(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173725
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】フェアウェイウッドゴルフクラブ
(51)【国際特許分類】
A63B 53/04 20150101AFI20241205BHJP
A63B 102/32 20150101ALN20241205BHJP
【FI】
A63B53/04 A
A63B102:32
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024081642
(22)【出願日】2024-05-20
(31)【優先権主張番号】18/327,771
(32)【優先日】2023-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】390023593
【氏名又は名称】アクシュネット カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ACUSHNET COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100086531
【弁理士】
【氏名又は名称】澤田 俊夫
(74)【代理人】
【識別番号】100093241
【弁理士】
【氏名又は名称】宮田 正昭
(74)【代理人】
【識別番号】100101801
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 英治
(72)【発明者】
【氏名】トーマス オリン ベネット
(72)【発明者】
【氏名】ミッチェル イイ. バック
(72)【発明者】
【氏名】グラント エム. マーテンス
【テーマコード(参考)】
2C002
【Fターム(参考)】
2C002AA02
2C002CH01
2C002CH02
2C002CH03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】フェアウェイウッド型ゴルフクラブヘッドの従来の外形寸法を変更することなく、スチール構造を有し、低CGを実現したフェアウェイウッド型ゴルフクラブヘッドが求められている。
【解決手段】ゴルフクラブヘッド600は、従来のゴルフクラブヘッドの外形寸法を維持しながら、重心(CG)位置を改善することができる鋼の合金で形成される。より具体的には、この発明のゴルフクラブヘッドは、クラウン606、打撃面620、およびホーゼルによってもたらされる質量の量を減らし、この質量をゴルフクラブヘッドのソール内および/またはソール付近に戦略的に再配分することにより、従来の外形寸法を維持しながら、比較的低いCGを実現する。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴルフクラブヘッドにおいて、
フェース中心を定義する打撃フェース、クラウン、上記クラウンの反対側のソール、ヒール、上記ヒールの反対側のトウ、および上記ヒールに隣接し、上記ゴルフクラブヘッドをシャフトに結合するように構成されたホーゼルとを有し、
X軸は、上記打撃フェースの上記フェース中心に接する水平軸として定義され、正の方向は上記ゴルフクラブヘッドのヒールに向かっており、Y軸は、上記X軸に直交し、正の方向は上記ゴルフクラブヘッドのクラウンに向かっており、Z軸は、上記X軸および上記Y軸の双方に直交し、正の方向は上記ゴルフクラブヘッドの前面に向かっており、上記X軸、上記Y軸、および上記Z軸の原点は、上記ゴルフクラブヘッドの重心(CG)を中心としており、
上記クラウンは、約0.3mmから約0.6mmの間の最小クラウン厚さを具備し、
上記打撃フェースは、約1.70から約2.18の間の最大フェース厚さ対ソール戻り厚さ比を具備し、上記最大フェース厚さ対ソールリターン厚さ比は、
最大フェース厚さ対ソールリターン厚さ比=
最大フェース厚さ(Tf1)/ソールリターン厚さ(TR)
と定義されることを特徴とするゴルフクラブヘッド。
【請求項2】
上記最大フェース厚さ対ソールリターン厚さ比が約1.78~約2.03である請求項1に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項3】
上記最大フェース厚さ対ソールリターン厚さ比が約1.88から約1.91である請求項1に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項4】
上記打撃フェースはソールリターンをさらに有し、上記ソールリターンのソールリターン距離は約9.0mm~約11.0mmである請求項1に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項5】
上記ソールリターン距離が約9.5mm~約10.5mmである請求項4に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項6】
上記ソールリターン距離が約10.0mmである請求項5に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項7】
上記打撃フェースは、約0.8mm~約1.0mmのソールリターン厚さをさらに具備する請求項6に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項8】
上記ソールリターン厚さが約0.85~約0.95mmである請求項7に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項9】
上記ソールリターン厚さが約0.9mmである請求項8に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項10】
上記ゴルフクラブヘッドは、ピーククラウン高さ測定値の25%に等しい地面からの垂直高さに設定されたX‐Z平面の下方において、上記ゴルフクラブヘッドの全質量の約45%より大きい請求項1に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項11】
上記ゴルフクラブヘッドは、約35mmより大きいピーククラウン高さを具備する請求項10に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項12】
上記ゴルフクラブヘッドは、約31.0mm以上の、地上からトップフェースまでの半径の測定値を具備する請求項11に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項13】
ゴルフクラブヘッドにおいて、
フェース中心を具備する打撃フェース、クラウン、上記クラウンの反対側のソール、ヒール、上記ヒールの反対側のトウ、および上記ヒールに隣接し、上記ゴルフクラブヘッドをシャフトに接合するように構成されたホーゼルを有し、
上記打撃フェースはソールリターンを具備し、
X軸は、上記ゴルフクラブヘッドのヒールに向かって正の方向で上記打撃フェースのフェース中心に接する水平軸として定義され、Y軸は、上記ゴルフクラブヘッドのクラウンに向かって正の方向で上記X軸に直交する垂直軸であり、Z軸は、上記ゴルフクラブヘッドの前面に向かって正の方向で上記X軸および上記Y軸の双方に直交し、上記X軸、上記Y軸、および上記Z軸の原点は、上記ゴルフクラブヘッドの重心(CG)を中心とし、
上記クラウンは、約0.3mmから約0.6mmの最小クラウン厚さを具備し、
上記ソールリターンは、約9.0mmから約11.0mmのソールリターン距離を具備し、
上記ゴルフクラブヘッドの、ピーククラウン高さ測定値の25%に等しい地面からの垂直高さに設定されたX‐Z平面の下における質量は、上記ゴルフクラブヘッドの全質量の約45%より大きいことを特徴とするゴルフクラブヘッド。
【請求項14】
上記ソールリターン距離が約9.5mm~約10.5mmである請求項13に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項15】
上記ソールリターン距離が約10.0mmである請求項14に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項16】
上記ゴルフクラブヘッドの上記打撃フェースは、最大フェース厚さ対ソールリターン距離比が約0.15~約0.19であり、上記最大フェース厚さ対ソールリターン距離比は、
最大フェース厚さ対ソール戻り距離比=
最大フェース厚(Tf1)/ソール戻り距離(DR)
と定義される請求項13に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項17】
上記最大フェース厚さ対ソールリターン距離比が約0.16~約0.18である請求項16に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項18】
上記最大フェース厚さ対ソールリターン距離比が約0.17である請求項17に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項19】
上記ゴルフクラブヘッドは、最大ソール厚さ対最小クラウン厚さ比が約4.0以上であり、上記最大ソール厚さ対最小クラウン厚さ比は、
最大ソール厚さ対最小クラウン厚さ比=
最大ソール厚さ(mm)/最小クラウン厚さ(mm)
と定義される請求項18に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項20】
ゴルフクラブヘッドにおいて、
フェース中心を定義する打撃フェース、クラウン、上記クラウンの反対側のソール、ヒール、上記ヒールの反対側のトウ、および上記ヒールに隣接し、上記ゴルフクラブヘッドをシャフトに接合するように構成されたホーゼルを有し、
上記打撃フェースはソールリターンを具備し、
X軸は、上記ゴルフクラブヘッドのヒールに向かって正の方向で上記打撃フェースの上記フェース中心に接する水平軸として定義され、Y軸は、上記ゴルフクラブヘッドのクラウンに向かって正の方向で上記X軸に直交する垂直軸であり、Z軸は、上記ゴルフクラブヘッドの前面に向かって正の方向で上記X軸および上記Y軸の双方に直交し、上記X軸、上記Y軸、および上記Z軸の原点は、上記ゴルフクラブヘッドの重心(CG)を中心とし、
上記クラウンは、約0.3mmから約0.6mmの最小クラウン厚さを具備し、
上記ソールリターンは、約9.0mmから約11.0mmのソールリターン距離を具備し、
上記ゴルフクラブヘッドの、ピーククラウン高さ測定値の25%に等しい地面からの垂直高さに設定されたX‐Z平面の下における質量は、上記ゴルフクラブヘッドの全質量の約45%より大きく、
上記ゴルフクラブヘッドは、約4.0以上の最大ソール厚さ対最小クラウン厚さ比を具備し、上記最大ソール厚さ対最小クラウン厚さ比は、
最大ソール厚さ対最小クラウン厚さ比=
最大ソール厚さ(mm)/最小クラウン厚さ(mm)
と定義されることを特徴とするゴルフクラブヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、全般的には、ゴルフクラブヘッドに関し、より具体的には、低い重心(CG)を具備するスチールボディのフェアウェイウッドに関する。
【背景技術】
【0002】
ゴルフのルールでは、ゴルファーは14本のゴルフクラブを携帯することが認められている。理想的な世界では、各ゴルフクラブはそれぞれ独自の目的を果たす。たとえば、ドライバーは主にティーからゴルフボールを打つために使用され、好ましくは大きな距離を実現する。フェアウェイウッドおよびハイブリッドクラブはボールを遠くに飛ばすために使用されるけれども、ドライバーほど遠くには飛ばさない。フェアウェイウッドおよびハイブリッドは、ゴルファーがドライバーよりもまっすぐに、またはより短くボールを打ちたい場合にティーから使用されることがよくある。フェアウェイウッドおよびハイブリッドは、ティーを使わずに地面から直接使用されることもよくある。アイアンタイプのゴルフクラブは、ボールをよりまっすぐに、より短く打ち、正確さを重視するために使用される。
【0003】
これらの種々のタイプのゴルフクラブは、それぞれ、特定の目的のために最大限の効果を発揮するように特別に設計されている。フェアウェイウッドおよびハイブリッドは、ティーショットだけでなく、ティーなしで地面から打ったときも飛距離と精度とが求められるため、パフォーマンスと美観の独自のバランスが必要である。
【0004】
フェアウェイウッドやハイブリッドの用途が幅広いことを考えると、特にティーを使わずに地面から直接打つショットの場合、ゴルフショットを空中に打ち上げやすくするために、重心を地面に対して低く配置することが望ましい。多くの場合、フェアウェイウッドやハイブリッドは主に鋼合金で作られている。従来、フェアウェイウッドやハイブリッドの重心は、望ましくないいくつかの設計上の特徴の1つを利用して下げられることがある。
【0005】
例えば、ゴルフクラブのクラウンのピークの高さを低くして、重心を下げることができる。ゴルフクラブのクラウンのピークの高さを低くすると重心を下げることができるけれども、それに伴う設計上のトレードオフは望ましくない。クラウンのピークの高さを低くすると、見た目に美しいゴルフクラブヘッドにならない。具体的には、ゴルフクラブヘッドは従来のゴルフクラブヘッドよりも体積が小さくなるか、少なくとも見た目が小さくなり、ゴルファーがゴルフショットを打つ準備をするときに自信が持てなくなる。
【0006】
同様に、ゴルフクラブの打撃面の高さ(例えば、地面からトップフェースまでの半径)も小さくなる可能性がある。上述のように、これはゴルフクラブの美観を損なうだけでなく、打撃面のサイズを物理的に小さくすることでゴルフクラブを打つのが難しくなる。
【0007】
さらに、ゴルフクラブヘッドには、CGの位置を操作するためにさまざまな材料が組み込まれている場合がある。たとえば、ゴルフクラブのクラウンは、鋼鉄よりも密度が低いチタンや複合材など、さまざまな材料のいずれかで形成されて良い。種々の材料を組み込むことは、ゴルフクラブヘッドのCGを操作するのに便利であるけれども、コストがかかり、異なる材料を接合することに関連する多くの潜在的な製造上の困難が伴う。
【0008】
したがって、フェアウェイウッド型ゴルフクラブヘッドの従来の外形寸法を変更することなく、スチール構造を有し、低CGを実現したフェアウェイウッド型ゴルフクラブヘッドが求められている。
【発明の概要】
【0009】
この発明の一側面は、フェース中心を規定する打撃面、クラウン、上記クラウンの反対側のソール、ヒール、上記ヒールの反対側のトウ、および上記ヒールに隣接し、上記ゴルフクラブヘッドをシャフトに連結するように構成されたホーゼルを含むゴルフクラブヘッドであり、上記打撃面、上記クラウン、上記ソール、上記ヒール、上記トウ、および上記ホーゼルの各々は鋼の合金から構成され、X軸は、上記打撃面の上記フェース中心に接する水平軸として定義され、上記ゴルフクラブヘッドの上記ヒールに向かって正の方向を有し、Y軸は、上記ゴルフクラブヘッドの上記クラウンに向かって正の方向を有し、上記X軸と上記Y軸の両方に直交する垂直軸であり、上記ゴルフクラブヘッドの前面に向かって正の方向を具備し、上記X軸、上記Y軸、および上記Z軸の原点は、上記ゴルフクラブヘッドの重心(CG)を中心とし、上記ゴルフクラブヘッドの体積は、約上記ゴルフクラブヘッドは、約100ccから約200ccであり、上記クラウンの最小クラウン厚さは約0.3mmから約0.6mmの間であり、上記ソールは最大ソール厚さを具備し、上記ゴルフクラブヘッドのピーククラウン高さは約35.0mmを超え、上記ゴルフクラブヘッドの地面からトップフェースまでの半径測定値は約31.0mm以上であり、上記ゴルフクラブヘッドのCG‐Ygは、上記y軸に沿った地面から上記CGまでの距離であり、これは約16.0mm未満であり、上記ゴルフクラブヘッドのΔYccgは約22.0mmから約28.0mmの間であり、上記ΔYccgは以下の式によって定義され、
ΔYccg=ピーククラウン高さ(mm)-CG-Yg(mm)
上記ゴルフクラブヘッドは、最大ソール厚さ対最小クラウン厚さ比が約4.0以上であり、上記最大ソール厚さ対最小クラウン厚さ比は、以下の式によって定義され、
最大ソール厚さ対最小クラウン厚さ比=
最大ソール厚さ(mm)/最小クラウン厚さ(mm)
上記ゴルフクラブヘッドの質量は、上記ピーククラウン高さ測定値の25%に等しい上記地面からの垂直高さに設定されたX‐Z平面の下方において、上記ゴルフクラブヘッドの全質量の約45%より大きく、上記ゴルフクラブヘッドの質量は、上記ピーククラウン高さ測定値の20%に等しい上記地面からの垂直高さに設定されたX‐Z平面の下方において、上記ゴルフクラブヘッドの全質量の約38%より大きく、上記ゴルフクラブヘッドの質量は、上記ピーククラウン高さ測定値の15%に等しい上記地面からの垂直高さに設定されたX‐Z平面の下方において、上記ゴルフクラブヘッドの全質量の約27%より大きく、上記ゴルフクラブヘッドの質量は、上記ピーククラウン高さ測定値の10%に等しい上記地面からの垂直高さに設定されたX‐Z平面の下方において、上記ゴルフクラブヘッドの全質量の約12%より大きい。
【0010】
この発明の他の側面によれば、ゴルフクラブヘッドは、フェース中心を規定する打撃面、クラウン、上記クラウンの反対側のソール、ヒール、上記ヒールの反対側のトウ、および上記ヒールに隣接し、上記ゴルフクラブヘッドをシャフトに連結するように構成されたホーゼルを含み、上記打撃面、上記クラウン、上記ソール、上記ヒール、上記トウ、および上記ホーゼルの各々は鋼の合金から成り、X軸は、上記打撃面の上記フェース中心に接する水平軸として定義され、上記ゴルフクラブヘッドの上記ヒールに向かって正の方向を具備し、Y軸は、上記ゴルフクラブヘッドの上記クラウンに向かって正の方向を具備し、上記X軸および上記Y軸の双方に直交し、上記ゴルフクラブヘッドの前面に向かって正の方向を具備するZ軸であり、上記X軸、上記Y軸、および上記Z軸の原点は、上記ゴルフクラブヘッドの重心(CG)を中心とし、上記ゴルフクラブヘッドの体積は、約100cc~約200ccであり、上記クラウンの最小クラウン厚さは約0.3mm~約0.6mmであり、上記ソールは最大ソール厚さを具備し、上記ゴルフクラブヘッドの最大ソール厚さ対最小クラウン厚さ比は約4.0以上であり、上記最大ソール厚さ対最小クラウン厚さ比は、以下の式によって定義される。
最大ソール厚さ対最小クラウン厚さ比=
最大ソール厚さ(mm)/最小クラウン厚さ(mm)
【0011】
この発明の他の側面によれば、ゴルフクラブヘッドは、フェース中心を規定する打撃面、クラウン、上記クラウンの反対側のソール、ヒール、上記ヒールの反対側のトウ、および上記ヒールに隣接し、上記ゴルフクラブヘッドをシャフトに連結するように構成されたホーゼルを含み、上記打撃面、上記クラウン、上記ソール、上記ヒール、上記トウ、および上記ホーゼルの各々は鋼の合金から成り、X軸は、上記打撃面の上記フェース中心に接する水平軸として定義され、上記ゴルフクラブヘッドの上記ヒールに向かって正の方向を有し、Y軸は、上記ゴルフクラブヘッドの上記クラウンに向かって正の方向を具備し、上記X軸および上記Y軸の双方に直交し、上記ゴルフクラブヘッドの前面に向かって正の方向を具備するZ軸であり、上記X軸、上記Y軸、および上記Z軸の原点は、上記ゴルフクラブヘッドの重心(CG)を中心とし、上記ゴルフクラブヘッドの体積は、約100ccから約200ccの間であり、上記クラウンの最小クラウン厚さは約0.3mmから約0.6mmの間であり、上記ソールは最大ソール厚さを有し、上記地平面からの垂直高さに設定されたX‐Z平面の下における上記ゴルフクラブヘッドの質量は、上記ピーククラウン高さ測定値の25%に等しく、上記地平面からの垂直高さに設定されたX‐Z平面の下における上記ゴルフクラブヘッドの質量は、上記ゴルフクラブヘッドの全質量の約45%より大きく、上記ピーククラウン高さ測定値の15%に等しい上記地平面からの垂直高さに設定されたX‐Z平面の下における上記ゴルフクラブヘッドの質量は、上記ゴルフクラブヘッドの全質量の約27%より大きい。この発明の他の側面によれば、上記ゴルフクラブヘッドは、約1.70から約2.18の間の最大フェース厚さ対ソールリターン厚さ比を有し、上記最大フェース厚さ対ソールリターン厚さ比は、以下のように定義される。
最大フェース厚さ対ソールリターン厚さ比=
最大フェース厚さTf1/ソールリターン厚さ(TR)
【0012】
この発明の他の側面によれば、打撃面はソールリターンを具備する。
【0013】
この発明のこれらおよび他の特徴、態様、および利点は、以下の図面、説明、および特許請求の範囲を参照することにより、よりよく理解されるようになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
この発明の先の、または他の特徴および利点は添付図面において説明されるように以下のこの発明の説明から明らかであろう。添付図面は、ここに組み込まれ、明細書の一部を形成し、さらにこの発明の原理を記述し、当業者がこの発明を実施し、または利用できるようになす。
【0015】
【
図1】添付図面の
図1は、この発明の例示的な実施例に従うゴルフクラブヘッドの斜視図を示す。
【
図2】添付図面の
図2は、この発明の一実施例に従うゴルフクラブヘッドのクラウン側ビューを示す。
【
図3】添付図面の
図3は、この発明の一実施例に従うゴルフクラブヘッドのフェース側ビューを示す。
【
図4】添付図面の
図4は、この発明の一実施形例に従うゴルフクラブヘッドのフェース中心を通るZ軸に沿った垂直面に沿ったトウ側断面図を示す。
【
図5A】添付図面の
図5Aは、この発明の一実施例に従うゴルフクラブヘッドのソールの透視図を示す。
【
図5B】添付図面の
図5bは、この発明の代替的な実施例に従うゴルフクラブヘッドのソールの透視図を示す。
【
図6】添付図面の
図6は、この発明の代替的な実施例に従うゴルフクラブヘッドのヒール側分解斜視図を示す。
【
図7】添付図面の
図7は、この発明の代替的な実施例に従うゴルフクラブヘッドのトウ側分解斜視図を示す。
【
図8】添付図面の
図8は、この発明の代替的な実施例に従うゴルフクラブヘッドの断面図である。
【
図9】添付図面の
図9は、この発明の代替的な実施例に従うゴルフクラブヘッドのヒール側分解斜視図を示す。
【
図10】添付図面の
図10は、この発明の代替的な実施例に従うゴルフクラブヘッドのトウ側分解斜視図を示す。
【
図11】添付図面の
図11は、この発明の代替的には実施例に従うゴルフクラブヘッドの断面図を示す。
【発明の詳細な説明】
【0016】
以下の詳細な説明は、この発明を実施するための現在考えられている最良のモードを説明する。この説明は限定的な意味で解釈されるべきではなく、この発明の範囲は添付の特許請求の範囲によって最もよく定義されるので、単にこの発明の一般原理を説明する目的でなされている。
【0017】
この発明の種々の特徴が以下に記載されており、それぞれは、互いに独立して、または他の特徴と組み合わせて使用することができる。ただし、単一の発明の特徴は、上述の問題の一部またはすべてに対処しない場合もあれば、上述の問題の1つにのみ対処する場合もある。さらに、先に説明した1つ以上の問題は、以下で説明する機能のいずれによっても完全に対処できない場合がある。
【0018】
この発明のゴルフクラブヘッド100とその性能基準について議論を始める前に、以下の議論は、以下に詳述する性能変数の適切な評価に重要な座標系101と測定軸に基づいていることをここで指摘しておくことは有益である。したがって、以下の測定に与えられた特定の名前はこの発明の理解に重要であるけれども、命名法を真空中で見るべきではないことを認識することが重要である。むしろ、以下に示す数字の重要性は、座標系がゴルフクラブヘッド自体とどのように関係しているかという文脈で理解する必要がある。十分な情報を提供して曖昧さを回避するために、ゴルフクラブヘッド100を参照する以下の各図には、すべて参照座標系が添付されている。
【0019】
上述に従い、また、以降の説明のための基準座標系を確立するために、添付図面の
図1は、この発明のさまざまな測定および性能の数値を定義するために使用される座標系101を示す。ここでの検討で使用されるX軸は、ヒールからトゥの方向から打撃フェースに対して水平な軸を指す。ここでの検討で使用されるY軸は、クラウンからソールの方向でクラブを通る垂直軸を指す。ここでの検討で使用されるZ軸は、前後方向に水平な水平軸を指す。代替的には、X軸は、ゴルフクラブヘッドのヒール方向を正の方向として打撃フェースの幾何学的中心に接する水平軸として定義され、Y軸は、ゴルフクラブヘッドのトップ方向を正の方向としてX軸に直交する垂直軸であり、Z軸は、ゴルフクラブヘッドの前面方向を正の方向としてX軸とY軸の両方に直交する軸である。上述のX-Y-Z座標系101は、以降のすべての説明で同じであるものとする。
【0020】
添付図面の
図1は、この発明の一実施例によるゴルフクラブヘッド100の斜視図を示す。
図1に示すこの斜視図では、ゴルフクラブヘッド100は他のゴルフクラブヘッドとあまり変わらないように見えるかもしれないけれども、後続の図およびその説明から、このゴルフクラブヘッド100の特定の寸法および材料特性により、この発明と一致する独自の性能特性を実現できることが分かる。
図1が示すものは、ゴルフクラブヘッド100であり、これは、打撃フェース120、クラウン106、クラウン106の反対側のソール108、ヒール104、ヒール104の反対側のトウ102、当該ゴルフクラブヘッド100をシャフト(図示せず)に連結するためのヒール近傍のホーゼル124、およびクラウン106とソール108を連結し、打撃フェース120近傍のヒール104から打撃フェース120近傍のトウ102まで延びるスカート112を具備する。打撃フェース120は、フェース中心122を具備する。ここで示され、この発明で言及されているフェース中心122は、ゴルフクラブ技術の当業者に一般的に知られているように、USGA提供のフェース中心テンプレートによって測定された、上記ゴルフクラブヘッド100の打撃フェース120の幾何学的中心に関連する。
【0021】
この発明のこの実施例において、ゴルフクラブヘッド100、特に打撃フェース120、クラウン106、ソール108、スカート112、トウ102、ヒール104、およびホーゼル124は、一般に、密度が約7.75g/ccから約8.05g/ccの間の鋼の合金で形成される。好ましくは、ゴルフクラブヘッド100は、当技術分野で知られている鋳造プロセスによって形成される。また、ゴルフクラブヘッド100の少なくとも一部が、スタンピング、鍛造、および圧延を含む他の既知のプロセスによって形成されることも、この発明の範囲および内容に含まれる。
【0022】
打撃フェース120、クラウン106、ソール108、スカート112、トウ102、ヒール104、およびホーゼル124が、密度が約7.75g/cc~約8.05g/ccの鋼の合金で完全に形成されることもこの発明の範囲内である。
【0023】
打撃フェース120をゴルフクラブヘッド100の他の部分と一体的に形成することも、代替的には、ゴルフクラブヘッド100の他の部分に後で接合される別個の部品として形成することも、この発明の範囲および内容に含まれる。打撃フェース120を別個の部品として形成する場合、高強度鋼で形成することができ、溶接、ろう付け、接着剤、および機械的ファスナを含む任意の適切な方法によってゴルフクラブヘッド100に接合することができる。打撃フェース120を形成するための例示的な高強度鋼材料には、カスタム465ステンレス鋼、カスタム475ステンレス鋼、300ステンレス鋼、および301ステンレス鋼が含まれるが、この発明はこの点に関して限定されない。
【0024】
ゴルフクラブヘッド100は、全般的には、約100cc~約200cc、より好ましくは約120cc~約190cc、最も好ましくは約140cc~約185ccの体積を具備して良い。
【0025】
ゴルフクラブヘッド100は、全般的には、約175g~約275g、より好ましくは約190g~約250g、最も好ましくは約200g~約225gの総質量を具備して良い。
【0026】
図2は、ゴルフクラブヘッド100のクラウン図である。ゴルフクラブヘッド100のより具体的な特徴を示すために、添付の
図2は、ゴルフクラブヘッド100の性能向上を定量化するために重要となるゴルフクラブヘッド100の特定の特性のいくつかに対する追加の洞察を与えるために提供される。添付の
図2は、座標系101上のX‐Z平面に沿ったCG110の位置を示す。CG110の位置の詳細は、ゴルフクラブヘッド100の慣性特性に関してより詳細に説明されるけれども、一般的に言えば、この発明のゴルフクラブヘッド100は、最も有利な結果をもたらすためにゴルフクラブヘッド100内に戦略的に配置されたCG110の位置を具備する。
【0027】
より具体的には、この発明の現在の例示的な実施例では、CG110は、X‐Y平面に沿って延びるシャフト軸115から後方に、一般的に約9mm~約16mm、より好ましくは約10mm~約15mm、最も好ましくは約11mm~約14mmの距離CG‐C114に配置されており、これらはすべて、座標系101によって示されるZ軸に沿ってシャフト軸115から後方に測定される。
【0028】
注目すべきは、CG110をZ軸に沿って後方に配置する戦略的な位置が、この発明のゴルフクラブヘッド100の適切な機能性にとって重要であるということである。CG110の位置が前方に寄りすぎると、ゴルフクラブヘッド100の慣性値が低下し、ゴルフボールに接触したときにバックスピンが最適量に達しないで、望ましい結果が得られなくなる可能性がある。しかし、逆に、CG110の位置が後方に寄りすぎると、ゴルフクラブヘッド100は過剰なスピンを生成し、望ましい結果が得られない可能性がある。したがって、シャフト軸115のZ軸に沿った後方のCG110の位置の重要性には、非常に特定の値の範囲内での微妙なバランスが必要であり、その範囲から外れると、ゴルフクラブヘッド100の性能が著しく低下する可能性があることがわかる。
【0029】
添付図面の
図3は、ゴルフクラブヘッド100のフェース側図である。
図3は、この発明の適切な機能にとって重要ないくつかの追加の寸法測定値を示している。具体的には、
図3は、前に示したゴルフクラブヘッド100の基本構成要素を示すことに加えて、座標系101で示されるX‐Y平面に沿った地面GからのCG110位置の別の測定値を導入している。より具体的には、
図3は、地面GからCG110までのY軸に沿って垂直に測定された距離であるCG110測定値を示しており、この説明のためにCG‐Yg116と称する。ゴルフクラブヘッド100のCG‐Yg116は、一般に約16.0mm未満、より好ましくは約11.0mm~約15.0mm、最も好ましくは約12.0mm~約14.5mmであって良い。
【0030】
ゴルフクラブヘッド100の非常に重要なCG‐Yg116測定値を示すことに加えて、添付図面の
図3は、ゴルフクラブヘッド100が通常のアドレス位置に保持されているときに、地面Gからクラウン106の頂点までのY軸に沿った垂直距離であるピーククラウン高さ117測定値も示している。ピーククラウン高さ117測定値は、一般的には、約35.0mmより大きく、好ましくは約36.0mm~約43.0mm、最も好ましくは約37.0mm~約41.0mmであって良い。
【0031】
図添付図面の
図3は、地面からトップフェースまでの半径測定値118も示しており、これは、地面Gから、打撃フェース120がクラウン106に移行する点までのY軸に沿った垂直距離である。より具体的には、地面からトップフェースまでの半径測定値118は、地面Gから、ゴルフクラブヘッド100が打撃フェース120のロール半径から外れる点までのY軸に沿った垂直距離である。地面からトップフェースまでの半径測定値118を、Y軸に沿ってフェース中心122の真上、または打撃フェース120上の最も高い点で測定することは、この発明の範囲および内容の範囲内である。好ましくは、地面からトップフェースまでの半径測定値118は、フェース中心122の真上を測定する。地面からトップフェースまでの半径測定値118は、一般的には、約31.0mm以上、より好ましくは約31.0mmから約37.0mmの間、最も好ましくは約33.0mmから約35.0mmの間であって良い。
【0032】
添付図面の
図3は、Y軸に沿ったCG110からクラウン106の頂点までの垂直距離であるΔYccg119測定値も示する。換言すると、ΔYccg測定値119は、クラウンのピーク高さ117測定値とCG‐Yg116測定値との差である。ΔYccg119測定値については、以下でさらに詳しく説明する。
【0033】
ゴルフクラブヘッド100のCG110の位置が定義されたので、ゴルフクラブヘッド100の慣性モーメント(MOI)に関するこの発明に関連するその他の重要な特徴についてさらに詳しく説明する。ゴルフクラブヘッドのMOIは、一般的に、前述のCGの位置と一致しない位置にある物体にゴルフクラブヘッドが衝突したときに、ゴルフクラブヘッドがねじれに抵抗する能力を表す。より具体的には、ゴルフクラブヘッドのMOIは、ゴルフクラブヘッドがCGの位置に対してねじれに抵抗する能力に関係する。
【0034】
当該技術分野でよく知られているように、ゴルフクラブヘッド100のMOIは、通常、ゴルフクラブヘッド100がCG110の位置に対して異なる軸に沿って回転するのを阻止する能力に関連する複数の固有の要素に分解することができ、3つの軸の原点はゴルフクラブヘッド100のCG110の位置と一致する。MOIが通常参照される3つの回転軸は、図面全体にわたって示される座標系101と一致し、MOI‐XはCG110の位置を通過するX軸を中心に測定され、MOI‐YはCG110の位置を通過するY軸を中心に測定され、MOI‐ZはCG110の位置を通過するZ軸を中心に測定される。
【0035】
この発明のゴルフクラブヘッド100は、全般的には、約80kg‐mm2より大きい、より好ましくは約90kg‐mm2~約140kg‐mm2、最も好ましくは約100kg‐mm2~約130kg‐mm2のMOI‐Xを具備して良いけれども、これらはすべて、この発明の範囲および内容から逸脱するものではない。
【0036】
この発明のゴルフクラブヘッド100は、全般的には、約220kg‐mm2より大きい、より好ましくは約230kg‐mm2より大きい、最も好ましくは約240kg‐mm2より大きいMOI‐Yを具備して良く、これはこの発明の範囲および内容から逸脱しない。言い換えれば、この発明のゴルフクラブヘッド100は、全般的には、比較的低いCG110の位置を維持しながら、MOI‐Yの値が高いことができる。
【0037】
この発明のゴルフクラブヘッド100は、全般的には、約160kg‐mm2より大きい、より好ましくは約160kg‐mm2~約220kg‐mm2、最も好ましくは約170kg‐mm2~約210kg‐mm2のMOI‐Zを具備して良く、これはこの発明の範囲および内容から逸脱しない。
【0038】
上述のMOI値は、ゴルフクラブヘッド100の設計の世界では必ずしも新しいものではないけれども、上述のようにCG110の位置、特にCG-Yg116とCG-C114の相対値を維持しながらそれらの数値を維持する能力が、この発明を特徴づけている。この発明は、体積、ピーククラウンの高さ、および地面からトップフェースまでの半径の高さなどの従来のフェアウェイウッドの寸法を維持しながら、スチールゴルフクラブヘッドのCGをこれまでよりも低くする。
【0039】
図4は、フェース中心122を通りZ軸に沿って延びる垂直面に沿ったトウ側断面図である。後述するように、
図4はこの発明のいくつかの追加の重要な特徴を示している。
【0040】
次に
図4を参照すると、この発明のさらなる発明的特徴を示すゴルフクラブヘッド100のいくつかの寸法がより明確に示されている。この発明の例示的な実施例に従うと、クラウン106の最小クラウン厚さTcは、従来の鋳鋼クラウンの厚さTc(通常0.6mmより大きい)よりも薄い。現在の例示的な実施例によれば、クラウン106の最小クラウン厚さTcは、好ましくは約0.3mm~約0.6mm、より好ましくは約0.35mm~約0.5mm、最も好ましくは約0.4mmである。
【0041】
さらに、クラウン106の一部は、クラウン106の最小クラウン厚さTcの+/-10%以内で実質的に一定の厚さを有していてもよい。この説明の目的上、クラウン106の表面積は、ゴルフクラブヘッド100が通常のアドレス位置にあるときに、ゴルフクラブヘッド100の真上から見える、ホーゼル124を除くゴルフクラブヘッド100の部分によって定義される。この発明の一実施例によれば、クラウン106の全表面積の少なくとも約40%は、最小クラウン厚さTcの+/-10%以内で実質的に一定の厚さを具備して良く、好ましくは、クラウン106の全表面積の少なくとも約60%は、最小クラウン厚さTcの+/-10%以内で実質的に一定の厚さを具備して良く、最も好ましくは、クラウン106の全表面積の少なくとも約75%は、最小クラウン厚さTcの+/-10%以内で実質的に一定の厚さを具備して良い。
【0042】
上述のようにクラウン106の厚さを薄くすることにより、クラウン106の総質量が減らされて良い。クラウン106の厚さを薄くすることで節約した質量は、ゴルフクラブヘッド100全体の任意質量、例えばソール108内および/またはソール108付近の任意質量として再配分されて良い。上述のようにクラウン106を具備するこの発明のゴルフクラブヘッド100は、最小クラウン厚さが0.6mmを超える従来のゴルフクラブヘッドよりもCG-Yg116の測定値が少なくとも0.3mm低い。一見するとCG-Yg116の測定値が0.3mm減少することは大したことがないように思えるかもしれないけれども、この発明は、上述のように従来の寸法を具備し、スチールで形成された他の既知のゴルフクラブヘッドよりもCG-Yg116の測定値を低くするために、いくつかの独創的な特徴を利用している。
【0043】
図4は、ゴルフクラブヘッド100のCG‐Yg116測定値をさらに低下させる別の特徴を示す。打撃フェースは、当該打撃フェー面の異なる点において異なる厚さを具有することがよく知られており、これは可変フェース厚さ(VFT)として知られている。この発明の例示的な実施例では、最大フェース厚さTfはフェース中心122付近で発生し、好ましくは約2.0mm未満、より好ましくは約1.95mm未満、最も好ましくは約1.9mmである。慣用的には、スチール製打撃フェースの最大フェース厚さTfは約2.0mmより大きい。上述のような打撃フェース120を有するこの発明のゴルフクラブヘッド100は、最大フェース厚さTfが少なくとも2.0mmである従来のゴルフクラブヘッドよりもCG-Yg116測定値が少なくとも0.1mm低くて良い。最大フェース厚さTfは、ロフト面Lに垂直に測定された、打撃フェースの外側表面と内側表面との間の距離であり、ロフト面Lは、打撃フェース120のフェース中心122に接する平面である。CG-Yg116の0.1mmの減少は、一見すると小さいように思えるかもしれないけれども、この発明は、いくつかの独創的な特徴に依存して、上述のような従来の寸法を具備し、鋼鉄で形成された他の既知のゴルフクラブヘッドよりもCG-Yg116を低くする。
【0044】
図4は、ロフト面LとX‐Y面との間の角度であるロフト角θも示している。ロフト角θは、好ましくは約12度から約25度の間である。
【0045】
図4は、当業界で知られているように、調節可能なシャフトスリーブ(図示せず)と共に使用するための独自のホーゼル124の構造も示している。ホーゼル124は、ゴルフクラブヘッド100をシャフト(図示せず)に調節可能に結合するように適合化されている。ホーゼル124は、クラウン106に近接する上部ホーゼル部分124Aと、ソール108に近接する下部ホーゼル部分124Bとを含む。上部ホーゼル部分124Aは、調整可能なシャフトスリーブ(図示せず)を収容するように構成されており、ゴルフクラブヘッド100の向き(ライ、ロフト、およびフェースアングル)を調整可能にする。下部ホーゼル部分124Bは、当業界でよく知られているように、シャフトスリーブ(図示せず)をゴルフクラブヘッド100に連結するためのファスナ(図示せず)を収容するように構成されている。従来の構造とは異なり、上部ホーゼル部分124Aと下部ホーゼル部分124Bとの間のホーゼル124の部分は、ゴルフクラブヘッド100の内部に開放されている。
【0046】
上述のような従来のホーゼルと比較すると、個別の上部ホーゼル部分124Aと個別の下部ホーゼル部分124Bを含むホーゼル124の総質量、特にCG110位置より上のホーゼル124の質量の部分が低減される可能性がある。従来のホーゼル設計と比較したホーゼル124に関連する質量の節約は、ゴルフクラブヘッド100全体の任意の質量、例えばソール108内および/またはソール108付近の任意の質量として再配分されて良い。上述のようにホーゼル124を有するこの発明のゴルフクラブヘッド100は、従来の調整可能なシャフトスリーブを受け入れるように適合された従来のホーゼルを具備する従来のゴルフクラブヘッドよりも少なくとも0.35mm低いCG-Yg116測定値を示すであろう。上述のように、CG-Yg116測定値の0.35mmの減少は一見すると小さいように思えるかもしれないけれども、この発明は、上述のように鋼鉄で形成され従来の寸法を具備する他の既知のゴルフクラブヘッドよりもCG-Yg116測定値を低くするために、いくつかの独創的な特徴に依存している。
【0047】
図4は、ゴルフクラブヘッド100のソール108の近傍に配置されたオプションのウェイトポケット130も示す。ウェイトポケット130は、ウェイト部材(図示せず)を収容するように適合されている。ウェイト部材の構造はこの発明にとって重要ではなく、ウェイト部材は既知の構造の形態、および既知の構造の修正形態をとって良いことを理解されたい。ウェイト部材は、ゴルフクラブヘッド100の残りの部分よりも密度が低い、等しい、または大きい任意の数の材料から形成されて良い。好ましくは、ウェイト部材は、ゴルフクラブヘッド100の残りの部分と実質的に等しい密度を有する鋼の合金から形成されて良い。代替的には、ウェイト部材は、ゴルフクラブヘッド100の鋼部分よりも密度が高い材料、例えば、タングステン、モリブデン、タンタル、ハフニウム、およびニオブのうちの少なくとも1つを含んで良い。ウェイト部材が、ゴルフクラブヘッド100の鋼部分よりも密度が低い材料、例えば、チタン、アルミニウム、プラスチック、および複合材料のうちの少なくとも1つを含むことも、この発明の範囲内である。クラウン106の最小厚さを減らし、打撃フェース120の最大厚さを減らし、ホーゼル124の構造をゴルフクラブヘッド100の内部に開くように変更することによって節約された質量は、ソール108内および/またはソール108付近の任意の質量として割り当てて良い。たとえば、任意の質量をソール108内、ウェイト部材内、またはCG110の下のゴルフクラブヘッド100の任意の部分内に割り当てることで、CG-Yg116測定の値を最小化すると同時に、ゴルフクラブヘッド100の従来の寸法およびその他の強調された慣性値を維持することができる。
【0048】
図4に示すように、ソール108の大部分は、実質的に一定の厚さを具備する。さらに、ウェイトポケット130の後方の実質的に一定の厚さを具備するソール108の部分は、最大ソール厚さTsに実質的に等しい。最大ソール厚さTsを特定する目的で、ウェイトポケット130を画定し、その近傍にあるソール108の部分、およびスカート112から約10mm以内にあるソールの部分は考慮されないことに留意されたい。最大ソール厚さTsは、好ましくは約1.6mm以上、より好ましくは約1.8mm以上、最も好ましくは約1.9mm以上である。
【0049】
この発明の一実施例によれば、ソール108の少なくとも30%の厚さが最大ソール厚さTsの+/‐10%以内であり、より好ましくはソール108の少なくとも40%の厚さが最大ソール厚さTsの+/‐10%以内であり、最も好ましくはソール108の少なくとも50%の厚さが最大ソール厚さTsの+/‐10%以内である。
【0050】
ここで注目すべきは、最大ソール厚さTsは、ソール108内および/またはソール108付近に集中した質量の影響全体を捉えるものではないということである。なぜなら、その定義上、ウェイトポケット130、ウェイト部材、またはウェイトポケット130内にウェイト部材を固定するために必要な追加要素を考慮していないからである。
【0051】
これらの特徴をよりよく示すために、
図5Aおよび
図5Bが提供される。
図5Aは、ゴルフクラブヘッド100の残りの部分から分離されたソール108を示し、
図5Bは、この発明の代替的な実施例に従うソール208を示す。
【0052】
まず
図5Aを参照すると、ソール108がゴルフクラブヘッド100の残りの部分から分離して示されている。この観点からは、ウェイトポケット130、ウェイト部材(図示せず)、および周囲の構造が、ソール108内および/またはソール108付近に質量を集中させて、CG110を地面に近づける可能性があることがはるかに容易にわかる。また、ソール108の一部が実質的に一定の厚さを有すると説明しても、ソール108がCG110を地面に近づけることにどのように寄与しているかを完全には把握できないこともわかる。具体的には、ソール108をこのように説明しても、ウェイト部材(図示せず)またはウェイトポケット130を定義および/または支持するソール108の部分の影響は捉えられない。
【0053】
ここで注目すべきことは、ゴルフクラブヘッド100のソール108を定義する部分を特定することは、ゴルフクラブヘッド100の底部を特定するほど単純ではないということである。例えば、ソール108は、ゴルフクラブヘッド100が通常のアドレス位置にあるときに、ゴルフクラブヘッド100の真下から見えるゴルフクラブヘッド100の全体として定義される場合がある。代替的には、ソール108は、スカート112の下部と打撃フェース120の下部によって囲まれたゴルフクラブヘッド100の部分として定義されて良い。
【0054】
この発明の例示的な実施例に従ってソール108の影響を意味のある簡単な方法で定量化するために、ソール108は、ゴルフクラブヘッド100の底部のほぼ中央に位置し、約25cm2から約35cm2の間の外部表面積を有するゴルフクラブヘッド100の一部分として定義されて良い。ソール108は、ウェイトポケット130およびその中のウェイト部材(図示せず)を含めて、約50gから約80gの間の総質量を具備して良い。
【0055】
図5Bは、ソール108と同じ外周形状、表面積、および総質量を有し、ゴルフクラブヘッド100と同じ密度を有するウェイト部材(図示せず)を収容するウェイトポケット130を含むソール208を示す。
【0056】
ソール208は、ソール108と互換性があるように構成されており、ソール208は、同じ外周形状、約25cm2~約35cm2の同じ外表面積、および約50g~約80gの同じ質量を具備する。しかし、ソール108とは対照的に、ソール208にはウェイトポケットが含まれないため、ソール208はソール108と比較して厚みが増している。ソール208の厚みが増すことで、ソール208がCG110の位置に及ぼす全体的な影響を定量化することができる。
【0057】
この発明の実施例によれば、ソール208は、約2.4mm~約3.2mm、好ましくは約2.5mm~約3.1mm、最も好ましくは約2.6mm~約3.0mmの平均有効ソール厚さTsaを具備して良い。平均有効ソール厚さTsaは、ソール208の総質量をソール208の外部表面積で割ることによって決定される。したがって、平均有効ソール厚さTsaはソール208内で一定の厚さであるけれども、平均有効ソール厚さTsaは、ウェイトポケット130およびそこに収容されるウェイト部材(図示せず)によって寄与される質量を考慮に入れる。したがって、ソール108およびソール208は総質量と外部表面積が同じであるため、ソール108はソール208と同じ平均有効ソール厚さTsaを具備していると言える。さらに、ソール208は、ゴルフクラブヘッド100のCG110の位置とMOIに、ソール108と同じ影響を与えるように構成されている。
【0058】
クラウン106の最小厚さの減少、打撃フェース120の最大厚さの減少、ゴルフクラブヘッド100の内部に開放されるホーゼル124の構造の変更、および上述のようにソール108、208内および/またはソール付近での上述の節約された質量の配分に関連するCG-Yg116測定値への複合効果により、CG-Yg116測定値は、上述の従来の寸法を具備する既知のスチール製ゴルフクラブヘッドよりも約1.5mm~約2.0mm低くなる。
【0059】
ここで、上述の低いCG-Yg116測定値だけでは、この発明を正確に描写および説明することはできないことに留意すべきである。なぜなら、容積が小さい、または過度に浅い(ピーククラウンの高さが短い、および/またはフェースの高さが短い)ゴルフクラブヘッドは、本質的にCG-Yg測定値が低い可能性があるからである。したがって、この発明は、上述のCG-Yg116測定値と関連するCG-C、MOI、容積、および高さの測定値によって達成されるさまざまな数値間の相互関係に基づいていることを認識することが重要である。
【0060】
上で述べた質量節約の影響を把握する別の方法は、ゴルフクラブヘッド100の質量のうち、ゴルフクラブヘッド100の下部に集中している質量の割合を見ることである。
図3に戻ると、ゴルフクラブヘッド100内の質量の配分を、ピーククラウン高さ117の測定値の割合として考えると便利である。
【0061】
ゴルフクラブヘッド100の質量のうち、地面Gからの垂直高さがピーククラウン高さ117の測定値の25%に等しいX‐Z平面の下方の部分の質量は、ゴルフクラブヘッド100の全質量の約45%より大きく、ゴルフクラブヘッド100の全質量の約48%より大きく、最も好ましくはゴルフクラブヘッド100の全質量の約50%より大きい。
【0062】
ゴルフクラブヘッド100の質量のうち、地面Gからの垂直高さがピーククラウン高さ117の測定値の20%に等しいX‐Z平面の下方の部分の質量は、ゴルフクラブヘッド100の全質量の約38%より大きく、ゴルフクラブヘッド100の全質量の約41%より大きく、最も好ましくはゴルフクラブヘッド100の全質量の約43%より大きい。
【0063】
ゴルフクラブヘッド100の質量のうち、地面Gからの垂直高さがピーククラウン高さ117の測定値の15%に等しいX‐Z平面の下方の部分の質量は、ゴルフクラブヘッド100の全質量の約27%より大きく、ゴルフクラブヘッド100の全質量の約30%より大きく、最も好ましくはゴルフクラブヘッド100の全質量の約32%より大きい。
【0064】
ゴルフクラブヘッド100の質量のうち、地面Gからの垂直高さがピーククラウン高さ117の測定値の10%に等しいX‐Z平面の下方の部分の質量は、ゴルフクラブヘッド100の全質量の約12%より大きく、ゴルフクラブヘッド100の全質量の約15%より大きく、最も好ましくはゴルフクラブヘッド100の全質量の約17%より大きい。
【0065】
ゴルフクラブヘッド100の質量の大部分をゴルフクラブヘッド100のソール108に集中させることにより、上述のようにCG‐Yg116を減少させることができる。
【0066】
ここで、この発明に特有のソール108、208の質量とソール108、208の外部表面積との関係について説明し、ゴルフクラブヘッド100が上述の慣性および寸法上の特徴をどのように実現しているかをよりよく把握することが重要になる。ソール質量とソール表面積との比率は、以下の式に示すように、現在のゴルフクラブヘッド100を定量化するのに役立つ。この発明の事例的な一実施例において、ソール108およびソール208のソール質量対ソール表面積比は、約2.0g/cm2以上、より好ましくは約2.1g/cm2以上、最も好ましくは約2.2g/cm2以上である。
ソール質量対ソール表面積比=ソールの総質量(g)/ソールの外部表面積(cm2)
【0067】
この発明に特有のもう1つの関係は、ピーククラウン高さ117の測定値とCG-Yg116の測定値との関係である。加重ピーククラウン高さ対CG-Yg比と呼ばれる比率は、以下の式で示されるように、現在のゴルフクラブヘッド100を定量化するのに役立つ。加重ピーククラウン高さ対CG-Yg比は、ロフト角θのコサインと、ピーククラウン高さ117の測定値とCG-Yg116の測定値との比率との積である。1つの例示的な実施例において、ゴルフクラブヘッド100の加重ピーククラウン高さ対CG-Yg比は約2.4以上、好ましくは約2.5以上、最も好ましくは約2.6以上である。
加重ピーククラウン高さ対CG-Yg比=cos(θ)*ピーククラウン高さ(mm)/CG-Yg(mm)
【0068】
上述のように、加重ピーククラウン高さ対CG-Yg比は、低CG110の性能上の利点とゴルフクラブヘッド100の従来の形状とを組み合わせるため、この発明にとって極めて重要である。既知の技術を使用してCG110を下げることは可能であるけれども、これらの既知の技術では、例えば、ピーククラウン高さまたはゴルフクラブヘッドの地面からトップフェースまでの半径を小さくすることにより、特殊な材料の使用および/またはゴルフクラブヘッドの従来の形状の変更が必要となる。
【0069】
この発明に特有の別の関係は、ピーククラウン高さ117の測定値とCG-Yg116との差にも関係する。ピーククラウン高さ117の測定値とCG-Yg116との垂直距離はΔYccg119と呼ばれ、以下の式で示されるように、現在のゴルフクラブヘッド100を定量化するのに役立つ。1つの例示的な実施例において、ゴルフクラブヘッド100のΔYccg119は約22.0mmから約28.0mmの間であり、約23.0mmから約26.0mmの間であることが好ましく、約24.0mmから約25.0mmの間であることが最も好ましい。
ΔYccg=ピーククラウン高さ(mm)-CG-Yg(mm)
【0070】
上述のように、ΔYccgは、低CG110の性能上の利点とゴルフクラブヘッド100の従来の形状とを組み合わせるため、この発明にとって極めて重要である。既知の技術を使用してCG110を下げることは可能であるけれども、これらの既知の技術では、特殊な材料の使用および/またはゴルフクラブヘッドの従来の形状の変更、例えば、ゴルフクラブヘッドのピーククラウンの高さまたは地面からトップフェースまでの半径の低減が必要となる。
【0071】
この発明に特有のもう1つの関係は、最小クラウン厚さTcと最大ソール厚さTsとの関係である。この発明で定義される最小クラウン厚さTcは、クラウン106のうち最も壁厚の薄い部分を指し、ゴルフクラブヘッドのクラウン106部分に存在する可能性のある切り欠きも含まれる。他方、この発明で定義される最大ソール厚さTsは、ソール108のうち最も壁厚の厚い部分を指し、ソールグラフィックも含まれるけれども、リブや、厚くなったソール108の視覚的錯覚を生じさせる可能性のある外部の重み付け機能に関連するソール部分は含まれない。最大ソール厚さ対最小クラウン厚さ比は、以下の式で示されるように、現在のゴルフクラブヘッド100を定量化するのに役立つ。この発明の1つの例示的な実施例において、最大ソール厚対最小クラウン厚比は約4.0以上、好ましくは約4.5以上、最も好ましくは約4.75以上である。
最大ソール厚さ対最小クラウン厚さ比=最大ソール厚さ(mm)」/最小クラウン厚さ(mm)
【0072】
上述のように、最大ソール厚と最小クラウン厚の比は、低CG110の性能上の利点とゴルフクラブヘッド100の全鋼構造とを組み合わせるため、この発明にとって極めて重要である。既知の技術を使用してCG110を同様に下げることは可能であるけれども、これらの既知の技術では、例えばチタンや複合材料などの異なる材料でクラウンを形成するなど、特殊な材料の使用が必要となる。
【0073】
この発明に特有のもう1つの関係は、平均有効ソール厚さTsaと最小クラウン厚さTcとの関係である。平均有効ソール厚さ対最小クラウン厚さ比は、以下の式で示されるように、現在のゴルフクラブヘッド100を定量化するために役立つ。1つの例示的な実施例において、平均有効ソール厚さ対最小クラウン厚さ比は約3.5~約9.0であり、好ましくは約4.5~約8.5であり、最も好ましくは約5.0~約8.0である。
平均有効ソール厚さ対最小クラウン厚さ比=
平均有効ソール厚さ(mm)/最小クラウン厚さ(mm)
【0074】
上述のように、平均有効ソール厚さ対最小クラウン厚さ比は、低CG110の性能上の利点とゴルフクラブヘッド100の全鋼構造とを組み合わせるため、この発明にとって極めて重要である。既知の技術を使用してCG110を同様に地面に近づけることは可能であるけれども、これらの既知の技術では、例えばチタンや複合材料などの異なる材料でクラウンを形成するなど、特殊な材料の使用が必要となる。
【0075】
動作例以外、または明示的に指定されていない限り、上述の明細書の部分における材料の量、慣性モーメント、重心位置、ロフト、ドラフト角度、さまざまな性能比などの数値範囲、量、値、およびパーセンテージはすべて、値、量、または範囲に「約」という語が明示的に現れていない場合でも、「約」という語が前置されているものとして読むことができる。したがって、反対のことが示されていない限り、上述の明細書および添付の特許請求の範囲に記載されている数値パラメータは、この発明によって得られることが求められる所望の特性に応じて変化する可能性がある近似値である。少なくとも、均等論の適用を特許請求の範囲に限定する試みとしてではなく、各数値パラメータは、報告された有効桁数を考慮して、通常の丸め手法を適用して解釈されるべきである。
【0076】
この発明の別の実施例によれば、クラウン106は、鋼鉄よりも密度が低い軽量材料で形成されて良い。例えば、クラウン106は、複合材料またはチタン合金で形成されて良い。上述のように複合材料で形成されたクラウン106を有するこの発明のゴルフクラブヘッド100は、全鋼構造を具備する従来のゴルフクラブヘッドよりも少なくとも0.20mm低いCG-Yg116測定値を示して良い。上述のように、CG-Yg116測定値の0.20mmの減少は一見すると小さいように思えるかもしれないけれども、この発明は、上述の従来の寸法を具備する他の既知のゴルフクラブヘッドよりもCG-Yg116測定値を低くするために、いくつかの独創的な特徴に依存している。
【0077】
添付図面の
図6は、この発明の代替的実施例に従うゴルフクラブヘッド600の分解図を示しており、この実施例において、打撃フェース620は、前の実施例で示したようなフェースインサートではなく、ソールリターン623を具備するLカップの形状をしている。Lカップ形状の打撃フェースを具備することにより、先に説明した範囲内でゴルフクラブヘッド600の重心位置を改善することによってゴルフクラブヘッド600の性能をさらに向上させることができるだけでなく、ゴルフクラブヘッド600自体のリーディングエッジにさらに構造的完全性を与えることもできる。リーディングエッジにおけるゴルフクラブヘッド600の構造的完全性を高めることにより、打撃フェース620に当たったショットのスピンを低下させることによってゴルフクラブヘッド600の性能をさらに向上させることができ、これは、この発明のようなフェアウェイウッドでは一般的な現象である。
【0078】
打撃フェース620は、溶接などの従来の取り付け技術によって、ゴルフクラブヘッド600の本体部分640に前面開口部621(
図7に示す)を介して取り付けることができるけれども、この発明の代替的実施例においては、ろう付け、接着、または他の種類の取り付け技術などの他の取り付け技術も、この発明の範囲および内容から逸脱することなく使用されて良い。
【0079】
図6に示すゴルフクラブヘッド600は、クラウン開口部644を有し、クラウン開口部642の周囲にはクラウン606を受け入れるための凹んだ突起642が設けられている点で、この発明の以前の実施例と異なる。この発明のこの現在の実施例においては、クラウン606は、ゴルフクラブヘッド600のその部分の重量を軽減する軽量複合材料から作られる。軽量複合材料を使用してクラウン606を形成すると、より多くの裁量質量が生成され、これをより戦略的に配置して、上述のCG、MOI、および質量分布値を達成することができる。
【0080】
添付図面の
図7は、ゴルフクラブヘッド600を別の角度から見た別の分解斜視図を示しており、前面開口部621がより明瞭に示されている。この図から分かるように、前面開口部621は、ゴルフクラブヘッド600の先端部を含み、少なくとも部分的にゴルフクラブヘッド600のソールの前部を形成している。その結果、前面開口部621の形状により、Lカップ形状を有する打撃フェース620は、ゴルフクラブヘッド600のソールの前部とともに、ゴルフクラブヘッド600の先端部を形成する。ただし、打撃フェース620の形状が前面開口部621の形状を補完する限り、ここで示したLカップ形状とは異なる、前面開口部621と打撃フェース620との間の他のタイプの補完形状も、この発明の範囲および内容から逸脱することなく使用できることに留意されたい。
【0081】
添付図面の
図8は、フェース中心622を通過し、Z軸に沿って延びる垂直面に沿ったゴルフクラブヘッド600の断面図を示す。このゴルフクラブヘッド600の断面図により、ゴルフクラブヘッド600の種々の厚さおよび寸法をより詳細に示すことができる。まず、第一に、打撃フェース620は可変の厚さを具備することができ、打撃フェースの最も厚い部分は第1の厚さTf1を具備し、幾何学的フェース中心622の近くに位置し、他方、打撃フェースの周辺部分は薄い厚さTf2を具備して良いことが分かる。打撃フェースが単一の厚さを具備する以前の実施例とは異なり、この発明は、可変の面厚さプロファイルを利用することにより、第1の厚さTf1の厚さを約1.8mmから約2.1mmの間、より好ましくは約1.9mmから約2.1mmの間、最も好ましくは約2.0mmから約2.1mmの間まで減らすことができる。常に第1の厚さTf1より小さい第2の厚さTf2は、一般に約1.70mmから約1.75mmの間、より好ましくは約1.70mmから約1.73mmの間、最も好ましくは約1.70mmから約1.72mmの間の厚さを具備して良い。
【0082】
図8に示すゴルフクラブヘッド600の断面図は、打撃フェース620を示すだけでなく、Lカップ打撃フェース620の新たな重要な特徴をその様々な寸法とともに示している。まず第一に、
図8は、打撃フェース620が、ゴルフクラブヘッド600のソールの前縁および前部を形成するソール戻り距離623DRを具備することを示している。ソールリターン923距離DRは、リーディングエッジの最前部からLカップ打撃フェース620の後方に向かって測定され、この発明のこの実施例では、一般に約9.0mmから約11.0mmの間、より好ましくは9.5mmから約10.5mmの間、最も好ましくは約10.0mmの間である。ソールリターン623距離DRの長さに加えて、添付の
図8には、ソールリターン623の厚さTRも示されている。この発明のこの実施例に示されているTRは、一般に約0.8mmから約1.0mmの間、より好ましくは約0.85mmから約0.95mmの間、最も好ましくは約0.9mmの間である。
【0083】
打撃フェース640の寸法が確定したので、このLカップ形状の打撃フェース620の寸法が、この発明のゴルフクラブヘッド600の適切な性能にとって非常に重要であり、特に、Lカップ打撃フェース620のほぼ垂直な平面部分とLカップ打撃フェース620の下部リターン部分との関係が重要であることに留意することは有益である。したがって、この発明によれば、ゴルフクラブヘッド600は、最大フェース厚さ対ソール厚さ比が約1.70~約2.18であり、より好ましくは約1.78~約2.03であり、最も好ましくは約1.88~約1.91であり、最大フェース厚さ対ソール戻り厚さ比は次のように定義される。
最大フェース厚さ対ソールリターン厚さ比=
最大フェース厚さTf1/ソールリターン厚さ(TR)
【0084】
図8に示すゴルフクラブヘッド600の寸法から推定できるもう一つの重要な比率は、次のように定義される最大フェース厚さ対ソール戻り距離比である。
最大フェース厚さ対ソールリターン距離比=
最大フェース厚さ(T
f1)/ソールリターン距離(D
R)
この発明に従う最大フェース厚さ対ソール戻り距離比は、全般的には0.15~約0.19、より好ましくは約0.16~約0.18、最も好ましくは約0.17である。
【0085】
最後に、打撃フェース622のソールリターン623部分には、ソールリターン623距離とソールリターン623厚さとの間に固有の関係があり、次のように定義されるソールリターン距離対厚さ比が生成されることに注意する必要がある。
ソール戻り距離と厚さの比率=
ソールリターン距離(DR)/ソールリターン厚さ(TR)
この発明によるソールリターン距離対厚さ比は、全般的には約9~約13.75、より好ましくは約10~約12.35、最も好ましくは約11である。
【0086】
添付図面の
図8は、打撃フェース620の寸法および特徴を示すことに加えて、ゴルフクラブヘッド600のいくつかの補助的な特徴も示している。ゴルフクラブヘッド600の上部付近では、高強度複合材料で作られたクラウン606の厚さTCが約0.60mm未満、より好ましくは約0.55mm未満、最も好ましくは約0.54mm未満であることがわかる。ゴルフクラブヘッド600は、地面からトップフェースまでの半径測定値618が約33.0mmから約36mmの間、より好ましくは約34.0mmから約35mmの間、最も好ましくは約34.5mmの間である。最後に、ゴルフクラブヘッド600は、ピーククラウン高さ617が約36mmから約40mmの間、より好ましくは約37mmから約39mmの間、最も好ましくは約38mmの間である。
【0087】
添付図面の
図9、
図10、
図11は、この発明の代替的な実施例によるゴルフクラブヘッド900の2つの分解斜視図と1つの断面図を示しており、打撃フェース920は、ソールリターン923に加えてクラウンリターン925を具備し、Cカップの形状を呈している。
図9、
図10、
図11について一般論を述べると、ゴルフクラブヘッド900は、クラウンリターン925とソールリターン923を具備する同様の形状の打撃フェース920を収容するために、前縁とクラウン遷移部とがない形状の前面開口部921を具備する本体部分940を有することが分かる。本体部分940は、上述の実施例と同様に、一般に軽量複合材料で作られた軽量クラウン906を受け入れるように適合化された凹んだ棚942を備えたクラウン開口部944も具備している。打撃フェース920およびクラウン906をそれぞれ前面開口部921およびクラウン開口部944に取り付ける手段は、上述の打撃フェース620およびクラウン606の取り付け方法と同様である。
【0088】
図11に示すゴルフクラブヘッド900の断面図は、
図8に示すゴルフクラブヘッド600の断面図に似ており、ゴルフクラブヘッド900の内部をより明瞭に示すことができる。ここで示すゴルフクラブヘッド900の断面図は、打撃フェース920がCカップの形状であり、前述のようにクラウンリターンおよびソールリターンを具備しており、この代替的実施例が上述のCGおよびMOI特性、ならびに、種々のコンポーネント間のインターフェースをどのように実現できるかを示している。
【0089】
この発明の広い範囲を示す数量の範囲およびパラメータは近似であるけれども、明細書の例に示された数量の値はできる限り正確に報告されている。ただし、いずれの数量の値も、各実験の測定に見いだされる標準偏差に起因する必然的な誤差を内在する。さらに、種々のことがらについて数量の範囲が示される場合には、指摘した値の範囲で、それらを組み合わせたものが利用できることを理解されたい。
【0090】
以上は、この発明の例示の実施例に関するものであり、以下の特許請求の範囲で示される発明の範囲および程度を逸脱することなく修正を行えることはもちろんであることに留意されたい。
【外国語明細書】