(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173786
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】赤外フィルター膜層及び赤外フィルター構造体
(51)【国際特許分類】
G02B 5/28 20060101AFI20241205BHJP
B32B 9/00 20060101ALI20241205BHJP
B32B 9/04 20060101ALI20241205BHJP
B32B 7/023 20190101ALI20241205BHJP
G02B 1/113 20150101ALN20241205BHJP
【FI】
G02B5/28
B32B9/00 A
B32B9/04
B32B7/023
G02B1/113
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024087063
(22)【出願日】2024-05-29
(31)【優先権主張番号】112120229
(32)【優先日】2023-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】524082373
【氏名又は名称】台灣彩光科技股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】TAIWAN COLOR OPTICS, INC.
【住所又は居所原語表記】4F., No.32, Keya Rd., Daya Dist., Taichung City 428, TAIWAN,
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】王志峰
(72)【発明者】
【氏名】黄國胤
(72)【発明者】
【氏名】王文ユー
(72)【発明者】
【氏名】張可朋
(72)【発明者】
【氏名】張永朋
(72)【発明者】
【氏名】朱正ウェイ
【テーマコード(参考)】
2H148
2K009
4F100
【Fターム(参考)】
2H148GA04
2H148GA07
2H148GA09
2H148GA12
2H148GA18
2H148GA19
2H148GA32
2H148GA48
2K009AA02
2K009BB02
2K009BB04
2K009BB11
2K009CC02
2K009CC03
2K009CC14
4F100AA13B
4F100AA19D
4F100AA20C
4F100AB11A
4F100AG00D
4F100AK01D
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10C
4F100BA10D
4F100JD10
4F100JM02B
4F100JN01D
(57)【要約】
【課題】本発明は、品質が安定し、使用中の光波長のドリフトが少ない赤外フィルター膜層を公開する。
【解決手段】赤外フィルター膜層は、複数のシリコンベース層、複数の隔離層及び複数の酸化物層が積層されて構成される。複数の隔離層は、複数のシリコンベース層と複数の酸化物層の間に位置する。この構造により、赤外フィルター膜層は優れた品質を持ち、波長ドリフトが小さいという利点がある。本発明は、光透過基板及び赤外フィルター膜層を含む赤外フィルター構造体も提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのシリコンベース層、少なくとも1つの隔離層及び少なくとも1つの酸化物層が積層してなる赤外フィルター膜層であって、
前記少なくとも1つの隔離層は前記少なくとも1つのシリコンベース層と前記少なくとも1つの酸化物層の間に位置する、ことを特徴とする、赤外フィルター膜層。
【請求項2】
前記少なくとも1つの隔離層は窒化物層である、請求項1に記載の赤外フィルター膜層。
【請求項3】
前記少なくとも1つの窒化物層の材料は、窒化シリコン(Si3N4)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化ニオブ(NbN)、窒化タンタル(TaN)及び窒化ジルコニウム(ZrN)からなる群から選ばれる少なくとも1つである、請求項2に記載の赤外フィルター膜層。
【請求項4】
前記少なくとも1つの隔離層の厚さは6nmから150nmである、請求項1に記載の赤外フィルター膜層。
【請求項5】
前記少なくとも1つの酸化物層は二酸化シリコン層(SiO2)である、請求項1に記載の赤外フィルター膜層。
【請求項6】
前記ベース層には接着層が定義され、前記接着層は前記少なくとも1つのシリコンベース層、前記少なくとも1つの隔離層又は前記少なくとも1つの酸化物層である、請求項1に記載の赤外フィルター膜層。
【請求項7】
光透過基板と、
少なくとも1つのシリコンベース層と、少なくとも1つの酸化物層と、前記少なくとも1つのシリコンベース層と前記少なくとも1つの酸化物層の間に位置する少なくとも1つの隔離層とが積層してなり、前記光透過基板の第1の表面上にコーティングされる、赤外フィルター膜層と、
を備える、ことを特徴とする、赤外フィルター構造体。
【請求項8】
前記光透過基板の前記第1の表面に対して反対側となる第2の表面上にコーティングされる前記赤外フィルター膜層をさらに含む、請求項7に記載の赤外フィルター構造体。
【請求項9】
前記光透過基板はガラス基材、サファイア基材又は樹脂基材から製造される、請求項7に記載の赤外フィルター構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外フィルター膜層に関し、特に干渉フィルターの赤外フィルター膜層及び赤外フィルター構造体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光学コーティングは、人々の生活に広く応用されている。例えば、遮光、フィルタリング、防水、さらには外観デザインに使用される。
【0003】
一般に、光学コーティング構造は、多層の干渉光学薄膜が多く、通常は2種類以上の材料を使用して完成される。紅外波長帯のフィルター設計では、例えば長波通フィルター、短波通フィルターまたはバンドパスフィルターなどがあり、その使用波長帯が紅外線であるため、可視光波長帯を抑制する必要がある場合、設計上はより多くかつ厚い膜層が必要となり、これにより製造コストが増大する。多層の干渉光学薄膜は通常、高折射率及び低折射率の酸化物を交互に積層する設計を採用しており、例えば、五酸化二タンタル、二酸化チタンまたは五酸化二ニオブと二酸化珪素を組み合わせて使用する。しかし、この設計では、可視光波長帯をブロックするためには、より厚い厚みが必要となり、そのためコーティングの製造コストは高くなる。また、既存の技術においては、多層の干渉光学薄膜にハイドライドと酸化物を交互に積層する設計も採用されており、例えば、ハイドロジェン化珪素及び二酸化珪素を使用しているが、製造プロセスにおいて水素の使用が制限されるため、生産が不便である。
【0004】
フィルターフィルムについては、通常、シリコン層の上に酸化物層をコーティングして膜厚を減少させる手法が採られる。しかし、酸化物層内の酸素原子がシリコン層のシリコンと結合しやすく、生成される光学膜の品質が不安定となり、使用中に波長ドリフトが発生しやすい問題がある。そのため、構造設計の改良を通じて赤外フィルター膜層の品質を向上させ、波長ドリフトの問題を減少させることは、この事業で解決したい重要な課題の一つとなっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする技術的問題は、既存技術の不足を補う赤外フィルター膜層を提供することであり、その品質が安定し、使用中の光波長のドリフトが少ないという利点がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
記の技術的問題を解決するために、本発明による技術方案の一つは、少なくとも1つのシリコンベース層、少なくとも1つの隔離層及び少なくとも1つの酸化物層から積層されて構成される赤外フィルター膜層を提供することである。少なくとも1つの隔離層は、少なくとも1つのシリコンベース層と少なくとも1つの酸化物層の間に位置する。
【0007】
実施可能な方案によれば、前記隔離層は窒化物層である。
【0008】
実施可能な方案によれば、前記窒化物層の材料は、窒化シリコン(Si3N4)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化ニオブ(NbN)、窒化タンタル(TaN)、及び窒化ジルコニウム(ZrN)から構成される群から少なくとも1つを選択される。
【0009】
実施可能な方案において、前記隔離層の厚さは6nmから150nmの間である。
【0010】
実施可能な方案において、前記酸化物層は二酸化シリコン層(SiO2)である。
【0011】
実施可能な方案において、赤外フィルター膜層のベース層には接着層が定義され、前記接着層は少なくとも1つのシリコンベース層、少なくとも1つの隔離層または少なくとも1つの酸化物層である。
【0012】
上述の技術問題を解決するため、本発明が採用する別の技術方案は、光透過基板及び赤外フィルター膜層を含む赤外フィルター構造体を提供することである。赤外フィルター膜層は光透過基板の第1の表面にコーティングされる。
【0013】
実施可能な方案において、赤外フィルター構造体は、光透過基板の第1の表面に対応する第2の表面上に、別の赤外フィルター膜層がコーティングされている。
【0014】
光透過基板は、ガラス基材、サファイア基材、または樹脂基材から製造される。
【0015】
本発明の有益な効果は、シリコンベース層と酸化物層の間に隔離層を設置する技術方案を通じて、酸化物層の酸素原子がシリコンベース層に侵入するのを防ぎ、赤外フィルター膜層の安定性を向上させることができる点である。さらに、「隔離層を窒化物とする」という技術方案に基づき、赤外フィルター膜層の品質をさらに向上させ、使用上での光波長のドリフトの程度を減少させることができる。
【0016】
本発明のもう有益な効果として、特定の実施形態において、提供される赤外フィルター膜層が赤外レーザーレーダーに適用され、各種の環境変化による影響を改善し、光リーダー検出の精度を向上させることである。
【0017】
発明の特徴及び技術内容がより一層分かるように、以下本発明に関する詳細な説明と添付図面を参照する。しかし、提供される添付図面は参考と説明のために提供するものに過ぎず、本発明の特許請求の範囲を制限するためのものではない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明に係る第1の実施形態の赤外フィルター膜層の構造模式図である。
【
図2】本発明に係る第2の実施形態の赤外フィルター膜層の構造模式図である。
【
図3】本発明に係る第3の実施形態の赤外フィルター膜層の構造模式図である。
【
図4】本発明に係る特定の実施形態の赤外フィルター膜層が反射防止膜に応用されたスペクトルシミュレーション図である。
【
図5】本発明に係る特定の実施形態の赤外フィルター膜層が長波通フィルターに応用されたスペクトルシミュレーション図である。
【
図6】本発明に係る特定の実施形態の赤外フィルター膜層が短波通フィルターに応用されたスペクトルシミュレーション図である。
【
図7】本発明に係る特定の実施形態の赤外フィルター膜層が帯通フィルターに応用されたスペクトルシミュレーション図である。
【
図8】本発明に係る第1の実施形態の赤外フィルター構造体の模式図である。
【
図9】本発明に係る第2の実施形態の赤外フィルター構造体の模式図である。
【
図10】本発明に係る第3の実施形態の赤外フィルター構造体の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
下記より、本発明が開示する赤外フィルター膜層及び赤外フィルター構造体に係る実施形態を説明する。当業者は本明細書の公開内容により本発明のメリット及び効果を理解し得る。本発明は他の異なる実施形態により実行又は応用できる。本明細書における各細節も様々な観点又は応用に基づいて、本発明の精神逸脱しない限りに、均等の変形と変更を行うことができる。また、本発明の図面は簡単で模式的に説明するためのものであり、実際的な寸法を示すものではない。以下の実施形態において、さらに本発明に係る技術事項を説明するが、公開された内容は本発明を限定するものではない。また、本明細書に用いられる「又は」という用語は、実際の状況に応じて、関連する項目中の何れか一つ又は複数の組合せを含み得る。
【0020】
さらに、本明細書で使用される用語「または」は、関連する列挙された項目のいずれかまたは組み合わせを適宜含むことができる。
【0021】
図1を参照されたい。これは本発明第1の実施形態の赤外フィルター膜層100Aの構造模式図である。赤外フィルター膜層100Aは、シリコンベース層11、隔離層12及び酸化物層13を含み、隔離層12はシリコンベース層11及び酸化物層13の間に位置している。一部の実施形態においては、シリコンベース層11、隔離層12及び酸化物層13は少なくとも1つであり、シリコンベース層11及び酸化物層13の間には必ず隔離層12が存在する(詳細は後述)。
【0022】
図1に示された実施形態において、シリコンベース層11は接着層であり、その底面が接着面Fを定義し、接着面Fは例えばガラス板や樹脂板(例:ポリカーボネート(PC)樹脂)の表面に鍍着されたり、接着されたり、貼り付けられる。他の一部の実施形態において、赤外フィルター膜層のベース層は酸化物層13(即ち接着層)であり、酸化物層13の表面が接着面Fを定義する。さらに、赤外フィルター膜層のベース層が隔離層12(即ち接着層)である一部の実施形態において、隔離層12の表面が接着面Fを定義する。
【0023】
シリコンベース層11の主要材料はシリコン(Si)である。一部の実施形態において、酸化物層13は二酸化シリコン層(SiO2)を含むがこれに限らない。隔離層12はシリコンベース層11及び酸化物層13を隔て、酸化物層の酸素原子がシリコンベース層11へ拡散するのを防ぐ。隔離層12はシリコンベース層11及び酸化物層13に対して良好な接着性を有する材料を採用し、一部の実施形態において、隔離層12は窒化物層である。例えば、窒化物層の材料は窒化シリコン(Si3N4)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化ニオブ(NbN)、窒化タンタル(TaN)、及び窒化ジルコニウム(ZrN)から成る群から少なくとも1つを選択する。一部の実施形態において、隔離層12の厚さは6~150nmの間である。
【0024】
図2を参照されたい。これは本発明第2の実施形態の赤外フィルター膜層100Bの構造模式図である。この実施形態では、シリコンベース層11及び酸化物層13はそれぞれ2つ、隔離層12は3つで、3つの隔離層12はそれぞれ隣接するシリコンベース層11と酸化物層13の間に配置される。本発明はシリコンベース層11、隔離層12及び酸化物層13の数に制限はないが、シリコンベース層11及び酸化物層13の間には必ず隔離層12を設置する必要があり、これにより酸化物層13の酸素原子のシリコンベース層11への拡散を改善する。この実施形態において、赤外フィルター膜層100Bはベース層からシリコンベース層11、隔離層12、酸化物層13、隔離層12、シリコンベース層11、隔離層12、及び酸化物層13の順に積層される。さらに、本発明は赤外フィルター膜層の全体的な厚さにも制限を設けない。使用者や製造者の要求に応じて変更可能であり、例えば、赤外フィルター膜層の全体は、
図1に示された赤外フィルター膜層100Aの複数の積層で構成される場合がある。その中で、シリコンベース層11及び酸化物層13の間には必ず隔離層12を設置する。
【0025】
図3を参照されたい。これは本発明第3の実施形態の赤外フィルター膜層100Cの構造模式図である。この実施形態において、シリコンベース層11及び酸化物層13はそれぞれ2つ、隔離層12は3つであり、第2の実施形態と異なる点は、第3の実施形態の赤外フィルター膜層100Cは酸化物層13の表面を接着面Fとしている。その積層構造はベース層から上へと酸化物層13、隔離層12、シリコンベース層11、隔離層12、酸化物層13、隔離層12、及びシリコンベース層11の順である。一部の実施形態において、接着面Fは酸化物層13の表面であり、赤外フィルター膜層の全体は複数の酸化物層13、複数の隔離層12、及び複数のシリコンベース層11から成る積層で構成されており、複数の隔離層12はそれぞれ酸化物層13とシリコンベース層11の間に存在する。
【0026】
一部の実施形態において、隔離層12を接着層として採用し、その表面を接着面Fとする。接着面Fは、目標物の表面にめっきされ、接着されるか、貼り付けられる。この時、赤外フィルター膜層は底から上に向かって隔離層12、シリコンベース層11、隔離層12、酸化物層13、隔離層12、及びシリコンベース層11の順に積層される(例として3つの隔離層12、2つのシリコンベース層11、及びの酸化物層13を挙げる)。赤外フィルター膜層の全体にわたって、シリコンベース層11と酸化物層13の間には必ず隔離層12を設置する。
【0027】
一部の実施形態において、隔離層12を接着層として採用し、その表面を接着面Fとする。接着面Fは、目標物の表面にめっきされ、接着されるか、貼り付けられる。前述の実施形態と異なる点は、隔離層12に隣接する層が酸化物層13であることである。例として3つの隔離層12、2つの酸化物層13、及びのシリコンベース層11を挙げると、この時、赤外フィルター膜層はベース層から上に向かって隔離層12、酸化物層13、隔離層12、シリコンベース層11、隔離層12、及び酸化物層13の順に積層される。赤外フィルター膜層の全体にわたって、酸化物層13とシリコンベース層11の間には必ず隔離層12を設置する。
【0028】
図4を参照されたい。これは本発明の一実施形態である赤外フィルター膜層が反射防止膜(Anti-Reflection:AR)としての光スペクトルシミュレーション図である。赤外フィルター膜層の構成は以下の表1に示される:
【表1】
【0029】
この実施形態では、総層数は12層であり、隔離層12がベース層となっている。
図4に示されるように、波長1450nmから1650nmの光波の透過率は99%以上である。
【0030】
図5を参照されたい。これは本発明の一実施形態である赤外フィルター膜層が長波通過フィルター(Long-pass filter : LP)としての光スペクトルシミュレーション図である。赤外フィルター膜層の構成は以下の表2に示される。
【表2】
【0031】
この実施形態では、合計75層があり、隔離層12がベース層となっている。
図5に示されるように、波長1530nmから1650nmの光波の透過率は95%から100%である。
【0032】
図6を参照されたい。これは本発明の一実施形態である赤外フィルター膜層が短波通過フィルター(Short-pass filter : SP)としての光スペクトルシミュレーション図である。赤外フィルター膜層の構成は以下の表3に示される。
【表3】
【0033】
この実施形態では、合計65層があり、隔離層12がベース層となっている。
図6に示されるように、波長1450nmから1600nmの光波の透過率は95%から100%である。
【0034】
図7を参照されたい。これは本発明に係る特定の実施形態である赤外フィルター膜層が帯域通過フィルター(Band-pass filter : BP)としての光スペクトルシミュレーション図である。赤外フィルター膜層の構成は以下の表4に示される。
【表4】
【0035】
この実施形態では、合計68層があり、酸化物層13がベース層である。
図7に示されるように、波長1550nmから1580nmの光波の透過率は99%以上である。
【0036】
図8を参照されたい。これは本発明の第1の実施形態である赤外フィルター構造体200Aを示す模式図である。この実施形態において、赤外フィルター構造体200Aは光透過基板2と赤外フィルター膜層から成り、赤外フィルター膜層は複数のシリコンベース層11、複数の隔離層12、及び複数の酸化物層13を含む。ここで、赤外フィルター膜層はシリコンベース層11を接着層として使用し(以下、第1の態様と称する)、光透過基板2の第1の表面21上に位置している。赤外フィルター膜層はコーティング技術により光透過基板2上に配置され、本発明はコーティングの方法に制限されない。前記光透過基板2は例えばガラス基材で製造される。いくつかの実施形態において、光透過基板2は樹脂基材で製造される。さらに、いくつかの実施形態において、光透過基板2はサファイア基材で製造される。
【0037】
図9を参照されたい。これは本発明の第2の実施形態である赤外フィルター構造体200Bの模式図である。この実施形態において、赤外フィルター膜層は複数のシリコンベース層11、複数の隔離層12、及び複数の酸化物層13を含むが、ここで赤外フィルター膜層は酸化物層13を接着層として使用し(以下、第2の態様と称する)、光透過基板2の第1の表面21上に位置している。
【0038】
一部の実施形態に基づき、赤外フィルター構造体において、赤外フィルター膜層は隔離層12を接着層として使用し、その上に位置するものをシリコンベース層11(以下、第三態様と称する)または酸化物層13(以下、第四態様と称する)とする。
【0039】
図10を参照されたい。これは本発明の第三実施形態である赤外フィルター構造体200Cの模式図である。この実施形態において、赤外フィルター構造体200Cは、光透過基板2の第2の表面22にもう赤外フィルター膜層を含んでいる。光透過基板2の第1の表面21にある赤外フィルター膜層は、上述の第1の態様から第四態様のいずれかが可能であり、光透過基板2の第2の表面22にある赤外フィルター膜層も、第1の態様から第四態様のいずれかが可能である。したがって、赤外フィルター構造体は16種の組み合わせを持ち、利用者の要求に応じて設計されるが、本発明はその方法に制限されない。
図10に示された実施形態に基づき、光透過基板2の第1の表面21には第1の態様の赤外フィルター膜層があり、第2の表面22には第三態様の赤外フィルター膜層がある。
【0040】
[実施形態による有益な効果]
本発明の有益な効果は、本発明によって提供される赤外フィルター膜層及び赤外フィルター構造体が、シリコンベース層と酸化物層の間に隔離層を配置する技術方案を通じて、酸化物層の酸素原子がシリコンベース層に侵入するのを防ぎ、赤外フィルター膜層の安定性を向上させる点にある。これにより、赤外領域での赤外フィルター膜層の安定性と信頼性が向上する。さらに、「隔離層を窒化物とする」という技術方案により、赤外フィルター膜層の品質がさらに向上し、波長ドリフトの程度が低下する。
【0041】
一部の実施形態における本発明のもう有益な効果は、提供される赤外フィルター膜層及び赤外フィルター構造体が、赤外レーザーレーダーに適用され、さまざまな環境変化による影響を改善し、光レーダー検出の精度を高めることができる点にある。
【0042】
以上に開示された内容は本発明の好ましい実施形態に過ぎず、これにより本発明の特許請求の範囲を制限するものではない。そのため、本発明の明細書及び添付図面の内容に基づき為された等価の技術変形は、全て本発明の特許請求の範囲に含まれるものとする。
【符号の説明】
【0043】
100A-100C: 赤外フィルター膜層
11: シリコンベース層
12: 隔離層、窒化物層
13: 酸化物層
200A-200C: 赤外フィルター構造体
2: 光透過基板
21:第1の表面
22:第2の表面
F: 接着面