(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173771
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】医用情報処理装置、医用情報処理システム、および医用情報処理方法
(51)【国際特許分類】
G16H 50/20 20180101AFI20241205BHJP
【FI】
G16H50/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024086114
(22)【出願日】2024-05-28
(31)【優先権主張番号】P 2023088611
(32)【優先日】2023-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田古島 太郎
(72)【発明者】
【氏名】前田 伊知朗
(72)【発明者】
【氏名】寺井 公一
(72)【発明者】
【氏名】吉脇 正泰
(72)【発明者】
【氏名】山崎 裕之
(72)【発明者】
【氏名】渋谷 真人
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA03
(57)【要約】
【課題】臨床データの解析アプリケーションの選択を適切且つ簡便に行うことである。
【解決手段】実施形態の医用情報処理装置は、取得部と、選定部と、を持つ。取得部は、被検体の臨床データを取得する。選定部は、臨床データの解析を行う複数種の解析アプリケーションの解析結果に対するユーザのレポートデータに基づいて、取得された臨床データの解析を行う1以上の解析アプリケーションを選定する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の臨床データを取得する取得部と、
臨床データの解析を行う複数種の解析アプリケーションの解析結果に対するユーザのレポートデータに基づいて、取得された前記臨床データの解析を行う1以上の解析アプリケーションを選定する選定部と、
を備える、医用情報処理装置。
【請求項2】
前記選定部は、前記レポートデータにおいて前記ユーザにより選択された前記解析結果を生成した解析アプリケーションの種類に基づいて、前記1以上の解析アプリケーションを選定する、
請求項1に記載の医用情報処理装置。
【請求項3】
前記選定部は、前記解析アプリケーションの種類に加えて、前記レポートデータに含まれる前記解析結果と紐付けられる付帯情報に基づいて、前記1以上の解析アプリケーションを選定する、
請求項2に記載の医用情報処理装置。
【請求項4】
前記付帯情報は、前記ユーザの所見を示す情報および前記臨床データのオーダ情報の少なくとも一方を含む、
請求項3に記載の医用情報処理装置。
【請求項5】
前記選定部は、臨床データが入力されたときに当該臨床データの解析を行う解析アプリケーションの候補を出力するように学習された学習モデルに対して、取得された前記臨床データを入力することにより前記学習モデルから出力される前記解析アプリケーションの候補を、前記1以上の解析アプリケーションとして選定する、
請求項1に記載の医用情報処理装置。
【請求項6】
前記レポートデータを学習することで前記学習モデルを生成する学習部をさらに備える、
請求項5に記載の医用情報処理装置。
【請求項7】
前記選定部は、前記レポートデータに含まれる前記解析結果を生成した解析アプリケーションの統計データに基づいて、前記1以上の解析アプリケーションを選定する、
請求項1に記載の医用情報処理装置。
【請求項8】
選定された前記1以上の解析アプリケーションを実行する実行部と、
実行された前記1以上の解析アプリケーションの解析結果を提供する提供部と、
をさらに備える、
請求項1から7の何れか一項に記載の医用情報処理装置。
【請求項9】
前記取得部は、前記レポートデータを、レポートシステムから取得する、
請求項1から7の何れか一項に記載の医用情報処理装置。
【請求項10】
前記選定部は、前記ユーザによる前記解析結果の参照時間または参照回数に基づいて、前記1以上の解析アプリケーションを選定する、
請求項1から7の何れか一項に記載の医用情報処理装置。
【請求項11】
前記学習モデルは、入力データの数または種類が異なる複数の学習モデルを含み、
前記選定部は、取得された前記臨床データに応じて前記複数の学習モデルの中から1以上の学習モデルを選択し、前記1以上の解析アプリケーションを選定する、
請求項5または6に記載の医用情報処理装置。
【請求項12】
医用情報処理装置と、レポートシステムとを備える医用情報処理システムであって、
前記レポートシステムは、臨床データの解析を行う複数種の解析アプリケーションの解析結果に対してユーザが過去に作成したレポートデータを記憶し、
前記医用情報処理装置は、
前記レポートシステムに記憶された前記レポートデータを学習することで、臨床データが入力されたときに当該臨床データの解析を行う解析アプリケーションの候補を出力する学習モデルを生成する学習部と、
新たな解析の対象となる被検体の臨床データを取得する取得部と、
生成された前記学習モデルに対して、取得された前記新たな解析の対象となる被検体の臨床データを入力することにより前記学習モデルから出力される前記解析アプリケーションの候補を、取得された前記新たな解析の対象となる被検体の臨床データの解析を行う1以上の解析アプリケーションとして選定する選定部と、
を備える、
医用情報処理システム。
【請求項13】
医用情報処理装置と、レポートシステムとを備える医用情報処理システムであって、
前記レポートシステムは、臨床データの解析を行う複数種の解析アプリケーションの解析結果に対してユーザが過去に作成したレポートデータを記憶し、
前記医用情報処理装置は、
新たな解析の対象となる被検体の臨床データを取得する取得部と、
前記レポートデータに含まれる前記解析結果を生成した解析アプリケーションの統計データに基づいて、取得された前記新たな解析の対象となる被検体の臨床データの解析を行う1以上の解析アプリケーションを選定する選定部と、
を備える、
医用情報処理システム。
【請求項14】
コンピュータが、
被検体の臨床データを取得し、
臨床データの解析を行う複数種の解析アプリケーションの解析結果に対するユーザのレポートデータに基づいて、取得された前記臨床データの解析を行う1以上の解析アプリケーションを選定する、
医用情報処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、医用情報処理装置、医用情報処理システム、および医用情報処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医用画像診断装置により撮像された医用画像等の臨床データを解析し、所望の解析結果を得る解析アプリケーション(以下「解析アプリ」という)が知られている。医師は、解析アプリから得られた解析結果を参照することで、患者の診断や、診断結果のレポート作成を正確且つスムーズに行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-218220号公報
【特許文献2】特開2013-178796号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
解析アプリには、解析対象の臨床データの種類や解析の目的に応じて、様々な種類のアプリケーションが存在する。診断に適した解析アプリを優先的に選定し、有用な解析結果を医師に提供することが望ましい。しかしながら、解析アプリの選定を自動的に行うためには、医師からの解析結果の有用性に関するフィードバックを受け、フィードバックに基づいて複数の解析アプリの中から適切なアプリを選択する仕組みが必要となる。
【0005】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題は、臨床データの解析アプリケーションの選択を適切且つ簡便に行うことである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の医用情報処理装置は、取得部と、選定部と、を持つ。取得部は、被検体の臨床データを取得する。選定部は、臨床データの解析を行う複数種の解析アプリケーションの解析結果に対するユーザのレポートデータに基づいて、取得された臨床データの解析を行う1以上の解析アプリケーションを選定する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態に係る医用情報処理システムSの構成の一例を示す図。
【
図2】実施形態に係る解析サーバ1の構成の一例を示す機能ブロック図。
【
図3A】実施形態に係る学習モデルMD1の入出力データの一例を示す図。
【
図3B】実施形態に係る学習モデルMD2の入出力データの一例を示す図。
【
図3C】実施形態に係る学習モデルMD3の入出力データの一例を示す図。
【
図4】実施形態に係る端末装置3の構成の一例を示す機能ブロック図。
【
図5】実施形態に係るレポートシステム7に記憶されるレポートデータRD一例を示す図。
【
図6】実施形態に係る医用情報処理システムSにおけるレポートデータRDの登録処理の一例を示すシーケンス図。
【
図7】実施形態に係る端末装置3に表示されるレポート作成画面P1の一例を示す図。
【
図8】実施形態に係る医用情報処理システムSにおける学習処理の一例を示すシーケンス図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、実施形態の医用情報処理装置、医用情報処理システム、および医用情報処理方法について説明する。実施形態の医用情報処理システムは、各種解析アプリの解析結果の正確性や有益性に関するフィードバックをユーザから取得し、当該フィードバックに基づいて状況に応じた最適な解析アプリの選択を可能にする。
【0009】
[医用情報処理システムの構成]
図1は、実施形態に係る医用情報処理システムSの構成の一例を示す図である。医用情報処理システムSは、例えば、解析サーバ1と、端末装置3と、画像保存通信システム(PACS:Picture Archiving and Communication System)5と、レポートシステム7と、病院情報システム(HIS:Hospital Information System)9と、および一以上のモダリティMとを備える。解析サーバ1、端末装置3、PACS5、レポートシステム7、HIS9、およびモダリティMは、通信ネットワークNWを介して、互いに通信可能に接続されている。通信ネットワークNWは、電気通信技術を利用した情報通信網全般を意味する。例えば、通信ネットワークNWは、病院基幹LAN(Local Area Network)等の無線/有線LANやインターネット網のほか、電話通信回線網、光ファイバ通信ネットワーク、ケーブル通信ネットワークおよび衛星通信ネットワーク等を含む。
【0010】
[モダリティ]
モダリティMは、被検体の臨床データを取得する医用装置である。モダリティMは、例えば、X線CT(Computed Tomography)装置、X線診断装置、磁気共鳴イメージング装置、超音波診断装置、核医学診断装置、心電計、脈拍計等を含む。モダリティMは、例えば、医師や技師等により操作される。モダリティMにより生成された臨床データは、解析サーバ1やPACS5に送信される。以下において、モダリティMが、X線CT装置である場合を例に挙げて説明する。
【0011】
[解析サーバ]
解析サーバ1は、モダリティMから送信される臨床データやHIS9から送信されるオーダ情報および電子カルテ情報に基づいて、解析アプリを選定および実行し、解析アプリの解析結果を端末装置3に送信する。また、解析サーバ1は、レポートシステム7から送信されるフィードバック情報に基づいて、解析アプリの選定のための処理を行う。解析サーバ1は、「医用情報処理装置」の一例である。
【0012】
図2は、実施形態に係る解析サーバ1の構成の一例を示す機能ブロック図である。解析サーバ1は、例えば、処理回路10と、メモリ12とを備える。処理回路10は、解析サーバ1の全体の動作を制御する。処理回路10は、例えば、取得機能101と、選定機能103と、実行機能105と、提供機能107と、学習機能109とを実行する。これらの機能は、例えば、ハードウェアプロセッサ(コンピュータ)がメモリ12に格納されたプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。ハードウェアプロセッサとは、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、特定用途向け集積回路(ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device; SPLD)または複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device; CPLD)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array; FPGA))等の回路(circuitry)を意味する。メモリ12にプログラムを記憶させる代わりに、ハードウェアプロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むように構成しても構わない。この場合、ハードウェアプロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。ハードウェアプロセッサは、単一の回路として構成されるものに限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのハードウェアプロセッサとして構成され、各機能を実現するようにしてもよい。また、複数の構成要素を1つのハードウェアプロセッサに統合して各機能を実現するようにしてもよい。
【0013】
取得機能101は、モダリティMから送信される臨床データやHIS9から送信されるオーダ情報および電子カルテ情報を取得する。また、取得機能101は、レポートシステム7から送信されるフィードバック情報(ユーザのレポートデータ)を取得する。取得機能101は、「取得部」の一例である。
【0014】
選定機能103は、臨床データの解析を行う複数種の解析アプリケーションの解析結果に対するフィードバック情報(ユーザのレポートデータ,ユーザにより選択された解析結果を生成した解析アプリケーションの種類,ユーザにより選択されなかった解析結果を生成した解析アプリケーションの種類)に基づいて、予めメモリ12に格納されている複数種の解析アプリの中から、取得機能101により取得された臨床データの解析を行う1以上の解析アプリを選定する。選定機能103は、例えば、臨床データがCT画像データである場合、当該CT画像データに付帯されるDICOM(Digital Imaging and Communication in Medicine)規格に準拠した形式の情報(以下「DICOMタグ」ともいう)に応じて、解析アプリを選定する。DICOMタグには、モダリティ情報、撮影条件(検査対象の対象部位情報、撮影プロトコル等)、検査ID、被検体ID等の情報が含まれる。選定機能103は、「選定部」の一例である。
【0015】
また、選定機能103は、解析アプリケーションの種類に加えて、レポートデータに含まれる解析結果と紐付けられる付帯情報に基づいて、1以上の解析アプリケーションを選定する。付帯情報は、ユーザの所見(疑い病名等)を示す情報および臨床データのオーダ情報の少なくとも一方を含む。
【0016】
選定機能103は、例えば、メモリ12に予め格納された学習モデルMDを用いて、解析アプリを選定する。学習モデルMDは、臨床データ、オーダ情報、および電子カルテ情報等が入力されたときに、実行対象とする解析アプリの候補(以下「解析アプリ候補」という)を出力するように学習されたモデルである。学習モデルMDは、ニューラルネットワーク、サポートベクターマシン、決定木等の様々な記述方法により生成される。ニューラルネットワークは、例えば、オートエンコーダ、畳み込みニューラルネットワーク(CNN:Convolutional Neural Network)、再帰型ニューラルネットワーク(RNN:Recurrent Neural Network:)等を含む。選定機能103は、学習モデルMDに対して臨床データ、オーダ情報、および電子カルテ情報等を入力し、学習モデルMDの出力である解析アプリ候補を取得する。
【0017】
図3Aは、実施形態に係る学習モデルMD1の入出力データの一例を示す図である。学習モデルMD1は、オーダ情報OI、モダリティ情報MI、および対象部位情報TIを入力データとし、1つの解析アプリ候補ACを出力データとする。オーダ情報OIは、例えば、検査目的を含む。モダリティ情報MIは、DICOMタグから取得されるモダリティ(画像種)を識別する情報である。対象部位情報TIは、DICOMタグから取得される検査対象の部位を示す情報である。
【0018】
図3Bは、実施形態に係る学習モデルMD2の入出力データの一例を示す図である。学習モデルMD2は、オーダ情報OI、モダリティ情報MI、および対象部位情報TIを入力データとし、3つの解析アプリ候補AC1~AC3を出力データとする。3つの解析アプリ候補AC1~AC3は、ニューラルネットワークのソフトマックス関数等を用いることにより優先順位付けがなされたものであってもよい。出力データとなる解析アプリ候補の数は任意であり、2つまたは4つ以上であってもよい。
【0019】
図3Cは、実施形態に係る学習モデルMD3の入出力データの一例を示す図である。学習モデルMD2は、オーダ情報OI、モダリティ情報MI、および対象部位情報TIに加えて、所見情報DIを入力データとし、1つの解析アプリ候補ACを出力データとする。所見情報DIは、例えば、オーダ情報や電子カルテ情報から取得される被検体の病状に関する医師の診断結果を示す情報である。出力データとなる解析アプリ候補の数は任意であり、2つ以上であってもよい。
【0020】
すなわち、選定機能103は、臨床データが入力されたときに当該臨床データの解析を行う解析アプリケーションの候補を出力するように学習された学習モデルMDに対して、取得された臨床データを入力することにより学習モデルMDから出力される解析アプリケーションの候補を、1以上の解析アプリケーションとして選定する。
【0021】
尚、選定機能103は、機械学習技術に基づく学習モデルではなく、レポートデータに含まれる解析結果を生成した解析アプリケーションの統計データ(後述するキー画像として選択された解析結果の出力元となった解析アプリの統計データ)或いはレポートデータに含まれない解析結果を生成した解析アプリケーションの統計データ(後述するキー画像として選択されなかった解析結果の出力元となった解析アプリの統計データ)に基づいて、1以上の解析アプリケーションとして選定してもよい。
【0022】
図2に戻り、実行機能105は、選定機能103により選定された解析アプリを実行する。選定機能103により複数の解析アプリが選定されている場合には、実行機能105は、複数の解析アプリの各々を実行する。実行機能105は、「実行部」の一例である。
【0023】
提供機能107は、実行機能105により実行された解析アプリから出力される解析結果を端末装置3に送信する。これにより端末装置3には、解析結果が表示される。また、提供機能107は、取得機能101により取得された臨床データ(CT画像データ)を端末装置3に送信してもよい。提供機能107は、「提供部」の一例である。
【0024】
学習機能109は、取得機能101により取得されたレポートシステム7からのフィードバック情報(レポートデータ)を用いて学習処理を行うことにより、学習モデルMDを生成して、メモリ12に格納する。学習機能109は、「学習部」の一例である。学習機能109の処理の詳細については後述する。
【0025】
メモリ12は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等により実現される。メモリ12は、例えば、学習モデルMD、第1解析アプリAP1、第2解析アプリAP2、第3解析アプリAP3、第4解析アプリAP4等を記憶する。これらのデータは、メモリ12ではなく(或いはメモリ12に加えて)、解析サーバ1が通信可能な外部メモリに記憶されてもよい。外部メモリは、例えば、外部メモリを管理するクラウドサーバが読み書きの要求を受け付けることで、クラウドサーバによって制御されるものである。
【0026】
[端末装置]
図1に戻り、端末装置3は、解析サーバ1により提供される解析結果を参照し、解析結果に基づくレポートデータを生成するための装置である。端末装置3は、例えば、医師、技師等のユーザ(以下「医師D」という)によって操作される。端末装置3は、例えば、パーソナルコンピュータ、タブレットやスマートフォン等の携帯端末等である。
図4は、実施形態に係る端末装置3の構成の一例を示す機能ブロック図である。端末装置3は、例えば、処理回路30と、メモリ32と、入力インタフェース34と、ディスプレイ36とを備える。
【0027】
処理回路30は、例えば、取得機能301と、決定機能303と、レポート機能305と、表示制御機能307とを実行する。これらの機能は、例えば、ハードウェアプロセッサ(コンピュータ)がメモリ32に格納されたプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。
【0028】
取得機能301は、解析サーバ1から送信される解析結果および臨床データ(CT画像データ)を取得する。
【0029】
決定機能303は、入力インタフェース34を介した医師Dの操作に基づいて、解析結果の中から、医師Dが診断に有益なものとして選択した解析結果(画像)を、キー画像として決定する。決定機能303の処理の詳細については後述する。
【0030】
レポート機能305は、入力インタフェース34を介した医師Dの操作に基づいて、レポートデータを生成する。レポート機能305は、例えば、メモリ32に予め格納されたレポート作成アプリRAを実行する。レポートデータは、例えば、決定機能303により決定されたキー画像に加えて、当該キー画像に紐づく医師Dの所見情報を含む。レポート機能305の処理の詳細については後述する。
【0031】
表示制御機能307は、取得機能301により取得された解析結果や、医師Dによる各種操作を受け付けるGUI(Graphical User Interface)画像等を、ディスプレイ36に表示させる。表示制御機能307は、例えば、メモリ32に予め格納されたビューアアプリVAを実行し、解析結果をディスプレイ36に表示させる。
【0032】
メモリ32は、例えば、RAM、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等により実現される。メモリ32は、例えば、ビューアアプリVA、レポート作成アプリRA等を記憶する。これらのデータは、メモリ32ではなく(或いはメモリ32に加えて)、端末装置3が通信可能な外部メモリに記憶されてもよい。
【0033】
入力インタフェース34は、医師Dによる各種の入力操作を受け付け、受け付けた入力操作の内容を示す電気信号を処理回路30に出力する。例えば、入力インタフェース34は、キー画像の選択、所見情報の入力等の操作を受け付ける。例えば、入力インタフェース34は、マウスやキーボード、タッチパネル、ドラッグボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック、カメラ、赤外線センサ、マイク等により実現される。尚、本明細書において入力インタフェースはマウス、キーボード等の物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、装置とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を制御回路へ出力する電気信号の処理回路も入力インタフェースの例に含まれる。
【0034】
ディスプレイ36は、各種の情報を表示する。例えば、ディスプレイ36は、処理回路30によって生成されたビュー画面、レポート作成画面、医師Dによる各種操作を受け付けるGUI画像等を表示する。ディスプレイ36は、例えば、液晶ディスプレイやCRT(Cathode Ray Tube)、有機EL(Electroluminescence)ディスプレイ等である。ディスプレイ36は、デスクトップ型でもよいし、端末装置3の本体部と無線通信可能な表示装置(例えばタブレット端末)であってもよい。
【0035】
[PACS]
図1に戻り、PACS5は、各種医用画像データを管理する。PACS5は、例えば、各種モダリティMにより取得された臨床データCD、解析サーバ1により取得された解析結果である解析データAD等を記憶および管理する。
【0036】
[レポートシステム]
レポートシステム7は、端末装置3を介した医師Dによる操作に基づいて作成されたレポートデータRDを記憶および管理する。
図5は、実施形態に係るレポートシステム7に記憶されるレポートデータRD一例を示す図である。レポートデータRDは、例えば、被検体を識別する被検体IDに対して、キー画像として採用された解析結果の出力元の解析アプリ、オーダ情報、モダリティ情報、医師Dの所見情報等が紐付けられている。レポートデータRDは、解析結果の数値情報を含んでいてもよい。
【0037】
[HIS]
HIS9は、病院内での業務支援を行うコンピュータシステムである。HIS9は、各種サブシステムを有する。各種サブシステムとしては、例えば、電子カルテシステム91、オーダシステム93等が含まれる。医師Dは、端末装置3を介して、電子カルテシステム91を利用することで、被検体の電子カルテを参照することができる。また、医師Dは、端末装置3を介して、オーダシステム93を利用することで、各種医用画像診断のオーダを行うことができる。
【0038】
[レポートデータの登録処理]
次に、医用情報処理システムSの処理の流れについて説明する。
図6は、実施形態に係る医用情報処理システムSにおけるレポートデータRDの登録処理の一例を示すシーケンス図である。
図6に示す登録処理は、例えば、医師Dが、端末装置3の入力インタフェース34を介して、登録処理の開始の指示を入力した場合に開始される。
【0039】
まず、解析サーバ1の取得機能101は、モダリティMから、対象となる被検体の臨床データを取得する(ステップS101)。例えば、解析サーバ1は、X線CT装置であるモダリティMから、CT画像を取得する。このCT画像には、DICOMタグが付与されている。
【0040】
次に、解析サーバ1の取得機能101は、オーダシステム93から、被検体に対するオーダ情報を取得する。このオーダ情報は、上記のステップS101において取得された臨床データ(CT画像)の取得を指示する際に発行されたものである。すなわち、本レポートデータRDの登録処理が開始されるよりも前に、医師D(或いは他の医師)が、臨床データ(CT画像)の取得をオーダした際に、オーダシステム93に登録されたものである。このオーダ情報は、例えば、検査目的等の情報を含む。尚、取得機能101は、電子カルテシステム91から、被検体の電子カルテの情報を取得してもよい。この電子カルテは、例えば、被検体に対して過去に行われた他の検査の結果の情報を含む。
【0041】
次に、解析サーバ1の選定機能103は、取得機能101により取得された臨床データ(DICOMタグの情報)、オーダ情報、および電子カルテ情報等に基づいて、メモリ12に予め格納されている複数種の解析アプリの中から、実行対象とする1以上の解析アプリを選定する(ステップS105)。選定機能103は、例えば、メモリ12に格納された学習モデルMDを用いて、複数の解析アプリの中から、実行対象とする1以上の解析アプリを選定する。
【0042】
次に、解析サーバ1の実行機能105は、選定機能103により選定された解析アプリを実行する(ステップS107)。選定機能103により複数の解析アプリが選定されている場合には、実行機能105は、複数の解析アプリの各々を実行し、解析結果の各々を得る。
【0043】
次に、解析サーバ1の提供機能107は、実行機能105により実行された解析アプリから出力される解析結果を端末装置3に送信する(ステップS109)。
【0044】
次に、端末装置3の表示制御機能307は、入力インタフェース34を介した医師Dの操作に応じて、メモリ32に予め格納されたビューアアプリVAを実行し、解析サーバ1から送信された解析結果をディスプレイ36に表示させる(ステップS111)。これにより、医師Dは、ディスプレイ36に表示された解析結果を確認することができる。
【0045】
次に、端末装置3の決定機能303およびレポート機能305は、入力インタフェース34を介した医師Dの操作に応じて、メモリ32に予め格納されたレポート作成アプリRAを実行し、レポートデータを生成する(ステップS113)。レポートデータは、例えば、キー画像として採用された解析結果の出力元の解析アプリ、キー画像として採用されなかった解析結果の出力元の解析アプリ、オーダ情報、モダリティ情報、医師Dの所見等を含む。
【0046】
図7は、実施形態に係る端末装置3に表示されるレポート作成画面P1の一例を示す図である。レポート作成画面P1には、例えば、キー画像選択領域KA、被検体情報領域TA、および所見入力領域OAが設けられる。キー画像選択領域KAは、解析結果AGの中から、医師Dが有益であると判断した画像をキー画像として受け付ける領域である。医師Dは、入力インタフェース34であるマウスを操作してクリックアンドドロップ操作を行うことで、キー画像をキー画像選択領域KAに貼り付ける。或いは、医師Dは、入力インタフェース34を操作して、キー画像として判断した解析結果のハイパーリンクの情報を、キー画像選択領域KAに入力する。決定機能303は、このような医師Dの操作に応じて、キー画像を決定する。被検体情報領域TAは、オーダ情報や電子カルテ情報に含まれる被検体の各種情報を表示する領域である。所見入力領域OAは、入力インタフェース34を介した医師Dの操作に応じて、医師Dの所見の入力を受け付ける領域である。また、医師Dの操作に応じて、決定されたキー画像に対して評価度の情報が付加されるようにしてもよい。評価度は、例えば、「とても良い」、「良い」、「普通」等のレベルの高低で表されるものであってもよいし、数値(例えば、1~5の数値)で表されるものであってもよい。
【0047】
尚、レポート作成画面P1には、キー画像として選択されなかった解析結果(非キー画像)を張り付ける領域(非キー画像選択領域)が設けられるようにしてもよい。非キー画像は、医師Dが有効ではない解析結果(不適切な解析アプリが出力した解析結果)と判断した画像である。医師Dは、入力インタフェース34であるマウスを操作してクリックアンドドロップ操作を行うことで、非キー画像を非キー画像選択領域に貼り付ける。或いは、医師Dは、入力インタフェース34を操作して、非キー画像として判断した解析結果のハイパーリンクの情報を、非キー画像選択領域に入力する。決定機能303は、このような医師Dの操作に応じて、非キー画像を決定する。
【0048】
次に、端末装置3のレポート機能305は、生成したレポートデータを、レポートシステム7に送信する(ステップS115)。レポートシステム7は、端末装置3から受信したレポートデータの登録処理を行う(ステップS117)。以上により、レポートデータの登録処理が終了する。
【0049】
[レポートデータの学習処理]
図8は、実施形態に係る医用情報処理システムSにおける学習処理の一例を示すシーケンス図である。
図8に示す学習処理は、例えば、解析サーバ1の管理者が解析サーバ1の入力インタフェース(不図示)を介して学習処理の開始の指示を入力した場合、或いは、所定の日時でのバッチ処理により開始される。
【0050】
まず、レポートシステム7は、登録済みのレポートデータ(フィードバック情報)を解析サーバ1に送信することで、フィードバックを行う(ステップS201)。解析サーバ1に送信されるレポートデータは、例えば、キー画像として採用した解析結果の出力元の解析アプリ、キー画像として採用されなかった解析結果の出力元の解析アプリ、オーダ情報、モダリティ情報、所見等を含む。
【0051】
次に、解析サーバ1の学習機能109は、レポートシステム7から受信したレポートデータを用いて、学習処理を行い、学習モデルMDを生成する(ステップS203)。学習機能109は、生成した学習済みの学習モデルMDを、メモリ12に保管する(ステップS205)。以上により、レポートデータの学習処理が終了する。
【0052】
尚、レポートデータに、キー画像として採用されなかった解析結果の出力元の解析アプリの情報が含まれている場合、学習機能109は、当該解析アプリのモデルの出力データへの寄与度(重み)が低くなるように学習処理を行い、学習モデルMDを生成する。或いは、レポートデータに、キー画像として採用されなかった解析結果の出力元の解析アプリの情報が含まれていない場合であっても、学習機能109は、医師Dに提供した解析結果のリスト情報と、医師Dがキー画像として採用した解析結果の情報とから、キー画像として採用されなかった解析結果の出力元の解析アプリを特定し、特定した解析アプリのモデルの出力データへの寄与度(重み)が低くなるように学習処理を行い、学習モデルMDを生成してもよい。
【0053】
尚、レポートデータに医師Dによる端末装置3での各解析結果の参照時間または参照回数の情報を含め、レポートシステム7が解析サーバ1にフィードバックするようにしてもよい。この場合、解析サーバ1の選定機能103は、解析結果の参照時間または参照回数の情報に基づいて、1以上の解析アプリケーションを選定するようにしてよい。これにより、医師Dによりキー画像として選択されるまでには至らなかったが、参照時間が長いまたは参照回数が多い解析結果を有益である可能性が高いものと判断し、その後の選定に考慮することが可能となる。
【0054】
尚、メモリ12に格納される学習モデルMDは、1つに限られない。
図3Aから3Cに示すような、入出力データの数や種類が異なる複数種の学習モデルMDがメモリ12に格納されてもよい。解析サーバ1の選定機能103は、複数種の学習モデルMDの中からユーザにより選択された1つの学習モデルまたは複数の学習モデルを用いて、解析アプリケーションを選定してもよい。
【0055】
また、解析サーバ1の選定機能103は、学習済みモデルを用いて解析アプリケーションを選定する際に、学習時のデータに近い解析アプリケーションを提案できたか否かを評価することで、提案の信頼度を算出するようにしてもよい。信頼度が所定の閾値よりも小さい場合、評価対象とする入力データの項目が多すぎて(類似する入力データが学習されていない状況か、学習データが不足する状況)安定的な解析アプリケーションの提案が得られない状況と判断し、解析アプリケーションを提案させる学習済みモデルを最低限の入力項目を使用する学習済みモデルへ切り替え、再度提案を行うようにしてもよい。
【0056】
すなわち、学習モデルは、入力データの数または種類が異なる複数の学習モデルを含み、選定機能103は、取得された臨床データに応じて複数の学習モデルの中から1以上の学習モデルを選択し、1以上の解析アプリケーションを選定するようにしてもよい。
【0057】
以上説明した実施形態によれば、被検体の臨床データを取得し、臨床データの解析を行う複数種の解析アプリケーションの解析結果に対するユーザのレポートデータに基づいて、取得された臨床データの解析を行う1以上の解析アプリケーションを選定することで、臨床データの解析アプリケーションの選択を適切且つ簡便に行うことができる。
【0058】
(付記)
実施形態の医用情報処理装置は、他の実施形態として、コンピュータに、被検体の臨床データを取得させ、臨床データの解析を行う複数種の解析アプリケーションの解析結果に対するユーザのレポートデータに基づいて、取得された臨床データの解析を行う1以上の解析アプリケーションを選定させるプログラムとして表現することもできる。
【0059】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0060】
1…解析サーバ,3…端末装置,5…PACS,7…レポートシステム,9…HIS,91…電子カルテシステム,93…オーダシステム,10…処理回路,12…メモリ,101…取得機能,103…選定機能,105…実行機能,107…提供機能,109…学習機能,30…処理回路,32…メモリ,34…入力インタフェース,36…ディスプレイ,301…取得機能,303…決定機能,305…レポート機能,307…表示制御機能,M…モダリティ