IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東レ株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-被膜除去装置および被膜除去方法 図1
  • 特開-被膜除去装置および被膜除去方法 図2
  • 特開-被膜除去装置および被膜除去方法 図3
  • 特開-被膜除去装置および被膜除去方法 図4
  • 特開-被膜除去装置および被膜除去方法 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173758
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】被膜除去装置および被膜除去方法
(51)【国際特許分類】
   B29B 17/02 20060101AFI20241205BHJP
【FI】
B29B17/02 ZAB
B29B17/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024085285
(22)【出願日】2024-05-27
(31)【優先権主張番号】P 2023090639
(32)【優先日】2023-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 維允
(72)【発明者】
【氏名】吉田 昌平
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 一敬
【テーマコード(参考)】
4F401
【Fターム(参考)】
4F401AA22
4F401AD01
4F401AD07
4F401BA13
4F401CA31
4F401CA41
4F401CA48
4F401CA49
4F401CB33
4F401CB34
4F401CB35
4F401EA46
4F401FA05Z
4F401FA20Z
(57)【要約】
【課題】
基材フィルムの少なくとも片面に水溶性樹脂を含む被膜を有する被膜付きフィルムの表面から、ごく少量の溶媒を用いて効率的に被膜を除去できる被膜除去方法を提供する。-
【解決手段】
本発明の被膜除去方法は、基材フィルムの少なくとも片面に水溶性樹脂を含む被膜を有する被膜付きフィルムから当該被膜を取り除く方法であって、筐体中で、被膜付きフィルムの被膜の表面に水を主成分とする洗浄液を付与した後に、被膜付きフィルムから洗浄液を含んだ被膜を取り除く。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムの少なくとも片面に水溶性樹脂を含む被膜を有する被膜付きフィルムから当該被膜を取り除く装置であって、
搬送される前記被膜付きフィルムが入ってくる入口と前記被膜の一部または全部が取り除かれた前記基材フィルムが出て行く出口を有する筐体と、
前記筐体中に配置され、前記被膜付きフィルムの前記被膜の表面に水を主成分とする洗浄液を付与する洗浄液付与機構と、
前記筐体中に前記洗浄液付与機構よりも前記被膜付きフィルムの搬送方向下流側に配置され、前記洗浄液が前記被膜の表面に付与された前記被膜付きフィルムから、洗浄液を含んだ被膜を取り除く除去機構と、
を備えた、被膜除去装置。
【請求項2】
基材フィルムの片面のみに水溶性樹脂を含む被膜を有する被膜付きフィルムから当該被膜を取り除く装置であって、
前記筐体が、前記被膜付きフィルムに対して前記被膜を有する面側とは反対側から見て、前記被膜付きフィルムの少なくとも一部を覆っていない、請求項1の被膜除去装置。
【請求項3】
前記筐体が、前記入口に当該入口に入ってくる前記被膜付きフィルムに接するシール機構と、前記出口に当該出口から出ていく前記基材フィルムに接するシール機構と、を有する、請求項1の被膜除去装置。
【請求項4】
前記洗浄液付与機構が前記被膜付きフィルムに前記洗浄液を付与する位置から前記除去機構が前記被膜付きフィルムに接触する位置までの、前記被膜付きフィルムの搬送距離が100mm以上2000mm以下である、請求項1~3のいずれかの被膜除去装置。
【請求項5】
基材フィルムの少なくとも片面に水溶性樹脂を含む被膜を有する被膜付きフィルムから当該被膜を取り除く方法であって、
搬送されている前記被膜付きフィルムが入ってくる入口と前記被膜の一部または全部が取り除かれた前記基材フィルムが出て行く出口を有する筐体中で、
前記被膜付きフィルムの前記被膜の表面に水を主成分とする洗浄液を付与した後に、前記被膜付きフィルムから前記洗浄液を含んだ前記被膜を取り除く、
被膜除去方法。
【請求項6】
基材フィルムの片面のみに水溶性樹脂を含む被膜を有する被膜付きフィルムから当該被膜を取り除く方法であって、
前記筐体が、前記被膜付きフィルムに対して前記被膜を有する面側とは反対側から見て、前記被膜付きフィルムの少なくとも一部を覆っていない、請求項5の被膜除去方法。
【請求項7】
前記洗浄液を付与してから前記被膜を取り除くまでの前記被膜付きフィルムの搬送距離が100mm以上2000mm以下である、請求項5または6の被膜除去方法。
【請求項8】
前記洗浄液を付与してから前記被膜を取り除くまでの時間が0.5秒以上100秒以下である、請求項5または6の被膜除去方法。
【請求項9】
前記被膜が硬化型シリコーン樹脂を含む、請求項5または6の被膜除去方法。
【請求項10】
前記洗浄液を含む被膜の複素粘性率が500Pa・s以上5000Pa・s以下の状態で前記被膜を取り除く、請求項5または6の被膜除去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂フィルムの表面の被膜を効率よく除去することが可能な除去方法および除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックは様々な分野に利用されている一方、マイクロプラスチックなど海洋汚染の原因物とされ、プラスチックによる環境負荷低減が急務となっている。
【0003】
また近年、IoT(Internet of Things)の進化により、コンピュータやスマートフォンに搭載されるCPUなどの電子デバイスが増加し、それに伴い、電子デバイスを駆動するために必要な積層セラミックコンデンサー(MLCC)の数も急激に増加している。このMLCCの一般的な製造方法は、プラスチックの基材フィルム上に離型層を形成した離型フィルムをキャリアシートとして使用し、該離型フィルム上にセラミックグリーンシート層を形成する工程と、該セラミックグリーンシート層を剥離してセラミックグリーンシートとする工程がある。この工程において、セラミックシートが剥離された離型フィルムは不要物として廃棄されることとなる。
【0004】
すなわち、近年のMLCC製造数量の急激な増加に伴う離型フィルムの廃棄物としての増大が環境問題になっており、基材フィルムの再利用に向けた取り組みが活発化してきている。離型フィルムに含まれる離型層の成分は、離型性の観点から、一般的には基材フィルムを構成する成分とは異なる組成であるため、離型層が付いた離型フィルムをそのまま再溶融して再生フィルムを製膜した場合、離型層の成分が異物として存在するため、安定製膜をすることができない。
【0005】
特許文献1では、離型フィルムから離型成分を除去する方法として、基材フィルムと離型層との間に水溶性樹脂層を形成した離型フィルムを使用して、温水槽に2秒以上浸漬させた後に、離型フィルム表面をブラシロールで擦過させることで離型層を除去する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004-363140号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示されている被膜除去の方法は、温水槽内に水溶性樹脂層が溶出するため、処理時間の経過とともに温水中の樹脂濃度が上昇して、初期の除去能力を継続して発現することができないという問題がある。樹脂濃度の上昇を抑制するために、水の供給量を増大する手法を採用した場合でも、水の供給量とともに廃水量も増大するため、洗浄コストが大幅に高くなるだけでなく、環境負荷が著しく大きくなる、という問題がある。
【0008】
そこで本発明は、使用後の被膜付きフィルムから再溶融しても安定して再生フィルムが製膜できる基材フィルムを得るために、基材フィルムの少なくとも片面に水溶性樹脂を含む被膜を有する被膜付きフィルムの表面から、ごく少量の溶媒を用いて水溶性樹脂を溶解し、効率的に被膜を取り除ける被膜除去方法、および被膜除去装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
[1] 上記課題を解決する本発明の被膜除去方法は、基材フィルムの少なくとも片面に水溶性樹脂を含む被膜を有する被膜付きフィルムから当該被膜を取り除く方法であって、
搬送されている上記被膜付きフィルムが入ってくる入口と上記被膜の一部または全部が取り除かれた上記基材フィルムが出て行く出口を有する筐体中で、
上記被膜付きフィルムの上記被膜の表面に水を主成分とする洗浄液を付与した後に、上記被膜付きフィルムから上記洗浄液を含んだ上記被膜を取り除く。
【0010】
また、本発明の被膜除去方法は、以下の[2]~[6]のいずれかであることが好ましい。
[2] 基材フィルムの片面のみに水溶性樹脂を含む被膜を有する被膜付きフィルムから当該被膜を取り除く方法であって、
上記筐体が、上記被膜付きフィルムに対して上記被膜を有する面側とは反対側から見て、上記被膜付きフィルムの少なくとも一部を覆っていない、上記[1]の被膜除去方法。
[3] 上記洗浄液を付与してから上記被膜を取り除くまでの上記被膜付きフィルムの搬送距離が100mm以上2000mm以下である、上記[1]または[2]の被膜除去方法。
[4] 上記洗浄液を付与してから上記被膜を取り除くまでの時間が0.5秒以上100秒以下である、上記[1]~[3]のいずれかの被膜除去方法。
[5] 上記被膜が硬化型シリコーン樹脂を含む、上記[1]~[4]のいずれかの被膜除去方法。
[6] 上記洗浄液を含む被膜の複素粘性率が500Pa・s以上5000Pa・s以下の状態で上記被膜を取り除く、上記[1]~[5]のいずれかの被膜除去方法。
【0011】
[7] 上記課題を解決する本発明の被膜剥除去置は、基材フィルムの少なくとも片面に水溶性樹脂を含む被膜を有する被膜付きフィルムから当該被膜を取り除く装置であって、
搬送される上記被膜付きフィルムが入ってくる入口と上記被膜の一部または全部が取り除かれた上記基材フィルムが出て行く出口を有する筐体と、
上記筐体中に配置され、上記被膜付きフィルムの上記被膜の表面に水を主成分とする洗浄液を付与する洗浄液付与機構と、
上記筐体中に上記洗浄液付与機構よりも上記被膜付きフィルムの搬送方向下流側に配置され、上記洗浄液が上記被膜の表面に付与された上記被膜付きフィルムから、洗浄液を含んだ被膜を取り除く除去機構と、を備えている。
【0012】
また、本発明の被膜除去装置は、以下の[8]~[10]のいずれかの態様であることが好ましい。
[8] 基材フィルムの片面のみに水溶性樹脂を含む被膜を有する被膜付きフィルムから当該被膜を取り除く装置であって、
上記筐体が、上記被膜付きフィルムに対して上記被膜を有する面側とは反対側から見て、上記被膜付きフィルムの少なくとも一部を覆っていない、上記[7]の被膜除去装置。
[9] 上記筐体が、上記入口に当該入口に入ってくる上記被膜付きフィルムに接するシール機構と、上記出口に当該出口から出ていく上記基材フィルムに接するシール機構と、を有する、上記[7]または[8]の被膜除去装置。
[10] 上記洗浄液付与機構が上記被膜付きフィルムに上記洗浄液を付与する位置から上記除去機構が上記被膜付きフィルムに接触する位置までの、上記被膜付きフィルムの搬送距離が100mm以上2000mm以下である、上記[7]~[9]のいずれかの被膜除去装置。
【発明の効果】
【0013】
本発明の被膜除去方法および被膜除去装置によれば、基材フィルムの少なくとも片面に水溶性樹脂を含む被膜を有する被膜付きフィルムから、少量の洗浄液で効率的に被膜を取り除くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1の実施形態の除去装置の概略図である。
図2】本発明の第2の実施形態の除去装置の概略図である。
図3】本発明の第3の実施形態の除去装置の概略図である。
図4】本発明とは異なる実施形態の除去装置の概略図である。
図5】本発明の第4の実施形態の除去装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明者らは、基材フィルムの少なくとも片面に水溶性樹脂を含む被膜を有する被膜付きフィルムの表面から、ごく少量の洗浄液を用いて、効率的に被膜を取り除く方法を鋭意検討した結果、次のような被膜付きフィルムの被膜除去方法と被膜除去装置を見出すに至った。
【0016】
[対象となる被膜付きフィルム]
本発明の被膜除去方法は、基材フィルムの少なくとも片面に水溶性樹脂を含む被膜を有する被膜付きフィルムを対象として、基材フィルムから洗浄液を含んだ被膜を取り除く方法である。
【0017】
対象となる被膜付きフィルムは、環境への負荷等を考慮した水溶性樹脂を含む被膜を有する全ての被膜付きフィルムが対象となり得る。中でも水溶性樹脂として、水溶性のポリエステル系樹脂、ポリエステルウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、エチレンアイオノマー系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリビニルピロリドン系樹脂、エチレン-ビニルアルコール系樹脂、でんぷんのうちの少なくとも1種を主たる成分とするものがより好ましい。
【0018】
水溶性樹脂を含む被膜は、水溶性樹脂を含む単層体であっても、水溶性樹脂を含む2つ以上の層の積層体であっても、水溶性樹脂を含む層と水溶性樹脂を含まない層の積層体であってもよい。
【0019】
また、被膜の一部に水溶性樹脂のほかに離型成分を含む被膜付き離型フィルムが特に好ましく、効率的に被膜除去の効果を発現することができる。ここでいう離型成分とは、被膜表面の洗浄液に対する接触角を大きく、すなわち、被膜の表面エネルギーを小さくする成分であり、例えば、ジメチルシロキサンを主骨格とする硬化型シリコーン樹脂化合物、長鎖アルキル基を有する化合物、フッ素を有する化合物が挙げられる。被膜は水溶性樹脂と離型成分とを含む層でもよいし、水溶性樹脂を含む層と離型成分を含む層が積層されていてもよい。積層された被膜の場合には、基材フィルムの直上に水溶性樹脂を含む層、ついで最表面に離型成分を含む層が形成されていることが好ましく、離型成分には洗浄液として好適に使用することができる水の透過性が高いジメチルシロキサンを主骨格とする硬化型シリコーン樹脂化合物を用いるのが特に好ましい。
【0020】
[被膜除去方法]
本発明の被膜除去方法は、搬送されている被膜付きフィルムが入ってくる入口と被膜の一部または全部が取り除かれた基材フィルムが出て行く出口を有する筐体中で、被膜付きフィルムの被膜の表面に水を主成分とする洗浄液を付与した後に、被膜付きフィルムから洗浄液を含んだ上記被膜を取り除く方法である。
【0021】
本発明に対象となる被膜付きフィルムに水を主成分とする洗浄液を付与すると、水溶性樹脂である被膜に洗浄液が吸収され、被膜が流動しやすくなる結果、その後に被膜付きフィルムから被膜を取り除くことが可能となる。被膜付きフィルムの被膜が、水溶性樹脂である被膜の基材フィルムとは反対の面にジメチルクロキサンを主骨格とする硬化型シリコーン樹脂化合物が設けられている場合、水溶性樹脂である被膜に効率よく水を主成分とする洗浄液を吸収させることが特に重要となる。この場合、水溶性樹脂である被膜への洗浄液の吸収効率は、洗浄液がジメチルシロキサンを主骨格とする硬化型シリコーン樹脂からなる被膜に洗浄液が一定の時間とどまることが重要であり、周囲の湿度が重要となる。つまり、被膜付きフィルムの周囲の湿度を一定かつ高く保持することで付与した洗浄液が蒸発や結露することなく被膜付きフィルムにとどまることが可能となる。そのため、被膜付きフィルムの被膜の表面に水を主成分とする洗浄液を付与する工程と、被膜付きフィルムから洗浄液を含んだ被膜を取り除く工程を、搬送されている被膜付きフィルムが入ってくる入口と被膜の一部または全部が取り除かれた基材フィルムが出て行く出口を有する筐体中で行うことが重要である。
【0022】
本発明において、筺体中に拡散する洗浄液が被膜付きフィルムの被膜を有する面とは反対の面に付着すると、被膜付きフィルムの搬送性が低下する場合がある。そのため、筺体中に拡散する洗浄液が被膜付きフィルムの被膜を有する面とは反対の面に付着することを防ぐため、筺体は、被膜付きフィルムの被膜を有する面とは反対の面一部を解放していることが好ましい。言い換えると、筐体は、被膜付きフィルムに対して被膜を有する面側とは反対側から見て、被膜付きフィルムの一部を覆っていないことが好ましい。さらに筺体は、被膜付きフィルムの被膜を有する面とは反対の面のすべてを解放していることがより好ましい。言い換えると、筐体は、被膜付きフィルムに対して被膜を有する面側とは反対側から見て、被膜付きフィルムのすべてを覆っていないことがより好ましい。
【0023】
本発明において、洗浄液を付与してから被膜を取り除くまでの時間が0.5秒以上100秒以下であることが好ましい。洗浄液を付与してから被膜を取り除くまでの時間が上述の範囲であれば、洗浄液が被膜に付着した後、被膜に洗浄液が十分に吸収され、かつ吸収された洗浄液が蒸発することなく、被膜の流動性が保たれるため、被膜の除去性が向上する。ここで、洗浄液を付与した時点とは、搬送されている被膜付きフィルムの垂直方向において、被膜付きフィルムと、洗浄液付与機構の洗浄液が吐出される部分とが最も近接する最初の時点のことをいう。また、被膜付きフィルムから被膜を取り除く時点とは、被膜付きフィルムと、被膜除去機構が接するとが接する時点のことをいう。
【0024】
上述の通り、被膜に洗浄液を効率よく吸収させる観点から、洗浄液を付与してから被膜を取り除くまでの被膜付きフィルムの搬送距離は、100mm以上2000mm以下であることが好ましい。搬送距離が100mm以上であると、本発明の被膜付きフィルムからの被膜の除去を搬送しながら実施する場合、被膜付きフィルムに付与した洗浄液を被膜へ吸収させるために必要な時間を確保しつつ、搬送性を良好にすることが可能となり、被膜の除去性が良好となる。また、搬送距離が2000mm以下であれば、被膜付きフィルムに吸収された洗浄液が搬送中に蒸発や結露することなく被膜除去機構に到達することができるため、被膜の除去性が良好となる。
【0025】
本発明の被膜付きフィルムからの被膜の除去は、被膜の複素粘性率が100Pa・s以上5000Pa・s以下の状態で実施されることが好ましい。複素粘性とは、その物体の流動性を表す指標であり、値が大きいほど粘性、あるいは弾性が強いものであることをいう。本発明における複素粘性は、角周波数1s-1で測定したものである。角周波数1s-1とは、振動数の指標であり、例えば本発明の被膜付きフィルムからの被膜の除去を搬送しながら実施する場合に、フィルムの搬送によって生じる振動数に含まれる値であり、代表値として採用している。被膜の複素粘性が100Pa・s以上5000Pa・sの場合、被膜の粘性、弾性が適度に高く、いわゆる柔らかい状態であり、外力を加えた場合に被膜を動かしやすくなる結果、被膜を除去効率が良好となる。本発明においては、水溶性樹脂である被膜に洗浄液を効率よく吸収させることで被膜の複素粘性を好ましい範囲とすることが可能となる。
【0026】
本発明の被膜除去方法における洗浄液は、水溶性樹脂を溶解しうる溶媒であれば、いかなる溶媒でもその効果を発現するが、環境負荷を低減するためには、水を使用することが好ましい。また、被膜付きフィルムとの濡れ性を向上させて、被膜表面に洗浄液を行き渡らせやすくするために、洗浄液に界面活性剤等を添加してもよい。
【0027】
本発明の被膜除去方法において、被膜付きフィルムの形態は、裁断された枚葉状でもよいが、ロール状に巻かれた被膜付きフィルムであることが特に好ましい。ロール状に巻かれた被膜付きフィルムを巻き出して、本発明の被膜除去方法を施し、被膜を取り除いた後の基材フィルムを巻き取ることで、連続して効率的に被膜の処理をすることができる。
【0028】
[被膜除去装置]
本発明の被膜除去装置の望ましい実施形態について、図面に基づいて説明する。なお、以下の説明は本発明に係る実施形態の1つを例示するものであり、これに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0029】
図1は、本発明の第1の実施形態の被膜除去装置101の概略図である。図(a)は被膜除去装置101の側面図であり、図(b)は図(a)のA-A矢視図である。被膜除去装置101は、被膜付きフィルム2を巻き出す巻出装置4と被膜を取り除いた後の基材フィルム3を巻き取る巻取装置5が備えられている。巻出装置4と巻取装置5との間には、被膜付きフィルム2を搬送するための駆動装置9、洗浄液11を被膜付きフィルム2の被膜に付与するための吐出ヘッド6、洗浄液11と被膜付きフィルム2の被膜をともに取り除く除去機構7、被膜取り除かれた後の基材フィルム3を搬送するための駆動装置10が備えられている。吐出ヘッド6、除去機構7、後述するノズル14は筐体8で囲まれている。筐体8は、搬送される被膜付きフィルムが入ってくる入口15と被膜の一部または全部が取り除かれた基材フィルムが出て行く出口16を備えている。また、筐体8は、被膜付きフィルムに吐出ヘッド6によって洗浄液が付与されてから除去機構7に至るまでの間の湿度を一定かつ高く保ち、被膜付きフィルムに付与された洗浄液を被膜に効率よく吸収させるため、吐出ヘッド6から除去機構7までを覆うように構成されている。筐体8の材質は、筐体8の内部の湿度を一定かつ高く保つため、水や水蒸気の透過性が低いことが好ましく、金属あるいは、ガラス、アクリル樹脂等が好適に用いられる。
【0030】
筐体8には、筐体内部の湿度を一定に保つため、排気機構(図示しない)が備えられていてもよい。また、筐体8には排液機構(図示しない)が備えられており、洗浄液が過剰に供給された場合や、筐体内に過飽和となって水が結露した場合に、洗浄液や水を排出することができる。
【0031】
さらに洗浄液付与機構として、吐出ヘッド6に加えて、吐出ヘッド6に洗浄液11を送液するための送液ポンプ12、洗浄液を貯留しておくタンク(図示しない)を備えている。
【0032】
吐出ヘッド6は、洗浄液11を液滴の状態で吐出して、被膜付きフィルム2の被膜表面に付与できればよく、例えばスプレーノズルなどが例示されるがその限りではない。被膜付きフィルム2の被膜表面に付与する洗浄液11の量は、水溶性樹脂を含む被膜を十分に溶解しうるように、1cm/m以上にできることが好ましく、被膜付きフィルム2の搬送速度に応じて、送液ポンプ12を調整して、必要量の洗浄液11を被膜付きフィルム2の被膜表面に付与して、液滴の状態を保持できるように、吐出ヘッド6と送液ポンプ12の仕様を確定するのがよい。
【0033】
被膜付きフィルム2の被膜表面に付与した洗浄液11は、次いで除去機構7へと搬送されるまでの間に、被膜に含まれる水溶性樹脂に吸収される必要がある。被膜への洗浄液の吸収効率を向上させるため、被膜除去装置101は、筐体8の湿度を一定かつ高く保つため、ミスト発生器13と、ミスト発生器13に接続されるノズル14を備えていることが好ましい。ミストによって筐体内の湿度を一定滑高く保ち、被膜に付与された洗浄液が蒸発したり結露したりすることを防ぐことで、被膜への洗浄液の吸収効率が向上する。
【0034】
また、吐出ヘッド6の最も基材フィルムに近接している位置から、除去機構7が上記被膜付きフィルムに接触する位置までの、被膜付きフィルムの搬送距離が100mm以上2000mm以下であることが好ましい。搬送距離をこの範囲に保つことで、被膜付きフィルムに付与された洗浄液が被膜に吸収され、被膜を取り除きやすくなるため好ましい。
【0035】
吐出ヘッド6と除去機構7は被膜付きフィルム2の被膜表面に対向して設置してあればよく、図1のように下面側の設置には限定されない。またロール状に巻かれた被膜付きフィルム2の被膜がロールの内側、外側のいずれの面であっても対応できるように、被膜付きフィルム2の巻出方向を切り替えて、被膜付きフィルム2の被膜表面が吐出ヘッド6と除去機構7とに対向して搬送できるよう、巻出装置4が上出しと下出しのいずれにも対応できる機構であることがより好ましい。
【0036】
本発明の実施形態の被膜除去装置101では、除去機構7として、搬送される被膜付きフィルム2に直接接触する先端が鋭利な金属プレートを設けたが、これに限定されず、先端が鋭利な樹脂製のプレートを設けてもよいし、ブレードのように被膜付きフィルム2に押し当ててしなるような薄い金属製のプレートを設けてもよい。あるいは、金属や樹脂からなるブラシロールを搬送方向と同方向、あるいは逆方向に回転させる機構を備えて、被膜付きフィルム2の被膜表面に直接接触させてもよいし、ウエスや布帛を用いて被膜付きフィルム2に押し当てて被膜を拭き取るように取り除いてもよい。
【0037】
駆動装置9、10は、被膜付きフィルム2、および被膜を取り除いた基材フィルム3を安定して搬送させるために、張力カットできる構成であることが好ましいが、サクションロールでテンションカットした場合には、被膜付きフィルム2の被膜の一部が吸引されたりして、トラブルの原因となることがあるため、金属製の駆動ロールとゴムロールでニップされた構成がより好適に用いられる。また駆動装置9,10は、洗浄液11が付着する可能性が高いため、防錆対策として、ステンレス鋼や表面処理を施したものが好適に用いられる。
【0038】
巻取装置5で巻き取った被膜を取り除いた後の基材フィルム3は、再溶融した後に安定して再生フィルムとして製膜するために洗浄液11を完全に取り除いておくことがより好ましく、除去機構7と巻取装置5との間に乾燥装置(図示しない)を設けてもよい。乾燥装置は巻取前に設けておけばよく、駆動装置10の前後いずれでもよい。
【0039】
また、被膜を取り除いた後の基材フィルム3の品質を確認するために、被膜の残渣や工程で付着した環境異物を検出する検査機(図示しない)を巻取装置5の前に設けてもよい。検査機は、基材フィルム3の性状に合わせて選定すればよく、透過光や反射光を用いた検査機が好適に用いられる。また、検査機で検出した被膜の残渣や工程で付着した環境異物の位置を記録するためのマーキング装置(図示しない)を、検査機と巻取装置5との間に設けてもよい。マーキング装置によるマーキングの方式は、ペンやシール、あるいはレーザーなど、検出対象の位置がマーキングできれば、いかなる方式でもよい。被膜の残渣や工程で付着した環境異物をマーキングしておくことで、再溶融をする前にその箇所を除去することが可能となるため、より安定して再生フィルムを製膜することができ、再生フィルムの品質低下を防ぐこともできる。
【0040】
図2は、本発明の第2の実施形態の被膜除去装置201の概略図である。被膜除去装置201は、第1の実施形態の被膜除去装置101に設けられていた筐体の、搬送される被膜付きフィルムが入ってくる入口と被膜の一部または全部が取り除かれた基材フィルムが出て行く出口それぞれに、基材フィルムに接するシール機構215、216、217および218が設けられている。シール機構215、216、217および218は、基材フィルムに接することで、基材フィルムが搬送される場合にも筐体8密閉性を向上させ、筐体8内部の湿度を一定に保つことができる。また、シール機構215、216、217および218は、筐体8の密閉性を向上させるため、それぞれ接点2150、2160、2170および2180で筐体8と連続的に接続されている。さらに、シール機構216は、被膜付きフィルムが吐出ヘッド6に至る前に被膜と接するため、被膜に微細な傷を付けることで、吐出ヘッド6から付与された洗浄液が被膜に吸収される効率を向上させることができる。シール機構215、216、217および218は、フィルムの搬送に追随させるため柔軟性を有し、かつ水に対する耐性が高い方が好ましく、塩化ビニル製のシートやゴム製のシートが好ましい。上記以外は図1の被膜除去装置101と同じであるので、剥離装置101と共通する構成要素については、説明を省略する。
【0041】
図3は、本発明の第3の実施形態の被膜除去装置301の概略図である。被膜除去装置301は、第1の実施形態の被膜除去装置201に設けられていた吐出ヘッド6の代わりに、スチーム発生器312と吐出ヘッド306を備えている。また、被膜除去装置301は、ミスト発生器13とノズル14を備えていないが、ミスト発生器13およびノズル14を有するものであってもよい。スチーム発生器312および吐出ヘッド306を用いることで、被膜付きフィルムに付着しなかった洗浄液が筐体8の内部に拡散することにより、筐体内部の湿度を一定かつ高く保つことが可能となる。吐出ヘッド306は、被膜付きフィルムの幅より広いことが好ましい。上記以外は図2の被膜除去装置201と同じであるので、被膜除去装置201と共通する構成要素については、説明を省略する。
【0042】
図5は、本発明の第5の実施形態の被膜除去装置501の概略図である。図(a)は被膜除去装置501の側面図であり、図(b)は図(a)のA-A矢視図である。被膜除去装置501は、第1の実施形態の被膜除去装置201に設けられていた吐出ヘッド6の代わりに、スチーム発生器312と吐出ヘッド306を備えている。また、被膜除去装置401は、ミスト発生器13とノズル14を備えていないが、ミスト発生器13およびノズル14を有するものであってもよい。被膜除去装置501は、筐体801を備えている。筐体801は、筐体8とは異なり、被膜付きフィルムの被膜を有する面とは反対側の面を一部解放している。言い換えると、筐体801は、被膜付きフィルムに対して被膜を有する面側とは反対側から見て、被膜付きフィルムの一部を覆っていない。本発明の第5の実施形態では、洗浄液としてスチームを用いるため、洗浄液の拡散性が高い。そのため、筺体が被膜付きフィルムの被膜を有する面とは反対側の面をすべて覆っていると、筺体の中に拡散した洗浄液が被膜付きフィルムの被膜を有する面とは反対側の面に付着することがあり、被膜付きフィルムの搬送性が低下する場合がある。そのため、被膜付きフィルムの被膜を有する面とは反対側の面を一部解放している筺体801を用いることで、洗浄性と搬送性が両立することが可能となる。筐体801の被膜付きフィルムの被膜を有する面とは反対側の面を開放している開口幅D1は、フィルムの搬送性の観点から適宜決定すればよいが、フィルムの幅の50%以上であることが好ましい。
【0043】
筐体801の開口幅D1をフィルム幅よりも広くして、被膜付きフィルムの被膜を有する面とは反対側の面をすべて開放してもよい。ただし、被膜付きフィルムに付着しなかった洗浄液が筺体801の外側に拡散してしまうと、被膜付きフィルムから被膜を除去する効率が低下する場合がある。そのため、開口幅D1をフィルム幅よりも広くする場合でも、被膜付きフィルムに付着しなかった洗浄液が筺体801の外側に過度に拡散することを防ぐため、開口幅D1はフィルムの幅に近いことが好ましい。具体的には、開口幅D1はフィルムの幅+100mm以下が好ましく、さらに好ましくは+50mm以下である。
【0044】
また、筐体801の被膜付きフィルムの被膜を有する面とは反対側の面における開口幅をフィルムの幅にあわせて調節できる機構が備えられていることが好ましい。
【0045】
筐体801の上部の位置は、搬送される被膜付きフィルムの水平面の高さに対して+150mm以下、より好ましくは+50mm以下に位置していることが好ましい。ここでいう搬送される被膜付きフィルムの水平面の高さとは、被膜付きフィルムの被膜を有する面が、駆動装置9の接する位置の高さを指す。スチーム発生器312および吐出ヘッド306を用いることで、被膜付きフィルムに付着しなかった洗浄液が筐体801の内部に拡散することにより、筐体内部の湿度を一定かつ高く保つことが可能となる。吐出ヘッド306は、被膜付きフィルムの幅より広いことが好ましい。上記以外は図2の被膜除去装置201と同じであるので、被膜除去装置201と共通する構成要素については、説明を省略する。
【0046】
また、被膜付きフィルム2の被膜表面に効率的に洗浄液を付与するために、巻出装置4と駆動装置9との間には被膜付きフィルム2の被膜表面を露出させる機器を設けてもよい。例えば、被膜付きフィルム2の被膜がジメチルシロキサンを主骨格とする硬化型シリコーン樹脂化合物である場合、被膜付きフィルムはその表面自由エネルギーの特性から、工程用離型フィルムとして好適に用いられ、具体的には、被膜付きフィルムの被膜上に被離型物を設けた後、該被離型物を所望の形状で抜き出すための離型フィルムとして用いられる。このような工程用の離型フィルムとして利用された後の被膜付きフィルムは、被膜表面の上に被離型物が残存している場合があるため、巻出装置4と駆動装置9との間には被膜付きフィルムの被膜表面を露出させるための機器を設けて、被膜付きフィルム2の被膜表面を露出させることが好ましい。被膜表面を露出させる機器は、接触式であっても非接触式であってもよく、被離型物の残存状態によって適宜選択される。
【0047】
被離型物としては、被膜の特性によって適宜選択されるものであるが、蒸着によって設けられた金属などの無機物や、コーティングによって設けられたアクリルなどの有機物からなる粘着剤、チタン酸バリウムを主成分とするセラミックグリーンシートなどが例示できる。
【実施例0048】
以下、本発明について実施例を挙げて説明するが、本発明は必ずしもこれに限定されるものではない。
【0049】
<被膜付きフィルム>
ポリエチレンテレフタレートの厚み30μmの基材フィルム上に、水溶性樹脂としてポリビニルアルコール樹脂を膜厚0.1μm形成し、さらにその上に、離型成分として硬化型シリコーン樹脂を膜厚0.1μm形成した被膜付きフィルムを作製した。
【0050】
<被膜除去の評価方法>
被膜除去の評価は、市販のダインペン(表面エネルギー:30、70mN/m)を用いて、以下の方法で測定した。室温23℃の環境下で、試料表面にダインペンで描画し、4秒以上その状態を保持する場合は、そのダインペンの表面エネルギーよりも試料表面の表面エネルギーの方が高いと判断した。被膜付きフィルムの離型成分の硬化型シリコーン樹脂が表面に残れば、表面エネルギーは30mN/m未満であるため、いずれのダインペンも試料表面に試薬が弾かれて、描画を保持できない。一方、離型成分の硬化型シリコーン樹脂の被膜が取り除かれて、ポリビニルアルコール樹脂が表出している場合には、表面エネルギーが70mN/m以上であるため、いずれのダインペンも描画を保持できる。離型成分の硬化型シリコーン樹脂と水溶性のポリビニルアルコール樹脂の被膜がいずれも取り除かれて、ポリエチレンテレフタレートが表出している場合には、表面エネルギーが43.8mN/mであるため、30mN/mのダインペンの描画は保持するが、70mN/mのダインペンの描画は保持できない。以上の評価方法により、被膜付きフィルムの被膜が取り除けたか否かを判断した。
【0051】
<搬送性の評価方法>
被膜付きフィルムの搬送性の評価は、巻出装置、巻取装置および被膜除去機構を有する装置にて被膜を除去した際、巻取装置におけるフィルムの巻ずれ発生の有無によって評価した。巻取装置における巻ずれは、巻出装置に設置したフィルムロールの端部に対して、巻取装置におけるフィルムの端部が、巻出し装置側からみて右、または左にずれる量を測定した。
【0052】
<被膜付きフィルムからの被膜除去>
[実施例1]
被膜付きフィルム2を図1に示す被膜除去装置101の巻出装置4にセットした。被膜付フィルムを駆動装置9でブース8に搬送しつつ、ブース8内部では吐出ヘッド6のスプレーノズル(株式会社いけうち製1/4M KB 80063N S303-RW)から洗浄液11として水(常温:20℃)を被膜表面に液滴の状態で付与した。被膜表面に付与された洗浄液11は、その後、除去機構7で、被膜付きフィルムにSUS630製の先端が鋭利なプレートを接触させて、洗浄液11と被膜とを基材フィルム3から除去し、被膜を除去した基材フィルム3を巻取装置5で巻き取った。搬送速度は10m/分から順に増速して、10、30、50、100m/分として実施した。なお、実施例1では、ミスト発生器13およびノズル14による筐体8内部への加湿は行っていない。筐体内部の相対湿度は50%R.H.であった。
【0053】
またスプレーノズルから吐出される洗浄液11は、モーノポンプ(兵神装備株式会社 CY08)から送液し、送液量は搬送の速度に応じて調整して、いずれの搬送速度でも送液量は被膜付きフィルム2の単位面積1.0mあたり30cmとした。
【0054】
巻取装置5で巻き取った後の被膜を取り除いた基材フィルム3を採取したところ、離型成分の硬化型シリコーン樹脂と水溶性のポリビニルアルコール樹脂の被膜がいずれも取り除ける最大搬送速度は30m/分であった。それ以上の搬送速度50、100m/分においては、被膜除去の評価で、硬化型シリコーン樹脂あるいはポリビニルアルコール樹脂の被膜の一部が残存していることを確認した。
【0055】
[実施例2]
実施例1の被膜除去装置101において、ノズル14を備えたミスト発生器(株式会社いけうち製/AkimistE(商標登録))を用いて発生させたミストを供給した以外は、実施例1と同じ装置構成により同じ条件で被膜除去を実施した。筐体8内部の相対湿度は65%R.H.であった。
【0056】
巻取装置5で巻き取った後の被膜を取り除いた基材フィルム3を採取したところ、離型成分の硬化型シリコーン樹脂と水溶性のポリビニルアルコール樹脂の被膜がいずれも取り除ける最大搬送速度は50m/分であった。
【0057】
[実施例3]
被膜付きフィルム2を図2に示す被膜除去装置201を用いた以外は、実施例2と同じ装置構成により同じ条件で被膜除去を実施した。被膜除去装置201は、筐体と連続的に接続された塩化ビニル製シール部材(アキレス製止水シート、厚み2mm)215、216、217、218を有している。筐体8内部の相対湿度は80%R.H.であった。巻取装置5で巻き取った後の被膜を剥離した基材フィルム3を採取したところ、離型成分の硬化型シリコーン樹脂と水溶性のポリビニルアルコール樹脂の被膜がいずれも取り除ける最大搬送速度は100m/分であった。
【0058】
[実施例4]
被膜付きフィルム2を図3に示す被膜除去装置301を用いて、被膜付きフィルム2の被膜除去を実施した。被膜除去装置301は、洗浄液11である水をスチームの状態で吐出するためにスチーム発生器312と吐出ヘッド306を備える。
【0059】
実施例1のスプレーノズル6の代わりに、スチーム発生器312と吐出ヘッド306を用いて洗浄液11をスチームとした以外は、実施例3と同じ装置構成により同じ条件で被膜除去を実施した。スチームはスチーム発生器(日本電熱株式会社製 BOILER.V)を用いて、吐出ヘッド(φ10開口ノズル)から被膜付きフィルム2の塗膜表面に向けて吐出した。吐出されたスチームは吐出温度100℃、吐出圧力0.4MPaの多量のスチームであるため、筐体8内部の相対湿度は80%R.H.であった。巻取装置5で巻き取った後の被膜を取り除いた基材フィルム3を採取したところ、離型成分の硬化型シリコーン樹脂と水溶性のポリビニルアルコール樹脂の被膜がいずれも取り除ける最大搬送速度は100m/分であった。
【0060】
[実施例5]
被膜付きフィルム2を図5に示す被膜除去装置501を用いて、被膜付きフィルム2の被膜除去を実施した。被膜除去装置501は、洗浄液11である水をスチームの状態で吐出するためにスチーム発生器312と吐出ヘッド306を備える。実施例1のスプレーノズル6の代わりに、スチーム発生器312と吐出ヘッド306を用いて洗浄液11をスチームとし、筺体801を用いた以外は、実施例1と同じ装置構成により同じ条件で被膜除去を実施した。筐体801の開口幅D1はフィルムの幅の85%であり、つまり、筐体801は、被膜付きフィルムに対して被膜を有する面側とは反対側から見て、被膜付きフィルムの85%を覆っていない。スチームはスチーム発生器(日本電熱株式会社製 BOILER.V)を用いて、吐出ヘッド(φ10開口ノズル)から被膜付きフィルム2の塗膜表面に向けて吐出した。吐出されたスチームは吐出温度100℃、吐出圧力0.4MPaの多量のスチームであるため、筐体801内部の相対湿度は80%R.H.であった。巻取装置5で巻き取った後の被膜を取り除いた基材フィルム3を採取したところ、離型成分の硬化型シリコーン樹脂と水溶性のポリビニルアルコール樹脂の被膜がいずれも取り除ける最大搬送速度は100m/分であった。
【0061】
[比較例1]
図4に示す被膜除去装置401を用いた以外は、実施例1と同じ装置構成により同じ条件で被膜除去を実施した。被膜除去装置401は、筐体8を有していない以外は、実施例1で用いた被膜除去装置101と同じ装置構成である。筐体8が存在しないため、吐出ヘッド6から除去機構7の間の相対湿度は一定ではなく、15%R.H.から40%R.H.の値を示した。
【0062】
巻取装置5で巻き取った後の被膜を取り除いた基材フィルム3を採取したところ、離型成分の硬化型シリコーン樹脂と水溶性のポリビニルアルコール樹脂の被膜がいずれも取り除ける最大搬送速度は10m/分であった。
【0063】
【表1】
【0064】
[実施例1~5と比較例1との対比]
本発明の実施例1~4は、筐体8を備えていない被膜除去装置401を用いた比較例1と比較して、洗浄液付与から被膜除去までの湿度を一定かつ高く保つことができるため、効率よく被膜を取り除くことができた。
【0065】
[実施例1~5の対比]
実施例2では、ミスト発生器にて筐体内の湿度を一定かつ高く保つことができた結果、被膜付きフィルムの被膜を取り除ける搬送速度が、ミスト発生器を用いない実施例1と比べて高速化でき、最大で搬送速度50m/分でも被膜を取り除けた。また実施例3では、筐体8にシール機構を備えることで筐体8内部の湿度をさらに高く保つことができた結果、被膜付きフィルムの被膜を取り除ける搬送速度をさらに高速化でき、搬送速度100m/分でも被膜を取り除けた。実施例4では、洗浄液としてスチームを用いることで筐体8内部の湿度を高く保つことができた結果、搬送速度100m/分でも被膜を取り除けた。実施例1~5における巻きずれの量では、被膜付きフィルムの被膜を有する面とは反対側の面の一部が解放されている実施例5で最も巻きずれの量が少なかった。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明の被膜除去方法および被膜除去装置は、離型層を有するフィルムの再利用に好適に用いることができる。本発明の被膜除去方法および被膜除去装置に適用できる被膜付きフィルムは、基材フィルムの片面に水溶性樹脂を含む被膜を有するフィルムに限定されず、易溶解性樹脂層を含む被膜を有する再生可能な樹脂フィルム、紙フィルム、金属フィルムであればよい。
【符号の説明】
【0067】
2 被膜付きフィルム
3 基材フィルム
4 巻出装置
5 巻取装置
6、306 吐出ヘッド
7 剥離機器
8、801 筐体
9、10 駆動装置
11 洗浄液
12 送液ポンプ
13 ミスト発生器
14 ノズル
15 入口
16 出口
101、201、301、401 剥離装置
215、216、217、218 シール部材
2150、2160、2170、2180 シール部材と筐体の接続部
312 スチーム発生装置
D1 筐体の開口幅
図1
図2
図3
図4
図5