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特開2024-173742コンニャク加工食品、内容物入りフィルム包装袋、コンニャク加工食品製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173742
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】コンニャク加工食品、内容物入りフィルム包装袋、コンニャク加工食品製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 19/00 20160101AFI20241205BHJP
【FI】
A23L19/00 102A
A23L19/00 102Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024083750
(22)【出願日】2024-05-23
(31)【優先権主張番号】P 2023091281
(32)【優先日】2023-06-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】506011021
【氏名又は名称】オリヒロプランデュ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122312
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 正優
(72)【発明者】
【氏名】鶴田 織寛
【テーマコード(参考)】
4B016
【Fターム(参考)】
4B016LG07
4B016LQ05
4B016LQ08
(57)【要約】
【課題】味が均一に染み込みやすく、取り扱いが容易で食べやすいコンニャク加工食品等を提供する。
【解決手段】白滝5を塊状にまとめてコンニャク糊8で結着したコンニャク加工食品1であり、コンニャク糊8は、口に含んだときに舌圧により白滝5が解けてばらけるように結着する。白滝5は、長さの揃った複数の線条コンニャク6からなる。コンニャク糊8は、コンニャク粉を水で希釈倍率60倍から150倍に希釈して形成される。白滝5は、破断荷重が50Nから500Nに結着される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
白滝を塊状にまとめてコンニャク糊で結着したコンニャク加工食品であり、
前記コンニャク糊は、口に含んだときに舌圧により前記白滝が解けてばらけるように結着する、ことを特徴とするコンニャク加工食品。
【請求項2】
前記白滝は、長さの揃った複数の線条コンニャクからなる、ことを特徴とする請求項1に記載のコンニャク加工食品。
【請求項3】
前記コンニャク糊は、コンニャク粉を水で希釈倍率60倍から150倍に希釈して形成される、ことを特徴とする請求項1に記載のコンニャク加工食品。
【請求項4】
前記希釈倍率は、70倍から120倍である、ことを特徴とする請求項3に記載のコンニャク加工食品。
【請求項5】
前記白滝は、破断荷重が50Nから500Nに結着される、ことを特徴とする請求項1に記載のコンニャク加工食品。
【請求項6】
前記破断荷重は、100Nから400Nである、ことを特徴とする請求項5に記載のコンニャク加工食品。
【請求項7】
フィルム包装袋にコンニャク加工食品と緩衝水を充填封入した内容物入りフィルム包装袋であって、
前記コンニャク加工食品は、白滝をコンニャク糊で結着して塊状に形成され、
前記緩衝水は、前記コンニャク加工食品に対して重量比0.45~0.5の封入量である、ことを特徴とする内容物入りフィルム包装袋。
【請求項8】
前記緩衝水は、pH5.5~6.5のアルカリ水またはpH1~2の酸性水である、ことを特徴とする請求項7に内容物入りフィルム包装袋。
【請求項9】
前記フィルム包装袋に、複数の前記コンニャク加工食品が区分けされずに充填される、ことを特徴とする請求項7に記載の内容物入りフィルム包装袋。
【請求項10】
白滝とコンニャク糊を混合してカップ容器に投入する投入工程と、
前記白滝と前記コンニャク糊を前記カップ容器に入れた状態で加熱して成形する加熱成形工程と、
を有することを特徴とするコンニャク加工食品製造方法。
【請求項11】
前記投入工程に先立って、ブロック状のコンニャクを長さの揃った複数の線条コンニャクに形成する白滝形成工程を有する、ことを特徴とする請求項10に記載のコンニャク加工食品製造方法。
【請求項12】
前記白滝形成工程に続いて、前記白滝を脱水する脱水工程を有する、ことを特徴とする請求項11に記載のコンニャク加工食品製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンニャク加工食品、内容物入りフィルム包装袋、コンニャク加工食品製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
白滝や糸コンニャク(黒滝)は、一定重量毎に計量された後、適宜な包装袋にパック詰めされたり、紐等で縛結されたり、それ自身で結束されたりした状態で販売されている。糸コンニャク自体は、長尺な状態なままであると、調理時や供食時等において取扱いが面倒であるために、適当量毎にそれ自身で結束された状態にして纏められることが多い。
白滝を結束する作業は極めて面倒であり、熟練した作業者であっても、その処理数が限られる。また、白滝や糸コンニャクは、アルカリ性であるため、作業者の手が荒れる等の問題がある。
そこで、白滝を自動的に結束して一定量毎に纏める処理を行う装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2729022号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
白滝を結束したものは、調理中に結束が解けてしまうことがある。また、結束した部分に味が染み込みづらく、味が不均一になってしまう。さらに、結束した部分が硬く、食べるときに白滝に絡んだ汁が飛び散る、一口では食べられない等の理由から、消費者に食べづらさを感じさせている。
このため、白滝の食感を損ねることなく、これらの問題を改善・解消できるコンニャク加工食品の実現が望まれている。
【0005】
本発明は、味が均一に染み込みやすく、取り扱いが容易で食べやすいコンニャク加工食品、内容物入りフィルム包装袋、コンニャク加工食品製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施態様に係るコンニャク加工食品は、白滝を塊状にまとめてコンニャク糊で結着したコンニャク加工食品であり、前記コンニャク糊は、口に含んだときに舌圧により前記白滝が解けてばらけるように結着する、ことを特徴とする。
前記白滝は、長さの揃った複数の線条コンニャクからなる、ことを特徴とする。
【0007】
前記コンニャク糊は、コンニャク粉を水で希釈倍率60倍から150倍に希釈して形成される、ことを特徴とする。
前記希釈倍率は、80倍から120倍である、ことを特徴とする。
【0008】
前記白滝は、破断荷重が100Nから400Nに結着される、ことを特徴とする。
前記破断荷重は、110Nから200Nである、ことを特徴とする。
【0009】
本発明の実施態様に係る内容物入りフィルム包装袋は、フィルム包装袋にコンニャク加工食品と緩衝水を充填封入した内容物入りフィルム包装袋であって、前記コンニャク加工食品は、白滝をコンニャク糊で結着して塊状に形成され、前記緩衝水は、前記コンニャク加工食品に対して重量比0.45~0.5の封入量である、ことを特徴とする。
前記緩衝水は、pH5.5~6.5のアルカリ水またはpH1~2の酸性水である、ことを特徴とする。
前記フィルム包装袋に、複数の前記コンニャク加工食品が区分けされずに充填される、ことを特徴とする。
【0010】
本発明の実施態様に係るコンニャク加工食品製造方法は、白滝とコンニャク糊を混合してカップ容器に投入する投入工程と、前記白滝と前記コンニャク糊を前記カップ容器に入れた状態で加熱して成形する加熱成形工程と、を有することを特徴とする。
前記投入工程に先立って、ブロック状のコンニャクを長さの揃った複数の線条コンニャクに形成する白滝形成工程を有する、ことを特徴とする。
前記白滝形成工程に続いて、前記白滝を脱水する脱水工程を有する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、味が均一に染み込みやすく、取り扱いが容易で食べやすいコンニャク加工食品、コンニャク加工食品製造装置、コンニャク加工食品製造方法を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】ボール白滝1を示す図である。
図2】ボール白滝製造方法を示すフローチャート図である。
図3】ボール白滝製造方法の白滝形成工程を模式的に示す図である。
図4】ボール白滝製造方法の脱水工程を模式的に示す図である。
図5】ボール白滝製造方法の混合・カップ投入工程を模式的に示す図である。
図6】ボール白滝製造方法を模式的に示す図であって、(a)充填包装工程(充填前)、(b)充填包装工程(充填包装後)ある。
図7】コンニャク糊の希釈倍率とボール白滝1の破断荷重の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態に係るコンニャク加工食品、コンニャク加工食品製造装置、コンニャク加工食品製造方法について説明する。
【0014】
〔ボール白滝1〕
図1は、ボール白滝1を示す図である。
ボール白滝(コンニャク加工食品)1は、白滝5を玉状にまとめてコンニャク糊8で結着したコンニャク加工食品である。ボール白滝1は、20g~60g程度の玉形状を有する。玉形状とは、球形またはそれに似た形状であり、半円形や円柱形等を含む。
【0015】
(白滝5)
白滝5は、複数の糸コンニャク6からなる。糸コンニャク(線条コンニャク)6は、線条に形成されたコンニャクである。
糸コンニャク6は、白コンニャク、黒コンニャクのいずれでもよい。白コンニャクはコンニャク精粉だけで作られたものであり、黒コンニャクはコンニャク精粉に海藻粉末を混ぜて作られたものである。黒コンニャクの場合は、白滝ではなく、糸コンニャクまたは黒滝と呼ばれる。
【0016】
糸コンニャク6は、太さ(直径)が1.5mm~3mm、長さが100mm~200mmである。特に、糸コンニャク6は、太さ(直径)が2mm~2.5mm、長さが130~170mmが好ましい。
各糸コンニャク6は、太さと長さが揃えられる。例えば、各糸コンニャク6は、太さが2mm、長さが150mmに揃えられる。各糸コンニャク6の太さと長さが揃えられているので、ボール白滝1(白滝5)の食感が斑にならず、個々のボール白滝1の食感も均一になる。
【0017】
(コンニャク糊8)
コンニャク糊8は、白滝5(複数の糸コンニャク6)を結着して、その形状を維持する結着剤である。コンニャク糊8を用いることにより、ボール白滝1を箸でつまんだり、鍋に入れて煮込んだりしても、ボール白滝1が崩壊しない(白滝5の結着は維持される)。
その一方で、例えばボール白滝1を口に含んだときに舌圧により、ボール白滝1が崩壊する。つまり、白滝5の結着が解けてばらける。言い換えると、ボール白滝1を歯で噛まなくても、白滝5が複数の糸コンニャク6にばらける。
このため、ボール白滝1の食感は、コンニャクの食感と麺の食感を合わせ持つ(白滝5の食感が維持される)。
【0018】
〔ボール白滝製造方法〕
図2は、ボール白滝製造方法を示すフローチャート図である。
図3は、ボール白滝製造方法の白滝形成工程を模式的に示す図である。
図4は、ボール白滝製造方法の脱水工程を模式的に示す図である。
図5は、ボール白滝製造方法の混合・カップ投入工程を模式的に示す図である。
図6は、ボール白滝製造方法を模式的に示す図であって、(a)充填包装工程(充填前)、(b)充填包装工程(充填包装後)ある。
【0019】
(白滝形成工程S1)
まず、従来の製造装置および製造方法により、ブロック状(板形)のコンニャク3を作る。例えば、コンニャク3の形状は、幅70~90mm、厚み20~30mm、長さ100~180mmである。
このコンニャク3を長さ方向に沿って切断して、複数の糸コンニャク6を製造する。例えば、白滝形成機(不図示)を用いて、コンニャクを切断刃に向けて押し出して、複数の糸コンニャク6を形成する。
【0020】
複数の糸コンニャク6は、例えば断面が矩形であり、長さが揃った形状となる。例えば、各糸コンニャク6は、縦横幅(太さ)がそれぞれ2mm、長さが150mmに形成される。これにより、太さと長さの揃った複数の糸コンニャク6からなる白滝5が製造される。
【0021】
(脱水工程S2)
次に、白滝5(複数本の糸コンニャク6)を脱水して水分量を低減させる。例えば水平ベルトフィルタ15を用いて白滝5を脱水する。
水平ベルトフィルタ20は、水平に走行する一対の無端ベルトで白滝5(複数の糸コンニャク6)を挟持しながら水平方向に連続搬送しつつ、一方の無端ベルトを介して白滝5を真空吸引する脱水装置である。
具体的には、濾布からなるフィルタベルト21の上面に複数本の糸コンニャク6(白滝5)を載置して搬送する。合成ゴムや樹脂等からなるスライドベルト22により糸コンニャク6を上方から押圧する。そして、フィルタベルト21の直下に設けた真空吸引部23を駆動して、フィルタベルト21を介して糸コンニャク6を吸引して脱水する。
各コンニャク6(白滝5)は、水平ベルトフィルタ21を経ることにより、その水分量が30%から80%に低減される。特に、糸コンニャク6の水分量を50%程度に低減させることが好ましい。
【0022】
(混合・カップ投入工程S3)
次に、白滝5とコンニャク糊8を混ぜ合わせ、これを20g~60g程度に小分けして、カップ容器10に投入する。
白滝5とコンニャク糊8を混ぜ合わせた後にカップ容器10に投入してもよいし、白滝5とコンニャク糊8を別々にカップ容器10に投入した後に混ぜ合わせてもよい。
【0023】
カップ容器10は、上方に向かって開口する半球形の容器であり、例えばステンレス鋼等により形成される。カップ容器10は、一枚の板部材11に複数の窪部12が設けられたものである。各窪部12が上方に向かって開口する半球形(円形穴形)に形成される。板部材11には、例えば4つから6つの窪部12が設けられる。
各窪部12には、白滝5とコンニャク糊8の混合物がそれぞれ投入される。白滝5とコンニャク糊8の混合物は、半球形の窪部12に投入されることにより、玉状(球形またはそれに似た形状)になる。
【0024】
なお、コンニャク糊8は、精製されたコンニャク粉を水に溶かし、さらにアルカリ水(石灰水:水酸化カルシウム水溶液)を混錬して作られる。
具体的には、コンニャク粉に対して重量比60倍から150倍の水を用いて希釈する。つまり、コンニャク粉を水で希釈倍率60倍から150倍に薄めて糊状にする。特に、コンニャク粉と水の重量比(希釈倍率)は、特に80倍から120倍が好ましい。言い換えると、コンニャク糊8の重量パーセント濃度は、0.66%から1.64%であり、特に0.83%から1.23%が好ましい。
さらに、コンニャク粉を溶かした希釈水に、pH5.5~6.5のアルカリ水を入れて混錬する。アルカリ水は、濃度(重量パーセント濃度)0.05~0.2%である。特に、アルカリ水は、濃度0.1%程度が好ましい。これにより、コンニャク糊8が凝固し始め、強い粘着性を発揮して白滝5(複数の糸コンニャク6)を結着することが可能になる。
【0025】
コンニャク糊8は、コンニャク粉を上述の希釈倍率(重量比)または重量パーセント濃度に希釈して作られるため、所望の結着力を発揮する。言い換えれば、コンニャク糊8は、ボール白滝1(複数の糸コンニャク6)が所望の強度(破断荷重)を有するように結着することが可能になる。
【0026】
(加熱成形工程S4)
白滝5とコンニャク糊8の混合物をカップ容器10(窪部12)に収容した状態で加熱処理を行う。具体的には、カップ容器10を加熱成形器(不図示)に入れて、80℃の蒸気雰囲気で約5分間程度、ボイル処理(予備殺菌)を行う。これにより、コンニャク糊8が凝固して、白滝5(糸コンニャク6同士)を結着する。そして、カップ容器10の窪部12の中に玉状のボール白滝1が成形される。
このボイル処理(加熱処理)は、ボール白滝1の予備殺菌処理としても作用する。
【0027】
(充填包装工程S5)
次に、製袋充填機(不図示)を用いて、ボール白滝1をフィルム包装袋14に充填・封入する。1つのフィルム包装袋14に対して複数のボール白滝1をアルカリ水(緩衝水)13とともに充填(投入)する(集合包装)。例えば4つから6つのボール白滝1が区分けされずにフィルム包装袋14に封入される。
【0028】
アルカリ水13は、pH5.5~6.5であり、ボール白滝1を殺菌して長持ちさせる作用がある。また、フィルム包装袋14を輸送する際に、ボール白滝1の形状を維持するための緩衝材としても作用する。
フィルム包装袋14に、200gのボール白滝1(例えば4個)を充填するとき、80g~100g程度のアルカリ水13が同時に充填される。つまり、ボール白滝1に対するアルカリ水13の重量比は、0.45~0.5である。
【0029】
従来の白滝をフィルム包装袋に充填するときは、重量比1.2~1.3程度のアルカリ水が必要である。アルカリ水を白滝と同量以上に充填しないと、フィルム包装袋の中で白滝(糸コンニャク同士)が結着したり、破断したりしてしまうからである。
また、フィルム包装袋に封入される白滝の定量性を確保するために、アルカリ水を白滝と同量以上に投入する必要がある。
【0030】
これに対して、ボール白滝1は玉状にまとまって凝固(糸コンニャク6同士が結着)しているので、フィルム包装袋14の中でさらに糸コンニャク6同士が結着したり、破断したりすることがない。また、ボール白滝1の投入個数を管理することにより、定量性を容易に確保できる。したがって、ボール白滝1に対するアルカリ水13の重量比を必要最小限に抑えることができる。
【0031】
なお、アルカリ水13には味付けができないので、緩衝水としてアルカリ水13を用いた場合には、ボール白滝1が無味になる。
そこで、アルカリ水13に代えて、酸性水(緩衝水)を用いてもよい。酸性水には、下味を付けることができる。フィルム包装袋14に各種の味付けをした酸性水とボール白滝1を封入することにより、ボール白滝1に下味を付けられる。
酸性水は、封入時にpH1~2程度に調整される。この酸性水をボール白滝1とともにフィルム包装袋14に封入することにより、全体としてpH4.5以上になるように調整される。
【0032】
(加熱殺菌ボイル工程S6)
最後に、複数のボール白滝1とアルカリ水13を封入したフィルム包装袋14を加熱殺菌ボイル処理する。具体的には、フィルム包装袋14を加熱殺菌器(不図示)に入れ、約80℃の湯中で約30分間程度、ボイル処理(二次加熱殺菌)を行う。
【0033】
このようにして、ボール白滝1が製造される。また、フィルム包装袋14にボール白滝1とアルカリ水13を封入した内容物入りフィルム包装袋15が製造される。
そして、このボール白滝1は、箸でつまんだり、鍋に入れて煮込んだりしても、ボール白滝1が崩壊しない(糸コンニャク6同士の結着が維持される)。
その一方で、ボール白滝1を口に含んだときに舌圧により、ボール白滝1が崩壊する(糸コンニャク6同士の結着が解けてばらける)。このため、ボール白滝1の食感は、コンニャクの食感と麺の食感を合わせ持つ。白滝5(糸コンニャク6)の食感が維持される。
また、ボール白滝1は、結束した部分がないので、味が均一に染み込みやすく、均一の弾力性を有する(硬い部分がない)。従来の白滝のように、食べるときに絡んだ汁が飛び散ることもない。さらに、一口で食べやすい大きさに形成される。
したがって、ボール白滝1は、消費者に対して、取り扱いが容易で食べやすいと感じるコンニャク加工食品として提供される。
【0034】
内容物入りフィルム包装袋15は、アルカリ水13の封入量を最小限に抑えられている。ボール白滝1は玉状にまとまって凝固しているので、フィルム包装袋14の中で糸コンニャク6同士が結着したり、破断したりすることがない。したがって、従来に比べて輸送コストを約半分程度に抑えることができる。
【0035】
〔コンニャク糊の希釈倍率とボール白滝1の破断荷重の関係〕
図7は、コンニャク糊の希釈倍率とボール白滝1の破断荷重の関係を示す図である。
ボール白滝1の破断荷重は、株式会社イマダの食品硬さ測定ユニットFCA-DSV-50N等を用いて測定した。
【0036】
図7に示すように、コンニャク糊の希釈倍率が高くなるほど、ボール白滝1の破断荷重(強度)が低下する。
コンニャク糊の希釈倍率が60倍から150倍のときは、ボール白滝1はその形状を安定して維持できる。このときのボール白滝1の破断荷重は、50Nから500Nである。
ボール白滝1を箸でつまんだり、鍋に入れて煮込んだりしても、ボール白滝1が崩壊しない(白滝5の結着は維持される)。その一方で、箸を使ってボール白滝1を容易にばらけさせることができる。また、口に含んだときに舌圧によりボール白滝1(白滝5)が解けてばらける。
特に、コンニャク糊の希釈倍率が70倍から120倍のときは、その形状の維持が良好であり、口に含んだときに舌圧によりボール白滝1が良好に解けてばらける。このときのボール白滝1の破断荷重は、100Nから400Nである。
【0037】
これに対して、コンニャク糊の希釈倍率が60倍未満のときは、ボール白滝1が強い弾力を有する。ボール白滝1は、その形状が安定して維持されるものの、箸等を用いてばらけさすことが容易にはできなくなる。口に含んだときに舌圧では、ボール白滝1(白滝5)が解けず、歯で噛まなければボール白滝1を切断できない。
【0038】
また、コンニャク糊の希釈倍率が150倍超過のときは、ボール白滝1はその形状を安定して維持することができなくなる。箸や指で軽くつまんだだけで、ボール白滝1が崩壊する。ボール白滝1を口に含む前に、白滝5の結着が解けてばらける。
【0039】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施形態に種々の変更を加えたものを含む。すなわち、実施形態で挙げた具体的な形状や構成等は一例にすぎず、適宜変更が可能である。
【0040】
本発明のコンニャク加工食品の形状は、玉状に限らない。コンニャク加工食品は、半円形や円柱形であってもよい。また、コンニャク加工食品は、枕形や平板形、棒形等であってもよい。
コンニャク加工食品は、複数本の糸コンニャク6が塊状にまとめてコンニャク糊3で結着したものであれば、その形状は任意である。
【0041】
複数の糸コンニャク6は、断面が円形であってもよい。また、各糸コンニャク6は、長さが揃っていなくてもよい。
【0042】
フィルム包装袋14に封入するボール白滝1は、ボール白滝1の大きさに応じて調整することができる。例えば、1つずつ区分けして充填封入(個別包装)されてもよい。
【0043】
白滝5(複数本の糸コンニャク6)を脱水して装置は、水平ベルトフィルタ15に限らない。遠心脱水機や各種の真空脱水機を用いてもよい。
【符号の説明】
【0044】
1 ボール白滝(コンニャク加工食品)
3 コンニャク
5 白滝
6 糸コンニャク(線条コンニャク)
8 コンニャク糊
10 カップ容器
12 窪部
13 アルカリ水(緩衝水)
14 フィルム包装袋
15 内容物入りフィルム包装袋
20 水平ベルトフィルタ
21 フィルタベルト
22 スライドベルト
23 真空吸引部

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7