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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173726
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】糸道ガイド機構及び繊維機械
(51)【国際特許分類】
   D01D 11/00 20060101AFI20241205BHJP
   D02J 1/22 20060101ALI20241205BHJP
   B65H 57/14 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
D01D11/00 B
D02J1/22 F
B65H57/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024081666
(22)【出願日】2024-05-20
(31)【優先権主張番号】P 2023088635
(32)【優先日】2023-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】谷川 元洋
(72)【発明者】
【氏名】五由出 将嗣
(72)【発明者】
【氏名】松井 利裕
(72)【発明者】
【氏名】和田 浩孝
(72)【発明者】
【氏名】木野 義浩
(72)【発明者】
【氏名】竹岡 秀弥
(72)【発明者】
【氏名】阪梨 泰弘
(72)【発明者】
【氏名】清水辺 大
(72)【発明者】
【氏名】中村 大五郎
(72)【発明者】
【氏名】三浦 吉典
【テーマコード(参考)】
3F110
4L036
4L045
【Fターム(参考)】
3F110AA01
3F110CA04
3F110DA09
3F110DB11
4L036AA01
4L036MA04
4L036MA33
4L036PA49
4L045BA03
4L045DB01
4L045DB11
4L045DC01
(57)【要約】
【課題】糸道ガイド機構や繊維機械の損傷を抑制可能とする。
【解決手段】ローラ71を回転自在に支持する支持軸71aの外周面に当接する第1支持部74aと、支持軸に当接可能な第2支持部75aと、第2支持部75aを第1支持部74aとの間で支持軸を挟み込む方向に向かって付勢する付勢部材と、を備えている。前後方向に直交しており、且つ、巻掛中心C1と回転中心C2とを通る仮想直線を第1仮想直線L1とし、前後方向及び第1仮想直線L1の延びる方向の両方に直交する方向に延びており、回転中心C2を通る仮想直線を第2仮想直線L2としたとき、第2支持部75aは、支持軸71aの外周面における第2仮想直線L2を挟んで巻掛中心C1とは反対側の部分に当接する。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行する繊維をガイド可能な糸道ガイド機構であって、
前記繊維を巻き掛け可能なローラと、
前記ローラを回転自在に支持する支持軸と、
前記支持軸の軸方向に関して少なくとも前記ローラの一方側において前記支持軸の外周面に当接する第1支持部と、
前記第1支持部との間で前記支持軸を挟む位置に配置されており、前記軸方向に関して少なくとも前記ローラの前記一方側とは反対の他方側において前記支持軸の外周面に当接可能な第2支持部と、
前記第2支持部を前記第1支持部との間で前記支持軸を挟み込む方向に向かって付勢する付勢部材と、を備えており、
前記第1支持部及び前記第2支持部によって前記支持軸を挟持することで前記支持軸を支持し、
前記軸方向に直交しており、且つ、前記ローラにおいて前記繊維が巻き掛けられる部分における前記ローラの周方向の中心位置である巻掛中心と前記支持軸の回転中心とを通る仮想直線を第1仮想直線とし、前記軸方向及び前記第1仮想直線の延びる方向の両方に直交する方向に延びており、前記回転中心を通る仮想直線を第2仮想直線としたとき、前記第2支持部は、前記支持軸の外周面における前記第2仮想直線を挟んで前記巻掛中心とは反対側の部分に当接することを特徴とする糸道ガイド機構。
【請求項2】
前記第1支持部及び前記第2支持部の少なくとも一方は、前記支持軸の外周面に対向する部分に切欠が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の糸道ガイド機構。
【請求項3】
前記第1支持部及び前記第2支持部が取り付けられる基台と、
前記支持軸を前記基台に対して直接的又は間接的に連結する連結具と、をさらに備えていることを特徴とする請求項1に記載の糸道ガイド機構。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の糸道ガイド機構を備えていることを特徴とする繊維機械。
【請求項5】
前記第1支持部及び前記第2支持部による前記支持軸の支持が解除されたことを検知可能なセンサと、
前記繊維の走行方向において少なくとも前記糸道ガイド機構よりも下流側で、前記繊維を搬送する搬送機構と、
制御装置と、をさらに備えており、
前記制御装置は、前記センサにより前記支持軸の支持が解除されたことが検知された場合に、前記搬送機構による前記繊維の搬送を停止させることを特徴とする請求項4に記載の繊維機械。
【請求項6】
前記繊維の走行方向において前記糸道ガイド機構よりも上流側に配置されており、走行する前記繊維をガイド可能な第1ガイド部材と、
前記繊維の走行方向において前記糸道ガイド機構よりも下流側に配置されており、走行する前記繊維をガイド可能な第2ガイド部材と、をさらに備えており、
前記第1ガイド部材と前記第2ガイド部材との間の糸道は、前記第1支持部及び前記第2支持部による前記支持軸の支持が解除されたとき、前記第1支持部及び前記第2支持部により前記支持軸が支持されているときに比べて短くなることを特徴とする請求項4に記載の繊維機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行する繊維をガイドする糸道ガイド機構、及び、糸道ガイド機構を備えた繊維機械に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維機械においては、走行する繊維をガイドする糸道ガイド機構が設けられている。例えば、特許文献1には、巻き出し機構から供給された繊維束を巻き付けヘッドにより被巻き付け部材に案内し、被巻き付け部材に繊維束を巻き付けるフィラメントワインディング装置が開示されている。かかるフィラメントワインディング装置には、巻き出し機構と巻き付けヘッドとの間に、走行する繊維束をガイドするガイドローラ(糸道ガイド機構)が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-142720号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のような繊維機械において、繊維の解舒不良や繊維の絡まり等により、糸道ガイド機構よりも繊維の走行方向の上流側において給糸が完全に停止又は滞った場合には、糸道ガイド機構にガイドされている繊維に大きな張力が生じる。これにより、糸道ガイド機構等、繊維機械に設けられている各種の機構や部材に大きな力が加わり、糸道ガイド機構や繊維機械が損傷するという問題が生じる。
【0005】
本発明の目的は、糸道ガイド機構や繊維機械の損傷を抑制可能な糸道ガイド機構、及び、糸道ガイド機構を備えた繊維機械を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明にかかる糸道ガイド機構は、走行する繊維をガイド可能な糸道ガイド機構であって、前記繊維を巻き掛け可能なローラと、前記ローラを回転自在に支持する支持軸と、前記支持軸の軸方向に関して少なくとも前記ローラの一方側において前記支持軸の外周面に当接する第1支持部と、前記第1支持部との間で前記支持軸を挟む位置に配置されており、前記軸方向に関して少なくとも前記ローラの前記一方側とは反対の他方側において前記支持軸の外周面に当接可能な第2支持部と、前記第2支持部を前記第1支持部との間で前記支持軸を挟み込む方向に向かって付勢する付勢部材と、を備えており、前記第1支持部及び前記第2支持部によって前記支持軸を挟持することで前記支持軸を支持し、前記軸方向に直交しており、且つ、前記ローラにおいて前記繊維が巻き掛けられる部分における前記ローラの周方向の中心位置である巻掛中心と前記支持軸の回転中心とを通る仮想直線を第1仮想直線とし、前記軸方向及び前記第1仮想直線の延びる方向の両方に直交する方向に延びており、前記回転中心を通る仮想直線を第2仮想直線としたとき、前記第2支持部は、前記支持軸の外周面における前記第2仮想直線を挟んで前記巻掛中心とは反対側の部分に当接する。
【0007】
本発明では、ローラには、ローラに巻き掛けられた繊維により第1仮想直線上において巻掛中心から回転中心に向かう方向の力が加わる。かかる力は、繊維に生じる張力が大きくなるほど大きくなる。繊維に大きな張力が生じ、上記のローラに加わる力が大きくなった場合には、第2支持部は付勢部材の付勢力に抗う方向に移動する。このとき、第1支持部及び第2支持部による支持軸の支持が解除される。これにより繊維に生じた張力が緩和させるため、糸道ガイド機構や該糸道ガイド機構が設けられる繊維機械の損傷を抑制可能である。
【0008】
第2の発明にかかる糸道ガイド機構では、第1の発明において、前記第1支持部及び前記第2支持部の少なくとも一方は、前記支持軸の外周面に対向する部分に切欠が形成されている。
【0009】
本発明では、第1支持部及び第2支持部における切欠が形成された部分では、軸方向から視て複数個所で支持軸に接触する。したがって、切欠が形成されていない平面が支持軸に当接し、軸方向から視て1か所のみが支持軸に接触する場合に比べて、支持軸を安定的に支持できる。
【0010】
第3の発明にかかる糸道ガイド機構は、第1又は第2の発明において、前記第1支持部及び前記第2支持部が取り付けられる基台と、前記支持軸を前記基台に対して直接的又は間接的に連結する連結具と、をさらに備えている。
【0011】
本発明では、繊維に大きな張力が生じ、第1支持部及び第2支持部による支持軸の支持が解除された場合であっても、支持軸が基台から遠く離れたところに行くのを防ぐことができる。したがって、支持軸の紛失を防ぐことができる。また、支持軸を第1支持部及び第2支持部にセットし直す作業が簡易となる。
【0012】
第4の発明にかかる繊維機械は、第1~第3のいずれかの発明にかかる糸道ガイド機構を備えている。
【0013】
本発明では、ガイドする繊維に大きな張力が生じた場合に繊維に生じた張力を緩和できる糸道ガイド機構を備えているので、繊維機械の損傷を抑制可能である。
【0014】
第5の発明にかかる繊維機械は、第4の発明において、前記第1支持部及び前記第2支持部による前記支持軸の支持が解除されたことを検知可能なセンサと、前記繊維の走行方向において少なくとも前記糸道ガイド機構よりも下流側で、前記繊維を搬送する搬送機構と、制御装置と、をさらに備えており、前記制御装置は、前記センサにより前記支持軸の支持が解除されたことが検知された場合に、前記搬送機構による前記繊維の搬送を停止させる。
【0015】
本発明では、繊維に大きな張力が生じ、第1支持部及び第2支持部による支持軸の支持が解除された場合に、搬送機構による繊維の搬送を停止させることができる。したがって、繊維に大きな張力が生じることに起因する繊維機械の損傷を確実に抑制することができる。
【0016】
第6の発明にかかる繊維機械は、第4又は第5の発明において、前記繊維の走行方向において前記糸道ガイド機構よりも上流側に配置されており、走行する前記繊維をガイド可能な第1ガイド部材と、前記繊維の走行方向において前記糸道ガイド機構よりも下流側に配置されており、走行する前記繊維をガイド可能な第2ガイド部材と、をさらに備えており、前記第1ガイド部材と前記第2ガイド部材との間の糸道は、前記第1支持部及び前記第2支持部による前記支持軸の支持が解除されたとき、前記第1支持部及び前記第2支持部により前記支持軸が支持されているときに比べて短くなる。
【0017】
本発明では、第1支持部及び第2支持部による支持軸の支持が解除されたとき、第1ガイド部材と第2ガイド部材との間の糸道が短くなるので、繊維に生じた張力を確実に緩和できる。したがって、繊維機械の損傷を確実に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本実施形態に係るフィラメントワインディング装置を示す斜視図である。
図2】フィラメントワインディング装置の電気的構成を示すブロック図である。
図3】(a)、(b)は、ヘリカル巻ユニットの正面図である。
図4】前処理部を前方側から視た図である。
図5】糸道ガイド機構の左前方からの斜視図である。
図6】糸道ガイド機構を前方側から視た図である。
図7】糸道ガイド機構の右後方からの斜視図である。
図8図5のVIII-VIII線に沿う断面図である。
図9】(a)は第1支持部及び第2支持部によって支持軸が支持されている状態を示す図であり、(b)は第1支持部及び第2支持部による支持軸の支持が解除された状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(フィラメントワインディング装置)
本発明の実施形態について説明する。図1は、本実施形態に係るフィラメントワインディング装置1を示す斜視図である。図2は、フィラメントワインディング装置1の電気的構成を示すブロック図である。説明の便宜上、図1に示す方向(前後方向及び左右方向)を定義する。前後方向及び左右方向は、水平方向と平行な方向である。前後方向と左右方向は互いに直交する。また、前後方向及び左右方向の両方と直交する方向を上下方向と定義する。上下方向は、重力が作用する鉛直方向である。
【0020】
フィラメントワインディング装置1は、ライナーLに複数の繊維束(図1では図示省略)を同時に巻き付ける多給糸型のものである。フィラメントワインディング装置1は、巻付装置2と、複数のクリールスタンド3と、複数の前処理部4とを備える。フィラメントワインディング装置1は、全体として概ね左右対称に構成されている。巻付装置2は、円筒状のライナーLに繊維束を巻き付けるための装置である。繊維束は、例えば、炭素繊維などの繊維材料に熱硬化性又は熱可塑性の合成樹脂材が含浸されたものである。ライナーLの形状は、最終製品に応じて異なりうる。例えば最終製品が圧力タンクである場合、図1に示すように、円筒部の両側にドーム部を有するライナーLが使用される。ライナーLの材料としては、高強度アルミニウム、金属、樹脂などが用いられる。ライナーLに繊維束を巻き付けた後、焼成などの熱硬化工程又は冷却工程を経ることにより、高強度の圧力タンクなどの最終製品を得ることができる。
【0021】
複数のクリールスタンド3は、例えば、巻付装置2の左右方向における両側に配置されている。複数のクリールスタンド3は、例えば、前後方向において巻付装置2の後端部の近傍に配置されている。各クリールスタンド3は、例えば、前後方向に延びる略直方体状のフレーム11を有する。フレーム11には、例えば、1以上のボビンホルダ群12が設けられている。ボビンホルダ群12は、例えば、後述するヘリカル巻ユニット50の複数のノズルユニット53の各々に対応して設けられている。各ボビンホルダ群12は、例えば前後方向に並んだ複数の(本実施形態では5つの)ボビンホルダ13を有する。各ボビンホルダ13は、例えば、左右方向に延びる軸を有する。各ボビンホルダ13は、繊維束が巻かれたボビン14を回転可能に支持する。本実施形態では、例えば9つのボビンホルダ群12が設けられ、その各々に5つのボビン14が装着されている(すなわち、計45個のボビン14が配置されている)。各ボビンホルダ群12に属する5つのボビン14から、5本の繊維束がまとめて供給される。クリールスタンド3から供給される複数の繊維束は、ヘリカル巻ユニット50によってライナーLに巻き付けられる。なお、図1においては2つのクリールスタンド3が図示されているが、クリールスタンド3の数はこれに限られない。また、図面の煩雑化を避けるため、図1においては、複数のボビンホルダ群12のうち1つのみが図示されている。
【0022】
複数の前処理部4は、複数の繊維束に所定の前処理(例えば張力付与等)を施すように構成されている。複数の前処理部4は、例えば、繊維束の走行方向において、対応するクリールスタンド3と、ヘリカル巻ユニット50(後述)との間に配置されている。
【0023】
(巻付装置)
巻付装置2のより具体的な構成について説明する。巻付装置2は、基台20と、支持ユニット30(第1支持ユニット31及び第2支持ユニット32)と、フープ巻ユニット40と、ヘリカル巻ユニット50と、を備える。
【0024】
基台20は、支持ユニット30、フープ巻ユニット40、及び、ヘリカル巻ユニット50を支持する。基台20の上面には、前後方向に延びる複数のレール21が設置されている。支持ユニット30及びフープ巻ユニット40は、レール21に沿って前後方向に移動可能である。一方、ヘリカル巻ユニット50は、例えば、基台20に対する位置が固定されている。第1支持ユニット31、フープ巻ユニット40、ヘリカル巻ユニット50、及び、第2支持ユニット32は、この順番で前側から後側に配置されている。
【0025】
支持ユニット30は、第1支持ユニット31及び第2支持ユニット32を有する。第1支持ユニット31は、フープ巻ユニット40よりも前側に配置されている。第2支持ユニット32は、ヘリカル巻ユニット50よりも後側に配置されている。支持ユニット30は、ライナーLの軸方向(前後方向)に延びる支持軸33を介して、ライナーLを軸周りに回転可能に支持する。支持ユニット30は、移動用モータ34及び回転用モータ35を有する(図2参照)。移動用モータ34は、支持ユニット30(第1支持ユニット31及び第2支持ユニット32)をレール21に沿って前後方向に移動させる。回転用モータ35は、支持軸33を回転させることでライナーLを軸周りに回転させる。移動用モータ34及び回転用モータ35の動作は、制御装置5によって制御される。
【0026】
フープ巻ユニット40は、ライナーLの周面にフープ巻きを施す。フープ巻きとは、ライナーLの軸方向に概ね直角な方向に繊維束を巻き付ける巻き方のことである。フープ巻ユニット40は、例えば、本体部41と、回転部材42と、複数(本実施形態では5個)のボビンホルダ43と、を有する。本体部41は、レール21に沿って前後方向に移動可能である。回転部材42は、ライナーLが通過可能な通過穴44が形成された円環状の部材である。回転部材42は、ライナーLの軸周りに回転可能な状態で、本体部41に支持されている。複数のボビンホルダ43は、周方向に等間隔で回転部材42に取り付けられている。各ボビンホルダ43は、前後方向に延びる回転軸を有しており、繊維束が巻かれたボビン(図示省略)を回転可能に支持する。
【0027】
フープ巻ユニット40は、移動用モータ46及び回転用モータ47を有する(図2参照)。移動用モータ46は、本体部41をレール21に沿って前後方向に移動させる。回転用モータ47は、回転部材42をライナーLの軸周りに回転させる。移動用モータ46及び回転用モータ47の動作は、制御装置5によって制御される。フープ巻きの実行時には、制御装置5は、本体部41をレール21に沿って往復移動させながら回転部材42を回転させる。これによって、ライナーLの周りで回転している各ボビンから繊維束が引き出され、複数の繊維束がライナーLの周面に同時にフープ巻きされる。
【0028】
ヘリカル巻ユニット50は、ライナーLの周面にヘリカル巻きを施す。ヘリカル巻きとは、ライナーLの軸方向に概ね平行な方向に繊維束を巻き付ける巻き方のことである。ヘリカル巻ユニット50は、例えば、本体部51と、フレーム部材52と、複数(本実施形態では9個)のノズルユニット53と、を有する。本体部51は、例えば基台20に固設されている。フレーム部材52は、ライナーLが通過可能な通過穴54が形成された円環状の部材である。フレーム部材52は、本体部51に支持されている。複数のノズルユニット53は、ライナーLの軸を中心に放射状に配置されている。各ノズルユニット53は、フレーム部材52に取り付けられている。
【0029】
図3(a)及び図3(b)は、ヘリカル巻ユニット50の正面図である。詳細には、図3(a)は、ライナーLの円筒部に繊維束Fを巻き付けている状態を図示したものである。図3(b)は、ライナーLのドーム部に繊維束Fを巻き付けている状態を図示したものである。ノズルユニット53は、繊維束FをライナーLに案内するガイド体55を有する。ガイド体55は、ライナーLの径方向(以下、単に径方向と言う)に延びており、径方向に移動可能且つ径方向に延びる回転軸周りに回転可能に構成されている。各ノズルユニット53の径方向外側には、ガイドローラ56が配置されている。クリールスタンド3の各ボビンホルダ群12から引き出された5本の繊維束Fは、ガイドローラ56を経由して何れかのガイド体55に導入され、ガイド体55の先端からライナーLに供給される。
【0030】
ヘリカル巻ユニット50は、ガイド移動用モータ57及びガイド回転用モータ58を有する(図2参照)。ガイド移動用モータ57は、各ガイド体55を一斉に径方向に移動させる。ガイド回転用モータ58は、各ガイド体55を一斉に回転軸周りに回転させる。ガイド移動用モータ57及びガイド回転用モータ58の動作は、制御装置5によって制御される。ヘリカル巻きの実行時には、制御装置5は、ライナーLを軸周りにゆっくり回転させながら通過穴54を通過させる。これとともに、制御装置5は、各ノズルユニット53のガイド体55を、径方向に適宜移動させつつ回転軸周りに適宜回転させる。これによって、各ノズルユニット53のガイド体55の先端から5本の繊維束Fが適切に引き出され、合計で45本の繊維束FがライナーLの周面に同時にヘリカル巻きされる。
【0031】
さらに、フィラメントワインディング装置1は、複数の搬送ローラ(図4に示す搬送ローラ63a~63cを含む)と、これら複数の搬送ローラを駆動する搬送用モータ59(図2参照)と、を備えている。複数の搬送ローラは、各クリールスタンド3のボビンホルダ群12から引き出された複数の繊維束Fが、前処理部4を経由して、ヘリカル巻ユニット50からライナーLに向けて送り出されるように搬送する。搬送用モータ59の動作は、制御装置5によって制御される。なお、複数の搬送ローラは、1つの搬送用モータ59で駆動されてもよい。また、複数の搬送ローラを駆動するための搬送用モータ59が複数設けられていてもよい。
【0032】
(前処理部)
続いて、図4をさらに参照しつつ、前処理部4のより具体的な構成について説明する。前処理部4は、対応するクリールスタンド3の前方に配置されている。前処理部4は、対応するクリールスタンド3から供給された複数の繊維束Fに対して、張力付与等の前処理を施す。そして、前処理部4は、前処理を施した複数の繊維束Fをヘリカル巻ユニット50に供給する。
【0033】
前処理部4は、図4に示すように、基台60、ガイドローラ61a~61h、ダンサーローラ62、搬送ローラ63a~63c、ダンサーローラ64及びテンションローラ65を主に備えている。上記の各ローラは、基台60における前方の側面60a(前後方向に対して略直交する面)に取り付けられている。上記の各ローラは、軸方向が前後方向となる姿勢で配置されている。上記の各ローラには、対応するクリールスタンド3から供給された複数の繊維束Fが巻き掛けられる。上記のローラは、繊維束Fの走行方向の上流側から、ガイドローラ61a、61b、ダンサーローラ62、ガイドローラ61c、搬送ローラ63a~63c、ダンサーローラ64、ガイドローラ61d、テンションローラ65、ガイドローラ61e~61hの順で並んでいる。
【0034】
ガイドローラ61a~61hは、走行する繊維束Fをガイド可能である。なお、ガイドローラ61bは、後で詳述する糸道ガイド機構70の一部である。また、ガイドローラ61hは、糸道ガイド機構80の一部である。
【0035】
ガイドローラ61a~61cは、基台60の側面60aにおける上端部に配置されている。右方から左方に向かって、ガイドローラ61a、ガイドローラ61b、ガイドローラ61cの順で並んでいる。ガイドローラ61b及びガイドローラ61cは、ほぼ同じ高さに位置している。ガイドローラ61aは、ガイドローラ61b及びガイドローラ61cよりもやや下方に位置している。
【0036】
ダンサーローラ62は、左右方向に関してガイドローラ61bとガイドローラ61cとの間に位置している。ダンサーローラ62は、ガイドローラ61b及びガイドローラ61cよりも下方において上下方向に沿って移動可能に構成されている。ダンサーローラ62には、ウェイト62aにより下向きに荷重が加えられている。したがって、繊維束Fに弛みが生じるとダンサーローラ62が下方に移動し、繊維束Fの弛みを除去できる。
【0037】
搬送ローラ63a~63cは、ガイドローラ61cよりも左方に位置している。上方から下方に向かって、搬送ローラ63a、搬送ローラ63b、搬送ローラ63cの順で並んでいる。搬送ローラ63a及び搬送ローラ63cは、左右方向に関する位置がほぼ同じである。搬送ローラ63bは、搬送ローラ63a及び搬送ローラ63cよりも右方に位置している。搬送ローラ63a~63cは、搬送用モータ59(図2参照)の駆動により回転し、繊維束Fに搬送力を付与する。
【0038】
ガイドローラ61dは、搬送ローラ63cよりも下方且つやや左方に位置する。ダンサーローラ64は、上下方向に関して搬送ローラ63cとガイドローラ61dとの間に位置している。ダンサーローラ64は、搬送ローラ63c及びガイドローラ61dよりも右方において、モータ(不図示)等により駆動されて左右方向に沿って移動可能に構成されている。ダンサーローラ64が左右方向に移動することで、繊維束Fの走行速度の変動を吸収し、繊維束Fの張力を一定に維持できる。
【0039】
ガイドローラ61eは、ガイドローラ61dよりも下方且つ左方に位置する。テンションローラ65は、上下方向に関してガイドローラ61dとガイドローラ61eとの間に位置している。テンションローラ65は、ガイドローラ61d及びガイドローラ61eよりも右方において、エアシリンダ65aにより駆動されて左右方向に沿って移動可能に構成されている。テンションローラ65は、左右に移動することで、繊維束Fの張力を調整可能である。
【0040】
ガイドローラ61f、61gは、ガイドローラ61eの下方に位置している。ガイドローラ61f、61gは、ほぼ同じ高さに位置する。ガイドローラ61f、61gは、基台60における側面60aの下端部に配置されている。ガイドローラ61fは、ガイドローラ61eよりも右方に位置している。ガイドローラ61gは、ガイドローラ61eよりも左方に位置している。ガイドローラ61hは、ガイドローラ61gよりも上方であって、ガイドローラ61gよりもやや左方に位置している。ガイドローラ61hは、上下方向に関して基台60における側面60aの中央部に位置している。なお、図4において配置されている各ガイドローラ61a~61h、ダンサーローラ62、搬送ローラ63a~63c、ダンサーローラ64及びテンションローラ65の数や配置はこれに限られない。
【0041】
続いて、図5図9を参照しつつ、糸道ガイド機構70の構成について説明する。糸道ガイド機構70は、上述のガイドローラ61bを含んでいる。ガイドローラ61bは、繊維束Fを巻き掛け可能なローラ71と、ローラ71を回転自在に支持する支持軸71aと、で構成される。糸道ガイド機構70は、上述のガイドローラ61bに加えて、支柱72、保持部73、第1支持部材74、第2支持部材75及び付勢部材76を主に備えている。
【0042】
糸道ガイド機構70は、第1支持部材74に設けられた第1支持部74aと、第2支持部材75に設けられた第2支持部75aとで、支持軸71aの軸方向におけるローラ71の両側をそれぞれ挟持して、支持軸71aを支持する。前処理部4は、第1支持部74a及び第2支持部75aによる支持軸71aの支持が解除されたことを検知可能なセンサ79(図2参照)を備えている。センサ79は、例えば公知の光学式センサである。
【0043】
支持軸71aは、軸方向が前後方向となる姿勢で支持される。図7に示すように、支持軸71aの後方側の端部には、一端部が基台60に取り付けられた連結具78の他端部が取り付けられている。すなわち、支持軸71aは、連結具78によって基台60に連結されている。
【0044】
支柱72は、基台60の側面60aに取り付けられている。支柱72は、前後方向に沿って延びている。保持部73は、支柱72の下面に取り付けられている。すなわち、保持部73は、前後方向に沿って延びる基部73aと、基部73aにおける前後方向の両端部にそれぞれ設けられたアーム部73bと、を有している。アーム部73bは、基部73aから左方に向かって延びている。図8に示すように、基部73aには、ナット77aが取り付けられている。ナット77aは、左右方向に沿って延びている。ナット77aは、基部73aよりも左方に突き出している。
【0045】
第1支持部材74は、図7に示すように、保持部73の基部73aにおける前後方向の両端部にそれぞれ取り付けられている。すなわち、第1支持部材74は、支柱72及び保持部73により基台60に対して取り付けられている。第1支持部材74は、図6に示すように、前後方向から視て上下方向に沿って延びている。第1支持部材74の下端部が、第2支持部材75の第2支持部75aとの間で支持軸71aを挟持する第1支持部74aとなっている。各第1支持部材74の第1支持部74aは、前後方向(支持軸71aの軸方向)に関してローラ71の両側において支持軸71aの外周面にそれぞれ当接可能である。
【0046】
第2支持部材75は、保持部73の基部73a及び第1支持部材74よりも左方に位置している。第2支持部材75は、図5に示すように、保持部73の基部73aと対向する対向部75bと、対向部75bの下端部における前後方向の両端部からそれぞれ延びる延在部75cと、を有している。延在部75cの先端部が、第1支持部材74の第1支持部74aとの間で支持軸71aを挟持する第2支持部75aとなっている。すなわち、第2支持部75aは、第1支持部74aとの間で支持軸71aを挟む位置に配置されている。各延在部75cの第2支持部75aは、前後方向(支持軸71aの軸方向)に関してローラ71の両側において支持軸71aの外周面にそれぞれ当接可能である。
【0047】
ここで、図9(a)に示すように、ローラ71において繊維束Fが巻き掛けられる部分におけるローラ71の周方向の中心位置を巻掛中心C1とする。また、前後方向と直交しており、且つ、巻掛中心C1と支持軸71aの回転中心C2とを通る仮想直線を第1仮想直線L1とする。さらに、前後方向及び第1仮想直線L1の延びる方向の両方に直交する方向に延びており、支持軸71aの回転中心C2を通る仮想直線を第2仮想直線L2とする。このとき、第2支持部75aは、支持軸71aの外周面における第2仮想直線L2を挟んで巻掛中心C1とは反対側の部分に当接する。
【0048】
図6に示すように、第2支持部75aにおける支持軸71aの外周面に対向する部分には、切欠75eが形成されている。第2支持部75aに切欠75eが形成されていることで、第2支持部75aには、支持軸71aの外周面に対向する2つの平面75e1、75e2が形成されている。2つの平面75e1、75e2の垂線は、前後方向に直交する面内で交わる。第2支持部75aは、2つの平面75e1、75e2においてそれぞれ支持軸71aの外周面に当接する。すなわち、第2支持部75aは、2か所で支持軸71aの外周面に当接する。
【0049】
第2支持部材75は、図5に示すように、対向部75bの下端部が、保持部73の一対のアーム部73bの間に配置されている。第2支持部材75は、一対のアーム部73bに掛け渡された軸73cに搖動可能に支持されている。軸73cは、前後方向に沿って延びている。すなわち、第2支持部材75は、支柱72及び保持部73により基台60に対して取り付けられている。
【0050】
図6に示すように、前後方向から視たとき、対向部75bと延在部75cとは互いに異なる方向に延びている。すなわち、第2支持部材75は、前後方向から視たとき屈曲した形状を有している。より詳細には、対向部75bが上下方向に沿って延びる姿勢であるとき、延在部75cは対向部75bの下端部から右下方に向かって延びている。
【0051】
図5及び図8に示すように、第2支持部材75の対向部75bには、ボルト77bが差し込まれる切欠75dが形成されている。ボルト77bは、左右方向に沿って延びている。ボルト77bは、保持部73の基部73aと第2支持部材75の対向部75bとの間において、保持部73の基部73aに取り付けられたナット77aに嵌め込まれている。ナット77aとボルト77bとの結合部分には、付勢部材76であるバネが嵌め込まれている。付勢部材76は、例えばゴム等の弾性部材であってもよい。付勢部材76は、保持部73の基部73aと第2支持部材75の対向部75bとの間に配置されている。付勢部材76により、第2支持部材75には軸73cを中心に図6及び図8中反時計回りに搖動する方向の付勢力が付与されている。すなわち、付勢部材76は、第2支持部75aを第1支持部74aとの間で支持軸71aを挟み込む方向に向かって付勢する。
【0052】
続いて、糸道ガイド機構70の機能について説明する。図9(a)に示すように、ローラ71には、ローラ71に巻き掛けられた繊維束Fにより第1仮想直線L1上において巻掛中心C1から回転中心C2に向かう方向の力F0が加わる。力F0は、繊維束Fに生じる張力が大きくなるほど大きくなる。
【0053】
繊維束Fに大きな張力が生じ、ローラ71に加わる力F0が所定値以上となると、第2支持部材75が付勢部材76の付勢力に抗う方向に搖動する。このとき、第2支持部材75の第2支持部75aは、図9(a)において破線で示すように、第1支持部材74の第1支持部74aから遠ざかる方向に移動する。これにより、図9(b)に示すように、第1支持部74a及び第2支持部75aによる支持軸71aの支持が解除される。
【0054】
このように、糸道ガイド機構70においては、繊維束Fに大きな張力が生じた際に、ガイドローラ61b(ローラ71及び支持軸71a)が糸道ガイド機構70から外れるようになっている。なお、外れたガイドローラ61b(ローラ71及び支持軸71a)は、連結具78により基台60から吊り下がった状態となる。
【0055】
制御装置5は、センサ79により、第1支持部74a及び第2支持部75aによる支持軸71aの支持が解除されたことが検知された場合に、搬送用モータ59を停止させ、繊維束Fの搬送を停止させる。このとき、制御装置5は、クリールスタンド3からヘリカル巻ユニット50までの繊維束Fの搬送を停止させる。
【0056】
ここで、図4において、ガイドローラ61bが糸道ガイド機構70から外れた場合における、繊維束Fの走行方向においてガイドローラ61bの前後に位置するガイドローラ61aとダンサーローラ62との間の糸道を破線で示す。なお、ガイドローラ61aは、本発明の「第1ガイド部材」に相当する。ダンサーローラ62は、本発明の「第2ガイド部材」に相当する。かかる糸道は、ガイドローラ61bが糸道ガイド機構70に支持されている場合における、ガイドローラ61aとダンサーローラ62との間の糸道に比べて短い。すなわち、ガイドローラ61bは、糸道ガイド機構70から外れることで糸道が短くなるような位置に配置されている。ガイドローラ61bが糸道ガイド機構70に支持されている場合と、ガイドローラ61bが外れた場合との、糸道の長さの差は、ガイドローラ61bが外れてから繊維束Fの搬送が停止するまでの間に搬送される繊維束Fの長さよりも長い。したがって、繊維束Fに対して、ガイドローラ61b(ローラ71)に加わる力F0が所定値以上となるような大きさの張力が生じた場合、ガイドローラ61bが糸道ガイド機構70から外れることで、繊維束Fに対して大きな張力が生じるのを抑制できる。
【0057】
糸道ガイド機構80も、糸道ガイド機構70と同様の構成を有しており、繊維束Fに大きな張力が生じた際に、ガイドローラ61hが外れる構造となっている。糸道ガイド機構80の具体的な構成の説明は、省略する。また、前処理部4は、ガイドローラ61hの支持軸の支持が解除されたことを検知可能なセンサ89(図2参照)を備えている。制御装置5は、センサ89により、ガイドローラ61hの支持軸の支持が解除されたことが検知された場合に、搬送用モータ59を停止させ、繊維束Fの搬送を停止させる。ガイドローラ61hは、ガイドローラ61bと同様に、外れることで糸道が短くなるような位置に配置されている。
【0058】
(実施形態の特徴)
以上のように、本実施形態の糸道ガイド機構70は、繊維束Fを巻き掛け可能なローラ71と、ローラ71を回転自在に支持する支持軸71aと、前後方向(支持軸71aの軸方向)に関してローラ71の両側において支持軸71aの外周面にそれぞれ当接する第1支持部74aと、第1支持部74aとの間で支持軸71aを挟む位置に配置されおり、前後方向に関してローラ71の両側において支持軸71aの外周面にそれぞれ当接可能な第2支持部75aと、第2支持部75aを第1支持部74aとの間で支持軸71aを挟み込む方向に向かって付勢する付勢部材76と、を備えており、第1支持部74a及び第2支持部75aによって支持軸71aを挟持することで、支持軸71aを支持する。そして、前後方向に直交しており、且つ、ローラ71において繊維束Fが巻き掛けられる部分におけるローラ71の周方向の中心位置である巻掛中心C1と支持軸71aの回転中心C2とを通る仮想直線を第1仮想直線L1とし、前後方向及び第1仮想直線L1の延びる方向の両方に直交する方向に延びており、回転中心C2を通る仮想直線を第2仮想直線L2としたとき、第2支持部75aは、支持軸71aの外周面における第2仮想直線L2を挟んで巻掛中心C1とは反対側の部分に当接する。
【0059】
上述の構成により、ローラ71には、ローラ71に巻き掛けられた繊維束Fにより第1仮想直線L1上において巻掛中心C1から回転中心C2に向かう方向の力F0が加わる。かかる力F0は、繊維束Fに生じる張力が大きくなるほど大きくなる。繊維束Fに大きな張力が生じ、上記のローラ71に加わる力F0が所定値以上大きくなった場合には、第2支持部75aは付勢部材76の付勢力に抗う方向に移動する。このとき、第1支持部74a及び第2支持部75aによる支持軸71aの支持が解除される。よって、糸道ガイド機構70や前処理部4、ヘリカル巻ユニット50の損傷を抑制可能である。
【0060】
また、上述の実施形態の糸道ガイド機構70では、第2支持部75aは、支持軸71aの外周面に対向する部分に切欠75eが形成されている。したがって、第2支持部75aにおける切欠75eが形成された部分では、前後方向から視て複数個所で支持軸71aに接触する。よって、切欠75eが形成されていない平面が支持軸71aに当接し、前後方向から視て1か所のみが支持軸71aに接触する場合に比べて、支持軸71aを安定的に支持できる。
【0061】
さらに、上述の実施形態の糸道ガイド機構70は、第1支持部74a及び前記第2支持部75aが取り付けられる基台60と、支持軸71aを基台60に対して連結する連結具78をさらに備えている。したがって、繊維束Fに大きな張力が生じ、第1支持部74a及び第2支持部75aによる支持軸71aの支持が解除された場合であっても、支持軸71aが基台60から遠く離れたところに行くのを防ぐことができる。よって、支持軸71aの紛失を防ぐことができる。また、支持軸71aを第1支持部74a及び第2支持部75aにセットし直す作業が簡易となる。
【0062】
さらに、上述の実施形態のフィラメントワインディング装置1は、糸道ガイド機構70と、第1支持部74a及び前記第2支持部75aによる支持軸71aの支持が解除されたことを検知可能なセンサ79と、搬送ローラ63a~63cを含む複数の搬送ローラを駆動するために搬送用モータ59と、制御装置5と、を備えている。そして、制御装置5は、センサ79により支持軸71aの支持が解除されたことが検知された場合に、搬送用モータ59を停止させ、繊維束Fの搬送を停止させる。したがって、繊維束Fに大きな張力が生じ、第1支持部74a及び第2支持部75aによる支持軸71aの支持が解除された場合に、繊維束Fの搬送を停止させることができる。よって、繊維束Fに大きな張力が生じることに起因して、フィラメントワインディング装置1に設けられた各種の機構や部材が損傷するのを確実に抑制することができる。
【0063】
加えて、上述の実施形態のフィラメントワインディング装置1では、繊維束Fの走行方向においてガイドローラ61bの前後に位置するガイドローラ61aとダンサーローラ62との間の糸道は、ガイドローラ61bが糸道ガイド機構70から外れたとき、ガイドローラ61bが糸道ガイド機構70に支持されているときに比べて短くなる。したがって、ガイドローラ61bが糸道ガイド機構70から外れたとき、繊維束Fに生じた張力を確実に緩和できる。よって、フィラメントワインディング装置1に設けられた各種の機構や部材の損傷を確実に抑制することができる。
【0064】
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0065】
上述の実施形態においては、第1支持部74aが設けられる第1支持部材74が、保持部73の基部73aにおける前後方向の両端部にそれぞれ取り付けられている場合について説明したが、これには限定されない。すなわち例えば、2つの第1支持部材74は、保持部73と一体に形成されていてもよい。
【0066】
また、上述の実施形態においては、1つの第2支持部材75に2つの第2支持部75aが設けられている場合について説明したが、これには限定されない。すなわち例えば、2つの第2支持部材75に、第2支持部75aが1つずつ設けられていてもよい。
【0067】
加えて、上述の実施形態においては、第1支持部74aが前後方向(支持軸71aの軸方向)に関してローラ71の両側において支持軸71aの外周面に当接し、且つ、第2支持部75aが前後方向に関してローラ71の両側において支持軸71aの外周面に当接する場合について説明したが、これには限定されない。すなわち、第1支持部74aは前後方向に関して少なくともローラ71の一方側において支持軸71aの外周面に当接すればよい。また、第2支持部75aは前後方向に関して少なくともローラ71の他方側において支持軸71aの外周面に当接すればよい。よって例えば、第1支持部74aがローラ71よりも前方において支持軸71aの外周面に当接し、第2支持部75aがローラ71よりも後方において支持軸71aの外周面に当接するようにして、支持軸71aを挟持してもよい。
【0068】
加えて、上述の実施形態においては、第2支持部材75が、第2支持部材75と保持部73との間に配置された付勢部材76によって付勢されている場合について説明したが、これには限定されない。すなわち例えば、第2支持部材75は、前後方向に沿って延びる軸を中心に基台60に対して搖動可能に支持されており、第2支持部材75と基台60との間に配置されたねじりコイルばねによって付勢されていてもよい。
【0069】
さらに、上述の実施形態においては、第2支持部75aにおける支持軸71aの外周面に対向する部分に切欠75eが形成されている場合について説明したがこれには限定されない。かかる切欠は、第1支持部74a及び第2支持部75aの少なくとも一方に形成されていればよい。また、第1支持部74a及び第2支持部75aのいずれにも、このような切欠が形成されていなくてもよい。
【0070】
また、上述の実施形態においては、第2支持部75aに切欠75eが形成されていることで、第2支持部75aに、支持軸71aの外周面に対向する2つの平面75e1、75e2が形成されている。そして、第2支持部75aは、2つの平面75e1、75e2においてそれぞれ支持軸71aの外周面に当接する。しかしながら、切欠75eの形状はこれに限定されるものではない。すなわち例えば、切欠75eが形成されることで、3つ以上の平面が形成され、3つの平面においてそれぞれ支持軸71aの外周面に当接してもよい。また、切欠75eが形成されることで、支持軸71aの外周面に沿う形状の曲面が形成され、第2支持部75aが支持軸71aの外周面に面で当接してもよい。
【0071】
さらに、上述の実施形態においては、連結具78は、一端部が基台60に取り付けられており、他端部が支持軸71aに取り付けられている。すなわち、連結具78は、支持軸71aと基台60とを直接的に連結する。しかしながら、これには限定されない。すなわち例えば、連結具78の一端部は、基台60に取り付けられた支柱72や保持部73に取り付けられていてもよい。すなわち、連結具78は、支柱72や保持部73を介して、間接的に支持軸71aと基台60とを連結してもよい。また、支持軸71aは、連結具78により基台60に連結されていなくてもよい。
【0072】
加えて、上述の実施形態においては、ガイドローラ61b、61hは、外れることで糸道が短くなるような位置に配置されている場合について説明した。しかしながら、ガイドローラ61b、61hは、外れることで糸道が短くなるような位置に配置されていなくてもよい。
【0073】
また、上述の実施形態においては、制御装置5は、センサ79、89により、ガイドローラ61b、61hの支持軸の支持が解除されたことが検知された場合に、搬送用モータ59を停止させ、繊維束Fの搬送を停止させる場合について説明した。しかしながら、制御装置5のこのような制御は行われなくてもよい。
【0074】
さらに、上述の実施形態においては、繊維束Fの走行方向においてガイドローラ61bの前後に位置するガイドローラ61aとダンサーローラ62との間の糸道は、ガイドローラ61bが糸道ガイド機構70から外れたとき、ガイドローラ61bが糸道ガイド機構70に支持されているときに比べて短くなる場合について説明したが、これには限定されない。すなわち、かかる糸道は、ガイドローラ61bが糸道ガイド機構70から外れたとき、ガイドローラ61bが糸道ガイド機構70に支持されているときに比べて短くなくてもよい。
【0075】
さらに、上述の実施形態においては、フィラメントワインディング装置において走行する繊維束をガイド可能な糸道ガイド機構について説明したが、これには限定されない。本発明は、フィラメントワインディング装置以外の走行する繊維を取り扱う繊維機械に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0076】
1 フィラメントワインディング装置
5 制御装置
59 搬送用モータ(搬送機構)
60 基台
63a~63c 搬送ローラ(搬送機構)
70、80 糸道ガイド機構
71 ローラ
71a 支持軸
74a 第1支持部
75a 第2支持部
75e 切欠
76 付勢部材
78 連結具
79、89 センサ
C1 巻掛中心
C2 回転中心
L1 第1仮想直線
L2 第2仮想直線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9