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特開2024-173754欠陥検査方法、膜付き基材の製造方法、及び欠陥検査装置
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  • 特開-欠陥検査方法、膜付き基材の製造方法、及び欠陥検査装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173754
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】欠陥検査方法、膜付き基材の製造方法、及び欠陥検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/892 20060101AFI20241205BHJP
【FI】
G01N21/892 B
G01N21/892 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024084660
(22)【出願日】2024-05-24
(31)【優先権主張番号】P 2023091729
(32)【優先日】2023-06-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】堀田 貴隆
【テーマコード(参考)】
2G051
【Fターム(参考)】
2G051AA32
2G051AA37
2G051AB01
2G051AB02
2G051BA20
2G051BB07
2G051CA03
2G051CA04
2G051CA06
2G051CB05
2G051CC07
(57)【要約】
【課題】欠陥の検査精度を高めることのできる欠陥検査方法、膜付き基材の製造方法、及び欠陥検査装置を提供する。
【解決手段】検査対象の欠陥を検査する欠陥検査方法は、照射工程と観察工程とを備える。照射工程では、光源12を用いて検査対象Wの表面に光を照射する。観察工程では、検査対象Wにおける検査範囲A1を、検査対象Wの表面から離間した位置に設けられた観察部13から観察する。欠陥検査方法では、検査対象Wの表面を基準とした平面視で検査範囲A1と観察部13との間に光源12の中心を配置する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象の欠陥を検査する欠陥検査方法であって、
光源を用いて前記検査対象の表面に光を照射する照射工程と、
前記検査対象における検査範囲を、前記検査対象の前記表面から離間した位置に設けられた観察部から観察する観察工程と、を備え、
前記検査対象の前記表面を基準とした平面視で前記検査範囲と前記観察部との間に前記光源の中心を配置する、欠陥検査方法。
【請求項2】
前記観察工程では、前記光源と前記観察部との間を仕切るように配置され、前記光源から前記観察部に入射される直接光を遮る光遮蔽部材を用いる、請求項1に記載の欠陥検査方法。
【請求項3】
前記観察工程では、前記検査対象が載置される載置部と前記観察部との間、及び前記検査対象と前記観察部との間の少なくとも一方の間を仕切るように配置され、前記載置部及び前記検査対象の少なくとも一方の表面で正反射された反射光を遮る光遮蔽部材を用いる、請求項1に記載の欠陥検査方法。
【請求項4】
前記表面を基準とした側面視で、前記検査範囲の任意の一点と前記観察部とを結ぶ第1の直線と、前記検査範囲の任意の一点から前記観察部側に延びるとともに前記表面と垂直に交わる第2の直線とのなす角度は、10°以上、40°以下の範囲内である、請求項1に記載の欠陥検査方法。
【請求項5】
前記検査対象の前記表面の平均反射率は、波長が400nm以上、700nm以下の範囲において、40%以上である、請求項1に記載の欠陥検査方法。
【請求項6】
前記欠陥の寸法は、前記表面を基準とした平面視で、10μm以上、100μm以下の範囲内である、請求項1に記載の欠陥検査方法。
【請求項7】
前記検査対象は、基材と、前記基材に設けられた膜とを有する膜付き基材である、請求項1に記載の欠陥検査方法。
【請求項8】
前記検査対象は、基板と、前記基板上に設けられた反射膜とを有し、
前記検査対象の欠陥は、前記基板の傷、及び前記基板と前記反射膜との間に存在する異物の少なくとも一方を含む、請求項1に記載の欠陥検査方法。
【請求項9】
検査対象の欠陥を検査する欠陥検査方法であって、
光源を用いて前記検査対象の表面に光を照射する照射工程と、
前記検査対象における検査範囲を、光遮蔽体が有するスリットを通じて観察する観察工程と、を備え、
前記スリットは、前記検査対象の前記表面から離間した位置に設けられ、
前記検査対象の前記表面を基準とした平面視で前記検査範囲と前記スリットとの間に前記光源の中心を配置する、欠陥検査方法。
【請求項10】
基材と前記基材に設けられた膜とを有する膜付き基材の製造方法であって、
前記膜付き基材の欠陥を検査する検査工程を備え、
前記検査工程は、
光源を用いて前記膜付き基材の表面に光を照射する照射工程と、
前記膜付き基材における検査範囲を、前記膜付き基材の前記表面から離間した位置に設けられた観察部から観察する観察工程と、を備え、
前記膜付き基材の前記表面を基準とした平面視で前記検査範囲と前記観察部との間に前記光源の中心を配置する、膜付き基材の製造方法。
【請求項11】
基材と前記基材に設けられた膜とを有する膜付き基材の製造方法であって、
前記膜付き基材の欠陥を検査する検査工程を備え、
前記検査工程は、
光源を用いて前記膜付き基材の表面に光を照射する照射工程と、
前記膜付き基材における検査範囲を、光遮蔽体が有するスリットを通じて観察する観察工程と、を備え、
前記スリットは、前記膜付き基材の前記表面から離間した位置に設けられ、
前記膜付き基材の前記表面を基準とした平面視で前記検査範囲と前記スリットとの間に前記光源の中心を配置する、膜付き基材の製造方法。
【請求項12】
検査対象の欠陥を検査する欠陥検査装置であって、
前記検査対象の表面に光を照射する光源と、
前記検査対象の前記表面から離間した位置に設けられ、前記検査対象における検査範囲を観察する観察部と、を備え、
前記光源の中心は、前記検査対象の前記表面を基準とした平面視で前記検査範囲と前記観察部との間に配置される、欠陥検査装置。
【請求項13】
検査対象の欠陥を検査する欠陥検査装置であって、
前記検査対象の表面に光を照射する光源と、
前記光源の光を遮蔽する光遮蔽体と、を備え、
前記光遮蔽体は、前記検査対象の前記表面から離間した位置に設けられるスリットを有し、
前記検査対象における検査範囲は、前記スリットを通じて観察され、
前記光源の中心は、前記検査対象の前記表面を基準とした平面視で前記検査範囲と前記スリットとの間に配置される、欠陥検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、欠陥検査方法、膜付き基材の製造方法、及び欠陥検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されるように、欠陥検査方法として、ガラス板の表面に光を照射する工程と、光が照射されたガラス板の表面の画像に基づいて異物を検知する工程とを備えた方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-173106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように、ガラス板等の検査対象に異物等の欠陥が存在する場合、検査対象の表面に向けて照射された光は、欠陥により散乱する。このような欠陥に基づく散乱光を検知することで、検査対象の欠陥の有無を判定することが可能となる。ところが、検査対象の表面で正反射した光が欠陥に基づく散乱光に入り込むことで、欠陥の検査精度が低下するおそれがあった。
【0005】
本発明の目的は、欠陥の検査精度を高めることのできる欠陥検査方法、膜付き基材の製造方法、及び欠陥検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する欠陥検査方法、膜付き基材の製造方法、及び欠陥検査装置の各態様について説明する。
態様1の欠陥検査方法は、検査対象の欠陥を検査する欠陥検査方法であって、光源を用いて前記検査対象の表面に光を照射する照射工程と、前記検査対象における検査範囲を、前記検査対象の前記表面から離間した位置に設けられた観察部から観察する観察工程と、を備え、前記検査対象の前記表面を基準とした平面視で前記検査範囲と前記観察部との間に前記光源の中心を配置する。
【0007】
この方法によれば、検査対象の検査範囲に欠陥が含まれる場合、観察部では、検査範囲中の欠陥で散乱した散乱光の観察に基づいて欠陥の有無を判定することができる。このとき、上記のように光源を配置することで、検査対象の表面で正反射した光が観察部に入射することを抑えることができる。これにより、観察工程において、検査範囲中の欠陥で散乱した散乱光に基づく欠陥の有無の判定を容易に行うことができる。
【0008】
態様2の欠陥検査方法は、態様1において、前記観察工程では、前記光源と前記観察部との間を仕切るように配置され、前記光源から前記観察部に入射される直接光を遮る光遮蔽部材を用いてもよい。この方法によれば、観察工程において、欠陥に基づく散乱光の観察をより容易に行うことができる。
【0009】
態様3の欠陥検査方法は、態様1又は態様2において、前記観察工程では、前記検査対象が載置される載置部と前記観察部との間、及び前記検査対象と前記観察部との間の少なくとも一方の間を仕切るように配置され、前記載置部及び前記検査対象の少なくとも一方の表面で正反射された反射光を遮る光遮蔽部材を用いてもよい。この方法によれば、観察工程において、欠陥に基づく散乱光の観察をより容易に行うことができる。
【0010】
態様4の欠陥検査方法は、態様1から態様3のいずれか一つにおいて、前記表面を基準とした側面視で、前記検査範囲の任意の一点と前記観察部とを結ぶ第1の直線と、前記検査範囲の任意の一点から前記観察部側に延びるとともに前記表面と垂直に交わる第2の直線とのなす角度は、10°以上、40°以下の範囲内であってもよい。この角度が10°以上の場合、検査対象の表面で正反射する反射光が観察部で観察する像に入り込むことをより抑えることができる。この角度が40°以下の場合、観察部と、検査対象の欠陥との距離をより近づけることが可能となるため、観察部において、検査対象の欠陥に基づく散乱光の強度が得られ易い。
【0011】
態様5の欠陥検査方法では、態様1から態様4のいずれか一つにおいて、前記検査対象の前記表面の平均反射率は、波長が400nm以上、700nm以下の範囲において、40%以上であってもよい。このような検査対象であっても、上述したように表面で正反射した光が観察部に入射することを抑えることができるため、欠陥の有無の判定を容易に行うことができる。
【0012】
態様6の欠陥検査方法では、態様1から態様5のいずれか一つにおいて、前記欠陥の寸法は、前記表面を基準とした平面視で、10μm以上、100μm以下の範囲内であってもよい。このように比較的微細な欠陥であっても、欠陥の有無の判定を容易に行うことができる。
【0013】
態様7の欠陥検査方法では、態様1から態様6のいずれか一つにおいて、前記検査対象は、基材と、前記基材に設けられた膜とを有する膜付き基材であってもよい。
態様8の欠陥検査方法では、態様1から態様6のいずれか一つにおいて、前記検査対象は、基板と、前記基板上に設けられた反射膜とを有し、前記検査対象の欠陥は、前記基板の傷、及び前記基板と前記反射膜との間に存在する異物の少なくとも一方を含んでもよい。このような反射膜を有する検査対象の欠陥の有無の判定を容易に行うことができる。
【0014】
態様9の欠陥検査方法は、検査対象の欠陥を検査する欠陥検査方法であって、光源を用いて前記検査対象の表面に光を照射する照射工程と、前記検査対象における検査範囲を、光遮蔽体が有するスリットを通じて観察する観察工程と、を備え、前記スリットは、前記検査対象の前記表面から離間した位置に設けられ、前記検査対象の前記表面を基準とした平面視で前記検査範囲と前記スリットとの間に前記光源の中心を配置する。
【0015】
この方法によれば、検査対象の検査範囲に欠陥が含まれる場合、上記のスリットを通じた検査範囲の観察によって、検査範囲中の欠陥で散乱した散乱光の観察に基づいて欠陥の有無を判定することができる。このとき、上記のように光源を配置することで、検査対象の表面で正反射した光がスリットに入射することを抑えることができる。これにより、観察工程において、検査範囲中の欠陥で散乱した散乱光に基づく欠陥の有無の判定を容易に行うことができる。
【0016】
態様10の膜付き基材の製造方法は、基材と前記基材に設けられた膜とを有する膜付き基材の製造方法であって、前記膜付き基材の欠陥を検査する検査工程を備え、前記検査工程は、光源を用いて前記膜付き基材の表面に光を照射する照射工程と、前記膜付き基材における検査範囲を、前記膜付き基材の前記表面から離間した位置に設けられた観察部から観察する観察工程と、を備え、前記膜付き基材の前記表面を基準とした平面視で前記検査範囲と前記観察部との間に前記光源の中心を配置する。
【0017】
態様11の膜付き基材の製造方法は、基材と前記基材に設けられた膜とを有する膜付き基材の製造方法であって、前記膜付き基材の欠陥を検査する検査工程を備え、前記検査工程は、光源を用いて前記膜付き基材の表面に光を照射する照射工程と、前記膜付き基材における検査範囲を、光遮蔽体が有するスリットを通じて観察する観察工程と、を備え、前記スリットは、前記膜付き基材の前記表面から離間した位置に設けられ、前記膜付き基材の前記表面を基準とした平面視で前記検査範囲と前記スリットとの間に前記光源の中心を配置する。
【0018】
態様12の欠陥検査装置は、検査対象の欠陥を検査する欠陥検査装置であって、前記検査対象の表面に光を照射する光源と、前記検査対象の前記表面から離間した位置に設けられ、前記検査対象における検査範囲を観察する観察部と、を備え、前記光源の中心は、前記検査対象の前記表面を基準とした平面視で前記検査範囲と前記観察部との間に配置される。
【0019】
態様13の欠陥検査装置は、検査対象の欠陥を検査する欠陥検査装置であって、前記検査対象の表面に光を照射する光源と、前記光源の光を遮蔽する光遮蔽体と、を備え、前記光遮蔽体は、前記検査対象の前記表面から離間した位置に設けられるスリットを有し、前記検査対象における検査範囲は、前記スリットを通じて観察され、前記光源の中心は、前記検査対象の前記表面を基準とした平面視で前記検査範囲と前記スリットとの間に配置される。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、欠陥の検査精度を高めることのできるという効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、実施形態における欠陥検査装置を模式的に示す側面図である。
図2図2は、欠陥検査装置を模式的に示す平面図である。
図3図3は、欠陥検査装置の詳細を説明する側面図である。
図4図4は、欠陥検査装置の作用を説明する側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、欠陥検査方法、膜付き基材の製造方法、及び欠陥検査装置の一実施形態について図面を参照して説明する。なお、図面では、説明の便宜上、構成の一部を誇張又は簡略化して示す場合がある。また、各部分の寸法比率についても、実際と異なる場合がある。
【0023】
<欠陥検査装置>
図1に示すように、欠陥検査装置11は、検査対象Wの欠陥を検査する装置である。欠陥検査装置11は、検査対象Wの表面に光を照射する光源12と、検査対象Wにおける検査範囲A1を観察する観察部13とを備えている。観察部13は、検査対象Wの表面から離間した位置に配置されている。
【0024】
欠陥検査装置11は、第1光遮蔽部材14及び第2光遮蔽部材15を備えている。欠陥検査装置11は、検査対象Wを載置する載置部16を備えている。図面中のXYZ軸において、X軸とY軸で示されるXY平面は、検査対象Wの表面に沿った平面を表し、Z軸は、XY平面に対して鉛直方向を表している。
【0025】
(光源、検査範囲、及び観察部)
図2に示すように、光源12の中心12aは、検査対象Wの表面を基準とした平面視で検査範囲A1と観察部13との間に配置されている。図面では、検査範囲A1をドットハッチングで示している。検査範囲A1は、上記平面視でX軸に沿った第1検査範囲A1xと、Y軸に沿った第2検査範囲A1yとを有する。本実施形態の検査範囲A1の外縁の形状は、平面視で四角形状であるが、これに限定されない。検査範囲A1の外縁の形状は、例えば、四角形状以外の多角形状、円形状、楕円形状であってもよい。
【0026】
観察部13は、上記平面視でX軸に沿った第1観察範囲13xと、Y軸に沿った第2観察範囲13yとを有している。観察部13の第1観察範囲13xは、検査範囲A1の第1検査範囲A1xを観察できる範囲となる。観察部13の第2観察範囲13yは、検査範囲A1の第2検査範囲A1yを観察できる範囲となる。
【0027】
観察部13は、検査員が目視で観察する目視観察部であってもよいし、図示しない撮像装置を用いて検査対象Wを撮像する撮像部であってもよい。撮像装置としては、例えば、CCD、CMOS等の撮像素子を備えたカメラを用いることができる。撮像装置で撮像された画像は、図示しないコンピュータで処理することもできる。コンピュータは、コンピュータ本体と、ディスプレイとを備えている。コンピュータ本体は、例えば、画像処理部と、情報記憶部と、判定部とを備えている。画像処理部では、例えば、撮像装置で撮像された検査対象Wの画像に対して二値化処理や輝度の補正処理等の画像処理を必要に応じて行うようにすることができる。情報記憶部には、正常な検査対象Wのデータ(例えば、光強度データ曲線)や、輝度値等の閾値を予め記憶させることができる。判定部は、例えば、情報記憶部に記憶したデータに基づいて検査対象Wの欠陥の有無を判定する。判定部は、深層学習(ディープラーニング)による学習で構築された学習モデルを用いて、検査対象Wの欠陥の有無を判定するように構成することもできる。学習モデルは、例えば、ニューラルネットワークモデル等の人工知能(AI)モデルが挙げられる。コンピュータ本体は、プロセッサ、メモリ、ソフトウェア等により構成することができる。
【0028】
光源12としては、例えば、点光源、面光源、ライン光源等が挙げられる。光源12は、LED光源であることが好ましい。光源12の数は、単数であってもよいし、複数であってもよい。光源12は、白色光源であってもよいし、有色光源であってもよい。
【0029】
欠陥検査装置11は、光源12と検査対象Wとの間に配置される光拡散部材を備えていてもよい。光拡散部材は、光源12から検査対象Wに向けて照射される光を拡散する。
図3に示すように、検査対象Wの表面を基準とした側面視で、第1の直線L1と、第2の直線L2とのなす角度θ1は、10°以上、40°以下の範囲内であることが好ましい。第1の直線L1は、検査範囲A1の任意の一点P1と観察部13を結ぶ直線である。第2の直線L2は、検査範囲A1の任意の一点P1から観察部13側に延びるとともに検査対象Wの表面と垂直に交わる直線である。
【0030】
上記角度θ1が10°以上の場合、検査対象Wの表面で正反射する反射光が観察部13で観察する像に入り込むことをより抑えることができる。上記角度θ1が40°以下の場合、観察部13と、検査対象Wの欠陥との距離をより近づけることが可能となるため、観察部13において、検査対象Wの欠陥に基づく散乱光の強度が得られ易い。
【0031】
(載置部及び検査対象)
載置部16は、検査対象Wが載置される載置面を有している。検査対象Wの基材としては、例えば、ガラス、セラミックス、樹脂、金属等が挙げられる。検査対象Wの表面は、平坦面であることが好ましい。本実施形態の欠陥検査装置11は、光を反射し易い表面を有する検査対象Wの欠陥の検査に好適に用いることができる。検査対象Wの表面の平均反射率は、波長が400nm以上、700nm以下の範囲内において、40%以上であってもよい。
【0032】
検査対象Wは、膜付き基材であってもよい。膜付き基材は、基材と、基材に設けられた膜とを有する。膜としては、例えば、反射膜、保護膜等が挙げられる。成膜方法としては、例えば、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンビーム法、イオンプレーティング法、及びCVD法が挙げられる。
【0033】
検査対象Wは、例えば、基板と、基板上に設けられた反射膜とを有していてもよい。反射膜は、例えば、金属蒸着膜、誘電体多層膜等が挙げられる。
検査対象Wの欠陥としては、傷、異物等が挙げられる。検査対象Wが膜付き基材の場合、基材の傷、基材に付着した異物、膜の傷、膜に付着した異物等の欠陥を検査することができる。
【0034】
上記のように基板及び反射膜を有する検査対象Wの場合、基板の傷、基板と反射膜との間に存在する異物等の欠陥を検査することができる。欠陥検査装置11は、検査対象Wの表面を基準とした平面視で、10μm以上、100μm以下の範囲内の寸法の欠陥の検査に好適に用いることができる。
【0035】
(第1光遮蔽部材及び第2光遮蔽部材)
図2及び図4に示すように、第1光遮蔽部材14は、光源12と観察部13との間を仕切るように配置されている。第1光遮蔽部材14は、光源12から観察部13に入射される直接光を遮る。第2光遮蔽部材15は、検査対象Wと、観察部13との間を仕切るように配置されている。図4に示すように、第2光遮蔽部材15は、検査対象Wの表面で正反射された反射光R1を遮る。
【0036】
第1光遮蔽部材14及び第2光遮蔽部材15は、例えば、金属材料、光遮蔽材を含有する樹脂材料、光遮蔽層を有する樹脂材料等が挙げられる。
図1及び図2に示すように、第1光遮蔽部材14と第2光遮蔽部材15とは、スリット17aを有する光遮蔽体17を構成している。本実施形態のスリット17aは、第1光遮蔽部材14と第2光遮蔽部材15とが離間して配置されることで、第1光遮蔽部材14と第2光遮蔽部材15との隙間に形成されている。図2に示すように、スリット17aの形状は、例えば、X軸とZ軸との両方に交差する方向に沿って延びる形状である。本実施形態のスリット17aの形状は、Y軸に沿って延びる形状である。スリット17aの長さは、検査範囲A1におけるY軸に沿った第2検査範囲A1yに応じて設定することができる。スリット17aの長さ寸法は、第2検査範囲A1yよりも長いことが好ましい。スリット17aの幅寸法は、例えば、5mm以上、30mm以下の範囲内である。
【0037】
図1に示すように、スリット17aは、検査対象Wの表面から離間した位置に配置されている。検査対象Wにおける検査範囲A1は、スリット17aを通じて観察される。図2に示すように、光源12の中心12aは、検査対象Wの表面を基準とした平面視で検査範囲A1とスリット17aとの間に配置されている。また、スリット17aは、検査対象Wの表面を基準とした平面視で観察部13と光源12との間に配置されている。
【0038】
<欠陥検査方法>
次に、検査対象Wの欠陥を検査する欠陥検査方法を主な作用とともに説明する。
欠陥検査方法は、照射工程と、観察工程とを備えている。照射工程では、光源12を用いて検査対象Wの表面に光を照射する。観察工程では、検査対象Wにおける検査範囲A1を、検査対象Wの表面から離間した位置に設けられた観察部13から観察する。欠陥検査方法では、検査対象Wの表面を基準とした平面視で検査範囲A1と観察部13との間に光源12の中心12aを配置する。この方法によれば、検査対象Wの検査範囲A1に欠陥が含まれる場合、観察部13では、検査範囲A1中の欠陥で散乱した散乱光の観察に基づいて欠陥の有無を判定することができる。このとき、上記のように光源12を配置することで、検査対象Wの表面で正反射した光が観察部13に入射することを抑えることができる。これにより、観察工程において、検査範囲A1中の欠陥で散乱した散乱光に基づく欠陥の有無の判定を容易に行うことができる。
【0039】
本実施形態の観察工程では、検査対象Wにおける検査範囲A1を、上述したように光遮蔽体17が有するスリット17aを通じて観察することができる。
本実施形態の検査対象Wの表面積は、検査範囲A1の面積よりも大きい。このため、本実施形態の欠陥検査方法では、検査対象WをX軸に沿って相対移動させる移動工程の後に観察工程をさらに行うことで、検査対象Wの表面側の全体にわたって欠陥の有無を検査する。なお、移動工程では、例えば、検査対象Wを移動させずに、欠陥検査装置11の光源12、観察部13等を移動させてもよい。すなわち、移動工程では、検査対象Wと、欠陥検査装置11の光源12、観察部13等とを相対移動させればよい。
【0040】
<膜付き基材の製造方法>
膜付き基材の製造方法は、膜付き基材の欠陥を検査する検査工程を備える。検査工程は、照射工程と観察工程とを備えている。膜付き基材の製造方法における照射工程及び観察工程は、上記欠陥検査方法で説明した照射工程及び観察工程と同様に行うことができる。
【0041】
膜付き基材は、基材に膜を設ける成膜工程によって得られる。すなわち、膜付き基材の製造方法における検査工程は、成膜工程の後に行われる。成膜工程では、上述した成膜方法を用いることができる。検査工程において欠陥に関する所定の評価基準により合格と判定された膜付き基材は、例えば、次工程に搬送される。
【0042】
<試験例>
次に、試験例について説明する。
検査対象Wとして、ガラス基板に反射膜を積層したサンプルS11,S12,S21,S22,S31,S32を準備した。サンプルS11,S21,S31の上記平均反射率は、50%である。サンプルS12,S22,S32の上記平均反射率は、90%である。
【0043】
各サンプルは、傷又は異物の欠陥を有している。サンプルS11,S12は、反射膜が設けられているガラス基板の表面に、100μmの傷を有するものである。サンプルS21,S22は、反射膜が設けられているガラス基板の表面に、50μmの異物が存在するものである。サンプルS31,S32は、反射膜が設けられているガラス基板の表面に、10μmの傷を有するものである。
【0044】
(試験例1)
試験例1では、本実施形態の欠陥検査装置11を用いて、サンプルS11,S12,S21,S22,S31,S32の欠陥検査を行った。この欠陥検査では、検査対象Wの反射膜側となる表面に対して上記照射工程と観察工程とを行った。その結果、サンプルS11,S12,S21,S22,S31,S32のいずれの欠陥についても容易に視認することができた。
【0045】
(試験例2)
試験例2では、欠陥検査装置11の光源12の位置を変更した欠陥検査装置を準備した。この試験例2の欠陥検査装置は、検査対象Wの表面を基準とした平面視で観察部と光源との間に検査対象Wの検査範囲A1が配置されている。この欠陥検査装置を用いて、試験例1と同様にサンプルS11,S12,S21,S22,S31,S32の欠陥検査を行った。その結果、サンプルS11,S12,S21,S22,S31,S32のいずれの欠陥についても視認することができなかった。
【0046】
<本実施形態の作用及び効果>
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
(1)検査対象Wの欠陥を検査する欠陥検査方法は、照射工程と観察工程とを備えている。照射工程では、光源12を用いて検査対象Wの表面に光を照射する。観察工程では、検査対象Wにおける検査範囲A1を、検査対象Wの表面から離間した位置に設けられた観察部13から観察する。欠陥検査方法では、検査対象Wの表面を基準とした平面視で検査範囲A1と観察部13との間に光源12の中心12aを配置する。この方法によれば、上述したように、観察工程において、検査範囲A1中の欠陥で散乱した散乱光に基づく欠陥の有無の判定を容易に行うことができる。従って、欠陥の検査精度を高めることができる。
【0047】
(2)欠陥検査方法の観察工程では、光源12と観察部13との間を仕切るように配置される第1光遮蔽部材14を用いている。第1光遮蔽部材14は、光源12から観察部13に入射される直接光を遮る。この場合、観察工程では、欠陥に基づく散乱光の観察をより容易に行うことができる。従って、欠陥の検査精度をより高めることができる。
【0048】
(3)欠陥検査方法の観察工程では、検査対象Wと観察部13との間を仕切るように配置される第2光遮蔽部材15を用いている。第2光遮蔽部材15は、検査対象Wの表面で正反射された反射光R1を遮る。この場合、観察工程では、欠陥に基づく散乱光の観察をより容易に行うことができる。従って、欠陥の検査精度をより高めることができる。
【0049】
(4)欠陥検査方法において、第1の直線L1と第2の直線L2とのなす角度θ1は、10°以上、40°以下の範囲内であることが好ましい。この場合、検査対象Wの表面で正反射する反射光が観察部13で観察する像に入り込むことをより抑えることができる。また、観察部13において、検査対象Wの欠陥に基づく散乱光の強度が得られ易い。従って、欠陥の検査精度をより高めることができる。
【0050】
(5)検査対象Wの表面の上記平均反射率が40%以上の場合、観察工程において、欠陥で散乱した散乱光が、検査対象Wの表面で正反射する反射光R1の影響を受け易い。このような検査対象Wであっても、本実施形態の欠陥検査方法によれば、上述したように検査対象Wの表面で正反射した光が観察部13に入射することを抑えることができるため、欠陥の有無の判定を容易に行うことができる。
【0051】
(6)本実施形態の欠陥検査方法では、比較的微細な欠陥であっても、欠陥の有無の判定を容易に行うことができる。このため、本実施形態の欠陥検査方法は、表面を基準とした平面視で、10μm以上、100μm以下の範囲内である寸法の欠陥の検査に好適である。
【0052】
(7)本実施形態の欠陥検査方法は、例えば、基板と基板上に設けられた反射膜とを有する検査対象Wの欠陥検査に好適である。特に、このような反射膜を有する検査対象Wにおいて、基板の傷、及び基板と反射膜との間に存在する異物の少なくとも一方を含む欠陥であっても、欠陥の有無の判定を容易に行うことが可能となる。
【0053】
(8)検査対象Wの欠陥を検査する欠陥検査方法は、照射工程と観察工程とを備えている。照射工程では、光源12を用いて検査対象Wの表面に光を照射する。観察工程では、検査対象Wにおける検査範囲A1を、光遮蔽体17が有するスリット17aを通じて観察する。光遮蔽体17のスリット17aは、検査対象Wの表面から離間した位置に設けられている。欠陥検査方法では、検査対象Wの表面を基準とした平面視で検査範囲A1とスリット17aとの間に光源12の中心12aを配置する。この方法によれば、検査対象Wの検査範囲A1に欠陥が含まれる場合、上記のスリット17aを通じた検査範囲A1の観察によって、検査範囲A1中の欠陥で散乱した散乱光の観察に基づいて欠陥の有無を判定することができる。このとき、上記のように光源を配置することで、検査対象の表面で正反射した光がスリット17aに入射することを抑えることができる。これにより、観察工程において、検査範囲中の欠陥で散乱した散乱光に基づく欠陥の有無の判定を容易に行うことができる。従って、欠陥の検査精度を高めることができる。また、上記のようにスリット17aを有する光遮蔽体17を用いる観察工程では、光遮蔽体17の配置によって観察する位置を容易に規定することができる。また、光遮蔽体17の配置によって観察部13に入光する不要な光を遮ることが可能となる。
【0054】
<変更例>
上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0055】
・欠陥検査方法において、第1光遮蔽部材14及び第2光遮蔽部材15の少なくとも一方を用いずに観察工程を行うこともできる。
・欠陥検査方法において、光遮蔽体17は、第1光遮蔽部材14と第2光遮蔽部材15との2つの光遮蔽部材から構成されているが、3つ以上の光遮蔽部材から構成されてもよい。
【0056】
・欠陥検査方法において、光遮蔽体17は、一つの光遮蔽部材から構成されてもよい。この場合、スリット17aは、光遮蔽体17(光遮蔽部材)を貫通する貫通孔、光遮蔽体17(光遮蔽部材)を切り欠く切り欠き凹部等により構成することができる。
【0057】
・スリット17aを有する光遮蔽体17の全体形状、配置等を変更することもできる。光遮蔽体17は、例えば、光源12から観察部13に入射される直接光を遮らずに、検査対象Wの表面で正反射された反射光R1のみを遮るように構成されていてもよい。
【0058】
・上記検査対象Wは、欠陥検査装置11の平面視で光源12の中心12aよりも観察部13側に延びるように配置されているが、このような検査対象Wの配置に限定されない。例えば、検査対象Wは、欠陥検査装置11の平面視で光源12の中心12aよりも観察部13側に配置されていなくてもよい。このとき、欠陥検査装置11の平面視で光源12の中心12aよりも観察部13側で載置部16の表面が露出するため、載置部16の表面で正反射された反射光が観察部13に入光する場合がある。観察工程において、欠陥に基づく散乱光の観察をより容易に行うという観点から、載置部16と観察部13との間を仕切るように配置されることで、載置部16の表面で正反射された反射光を遮る第3光遮蔽部材を用いることが好ましい。なお、観察工程において、載置部16及び検査対象Wの表面で正反射した反射光が観察部13に入光する場合は、上記第2光遮蔽部材15と第3光遮蔽部材とを併用することが好ましい。
【0059】
・欠陥検査方法の観察工程は、光源12、観察部13等と、検査対象Wとを相対移動させながら行うこともできる。すなわち、例えば、検査対象WをX軸方向に沿って搬送する搬送工程中に観察工程を行うこともできる。
【0060】
・欠陥検査方法は、検査対象Wの表面側の全体を検査する方法に限定されず、検査対象Wの表面側の一部を検査する方法であってもよい。
【符号の説明】
【0061】
11…欠陥検査装置
12…光源
12a…中心
13…観察部
14…第1光遮蔽部材
15…第2光遮蔽部材
16…載置部
17…光遮蔽体
17a…スリット
A1…検査範囲
L1…第1の直線
L2…第2の直線
P1…検査範囲の任意の一点
R1…反射光
W…検査対象
θ1…角度
図1
図2
図3
図4