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特開2024-173778脚部ベンド用のアダプタ、脚部ベンド、および、排水配管構造
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  • 特開-脚部ベンド用のアダプタ、脚部ベンド、および、排水配管構造 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173778
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】脚部ベンド用のアダプタ、脚部ベンド、および、排水配管構造
(51)【国際特許分類】
   F16L 55/00 20060101AFI20241205BHJP
   E03C 1/12 20060101ALI20241205BHJP
   E03C 1/122 20060101ALI20241205BHJP
   F16L 43/00 20060101ALI20241205BHJP
   F16L 47/00 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
F16L55/00 G
E03C1/12 E
E03C1/12 Z
E03C1/122 Z
F16L43/00
F16L47/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024086473
(22)【出願日】2024-05-28
(31)【優先権主張番号】P 2023088709
(32)【優先日】2023-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】505142964
【氏名又は名称】株式会社クボタケミックス
(74)【代理人】
【識別番号】110003041
【氏名又は名称】安田岡本弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】足立 宏平
(72)【発明者】
【氏名】八木 博史
【テーマコード(参考)】
2D061
3H019
3H025
【Fターム(参考)】
2D061AA04
2D061AA05
2D061AB10
2D061AC07
2D061AC10
2D061AD01
3H019EA03
3H019FA08
3H019FA14
3H025BA01
3H025BB05
(57)【要約】
【課題】立て管から脚部ベンドに落下した排水により形成された水膜を、少ない部品点数で構成された水膜切断突起により切断する。
【解決手段】脚部ベンド用のアダプタ120は、立て管2000と立て管接続部112との間に設けられる、樹脂製の一体物である。このアダプタ120は、略中空円筒形状の上段部130と下段部140とを含み、上段部130は、内周側に、立て管2000を接続するための弾性リング190が内周側以外の方向へ移動することを規制する規制部132を含み、下段部140は、外周側に脚部ベンドを接続する嵌合部142を含むとともに、下段部140の周方向における横主管接続部118の側において下段部140の下端から下方に延設された、立て管2000の内周面よりも内周側に突出する水膜切断突起146を備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
立て管または集合管と接続される立て管接続部と、横主管と接続される横主管接続部と、前記立て管接続部および前記横主管接続部を接続する曲管部と、を備える樹脂製の脚部ベンド用のアダプタであって、
前記アダプタは、前記立て管または前記集合管と前記立て管接続部との間に設けられる、樹脂製の一体物であって、
前記アダプタは、略中空円筒形状の上段部と下段部とを含み、
前記上段部は、内周側に、前記立て管または前記集合管を接続するための接続部材が内周側以外の方向へ移動することを規制する規制部を含み、
前記下段部は、外周側に前記脚部ベンドを接続する嵌合部を含むとともに、前記下段部の周方向における前記横主管接続部側において前記下段部の下端から下方に延設された、前記立て管または前記集合管の内周面よりも内周側に突出する水膜切断突起を備えることを特徴とする、アダプタ。
【請求項2】
前記水膜切断突起は、1つの突起物から形成されることを特徴とする、請求項1に記載のアダプタ。
【請求項3】
前記水膜切断突起は、前記立て管接続部の管芯から前記横主管接続部の方向を見た正面視で略三角形の形状を備える1つの突起物から形成されることを特徴とする、請求項1に記載のアダプタ。
【請求項4】
前記アダプタの管芯は、前記脚部ベンドの前記立て管接続部の管芯に対して、前記水膜切断突起側に位置することを特徴とする、請求項1に記載のアダプタ。
【請求項5】
前記下段部は、外周側の前記脚部ベンドを接続する嵌合部と、内周側の前記立て管または前記集合管からの排水が流れる管壁を形成する内壁部との二重構造であることを特徴とする、請求項1に記載のアダプタ。
【請求項6】
前記水膜切断突起は、前記二重構造の内周側である内壁部から延設されたことを特徴とする、請求項5に記載のアダプタ。
【請求項7】
前記下段部は、内周側に、前記アダプタへの前記立て管または前記集合管の挿入長さを規制する複数の位置決め突起部を含み、前記位置決め突起部は内周側へ向けて斜め下方向に傾斜した形状を備えることを特徴とする、請求項1に記載のアダプタ。
【請求項8】
前記複数の位置決め突起部は、円環状のリブで支えられ、前記リブの下端部は、内周側へ向けて斜め下方向に傾斜した形状を備えることを特徴とする、請求項7に記載のアダプタ。
【請求項9】
立て管または集合管と接続される立て管接続部と、横主管と接続される横主管接続部と、前記立て管接続部および前記横主管接続部を接続する曲管部と、を備える樹脂製の脚部ベンドであって、
請求項1~請求項8のいずれかに記載のアダプタが、前記立て管接続部に設けられたことを特徴とする脚部ベンド。
【請求項10】
建物の最下階に施工される排水配管構造であって、
立て管または集合管と、
横主管と、
請求項9に記載の脚部ベンドと、
前記立て管または前記集合管と前記アダプタとを接続するための接続部材と、を含み、
前記規制部により移動が規制された前記接続部材により、前記立て管または前記集合管と前記脚部ベンドとが前記アダプタを介して接続されたことを特徴とする、排水配管構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数層を有する建物の排水設備において、各層を貫いて配管された立て管または集合管(立て管に代表させて記載する場合がある)の下流側の端部と、下層の床スラブの下にて横方向に配管された横主管の上流側の端部とを接続する樹脂製の脚部ベンド(脚部継手と記載する場合がある)に関し、特に、脚部ベンドに接続される様々な立て管サイズごとに、および、様々な横主管サイズごとに多種類の脚部ベンドを商品展開することなく(たとえば横主管接続部の呼び径125、150、200に対して立て管接続部の呼び径125、100の6種類の脚部ベンドを商品展開することなく)、立て管(特に呼び径100)から脚部ベンドに落下した排水により形成された水膜を少ない部品点数で構成された水膜切断部(水膜切断突起と記載する場合がある)で確実に切断でき、立て管直下に空間的余裕を生じさせて(流下する排水の面を通過する空気量を多く確保できて)管内圧力の上昇を抑制できる、脚部ベンド用のアダプタ、脚部ベンド、および、排水配管構造に関する。
【背景技術】
【0002】
高層マンション等の複数層を有する建物の排水設備では、各層を貫いて配管された排水立て管系統に各層の排水を合わせて流下させ、最下層の床スラブの下にて横方向に配管された排水横主管で屋外へ導く。そこで、排水立て管系統の下端部を排水横主管の上流側の端部に接続するために、縦方向から横方向へと円弧状に曲がった脚部継手が用いられている。このような脚部継手では、立て管から脚部継手に落下した排水により水膜が形成されると(立て管からの排水により、脚部継手内に横主管へ抜ける空気の通り道が確保できなくなり)、立て管内の予期しない負圧化や正圧化が発生してしまう。立て管内の負圧が大きいことにより排水トラップに溜まっている水が立て管側に吸引されてしまったり、立て管内の正圧が大きいことにより排水トラップに溜まっている水が室内側に噴出してしまったりして、封水破壊を引き起こすという問題点がある。
【0003】
このような問題点を解決するために、脚部継手内において排水によって水膜が形成されない空間(空気の通り道)を確保することのできる脚部継手として、たとえば特開2021-162095号公報(特許文献1)に開示された脚部継手がある。この特許文献1に開示された脚部継手は、縦管(立て管と同義:以下において同じ)が連結される第1接続部と、横管が連結される第2接続部と、前記第1接続部と前記第2接続部とを接続する曲管部と、前記第1接続部が第1受口とされた継手本体の前記第1受口と前記縦管の間に配置されるアダプタと、を有する。アダプタは、水流方向(上下方向)に短い略中空円筒形状を備え、その内周面から内方に向かって突出する一対のリブを備え、前記一対のリブは、互いに周方向に間隔をあけて配置され、下方に向かうにしたがって前記一対のリブの外方側の周方向における間隔が拡大または縮小するとともに、前記縦管の内周面に対して突出するよう形成された水膜切断手段(水膜切断部)を備える(特許文献1の請求項1、7および図1~7)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-162095号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された脚部継手におけるアダプタは、アダプタ本体と、弾性リングと、弾性リングの離脱を規制する固定部材との3部材で構成されているために部品点数が多く組立工程が多くなるという問題点、また、アダプタ本体が備える水膜切断部は一対のリブにより形成されているためにこのリブ間に流下物が挟まるという問題点がある。また、床スラブ下面より下方における脚部継手の納まりを良くするために曲がりが急なコンパクトベンドを採用する場合があるが、急な曲がりに起因してベンド内の空間が小さくなり立て管直下に空間的余裕がなくなり(または小さくなり)ベンド内の管内圧
力の上昇を招くという問題点を、特許文献1に開示された脚部継手では十分に解決することができない可能性がある。さらに、様々な横主管サイズごとに多種類の脚部ベンドを商品展開しなければならない(横主管接続部の呼び径125、150、200に対して立て管接続部の呼び径125、100の6種類の脚部ベンドを商品展開しなければならない)という問題点を、特許文献1に開示された脚部継手では十分に解決することができない可能性がある。
【0006】
また、脚部継手において、流下する排水面を通過する空気の量を多く確保するためには、ベンド内(曲がり部)の空間を大きくする対策も考えられる。しかしながら、(たとえば、床スラブ下の空間に高さ方向の制限がある等により)ベンドサイズのコンパクト化を図る場合があり、このようなコンパクトベンドに対しては、ベンド内(曲がり部)の空間を大きくする対策により流下する排水面を通過する空気の量を多く確保することは困難である。
【0007】
本発明は、上述の問題点に鑑みて開発されたものであり、その目的とするところは、立て管または集合管から脚部ベンドに落下した排水により形成された水膜を少ない部品点数で構成されるとともに流下物が挟まることのない構造を備えた水膜切断部で確実に切断でき、立て管直下に空間的余裕を生じさせて(流下する排水の面を通過する空気量を多く確保できて)管内圧力の上昇を抑制でき、さらに様々な横主管サイズごとに多種類の脚部ベンドを商品展開することを回避できる、脚部ベンド用のアダプタ、脚部ベンド、および、排水配管構造を提供することである。また、本発明の目的は、上述したようなコンパクトベンドの採用が好ましい場合において、ベンド内(曲がり部)の空間を大きくする対策ではなく、水膜切断部により流下する排水面を通過する空気の量を多く確保することのできる、脚部ベンド用のアダプタ、脚部ベンド、および、排水配管構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係る脚部ベンド用のアダプタは以下の技術的手段を講じている。
【0009】
本発明のある局面に係る脚部ベンド用のアダプタは、立て管または集合管と接続される立て管接続部と、横主管と接続される横主管接続部と、前記立て管接続部および前記横主管接続部を接続する曲管部と、を備える樹脂製の脚部ベンド用のアダプタであって、前記アダプタは、前記立て管または前記集合管と前記立て管接続部との間に設けられる、樹脂製の一体物であって、前記アダプタは、略中空円筒形状の上段部と下段部とを含み、前記上段部は、内周側に、前記立て管または前記集合管を接続するための接続部材が内周側以外の方向へ移動することを規制する規制部を含み、前記下段部は、外周側に前記脚部ベンドを接続する嵌合部を含むとともに、前記下段部の周方向における前記横主管接続部側において前記下段部の下端から下方に延設された、前記立て管または前記集合管の内周面よりも内周側に突出する水膜切断突起を備えることを特徴とする。
【0010】
好ましくは、前記水膜切断突起は、1つの突起物から形成されるように構成することができる。
【0011】
さらに好ましくは、前記水膜切断突起は、前記立て管接続部の管芯から前記横主管接続部の方向を見た正面視で略三角形の形状を備える1つの突起物から形成されるように構成することができる。
【0012】
さらに好ましくは、前記水膜切断突起は、内周側の前記立て管または前記集合管からの排水が流れる管壁を形成する内壁部から管芯に向かうに従って幅が大きくなるように形成することができる。この幅とは、後述する図5に示すように、アダプタの上面図または下面図におけるアダプタの中心線(線対称軸線)に垂直な方向の水膜切断突起の長さW、または、それらの上面図または下面図におけるアダプタの周方向に沿った水膜切断突起の長さLを意味する。
【0013】
さらに好ましくは、前記アダプタの管芯は、前記脚部ベンドの前記立て管接続部の管芯に対して、前記水膜切断突起側に位置するように構成することができる。
【0014】
さらに好ましくは、前記下段部は、外周側の前記脚部ベンドを接続する嵌合部と、内周
側の前記立て管または前記集合管からの排水が流れる管壁を形成する内壁部との二重構造であるように構成することができる。
【0015】
さらに好ましくは、前記水膜切断突起は、前記二重構造の内周側である内壁部から延設されたように構成することができる。
【0016】
さらに好ましくは、前記下段部は、内周側に、前記アダプタへの前記立て管または前記集合管の挿入長さを規制する複数の位置決め突起部を含み、前記位置決め突起部は内周側へ向けて斜め下方向に傾斜した形状を備えるように構成することができる。
【0017】
さらに好ましくは、前記複数の位置決め突起部は、円環状のリブで支えられ、前記リブの下端部は、内周側へ向けて斜め下方向に傾斜した形状を備えるように構成することができる。この円環状のリブにより、立て管および集合管が下方へ抜け落ちることを防止することができる。
【0018】
本発明の別の局面に係る脚部ベンドは、立て管または集合管と接続される立て管接続部と、横主管と接続される横主管接続部と、前記立て管接続部および前記横主管接続部を接続する曲管部と、を備える樹脂製の脚部ベンドであって、上述したいずれかのアダプタが、前記立て管接続部に設けられたことを特徴とする。
【0019】
本発明のさらに別の局面に係る排水配管構造は、建物の最下階に施工される排水配管構造であって、立て管または集合管と、横主管と、上述した脚部ベンドと、前記立て管または前記集合管と前記アダプタとを接続するための接続部材と、を含み、前記規制部により移動が規制された前記接続部材により、前記立て管または前記集合管と前記脚部ベンドとが前記アダプタを介して接続されたことを特徴とする。なお、後述するように、この建物の最下階に施工される排水配管構造には、1階の天井高さを十分に確保するために2階床下に施工される排水配管構造を含む。
【発明の効果】
【0020】
本発明によると、立て管または集合管から脚部ベンドに落下した排水により形成された水膜を少ない部品点数で構成されるとともに流下物が挟まることのない構造を備えた水膜切断部で確実に切断でき、立て管直下に空間的余裕を生じさせて(流下する排水の面を通過する空気量を多く確保できて)管内圧力の上昇を抑制でき、さらに様々な横主管サイズごとに多種類の脚部ベンドを商品展開することを回避できる、脚部ベンド用のアダプタ、脚部ベンド、および、排水配管構造を提供することができる。また、本発明によると、コンパクトベンドを採用する場合において、ベンド内(曲がり部)の空間を大きくする対策ではなく、水膜切断部により流下する排水面を通過する空気の量を多く確保することのできる、脚部ベンド用のアダプタ、脚部ベンド、および、排水配管構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施の形態に係る脚部ベンドが好ましく施工される排水配管構造(ベンド部に本発明の実施の形態に係るアダプタ装着前)を示す側面図である。
図2】(A)および(B)本発明の実施の形態に係る脚部ベンド100を示す上面図および側面断面図、(C)および(D)比較対象の脚部ベンド101を示す上面図および側面断面図である。
図3】(A)本発明の実施の形態に係るアダプタ120および弾性リング190がベンド部110に装着されて立て管2000が接続された脚部ベンド100の斜視図、(B)および(C)アダプタ120がベンド部110に装着された脚部ベンド100の斜視図である。
図4】(A)本発明の実施の形態に係る脚部ベンド100の側面断面図、(B)(A)の分解図である。
図5】本発明の実施の形態に係るアダプタ120の外形図、側面断面図および拡大図である(図5(H)は変形例に係るアダプタ121の上面図、図5(I)はその拡大図、図5(J)はその下面拡大図)。
図6】本発明の実施の形態に係るアダプタ120の斜視図である。
図7】水膜切断突起による水膜切断状態を説明するための図である。
図8】本実施の形態の変形例に係るアダプタ180の外形図、側面断面図およびベンド部110への装着状態を示す拡大図である。
図9】本実施の形態のさらなる変形例に係るベンド部210の上面図、側面断面図および底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下において、本発明の実施の形態に係る脚部ベンド100について、図1図7を参照して詳しく説明する。なお、本発明の実施の形態に係る脚部ベンド100は、図5および図6に示す本発明の実施の形態に係るアダプタ120が装着された脚部ベンドであって、本発明の実施の形態に係る排水配管構造は、図2図7に示す本実施の形態に係る脚部ベンド100を、図1に示すように建物の下層の床スラブSの下に施工したものである。また、図1に示す床スラブSの位置に、排水配管構造が(たとえば立て管2000の縮径部の上側に)備える熱膨張材が存在するように施工される。また、排水配管が挿通されるスラブSの貫通孔と排水配管との空隙はモルタルが充填される。また、ベンド部110とは、アダプタ120および弾性リング190が装着されていない、立て管接続部112と、横主管接続部118と、立て管接続部112および横主管接続部118を接続する曲管部(曲がり部と記載する場合があるとともにこの曲がりが急なコンパクトタイプでも急でない通常タイプでも構わない)とを備えたベンド本体(すなわち通常のまたは従来の脚部ベンド)を意味する。
【0023】
なお、以下の説明において、外周面と外表面と外側、外層側と外周側と外側、内層側と内周側と内側、熱膨張材と熱膨張性耐火材、とは、明確に区別して記載していない場合がある。また、断面図においてハッチングの種類により異なる部材を明確に区別していない場合がある。さらに、以下の説明において参照する図については、本発明の容易な理解のために、内部ではなく外形で表現すべき部分を内部を透視するように表現している場合があったり、外形ではなく断面で表現すべき部分を外形で表現している場合があったり、断面ではなく外形で表現すべき部分を断面で表現している場合があったり、断面であってもハッチングを付していない場合があったり、断面でないのにハッチングを付している場合があったり、詳細な構造を省略した場合があったり、詳細な構造を省略または変更したために同じ部材であっても図面間で一致しない場合があったりする。また、破断線を記載していない場合もある。また、本発明に係る脚部ベンド100は、詳しくは後述するアダプタ120を備え、このアダプタ120(および接続部材としての円環状の弾性部材である弾性リング190)を介して立て管または集合管(の下部管)とを接続する。ただし、以下の説明において図示するのは立て管である。しかしながら、本発明に係る脚部ベンド100が接続される排水管として集合管(の下部管)を排除するものではなく、超高層階用、高層階用、途中階用および最下階用のいずれにも限定されない集合管に本発明に係る脚部ベンド100が接続される場合がある。
【0024】
<脚部ベンドが好適に施工される建物の特徴>
まず、図1を参照して、本実施の形態に係る脚部ベンドが好適に施工される建物の特徴について説明する。なお、この図1においては、本実施の形態に係るアダプタ120を装着する前の脚部ベンドを示しており脚部ベンドの符号を本実施の形態に係る脚部ベンド100と区別している。図1(A)および図1(B)においては、上立て管1000および横枝管1110が接続された排水集合管1100の下方に、縮径部を備えた立て管2000が接続され、立て管2000と横主管4000とが脚部ベンド3000により接続されている。
【0025】
図1に示すように床スラブSの下において脚部ベンド3000が呼び径125、150、200等の横主管4000と接続される際に、床スラブSより下方における脚部継手の納まりを良くすることがある。たとえば、施工例の一例ではあるが、図1に示す床スラブSが2階床スラブであって、1階に天井までの高さが高いロビーが設けられるホテルやマンション等においては2階床スラブの下において脚部ベンド3000が横主管4000と接続される際に、1階床面から1階天井までの高さを十分に確保するために、2階床スラブにできるだけ接近させて脚部ベンド3000を支持させることがある。通常の脚部ベン
ド3000を採用した図1(A)および図1(B)に示すL(A)に対して、図1(A)および図1(B)に示す通常の脚部ベンド3000に替えて図1(C)および図1(D)に示す曲がりが急なコンパクトベンド3002を採用してL(C)と短くしたり、図1(C)および図1(D)に示す立て管2000に替えて図1(E)および図1(F)に示す短縮した立て管2002を採用してL(E)と短くしたりする。これにより、一例ではあるが、床面から天井までの高さが高いロビーを1階に設けることができる。
【0026】
この場合において採用されるコンパクトベンドは、急な曲がりに起因してベンド内の空間が小さくなり立て管直下に空間的余裕がなくなり(または小さくなり)ベンド内の管内圧力の上昇を招くことがある。図2(A)および図2(B)に本発明に係る脚部ベンド100を採用した排水配管構造(横主管は省略、脚部ベンド100はコンパクトベンド)を、図2(C)および図2(D)に比較例に係る脚部ベンド101を採用した排水配管構造(横主管は省略、脚部ベンド101はコンパクトベンド)を、それぞれ示す。図2(D)に示すように受口一体形の脚部ベンド101を採用した排水配管構造においては、(特に立て管2000のサイズが小さい場合に)、立て管2000を流下してきた排水が白抜き矢示で示すように立て管2000から解放されてすぐにベンドの曲がり部に当たって立て管2000の直下に空間的余裕がなく(または小さく存在し)ベンド内の管内圧力の上昇を招き、脚部ベンド内において予期しない負圧化や正圧化が発生してしまうことがある。なお、この脚部ベンド101においては水膜切断突起147をベンド部(ベンド本体)に備える。これに対して、図2(B)に示すようにアダプタを備えた脚部ベンド100を採用した排水配管構造においては、立て管2000を流下してきた排水が白抜き矢示で示すように立て管2000から解放されてもすぐにベンドの曲がり部に当たることを回避できるように立て管2000の直下に空間的余裕122があり(または大きく存在し)ベンド内の管内圧力の上昇を招くことを回避または抑制することができる。これは、立て管2000から解放されて流下する排水の面を通過する空気を多く確保できることに起因するものである。なお、この脚部ベンド100においては(脚部ベンド101と異なり)水膜切断突起146を詳しくは後述するようにアダプタ120に設けている。
【0027】
また、図2(C)および図2(D)に示す脚部ベンド101を採用する場合には、様々な横主管サイズごとに多種類の脚部ベンドを商品展開しなければならない。たとえば、横主管接続部の呼び径125、150、200に対して立て管接続部の呼び径125、100の6種類の脚部ベンドを商品展開しなければならない(一例ではあるが脚部ベンド101の立て管接続部の呼び径100)。これに対して、図2(A)および図2(B)に本発明に係る脚部ベンド100を採用する場合には、一例ではあるが、脚部ベンド100の立て管接続部の呼び径125として、詳しくは後述するアダプタ120の内径を呼び径100として、呼び径100の立て管2000を脚部ベンド100に接続する場合にはアダプタ120を用いて、呼び径125の立て管2000を脚部ベンド100に接続する場合にはアダプタ120を用いないで、立て管を脚部ベンド100に接続することができる。その結果、本発明に係る脚部ベンド100を採用すると、たとえば、横主管接続部の呼び径125、150、200に対して立て管接続部の呼び径125(のみ)の3種類の脚部ベンドで呼び径100と呼び径125の立て管2000に対応することができる。なお、脚部ベンド100に呼び径125の立て管2000を接続する場合には、水膜切断突起146を備えたアダプタ120を用いないことになるが、立て管2000が呼び径125の場合には立て管の径が大きく水膜を切断する必要がない(または少ない)ことを想定している。
<アダプタ120が装着された脚部ベンド100の構造>
図2図7を参照して、本実施の形態に係る脚部ベンド100の構造について説明する。上述したように、この脚部ベンド100は、アダプタ120が(立て管2000を接続するための弾性リング190とともに)装着されていることを特徴とする。より詳しくは、図2(A)、図3および図4に示すこの脚部ベンド100には、図5および図6に示すアダプタ120が弾性リング190とともに装着されている。これ以外は、立て管接続部112と、横主管接続部118と、立て管接続部112および横主管接続部118を接続
する曲管部とを備えたベンド部110を備えた、通常の(曲がりが急なコンパクトタイプを含む)脚部ベンドである。なお、アダプタの組み付け(装着)に関しては、接着接合でもゴム輪接合でもその他の接合でも、いずれにも限定されるものではない。
【0028】
これらの図に示すように、このアダプタ120は、立て管2000(または集合管の下部管)と接続される立て管接続部112と、横主管4000と接続される横主管接続部118と、立て管接続部112および横主管接続部118を接続する曲管部とを備えた通常の(曲がりが急なコンパクトタイプを含む)ベンド部110とから形成される樹脂製の脚部ベンドに用いられる(装着される)アダプタである。このアダプタ120は、立て管2000(または集合管の下部管)と立て管接続部112との間に設けられる、樹脂製の一体物である。このアダプタ120は、略中空円筒形状の上段部130と下段部140とを含み、上段部130は、内周側に、立て管2000(または集合管の下部管)を接続するための接続部材(より詳しくは円環状の弾性部材である弾性リング190)が内周側以外の方向(より詳しくは上方向)へ移動することを規制する規制部132を含む。この規制部132は、弾性リング190が上方へ抜けることを防止する形状(ここでは逆L字形状である返し形状)を備えており、弾性リング190がアダプタ120から離脱することを、アダプタ120以外の別部材を用いることなく、規制(防止)することができる。その結果、アダプタ120以外に弾性リング190の離脱を規制する部材が必要なく、部品点数が多く組立工程が多くなるという問題点を解決することができる。
【0029】
また、下段部140は、外周側に脚部ベンドを接続する嵌合部142を含むとともに、下段部140の周方向における横主管接続部118の側において下段部140の下端から下方に延設された、立て管2000(または集合管の下部管)の内周面よりも内周側に突出する水膜切断突起146を備える。下段部140に設けられる嵌合部142は、ベンド部110の立て管接続部112の下方のベンド側嵌合部114に嵌合されて、ベンド部110にアダプタ120が装着される。なお、以下において、「立て管2000(または集合管の下部管)」は「立て管2000」と記載する。
【0030】
ここで、限定されるものではないが、立て管接続部112は呼び径125の立て管2000(または集合管の下部管)に対応した形状を備え、アダプタ120なしでサイズ125用の弾性リングによりベンド部110の立て管接続部112に接続することができる。このように(アダプタ120なしで)接続する場合において、立て管接続部112は図4(B)に示すように断面コの字形状(または水平反転されたコの字形状)の規制部を備え、図1(D)に示す場合におけるサイズ125用の弾性リングが、この立て管接続部112が備える断面コの字形状(または水平反転されたコの字形状)の規制部により、内周側以外の方向(上方)へ抜けることを防止することができる。また、弾性リング190が格納されるアダプタ側立て管接続部134は、呼び径100の立て管2000(または集合管の下部管)に対応した形状を備え、アダプタ120ありでサイズ100用の弾性リング190によりアダプタ120のアダプタ側立て管接続部134に接続することができる。その結果、様々な横主管サイズごとに多種類の脚部ベンドを商品展開しなければならない(横主管接続部の呼び径125、150、200に対して立て管接続部の呼び径125、100の6種類の脚部ベンドを商品展開しなければならない)という問題点を解決することができる。
【0031】
この水膜切断突起146は、1つの突起物から形成されるものであって、さらに詳しくは、この水膜切断突起146は、立て管接続部112の管芯から横主管接続部118の方向を見た正面視で図5(E)に示すように、略三角形の形状を備える1つの突起物から形成されるものである。その結果、この水膜切断突起146には(一対のリブ形状を備えるような形状ではないために)、流下物が挟まるという問題点を解決することができるとともに、図5(D)および図5(E)に白抜き矢示で示すように排水流が水膜切断突起146に当たって排水流が二手に分かれて空気の通り道を確保できる。
【0032】
ここで、このような水膜切断突起146は、本実施の形態の変形例に係るアダプタ121が備える水膜切断突起148のような形状を備えるものであっても構わない。図5(H)~図5(J)に示すように、この水膜切断突起148は、内周側の立て管または集合管
からの排水が流れる管壁を形成する内壁部から管芯に向かうに従って幅が大きくなるように形成することができる。この幅とは、この図5に示すように、図5に示すように、アダプタの上面図または下面図におけるアダプタの中心線(線対称軸線)に垂直な方向の水膜切断突起の長さW、または、それらの上面図または下面図におけるアダプタの周方向に沿った水膜切断突起の長さLを意味する。そして、この図5(H)に示すように、幅である長さW(1)>長さW(2)であったり、幅である長さL(1)>長さL(2)であったりするとともに、図5(I)および図5(J)に示すように、この水膜切断突起148は、内周側の立て管または集合管からの排水が流れる管壁を形成する内壁部から管芯に向かうに従って幅が大きくなるように形成される。このような形状を備えた水膜切断突起148は、水膜切断突起146のようにその幅がストレート(ストレートとは図5(A)に示すように水膜切断突起146において管芯側の幅W(0)、L(0)が内壁部側の幅W(0)、L(0)と同じことを意味する)ではなく(アダプタの中心線(線対称軸線)に平行ではなく)、内壁部から管芯に向かうに従って幅が大きくなっており、水膜切断突起の左右の面が管壁側を向くことにより、管壁側に向いて流れる水の量が増えることになり、その結果、管芯側に流れる水の量が減って、空気の通り道が確保しやすくなる点で、幅がストレートである水膜切断突起146よりも好ましく、内壁部から管芯に向かうに従って幅が小さくなる水膜切断突起(図示せず)よりもさらに好ましい。
【0033】
また、下段部140は、外周側の脚部ベンド(のベンド部110)を接続する嵌合部142と、内周側の立て管2000からの排水が流れる管壁を形成する内壁部144との二重構造である。嵌合部142と内壁部144との間には空間部143を備えることになる。限定されるものではないが、この二重構造は、下方が解放された二重構造である。ここで、このような二重構造を形成することにより、樹脂成形時に有利になるとともに、樹脂量を減らすことができる。さらに、このように下段部140に存在する空間部143により、嵌合部142がベンド部110のベンド側嵌合部114に嵌合される際に、嵌合部142が空間部143側に逃げることができるために、しまり嵌めを容易に実現することができる。なお、この空間部143を好適に設計することにより、立て管直下に空間的余裕(図8における空間的余裕182)を生じさせて(流下する排水の面を通過する空気量を多く確保できて)管内圧力の上昇を抑制できる点については、後述する変形例において説明する。
【0034】
このような二重構造を備えた下段部140において、水膜切断突起146は、この二重構造の内周側である内壁部144から延設された構造を備える。なお、水膜切断突起146の形状は、上述した通りの略三角形の形状を備える1つの突起物である。このように、この水膜切断突起146は、正面図で図示される正面視で、略三角形の簡易な形状を備える1つの突起物から形成されるために、簡易な形状であることから強度が高く、略三角形であることから効率的に水膜を切断できて、水膜切断突起146の下側に空気が通る空間を作ることができる。この水膜切断突起146が、存在しない場合の水膜の状態を図7(A)に、存在する場合の水膜の状態を図7(B)に、それぞれ示す。
【0035】
図7(A)に示すように、水膜切断突起146が存在しない場合には、立て管2000から脚部ベンドに落下した排水により水膜が形成されて空気の通り道を確保できない。このように立て管2000からの排水により、脚部ベンド100内に横主管へ抜ける空気の通り道が確保することができなくなり、立て管2000内の予期しない負圧化や正圧化が発生してしまう。立て管2000内の負圧が大きいことにより排水トラップに溜まっている水が立て管2000側に吸引されてしまったり、立て管2000内の正圧が大きいことにより排水トラップに溜まっている水が室内側に噴出してしまったりして、封水破壊を引き起こすという問題がある。一方、図7(B)に示すように、水膜切断突起146が存在する場合には、立て管2000から脚部ベンドに流下した排水流が水膜切断突起146に当たって排水流が二手に分かれて空気の通り道を確保できるために、封水破壊を引き起こすことを抑制できる。
【0036】
さらに、このような二重構造を備えた下段部140は、内周側に、アダプタ120への立て管2000の挿入長さを規制する複数の位置決め突起部150を含み、位置決め突起
部150は内周側へ向けて斜め下方向に傾斜した形状を備える。さらに、これらの複数の位置決め突起部150は、円環状のリブ152で支えられ、リブ152の下端部は、内周側へ向けて斜め下方向に傾斜した形状を備える。なお、限定されるものではないが、この位置決め突起部150は、120度間隔で3箇所に設けられている。この位置決め突起部150(の斜め下方向に傾斜した形状の位置)に当接するまで立て管2000をアダプタ120に挿入するだけで、立て管2000をアダプタ120を介して脚部ベンド100に規定の挿入長さで接続することができる。このように立て管2000をアダプタ120を介して脚部ベンド100に接続する場合において、立て管2000の下端が位置決め突起部150に当接するまで挿入され、さらに、位置決め突起部150を支える円環状のリブ152が伸縮吸収機能を持たせてあるために、当接してからも多少の挿入余裕を備えるので、立て管2000をアダプタ120を介して脚部ベンド100に接続する場合に好ましい。
【0037】
また、このように、位置決め突起部150を支える円環状のリブ152の下端部は内周側へ向けて斜め下方向に傾斜した形状を備えることは、図2(B)を参照して説明した、立て管2000を流下してきた排水が立て管2000から解放されてもすぐにベンドの曲がり部に当たることを回避できるように立て管2000の直下の空間的余裕122を広げる点でも有利に作用する傾向となる。
【0038】
また、脚部ベンド100におけるベンド部110の(横主管接続部側ではなく)立て管接続部側に、(最下階用)集合管をアダプタ120を介さないで接続する場合の挿入長さを規制するための突起を設けることも好ましい。さらに、アダプタ120を介して立て管2000を接続する場合には、この突起とアダプタ120とが接触しないようにアダプタ120に凹部を設けることも好ましい。アダプタ120を介して立て管2000を接続する場合には、このアダプタ120に設けた凹部以外の部分がベンド部110側に当接して挿入長さが規制されるとともに、アダプタ120における下段部140に設けられた嵌合部142とベンド側嵌合部114とが嵌合する。なお、この場合において、アダプタ120の周方向(回転方向)は、突起によって位置決めされることになり、挿入長さは突起で規制されないが、本発明は、アダプタの挿入長さを突起で規制する態様を排除するものではない。
以上のようにして、本実施の形態に係るアダプタ120、アダプタ120が装着された脚部ベンド100および脚部ベンド100を用いて施工された排水配管構造によると、立て管または集合管から脚部ベンドに落下した排水により形成された水膜を少ない部品点数で構成されるとともに流下物が挟まることのない構造を備えた水膜切断部で確実に切断でき、立て管直下に空間的余裕を生じさせて(流下する排水の面を通過する空気量を多く確保できて)管内圧力の上昇を抑制でき、さらに様々な横主管サイズごとに多種類の脚部ベンドを商品展開することを回避できる。また、本実施の形態に係るアダプタ120、アダプタ120が装着された脚部ベンド100および脚部ベンド100を用いて施工された排水配管構造によると、コンパクトベンドを採用する場合において、ベンド内(曲がり部)の空間を大きくする対策ではなく、水膜切断部により流下する排水面を通過する空気の量を多く確保することのできる、脚部ベンド用のアダプタ、脚部ベンド、および、排水配管構造を提供することができる。
【0039】
<変形例>
以下において、図8を参照して、本実施の形態の変形例に係るアダプタ180について説明する。図8に示すように、このアダプタ180の管芯Xは、ベンド部110の立て管接続部112の管芯Yに対して、水膜切断突起146側に位置する。このような構造を備えるためには、限定されるものではないが、図8に示すように、管軸に垂直な方向の長さについて、水膜切断突起146反対側の空間部143のL(1)を水膜切断突起146側の空間部143のL(2)よりも大きく(L(1)>L(2))設計している。その結果、立て管直下に空間的余裕182をより大きく生じさせて(流下する排水の面を通過する空気量をより多く確保できて)管内圧力の上昇を抑制できる。なお、図8に示す本変形例に係るアダプタ180における空間部143の大きさの違いL(1)(L(1)>L(2))以外は、図5を参照して説明したアダプタ120と同じであるため、ここでの詳細な説明は繰り返さない。
【0040】
<さらなる変形例>
以下において、図9を参照して、本実施の形態のさらなる変形例に係るベンド部210について説明する。図9(A)に示す上面図、図9(B)に示す図9(A)の9B-9B断面図および図9(C)に示す底面図に示すように(図9(B)の表示倍率は図9(A)および図9(C)に対して200%)、このベンド部210は、立て管受口の管芯部分の周辺を厚肉にしている。図9(B)の点線で示す肉厚タイプでない均一タイプの外形断面線に対して、本変形例に係るベンド部210の外形断面線(実線)は、10%~40%厚い。すなわち、均一タイプは、厚みt(2)または厚みt(3)でベンド部の外周側の厚みが一定であるが(t(2)=t(3)、t(2)≠t(3)でもよいがt(2)<t(1)かつt(3)<t(1))、本変形例に係る肉厚タイプであるベンド部210は厚みt(1)が最大厚みになる厚肉部210THを備える。均一タイプの厚みt(2)または厚みt(3)に対するこの厚肉部210THの最大厚みt(1)の比率が10%~40%厚い。このことは、1.1≦(t(1)/t(2))≦1.4、および、1.1≦(t(1)/t(3))≦1.4を意味する。
【0041】
このようにベンド部210に厚肉部210THを備えさせることにより、上階からの排水に混入した異物が脚部ベンド210まで落下した時の衝撃で脚部ベンド210が破損する可能性を(均一タイプに比較して)抑制することができる。また、排水が当たる部分の耐衝撃性能を向上することができる。
【0042】
ここで、この脚部ベンド210(および脚部ベンド110)には、曲がり部の外周に脚部ベンド支持用の突起(支持金具により、上階の床スラブ下面から吊り下げられるように支持されたり最下階の床面に当接するように支持されたりするための支持突起)は設置されていない。さらに、外周面の一部分を厚肉部として肉盛りすると厚肉部が段差が生じてしまうが、この脚部ベンド210(および脚部ベンド110)の外周面には段座が生じていない。すなわち、耐衝撃性向上を目的とした、支持突起も肉盛りによる段差も備えておらず(図9に図示する外周部領域Sに、支持用の突起等がなく厚肉部210TH(の外周側)に段差がなく)、耐衝撃性向上のために厚肉部210THを備えているが、突起(支持突起)もなく段差もなく、目立たない外周部形状を実現させている。特に、ベンド部の外周に制振遮音材等により被覆する場合に、支持突起または段差があると貼り付けにくく作業効率が低下するが、この脚部ベンド210においては支持突起および段差がないために貼り付けやすく作業効率が向上する。さらに、段差がないことで、成型時の樹脂の流動性が良くなる。
【0043】
なお、図8に示す本変形例に係る脚部ベンド210に厚肉部210THを備えること以外は、図4を参照して説明した脚部ベンド110と同じであるため、ここでの詳細な説明は繰り返さない。
【0044】
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、立て管または集合管と接続される立て管接続部と、横主管と接続される横主管接続部と、立て管接続部および横主管接続部を接続する曲管部と、を備える樹脂製の脚部ベンドに好ましく、立て管または集合管から脚部ベンドに落下した排水により形成された水膜を少ない部品点数で構成されるとともに流下物が挟まることのない構造を備えた水膜切断部で確実に切断でき、立て管直下に空間的余裕を生じさせて(流下する排水の面を通過する空気量を多く確保できて)管内圧力の上昇を抑制でき、さらに様々な横主管サイズごとに多種類の脚部ベンドを商品展開することを回避できる点で特に好ましい。また、コンパクトベンドを採用する場合において、ベンド内(曲がり部)の空間を大きくする対策ではなく、水膜切断部により流下する排水面を通過する空気の量を多く確保することが
できる点でさらに好ましい。
【符号の説明】
【0046】
100 脚部ベンド(脚部継手)
110 ベンド部
112 立て管接続部
114 ベンド側嵌合部
118 横主管接続部
120 アダプタ
130 上段部
132 規制部
140 下段部
146 水膜切断突起
150 突起部
152 リブ
180 変形例に係るアダプタ
190 弾性リング
210 さらなる変形例に係るベンド部
1000 上立て管
1100 排水集合管
1110 横枝管
2000 立て管
3000 脚部ベンド(脚部継手)
4000 横主管
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9