(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173740
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】ペルオキシエステルまたはペルオキシカルボナートの調製方法
(51)【国際特許分類】
C07C 407/00 20060101AFI20241205BHJP
C07C 409/38 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
C07C407/00
C07C409/38
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024083353
(22)【出願日】2024-05-22
(31)【優先権主張番号】23176680
(32)【優先日】2023-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】509131443
【氏名又は名称】ヌーリオン ケミカルズ インターナショナル ベスローテン フェノーツハップ
【氏名又は名称原語表記】Nouryon Chemicals International B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100128484
【弁理士】
【氏名又は名称】井口 司
(72)【発明者】
【氏名】ビーク,ワルド ジョセフ エリザベス
(72)【発明者】
【氏名】ター ホースト,ビョルン
【テーマコード(参考)】
4H006
【Fターム(参考)】
4H006AA01
4H006AA02
4H006AC48
4H006AD16
4H006AD30
4H006BB31
4H006BC53
(57)【要約】 (修正有)
【課題】貯蔵安定性が改善され、ヒドロペルオキシド含有量が低下した、ペルオキシエステルまたはペルオキシカルボナートの調製方法を提供する。
【解決手段】ペルオキシエステルまたはペルオキシカルボナートの製造方法であって、
a)有機ヒドロペルオキシドを、塩基の存在下で、酸ハロゲン化物、酸無水物、またはハロギ酸塩と反応させることと、
b)工程a)の完了後、水層を分離する工程と、
c)工程b)で前記水層が分離された後に、前記有機ヒドロペルオキシドを対応するアルコールに還元することができる訳剤である還元剤を有機層に添加することと、
d)工程c)の前記混合物が、工程c)の前記混合物の前記pHを維持または増加させることによって、6.8よりも高いpHを有することを確実にすることと、
e)少なくとも5秒間、前記6.8よりも高いpHを維持することを含む、方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペルオキシエステルまたはペルオキシカルボナートを調製するための方法であって、
a) 有機ヒドロペルオキシドを、塩基の存在下で、酸ハロゲン化物、酸無水物、またはハロギ酸塩と反応させることと、
b) 工程a)の完了後、水層を分離する工程と、
c) 工程b)で前記水層が分離された後に、前記有機ヒドロペルオキシドを対応するアルコールに還元することができる訳剤である還元剤を有機層に添加することと、
d) 工程c)の前記混合物が、工程c)の前記混合物の前記pHを維持または増加させることによって、6.8よりも高いpHを有することを確実にすることと、
e) 少なくとも5秒間、前記6.8よりも高いpHを維持することととを含み、
前記方法が、
i 工程c)の前記混合物が、工程d)の前に6.8未満のpHを有し、工程d)では、工程c)の前記混合物のpHが、6.8よりも高いpHに増加され、かつ/または
ii 工程e)の完了後、前記pHが6.8未満のpHに減少されることを特徴とする、方法。
【請求項2】
工程c)で添加される前記還元剤が亜硫酸塩である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記亜硫酸塩が亜硫酸塩の水溶液である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
工程i)において、工程c)の前記混合物が、6.5以下のpHを有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
工程i)において、工程c)の前記混合物が、約4~約6.5のpHを有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
工程d)が、工程c)の前記混合物のpHが7.0よりも高いことを確実にすることを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
工程ii)で、前記pHが約6.5以下のpHまで低下される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記有機ヒドロペルオキシドが、前記一般式(II)で表される有機ヒドロペルオキシドから選択され、
【化1】
式中、
R
1およびR
-2が、水素、C
1-C
20アルキル、C
3-C
20シクロアルキル、C
6-C
20アリール、C
7-C
20アラルキル、およびC
7-C
20アルカリルを含む群から独立して選択され、あるいはR
1およびR
2が、C
3-C
12シクロアシル基を形成し、それらの基が、直鎖または分岐アルキル部分を含んでもよく、R
1およびR
2の各々が、ヒドロキシ、ヒドロペルオキシ、アルコキシ、直鎖または分岐アルキル、アリールオキシ、ハロゲン、エステル、カルボキシ、ニトリル、およびアミドから選択される1つ以上の基で随意に置換されていてもよく、
Aが、R
1およびR
2と同じ置換基の群からR
1およびR
2とは独立して選択され、またはAは一般式(III)で表されるものの一つであり、
【化2】
式中、R
1およびR
-2が、上記に定義したとおりである、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記有機ヒドロペルオキシドが、tert-ブチルヒドロペルオキシド、tert-アミルヒドロペルオキシド、クミルヒドロペルオキシド、1,1,3,3-テトラメチルブチルヒドロペルオキシド、4-ヒドロペルオキシ-4-メチルペンタン-2-オール、2,5-ジヒドロペルオキシ-2,5-ジメチルヘキサ-3-イン、2,5-ジヒドロペルオキシ-2,5-ジメチルヘキサン、またはそれらの混合物である、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記有機ヒドロペルオキシドが、好ましくは空気酸化プロセスから得られるtert-ブチルヒドロペルオキシドである、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記酸ハロゲン化物、酸無水物、またはハロギ酸塩が、一般式(Ia)または(Ib)で表され、
【化3】
【化4】
式中、
R
3が、独立して、C
1-C
-20アルキル、C
3-C
20シクロアルキル、C
6-C
20アリール、C
7-C
20アラルキル、およびC
7-C
20アルカリルを含む群から選択され、R
3が、ヒドロキシ、アルコキシ、直鎖または分岐アルキル、アリールオキシ、ハロゲン、エステル、カルボキシ、ニトリル、およびアミドから選択される1つ以上の基で随意に置換され、
Xが、ハロゲンまたは-O-CO-R
3’であり、式中、R
3’が、R
3と同じ置換基の群からR
3とは独立して選択される、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記酸ハロゲン化物、酸無水物またはハロギ酸塩は、以下のカルボン酸: 酢酸、フェニル酢酸、フェノキシ酢酸、プロパン酸、イソ酪酸、n-酪酸、安息香酸、2-メチル-安息香酸、2-メチルブタン酸、2-ブテン酸、3-フェニルプロペン酸、2,2-ジメチルプロパン酸、2,2-ジメチルブタン酸、2,2-ジメチルペンタン酸、2-エチルブタン酸、3,5,5-トリメチルヘキサン酸、2-エチルヘキサン酸、ネオヘキサン酸、ネオヘプタン酸、ネオデカン酸、オクタン酸、ノナン酸、ラウリン酸、ヘキサン二酸、3,5,5-トリメチルヘキサン二酸、2,4,4-トリメチルヘキサン二酸、デカン二酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、シクロヘキサンカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、シクロヘキサン-1,4-二酢酸、マレイン酸、クエン酸、メチルコハク酸、シトラコン酸、フマル酸、シュウ酸、テレフタル酸、プロペン酸、およびフタル酸のいずれかに由来する、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
酸ハロゲン化物またはハロギ酸塩、好ましくは酸塩化物またはクロロギ酸エステルを使用する、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記酸塩化物の前記アシル部分が、以下のカルボン酸: 酢酸、フェニル酢酸、フェノキシ酢酸、プロパン酸、イソ酪酸、n-酪酸、安息香酸、2-メチル-安息香酸、2-メチルブタン酸、2-ブテン酸、3-フェニルプロペン酸、2,2-ジメチルプロパン酸、2,2-ジメチルブタン酸、2,2-ジメチルペンタン酸、2-エチルブタン酸、3,5,5-トリメチルヘキサン酸、2-エチルヘキサン酸、ネオヘキサン酸、ネオヘプタン酸、ネオデカン酸、オクタン酸、ノナン酸、ラウリン酸、ヘキサン二酸、3,5,5-トリメチルヘキサン二酸、2,4,4-トリメチルヘキサン二酸、デカン二酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、シクロヘキサンカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、シクロヘキサン-1,4-二酢酸、マレイン酸、クエン酸、メチルコハク酸、シトラコン酸、フマル酸、シュウ酸、テレフタル酸、プロペン酸、およびフタル酸のいずれか一つのアシル部分に対応し、かつ/または
前記クロロギ酸エステルが、クロロギ酸2-(1-メチルエトキシ)フェニル、クロロギ酸1-メチルプロピル、クロロギ酸4-メチルフェニル、クロロギ酸2,2,2-トリクロロ-1,1-ジメチルエチル、クロロギ酸ヘプチル、クロロギ酸シクロヘキシルメチル、エチレングリコールビス(クロロギ酸エステル)、3-(1,1-ジメチルエチル)クロロギ酸フェニル、クロロギ酸3-(トリクロロシリル)プロピル、クロロギ酸フェニル、クロロギ酸3-メトキシブチル、クロロギ酸2-フェノキシエチル、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオールビス(クロロギ酸エステル)、クロロギ酸フェニルメチル、クロロギ酸9-オクタデセニル、クロロギ酸2-メチルフェニル、ビスフェノールAビス(クロロギ酸エステル)、クロロギ酸1,3-ジメチルブチル、クロロギ酸3,4-ジメチルブチル、クロロギ酸3,4-ジメチルフェニル、クロロギ酸トリクロロメチル、クロロギ酸1-クロロエチル、クロロギ酸クロロメチル、1,4-ブタンジオールビス(クロロギ酸エステル)、クロロギ酸1,1-ビス(エトキシカルボ)エチル、クロロギ酸3,5-ジメチルフェニル、クロロギ酸オクチル、クロロギ酸エチル、クロロギ酸オクタデシル、クロロギ酸(2-オキソ-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチル、1,6-ヘキサンジオールビス(クロロギ酸エステル)、クロロギ酸2-クロロブチル、クロロギ酸4-メトキシフェニル、クロロギ酸2-メチルプロピル、クロロギ酸2-(メチルスルホニル)エチル、クロロギ酸ドデシル、1,4-シクロヘキサンジメタノールビス(クロロギ酸エステル)、クロロギ酸2-クロロ-2-フェニルエチル、クロロギ酸2-アクリロイルオキシエチル、クロロギ酸4-ニトロフェニル、クロロギ酸n-ブチル、クロロギ酸デシル、クロロギ酸2-エチルヘキシル、クロロギ酸2-プロペニル、クロロギ酸2-クロロシクロヘキシル、クロロギ酸2-メチル-2-プロペニル、クロロギ酸シクロヘキシル、クロロギ酸2-クロロエチル、クロロギ酸[4-(フェニルアゾ)フェニル〕メチル、クロロギ酸ヘキサデシル、クロロギ酸1-ナフタレニル、クロロギ酸2-[2-シクロペンチル-4-(1,1-ジメチルエチル)フェノキシ]-1-メチルエチル、クロロギ酸3,5,5-トリメチルヘキシル、クロロギ酸イソトリデシル、クロロギ酸トリデシル、クロロギ酸4-(1,1-ジメチルエチル)シクロヘキシル、クロロギ酸2,4,5-トリクロロフェニル、クロロギ酸3-クロロプロピル、クロロギ酸テトラデシル、クロロギ酸9H-フルオレン-9-イルメチル、クロロギ酸(4-ニトロフェニル)メチル、クロロギ酸メチル、クロロギ酸2-(1-メチルエチル)フェニル、トリエチレングリコールビス(クロロギ酸エステル)、クロロギ酸2-メトキシエチル、クロロギ酸1-メチルエテニル、クロロギ酸3-メチルフェニル、クロロギ酸2-ブロモエチル、ジエチレングリコールビス(クロロギ酸エステル)、クロロギ酸3-メチル-5-(1-メチルエチル)フェニル、クロロギ酸2,2,2-トリブロモエチル、クロロギ酸2-エトキシエチル、3-メチル-1,5-ペンタンジオールビス(クロロギ酸エステル)、クロロギ酸4-メトキシカルボフェニル、クロロギ酸エテニル、クロロギ酸1-メチルエチル、クロロギ酸2-(1-メチルプロピル)フェニル、クロロギ酸2,2,2-トリクロロエチル、クロロギ酸ペンチル、クロロギ酸シクロデシル、クロロギ酸4-(1,1-ジメチルエチル)フェニル、クロロギ酸ヘキシル、クロロギ酸n-プロピル、クロロギ酸3-メトキシ-3-メチルブチル、クロロギ酸2-プロポキシエチル、クロロギ酸2-メトキシ-1-メチルエチル、クロロギ酸2-ブトキシエチル、クロロギ酸2,2-ジメチルプロピル、クロロギ酸2,3-ジヒドロ-2,2-ジメチル-7-ベンゾフラニル、クロロギ酸1-クロロエチル、クロロギ酸シクロブチル、クロロギ酸5-メチル-2-(1-メチルエチル)シクロヘキシル、クロロギ酸1,1-ジメチルエチル、クロロギ酸1-メチルヘプチル、およびそれらの混合物から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
300ppm未満の初期(t=0週間)tert-ブチルヒドロペルオキシド(TBHP;t--Bu-OOH)含量、および300ppm以下の4週安定性(0~4週のΔTBHP)値によって特徴付けられ、前記初期TBHP含有量および前記4週安定性値は、明細書において提供される「TBHPプロトコル」に従って決定される、tert-ブチルペルオキシエステル(t-Bu-OO-C(O)R)またはtert-ブチルペルオキシカルボナート(t-Bu-O-C(O)OR)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、貯蔵安定性が改善され、ヒドロペルオキシド含有量が低下した、ペルオキシエステルまたはペルオキシカルボナートの調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ペルオキシエステルおよび過炭酸塩には、化学分野において幅広い用途が見られる。これらは通常、有機ヒドロペルオキシドを、酸ハロゲン化物、酸無水物、またはハロギ酸塩などの反応性カルボニル種と反応させることによって生成される。
【0003】
ペルオキシエステルおよび過炭酸塩の問題は、多くの場合、望ましくない高レベルのヒドロペルオキシドを含有することであり、これは、規制および/または応用の観点から問題となり得る。さらに、ペルオキシエステルおよび過炭酸塩は、しばしば貯蔵安定性が低い。
【0004】
この反応の標準的な後処理プロセスは、有機層中に存在する残留有機ヒドロペルオキシドを低減する試みにおいて、1つ以上の洗浄工程を含む(例えば、欧州特許出願公開第1382596号)。中国特許出願公開第112300044では、反応の後処理をpH7.5~10で行っていたが、これは本発明者らによって収率が低いことが見出された(以下の比較例5を参照)。本発明者らは、予想外にも、ペルオキシド生成物中のヒドロペルオキシド含有量が実質的に低減され得ると同時に、最初の後処理プロセスの間の、反応混合物pHを操作する特定のプロセスによって貯蔵安定性がはるかに改善されたペルオキシ生成物を生じさせることを見出した。
【発明の概要】
【0005】
第一の態様において、本開示は、ペルオキシエステルまたはペルオキシカルボナートの調製方法であって、
a) 有機ヒドロペルオキシドを、塩基の存在下で、酸ハロゲン化物、酸無水物、またはハロギ酸塩と反応させることと、
b) 工程a)の完了後、水層を分離する工程と、
c) 工程b)で前記水層が分離された後に、前記有機ヒドロペルオキシドを対応するアルコールに還元することができる訳剤である還元剤を有機層に添加することと、
d) 工程c)の混合物が、工程c)の混合物のpHを維持または増加させることによって、6.8よりも高い、好ましくは7.0よりも高い、好ましくは7.2よりも高い、より好ましくは7.4よりも高いpHを有することを確保することと、
e) pHを、少なくとも5秒間、好ましくは少なくとも10秒間、好ましくは少なくとも30秒間、好ましくは少なくとも60秒間、より好ましくは少なくとも120秒間、6.8よりも高い、好ましくは7.0よりも高い、好ましくは7.2よりも高い、より好ましくは7.4よりも高いpHに維持することと、を含み、
前記方法が、
i 工程c)の混合物が、工程d)の前に6.8未満のpHを有し、好ましくは約6.5以下のpHを有し、最も好ましくは約4~6.5の範囲内のpHを有し、工程d)において、工程c)の混合物のpHが増加し、6.8を超え、好ましくは7.0を超え、好ましくは7.2を超え、より好ましくは7.4を超え、かつ/または
ii 工程e)の完了後、pHは、6.8未満のpHに、好ましくは約6.5以下のpHに、最も好ましくは約4~6.5の範囲内のpHに減少する、ことを特徴とする。
【0006】
工程a)およびb)は、ペルオキシエステルまたはペルオキシカルボナートを生成するための通常のプロセスに従い、有機ヒドロペルオキシドは、塩基の存在下で、酸ハロゲン化物、酸無水物、またはハロギ酸塩と反応する。有機ヒドロペルオキシドに対する反応性カルボニル化合物(酸ハロゲン化物、酸無水物、またはハロギ酸塩)の等価量は、特に限定されないが、典型的には、約0.25~5当量の範囲内、好ましくは約0.6~1.1当量の範囲内、より好ましくは約0.6~1当量の範囲内、最も好ましくは約0.8~1当量の範囲内である。
【0007】
工程a)の反応条件は、従来どおりである。温度は、通常、-10℃~70℃、好適には0℃~50℃の範囲内である。pHは塩基性であり、すなわち7を超える。一般的に、pHは9~14の範囲内である。実際には、pHは10を超え、一般的なpHの範囲は11~13.5である。反応は、常圧下で、かつ雰囲気と自由に接触する状態で進行することができる。炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、およびそれらの混合物などであるがこれらに限定されない任意の適切な塩基を使用して、pHを塩基性pHに調整してもよい。こうした塩基は、通常、その水溶液の形態で使用される。反応混合物はまた、相分離を促進するために、NaCl(水溶液)などの従来の助剤を含んでもよい(工程b))。反応は、無溶媒、または溶媒の存在下で実施することができる。
【0008】
有機ヒドロペルオキシドは、一般式(II)の有機ヒドロペルオキシドから選択することができる。
【化1】
式中、
R
1およびR
-2は、水素、C
1-C
20アルキル、C
3-C
20シクロアルキル、C
6-C
20アリール、C
7-C
20アラルキル、およびC
7-C
20アルカリルを含む群から独立して選択され、あるいはR
1およびR
2は、C
3-C
12シクロアシル基を形成し、それらの基は、直鎖または分岐アルキル部分を含んでもよく、R
1およびR
2の各々は、ヒドロキシ、ヒドロペルオキシ、アルコキシ、直鎖または分岐アルキル、アリールオキシ、ハロゲン、エステル、カルボキシ、ニトリル、およびアミドから選択される1つ以上の基で随意に置換されていてもよく、
Aは、R
1およびR
2と同じ置換基の群からR
1およびR
2とは独立して選択され、またはAは一般式(III)で表されるものの一つである。
【化2】
式中、R
1およびR
-2は、上記に定義されるとおりであり、式中、Aは、好ましくは、R
1およびR
2と同じ置換基の群から、R
1およびR
2とは独立して選択される。
【0009】
好ましい有機ヒドロペルオキシドとしては、tert-ブチルヒドロペルオキシド、tert-アミルヒドロペルオキシド、クミルヒドロペルオキシド、1,1,3,3-テトラメチルブチルヒドロペルオキシド、4-ヒドロペルオキシ-4-メチルペンタン-2-オール、2,5-ジヒドロペルオキシ-2,5-ジメチルヘキス-3-イン、2,5-ジヒドロペルオキシ-2,5-ジメチルヘキサン、またはそれらの混合物が挙げられる。このプロセスで使用するための最も好ましい有機ヒドロペルオキシドは、tert-ブチルヒドロペルオキシド(TBHP)、好ましくは空気酸化プロセスから得られたtert-ブチルヒドロペルオキシドである。
【0010】
酸ハロゲン化物、酸無水物、またはハロギ酸塩は、一般式(Ia)または(Ib)で表され、
【化3】
【化4】
式中、
R
3は、独立して、C
1-C
-20アルキル、C
3-C
20シクロアルキル、C
6-C
20アリール、C
7-C
20アラルキル、およびC
7-C
20アルカリルを含む群から選択され、R
3は、ヒドロキシ、アルコキシ、直鎖または分岐アルキル、アリールオキシ、ハロゲン、エステル、カルボキシ、ニトリル、およびアミドから選択される1つ以上の基で随意に置換され、
Xは、ハロゲン化物(好ましくは塩化物)または-O-CO-R
3’であり、式中、R
3’は、R
3と同じ置換基の群からR
3とは独立して選択される。
【0011】
好ましくは、酸ハロゲン化物または酸無水物が、以下のカルボン酸のいずれかに由来する:酢酸、フェニル酢酸、フェノキシ酢酸、プロパン酸、イソ酪酸、n-酪酸、安息香酸、2-メチル-安息香酸、2-メチルブタン酸、2-ブテン酸、3-フェニルプロペン酸、2,2-ジメチルプロパン酸、2,2-ジメチルブタン酸、2,2-ジメチルペンタン酸、2-エチルブタン酸、3,5,5-トリメチルヘキサン酸、2-エチルヘキサン酸、ネオヘキサン酸、ネオヘプタン酸、ネオデカン酸、オクタン酸、ノナン酸、ラウリン酸、ヘキサン二酸、3,5,5-トリメチルヘキサン二酸、2,4,4-トリメチルヘキサン二酸、デカン二酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、シクロヘキサンカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、シクロヘキサン-1,4-二酢酸、マレイン酸、クエン酸、メチルコハク酸、シトラコン酸、フマル酸、シュウ酸、テレフタル酸、プロペン酸、およびフタル酸。
【0012】
好ましくは、プロセスは、酸ハロゲン化物またはハロギ酸塩を使用する。
【0013】
酸ハロゲン化物は、酸塩化物であることが好ましい。好ましくは、酸塩化物のアシル部分が、以下のカルボン酸のうちのいずれかのアシル部分に対応する:酢酸、フェニル酢酸、フェノキシ酢酸、プロパン酸、イソ酪酸、n-酪酸、安息香酸、2-メチル-安息香酸、2-メチルブタン酸、2-ブテン酸、3-フェニルプロペン酸、2,2-ジメチルプロパン酸、2,2-ジメチルブタン酸、2,2-ジメチルペンタン酸、2-エチルブタン酸、3,5,5-トリメチルヘキサン酸、2-エチルヘキサン酸、ネオヘキサン酸、ネオヘプタン酸、ネオデカン酸、オクタン酸、ノナン酸、ラウリン酸、ヘキサン二酸、3,5,5-トリメチルヘキサン二酸、2,4,4-トリメチルヘキサン二酸、デカン二酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、シクロヘキサンカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、シクロヘキサン-1,4-二酢酸、マレイン酸、クエン酸、メチルコハク酸、シトラコン酸、フマル酸、シュウ酸、テレフタル酸、プロペン酸、およびフタル酸。
【0014】
ハロギ酸塩はクロロギ酸エステルであることが好ましい。好ましいハロギ酸塩としては、クロロギ酸2-(1-メチルエトキシ)フェニル、クロロギ酸1-メチルプロピル、クロロギ酸4-メチルフェニル、クロロギ酸ヘプチル、クロロギ酸シクロヘキシルメチル、エチレングリコ-ルビス(クロロギ酸エステル)、クロロギ酸フェニル、クロロギ酸3-メトキシブチル、クロロギ酸2-フェノキシエチル、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオ-ルビス(クロロギ酸エステル)、クロロギ酸フェニルメチル、クロロギ酸9-オクタデセニル、クロロギ酸2-メチルフェニル、ビスフェノ-ルAビス(クロロギ酸エステル)、クロロギ酸1,3-ジメチルブチル、クロロギ酸3,4-ジメチルブチル、クロロギ酸3,4-ジメチルフェニル、1,4-ブタンジオ-ルビス(クロロギ酸エステル)、クロロギ酸1,1-ビス(エトキシカルボ)エチル、クロロギ酸3,5-ジメチルフェニル、クロロギ酸オクチル、クロロギ酸エチル、クロロギ酸オクタデシル、クロロギ酸(2-オキソ-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチル、1,6-ヘキサンジオ-ルビス(クロロギ酸エステル)、クロロギ酸2-クロロブチル、クロロギ酸4-メトキシフェニル、クロロギ酸2-メチルプロピル、クロロギ酸ドデシル、1,4-シクロヘキサンジメタノ-ルビス(クロロギ酸エステル)、クロロギ酸2-クロロ-2-フェニルエチル、クロロギ酸2-アクリロイルオキシエチル、クロロギ酸4-ニトロフェニル、クロロギ酸n-ブチル、クロロギ酸デシル、クロロギ酸2-エチルヘキシル、クロロギ酸2-プロペニル、クロロギ酸2-クロロシクロヘキシル、クロロギ酸2-メチル-2-プロペニル、クロロギ酸シクロヘキシル、クロロギ酸2-クロロエチル、クロロギ酸[4-(フェニルアゾ)フェニル〕メチル、クロロギ酸ヘキサデシル、クロロギ酸1-ナフタレニル、クロロギ酸エステル、クロロギ酸3,5,5-トリメチルヘキシル、クロロギ酸イソトリデシル、クロロギ酸トリデシル、クロロギ酸4-(1,1-ジメチルエチル)シクロヘキシル、クロロギ酸エステル、クロロギ酸3-クロロプロピル、クロロギ酸テトラデシル、クロロギ酸エステル、クロロギ酸メチル、クロロギ酸2-(1-メチルエチル)フェニル、トリエチレングリコ-ルビス(クロロギ酸エステル)、クロロギ酸2-メトキシエチル、クロロギ酸1-メチルエテニル、クロロギ酸3-メチルフェニル、2クロロギ酸エステル、ジエチレングリコ-ルビス(クロロギ酸エステル)、クロロギ酸3-メチル-5-(1-メチルエチル)フェニル、クロロギ酸2-エトキシエチル、3-メチル-1,5-ペンタンジオ-ルビス(クロロギ酸エステル)、クロロギ酸4-メトキシカルボフェニル、クロロギ酸エテニル、クロロギ酸1-メチルエチル、クロロギ酸2-(1-メチルプロピル)フェニル、クロロギ酸エステル、クロロギ酸ペンチル、クロロギ酸シクロデシル、クロロギ酸4-(1,1-ジメチルエチル)フェニル、クロロギ酸ヘキシル、クロロギ酸n-プロピル、クロロギ酸3-メトキシ-3-メチルブチル、クロロギ酸2-プロポキシエチル、クロロギ酸2-メトキシ-1-メチルエチル、クロロギ酸2-ブトキシエチル、クロロギ酸2,2-ジメチルプロピル、クロロギ酸2,3-ジヒドロ-2,2-ジメチル-7-ベンゾフラニル、クロロギ酸1-クロロエチル、クロロギ酸シクロブチル、クロロギ酸5-メチル-2-(1-メチルエチル)シクロヘキシル、クロロギ酸1,1-ジメチルエチル,クロロギ酸1-メチルヘプチル、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0015】
工程a)の完了後、反応混合物を沈降させ、それによって水層および有機層(すなわち、二つの別個の非混和性の相)を形成する。混合物を沈降させると形成される水層を、工程b)で分離する。残った有機層を、工程c)に通す。
【0016】
工程c)では、還元剤を有機層に添加する。好ましくは、還元剤は、亜ジチオン酸塩、ヒドロ亜硫酸塩、メタ重亜硫酸塩、硫化物、または亜硫酸塩などの硫黄系還元剤である。還元剤は、任意の残留ヒドロペルオキシドを、対応するアルコールに還元する役割を果たす。好ましい亜硫酸塩としては、金属亜硫酸塩、金属亜硫酸水素塩、および/または金属メタ重亜硫酸塩が挙げられる。好ましい金属としては、ナトリウムまたはカリウムなどのアルカリおよびアルカリ金属が挙げられる。好ましくは、工程c)で添加される還元剤は、メタ重亜硫酸ナトリウムおよび/または亜硫酸ナトリウム、好ましくはメタ重亜硫酸ナトリウムである。還元剤は、好ましくは、還元剤の水溶液として工程c)で添加される。したがって、最も好ましい実施形態では、工程c)で添加される還元剤は、メタ重亜硫酸ナトリウムの水溶液である。還元剤(RA)とヒドロペルオキシド(HP)のモル比(RA:HP)は、好ましくは、1:1よりも大きく、好ましくは、1:1を超え約5:1以下、好ましくは、1:1を超え約3:1以下、より好ましくは、1:1を超え約2:1以下、最も好ましくは、約1.3:1~約1.8:1である。方法の次の工程に進む前に、反応混合物を、少なくとも約1分間(例えば、約1~10分間)激しく混合(例えば、攪拌)することが好ましい。
【0017】
好ましい実施形態(工程i))では、工程c)の混合物のpHは、工程d)に進む前に6.8未満のpHに、好ましくは約6.5以下のpHに、最も好ましくは約4~6.5の範囲内のpHに低下される。pHの低下は、酸、例えば、H2SO4(水溶液)の添加、6.8未満のpHを有する緩衝液の添加、および/または6.8未満のpHを有する還元剤の使用などの任意の従来の手段によってなし得る。工程c)の混合物のpHは、還元剤を有機層に投与する結果として減少する可能性がある(亜硫酸水溶液などの好ましい還元剤は弱酸性である可能性があるため、工程c)でそれらの酸性還元剤を有機層に投与した結果、混合物のpHが6.8未満となる可能性がある)。約pH4~6.5の範囲のpHを有する緩衝液を使用して、pHの低下をもたらすことが好ましい。好ましい緩衝液としては、約4~6.5のpHを有する酢酸緩衝液が挙げられる(他の好適な緩衝液としては、クエン酸緩衝液または一カリウムリン酸塩緩衝液が挙げられるが、これらに限定されない)。混合物は、方法の次の工程に進む前に、少なくとも約1分間(例えば、約1~約25分間)、この低下されたpHで激しく混合(例えば、攪拌)されることが好ましい。
【0018】
工程d)は、工程c)の混合物のpHが6.8よりも高いこと、好ましくは7.0よりも高いこと、好ましくは7.2よりも高いこと、より好ましくは7.4よりも高いことを確実にする。例えば、pHは8を超えていてもよい。これは、混合物のpHを維持することによって(工程c)の混合物のpHが既に6.8よりも高い場合)、または混合物のpHを6.8よりも高いpHに増加させることによって(特に工程c)の混合物のpHが工程d)の前に6.8未満のpHに調整される場合)のいずれかによって達成される。pHの増加は、所望のpH値に達するのに必要な量の塩基を添加することによってなし得る。適切な塩基としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、およびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。こうした塩基は、通常、その水溶液の形態で使用される。
【0019】
工程e)では、6.8よりも高い、好ましくは7.0よりも高い、好ましくは7.2よりも高い、より好ましくは7.4よりも高いpHは、少なくとも5秒間、好ましくは少なくとも10秒間、好ましくは少なくとも30秒間、好ましくは少なくとも60秒間、より好ましくは少なくとも120秒間、例えば約120秒~約600秒間維持される。混合物は、工程e)の間に激しく混合(例えば、攪拌)されることが好ましい。
【0020】
好ましい実施形態では、方法は、工程f)(工程f)=工程ii)をさらに含み、工程e)の完了後、混合物のpHはその後、6.8未満のpHに、好ましくは約6.5以下のpHに、最も好ましくは約4~6.5の範囲内のpHに低下される。pHの低下は、例えばH2SO4(水溶液)などの酸の添加、または6.8未満のpHを有する緩衝液の添加などの、任意の従来の手段によってなし得る。約pH4~6.5の範囲のpHを有する緩衝液を使用して、pHを低下させることが好ましい。好ましい緩衝液としては、約4~6.5のpHを有する酢酸緩衝液が挙げられる(他の好適な緩衝液としては、クエン酸緩衝液またはリン酸モノカリウム緩衝液が挙げられるが、これらに限定されない)。工程f)の混合物のpHは、好ましくは少なくとも5秒間、好ましくは少なくとも10秒間、好ましくは少なくとも30秒間、好ましくは少なくとも60秒間、例えば約90秒間~約600秒間維持され、その間、混合物は激しく混合(例えば、攪拌)される。随意に、工程f)の終了時に、pHを6.8よりも高いpHまで増加させてもよい(すなわち、工程d)は、工程f)の終了時に随意に繰り返されてもよい)。
【0021】
工程f)の水層(反応混合物を、水層および有機層、すなわち、二つの別個の非混和性の相に沈降させることによって形成される)を分離し、残りの有機層を、(反応中に生成された過剰な亜硫酸塩、アルコール、および硫酸塩などの任意の残留水溶性不純物を除去するために)一つまたは複数の洗浄工程g)に供することができる。洗浄工程は、1つ以上の水洗浄および/または1つ以上のアルカリ性の水溶液による洗浄(例えば、NaOH(水溶液)および/またはNaHCO3(水溶液)による洗浄)を含んでいてもよい。洗浄工程は、1つ以上の中性からアルカリ性の水溶液による洗浄を含むことが好ましい。疑義を避けるために付言すると、ペルオキシエステルまたはペルオキシカルボナートは、この有機層中に存在する。最終有機層は、乾燥剤(例えば、MgSO4)、真空乾燥、および/または空気乾燥などの従来の手段を使用して乾燥されてもよい。
【0022】
工程c)~g)の間の混合物の温度は、約0~70℃に維持されることが好ましく、約0~40℃に維持されることがより好ましい。
【0023】
好ましい実施形態では、本開示は、ペルオキシエステルまたはペルオキシカルボナートを調整するプロセスに関係し、
a) 有機ヒドロペルオキシドを、塩基の存在下で、酸ハロゲン化物、酸無水物、またはハロギ酸塩と反応させることと、
b) 工程a)の完了後、水層を分離する工程と、
c) 工程b)で水層が分離された後に、還元剤を有機層に添加することであって、還元剤が、有機ヒドロペルオキシドを対応するアルコールに還元することができる薬剤であり、有機層と還元剤の混合物が、6.8未満のpH、好ましくは約6.5以下のpH、最も好ましくは約4~6.5の範囲内のpHを有する、添加することと、
d) 工程c)の混合物のpHを、6.8よりも高い、好ましくは7.0よりも高い、好ましくは7.2よりも高い、より好ましくは7.4よりも高いpHに増加させることと、
e) pHを、少なくとも5秒間、好ましくは少なくとも10秒間、好ましくは少なくとも30秒間、好ましくは少なくとも60秒間、より好ましくは少なくとも120秒間、6.8よりも高い、好ましくは7.0よりも高い、好ましくは7.2よりも高い、より好ましくは7.4よりも高いpHに維持することと、
f) 工程e)の完了後、pHを6.8未満のpHに、好ましくは約6.5以下のpHに、最も好ましくは約4~6.5の範囲内のpHに減少させることと、
g) 随意に工程d)を繰り返すこと(すなわち、工程f)の混合物のpHをpH6.8以上に増加させること)、および/または随意に工程fの有機層を洗浄すること)を含み、随意に行われる洗浄する工程は、好ましくは、1回以上の水による洗浄および/または1回以上のアルカリ性の水溶液による洗浄(例えば、NaOH(水溶液)および/またはNaHCO3(水溶液)で洗浄すること)を含む。
【0024】
この方法は、特に、空気酸化によって製造されたヒドロペルオキシド(特にt-ブチルヒドロペルオキシド)を使用する方法に関連する。その点において、驚くべき観察は本明細書に開示される好ましいプロセスを使用して、300ppm未満の初期(t=0週間)tert-ブチルヒドロペルオキシド(TBHP)含有量および300ppm以下の4週安定性(0-4週ΔTBHP)値を有するt-ブチルヒドロペルオキシドからペルオキシエステルおよびペルオキシカルボナートを一貫して生成することが可能であった(初期TBHP含有量および4週安定性値は、以下の作業実施例に記載される「TBHPプロトコル」に従って決定される)。この非常に高い生成物純度および安定性プロファイルは予想外であった。
【0025】
したがって、別の態様では、本開示は、tert-ブチルペルオキシエステルまたはtert-ブチルペルオキシカルボナートに関し、好ましくはtert-ブチルペルオキシエステルと、tert-ブチルペルオキシエステルまたはtert-ブチルペルオキシカルボナートが、300ppm未満の初期(t=0週間)tert-ブチルヒドロペルオキシド(TBHP)含有量および300ppm以下の4安定性(0-4週ΔTBHP)値を有することを特徴とし、初期TBHP含有量および4週安定性値が、以下の作業実施例に記載されるように、「TBHPプロトコル」に従って決定される、方法に関する。疑義を避けるために付言すると、「tert-ブチルペルオキシエステル」は、TBHPを酸ハロゲン化物または酸無水物(すなわち、t-Bu-O-C(O)R)と反応させることによって得ることができるペルオキシエステルであり、「tert-ブチルペルオキシカルボナート」は、TBHPをハロギ酸塩(すなわち、t-Bu-O-C(O)OR)と反応させることによって得ることができるペルオキシカルボナートである。tert-ブチルペルオキシエステルの非限定的な例としては、tert-ブチルペルオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノアート(CAS:13122-18-4)、tert-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノアート(CAS:3006-82-4)、およびtert-ブチルペルオキシベンゾアート(CAS:614-45-9)が挙げられる。
【0026】
この方法は、遊離の酸基を全く含まないペルオキシエステルまたは過炭酸塩の調製に特に効果的であることが見出された。したがって、好ましい実施形態では、本明細書に開示される方法は、遊離の酸基を含まないペルオキシエステルまたはペルオキシカルボナートを調製するためのものである。
【実施例0027】
以下の実施例は、本発明を行うための詳細な方法を提供する。これらの実施例は、本質的に例示的なものであり、限定することを意図していない。
【0028】
A.tert-ブチルペルオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート(CAS:13122-18-4)の調製[工程a)およびb)]
【0029】
バッフル、pH電極、オーバーヘッドメカニカルスターラー(ピッチブレード撹拌器、反応器の直径のサイズの1/3)、およびグリコール/水による温度制御を備えた1Lジャケット付きガラス反応器に、に、148.4gのTBHP(70重量%水溶液)を添加した。反応溶媒を撹拌(1000rpm)下で10℃に冷却し、125.8gのNaOH-25溶液(NaOHの25重量%の水溶液)を20分間で添加した。添加後、撹拌を1300rpmまで増加させ、93.6gの塩化イソノナノイルを16分間で投与し、温度を25℃まで上昇させ、その温度に維持した。第二の添加工程では、30分間で93.5gの塩化イソノナノイルおよび60.4gのNaOH-25を同時に添加し、その間、温度を30℃まで上昇させ、その温度に維持した。2回目の添加後、反応混合物を30℃および1300rpmで9分間撹拌した。反応混合物を、75gの脱塩水でクエンチし、1分間撹拌した。撹拌を停止し、有機相および水相を分離させた。水相を反応器から排出し、廃棄した。
【0030】
還元剤添加工程[工程c)]
撹拌を再開し(1000rpm)、5.0gの緩衝液(16.3重量%のAcOH、62.5重量%の水、および21.2重量%のNaOH-25)を添加し、続いて105gの水を添加した。ジャケットの温度を調整することによって、温度を25℃に設定した。数滴のNaOH-25を添加することによって、pHをpH=5.5に調整した。緩衝溶液に、新たに調製された亜硫酸塩溶液(69重量%の水、18重量%のメタ重亜硫酸ナトリウムNa2S2O5および13重量%のNaOH-25)55.5gを20分間にわたって滴下した。投与中、NaOH-25(合計約2g)を添加することによってpH5.5を維持した。
【0031】
実施例1[工程i)-工程c)の混合物は、工程d)に進む前に6.8未満のpHを有する]
亜硫酸塩溶液を添加した後、反応混合物をpH5.5で22分間撹拌した。次いで、NaOH-25(5分にわたっておよそ1g)の滴下(工程d)およびe))、続いて、後処理(以下を参照)によって、反応混合物のpHをpH8.0に増加させた。
【0032】
実施例2[工程i)-工程c)の混合物は、工程d)に進む前に6.8未満のpHを有する。工程ii)-工程e)の完了後、pHが6.8未満に低下する]
亜硫酸塩溶液を添加した後、反応混合物をpH5.5で5分間撹拌した。次いで、2分間にわたって9.0gのNaOH-25を滴下することによって、pHをpH10まで上昇させた(工程d))。混合物を、pH10で3分間撹拌した(工程e))。次いで、10分間にわたって4gのHCl(15重量%のHCl水溶液)を滴下することによって、pHを5.5に低下させた(工程ii))。反応混合物を、pH5.5で2分間撹拌した。総還元時間は22分であった(例、実施例1)。その後、NaOH-25(5分かけておよそ1g)を滴下して反応混合物のpHをpH8.0まで上昇させ、その後、後処理を行った(以下を参照)。
【0033】
実施例1および2の後処理:
撹拌を停止し、有機相および水相を分離させた。水相を反応器から排出し、廃棄した。次に、55gのNaCl-25(25重量%のNaCl水溶液)、180gの脱塩水、および28gのNaHCO3-6(6重量%のNaHCO3水溶液)を残った有機層に添加した。添加後、混合物を25℃で3分間撹拌した(1000rpm)。撹拌を停止し、有機相および水相を分離させた。水相を反応器から排出し、廃棄した。その後、有機相を排出し、500mlの三角フラスコ内に別々に集めた。有機相を、10gのMgSO4.2H2Oで10分間乾燥させた。混合物をガラスフィルターでろ過し、透明な有機ペルオキシド生成物218g(分析値99.4%)を回収し、20℃で保存した。
【0034】
最終製品におけるTBHP含量の決定(「TBHPプロトコル」)
以下の試薬および装置を、ペルオキシド生成物のTBHP含量の決定に使用した。
溶液A:二酸化硫黄溶液 SO2濃度約0.005mol/Lのメタノール溶液
溶液B:約15μLのtert-ブチルヒドロペルオキシド(70重量%)および50mLの水を含む1000mLのメチルエチルケトン。
【0035】
機器:Pt Titrode(製品番号 6.0431.100)と組み合わされた電位差滴定装置Metrohm。Metrohm Titrando 888の条件は、以下のとおりである。
・ モノトーン滴定
・ 開始体積:0.1mL
・ 体積増分:0.07mL
・ 投与速度:2mL/分
・ 最小待ち時間:0秒
・ 最大待ち時間:4秒
【0036】
最終ペルオキシド生成物のTBHP含有量を、1gのペルオキシド生成物を25mLの溶液Bに溶解することによって決定した。溶液を、電位のジャンプをわずかに超えるまで、二酸化硫黄溶液Aで直ちに滴定した。測定は二重に行った。二度のブランク測定も実施し、ブランクの平均値を計算した。以下の式を使用して、ヒドロペルオキシド含有量(TBHP)を計算した。
【数1】
【0037】
【0038】
疑義を避けるために付言すると、本明細書で使用される場合、「4週安定性(0-4週のΔTBHP)値」という用語は、0週目で測定されたTBHP値(すなわち、初期TBHP値)と4週間の保存期間後に測定されたTBHP値との間のTBHPの差をppm単位で表した値を意味し、0週目および4週目の両方の値は、上記の「TBHPプロトコル」に従って決定される。本開示の目的のために、ペルオキシドを20℃で4週間保存することによって、4週安定性(0-4週のΔTBHP)値を決定する。
【0039】
B. tert-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート(CAS:3006-82-4)の調製〔工程a)およびb)]
バッフル、pH電極、オーバーヘッド機械的撹拌器(ピッチブレード撹拌器、反応器の直径のサイズ1/3)、およびグリコール/水温度制御を備えた1Lジャケット付きガラス反応器に、177.3gのTBHP(70重量%水溶液)を添加した。反応溶媒を撹拌(1000rpm)下で25℃に維持し、138.3gのNaOH-25溶液を20分間で添加した。添加後、撹拌を1300rpmまで増加させ、204.2gの2-エチルヘキサン酸クロリドおよび88.4gのNaOH-25を35分間にわたって同時に添加し、その間、温度を40℃まで上昇させ、その温度に維持した。添加後、反応混合物を、40℃および1300rpmでさらに45分間撹拌した。反応混合物を20℃に冷却し、9.0gのNaOH-25を添加した。反応混合物を2分間撹拌した。反応混合物を、72.0gの脱塩水でクエンチし、1分間撹拌した。 撹拌を停止し、有機相および水相を分離させた。水相を反応器から排出し、廃棄した。
【0040】
還元剤添加工程[工程c)]
撹拌していない反応器の内容物に、3.4gの緩衝液(16.3重量%のAcOH、62.5重量%の水、および21.2重量%のNaOH-25)を添加し、続いて100gの水を添加した。ジャケットによる温度制御によって温度を20℃に維持した。pHを、数滴のNaOH-25を添加することによってpH5.5に調整した。緩衝溶液に、新たに調製された亜硫酸塩溶液(69重量%の水、18重量%のメタ重亜硫酸ナトリウムNa2S2O5(s)、および13重量%のNaOH-25)56gを6分間にわたって滴下した。投与中、NaOH-25(合計でおよそ7g)を添加することによってpHを5.5に維持した。
【0041】
実施例3[工程i)-工程c)の混合物は、工程d)に進む前に6.8未満のpHを有する]
亜硫酸塩溶液を添加した後、反応混合物をpH5.5で20分間撹拌した。次いで、反応混合物のpHを、5分間に約1.0gのNaOH-25を滴下することによって8.0に増加させ(工程d)およびe))、続いて、後処理を行った(以下を参照)。
【0042】
実施例4[工程i)-工程c)の混合物は、工程d)に進む前に6.8未満のpHを有する。工程ii)-工程e)の完了後、pHがpH6.8未満に低下する]
亜硫酸塩溶液を加えた後、反応混合物をpH5.5で5分間撹拌した。次いで、5分間にわたって8.4gのNaOH-25を滴下することによってpHを10に増加させた(工程d))。混合物を、pH10で3分間撹拌した(工程e))。5.4gのHCl(15重量%水溶液)を5分間かけて滴下することによって、pHを5.5に戻した(工程ii))。反応混合物を、pH5.5で2分間撹拌した。総還元時間は20分であった(例、実施例3)。次いで、反応混合物のpHを、約1.0gのNaOH-25を5分間で滴下することによって8.0に増加させ、続いて、後処理を行った(以下を参照)。
【0043】
実施例3および4の後処理:
撹拌を停止し、有機相および水相を分離させた。水相を反応器から排出し、廃棄した。次に、33.0gのNaCl-25(25重量%水溶液)、102gの脱塩水、および36.3gのNaHCO3-6(6重量%のNaHCO3水溶液)を、攪拌されていない反応混合物に添加した。添加後、反応混合物を20℃で2分間撹拌した(1000rpm)。撹拌を停止し、有機相および水相を分離させた。水相を反応器から排出し、廃棄した。その後、有機相を排出し、500mlの三角フラスコに別々に集めた。有機相を、10gのMgSO4.2H2Oで10分間乾燥させた。混合物をガラスフィルターでろ過し、透明な有機ペルオキシド生成物246g(分析値98.8%)を収集し、4℃で保存した。
【0044】
分析:実施例3および4の生成物を、実施例1および2について記載した方法と同じ方法(TBHPプロトコル)を使用して分析した。
【表2】
【0045】
C. tert-ブチルペルオキシベンゾエート(CAS:614-45-9)の調製〔工程a)およびb)]
バッフル、pH電極、オーバーヘッドメカニカルスターラー(ピッチブレード撹拌器、反応器の直径のサイズの1/3)、およびグリコール/水による温度制御を備えた1Lジャケット付きガラス反応器に、55.9gのNaCl-25%(水溶液)、および160.0gのTBHP(70重量%水溶液)を添加した。反応溶媒を撹拌(1000rpm)下で20℃に維持し、59.9gのNaOH-25溶液を5分間で添加した。添加後、57.4gの塩化ベンゾイルを14分間添加し、その間、温度を20℃に維持した。次に、108.0gの塩化ベンゾイルおよび131.9gのNaOH-25溶液を19分間にわたって同時に添加し、その間、20℃に維持した。添加後、反応混合物を20℃および1100rpmでさらに32分間撹拌した。反応後、20.0gのNaOH-25を添加し、混合物を更に5分間撹拌した。撹拌を停止し、有機相および水相を分離させた。水相を反応器から排出し、廃棄した。
【0046】
還元剤添加工程[工程c]
実施例5および6:攪拌されていない反応器の内容物に、45gの水および118gのNaCl-25(水溶液)を添加し、攪拌器を再開した(1100RPM)。pHを、6.2gのNaOH-25でpH10に調整した。ジャケットによる温度制御によって温度を20℃に維持した。撹拌溶液に、新たに調製された亜硫酸塩溶液46g(69重量%の水、18重量%のメタ重亜硫酸ナトリウムNa2S2O5、および13重量%のNaOH-25)を6分間にわたって滴下した。投与中、NaOH-25(合計でおよそ8.1g)を添加することによってpHを10に維持した。
【0047】
実施例7および8:攪拌されていない反応器の内容物に、45gの水、118gのNaCl-25(水溶液)、および10gの緩衝液(16.3重量%のAcOH、62.5重量%の水、および21.2重量%のNaOH-25)を加えた。ジャケットによる温度制御によって温度を20℃に維持した。pHを、数滴のNaOH-25を添加することによってpH5.5に調整した。緩衝液に、新たに調製された亜硫酸塩溶液(69重量%の水、18重量%のメタ重亜硫酸ナトリウムNa2S2O5(s)および13重量%のNaOH-25)46gを5分間にわたって滴下した。投与中、NaOH-25(合計でおよそ2g)を添加することによってpH5.5を維持した。
【0048】
実施例5(比較例)
亜硫酸塩溶液を投与し、pHをpH10に維持した後、反応混合物をさらに30分間撹拌し、続いて後処理を行った(以下を参照)。
【0049】
実施例6[工程i)-工程c)の混合物は、工程d)に進む前に6.8未満のpHを有する]
亜硫酸塩溶液が投与され、pHがpH10に維持された後、反応混合物をさらに25分間撹拌した。続いて、pHを、3分間で6.2gのHCl(15重量%水溶液)を添加することによってpH6.4まで低下させた(工程i))。反応混合物を、pH6.4で2分間撹拌した。(総時間30分、比較例5を参照)。次いで、NaOH-25(工程d)およびe)の添加によりpHを10にし、続いて、後処理を行った(以下を参照)。
【0050】
実施例7[工程i)-工程c)の混合物は、工程d)に進む前に6.8未満のpHを有する]
亜硫酸塩溶液を添加した後、反応混合物をpH5.5で20分間撹拌した。次いで、反応混合物のpHを、5分間で約5gのNaOH-25を滴下することによって7.6に増加させ(工程d)およびe))、続いて、後処理を行った(以下を参照)。
【0051】
実施例8[工程i)-工程c)の混合物は、工程d)に進む前に6.8未満のpHを有する。工程ii)-工程e)の完了後、pHがpH6.8未満に低下する]
亜硫酸塩溶液を加えた後、反応混合物をpH5.5で5分間撹拌した。次いで、pHを、5分間にわたって7gのNaOH-25を滴下することによって10に増加させた(工程d))。混合物を、pH10で3分間撹拌した(工程e))。5分間にわたって9.6gのHCl(15重量%水溶液)を滴下することによって、pHを5.5に戻した(工程ii))。反応混合物を、pH5.5で2分間撹拌した。総還元時間は20分であった(例、実施例7)。次いで、反応混合物のpHを、5分間で約5gのNaOH-25を滴下することによって7.6に増加させ、続いて、後処理を行った(以下を参照)。
【0052】
実施例5~8の後処理
撹拌を停止し、有機相および水相を分離させた。水相を反応器から排出し、廃棄した。次に、100gのNaCl-25(25重量%水溶液)および45gの脱塩水を、攪拌されていない反応混合物に添加した。添加後、反応混合物を20℃で2分間撹拌した(1000rpm)。撹拌を停止し、有機相および水相を分離させた。水相を反応器から排出し、廃棄した。その後、有機相を排出し、500mlの三角フラスコに別々に集めた。有機相を、8gの硫酸マグネシウム二水和物で10分間乾燥させた。混合物をガラスフィルターで濾過し、透明な有機ペルオキシド生成物207g(分析値99%)を収集し、20℃で保存した。
【0053】
分析:実施例5~8の生成物を、実施例1および2について記載した方法と同じ方法(「TBHPプロトコル」)を使用して分析した。
【表3】
【0054】
結論 - 実施例1~8
これらのデータは、工程c)で6.8未満のpHを有することが、工程d)(工程i))に進む前に、生成物中のヒドロペルオキシド含有量を低減させ(t=0で、93%を超える低減率)、貯蔵安定性を増加させることを示している(実施例5と、実施例6/7を参照)。これらのデータはまた、工程e)(工程ii))の完了後にpHを低減することが、生成物中のヒドロペルオキシド含有量 を低減させ(t=0で、86%を超える低減率)、貯蔵安定性を増加させることを示している(実施例2と実施例1、実施例4と実施例3、実施例8と実施例7を参照)。
【0055】
工程i)およびii)を組み合わせることによって得られる全体的な改善は、顕著である(t=0でのヒドロペルオキシド含有量の99%を超える低減、貯蔵安定性の実質的な改善、実施例5と実施例8を参照)。上述のように、この最も好ましいプロセス(実施例2、実施例4、実施例8)は、300ppm未満の初期TBHP含量および300ppm未満の4週安定性値(ΔTBHP、0~4週)を有するt-ブチルペルオキシ生成物を一貫して生成した。
【0056】
前述の詳細な説明には少なくとも一つの例示的な実施形態が提示されているが、当然のことながら、膨大な数の変形が存在する。例示的な実施形態は、単なる例であり、本発明の範囲、適用性、または構成をいかなる方法でも制限することを意図するものではないことも理解されるべきである。むしろ、前述の詳細な説明は、本明細書において企図される例示的な実施形態を実施するための便利なロードマップを当業者に提供するであろう。当然のことながら、添付の特許請求の範囲に記載される本発明の範囲から逸脱することなく、例示的な実施形態に記載される要素の機能および配置に様々な変更がなされ得ることが理解されるだろう。
【0057】
本開示は、以下の態様によってさらに説明され得る。
【0058】
態様1. ペルオキシエステルまたはペルオキシカルボナートを調製するための方法であって、
a) 有機ヒドロペルオキシドを、塩基の存在下で、酸ハロゲン化物、酸無水物、またはハロギ酸塩と反応させることと、
b) 工程a)の完了後、水層を分離する工程と、
c) 工程b)で前記水層が分離された後に、前記有機ヒドロペルオキシドを対応するアルコールに還元することができる訳剤である還元剤を有機層に添加することと、
d) 工程c)の前記混合物が、工程c)の前記混合物の前記pHを維持または増加させることによって、6.8よりも高いpHを有することを確実にすることと、
e) 少なくとも5秒間、前記6.8よりも高いpHを維持することととを含み、
前記方法が、
i 工程c)の前記混合物は、工程d)の前に6.8未満のpHを有し、工程d)では、工程c)の前記混合物のpHは、6.8よりも高いpHに増加され、かつ/または
ii 工程e)の完了後、pHが6.8未満のpHに減少されることを特徴とする、方法。
【0059】
態様2. プロセスが、6.8よりも高いpHに増加させること、および/または工程ii)の完了後に有機層を洗浄することをさらに含み、洗浄工程が、好ましくは、NaOH(水溶液)および/またはNaHCO3(水溶液)による洗浄などの、一つ以上の水による洗浄および/または一つ以上のアルカリ性の水溶液による洗浄を含む、態様1に記載の方法。
【0060】
態様3. 工程c)で添加される還元剤が亜硫酸塩である、態様1または2に記載の方法。
【0061】
態様4. 亜硫酸塩が亜硫酸塩の水溶液である、態様3に記載の方法。
【0062】
態様5. 工程c)において、前記pHが、6.5以下のpHまで低下する、態様1~4のいずれか一つに記載の方法。
【0063】
態様6. 工程c)において、pHが、約4~約6.5のpHまで低下する、態様1~5のいずれか一つに記載の方法。
【0064】
態様7. 工程d)が、工程c)の前記混合物のpHが7.0よりも高いことを確実にすることを含む、態様1~6のいずれか一つに記載の方法。
【0065】
態様8. 工程d)が、工程c)の前記混合物のpHが7.2よりも高いことを確実にすることを含む、態様1~7のいずれか一つに記載の方法。
【0066】
態様9. 工程d)が、工程c)の前記混合物のpHが7.4よりも高いことを確実にすることを含む、態様1~8のいずれか一つに記載の方法。
【0067】
態様10. 工程e)において、pHが、少なくとも10秒間、好ましくは少なくとも30秒間、好ましくは少なくとも60秒間、より好ましくは少なくとも120秒間維持される、態様1~9のいずれか1つに記載の方法。
【0068】
態様11. 工程ii)において、pHが、約6.5以下のpHまで低下される、態様2~10のいずれか一つに記載の方法。
【0069】
態様12. 工程ii)において、pHが、約4.5~6.5のpHまで低下される、態様2~11のいずれか一つに記載の方法。
【0070】
態様13. 有機ヒドロペルオキシドが、一般式(II)で表される有機ヒドロペルオキシドから選択される、態様1~12のいずれか一つに記載の方法。
【化5】
式中、
R
1およびR
-2は、水素、C
1-C
20アルキル、C
3-C
20シクロアルキル、C
6-C
20アリール、C
7-C
20アラルキル、およびC
7-C
20アルカリルを含む群から独立して選択され、あるいはR
1およびR
2は、C
3-C
12シクロアシル基を形成し、それらの基は、直鎖または分岐アルキル部分を含んでもよく、R
1およびR
2の各々は、ヒドロキシ、ヒドロペルオキシ、アルコキシ、直鎖または分岐アルキル、アリールオキシ、ハロゲン、エステル、カルボキシ、ニトリル、およびアミドから選択される1つ以上の基で随意に置換されていてもよく、
Aは、R
1およびR
2と同じ置換基の群からR
1およびR
2とは独立して選択され、またはAは一般式(III)で表されるものの一つである。
【化6】
【0071】
式中、R1およびR-2は、上記に定義されるとおりであり、式中、Aは、好ましくは、R1およびR2と同じ置換基の群から、R1およびR2とは独立して選択される。
【0072】
態様14. 有機ヒドロペルオキシドが、tert-ブチルヒドロペルオキシド、tert-アミルヒドロペルオキシド、クミルヒドロペルオキシド、1,1,3,3-テトラメチルブチルヒドロペルオキシド、4-ヒドロペルオキシ-4-メチルペンタン-2-オール、2,5-ジヒドロペルオキシ-2,5-ジメチルヘキサ-3-イン、2,5-ジヒドロペルオキシ-2,5-ジメチルヘキサン、またはそれらの混合物である、態様1~13のいずれか一つに記載の方法。
【0073】
態様15. 有機ヒドロペルオキシドが、好ましくは空気酸化プロセスから得られるtert-ブチルヒドロペルオキシドである、態様1~14のいずれか一つに記載の方法。
【0074】
態様16. 当該酸ハロゲン化物、酸無水物、またはクロロギ酸エステルが、一般式(Ia)または(Ib)で表される、態様1~15のいずれか一つに記載の方法。
【化7】
【化8】
式中、
R
3は、独立して、C
1-C
-20アルキル、C
3-C
20シクロアルキル、C
6-C
20アリール、C
7-C
20アラルキル、およびC
7-C
20アルカリルを含む群から選択され、R
3は、ヒドロキシ、アルコキシ、直鎖または分岐アルキル、アリールオキシ、ハロゲン、エステル、カルボキシ、ニトリル、およびアミドから選択される1つ以上の基で随意に置換され、
Xは、ハロゲンまたは-O-CO-R
3’であり、式中、R
3’は、R
3と同じ置換基の群からR
3とは独立して選択される。
【0075】
態様17. 前記酸ハロゲン化物、酸無水物またはハロギ酸塩が、以下のカルボン酸: 酢酸、フェニル酢酸、フェノキシ酢酸、プロパン酸、イソ酪酸、n-酪酸、安息香酸、2-メチル-安息香酸、2-メチルブタン酸、2-ブテン酸、3-フェニルプロペン酸、2,2-ジメチルプロパン酸、2,2-ジメチルブタン酸、2,2-ジメチルペンタン酸、2-エチルブタン酸、3,5,5-トリメチルヘキサン酸、2-エチルヘキサン酸、ネオヘキサン酸、ネオヘプタン酸、ネオデカン酸、オクタン酸、ノナン酸、ラウリン酸、ヘキサン二酸、3,5,5-トリメチルヘキサン二酸、2,4,4-トリメチルヘキサン二酸、デカン二酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、シクロヘキサンカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、シクロヘキサン-1,4-二酢酸、マレイン酸、クエン酸、メチルコハク酸、シトラコン酸、フマル酸、シュウ酸、テレフタル酸、プロペン酸、およびフタル酸のいずれかに由来する、態様1~16のいずれか一つに記載のプロセス。
【0076】
態様18. 前記方法が、酸ハロゲン化物またはハロギ酸塩を使用する、態様1~17のいずれか一つに記載の方法。
【0077】
態様19. 前記酸ハロゲン化物が、酸塩化物である、態様1~18のいずれか一つに記載の方法。
【0078】
態様20. 前記酸塩化物の前記アシル部分が、以下のカルボン酸:酢酸、フェニル酢酸、フェノキシ酢酸、プロパン酸、イソ酪酸、n-酪酸、安息香酸、2-メチル-安息香酸、2-メチルブタン酸、2-ブテン酸、3-フェニルプロペン酸、2,2-ジメチルプロパン酸、2,2-ジメチルブタン酸、2,2-ジメチルペンタン酸、2-エチルブタン酸、3,5,5-トリメチルヘキサン酸、2-エチルヘキサン酸、ネオヘキサン酸、ネオヘプタン酸、ネオデカン酸、オクタン酸、ノナン酸、ラウリン酸、ヘキサン二酸、3,5,5-トリメチルヘキサン二酸、2,4,4-トリメチルヘキサン二酸、デカン二酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、シクロヘキサンカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、シクロヘキサン-1,4-二酢酸、マレイン酸、クエン酸、メチルコハク酸、シトラコン酸、フマル酸、シュウ酸、テレフタル酸、プロペン酸、およびフタル酸のいずれかに由来する、態様19に記載の方法。
【0079】
態様21. 前記ハロギ酸塩がクロロギ酸エステルである、態様1~18のいずれか一つに記載の方法。
【0080】
態様22. 前記クロロギ酸エステルが、クロロギ酸-2-(1-メチルエトキシ)フェニル、クロロギ酸-1-メチルプロピル、クロロギ酸-4-メチルフェニル、クロロギ酸-2,2,2-トリクロロ-1、1-ジメチルエチル、クロロギ酸ヘプチル、クロロギ酸シクロヘキシルメチル、エチレングリコールビス(クロロギ酸エステル)、3-(1,1-ジメチルエチル)クロロギ酸フェニル、クロロギ酸-3-(トリクロロシリル)プロピル、クロロギ酸フェニル、クロロギ酸-3-メトキシブチル、クロロギ酸-2-フェノキシエチル、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオールビス(クロロギ酸エステル)、クロロギ酸フェニルメチル、クロロギ酸-9-オクタデセニル、クロロギ酸-2-メチルフェニル、ビスフェノールAビス(クロロギ酸エステル)、クロロギ酸-1,3-ジメチルブチル、クロロギ酸-3,4-ジメチルブチル、クロロギ酸-3,4-ジメチルフェニル、クロロギ酸トリクロロメチル、クロロギ酸-1-クロロエチル、クロロギ酸クロロメチル、1,4-ブタンジオールビス(クロロギ酸エステル)、クロロギ酸-1,1-ビス(エトキシカルボ)エチル、クロロギ酸-3,5-ジメチルフェニル、クロロギ酸オクチル、クロロギ酸エチル、クロロギ酸オクタデシル、クロロギ酸(2-オキソ-1、3-ジオキソラン-4-イル)メチル、1,6-ヘキサンジオールビス(クロロギ酸エステル)、クロロギ酸-2-クロロブチル、クロロギ酸-4-メトキシフェニル、クロロギ酸-2-メチルプロピル、クロロギ酸-2-(メチルスルホニル)エチル、クロロギ酸ドデシル、1,4-シクロヘキサンジメタノールビス(クロロギ酸エステル)、クロロギ酸-2-クロロ-2-フェニルエチル、クロロギ酸-2-アクリロイルオキシエチル、クロロギ酸-4-ニトロフェニル、クロロギ酸n-ブチル、クロロギ酸デシル、クロロギ酸-2-エチルヘキシル、クロロギ酸-2-プロペニル、クロロギ酸-2-クロロシクロヘキシル、クロロギ酸-2-メチル-2-プロペニル、クロロギ酸シクロヘキシル、クロロギ酸-2-クロロエチル、クロロギ酸[4-(フェニルアゾ)フェニル〕メチル、クロロギ酸ヘキサデシル、クロロギ酸-1-ナフタレニル、クロロギ酸-2-[2-シクロペンチル-4-(1、1-ジメチルエチル)フェノキシ]-1-メチルエチル、クロロギ酸-3,5,5-トリメチルヘキシル、クロロギ酸イソトリデシル、クロロギ酸トリデシル、クロロギ酸-4-(1、1-ジメチルエチル)シクロヘキシル、クロロギ酸-2,4,5-トリクロロフェニル、クロロギ酸-3-クロロプロピル、クロロギ酸テトラデシル、クロロギ酸-9H-フルオレン-9-イルメチル、クロロギ酸(4-ニトロフェニル)メチル、クロロギ酸メチル、クロロギ酸-2-(1-メチルエチル)フェニル、トリエチレングリコールビス(クロロギ酸エステル)、クロロギ酸-2-メトキシエチル、クロロギ酸-1-メチルエテニル、クロロギ酸-3-メチルフェニル、クロロギ酸-2-ブロモエチル、ジエチレングリコールビス(クロロギ酸エステル)、クロロギ酸-3-メチル-5-(1-メチルエチル)フェニル、クロロギ酸-2,2,2-トリブロモエチル、クロロギ酸-2-エトキシエチル、3-メチル-1,5-ペンタンジオールビス(クロロギ酸エステル)、クロロギ酸-4-メトキシカルボフェニル、クロロギ酸エテニル、クロロギ酸-1-メチルエチル、クロロギ酸-2-(1-メチルプロピル)フェニル、クロロギ酸-2,2,2-トリクロロエチル、クロロギ酸ペンチル、クロロギ酸シクロデシル、クロロギ酸-4-(1、1-ジメチルエチル)フェニル、クロロギ酸ヘキシル、クロロギ酸n-プロピル、クロロギ酸-3-メトキシ-3-メチルブチル、クロロギ酸-2-プロポキシエチル、クロロギ酸-2-メトキシ-1-メチルエチル、クロロギ酸-2-ブトキシエチル、クロロギ酸-2,2-ジメチルプロピル、クロロギ酸-2,3-ジヒドロ-2,2-ジメチル-7-ベンゾフラニル、クロロギ酸-1-クロロエチル、クロロギ酸シクロブチル、クロロギ酸-5-メチル-2-(1-メチルエチル)シクロヘキシル、クロロギ酸-1,1-ジメチルエチル、クロロギ酸-1-メチルヘプチルおよびこれらの混合物から選択される、態様21に記載の方法。
【0081】
態様23. 塩基が、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、およびそれらの混合物から選択される、態様1~22のいずれか一つに記載の方法。
【0082】
態様24. 工程c)~e)およびii)のうちのいずれか1つにおいて、混合物が、プロセスの次の工程に進む前に少なくとも1分間攪拌される、態様1~23のいずれか一つに記載の方法。
【0083】
態様25. tert-ブチルペルオキシエステルまたはtert-ブチルペルオキシカルボナートであって、初期(t=0)tert-ブチルヒドロペルオキシド(TBHP)含有量が300ppm未満であり、4週安定性(0-4週ΔTBHP)値が300ppm以下であり、初期TBHP含有量および4週安定性値は、TBHPプロトコルに従って決定されることを特徴とする、tert-ブチルペルオキシエステルまたはtert-ブチルペルオキシカルボナート。
【0084】
態様26. tert-ブチルペルオキシエステルであって、初期(t=0)tert-ブチルヒドロペルオキシド(TBHP)含有量が300ppm未満であり、4週安定性(0-4週ΔTBHP)値が300ppm以下であり、初期TBHP含有量および4週安定性値が、TBHPプロトコルに従って決定されることを特徴とする、tert-ブチルペルオキシエステル。
【0085】
態様27. tert-ブチルペルオキシエステルが、tert-ブチルペルオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート(CAS:13122-18-4)、tert-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート(CAS:3006-82-4)、またはtert-ブチルペルオキシベンゾエート(CAS:614-45-9)である、態様26に記載のtert-ブチルペルオキシエステル。
前記有機ヒドロペルオキシドが、tert-ブチルヒドロペルオキシド、tert-アミルヒドロペルオキシド、クミルヒドロペルオキシド、1,1,3,3-テトラメチルブチルヒドロペルオキシド、4-ヒドロペルオキシ-4-メチルペンタン-2-オール、2,5-ジヒドロペルオキシ-2,5-ジメチルヘキサ-3-イン、2,5-ジヒドロペルオキシ-2,5-ジメチルヘキサン、またはそれらの混合物である、請求項1に記載の方法。
前記酸ハロゲン化物、酸無水物またはハロギ酸塩は、以下のカルボン酸: 酢酸、フェニル酢酸、フェノキシ酢酸、プロパン酸、イソ酪酸、n-酪酸、安息香酸、2-メチル-安息香酸、2-メチルブタン酸、2-ブテン酸、3-フェニルプロペン酸、2,2-ジメチルプロパン酸、2,2-ジメチルブタン酸、2,2-ジメチルペンタン酸、2-エチルブタン酸、3,5,5-トリメチルヘキサン酸、2-エチルヘキサン酸、ネオヘキサン酸、ネオヘプタン酸、ネオデカン酸、オクタン酸、ノナン酸、ラウリン酸、ヘキサン二酸、3,5,5-トリメチルヘキサン二酸、2,4,4-トリメチルヘキサン二酸、デカン二酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、シクロヘキサンカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、シクロヘキサン-1,4-二酢酸、マレイン酸、クエン酸、メチルコハク酸、シトラコン酸、フマル酸、シュウ酸、テレフタル酸、プロペン酸、およびフタル酸のいずれかに由来する、請求項1に記載の方法。
前記酸塩化物の前記アシル部分が、以下のカルボン酸: 酢酸、フェニル酢酸、フェノキシ酢酸、プロパン酸、イソ酪酸、n-酪酸、安息香酸、2-メチル-安息香酸、2-メチルブタン酸、2-ブテン酸、3-フェニルプロペン酸、2,2-ジメチルプロパン酸、2,2-ジメチルブタン酸、2,2-ジメチルペンタン酸、2-エチルブタン酸、3,5,5-トリメチルヘキサン酸、2-エチルヘキサン酸、ネオヘキサン酸、ネオヘプタン酸、ネオデカン酸、オクタン酸、ノナン酸、ラウリン酸、ヘキサン二酸、3,5,5-トリメチルヘキサン二酸、2,4,4-トリメチルヘキサン二酸、デカン二酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、シクロヘキサンカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、シクロヘキサン-1,4-二酢酸、マレイン酸、クエン酸、メチルコハク酸、シトラコン酸、フマル酸、シュウ酸、テレフタル酸、プロペン酸、およびフタル酸のいずれか一つのアシル部分に対応し、かつ/または
前記クロロギ酸エステルが、クロロギ酸2-(1-メチルエトキシ)フェニル、クロロギ酸1-メチルプロピル、クロロギ酸4-メチルフェニル、クロロギ酸2,2,2-トリクロロ-1,1-ジメチルエチル、クロロギ酸ヘプチル、クロロギ酸シクロヘキシルメチル、エチレングリコールビス(クロロギ酸エステル)、3-(1,1-ジメチルエチル)クロロギ酸フェニル、クロロギ酸3-(トリクロロシリル)プロピル、クロロギ酸フェニル、クロロギ酸3-メトキシブチル、クロロギ酸2-フェノキシエチル、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオールビス(クロロギ酸エステル)、クロロギ酸フェニルメチル、クロロギ酸9-オクタデセニル、クロロギ酸2-メチルフェニル、ビスフェノールAビス(クロロギ酸エステル)、クロロギ酸1,3-ジメチルブチル、クロロギ酸3,4-ジメチルブチル、クロロギ酸3,4-ジメチルフェニル、クロロギ酸トリクロロメチル、クロロギ酸1-クロロエチル、クロロギ酸クロロメチル、1,4-ブタンジオールビス(クロロギ酸エステル)、クロロギ酸1,1-ビス(エトキシカルボ)エチル、クロロギ酸3,5-ジメチルフェニル、クロロギ酸オクチル、クロロギ酸エチル、クロロギ酸オクタデシル、クロロギ酸(2-オキソ-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチル、1,6-ヘキサンジオールビス(クロロギ酸エステル)、クロロギ酸2-クロロブチル、クロロギ酸4-メトキシフェニル、クロロギ酸2-メチルプロピル、クロロギ酸2-(メチルスルホニル)エチル、クロロギ酸ドデシル、1,4-シクロヘキサンジメタノールビス(クロロギ酸エステル)、クロロギ酸2-クロロ-2-フェニルエチル、クロロギ酸2-アクリロイルオキシエチル、クロロギ酸4-ニトロフェニル、クロロギ酸n-ブチル、クロロギ酸デシル、クロロギ酸2-エチルヘキシル、クロロギ酸2-プロペニル、クロロギ酸2-クロロシクロヘキシル、クロロギ酸2-メチル-2-プロペニル、クロロギ酸シクロヘキシル、クロロギ酸2-クロロエチル、クロロギ酸[4-(フェニルアゾ)フェニル〕メチル、クロロギ酸ヘキサデシル、クロロギ酸1-ナフタレニル、クロロギ酸2-[2-シクロペンチル-4-(1,1-ジメチルエチル)フェノキシ]-1-メチルエチル、クロロギ酸3,5,5-トリメチルヘキシル、クロロギ酸イソトリデシル、クロロギ酸トリデシル、クロロギ酸4-(1,1-ジメチルエチル)シクロヘキシル、クロロギ酸2,4,5-トリクロロフェニル、クロロギ酸3-クロロプロピル、クロロギ酸テトラデシル、クロロギ酸9H-フルオレン-9-イルメチル、クロロギ酸(4-ニトロフェニル)メチル、クロロギ酸メチル、クロロギ酸2-(1-メチルエチル)フェニル、トリエチレングリコールビス(クロロギ酸エステル)、クロロギ酸2-メトキシエチル、クロロギ酸1-メチルエテニル、クロロギ酸3-メチルフェニル、クロロギ酸2-ブロモエチル、ジエチレングリコールビス(クロロギ酸エステル)、クロロギ酸3-メチル-5-(1-メチルエチル)フェニル、クロロギ酸2,2,2-トリブロモエチル、クロロギ酸2-エトキシエチル、3-メチル-1,5-ペンタンジオールビス(クロロギ酸エステル)、クロロギ酸4-メトキシカルボフェニル、クロロギ酸エテニル、クロロギ酸1-メチルエチル、クロロギ酸2-(1-メチルプロピル)フェニル、クロロギ酸2,2,2-トリクロロエチル、クロロギ酸ペンチル、クロロギ酸シクロデシル、クロロギ酸4-(1,1-ジメチルエチル)フェニル、クロロギ酸ヘキシル、クロロギ酸n-プロピル、クロロギ酸3-メトキシ-3-メチルブチル、クロロギ酸2-プロポキシエチル、クロロギ酸2-メトキシ-1-メチルエチル、クロロギ酸2-ブトキシエチル、クロロギ酸2,2-ジメチルプロピル、クロロギ酸2,3-ジヒドロ-2,2-ジメチル-7-ベンゾフラニル、クロロギ酸1-クロロエチル、クロロギ酸シクロブチル、クロロギ酸5-メチル-2-(1-メチルエチル)シクロヘキシル、クロロギ酸1,1-ジメチルエチル、クロロギ酸1-メチルヘプチル、およびそれらの混合物から選択される、請求項13に記載の方法。
300ppm未満の初期(t=0週間)tert-ブチルヒドロペルオキシド(TBHP;t--Bu-OOH)含量、および300ppm以下の4週安定性(0~4週のΔTBHP)値によって特徴付けられ、前記初期TBHP含有量および前記4週安定性値は、明細書において提供される「TBHPプロトコル」に従って決定される、tert-ブチルペルオキシエステル(t-Bu-OO-C(O)R)またはtert-ブチルペルオキシカルボナート(t-Bu-O-C(O)OR)。
態様27. tert-ブチルペルオキシエステルが、tert-ブチルペルオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート(CAS:13122-18-4)、tert-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート(CAS:3006-82-4)、またはtert-ブチルペルオキシベンゾエート(CAS:614-45-9)である、態様26に記載のtert-ブチルペルオキシエステル。
本願発明には以下の態様が含まれる。
項1.
ペルオキシエステルまたはペルオキシカルボナートを調製するための方法であって、
a) 有機ヒドロペルオキシドを、塩基の存在下で、酸ハロゲン化物、酸無水物、またはハロギ酸塩と反応させることと、
b) 工程a)の完了後、水層を分離する工程と、
c) 工程b)で前記水層が分離された後に、前記有機ヒドロペルオキシドを対応するアルコールに還元することができる訳剤である還元剤を有機層に添加することと、
d) 工程c)の前記混合物が、工程c)の前記混合物の前記pHを維持または増加させることによって、6.8よりも高いpHを有することを確実にすることと、
e) 少なくとも5秒間、前記6.8よりも高いpHを維持することととを含み、
前記方法が、
i 工程c)の前記混合物が、工程d)の前に6.8未満のpHを有し、工程d)では、工程c)の前記混合物のpHが、6.8よりも高いpHに増加され、かつ/または
ii 工程e)の完了後、前記pHが6.8未満のpHに減少されることを特徴とする、方法。
項2.
工程c)で添加される前記還元剤が亜硫酸塩である、項1に記載の方法。
項3.
前記亜硫酸塩が亜硫酸塩の水溶液である、項2に記載の方法。
項4.
工程i)において、工程c)の前記混合物が、6.5以下のpHを有する、項1~3のいずれか一項に記載の方法。
項5.
工程i)において、工程c)の前記混合物が、約4~約6.5のpHを有する、項1~4のいずれか一項に記載の方法。
項6.
工程d)が、工程c)の前記混合物のpHが7.0よりも高いことを確実にすることを含む、項1~5のいずれか一項に記載の方法。
項7.
工程ii)で、前記pHが約6.5以下のpHまで低下される、項1~6のいずれか一項に記載の方法。
項8.
前記有機ヒドロペルオキシドが、前記一般式(II)で表される有機ヒドロペルオキシドから選択され、
【化1】
式中、
R
1およびR
-2が、水素、C
1-C
20アルキル、C
3-C
20シクロアルキル、C
6-C
20アリール、C
7-C
20アラルキル、およびC
7-C
20アルカリルを含む群から独立して選択され、あるいはR
1およびR
2が、C
3-C
12シクロアシル基を形成し、それらの基が、直鎖または分岐アルキル部分を含んでもよく、R
1およびR
2の各々が、ヒドロキシ、ヒドロペルオキシ、アルコキシ、直鎖または分岐アルキル、アリールオキシ、ハロゲン、エステル、カルボキシ、ニトリル、およびアミドから選択される1つ以上の基で随意に置換されていてもよく、
Aが、R
1およびR
2と同じ置換基の群からR
1およびR
2とは独立して選択され、またはAは一般式(III)で表されるものの一つであり、
【化2】
式中、R
1およびR
-2が、上記に定義したとおりである、項1~7のいずれか一項に記載の方法。
項9.
前記有機ヒドロペルオキシドが、tert-ブチルヒドロペルオキシド、tert-アミルヒドロペルオキシド、クミルヒドロペルオキシド、1,1,3,3-テトラメチルブチルヒドロペルオキシド、4-ヒドロペルオキシ-4-メチルペンタン-2-オール、2,5-ジヒドロペルオキシ-2,5-ジメチルヘキサ-3-イン、2,5-ジヒドロペルオキシ-2,5-ジメチルヘキサン、またはそれらの混合物である、項1~8のいずれか一項に記載の方法。
項10.
前記有機ヒドロペルオキシドが、好ましくは空気酸化プロセスから得られるtert-ブチルヒドロペルオキシドである、項1~9のいずれか一項に記載の方法。
項11.
前記酸ハロゲン化物、酸無水物、またはハロギ酸塩が、一般式(Ia)または(Ib)で表され、
【化3】
【化4】
式中、
R
3が、独立して、C
1-C
-20アルキル、C
3-C
20シクロアルキル、C
6-C
20アリール、C
7-C
20アラルキル、およびC
7-C
20アルカリルを含む群から選択され、R
3が、ヒドロキシ、アルコキシ、直鎖または分岐アルキル、アリールオキシ、ハロゲン、エステル、カルボキシ、ニトリル、およびアミドから選択される1つ以上の基で随意に置換され、
Xが、ハロゲンまたは-O-CO-R
3’であり、式中、R
3’が、R
3と同じ置換基の群からR
3とは独立して選択される、項1~10のいずれか一項に記載の方法。
項12.
前記酸ハロゲン化物、酸無水物またはハロギ酸塩は、以下のカルボン酸: 酢酸、フェニル酢酸、フェノキシ酢酸、プロパン酸、イソ酪酸、n-酪酸、安息香酸、2-メチル-安息香酸、2-メチルブタン酸、2-ブテン酸、3-フェニルプロペン酸、2,2-ジメチルプロパン酸、2,2-ジメチルブタン酸、2,2-ジメチルペンタン酸、2-エチルブタン酸、3,5,5-トリメチルヘキサン酸、2-エチルヘキサン酸、ネオヘキサン酸、ネオヘプタン酸、ネオデカン酸、オクタン酸、ノナン酸、ラウリン酸、ヘキサン二酸、3,5,5-トリメチルヘキサン二酸、2,4,4-トリメチルヘキサン二酸、デカン二酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、シクロヘキサンカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、シクロヘキサン-1,4-二酢酸、マレイン酸、クエン酸、メチルコハク酸、シトラコン酸、フマル酸、シュウ酸、テレフタル酸、プロペン酸、およびフタル酸のいずれかに由来する、項1~11のいずれか一項に記載の方法。
項13.
酸ハロゲン化物またはハロギ酸塩、好ましくは酸塩化物またはクロロギ酸エステルを使用する、項1~12のいずれか一項に記載の方法。
項14.
前記酸塩化物の前記アシル部分が、以下のカルボン酸: 酢酸、フェニル酢酸、フェノキシ酢酸、プロパン酸、イソ酪酸、n-酪酸、安息香酸、2-メチル-安息香酸、2-メチルブタン酸、2-ブテン酸、3-フェニルプロペン酸、2,2-ジメチルプロパン酸、2,2-ジメチルブタン酸、2,2-ジメチルペンタン酸、2-エチルブタン酸、3,5,5-トリメチルヘキサン酸、2-エチルヘキサン酸、ネオヘキサン酸、ネオヘプタン酸、ネオデカン酸、オクタン酸、ノナン酸、ラウリン酸、ヘキサン二酸、3,5,5-トリメチルヘキサン二酸、2,4,4-トリメチルヘキサン二酸、デカン二酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、シクロヘキサンカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、シクロヘキサン-1,4-二酢酸、マレイン酸、クエン酸、メチルコハク酸、シトラコン酸、フマル酸、シュウ酸、テレフタル酸、プロペン酸、およびフタル酸のいずれか一つのアシル部分に対応し、かつ/または
前記クロロギ酸エステルが、クロロギ酸2-(1-メチルエトキシ)フェニル、クロロギ酸1-メチルプロピル、クロロギ酸4-メチルフェニル、クロロギ酸2,2,2-トリクロロ-1,1-ジメチルエチル、クロロギ酸ヘプチル、クロロギ酸シクロヘキシルメチル、エチレングリコールビス(クロロギ酸エステル)、3-(1,1-ジメチルエチル)クロロギ酸フェニル、クロロギ酸3-(トリクロロシリル)プロピル、クロロギ酸フェニル、クロロギ酸3-メトキシブチル、クロロギ酸2-フェノキシエチル、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオールビス(クロロギ酸エステル)、クロロギ酸フェニルメチル、クロロギ酸9-オクタデセニル、クロロギ酸2-メチルフェニル、ビスフェノールAビス(クロロギ酸エステル)、クロロギ酸1,3-ジメチルブチル、クロロギ酸3,4-ジメチルブチル、クロロギ酸3,4-ジメチルフェニル、クロロギ酸トリクロロメチル、クロロギ酸1-クロロエチル、クロロギ酸クロロメチル、1,4-ブタンジオールビス(クロロギ酸エステル)、クロロギ酸1,1-ビス(エトキシカルボ)エチル、クロロギ酸3,5-ジメチルフェニル、クロロギ酸オクチル、クロロギ酸エチル、クロロギ酸オクタデシル、クロロギ酸(2-オキソ-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチル、1,6-ヘキサンジオールビス(クロロギ酸エステル)、クロロギ酸2-クロロブチル、クロロギ酸4-メトキシフェニル、クロロギ酸2-メチルプロピル、クロロギ酸2-(メチルスルホニル)エチル、クロロギ酸ドデシル、1,4-シクロヘキサンジメタノールビス(クロロギ酸エステル)、クロロギ酸2-クロロ-2-フェニルエチル、クロロギ酸2-アクリロイルオキシエチル、クロロギ酸4-ニトロフェニル、クロロギ酸n-ブチル、クロロギ酸デシル、クロロギ酸2-エチルヘキシル、クロロギ酸2-プロペニル、クロロギ酸2-クロロシクロヘキシル、クロロギ酸2-メチル-2-プロペニル、クロロギ酸シクロヘキシル、クロロギ酸2-クロロエチル、クロロギ酸[4-(フェニルアゾ)フェニル〕メチル、クロロギ酸ヘキサデシル、クロロギ酸1-ナフタレニル、クロロギ酸2-[2-シクロペンチル-4-(1,1-ジメチルエチル)フェノキシ]-1-メチルエチル、クロロギ酸3,5,5-トリメチルヘキシル、クロロギ酸イソトリデシル、クロロギ酸トリデシル、クロロギ酸4-(1,1-ジメチルエチル)シクロヘキシル、クロロギ酸2,4,5-トリクロロフェニル、クロロギ酸3-クロロプロピル、クロロギ酸テトラデシル、クロロギ酸9H-フルオレン-9-イルメチル、クロロギ酸(4-ニトロフェニル)メチル、クロロギ酸メチル、クロロギ酸2-(1-メチルエチル)フェニル、トリエチレングリコールビス(クロロギ酸エステル)、クロロギ酸2-メトキシエチル、クロロギ酸1-メチルエテニル、クロロギ酸3-メチルフェニル、クロロギ酸2-ブロモエチル、ジエチレングリコールビス(クロロギ酸エステル)、クロロギ酸3-メチル-5-(1-メチルエチル)フェニル、クロロギ酸2,2,2-トリブロモエチル、クロロギ酸2-エトキシエチル、3-メチル-1,5-ペンタンジオールビス(クロロギ酸エステル)、クロロギ酸4-メトキシカルボフェニル、クロロギ酸エテニル、クロロギ酸1-メチルエチル、クロロギ酸2-(1-メチルプロピル)フェニル、クロロギ酸2,2,2-トリクロロエチル、クロロギ酸ペンチル、クロロギ酸シクロデシル、クロロギ酸4-(1,1-ジメチルエチル)フェニル、クロロギ酸ヘキシル、クロロギ酸n-プロピル、クロロギ酸3-メトキシ-3-メチルブチル、クロロギ酸2-プロポキシエチル、クロロギ酸2-メトキシ-1-メチルエチル、クロロギ酸2-ブトキシエチル、クロロギ酸2,2-ジメチルプロピル、クロロギ酸2,3-ジヒドロ-2,2-ジメチル-7-ベンゾフラニル、クロロギ酸1-クロロエチル、クロロギ酸シクロブチル、クロロギ酸5-メチル-2-(1-メチルエチル)シクロヘキシル、クロロギ酸1,1-ジメチルエチル、クロロギ酸1-メチルヘプチル、およびそれらの混合物から選択される、項13に記載の方法。
項15.
300ppm未満の初期(t=0週間)tert-ブチルヒドロペルオキシド(TBHP;t--Bu-OOH)含量、および300ppm以下の4週安定性(0~4週のΔTBHP)値によって特徴付けられ、前記初期TBHP含有量および前記4週安定性値は、明細書において提供される「TBHPプロトコル」に従って決定される、tert-ブチルペルオキシエステル(t-Bu-OO-C(O)R)またはtert-ブチルペルオキシカルボナート(t-Bu-O-C(O)OR)。