(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173794
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】心臓腔後壁のアブレーション線の自動投影
(51)【国際特許分類】
A61B 18/12 20060101AFI20241205BHJP
A61B 34/20 20160101ALI20241205BHJP
【FI】
A61B18/12
A61B34/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024087781
(22)【出願日】2024-05-30
(31)【優先権主張番号】18/204,098
(32)【優先日】2023-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】メイタル・セゲフ
(72)【発明者】
【氏名】リオル・ジャンケルソン
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160KK03
4C160KK04
4C160KK16
4C160KK37
4C160MM33
(57)【要約】
【課題】広域輪郭アブレーション(WACA)点の解剖学的構造の自動セグメンテーションを実行すること。
【解決手段】方法は、患者の心臓の心腔の内壁上の部分的輪郭をカバーするアブレーション曲線に沿った複数のタグを受信することを含む。タグを使用して、アブレーション曲線における伝導ギャップを排除するためにアブレーション曲線を内壁の全輪郭にわたって完成させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
システムであって、
患者の心臓の心腔の内壁上の部分的輪郭をカバーするアブレーション曲線に沿った複数のタグを受信するように構成されたユーザインターフェースと、
前記タグを使用して、前記アブレーション曲線における伝導ギャップを排除するために前記アブレーション曲線を前記内壁の全輪郭にわたって完成させるように構成されたプロセッサと、
を含む、システム。
【請求項2】
前記アブレーション曲線を完成させることは、既存のタグに対して、新しいタグ位置を、前記新しいタグと前記既存のタグとの間に必要とされる最小距離を満たしながら計算することを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記プロセッサは、前記内壁の解剖学的マップ上に関心領域(ROI)を定義し、空間内の前記ROIの方向が座標系の所定の軸に沿うように、前記ROIを回転させ、前記所定の軸に直交する軸に沿って、前記既存のタグと前記新しいタグとの間の距離を計算することによって、前記新しいタグを計算するように構成されている、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記ROIは、左心房関連構造の前記内壁のマップ部分を含み、前記部分は、肺静脈の左口又は右口のうちの1つを含み、前記方向は、口の開口部に対して定義され、前記所定の軸は、冠状面及び軸面の断面であり、前記距離は、前方冠状面と後方冠状面との間で計算される、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記プロセッサが、前記心腔の解剖学的マップ上に前記新しいタグを重ねるように更に構成されている、請求項2に記載のシステム。
【請求項6】
前記アブレーション曲線の前記部分的輪郭は、左心房の前記内壁の前方部分をカバーし、前記アブレーション曲線を完成させることは、前記左心房の前記内壁の後方部分にわたる前記アブレーション曲線の残りの部分を計算することを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記全輪郭が、上下左肺静脈及び上下右肺静脈の前記対のうちの少なくとも一方を取り囲む、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記プロセッサが、広域輪郭アブレーション(WACA)曲線を生成することによって前記アブレーション曲線を完成させるように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
患者の心臓の心腔の内壁上の部分的輪郭をカバーするアブレーション曲線に沿った複数のタグを受信することと、
前記タグを使用して、前記アブレーション曲線における伝導ギャップを排除するために前記アブレーション曲線を前記内壁の全輪郭にわたって完成させることと、
を含む方法。
【請求項10】
前記アブレーション曲線を完成させることは、既存のタグに対して、新しいタグ位置を、前記新しいタグと前記既存のタグとの間に必要とされる最小距離を満たしながら計算することを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記新しいタグを計算することは、前記内壁の解剖学的マップ上に関心領域(ROI)を定義することと、空間内の前記ROIの方向が座標系の所定の軸に沿うように前記ROIを回転させることと、前記所定の軸に直交する軸に沿って、前記既存のタグと前記新しいタグとの間の距離を計算することと、を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ROIは、左心房関連構造の前記内壁のマップ部分を含み、前記部分は、肺静脈の左口又は右口のうちの1つを含み、前記方向は、口の開口部に対して定義され、前記所定の軸は、冠状面及び軸面の断面であり、前記距離は、前方冠状面と後方冠状面との間で計算される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記心腔の解剖学的マップ上に、前記新しいタグを重ねることを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記アブレーション曲線の前記部分的輪郭は、左心房の前記内壁の前方部分をカバーし、前記アブレーション曲線を完成させることは、前記左心房の前記内壁の後方部分にわたる前記アブレーション曲線の残りの部分を計算することを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記全輪郭が、上下左肺静脈及び上下右肺静脈の前記対のうちの少なくとも一方を取り囲む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記アブレーション曲線を完成させることは、広域輪郭アブレーション(WACA)曲線を生成することを含む、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、電気解剖学的(EA)信号の解析に関し、特に、広域輪郭アブレーション(WACA)点の解剖学的構造の自動セグメンテーションを実行するためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
心臓腔の内壁上の心臓アブレーション軌道の計画方法は、既に、特許文献において提案されている。例えば、米国特許出願公開第2022/036560号は、メモリに連結されたプロセッサを使用して実装される評価エンジンを使用する、心臓組織セグメンテーションのための方法及び装置を記載している。評価エンジンは、患者の心組織に対する有効点を受信する。評価エンジンは、心組織の構造セグメンテーションに基づいて、有効点のそれぞれに対して解剖学的構造分類を決定し、心組織の治療をサポートするために、複数の有効点のそれぞれを有する解剖学的構造分類を提供する。
【0003】
以下の本開示の実施例の詳細な説明を図面と併せ読むことで、本開示のより完全な理解が得られるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0004】
【
図1】本開示の一実施例による、カテーテルベースの電気解剖学的(EA)マッピング及びアブレーションシステムの概略描写図である。
【
図2A】本開示の一実施例による、それぞれ、右肺静脈口の周囲及び左肺静脈口の周囲の、不完全アブレーション線に沿ったアブレーションタグの概略図である。
【
図2B】本開示の一実施例による、それぞれ、右肺静脈口の周囲及び左肺静脈口の周囲の、不完全アブレーション線に沿ったアブレーションタグの概略図である。
【
図3】本開示の一実施例による、それぞれの前方アブレーションタグから投影された後方アブレーションタグが重ね合わせられた、左心房及び肺静脈の解剖学的マップである。
【
図4】本開示の一実施例による、前方アブレーションタグからそれぞれの後方アブレーションタグを、自動的に投影するための方法を概略的に例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0005】
概要
広域輪郭アブレーション(WACA)は、心房細動(AFib)の場合におけるケアアブレーションストラテジの標準である。典型的には、WACAによる右肺静脈と左肺静脈との隔離は、点ごとに行われ(点は、WACAアブレーション点と称される)、右肺静脈口及び左肺静脈口の対の周囲に、楕円形(例えば、円形)のリング形状の治療創を生成する。
【0006】
しかしながら、WACAは、WACAアブレーション線(本明細書では同義的にアブレーション曲線とも呼ばれる)における潜在的な伝導ギャップの存在によって制限される。これらの伝導ギャップは、肺静脈の再接続及び再発性の不整脈につながる可能性がある。
【0007】
これらの制限を克服するために、医師は、しばしば、WACAアブレーション点の隣接性を推定しようと試みる。しかしながら、WACAプロセス中に、医師は、前壁内において切れ目なく連続する線をアブレーションすること(解剖マーカに依拠する)、並びに十分な静脈開存性を確保しながら、アブレーション線を後壁に継続及び位置付けすることにおいて、技術的課題に遭遇する。
【0008】
本明細書に記載される本開示の例は、前方アブレーションタグデータを使用して、前方アブレーション線のための位置マーカとして機能させ、相補的な後方設計線を計算するための自動アルゴリズムを含む技術を提供する。この手法は、ユーザが、最適な連続的輪郭アブレーションを達成する助けとなる。この方法は、医師が最初に右竜骨及び左リッジドロップに従って前方アブレーションを適用することがより容易であるという観察に依拠している。
【0009】
例示的な一実装形態では、プロセッサは、解剖学的マップ上の関心領域(ROI)を受信するが、そのROIは、左及び/又は右肺静脈口を備え、前述の、既存の前方アブレーションタグを備える。一般に、各左右の肺静脈口の対は、静脈口に適合されたランディング面に対する法線によって定義されるような、空間における何らかの一般的な向きを有する。プロセッサは、ROIが共通の矢状-冠状-軸方向(yz-xz-xy)x-y-z導出座標系の冠状x軸にほぼ平行になるように、ROIを回転させる。
【0010】
プロセッサは、例えば、グラフィカルユーザインターフェース(GUI)又は数値を入力するためのプロンプトライン等のユーザインターフェースを介して、前方アブレーションタグとそれぞれ必要とされる(例えば、設計された)後方アブレーションタグとの間の、所望の最小距離に関するユーザ主観的入力要求を受信する。この距離は、x-y-z座標系への回転後の、前面と後面との間で定義される。以下の
図2A及び
図2Bに、前方タグから後壁位置への投影を行い、それぞれの後方タグを生成することが示されている。
【0011】
タグ位置と交差する前側の各アブレーションタグについて、プロセッサは、2つの冠状面間の得られた距離を比較する。得られた距離が最小距離以上である場合、後方のそれぞれのタグが承認される。この計算によって、プロセッサは、例えば、静脈の狭窄及び不完全なアブレーションなどの、更なる併発症をもたらす可能性がある、例えば、静脈口内での近すぎる位置などの、最適でない位置のアブレーションを回避することを目的とする。
【0012】
プロセッサは、必要な後方アブレーションタグを、医師が見ることができる解剖学的マップに追加する。解剖学的マップは、元の非回転座標系で提供され、したがって、いかなる提案された完全なアブレーション線も、以下の
図3に見られるように、主に空間内で斜めの角度で配向される。
【0013】
いくつかの例では、アルゴリズムは、完全なWACAの輪郭を完成させるために、アブレーションタグの補間を提案する。補間は、後方線及び前方線が互いに接近し、対応する利用可能な後方タグが存在しない、アブレーション線の上部及び底部等の領域において提案され得る。別の一例では、補間が十分な数及び十分な密度の後方アブレーションタグに依拠していることを検証するために、補間を行うことができる設計されたアブレーションタグどうしの間のギャップが最大値に制限される。補間を実行するオプションは、例えば、GUIにおけるチェックボックスとして利用可能であってもよい。
【0014】
医師は、最終的に、伝導ギャップを伴わないWACA設計を完全に行う責任があるので、医師は、補間を使用する代わりに、又はそれに加えて、自動化されたWACA計画後に欠落していると見なされる任意のアブレーションタグをマーキングしてもよい。
【0015】
システムの説明
図1は、本開示の一実施例による、カテーテルベースの電気解剖学的(EA)マッピング及びアブレーションシステム10の概略描写図である。
【0016】
システム10は、医師24によって、患者の血管系を通して心臓12の腔又は血管構造(挿入
図45に図示されている)内へ経皮的に挿入される、複数のカテーテルを含む。典型的には、送達シースカテーテルが、心臓腔内に、例えば、心臓12の所望の場所の近くの左心房又は右心房内に、挿入される。その後、複数のカテーテルを送達シースカテーテルに挿入して、所望の位置に到達させることができる。複数のカテーテルは、ペーシング専用のカテーテル、心内電位図信号の感知用のカテーテル、アブレーション専用のカテーテル、及び/又はEAマッピングとアブレーションとの両方に専用のカテーテルを含み得る。本明細書に示される例示的カテーテル14は、双極電位図を感知するように構成されている。医師24は、心臓12内の標的部位を感知するために、カテーテル14の遠位先端部28(以後、本明細書で遠位端部アセンブリ28とも呼ばれる)を心臓壁と接触させる。アブレーションのために、医師24は、同様に、アブレーションカテーテルの遠位端を標的部位に運ぶ。
【0017】
挿入
図65に見られるように、カテーテル14は、任意選択的に遠位先端部28において複数のスプライン22にわたって分布し、IEGM信号を検知するように構成された、1つ好ましくは複数の電極26を含む、バスケット状の遠位端部28を含む、例示的なカテーテルである。カテーテル14は、カテーテル14のシャフト46上の遠位先端部28の位置及び配向を追跡するために、遠位先端部28内又はその近くに埋め込まれた位置センサ29を更に含むことができる。任意選択的に、かつ好ましくは、位置センサ29は、三次元(3D)位置及び配向を感知するための3つの磁気コイルを含む、磁気系の位置センサである。図示されているように、遠位先端部28は、更に、アセンブリ28の遠位縁部41においてバスケットアセンブリ28に機械的に接続されている、拡張可能なアセンブリ28の拡張/折り畳みロッド42を含む。
【0018】
磁気ベースの位置センサ29は、所定の作業体積内に磁場を生成するように構成された複数の磁気コイル32を含む位置パッド25とともに動作し得る。カテーテル14の遠位先端部28のリアルタイム位置は、位置パッド25によって生成され、磁気ベースの位置センサ29によって感知される磁場に基づいて追跡され得る。磁気ベースの位置検知技術の詳細は、米国特許第5,5391,199号、同第5,443,489号、同第5,558,091号、同第6,172,499号、同第6,239,724号、同第6,332,089号、同第6,484,118号、同第6,618,612号、同第6,690,963号、同第6,788,967号、及び同第6,892,091号に記載されている。
【0019】
システム10は、場所パッド25の場所基準及び電極26のインピーダンスベースの追跡を確立するために、患者23上の皮膚接触のために配置された1つ以上の電極パッチ38を含む。インピーダンスベースの追跡のために、電流が電極26に向けられ、電極皮膚パッチ38において検知され、それにより、各電極の場所を電極パッチ38を介して三角測量することができる。インピーダンスベースの位置追跡技術の詳細は、米国特許第7,536,218号、同第7,756,576号、同第7,848,787号、同第7,869,865号、及び同第8,456,182号に記載されている。
【0020】
レコーダ11は、体表面ECG電極18を用いて取得された心臓信号21(例えば、それぞれ追跡された心臓組織位置において取得された電位図)と、カテーテル14の電極26を用いて取得された心臓内電位図とを表示する。レコーダ11は、心臓の律動をペーシングするためのペーシング能力を含んでいてもよく、かつ/又は独立型ペーサに電気的に接続されていてもよい。
【0021】
システム10は、アブレーションするように構成されたカテーテルの遠位先端部の1つ以上の電極にアブレーションエネルギーを伝達するように適合された、アブレーションエネルギー発生器50を含み得る。アブレーションエネルギー生成器50によって生成されるエネルギーは、不可逆エレクトロポレーション(IRE)をもたらすために使用される単極性若しくは双極性高電圧直流パルスを含む、高周波(RF)エネルギー若しくはパルス場アブレーション(PFA)エネルギー、又はそれらの組み合わせを含み得るが、それらに限定されない。
【0022】
患者インターフェースユニット(PIU)30は、カテーテルと、電気生理学的機器と、電力供給源と、ワークステーション55との間の電気通信を確立して、システム10の動作を制御し、カテーテルからEA信号を受信するように構成されたインターフェースである。システム10の電気生理学的機器は、例えば、複数のカテーテルと、位置パッド25と、体表面ECG電極18と、電極パッチ38と、アブレーションエネルギー発生器50と、レコーダ11と、を含み得る。任意選択で、かつ好ましくは、PIU30は、カテーテル位置のリアルタイム計算を実施し、ECG計算を実行するための処理能力を追加的に含む。
【0023】
ワークステーション55は、メモリ57と、適切なオペレーティングソフトウェアがロードされたメモリ又は記憶装置を有するプロセッサ56ユニットと、ユーザインターフェース機能と、を含む。ワークステーション55は、任意選択で、(i)心内膜解剖学的構造を三次元(3D)でモデル化して、モデル又は解剖学的マップ20をディスプレイデバイス27上に表示するようにレンダリングすること、(ii)記録された心臓信号21からコンパイルされた活性化シーケンス(又は他のデータ)を、レンダリングされた解剖学的マップ20に重ね合わせられた代表的な視覚的表示又は画像で、ディスプレイデバイス27上に表示すること、(iii)心室内の複数のカテーテルのリアルタイムの位置及び配向を表示すること、及び(iv)アブレーションエネルギーが印加された位置などの関心部位をディスプレイデバイス27上に表示すること、を含む、複数の機能を提供し得る。システム10の要素を具現化する1つの市販製品は、Biosense Webster,Inc.、31A Technology Drive、Irvine、CA、92618から入手可能なCARTO(商標)3システムとして入手可能である。
【0024】
開示される実施例では、プロセッサ56は、前方アブレーション線上の場所のためのマーカとして前方アブレーションタグデータを使用するアルゴリズムを実行し、ユーザを補助して最適な連続的輪郭アブレーションを達成するための補完的後方設計線を計算する。この目的のために、プロセッサ56は、例えば、GUI111を介して、前方タグと必要とされるそれぞれの後方タグとの間の最小距離の、ユーザ主観的入力を受信し、
図2A及び
図2Bに記載される計算を適用する。
【0025】
いくつかの実施例では、プロセッサ56は、典型的には、本明細書に記載の機能を実行するようにソフトウェアでプログラムされた汎用コンピュータを含む。ソフトウェアは、例えばネットワークを介して電子形式でコンピュータにダウンロードされてもよく、あるいは、代替的又は追加的に、磁気メモリ、光学メモリ、又は電子メモリなどの非一時的な有形媒体に提供及び/又は格納されてもよい。
【0026】
システム10のこの構成は、本開示の実施例によって対処される特定の問題を示し、そのようなシステムの性能を向上させる際のこれらの実施例の応用を実証するために、例として示される。しかしながら、本開示の実施例は、この特定の種類の例示的なシステムに決して限定されるものではなく、本明細書に記載の原理は、他の種類の医療システムにも同様に適用されてもよい。例えば、OCTARAY(商標名)カテーテル又はフラットカテーテルなどの、他の多電極カテーテルタイプが使用されてもよい。
【0027】
心臓腔後壁の自動投影
上述のように、一例では、開示されるアルゴリズムは、左心房の解剖学的マップ上にROIを定義し、ROIは、左心房の内壁の一部分を含み、その一部分は、肺静脈の左右の口のうちの1つを含む。一般に、肺静脈口は、空間内である角度に配向され、その方向は、例えば肺静脈口のランディング面に対する法線などの、肺静脈口の開口部に対して定義される。プロセッサは、アプリケーションを使用して、肺静脈口の向きを、冠状軸(すなわち、x軸)にほぼ平行になるように回転させる。空間内でのこの回転の後、
図2A及び
図2Bの肺静脈口への入口平面は、矢状y-z平面内にある。
【0028】
図2A及び
図2Bは、本開示の一実施例による、それぞれ、右肺静脈口222の周囲及び左肺静脈口242の周囲の不完全アブレーション線201及び221に沿ったそれぞれのアブレーションタグ215及び225の概略図である。アブレーション線201及び221は、それぞれ、前方アブレーション線250a及び250b部分と、アブレーション線251及び252のまだ決定されていない後方部分とを備える。
【0029】
前方アブレーションタグ215及び225は、例えばリッジなどの、解剖学的目印に基づいて適用することがより容易である。開示されるアルゴリズムは、前方アブレーションタグ215及び225に対して、それぞれの後方アブレーションタグ225及び226を見出す。この目的のために、アルゴリズムは、例えば、GUI111を介して、前面203上のアブレーションタグと後面205上のそれぞれ必要とされるアブレーションタグとの間の所望の解剖学的距離(210、212)に対する、ユーザ主観的入力要求を受信する。
【0030】
前方アブレーションタグとそれぞれの後方アブレーションタグとの間で求められる前述の最小距離はまた、平面203及び205等の前方冠状面と後方冠状面との間で画定される。ガイドラインとして、システムは、24ミリメートルの、デフォルト最小距離を推奨してもよい。
【0031】
後方アブレーションタグを生成するために、アルゴリズムは、タグ位置と交差する前方側における各アブレーションタグについて、2つの平面(例えば、203及び205)どうしの間の最短距離を計算する。その距離は、ユーザによって入力された最小距離以上でなければならない。
【0032】
ユーザが構成した値に基づいて、前面203と後面205との間の距離210が短すぎる場合、アルゴリズムは、後方タグを生成せず、狭窄を回避するために、出力が欠如していることをユーザに示し得る。
【0033】
いくつかの例では、アルゴリズムは、アブレーションタグを補間して、完全な輪郭をなすことを提案する。補間は、例えば、アブレーション線の底部(271、281)などの、限定された領域において行われてもよく、そこでは、対応する後方タグは、上述の方法によって決定されてもよい。
【0034】
投影された後方アブレーションタグ及び/又はアブレーション線の視覚化
図3は、本開示の一実施例による、それぞれの前方アブレーションタグ350a及び350bから投影された後方アブレーションタグ351及び352が重ね合わされた、左心房301及び肺静脈の解剖学的マップ300である。
【0035】
マップは、典型的には、斜めの角度のアブレーション線を示し、空間における矢印310及び312は、投影のプロセスを例証するためにのみ示されるが、実際の投影は、
図2A及び
図2Bに説明されるように、回転済みの座標系において計算される。
【0036】
加えて、
図3に見られるアブレーションタグのうちのいくつかは、医師による手動タグ付けの結果であってもよく、一方、他のものは、上述のように、補間の結果であってもよい。
【0037】
心臓腔後壁のアブレーション線の自動投影の方法
図4は、本開示の一実施例による、前方アブレーションタグから、それぞれの後方アブレーションタグを、自動的に投影するための方法を概略的に例示するフローチャートである。アルゴリズムは、提示された例によれば、距離要件設定ステップ402において、医師24が、GUI111を介して前方アブレーションタグと後方アブレーションタグとの間の最小距離を入力することから始まるプロセスを実行する。
【0038】
次に、医師が、マッピング及びアブレーションシステムの同じGUI又は別のGUIを介して開始し得るアルゴリズムは、ROI選択ステップ404において、左心房の解剖学的マップ上のROIを選択する。そのROIは、左心房に関連する構造の内壁のマップ部分のものであり、右WACA及び/又は左WACAの前述の前方アブレーションタグを含まなければならない。
【0039】
プロセッサは、向き定義ステップ406において、アルゴリズムを使用して、選択されたROIの向きを定義するが、この向きは、通常、ROIに含まれる右/左の肺静脈口のランディング面に対して垂直である。しかしながら、解剖学的マッピングソフトウェアアプリケーションは、空間内で解剖学的マップ又はその一部の輪郭を描く(かつ、その後に回転させる)ための、他のツールを含んでいてもよい。
【0040】
ROI回転ステップ408において、プロセッサは、アルゴリズム(又は別のソフトウェアツール)を実行して、肺静脈口のランディング面が、
図2A及び
図2Bに見られる矢状y-z面に平行になるように(又は法線の向きが上記で定義された冠状x軸に平行になるように)ROIを回転させる。
【0041】
アブレーションタグ投影ステップ410において、プロセッサは、既存の前方アブレーションタグの後方アブレーションタグ対応物を、それがどこに存在していたとしても、発見する。この目的のために、プロセッサは、矢状y軸に沿って前方タグを投影し、ステップ402で必要とされる少なくとも最小距離だけ離れた、標的となる壁組織を見つける。
【0042】
最後に、提示ステップ412において、プロセッサは、
図3に見られるように、計画された後方アブレーション線を含むWACA曲線と重ね合わされた、結果として得られる解剖学的マップを提示する。
【0043】
図4に示されるフローチャートは、単に概念を明確にする目的で選択されたものである。本技法の他の実施例は、座標系の回転を使用する代わりに、前方タグからの最小半径を使用して、それぞれの後方タグを見出す等、異なるアルゴリズムステップを含んでもよい。可能なステップ、例えばグラフィクスに関わるステップは、より単純化されたフローチャートを提供するために、本明細書における開示内容から意図的に省略されている。
【実施例0044】
(実施例1)
方法は、患者の心臓(12)の心腔の内壁上の部分的輪郭(250a、250b)をカバーするアブレーション曲線(250a、250b)に沿った複数のタグ(215、216)を受信することを含む。タグ(215、216)を使用して、アブレーション曲線(201、221)における伝導ギャップを排除するためにアブレーション曲線(250a、250b)を内壁の全輪郭(201、221)にわたって完成させる。
【0045】
(実施例2)
アブレーション曲線(201、221)を完成させることは、既存のタグ(215、216)に対して、新しいタグ(225、226)位置を、新しいタグ(225、226)と既存のタグ(215、216)との間に必要とされる最小距離を満たしながら計算することを含む、実施例1に記載の方法。
【0046】
(実施例3)
新しいタグ(225、226)を計算することは、内壁の解剖学的マップ上に関心領域(ROI)を定義することと、空間内のROIの方向が座標系の既定の軸に沿うようにROIを回転させることと、所定の軸に直交する軸に沿って、既存のタグ(215、216)と新しいタグ(225、226)との間の距離(210、212)を計算することと、を含む、実施例1及び2のいずれかに記載の方法。
【0047】
(実施例4)
ROIは、左心房関連構造の内壁のマップ(300)部分を含み、その部分は、肺静脈の左口又は右口(222、242)のうちの1つを含み、方向は、口開口部に対して定義され、所定の軸は、冠状面及び軸面の断面であり、距離(210、212)は、前方冠状面(203)と後方冠状面(205)との間で計算される、実施例1~3のいずれかに記載の方法。
【0048】
(実施例5)
心腔の解剖学的マップ(300)上に、新しいタグ(225、226)を重ねることを含む、実施例1及び2のいずれかに記載の方法。
【0049】
(実施例6)
アブレーション曲線(201、221)の部分的輪郭は、左心房の内壁の前方部分(250a、250b)をカバーし、アブレーション曲線を完成させることは、左心房の内壁の後方部分にわたるアブレーション曲線の残りの部分(251、252)を計算することを含む、実施例1及び2のいずれかに記載の方法。
【0050】
(実施例7)
全輪郭が、上下左肺静脈及び上下右肺静脈の対のうちの少なくとも一方を取り囲む、実施例1~6のいずれかに記載の方法。
【0051】
(実施例8)
アブレーション曲線(250a、250b)を完成させることは、広域輪郭アブレーション(WACA)曲線を生成することを含む、実施例1に記載の方法。
【0052】
(実施例9)
システムは、ユーザインターフェース(111)と、プロセッサ(56)と、を含む。ユーザインターフェース(111)は、患者の心臓の心腔の内壁上の部分的輪郭(250a、250b)をカバーするアブレーション曲線(250a、250b)に沿った複数のタグ(215、216)を受信するように構成されている。プロセッサ(56)は、タグ(215、216)を使用して、アブレーション曲線(201、221)における伝導ギャップを排除するためにアブレーション曲線を内壁の全輪郭(201、221)にわたって完成させるように構成されている。
【0053】
本明細書に記載の実施例は、主に心臓診断用途に対処するものであるが、本明細書に記載の方法及びシステムは、他の医療用途にも使用することができる。
【0054】
上に記載される実施例は例として挙げたものであり、本開示は本明細書の上記で特に図示及び記載されるものに限定されない点が理解されよう。むしろ、本開示の範囲は、本明細書の上記した様々な特徴の組み合わせ及び部分的組み合わせの両方、並びに前述の記載を読むと当業者に着想されるであろう、先行技術に開示されていないその変形及び修正を含む。
【0055】
〔実施の態様〕
(1) 患者の心臓の心腔の内壁上の部分的輪郭をカバーするアブレーション曲線に沿った複数のタグを受信することと、
前記タグを使用して、前記アブレーション曲線における伝導ギャップを排除するために前記アブレーション曲線を前記内壁の全輪郭にわたって完成させることと、
を含む方法。
(2) 前記アブレーション曲線を完成させることは、既存のタグに対して、新しいタグ位置を、前記新しいタグと前記既存のタグとの間に必要とされる最小距離を満たしながら計算することを含む、実施態様1に記載の方法。
(3) 前記新しいタグを計算することは、前記内壁の解剖学的マップ上に関心領域(ROI)を定義することと、空間内の前記ROIの方向が座標系の所定の軸に沿うように前記ROIを回転させることと、前記所定の軸に直交する軸に沿って、前記既存のタグと前記新しいタグとの間の距離を計算することと、を含む、実施態様2に記載の方法。
(4) 前記ROIは、左心房関連構造の前記内壁のマップ部分を含み、前記部分は、肺静脈の左口又は右口のうちの1つを含み、前記方向は、口の開口部に対して定義され、前記所定の軸は、冠状面及び軸面の断面であり、前記距離は、前方冠状面と後方冠状面との間で計算される、実施態様3に記載の方法。
(5) 前記心腔の解剖学的マップ上に、前記新しいタグを重ねることを含む、実施態様2に記載の方法。
【0056】
(6) 前記アブレーション曲線の前記部分的輪郭は、左心房の前記内壁の前方部分をカバーし、前記アブレーション曲線を完成させることは、前記左心房の前記内壁の後方部分にわたる前記アブレーション曲線の残りの部分を計算することを含む、実施態様1に記載の方法。
(7) 前記全輪郭が、上下左肺静脈及び上下右肺静脈の前記対のうちの少なくとも一方を取り囲む、実施態様6に記載の方法。
(8) 前記アブレーション曲線を完成させることは、広域輪郭アブレーション(Wide Area Circumferential Ablation)(WACA)曲線を生成することを含む、実施態様1に記載の方法。
(9) システムであって、
患者の心臓の心腔の内壁上の部分的輪郭をカバーするアブレーション曲線に沿った複数のタグを受信するように構成されたユーザインターフェースと、
前記タグを使用して、前記アブレーション曲線における伝導ギャップを排除するために前記アブレーション曲線を前記内壁の全輪郭にわたって完成させるように構成されたプロセッサと、
を含む、システム。
(10) 前記アブレーション曲線を完成させることは、既存のタグに対して、新しいタグ位置を、前記新しいタグと前記既存のタグとの間に必要とされる最小距離を満たしながら計算することを含む、実施態様9に記載のシステム。
【0057】
(11) 前記プロセッサは、前記内壁の解剖学的マップ上に関心領域(ROI)を定義し、空間内の前記ROIの方向が座標系の所定の軸に沿うように、前記ROIを回転させ、前記所定の軸に直交する軸に沿って、前記既存のタグと前記新しいタグとの間の距離を計算することによって、前記新しいタグを計算するように構成されている、実施態様10に記載のシステム。
(12) 前記ROIは、左心房関連構造の前記内壁のマップ部分を含み、前記部分は、肺静脈の左口又は右口のうちの1つを含み、前記方向は、口の開口部に対して定義され、前記所定の軸は、冠状面及び軸面の断面であり、前記距離は、前方冠状面と後方冠状面との間で計算される、実施態様11に記載のシステム。
(13) 前記プロセッサが、前記心腔の解剖学的マップ上に前記新しいタグを重ねるように更に構成されている、実施態様10に記載のシステム。
(14) 前記アブレーション曲線の前記部分的輪郭は、左心房の前記内壁の前方部分をカバーし、前記アブレーション曲線を完成させることは、前記左心房の前記内壁の後方部分にわたる前記アブレーション曲線の残りの部分を計算することを含む、実施態様9に記載のシステム。
(15) 前記全輪郭が、上下左肺静脈及び上下右肺静脈の前記対のうちの少なくとも一方を取り囲む、実施態様14に記載のシステム。
【0058】
(16) 前記プロセッサが、広域輪郭アブレーション(WACA)曲線を生成することによって前記アブレーション曲線を完成させるように構成されている、実施態様9に記載のシステム。