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特開2024-173741グリッパ制御ストラップの前部の摩耗監視装置を備えるグリッパ織機
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  • 特開-グリッパ制御ストラップの前部の摩耗監視装置を備えるグリッパ織機 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173741
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】グリッパ制御ストラップの前部の摩耗監視装置を備えるグリッパ織機
(51)【国際特許分類】
   D03D 51/34 20060101AFI20241205BHJP
   D03D 47/23 20060101ALI20241205BHJP
   D03J 1/14 20060101ALN20241205BHJP
【FI】
D03D51/34 101
D03D47/23
D03J1/14 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024083439
(22)【出願日】2024-05-22
(31)【優先権主張番号】102023000011055
(32)【優先日】2023-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(71)【出願人】
【識別番号】515355022
【氏名又は名称】イテマ・ソチエタ・ペル・アツィオーニ
【氏名又は名称原語表記】ITEMA S.p.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【弁理士】
【氏名又は名称】徳山 英浩
(72)【発明者】
【氏名】アルギージ,フランチェスコ
(72)【発明者】
【氏名】ノッツァ,ダヴィデ
(72)【発明者】
【氏名】パリス,トーマス
【テーマコード(参考)】
4L050
【Fターム(参考)】
4L050AA13
4L050EB10
4L050EC14
4L050ED12
(57)【要約】      (修正有)
【課題】グリッパストラップの前部、すなわち、前記グリッパストラップのガイドされた外縁部の摩耗状態を継続的に監視することができる織機用の監視装置を提供する。
【解決手段】織機の搬送グリッパ(C)又はドローインググリッパの制御ストラップの前部の摩耗監視装置を備えるグリッパ織機。摩耗監視装置は、搬送グリッパ(C)又はドローインググリッパの経路の近傍に配置された磁力計(3)と、搬送グリッパ(C)又はドローインググリッパが磁力計(3)の前方を通過する間、搬送グリッパ(C)又はドローインググリッパをガイド手段に対して付勢して移動させる1以上の磁石(2)とを備える。磁力計(3)は、前記通過する間、搬送グリッパ(C)又はドローインググリッパの経路を横切る磁束線を有する誘導磁界における磁束の変化を検出する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
織機の搬送グリッパ(C)又はドローインググリッパ(R)の制御ストラップ(T)の前部の摩耗監視装置を備えるグリッパ織機であって、
前記摩耗監視装置は、
前記搬送グリッパ(C)又は前記ドローインググリッパ(R)の経路の近傍に配置された磁力計(3)と、
前記搬送グリッパ(C)又は前記ドローインググリッパ(R)が前記磁力計(3)の前方を通過する間、前記搬送グリッパ(C)又は前記ドローインググリッパ(R)をガイド手段(G)に対して付勢して移動させる1以上の磁石(2)と、
を備え、
前記磁力計(3)は、前記通過する間、前記搬送グリッパ(C)又は前記ドローインググリッパ(R)の経路を横切る磁束線を有する誘導磁界における磁束の変化を検出する、グリッパ織機。
【請求項2】
前記磁界は、前記1以上の磁石(2)又は補助磁石(4)によって誘導される、請求項1に記載のグリッパストラップの摩耗監視装置を備えるグリッパ織機。
【請求項3】
前記磁力計(3)及び前記1以上の磁石(2)は、前記搬送グリッパ(C)又は前記ドローインググリッパ(R)の経路に対して側方に配置された支持体(1)に配置されている、請求項2に記載のグリッパストラップの摩耗監視装置を備えるグリッパ織機。
【請求項4】
前記補助磁石(4)は、前記支持体(1)内、又は前記搬送グリッパ(C)上、又は前記ドローインググリッパ(R)上に配置されている、請求項3に記載のグリッパストラップの摩耗監視装置を備えるグリッパ織機。
【請求項5】
前記支持体(1)は、グリッパ開口装置(5)と縦糸のシェッドとの間の領域に配置されている、請求項3に記載のグリッパストラップの摩耗監視装置を備えるグリッパ織機。
【請求項6】
前記磁力計(3)の主面は、前記搬送グリッパ(C)又は前記ドローインググリッパ(R)の経路に平行な面に配置され、前記磁界の磁束線は、前記経路に対して垂直である、請求項1に記載のグリッパストラップの摩耗監視装置を備えるグリッパ織機。
【請求項7】
前記搬送グリッパ(C)又は前記ドローインググリッパ(R)が前記監視装置の前方を通過する間、前記磁石(2、4)によって誘導され且つ前記磁力計(3)によって測定される磁束の経時的な傾向を監視するために、前記磁束の変化は、前記織機の走行時に自動的に検出される、請求項2に記載のグリッパストラップの摩耗監視装置を備えるグリッパ織機。
【請求項8】
時間tにおける前記グリッパストラップ(T)の摩耗状態は、時間tにおける磁束(Wt)と、摩耗がない新しいグリッパストラップ(T)において前記磁力計(3)によって検出された磁束(W0)との差に相関し、
前記監視装置は、前記差が予め決められた値を超えたときに警告信号を発する、請求項7に記載のグリッパストラップの摩耗監視装置を備えるグリッパ織機。
【請求項9】
前記磁力計(3)は、ホール効果センサである、請求項1~8のいずれか1つに記載のグリッパストラップの摩耗監視装置を備えるグリッパ織機。
【請求項10】
前記監視装置は、更に、前記磁力計(3)の既知の位置に対する、又は、前記織機の完全な作業サイクルに対して0°から360°の織機の角度までの範囲のスケールに対する、前記搬送グリッパ(C)又は前記ドローインググリッパ(R)の正確な位置に関する情報を提供する、請求項1~8のいずれか1つに記載のグリッパストラップの摩耗監視装置を備えるグリッパ織機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリッパ制御フレキシブルストラップに摩耗監視装置を備える織機に関する。特に、本発明は、グリッパ制御フレキシブルストラップの前部の摩耗状態を監視し、グリッパ制御フレキシブルストラップの前部の摩耗が、織機の通常運転、特に搬送グリッパとドローインググリッパとの間の横糸交換のステップにおいて危険にさらされる程度に達する前に、織機の中央制御システムに警告信号を送信することができる監視装置に関する。以下では、簡潔にするために、グリッパ制御フレキシブルストラップを「グリッパストラップ」という。
【背景技術】
【0002】
当業者には既知であり、図1に概略的に示されているように、グリッパ織機においては、縦糸によって形成されたシェッド内に横糸を挿入するために、搬送グリッパとドローインググリッパとの交互動作が、搬送グリッパ又はドローインググリッパに一端部が固定された2つのグリッパストラップTによって駆動される。交互動作は、各歯車Wによって2つのグリッパストラップTのそれぞれに伝達され、その歯は、グリッパストラップTの中間部分に沿って形成された連続する一連のスロットFに係合する。従って、動作中、グリッパストラップTは、歯車によって制御される可撓性を有するラックのように動作する。実際のところ、一対の金属製のスライドガイドSは、グリッパストラップTを歯車Wのセクタの周りに密着させて曲がるように強制する。このセクタは、前記動作をグリッパストラップTに伝達するのに十分な大きさを有し、スロットFに過度に高い局所応力を発生させることなく、搬送グリッパ及びドローインググリッパがシェッドの外側に位置するときに、織機の下方の領域にグリッパストラップTを向ける。
【0003】
グリッパストラップTは弾性的に元の直線形状を維持するように傾斜しているため、スライドガイドSによる歯車Wの周りで変形することにより、スライドガイドSの表面とグリッパストラップTの外面との間に継続的な引き摺り摩擦が発生する。その後、グリッパストラップTの側縁部とシェッドに沿って配置されたフック又は他の金属製のガイド部材Gとの間に更なる摩擦現象が発生し、グリッパストラップTは、シェッドを横切る所望の方向にガイドされながら、その直線形状に戻されて維持される。スライドガイドS及びガイド部材G内でのグリッパストラップTの高速スライドによって生じる摩擦により、グリッパストラップTの表面が安全に使用できなくなるまで徐々に摩耗する。
【0004】
しかしながら、グリッパストラップの摩耗は、その進行度合いを集合的に生じさせる以下のようないくつかの同時要因によって条件付けられるため、規則的な現象ではない。
-織機の運転速度;
-作業温度;
-グリッパストラップとガイド部材との間の隙間;
-グリッパストラップの不適切な組み立て;
-織機の不適切な調整。
【0005】
このため、グリッパストラップを交換する最適な時期を予測することは、現在、かなりデリケートな作業であり、グリッパストラップの外観から残りの有効寿命を正しく評価する方法を知っている専門の繊維作業者の介入が必要である。実際のところ、グリッパストラップの時期尚早な交換は、明らかに資源の浪費及び経済的損害につながるが、既に過度に摩耗しているグリッパストラップの長期間の使用は、グリッパストラップ自体の故障又は横糸交換時のグリッパ間の干渉という重大なリスクを伴い、その結果、処理される繊維製品及び/又は織機の他の部品や装置に損傷を与える可能性がある。
【0006】
欧州特許出願公開第0341522号明細書には、グリッパストラップの摩耗状態の監視システムが開示されている。各グリッパストラップは、ストラップの長さに沿って配置された内層又はストラップの厚さを通る挿入物を備え、適切な検出器の動作に応じて、ストラップの摩耗状態を示す光学的、電気的、又は磁気的信号を提供する。
【0007】
欧州特許出願公開第3754068号明細書には、グリッパストラップの摩耗状態の監視システムが開示されている。このシステムでは、ストラップの光学プロファイルの経時的変化が比較される。このプロファイルは、ストラップを予め決められた波長の光放射源で照射し、ストラップのプロファイルに沿って変化し且つデジタル電気信号に変換された、反射された光放射線の強度を検出することによって得られる。従って、この特許が開示する制御システムは、ストラップが事前に定義された構造を有する必要も、ストラップの構造が事前に知られている必要もないため、前述の欧州特許出願公開第0341522号明細書の適用分野を大幅に拡大することができる。
【0008】
従って、これらの既知のシステムはいずれも、ストラップ本体に沿った摩耗状態の正確な報告を提供するのに適しており、その結果、繊維作業者は、ストラップを交換する最も適切な時期を特定することができる。
【0009】
しかしながら、後者のストラップ摩耗状態の制御システムの実用化において、本出願人は、グリッパストラップの前部、すなわち、搬送グリッパ又はドローインググリッパが取り付けられている部分が、当該グリッパから徐々に離れているグリッパストラップの領域よりも長い時間、ストラップのガイド部材Gと接触しているために、非常に頻繁に摩耗の増加を示すことに気付いた。更に、グリッパがストラップの前部に取り付けられると、ストラップのこの特定の部分に、ストラップの移動方向に対して横方向の付加的な力が発生する。このような付加的な力は、ストラップに対するグリッパの重心のオフセット位置、及び、ガイド部材Gに沿った戻り走行中のグリッパと横糸との接触、の両方によって発生する。このような摩耗の増加は、特に、グリッパストラップの前部領域の縁部において、グリッパストラップのガイド部材Gに対する前記縁部の摩擦によって発生する。
【0010】
更に、グリッパストラップの縁部の摩耗状態は、特に上述の既存の制御システムでは検出されず、熟練していない織物作業員では直ぐに視認することができない。従って、グリッパストラップの縁部の摩耗状態を目視で評価したり、手動で測定したりするには、織機を停止してグリッパストラップをガイドから抜き取る必要があり、これは複雑で高価な作業である。このような状況の弊害として、グリッパストラップの交換が、使用及びメンテナンスマニュアルに示されているグリッパストラップの端部の最大摩耗限度を既に超えている場合に実施されることが多く、その結果、織機の性能が低下して、間違った横糸の数が増加し、搬送グリッパとドローインググリッパとの間の横糸の交換中に織機部材が損傷するリスクがより高くなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、本発明が解決しようとする技術的課題は、グリッパストラップの前部、すなわち、前記グリッパストラップのガイドされた外縁部の摩耗状態を継続的に監視することができる織機用の監視装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この技術的課題の中で、本発明の第1の目的は、織機からグリッパストラップを取り外したり、進行中の製織処理を中断したりすることなく、グリッパストラップの前部の摩耗状態を測定するのに適した監視装置を提供することにある。
【0013】
また、本発明の他の目的は、特に、装置や付属品で混雑していることで知られている織機の横糸の挿入/到着領域に問題なく設置することができる極めて小さなサイズを有する監視装置を提供することにある。
【0014】
本発明の別の目的は、グリッパストラップ又はグリッパ自体との接触を必要とせず、摩擦及び/又は摩耗現象を更に導入しない監視装置を更に提供することにある。
【0015】
最後に、本発明の更なる目的は、埃、温度、湿度、光などの局所的な環境条件(処理の種類、外部の大気条件、内部の環境条件によって大きく変動する)に影響されない監視装置を提供することにある。
【0016】
この問題及びこれらの目的は、請求項1に記載された特徴を有するグリッパストラップの前部の摩耗監視装置を備える織機によって解決及び達成される。前記監視装置の他の好適な特徴は、従属請求項に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0017】
本発明に係るグリッパストラップの前部の摩耗監視装置の更なる特徴及び利点は、単なる非限定的な例によって与えられ且つ添付の図面に図示された、好適な実施形態の以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【0018】
図1】本明細書の冒頭部分で説明した横糸挿入システムの本質的構成要素を示すグリッパ織機の概略正面図である。
図2】グリッパストラップのセグメントの平面図である。
図3A】摩耗のない状態のグリッパストラップ(新しいグリッパストラップ)の前部及びそれに取り付けられた搬送グリッパの概略断面図である。
図3B】摩耗が進んだ状態(摩耗したグリッパストラップ)における図3Aのような図である。
図4】本発明の監視装置の搬送グリッパの側方における、シェッドからの戻り走行中の搬送グリッパの斜視図である。
図5図4の監視装置の平面図である。
図6】本発明の監視装置のドローインググリッパの側方における、シェッドからの戻り走行中のドローインググリッパの斜視図である。
図7図6の監視装置の平面図である。
図8】グリッパストラップの異なる摩耗条件下において、本発明の監視装置の前方をグリッパが通過する間の磁束の変化を示すプロット図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明によれば、構成的に単純で、特にコンパクトで、局所的な環境条件に全く影響されない解決策によって上記で強調した問題を解決するために、グリッパストラップの摩耗状態の摩耗監視装置が使用される。この摩耗監視装置は、グリッパストラップTの前部におけるガイドされた外縁部Eと各ガイド部材Gとの間の横方向のクリアランスP(図3B)を検出する。このクリアランスは、グリッパストラップTの摩耗によって徐々に生じる。この横方向のクリアランスPは、新しいグリッパストラップTを備える前記グリッパの元の位置に対する、各グリッパストラップTに剛性的に固定された搬送グリッパ又はドローインググリッパの横方向の変位を測定することによって間接的に検出される。前記横方向の変位は、グリッパストラップTの外縁部Eの摩耗が激しいほど明らかに大きくなる。
【0020】
本発明に係るグリッパストラップTの前部の摩耗監視装置は、搬送グリッパCについては図4及び図5に、ドローインググリッパRについては図6及び図7に概略的に示されている。この監視装置は、グリッパの経路の側方の便利な位置に取り付けられた支持体1を備えている。この支持体上には、搬送グリッパC又はドローインググリッパRを引き付けて支持体1に向かって変位させる1以上の磁石2(永久磁石又は電磁石。後者は、摩耗測定の期間中だけでも駆動することができる)が配置されている。最後に、例えばホール効果センサなどの磁力計3があり、グリッパを引き付ける磁石2又は専用の補助磁石4によって発生する磁界の磁束値を検出する。磁界の磁力線は、グリッパの経路を横切り、好ましくはグリッパの移動方向と直交する。補助磁石4は、支持体1内、又は搬送グリッパCやドローインググリッパRに設置してもよい。
【0021】
グリッパストラップの摩耗状態の監視は、織機の通常運転中であればいつでも実施可能である。しかしながら、織機のグリッパが「低速」モードで移動している間、例えば、間違った横糸を発見して修理する全ての作業中に実施される監視は、グリッパの高速移動によって引き起こされる可能性のある動的影響によって妨害されないため、より正確な測定を可能にする。実際、グリッパストラップの磨耗は、比較的ゆっくりとした現象であるため、織機が他の理由で「低速」で動作しているときに時折実施されるグリッパストラップの磨耗状態の不規則な検出であっても、磨耗状態の効果的な制御を可能にし、その磨耗が望ましくない横糸の増加やシェッド内での横糸の挿入を目的とした機械部材の破損につながる前に、グリッパストラップを適時に交換することを可能にするには十分である。
【0022】
グリッパの戻り走行中の最終ストレッチにおいて、シェッドの外側の限界停止位置まで、より正確には、支持体1が取り付けられ且つ他の装置から解放された領域(この領域は、グリッパ開口装置5とシェッドとの間にある)で、磁石2が、搬送グリッパC又はドローインググリッパRを引き付け、支持体1に向かってそれらの横方向の変位を引き起こす。このような変位は、監視時の実際のクリアランスPに比例する。グリッパの横方向の変位の程度は、グリッパ、より正確にはそれらの強磁性部品が、磁力計3の前方を通過する際に、磁石2及び/又は補助磁石4によって誘導される磁束の変化を検出することによって、磁力計3によって計算される。グリッパストラップが新しい場合、クリアランスPは、最小値を有する。正確には、クリアランスPは、図3Aに示されるように、各ガイド部材G内でグリッパストラップの縁部Eをスムーズにスライドさせることができるような値を有する。クリアランスPのこのような最小値は、摩耗がないことを示す開始基準値として使用される。グリッパストラップが摩耗し始めると、クリアランスPは、前記最小値から徐々に増加し、グリッパストラップの前部の摩耗を直接的に代表する。
【0023】
従って、磁力計3から出力される電気信号を自動的且つ定期的に監視することにより、グリッパストラップの前部、すなわち、グリッパストラップの外縁部Eがグリッパストラップの他の部分よりも速く摩耗する可能性がある部分における、グリッパストラップの摩耗の進行を明確に示すことができる。
【0024】
図8は、織機作業サイクルの前進の程度として表現されたグリッパ位置(横軸)の関数として、搬送グリッパC上で磁力計3によって検出された磁束のパーセント値(縦軸)をグラフで報告している。当該グラフにおいて、搬送グリッパCの位置は、磁力計3の近傍の移動方向の動きとして表現されている。グラフは、次のことを示している:
-基準曲線W0は、新しいグリッパストラップ(すなわち摩耗がない)に取り付けられた搬送グリッパCの磁力計3によって検出された磁束の傾向を表す基準曲線W0;
-同じグリッパストラップ上で、作業時間tの後(すなわち、グリッパストラップの外縁部Eとその関連するガイド部材Gとの間の摩耗によるクリアランスPの増加を伴う)、完全に同等の方法で検出された曲線Wt。
【0025】
2つの曲線の試験から、作業時間tの後に、摩耗したストラップの磁束が著しく増加していることがすぐにわかる。これは、クリアランスPの増加によって、グリッパが磁力計3により接近しているためである。磁力計3によって検出される磁束の経時的変化と、それに対応するクリアランスPの変化との間の関係は、監視装置を特定のタイプの織機及びグリッパに設置する際に試験的に容易に決定することができ、その結果、磁束の増加、すなわち時間tにおける磁束(Wt)と、時間0(すなわち新しく摩耗がない状態のグリッパストラップ(T))における磁力計3によって検出される磁束(W0)との差が予め決められた値を超えたとき、警告信号を発することが可能になる。前記予め決められた値は、グリッパストラップの前部に対応するクリアランスPの限界値に対応し、すなわち、グリッパの磁力計3に対する最大許容接近値(図8のフルスケール値100%に対応する)に対応し、これを超えると、織布の欠陥又は機械部品の破損のリスクが予め定義された安全レベルを超え、グリッパストラップを交換する必要がある。
【0026】
また、本発明の監視装置は、グリッパストラップの外縁部の摩耗状態を測定する上述した性能に加えて、磁力計3の既知の位置に対するグリッパの正確な位置、又は、織機の角度(完全な横糸挿入サイクルに対して0°~360°)の通常のスケールに対するグリッパの正確な位置に関しても、非常に興味深く正確な情報を提供することができる。
【0027】
これまでの説明から、本発明の監視装置が意図した目的を完全に達成していることは明らかである。まず最初に、実際のところ、本発明の監視装置は、織機の高速織布段階及び低速修理期間の両方において、完全に自動化された方法で摩耗状態を検出する。従って、本監視装置は、作業員側の付加的な介入を必要とせず、織機を停止させたり、グリッパストラップを取り外したりする必要もない。また、本監視装置は非常にコンパクトで小型であるため、横糸の挿入/解放領域と、シェッドへの入口及びシェッドからの出口との間の位置に容易に設置することができる。最後に、本発明の監視装置は、摩耗の検出が磁束の測定に基づいているので、測定対象物に直接接触する必要がなく、また、前記摩耗の検出が埃や光の状態に全く影響されないので、通常の光学センサが被る全ての欠点を完全に排除することができ、更に、高い精度及び信頼性を提供することができる。
【0028】
しかしながら、本発明は、その例示的な実施形態に過ぎない上記に例示した特定の配置に限定されるものと考えられるべきではなく、以下の特許請求の範囲によってのみ定義される本発明の保護範囲から逸脱することなく、当業者の理解が及ぶ範囲内で、異なる変形が可能であることが理解されるべきである。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
【外国語明細書】