(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173751
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】水性インクジェットインク組成物の安定化
(51)【国際特許分類】
C09D 11/322 20140101AFI20241205BHJP
C08F 230/02 20060101ALI20241205BHJP
B41M 5/00 20060101ALI20241205BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
C09D11/322
C08F230/02
B41M5/00 120
B41J2/01 501
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024084525
(22)【出願日】2024-05-24
(31)【優先権主張番号】18/325,326
(32)【優先日】2023-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】596170170
【氏名又は名称】ゼロックス コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】ジン エックス.スン
(72)【発明者】
【氏名】ニエンウェン チョウ
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド エム.スキナー
(72)【発明者】
【氏名】ピーター ブイ.グエン
(72)【発明者】
【氏名】チー-ミン チェン
【テーマコード(参考)】
2C056
2H186
4J039
4J100
【Fターム(参考)】
2C056FC01
2H186FB15
2H186FB16
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2H186FB57
4J039AD03
4J039AD09
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4J039EA44
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4J100AL66S
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4J100BC59T
4J100CA03
4J100CA06
4J100JA07
(57)【要約】 (修正有)
【課題】組成物中の固体(着色剤を含む)の凝集を防ぐ水性インクジェットインク組成物を提供する。
【解決手段】水と、共媒体と、顔料粒子と、樹脂粒子と、を含む水性インジェットインク組成物が提供され、樹脂粒子は、1種類以上の疎水性モノマーと、1種類以上の架橋性アニオン性モノマーを含む、1種類以上のアニオン性モノマーと、を含む反応物の重合生成物を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水と、共媒体と、顔料粒子と、樹脂粒子と、を含む水性インクジェットインク組成物であって、前記樹脂粒子は、
1種類以上の疎水性モノマーと、
1種類以上の架橋性アニオン性モノマーを含む、1種類以上のアニオン性モノマーと、
を含む反応物の重合生成物を含む、水性インクジェットインク組成物。
【請求項2】
前記樹脂粒子中の重合架橋性アニオン性モノマーの総量は少なくとも約1重量%であり、前記樹脂粒子中の重合アニオン性モノマーの総量は少なくとも約15重量%である、請求項1に記載の水性インクジェットインク組成物。
【請求項3】
前記樹脂粒子中の重合架橋性アニオン性モノマーの総量は少なくとも約3重量%であり、前記樹脂粒子中の重合アニオン性モノマーの総量は少なくとも約20重量%である、請求項1に記載の水性インクジェットインク組成物。
【請求項4】
前記顔料粒子は分散顔料粒子を含む、請求項1に記載の水性インクジェットインク組成物。
【請求項5】
前記分散顔料粒子はポリマー分散顔料粒子を含む、請求項4に記載の水性インクジェットインク組成物。
【請求項6】
前記ポリマー分散顔料粒子は、ポリマー分散マゼンタ顔料粒子、ポリマー分散ブラック顔料粒子、又はそれらの両方を含む、請求項5に記載の水性インクジェットインク組成物。
【請求項7】
前記1種類以上の架橋性アニオン性モノマーは1種類以上の架橋性リン酸モノマーを含む、請求項1に記載の水性インクジェットインク組成物。
【請求項8】
前記1種類以上の架橋性リン酸モノマーは、ビス[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]ホスフェートを含む、請求項7に記載の水性インクジェットインク組成物。
【請求項9】
水と、共媒体と、分散顔料粒子と、樹脂粒子と、を含む水性インクジェットインク組成物であって、前記樹脂粒子は、
1種類以上の疎水性モノマーと、
1種類以上の架橋性アニオン性モノマーを含む、1種類以上のアニオン性モノマーと、
を含む反応物の重合生成物を含み、
前記樹脂粒子中の重合架橋性アニオン性モノマーの総量は少なくとも約1重量%であり、前記樹脂粒子中の重合アニオン性モノマーの総量は少なくとも約15重量%である、
水性インクジェットインク組成物。
【請求項10】
前記樹脂粒子中の重合架橋性アニオン性モノマーの前記総量は少なくとも約3重量%であり、前記樹脂粒子中の重合アニオン性モノマーの前記総量は少なくとも約20重量%である、請求項9に記載の水性インクジェットインク組成物。
【請求項11】
前記分散顔料粒子はポリマー分散顔料粒子を含む、請求項10に記載の水性インクジェットインク組成物。
【請求項12】
前記分散顔料粒子は、ポリマー分散マゼンタ顔料粒子、ポリマー分散ブラック顔料粒子、又はそれらの両方を含む、請求項11に記載の水性インクジェットインク組成物。
【請求項13】
前記1種類以上の架橋性アニオン性モノマーは1種類以上の架橋性リン酸モノマーを含む、請求項12に記載の水性インクジェットインク組成物。
【請求項14】
前記1種類以上の架橋性リン酸モノマーは、ビス[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]ホスフェートを含む、請求項13に記載の水性インクジェットインク組成物。
【請求項15】
前記1種類以上の疎水性モノマーはスチレンを含み、前記1種類以上のアニオン性モノマーはメタクリル酸を更に含む、請求項14に記載の水性インクジェットインク組成物。
【請求項16】
前記共媒体は1,2-ヘキサンジオールを含む、請求項15に記載の水性インクジェットインク組成物。
【請求項17】
前記分散顔料粒子は約4重量%~約10重量%の量で存在し、前記樹脂粒子は約1重量%~約5重量%の量で存在し、前記1,2-ヘキサンジオールの量は少なくとも約2重量%の量で存在する、請求項16に記載の水性インクジェットインク組成物。
【請求項18】
前記共媒体は、プロピレングリコール、グリセロール、ヘキシレングリコール、又はそれらの組み合わせを更に含む、請求項17に記載の水性インクジェットインク組成物。
【請求項19】
水と、樹脂粒子と、を含むラテックス組成物であって、前記樹脂粒子は、
1種類以上の疎水性モノマーと、
1種類以上の架橋性アニオン性モノマーを含む、1種類以上のアニオン性モノマーであって、前記樹脂粒子中の重合架橋性アニオン性モノマーの総量は少なくとも約1重量%であり、前記樹脂粒子中の重合アニオン性モノマーの総量は少なくとも約15重量%である、1種類以上のアニオン性モノマーと、
を含む反応物の重合生成物を含む、ラテックス組成物。
【請求項20】
前記樹脂粒子中の重合架橋性アニオン性モノマーの総量は少なくとも約3重量%であり、前記樹脂粒子中の重合アニオン性モノマーの総量は少なくとも約20重量%である、請求項19に記載のラテックス。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
ラテックスは、組成物中の着色剤を基材に結合させ、印刷画像を保護するために、水性インクジェットインク組成物において使用されてきた。水性インクジェットインク組成物中の固体(着色剤を含む)の凝集は、噴射の不安定性及びノズルの目詰まりをもたらし得るために一般的な問題である。着色剤を分散させるために水性インクジェットインク組成物中で分散剤が使用されることもあるが、組成物の他の成分、例えば湿潤剤がこれらの分散剤に干渉して、凝集をもたらし得る。更に、凝集の問題は、水性インクジェットインク組成物に添加されるラテックスによって悪化することが多い。これは、ラテックスが着色剤の分散性に干渉し得るからである。加えて、ラテックスは、水性インクジェットインク組成物の固形分を増加させ、噴射の不安定性及びノズルの目詰まりをもたらす。
【発明の概要】
【0002】
本開示は、水と、共媒体と、顔料粒子と、樹脂粒子と、を含む水性インクジェットインク組成物を提供する。樹脂粒子は、疎水性モノマー及び架橋性アニオン性モノマーを含むアニオン性モノマーから重合される。樹脂粒子の実施形態が水性インクジェットインク組成物に組み込まれる場合、インクは、高温での長期保管(例えば、60℃で21日間)後の粒径の変化が最小限であることによって証明されるように、非常に安定である。更に、このような安定性は、例えば、ポリマー分散顔料粒子、比較的大きな顔料粒子、比較的多量の顔料粒子、比較的少量の樹脂粒子、及び比較的多量の湿潤剤(1,2-ヘキサンジオールなど)を使用するなど、顔料粒子の凝集を誘発する傾向がある様々な困難な条件下で得られる。水及び樹脂粒子を含むラテックスも提供される。
【0003】
「水性インクジェットインク組成物」における「インクジェット」とは、組成物が、圧電振動素子の振動によって、下にある基材上に水性インクジェットインク組成物の液滴を吐出するように構成された、圧電インクジェット印刷システムなどインクジェット印刷システムによって、印刷可能、すなわち、噴射可能であることを意味する。
【0004】
本明細書で使用される場合、「室温」は、約20℃~約25℃の温度を指す。
【0005】
一態様では、水性インクジェットインク組成物が提供される。一実施形態では、そのような組成物は、水と、共媒体と、顔料粒子と、樹脂粒子と、を含み、樹脂粒子は、1種類以上の疎水性モノマーと、1種類以上の架橋性アニオン性モノマーを含む、1種類以上のアニオン性モノマーと、を含む反応物の重合生成物を含む。
【0006】
別の実施形態では、水性インクジェットインク組成物は、水と、共媒体と、分散顔料粒子と、樹脂粒子と、を含み、樹脂粒子は、1種類以上の疎水性モノマーと、1種類以上の架橋性アニオン性モノマーを含む、1種類以上のアニオン性モノマーと、を含む反応物の重合生成物を含み、樹脂粒子中の重合架橋性アニオン性モノマーの総量は少なくとも約1重量%であり、樹脂粒子中の重合アニオン性モノマーの総量は少なくとも約15重量%である。
【0007】
別の態様では、ラテックスが提供される。一実施形態では、そのようなラテックスは、水と、樹脂粒子と、を含み、樹脂粒子は、1種類以上の疎水性モノマーと、1種類以上の架橋性アニオン性モノマーであって、樹脂粒子中の重合架橋性アニオン性モノマーの総量は少なくとも約1重量%であり、樹脂粒子中の重合アニオン性モノマーの総量は少なくとも約15重量%である、1種類以上のアニオン性モノマーと、を含む反応物の重合生成物を含む。
【0008】
本開示の他の主要な特徴及び利点は、以下の図面、発明を実施するための形態、及び添付の特許請求の範囲を検討すると当業者には明らかとなるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0009】
樹脂粒子
水性インクジェットインク組成物は、水と、共媒体と、顔料粒子と、樹脂粒子と、を含む。樹脂粒子は、樹脂粒子を構成するポリマー材料を形成する様々なモノマーから合成される。疎水性モノマーは、樹脂粒子を形成するために使用される。疎水性であるため、疎水性モノマーは、水中での溶解度/混和性が限定されており、例えば、0.1g/L~3g/Lの水中での室温溶解度。しかしながら、いくつかの実施形態では、0.1g/L未満の室温溶解度を有する疎水性モノマーは、使用されない。様々な疎水性モノマーが使用され得る、例えば、スチレン;メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、ドデシルアクリレート、n-オクチルアクリレート、2-クロロエチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、及びブチルメタクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート;フェニルアクリレート、メチルαクロロアクリレート;アクリロニトリル;ビニルメチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル、及びビニルエチルエーテルなどのビニルエーテル;ビニルアセテート、ビニルプロピオネート、ビニルベンゾエート、及びビニルブチレートなどのビニルエステル;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、及びメチルイソプロペニルケトンなどのビニルケトン;塩化ビニリデン及びクロロフッ化ビニリデンなどのハロゲン化ビニリデン;N-ビニルインドール;N-ビニルピロリドン;メタクリレート;ビニルピリジン;ビニルピロリドン;ビニル-N-メチルピリジニウムクロリド;ビニルナフタレン;p-クロロスチレン;塩化ビニル;臭化ビニル;フッ化ビニル;エチレン;プロピレン;ブチレン;並びにイソブチレン。(本開示を通して、例えば、「(メタ)アクリレート」におけるような「(メタ)」の使用は、アクリレート及びメタクリレートの両方を指す。)
【0010】
単一の種類又は異なる種類の疎水性モノマーの組み合わせを使用することができる。「単一の種類」という語句は、同じ化学化合物を指し、「異なる種類」という語句は、異なる化学化合物を指す。例えば、スチレンは、単一の種類の疎水性モノマーであり、スチレン及びアルキル(メタ)アクリレートは、異なる種類の疎水性モノマーである。メチル(メタ)アクリレートは、単一の種類の疎水性モノマー(具体的には、単一の種類のアルキル(メタ)アクリレート)であり、メチル(メタ)アクリレート及びエチル(メタ)アクリレートは、異なる種類の疎水性モノマー(具体的には、異なる種類のアルキル(メタ)アクリレート)である。したがって、「1つ以上の種類」という語句は、単一の種類のモノマー及び異なる種類のモノマーの両方を包含する。
【0011】
いくつかの実施形態では、疎水性モノマーは、スチレン、アルキル(メタ)アクリレート(例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、又はそれらの組み合わせ)、あるいはそれらの両方を含む(又はそれらからなる)。したがって、アルキル(メタ)アクリレートのアルキル基は、1個以上の炭素、2個以上の炭素、4個以上の炭素又は1~6個の炭素を有し得る。
【0012】
いくつかの実施形態では、ある特定の疎水性モノマーは、4-メチルスチレン、シクロヘキシルアクリレート、イソボルニルメタアクリレート、イソボルニルアクリレート、又はこれらの組み合わせを含む樹脂粒子を形成するためには使用されない。
【0013】
一般に、使用される疎水性モノマーは単官能性であり、単官能性とは、単一の重合性基を含むことを意味する。
【0014】
アニオン性モノマーは、樹脂粒子を形成するために使用される。アニオン性モノマーは、重合性部分(例えば、炭素-炭素二重結合)と、アニオン性部分と、を含むモノマーである。アニオン性部分は、本水性インクジェットインク組成物中に含まれる、負電荷を帯びることができる化学基である。いくつかの実施形態では、負電荷は、0未満、例えば、-1の形式電荷である。いかなる特定の理論にも束縛されることを望むものではないが、樹脂粒子が構成されるポリマー材料中に組み込まれる場合、アニオン性モノマーは、水性インクジェットインク組成物中の樹脂粒子に負電荷をもたらすと考えられる。これらの樹脂粒子は、静電反発(それらの負電荷による)及び立体反発(それらの物理的サイズによる)の両方によって、水性インクジェットインク組成物中での顔料粒子の凝集を防止する(それによって水性インクジェットインク組成物の安定性を改善する)。アニオン性モノマーのアニオン性部分は、本発明の水性インクジェットインク組成物中に含まれる、脱プロトン化可能な酸性部分の化学基であり得、したがって0未満、例えば-1の形式電荷で負に帯電する。アニオン性モノマーの塩も包含され、例えば、アニオン性部分の供与水素はカチオンで置換されている。したがって、「アニオン性モノマー」は、その塩も指す。
【0015】
樹脂粒子中で使用されるアニオン性モノマーとしては、少なくとも2個の重合性部分と、上述のアニオン性部分(例えば、酸性部分)と、を含む架橋性アニオン性モノマーが挙げられる。以下の実施例(実施例2)において実証するように、以下に記載の量で含まれる架橋性アニオン性モノマーを使用することにより、特定の湿潤剤、例えば、1.2-ヘキサンジオールも含まれる場合に、改善された安定性を有する本水性インクジェットインク組成物の実施形態を提供することが見出された。
【0016】
いくつかの実施形態では、架橋性リン酸モノマーが使用される。そのようなモノマーは、少なくとも2個の重合性部分(例えば、炭素-炭素二重結合)と、P(O)(OR)3部分(アニオン性/酸性部分)と、を含む。重合性部分は、P(O)(OR)3部分のR基によって提供され得る。いくつかの実施形態では、架橋性リン酸モノマーは、式I P(O)(OR)3を有し、式中、1個のR基は水素であり、2個のR基は独立して選択された重合性有機基(すなわち、重合性部分を含む有機基)である。これら2個のR基は、同一であっても異なっていてもよい。架橋性リン酸モノマーの塩も包含される。すなわち、OH基の水素がカチオンによって置換されている。したがって、「架橋性リン酸モノマー」は、その塩も指す。P(O)(OR)3部分は、式P(O)(OR)2Rを有するホスホン酸部分とは区別される。
【0017】
式Iの実施形態では、重合性部分を含む有機基は、アルキル(メタ)アクリレートである。いくつかの実施形態では、アルキル(メタ)アクリレートのアルキル基は、少なくとも2個の炭素、少なくとも3個の炭素、少なくとも4個の炭素、少なくとも5個の炭素、又は1~6個の炭素を有する。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのRは、エチル(メタ)アクリレートである。いくつかの実施形態では、架橋性リン酸モノマーは、2個のエチル(メタ)アクリレート基を有する。例示的な架橋性リン酸モノマーとしては、リン酸2-ヒドロキシエチルメタクリレートエステル及びビス[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]ホスフェートが挙げられる。両種類の架橋性リン酸モノマーを一緒に使用することができる。
【0018】
式Iのいくつかの実施形態では、有機基は、式Aを有し、
【0019】
【化1】
式中、R
1~3は、独立して、水素及びメチルから選択され、nは、0~20の任意の数を含む0~20であり、「
*」は、P(O)(OR)
3部分の酸素への結合を示す。いくつかの実施形態では、nは0であり、R
1は水素又はメチルであり、R
3は水素である。上記のように、2個のそのような有機基が架橋性リン酸モノマー中に存在する。
【0020】
式Iのいくつかの実施形態では、架橋性リン酸モノマーはポリ(エチレングリコール)に基づき、式A中、R1は水素又はメチルであり、R2は水素であり、R3は水素であり、nは0~20である。いくつかの実施形態では、nは、1~20である。これは、2~16及び4~12を含む。上記のように、2個のそのような有機基が架橋性リン酸モノマー中に存在する。
【0021】
式Iのいくつかの実施形態では、架橋性リン酸モノマーは、ポリ(プロピレングリコール)に基づき、式A中、R1は水素又はメチルであり、R2はメチルであり、R3はメチルであり、nは0~20である。いくつかの実施形態では、nは、1~20である。これは、2~16及び4~12を含む。上記のように、2個のそのような有機基が架橋性リン酸モノマー中に存在する。
【0022】
単一の種類又は異なる種類の組み合わせの架橋性リン酸モノマーを使用することができる。(「単一の種類」、「異なる種類」、及び「1つ以上の種類」の意味は、疎水性モノマーについて上述したものと類似している)
【0023】
いくつかの実施形態では、架橋性アニオン性モノマーは、架橋性リン酸モノマー、例えば、式Iを有するもの、例えば、リン酸2-ヒドロキシエチルメタクリレートエステル及びビス[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]ホスフェートを含む(又はそれらからなる)。
【0024】
架橋性リン酸モノマーなど架橋性アニオン性モノマーの使用は、架橋されている樹脂粒子をもたらす。したがって、本樹脂粒子は、「架橋樹脂粒子」と称され得る。
【0025】
使用され得る他のアニオン性モノマーとしては、単官能性アニオン性モノマーが挙げられる。単官能性アニオン性モノマーは、単一(すなわち、1つのみ)の重合性基と、上述のアニオン性(例えば、酸性)部分と、を含む。例示的な単官能性アニオン性モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、エチルアクリル酸、ジメチルアクリル酸、2-カルボキシエチルアクリレート、無水マレイン酸、マレイン酸、ビニル酢酸、アリル酢酸、エチリジン酢酸、プロピリジン酢酸、クロトン酸、フマル酸、イタコン酸、ソルビン酸、アンゲリカ酸、ケイ皮酸、スチリルアクリル酸、シトラコン酸、グルタコン酸、アコニット酸、フェニルアクリル酸、アクリルオキシプロピオン酸、アコニット酸、フェニルアクリル酸、アクリルオキシプロピオン酸、ビニル安息香酸、N-ビニルスクシンアミド酸、メサコン酸、ビニル安息香酸、スチレンスルホン酸、ビニルスルホネート、2-メタクリロイルオキシメタン-1-スルホン酸、3-メタクリオイルオキシプロパン-1-スルホン酸、3-(ビニルオキシ)プロパン-1-スルホン酸、エチレンスルホン酸、2-アクリルアミド-2-メチル-1-プロパンスルホン酸、スルホエチルメタクリレート、スルホプロピルアクリレート、スルホエチルアクリレートビニルサルフェート、4-ビニルフェニル硫酸、及びそれらの組み合わせが挙げられる。単官能性リン酸モノマーも使用することができる。架橋性アニオン性モノマーと同様に、単官能性アニオン性モノマーはその塩を包含する。同様に、単一の種類又は異なる種類の組み合わせの単官能性アニオン性モノマーを使用することができる。(「単一の種類」、「異なる種類」、及び「1つ以上の種類」の意味は、疎水性モノマーについて上述したものと類似している。)
【0026】
いくつかの実施形態では、単官能性アニオン性モノマーが、架橋性アニオン性モノマーと共に使用される。いくつかの実施形態では、単官能性アニオン性モノマーは、(メタ)アクリル酸を含む(又はそれからなる)。
【0027】
様々な他のモノマーは、樹脂粒子を形成するために使用され得る。例えば、(メタ)アクリル酸と、ジオキサン部分を含むアルコール又はジオキソラン部分を含むアルコールとのエステルであるモノマーが使用され得る。本開示において、この種類のモノマーは、「ジオキサン/ジオキソランモノマー」と称され得る。ジオキサン/ジオキソランモノマーというこの語句は、(メタ)アクリル酸と、ジオキサン部分を含むアルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸と、ジオキソラン部分を含むアルコールとのエステル、又はそれらの両方であるモノマーを包含する。ジオキサン部分は、1,3-ジオキサン部分であり得、ジオキソラン部分は、1,3-ジオキソラン部分であり得る。ジオキサン/ジオキソラン部分を含むアルコールは、トリオール、トリオールのケタール、又はトリオールのカーボネートであり得る。例示的なトリオールとしては、グリセロール及びトリメチロールプロパンが挙げられる。トリオールは、非置換又は置換であり得る。「置換(substituted)」とは、炭素又は水素への1つ以上の結合が、非水素及び非炭素原子への結合によって置き換えられることを意味する。ジオキサン/ジオキソランモノマーは、以下に示される式II(ジオキサン)又はIII(ジオキソラン)を有し得、式中、Rは、水素及びメチルから選択され、R’は、水素及びエチルから選択され、Zは、水素、カルボニル基の酸素、アルキル基、アリール基、及びアルコキシ基から選択される。モノマーのうちのいずれか又は両方の種類のモノマーが、樹脂粒子に使用され得る。
【0028】
【0029】
カルボニル基は、C=O基を指し、すなわち、Zは、二重結合を介して炭素に共有結合されているOであり、それによって5又は6員環の2つの酸素間にカルボニル基を形成する。アルキル基は、直鎖又は分岐鎖であり得る。アルキル基は、1~20個の炭素を有し得る。これは、1~18個の炭素及び1~10個の炭素、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個の炭素を有することを含む。アルキル基は、置換又は非置換であり得る。アリール基は、1つの芳香環、例えば、ベンゼンを有する単環であり得、又は1つ以上の縮合環を有する多環であり得る。アリール基は、アルキル基に関して上記したように非置換であっても置換されていてもよいが、置換アリール基はまた、水素への結合が上記の非置換又は置換アルキル基への結合によって置き換えられるアリール基も包含する。アルコキシ基は-O-アルキル基を指す。
【0030】
例示的なジオキサン/ジオキソランモノマーとしては、グリセロールホルマール(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンホルマール(メタ)アクリレート、及びイソプロピリデングリセロール(メタ)アクリレートが挙げられる。単一の種類又は異なる種類のジオキサン/ジオキソランモノマーの組み合わせを使用することができる。しかしながら、いくつかの実施形態では、ジオキサン/ジオキソランモノマーは、グリセロールホルマール(メタ)アクリレートである。グリセロールホルマール(メタ)アクリレートは、比較的高いT-g(約85~90℃)を有する。本開示において、「グリセロールホルマール(メタ)アクリレート」という名称(並びに、この段落に記載の他のジオキサン/ジオキソランモノマーの名称)は、ジオキサン異性体、ジオキソラン異性体、又はそれらの両方のいずれかを指す。すなわち、全ての可能性は、それらの名称によって包含される。
【0031】
一般に、使用されるジオキサン/ジオキソランモノマーは単官能性であり、これは単一の重合性基を含むことを意味する。
【0032】
必須ではないが、多官能性モノマー、すなわち、2個以上の重合性基(例えば、2個、3個、4個)を含むものを使用して樹脂粒子を形成し得る(「多官能性モノマー」という用語は、上記のアニオン性(例えば、酸性)部分を含まないことによって、開示された架橋性アニオン性モノマーと区別される用語である)。例示的な多官能性モノマーとしては、ポリ(エチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、例えば、250g/molの分子量を有するポリ(エチレングリコール)ジアクリレートなどの二官能性モノマーが挙げられる。214g/mol~1000g/mol、214g/mol~500g/mol、及び214g/mol~300g/molの範囲の分子量を有するものを含む他のポリ(エチレングリコール)ジ(メタ)アクリレートが使用され得る。これらの分子量の値は、ゲル浸透クロマトグラフィを使用して決定することができる。他の二官能性モノマーとしては、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール#400ジアクリレート、ポリエチレングリコール#600ジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレートなどのエーテル結合を含有するアルキル鎖と結合したジアクリレート化合物、及びこれらの化合物のアクリレートをメタクリレートと置換することによって得られる化合物、ポリオキシエチレン(2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンジアクリレート、ポリオキシエチレン(4)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンジアクリレートなどの芳香族基及びエーテル結合を含む鎖と結合したジアクリレート化合物、及びこれらの化合物のアクリレートをメタクリレートと置換することによって得られる化合物が挙げられる。他の二官能性モノマーとしては、イソプレン及びブタジエンなどのジエン化合物、ジビニルベンゼン及びジビニルナフタレンなどの芳香族ジビニル化合物、エチレングリコールジアクリレート、1,3-ブチレングリコールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,5-ペンタンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、1,10-ドデカンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレートなどの、アルキル鎖と結合したジアクリレート化合物、及びこれらの化合物のアクリレートをメタクリレートと置換することによって得られる化合物が挙げられる。多官能性モノマーには、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールメタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレート、及びこれらの化合物のアクリレートをメタクリレートと置換することによって得られる化合物が挙げられる。
【0033】
しかしながら、いくつかの実施形態では、樹脂粒子を形成するために使用されるモノマーは、多官能性モノマーを含まない。いくつかの実施形態では、樹脂粒子を形成するために使用されるモノマーは、ジ(メタ)アクリルアミド(例えば、ジアセトンジアクリルアミド)を含まない。同様に、いくつかの実施形態では、架橋剤、例えば、エポキシド含有化合物は、樹脂粒子を形成するために使用されない。
【0034】
反応性界面活性剤は、樹脂粒子を形成するために使用され得る。好適な反応性界面活性剤は、それらが樹脂粒子に組み込まれるような重合性(及びしたがって反応性)基を含む。したがって、反応性界面活性剤は、本明細書に記載の他の「界面活性剤」と区別される。反応性界面活性剤は、単一の重合性基を含む単官能性であり得る。例示的な反応性界面活性剤としては、アニオン性エーテルサルフェート反応性界面活性剤、例えば、市販のHitenolシリーズのものなどが挙げられる。好適な反応性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸アンモニウム、例えば、Hitenol BC-10、BC-20、BC10-25、BC-2020、BC-30、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸アンモニウム、例えば、Hitenol AR-10、AR-1025、AR-20、AR-2020、Noigen RN-10、RN-20、RN-30、RN-40、RN-5065を含む非イオン性ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル;及びE-sperse RX-201、RX-202、RX-203、RS-1596、RS-1616、RS-1617、RS-1618、RS-1684を含むEthoxから入手可能な反応性界面活性剤が挙げられる。
【0035】
連鎖移動剤が、樹脂粒子を形成するために使用され得る。連鎖移動剤は、メルカプタン又はチオールであり得る。好適な連鎖移動剤としては、n-ドデシルメルカプタン(n-dodecylmercaptan、NDM)、n-ドデカンチオール(n-dodecanethiol、DDT)、tert-ドデシルメルカプタン、1-ブタンチオール、2-ブタンチオール、オクタンチオール、及びこれらの組み合わせが挙げられる。四臭化炭素、四塩化炭素、及びこれらの組み合わせなどのハロゲン化炭素は、連鎖移動剤として使用され得る。
【0036】
いくつかの実施形態では、他のある特定のモノマーは、樹脂粒子を形成する際に除外される。除外され得るモノマーは、12~22個の炭素を有するアルキル基を有する不飽和エチレンモノマーである。
【0037】
樹脂粒子を形成する際には、上述したモノマーの様々な組み合わせが、溶媒を含むモノマーエマルションにおいて使用され得る。水は、溶媒として一般に使用されるが、水溶性又は水混和性有機溶媒(例えば、エタノール)も含まれ得る。モノマーの種類及びそれらの相対量は、以下に説明する特性の値を達成することを含む樹脂粒子の特性を、調整するために選択され得る。例示的な量が、以下に提供される。
【0038】
モノマーエマルションに使用される疎水性モノマーの総量は、70重量%~97重量%、75重量%~95重量%、又は75重量%~80重量%の範囲であり得る(ここで、重量%は、(疎水性モノマーの総重量)/(反応性界面活性剤を除くモノマーエマルション中のモノマーの総重量)*100を指す)。存在する場合、アルキル(メタ)アクリレート(例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート)、ブチル(メタ)アクリレート)は、少なくとも20重量%、少なくとも25重量%、少なくとも30重量%、又は20重量%~40重量%の範囲の量で存在し得る(重量%は、疎水性モノマーについて記載の重量%と類似の意味を有する)。
【0039】
モノマーエマルションにおいて使用されるアニオン性モノマー(架橋性アニオン性モノマー及び単官能性アニオン性モノマーの両方を含む)の総量は、少なくとも15重量%、少なくとも16重量%、少なくとも18重量%、少なくとも20重量%、又は少なくとも22重量%であり得る。これは、15重量%~25重量%、16重量%~25重量%、18重量%~25重量%、及び20重量%~25重量%の量を包含する(重量%は、疎水性モノマーについて記載の重量%と類似の意味を有する)。以下の実施例(実施例3)で実証するように、これらの量のうちの特定の量は、本水性インクジェットインク組成物の実施形態に改善された安定性を与えることが見出された。モノマーエマルション中で使用される架橋性アニオン性モノマーの総量は、少なくとも1重量%、少なくとも2重量%、少なくとも3重量%、少なくとも4重量%、少なくとも5重量%、少なくとも8重量%、又は少なくとも10重量%であり得る。これは、1重量%~12重量%、1重量%~10重量%、2重量%~10重量%、3重量%~10重量%、及び2重量%~6重量%の量を包含する(重量%は、疎水性モノマーについて記載の重量%と類似の意味を有する)。以下の実施例(実施例2)で実証するように、これらの量のうちの特定の量は、特定の湿潤剤、例えば、1.2-ヘキサンジオールも含まれる場合、本水性インクジェットインク組成物の実施形態に改善された安定性を与えることが見出された。上述したように、いくつかの実施形態では、架橋性アニオン性モノマー及び単官能性アニオン性モノマーの両方が使用される。そのような実施形態では、架橋性アニオン性モノマーの総量と単官能性アニオン性モノマーの総量との重量比は、1.0以下、0.9未満、0.8未満、0.7未満、0.6未満、0.5未満、0.4未満、又は0.1~1.0、0.1~0.8、0.1~0.5、若しくは0.1~0.4の比である。
【0040】
ジオキサン/ジオキソランモノマーがモノマーエマルション中で使用される場合、ジオキサン/ジオキソランモノマーの総量は、1重量%~40重量%、1重量%~30重量%、1重量%~20重量%、1重量%~10重量%、及び1重量%~5重量%の範囲にあり得る(重量%は、疎水性モノマーについて記載の重量%と類似の意味を有する)。
【0041】
多官能性モノマーがモノマーエマルション中で使用される場合、多官能性モノマーの総量は、0.001~1.5重量%、0.001重量%~0.8重量%、及び0.01重量%~0.6重量%の範囲にあり得る(重量%は、疎水性モノマーについて記載の重量%と類似の意味を有する)。しかしながら、いくつかの実施形態では、多官能性モノマーは使用されない。
【0042】
反応性界面活性剤がモノマーエマルション中で使用される場合、反応性界面活性剤の総量は、0.1重量%~6.5重量%の範囲にあり得る(ここで、重量%は、(反応性界面活性剤の総重量)/(反応性界面活性剤モノマーを含むモノマーエマルション中のモノマーの総重量)*100を指す)。この範囲は、0.3重量%~5重量%を含む。
【0043】
連鎖移動剤は、モノマーエマルション中に存在してもよく、様々な好適な量、例えば、0.25重量%~2.5重量%で使用されてもよい(ここで、重量%は、(連鎖移動剤の総重量)/(反応性界面活性剤を除くモノマーエマルション中のモノマーの総重量)*100を指す)。
【0044】
いくつかの実施形態では、モノマーエマルションは、溶媒、疎水性モノマー、及び架橋性アニオン性モノマー、例えば、架橋性リン酸モノマーを含むアニオン性モノマーを含む。いくつかの実施形態では、モノマーエマルションは、溶媒、疎水性モノマー、架橋性アニオン性モノマー、及び単官能性アニオン性モノマーを含む(又はそれらからなる)。この段落における実施形態のいずれかでは、疎水性モノマーは、スチレン及びアルキル(メタ)アクリレート、例えば、ブチルアクリレートを含み得る(又はそれらからなり得る)。この段落における実施形態のいずれかでは、架橋性リン酸モノマーは、式I P(O)(OR)3を有するものを含み得(又はそれらからなり得)、式中、1個のR基は水素であり、2個のR基は独立して選択される重合性有機基である。いくつかの実施形態では、重合性有機基は、アルキル(メタ)アクリレート、例えば、エチル(メタ)アクリレートである。いくつかの実施形態では、架橋性リン酸モノマーは、リン酸2-ヒドロキシエチルメタクリレートエステル、ビス[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]ホスフェート、又はそれらの組み合わせを含む(又はそれらからなる)。この段落における実施形態のいずれかでは、単官能性アニオン性モノマーは、メタクリル酸を含み得る(又はそれからなり得る)。この段落における実施形態のいずれかでは、反応性界面活性剤が使用され得る。この段落における実施形態のいずれかでは、連鎖移動剤が、使用され得る。この段落における実施形態のいずれかでは、様々なモノマー、反応性界面活性剤、及び連鎖移動剤の量は、上述した量が使用され得る。残りは、溶媒からなっていてもよい。
【0045】
いくつかの実施形態では、モノマーエマルションは、界面活性剤を有しない(すなわち、含まない)。ここで、「界面活性剤」は、ドデシル硫酸ナトリウム(sodium dodecylsulfate、SDS)、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルナフタレン硫酸ナトリウム;ジアルキルベンゼンアルキルサルフェート;パルミチン酸;アルキルジフェニルオキシドジスルホネート;及び分岐状ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどの非反応性非重合性アニオン性界面活性剤を指す。「界面活性剤」はまた、アルキルベンジルジメチル塩化アンモニウム、ジアルキルベンゼンアルキル塩化アンモニウム、ラウリルトリメチル塩化アンモニウム、アルキルベンジルメチル塩化アンモニウム、アルキルベンジルジメチル臭化アンモニウム、塩化ベンザルコニウム、セチル臭化ピリジニウム、トリメチル臭化アンモニウム、四級化ポリオキシエチルアルキルアミンのハロゲン化物塩、及びドデシルベンジルトリエチル塩化アンモニウムなどの非反応性非重合性カチオン性界面活性剤を指す。「界面活性剤」はまた、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ジアルキルフェノキシポリ(エチレンオキシ)エタノール、並びにポリエチレンオキシド及びポリプロピレンオキシドのブロックコポリマーなどの非反応性非重合性非イオン性界面活性剤を指す。したがって、モノマーエマルションは、これらの界面活性剤のいずれも有さない場合がある(すなわち、含まない)。
【0046】
モノマー欠乏エマルション重合、従来のエマルション重合、懸濁重合、ミニエマルション重合、ナノエマルション重合、シードエマルション重合、及びマイクロエマルション重合などの、様々な重合技術が、樹脂粒子を形成するために使用され得る。これらの重合技術は、上に記載されるモノマーエマルションのいずれかを使用し得る。例示的なシードエマルション重合プロセスについて以下に記載する。しかしながら、使用される重合技術は、水性媒体に不溶性である樹脂粒子の形態の重合ポリマーを提供することに留意されたい。これは、重合技術、例えば、有機媒体中に可溶化ポリマーをそれぞれ提供する、米国特許第9,359,522号、同第9,963,592号、及び米国特許出願公開第20210222025号に記載されているものを含む溶液重合とは対照的である。
【0047】
樹脂粒子を形成するための例示的なシードエマルション重合法において、本方法は、上述したモノマーエマルションのうちのいずれかの第1の部分を、一定期間にわたってある供給速度で反応性界面活性剤溶液に添加することを含む。反応性界面活性剤溶液に添加されるモノマーエマルションの第1の部分は、樹脂粒子を形成するための方法で使用されるモノマーエマルションの総量の一部を指す。この第1の部分は、モノマーエマルションの総量の1重量%~20重量%の範囲の量であり得る。これは、2重量%~15重量%及び2重量%~10重量%を含む。以下に記載するように、モノマーエマルションの残りの部分は、本方法の後の工程で使用される。モノマーエマルションの第1の部分が添加される供給速度は、1Lの総反応体積に基づいて1mL/分~10mL/分の範囲であり得る。モノマーエマルションの第1の部分が添加される期間は、5分~100分の範囲であり得る。
【0048】
反応性界面活性剤溶液は、溶媒及び反応性界面活性剤を含む。上に記載される溶媒のうちのいずれか及び反応性界面活性剤のうちのいずれかも、使用され得る。一種類又は異なる種類の溶媒及び/又は反応性界面活性剤が使用され得る。反応性界面活性剤溶液中の反応性界面活性剤は、モノマーエマルション中に存在し得る反応性界面活性剤と比較して、同じ種類又は異なる種類であってもよい。反応性界面活性剤溶液は、緩衝液を更に含んでもよい。重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、及び水酸化アンモニウムなどの様々な緩衝液が使用され得る。反応性界面活性剤は、1重量%~10重量%の範囲の量で使用され得る(ここで、重量%は、(反応性界面活性剤の総重量)/(反応性界面活性剤溶液の総重量)*100を指す)。この範囲は、2重量%~5重量%を含む。緩衝液は、0.25重量%~4重量%の範囲の量で使用され得る(重量%は、上に記載の重量%と同様の意味を有する)。
【0049】
いくつかの実施形態では、反応性界面活性剤溶液は、溶媒(例えば、水)、反応性界面活性剤、並びに任意選択的に緩衝液を含む(又はそれらからなる)。このような実施形態では、一種類又は異なる種類のこれらの構成成分が使用され得る。これらの実施形態のうちのいずれかでは、上記のように、反応性界面活性剤及び緩衝液の量が使用され得る。残りは、溶媒からなっていてもよい。少なくともいくつかの実施形態では、反応性界面活性剤溶液は、上に記載しれる界面活性剤のうちのいずれも有しない(すなわち、含まない)。少なくともいくつかの実施形態では、反応性界面活性剤溶液は、溶液中に存在する反応性界面活性剤モノマー以外のいずれのモノマーも有しない(すなわち、含まない)。少なくともいくつかの実施形態では、反応性界面活性剤溶液は、開始剤を有しない(すなわち、含まない)。
【0050】
反応性界面活性剤溶液へのモノマーエマルションの第1の部分の添加は、不活性ガス(例えば、窒素)下、かつ高温(例えば、50℃~90℃の範囲の温度など室温よりも高い)で実施され得る。これは、モノマーエマルションの第1の部分を添加する前に、不活性ガスでパージし、反応性界面活性剤溶液を加熱し、モノマーエマルションの第1の部分の添加中に継続することによって達成され得る。
【0051】
次に、開始剤溶液の第1の部分を、モノマーエマルション/反応性界面活性剤溶液の合わせた第1の部分(すなわち、「反応混合物」)に、ある供給速度である期間にわたって添加する。反応混合物に添加される開始剤溶液の第1の部分は、樹脂粒子を形成するための方法で使用される開始剤溶液の総量の一部を指す。この第1の部分は、開始剤溶液の総量の10重量%~90重量%の範囲の量であり得る。これは、12重量%~85重量%及び15重量%~75重量%を含む。以下に記載するように、開始剤溶液の残りの部分は、本方法の後の工程で使用される。この供給速度は、1Lの総反応体積に基づいて1mL/分~10mL/分の範囲であり得る。開始剤溶液が添加される時間は、0.1分~10分、0.5分~5分、及び0.5分~3分の範囲であり得る。開始剤溶液の添加は、上記のように、高温かつ不活性ガス下で行われ得る。開始剤の存在下で、モノマーエマルションのモノマーは、重合反応を経て、反応混合物中で樹脂シードを形成する。
【0052】
開始剤溶液は、開始剤と、上記の溶媒のいずれかと、を含む。一種類又は異なる種類の溶媒及び/又は開始剤が使用され得る。好適な開始剤の例としては、過硫酸アンモニウム(ammonium persulfate、APS)、過硫酸ナトリウム、及び過硫酸カリウムなどの水溶性開始剤、並びに有機過酸化物、及びVAZO64(商標)などのVazo過酸化物、2-メチル2-2’-アゾビスプロパンニトリル、VAZO88(商標)、2-2’-アゾビスイソブチルアミド無水物を含むアゾ化合物を含む有機可溶性開始剤、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。使用され得る他の水溶性開始剤としては、アゾアミジン化合物、例えば、2,2’-アゾビス(2-メチル-N-フェニルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[N-(4-クロロフェニル)-2-メチルプロピオンアミジン]ジ-ヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[N-(4-ヒドロキシフェニル)-2-メチル-プロピオンアミジン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[N-(4-アミノ-フェニル)-2-メチルプロピオンアミジン]テトラヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-メチル-N(フェニルメチル)プロピオンアミジン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-2-プロペニルプロピオンアミジン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[N-(2-ヒドロキシ-エチル)2-メチルプロピオンアミジン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2(5-メチル-2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-(4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-1,3-ジアゼピン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-(3,4,5,6-テトラヒドロピリミジン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロ-リド、2,2’-アゾビス[2-(5-ヒドロキシ-3,4,5,6-テトラヒドロピリミジン-2-イル)プロパン]ジ-ヒドロクロリド、2,2’-アゾビス{2-[1-(2-ヒドロキシエチル)-2-イミダゾリン-2-イル]プロパン}ジヒドロクロリド、及びそれらの組み合わせが挙げられる。開始剤は、0.1重量%~10重量%の範囲の量で使用され得る(ここで、重量%は、(開始剤の総重量)/(開始剤溶液の総重量)*100を指す)。
【0053】
次に、モノマーエマルションの第2の部分を、この時点で樹脂シードを含む反応混合物に、ある供給速度である期間にわたって添加する。この第2の部分の量は、樹脂粒子を形成する方法で使用されているモノマーエマルションの総量の残りであり得る。この供給速度及び期間は、第1の部分について上述した範囲内であり得るが、第1の部分について使用したものと同じである必要はない。第2の部分の添加は、上記のように高温かつ不活性ガス下で行われ得る。
【0054】
開始剤溶液の第2の部分も反応混合物に添加する。この第2の部分の量は、樹脂粒子を形成する方法で使用されている開始剤溶液の総量の残りであり得る。開始剤溶液の第2の部分は、上記のモノマーエマルションの第2の部分の添加中に、断続的に(すなわち、個々の部分で)又は連続的に(すなわち、ある供給速度で)添加され得る。開始剤溶液の割り当ては、所望のサイズを有する樹脂粒子を得るために必要とされる開始剤の総量又は必要とされる総反応時間を著しく減少させることができる。あるいは、開始剤溶液の第2の部分は、ある供給速度及び期間であるが、モノマー溶液の第2の部分の添加の完了後に添加され得る。この場合、供給速度及び期間は、開始剤溶液の第1の部分の添加について上述した範囲内であり得るが、同じである必要はない。開始剤溶液の第2の部分の添加は、上記のように高温かつ不活性ガス下で行われ得る。
【0055】
モノマーエマルションの第2の部分の添加及び追加量の開始剤溶液の添加は、モノマー間の更なる重合反応によって樹脂シードを樹脂粒子に成長させることを可能にする。
【0056】
「保持」期間は、上記の工程のいずれかの間に含まれ得、すなわち、反応混合物が、いずれの成分も添加することなく、所望の温度(例えば、高温)で単に保持される期間である。これらの期間は、1分~1時間、及び1分~20分など1分~2時間の範囲であり得る。本方法は、例えば、1時間~5時間又は1時間~3時間の範囲の最終保持を含み得る。最終保持のために使用される温度は、高温よりも高い温度など本方法の他の工程中に使用される温度よりも高い場合がある。最終保持におけるこの温度は、70℃~100℃又は75℃~95℃の範囲であり得る。
【0057】
上記の工程の結果は、水及び樹脂粒子を含むラテックスである。これらのラテックスも本開示に包含される。それらは、開示される顔料粒子を含まないことによって、開示される水性インクジェットインク組成物とは区別される。加えて、ラテックスは、一般に、以下に記載の共媒体、例えば湿潤剤を含まない。
【0058】
少なくともいくつかの実施形態では、上記の方法は、上記の界面活性剤のうちのいずれ(反応性界面活性剤モノマー以外)の使用も伴わないことに留意されたい。
【0059】
樹脂粒子の組成は、モノマーの選択、及びそれらの相対量、並びに上に記載されるような重合生成物を生成する選択されたモノマー間の重合反応に依存する。したがって、様々なモノマーの組み合わせを含む反応物の様々な重合生成物に基づくものを含む、様々な組成が包含される。上記のように、反応物は、疎水性モノマーと、架橋性アニオン性モノマーを含む、アニオン性モノマーと、を含むが、他の種類のモノマーも含まれ得る。明確にするために、樹脂粒子の組成は、重合されるモノマーを参照し、これらのモノマーの化学形態が、一般に重合反応の結果として変化していることを認識することによって特定され得る。樹脂粒子中で重合されると、モノマーは「重合モノマー」と称され得る。
【0060】
いくつかの実施形態では、樹脂粒子は、疎水性モノマーと、架橋性アニオン性モノマー、例えば、架橋性リン酸モノマーを含むアニオン性モノマーと、を含む反応物の重合生成物(例えば、コポリマー)を含む(又はそれからなる)。いくつかの実施形態では、樹脂粒子は、疎水性モノマー、架橋性アニオン性モノマー、及び単官能性アニオン性モノマーを含む反応物の重合生成物(例えば、コポリマー)を含む(又はそれからなる)。この段落における実施形態のいずれかでは、疎水性モノマーは、スチレン及びアルキル(メタ)アクリレート、例えば、ブチルアクリレートを含み得る(又はそれらからなり得る)。この段落における実施形態のいずれかでは、架橋性リン酸モノマーは、式I P(O)(OR)3を有するものを含み得(又はそれらからなり得)、式中、1個のR基は水素であり、2個のR基は独立して選択される重合性有機基である。いくつかの実施形態では、重合性有機基は、アルキル(メタ)アクリレート、例えば、エチル(メタ)アクリレートである。いくつかの実施形態では、架橋性リン酸モノマーは、リン酸2-ヒドロキシエチルメタクリレートエステル、ビス[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]ホスフェート、又はそれらの組み合わせを含む(又はそれらからなる)。この段落における実施形態のいずれかでは、単官能性アニオン性モノマーは、メタクリル酸を含み得る(又はそれからなり得る)。この段落における実施形態のいずれかでは、反応性界面活性剤(例えば、アニオン性エーテルサルフェート)が、使用され得る。この段落における実施形態のいずれかでは、開始剤(又はその一部分)は、樹脂粒子において、各ポリマー鎖の末端部に組み込まれ得る。
【0061】
直前の段落における実施形態のいずれかでは、重合モノマーは、モノマーエマルション中のモノマーの量に関して上述した量で樹脂粒子中に存在し得る。これは、実験が、重合反応中のモノマーの変換が99.9%を超えることを示しているためである。例えば、樹脂粒子中のアニオン性モノマーの総量は、15重量%~25重量%又は20重量%~25重量%の範囲であり得る。上記で提供された重量%の定義と同様に、樹脂粒子を指す場合、重量%という用語は(重合アニオン性モノマーの総重量)/(重合反応性界面活性剤を除く重合モノマーの総重量)*100)を指す。
【0062】
特定の例示的な組成物を使用すると、樹脂粒子の組成物はまた、ポリ[(スチレン)-ran-(ブチルアクリレート)-ran-(ビス[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]ホスフェート)-ran-(メタクリル酸)-ran-(アニオン性エーテルスルフェート)]として同定され得る。重合反応から生じる異なる化学部分は、括弧内の対応するモノマーを参照することによって同定され、「ran」は、コポリマーへの異なるモノマーのランダムな組み込みを指している。この記載の使用は、各コポリマーの開始部での開始剤(又はその一部分)の存在、並びに樹脂粒子の架橋性の特質を包含する。
【0063】
ある特定のモノマー(又は他の反応物)が樹脂粒子を形成することから除外される実施形態では、そのようなモノマー(又は他の反応物)は、樹脂粒子のポリマーマトリックスを形成するための重合反応に関与していないということになる。したがって、これらの実施形態では、樹脂粒子の組成物は、4-メチルスチレン、シクロヘキシルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、ジ(メタ)アクリルアミド(例えば、ジアセトンアクリルアミド)、及び12~22個の炭素を有するアルキル基を有する不飽和エチレンモノマーのうちの1つ以上を有しない(すなわち、含まない)ものとして記載され得る。
【0064】
樹脂粒子は、1重量%~10重量、1重量%~8重量、及び1重量%~6重量%の範囲の量で、水性インクジェットインク組成物中に存在し得る(ここで、重量%は、(樹脂粒子の総重量)/(水性インクジェットインク組成物の総重量)*100を指す)。
【0065】
水性インクジェットインク組成物の樹脂粒子は、それらのサイズを特徴とし得る。粒子のサイズは、MV粒径として報告され得る。Nano-flex(Microtrac,Inc.)を使用して、平均体積径を指すMV粒径を測定することができ、これは、Nano-flex機器の操作説明書に記載のように試料中の粒子の体積分布の平均径(ナノメートル単位)である。いくつかの実施形態では、樹脂粒子は、60nm~200nmのMV粒径を特徴とする。これは、60nm~150nm及び70nm~120nmを含む。したがって、樹脂粒子は、個々のポリマー分子から区別される。
【0066】
水性インクジェットインク組成物の樹脂粒子はまた、それらのTg値も特徴とし得る。Tg値は、示差走査熱量測定(Differential Scanning Calorimetry、DSC)TA Instruments Discovery DSC 2500を使用して測定することができる。いくつかの実施形態では、Tgは、25℃~70℃の範囲である。これは、35℃~65℃、及び40℃~60℃を含む。
【0067】
水性インクジェットインク組成物の樹脂粒子はまた、それらの電荷を特徴とし得る。樹脂粒子は、水性インクジェットインク組成物中で負に帯電しており、7超~10、7超~9、又は7.5~9のpHを有し得る。上述したように、この負電荷は、アニオン性モノマーの使用によるものである。
【0068】
様々な対イオン(カチオン)が、開示される樹脂粒子を含むラテックス及び水性インクジェットインク組成物中に存在し得る。対イオンの種類は特に限定されないが、例えば、Na+、K+、Ca2+などが挙げられ得る。
【0069】
液体システム
水性インクジェットインク組成物は、水に基づく液体系を含む。液体系は、水と、水溶性有機液体及び水混和性有機液体のうちの1つ以上と、の混合物を含み得る。水溶性有機液体及び水混和性有機液体は、本明細書において共媒体と称され得る。以下に更に記載するように、少なくとも一部の水溶性有機液体及び水混和性有機液体は、本明細書において湿潤剤と称され得る。好適なそのような共媒体としては、脂肪族アルコール、芳香族アルコール、ジオール、グリコールエーテル、ポリグリコールエーテル、長鎖アルコール、一級脂肪族アルコール、二級脂肪族アルコール、1,2-アルコール、1,3-アルコール、1,5-アルコール、エチレングリコールアルキルエーテル、プロピレングリコールアルキルエーテル、メトキシル化グリセロール、及びエトキシル化グリセロールを含む、アルコール及びアルコール誘導体が挙げられる。実例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ヘキシルグリコール、グリセリン、ジプロピレングリコール、チオジグリコール、トリメチロールプロパン、1,2-ヘキサンジオール、1,5-ペンタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-エチル-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール、3-メトキシブタノール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、及び2,4-ヘプタンジオールが挙げられる。他の好適な共媒体としては、アミド、エーテル、尿素、置換尿素、例えば、チオ尿素、エチレン尿素、アルキル尿素、アルキルチオ尿素、ジアルキル尿素、及びジアルキルチオ尿素など、カルボン酸及びこれらの塩、例えば、2-メチルペンタン酸、2-エチル-3-プロピルアクリル酸、2-エチル-ヘキサン酸、3-エトキシプロピオン酸など、エステル、有機硫化物、有機スルホキシド、スルホン(スルホランなど)、カルビトール、ブチルカルビトール、セルソルブ(cellusolve)、エーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、エーテル誘導体、ヒドロキシエーテル、アミノアルコール、ケトン、N-メチルピロリジノン、2-ピロリジノン、シクロヘキシルピロリドン、アミド、スルホキシド、ラクトン、ラクタム、高分子電解質、メチルスルホニルエタノール、イミダゾール、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ベタイン、糖、例えば、1-デオキシ-D-ガラクチトール、マンニトール、イノシトールなど、置換及び非置換ホルムアミド、並びに置換及び非置換アセトアミドが挙げられる。これらの共媒体の組み合わせを使用してもよい。
【0070】
好適な共媒体としては、4~7の炭素数を有する炭化水素のグリコールが挙げられる。このようなグリコールの例としては、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、2,4-ペンタンジオール、1,7-ヘプタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、トリメチロールプロパン、1,2,6-ヘキサントリオール、1,2,3-ブタントリオール、ソルビトール、ジエチレングリコール、1,2,4-ブタントリオール、グリセロール、ジグリセロール、及びトリエチレングリコールが挙げられる。
【0071】
いくつかの実施形態では、液体系は、水と、1,2-ヘキサンジオール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ポリエチレングリコール、トリメチロールプロパン、トリメタノールエタン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ヘキシレングリコール、グリセリン、及びそれらの組み合わせのうちの1つ以上から選択される湿潤剤と、を含む(又はそれらからなる)。
【0072】
いくつかの実施形態では、液体系は、水、1,2-アルコール(例えば、1,2-ヘキサンジオール)、グリコール(例えば、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール)、及びグリセロールから選択される湿潤剤と、を含む(又はそれらからなる)。以下の実施例(実施例2)において実証するように、一部の湿潤剤、例えば、1,2-ヘキサンジオールは、粒子安定性に強く干渉する傾向があり、凝集をもたらす。しかしながら、上記の量などで本樹脂粒子において架橋性アニオン性モノマーを使用することにより、1.2-ヘキサンジオールの存在下で改善された安定性を有する本水性インクジェットインク組成物の実施形態を提供することが見出された。
【0073】
水及び共媒体を含む液体系では、水対共媒体の重量比、並びに異なる共媒体の種類及び相対量は、所望の表面張力、粘度、デキャップ時間、遅延、乾燥時間、浸透など水性インクジェットインク組成物のある特定の特性を達成するように選択され得る。
【0074】
水性インクジェットインク組成物中では、様々な液体系の総量が使用され得る。いくつかの実施形態では、液体系は、50重量%~95重量%、60重量%~90重量%、又は65重量%~90重量%の量で存在する(ここで、重量%は、(液体系の総重量)/(水性インクジェットインク組成物の総重量)*100を指す)。いくつかの実施形態では、存在する水の総量は、少なくとも50重量%、少なくとも60重量%、少なくとも70重量%、少なくとも80重量%であるか、又は50重量%~95重量%の範囲にある(ここで、重量%は、(水の総重量)/(水性インクジェットインク組成物の総重量)*100を指す)。いくつかの実施形態では、共媒体(媒体)の総量は、15重量%~40重量%、20重量%~40重量%、及び20重量%~35重量%の範囲である。これらの重量%は、水性インクジェットインク組成物の総重量と比較した、共媒体(媒体)(例えば、1,2-アルコール(例えば、1,2-ヘキサンジオール)、グリコール(例えば、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール)、及びグリセロール)の重量を指している。
【0075】
顔料粒子
水性インクジェットインク組成物は顔料粒子を含む。好適な顔料の例としては、白色顔料、ブラック顔料、シアン顔料、マゼンタ顔料、及びイエロー顔料が挙げられる。顔料は、有機粒子又は無機粒子であり得る。好適な無機顔料としては、カーボンブラックが挙げられる。しかしながら、コバルトブルー(CoO-Al2O3)、クロムイエロー(PbCrO4)、酸化鉄、及び二酸化チタン(TiO2)、BaSO4などの他の無機顔料が好適であり得る。好適な有機顔料としては、例えば、ジアゾ顔料及びモノアゾ顔料などアゾ顔料、多環式顔料(例えば、フタロシアニンブルー及びフタロシアニングリーンなどフタロシアニン顔料)、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、ピラントロン顔料、及びキノフタロン顔料)、不溶性染料キレート(例えば、酸性染料型キレート)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、並びにピグメントレッド168などアントアントロン顔料が挙げられる。フタロシアニンブルー及びグリーンの代表例としては、銅フタロシアニンブルー、銅フタロシアニングリーン、及びそれらの誘導体(ピグメントブルー15、ピグメントグリーン7、及びピグメントグリーン36)が挙げられる。キナクリドンの代表例としては、ピグメントオレンジ48、ピグメントオレンジ49、ピグメントレッド122、ピグメントレッド192、ピグメントレッド202、ピグメントレッド206、ピグメントレッド207、ピグメントレッド209、ピグメントバイオレット19、及びピグメントバイオレット42が挙げられる。アントラキノンの代表例としては、ピグメントレッド43、ピグメントレッド194、ピグメントレッド177、ピグメントレッド216、及びピグメントレッド226が挙げられる。ペリレンの代表例としては、ピグメントレッド123、ピグメントレッド149、ピグメントレッド179、ピグメントレッド190、ピグメントレッド189、及びピグメントレッド224が挙げられる。チオインジゴイドの代表例としては、ピグメントレッド86、ピグメントレッド87、ピグメントレッド88、ピグメントレッド181、ピグメントレッド198、ピグメントバイオレット36、及びピグメントバイオレット38が挙げられる。複素環イエローの代表例としては、ピグメントイエロー1、ピグメントイエロー3、ピグメントイエロー12、ピグメントイエロー13、ピグメントイエロー14、ピグメントイエロー17、ピグメントイエロー65、ピグメントイエロー73、ピグメントイエロー74、ピグメントイエロー90、ピグメントイエロー110、ピグメントイエロー117、ピグメントイエロー120、ピグメントイエロー128、ピグメントイエロー138、ピグメントイエロー150、ピグメントイエロー151、ピグメントイエロー155、ピグメントイエロー180、及びピグメントイエロー213が挙げられる。このような顔料は、BASF Corporation、Engelhard Corporation、及びSun Chemical Corporationなど多くの供給元から粉末又はプレスケーキの形態で市販されている。使用可能なブラック顔料の例としては、炭素顔料が挙げられる。本系及び方法での使用に好適な炭素顔料は、カーボンブラック、グラファイト、ガラス状炭素、木炭、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。このような炭素顔料は、チャンネル法、コンタクト法、ファーネス法、アセチレン法、又はサーマル法など種々の既知の方法で製造することができ、Cabot Corporation、Columbian Chemicals Company、Evonik、及びE.I.DuPont de Nemours and Companyのようなベンダーから市販されている。好適なカーボンブラック顔料としては、MONARCH(登録商標)1400、MONARCH(登録商標)1300、MONARCH(登録商標)1100、MONARCH(登録商標)1000、MONARCH(登録商標)900、MONARCH(登録商標)880、MONARCH(登録商標)800、MONARCH(登録商標)700、REGAL(登録商標)、BLACK PEARLS(登録商標)、ELFTEX(登録商標)、MOGUL(登録商標)、及びVULCAN(登録商標)顔料などCabot社製の顔料、RAVEN(登録商標)5000及びRAVEN(登録商標)3500などColumbian社製の顔料、カラーブラックFW200、FW2、FW2V、FW1、FW18、FW5160、FW5170、スペシャルブラック6、スペシャルブラック5、スペシャルブラック4A、スペシャルブラック4、PRINTEX(登録商標)U、PRINTEX(登録商標)140U、PRINTEX(登録商標)V、及びPRINTEX(登録商標)140VなどEvonik社製の顔料が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、顔料粒子は、米国特許第9,359,522号に開示されているキナクリドン系顔料のいずれも含まない。
【0076】
いくつかの実施形態では、水性インクジェットインク組成物中で使用される顔料粒子は、顔料粒子及び分散剤を含む分散顔料粒子である。いくつかの実施形態では、分散剤は、ポリマー分散顔料粒子を提供するためのポリマー分散剤である。いくつかの実施形態では、分散剤は、界面活性剤分散顔料粒子を提供するための界面活性剤分散剤である。分散顔料粒子(ポリマー分散顔料粒子及び界面活性剤分散顔料粒子の両方を含む)の顔料粒子は未変性であり、これは、顔料粒子が水中及び水性インクジェットインク組成物中でそれ自体が不溶性であることを意味する。更に、顔料粒子(例えば、それらの表面)は、顔料粒子が水中及び水性インクジェットインク組成物中で可溶性であることを別様に可能にする結合(例えば、化学結合)分子又は分子基を含まないことを意味する。したがって、分散顔料粒子(ポリマー分散顔料粒子及び界面活性剤分散顔料粒子の両方を含む)は、自己分散型顔料粒子と区別される。いくつかの実施形態では、本水性インクジェットインク組成物で自己分散型顔料粒子が使用され得るが、他の実施形態では、自己分散型顔料粒子は使用されない。本水性インクジェットインク組成物において使用され得る、又は除外され得る自己分散型顔料粒子としては、Cabot Corporationから入手可能なCAB-O-JET(登録商標)200、CAB-O-JET(登録商標)300、CAB-O-JET(登録商標)450、CAB-O-JET 352K、CAB-O-JET 250C、CAB-O-JET 260M、CAB-O-JET 270Y、CAB-O-JET 465M、CAB-O-JET 470Y、及びCAB-O-JET 480Vが挙げられる。
【0077】
分散顔料粒子は、所望の量の顔料粒子と、界面活性剤分散剤又はポリマー分散剤と、を、例えばマイクロミル中で粉砕することによって混合することによって形成することができる。例示的な界面活性剤分散剤としては、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルナフタレン硫酸ナトリウム;ジアルキルベンゼンアルキルサルフェート;パルミチン酸;アルキルジフェニルオキシドジスルホネート;及び分岐状ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどの非反応性非重合性アニオン性界面活性剤を指す。界面活性剤分散剤としては、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ジアルキルフェノキシポリ(エチレンオキシ)エタノール、並びにポリエチレンオキシド及びポリプロピレンオキシドのブロックコポリマーなど非イオン性界面活性剤が挙げられる。上記の反応性界面活性剤はまた、界面活性剤分散剤として使用することができる。いくつかの実施形態では、界面活性剤分散剤は、アニオン性界面活性剤分散剤である。いくつかの実施形態では、カチオン性界面活性剤分散剤は使用されない。
【0078】
ポリマー分散剤としては、スチレン-アクリルコポリマーなどアクリルポリマー、及びビニルピロリドンコポリマー、ウレタン又はポリウレタン分散体、並びにアクリル-ウレタンハイブリッド分散体が挙げられる。いくつかの実施形態では、ポリマー分散剤は、アニオン性ポリマー分散剤である。より具体的なポリマー分散剤としては、Joncryl(登録商標)671、Joncryl(登録商標)683、Joncryl(登録商標)296、Joncryl(登録商標)690、Joncryl HPD 296、Joncryl HPD96-E、Joncryl LMV 7085、Joncryl 8082などの、Johnson Polymers(BASF)から入手可能なものが挙げられる。他の具体的なポリマー分散剤としては、Evonikから入手可能なZetasphere 2500(非イオン性)及びKodakから入手可能なPDP10、PDP66、PDP83、PDP64、PDP07などのPDPシリーズが挙げられる。ポリマー分散剤が使用される場合、異なる組成を有し、形態が粒子状である本発明の樹脂粒子と区別される。使用され得る、市販のポリマー分散顔料粒子としては、Kodak,Inc.から入手可能なSpecialty Black Dispersion Type P2、Specialty Cyan Dispersion Type P2、Specialty Yellow Dispersion Type P2、Specialty Magenta Dispersion Type P3、Specialty Black Dispersion Type P4、Specialty Cyan Dispersion Type P1、Specialty Magenta Dispersion Type P1、及びSpecialty Yellow Dispersion Type P1が挙げられる。
【0079】
顔料粒子は粒子の形態であり、20nm~500nm、20nm~400nm、又は30nm~300nmの粒径を有し得る。粒径は、樹脂粒子に関して上述したように、MV粒径として報告され得る。分散剤が使用されない場合、これらの粒径は顔料粒子自体を指す。分散剤が使用される場合、これらの粒径は、顔料粒子、場合によっては顔料粒子の表面に吸着した分散剤の量を指す。
【0080】
様々な量の顔料粒子が水性インクジェットインク組成物中で使用され得る。いくつかの実施形態では、顔料粒子は、3重量%~10重量%、3重量%~8重量%、又は3重量%~6重量%の量で存在する(ここで、重量%は、(顔料粒子の総重量)/(水性インクジェットインク組成物の総重量)*100を指す)。異なる種類の顔料粒子が使用される場合、これらの量は、顔料粒子の総量を指す。ポリマー分散顔料粒子又は界面活性剤分散顔料粒子が使用される場合、これらの量は顔料粒子の総量を指し、使用されているポリマー/界面活性剤分散剤を含まない。
【0081】
いくつかの実施形態では、使用される顔料粒子は、マゼンタ顔料粒子、ブラック顔料粒子、又はそれらの両方を含む(又はそれらからなる)。一般に、(例えば、シアン顔料粒子及びイエロー顔料粒子とは対照的に)これらの顔料粒子を使用して安定な水性インクジェットインク組成物を得ることは、好適な色強度を得るためにより多くの量のこれらの顔料粒子が必要とされるので、特に困難である。マゼンタ顔料粒子は、マゼンタ顔料の粒径が他の顔料粒子と比較して大きいので、更なる課題を提示する。いくつかの実施形態では、使用される顔料粒子は、分散マゼンタ顔料粒子、分散ブラック顔料粒子、又はそれらの両方を含む(又はそれらからなる)。いくつかの実施形態では、使用される顔料粒子は、ポリマー分散マゼンタ顔料粒子、ポリマー分散ブラック顔料粒子、又はそれらの両方を含む(又はそれらからなる)。
【0082】
界面活性剤
上記のモノマーエマルション及びラテックスとは異なり、水性インクジェットインク組成物は、1つ以上の界面活性剤を含み得る。しかしながら、使用される場合、これらの界面活性剤は、上記のように顔料分散剤として使用されるものとは区別される。好適な界面活性剤の例としては、アニオン性界面活性剤(ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)、Dextrol OC-40、Strodex PK 90、ラウリル硫酸アンモニウム、ラウリル硫酸カリウム、ミレス硫酸ナトリウム、及びジオクチルスルホコハク酸ナトリウムシリーズなど)、非イオン性界面活性剤(Surfynol(登録商標)104シリーズ、Surfynol(登録商標)400シリーズ、Dynol(商標)604、Dynol(商標)607、Dynol(商標)810、EnviroGem(登録商標)360、二級アルコールエトキシレートシリーズ、例えば、Tergitol(商標)15-S-7、Tergitol(商標)15-S-9、TMN-6、TMN-100x、及びTergitol(商標)NP-9、Triton(商標)X-100など)が挙げられる。PolyFox(商標)TMPF-136A、156A、151N、Chemguard S-761p、S-764p、Silsurf(登録商標)A008、Siltec(登録商標)C-408、BYK 345、346、347、348、及び349、ポリエーテルシロキサンコポリマーTEGO(登録商標)Wet-260、270 500などのいくつかのフッ素化又はシリコーン界面活性剤を使用することができる。Chemguard S-500及びChemguard S-111などのアルキルベタインフルオロ界面活性剤又はアルキルアミンオキシドフルオロ界面活性剤などのいくつかの両性フッ素化界面活性剤も使用することができる。使用され得る他の界面活性剤としては、Surfynol PSA 336、Surfynol SE-F、及びSurfynol 107Lが挙げられる。いくつかの実施形態では、カチオン性界面活性剤は使用されない。
【0083】
様々な量の界面活性剤が水性インクジェットインク組成物中で使用され得る。いくつかの実施形態では、界面活性剤は、0.01重量%~2重量%の範囲の量で存在する。(ここで、重量%は、(界面活性剤の総重量)/(水性インクジェットインク組成物の総重量)*100を指す。)2種類以上の界面活性剤が使用される場合、これらの量は、界面活性剤の総量を指す。
【0084】
ワックス
水性インクジェットインク組成物はワックスを含み得る。例示的なワックスとしては、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、微結晶ワックス、ポリオレフィンワックス、モンタン系エステルワックス、及びカルナウバワックスが挙げられる。50℃~150℃の範囲の融点を有するワックスが使用され得る。カルナウバワックス及びパラフィンワックスに基づくナノスケール(例えば、1000nm以下、500nm以下、又は100nm以下の直径)のワックスエマルションが使用され得る。Michelmanのワックスが使用され得る(例えば、Michem Lube 103DI、124、124P135、156、180、182、190、270R、368、511、693、723、743、743P、及び985、並びにMichem Emulsion 24414、34935、36840、41740、43040、43240、44730、47950、48040M2、61355、62330、66035、67235、70750、71150、71152、91735、93235、93335、93935、及び94340)。Aquacer 2500、Aquacer 507、Aquacer 513、Aquacer 530、Aquacer 531、Aquacer 532、Aquacer 535、Aquacer 537、Aquacer 539、及びAquacer 593を含む、Bykからのワックスも使用され得る。いくつかの実施形態では、ワックスは、Michem Lube 190などのアニオン性ナノスケールワックスエマルションである。
【0085】
様々な量のワックスが水性インクジェットインク組成物中で使用され得る。しかしながら、一般に、水性インクジェットインク組成物の総固形分が0.1重量%~5重量%、0.1重量%~3重量%、又は0.1重量%~2重量%であるように量が選択される(ここで、重量%は、(固形分の総重量)/(水性インクジェットインク組成物の総重量)*100を指す)。
【0086】
添加剤
様々な添加剤を水性インクジェットインク組成物中で使用して、その特性を調整することができる。好適な添加剤には、殺生物剤;緩衝剤;及び消泡剤のうちの1種類以上が含まれる。
【0087】
様々な量の添加剤が水性インクジェットインク組成物中で使用され得る。いくつかの実施形態では、添加剤は、0.01重量%~5重量%の範囲の量で存在する(ここで、重量%は、(添加剤の総重量)/(水性インクジェットインク組成物の総重量)*100を指す)。2種類以上の添加剤が使用される場合、これらの量は、添加剤の総量を指す。
【0088】
樹脂粒子に関して上記で参照した任意の他の除外は、水性インクジェットインク組成物の実施形態(並びにラテックスの実施形態)に適用され得ることに留意されたい。
【0089】
いくつかの実施形態では、水性インクジェットインク組成物(並びにラテックス)はまた、ホウ酸、ジグリコール酸、分子キレート剤(例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、又はそれらの組み合わせなどの構成成分を有しない(すなわち、含まない)ものとして記載され得る。
【0090】
樹脂粒子を構築する樹脂/ポリマーは、既に重合されているため、水性インクジェットインク組成物(並びにラテックス)自体は、一般に、硬化性ではなく、そのため、開始剤を有しない(すなわち、含まない)。これは、樹脂粒子のポリマー鎖に組み込まれ得る少量の未反応開始剤又は反応した開始剤の存在を排除するものではない。同様に、水性インクジェットインク組成物(並びにラテックス)は、モノマーを有しない(すなわち、モノマーを含まない)ものとして記載され得る。
【0091】
いくつかの実施形態では、水性インクジェットインク組成物は、水、共媒体(例えば、湿潤剤)、顔料粒子、樹脂粒子、並びに任意選択的に、界面活性剤、ワックス、殺生物剤、緩衝剤、及び消泡剤のうちの1つ以上を含む(又はそれらからなる)。これらの実施形態のうちのいずれかでは、構成成分は、本明細書に開示される共媒体(例えば、湿潤剤)、顔料樹脂、樹脂粒子、界面活性剤、ワックス、及び添加剤のうちのいずれかから選択され得る。これらの実施形態のうちのいずれかでは、上に記載されるように構成成分の量が使用され得る。
【0092】
いくつかの実施形態では、水性インクジェットインク組成物は、水、共媒体、分散顔料粒子、及び樹脂粒子を含む(又はそれらからなる)。樹脂粒子は、疎水性モノマーと、架橋性アニオン性モノマーを含むアニオン性モノマーとの重合生成物を含み得る(又はそれからなり得る)。樹脂粒子中の重合架橋性アニオン性モノマーの総量は、少なくとも約1重量%(少なくとも約3重量%など)であり得、樹脂粒子中の重合アニオン性モノマーの総量は、少なくとも約15重量%(少なくとも約20重量%など)であり得る。分散顔料粒子は、ポリマー分散マゼンタ顔料粒子、ポリマー分散ブラック顔料粒子、又はそれらの両方などポリマー分散顔料粒子を含み得る(又はそれらからなり得る)。架橋性アニオン性モノマーは、ビス[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]ホスフェートなどの架橋性リン酸モノマーを含み得る(又はそれからなり得る)。疎水性モノマーは、スチレンを含み得(又はそれからなり得)、アニオン性モノマーは、メタクリル酸を含む(又はそれからなる)単官能性アニオン性モノマーを更に含み得る。重合生成物中には、反応性界面活性剤モノマーが含まれ得る。開始剤(又はその一部)は、各重合生成物の末端に組み込まれ得る。共媒体は、1,2-ヘキサンジオールを含み得る。共媒体は、プロピレングリコール、グリセロール、ヘキシレングリコール、又はそれらの組み合わせを更に含み得る(又はそれらからなり得る)。ポリマー分散顔料粒子は、水性インクジェットインク組成物中に、約4重量%~約10重量%(約4重量%~約8重量%など)の量で存在し得、樹脂粒子は、約1重量%~約5重量%(約1重量%~約3重量%など)の量で存在し得、1,2-ヘキサンジオールの量は、少なくとも約2重量%の量で存在し得る。
【0093】
水性インクジェットインク組成物は、所望の構成成分を所望の量で組み合わせて、混合することによって形成され得る。樹脂粒子は、上述のラテックス中に提供され得る。
【0094】
特性
水性インクジェットインク組成物は、それらの安定性を特徴とし得る。安定性は、特定の条件下で特定期間保管されている試料(例えば、水性インクジェットインク組成物)から、以下の実施例に記載するようなNano-flex機器を使用してMV粒径を測定することによって定量化することができる。一般に、初期値と比較してMV粒径の変化が小さいほど、安定性は大きい。本開示の目的のために、試料は、60℃で21日間保管された試料のMV粒径が約200nm未満(これは、約185nm未満及び約150nm未満を包含する)である場合、かつ保管された試料のMV粒径が、初期MV粒径と比較して約50nm以下(これは、約40nm以下及び約30nm以下を包含する)増加した場合に安定であるとみなされ得る。「初期MV粒径」とは、保管前の、試料調製日と同日に測定したMV粒径を意味する。安定性及びMV粒径に関して、一部の試料は、2種類以上の粒子、例えば、樹脂粒子及び顔料粒子の両方を含み得るため、これらは、試料内の特定種類の粒子とは対照的に、測定対象試料の特性であることに留意されたい。MV粒径が特定種類の粒子に起因し得るか否かにかかわらず、あらゆる粒子の凝集を最小限に抑えることが望ましく、したがって、2種類以上の粒子を含む試料のMV粒径を監視することは、試料安定性の有用な尺度を提供する。
【0095】
インクジェット印刷
水性インクジェットインク組成物は、印刷された画像を形成するために使用されてもよい。いくつかの実施形態では、このような方法は、開示された水性インクジェットインク組成物のうちのいずれかの液滴を基材上に射出して、その上に画像を形成することを含む。このような方法は、インクジェット印刷装置に水性インクジェットインク組成物を組み込むことを更に含み得る。印刷装置は、サーマルインクジェットプロセスを用いることができ、ノズル内のインク組成物は、画像的パターンで選択的に加熱され、それによってインク組成物の液滴が画像的パターンで射出される。代替的に、印刷装置は音響インクジェットプロセスを用いることができ、インク組成物の液滴は、音響ビームによって画像的パターンで射出される。更に別の実施形態では、印刷装置は圧電インクジェットプロセスを用いることができ、インク組成物の液滴は、圧電振動要素の振動によって画像的パターンで射出される。任意の好適な基材が用いられ得る。
【0096】
方法は、中間転写部材上に画像的パターンでインク液滴を射出することと、溶媒を部分的又は完全に除去するために画像を加熱することと、中間転写部材から最終記録基材に画像的パターンでインク組成物を転写することと、を含み得る。中間転写部材は、最終記録基材の温度よりも高く、かつ印刷装置内のインク組成物の温度よりも低い温度に加熱され得る。任意の好適な最終記録基材が用いられ得る。
【実施例0097】
以下の実施例は、本開示の様々な種類を更に定義するために提示される。これらの実施例は、例示のみを意図しており、本開示の範囲を限定することを意図するものではない。また、別途記載のない限り、割合及び百分率は重量による。
【0098】
実施例1:ラテックス組成物
以下の表1に示すように、8個のラテックス試料L1~L8を調製した。各ラテックス試料を形成するために使用した手順を、ラテックス試料L6を参照して説明する。最初に、2.75グラムのポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸アンモニウム(Hitenol AR-2020)及び77グラムの脱イオン水の反応性界面活性剤溶液を、反応器として機能する500mLの三つ口丸底フラスコ中で混合することによって調製した。次いで、混合物を窒素で30分間パージし、300RPMで撹拌しながら80℃に加熱した。
【0099】
1.75gのポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸アンモニウム(Hitenol AR-2020)、1gの1-ドデカンチオール(DDT)、4gのビス[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]ホスフェート(BMEP)、9gのメタクリル酸(MMA)、26gのn-ブチルアクリレート(BuA)、40gのスチレン(Sty)、及び32gの脱イオン水を混合し、乳化した。
【0100】
0.8gの過硫酸アンモニウム(APS)開始剤を10gの脱イオン水中で混合することによって、開始剤溶液を調製した。
【0101】
乳化モノマー混合物の5パーセント(5%)を反応器に供給し、5分間保持する。次いで、10gの開始剤溶液を添加し、10分間保持した。
【0102】
次に、乳化モノマー混合物の残りを2.5時間かけて反応器にゆっくり供給した。供給が終了したら、開始剤溶液の残りを反応器に添加し、反応を3時間継続させた。次に、反応器を室温に冷却した。モノマーエマルションのモノマーから重合された樹脂粒子を含む、得られたラテックス試料をメッシュを通して濾過し、pH8に中和した。
【0103】
Nano-flex(Microtrac,Inc.)を使用して、各ラテックス試料中の樹脂粒子の寸法を分析した。Nano-flexは、平均体積径を指すMV粒径を提供する。これは、Nano-flex機器の操作説明書に記載のように試料中の粒子の体積分布の平均径(ナノメートル単位)である。ラテックス試料L6については、MV粒径は約83nmであった。
【0104】
各ラテックス試料L1~L8で使用したモノマー及び量を以下の表1に示す。
【0105】
【表1】
aGlyはグリセロールホルマールメタクリレートである。
bNaSSはスチレンスルホン酸ナトリウム塩である。
cPEG250DAは、250g/molの分子量を有するポリ(エチレングリコール)ジアクリレートである。
d(アニオン性モノマーの総量)/(反応性界面活性剤モノマー以外の全モノマーの総量)
*100
【0106】
実施例2:湿潤剤溶液中の粒子安定性
この実施例では、2つの異なる湿潤剤溶液中の粒子安定性を評価した。具体的には、ラテックス試料L5、L6、及びL8を、プロピレングリコール及び水、又は1,2-ヘキサンジオール及び水のいずれかと混合し、60℃のオーブン内で保管した。粒子安定性の尺度として、MV粒径を3つの時点で、すなわち、初期(保管前の、湿潤剤溶液中のラテックス試料を調製したのと同じ日)、7日目(保管後7日)、及び21日目(保管後21日)に測定した。一般に、経時的なPSの変化を最小限に抑えることが望ましい。本開示の目的のために、試料は、21日目のPSが約200nm未満であり、かつ初期PSと比較して約50nm以下増加した場合に安定であるとみなすことができる。
【0107】
結果を以下の表2及び3に示す。モノマーBMEP及びPEG250DAの重量百分率は、表1に関して上述したとおりである。ラテックスの重量百分率は、(ラテックス試料中の樹脂粒子の総量)/(樹脂粒子、湿潤剤(プロピレングリコール又は1,2-ヘキサンジオール)、及び水の総量)*100で与えられる。湿潤剤の重量百分率は、(湿潤剤の総量)/(樹脂粒子、湿潤剤、及び水の総量)*100で与えられる。粒径(PS)は、上述したNano-flexによって測定されるMV粒径である。
【0108】
【0109】
【0110】
表2の結果は、プロピレングリコールの存在下で、各ラテックス試料L5、L6、L7の粒径が安定であることを示す。しかしながら、表3の結果は、1,2-ヘキサンジオールの存在下でラテックス試料L5及びL8の粒径が不安定であることを示す。対照的に、1,2-ヘキサンジオール中のラテックス試料L6の粒径は、驚くほど安定である。各ラテックス試料L5、L6、L7の樹脂粒子は、15重量%を超えるアニオン性モノマーの総量を有する(表1を参照)。ラテックス試料L6の樹脂粒子は、ラテックス試料L5及びL8の樹脂粒子と比較して少ないアニオン性モノマーの総量を有するが、ラテックス試料L6の樹脂粒子は、ラテックス試料L8と比較して多い量で架橋性アニオン性モノマーBMEP(ラテックス試料L5の架橋性非アニオン性モノマーPEG250DAに対して)を含む。これらの特徴により、1,2-ヘキサンジオールに対して予想外に大きな耐性を有するラテックス試料L6が得られる。
【0111】
実施例3:水性インクジェットインク組成物中の粒子安定性
この実施例では、様々な水性インクジェットインク組成物中の粒子安定性を評価した。具体的には、水性インクジェットインク組成物を、以下のもの、すなわち、顔料、ラテックス試料、水、並びに湿潤剤、1,2-ヘキサンジオール(HD)、プロピレングリコール(PG)、グリセロール(G)、及びヘキシレングリコール(HG)のうちの1つ以上を混合することによって調製した。水性インクジェットインク組成物を60℃のオーブン中で保管した。粒子安定性の尺度として、MV粒径を3つの時点で、すなわち、初期(保管前の、水性インクジェットインク組成物を調製したのと同じ日)、7日目(保管後7日)、及び21日目(保管後21日)に測定した。一般に、経時的なPSの変化を最小限に抑えることが望ましい。上述したように、本開示の目的のために、試料は、21日目のPSが約200nm未満であり、かつ初期PSと比較して約50nm以下増加した場合に安定であるとみなすことができる。
【0112】
比較的低い添加量でのマゼンタ顔料についての結果を表4に示す。表4において、マゼンタ顔料は、アニオン性ポリマー分散剤(KodakからPDPシリーズとして市販されているスチレンアクリレートポリマー分散剤)で粉砕されたポリマー分散顔料であるピグメントレッド269であった。比較的高い添加量でのマゼンタ顔料についての結果も表5に示す。表5において、2つのマゼンタ顔料を使用し、第1のマゼンタ顔料は、上記と同じアニオン性ポリマー分散剤で粉砕したポリマー分散顔料ピグメントレッド122であり、第2のマゼンタ顔料は、自己分散型顔料CAB-O-JET 480Vであった。ブラック顔料についての結果も表6に示す。表6において、ブラック顔料は、上記と同じアニオン性ポリマー分散剤で粉砕されたカーボンブラックであるポリマー分散顔料であった。顔料、ラテックス、及び湿潤剤の重量百分率は、表2及び表3に関して上述した式と同様の式から決定する。粒径(PS)は、上述したNano-flexによって測定されるMV粒径である。
【0113】
【0114】
表4の結果は、インクKM1(ラテックスなし)が直ちにゲル化し、したがって不安定であったことを示す。同様に、インクKM2及びKM3(アニオン性モノマーの総量が15重量%未満である樹脂粒子を有するラテックス試料L1、L2など)も不安定である。対照的に、インクKM4~KM13(アニオン性モノマーの総量が15重量%超である樹脂粒子を有するラテックス試料L6~L8など)は安定である。更に、インクKM5(アニオン性モノマーの総量が16.25重量%である樹脂粒子を有するラテックス試料L6など)をインクKM6(アニオン性モノマーの総量が22.5重量%である樹脂粒子を有するラテックス試料L8など)と比較すると、表4の結果は、比較的多量のマゼンタ顔料(色強度に望ましい)を使用しても、また、ヘキシレングリコール(印刷品質に望ましい)の存在下であっても、ラテックス試料L8がより多大の粒子安定性を与えることを示す。同様に、インクKM9(ラテックス試料L6など)をインクKM8(ラテックス試料L8など)と比較すると、表4の結果はまた、比較的少量のラテックスを使用した(インク吐出性にとって望ましい、総固形分を減少させる)場合であっても、ラテックス試料L8がより多大の粒子安定性を与えることを示す。表4の結果、例えば、インクKM10~KM13は、インク浸透に望ましい、大量の1,2-ヘキサンジオールを使用する場合であっても、大量のラテックスが粒子安定性を促進することを更に示す。1,2-ヘキサンジオールは、上記表3に関して上述したように、粒子安定性に干渉する傾向があるので、これは特に有利である。
【0115】
【0116】
上述したように、色強度を改善するためには、より高い顔料添加量が望ましい。しかしながら、より高い顔料添加量は、より高い総固形分をもたらし、インク吐出性に干渉し得る。表5の結果は、表4の結果と同様であり、ラテックス試料L8(22.5重量%のアニオン性モノマーの総量を有する樹脂粒子を有する)が、ラテックス試料L6(16.25重量%のアニオン性モノマーの総量を有する樹脂粒子を有する)と比較して、より多大の粒子安定性を与えることを示す。結果として、ラテックス試料L8は、わずか2.9重量%のラテックスを使用して、8.0重量%の総顔料添加量であっても安定性を提供することができる(インクKM17を参照)。
【0117】
【0118】
表6の結果は、インクKK1及びKK2(アニオン性モノマーの総量が9重量%未満である樹脂粒子を有し、架橋性酸性モノマーを有しない、ラテックス試料L4など)が不安定であることを示す。ラテックス試料L6~L8(アニオン性モノマーの総量が15重量%超である樹脂粒子を含み、架橋性酸性モノマーを含む)は、高顔料/低ラテックス添加量(インクKK9及びKD-K51を参照)であっても、より多大の粒子安定性を有するインク、具体的にはラテックス試料L8を提供する。最後に、ラテックス試料L8はまた、所望のインク吐出性をインクに与える。
【0119】
「例示的な」という語は、例、事例、又は例示としての役割を果たすことを意味するために本明細書で使用される。「例示的な」として本明細書で記載される任意の態様又は設計は、必ずしも他の態様又は設計に比べて好ましい又は有利であると解釈されない。更に、本開示の目的のために、特に指定がない限り、「a」又は「an」は、「1つ以上」を意味する。
【0120】
本開示におけるパラメータの全ての数値は、およそを意味する「約」という用語が先行する。これは、当業者に理解されるような関連パラメータの測定に固有の変動を包含する。これはまた、開示された数値及び開示された数値を四捨五入した値の正確な値も包含する。
【0121】
本開示の例示的な実施形態の前述の説明は、例示及び説明の目的のために提示される。網羅的であること、又は本開示を開示される正確な形態に限定することを意図するものではなく、上記の教示に照らして修正及び変形が可能であるか、又は本開示の実施から取得されてもよい。本開示の原理を説明するために、及び本開示の実用的な用途として、当業者が様々な実施形態において本開示を利用することを可能にするために、かつ企図される特定の用途に適した様々な修正を用いて、実施形態が選択及び記載される。本開示の範囲は、本明細書に添付の特許請求の範囲及びそれらの等価物によって定義されることが意図される。