。
【0046】
上記融解熱量の条件を満たす高分子型帯電防止剤は、当該二軸延伸ポリエチレンフィルムに0.25重量%以上かつ1.25重量%以下、好ましくは0.5重量%以上かつ1.0重量%以下、さらに好ましくは0.75重量%以上かつ1.0重量%以下含有される。高分子型帯電防止剤が、少なすぎると耐ブロッキング性能を十分に補うことが困難となり、多すぎるとフィルムの透視感の悪化やコスト増大のおそれがある。
【0047】
二軸延伸ポリエチレンフィルムは、単層フィルムや積層フィルムとすることができる。単層の二軸延伸ポリエチレンフィルムでは、主原料のポリエチレン樹脂にアンチブロッキング剤と、界面活性剤とが適宜添加されて製膜される。
【0048】
一方、積層フィルムである二軸延伸ポリエチレンフィルムは、上記融解熱量の条件を満たす界面活性剤を含む基材層と、その両側に配されアンチブロッキング剤を含有する表層A及び表層Bを備える。この積層フィルムでは、基材層と表層との間に必要に応じて中間層等の他の層を積層させてもよい。本発明の二軸延伸ポリエチレンフィルムでは、3ないし5層の積層フィルムとされることが好ましい。
【0049】
積層フィルムの場合、界面活性剤は、表層A及び表層B以外の層に添加することが好ましい。例えば、界面活性剤は、基材層のみに添加したり、基材層と中間層に添加したりすることが考えられる。表層A及び表層B以外の層に添加された界面活性剤では、表層を通過してフィルム表面に移行することによって、所望の耐ブロッキング性及び滑り性をフィルム表面に付与することができる。フィルム表面に所望の耐ブロッキング性及び滑り性を付与するにあたり、界面活性剤の添加量が適宜調整される。本発明の積層フィルムにおいては、基材層に界面活性剤が0.06重量%以上かつ4重量%以下含有されることが好ましい。なお、界面活性剤では、一般に、主成分である脂肪酸の炭素数が小さいとフィルム表面へ移行し易い傾向があり、脂肪酸の炭素数が大きいとフィルム表面へ移行し難くなる傾向がある。
【0050】
一方、界面活性剤は表層に添加される場合も考えられる。界面活性剤が積層フィルムの表層に添加される場合は、フィルムの製造工程において、例えば、ガイドロール等の金属ロールに界面活性剤が付着ないし堆積しやすくなる。金属ロールに堆積した界面活性剤は、該金属ロールを通過する後続のフィルムに転写されて、外観を損なう等の品質低下に繋がるおそれがある。そのため、金属ロールに付着ないし堆積した界面活性剤を除去する作業が必要となり、作業者の負担が増加し、フィルムの製造効率が悪化する。
【0051】
上記のように金属ロールに界面活性剤が付着ないし堆積することは、フィルムに添加された界面活性剤が製造工程において減少してしまうこととなり、製造された二軸延伸ポリエチレンフィルムが所望の耐ブロッキング性及び滑り性を備えていない可能性がある。このような問題が考えられることから、界面活性剤は表層以外の層に添加することが好ましい。界面活性剤を表層に添加する場合には、上記した問題が生じないように、かつ、所望の耐ブロッキング性及び滑り性が発揮される限度において界面活性剤を少量添加することが好ましく、界面活性剤を表層に加えて基材層や中間層にも添加することが望ましい。界面活性剤の添加方法は特に制限されず、例えば、高濃度のマスターバッチを、フィルムの樹脂原料に混合したり、ドライブレンドで混合する等、公知の方法で添加することができる。
【0052】
また、積層フィルムである二軸延伸ポリエチレンフィルムに高分子型帯電防止剤を添加する場合、この二軸延伸ポリエチレンフィルムは、基材層と、その両側に配されアンチブロッキング剤を含有する表層A及び表層Bを備え、表層A及び表層Bのうちの少なくとも一方に高分子型帯電防止剤を含有する。ここでも、二軸延伸ポリエチレンフィルムは3ないし5層の積層フィルムとされることが好ましい。
【0053】
高分子型帯電防止剤は、上述した界面活性剤とは異なり基材層に添加してもフィルム表面に移行しないことから、表層A,Bの少なくとも一方に添加される。二軸延伸ポリエチレンフィルムにおいては、表層に添加される少量の高分子型帯電防止剤で耐ブロッキング性や滑り性をフィルム表面に付与することが可能であり、高分子型帯電防止剤の添加量が増加することにより帯電防止性能が発現される。また、高分子型帯電防止剤を過剰に添加しても十分なフィルム性能の向上を見込むことができず、透視感が低下するおそれがある。表層中の高分子型帯電防止剤の好ましい添加量としては、例えば5重量%以上かつ25重量%以下程度であり、好ましくは10重量%以上かつ20重量%以下程度であり、さらに好ましくは15重量%以上かつ20重量%以下程度である。高分子型帯電防止剤の添加方法は特に制限されず、例えば、高濃度のマスターバッチを、フィルムの樹脂原料に混合したり、ドライブレンドで混合する等、公知の方法で添加することができる。
【0054】
本発明の二軸延伸ポリエチレンフィルムでは、延伸フィルムの動摩擦係数が0.9以下であることが好ましい。動摩擦係数は、フィルムの滑り性の指標として使用され、JIS K 7125(1999)に準拠した方法により測定することができる。動摩擦係数が大きすぎると、フィルムの滑り性が不十分となるおそれがある。この動摩擦係数が0.9以下であることで、フィルムの良好な滑り性が得られる。
【0055】
本発明の二軸延伸ポリエチレンフィルムでは、帯電防止性能として、フィルムの表面固有抵抗率が1×1014Ω/□以下であることが好ましい。表面固有抵抗率は、JIS K 6911(2006)に準拠した表面抵抗率試験により測定される。フィルムの表面固有抵抗率が高すぎると、帯電防止性能が不足してフィルムの製造工程において静電気トラブルが発生しやすくなる。表面固有抵抗率が1×1014Ω/□以下であることにより、製造工程での静電気トラブルを効果的に抑制することができる。帯電防止性能については、表層A又は表層Bの一方の表面固有抵抗率が1×1014Ω/□以下であれば良好であり、表層A及び表層Bの両方の表面固有抵抗率が1×1014Ω/□以下であればさらに良好である。なお、本発明の二軸延伸ポリエチレンフィルムでは、樹脂原料に添加される界面活性剤が帯電防止剤としても機能する。そのため、上記のように界面活性剤が添加された二軸延伸ポリエチレンフィルムでは、帯電防止性能の向上を目的として、別途帯電防止剤を添加する必要がない。
【0056】
本発明の二軸延伸ポリエチレンフィルムでは、ラミネートフィルムの基材フィルムとしての利用範囲を広げるために、少なくとも一方の表面が表面処理される。表面処理された表面は、36mN/m以上のぬれ張力を備えることが好ましい。表面処理としては、例えば、大気圧プラズマ処理、火炎処理、コロナ放電処理等が挙げられる。また、ぬれ張力は、JIS K 6768(1999)に準拠したぬれ張力試験方法により測定される。ぬれ張力が36mN/m未満の場合、印刷不良やラミネート不良の原因となるため、好ましくない。二軸延伸ポリエチレンフィルムが積層フィルムの場合、フィルムの表面がコロナ放電処理等で表面処理されることにより、表層A及び表層B以外の層に添加された界面活性剤のフィルム表面への移行を促進させることができる。これにより、界面活性剤による耐ブロッキング性、滑り性、帯電防止性能等の機能をより効率よく発現させることができる。
【0057】
本発明の二軸延伸ポリエチレンフィルムは、Tダイ法やインフレーション法等の公知のフィルムの成形方法により得られる。特には、Tダイ法により賦形されたシートが延伸されて成形されることが好ましい。Tダイ法によるフィルムの成形では、ラミネートフィルムの基材フィルムとして求められる高い厚薄精度が得られる点で優位である。二軸延伸ポリエチレンフィルムは、フィルムの縦(MD)方向及び横(TD)方向の二軸方向に延伸された二軸延伸フィルムとされる。二軸延伸は逐次二軸延伸又は同時二軸延伸のどちらも良好に用いられる。
【0058】
例として、縦(MD)延伸及び横(TD)延伸の逐次二軸延伸フィルムの製造方法を説明する。ポリエチレン系樹脂を押出機で溶融、混練して、Tダイからシート状に押出し、温度10~70℃のチルロールで冷却させる。70~130℃の延伸ロールでシートをロール間延伸で縦(MD)方向に3~8倍延伸させる。次いで、横(TD)方向に100~160℃の温度で5~15倍延伸させ、少なくとも一方の表面にコロナ放電処理を施し、ワインダーで二軸延伸ポリエチレンフィルムを巻取る。
【0059】
縦(MD)延伸倍率の下限は、おおむね3倍である。3倍未満であると膜厚ムラが生ずるおそれがある。縦(MD)延伸倍率の上限は8倍であり、好ましくは7倍である。8倍を超えると横(TD)延伸がし難くなるおそれがある。縦(MD)延伸温度の下限は70℃、好ましくは80℃である。70℃未満であると均一に延伸されず、膜厚ムラが生ずるおそれがある。縦(MD)延伸温度の上限は130℃である。130℃を超えるとシートとロールの密着性が向上し、延伸できなくなるおそれがある。横(TD)延伸倍率の下限は5倍であり、好ましくは6倍である。5倍未満であると膜厚ムラが生ずるおそれがある。横(TD)延伸倍率の上限は15倍であり、好ましくは14倍、さらに好ましくは13倍である。15倍を超えると延伸時に破断が生ずるおそれがある。横(TD)延伸温度の下限は100℃である。100℃未満であると膜厚ムラが生ずるおそれがある。横(TD)延伸温度の上限は160℃である。160℃を超えると延伸時にフィルムの破断が生ずるおそれがある。
【0060】
本発明の二軸延伸ポリエチレンフィルムでは、厚さについては特に制限されず、需要や用途等に応じて適宜決定され、例えば5~100μm、好ましくは10~70μmとされるのがよい。このうち、二軸延伸ポリエチレンフィルムの表層A及び表層Bの厚みは0.3~5μm、好ましくは0.4~4μm、さらに好ましくは0.5~2μmとされるのがよい。表層が薄すぎる場合には、加工時にフィルムがロールを通過する際に、アンチブロッキング剤の脱落のきらいがあり、厚すぎる場合にはアンチブロッキング剤の添加量が多くなってフィルムの透視感に劣るきらいがある。
【0061】
本発明では、上記二軸延伸ポリエチレンフィルムを基材フィルムとして使用し、印刷加工、ガスバリア層、シーラントフィルム等を適宜積層させたラミネートフィルムを提供することができる。印刷加工は、二軸延伸ポリエチレンフィルムのフィルム表面に施され、公知のスクリーン印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷やグラビア印刷等の方法が用いられる。また、本発明の二軸延伸ポリエチレンフィルムに印刷が行われる場合には、印刷に先立ちフィルム表面をコロナ放電処理等で上述した表面処理がなされてインキのなじみや密着性の向上が図られる。
【0062】
ガスバリア層は、水蒸気や酸素等へのバリア性を付与する目的で、表層上に直接又はアンカーコート層を介して配される。本発明の二軸延伸ポリエチレンフィルムにガスバリア層を配する場合には、フィルム表面をコロナ放電処理等で予め表面処理がなされることによりアンカーコート層やガスバリア層に対するぬれ性、密着性の向上が図られる。
【0063】
アンカーコート層は特に制限されず、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂等が挙げられる。ガスバリア層も特に制限されず、金属薄膜層や無機酸化物層等が挙げられる。金属薄膜層はアルミニウム、金、銀、銅、クロム等の公知の金属からなる薄膜層であり、これら金属の酸化物、硫化物、窒化物の薄膜層とされても良い。また、金属薄膜層は1層や、異種又は同種の2種以上の複数層とされても良い。無機酸化物層は、酸化アルミニウム、酸化珪素、フッ化マグネシウム、酸化マグネシウム等の公知の無機酸化物からなり、1種又は2種以上の無機酸化物が用いられた薄膜層とされる。
【0064】
シーラントフィルムは、ポリエチレン樹脂からなるヒートシール性を有するフィルムである。シーラントフィルムに使用されるポリエチレン樹脂は、例えば直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)等から単独又は複数を適宜組み合わせて選択される。基材フィルムとなる二軸延伸ポリエチレンフィルムと同じくポリエチレン樹脂からなるシーラント層とすることにより、単一素材(モノマテリアル)を達成してリサイクルを容易としつつ、耐ブロッキング性を向上させたラミネートフィルムを得ることができる。さらに、該ラミネートフィルムを用いた包装体とすることもできる。これにより既存のラミネートフィルムや包装体につき、リサイクルが容易に可能なフィルムや包装体としての代替品として有望である。
【実施例0065】
[二軸延伸ポリエチレンフィルムの作製]
後述の各材料を配合して溶融、混練して、Tダイ法により3層(表層A、基材層及び表層B)に押出し、縦(MD)方向に5倍に延伸した後、横(TD)方向に8倍に延伸して製膜した。その後、試作例6、試作例9~13、試作例20及び21、試作例23及び24は片側の表層(表層A)にコロナ放電処理により表面処理を施し、他の試作例は両表層(表層A及び表層B)にコロナ放電処理により表面処理を施して、各試作例の二軸延伸ポリエチレンフィルムを得た。なお、各試作例において、樹脂の配合割合は、基材層又は表層の各層ごとに100重量%となるように配合した。試作例1~24の各層(表層A、基材層及び表層B)に使用された材料については、後述の表1~3に示す。なお、各試作例のフィルムでは、厚さを20μm、表層A,Bの厚さを1μm、基材層の厚さを18μmとした。
【0066】
[使用材料]
各層の材料として、以下の樹脂、アンチブロッキング剤、界面活性剤及び高分子型帯電防止剤を使用した。各樹脂材料において、メルトフローレート(MFR)は、JIS K 7210(2014)に準拠し、試験温度190℃で測定した値である。
【0067】
[樹脂材料]
・PE1:直鎖状低密度ポリエチレン(ダウ・ケミカル製;TF80)、密度0.926g/cm3、MFR(190℃/2.16kg):1.7g/10分
・PE2:高密度ポリエチレン(日本ポリエチレン株式会社製;HY340)、密度0.952g/cm3、MFR(190℃/2.16kg):1.4g/10分
【0068】
[アンチブロッキング剤(AB剤)]
・AB1:富士シリシア化学株式会社製;SYLYSIA430、平均粒子径4.1μm
・AB2:富士シリシア化学株式会社製;SYLYSIA530、平均粒子径2.7μm
・AB3:富士シリシア化学株式会社製;SYLYSIA450、平均粒子径8.0μm
・AB4:富士シリシア化学株式会社製;SYLYSIA470、平均粒子径14.1μm
【0069】
[界面活性剤]
・AS1:グリセリンモノステアレート、脂肪酸の炭素数18
・AS2:ステアリルジエタノールアミン、脂肪酸の炭素数18
・AS3:ミリスチルジエタノールアミン、脂肪酸の炭素数14
・AS4:オレイルジエタノールアミン、脂肪酸の炭素数18
・AS5:オレイルジエタノールアミンモノラウレート、脂肪酸の炭素数18
・AS6:オレイルジエタノールアミン、脂肪酸の炭素数18
・AS7:リン酸エステル
【0070】
[高分子型帯電防止剤]
・AA1:高分子型帯電防止剤(三洋化成工業株式会社製;ペレスタットLM230)、融点115℃、MFR:15.0g/10min(190℃、荷重21.18N)
【0071】
[試作例1]
試作例1は、表層AにPE1を99.7重量%、AB1を0.3重量%使用し、基材層にPE1を99.0重量%、AS1を1重量%使用し、表層BにPE1を99.7重量%、AB1を0.3重量%使用した二軸延伸ポリエチレンフィルムである。
【0072】
[試作例2]
試作例2は、表層AにPE1を99.7重量%、AB1を0.3重量%使用し、基材層にPE1を99.0重量%、AS2を1重量%使用し、表層BにPE1を99.7重量%、AB1を0.3重量%使用した二軸延伸ポリエチレンフィルムである。
【0073】
[試作例3]
試作例3は、表層AにPE1を99.7重量%、AB1を0.3重量%使用し、基材層にPE1を99.0重量%、AS1を0.30重量%、AS5を0.50重量%、AS6を0.20重量%使用し、表層BにPE1を99.7重量%、AB1を0.3重量%使用した二軸延伸ポリエチレンフィルムである。
【0074】
[試作例4]
試作例4は、表層AにPE1を99.7重量%、AB1を0.3重量%使用し、基材層にPE1を99.0重量%、AS1を0.667重量%、AS2を0.333重量%使用し、表層BにPE1を99.7重量%、AB1を0.3重量%使用した二軸延伸ポリエチレンフィルムである。
【0075】
[試作例5]
試作例5は、表層AにPE1を99.7重量%、AB1を0.3重量%使用し、基材層にPE1を99.9重量%、AS2を0.1重量%使用し、表層BにPE1を99.7重量%、AB1を0.3重量%使用した二軸延伸ポリエチレンフィルムである。
【0076】
[試作例6]
試作例6は、表層AにPE1を99.7重量%、AB1を0.3重量%使用し、基材層にPE1を99.7重量%、AS1を0.2重量%、AS2を0.1重量%使用し、表層BにPE1を99.7重量%、AB1を0.3重量%使用した二軸延伸ポリエチレンフィルムである。
【0077】
[試作例7]
試作例7は、表層AにPE1を99.7重量%、AB1を0.3重量%使用し、基材層にPE1を84.25重量%、PE2を15重量%、AS1を0.75重量%使用し、表層BにPE1を99.7重量%、AB1を0.3重量%使用した二軸延伸ポリエチレンフィルムである。
【0078】
[試作例8]
試作例8は、表層AにPE1を99.7重量%、AB1を0.3重量%使用し、基材層にPE1を96.0重量%、AS1を2.666重量%、AS2を1.334重量%使用し、表層BにPE1を99.7重量%、AB1を0.3重量%使用した二軸延伸ポリエチレンフィルムである。
【0079】
[試作例9]
試作例9は、表層AにPE1を99.7重量%、AB2を0.3重量%使用し、基材層にPE1を99.7重量%、AS1を0.2重量%、AS2を0.1重量%使用し、表層BにPE1を99.7重量%、AB2を0.3重量%使用した二軸延伸ポリエチレンフィルムである。
【0080】
[試作例10]
試作例10は、表層AにPE1を99.7重量%、AB3を0.3重量%使用し、基材層にPE1を99.7重量%、AS1を0.2重量%、AS2を0.1重量%使用し、表層BにPE1を99.7重量%、AB3を0.3重量%使用した二軸延伸ポリエチレンフィルムである。
【0081】
[試作例11]
試作例11は、表層AにPE1を99.7重量%、AB4を0.3重量%使用し、基材層にPE1を99.7重量%、AS1を0.2重量%、AS2を0.1重量%使用し、表層BにPE1を99.7重量%、AB4を0.3重量%使用した二軸延伸ポリエチレンフィルムである。
【0082】
[試作例12]
試作例12は、表層AにPE1を99.8重量%、AB1を0.2重量%使用し、基材層にPE1を99.7重量%、AS1を0.2重量%、AS2を0.1重量%使用し、表層BにPE1を99.7重量%、AB1を0.3重量%使用した二軸延伸ポリエチレンフィルムである。
【0083】
[試作例13]
試作例13は、表層AにPE1を99.8重量%、AB1を0.2重量%使用し、基材層にPE1を99.7重量%、AS1を0.2重量%、AS2を0.1重量%使用し、表層BにPE1を99.6重量%、AB1を0.4重量%使用した二軸延伸ポリエチレンフィルムである。
【0084】
[試作例14]
試作例14は、表層AにPE1を99.7重量%、AB1を0.3重量%使用し、基材層はPE1を100重量%とし、表層BにPE1を99.7重量%、AB1を0.3重量%使用した二軸延伸ポリエチレンフィルムである。この試作例14は、基材層及びフィルム全体に界面活性剤を添加しない二軸延伸ポリエチレンフィルムである。
【0085】
[試作例15]
試作例15は、表層AにPE1を99.7重量%、AB1を0.3重量%使用し、基材層にPE1を99.0重量%、AS4を1重量%使用し、表層BにPE1を99.7重量%、AB1を0.3重量%使用した二軸延伸ポリエチレンフィルムである。
【0086】
[試作例16]
試作例16は、表層AにPE1を99.7重量%、AB1を0.3重量%使用し、基材層にPE1を99.0重量%、AS5を1重量%使用し、表層BにPE1を99.7重量%、AB1を0.3重量%使用した二軸延伸ポリエチレンフィルムである。
【0087】
[試作例17]
試作例17は、表層AにPE1を99.7重量%、AB1を0.3重量%使用し、基材層にPE1を95.0重量%、AS1を3.333重量%、AS2を1.667重量%使用し、表層BにPE1を99.7重量%、AB1を0.3重量%使用した二軸延伸ポリエチレンフィルムである。
【0088】
[試作例18]
試作例18は、表層AにPE1を99.7重量%、AB1を0.3重量%使用し、基材層にPE1を99.9重量%、AS7を0.1重量%使用し、表層BにPE1を99.7重量%、AB1を0.3重量%使用した二軸延伸ポリエチレンフィルムである。
【0089】
[試作例19]
試作例19は、表層AにPE1を99.7重量%、AB1を0.3重量%使用し、基材層にPE1を99.95重量%、AS1を0.033重量%、AS2を0.017重量%使用し、表層BにPE1を99.7重量%、AB1を0.3重量%使用した二軸延伸ポリエチレンフィルムである。
【0090】
[試作例20]
試作例20は、表層AにPE1を99.7重量%、AB1を0.3重量%使用し、基材層にPE1を99.95重量%、AS2を0.05重量%使用し、表層BにPE1を99.7重量%、AB1を0.3重量%使用した二軸延伸ポリエチレンフィルムである。
【0091】
[試作例21]
試作例21は、表層AにPE1を99.7重量%、AB1を0.3重量%使用し、基材層にPE1を99.90重量%、AS1を0.05重量%、AS3を0.05重量%使用し、表層BにPE1を99.7重量%、AB1を0.3重量%使用した二軸延伸ポリエチレンフィルムである。
【0092】
[試作例22]
試作例22は、表層AにPE1を99.7重量%、AB1を0.3重量%使用し、基材層にPE1を99.93重量%、AS2を0.07重量%使用し、表層BにPE1を99.7重量%、AB1を0.3重量%使用した二軸延伸ポリエチレンフィルムである。
【0093】
[試作例23]
試作例23は、表層AにPE1を89.7重量%、AB1を0.3重量%、AA1を10重量%使用し、基材層はPE1を100重量%とし、表層BにPE1を99.7重量%、AB1を0.3重量%使用した二軸延伸ポリエチレンフィルムである。この試作例23は、表層Aに高分子型帯電防止剤を添加した二軸延伸ポリエチレンフィルムである。
【0094】
[試作例24]
試作例24は、表層AにPE1を79.7重量%、AB1を0.3重量%、AA1を20重量%使用し、基材層はPE1を100重量%とし、表層BにPE1を99.7重量%、AB1を0.3重量%使用した二軸延伸ポリエチレンフィルムである。この試作例24も、表層Aに高分子型帯電防止剤を添加した二軸延伸ポリエチレンフィルムである。
【0095】
【0096】
【0097】
【0098】
試作例1~24について、界面活性剤濃度、界面活性剤の融解熱量、高分子型帯電防止剤濃度、高分子型帯電防止剤の融解熱量、動摩擦係数、ブロッキング強度、表面固有抵抗率を測定した。なお、表4~6に示す界面活性剤の40℃以上の融解熱量の面積割合は、
図1の全ピーク面積Mに対する
図2のピーク面積M1の割合を意味し、高分子型帯電防止剤の40℃以上の融解熱量の面積割合は、
図1と同様の全ピーク面積Mに対する
図2と同様のピーク面積M1の割合を意味する。
【0099】
[界面活性剤の濃度の算出]
試作例1~22の二軸延伸ポリエチレンフィルムの評価に関し、基材層に含有される界面活性剤濃度及び二軸延伸ポリエチレンフィルム全体に含有される界面活性剤濃度を算出した。基材層に含有される界面活性剤の濃度は、基材層に使用される界面活性剤を基材層に使用される樹脂及び界面活性剤で割ることにより算出した。また、二軸延伸ポリエチレンフィルム全体に含有される界面活性剤の濃度は、フィルム全体の厚みに占める基材層の厚みの割合を基材層に使用される界面活性剤に乗じて算出した。
【0100】
[界面活性剤の融解熱量測定]
試作例1~22の界面活性剤の融解熱量は、JIS K 7122(2012)に準拠し、示差走査熱量計「DSC214Polyma(NETZSCH-Geratebau GmbH社製)」を用いて、試料を降温速度10℃/分で-70℃まで降温する過程と、-70℃で10分間保持する過程と、昇温速度10℃/分で100℃まで昇温する過程からなる測定を行って算出した。融解熱量は、吸熱ピークを含む融解曲線とベースラインとで囲まれる全ピーク面積を求めることにより算出される。ここで、2種以上の界面活性剤の融解熱量測定に際しては、以下の方法で融解熱量測定サンプルを調整した。界面活性剤を各試作例の比率で2gとなるように混合しサンプル管瓶に入れて蓋をした。このサンプル管瓶を90℃のお湯で界面活性剤が溶解するまで温め、その後サンプル管瓶を水で冷却固化させた。冷却固化させた界面活性剤を融解熱量測定サンプルとした。
【0101】
[高分子型帯電防止剤の濃度の算出]
試作例23,24の二軸延伸ポリエチレンフィルムの評価に関し、表層に含有される高分子型帯電防止剤濃度及び二軸延伸ポリエチレンフィルム全体に含有される高分子型帯電防止剤濃度を算出した。表層に含有される高分子型帯電防止剤の濃度は、表層に使用される高分子型帯電防止剤を表層に使用される樹脂、アンチブロッキング剤(AB剤)及び高分子型帯電防止剤で割ることにより算出した。また、二軸延伸ポリエチレンフィルム全体に含有される高分子型帯電防止剤の濃度は、フィルム全体の厚みに占める表層の厚みの割合を表層に使用される高分子型帯電防止剤に乗じて算出した。
【0102】
[高分子型帯電防止剤の融解熱量測定]
試作例23,24の高分子型帯電防止剤の融解熱量は、昇温する過程において昇温速度10℃/分で150℃までとした以外は、上記の界面活性剤の融解熱量の測定と同様の方法で算出した。
【0103】
[動摩擦係数の測定]
試作例1~24の動摩擦係数は、JIS K 7125(1999)に準拠する試験方法を用い、「FRICTION TESTER TR-2(株式会社東洋精機製作所製)」を使用して、試験速度100mm/minの試験速度で測定を行った値である。動摩擦係数は0.9以下の場合を良好とした。
【0104】
[ブロッキング強度の測定]
試作例1~24のブロッキング強度(N/4cm2)の測定に際しては、各二軸延伸ポリエチレンフィルムの表層同士を重ね合わせ、夏場等の高温環境下でのフィルム保管時を想定して、試験片4cm2に荷重1kgを加えて40℃で24時間放置した。その後、引張試験機「オートグラフAGS-X 50N(株式会社島津製作所製)」を用いて剪断剥離強度を測定し、ブロッキング強度とした。このブロッキング強度は、荷重を加えた後のフィルムが引張試験機の引張速度50mm/minによって剪断する力をいう。ブロッキング強度は、6.9(N/4cm2)以下の場合を良好とした。
【0105】
[表面固有抵抗率の測定]
試作例1~24の表面固有抵抗率(Ω/□)は、JIS K 6911(2006)に準拠して測定した。表面固有抵抗率が大きいほど帯電防止性能に劣るフィルムであるということができる。表面固有抵抗率は、1×1014Ω/□以下の場合を良好とした。例えば、表4の試作例3の表面固有抵抗率である1E+11は、表面固有抵抗率が1×1011Ω/□であることを示し、試作例1の表面固有抵抗率である4E+12は、表面固有抵抗率が4×1012Ω/□であることを示す。なお、表面固有抵抗率が1×1014Ω/□を超えるフィルムについては、オーバーレンジとして表4~6中に「O.R.」と記した。
【0106】
【0107】
【0108】
【0109】
[結果と考察]
試作例14のフィルムについては、粒径の調整を行わないアンチブロッキング剤が添加されただけのフィルムであり、耐ブロッキング性や帯電防止性能について所望する性能を有していない。試作例1~13,15~22のフィルムは、試作例14のフィルムに対して、基材層に界面活性剤を添加してフィルム性能の良否を検討したものである。試作例23,24のフィルムは、試作例14のフィルムに対して、表層Aに高分子型帯電防止剤を添加してフィルムの良否を検討したものである。
【0110】
試作例1~8,22のフィルムについては、それぞれの基材層の界面活性剤の含有量を変更することにより、フィルム全体の界面活性剤の含有量を変更した。試作例1~8,22のフィルムでは、フィルムのブロッキング強度が6.9(N/4cm2)以下、動摩擦係数が0.9以下、界面活性剤の40℃以上の融解熱量の面積割合が50%~100%、フィルム全体の界面活性剤濃度が0.06重量%~3.60重量%となり、いずれの試作例1~8,22も耐ブロッキング性、滑り性が良好であった。
【0111】
さらに、試作例9~11のフィルムについては、それぞれの表層A及びBに種類(平均粒径)が異なるアンチブロッキング剤を添加し、試作例12,13のフィルムについては、表層A又はBのアンチブロッキング剤の添加量を試作例9~11とは異なる添加量に変更した試作例である。試作例9~13のフィルムでは、フィルムのブロッキング強度が6.9(N/4cm2)以下、動摩擦係数が0.9以下、界面活性剤の40℃以上の融解熱量の面積割合が90%となり、いずれの試作例9~13も耐ブロッキング性、滑り性が良好であった。
【0112】
試作例15のフィルムについては、試作例1と比較すると、基材層の界面活性剤をAS1からAS4に変更したものである。試作例15では、界面活性剤の40℃以上の融解熱量の面積割合が0%であることにより、フィルムのブロッキング強度が6.9(N/4cm2)を超過して、耐ブロッキング性が悪化した。
【0113】
試作例16のフィルムについては、試作例1と比較すると、基材層の界面活性剤をAS1からAS5に変更したものである。試作例16では、試作例15と同様に界面活性剤の40℃以上の融解熱量の面積割合が0%であることにより、フィルムのブロッキング強度が6.9(N/4cm2)を超過して、耐ブロッキング性が悪化した。
【0114】
試作例17のフィルムについては、試作例8と比較すると、基材層の界面活性剤の種類(AS1及びAS2)が同じで含有量が相違し、フィルム全体の界面活性剤の含有量が相違するものである。試作例17では、基材層の界面活性剤濃度が5.00重量%、フィルム全体の界面活性剤濃度が4.50重量%とされたことにより、動摩擦係数が0.9を超過した。
【0115】
試作例18のフィルムについては、試作例5と比較すると、基材層の界面活性剤の種類を試作例5のAS2からAS7に変更したものである。試作例18では、界面活性剤の40℃以上の融解熱量の面積割合が2%とされたことにより、フィルムのブロッキング強度が6.9(N/4cm2)を超過して、耐ブロッキング性が悪化した。
【0116】
試作例19については、試作例8と比較すると、基材層の界面活性剤の種類(AS1及びAS2)が同じで含有量が相違し、フィルム全体の界面活性剤の含有量が相違するものである。試作例19では、基材層の界面活性剤濃度を0.05重量%、フィルム全体の界面活性剤濃度を0.05重量%とすることにより、フィルムのブロッキング強度が6.9(N/4cm2)を超過して、耐ブロッキング性が悪化した。
【0117】
試作例20については、試作例5と比較すると、基材層の界面活性剤の種類(AS2)が同じで含有量が相違し、フィルム全体の界面活性剤の含有量が相違するものである。試作例20では、基材層の界面活性剤濃度を0.05重量%、フィルム全体の界面活性剤濃度を0.05重量%とすることにより、表層Aのブロッキング強度が6.9(N/4cm2)を超過して、耐ブロッキング性が悪化した。
【0118】
試作例21のフィルムについては、試作例5と比較すると、基材層の界面活性剤の種類を試作例5のAS2からAS1及びAS3に変更したものである。試作例21では、界面活性剤の40℃以上の融解熱量の面積割合が38%とされたことにより、表層Aのブロッキング強度が6.9(N/4cm2)を超過して、耐ブロッキング性が悪化した。
【0119】
上述したように基材層に界面活性剤を添加してフィルム性能の良否を検討した結果、試作例3については、界面活性剤の40℃以上の融解熱量の面積割合を50%、フィルム全体の界面活性剤濃度を0.90重量%とすることにより、フィルムの耐ブロッキング性や滑り性が良好であった。これに対し、試作例21については、界面活性剤の40℃以上の融解熱量の面積割合を38%とすることにより、フィルムの耐ブロッキング性が劣ることが確認された。高温環境下(40℃、24時間)ではフィルム表面に移行した界面活性剤が融解し易くなって耐ブロッキング性の低下を招くと考えられることから、試作例21は、界面活性剤の40℃以上の融解熱量の割合が小さいために、所望する耐ブロッキング性が得られなかったと考えられる。これらのことから、界面活性剤は、界面活性剤全体の融解熱量に対する40℃以上の融解熱量の割合が40%以上であることが好ましいと考えられる。
【0120】
さらに基材層に界面活性剤を添加してフィルム性能の良否を検討した結果、試作例5については、フィルム全体の界面活性剤濃度を0.09重量%とすることにより、フィルムの耐ブロッキング性や滑り性が良好であった。試作例8についても、フィルム全体の界面活性剤濃度を3.60重量%とすることにより、フィルムの耐ブロッキング性や滑り性が良好であった。これらに対し、試作例17については、フィルム全体の界面活性剤濃度を4.50重量%とすることにより、フィルムの滑り性が劣るものであった。試作例19及び20についても、フィルム全体の界面活性剤濃度を0.05重量%とすることにより、耐ブロッキング性が劣ることが確認された。これらのことから、界面活性剤がフィルム全体に0.05重量%超過かつ4重量%以下含まれることが好ましいと考えられる。
【0121】
フィルムの帯電防止性能について、試作例1~13,15~21,22では、概ねコロナ放電処理が施された表層の表面固有抵抗率が良好であり、優れた帯電防止性能が付与されたことが示された。従って、フィルムに帯電防止性能を付与するに際しては、表層にコロナ放電処理等の表面処理を施すことが好ましい。なお、試作例21では、表層Bにコロナ放電処理が施されていないが、優れた帯電防止性能が得られた。これは、試作例21の界面活性剤の主成分である脂肪酸の炭素数14が試作例1~20,22の界面活性剤の主成分である脂肪酸の炭素数18よりも小さいことから、基材層から表層へ界面活性剤が移行しやすくなったためであると考えられる。
【0122】
また、試作例21については、基材層及びフィルム全体の両方で界面活性剤濃度が同じである試作例5と比較すると、40℃以上の融解熱量の面積割合が試作例5よりも小さいことがわかる。このことから、試作例21のように界面活性剤の主成分である脂肪酸の炭素数が小さいと40℃以上の融解熱量の面積割合が小さくなり、界面活性剤の炭素数と40℃以上の融解熱量の面積割合が比例関係にあると思われる。
【0123】
高分子型帯電防止剤を添加する試作例23,24のフィルムについては、それぞれの表層Aの高分子型帯電防止剤AA1の含有量を変更することにより、フィルム全体の高分子型帯電防止剤の含有量を変更したものである。試作例23,24のフィルムでは、フィルムのブロッキング強度が6.9(N/4cm2)以下、動摩擦係数が0.9以下、高分子型帯電防止剤の40℃以上の融解熱量の面積割合が100%、フィルム全体の高分子型帯電防止剤濃度が0.50重量%~1.00重量%となり、いずれの試作例23,24も耐ブロッキング性、滑り性が良好であった。このことから、表層Aには40℃以上の融解熱量の面積割合が高い(90%以上)高分子型帯電防止剤を0.25重量%~1.25重量%程度添加することが好ましいと考えられる。
【0124】
また、二軸延伸ポリエチレンフィルムにおいては、表層に少量(5重量%~10重量%程度)の高分子型帯電防止剤を添加することで所望する耐ブロッキング性や滑り性を付与することができると考えられる。さらに、高分子型帯電防止剤の添加量を増加させる(15重量%程度以上)ことで所望する帯電防止性能が発現させることができると考えられる。
【0125】
以上から、本発明のアンチブロッキング剤を含む二軸延伸ポリエチレンフィルムにおいて、界面活性剤は、界面活性剤全体の融解熱量に対する40℃以上の融解熱量の割合が40%以上であり、二軸延伸ポリエチレンフィルム全体に0.05重量%超過かつ4重量%以下含まれると、アンチブロッキング剤を特段の調整を行うことなく適宜使用しながら二軸延伸ポリエチレンフィルム全体に添加する界面活性剤によりフィルム表面の耐ブロッキング性、滑り性が良好となることが示された。上述の試作例17をみると、界面活性剤の40℃以上の融解熱量の割合が40%以上であっても、二軸延伸ポリエチレンフィルム全体に含まれる界面活性剤が4重量%を超過すると、滑り性が劣ることになる。また、上述の試作例18をみると、二軸延伸ポリエチレンフィルム全体に界面活性剤が0.05重量%超過かつ4重量%以下含まれていても、界面活性剤の40℃以上の融解熱量の割合が40%以下であると、耐ブロッキング性が劣ることになる。これらのことから、フィルム表面の耐ブロッキング性、滑り性を良好とするためには、二軸延伸ポリエチレンフィルムに添加する界面活性剤全体の融解熱量に対する界面活性剤の40℃以上の融解熱量の割合及び二軸延伸ポリエチレンフィルム全体の界面活性剤の含有量(界面活性剤濃度)の両方を指標とすることが有意であることが示された。
【0126】
さらに、本発明の二軸延伸ポリエチレンフィルムにおいて、基材層が界面活性剤を0.06重量%以上かつ4重量%以下含むとすると、フィルム表面の耐ブロッキング性、滑り性が良好となることが示された。上述の試作例17をみると、界面活性剤の40℃以上の融解熱量の割合が40%以上であっても、基材層に含まれる界面活性剤が4重量%を超過すると、滑り性が劣ることになる。このことから、フィルム表面の耐ブロッキング性、滑り性を良好とするためには、基材層の界面活性剤の含有量(界面活性剤濃度)を指標とすることも有意である。
【0127】
また、本発明のアンチブロッキング剤を含む二軸延伸ポリエチレンフィルムにおいて、高分子型帯電防止剤は、高分子型帯電防止剤全体の融解熱量に対する40℃以上の融解熱量の割合が高く(90%以上)、二軸延伸ポリエチレンフィルム全体に0.25重量%~1.25重量%程度含まれると、アンチブロッキング剤を特段の調整を行うことなく適宜使用しながら二軸延伸ポリエチレンフィルム全体に添加する高分子型帯電防止剤によりフィルム表面の耐ブロッキング性、滑り性が良好になると考えられる。
【0128】
さらに、本発明の二軸延伸ポリエチレンフィルムにおいて、少なくとも一方の表層に少量(5重量%~10重量%程度)の高分子型帯電防止剤を添加することで所望する耐ブロッキング性や滑り性を付与することができると考えられる。前記表層に多量の高分子型帯電防止剤を添加しても耐ブロッキング性や滑り性が大幅に向上するとは考え難いため、耐ブロッキング性や滑り性を良好とするためには、前記表層に高分子型帯電防止剤を5重量%~25重量%程度添加することが好ましいと考えられる。
以上のとおり、本発明の二軸延伸ポリエチレンフィルムは、アンチブロッキング剤を特段の調整を行うことなく適宜使用しながら二軸延伸ポリエチレンフィルム全体に添加する界面活性剤或いは高分子型帯電防止剤によりフィルム表面の耐ブロッキング性、滑り性が優れたものとなり、加工適性が良好なフィルムとすることができる。加えて、本発明の二軸延伸ポリエチレンフィルムにポリエチレン樹脂を主体としたシーラントフィルムが積層されたラミネートフィルムとすることにより、単一素材(モノマテリアル)を達成してリサイクルを容易としつつ、耐ブロッキング性を向上させたラミネートフィルムとすることができる。さらに、ラミネートフィルムを用いた包装体とすることもできる。そのため、リサイクルが容易な包装体として有望である。