(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173799
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】ライダセンサによって取得された点から物体の寸法を推定する方法
(51)【国際特許分類】
G01S 17/89 20200101AFI20241205BHJP
G01S 17/931 20200101ALI20241205BHJP
【FI】
G01S17/89
G01S17/931
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024087975
(22)【出願日】2024-05-30
(31)【優先権主張番号】2305420
(32)【優先日】2023-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(71)【出願人】
【識別番号】522400548
【氏名又は名称】コンチネンタル オートノマス モビリティー ジャーマニー ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Continental Autonomous Mobility Germany GmbH
【住所又は居所原語表記】Ringlerstrasse 17, 85057 Ingolstadt, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ハリソン スポーテス
(72)【発明者】
【氏名】ボリス ル-ジェズ
【テーマコード(参考)】
5J084
【Fターム(参考)】
5J084AA04
5J084AA05
5J084AA13
5J084AC02
5J084AD03
5J084EA22
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ライダセンサによって取得された点から物体の寸法を推定する方法を提供する。
【解決手段】例は、物体の反射面に属する少なくとも1つの寸法に関する方法(100)であって、ライダが点の集合を取得すること(110)と、同じ物体の点のグループから光ビームを選択すること(120)と、点の3次元座標から、物体の第一及び第二の寸法の値を推定すること(130)と、点の強度値から、物体の反射率値を推定すること(140)と、その後、グループ内の少なくとも1つの特定の点について、光ビームの断面を推定すること(150)と、ビームが放射された後にライダセンサによって受け取られた理論強度値を推定すること(160)と、特定の点に関連付けられる強度誤差を、推定理論強度と測定強度との間の差から特定すること(170)と、第一の寸法の値の推定を強度誤差に基づいて補正すること(180)とを含む方法(100)を提示する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体の反射面(Sr)に属する少なくとも1つの寸法を推定する方法であって、少なくとも1つのライダセンサ(10)と、コンピュータ(11)と、メモリ(12)とを含む機器(1)によって実行され、前記メモリ(12)は、前記物体の前記反射面の第一の寸法及び第二の寸法並びに前記物体の前記反射面の反射率を含む前記物体のモデルを記憶し、前記方法は、
- 前記ライダセンサ(10)が点の集合を取得すること(110)であって、各点は、空間における3次元座標及び強度値に関連付けられる、取得すること(110)と、
- 前記点の集合から、前記同じ物体に属すると推測される点のグループを選択すること(120)と、
- 前記点のグループ内の前記点の前記3次元座標から、前記物体の前記モデルの前記反射面(Sr)のそれぞれ前記第一の寸法及び前記第二の寸法に対応する前記物体の第一及び第二の寸法の値を推定すること(130)と、
- 前記物体に属すると推測される前記点のグループの前記強度値から、前記物体の前記モデルの前記反射面の前記反射率に対応する前記物体の反射率値を推定すること(140)と、その後、
前記物体に属すると推測される前記点のグループ内の少なくとも1つの特定の点について、
・特定の光ビームであって、前記物体の前記反射面(Sr)によるその反射が前記特定の点の取得を可能にした特定の光ビームの断面を、前記物体の前記反射面の前記推定寸法及び前記特定の点と前記ライダセンサとの間の距離から特定される前記光ビームの発散から推定すること(150)と、
・前記特定の光ビームが放射された後に前記ライダセンサ(10)によって受け取られた理論強度値を、前記特定の光ビームの前記推定断面及び前記反射面の前記推定反射率値から推定すること(160)と、
・前記特定の点に関連付けられる強度誤差を、前記推定理論強度値と、前記特定の光ビームが放射された後の前記特定の点に関連付けられる測定強度値との間の差から特定すること(170)と、
- 前記第一の寸法の前記値の前記推定を、少なくとも1つの特定の点に関連付けられる前記強度誤差に基づいて補正すること(180)と
を含む、方法。
【請求項2】
前記第一の寸法の前記値の前記推定を、少なくとも1つの特定の点に関連付けられる前記強度誤差に基づいて補正することは、少なくとも1つの特定の点に関連付けられる前記強度誤差から計算される費用関数の誤差を、前記第一の寸法の前記値を繰り返し変更することによって最小化することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
- 前記第二の寸法の前記値の前記推定を、少なくとも1つの特定の点に関連付けられる前記強度誤差から補正すること(181)
をさらに含み、前記補正は、少なくとも1つの特定の点に関連付けられる前記強度誤差から計算される費用関数の誤差を、前記第二の寸法の前記値を繰り返し変更することによって最小化することを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
- 前記反射率の前記値の前記推定を、少なくとも1つの特定の点に関連付けられる前記強度誤差に基づいて補正すること(182)
をさらに含み、前記補正は、少なくとも1つの特定の点に関連付けられる前記強度誤差から計算される費用関数の誤差を、前記反射率の前記値を繰り返し変更することによって最小化することを含む、請求項1~3の何れか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記費用関数の前記誤差は、前記強度誤差が特定された前記特定の点の前記強度誤差の合計に対応する、請求項2~4の何れか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記物体の前記モデルの前記第一の寸法は、前記物体の前記反射面(Sr)の高さ(h)に対応し、前記物体の前記モデルの前記第二の寸法は、前記物体の前記反射面の幅(L)に対応する、請求項1~5の何れか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記特定の光ビームが放射された後に前記ライダセンサによって受け取られた前記理論強度値は、前記ライダセンサによって放射された光ビームが表面上で反射された後に前記ライダによって受け取られた強度を特徴付ける、
a)前記表面と前記ライダセンサとの間の距離、
b)前記表面の反射率、及び
c)前記表面上で反射された前記光ビームの断面
に応じた関数から推定される、請求項1~6の何れか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記複数の点は、前記ライダセンサ(10)の新たな取得によって増強され、及び前記方法は、前記増強された複数の点から繰り返し実行される、請求項1~7の何れか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記機器が搭載されている車両(2)の軌道を、前記第一の寸法の前記値の前記補正された推定から特定することをさらに含む、請求項1~8の何れか一項に記載の方法。
【請求項10】
少なくとも1つのライダセンサ(10)と、コンピュータ(11)と、メモリ(12)とを含む機器(1)であって、請求項1~9の何れか一項に記載の方法を実行するように構成される機器(1)。
【請求項11】
請求項10に記載の機器(1)が搭載されている車両(2)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ライダセンサによって取得されたデータを処理する分野に関する。
【背景技術】
【0002】
ライダ(光検出測距)センサは、光波を放射し、且つこれらの光波の反射から、ライダの環境を表すドットマトリクスを特定するセンサである。
【0003】
ライダセンサは、その環境内の物体の測定を、ライダセンサの環境を表す点群を取得することによって実行するために使用され得、この物体は、点群内の複数の点によって表される。特に、ライダセンサが車両に搭載されている場合、これは、例えば、道路上にある物体を検出するために使用され得る。運転支援機能、特に自動運転機能に関して、道路上にある物体を検出し、その寸法を特定することにより、車両がそれに応じて反応することが可能になる。特に、それが小さい物体であるとき、この物体の正確な寸法により、車両が衝突するリスクなしに物体の上を通過できるか否かを特定することができる。
【0004】
しかしながら、物体、より詳細には車両から数十メートル先にある小さい物体の寸法を特定することは、ライダセンサの解像度によって限定され、そのため、物体の寸法の推定は、実際より小さいか又は大きいことがあり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、この状況を改善しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
これに関して、物体の反射面に属する少なくとも1つの寸法を推定する方法が提案され、この方法は、少なくとも1つのライダセンサと、コンピュータと、メモリとを含む機器によって実行され、メモリは、物体の反射面の第一の寸法及び第二の寸法並びに物体の反射面の反射率を含む物体のモデルを記憶し、この方法は、
- ライダセンサが点の集合を取得することであって、各点は、空間における3次元座標及び強度値に関連付けられる、取得することと、
- 点の集合から、同じ物体に属すると推測される点のグループを選択することと、
- 点のグループ内の点の3次元座標から、物体のモデルの反射面のそれぞれ第一の寸法及び第二の寸法に対応する物体の第一及び第二の寸法の値を推定することと、
- 物体に属すると推測される点のグループの強度値から、物体のモデルの反射面の反射率に対応する物体の反射率値を推定することと、その後、
物体に属すると推測される点のグループ内の少なくとも1つの特定の点について、
・特定の光ビームであって、物体の反射面によるその反射が特定の点の取得を可能にした特定の光ビームの断面を、物体の反射面の推定寸法及び特定の点とライダセンサとの間の距離から特定される光ビームの発散から推定することと、
・特定の光ビームが放射された後にライダセンサによって受け取られた理論強度値を、特定の光ビームの推定断面及び反射面の推定反射率値から推定することと、
・特定の点に関連付けられる強度誤差を、推定理論強度値と、特定の光ビームが放射された後の特定の点に関連付けられる測定強度値との間の差から特定することと、
- 第一の寸法の値の推定を、少なくとも1つの特定の点に関連付けられる強度誤差に基づいて補正することと
を含む。
【0007】
任意選択的に、第一の寸法の値の推定を、少なくとも1つの特定の点に関連付けられる強度誤差に基づいて補正することは、少なくとも1つの特定の点に関連付けられる強度誤差から計算される費用関数の誤差を、第一の寸法の値を繰り返し変更することによって最小化することを含む。
【0008】
任意選択的に、方法は、第二の寸法の値の推定を、少なくとも1つの特定の点に関連付けられる強度誤差に基づいて補正することをさらに含み、補正は、少なくとも1つの特定の点に関連付けられる強度誤差から計算される費用関数の誤差を、第二の寸法の値を繰り返し変更することによって最小化することを含む。
【0009】
任意選択的に、方法は、反射率の値の推定を、少なくとも1つの特定の点に関連付けられる強度誤差から補正することをさらに含み、補正は、少なくとも1つの特定の点に関連付けられる強度誤差に基づいて計算される費用関数の誤差を、反射率の値を繰り返し変更することによって最小化することを含む。
【0010】
任意選択的に、費用関数は、強度誤差が特定された特定の点の強度誤差の合計に対応する。
【0011】
任意選択的に、物体のモデルの第一の寸法は、物体の反射面の高さに対応し、及び物体のモデルの第二の寸法は、物体の反射面の幅に対応する。
【0012】
任意選択的に、特定の光ビームが放射された後にライダセンサによって受け取られた理論強度値は、ライダセンサによって放射された光ビームが表面上で反射された後にライダによって受け取られた強度を特徴付ける、
a)この表面とライダセンサとの間の距離、
b)この表面の反射率、及び
c)この表面上で反射された光ビームの断面
に応じた関数から推定される。
【0013】
任意選択的に、複数の点は、ライダセンサの新たな取得によって増強され、及び方法は、増強された複数の点から繰り返し実行される。
【0014】
任意選択的に、方法は、機器が搭載されている車両の軌道を、第一の寸法の値の補正された推定から特定することをさらに含む。
【0015】
本願は、少なくとも1つのライダセンサと、コンピュータと、メモリとを含む機器にも関し、この機器は、本開示によって提示される方法の何れか1つを実行するように構成される。特に、機器は、車両に搭載され得る。
【0016】
本願は、コンピュータプログラム製品にさらに関し、これは、このプログラムがプロセッサによって実行されると、本開示によって提示される方法の何れか1つを実行するための命令を含む。
【0017】
最後に、本願は、プログラムであって、このプログラムがプロセッサによって実行されると、本開示によって提示される方法の何れか1つを実行するプログラムがその上に記憶されるコンピュータ可読非一時的記憶媒体に関する。
【0018】
本開示による方法により、このように、ライダセンサによって検知された物体の反射面の少なくとも1辺の長さを正確に、特に物体に属すると推測される点の3次元座標のみに基づく、これらの寸法の推定がライダセンサの解像度から実際より小さすぎるか又は大きすぎることがあり得る従来の推定より正確に推定することが可能になる。特定の選択において、方法は、物体の反射面の2辺の長さ(幅L及び高さh)を推定するものとされる。物体の反射面の寸法のこれらの推定は、特に物体の正確な寸法に合わせて調整される車両の軌道を特定するために使用され得、これにより物体の実際より小さく推定された寸法に基づいて特定された車両の軌道が車両及び道路利用者の安全を損ない得る状況を回避することが可能になり得る。
【0019】
他の特徴、詳細及び利点は、以下の詳細な説明を読み、添付図面を分析することによって明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】物体の反射面に属する寸法を推定する方法の実行を可能にする機器を概略的に示す。
【
図3】物体の反射面に属する少なくとも1つの寸法を推定する方法の例を示す。
【
図4】ライダセンサによって放射され、物体の反射面によって反射された光ビームの断面の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
ここで、物体の反射面に属する寸法を推定する方法の実行を可能にする機器1の例を、
図1を参照して説明する。
【0022】
機器1は、車両2に搭載されるように適合され得る。
【0023】
機器1は、ライダ(光検出測距)センサ10と、コンピュータ11と、メモリ12とを含む。
【0024】
メモリ12は、コンピュータ11によって実行され、ライダセンサ10によるデータ取得及びその処理を制御することを可能にするコード命令を記憶し得る。したがって、コンピュータ11は、メモリに記憶された情報にアクセスすることができる。メモリ12は、ライダセンサ10が取得したデータを記憶するようにも適合され得る。
【0025】
メモリ12は、例えば、ROM(読出し専用メモリ)、RAM(ランダムアクセスメモリ)、EEPROM(電気的消去可能プログラマブル読出し専用メモリ)又は他のあらゆる種類の適応記憶媒体を含み得る。メモリは、例えば、光、電子又は実際に磁気記憶メモリを含み得る。
【0026】
ライダセンサ10は、車両2の環境、特に車両の前方の環境を表す3次元点群(x,y,z)を取得するように適合される。ライダセンサ10は、そのため、車両の前方の環境を表す、すなわち
図2の矢印dによって表される進行方向に光ビームを放射するような向きにされ得る。ライダセンサ10は、例えば、車両2の車体前方に搭載され得る。
【0027】
3次元座標が関係する限り、ある点のx座標は、センサ10に関するその点の横座標に対応する。ある点のy座標は、センサ10に関するその点の縦座標に対応する。ある点のz座標は、ライダセンサ10に関するその点の高さ座標に対応する。
図2では、車両2及びライダセンサ10の輪郭が平面図で描かれているものとして、ライダセンサ10の横軸X及び縦軸Yが示されている。センサ10の高さ軸Zは、軸X及びYに垂直である。この
図2では、ライダセンサ10は、したがって、車両の前方に搭載され、光ビームを車両の進行方向に放射するように向けられる。
【0028】
ライダセンサ10によって取得された各点は、強度値にも関連付けられる。これは、光ビームが表面上で反射された後にライダセンサによって受け取られた強度である。
【0029】
ここで、本開示による機器1が実行するように構成される方法100の例が
図3を参照して提示される。特に、機器1は、物体の反射面に属する少なくとも1つの寸法を推定する方法を実行するように構成される。物体の反射面は、ライダセンサ10によって放射された光ビームを反射した物体の表面に対応する。この表面の寸法は、この例では、この表面の高さ又は幅を示す。したがって、これは、この表面の少なくとも1辺の長さを正確に、特に物体に属すると推測される点の3次元座標のみに基づく従来の推定より正確に推定することである。実際、このような推定は、特にライダセンサ10の解像度によって限定され、そのため、ライダセンサから遠くにある物体について、物体の大きさに関する物体の寸法推定における誤り率が高い場合がある。
【0030】
この推定を可能にするために、メモリ12は、物体の反射面の第一の寸法、例えば高さhと、第二の寸法、例えば幅Lとを含む物体のモデルを記憶する。物体のモデルは、物体の反射面の反射率も含む。したがって、物体のモデルは、3つのパラメータ、すなわち物体の反射面の第一及び第二の寸法並びに物体の反射面の反射率を含む。反射率は、物体の反射面の大体の反射性質を光に変換する、したがって物体の反射面の大体の反射性質を、ライダセンサ10によって放射された光ビームに変換するデータである。方法の目的の1つは、物体の反射面に関する正確な値を、本明細書において以下で展開されるモデルのパラメータの値の推定によって特定することである。
【0031】
この場合、方法100は、ライダセンサ10によって放射された光ビームがその伝播中に発散することに基づく。したがって、それは、それが反射される表面(以下では反射面と呼ぶ)に当たる瞬間に1点に集中しない。これは、現実には、反射面に当たる光ビームの断面の場合である。この断面は、ビーム全体が反射面によって反射されるとき、全体として楕円形を有する。加えて、この断面は、ビームの全体が反射面によって反射される限り、反射面がライダセンサ10から遠いほど大きくなり、なぜなら、光ビームは、それがライダセンサ10から遠ざかるにつれてさらに発散するためである。その結果、物体の反射面によって反射され、ライダセンサ10によって検知される光ビームの強度は、物体の反射面によって実際に反射された光ビームの断面に依存する。特に、ある距離において物体の反射面の縁部で取得された点における放射された光ビームの反射断面は、この表面に当たる光ビームの完全な理論断面に対応せず、これは、具体的には、光ビームの相補的な断面が反射面によって反射されないことを意味する。この状況は、特に
図4に示され、この図は、反射面Sr及び5つの光ビームF1~F5を示し、光ビームの3つは、反射面Srによって全体が反射され(すなわち光ビームF2、F3、F4)、2つは、この表面Srによって部分的に反射される(すなわち光ビームF1及びF5)。この場合、ライダセンサ10によって測定される強度は、反射面Srの全体が同じ反射率を有すると仮定すれば、点F1及びF5の方が点F2~F4より低くなる。後に説明するように、方法100は、物体の反射面Srに関連付けられる点に関する強度情報を良好に使用して、3次元座標から行われたこの反射面Srの少なくとも1つの寸法の第一の推定を補正する。このようにして、ライダセンサ10によって検知された物体の反射面Srの寸法は、もはやこの物体に属する点の3次元座標のみからではなく、これらの点に関連付けられる強度からも、この強度と、反射面Sr上のこれらの点に関連付けられる光ビームの反射断面との相関を使用することによって推定されることになる。その結果、方法100により、その寸法の推定の精度がライダセンサ10の解像度によって限定される物体による衝突回数を減らすことができる。特に、自動運転機能に関して、車両は、物体、例えばタイヤがその前方の路上にあるとき、その軌道を変更され得る。この場合、物体の幅及び高さを正確に特定することは、それが物体を迂回するか、又は物体の高さから可能であれば単に物体を車両の車輪でまたいで通過するかにかかわらず、車用の軌道を特定するうえで極めて重要である。これは、車両が高速走行中及び決定を直ちに下す必要がある場合に特に有利である。ライダセンサによって検出された物体の寸法が実際より小さい場合に下されないであろう車両の緊急ブレーキ又は急ハンドル等の決定は、本開示による方法によって提案されるように、より正確な推定によって最も適切な決定を下すことが可能になる測定の限り、安全上の問題を生じさせることがわかる。
【0032】
方法100は、そのため、
図3によって示されるように、ライダセンサ10が点の集合を取得する動作110を含む。ライダセンサ10によって取得される各点は、空間内の3次元座標(x,y,z)及び強度値に関連付けられる。
【0033】
方法100は、
図3によって示されるように、ライダセンサ10によって取得された点の集合から、同じ物体に属すると推測される点のグループを選択する動作120を含む。
【0034】
幾つかの例では、点のグループは、最寄りの隣接点の基準に基づいて選択される(120)。換言すれば、点のグループの選択120は、そこからこの最寄りの隣接点までの距離が所定の距離閾値より小さい点の集合を選択することを含み得る。
【0035】
当然のことながら、方法100は、点の複数のグループがそれぞれ同じ物体に属すると推測されると特定され得る場合、点の複数のグループを選択することを含み得る。方法100の以下の動作は、したがって、動作120の終了時に特定された点のグループの各々について実行され得る。
【0036】
方法100は、
図3に示されるように、物体の第一の寸法及び第二の寸法の値を推定する動作130を含む。物体の第一の寸法及び第二の寸法は、物体のモデルの反射面のそれぞれ第一の寸法及び第二の寸法に対応する。これらの値は、動作120の終了時に選択された点のグループ内の点の3次元座標から推定される。
【0037】
幾つかの例では、第一及び第二の寸法の値は、点のグループ内における、横(x)軸及び高さ(z)軸上の最も極端な座標を有する点から推定され得る。特に、幾つかの例では、第一の寸法の値は、これが物体の反射面Srの高さである場合、点のグループ内のある点に関連付けられる最も高さ値と、点のグループ内のある点に関連付けられる最も低い高さ値との間の差に対応し得る。幾つかの例では、第一の寸法の値は、これが物体の反射面Srの幅である場合、点のグループ内のある点に関連付けられる最も高い横軸値と、点のグループ内のある点に関連付けられる最も低い高さ値との間の差に対応し得る。そのため、動作130により、ライダセンサ10によって検出された物体の反射面の寸法の第一の推定を、その物体に属すると推測される点のグループ内の点の3次元座標から取得することが可能になる。
【0038】
方法100は、
図3に示されるように、物体の反射率値を推定する動作140を含む。物体の反射率値は、物体のモデルの反射面の反射率に対応する。物体のこの反射率値は、物体に属すると推測される点のグループ内の点の強度から推定される。幾つかの例では、点の集合内のある点の反射率は、その点とライダセンサとの間の距離、それによりその点を取得することが可能になった光ビームの強度及びこのビームが反射された後にライダセンサによって受け取られた強度から特定され得る。そのため、幾つかの例では、物体の反射率は、物体に属すると推測される点のグループ内の点の反射率の平均に対応すると特定され得る。他の例では、物体の反射率は、点のグループに属する点の選択されたものの反射率値の平均に対応すると特定され得る。これは、これらの他の例では、物体の反射率を特定するために少数の点を、例えばその強度値が明らかに間違っている点を除くことによって選択することである。したがって、この動作では、物体の反射面は、実質的に均一な反射率を有すると仮定される。
【0039】
動作140後、幾つかの動作が点のグループ内の少なくとも1つの特定の点について実行される。これらの動作は、有利には、物体に属すると推測される点のグループ内の各点について実行される。
【0040】
方法100は、
図3に示されるように、特定の光ビームであって、物体の反射面によるその反射が特定の点の取得を可能にした特定の光ビームの断面を推定する動作150を含む。したがって、これは、この動作において、実際に光ビームによって反射された光ビームの断面を推定する場合である。前述のように、ライダセンサ10によって取得され、物体の反射面Srの中央にある点に対応する点に関連付けられる断面は、ライダセンサ10によって放射された光ビームの断面全体に対応することがわかる。反対に、ライダセンサ10によって取得され、物体の反射面Srの端にある点に対応する他の点に関連付けられる断面は、ライダセンサ10によって放射された光ビームの断面全体より小さい断面に対応する。これらは、
図4に関して上記で説明した状況である。
【0041】
幾つかの例では、特定の光ビームであって、物体の反射面によるその反射が特定の点の取得を可能にした特定の光ビームの断面は、物体の反射面の推定寸法及び特定の点とライダセンサとの間の距離から特定される光ビームの発散から推定される。実際に、ライダセンサ10によって放射された光ビームの発散は、距離と共に増大する。その結果、ライダセンサの向き及び特定の点がある、ライダセンサ10に関する距離がこの3次元座標を用いてわかり、この距離における光ビームの理論断面を特定することができる。したがって、この断面の物体反射面Srへの投射は、特定の光ビームの向き及び動作130中に推定されたこの反射面Srの寸法がわかれば特定することができる。特定の点とライダセンサ10との間の距離は、特定の点とライダセンサ10との間のユークリッド距離に対応する。
【0042】
方法100は、
図3に示されるように、特定のビームが放射された後にライダセンサによって受け取られた理論強度値を、特定の光ビームの推定断面及び反射面の推定反射率値から推定する動作160を含む。これは、このステップにおいて、光ビームが物体の反射面Sr上で反射された後にライダセンサ10によって受け取られたはずの理論強度を、動作150中に推定された、この表面上で反射された光ビームの断面及び動作140中に推定された、この表面の反射率に関して特定する場合である。
【0043】
そのため、特定の点について推定された強度が、特定の点についてライダセンサ10によって実際の測定された強度に対応しない場合、反射面によって反射されたと推定される光ビームの断面は、誤差を含み、それは、理論強度が計算されたのがこの断面からであるためである。ここで、光ビームの断面自体が反射面の寸法から推定され、そのため、正しくないのは、反射面からのこれらの推定寸法である。そのため、理論強度値を、特定の点についてライダセンサ10によって実際に測定された強度値と比較することにより、この方法は、動作130中に推定された反射面の寸法の精度に関する情報を取得することを可能にする。
【0044】
幾つかの例では、特定の光ビームが放射された後にライダセンサによって受け取られた理論強度値は、ライダセンサによって放射された光ビームが表面上で反射された後にライダセンサによって受け取られた強度を特徴付ける、
a)この表面とライダセンサとの間の距離、
b)表面の反射率、及び
c)この表面によって反射された光ビームの断面
に応じた関数から推定される。
【0045】
この関数は、例えば、1つ又は複数のライダセンサの取得、有利にはライダセンサ10の取得から、物体の反射面の反射率、ライダセンサに関するそれらの位置及びこれらの物体の反射面によって反射された光ビームの断面を変えることによって経験的に特定され得る。
【0046】
そのため、特定の点とライダセンサとの間の距離、動作140中に推定された物体の反射面の反射率及び動作150上に特定された、光ビームであって、物体の反射面によるその反射が特定の点の取得を可能にした光ビームの断面とのこの関数の様々なパラメータを使用することにより、この関数は、動作160のための理論強度値を計算することを可能にする。
【0047】
方法100は、
図3に示されるように、特定の点に関連付けられる強度誤差を特定する動作170を含む。特定の点に関連付けられる強度誤差は、動作160中に推定された理論強度値と、特定の光ビームが放射された後にライダセンサ10によって実際に測定され、特定の点に関連付けられる強度値との間の差から得られる。前述のように、この強度誤差は、物体の反射面Srの寸法の推定における誤差となる。
【0048】
したがって、動作140、150、160及び170は、少なくとも1つの特定の点について、有利には物体に属すると推測される点のグループ内の各点について実行される。その結果、動作170の終了時、特定の点に関連付けられる少なくとも1つの強度誤差が計算されている。
【0049】
方法は、その後、
図3に示されるように、第一の寸法の値の推定を、少なくとも1つの特定の点に関連付けられる強度誤差に基づいて補正する動作180を含む。
【0050】
幾つかの例では、第一の寸法の値の推定を補正する動作180は、第一の寸法の値の推定を補正して、少なくとも1つの強度誤差を減少させることを含む。
【0051】
第一の例では、第一の寸法の値の推定を、少なくとも1つの特定の点に関連付けられる強度誤差から補正する動作180は、少なくとも1つの特定の点に関連付けられる強度誤差から計算される費用関数の誤差を、第一の寸法の値を繰り返し変更することによって最小化することを含み得る。これらの第一の例では、費用関数は、物体のモデルの第一の寸法の値に応じて最小化される誤差を表す。
【0052】
第一の例と相補的な第二の例では、方法は、第二の寸法の値の推定を、少なくとも1つの特定の点に関連付けられる強度誤差から計算される費用関数の誤差を、第二の寸法の値を繰り返し変更することによって最小化することに基づいて補正する動作181を含み得る。これらの第二の例では、費用関数は、物体のモデルの第一の寸法及び第二の寸法の値に応じて最小化される誤差を表す。
【0053】
第一の例及び場合により第二の例と相補的な第三の例では、方法は、反射率後の推定を、少なくとも1つの特定の点に関連付けられる強度誤差から計算される費用関数の誤差を、反射率の値を繰り返し変更することによって最小化することに基づいて補正する動作182を含み得る。これらの第三の例では、費用関数は、物体のモデルの第一の寸法の値及び反射率の値に応じて最小化される誤差を表す。これらの第三の例が第二の例に加えて実行される場合、費用関数は、第一の寸法の値、第二の寸法の値及び物体のモデルの反射率の値に応じて最小化される誤差を表す。
【0054】
物体のモデルのパラメータを繰り返し変更することは、所与の反復でこの物体の値を選択し、モデルのパラメータのこの新しい値を考慮して動作140~170を再び実行することであると理解すべきである。
【0055】
第一並びに場合により第二及び/又は第三の例では、費用関数の最小化される誤差は、動作170中にそれに関する強度誤差が特定された特定の点に関連付けられる強度誤差の合計に対応し得る。
【0056】
そのため、第一の寸法の値を繰り返し変更することにより、任意選択的に第二の寸法の値及び/又は物体のモデルの反射率の値を繰り返し変更し、且つ各反復で動作140~170を再び実行することにより、最適化アルゴリズムを用いて、動作170の終了時に特定された少なくとも1つの強度誤差から特定された費用関数の誤差を最小化することが可能になる。したがって、第一の寸法並びに任意選択的に第二の寸法及び反射率の値を繰り返し変更することによって費用関数の誤差を最小化することは、点のグループ内の特定の点の実際の強度と、動作170の終了時に特定されたそれらの理論強度との間の差の合計を最小化する新しい値を特定することを意味する。これは、物体に属すると推測される点のグループ内の特定の点に関連付けられ、動作150中に推定された光ビームの断面が、これらの点を取得するために物体の反射面によって実際に反射された光ビームの断面により近いと考えることになる。ここで、この断面は、物体の反射面の寸法が特定され、それにより費用関数の誤差が小さくなると、これは、反射面の寸法が、それらが物体に属すると推測される点のグループ内の点の3次元座標のみから推定された場合より反射面の実際の寸法に近いことを意味する。したがって、方法100により、第一の寸法の値並びに場合により第二の寸法及び/又は反射面の反射率の値を、点の3次元座標から得られた値より正確に推定することが可能になる。
【0057】
第一並びに場合により第二及び/又は第三の例では、費用関数の誤差を最小化するために補正される物体のモデルのパラメータの値の繰り返しの変更は、最適化アルゴリズムによって特定される。幾つかの例では、補正される物体のモデルのパラメータの値の繰り返しの変更を特定するために選択される最適化アルゴリズムは、例えば、レーベンバーグ・マルカートアルゴリズムに対応し得る。
【0058】
物体のモデルの幾つかのパラメータが費用関数の最小化によって補正される幾つかの例では、費用関数は、補正される物体のモデルのパラメータの値に応じて最小化される誤差を表し、費用関数を最小化することは、費用関数で表現される物体のモデルのパラメータの値に応じて最小化される誤差のヤコビ行列式を計算することを含む。補正される物体のモデルのパラメータに応じて費用関数の誤差のヤコビ行列式を計算することにより、誤差の最小化に向かう最適化アルゴリズムの収束を、物体のモデルの各パラメータの変化が費用関数の誤差の最小化に与える相対的な影響を特定することによって最適化することが可能になる。
【0059】
幾つかの例では、
図3に示されるように、方法100は、動作180中に特定された第一の寸法の値の補正された推定から車両の軌道を特定する動作190をさらに含み得る。車両の軌道は、動作181中に特定された第二の寸法の値の補正された推定からも特定され得る。車両の軌道は、例えば、その寸法が方法100で再計算される物体を回避するように特定され得る。
【0060】
幾つかの例では、ライダセンサ10によって取得され、それに対して方法が実行される複数の点は、ライダセンサ10の新たな取得によって増強され、及び方法は、増強された複数の点から繰り返し実行される。この場合、同じ物体に属すると推測される点のグループ内にある点が多いほど、本開示による方法のためにその寸法をより正確に特定することができる。
【0061】
そのため、本開示による方法100により、ライダセンサ10によって検知された物体の反射面の少なくとも1辺の長さを正確に、特にその物体に属すると推測される点の3次元座標のみに基づく、ライダセンサ10の解像度のためにこれらの寸法が実際より小さく又は大きく推定される可能性のある従来の推定より正確に推定することが可能になる。幾つかの例では、方法100は、物体の反射面の2辺の長さ(幅L及び高さh)を推定しようとするものである。物体の反射面の寸法のこれらの推定は、特に物体の正確な寸法に適応された車両の軌道を特定するために使用され得、それにより実際より小さく推定された物体の寸法に基づいて特定された車両の軌道が車両及び道路利用者の安全を損ない得る状況を回避することが可能になり得る。
【符号の説明】
【0062】
1 機器
2 車両
10 ライダセンサ
11 コンピュータ
12 メモリ
【外国語明細書】