(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173782
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】組成物、固形物、及び、樹脂改質剤
(51)【国際特許分類】
C08F 290/04 20060101AFI20241205BHJP
【FI】
C08F290/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024086834
(22)【出願日】2024-05-29
(31)【優先権主張番号】P 2023088420
(32)【優先日】2023-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000205638
【氏名又は名称】大阪有機化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】椿 幸樹
(72)【発明者】
【氏名】水森 智也
【テーマコード(参考)】
4J127
【Fターム(参考)】
4J127AA03
4J127AA04
4J127BA041
4J127BA051
4J127BB031
4J127BB111
4J127BB261
4J127BC021
4J127BC131
4J127BD031
4J127BD071
4J127BE461
4J127BE46Y
4J127CB151
4J127CB162
4J127CB283
4J127CC021
4J127CC033
4J127DA28
4J127DA66
4J127EA05
4J127EA13
4J127FA11
4J127FA14
4J127FA38
4J127FA41
(57)【要約】
【課題】種々の用途に適用可能な固形物を与えることのできる組成物、並びに、種々の用途に適用可能な固形物、及び、樹脂改質剤を提供する。
【解決手段】
下記式(1)で示される化合物に対応する構成単位Aを含む高分子化合物aと、前記高分子化合物aとは異なる有機化合物bと、を含む、組成物。
【化1】
(式中、X
1及びX
2は、各々独立して、直鎖状又は分岐状の炭素数1~12のアルキレン基を示す。Zは、ポリオレフィン骨格を示す。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で示される化合物に対応する構成単位Aを含む高分子化合物aと、
前記高分子化合物aとは異なる有機化合物bと、を含む、組成物。
【化1】
(式中、X
1及びX
2は、各々独立して、直鎖状又は分岐状の炭素数1~12のアルキレン基を示す。Zは、ポリオレフィン骨格を示す。)
【請求項2】
前記ポリオレフィン骨格が、水添ポリオレフィン骨格である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記水添ポリオレフィン骨格が、水添ポリブタジエン骨格、又は、水添ポリ2-メチル-1,3-ブタジエン骨格である、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記ポリオレフィン骨格が、非水添ポリオレフィン骨格である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記ポリオレフィン骨格の重量平均分子量(Mw)が1,000~10,000である、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記有機化合物bが、脂環式骨格を有する(メタ)アクリレートモノマーを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
高分子化合物aと有機化合物bとの割合が、質量比で50:50~1:99である、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
フィラーを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
下記式(1)で示される化合物に対応する構成単位Aを含む高分子化合物aに対応する構成単位αと、
前記高分子化合物aとは異なる有機化合物bに対応する構成単位βと、
を有するポリマーマトリクスを含む、固形物。
【化2】
(式中、X
1及びX
2は、各々独立して、直鎖状又は分岐状の炭素数1~12のアルキレン基を示す。Zは、ポリオレフィン骨格を示す。)
【請求項10】
前記ポリマーマトリクス中に分散したフィラーを含む、請求項9に記載の固形物。
【請求項11】
下記式(1)で示される化合物に対応する構成単位Aを含む高分子化合物aを含む、樹脂改質剤。
【化3】
(式中、X
1及びX
2は、各々独立して、直鎖状又は分岐状の炭素数1~12のアルキレン基を示す。Zは、ポリオレフィン骨格を示す。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種々の用途に適用可能な固形物を与えることのできる組成物、並びに、種々の用途に適用可能な固形物、及び、樹脂改質剤に関する。
【背景技術】
【0002】
脂環式骨格を有する(メタ)アクリレートモノマー(以下、「脂環式(メタ)アクリレートモノマー」という)に対応する構成単位を含むポリマー(以下、「脂環式(メタ)アクリレートモノマー含有ポリマー」という)は、溶剤に対する高い耐性や高い硬度を有する固形物が得られる等の様々な特性を発揮するため、多様な用途に用いられている。脂環式(メタ)アクリレートモノマーの一例としては、イソボルニルアクリレート(IBXA)が挙げられる。例えば、IBXAに対応する構成単位を含むポリマーは、UVインクジェット用インク、UV接着剤、保護膜、封止材、及びフレキシブルプリント配線基板等の材料として用いられている。
【0003】
特許文献1では、IBXAに対応する構成単位と、特定のアルキル(メタ)アクリレートに対応する構成単位とを特定の割合で含むポリマーを含む硬化物が、電解質に対する耐性、柔軟性、及び導電性基板に対する接着性に優れることが開示されている。
特許文献2では、IBXA等の脂環式骨格を有する(メタ)アクリレート(A)、N-置換(メタ)アクリルアミド(B)、特定構造のα-(アリルオキシメチル)アクリレート(C)、ウレタン基を有する(メタ)アクリレート(D)、及び光重合開始剤(E)、を含有する活性エネルギー線硬化性組成物が、吸水率が低く、伸びと弾性率とに優れる硬化物を与えることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-106822号公報
【特許文献2】特開2022-037903号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
脂環式(メタ)アクリレートモノマー含有ポリマーを含む固形物は種々の特性を有するものの、各特性をさらに向上させることが求められている。
【0006】
本発明は、上述の課題を解決すべく、種々の用途に適用可能な固形物を与えることのできる組成物、並びに、種々の用途に適用可能な固形物、及び、樹脂改質剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
<1>下記式(1)で示される化合物に対応する構成単位Aを含む高分子化合物aと、前記高分子化合物aとは異なる有機化合物bと、を含む、組成物。
【化1】
(式中、X
1及びX
2は、各々独立して、直鎖状又は分岐状の炭素数1~12のアルキレン基を示す。Zは、ポリオレフィン骨格を示す。)
<2>
前記ポリオレフィン骨格が、水添ポリオレフィン骨格である、前記<1>に記載の組成物。
<3>
前記水添ポリオレフィン骨格が、水添ポリブタジエン骨格、又は、水添ポリ2-メチル-1,3-ブタジエン骨格である、前記<2>に記載の組成物。
<4>
前記ポリオレフィン骨格が、非水添ポリオレフィン骨格である、前記<1>に記載の組成物。
<5>
前記ポリオレフィン骨格の重量平均分子量(Mw)が1,000~10,000である、前記<1>~<4>のいずれかに記載の組成物。
<6>
前記有機化合物bが、脂環式骨格を有する(メタ)アクリレートモノマーを含む、前記<1>~<5>のいずれかに記載の硬化性組成物。
<7>
高分子化合物aと有機化合物bとの割合が、質量比で50:50~1:99である、前記<1>~<6>のいずれかに記載の組成物。
<8>
フィラーを含む、前記<1>~<7>のいずれかに記載の組成物。
<9>
下記式(1)で示される化合物に対応する構成単位Aを含む高分子化合物aに対応する構成単位αと、
前記高分子化合物aとは異なる有機化合物bに対応する構成単位βと、
を有するポリマーマトリクスを含む、固形物。
【化2】
(式中、X
1及びX
2は、各々独立して、直鎖状又は分岐状の炭素数1~12のアルキレン基を示す。Zは、ポリオレフィン骨格を示す。)
<10>
前記ポリマーマトリクス中に分散したフィラーを含む、<9>に記載の固形物。
<11>
下記式(1)で示される化合物に対応する構成単位Aを含む高分子化合物aを含む、樹脂改質剤。
【化3】
(式中、X
1及びX
2は、各々独立して、直鎖状又は分岐状の炭素数1~12のアルキレン基を示す。Zは、ポリオレフィン骨格を示す。)
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、種々の用途に適用可能な固形物を与えることのできる組成物、並びに種々の用途に適用可能な固形物、及び、樹脂改質剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書において、「(メタ)アクリル」、「(メタ)アクリレート」などの用語は、それぞれ「メタクリル」と「アクリル」、「メタクリレート」と「アクリレート」の総称である。
【0010】
本明細書において、「~」を用いて数値範囲を示す場合、その両端の数値を含むものとする。
【0011】
「Tg」はガラス転移温度(℃)を示し、モノマーのTgは、そのモノマーのホモポリマーのTgである。Tgは公知の文献値を使用できる場合にはその値を使用し、それ以外の場合には、例えばTgを求めようとするモノマーを下記のようにしてホモポリマーとし、そのホモポリマーのTgを下記のように測定し、そのモノマーのTgを得ることができる。
【0012】
モノマーと重合開始剤とを、成形型(2枚のガラス板のそれぞれに離型フィルムを貼りつけ、離型フィルム面を対向させた間に、4mm厚のシリコンスペーサーで、縦:100mm、横:100mmの領域を形成し、間隔が2~4mm程度になるように2枚のガラス板でシリコンスペーサーを挟持したもの)内に注入する。LED露光機により紫外線(波長:365nm)を成形型に1時間照射し、重合体を得る。
【0013】
得られた重合体を10mgはかり取り、示差走査熱量計(例えば、「DSC7000X」、日立ハイテクサイエンス社製)に取り付け、昇温速度10℃/分、温度領域-130~100℃で測定を行い、1回目の昇温過程における重合体由来の吸熱ピークの温度を重合体のガラス転移温度(Tg)とし、これをモノマーのTgみなすことができる。
【0014】
<本実施形態の組成物>
本実施形態の組成物は、下記式(1)で示される化合物(以下、単に「化合物(1)」と称することがある。)に対応する構成単位A(以下、単に「構成単位A」と称することがある)を含む高分子化合物aと、高分子化合物aとは異なる有機化合物b(以下、単に「化合物b」と称することがある)とを含む。
【0015】
【化4】
(式中、X
1及びX
2は、各々独立して、直鎖状又は分岐状の炭素数1~12のアルキレン基を示す。Zは、ポリオレフィン骨格を示す。)
【0016】
本実施形態の組成物は、硬化性組成物と、非硬化性組成物と、のいずれの態様でもありうる。本実施形態の硬化性組成物は、硬化反応により後述する本実施形態の固形物が得られる組成物であり、この場合、得られる固形物は硬化物である。硬化性組成物において生じる硬化反応は特に限定されず、硬化性組成物は、光硬化反応により硬化する光硬化性組成物であってもよく、熱硬化反応により硬化する熱硬化性組成物であってもよい。また、本実施形態の組成物が溶媒を含む場合、溶媒を除去することにより固形物が得られる態様も、本実施形態の硬化性組成物に含まれる。溶媒を含む硬化性組成物から溶媒を除去する際には、含まれる高分子化合物aや化合物bの化学的な変化を伴ってもよいし、伴わなくてもよい。このような態様の一例としては、例えば、粒子状の高分子化合物aと、粒子状の化合物bとを溶媒中に分散させたディスパージョン(分散組成物)、高分子化合物aと化合物bとの共重合体の粒子を溶媒中に分散させた分散組成物等が挙げられる。すなわち、後述する本実施形態の固形物を含む組成物は、本実施形態の硬化性組成物に該当する。硬化性組成物は、一般的には流動性のある状態であるが、これに限定されるものではない。
【0017】
本実施形態の非硬化性組成物は、硬化反応を伴わない組成物である。ただし、非硬化性組成物は静電気的な結合(配位)や相互作用等が生じる組成物を排除するものではない。非硬化性組成物は、特に限定されるものではないが、一般的には固体であり、その一例としては、粉体又は粒状の高分子化合物aと、粉体又は粒状の化合物bとを、を圧縮成形したペレット、粉体状の高分子化合物aと、粉体状の化合物bと他の粉体とを混合した粉体組成物、さらに、この粉体組成物を圧縮成形したペレット等が挙げられる。なお、本実施形態の非硬化性組成物を射出成型用のペレットとして用いた場合、当該ペレットを射出成型等によって特定の形状に成形した成型物も、後述する本実施形態の固形物に含まれる。
【0018】
≪高分子化合物a≫
高分子化合物aは、重合性を有する高分子化合物である。高分子化合物aの態様としては、下記のように、化合物(1)自体の他、2以上の化合物(1)に対応する構成単位Aを含む反応性高分子化合物等が含まれる。以下、各々を「反応性高分子(A1)」のように称することがある。
(A1)一つの構成単位Aのみで構成される反応性高分子化合物(この場合、式(1)で示される化合物自体が本実施形態の高分子化合物aに相当する。)
(A2)2以上の構成単位Aを含む反応性高分子化合物
【0019】
(化合物(1))
化合物(1)は、ポリオレフィン骨格を有し、両末端にマレイミド基を有するビスマレイミドポリオレフィン化合物である。
【0020】
式(1)において、X1及びX2は、各々独立して、直鎖状又は分岐状の炭素数1~12のアルキレン基を示す。当該アルキレン基の炭素数としては、化合物bや組成物を構成する他の構成要素との相溶性、混合性、及び分散性(以下、単に「相溶性・混合性・分散性」という場合がある)の点から、1~11が好ましく、1~5がさらに好ましく、具体的には、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、i-プロピレン基、n-ブチレン基、i-ブチレン基、t-ブチレン基、n-ブチレン基、i-ブチレン基、t-ブチレン基、n-ペンチレン基、i-ペンチレン基、t-ペンチレン基、n-ヘキシレン基、i-ヘキシレン基、t-ヘキシレン基、n-ウンデシレン基が好ましく、n-エチレン基がさらに好ましい。また、X1及びX2は各々異なっていてもよいが、生産性の点からは、同じアルキレン基であることが好ましい。
【0021】
式(1)におけるZはポリオレフィン骨格を示す。「ポリオレフィン骨格」とは、オレフィンに対応する構造を構成単位として含む骨格である。ポリオレフィン骨格は、非水添ポリオレフィン骨格と水添ポリオレフィン骨格とを含む。「非水添ポリオレフィン骨格」とは、オレフィンに対応する構造を構成単位として含み、当該構造中の二重結合が水素添加されていない(水素化されていない)骨格である。「水添ポリオレフィン骨格」とは、オレフィンに対応する構造を構成単位として含み、当該構造中の二重結合が水素添加された(水素化された)骨格である。すなわち、化合物(1)は、ポリオレフィン構造の両末端にマレイミドエステルが結合された構造を有する。以下、非水添ポリオレフィン構造の両末端にマレイミドエステルが結合された構造を有する化合物(1)を化合物(1a)、水添ポリオレフィン構造の両末端にマレイミドエステルが結合された構造を有する化合物(1)を化合物(1b)という。また、“化合物(1)”との概念には、化合物(1a)と化合物(1b)とを単独で含む場合の他、これらの混合物も含まれる。
【0022】
非水添ポリオレフィン骨格としては、特に限定されるものではないが、原料の入手性や後述する固形物の低比誘電率化又は低誘電正接化の点で、ポリオレフィン骨格が、ポリエチレン骨格、ポリプロピレン骨格、ポリブタジエン骨格、ポリイソプレン骨格、ポリイソブチレン骨格、及びα-オレフィン骨格からなる群から選ばれる骨格が好ましい例として挙げられる。
【0023】
水添ポリオレフィン骨格としては、特に限定されるものではないが、原料の入手性や後述する固形物の低比誘電率化又は低誘電正接化の点で、水添ポリブタジエン骨格、又は、水添ポリ2-メチル-1,3-ブタジエン骨格、が好ましい例として挙げられる。
【0024】
-水添率(水素化率)-
上述のように、非水添ポリオレフィン骨格はオレフィンに対応する構造に由来する二重結合が水添(水素化)されていない骨格を意味するが、構造中の全ての二重結合が水素化されていない骨格のみを意味するものではなく、例えば、意図的に水添(水素化)されていないポリオレフィン骨格をも含む。かかる点から、非水添ポリオレフィン骨格の水素化率は、得られる硬化物の靭性や柔軟性が優れたものとなる観点から、10%以未満であることが好ましく、5%未満であることがさらに好ましい。
また、上述のように水添ポリオレフィン骨格はオレフィンに対応する構造に由来する二重結合が水添されている。水添ポリオレフィン骨格の水添率は、後述する低比誘電率化又低誘電正接化の点から、90%以上であることが好ましく、95%以上であることがさらに好ましい。ポリオレフィン骨格の水添率は、NMRによりポリオレフィン中のポリオレフィン由来の不飽和結合の量を測定することにより算出したものをいう。換言すると、非水添ポリオレフィン骨格における非水添ポリオレフィン由来の二重結合の含有率は90%超であることが好ましく、95%超であることがより好ましい。また、水添ポリオレフィン骨格における水添ポリオレフィン由来の二重結合の含有率は10%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましい。
【0025】
化合物(1)が、1又は2以上の化合物(1a)と1又は2以上の化合物(1b)との混合物である場合、化合物(1)全体としてのポリオレフィン骨格の水添率を決定してもよい。化合物(1)全体としてのポリオレフィン骨格の水添率は、含まれる各化合物(1)のそれぞれのポリオレフィン骨格の水添率を測定・決定できる場合は、各化合物(1)のポリオレフィン骨格の水添率と混合物に占める各化合物(1)の割合とに応じて算出した水添率を採用することができる。また、各化合物(1)を分離することが困難な場合等、それぞれの化合物(1)のポリオレフィン骨格の水添率を測定できないが、混合物全体としてのポリオレフィン骨格の水添率を測定できる場合は、その値を化合物(1)全体としてのポリオレフィン骨格の水添率としてもよい。この点は後述する重量平均分子量、数平均分子量及び分子量分布においても同様である。
【0026】
ポリオレフィン骨格の重量平均分子量(Mw)は、特に限定されるものではないが、相溶性・混合性・分散性の点で1,000~10,000が好ましく、1,000~5,000がさらに好ましく、1,000~3,000が特に好ましい。
具体的に、非水添ポリオレフィン骨格の重量平均分子量(Mw)は、特に限定されるものではないが、相溶性・混合性・分散性の点で1,000~10,000が好ましく、1,000~5,000がさらに好ましく、1,000~3,000が特に好ましい。
水添ポリオレフィン骨格の重量平均分子量(Mw)は、特に限定されるものではないが、相溶性・混合性・分散性の点で1,000~10,000が好ましく、1,000~5,000がさらに好ましく、2,000~3,000が特に好ましい。
【0027】
ポリオレフィン骨格の数平均分子量(Mn)は、特に限定されるものではないが、相溶性混合性の点で1,000~10,000が好ましく、1,000~5,000がさらに好ましく、2,000~3,000が特に好ましい。
具体的に、非水添ポリオレフィン骨格の数平均分子量(Mn)は、特に限定されるものではないが、相溶性混合性の点で1,000~10,000が好ましく、1,000~5,000がさらに好ましく、1,000~3,000が特に好ましい。
ポリオレフィン骨格の数平均分子量(Mn)は、特に限定されるものではないが、相溶性混合性の点で1,000~10,000が好ましく、1,000~5,000がさらに好ましく、2,000~3,000が特に好ましい。
【0028】
ポリオレフィン骨格の分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))は、特に限定されるものではないが、組成物が硬化性組成物である場合の粘度を取り扱いやすい粘度とする点(以下、単に「粘度の点で」という場合がある)で1.00~3.00が好ましく、1.00~2.00がさらに好ましく、1.10~1.80が特に好ましい。
具体的に、非水添ポリオレフィン骨格の分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))は、特に限定されるものではないが、粘度の点で1.00~3.00が好ましく、1.00~2.00がさらに好ましく、1.10~1.80が特に好ましい。
水添ポリオレフィン骨格の分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))は、特に限定されるものではないが、粘度の点で1.00~3.00が好ましく、1.00~2.00がさらに好ましく、1.10~1.80が特に好ましい。
【0029】
ポリオレフィン骨格の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー〔東ソー(株)製、品番:HLC-8320GPC、カラム:東ソー(株)製、品番:TSKgel GMHH-R、溶媒:テトラヒドロフラン、流速:0.6mL/分〕を用いてポリスチレン換算で測定することができる。
【0030】
化合物(1a)の具体例としては、以下が挙げられる。
【化5】
(式中、l、m、nは、各々独立して5~95を示す。前記式中の各構成単位の結合順序は例示であり、実際は前記の構造式に示された順序に限定されるものではなく、各構成単位が規則的に又はランダムに結合している。また、水素化率に応じて二重結合を有さない水素化された構造が含まれうるが、式中では図示せず省略している。)
【0031】
化合物(1b)の具体例としては、以下が挙げられる。
【化6】
(式中、l、mは、各々独立して5~95を示す。前記式中の各構成単位の結合順序は例示であり、実際は前記の構造式に示された順序に限定されるものではなく、各構成単位が規則的に又はランダムに結合している。また、水添率に応じて二重結合を有する構造が含まれうるが、式中では図示せず省略している。)
【0032】
-化合物(1)の合成-
化合物(1)の合成方法は特に限定されるものではないが、例えば、溶媒中で、末端水酸基変性ポリオレフィンと、マレイミドエステルとを触媒下で反応させることで得ることができる。
【0033】
-化合物(1a)の合成-
化合物(1a)の合成方法は特に限定されるものではないが、例えば、溶媒中で、ポリオレフィンジオール等の末端水酸基変性ポリオレフィン(例えば、両末端が水酸基で変性された、非水添ポリブタジエン又はポリ2-メチル-1,3-ブタジエン等)と、マレイミドエステルとをジ-n-オクチル錫オキシド等の触媒下で反応させることで得ることができる。
【0034】
-化合物(1b)の合成-
化合物(1b)の合成方法は特に限定されるものではないが、例えば、溶媒中で、水添ポリオレフィンジオール等の末端水酸基変性水添ポリオレフィン(例えば、両末端が水酸基で変性された、水添ポリブタジエン又は水添ポリ2-メチル-1,3-ブタジエン等)と、マレイミドエステルとをジ-n-オクチル錫オキシド等の触媒下で反応させることで得ることができる。
【0035】
化合物(1)の合成方法に用いられる末端変性ポリオレフィンは、特に限定はなく目的とするポリオレフィン骨格を形成する観点から本発明の効果を損なわない範囲で適宜選定して用いることができる。なお、化合物(1)の合成方法は末端変性ポリオレフィンを用いるものに限定されず、例えば、水添されていない末端変性ポリオレフィンとマレイミドエステルとを反応させた後(化合物(1a)を合成した後)、ポリオレフィン骨格中の二重結合を水素還元して化合物(1b)を合成してもよい。
【0036】
化合物(1)の合成方法に用いることのできるマレイミドエステルとしては、所望の化合物(1)の末端基に対応する化合物を適宜選定でき、例えば、3-マレイミドプロピオン酸メチル、3-マレイミドブチル酸メチル、3-マレイミドペンチル酸メチル、3-マレイミドヘキシル酸メチル、3-マレイミドドデシル酸メチルが挙げられる。マレイミドエステルの合成方法は特に限定はないが、例えば、無水マレイン酸とアミノ基を有するカルボン酸との反応によって合成することができる。アミノ基を有するカルボン酸の例としては、例えば、3-マレイミドプロピオン酸メチルを合成する場合には3-アミノプロピオン酸(別名:β-アラニン)が挙げられる。
【0037】
化合物(1)の合成方法に用いられる溶媒は、特に限定はなく本発明の効果を損なわない範囲で公知のものを適宜選定して用いることができる。化合物(1)の合成方法に用いられる溶媒としては、例えば、トルエン、ノルマルヘキサン、及び、これらの混合溶媒を用いることができる。
【0038】
化合物(1)の合成方法に用いられる触媒は、特に限定はなく本発明の効果を損なわない範囲で公知のものを適宜選定して用いることができる。化合物(1)の合成方法に用いられる触媒としては、例えば、ジ-n-オクチル錫オキシド、テトラメトキシチタン等を用いることができる。
【0039】
(反応性高分子(A1))
上述のように反応性高分子(A1)は、高分子化合物aの一態様であり、一つの構成単位Aのみで構成される反応性高分子化合物である。すなわち、反応性高分子(A1)は上述の式(1)で示される化合物自体が高分子化合物aに相当する。化合物bが反応性高分子(A1)と共重合可能な化合物である場合には、反応性高分子(A1)は重合性高分子でありうる。また、化合物bがポリマーであり、反応性高分子(A1)と結合可能な側鎖を有する場合、反応性高分子(A1)は化合物b同士を架橋する架橋性高分子でありうる。また、化合物bがモノマーであり、反応性高分子(A1)と結合可能な部位を有する場合、反応性高分子(A1)は化合物bと反応する。反応性高分子(A1)は、常温常圧下において液状の化合物である。反応性高分子(A1)は、非硬化性組成物に用いることもできるが、一般的に、硬化性組成物に用いられる。
【0040】
(反応性高分子(A2))
上述のように反応性高分子(A2)は、本実施形態に係る高分子化合物aの一態様であり、2以上の構成単位Aを有する反応性高分子化合物である。反応性高分子(A2)は、反応性化合物(A1)と同様の理由から、重合性高分子、架橋性高分子でありうる。反応性高分子(A2)としては、例えば、上述の化合物(1)の二量体(構成単位Aが2つ連結した化合物)等が挙げられる。反応性高分子(A2)内に含まれる構成単位Aの数は特に限定はないが、相溶性・混合性・分散性、化合物bとの反応性の点から例えば、2~10が好ましく、2~5がさらに好ましく、2又は3が特に好ましい。反応性高分子(A2)は、本発明の効果に影響を与えない範囲で構成単位Aの間に他の構成単位を含むコポリマーであってもよい。反応性高分子(A2)は、非硬化性組成物に用いることもできるが、一般的に、硬化性組成物に用いられる。
【0041】
反応性高分子(A2)の重量平均分子量(Mw)は、組成物の用途や得られる固形物の求める特性に応じて決定されるため特に限定されるものではないが、例えば、相溶性・混合性・分散性の点で、2,000~100,000が好ましく、2,000~50,000がさらに好ましく、2,000~30,000が特に好ましい。
また、反応性高分子(A2)の数平均分子量(Mn)も、用途に応じて決定されるため特に限定されるものではないが、相溶性・混合性・分散性の点で2,000~100,000が好ましく、2,000~50,000がさらに好ましく、2,000~30,000が特に好ましい。
また、反応性高分子(A2)の分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))は、特に限定されるものではないが、粘度の点で1.00~5.00が好ましく、1.00~3.00がさらに好ましく、1.00~2.00が特に好ましい。
反応性高分子(A2)の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー〔東ソー(株)製、品番:HLC-8320GPC、カラム:東ソー(株)製、品番:TSKgel GMHH-R、溶媒:テトラヒドロフラン、流速:0.6mL/分〕を用いてポリスチレン換算で測定することができる。
反応性高分子(A2)のガラス転移温度(Tg)は、特に限定はないが、得られる固形物に高い柔軟性を付与できる点から、-70~50℃であることが好ましく、-60~30℃であることがさらに好ましく、-55~0℃であることが特に好ましい。
【0042】
反応性高分子(A2)の合成方法は特に限定されず、例えば、化合物(1)を熱又は光により重合することにより得ることができる。
【0043】
≪有機化合物b≫
化合物bは、高分子化合物aとは異なる有機化合物である。化合物bは、本実施形態の組成物から得られる固形物に含まれるポリマーマトリクスを構成する構成単位の一つとなる。ポリマーマトリクスの詳細については後述する。
【0044】
化合物bは、特に限定されず、得られる固形物において所望する特性を発揮しうる化合物を使用することができる。化合物bは、ポリマーマトリクスを構成する化合物であれば、高分子化合物aと反応するものでもよく、反応しないものでもよい。本実施形態の組成物は、化合物bとして、高分子化合物aと反応するもの、反応しないもの、及びその両方を含んでもよい。
高分子化合物aと反応する化合物bとしては、例えば以下のものが挙げられる。
(b1)高分子化合物aと重合して高分子化合物aと化合物bとの共重合体を形成しうるモノマー
(b2)高分子化合物aと結合可能な側鎖を有するポリマー
【0045】
高分子化合物aと反応しない化合物bとしては、例えば以下のものが挙げられる。
(b3)高分子化合物aと重合せず、化合物bのみで重合体を形成しうるモノマー
(b4)高分子化合物aと結合可能な側鎖を有さないポリマー
以下に、化合物bの一例を示す。
【0046】
(脂環式骨格を有する(メタ)アクリレートモノマー)
化合物b1の一例として、脂環式骨格を有する(メタ)アクリレートモノマーを含む化合物が挙げられる。脂環式(メタ)アクリレートモノマーは、少なくとも一つ以上の(メタ)アクリロイル基と、脂環構造とを有するモノマーである。脂環構造は、単環でもよく、複素環でもよく、環を構成する炭素原子の一部が他の元素に置換されたものでもよく、水素原子の少なくとも一部が置換基により置換されたものであってもよい。脂環式(メタ)アクリレートモノマーを構成単位として含むポリマーマトリクスを含む固形物は、高い耐熱性や高い耐候性等を発揮する傾向にあるが、靭性が低く、脆い固形物となりやすい傾向にある。一方、本実施形態の組成物から得られる固形物は、上述した高分子化合物aと脂環式(メタ)アクリレートモノマーとが共重合したポリマーマトリクスとなる。そのため、このポリマーマトリクスを含む固形物は、高い耐熱性や高い耐候性等を発揮しつつ、靭性が高く、耐久性の高い固形物となる。
【0047】
脂環式(メタ)アクリレートモノマーとしては特に限定されるものではないが、イソボルニル(メタ)アクリレート(アクリレートの場合のTg:97℃)、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレ-ト(アクリレートの場合のTg:120℃)、t-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、及びトリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリラート(アクリレートの場合のTg:134℃)、3,3,5-トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート(アクリレートの場合のTg:52℃)、アクリロイルモルフォリン(Tg:145℃)からなる群から選ばれる少なくとも1つのモノマーが好ましい。高分子化合物aとこれらのモノマーとを含むポリマーマトリクスを含む固形物は、高い靭性を有すると共に、これらのモノマーに由来する機能を十分に発揮できる傾向にあるためである。
【0048】
(Tgが40℃~150℃の(メタ)アクリレートモノマー)
化合物b1の他の一例として、Tgが40℃~150℃の(メタ)アクリレートモノマーが挙げられる。Tgが40℃~150℃を構成単位として含むポリマーマトリクスを含む固形物は、代表的には高い耐熱性や高い耐候性等を有するが、靭性が低く、脆い固形物となりやすい。一方、本実施形態の組成物から得られる固形物は、上述した高分子化合物aとTgが40℃~150℃の(メタ)アクリレートモノマーとが共重合したポリマーマトリクスとなるため、高い耐熱性や高い耐候性等を発揮しつつ、靭性が高く、耐久性の高い固形物とすることができる。
【0049】
Tgが40℃~150℃の(メタ)アクリレートモノマーとしては特に限定されるものではないが、上述した脂環式(メタ)アクリレートモノマーに加え、N,N-ジメチルアクリルアミド(Tg:119℃)、フェニル(メタ)アクリレート(メタクリレートTg:105℃)等が挙げられる。高分子化合物aとこれらのモノマーとを含むポリマーマトリクスを含む固形物は、高い靭性を有すると共に、これらTgが40℃~150℃の(メタ)アクリレートモノマーに由来する機能を十分に発揮できる傾向にあるためである。
【0050】
≪他の構成要素≫
本実施形態の高分子化合物aと有機化合物bとを含む組成物は、得られる固形物の用途に応じて、フィラー、溶媒、重合開始剤、及び連鎖移動剤等の他の構成要素を含むことができる。
【0051】
-フィラー-
本実施形態の組成物に用いられるフィラーは、得られる固形物に種々の物性を付与したり向上させたりすることができる。このような物性としては、導電性、磁性、熱伝導性、制振性、遮音性、摺動性、断熱性、光反射、光散乱性、難燃性、吸水性、及び耐候性等が挙げられる。また、強度の向上や軽量化を目的としてフィラーを添加してもよい。ただしフィラーを添加する目的は、これらに限定されるものではなく、得られる固形物の用途や得ようとする特性に応じて公知のものを適宜選定して用いることができる。なお、フィラーが有機化合物である場合、有機化合物bは後述するポリマーマトリクスを構成するのに対し、フィラーはポリマーマトリクス中に分散された粒子である点で両者は区別される。
【0052】
本実施形態の組成物に用いられるフィラーの形状は特に限定されるものではなく、得られる固形物の用途や得ようとする特性に応じて公知のものを適宜選定して用いることができる。すなわち、本実施形態の組成物に用いられるフィラーの形状は、球状、針状、繊維状、板状及び他の形状から適宜選定して用いることができる。
【0053】
本実施形態の組成物に用いられるフィラーの大きさは特に限定されるものではなく、得られる固形物の用途や得ようとする特性に応じて適切なものを適宜選定して用いることができる。すなわち、本実施形態の組成物に用いられるフィラーは、ナノフィラー(直径100nm~10nm前後)であっても良く、ミクロフィラー(直径10μm~100nm前後)であってもよく、マクロフィラー(直径100μm~10μm前後)であってもよい。
【0054】
本実施形態の組成物は、一種類のみのフィラーを含んでも良く、大きさや種類の異なる二種類以上のフィラーを含んでもよい。
【0055】
フィラーにより得られる物性とその物性を付与できるフィラーの一例としては、以下のもの及び材質のフィラーが挙げられる。なお、各フィラーにより得られる物性は代表的かつ例示的な物であり、各フィラーにより得られる物性は、併記した物性に限定されるものではない。例えば、固形物がフィラーとしてシリカを含む場合、固形物の弾性率や線膨張係数が低くなり、耐衝撃性、低熱膨張性、低熱収縮性などの複数の物性を固形物に付与できる。
導電性:カーボンブラック、黒鉛、炭素繊維、金属粉、金属繊維、金属箔等磁性:各種磁性材料、各種フェライト系材料、酸化鉄等;
熱伝導性:Al2O3(アルミナ)、AlN、BN、BeO等制振性:マイカ、黒鉛、炭素繊維、フェライト等遮音性:鉄粉、鉛粉、硫酸バリウム等;
摺動性:黒鉛、六方晶BN、硫化モリブデン、テフロン(登録商標)粉、タルク等;
断熱性、軽量性:ガラスバルーン、シラスバルーンなどのバルーン系材料等;
光反射性、光散乱性:酸化チタン、ガラスビーズ、炭酸カルシウム、アルミ粉、マイカ等;
難燃性:酸化アンチモン、水酸化アルミ、水酸化マグネシウム、硼酸亜鉛等;
耐候性:酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄等;
耐衝撃性:シリカ(溶融シリカ、結晶シリカ)、アルミナ、窒化ケイ素等;
吸水性:吸水用の高分子ゲル、酸化カルシウム、酸化マグネシウム等;
強度の向上:ガラス繊維、カーボン繊維、チタン酸カリウム等
【0056】
-溶媒-
本実施形態の組成物に用いられる溶媒としては、特に限定はなく、本発明の効果を損なわない範囲で公知のものを適宜選定して用いることができる。このような溶媒としては、例えば、トルエン、ノルマルヘキサン、並びに、これらの混合溶媒を用いることができる。本実施形態の組成物が溶媒を含む場合には、化合物(1)の合成の際に用いた溶媒をそのまま用いてもよい。なお、得られる固形物の用途や目的にもよるが、本実施形態の組成物が溶媒を含まない場合には、固形物を製造する場合に固形物中に気泡が含まれること等の溶媒に起因して生じうる問題が生じない。
【0057】
-重合開始剤-
本実施形態の組成物が光硬化性組成物や熱硬化性組成物である場合、必ずしも重合開始剤を用いなくても硬化させることが可能であるが、硬化性をさらに高める観点からは、重合開始剤を含むことが好ましい。重合開始剤としては、光や熱によってラジカルを発生する公知のラジカル光重合開始剤、ラジカル熱重合開始剤が挙げられる。光重合開始剤を用いた場合は、硬化物に熱履歴を残さないようにすることができ、所望の特性のさらなる向上が期待できる。
【0058】
光重合開始剤としては、例えば、以下の化合物が挙げられる。
アシルフォスフィンオキサイド系化合物:2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド(製品名:イルガキュアTPO、BASF製)、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド(製品名:イルガキュア819、BASF製;製品名:イルガキュア819DW、BASF製)
【0059】
α-ヒドロキシケトン系化合物:1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン(製品名:イルガキュア184、BASF製)、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン(製品名:イルガキュア1173、BASF製)、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン
-1-オン(イルガキュア2959、BASF製)、2-ヒロドキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン(製品名:イルガキュア127、BASF製)
【0060】
分子内水素引抜系化合物:フェニル グリオキシリック アシッド メチル エステル
(製品名:イルガキュアMBF、BASF製)
チタノセン化合物系化合物:1-[4-(フェニルチオ)-2-(o-ベンゾイルオキシム)]、ビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)ビス〔2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)フェニルチタニウム〕(製品名:イルガキュア
784、BASF製)
ベンジルケタール系化合物:2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン(製品名:イルガキュア651、BASF製)
【0061】
α-アミノケトン系化合物:2-メチル-4'-メチルチオ-2-モルホリノプロピオフェノン(製品名:イルガキュア907、BASF製)、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1(製品名:イルガキュア369、BASF製)、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1
-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン(製品名:イルガキュア379
EG、BASF製)
【0062】
オキシムエステル系化合物:1-[4-(フェニルチオ)-2-(O-ベンゾイルオキシム)](製品名:イルガキュアOXE-01、BASF製)、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-1-(O-アセチルオキシム)(例えば、製品名:イルガキュアOXE-02、BASF製;製品名:イルガキュアOXE-03、BASF製;製品名:イルガキュアOXE-04、BASF製;製品名:N-1919、ADEKA製;製品名:N-1414、ADEKA製)などを用いることができる。
【0063】
他のラジカル光重合開始剤としては、例えば、キノン類化合物(例えば、2-エチルアントラキノン、2-tert-ブチルアントラキノン);芳香族ケトン類(例えば、ベンゾフェノン、ベンゾイン);ベンゾインエーテル類化合物(例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル);アクリジン化合物(例えば、9-フェニルアクリジン(製品名:N-1717、ADEKA製));トリアジン類化合物(例えば、2,4-トリクロロメチル-(4"-メトキシフェニル)-6-トリアジン、2,4-トリクロロメチル-(4'-メトキシナフチル)-6-トリアジン、2,4-トリクロロメチル-(ピペロニル)-6-トリアジン、2,4-トリクロロメチル-(4'-メトキシスチリル)-6-トリアジン2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン)などが挙げられる。
【0064】
また、光重合開始剤と併せて公知の光増感剤を用いてもよい。光増感剤としては、例えば、アミン類としてエチル-4-ジメチルアミノベンゾエート(ダロキュアEDB:BASF製)、2-エチルへキシル-4-ジメチルアミノベンゾエート(ダロキュアEHA:BASF製)、ケト化合物としてベンゾフェノン類、チオキサントン類、ケト-クマリン類、アントラキノン類(アントラキュアー UVS-581:川崎化成工業製)を用いてもよい。
【0065】
熱重合開始剤としては、例えば、ジメチル-2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2'-アゾビスイソ酪酸ジメチル、アゾビスジメチルバレロニトリルなどのアゾ系重合開始剤、過酸化ベンゾイル、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過酸化物系重合開始剤などが挙げられるが、本実施形態は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの重合開始剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0066】
本実施形態の組成物に含まれる重合開始剤の量は、当該重合開始剤の種類などによって異なるので一概には決定することができないが、通常、本実施形態の組成物に含まれる重合性成分の総量100質量部あたり、0.1~10質量部であることが好ましく、1~5質量部がさらに好ましい。
【0067】
-連鎖移動剤-
連鎖移動剤としては、例えば、ラウリルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、チオグリセロールなどのチオール基を有する化合物;次亜リン酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウムなどの無機塩、トルエンやシクロペンタノンなどの有機溶媒などが挙げられるが、本実施形態は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの連鎖移動剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。連鎖移動剤の量は、当該連鎖移動剤の種類などによって異なるので一概には決定することができないが、通常、重合性成分100質量部あたり、0.01~100質量部程度であることが好ましい。
【0068】
-その他-
上述した他の構成要素以外のものとして、レベリング剤、密着付与剤等の公知の添加剤、高分子化合物a及び有機化合物bと反応(例えば、共重合、付加、置換等)しないポリマーなどを挙げることができる。
【0069】
組成物中の高分子化合物aと化合物bとの合計量(以下、全固形分という)を100質量部とした場合において、全固形分100質量部に対する高分子化合物aの含有量は、固形物において高分子化合物aに由来する機能を十分に発揮させる点から、3~97質量部が好ましく、5~70質量部がより好ましく、10~50質量部がさらに好ましい。
同様に、組成物中の全固形分100質量部に対する化合物bの含有量は、固形物において化合物bに由来する機能を十分に発揮させる点から、20~97質量部が好ましく、30~95質量部がより好ましく、50~90質量部がさらに好ましい。
さらに、組成物中における高分子化合物aと化合物bとの割合は、固形物において高分子化合物a及び化合物bのそれぞれに由来する機能を十分に発揮させる点から、質量比で高分子化合物a:化合物b=50:50~1:99であることが好ましく、40:60~5:95であることがより好ましく、30:70~10:90であることがさらに好ましい。
【0070】
本実施形態の組成物の用途は特に限定されず、種々の用途に用いることができる。一例としては、後述する電子材料に加え、接着剤、粘着剤、UVインクジェット用インク、ワニス等として用いることができる。
【0071】
<本実施形態の固形物>
本実施形態の固形物は、下記式(1)で示される化合物に対応する構成単位Aを含む高分子化合物aに対応する構成単位αと、高分子化合物aとは異なる有機化合物bに対応する構成単位βと、を有するポリマーマトリクス(以下、単に本実施形態に係るポリマーマトリクスという)を含む。
【0072】
【化7】
(式中、X
1及びX
2は、各々独立して、直鎖状又は分岐状の炭素数1~12のアルキレン基を示す。Zは、ポリオレフィン骨格を示す。)
【0073】
本実施形態の固形物は、代表的には上述した本実施形態の組成物から得ることができる。そのため、本実施形態の固形物においては、上述した本実施形態の組成物と共通する事項の説明は省略する。また、本実施形態の固形物が上述した硬化性組成物から得られるものである場合、固形物は硬化物である。
【0074】
本実施形態の固形物の構成は、本実施形に係るポリマーマトリクスを含むものである限り限定されない。本実施形態の固形物の一例としては、以下の態様が挙げられる。
(1)本実施形に係るポリマーマトリクスのみで構成される態様
(2)本実施形に係るポリマーマトリクスと、他の構成要素とを含む態様
【0075】
≪本実施形に係るポリマーマトリクス≫
本実施形に係るポリマーマトリクスは、複数の構成単位により構成されたポリマーの集合体である。本実施形に係るポリマーマトリクスの形態は、構成単位αと構成単位βとを有する限り特に限定されないが、例えば以下のような態様でありうる。
【0076】
(PM1)構成単位αと構成単位βとがポリマー主鎖中で共重合した態様
(PM2)構成単位βを有するポリマーの側鎖に構成単位αが結合し、構成単位βを有するポリマー同士を構成単位αが架橋した態様
(PM3)構成単位βを有するポリマーにより形成されたポリマーマトリクスβと、構成単位αを有するポリマーにより形成されたポリマーマトリクスαとが混在する態様であって、ポリマーマトリクスαとポリマーマトリクスβとにより、相互侵入網目構造や半相互侵入網目構造が形成された態様
(PM4)ポリマーマトリクスαとポリマーマトリクスβとが混在する態様であって、ポリマーマトリクスαとポリマーマトリクスβとの間に化学的な結合が無い態様(ポリマーブレンド)
(PM5)ポリマーマトリクスαとポリマーマトリクスβとが混在する態様であって、ポリマーマトリクスαとポリマーマトリクスβとの一方が、他方のポリマーマトリクス中に分散している態様
(PM6)前記(PM1)~(PM5)において、ポリマーマトリクス中に分散した他の構成要素を含む態様
【0077】
ポリマーマトリクスにおける構成単位αの割合は、固形物において高分子化合物aに由来する機能を十分に発揮させる点から、ポリマーマトリクス全体の質量に基づいて、3~97質量部が好ましく、5~70質量部がさらに好ましく、10~50質量部が特に好ましい。
同様に、ポリマーマトリクスにおける構成単位βの割合は、固形物において化合物bに由来する機能を十分に発揮させる点からポリマーマトリクス全体の質量に基づいて、20~97質量部が好ましく、30~95質量部がさらに好ましく、50~90質量部が特に好ましい。
さらに、ポリマーマトリクスにおける構成単位αと構成単位βの割合は、固形物において高分子化合物a及び化合物bのそれぞれに由来する機能を十分に発揮させる点から、質量比で構成単位α:構成単位β=の50:50~1:99であることが好ましく、40:60~5~95であることがより好ましく、30:70~10:90であることがさらに好ましい。
ポリマーマトリクス中の各構成単位の割合は、固形物を公知の手法で分析して特定してもよく、固形物を形成した組成物に含まれる高分子化合物a及び化合物bの量に基づいて決定してもよい。
【0078】
≪他の構成要素≫
ポリマーマトリクス中に分散した他の構成要素を含む態様において、他の構成要素としては、上述した組成物に含まれる他の構成要素に由来する成分が挙げられる。これらの中でも、ポリマーマトリクス中にフィラー及び/又は他のポリマーが分散した態様は、フィラーや他のポリマーに由来する特性を固形物に付与できる点で好ましい。
【0079】
ポリマーマトリクス中に分散した他の構成要素を含む態様において、ポリマーマトリクスと他の構成要素との割合は所望の特性が得られる限り特に限定されない。一例としては、固形物に占める他の構成要素の割合は、0質量%超93質量%以下とでき、5質量%以上90質量%以下とでき、10質量%以上80質量%以下とできる。上述のように本実施形態の固形物はポリマーマトリクス中に分散したフィラーを含むことができ、特に、固形物を封止剤等の電子材料用途に用いる場合は、上述したフィラーとしてシリカ製のフィラーを含む場合がある。本実施形態の固形物がシリカ製のフィラーを含むことで、固形物の弾性率や線膨張係数が低くなり、耐衝撃性、低熱膨張性、低熱収縮性などの複数の物性を付与できる。固形物がシリカ製のフィラーを含む場合、固形物に占めるシリカ製のフィラーの割合は、0質量%超93質量%以下が好ましく、10質量%以上80質量%以下がより好ましく、30質量%以上70質量%以下がさらに好ましい。
【0080】
≪本実施形態の固形物の態様≫
本実施形態の固形物の態様は、本実施形態に係るポリマーマトリクスを含むものであれば特に限定されない。また、固形物が硬化物である場合、硬化物は完全に硬化した状態だけでなく、半硬化状態のものも含む。完全に硬化した状態の硬化物の形状は特に限定されず、用途に応じて所望の形状とすることができ、その一例としては、板状、棒状、ブロック状、フィルム等の形状が挙げられる。半硬化状態の硬化物は、接着剤や粘着剤、ワニス、グリースなど、その用途での使用に適した粘度を有することが好ましい。
【0081】
≪本実施形態の固形物の用途≫
本実施形態の固形物の用途は特に限定されず、種々の用途に用いることができる。特に、本実施形態の固形物は、高周波(例えば、周波数帯300MHz以上、又は、1GHz以上、さらには30GHz以上)の電波を用いた装置に用いられる電子材料用途に好適に用いることができる。このような「電子材料」には、電子機器に用いられる電池、電子部品、半導体、ディスプレイや液晶基板といった電子機器向けのデバイスやモジュールの製造に必要な部材や材料が含まれる。このような部材や材料としては、例えば、低誘電正接材料や低比誘電率性が求められる用途に用いられる樹脂材料等の低伝送損失材料(例えば、低誘電基板、プリプレグ、半導体封止材料等)が挙げられ、さらにこれら低伝送損失材料を用いたプリント配線基板にも好適に用いることができる。このような低伝送損失材料を用いたプリント配線基板としては、例えば、本実施形態の固形物を含む基板や樹脂層を備えたプリント配線基板などが挙げられる。当該プリント配線基板の樹脂層としては、配線上等に設けられる封止層や各回路の間に位置する絶縁層などが挙げられる。また、低伝送損失材料を用いたプリント配線基板の他の例としては、本実施形態の固形物を含む低誘電基板やプリプレグなどを用いたプリント配線基板が挙げられる。本実施形態の固形物は、具体的には、上述の製品の基板自体、基板上の膜、フィルム等に用いることができる。
【0082】
また、本実施形態の固形物は優れた力学的物性や寸法安定性(伸び、応力)を発揮でき、さらに熱による黄色化など光学特性への影響が少ない。また、低比誘電率性(例えば、比誘電率ε'(10GHz)2.5以下)や低誘電正接性(例えば、誘電正接tanδ(10GHz)0.005以下)を発揮しうるため、電子材料等に用いた場合に伝送損失を抑制することができる。また、本実施形態の固形物は、靭性に優れるとともに、優れた耐熱性を有する。これらの観点から、本実施形態の固形物は高周波の電波を用いた電子材料など、低伝送損失が求められる用途に好適に用いることができる。
【0083】
<本実施形態の樹脂改質剤>
本実施形態の樹脂改質剤は、下記式(1)で示される化合物に対応する構成単位Aを含む高分子化合物aを含む。
【化8】
(式中、X
1及びX
2は、各々独立して、直鎖状又は分岐状の炭素数1~12のアルキレン基を示す。Zは、ポリオレフィン骨格を示す。)
【0084】
本実施形態の樹脂改質剤は、上述した本実施形態の組成物から本実施形態の固形物を得る場合に、高分子化合物aを含む固形物が高分子化合物aを含まない固形物と比較して種々の良好な特性を発揮することに着目したものである。そのため、本実施形態の樹脂改質剤においては、上述した本実施形態の組成物及び固形物と共通する事項の説明は省略する。
【0085】
本実施形態の樹脂改質剤(高分子化合物a)を用いた場合に良好な特性を発揮する樹脂(固形物)が得られる理由は、おおむね次のように推察される。上述のように、高分子化合物aは比較的長さが長く柔らかいポリブタジエン骨格等のポリオレフィン骨格を含んでおり、固形物に加わった荷重がポリマーマトリクス中のポリオレフィン骨格により吸収されることで、固形物に高い靭性を付与していると考えられる。また、例えば、高分子化合物aが有機化合物bと重合し、高分子化合物aと、有機化合物bとが共重合したポリマーマトリクス(樹脂)を形成する場合、高分子化合物aと有機化合物bとが重合する際に、高分子化合物aと有機化合物bとが共重合した部分と、有機化合物aのポリオレフィン部とがミクロ層分離を起こし、比較的柔軟なポリオレフィン骨格による高い靭性や高い柔軟性が発現するものと考えられる。
【0086】
高分子化合物aを樹脂改質剤として用いる場合、高分子化合物aと有機化合物bとの割合は、固形物におおける高分子化合物aによる改質効果を十分に発揮させる点から、質量比で高分子化合物a:有機化合物b=の50:50~1:99であることが好ましく、40:60~5:95であることがより好ましく、30:70~10:90であることがさらに好ましい。
【0087】
本実施形態の樹脂改質剤は、上述した脂環式(メタ)アクリレートモノマーに由来する構成単位を含む樹脂(ポリマー)の樹脂改質剤、Tgが40℃~150℃の(メタ)アクリレートモノマーに由来する構成単位を含む樹脂(ポリマー)の樹脂改質剤として特に好適に用いられる。
【実施例0088】
以下、本実施形態を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本実施形態はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0089】
本実施例において、以下の略号を使用することがある。
SPBDMI:両末端ビスマレイミド化水添ポリブタジエン
PBDMI:両末端ビスマレイミド化非水添ポリブタジエン
V#700HV:ビスフェノールA EO 3.8モル付加物ジアクリレート(大阪有機化学工業社製,製品名:ビスコート#700HV)
IBXA:イソボルニルアクリレート(大阪有機化学工業社製 Tg:97℃)
V#196:3,3,5-トリメチルシクロヘキシルアクリレート(大阪有機化学工業社製、製品名:ビスコート#196 アクリロイルモルフォリン)
ACMO:アクリロイルモルフォリン(KJケミカルズ社製 製品名:ACMO(登録商標) Tg:145℃)
DMAA:N,N-ジメチルアクリルアミド(KJケミカルズ社製 製品名:DMAA(登録商標) Tg:119℃)
TCDDA:トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(共栄社化学社製)
TPO:2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド(LAMBSON社製)
パーブチルP:α,α'-ジ(t-ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン(日油社製 製品名:パーブチル(登録商標)P)球状シリカ:粒子径:約2μm、形状:球状(天津沢希鉱産加工社製、製品名:SSF-002)
【0090】
[製造例1-1]
(3-マレイミドプロピオン酸メチルの合成)
ディーンスターク型分流器及び攪拌機を備えた容量500mLの4つ口フラスコにトルエン150.0g、リン酸24.7gを仕込み、脱水還流を1時間行った。その後、トリエチルアミン8.3g、無水マレイン酸30.0g、β-アラニン25.9gを仕込み、生成する水を除去しながら7時間、還流温度で反応を行った。その後、トルエンを濃縮し、メタノール219.0g、硫酸2.7gを加え、65℃で3時間反応を行った。反応終了後、5%炭酸水素ナトリウム水溶液でpH7に調整し、メタノールを濃縮した。濃縮液に酢酸エチル200.0g、5%炭酸水素ナトリウム水溶液100.0gを加え、分液操作を行い、有機層を分離した。得られた有機層を濃縮することで、3-マレイミドプロピオン酸メチル34.7gを淡黄色液体として得た。
【0091】
[製造例1-2]
(SPBDMIの合成)
ディーンスターク型分流器及び攪拌機を備えた容量300mLの4つ口フラスコに末端水酸基変性ポリブタジエン(水添率97%以上;CRAY VALLEY社製、製品名:HLBH-P2000)50.0g、製造例1-1で得られた3-マレイミドプロピオン酸メチル8.0g、トルエン58.0g、ノルマルヘキサン116.0g、ジ-n-オクチル錫オキシド0.2gを加え、生成するメタノールを除去しながら、8時間、還流温度で反応を行った。反応終了後、濃縮することでビスマレイミド化水添ポリブタジエン56.3gを淡黄色粘性液体として得た。得られたビスマレイミド化水添ポリブタジエンのGPCによる重量平均分子量(Mw)は5,700であった。
【0092】
[製造例1-2]
(PBDMIの合成)
末端水酸基変性ポリブタジエンに代えて液状ポリブタジエン(水素化率5.0%未満;日本曹達社製、製品名:NISSO-PB G-2000)を用いた以外は製造例1-2と同様にして、ビスマレイミド化非水添ポリブタジエン280gを淡黄色粘性液体として得た。得られたビスマレイミド化非水添ポリブタジエンのGPCによる重量平均分子量(Mw)は6,000であった。
【0093】
<実施例1>
≪光硬化性樹脂組成物の調製≫
250mL 広口ポリプロピレン製容器にSPBDMI 25.00g,IBXA 75.00g、TPO 0.005gを加え、自転公転式撹拌脱泡装置(倉敷紡績社製、品番:マゼルスター)にて撹拌・脱泡を行い、実施例1に係る光硬化性組成物を得た。
【0094】
≪硬化物の作製≫
離形処理されたPETフィルム上に、実施例1に係る光硬化性組成物を塗布し、厚さ約170μmの塗膜を形成した。各塗膜を離形処理されたPETフィルムで覆い、ついで照度360mW/cm2、露光量3000mJ/cm2となるように紫外線を照射し、光硬化性組成物を重合させ、実施例1に係る硬化物を得た。実施例1に係る硬化物の形状はフィルム状であった。
【0095】
≪特性の測定≫
実施例1に係るフィルム状の硬化物を、JIS K6251の6.1に規定するダンベル状7号形に打ち抜くことにより、試験片を得た。得られた試験片を引張り試験機〔(株)エー・アンド・デイ製、品番:Tensilon RTG-1310〕のチャック間距離が19mmとなるように取り付け、50mm/minの引張り速度で試験片が破断するまで引張り荷重を加える操作を行ない、破断強度、引張弾性率、及び伸びひずみを測定した。結果を表1に示す。
【0096】
<実施例2、3、比較例1~4>
光硬化性組成物の組成を表1に記載の通りに変更した以外は実施例1と同様にして、実施例2、3、及び比較例1~4に係る硬化物と試験片を得た。各実施例、比較例に係る試験片について、実施例1と同様にして破断強度、引張弾性率、及び伸びひずみを測定した。なお、「破断強度」は硬化物の強度を示し、値が大きいほど高強度であることを示す。「引張弾性率」は、その数値が大きいほどその硬化物の応力ひずみが小さく、硬い硬化物であることを示し、値が小さいほど、柔らかい(柔軟性を示す)硬化物であることを示す。「伸びひずみ」は硬化物の伸張性を示し、その値が大きいほどその硬化物の伸びが良好であることを示す。すなわち、破断強度が大きく、伸びひずみが大きい硬化物は、荷重に対して変形しやすく、破壊されにくい硬化物であること(高い靭性を有すること)を示す。結果を表1に示す。
【0097】
【0098】
表1から明らかなように、SPBDMIを含む実施例1,2は、これを添加していない比較例1よりも破断強度が大きくなりつつ引張弾性率が低下し、伸びひずみも向上した。一方、SPDMIAに代えてV#700HVを含む比較例2,3は、板状の硬化物であり、実施例1,2ほど引張弾性率が低下せず、伸びひずみの向上もほぼみられなかった。また、実施例3と比較例4とを対比すると、SPBDMIを含む実施例3のほうが高破断強度、低弾性、高伸長の硬化物であることが分かる。
【0099】
<実施例4、5>
≪熱硬化性組成物の調製≫
250mL 広口ポリプロピレン製容器に、SPBDMI 3.20g,TCDDA 12.8gを加えて混合した後、熱重合開始剤としてパーブチルP 0.24 g及び球状シリカ 24.02gを加えて自転公転式撹拌脱泡装置にて撹拌・脱泡を行い、実施例4に係る熱硬化性組成物を得た。また、SPBDMIに代えてPBDMIを用いた以外は実施例4と同様にして、実施例5に係る熱硬化性組成物を得た。
【0100】
≪硬化物の作製≫
実施例4、5に係る熱硬化性組成物のそれぞれを透明ガラス製の成形型(縦:25mm、横:52mm、深さ:0.5mm)内に注入し、実施例4、5に係る熱硬化性組成物が含まれた成形型を160℃、1.5時間の条件で加熱した。加熱終了後に成形型を解体し、実施例4、5に係る板状の硬化物(厚さ:約500μm)を得た。
【0101】
≪特性の測定≫
実施例4、5に係る板状の硬化物からそれぞれ試験片を作製し、この試験片を、支点間距離が32mmとなるように試験機(インストロンジャパン社製 万能材料試験機(品番:5582))に取り付け、試験速度 1mm/分の条件で3点曲げ試験を行った。得られた応力ひずみ曲線から、実施例4、5に係る板状の硬化物の破断強度、曲げ弾性率及び曲げひずみを求めた。用いた試験機の選定、試験片の作製、3点曲げ試験の条件、及び各特性の計算は、JIS K 7171(2016)に準拠して行った。結果を表2に示す。
【0102】
<比較例5,6>
熱硬化性組成物の組成を表2に記載の通りに変更した以外は実施例4、5と同様にして、比較例5,6に係る板状の硬化物と試験片を得た。各比較例に係る試験片について、実施例4、5と同様にして破断強度、引張弾性率、及び曲げひずみを測定した。結果を表2に示す。
【0103】
【0104】
実施例4、5と比較例5、6とを対比すると、実施例4、5は比較例5、6よりも破断強度と曲げひずみが大きく、曲げ弾性率が低い。したがって、実施例4、5に係る硬化物は、靭性と柔軟性とを有することが分かる。換言すると、高分子化合物aは、有機化合物bの特性を改善する樹脂改質剤として良好な特性を示すことが分かる。