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特開2024-173784車両ホイールと地表面との間の摩擦を特徴付ける量を求めるための方法及び車両
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173784
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】車両ホイールと地表面との間の摩擦を特徴付ける量を求めるための方法及び車両
(51)【国際特許分類】
   B60W 40/068 20120101AFI20241205BHJP
【FI】
B60W40/068
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024087050
(22)【出願日】2024-05-29
(31)【優先権主張番号】10 2023 114 168.6
(32)【優先日】2023-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】592245937
【氏名又は名称】バイエリッシェ モトーレン ヴェルケ アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Bayerische Motoren Werke Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Petuelring 130, D-80809 Muenchen, Germany
(71)【出願人】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】フランシスコ パッシガート
(72)【発明者】
【氏名】マーティン フロスマン
(72)【発明者】
【氏名】アニア ヴァール
(72)【発明者】
【氏名】カール ルートヴィヒ シュトーレ
【テーマコード(参考)】
3D241
【Fターム(参考)】
3D241BA50
3D241CA12
3D241DA49Z
3D241DA53Z
3D241DA58Z
3D241DB02Z
3D241DB05Z
3D241DB13Z
3D241DB14Z
3D241DB15Z
3D241DC47Z
(57)【要約】
【課題】本発明は、車両(1)の車両ホイール(2)と現在の地表面(5)との間の現在の摩擦を特徴付ける少なくとも1つの量(49)を、電子計算装置(17)を用いて求める方法に関する。
【解決手段】本方法においては、電子計算装置(17)を用いて、車両(1)の操舵装置(24)において作用する現在の操舵モーメントを特徴付ける少なくとも1つの実際トルク値(46)を求める。また、車両(1)の現在のロール角を特徴付ける少なくとも1つの実際角度値を求める。さらに、車両(1)の現在の走行速度を特徴付けかつ関連する実際角度値と実際値ペアを形成する少なくとも1つの実際速度値を求める。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(1)の車両ホイール(2)と現在の地表面(5)との間の現在の摩擦を特徴付ける少なくとも1つの量(49)を、電子計算装置(17)を用いて求める方法であって、
-前記電子計算装置(17)を用いて、
・前記車両(1)の操舵装置(24)において作用する現在の操舵モーメントを特徴付ける少なくとも1つの実際トルク値(46)を求め、
・前記車両(1)の現在のロール角を特徴付ける少なくとも1つの実際角度値を求め、
・前記車両(1)の現在の走行速度を特徴付けかつ関連する前記実際角度値と実際値ペアを形成する少なくとも1つの実際速度値を求め、
・前記実際値ペアに応じて、複数の基準角度値、複数の基準速度値及び複数の基準トルク値を含み、かつ、前記基準角度値のうちの正確に1つと前記基準速度値のうちの正確に1つとを含むそれぞれの基準値ペアに前記基準トルク値のうちの正確に1つを割り当てる、基準摩擦係数について求めた少なくとも1つの基準特性マップ(37)から、前記実際値ペアに属する値ペアとして前記基準値ペアのうちの1つを選択し、
・選択した前記基準値ペアに割り当てられた前記基準トルク値(50)を求め、
・求めた前記基準トルク値と、求めた前記実際トルク値(46)とを比較し、
・前記基準トルク値(50)と前記実際トルク値(46)との比較に応じて前記量(49)を求める
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記電子計算装置(17)を用いて前記実際トルク値を求めるべく、
前記電子計算装置(17)を用いて、
-前記操舵装置(24)において作用する少なくとも1つの動的な操舵モーメント成分と、前記操舵装置(24)において作用する静的な操舵モーメント成分とを特徴付ける少なくとも1つの第1の出力値(43)を求め、
-前記操舵装置(24)において作用する前記少なくとも1つの動的な操舵モーメント成分と、前記操舵装置(24)において作用する前記静的な操舵モーメント成分とに関連して、前記操舵装置(24)において作用する前記少なくとも1つの動的な操舵モーメント成分だけを特徴付ける少なくとも1つの第2の出力値(47)を求め、
-前記出力値(43,47)に応じて前記実際トルク値(46)を求める
ことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
-前記車両(1)の前記車両ホイール(2)及び/又は少なくとも1つの他の車両ホイール(3)の回転数、及び/又は、
-前記車両(1)のロールレート、及び/又は、
-前記車両(1)のロール加速度、及び/又は、
-前記車両(1)のヨー加速度、及び/又は、
-前記車両(1)の操舵角レート、及び/又は、
-前記車両(1)の減速度、及び/又は、
-前記車両の少なくとも1つのホイールブレーキにおける圧力、及び/又は、
-前記車両(1)のジャイロモーメント
に応じて、前記電子計算装置(17)を用いて前記第2の出力値(47)を計算する
ことを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記車両(1)のセンサ装置(45)を用いて、前記操舵モーメントとして前記操舵装置(24)において作用するトルクを検出し、検出した前記トルクに応じて前記実際トルク値(46)を求める
ことを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記センサ装置(45)を用いて検出した前記トルクに応じて前記第1の出力値(43)を求める
ことを特徴とする、請求項2又は3を引用する請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記電子計算装置(17)を用いて、
-前記車両(1)を利用する人の、前記車両(1)に対して相対的な少なくとも1つの位置を特徴付ける位置値を少なくとも求め、
-前記位置値に応じて前記実際トルク値(46)を求める
ことを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記電子計算装置(17)を用いて、
-前記位置値に応じて、前記車両(1)の前記操舵装置(24)において作用する前記現在の操舵モーメントへの前記位置の影響を特徴付ける少なくとも1つの影響値を求め、
-前記影響値に応じて前記実際トルク値(46)を求める
ことを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記車両(1)の少なくとも1つのセンサを用いて、前記人の前記位置によって影響を受ける測定量を検出し、前記位置値は、検出した前記測定量を特徴付ける
ことを特徴とする、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
前記車両(1)は、単一軌道二輪車として構成されている
ことを特徴とする、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の方法を実施するように構成されている車両(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の車両ホイールと現在の地表面との間の現在の摩擦を特徴付ける少なくとも1つの量を求める方法に関する。さらに、本発明は、車両に関する。
【背景技術】
【0002】
米国特許出願公開第2022/0126833号明細書においては、車両を取り囲む複数の領域についての道路摩擦推測値を示す道路摩擦係数情報を受信する方法が開示されている。米国特許第10773725号明細書からは、車両のセンサを利用して、車両前方に配置されている車道を示す画像を求める方法が公知である。米国特許出願公開第2018/0037234号明細書からは、下にある表面に対する車両のホイールの摩擦係数が既知であると推測する方法を知ることができる。さらに、独国特許出願公開第102009002245号明細書においては、車両におけるタイヤと車道との間の摩擦係数を求める方法が開示されている。欧州特許第2290318号明細書には、傾斜車両が開示されている。独国特許出願公開第102019210807号明細書からは、さらに、操舵モーメントを求めるための少なくとも1つのセンサを備えた、車両用の操舵システムが公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2022/0126833号明細書
【特許文献2】米国特許第10773725号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2018/0037234号明細書
【特許文献4】独国特許出願公開第102009002245号明細書
【特許文献5】欧州特許第2290318号明細書
【特許文献6】独国特許出願公開第102019210807号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、車両の車両ホイールと現在の地表面との間の現在の摩擦を特徴付ける少なくとも1つの量を特に有利に求めることができるような方法及び車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は、本発明によれば、請求項1の特徴を有する方法及び請求項10の特徴を有する車両によって解決される。本発明の有利な実施形態は、従属請求項の対象である。
【0006】
本発明の第1の態様は、車両の車両ホイールと、例えば車道として構成されかつ地面とも称される現在の地表面であって、例えば車両が現在、特に車両の車両高さ方向下向きに支持されている地表面との間の現在の摩擦を特徴付ける少なくとも1つの、特に現在の量を求めるための方法に関する。この量には、例えば、現在の摩擦を特徴付ける少なくとも1つの実際摩擦係数、及び/又は、現在の摩擦を特徴付ける少なくとも1つの摩擦係数クラスが含まれ、又は、この量は、現在の摩擦を特徴付ける実際摩擦係数であり、若しくは、この量は、現在の摩擦を特徴付ける摩擦係数クラスである。例えば、本方法は、走行中に地表面(地面)に沿って走行する車両の走行中に実施され、この間、車両は、車両ホイールを介して、特に車両の車両高さ方向下向きに地面に支持されており、したがって、この間、車両ホイールは、特に地面に直接接触している。したがって、車両ホイールは、車輪とも称される単なる地面接触要素であり、この地面接触要素を介して、車両は、本方法の間、特に車両の車両高さ方向下向きに支持されている。車両ホイールには、特に、例えばリムと、特にリムとは別個に構成されたタイヤとが含まれ、このタイヤは、リムに外嵌され、ひいては、リムによって支持されている。特に、車両ホイールは、ホイール回転軸線の周りに、車両の構成要素に対して相対的に回転可能に構成要素に保持されており、特に、本方法の間、車両ホイールが、特に地表面において直接転がり、その際にホイール回転軸線回りに構成要素に対して相対的に回転することが特定されている。特に、構成要素は、例えば、フォーク、特に前輪フォークとして構成された、車両の操舵装置の操舵要素であり、この操舵要素は、例えば、操舵軸線とも称される回動軸線の周りに、例えばスペースフレームとして構成された車両のフレームに対して相対的に回動可能にフレームに保持されている。ここでは、例えば前輪として構成された車両ホイールは、操舵要素と共に、操舵軸線の周りにフレームに対して相対的に一緒に回動可能である。
【0007】
操舵軸線の周りにかつフレームに対して相対的に行われる、操舵要素ひいては車両ホイールの回動により、車両を操舵することが可能であり、したがって、これにより、自動車のカーブ走行、進行方向変更、及び、車道変更又は車線変更を行うことができる。例えば、車両を利用する人、例えば、車両の運転者等は、操舵要素を、また、操舵要素によって車両ホイールを操舵軸線の周りにフレームに対して相対的に回動させることができ、これにより、車両を操舵し、したがって、これにより、自動車のカーブ走行、進行方向変更、及び、車線変更又は車道変更を行うことができる。
【0008】
特に、量によって特徴付けられる摩擦は、車両ホイール、特に車両ホイールの接触点又は接触領域と、地表面の地表面領域との間の摩擦であり、車両ホイールは、接触点又は接触領域において地表面領域に特に直接接触する。地表面領域は、特に、車道面とも称される地表面に延在しており、この地表面は、鉛直線に対して垂直に延在するものとしてもよいし、傾斜して延在するものとしてもよい。
【0009】
量ひいては摩擦を特に有利に求めることができるようにするために、本発明によれば、極めて好適には、車両の構成部材である電子計算装置を用いて、車両の操舵装置において作用しかつ操舵トルクとも称される現在の操舵モーメントを特徴付ける少なくとも1つの実際トルク値を求めること、すなわち、示す又は定めることが特定されている。特に、例えば操舵モーメントは、操舵軸線の周りに作用するトルクである。このトルクは、例えば、前述した人、例えば車両の運転者等が、特に自身の手で、人力モーメント又は人力トルクとも称されるトルクを操舵装置、特に操舵要素に、また、操舵要素を介して操舵装置に加えることにより、操舵装置において作用する。例えば、操舵モーメントは、人力モーメントであり、又は、人力モーメントから結果的に生じるものである。例えば、特に車両のセンサ装置を用いて、操舵において作用する操舵モーメントを検出する。その際、例えば、センサ装置により、特に電気的なセンサ装置信号を供給し、例えば、電子計算装置によりセンサ装置信号を受信する。センサ装置信号により、センサ装置を用いて検出した操舵モーメントが特徴付けられ、これにより、例えば、センサ装置信号に実際トルク値が含まれる。電子計算装置により、センサ装置信号を受信することにより、例えば、電子計算装置により、実際トルク値を求める。さらに想定されることは、電子計算装置により、センサ装置信号を受信し、受信したセンサ装置信号に応じて、実際トルク値を求め、特に計算することである。
【0010】
本発明に係る方法においては、電子計算装置を用いて、車両の実際のロール角を特徴付ける少なくとも1つの実際角度値を求める。ロールとは、長手方向軸線とも称される車両の車両長手方向軸線の周りの車両の運動であると理解され、ロール角は、車両が、特に中立位置とも称される起点位置に関して、特に現在ロールしている、すなわち、長手方向軸線の周りに傾斜している角度である。基本的に想定されることは、現在のロール角、ひいては例えば実際角度値が0であり、これにより、車両が、上述した起点位置に位置しており、又は、現在のロール角が0とは異なる角度であり、この角度の分だけ車両が長手方向軸線の周りに現在傾斜しており、これにより、車両が現在、例えば、長手方向軸線の周りに見て、中立位置とは異なる傾斜位置に位置し、これにより、例えば、実際角度値が0とは異なる値である、ということである。例えば、電子計算装置により、現在のロール角を計算する。さらに想定されることは、車両のセンサ装置を用いて現在のロール角を検出し、実際角度値により、センサ装置を用いて検出した現在のロール角が特徴付けられることである。
【0011】
本発明に係る方法においては、制御装置とも称される電子計算装置を用いて、単に速度とも称される、車両の現在の走行速度を特徴付ける少なくとも1つの実際速度値を求める。特に、車両の現在の走行速度、ひいては例えば実際速度値が0とは異なっており、特に0よりも大きく、これにより、例えば、本方法の間又は本方法において、車両は、走行速度で、特に前方に地表面に沿って走行していることとなる。例えば、車両の現在の走行速度は、車両のセンサ装置を用いて測定され、これにより、例えば、実際速度値は、現在の測定した走行速度を特徴付ける、すなわち、示し、表し又は定める。求めた実際角度値は、求めた実際速度値に属し、又は、その逆のこともいえ、これにより、求めた実際角度値と、求めた実際速度値とは、実際値ペアを形成する。このことは、電子計算装置により、実際角度値と実際速度値とから上述した実際値ペアが形成されることと必ずしも理解される必要はなく、すなわち、実際角度値と実際速度値とから実際値ペアを形成するために、又は、実際角度値と実際速度値とを実際値ペア若しくはこれに類するものに割り当てるために、電子計算装置に対して特別な計算ステップを必ずしも実施する必要はなく、基本的には、求めた実際角度値と、求めた実際速度値とが、上述した実際値ペアを形成する値とみなされる。このことが特に当てはまるのは、「実際値ペア」という用語に基づき、本方法をさらに分かり易く、かつ、理解し得るように、説明することができるようにする場合である。
【0012】
本方法においては、電子計算装置を用いて、実際値ペア、すなわち、実際角度値と実際速度値とに応じて、複数の基準角度値、複数の基準速度値及び複数の基準トルク値を含み、かつ、基準角度値のうちの正確に1つと基準速度値のうちの正確に1つとを含むそれぞれの基準値ペアに基準トルク値のうちの正確に1つを割り当てる、基準摩擦係数について求めた少なくとも1つの基準特性マップから、実際値ペアに属する値ペアとして基準値ペアのうちの1つを選択する。したがって、基準特性マップは、例えば、少なくとも又は正確に3次元の特性マップであり、この特性マップは、いわば基準角度値と基準速度値とに関する基準トルク値を示す。この場合に想定されることは、それぞれの基準トルク値に複数の基準値ペアが割り当てられていることである。さらに想定されることは、同一の基準角度値が、複数の基準値ペアの一部であることである。さらに想定されることは、同一の基準速度値が、複数の基準値ペアの一部であることである。それぞれの基準値ペアが、基準角度値のうちの正確に1つと基準速度値のうちの正確に1つとを含むという特徴と、実際値ペアに属する値ペアとして、基準値ペアの、特に正確に1つが選択されるという特徴とは、参照値ペア、すなわち、基準角度値及び基準速度値が、基準値ペアとして実際に基準特性マップに記憶されかつ含まれると理解する必要は必ずしもなく、「基準値ペア」という用語は、差し当たり、以下において本方法を分かり易くかつ理解し得るように説明することができるようにするためだけに使用される。したがって、特に、実際値ペア、すなわち、実際速度値と実際角度値とに応じて、特に、基準値ペアのうちの正確に1つを選択するという特徴は、実際値ペア、すなわち、実際速度値と実際角度値とに応じて、特に基準角度値のうちの正確に1つと特に基準速度値のうちの正確に1つとを選択し、選択した基準角度値及び選択した基準速度値は、求めた実際値ペア、すなわち、求めた実際角度値及び求めた実際速度値に属し、例えば、単なる仮想の基準速度値ペアを形成するということであると理解される。
【0013】
電子計算装置を用いて、選択した基準値ペアに割り当てられた基準トルク値を求め、特に、単に特性マップとも称される基準特性マップから読み出す。このことが意味することは、電子計算装置を用いて、選択した基準角度値と、選択した基準速度値とに応じて、特に基準トルクのうちの正確に1つを求めることである。
【0014】
電子計算装置を用いて、求めた基準トルク値と実際トルク値とを比較する。換言すると、電子計算装置を用いて、比較を行い、この比較では、求めた基準トルク値と、求めた実際トルク値とを比較する。
【0015】
電子計算装置を用いて、基準トルク値と実際トルク値との比較に応じて量を求める。さらに好適には、本方法において、電子計算装置を用いて、求めた量に応じて、車両の少なくとも1つの構成要素、すなわち、車両の少なくとも1つの機能を動作させる、特に開ループ制御又は閉ループ制御することが特定されている。
【0016】
本発明は、特に、以下の知見及び考察に基づいている。すなわち、車両の多数の車両システム及び運転者支援システムにおいては、車両ホイールと地表面との間、特に車両ホイールと地表面との間の接触面における利用可能な摩擦係数又は利用可能な摩擦係数クラスに関する情報が重要である。このことは、特に、車両動特性に関係する車両システム及び運転者支援システムに当てはまる。既存の用途においては、通常、現在の時点で利用される摩擦係数又は現在の摩擦係数クラスが推測され、多くの場合、例えば、車両の加速度及び/又は車両の角速度を含む測定された慣性量を使用して推測される。しかしながら、このことによっては、通常、現在の時点に最大限に利用可能な摩擦係数又は現在の時点に最大限に利用可能な摩擦係数クラスの情報を提供することはできない。摩擦係数に対して、多くの場合、仮定が行われ、又は、摩擦係数が、例えばアンチロックブレーキシステム(ABS)においては、最大限に伝達可能なタイヤ力(限界範囲)を意図的に超過することによって推測される。他の背景は、カーブ走行の運動学も、操舵システムとも称される操舵装置の運動学も、カーブ走行中の力と、単にモーメントとも称される操舵システムにおけるトルクとに関して、例えばモータサイクルとして構成された単一軌道(einspurig)二輪車においては、自動車、例えば乗用車等のそれとは根本的に異なっていることである。したがって、先行技術に基づき公知の、周囲環境のセンシングに基づかない手法は、例えば単一軌道二輪車についての最大摩擦係数の推測には転用できない。これに対して、本発明は、特に前述した操舵軸線の周りに作用する、操舵装置(操舵システム)において作用する操舵モーメントの算出、特に測定を利用する。
【0017】
本発明がさらに起点としていることは、今日の大量生産車両、特に単一軌道に構成されている例えば大量生産二輪車では、車両ホイール、特にタイヤと、地表面との間の接触面における、特に現在の摩擦係数及び好適には最大限に可能な摩擦係数に関する情報が利用できないということである。なぜならば、特に通常の、道路走行とも称される走行中に、この量を求める方法はこれまで存在していないからである。しかしながら、車両ホイールと地表面との間のこの摩擦係数、特に最大限に生じ得る摩擦係数は、従来の解決手段と比較して、既存の安全システム及び支援システムを改善すると共に将来の安全システム及び支援システムに利用可能な量を表すことができる。本発明によって可能になることは、車両ホイールと現在の地表面との間の量、ひいては現在の摩擦を特に継続的に求め、特に継続的に特に推測することである。したがって、好適には、本方法を用いて求めた量により、車両ホイールと地表面との間の現在の最大限に可能な摩擦係数、又は、車両ホイールと地表面との間の現在の最大限に可能な摩擦係数クラスが特徴付けられる、すなわち、示され、表され又は定められることが特定されている。その際、本発明は、操舵モーメント、すなわち、実際トルク値を利用し、特に、車両が好適には単一軌道二輪車である場合には、少なくとも1つ又は複数の二輪車固有の特性を利用する。本発明に係る方法によって求められた量は、例えば、車両の少なくとも1つ又は複数の他の機能に供給可能であり、これにより、例えば、求めた量に応じて、少なくとも1つの他の機能、ひいては例えば前述した構成要素を動作させることができる。特に、この構成要素又は機能は、例えば、車両の現在の走行状態の安定化のために使用される警告機能及び/又は介入機能である。例示的な状況は、典型的には、常に類似した傾斜位置構造/経過を有するテストコースにおけるカーブ走行の際の走行である。ある日、タイヤと道路との間、すなわち、車両ホイールと地表面との間で摩擦係数が低下する又は摩擦係数クラスが低下する場合には、この摩擦係数又は摩擦係数クラスにより、通常、走行される傾斜位置が許容されないことが起こり得る。特に通常の摩擦係数に対して低下したこの摩擦係数又は特に通常の摩擦係数クラスに対して低下したこの摩擦係数クラスが認識される場合、特に、低下した摩擦係数及び/又は低下した摩擦係数クラスを、量として求める、又は、量を求めることにより求める本方法を用いて、例えば、車両の走行を、特に運転者支援システムとして構成された車両の少なくとも1つのシステムにより、例えば、車速を低下させることにより支援することができ、及び/又は、車両の運転者に警告することができるようにするべく、特に、触覚的及び/又は光学的及び/又は音響的に知覚可能な指示信号を出力し、この指示信号により、求めた量が運転者に伝達される。特に、例えば、この指示信号は、車両の、電気的に動作可能な、特に完全に電子的な再生装置を用いて出力される。したがって、例えば、再生装置は、上述した構成要素であるものとしてよい。
【0018】
以下においては1つの実施例に基づき、本発明に係る方法についてさらに説明する。例えば、単一軌道二輪車として構成された車両の運転者は、車両がカーブを通走しかつ本発明に係る方法が実施されるカーブ走行の際、運転者により操舵システム(操舵装置)に加えられる運転者操舵モーメントとも称されるトルクであって、上述した操舵モーメントとして操舵システムに作用するトルク又は操舵装置に作用する操舵モーメントを結果的に生じさせるトルクによって、操舵システム(操舵装置)に作用する複数のトルクを支持する。後者は、トルクとして直接作用し得るものであり、又は、対応するレバーアームの下で作用する力から生じ得るものである。例えば、好適には単一軌道二輪車として構成された車両が第1の走行速度及び第1のロール角でカーブを走行し、例えば、車両ホイールと、カーブを形成する地表面との間の摩擦が第1の実際値を有する第1のカーブ走行の場合、及び、例えば、車両が、第1のカーブ走行に時間的に先行し、又は、第1のカーブ走行に続く第2のカーブ走行に際して、同等の第1のロール角及び同等の第1の走行速度で同一のカーブを走行するものの、車両ホイールと地表面との間の摩擦は、第1の実際値とは異なる第2の実際値を有する場合、運転者は、第2のカーブ走行の際に、第1のカーブ走行の際とは異なる操舵モーメントを形成して操舵システムに加え、これにより、操舵モーメントは、第1のカーブ走行の際には、例えば第1の実際トルク値を有し、第2のカーブ走行の際には、第1の実際トルクとは異なる第2の実際トルクを有する。換言すると、本発明は、同等のロール角及び同等の走行速度ではあるが、摩擦係数又は摩擦の実際値が異なる場合、操舵モーメントが変化すること又は変化しなければならないことを最大限に利用するものである。なぜならば、操舵システムに作用する個々のトルクも、操舵モーメントのトルク成分又は操舵モーメント成分も、この場合、特にいわゆるタイヤ捩りモーメントT摩擦係数が異なる場合には変化するからである。タイヤ捩りモーメントは、例えば、特に単一軌道二輪車として構成された車両が傾斜位置において走行する際のタイヤの変形に起因して発生し、すなわち、特に、ロール角又は実際角度値が0とは異なる場合に発生する。基本的には同様のカーブ走行であるが、異なる摩擦係数によって又は異なる摩擦係数において、異なる操舵モーメントが設定される、すなわち、操舵システムにおいて作用するというこのような効果は、摩擦係数識別又は摩擦係数算出として構成された本発明に係る方法において、特に実際トルク値を求めることによって、例えば特に車両の操舵モーメントセンサにより操舵モーメントを測定、すなわち、検出することによって利用される。
【0019】
本発明による摩擦係数識別の基礎は、操舵モーメント特性マップとも称される少なくとも1つの基準特性マップである。基準特性マップは、例えば、静的なカーブ走行又は円走行について、基準摩擦係数の形態の、高摩擦係数として構成された既知の摩擦係数を形成している。この摩擦係数に対して、基準速度値の形態の走行速度と、基準角度値の形態のロール角とに関する基準操舵トルク値の形態の設定対象の操舵トルクである基準特性マップが求められている。基準特性マップは、例えば、MKF_μ(v,φ)によって表現することができ、ここで、vは走行速度、φはロール角、MKF_μは操舵モーメントを表している。基準特性マップは、例えば、特に電気又は電子データ記憶装置、特に電子計算装置に記憶されているものとしてよい。基準特性マップは、例えば、所定の試験条件、例えば、既知の摩擦係数、タイヤ圧とも称されるタイヤにおける圧力等のもとで、静的及び/又は準静的な円走行又はカーブ走行について記録されるものとしてよく、及び/又は、検証済みのシミュレーション環境を使用して特定された、特に計算された測定信号から成るものとしてよい。
【0020】
車両ホイール、特にそのタイヤと地表面との間の量、ひいては現在の、特に最大限に可能な摩擦を求めることができるようにするために、本発明の1つの実施形態においては、電子計算装置を用いて実際トルク値を求めるべく、電子計算装置を用いて、操舵システム(操舵装置)において作用する少なくとも1つの動的な操舵モーメント成分と、操舵装置において作用する静的な操舵モーメント成分とを特徴付ける少なくとも1つの第1の出力値を求めることが特定されている。これにより、第1の出力値は、例えば、操舵装置において作用する少なくとも1つの動的な操舵モーメント成分と、操舵装置において作用する静的な操舵モーメント成分とから成る和であり又は和を表す。特に、少なくとも1つの第1の出力値は、静的なトルク成分と、特に操舵装置において作用する複数の、特に全ての動的な操舵モーメント成分を表し又は特徴付け、これにより、特に、静的な操舵トルク成分と、少なくとも1つの動的な操舵モーメント成分、特に複数の動的な操舵トルク成分とが、和として第1の出力値を生じさせる。さらに、例えば、電子計算装置を用いて実際トルク値を求めるべく、電子計算装置を用いて、操舵装置において作用する少なくとも1つの動的な操舵モーメント成分と、操舵装置において作用する静的な操舵モーメント成分とに関連して、操舵装置において作用する少なくとも1つの動的な操舵モーメント成分だけを特徴付ける少なくとも1つの第2の出力値を求める。実際トルク値を求めるために、電子計算装置を用いて、出力値に応じて実際トルク値を求め、特に第2の出力値を第1の出力値から減算することによって求める。
【0021】
出力値から実際トルク値を求めることができ、ひいては結果として量を特に有利に求めることができるようにするために、本発明の他の実施形態においては、車両の車両ホイール及び/又は少なくとも1つの他の車両ホイールの回転数、及び/又は、車両のロールレート及び/又は車両のロール加速度、及び/又は、車両のヨー加速度、及び/又は、車両の操舵角レート、及び/又は、特に車両の車両長手方向に作用する減速度、すなわち、車両の負の加速度、及び/又は、車両の少なくとも1つのホイールブレーキにおける圧力、及び/又は、車両のジャイロトルクとも称されるジャイロモーメントに応じて、電子計算装置を用いて第2の出力値を計算することが特定されている。例えば、回転数センサを用いて車両ホイールの回転数を検出する。車両のロールレートは、ロール角の1階の時間微分であり、車両のロール加速度は、ロール角の2階の時間微分、すなわち、ロールレートの1階の時間微分である。ヨー加速度は、特に、車両の車両高さ方向の周りに作用する車両のヨー角の2階微分である。車両の減速度は、例えば、車両の制動から結果的に生じる。ホイールブレーキは、例えば、車両ホイールに割り当てられており、車両ホイールひいては自動車を制動するように構成されている。これにより、例えば、摩擦ブレーキとして構成されたホイールブレーキは、車両の常用ブレーキである。
【0022】
本発明の他の背景は、特に、実際の道路交通では静的なカーブ走行及び/又は円走行が稀にしか生じないこと又は全く生じないことである。したがって、量を、特に継続的に求め、ひいては、例えば、特に継続的な摩擦係数分類/摩擦識別を行うために、例えば、測定、すなわち、検出によって求めた第1の出力値から動的な操舵モーメント成分を、特に第1の出力値から第2の出力値を減算することによって算出する。特に、第1の出力値から第2の出力値を減算することにより、静的な値を求め、特に計算し、さらには特に推測し、静的な値は、少なくとも1つの動的な操舵トルク成分と、少なくとも1つの静的な操舵トルク成分とに関連して、静的な操舵トルク成分を特徴付ける、すなわち、表し、示し又は定める。静的な値は、例えば、Mstationaerで表され、例えば、第1の出力値はMmessで表され、第2の出力値はMdynamischで表される。これにより、例えば、Mstationaerは、Mstationaer=Mmess-Mdynamischとなる。特に、Mdynamisch、すなわち、第2の出力値は、個々の複数の動的な操舵トルク成分の和であり、又は、これを特徴付け若しくは表す。例えば、センサ装置を用いて特に現在の操舵トルクを検出、すなわち、測定し、これによって、第1の出力値を求める。このために、例えば、センサ装置により、測定した操舵モーメントと、その際に例えば第1の出力値とを特徴付ける、特に電気的なモーメント信号を供給する。電子計算装置によりモーメント信号を受信し、これによって、第1の出力値を求めることができる。さらに想定されることは、電子計算装置により、モーメント信号を受信し、このトルク信号から又はこのトルク信号に応じて、第1の出力値を求めることである。例えば、モーメント信号は、センサ装置信号又はセンサ装置信号の一部又は他の信号である。
【0023】
実際トルク値は、出力値に応じて、例えば前述したように、第1の出力値から第2の出力値を減算することによって求められる。例えば、静的な値(Mstationaer)は、実際トルク値として使用され、この実際トルク値は、特に測定した走行速度及び特に測定した、傾斜角とも称されるロール角、すなわち、実際速度値及び実際角度値について、基準特性マップから読み出した基準トルク値と比較される。例えば、実際速度値は走行速度の測定によって求められる。代替的又は付加的には、例えば、実際角度値はロール角の測定によって求められる。例えば、走行速度及び/又はロール角は車両のセンサ装置を用いて測定することができる。
【0024】
特に、基準トルク値と実際トルク値との比較の際に又はこの比較により、基準トルク値と実際トルク値との間の差分が求められ、特に計算される。この差分が、例えば0である場合、例えば、量、特に実際摩擦係数は、基準特性マップが求められた基準摩擦係数であり又はこれを含む。例えば、実際トルク値が基準トルク値よりも大きく、例えば、差分が、例えば予め設定可能な又は予め設定された閾値を上回る場合、量、特に実際摩擦係数が基準摩擦係数よりも小さいことを推定することができる。しかしながら、例えば実際トルク値が基準トルク値よりも小さく、例えば、差分が閾値及び/又は他の閾値を上回る場合、量、特に実際摩擦係数が基準摩擦係数よりも大きいことを推定することができる。これにより、有利には、特に車両の走行中に実際摩擦係数を求めることができる。したがって、例えば、基準摩擦係数とは、少なくとも1つの基準値及び/又は少なくとも1つの基準クラスを含み得る基準量と理解することができ、又は、基準量は基準値であり、若しくは、基準量は基準クラスである。
【0025】
量を特に有利に求めることができるようにするために、本発明の他の実施形態においては、車両のセンサ装置を用いて、操舵装置において作用するトルク、特に操舵モーメントを検出し、検出したトルクに応じて実際トルク値を求めることが特定されている。既に説明したように、例えば、センサ装置により、特に電気的なモーメント信号が供給され、この電気的なトルク信号により、センサ装置を用いて検出した、操舵装置において作用するトルク、特に操舵モーメントが特徴付けられる。電子計算装置により、例えばモーメント信号が受信され、電子計算装置により、受信したモーメント信号に応じて実際トルク値が求められ、特に計算される。これにより、実際トルク値を特に有利に求めることができ、これにより、結果として量を特に有利に求めることができる。
【0026】
量を特に有利に求めることができるようにするために、本発明の他の実施形態においては、特に電子計算装置を用いて、センサ装置を用いて検出したトルクに応じて第1の出力値を求めることが特定されている。例えば、第1の出力値により、特に例えばモーメント信号が第1の出力値を含むように、センサ装置を用いて検出したトルクが特徴付けられる。したがって、例えば、電子計算装置は、この電子計算装置がモーメント信号を受信することにより、第1の出力値を求める。さらに想定されることは、電子計算装置によりモーメント信号を受信し、このモーメント信号に応じて第1の出力値を求めることである。実際トルク値は、例えば、第2の出力値が第1の出力値から減算されるように、出力値から求められ、特に計算され、ひいては、例えば推測され、これにより、実際トルク値及び量を特に有利に求めることができる。
【0027】
dynamisch、すなわち、第2の出力値は、例えば、個々の、複数の動的な操舵モーメント成分から構成される。換言すると、例えば、第2の出力値は、複数の動的な操舵トルク成分を特徴付け又は表す。動的な操舵モーメント成分は、例えば、特に測定した走行動特性量、例えば、車両ホイール回転数、ロールレート、ロール加速度、ヨー加速度、操舵角レート、減速度、ホイール制動圧等に応じて、また、例えば、特に公知の車両パラメータ、例えば前輪として構成された車両ホイールの質量慣性、操舵ヘッド角等に応じて計算される。特に測定した走行動特性量は、例えば、そのそれぞれの信号品質に応じて事前に相応にフィルタリングされる。さらに想定されることは、センサ装置を用いて測定したトルク、特に操舵モーメントをフィルタリングし、これにより、フィルタリングされたトルク、特に操舵モーメントに応じて実際トルク値を求めることである。
【0028】
複数の動的な操舵モーメント成分のうちの重要な1つは、例えば、ホイール回転数ωVRで回転する車両ホイールの、
【数1】
とも記される車両のロールレートにおいて発生して、支持されるジャイロモーメントMdyn_gyroであるものとしてよく、ジャイロモーメントMdyn_gyroは、
【数2】
のように計算される。式中、JVRは、例えば前輪として構成された車両ホイールの質量慣性を表し、εは、動的な操舵ヘッド角を表す。例えば、車両の操舵角センサ又は操舵レートセンサを検出することのできる操舵角センサ又は操舵レートセンサが利用できる場合には、
【数3】
と記した操舵角レートに応じて、操舵角レートから結果として生じる動的な操舵トルク成分Mdyn_ddelta
【数4】
のように計算することができる。上述した操舵角は、操舵要素と、この操舵要素と共に車両ホイールとが、回動軸線の周りに、特に現在回動させられている、すなわち、操舵されている角度である。操舵角レートは、操舵角の1階の時間微分である。式中、kδは、操舵装置の、操舵減衰とも称される減衰を表す。動的なトルク成分Mdyn_ddeltaは、通常では極めて小さいため、必ずしも計算する必要はない。これに加えて、別の動的な成分が、例えば、ロール加速度と、ヨー加速度と、例えば長手方向減速度として構成される、すなわち、車両の車両長手方向に作用する車両の減速度等とによって生じることがあり、これらは、例えば別の動的な操舵モーメント成分を生じさせることがある。
【0029】
さらに、複数の動的な操舵モーメント成分のうちの1つは、
【数5】
と記される、車両のロール加速度から結果的に得られかつMdyn_ddphiと記される操舵トルク成分であるものとしてよい。ロール加速度によって生じるこの動的な操舵トルク成分Mdyn_ddphiは、例えば、一次の関係式:
【数6】
によって得られる。式中、kddphiは、動的な操舵ヘッド角及び車両パラメータ及び/又は幾何学的な量に左右される。別の動的な操舵モーメント成分は、特に動的な制動操舵モーメントMdyn_bremsであるものとしてよい。ブレーキ操舵トルクMdyn_bremsを考慮するための簡単なアプローチは、Mdyn_brems=kbrems×sin(φ)×pVRによって得られる。式中、pVRは、車両ホイールを制動するために構成された、すなわち、車両ホイールに割り当てられた車両ホイールブレーキにおける圧力を表し、車両ホイールに割り当てられたブレーキにおける、車両ホイール制動圧又は制動圧とも称される圧力は、動的な操舵ヘッド角及び車両パラメータ及び/又は幾何学的な量に依存する。
【0030】
実際トルク値ひいては量を特に有利に求めることができるようにするために、さらに、少なくとも1つ又は複数の補正項Mkorrに応じて実際トルク値を求め、特に計算することが特定されるものとしてよい。例えば、この場合に想定されることは、例えば測定値として構成されかつ特にトルク、特に操舵モーメントを測定することによって求めた第1の出力値と、第2の出力値とに応じて、例えば、第2の出力値(Mdynamisch)及び少なくとも1つの補正項Mkorrを第1の出力値から減算することにより、静的な値Mstationを求め、特に計算することである。第1の出力値は、例えばセンサ装置により、操舵装置において作用するトルク、特に操舵モーメントを測定することによって求められるため、例えば、第1の出力値は、測定したトルクひいてはモーメント信号を特徴付け、例えばモーメント信号の構成要素である測定値である。補正項Mkorrは、例えば、補正値とも称される補正トルクであり、この補正トルクは、特に第2の出力値に対して付加的に第1の出力値(Mmess)から減算される。したがって、例えば、実際トルク値又はMstationは、Mstation=Mmess-Mdynamisch-Mkorrが得られる補正項Mkorrは、例えば、Mkorr_x=k×xの形の単純な一次の補正項である。例えば、一次の補正項として構成された補正項Mkorrは、例えば、xで記されかつ例えば測定した走行動特性量に左右され、特にxで記された前述の走行動特性量のうちの1つに左右される。代替的又は付加的に、例えば、特に線形の補正項Mkorrは、Mkorr_v_x=kv_x×v×xの形の、速度に左右される補正項である。
【0031】
量を、特に有利に求めることができるようにするために、本発明の他の実施形態においては、電子計算装置を用いて、車両を利用する人、例えば運転者等の、車両に対して相対的な少なくとも1つの位置を特徴付ける少なくとも1つの位置値を求めることが特定されている。この場合、有利には、位置値に応じて実際トルク値を求めることが特定されている。
【0032】
この場合、電子計算装置を用いて、位置値に応じて、車両の操舵装置において作用する現在の操舵モーメントへの位置の影響を特徴付ける少なくとも1つの影響値を求めると特に有利であると判った。影響値は、特に、操舵モーメント成分、すなわち、操舵モーメントに影響を与え、例えば、動的なトルクを特徴付け又は表し又は定め、これにより、実際トルク値を特に有利に求めることができる。この実施形態の背景は、車両に対して相対的な、車両を利用する人の位置、ひいては例えば位置変化及び/又は重量移動が、トルク成分、すなわち、例えば操舵モーメントの動的な操舵モーメント成分及び/又は静的な操舵モーメント成分を生じさせ得るということである。実際トルク値を有利に求めることができるようにするために、操舵トルクのこの影響を考慮することが有利である。このために、例えば、車両を利用する人の位置によって生じる操舵モーメント成分を第1の出力値から減算することが特定されている。このために、例えば、第1の出力値から影響値を減算する。
【0033】
車両に対して相対的な、車両を利用する人の位置を有利に求め、結果として、実際トルク値を特に有利に求めることができるようにするために、本発明の他の実施形態においては、車両の少なくとも1つのセンサを用いて、車両を利用する人の位置によって影響を受ける測定量を検出し、これにより、車両に対して相対的な人の位置を検出し、この位置値が、検出した測定量を特徴付けることが特定されている。換言すると、車両を利用する人の、車両に対して相対的な位置は、例えば、センサ装置であり又はセンサ装置の構成部材であるセンサを用いて検出され、これにより、この位置を特に有利に検出することができる。センサは、例えば、力センサ及び/又は圧力センサである。センサを用いて、例えば、車両のシートにかかっている負荷を検出することができ、シートにかかっている負荷を検出することにより、車両に対して相対的な、車両を利用する人の位置を有利に検出することができる。
【0034】
本発明に係る方法は、基本的に、例えば道路として構成された車道に沿った、道路走行とも称される通常の走行を想定しており、この場合、顕著なハングオフ又はハングオンの運転スタイルは一般的ではない。しかしながら、こうした運転スタイルで走行する運転者には、車両に対して相対的に運転者の位置、ひいては例えば上半身の移動及び/又は車両を利用する人の上半身位置及び/又は車両を利用する人の体重移動が検出され、特に例えばMFahrerで記される影響値を算出するように考慮されると有利である。これは、例えば第1の出力値から影響値MFahrerを減算するように行われる。したがって、MFahrerで記される影響値により、車両を利用する人の位置、ひいては例えば移動が操舵モーメントに与える影響が表され又は定められる。これにより、静的なモーメントMstationaerは、Mstationaer=第1の出力値(Mmess)-Mdynamisch-MFahrerとなる。
【0035】
以上において説明したように、例えば、第1の出力値から付加的にMkorrを減算することができる。これにより、実際トルク値ひいては量を特に有利に求めることができる。
【0036】
静的な操舵モーメント成分、すなわち、静的な値Mstationaerの算出、特に推測の特に高い精度が必ずしもまた容易には実現できない極めて動的な走行状況に対しては、例えば、摩擦係数識別は、特に、走行状況分類を介して再び摩擦係数識別に適した車両の走行状態が識別されるまで一時的に停止することができる。例えば、閾値に基づく方式を介して実現可能な走行状況分類のために、測定した走行動特性信号又は走行動特性量が利用される。例えば、車両が直進走行している際に、及び、場合によっては限界を下回る極めてわずかな傾斜位置又はロール角の際においてのみ、摩擦係数識別を停止することができる。車両を利用する人、例えば車両を走行させ、ひいては、制御する運転者等にも関連して本方法を説明した。しかしながら、本発明に係る方法は、操舵モーメント、ひいては例えば第1の出力値Mmessが、専ら特に自動的に車両のシステムによって設定される、例えば自律型の特に単一軌道二輪車のような自律型の車両にも、及び/又は、操舵モーメントが、車両のシステムによって設定される操舵モーメントと、人によって設定される操舵モーメントとから構成される支援式の及び/又は半自律型の車両に対しても、適用することができる。
【0037】
最後に、車両が、単一軌道二輪車、特に単一軌道オートバイ又はモータサイクルとして構成されていると、特に有利であることが判明している。特に、このような単一軌道二輪車では、本方法によって実際トルク値ひいては量を特に有利に求めることができる。
【0038】
本発明の第2の態様は、本発明の第1の態様に係る方法を実施するように構成されている車両に関する。本発明の第1の態様の利点及び有利な実施形態は、本発明の第2の態様の利点及び有利な構成とみなすことができ、この逆も同様である。
【0039】
さらに、例えば、特に基準特性マップに対して付加的に設けられる第2の基準特性マップを使用することも想定される。この場合には、例えば、実際値ペアに応じて、複数の第2の基準角度値、複数の第2の基準速度値及び複数の第2の基準トルク値を含み、かつ、第2の基準角度値のうちの正確に1つと第2の基準速度値のうちの正確に1つとを含むそれぞれの第2の基準値ペアに第2の基準トルクのうちの正確に1つを割り当てる、基準摩擦係数とは異なる第2の基準摩擦係数について求めた第2の基準特性マップから、実際値ペアに属する第2の値ペアとして第2の基準値ペアのうちの1つを選択する。これは、例えば電子計算装置を用いて行われる。電子計算装置を用いることにより、選択した第2の基準値ペアに割り当てられた第2の基準トルク値が求められる。電子計算装置を用いて、求めた第2の基準トルク値と、求めた実際トルク値とが比較される。この場合に、第2の基準トルク値と実際トルク値との比較に応じて量が求められる。例えば、実際トルク値が第1の基準トルク値と第2の基準トルク値との間に位置する場合、例えば、量は、特に補間によって、第1の基準摩擦係数と第2の基準摩擦係数とから求められ、特に計算され、ひいては、例えば推測される。したがって、例えば、現在の実際摩擦係数又は現在の摩擦、特に値を、例えば最も近い2つの摩擦係数の間の補間により求めることができる。このことは、例えば、基準特性マップから読み出された基準トルク値、特に基準特性マップから読み出された、実際トルク値の最も近くに位置する2つの基準トルクが選択され、特に実際トルク値が、選択された基準トルク値の間に位置するように選択されることを意味している。この場合、例えば、量又は実際摩擦係数は、特に補間によって基準摩擦係数から求められる。この基準摩擦係数に対しては、基準特性マップが求められ、この基準特性マップから最も近い基準トルク値が読み出される。
【0040】
本発明の更なる詳細は、関連する図面による好ましい実施例の以下の説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】単一軌道二輪車として構成された車両の概略的な側面図である。
図2】トルクを説明するための車両の概略的な斜視図を部分的に示す図である。
図3】車両の車両ホイールと現在の地表面との間の現在の摩擦を特徴付ける少なくとも1つの量を求める方法を説明するための第1の基準特性マップを示す概略図である。
図4】本方法をさらに示すための第2の基準特性マップの概略図である。
図5】本方法をさらに示すためのフローチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
図1においては、同一の要素又は機能的に同等の要素には、同一の参照符号が付してある。
【0043】
図1には、ここでは単一軌道二輪車として構成されている車両1が概略的な側面図で示されており、車両1は、図1に示した実施例においては単一軌道オートバイ、特に単一軌道モータサイクルとして構成されている。車両1は、正確に2つの車両ホイール2及び3を有し、車両ホイール2及び3は、車両の車両長手方向に相前後して、ひいては連続して配置されている。車両長手方向は、双方向矢印4によって示されている。図1に示した実施例においては、車両ホイール2は前輪あり、車両ホイール3は後輪である。車両ホイール2及び3は、単にホイールとも称される。車両ホイール2及び3は、車両1の地面接触要素であり、車両1は、地面接触要素を介して、車両1の車両高さ方向下向きに、地表面とも称される地面5に支持可能であり又は支持されている。車両1が地面5に沿って走行し、その間に、車両1が、地表接触要素を介して車両1の車両高さ方向下向きに地面5に支持されている場合、地面接触要素は、特に直接、地面5において転がる。車両の車両高さ方向は双方向矢印6によって示されている。車両ホイール2は、ホイール回転軸線7の周りに、車両1の操舵要素8に対して相対的に回転可能に操舵要素8に保持されている。操舵要素8は、操舵フォーク9とグリップ10とを含み、かつ、操舵軸線L(図2)とも称される回動軸線の周りに、車両1のフレーム11に対して相対的に回動可能にフレーム11に保持されている。このことは、操舵要素8が、また、この操舵要素8と共に車両ホイール2が、操舵軸線Lの周りにフレーム11に対して相対的に回動させられ、ひいては操舵され得ることを意味する。これにより、特に、例えば車両1を利用する人、例えば車両1の運転者等により、例えば、車両1のカーブ走行、進行方向変更、及び、車道又は車線の変更を行うことができる。車両ホイール3は、第2のホイール12の周りに、車両1の、後輪スイングアームとも称されるスイングアーム13に対して相対的に回転可能にスイングアーム13に保持されている。スイングアーム13自体は、回動軸線Sの周りにフレーム11に対して相対的に回動可能にフレーム11に保持されており、これにより、スイングアーム13及び車両ホイール3は、回動軸線Sの周りにフレーム11に対して相対的に回動可能にフレーム11に保持されている。車両1が車両長手方向で、特に前方に向かって、その際に特に直線に沿って走行する車両1の直進走行時には、ホイール回転軸線7とホイール回転軸線12とは互いに平行に延在している。さらに、例えば、回動軸線Sは、車両1の車両横方向に延在しており、車両1の車両横方向は、双方向矢印14によって示されており、図1の図平面に対して垂直に延在している。車両1は、例えば、フレーム11に保持されたシート15を有し、このシート15には、車両1を利用する人、すなわち、運転者が着座することができる。以上において又は以下において、人又は車両1を利用する人に言及にする場合、この用語は、特段の記載がない限り、車両の1の運転者と理解されるべきである。人はシート15に着座することができ、その手でハンドル10を把持し、特に掴むことができ、これにより、人は、その手でハンドル10を介して、操舵軸線Lの周りに操舵要素8を、また、操舵要素8によって車両ホイール2を操舵軸線Lの周りにフレーム11に対して相対的に回動させることができる。これによって、人は、車両1のカーブ走行、進行方向変更及び車線変更を行うことができ、したがって、車両1を操舵することができる。再び他の言葉で表現すると、車両1を操舵するために、操舵要素8が、また、操舵要素8と共に車両ホイール2が、操舵軸線Lの周りにフレーム11に対して相対的に回動可能である。
【0044】
車両1は、制御装置とも称される電子計算装置17を有し、電子計算装置17を用いて、以下においてさらにより詳細に説明するように、摩擦係数量とも称される少なくとも1つの量を求める方法が実施される。この量は、車両ホイール2と現在の地面5との間の現在の摩擦を特徴付ける。図示の実施例においては、量は、実際摩擦係数であり、又は、量には、少なくとも1つ若しくは正確に1つの実際摩擦係数が含まれ、実際摩擦係数は、車両ホイール2と現在の地面5との間の現在の摩擦を特徴付ける。以上において又は以下において、実際摩擦係数に言及する場合、この用語は、特段の記載がない限り、量と理解されるべきである。
【0045】
車両1はさらに、検出装置とも称されるセンサ装置45を有する。センサ装置45には、例えば慣性測定技術18が含まれており、慣性測定技術18を用いて、例えば車両1の加速度、例えば、車両横方向に及び/又は車両長手方向に及び/又は車両高さ方向に推移する車両1の加速度を検出することができる。さらに、例えば慣性測定技術18を用いて、車両1のロール角が検出可能である。さらに、慣性測定技術18を用いて、ロール角の1階の時間微分としてのロールレート、及び/又は、ロール角の2階の時間微分としてのロール加速度、すなわち、車両1のロールレートの1階の時間微分としてのロール加速度、及び/又は、ヨー加速度を検出することが可能である。センサ装置45には、車両ホイール2に割り当てられている、単に回転数センサとも称される車両ホイール回転数センサ19が含まれており、車両ホイール回転数センサ19を用いて、ホイール回転軸線7の周りの車両ホイール2の回転数を検出することができる。センサ装置45にはさらに、単に回転数センサとも称され、車両ホイール3に割り当てられている車両ホイール回転数センサ20が含まれており、車両ホイール回転数センサ20を用いて、ホイール回転軸線12の周りの車両ホイール3の回転数を検出することができる。それぞれの車両ホイール2,3には、例えばそれぞれのホイールブレーキが割り当てられている。それぞれのホイールブレーキは、摩擦ブレーキであるものとしてよい。それぞれのホイールブレーキは特に、それぞれのディスクブレーキとして構成されるものとしてよい。特に好適には、それぞれのホイールブレーキは、車両1の常用ブレーキであるものとしてよく、車両1はそれぞれの常用ブレーキを用いて制動することができる。センサ装置45には、例えば、制動圧センサ21が含まれており、制動圧センサ21は、車両ホイール2に割り当てられたホイールブレーキに割り当てられている。車両ホイール2に割り当てられたホイールブレーキは、第1のホイールブレーキとも称され、制動圧センサ21を用いて、単に第1の圧力とも称される、第1のホイールブレーキにおける第1の制動圧を検出することができる。センサ装置45にはさらに、第2の制動圧センサ22が含まれており、制動圧センサ22は、車両ホイール3に割り当てられた、第2のホイールブレーキとも称されるホイールブレーキに割り当てられている。制動圧センサ22を用いて、単に第2の圧力とも称される、第2のホイールブレーキにおける第2の制動圧を検出することができる。センサ装置45にはさらに、操舵モーメントセンサ23が含まれており、操舵モーメントセンサ23を用いて、操舵軸線Lの周りに作用する操舵モーメントを検出することができる。操舵要素8は、車両1の、操舵システムとも称される操舵装置24の構成部材であり、車両1は、操舵装置4を用いて操舵することができる。上述した操舵モーメントは、操舵装置24(操舵システム)において作用するトルクであり、このトルクは、センサ装置45の操舵モーメントセンサ23を用いて検出することができる。センサ装置45には選択的に、操舵角センサ25が含まれており、操舵角センサ25を用いて、操舵軸線Lの周りに延在するそれぞれの操舵角を検出することができ、操舵軸線Lの周りではフレーム11に対して相対的にこの操舵角の分だけ、操舵要素8を回動させることができる。車両1を直進走行させるために、操舵要素8は、操舵角がゼロ度である直進位置に位置する。センサ装置45には、選択的に、操舵レートセンサ26が含まれており、操舵レートセンサ26を用いて、操舵要素8又は操舵装置24の操舵レートを検出することができる。特に、操舵レートは、操舵角の1階の時間微分である。
【0046】
図2には、車両1が部分的に概略的な斜視図で示されており、図2には、力及びトルクが示されている。図2においては、矢印27によって上述した操舵モーメントが示されている。矢印28は、車両1の重力を示しており、矢印29は、例えば、車両1のカーブ走行時に車両1に作用する遠心力を示している。矢印30は、例えば、ωで記される車両ホイール2の回転数を示しており、この車両ホイール2は、例えば上述したカーブ走行時に、操舵要素8に対して相対的にホイール回転軸線7の周りに、この回転数で回転する。車両ホイール2の回転数は、単に回転数センサとも称される車両ホイール回転数センサ19を用いて検出することができる。矢印31は、ジャイロトルクとも称されるジャイロモーメントを示しており、このジャイロモーメントは、例えば、単に長手方向軸線とも称される車両1の車両長手方向軸線の周りに、特にカーブ走行時に作用する。図2には、接触点がKPで示されており、接触点KPにおいては、車両ホイール2、特にそのタイヤが、地面5に、特に直接コンタクト、すなわち、接触する。特に接触点KPにおいて車両ホイール2、特にそのタイヤに作用する横方向力は、矢印32によって示されており、特に接触点KPにおいて、特に車両ホイール2に作用する長手方向力は、矢印33によって示されている。矢印34は、特に接触点KPにおいて作用する法線力を示し、矢印35は、Tとも称されるタイヤ捩りモーメントを示している。さらに、矢印36は、転がりモーメントを示している。
【0047】
図3には、第1の基準特性マップ37が概略図で示されており、図4には、第2の基準特性マップ38が概略図で示されている。基準特性マップ37及び38を以下においてさらに詳細に説明する。
【0048】
上述した本方法においては、電子計算装置17を用いて、車両ホイール2、特にそのタイヤと、現在の地面5との間の現在の摩擦を特徴付ける実際摩擦係数を求める。地面5が現在の地面、すなわち、現在の地表面であるという特徴は、例えば、本方法が、車両2の走行中に実施され、車両2は、走行中に地面5に沿って走行し、この間、車両1が、地面接触要素を介して車両高さ方向下向きに地面5に支持されていることであると理解される。特に、走行とは、例えば車両1が、カーブ、例えば右カーブ又は左カーブ等を通って走行するカーブ走行のことであり、これにより、例えば車両1は、走行時及び本方法の実施時に、傾斜状況にあり、ひいては、0とは異なるロール角を有する。
【0049】
車両1のロール角は、例えばセンサ装置45を用いて、特に慣性測定技術18を用いて検出可能である。
【0050】
本方法においては、センサ装置45を用いて、特に操舵モーメントセンサ23を用いて、操舵モーメントを測定する。例えばセンサ装置45、特に操舵モーメントセンサ23は、特に電気的な測定信号を供給し、この測定信号は、図5においては矢印39によって示されており、センサ装置45を用いて測定した操舵モーメントを特徴付ける、すなわち、示し又は表す。測定信号39は、フィルタ40を用いてフィルタリングされる。フィルタリングされた測定信号は、測定値であり、又は、測定値として表され、又は、少なくとも1つの測定値を含み、この測定値は、第1の出力値として使用される。前述した測定信号は、第1の測定信号とも称される。さらに、センサ装置45を用いて、車両1の特に現在の走行状態、すなわち、現在の走行動特性を表す走行動特性量を測定する。この場合には、例えばセンサ装置45により、矢印41で示した第2の測定信号が供給され、第2の測定信号は、第2のフィルタ42を用いてフィルタリングされる。第2の測定信号は、走行動特性信号とも称される。車両動特性量には、例えば、車両ホイール2の回転数と、場合によっては車両ホイール3の回転数と、車両1のロール角と、ロール角の1階の時間微分としての、車両1のロールレートと、ロール角の2階の時間微分としての、車両1のロール加速度と、車両1のヨー加速度と、操舵角レートと、特に車両1の車両長手方向に作用する正の加速度及び/又は負の加速度、すなわち、車両1の減速度と、特に車両1の車両ホイール2の、ホイールブレーキにおける圧力とが含まれている。
【0051】
図5には、矢印43により、第1の出力値とも称される上述した測定値が示されており、この測定値により、特に、フィルタ40を用いてフィルタリングされ、操舵モーメントセンサ17を用いて検出した操舵モーメントが特徴付けられる。走行動特性量のうちの他の1つは、車両1の現在の走行速度であり、車両1は、地面5に沿って現在の走行速度で走行し、この間、車両1は、地面接触要素を介して車両高さ方向下向きに地面5に支持されている。矢印44は実際角度値を示しており、この実際角度値は、センサ装置45を用いて、特に慣性測定技術18を用いて測定され、例えばフィルタ42を用いてフィルタリングされた、車両1の現在のロール角度を表す。そのほかに、矢印44は、実際速度値を示しており、この実際速度値は、センサ装置45を用いて、特に慣性測定技術18を用いて測定され、特にフィルタ42を用いてフィルタリングされた、車両1の現在の走行速度を特徴付ける。基準特性マップ37及び38は、例えば、電子計算装置17のデータ記憶装置に記憶されている。
【0052】
センサ装置45を用いて検出ひいては測定された車両1の走行速度を特徴付ける現在の実際速度値と、センサ装置45を用いて測定ひいては検出された車両1のロール角を特徴付ける現在の実際角度値とは、実際測定値ペアを形成している。第1の基準特性マップ37は、例えば1.0である第1の基準摩擦係数について求められている。第1の基準特性マップ37は、複数の第1の基準角度値と、複数の第1の基準速度値と、複数の第1の基準トルク値とを含む。第1の基準特性マップ37は、第1の基準角度値のうちの正確に1つと第1の基準速度値のうちの正確に1つとを含むそれぞれの第1の基準値ペアに第1の基準トルク値のうちの正確に1つを割り当てている。
【0053】
第2の基準特性マップ38は、例えば0.5である第2の基準摩擦係数について求められている。第2の基準特性マップ38は、複数の第2の基準角度値と、複数の第2の基準速度値と、複数の第2の基準トルク値とを含む。第2の基準特性マップ38は、第2の基準角度値のうちの正確に1つと第2の基準速度値のうちの正確に1つとを含むそれぞれの第2の基準値ペアに第2の基準トルク値のうちの正確に1つを割り当てている。実際値ペアに応じて、第1の基準特性マップ37から第1の基準値ペアのうちの1つが、実際値ペアに属する第1値ペアとして選択され、実際値ペアに応じて、第2の基準特性マップ38から第2の基準値ペアのうちの1つが、実際値ペアに属する第2値ペアとして選択される。選択された第1の基準値ペアに第1の基準特性マップ37によって割り当てられた第1の基準トルク値は、電子計算装置17を用いて求められ、すなわち、第1の基準特性マップ37から読み出され、選択された第2の基準値ペアに割り当てられた第2の基準トルク値は、電子計算装置17を用いて第2の基準特性マップ38から求められ、すなわち、読み出される。図5においては、矢印46によって、静的な値Mstationaerとも称される実際トルク値が示されており、この実際トルク値は、矢印43によって示した第1の出力値と、矢印47によって示した第2の出力値とから電子計算装置17を用いて求められ、特に計算される。図5には、ブロック48により、電子計算装置17を用いて第1の比較が行われることが示されており、この第1の比較では、求めた第1の基準トルク値と、求めた実際トルク値とを比較する。ブロック48によってさらに示されていることは、電子計算装置17を用いて第2の比較が行われることであり、この第2の比較では、求めた第2の基準トルク値と、求めた実際トルク値とを比較する。求めた基準トルク値は、矢印50によって示されている。ブロック48によって示されていることは、さらに、図5において矢印49によって示した実際摩擦係数が、比較に応じて電子計算装置17を用いて求められることである。操舵モーメントセンサ23を用いて測定した、すなわち、検出した、操舵装置24において作用する操舵モーメントは、少なくとも1つ又は正確に1つの静的な操舵モーメント成分と、少なくとも1つ又は複数の動的な操舵モーメント成分とから構成されている。静的な値Mstationaerとも称される実際トルク値は、例えば、静的な操舵モーメント成分と、少なくとも1つの動的な操舵モーメント成分とに関連して、専ら静的な操舵モーメント成分を特徴付ける。なぜならば、例えば、矢印47で示した第2の出力値は、少なくとも1つの動的な操舵モーメント成分、特に動的な操舵モーメント成分を特徴付け、第1の出力値から減算されるからである。図5には、ブロック51により、車両パラメータとも称される車両1のパラメータが示されている。さらに、図5のブロック52によって補正係数が示されている。ブロック53によって示されていることは、センサ装置45を用いて測定しかつ例えばフィルタ42を用いて測定した走行動特性値の少なくとも一部に応じて、電子計算装置17を用いて動的な操舵モーメント成分が計算されることである。さらに、ブロック54によって示されていることは、補正係数と、センサ装置45により測定しかつ例えばフィルタ42を用いてフィルタリングした走行動特性量の少なくとも一部とに応じて、特に補正トルクとして補正項が計算されることである。補正項は、例えばMkorrで記され、動的な操舵モーメント成分は、例えばMdynで記され、例えば、補正項及び動的な操舵モーメント成分は、ブロック55において、特に加算により第2の出力値にまとめられる。このことは、例えば第2の出力値が、動的な操舵モーメント成分及び補正項を含むことを意味する。特に、補正項と動的な操舵モーメント成分とは、例えば加算によって第2の出力値にまとめられる。第2の出力値は、第1の出力値、すなわち、測定値から減算され、これにより、補正項と動的な操舵モーメント成分とが測定値(第1の出力値)から計算される。したがって、例えば矢印46によって示した実際トルク値により、特に有利には、センサ装置45を用いて測定した、操舵装置24に実際にかつ現在作用する操舵モーメントの静的な操舵モーメント成分が特徴付けられる。実際摩擦係数は、例えば、基準摩擦係数からの補間によって計算され、これにより、実際摩擦係数を特に有利に求めることができる。したがって、実際摩擦係数は、推測された摩擦係数であるものとしてよく、及び/又は、摩擦係数クラスに割り当てることができ、これにより、摩擦係数クラスが求められる。例えば、実際トルク値が、第1の基準トルクよりも小さく、かつ、第2の基準トルク値よりも大きい場合には、実際摩擦係数が、第1の基準摩擦係数よりも小さく、かつ、第2の基準摩擦係数よりも大きいことを推定することができ、この場合には、例えば、基準摩擦係数からの補間により、実際摩擦係数を計算することができる。矢印49によって示されていることは、求めた、特に計算しかつさらには特に推測した実際摩擦係数が出力量であることであり、例えば、少なくとも1つの構成要素、例えば、車両1の少なくとも1つの運転者支援システム等が、実際摩擦係数に応じて動作させられることが可能である。本方法を用いて、実際摩擦係数ひいては現在の摩擦を特に有利に求めることができるため、実際摩擦係数に応じて、少なくとも1つの構成要素を特に有利に動作させることができる。
【0054】
例えば、間隔とも称される差分が相応の量を有する場合には、高μとも称される大きい摩擦係数と、低μと称される小さい摩擦係数とに分けることができる。さらに、少なくとも2つ又は正確に2つのクラスが設けられるものとしてよく、これらのクラスに摩擦係数を分けることができ又は割り当てることができる。
【符号の説明】
【0055】
1 車両
2 車両ホイール
3 車両ホイール
4 双方向矢印
5 地面
6 双方向矢印
7 ホイール回転軸線
8 操舵要素
9 フォーク
10 ハンドル
11 フレーム
12 ホイール回転軸線
13 スイングアーム
14 双方向矢印
15 シート
17 電子計算装置
18 慣性測定技術
19 回転数センサ
20 回転数センサ
21 制動圧センサ
22 制動圧センサ
23 操舵モーメントセンサ
24 操舵装置
25 操舵角センサ
26 操舵レートセンサ
27 矢印
28 矢印
29 矢印
30 矢印
31 矢印
32 矢印
33 矢印
34 矢印
35 矢印
36 矢印
37 第1の基準特性マップ
38 第2の基準特性マップ
39 矢印
40 フィルタ
41 矢印
42 フィルタ
43 矢印
44 矢印
45 センサ装置
46 矢印
47 矢印
48 ブロック
49 矢印
50 矢印
51 ブロック
52 ブロック
53 ブロック
54 ブロック
55 ブロック
KP 接触点
L 操舵軸線
S 回動軸線
図1
図2
図3
図4
図5
【外国語明細書】