(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173760
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】繊維屑回収装置及び仮撚加工機
(51)【国際特許分類】
B04C 5/12 20060101AFI20241205BHJP
B01D 45/08 20060101ALI20241205BHJP
B04C 9/00 20060101ALI20241205BHJP
B65H 54/88 20060101ALI20241205BHJP
D01H 11/00 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
B04C5/12 Z
B01D45/08
B04C9/00
B65H54/88
D01H11/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024085319
(22)【出願日】2024-05-27
(31)【優先権主張番号】P 2023088774
(32)【優先日】2023-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】502455511
【氏名又は名称】TMTマシナリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128923
【弁理士】
【氏名又は名称】納谷 洋弘
(74)【代理人】
【識別番号】100128912
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100180297
【弁理士】
【氏名又は名称】平田 裕子
(72)【発明者】
【氏名】今中 昭仁
【テーマコード(参考)】
3F057
4D031
4D053
4L056
【Fターム(参考)】
3F057CA00
4D031AB03
4D031AB22
4D053AA03
4D053AB01
4D053BA01
4D053BB02
4D053BC01
4D053BD04
4D053CC02
4D053DA10
4L056AA01
4L056BG16
4L056BG54
4L056BG55
(57)【要約】
【課題】繊維屑と空気とを好適に分離し、繊維屑が外部に排出されることを抑制可能な繊維屑回収装置、及びこの繊維屑回収装置を備える仮撚加工機を提供する。
【解決手段】糸屑を含む繊維屑を移送する繊維屑移送配管11と、繊維屑移送配管11を移送した繊維屑を回収する繊維屑回収部13と、繊維屑移送配管11を移送した繊維屑を空気から分離して繊維屑回収部13に回収するサイクロン分離器30Aとを備える。サイクロン分離器30Aは、空気から分離された繊維屑を繊維屑回収部13に排出する繊維屑排出部46と、繊維屑が分離された空気を外部に排出する空気排出部50と、糸屑が空気排出部50をとおって外部に排出されないように遮る遮蔽部材60とを有する。遮蔽部材60は、糸屑の径よりも大きい間隙を有し、空気排出部50における空気の流量が、繊維屑排出部46における空気の流量よりも大きくなるように構成されている。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
糸屑を含む繊維屑を空気とともに移送する繊維屑移送配管と、
前記繊維屑移送配管の管内を移送した繊維屑を回収する繊維屑回収部と、
前記繊維屑移送配管と前記繊維屑回収部との間に設けられ、前記繊維屑移送配管の管内を移送した前記繊維屑を空気から分離し、分離した前記繊維屑を前記繊維屑回収部に回収するサイクロン分離器と、
を備え、
前記サイクロン分離器は、
前記空気から分離された前記繊維屑を、空気とともに前記繊維屑回収部に排出する繊維屑排出部と、
前記繊維屑が分離された後の空気を外部に排出する筒状の空気排出部と、
前記繊維屑が分離された後の空気が前記空気排出部に流入してから外部に排出されるまでの経路上の所定部位に設けられ、前記繊維屑排出部から排出されずに前記空気排出部に向かう糸屑を、前記空気排出部をとおって外部に排出されないように遮る遮蔽部材と、
を有し、
前記遮蔽部材は、
前記糸屑の径よりも大きい間隙を有し、前記空気排出部における空気の流量が、前記繊維屑排出部における空気の流量よりも大きくなるように構成されている
繊維屑回収装置。
【請求項2】
繊維機械に設けられ、当該繊維機械で生じる繊維屑を回収する繊維屑回収装置であって、
前記サイクロン分離器は、
前記繊維屑移送配管の長手方向が内周壁に沿うように前記繊維屑移送配管が接続され、前記繊維屑移送配管の管内を移送した前記繊維屑を、遠心力により前記内周壁に沿って下方へ移動させる円筒状の本体部と、
前記本体部の下方において前記本体部と前記繊維屑排出部との間に設けられる繊維屑移送部と、を有する、
請求項1に記載の繊維屑回収装置。
【請求項3】
前記繊維屑移送配管は、複数備えられており、
前記サイクロン分離器は、前記複数の繊維屑移送配管のそれぞれに対して1つずつ備えられている、
請求項1又は2に記載の繊維屑回収装置。
【請求項4】
前記繊維屑移送配管は、複数備えられており、
前記繊維屑回収部は、前記複数の繊維屑移送配管よりも少ない数だけ備えられている、
請求項1~3のいずれか1項に記載の繊維屑回収装置。
【請求項5】
前記空気排出部は、
当該空気排出部が前記本体部の内部に入り込まないようにしつつ、当該空気排出部の内部と前記本体部の内部とが連通して設けられる、
請求項2に記載の繊維屑回収装置。
【請求項6】
前記繊維屑移送部は、前記本体部から前記繊維屑排出部に向けて径が小さくなる傾斜部を有して構成される、
請求項2に記載の繊維屑回収装置。
【請求項7】
前記繊維屑は、ポリエステル繊維又はポリアミド繊維であって、
前記傾斜部は、鉛直方向との間で成す角度が7~10[°](上下限値含む)となるテーパー状に形成されてなる、
請求項6に記載の繊維屑回収装置。
【請求項8】
前記空気排出部は、前記本体部の内部と連通する部位における水平方向に沿った開口面積が、前記繊維屑排出部の水平方向に沿った開口面積よりも大きくなるように構成されてなる、
請求項6又は7に記載の繊維屑回収装置。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の繊維屑回収装置を備える仮撚加工機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気から分離された繊維屑を回収する繊維屑回収装置、及びこの繊維屑回収装置を備える仮撚加工機に関する。
【背景技術】
【0002】
仮撚加工機或いは紡績装置などの繊維機械においては、繊維機械に繊維を掛ける際、或いは、繊維機械に備えられた巻取装置で繊維が巻き取られることで形成されたパッケージを交換する際であっても、繊維が供給され続ける。このため、繊維機械においては、従来より、糸掛け中或いはパッケージ交換中に、繊維屑を吸引して回収することが行われている。
【0003】
例えば特許文献1には、複数の吸い込み口が設けられたサクション管と、サクション管の端部に接続された繊維屑捕集容器と、繊維屑捕集容器に接続された負圧ポンプ又は吸い込み送風機と、を備えた、連続走行する多数本糸用のサクション装置が開示されている。特許文献1に開示されたサクション装置では、負圧ポンプ又は吸い込み送風機の作動によってサクション管内が負圧となり、複数の吸い込み口からサクション管内に吸い込まれた繊維屑が、サクション管内を吸引されて繊維屑捕集容器に回収される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されたサクション装置では、サクション管の吸い込み方向の下流端側において繊維屑捕集容器を介して接続された負圧ポンプ又は吸い込み送風機の作動によって、繊維屑がサクション管内を吸引されて回収される。このようなサクション装置によれば、空気とともに糸屑が外部に排出されるおそれがある。
【0006】
本発明は、以上の課題に鑑みてなされたものであり、繊維屑と空気とを好適に分離し、糸屑が外部に排出されることを抑制可能な繊維屑回収装置、及びこの繊維屑回収装置を備える仮撚加工機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の繊維屑回収装置は、
糸屑を含む繊維屑を空気とともに移送する繊維屑移送配管と、
前記繊維屑移送配管の管内を移送した繊維屑を回収する繊維屑回収部と、
前記繊維屑移送配管と前記繊維屑回収部との間に設けられ、前記繊維屑移送配管の管内を移送した前記繊維屑を空気から分離し、分離した前記繊維屑を前記繊維屑回収部に回収するサイクロン分離器と、
を備え、
前記サイクロン分離器は、
前記空気から分離された前記繊維屑を、空気とともに前記繊維屑回収部に排出する繊維屑排出部と、
前記繊維屑が分離された後の空気を外部に排出する筒状の空気排出部と、
前記繊維屑が分離された後の空気が前記空気排出部に流入してから外部に排出されるまでの経路上の所定部位に設けられ、前記繊維屑排出部から排出されずに前記空気排出部に向かう糸屑を、前記空気排出部をとおって外部に排出されないように遮る遮蔽部材と、
を有し、
前記遮蔽部材は、
前記糸屑の径よりも大きい間隙を有し、前記空気排出部における空気の流量が、前記繊維屑排出部における空気の流量よりも大きくなるように構成されている
ことを特徴とするものである。
【0008】
上記(1)に記載の繊維屑回収装置によれば、維移送配管内を移送した繊維屑は、繊維屑移送配管に接続されたサイクロン分離器を経て、繊維屑回収部に回収される。サイクロン分離器では、繊維屑移送配管の管内を移送した空気から繊維が繊維屑として分離される。空気から分離された繊維屑は繊維屑回収部に回収され、繊維屑が分離された空気は空気排出部から外部に排出されるため、繊維屑と空気とを好適に分離することができる。ただし、本体部の内周壁に沿って下方に移動する流れに乗れなかった繊維屑は、空気排出部に向かい、空気排出部をとおって外部に排出される場合がある。とくに糸屑が空気排出部から外部に排出された場合には、かかる糸屑が作業者に絡まる可能性もあり、安全面及び衛生面において好ましくない。この点、上記(1)に記載の繊維屑回収装置によれば、糸屑が繊維屑排出部から排出されずに空気排出部に向かったとしても、かかる糸屑は、空気排出部をとおって外部に排出されないように遮蔽部材によって遮られる。しかも、この遮蔽部材は、糸屑の径よりも大きい間隙を有し、空気排出部における空気の流量が、繊維屑排出部における空気の流量よりも大きくなるように構成されている。よって、繊維屑と空気との良好な分離を維持しつつ、糸屑が外部に排出されることを抑制し、空気排出部をとおって外部に排出された糸が作業者に絡まないようにすることが可能となる。
【0009】
上記(1)に記載の「遮蔽部材」について、「繊維屑が分離された後の空気が前記空気排出部に流入してから外部に排出されるまでの経路上の所定部位に設けられ、」とは、空気排出部に流入した糸屑が空気排出部をとおって外部に排出されることを遮ることができればよい趣旨である。すなわち、遮蔽部材は、例えば空気排出部と外部との境界の開口(すなわち空気排出部の端部の開口)のように特定の部位に設けられることに限定されない。
【0010】
また、上記(1)に記載の「前記空気排出部をとおって外部に排出されないように遮る」は、例えば、外部に排出される前に糸屑を捕捉すること等が相当する。なお、「外部」は、例えば大気中のようにサイクロン分離器を構成する部材の外側の領域が相当する。
【0011】
(2)上記(1)の繊維屑回収装置は、
繊維機械に設けられ、当該繊維機械で生じる繊維屑を回収する繊維屑回収装置であって、
前記サイクロン分離器は、
前記繊維屑移送配管の長手方向が内周壁に沿うように前記繊維屑移送配管が接続され、前記繊維屑移送配管の管内を移送した前記繊維屑を、遠心力により前記内周壁に沿って下方へ移動させる円筒状の本体部と、
前記本体部の下方において前記本体部と前記繊維屑排出部との間に設けられる繊維屑移送部と、を有する、
ことが好ましい。
【0012】
上記(2)に記載の繊維屑回収装置によれば、繊維屑を、遠心力により円筒状の本体部の内周壁に沿って下方の繊維屑移送部に移動させて、団子状となって繊維屑回収部に回収することができるため、空気排出部から繊維屑が外部に排出されることを抑制することができる。
【0013】
(3)本発明の繊維屑回収装置において、前記繊維屑移送配管は、複数備えられており、前記サイクロン分離器は、前記複数の繊維屑移送配管のそれぞれに対して1つずつ備えられている、ことが好ましい。
【0014】
上記(3)に記載の繊維屑回収装置は、複数の繊維屑移送配管のそれぞれに対して1つずつのサイクロン分離器が備えられている。すなわち、繊維屑移送配管とサイクロン分離器とが1対1で接続されるため、他の繊維屑移送配管による制約を受けることなく、繊維屑移送配管とサイクロン分離器とを接続することができる。よって、繊維屑移送配管とサイクロン分離器とを、繊維屑と空気とが良好に分離される適正な位置において接続することができる。なお、「適正な位置」とは、例えば、繊維屑移送配管が空気排出部の下方側の端部よりも下方となる位置である。また、上記(2)の繊維屑回収装置のようにサイクロン分離器が円筒状の本体部を備える場合、円筒状の本体部の内周壁を確保でき、繊維屑を確実に本体部の下方(本体部の下方に繊維屑移送部が設けられる場合は繊維屑移送部)に送ることができる。さらに、上記(3)の繊維屑回収装置のように、複数のサイクロン分離器を備える場合、一のサイクロン分離器の空気排出部から排出される糸屑と、他のサイクロン分離器の空気排出部から排出される糸屑とが絡みあう可能性もある。この点、上記(1)に記載のように遮蔽部材を備えることを前提とする繊維屑回収装置によれば、一のサイクロン分離器の空気排出部から排出される糸屑と、他のサイクロン分離器の空気排出部から排出される糸屑とが絡みあうことを抑制できるようになる。
【0015】
(4)本発明の繊維屑回収装置において、前記繊維屑移送配管は、複数備えられており、前記繊維屑回収部は、前記複数の繊維屑移送配管よりも少ない数だけ備えられている、ことが好ましい。
【0016】
上記(4)に記載の繊維屑回収装置によれば、繊維屑回収部の数が繊維屑移送配管の数よりも少ないため、繊維屑回収装置を全体的にコンパクトにすることができる。すなわち、サイクロン分離器を備えることにより、繊維屑を団子状にして排出することができるため、繊維屑回収部の内部において繊維屑が占める容積を抑えることができる。また、繊維屑と空気とを分離して繊維屑が分離された後の空気を空気排出部から排出することにより、繊維屑移送配管にブロアを接続する等した従来の繊維屑回収装置のように空気を分離できない方式に比べて、空気が占めていた容積を抑えることもできる。その結果、本発明の繊維屑回収装置では、従来の繊維屑回収装置と比べてたくさんの繊維屑を繊維屑回収部に貯留することが可能となり、繊維屑回収部の数を抑えることできる。また、繊維屑回収部の数が少ないと、交換頻度の削減等、作業者の負荷を軽減することもできる。
【0017】
(5)本発明の繊維屑回収装置において、前記空気排出部は、当該空気排出部が前記本体部の内部に入り込まないようにしつつ、前記空気排出部の内部と前記本体部の内部とが連通して設けられる、ことが好ましい。
【0018】
上記(5)に記載の繊維屑回収装置によれば、空気排出部は、本体部の内部に入り込まないようにしつつ本体部の内部と連通するように設けられているため、繊維屑が空気排出部に絡むことがなく、繊維屑と空気との分離を良好に行うことができる。
【0019】
(6)本発明の繊維屑回収装置において、前記繊維屑移送部は、前記本体部から前記繊維屑排出部に向けて径が小さくなる傾斜部を有して構成される、ことが好ましい。
【0020】
上記(6)に記載の繊維屑回収装置によれば、傾斜部で繊維屑と空気とを分離することができるため、空気排出部から繊維屑が外部に排出されることがより一層抑制される。
【0021】
(7)本発明の繊維屑回収装置において、前記繊維屑は、ポリエステル繊維又はポリアミド繊維であって、前記傾斜部は、鉛直方向との間で成す角度が7~10[°](上下限値含む)となるテーパー状に形成されてなる、ことが好ましい。
【0022】
上記(7)に記載の繊維屑回収装置によれば、繊維屑と空気とをより精度よく分離することができるとともに、繊維屑排出部を、繊維屑を排出するための十分な大きさとすることができ、繊維屑が詰まることを防止できる。
【0023】
(8)本発明の繊維屑回収装置において、前記空気排出部は、前記本体部の内部と連通する部位における水平方向に沿った開口面積が、前記繊維屑排出部の水平方向に沿った開口面積よりも大きくなるように構成されてなる、ことが好ましい。
【0024】
上記(8)に記載の繊維屑回収装置によれば、本体部の内部と連通する部位における水平方向に沿った空気排出部の開口面積を、繊維屑排出部の水平方向に沿った開口面積よりも大きくすることによって、空気排出部から繊維屑が外部に排出されることを、より効果的に抑制することができる。
【0025】
(9)本発明は、上記(1)~(8)のいずれか1つに記載の繊維屑回収装置を備える仮撚加工機であることが好ましい。
【0026】
上記(9)に記載の仮撚加工機によれば、繊維屑と空気との良好な分離を維持しつつ、糸屑が外部に排出されることを抑制し、空気排出部をとおって外部に排出された糸が作業者に絡まないようにすることが可能となる。
【0027】
本発明に係る繊維屑回収装置は、上記(1)~(8)に記載された構成の全部を備えることは必須でない。例えば、上記(1)に記載された繊維屑回収装置に係る発明において、上記(2)~(8)に記載された構成の全部は必須でない。また、整合を図ることができる範囲で、上記(1)に記載された構成と、上記(2)~(8)のいずれかに記載された構成と、を任意に組み合わせたものを、本発明に係る繊維屑回収装置とすることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、繊維屑と空気とを好適に分離し、糸屑が外部に排出されることを抑制可能な繊維屑回収装置、及びこの繊維屑回収装置を備える仮撚加工機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】繊維屑回収装置が設置される繊維機械としての仮撚加工機の一例を示す概略図である。
【
図2】本発明の一実施の形態に係る繊維屑回収装置の一例を示す概略図である。
【
図3】繊維屑移送配管に設けられる吸い込み部の一例を示す断面図である。
【
図4】サイクロン分離器の一例を示す斜視図である。
【
図5】サイクロン分離器の一例を示す平面図である。
【
図8】テーパー角と、空気排出部における空気の流量と、繊維屑排出部における空気の流量との関係性を示す実験結果の一例である。
【
図9】サイクロン分離器の他の例を示す斜視図である。
【
図10】サイクロン分離器の平面図であって、遮蔽部材の間隙の開放率のバリエーションの一例を示す平面図である。
【
図11】空気排出部における空気の流量と、繊維屑排出部における空気の流量との関係性を示す実験結果の一例である。
【
図12】第1変形例に係るサイクロン分離器を示す概略図である。
【
図13】第2変形例に係る繊維屑回収装置を示す概略図である。
【
図14】第3変形例に係る繊維屑回収装置を示す概略図である。
【
図15】第4変形例に係るサイクロン分離器の平面図である。
【
図16】第5変形例に係るサイクロン分離器の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。なお、本発明は、仮撚加工機などの繊維機械に設置されて、繊維屑を回収する繊維屑回収装置として、種々の用途に広く適用することができるものである。
【0031】
図1は、繊維屑回収装置1(
図2参照)が設置される繊維機械としての仮撚加工機101の概略図である。
図2は、本発明の一実施の形態に係る繊維屑回収装置1の一例を示す概略図である。繊維屑回収装置1は、仮撚加工機101或いは紡績装置などの繊維機械に設置される。本実施形態においては、繊維屑回収装置1が設置される繊維機械として、仮撚加工機101を例にとって説明する。以下の説明においては、まず、繊維屑回収装置1が設置される仮撚加工機101について説明し、次いで、本発明の一実施の形態に係る繊維屑回収装置1について説明する。なお、説明の便宜上、仮撚加工機101及び繊維屑回収装置1における上下方向、前後方向、及び左右方向の各方向は、
図1及び
図2に示されるとおりである。
【0032】
[仮撚加工機]
仮撚加工機101は、例えば、ポリエステルやポリアミドなどの熱可塑性合成繊維に、仮撚を施して捲縮を付与し、伸縮性に富んだ加工糸を製造する繊維機械として構成される。
図1を参照して、仮撚加工機101においては、主機台102が上下方向に延在して配置されている。更に、仮撚加工機101は、主機台102と作業空間103を挟んで対向配置されて複数の給糸パッケージ105を保持する給糸クリール104、主機台102の上方に配置されて給糸クリール104から供給された糸としての繊維Yを仮撚する仮撚装置106、主機台102に設けられて仮撚装置106で仮撚された繊維Yを巻き取る巻取装置107、などを有している。巻取装置107は、上下方向に沿って4段設けられている。更に、巻取装置107は、1段目から4段目までの各段において、前後方向に沿って複数並んで設けられている。なお、上下方向に並ぶ4段の各段において複数の巻取装置107が並ぶ前後方向は、水平方向に沿った方向であって、給糸クリール104と主機台102とが並ぶ方向(左右方向)に対して垂直な方向となる。
【0033】
給糸クリール104から仮撚装置106までの糸道には、糸走行方向の上流側から順に第1フィードローラ108、シフターガイド109、第1加熱装置110、冷却装置111が配置されている。また、仮撚装置106から巻取装置107までの糸道には、糸走行方向の上流側から順に第2フィードローラ112、インターレースノズル113、第2加熱装置114、第3フィードローラ115、オイリングローラ116が配置されている。
【0034】
第1フィードローラ108は、作業空間103の上方に配置されている。第1加熱装置110は、作業空間103の上方であって、第1フィードローラ108よりもさらに上方に配置されている。冷却装置111は、作業空間103の上方の第1加熱装置110よりも主機台102側に配置されている。そして、第1加熱装置110と冷却装置111は、作業空間103の上方において、主機台102から離れながら斜め上方へ向かって延びるように配置されている。シフターガイド109は、上下方向における第1フィードローラ108と第1加熱装置110との間に配置されており、仮撚加工機101に糸を掛ける際に、第1加熱装置110と冷却装置111内に繊維Yを通すために用いられる。
【0035】
第2フィードローラ112は、主機台102の上方に配置されている。インターレースノズル113は、主機台102の上方であって、第2フィードローラ112よりも下方に配置されている。第2加熱装置114は、主機台102に設けられ、作業空間103から見て、巻取装置107の裏側に配置されており、4段の巻取装置107の1段目から4段目まで上下方向に沿って延在している。このように各装置がレイアウトされて、給糸クリール104から巻取装置107までの糸道は、作業空間103を囲むように形成されている。
【0036】
仮撚加工機101においては、給糸クリール104から給糸された糸としての繊維Yが上述した各装置を送られて、巻取装置107に巻き取られることでパッケージ117が形成される。まず、第1~第3フィードローラ(108、112、115)は、糸走行方向の上流側から下流側へ繊維Yを送るためのローラであり、第1フィードローラ108の糸送り速度よりも第2フィードローラ112の糸送り速度が速くなるように各糸送り速度が設定されている。このため、第1フィードローラ108と第2フィードローラ112との間で繊維Yは延伸される。また、第2フィードローラ112の糸送り速度よりも第3フィードローラ115の糸送り速度が遅くなるように各糸送り速度が設定されている。このため、第2フィードローラ112と第3フィードローラ115との間で繊維Yは弛緩される。
【0037】
そして、第1フィードローラ108と第2フィードローラ112との間で延伸された繊維Yは、例えば、フリクションディスク式のツイスタである仮撚装置106によって撚りが付与されて送られる。仮撚装置106で形成される撚りは、第1フィードローラ108まで伝搬して、延伸されつつ加撚された繊維Yは、第1加熱装置110で加熱された後、冷却装置111で冷却され、撚りが固定される。加撚及び熱固定された繊維Yは、仮撚装置106を通過した後、第2フィードローラ112に至るまでに解撚される。
【0038】
このようにして延伸仮撚加工された繊維Yは、インターレースノズル113において適宜に交絡部が形成されて、集束性が付与された後、第2加熱装置114で弛緩熱処理され、オイリングローラ116を介して巻取装置107によって紙管に巻き取られ、パッケージ117を形成する。そして、満巻状態になったパッケージ117は、巻取装置107から作業者により取り外される。そして、新たな紙管が作業者により巻取装置107に取り付けられ、紙管への巻き取り作業が再開される。このようにして、パッケージ117の交換が行われる。本実施形態の繊維屑回収装置1は、上述した仮撚加工機101において設置されて使用される。以下、本実施形態の繊維屑回収装置1について説明する。
【0039】
[繊維屑回収装置の概要]
図2を参照して、繊維屑回収装置1は、主として、例えば、複数の繊維屑移送配管11(11a~11d)と、複数の繊維屑移送配管11(11a~11d)に対して設けられた一つの繊維屑回収容器13と、複数の繊維屑移送配管11(11a~11d)のそれぞれに対応して一つずつ設けられた複数のサイクロン分離器30とを備える。複数のサイクロン分離器30は、繊維屑移送配管11(11a~11d)と繊維屑回収容器13との間に配置されている。サイクロン分離器30は、繊維屑移送配管11の管内を移送した空気から繊維屑を分離し、分離した繊維屑を繊維屑回収容器13に回収するものであり、詳細については後述する。なお、上記の「繊維屑」は、糸風綿を含み、長さが比較的短い繊維屑の他、長さが比較的短い繊維屑が集まって出来た繊維屑、及び長さが比較的長い糸屑等を含む。また、上記の「繊維屑回収容器13」は、本発明の「繊維屑回収部」に相当する。
【0040】
繊維屑回収装置1は、上述した仮撚加工機101において設置される。繊維屑回収装置1の複数の繊維屑移送配管11は、仮撚加工機101において上下方向に並んで例えば4段で配置される巻取装置107の各段に対応して配置される。このため、4段の巻取装置107が配置された本実施形態の繊維屑回収装置1では、4つの繊維屑移送配管11(11a~11d)が備えられている。各繊維屑移送配管11(11a~11d)は、前後方向に沿って延びるように配置される。1段目から4段目までの巻取装置107の各段において、巻取装置107が前後方向に沿って並んで設けられており、各繊維屑移送配管11(11a~11d)も、巻取装置107が並ぶ前後方向に沿って延びるように配置されている。各繊維屑移送配管11(11a~11d)は、上下に4段に並ぶ巻取装置107の各段において、前後方向に並ぶ各巻取装置107の近傍の領域から繊維Y(
図1参照)を吸い込んで、空気とともに繊維Yを移送する。4つの繊維屑移送配管11(11a~11d)のそれぞれは、共通の繊維屑回収容器13に接続されている。そして、各繊維屑移送配管11(11a~11d)の管内を移送した繊維Yを含む空気は、サイクロン分離器30において、繊維Yとしての繊維屑と、繊維屑が分離された後の綺麗な空気とに分離される。空気から分離された繊維屑は、繊維屑回収容器13にて回収される。繊維屑が分離された後の綺麗な空気は、後述の空気排出部50(後述の
図4参照)から外部に排出される。
【0041】
ところで、サイクロン分離器30を備えて、繊維屑が分離された後の空気を空気排出部50(後述の
図4参照)から外部に排出することにより、繊維屑回収容器13の数を繊維屑移送配管11(11a~11d)の数よりも少なくすることができ、繊維屑回収装置1を全体的にコンパクトにすることができる。すなわち、サイクロン分離器を備えることにより、繊維屑を団子状にして排出することができるため、繊維屑回収容器13の内部において繊維屑が占める容積を抑えることができる。また、繊維屑と空気とを分離して繊維屑が分離された後の空気を空気排出部50から排出することにより、繊維屑移送配管11(11a~11d)にブロアを接続する等した従来の繊維屑回収装置のように空気を分離できない方式に比べて、空気が占めていた容積を抑えることもできる。その結果、本実施形態の繊維屑回収装置1では、従来の繊維屑回収装置と比べてたくさんの繊維屑を繊維屑回収容器13に貯留することが可能となり、繊維屑回収容器13の数を抑えることできる。また、繊維屑回収容器13の数が少ないと、交換頻度の削減等、作業者の負荷を軽減することもできる。なお、本実施形態では、複数の繊維屑移送配管11(11a~11d)の全部に対して1つの繊維屑回収容器13が備えられているが、これに限定されず、繊維屑回収容器13の数が繊維屑移送配管11(11a~11d)の数よりも少なければよい。
【0042】
なお、繊維屑回収装置1は、仮撚加工機101の巻取装置107で糸切り替えの時に糸を切らないように預け、かかる糸を、繊維屑として回収するものである。すなわち、繊維屑回収装置1は、
図1に示されるように、仮撚加工機101に繊維Yを掛ける際、或いは、仮撚加工機101の巻取装置107で形成されたパッケージ117を交換する際に、給糸クリール104から各装置(110、111、106、114)等を経て、巻取装置107の近傍の領域へと供給され続ける繊維Yを、繊維屑として吸い込み部から回収するために用いられる。このようにすることで、仮撚加工機101の巻取装置107でパッケージ117を交換する際に、巻取装置107の近傍に供給され続ける繊維Yを回収できるため、糸を切る必要がなく、仮撚加工機101の運転を継続することができる。以下、繊維屑回収装置1の構成の詳細について更に詳しく説明する。
【0043】
[繊維屑移送配管]
図2を参照して、繊維屑移送配管11(11a~11d)は、繊維Y(
図1参照)を吸い込むための複数の吸い込み部15が各巻取装置107の近傍に設けられ、複数の吸い込み部15から吸い込まれた繊維Yが移送される配管として構成されている。なお、繊維Yを吸い込む吸い込み部15については、後述する。繊維屑移送配管11は、例えば、中空の円管状に設けられている。繊維屑移送配管11(11a~11d)は、複数設けられており、本実施形態では、上述のとおり4つ設けられている。
【0044】
4つの繊維屑移送配管11(11a~11d)として、最下段の1段目の巻取装置107に対応する第1繊維屑移送配管11aと、下から2段目の巻取装置107に対応する第2繊維屑移送配管11bと、下から3段目の巻取装置107に対応する第3繊維屑移送配管11cと、最上段の4段目の巻取装置107に対応する第4繊維屑移送配管11dとが設けられている。各繊維屑移送配管11(11a~11d)は、その長手方向が前後方向に沿って延びた状態で、仮撚加工機101において配置される。更に、第1~第4繊維屑移送配管(11a~11d)のそれぞれは、1段目から4段目の巻取装置107の各段に対応する位置で前後方向に沿って延びるように配置される。また、本実施形態において、サイクロン分離器30は、第1繊維屑移送配管11aと繊維屑回収容器13との間に設けられる第1サイクロン分離器30aと、第2繊維屑移送配管11bと繊維屑回収容器13との間に設けられる第2サイクロン分離器30bと、第3繊維屑移送配管11cと繊維屑回収容器13との間に設けられる第3サイクロン分離器30cと、第4繊維屑移送配管11dと繊維屑回収容器13との間に設けられる第4サイクロン分離器30dとが設けられている。
【0045】
各繊維屑移送配管11(11a~11d)は、前後方向に延びる長手方向における一方の端部(
図2に示される後側の端部)は閉止されており、他方の端部(
図2に示される前側の端部)はサイクロン分離器30に接続されている。
【0046】
[吸い込み部]
図2を参照して、吸い込み部15は、繊維Y(
図1参照)を吸い込むための機構として設けられ、各繊維屑移送配管11(11a~11d)に複数設けられている。各繊維屑移送配管11に設けられる複数の吸い込み部15は、吸い込み管16と開閉機構17(後述の
図3参照)とを備えて構成されており、繊維屑移送配管11(11a~11d)において、その長手方向に沿って並んで設けられている。各繊維屑移送配管11(11a~11d)において並んで設けられる複数の吸い込み部15のそれぞれは、各繊維屑移送配管11(11a~11d)において、巻取装置107に対応する位置に設けられている。より具体的には、複数の吸い込み部15のそれぞれは、各繊維屑移送配管11(11a~11d)において、仮撚加工機101(
図1参照)において上下に例えば4段に並ぶ巻取装置107(
図1参照)の各段で前後方向に並ぶ巻取装置107のそれぞれに対応する位置に設けられている。
【0047】
第1~第4繊維屑移送配管11(11a~11d)に設けられている吸い込み部15は、いずれも同様に構成されている。また、各繊維屑移送配管11(11a~11d)において複数並んで設けられている吸い込み部15は、いずれも同様に構成されている。
【0048】
吸い込み管16は、繊維Y(
図1参照)を吸い込むための管状部材として設けられており、繊維屑移送配管11(11a~11d)よりも小径の管径を有し、途中屈曲して延びるように設けられている。吸い込み管16は、一端側が繊維屑移送配管11(11a~11d)に連通するとともに、他端側には、巻取装置107(
図1参照)の近傍に配置されて繊維Yを吸い込む吸い込み口(不図示)が設けられている。吸い込み口から吸い込まれた繊維Yは、繊維屑移送配管11の管内へと流入する。
【0049】
図3は、繊維屑移送配管11に設けられる吸い込み部15の一例を示す断面図である。なお、
図3は、開閉部材19を上方に押し上げられて、吸い込み口16aが開放された状態である。
図3を参照して、吸い込み管16は、繊維屑移送配管11(11a~11d)に対して、斜めに傾いた状態で接続されている。吸い込み管16は、繊維屑移送配管11の管内を流動する空気の流れの上流側(
図3に示される後側)から下流側(
図3に示される前側)に向かう方向と鋭角を成す角度で、繊維屑移送配管11(11a~11d)に接続されている。即ち、吸い込み管16は、繊維屑移送配管11(11a~11d)に対して、一方の端部側(
図3に示される後側)から繊維屑回収容器13に接続された他方の端部側(
図3に示される前側)に向かう方向と鋭角を成す角度で、接続している。このため、吸い込み口(不図示)から吸い込まれた繊維Y(
図1参照)は、繊維屑移送配管11の管内へと流入する際に、繊維屑移送配管11の管内の空気の流れの上流側から下流側に向かう方向に沿って流入する。繊維屑移送配管11の管内に流入した繊維Yは、繊維屑移送配管11の管内を流動する空気の流れによって下流側に移送される。
【0050】
吸い込み管16には、圧空噴射ノズル孔16dと誘導路16eとが設けられている。圧空噴射ノズル孔16dは、出口開口16bが設けられた一端側と吸い込み口16aが設けられた他端側との間において吸い込み管16内に圧縮空気を噴射するためのノズル孔として設けられている。圧空噴射ノズル孔16dは、圧縮空気を吸い込み管16内で出口開口16b側である一端側に向かって噴射するように構成されている。本実施形態では、圧空噴射ノズル孔16dは2つ設けられている。2つの圧空噴射ノズル孔16dは、いずれも、吸い込み口16a側から出口開口16b側に向かって且つ吸い込み管16の外周側から内周側に向かって延びることで、吸い込み流路16cに連通している。この構成により、2つの圧空噴射ノズル孔16dは、いずれも、圧縮空気を吸い込み管16内で出口開口16b側に向かって噴射するように構成されている。なお、圧空噴射ノズル孔16dの数は2つに限定されない。
【0051】
吸い込み管16の誘導路16eは、吸い込み管16において、吸い込み管16の周方向に沿って環状に延びる圧縮空気の流路として設けられている。誘導路16eは、圧空噴射ノズル孔16dに連通するとともに、後述のシリンダ室20に連通している。シリンダ室20に供給された圧縮空気が、誘導路16eへと流入し、誘導路16eから圧空噴射ノズル孔16dへと流入し、吸い込み流路16cへと噴射される。
【0052】
シリンダ室20は、本体部18の内部の円筒状の空間として形成されており、圧縮空気が供給されるように構成されている。シリンダ室20は、本体部18の内部に設けられた連通路20aを介して吸い込み管16の誘導路16eに連通している。このため、シリンダ室20に供給された圧縮空気は、誘導路16eへと流入して更に圧空噴射ノズル孔16dへと流入する。また、シリンダ室20には、吸い込み管16の圧空噴射ノズル孔16dから噴射するための圧縮空気を供給する圧縮空気供給管23が接続されて連通している。圧縮空気供給管23は、圧縮空気を供給する圧縮空気供給源(不図示)に対して接続されている。圧縮空気供給管23には、連通状態と遮断状態との間で切り換えられるように開閉することで圧縮空気のシリンダ室20への供給を制御する電磁弁24が設けられている。電磁弁24の開動作が行われると、圧縮空気供給管23が連通状態となり、圧縮空気供給管23からシリンダ室20へと圧縮空気が供給される。電磁弁24の閉動作が行われると、圧縮空気供給管23が遮断状態となり、圧縮空気供給管23からシリンダ室20への圧縮空気の供給が遮断される。
【0053】
吸い込み部15では、電磁弁24が閉状態で圧縮空気供給管23が遮断されてシリンダ室20に圧縮空気が供給されていない状態では、バネ室25に配置されたバネ部材22の付勢力によって開閉部材19が回転軸29周りに回転し、吸い込み口16aが閉鎖される。この状態では、吸い込み部15による繊維Y(
図1参照)の吸い込み動作は行われない。一方、電磁弁24が開状態で圧縮空気供給管23が連通してシリンダ室20に圧縮空気が供給されている状態では、ピストン21が上方に変位して開閉部材19を上方に押し上げ、吸い込み口16aが開放される。更に、シリンダ室20に圧縮空気が供給されている状態では、圧縮空気が圧空噴射ノズル孔16dへと流入し、圧空噴射ノズル孔16dから吸い込み管16の吸い込み流路16cへと圧縮空気が噴射される。吸い込み流路16cへ噴射される圧縮空気は、出口開口16b側へ向かって噴射される。このように、圧空噴射ノズル孔16dから吸い込み管16内に噴射された圧縮空気によって、吸い込み管16内で繊維Yを繊維屑移送配管11側に送る空気流が発生し、ひいては繊維屑移送配管11の内部で繊維Yをサイクロン分離器30側(
図3に示される前側)に送る空気流が発生する。このようにして、吸い込み口16aから吸い込まれた繊維Yを、繊維屑移送配管11の管内を移送させることができる。
【0054】
なお、吸い込み口から繊維Y(
図1参照)を吸い込むことができて、吸い込んだ繊維Yを、繊維屑移送配管11(11a~11d)の管内を移送させることができれば、その態様は特定の態様に限定されない。例えば、上述のように吸い込み管16内に圧縮空気を噴射してもよいし、繊維屑移送配管11の管内を例えばブロアで吸引して負圧にしてもよい。
【0055】
また、繊維屑移送配管11(11a~11d)の管内における空気の流速は1000m/min以上であることが好ましい。そのため、繊維屑移送配管11の管内における空気の流速が1000m/minに満たない場合には、例えば、繊維屑移送配管11(11a~11d)の一方の端部(例えば後側の端部)に圧縮空気を供給するための接続部を設けて、圧縮空気供給源(不図示)から供給される圧縮空気を、繊維屑移送配管11(11a~11d)の一方の端部側から繊維屑移送配管11(11a~11d)へと供給可能に構成してもよい。また、従来設けられていたブロアをサイクロン分離器30の近傍に設けて、繊維屑移送配管11(11a~11d)の管内を吸引し、例えば空気の流速1000m/minを満たすために必要な不足分を補うようにしてもよい。
【0056】
[サイクロン分離器の一例]
図4は、本発明に係るサイクロン分離器30及び本発明に係る繊維屑回収装置1が備えるサイクロン分離器30の一例である、サイクロン分離器30の一例を示す斜視図である。
図5は、サイクロン分離器30の一例を示す平面図である。
図6は、サイクロン分離器30の正面図の一例である。
図4~
図6では、繊維屑移送配管11との接続部も示している。なお、本実施形態において、サイクロン分離器30は、上述のとおり、第1サイクロン分離器30a~第4サイクロン分離器30dを備えているが、第1サイクロン分離器30a~第4サイクロン分離器30dはいずれも同じ構成である。
【0057】
図4を参照して、サイクロン分離器30は、円筒状の本体部32と、本体部32の下方に設けられるテーパー部42と、空気から分離された繊維屑を繊維屑回収容器13(
図2参照)に排出する繊維屑排出部46と、繊維屑が分離された後の空気を外部に排出する空気排出部50とを備えて構成される。本体部32は、側壁を構成する円筒部34と、円筒部34の上端面を構成する上面部36とを備える。本体部32の上面部36には、円筒部34と同心で円筒部34よりも直径が小さい開口部38が形成されている。なお、サイクロン分離器30は、空気と繊維屑とを完全に分離するものではなく、空気が分離された後の繊維屑にも空気は含まれる。そのため、繊維屑排出部46からは、繊維屑のみが排出されるのではなく、分離されなかった空気も繊維屑とともに排出される。
【0058】
テーパー部42は、上端部が円筒部34と直径の大きさが同じ円形であり、下端部が上端部よりも直径の大きさが小さい円形である。テーパー部42は、上端部及び下端部が開放されており、正面視において上端部から下端部にむけて直線状に先細る傾斜部44を有する。この傾斜部44は、詳細は後述するが、鉛直方向と傾斜部44の方向とで挟まれた鋭角側の角度θ(以下、「テーパー角θ」と称する。)は、7~10[°](上下限値含む)の範囲内であることが好ましい。テーパー部42は、上端部において、円筒部34の下端部に接続されている。また、テーパー部42と本体部32との間にはそれぞれの内部を仕切る部材がなく、テーパー部42の内部と本体部32の内部とは連通している。なお、「テーパー部42」は、本発明の「繊維屑移送部」に相当する。
【0059】
繊維屑排出部46は、両端が開放された円筒状であり、繊維屑排出部46の内径とテーパー部42の下端部の内径とが同じ大きさである。繊維屑排出部46は、テーパー部42の下端部と同心となるように、上端部においてテーパー部42の下端部に接続されている。また、繊維屑排出部46は、下端部において、繊維屑回収容器13(
図2参照)に接続されている。繊維屑排出部46とテーパー部42との間にはそれぞれの内部を仕切る部材がなく、繊維屑排出部46の内部と本体部32の内部とは連通している。
【0060】
空気排出部50は、本体部32の上方に設けられている。空気排出部50は、両端が開放された円筒状の管材を有しており、空気排出部50の内径と開口部38の直径とが同じ大きさである。空気排出部50は、開口部38と同心となるように、下端部において開口部38に接続されている。より詳しくは、空気排出部50は、空気排出部50の円筒状の部分が本体部32の内部に入り込んでおらず、空気排出部50の円筒状の部位の下端部と、本体部32の上面部36の下面と、が面一となるように、本体部32に接続されている。
【0061】
なお、
図6に示されるように、空気排出部50は、空気排出部50の円筒状の部分の下方端部50aが、繊維屑移送配管11の上端部11Uよりも上方であることが好ましい。本願発明者の知見によれば、空気排出部50の円筒状の部分の下方端部50aが繊維屑移送配管11の上端部11Uよりも下方である場合、空気排出部50の円筒状の部位に繊維屑が絡まってしまい、繊維屑と空気との良好な分離が阻害されてしまうからである。そこで、空気排出部50の円筒状の部分の下方端部50aが少なくとも繊維屑移送配管11の上端部11Uよりも上方となるようにすることで、空気排出部50の円筒状の部位に繊維屑が絡まってしまうことを防止でき、繊維屑と空気とを良好に分離することができる。本実施の形態では、上述の
図4に示されるとおり、空気排出部50の円筒状の部位の下端部と、本体部32の上面部36(
図4参照)の下面とが面一であるから、空気排出部50の円筒状の部分の下方端部が繊維屑移送配管11の上端部よりも上方となり、繊維屑と空気とを良好に分離することができる。
【0062】
ところで、1つのサイクロン分離器30に対して複数の繊維屑移送配管11(11a~11d)が接続される場合、繊維屑移送配管11(11a~11d)とサイクロン分離器30との接続位置が制約を受けてしまう。例えば、複数の繊維屑移送配管11(11a~11d)のうち一の繊維屑移送配管11aとサイクロン分離器30との接続位置は、他の繊維屑移送配管11b~11dによって制約を受ける。そうすると、一の繊維屑移送配管11aを、空気排出部50の円筒状の部位の下端部よりも下方となるように、サイクロン分離器30と接続できなくなるおそれがある。そこで、複数の繊維屑移送配管11(11a~11d)のそれぞれとサイクロン分離器30とを1対1で接続することで、繊維屑と空気とが良好に分離される適正な位置、すなわち繊維屑移送配管11(11a~11d)が空気排出部50の円筒状の部位の下端部よりも下方となる位置に、繊維屑移送配管11(11a~11d)とサイクロン分離器30とを接続することができる。
【0063】
空気排出部50と本体部32との間にはそれぞれの内部を仕切る部材がなく、空気排出部50の内部と本体部32の内部とは連通している。また、発明者の知見によれば、空気排出部50の内径(すなわち開口部38の直径)よりも、繊維屑排出部46の内径(すなわちテーパー部42の下端部の内径)の方が大きい場合、繊維屑と空気との分離が不十分となり、空気排出部50から繊維屑が排出されるおそれがある。そのため、繊維屑排出部46の内径(すなわちテーパー部42の下端部の内径)は、空気排出部50の内径(すなわち開口部38の直径)よりも小さい方が好ましい。
【0064】
なお、本実施形態においては空気排出部50及び繊維屑排出部46はいずれも円筒状であるが、これに限られず角筒状であってもよい。この場合、本体部32の内部と連通する部位(すなわち上面部36との接続部位)における水平方向に沿った開口面積が、繊維屑排出部46の水平方向に沿った開口面積よりも大きい方が好ましい。
【0065】
繊維屑移送配管11は、
図5に示されるように、長手方向がサイクロン分離器30の本体部32の内周壁35に沿うように、本体部32の上部において、本体部32に接続されている。すなわち、繊維屑移送配管11は、平面視において、サイクロン分離器30の本体部32の円筒部34の接線となるように、本体部32に接続されている。さらに言い換えると、繊維屑移送配管11の管内を移送した繊維屑を含む空気の進行方向が円筒部34の内周壁35に沿うように、繊維屑移送配管11とサイクロン分離器30の本体部32とが接続されている。繊維屑移送配管11とサイクロン分離器30とをこのように接続することで、繊維屑移送配管11の管内を移送した繊維屑を含む空気は、
図4に示されるように、円筒部34の内周壁35に沿って周方向に移動するようになる。そのため、空気に含まれる繊維屑は、遠心力すなわち遠心分離の作用によって円筒部34の内周壁35に沿って周方向に回転しながら下方に移送される。円筒部34の内周壁35に沿って回転しながら下方に移動した繊維屑は、さらに傾斜部44の内壁45に沿って繊維屑排出部46に向けて移送される。繊維屑排出部46に向けて移送した繊維屑は、繊維屑排出部46から繊維屑回収容器13(
図2参照)に移送される。このようにして繊維屑移送配管11の管内を移送した繊維屑を含む空気から繊維屑を分離し、分離された繊維屑は、繊維屑回収容器13に回収される。一方、繊維屑が分離された後の空気は、空気排出部50から外部に排出される。
【0066】
なお、複数の繊維屑移送配管11(11a~11d)のそれぞれとサイクロン分離器30とを1対1で接続した場合、繊維屑移送配管11(11a~11d)とサイクロン分離器30とを適正な位置において接続することができることに加え、円筒部34の内周壁35を確保できるようになり、繊維屑を確実にテーパー部42に送ることができる。
【0067】
[作用効果]
本実施形態の繊維屑回収装置1によれば、吸い込み部15から吸い込まれた繊維Yは、繊維屑移送配管11の管内を移送され、繊維屑移送配管11に接続されたサイクロン分離器30を経て、繊維屑として繊維屑回収容器13に回収される。サイクロン分離器30では、繊維屑移送配管11の管内を移送した空気から繊維屑が分離される。分離された繊維屑は繊維屑回収容器13に回収され、繊維屑が分離された空気は空気排出部50から排出される。このように、繊維屑移送配管11と繊維屑回収容器13との間にサイクロン分離器30を設けることで、繊維屑と空気とが好適に分離され、空気排出部50から繊維屑が外部に排出されることを抑制することができる。
【0068】
また、本実施形態の繊維屑回収装置1によれば、繊維屑移送配管11は、繊維屑移送配管11の長手方向が円筒部34の内周壁35に沿うように本体部32に接続されている。そのため、空気が円筒部34の内周壁35に沿って周方向に移動し、繊維屑移送配管11の管内を移送した繊維屑は、遠心力すなわち遠心分離の作用によって円筒部34の内周壁35及び傾斜部44の内壁45に沿って下方へ移動し、空気から分離される。空気から分離された繊維屑は、繊維屑排出部46を経て繊維屑回収容器13に回収される。繊維屑が分離された後の綺麗な空気は、空気排出部50から排出される。ところで、空気排出部50は、本体部32の内部に入り込まずに、空気排出部50の下端部と本体部32の上面部36とが面一となるように、空気排出部50の内部と本体部32の内部とが連通して本体部32に接続されている。そのため、繊維屑が空気排出部50に絡まるようなことがなく、繊維屑と空気とを良好に分離することができる。
【0069】
また、本実施形態の繊維屑回収装置1によれば、テーパー部42は、本体部32との接続部から繊維屑排出部46に向けて径が小さくなる傾斜部44を有する。この傾斜部44において繊維屑と空気とを分離することができるため、空気排出部50から繊維屑が外部に排出されてしまうことをより一層抑制できる。なお、上記の傾斜部44は、鉛直方向との間で成す角度が7~10[°](上下限値含む)の範囲内のテーパー状とすることで、繊維屑と空気とを精度よく分離しつつ、繊維屑排出部46が繊維屑で詰まってしまうことを防止することで繊維屑排出部46から繊維屑を良好に排出することができる。
【0070】
また、本実施形態の繊維屑回収装置1によれば、繊維屑排出部46の内径(すなわちテーパー部42の下端部の内径)は、空気排出部50の内径(すなわち開口部38の直径)よりも小さい。そのため、繊維屑と空気との分離を好適に行うことができ、空気排出部50から繊維屑が外部に排出されることを、より効果的に抑制することができる。
【0071】
[サイクロン分離器30の実験例]
本実施形態を、以下の実験例により裏付けを行った。この実験例の結果について説明する。
図7は、サイクロン分離器30の正面図の一例である。
図8は、テーパー角θと、空気排出部50における空気の流量と、繊維屑排出部46における空気の流量との関係性を示す実験結果の一例である。後述の実験例1、実験例2、及び実験例3において用いた繊維は75デニールの仮撚糸である。
【0072】
なお、
図7及び
図8において、上下方向をY方向とし、とくに、上方向をY方向(正方向)とし、下方向をY方向(負方向)とする。
図8に示される流量は、Y方向のベクトル成分の流量をあらわしており、流量の値が正であるときは空気の流れがY方向(正方向)であることを示し、流量の値が負であるときは空気の流れがY方向(負方向)であることを示す。
【0073】
また、
図7を参照して、サイクロン分離器30の各部位の寸法を、サイクロン分離器30全体のY方向長さa、本体部32のY方向長さb、本体部32の内径c、空気排出部50のY方向長さd、空気排出部50の内径e、傾斜部44のY方向長さf、繊維屑排出部46のY方向長さg、繊維屑排出部46の内径h、テーパー角θとする。後述する実験例2では、サイクロン分離器30との接続部である繊維屑移送配管11の流入口の内径をiとする。
【0074】
(実験例1)
実験例1では、サイクロン分離器30の各部位の寸法を、a=280mm、b=80mm、c(内径)=80mm、d=50mm、e(内径)=48mm、g=10mm、h(内径)=31mmとし、テーパー角θを変更して、繊維屑排出部46から排出される繊維屑の良好性(以下「繊維屑排出の良好性」と称する)を検証した。テーパー角θについては、10°、15°、30°、40°で検証を行った。なお、傾斜部44のY方向長さfは、テーパー角θに応じて決まる寸法である。
【0075】
実験例1で得られた検証結果は、表1に示されるとおりである。表1は、テーパー角θと、繊維屑排出の良好性との関係性を示す実験結果の一例である。繊維屑は、繊維屑排出部46から良好に排出されるためには、団子状にまとまることが重要である。繊維屑が団子状となって繊維屑排出部46から良好に排出されたものをOK判定とし、繊維屑が団子状にならずに繊維屑排出部46から排出されなかったものをNG判定とし、繊維屑が団子状にまとまるものの5回のうち1回の頻度で繊維屑排出部46が詰まったものを△判定とした。
【0076】
【0077】
表1に示されるように、テーパー角θが10°を超えると、繊維屑排出の良好性はNG判定であった。テーパー角θが10°の場合、実験例1によれば、5回のうち1回は繊維屑が繊維屑排出部46で詰まったため△判定としたが、5回のうち4回は繊維屑が団子状にまとまって繊維屑排出部46から排出されたため、OK判定に近いものと考える。表1には示されていないが、テーパー角θが10°未満では、繊維屑排出の良好性は全てOK判定であった。
【0078】
以上の検証結果より、繊維屑排出部46から排出される屑糸の良好性の観点から、テーパー角θは10°以下であることが好ましいことが分かった。
【0079】
(実験例2)
実験例2では、サイクロン分離器30の各部位の寸法を、a=300.1mm、b=90mm、c=90mm、d=30mm、e=48mm、f=170.1mm、g=10mm、i=21mmとし、テーパー角θのみを変更して、空気排出部50におけるY方向の空気の流量、及び繊維屑排出部46におけるY方向の空気の流量の変化を検証した。テーパー角θについては、10°、9°、7°、5°で検証を行った。なお、繊維屑排出部46の内径hは、テーパー角θによって決まる寸法である。また、繊維屑移送配管11の内部における空気の流速は1000m/minと想定し、繊維屑移送配管11の流入口における空気の質量流量を0.014896kg/sとした。
【0080】
実験例2で得られた検証結果によれば、空気排出部50の内径e及び繊維屑排出部46の内径hが一定の大きさであることを前提とした場合、
図8に示されるように、繊維屑排出部46から排出される空気の流量が増加すると、空気排出部50から排出される空気の流量が減少することが分かった。また、空気排出部50から排出される空気の流量は、テーパー角θが小さくなるにつれて減少する。その一方、繊維屑排出部46から排出される空気の流量は、テーパー角θが7°を分岐として、テーパー角θをそれ以上に小さくしても減少せずに横ばいとなっている。ところで、空気排出部50の内径e及び繊維屑排出部46の内径hを一定とし、テーパー角θを小さくすると、それにともなって傾斜部44のY方向長さfが大きくなる。傾斜部44のY方向長さfが大きくなるとサイクロン分離器30全体のY方向長さaが大きくなり、圧損が大きくなると考えられる。そのため、テーパー角を7°より小さくすると、空気排出部50から排出される空気の流量に対して、繊維屑排出部46から排出される空気の流量の割合が大きくなると考えられる。発明者の知見によれば、空気排出部50から排出される空気の流量よりも、繊維屑排出部46から排出される空気の流量の方が大きくなると、繊維屑と空気との分離が良好に行われなくなる。そのため、テーパー角θの下限は7°以上であることが好ましい。
【0081】
上述の実験例1及び実験例2の検証結果を総合すると、テーパー角θは、7°~10°(上限値及び下限値を含む)の範囲内であることが好ましいことが分かった。
【0082】
(実験例3)
実験例3では、繊維屑排出部46の内径hと、空気排出部50から排出される空気の流量に対する繊維屑排出部46から排出される空気の流量の割合との関係性について検証した。なお、空気排出部50の役割としては、繊維屑が分離された後の空気を外気に排出できればよいため、空気排出部50の内径eを例えば48mmで一定とした。実験の結果については図示を省略するが、繊維屑排出部46におけるY方向(負方向)の空気の流量(絶対値)は、繊維屑排出部46の内径hが大きくなるにつれて大きくなり、繊維屑排出部46の内径hが小さくなるにつれて小さくなる。一方、空気排出部50におけるY方向(正方向)の空気の流量(絶対値)については、繊維屑排出部46の内径hが大きくなるにつれて小さくなり、繊維屑排出部46の内径hが小さくなるにつれて大きくなる傾向にある。上述のとおり、発明者の知見によれば、繊維屑排出部46の内径hは、空気排出部50の内径eよりも小さい方が好ましい。しかし、繊維屑排出部46の内径hが27mm以下では、繊維屑排出部46からの繊維屑の排出が困難になることが分かった。なお、繊維屑排出部46の内径hが27mmの場合、空気排出部50から排出される空気の流量と、繊維屑排出部46から排出される空気の流量との比率は、概ね7対3である。この比率は繊維屑排出部46の内径hが大きくなるにつれて小さくなる。例えば、繊維屑排出部46の内径hが27mm~35mmの範囲内では、繊維屑排出部46の内径hが大きくなるにつれて、空気排出部50から排出される空気の流量と、繊維屑排出部46から排出される空気の流量との比率が小さくなる。そして、繊維屑排出部46の内径hが35mmになると、空気排出部50から排出される空気の流量と、繊維屑排出部46から排出される空気の流量との比率が、概ね1対1となることが分かった。上述のとおり、空気排出部50から排出される空気の流量に対して、繊維屑排出部46から排出される空気の流量の割合が大きくなると、繊維屑と空気との分離が良好に行われなくなるため、繊維屑排出部46の内径hは35mm以下であることが好ましい。
【0083】
なお、上記の実験例1、実験例2、及び実験例3は、上述したとおり75デニールの仮撚糸を用いて行った結果であるが、本発明者は、他の繊維についても同様の検証を行っている。その結果、仮撚糸、ポリエステル繊維、及びポリアミド繊維については、傾斜部44を、鉛直方向との間で成す角度が7~10[°](上下限値含む)の範囲内のテーパー状とすることで、繊維屑と空気とを精度よく分離でき、繊維屑排出部46が繊維屑で詰まってしまうことを防止することで繊維屑排出部46から繊維屑を良好に排出することができた。とくに、75~450デニールの仮撚糸、150デニールのPET、及びナイロンについては、顕著な効果が得られたことを確認している。
【0084】
本発明に係るサイクロン分離器及び本発明に係る繊維屑回収装置が備えるサイクロン分離器の一例である上述のサイクロン分離器30によれば、繊維屑移送配管11の管内を空気とともに移送する繊維屑を空気から分離し、分離した繊維屑を繊維屑回収容器13に回収するため、繊維屑が空気排出部50をとおって外部に排出されることを抑制できる。ところで、本体部32の内周壁35に沿って下方に移動する流れに乗れなかった繊維屑は、空気排出部50に流入し、空気排出部50をとおってサイクロン分離器30の外部(すなわち大気中)に排出される場合がある。とくに空気排出部50から外部に排出される繊維屑が糸屑である場合には、かかる糸屑が作業者に絡まる可能性もあり、安全面及び衛生面において好ましくない。さらに、複数のサイクロン分離器30が備えられる場合には、一のサイクロン分離器30の空気排出部50から排出される糸屑と、他のサイクロン分離器30の空気排出部50から排出される糸屑とが絡みあう可能性もある。そこで、本発明に係るサイクロン分離器及び本発明に係る繊維屑回収装置が備えるサイクロン分離器を、以下において、サイクロン分離器の他の例として説明するサイクロン分離器30Aのように構成するとなおよい。
【0085】
[サイクロン分離器の他の例]
図9は、本発明に係るサイクロン分離器及び本発明に係る繊維屑回収装置1が備えるサイクロン分離器の他の例である、サイクロン分離器30Aの一例を示す斜視図である。なお、サイクロン分離器30Aの説明においては、サイクロン分離器30と異なる構成についてのみ説明し、サイクロン分離器30と共通する構成についての説明は省略するものとする。また、
図9において、サイクロン分離器30と共通する部材については、サイクロン分離器30と同一の符号を付している。また、
図9において、
図7と同様に、上方向をY方向(正方向)とし、下方向をY方向(負方向)とする。
【0086】
図9を参照して、サイクロン分離器30Aは、本体部32から空気排出部50に流入してきた繊維屑のうち、とくに糸屑が外部に排出されないようにする機能を有する遮蔽部材60を備える。遮蔽部材60は、主に、外挿部材62と、部分閉塞部64とを有する。
【0087】
外挿部材62は、円筒状の管材である空気排出部50に外挿できるように円筒状に構成されている。空気排出部50に外挿部材62が外挿されたときに、空気排出部50と外挿部材62との間の隙間が極力小さい方が好ましい。
【0088】
部分閉塞部64は、外挿部材62の軸方向(径方向に直交する方向であって
図9に示されるY方向)のうち一方の端部に設けられており、外挿部材62が空気排出部50に外挿されたときに、空気排出部50の開口領域52に配置される。この開口領域52は、円筒状の空気排出部50の端部、すなわち空気排出部50と外部との境界部の開口領域である。部分閉塞部64は、開口領域52に配置されたときに、空気排出部50から外部への空気の排出を維持しつつ糸屑の外部への排出が遮られるように、開口領域52を部分的に塞ぐように構成されている。具体的には、部分閉塞部64は、例えば、複数の間隙66と、格子部68とを有する。格子部68は、格子状に形成された部位であり、空気排出部50から外部に排出される空気の流れ方向であるY方向(正方向)に対して直交するように設けられている。空気は、複数の間隙66をとおって外部に排出される。糸屑は、格子部68で捕捉され、外部に排出され難くなっている。ただし、上記の「空気排出部50の開口領域52」は、本発明の「空気排出口」に相当する。
【0089】
なお、部分閉塞部64は、外挿部材62の軸方向の端部に設けられることは必須でなく、空気排出部50に外挿部材62を外挿したときに開口領域52を部分的に塞ぐように配置できれば、外挿部材62の軸方向における任意の位置に設けられていてもよい。また、格子部68は、空気の流れ方向に対して直交するように設けられることは必須でなく、空気の流れ方向に対して傾斜するように設けられていてもよい。さらには、部分閉塞部64は、必ずしも、格子状に形成された格子部68を有することは必須でなく、格子状に形成された格子部68に代えて、例えば、網目状、格子状と網目状とを組み合わせた形状、又はその他の形状に形成された部位としてもよい。
【0090】
また、
図9に示される遮蔽部材60は、開口領域52を部分的に塞ぐように構成されているが、これに限定されない。すなわち、部分的に塞がれる部位は、必ずしも開口領域52に限定されず、糸屑が空気排出部50をとおって外部に排出されないように糸屑を遮ることができればよい。本体部32から空気排出部50に流入してから外部に排出されるまでの糸屑の通り道となる経路上において糸屑を捕捉できれば、かかる糸屑が外部に排出されてしまうことを抑制できる。よって、例えば、開口部38(
図4参照)、空気排出部50の円筒状の部分の下方端部50a(
図6参照)等が部分的に塞がれる構成であってもよい。すなわち、空気排出部50の円筒状の部分の下方端部50aと、開口領域52との間の任意の部位が部分的に塞がれる構成であれば、糸屑が空気排出部50をとおって外部に排出されてしまうことを遮ることが可能となる。
【0091】
ただし、遮蔽部材60によって捕捉された糸屑を容易に取り除くことができるように、円筒状の空気排出部50の末端となる開口領域52を部分的に塞ぐように遮蔽部材60が設けられていることが好ましい。とくに、
図9に示される遮蔽部材60は、外挿部材62を空気排出部50に外挿させるだけで、空気排出部50に対して遮蔽部材60を容易に着脱させることができる。よって、遮蔽部材60のメンテナンスを容易に行うことができる。
【0092】
また、サイクロン分離器30Aは、遮蔽部材60と繊維屑移送配管11とを連結する連結部材70を有する。この連結部材70は、例えばチェーンで構成されている。遮蔽部材60は、例えば、強風で飛ばされてしまったり、作業者が遮蔽部材60をサイクロン分離器30Aから取り外したとき等に、紛失される可能性がある。そこで、遮蔽部材60と繊維屑移送配管11とを連結部材70で連結することにより、遮蔽部材60の紛失を防止できる。ただし、連結部材70は、遮蔽部材60の紛失を防止できれば、遮蔽部材60と繊維屑移送配管11とを連結するものに限定されない。連結部材70は、遮蔽部材60を構成する任意の部材と、サイクロン分離器30Aを構成する任意の部材とを繋いでおくことができるものであればよい。
【0093】
図10は、サイクロン分離器30Aの平面図であって、部分閉塞部64の間隙66の開放率のバリエーションの一例を示す平面図であり、(A)開放率20%、(B)開放率40%、(C)開放率60%、(D)開放率80%、(E)開放率100%、である。なお、開放率は、開口領域52(
図9参照)の平面視における開口面積に対して、複数の間隙66の合計面積が占める割合である。
図10(E)に示される空気排出部50には遮蔽部材60が設けられていない。
【0094】
図10(A)~(D)に示されるように、複数の間隙66は、開口領域52(
図9参照)において均一となるように設けられていることが好ましい。例えば、間隙が開口領域52において均一ではなく特定の部位に偏っている場合には、空気の流れに悪い影響を与え、サイクロン分離器30Aによる空気と繊維屑との分離に悪い影響を与える可能性がある。例えば、平面視が円形の開口領域52のうち一方の半円部分が完全に塞がれるとともに残りの他方の半円部分が開放されている場合には、他方の半円部分に向かって空気が流れてしまう。そこで、開口領域52において複数の間隙66が万遍なく設けられることで、空気と繊維屑との分離に与える影響を極力小さくすることができ、ひいては空気排出部50からの糸屑の排出を抑制できるものと考えられる。
【0095】
[サイクロン分離器30Aの実験例]
ところで、上述したとおり、空気排出部50から排出される空気の流量よりも、繊維屑排出部46から排出される空気の流量の方が大きくなると、繊維屑と空気との分離が良好に行われなくなる。一方、上述の遮蔽部材60を備える場合、遮蔽部材60を備えない場合と比べて、空気排出部50から外部に排出される空気の流量が少なくなる。そのため、複数の間隙66が均一となるように設けられたとしても、繊維屑排出部46から排出される空気の流量が空気排出部50から排出される空気の流量を超えてしまうと、サイクロン分離器30Aによる空気と繊維屑との分離に悪い影響を与える可能性がある。なお、遮蔽部材60を備える場合、空気排出部50から排出される空気の流量は、遮蔽部材60から排出される空気の流量に相当する。
【0096】
そこで、本実施形態のサイクロン分離器30Aにおいて、好ましい開放率の実験を行った。この実験例の結果について、
図11を参照して説明する。
図11は、空気排出部50における空気の流量と、繊維屑排出部46における空気の流量との関係性を示す実験結果の一例である。なお、
図11に示される流量は、Y方向(
図9参照)のベクトル成分の流量をあらわしており、流量の値が正であるときは空気の流れがY方向(正方向)であることを示し、流量の値が負であるときは空気の流れがY方向(負方向)であることを示す。
【0097】
本実験では、開口領域52(
図9参照)の平面視における開口面積に対する開放率を0%、20%、40%、60%、80%、及び100%と変化させて、空気排出部50における空気の流量と、繊維屑排出部46における空気の流量とを測定した。なお、繊維屑移送配管11(
図9、
図10参照)の内部における空気の流速は1000m/minと想定し、繊維屑移送配管11の流入口において、空気の質量流量を0.014896kg/s、面積流量を0.754768m
3/min(0.012579m
3/sec)、密度を1.18415kg/m
3)とした。
【0098】
図11に示されるように、空気排出部50における空気の流量は、開放率が大きくなるにつれて大きくなる。また、繊維屑排出部46における空気の流量(絶対値)は、開放率が大きくなるにつれて小さくなる。
【0099】
ところで、上述したとおり、空気排出部50から排出される空気の流量よりも、繊維屑排出部46から排出される空気の流量(絶対値)の方が大きくなると、繊維屑と空気との分離が良好に行われなくなることが分かっている。
図11を参照すると、開放率40%を概ねの境界として、空気排出部50から排出される空気の流量と、繊維屑排出部46から排出される空気の流量(絶対値)とが逆転している。すなわち、開放率が40%以上であれば、繊維屑排出部46から排出される空気の流量(絶対値)よりも、空気排出部50から排出される空気の流量の方が大きい。これに対し、開放率が40%未満では、空気排出部50から排出される空気の流量よりも、繊維屑排出部46から排出される空気の流量(絶対値)の方が大きい。よって、遮蔽部材60は、サイクロン分離器30Aにおいて繊維屑と空気との分離が良好に行われるようにするために、部分閉塞部64における開口率が40%以上であることが好ましい。
【0100】
すなわち、繊維屑と空気との分離が良好に行われ且つ糸屑が空気排出部50から外部に排出されないようにするためには、部分閉塞部64における開口率を40%以上となるようにしつつ、開口領域52において複数の間隙66を万遍なく設ける必要がある。とくに、間隙66の大きさを糸屑の径(線径)よりも大きくすれば、空気排出部50から排出される空気の流量は、繊維屑排出部46から排出される空気の流量(絶対値)よりも大きくなる。すなわち、間隙66の大きさを糸屑の径よりも大きくすれば、部分閉塞部64における開口率を40%以上となるようにしつつ開口領域52において複数の間隙66を万遍なく設けることができる。言い換えると、複数の間隙66が糸屑の径よりも小さいと、複数の間隙66を万遍なく設けたとしても、糸屑と空気との分離が良好に行われなくなる可能性がある。
【0101】
なお、「間隙66の大きさ」は、間隙66の最大大きさが相当し、間隙が例えば
図10に示されるように弧状である場合には弧に沿った長さが相当する。また、「間隙66の最大大きさ」は、間隙が例えば真円形である場合には直径が相当し、間隙が例えば楕円形である場合には長軸の長さすなわち長径が相当し、間隙が例えば平行四辺形である場合には2つの対角線のうち長い方の対角線の長さが相当する。
【0102】
このように、遮蔽部材60を、間隙66を糸屑の径よりも大きくして開放率を40%以上にしつつ、このような間隙66を万遍なく設ける構成とすることで、繊維屑排出部46から排出される空気の流量よりも空気排出部50から排出される空気の流量の方が大きいといった関係が維持されるようになる。その結果、繊維屑と空気との良好な分離を維持しつつ、少なくとも糸屑が空気排出部50をとおって外部に排出されることを抑制することができる。ひいては、空気排出部50をとおって外部に排出された糸が作業者に絡まないようにすることが可能となる。
【0103】
ところで、遮蔽部材60で遮蔽する対象が例えば粉状のもの(以下「粉状物」と称する)であれば、間隙66を粉状物の径よりも大きくすると、空気と分離された後の粉状物が間隙66を通過して外部に排出されるおそれがある。これに対し、本実施形態では、遮蔽部材60で遮蔽する対象が糸屑であり、糸屑は柔軟性があって撓むだけでなく粉状物と異なり長さを有するから、間隙66が糸屑の径より大きかったとしても、ただちに糸屑が間隙66を通過して外部に排出されるというものではない。なお、糸屑が間隙66を通過できないまたは通過し難くするためには、間隙66の大きさを20mm以下とすることが好ましい。ただし、間隙66の大きさが20mmを超えたとしても、糸屑が外部に排出されないようにするといった遮蔽部材としての機能は果たされる。
【0104】
[変形例]
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。例えば、次のように変更して実施してもよい。
【0105】
(第1変形例)
上述の実施形態では、部分閉塞部64から糸屑が排出されないように遮蔽部材60を設けているが、部分閉塞部64をとおって糸屑が大気中に排出されなければ、例えば
図12に示されるように、空気排出部50の外側において糸屑が捕捉されるようにしてもよい。すなわち、上述の実施形態では、遮蔽部材60は、外挿部材62が空気排出部50に外挿されたときに、部分閉塞部64が開口領域52に配置され、開口領域52を部分的に塞ぐように構成されている。また、開口領域52を部分的に塞ぐことに限定されず、空気排出部50の円筒状の部分の下方端部50a(
図6参照)と、開口領域52との間の任意の部位が部分的に塞がれる構成であればよい旨を上述した。ここで、開口領域52を部分的に塞ぐ態様、及び、下方端部50aと開口領域52との間の任意の部位を部分的に塞ぐ態様は、いずれも、空気排出部50よりも内部側(すなわち大気側とは反対側)の領域を塞ぐ態様である。このような態様に代えて、第1変形例では、空気排出部50の外側において糸屑が捕捉されるようにしている。
【0106】
図12は、第1変形例に係るサイクロン分離器301を示す概略図である。サイクロン分離器301は、遮蔽部材601の構成がサイクロン分離器30Aと異なるだけであるため、第1変形例では、遮蔽部材601の構成についてのみ説明する。なお、サイクロン分離器301を構成する部材のうち遮蔽部材601を除く構成については、サイクロン分離器30,30Aと共通するため説明を省略するとともに、
図12においてサイクロン分離器30,30Aと同一の符号を付している。また、
図12において、
図9と同様に、上方向をY方向(正方向)とし、下方向をY方向(負方向)とする。
【0107】
図12に示されるサイクロン分離器301が備える遮蔽部材601は、遮蔽部材60(
図9参照)と同様に、主に、外挿部材621と、部分閉塞部641とを有する。
【0108】
外挿部材621は、外挿部材62(
図9参照)と同様に、円筒状の管材である空気排出部50に外挿できるように円筒状に構成されている。ただし、外挿部材621のY方向長さが、空気排出部50のY方向長さよりも大きい。そのため、外挿部材621が空気排出部50に外挿されたときに、空気排出部50の開口領域52に部分閉塞部641が配置されるのではなく、空気排出部50よりも外側に部分閉塞部641が配置される。なお、
図12では、外挿部材621が空気排出部50に外挿された態様を二点鎖線で示し、外挿部材621が空気排出部50に外挿されていない態様を実線で示している。
【0109】
このように、遮蔽部材は、空気排出部50から糸屑が排出されないように設けられることは必須でなく、空気排出部50よりも外側において、糸屑が大気中に排出されないように捕捉されるようにしてもよい。このような場合であっても、繊維屑排出部46に向かう流れに乗れずに空気排出部50に向かった糸屑は、部分閉塞部64で捕捉されるため、空気排出部50をとおって外部に排出されることを抑制できる。また、間隙66の大きさを糸屑の径よりも大きくしつつ空気が外部に向けて通過する領域において複数の間隙66を万遍なく設けることで、繊維屑排出部46から排出される空気の流量(絶対値)よりも、空気排出部50から排出される空気の流量の方が大きくなり、繊維屑と空気との分離が良好に行われ且つ糸屑が空気排出部50から外部に排出されないようにすることができる。なお、空気排出部50から排出される空気の流量は、遮蔽部材601から排出される空気の流量に相当する。
【0110】
また、上述の実施形態では、各繊維屑移送配管11(11a~11d)に対応するサイクロン分離器30を、複数の繊維屑移送配管11(11a~11d)のそれぞれと、一つの繊維屑回収容器13との間に設けた形態を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。例えば、後述の第2変形例~第5変形例に示される形態であってもよい。
【0111】
(第2変形例)
図13は、第2変形例に係る繊維屑回収装置1Aを示す概略図である。
図13を参照して、第2変形例の形態では、繊維屑回収装置1Aは、複数の繊維屑移送配管11(11a~11d)のそれぞれ対応して、複数の繊維屑回収容器13(13a~13d)と、複数のサイクロン分離器30(30a~30d)とを備えている。
【0112】
詳しくは、繊維屑回収容器13は、第1繊維屑移送配管11aに対応する第1繊維屑回収容器13aと、第2繊維屑移送配管11bに対応する第2繊維屑回収容器13bと、第3繊維屑移送配管11cに対応する第3繊維屑回収容器13cと、第4繊維屑移送配管11dに対応する第4繊維屑回収容器13dとが設けられている。さらに、サイクロン分離器30(30a~30d)は、第1繊維屑移送配管11aと第1繊維屑回収容器13aとの間に設けられる第1サイクロン分離器30aと、第2繊維屑移送配管11bと第2繊維屑回収容器13bとの間に設けられる第2サイクロン分離器30bと、第3繊維屑移送配管11cと第3繊維屑回収容器13cとの間に設けられる第3サイクロン分離器30cと、第4繊維屑移送配管11dと第4繊維屑回収容器13dとの間に設けられる第4サイクロン分離器30dとが設けられている。第1繊維屑移送配管11a~第4繊維屑移送配管11dは、いずれも、長手方向がサイクロン分離器30の本体部(参照符号なし)の内周壁(参照符号なし)に沿うように、本体部(参照符号なし)に接続されている。すなわち、
図5を参照して説明した繊維屑移送配管11(11a~11d)と同様に、平面視において、第1繊維屑移送配管11a~第4繊維屑移送配管11dがサイクロン分離器30(30a~30d)の本体部の円筒部の接線となるように、本体部に接続されている。
【0113】
このような第2変形例に示される形態であっても、空気から繊維屑を好適に分離することができ、繊維屑排出部46(
図4参照)から繊維屑を良好に排出できるとともに、繊維屑が分離された空気を空気排出部50(
図4参照)から良好に排出することができる。
【0114】
(第3変形例)
図14は、第3変形例に係る繊維屑回収装置1Bを示す概略図である。
図14を参照して、第3変形例の形態では、繊維屑回収装置1Bは、複数の繊維屑移送配管11(11a~11d)と、一つの繊維屑回収容器13と一つのサイクロン分離器30とを備えている。
【0115】
サイクロン分離器30は、複数の繊維屑移送配管11(11a~11d)と、繊維屑回収容器13との間に設けられている。複数の繊維屑移送配管11(11a~11d)は、サイクロン分離器30の上流側で合流しており、合流後の配管の長手方向がサイクロン分離器30の本体部(参照符号なし)の内周壁(参照符号なし)に沿うように、本体部に接続されている。すなわち、
図5を参照して説明した繊維屑移送配管11と同様に、平面視において、合流後の配管(参照符号なし)がサイクロン分離器30の本体部の円筒部の接線となるように、本体部に接続されていることが好ましい。
【0116】
このような第3変形例に示される形態であっても、空気から繊維屑を好適に分離することができ、繊維屑排出部46(
図4参照)から繊維屑を良好に排出できるとともに、繊維屑が分離された空気を空気排出部50(
図4参照)から良好に排出することができる。
【0117】
なお、第3変形例の形態では、複数の繊維屑移送配管11(11a~11d)の全部が、一つのサイクロン分離器30の上流側で合流しているが、これに代えて、サイクロン分離器30を複数設けて、複数の繊維屑移送配管11(11a~11d)のうち2以上の繊維屑移送配管がサイクロン分離器30の上流側で合流するようにしてもよい。例えば、2つの繊維屑移送配管が一のサイクロン分離器の上流側で合流し、合流した状態で一のサイクロン分離器に接続されるとともに、他の2つの繊維屑移送配管が他のサイクロン分離器の上流側で合流し、合流した状態で他のサイクロン分離器に接続されるようにしてもよい。
【0118】
(第4変形例)
図15は、第4変形例に係るサイクロン分離器30の平面図である。
図15では、便宜上、空気排出部50も示されている。第4変形例の繊維屑回収装置(参照符号なし)は、第3変形例の繊維屑回収装置1Bと同様に、複数の繊維屑移送配管11(11a~11d)と、一つの繊維屑回収容器(参照符号なし)と、一つのサイクロン分離器30とを備えている。なお、第3変形例では、複数の繊維屑移送配管11(11a~11d)がサイクロン分離器30の上流側で合流しているが、第4変形例では、これに代えて、一つのサイクロン分離器30Cに対して、複数の繊維屑移送配管11(11a~11d)が接続されている。
【0119】
詳しくは、
図15を参照して、第4変形例の形態では、第1繊維屑移送配管11aと、第2繊維屑移送配管11bと、第3繊維屑移送配管11cと、第4繊維屑移送配管11dとが、一つのサイクロン分離器30の本体部32の周方向にずれた位置に接続されている。第1繊維屑移送配管11a~第4繊維屑移送配管11dは、いずれも、長手方向がサイクロン分離器30の本体部32の内周壁35に沿うように、本体部32に接続されている。すなわち、
図5を参照して説明した繊維屑移送配管11と同様に、平面視において、第1繊維屑移送配管11a~第4繊維屑移送配管11dがサイクロン分離器30の本体部32の円筒部34の接線となるように、本体部32に接続されている。このような第4変形例に示される形態であっても、空気から繊維屑を好適に分離することができ、繊維屑排出部46から繊維屑を良好に排出できるとともに、繊維屑が分離された空気を空気排出部50から良好に排出することができる。
【0120】
なお、
図15に示される第1繊維屑移送配管11a~第4繊維屑移送配管11dは、いずれも、本体部32の上部に接続されていることが好ましい。ただし、第1繊維屑移送配管11a~第4繊維屑移送配管11dの全部が上下方向において同じ位置であることは必須でなく、第1繊維屑移送配管11a~第4繊維屑移送配管11dのうち一部または全部が、上下方向にずれて接続されていてもよい。
【0121】
(第5変形例)
図16は、第5変形例に係るサイクロン分離器30の斜視図である。なお、
図16では、便宜上、空気排出部50も示されている。第5変形例の繊維屑回収装置(参照符号なし)は、第3変形例の繊維屑回収装置1Bと同様に、複数の繊維屑移送配管11(11a~11d)と、一つの繊維屑回収容器(参照符号なし)と、一つのサイクロン分離器30とを備えている。
【0122】
図16を参照して、第5変形例の形態では、第1繊維屑移送配管11aと、第2繊維屑移送配管11bと、第3繊維屑移送配管11cと、第4繊維屑移送配管11dとが、一つのサイクロン分離器30の本体部32の上下方向にずれた位置に接続されている。第1繊維屑移送配管11a~第4繊維屑移送配管11dは、いずれも、長手方向がサイクロン分離器30の本体部32の内周壁35に沿うように、本体部32に接続されている。すなわち、
図5を参照して説明した繊維屑移送配管11と同様に、平面視において、第1繊維屑移送配管11a~第4繊維屑移送配管11dがサイクロン分離器30の本体部32の円筒部34の接線となるように、本体部32に接続されている。このような第5変形例に示される形態であっても、空気から繊維屑を好適に分離することができ、繊維屑排出部46から繊維屑を良好に排出できるとともに、繊維屑が分離された空気を空気排出部50から良好に排出することができる。
【0123】
なお、
図16に示される第1繊維屑移送配管11a~第4繊維屑移送配管11dは、いずれも、上下方向には互いにずれているものの、本体部32の周方向の同じ位置において本体部32と接続されているが、これは必須でない。例えば、第1繊維屑移送配管11a~第4繊維屑移送配管11dのうち少なくとも一つまたは全部が、本体部32の周方向にずれた位置において本体部32と接続されていてもよい。
【0124】
(その他の変形例)
上述の実施形態では、繊維屑回収装置1が仮撚加工機101に設置される形態を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。繊維屑回収装置1が、仮撚加工機101以外の繊維機械において設置される形態が実施されてもよい。例えば、繊維屑回収装置1が、紡績装置において設置される形態が実施されてもよい。
【0125】
上述の実施形態では、巻取装置107が上下方向に沿って4段設けられた仮撚加工機101に設置される形態を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。巻取装置107が上下方向に沿って3段以下或いは5段以上設けられた仮撚加工機101に設置される形態が実施されてもよい。この場合、上下方向に並ぶ巻取装置107の段数に応じた数の繊維屑移送配管11が設けられていてもよい。
【0126】
上述の実施形態では、繊維屑移送配管11が複数設けられた形態を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。繊維屑移送配管11が1つのみ設けられた形態が実施されてもよい。
【0127】
上述の実施形態では、空気排出部50が円筒状である旨を説明したが、空気排出部50は筒状であればよく、円筒状に限定されない。空気排出部が円筒状でない筒状の場合、外挿部材62は、筒状の空気排出部に外挿できる筒状とすることが好ましい。外挿部材621についても同様に、空気排出部が円筒状でない筒状の場合には、筒状の空気排出部に外挿できる筒状とすることが好ましい。
【0128】
今回開示された実施の形態は全ての点で例示であり、制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の基本的な範囲は、上記の実施の形態ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0129】
1 繊維屑回収装置
11 繊維屑移送配管
13 繊維屑回収容器
15 吸い込み部
30 サイクロン分離器
32 本体部
42 テーパー部
44 傾斜部
46 繊維屑排出部
50 空気排出部
52 開口領域
60 遮蔽部材
66 間隙
Y 繊維