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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024001738
(43)【公開日】2024-01-10
(54)【発明の名称】配管接続治具
(51)【国際特許分類】
   F16L 23/036 20060101AFI20231227BHJP
   F16L 23/02 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
F16L23/036
F16L23/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022100594
(22)【出願日】2022-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】501418498
【氏名又は名称】矢崎エナジーシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 直人
【テーマコード(参考)】
3H016
【Fターム(参考)】
3H016AB06
3H016AC01
(57)【要約】
【課題】一対の配管のフランジ面が上下方向に沿って延びる姿勢での配管同士の接続に適した配管接続治具を提供すること。
【解決手段】フランジ33,43が管部31,41の端部に設けられた一対の配管30,40をフランジ面が上下方向に沿って延びる姿勢でボルト締結して接続するために用いる配管接続治具1は、一方の配管30を上下方向に沿って挟むように、一方の配管30の上方に配置可能な第1治具部10と、一方の配管30の下方に配置可能な第2治具部20と、第1,第2治具部10,20を着脱可能に連結する連結部51,52とを備える。第1,第2治具部10,20は、一方の配管30のフランジ33に設けられる複数のボルト孔34のうちの少なくとも一つ34aに干渉せず、第2治具部20は、一対の配管30,40のフランジ33,43同士が位置合わせされた状態で他方の配管40を保持可能な保持部23を有する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フランジが管部の端部に設けられた一対の配管をフランジ面が上下方向に沿って延びる姿勢でボルト締結して接続するために用いる配管接続治具であって、
一方の前記配管を上下方向に沿って挟むように、前記一方の前記配管の上方に配置可能な第1治具部と、前記一方の前記配管の下方に配置可能な第2治具部と、
前記第1治具部と前記第2治具部とを連結する連結部と、を備え、
前記第1治具部及び前記第2治具部は、
前記一方の前記配管を挟むように配置されたときに前記一方の前記配管の前記フランジが有する複数のボルト孔のうちの少なくとも一つに干渉しない形状を有し、
前記第1治具部及び前記第2治具部の少なくとも一方は、
前記一対の前記配管の前記フランジ同士が位置合わせされた状態にて他方の前記配管を保持可能な保持部を有する、
配管接続治具。
【請求項2】
請求項1に記載の配管接続治具において、
前記第1治具部及び前記第2治具部は、互いに独立した別体の部材であり、
前記連結部は、前記第1治具部と前記第2治具部とを着脱可能に連結する、
配管接続治具。
【請求項3】
請求項2に記載の配管接続治具において、
前記第1治具部は、
前記一方の前記配管の前記管部の上側部分を嵌め込み可能な第1凹部を有し、
前記第2治具部は、
前記一方の前記配管の前記管部の下側部分を嵌め込み可能な第2凹部を有する、
配管接続治具。
【請求項4】
請求項1に記載の配管接続治具において、
前記保持部は、
前記一方の前記配管の前記フランジの下端に沿って前記他方の前記配管に向けて延び、且つ、前記他方の前記配管の前記フランジの下端を載せ置き可能な形状を有する、
配管接続治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一対のフランジ付き配管をボルト締結する作業を補助するために用いる配管接続治具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、機器の壁面等に固定された一方のフランジ付き配管(固定配管)に、他方のフランジ付き配管(非固定配管)をボルト締結する作業を補助するために用いる配管接続治具が提案されている。例えば、従来の配管接続治具の一つは、固定配管のフランジ面が下方を向いている状態で、固定配管のフランジと非固定配管のフランジとを位置合わせしてボルト締結する際に用いられる。即ち、従来の配管接続治具は、双方の配管のフランジ面が上下方向(即ち、重力方向)に直交する方向に延びる姿勢での配管接続に用いられる。具体的には、従来の配管接続治具は、双方のフランジを上下方向に挟んだ状態で仮保持可能な箱状部を有しており、双方のフランジを箱状部の中に収容することで、ボルト締結中に作業者が非固定配管を手で支えなくてもよいようになっている(例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-148170号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の配管接続治具は、一対の配管のフランジ面が上下方向に直交する方向に延びる姿勢でのボルト締結を前提に、作業中に下方の配管(非固定配管)の落下を防ぐことを防ぐ構造を有している。そのため、従来の配管接続治具は、そのような姿勢でのボルト締結には適しているものの、一対の配管のフランジ面が上下方向に沿って延びる姿勢でのボルト締結には適用することはできない。
【0005】
本発明の目的の一つは、一対の配管のフランジ面が上下方向に沿って延びる姿勢での配管同士の接続に適した配管接続治具の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した目的を達成するために、本発明に係る配管接続治具は、以下を特徴としている。
【0007】
フランジが管部の端部に設けられた一対の配管をフランジ面が上下方向に沿って延びる姿勢でボルト締結して接続するために用いる配管接続治具であって、
一方の前記配管を上下方向に沿って挟むように、前記一方の前記配管の上方に配置可能な第1治具部と、前記一方の前記配管の下方に配置可能な第2治具部と、
前記第1治具部と前記第2治具部とを連結する連結部と、を備え、
前記第1治具部及び前記第2治具部は、
前記一方の前記配管を挟むように配置されたときに前記一方の前記配管の前記フランジが有する複数のボルト孔のうちの少なくとも一つに干渉しない形状を有し、
前記第1治具部及び前記第2治具部の少なくとも一方は、
前記一対の前記配管の前記フランジ同士が位置合わせされた状態にて他方の前記配管を保持可能な保持部を有する、
配管接続治具。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、一方の配管を上下方向に沿って挟むように第1治具部及び第2治具部を配置し、連結部で第1治具部及び第2治具部が連結されることで、第1治具部及び第2治具部を、一方の配管に対して上下方向に位置ズレしないように(特に、下方に脱落しないように)固定できる。更に、第1保持部及び第2治具部の少なくとも一方が有する保持部は、一対の配管のフランジ同士を位置合わせした状態で、他方の配管を保持することができる。よって、一方の配管が機器等に固定された固定配管であれば、作業者が手で他方の配管(非固定配管)を支えなくても、配管接続治具によって他方の配管の脱落を防ぎながら、フランジ同士のボルト締結に適した位置に双方の配管を保持できる。更に、第1治具部及び第2治具部は、ボルト締結の際に用いる複数のボルト孔の少なくとも一つに干渉しない。よって、そのように干渉しないボルト孔にボルトを通してフランジ同士を仮締結した後、配管接続治具を取り外して、残りのボルト孔にボルトを通してフランジ同士を本締結することで、一対の配管を適正に接続できる。このように、本構成の配管接続治具は、一対の配管のフランジ面が上下方向に沿って延びる姿勢での配管同士の接続に適している。
【0009】
なお、上記「上下方向」は、重力方向又は鉛直方向と言い換え得る。更に、上記「上下方向に沿って延びる」姿勢は、上下方向に完全に一致する方向に延びる姿勢だけでなく、配管の製造上の公差や、配管の自重及び配管の設置精度等に起因して、上下方向に対して多少傾いた方向に延びる姿勢を含んでいる。上記「上下方向に沿って挟む」も、同様である。更に、上記「位置合わせされた状態」とは、双方のフランジが有するボルト孔の位置が完全に一致している状態(即ち、双方のボルト孔にボルトを挿通可能な状態)だけでなく、双方のフランジが有するボルト孔の位置が完全には一致していなくても作業者が手作業でボルト孔の位置を一致させ得る状態を含んでいる。何れの状態であっても、配管接続治具を用いない場合に比べ、作業者の負担を軽減することができる。
【0010】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の実施形態に係る配管接続治具を構成する第1治具及び第2治具を示す斜視図である。
図2図2は、図1に示す配管接続治具を用いて一対の配管のフランジ同士をボルト締結する際の第1の手順を説明するための斜視図である。
図3図3は、図1に示す配管接続治具を用いて一対の配管のフランジ同士をボルト締結する際の第2の手順を説明するための斜視図である。
図4図4は、図3に示す状態の主要部を後側からみた斜視図である。
図5図5は、図1に示す配管接続治具を用いて一対の配管のフランジ同士をボルト締結する際の第3の手順を説明するための斜視図である。
図6図6は、図5のA-A断面図である。
図7図7は、図1に示す配管接続治具を用いて一対の配管のフランジ同士をボルト締結する際の第4の手順を説明するための斜視図である。
図8図8は、図7に示す状態の主要部を後側からみた斜視図である。
図9図9は、図1に示す配管接続治具を用いて一対の配管のフランジ同士をボルト締結する際の第5の手順を説明するための斜視図である。
図10図10は、本発明の他の実施形態に係る配管接続治具を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<実施形態>
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る配管接続治具1について説明する。配管接続治具1は、図5等に示すように、一対の配管30,40の端部に設けられたフランジ33,43のフランジ面が鉛直方向(上下方向)に沿って延びる姿勢(水平方向を向いた姿勢)でフランジ33,43同士をボルト締結する作業を補助するために使用される。
【0013】
以下、説明の便宜上、図1図9に示すように、「前」、「後」、「左」、「右」、「上」及び「下」を定義する。「前後方向」、「左右方向」及び「上下方向」は、互いに直交している。上下方向は、鉛直方向と一致し、前後方向及び左右方向の各々は、水平方向と一致している。
【0014】
まず、配管接続治具1を説明するための準備として、配管接続治具1を用いてボルト締結されることになる一対の配管30,40の構成について説明する。一方の配管30は、金属製であり、図2に示すように、前後方向に延びる第1部分31及び左右方向に延びる第2部分32からなるL字状の部分を有し、且つ、配管30の一端部である第1部分31の前端部に、径方向外側に広がる円環状のフランジ33を有している。フランジ33には、前後方向(板厚方向)に貫通する8つのボルト孔34が、周方向に等間隔に、且つ、上下方向及び左右方向の各々に対して線対称に配置されるように、設けられている。説明の便宜上、8つのボルト孔34のうち、フランジ33の中心より上側に位置し且つ上下方向において当該中心に近い側に位置する左右一対のボルト孔34を、特に「ボルト孔34a」と呼ぶ(図2参照)。配管30は、配管40とボルト締結される前の段階から、フランジ33のフランジ面が前方を向いた姿勢(上下方向に沿って延びる姿勢)で、所定の機器2(図2等参照)に固定されている。
【0015】
他方の配管40は、金属製であり、図5に示すように、前後方向に延びる第1部分41及び上下方向に延びる第2部分42からなるL字状の部分を有し、配管40の一端部である第1部分41の後端部に、径方向外側に広がる円環状のフランジ43を有している。フランジ43には、前後方向(板厚方向)に貫通する8つのボルト孔44が、周方向に等間隔に、且つ、上下方向及び左右方向の各々に対して線対称に配置されるように、設けられている。一対の配管30,40のフランジ33,43同士が位置合わせされた状態(図5及び図6参照)では、8つのボルト孔44の各々が、8つのボルト孔34のうち対応するボルト孔34と前後方向に連通する状態となる。説明の便宜上、8つのボルト孔44のうち、フランジ43の中心より上側に位置し且つ上下方向において当該中心に近い側に位置する左右一対のボルト孔44を、特に「ボルト孔44a」と呼ぶ(図5参照)。配管40は、配管30とボルト締結される前の段階では、機器2等には固定されず、単独の状態にある。
【0016】
配管接続治具1は、図1に示すように、第1治具10と、第2治具20と、第1,第2治具10,20を着脱可能に連結する連結部(一対のボルト51及び一対のナット52)と、を備える。以下、配管接続治具1を構成する第1治具10及び第2治具20の構成について順に説明する。
【0017】
まず、第1治具10について説明する。金属製の第1治具10は、図1に示すように、前板11と、後板12と、前板11及び後板12の上端縁同士を連結する上板13とから構成されており、左右方向に延び、且つ、左右方向からみて下方に開口するU字状の形状を有している。第1治具10は、図2等に示すように、配管30の上方に配置されることになる。
【0018】
前板11の下端縁には、左右方向中央部から上方に向けて半円状に窪む切欠き部14が形成されている(図1参照)。同様に、後板12の下端縁にも、左右方向中央部から上方に向けて半円状に窪む切欠き部15が形成されている(図1参照)。切欠き部14,15には、配管30の第1部分31の上部が嵌め込まれることになる(図4参照)。
【0019】
前板11の下端縁には、更に、切欠き部14の左右両側に、配管30の左右一対のボルト孔34aに対応して、上方に向けてU字状に窪む左右一対の切欠き部16が形成されている(図1参照)。配管30の上方に第1治具10が配置された状態(図3参照)にて、一対の切欠き部16は、配管30の左右一対のボルト孔34aと前後方向に連通する状態となる(図4も参照)。換言すれば、一対の切欠き部16は、前板11が左右一対のボルト孔34aと干渉することを防止する機能を果たす。前板11の上端縁近傍の左右両端部には、前後方向に貫通する左右一対のボルト孔17が形成されている(図1参照)。
【0020】
次いで、第2治具20について説明する。金属製の第2治具20は、図1に示すように、前板21と、後板22と、前板21及び後板22の下端縁同士を連結する底板23と、前板21及び後板22の左右の側端縁同士を連結する左右一対の側板24とから構成されており、上方に開口する略矩形箱状の形状を有している。第2治具20は、図2等に示すように、配管30の下方に配置されることになる。
【0021】
前板21の上端縁には、下方に向けて略U字状に窪む切欠き部25が形成されている(図1参照)。切欠き部25には、配管40の第1部分41の下部が嵌め込まれることになる(図5参照)。切欠き部25の左右一対の上端部には、切欠き部25の左右方向の幅を更に広げるように左右方向外側に窪む左右一対の拡幅部25aが形成されている。配管30の下方に第2治具20が配置された状態(図3参照)にて、一対の拡幅部25aは、配管30の左右一対のボルト孔34aと前後方向に連通する状態となる。換言すれば、一対の拡幅部25aは、前板21が左右一対のボルト孔34aと干渉することを防止する機能を果たす。
【0022】
後板22の上端縁には、下方に向けてU字状に窪む切欠き部26が形成されている(図1参照)。切欠き部26には、配管30の第1部分31の下部が嵌め込まれることになる(図4参照)。後板22の上端縁近傍の左右両端部には、第1治具10の左右一対のボルト孔17に対応して、前後方向に貫通する左右一対のボルト孔27が形成されている(図1参照)。以上、配管接続治具1を構成する第1治具10及び第2治具20の構成について説明した。
【0023】
次いで、配管接続治具1(第1治具10+第2治具20)を用いて一対の配管30,40のフランジ33,43同士をボルト締結する際の手順について、図2図9を参照しながら説明する。まず、図2に示すように、フランジ33のフランジ面が前方を向いた姿勢で機器2に固定されている配管30を上下方向に沿って挟むように、第1治具10及び第2治具20が配置される(図2の白矢印を参照)。具体的には、図3及び図4に示すように、第2治具20が、下側から、フランジ33が第2治具20の内部空間に収容されてフランジ33の下端が底板23の内面(上面)に当接するように、且つ、切欠き部26に配管30の第1部分31の下部が嵌め込まれるように、配置され、且つ、第1治具10が、上側から、前板11が第2治具20の後板22の後側に隣接するように、且つ、切欠き部14,15に配管30の第1部分31の上部が嵌め込まれるように、配置される。この状態において、第1治具10の一対のボルト孔17と第2治具20の一対のボルト孔27とが前後方向に連通している。
【0024】
次いで、図3に示すように、左右一対のボルト51が、前側から、左右一対のボルト孔27及び左右一対のボルト孔17にこの順に挿通され(図3の白矢印を参照)、且つ、挿通された左右一対のボルト51に左右一対のナット52が規定トルクで締め付けられることで(図4参照)、第1治具10の前板11及び第2治具20の後板22(即ち、第1治具10及び第2治具20)が、締結固定(連結)される。
【0025】
このように、第1,第2治具10、20が連結されたことで、第1,第2治具10,20が、配管30から下方に脱落しないように配管30に固定される。第1,第2治具10、20が連結された状態では、図3及び図4に示すように、配管30のフランジ33に形成された8つのボルト孔34のうち、フランジ33の中心より下側に位置する4つのボルト孔34に、第2治具20の前板21が干渉し(図3参照)、最も上側に位置する左右一対のボルト孔34に、第1治具20の前板11が干渉している(図4参照)。なお、第2治具20の後板22に切欠き部26が形成されていることにより、後板22は、8つのボルト孔34の何れにも干渉していない(図4参照)。一方、第1治具10の前板11に左右一対の切欠き部16が形成され且つ第2治具20の前板21に左右一対の拡幅部25aが形成されていることにより、8つのボルト孔34のうち、左右一対のボルト孔34aのみが、第1治具10の前板11、並びに、第2治具20の前板21及び後板22の何れにも、干渉していない。
【0026】
第1,第2治具10、20が連結された状態では、第2治具20の内部空間に収容されている配管30のフランジ33の下端が、第2治具20の底板23の内面(上面)に当接している(図6参照)。この結果、第2治具20の底板23は、配管30のフランジ33の下端に沿って前方に向けて延びている(図6参照)。底板23におけるフランジ33の下端から前方に向けて延びている部分に、配管40のフランジ43が載せ置かれることになる(図6参照)。
【0027】
第1,第2治具10、20が連結された状態では、第1治具10の切欠き部14,15が配管30の第1部分31の上部に嵌め込まれ、且つ、第2治具20の切欠き部26が配管30の第1部分31の下部に嵌め込まれているので、上下方向における配管接続治具1(=第1治具10+第2治具20)の移動だけでなく、左右方向における配管接続治具1(=第1治具10+第2治具20)の位置ズレをも抑制できる。
【0028】
次いで、図5に示すように、単独の状態にある配管40が、フランジ43のフランジ面が後方を向いた姿勢(上下方向に沿って延びる姿勢)で、第2治具20に保持される。具体的には、配管40が、上側から、フランジ33の前側に位置する第2治具20の内部空間にフランジ43が収容されてフランジ43の下端が底板23の内面(上面)に当接するように、且つ、切欠き部25に配管40の第1部分41の下部が嵌め込まれるように、配置される。これにより、図6に示すように、フランジ43がフランジ33と第2治具20の前板21との間に挟まれ、且つ、フランジ33,43の下端が共に底板23の内面(上面)に当接した状態となることで、一対の配管30,40のフランジ33,43同士が位置合わせされた状態で、配管40が第2治具20に保持される。即ち、配管30が機器2に固定されていることで、作業者が手で配管40を支えなくても、配管接続治具1(第1治具10+第2治具20)によって配管40が、フランジ33,43同士のボルト締結に適した位置に保持される。
【0029】
図6に示す状態では、上述したように、8つのボルト孔44の各々が、8つのボルト孔34のうち対応するボルト孔34と前後方向に連通する状態となっている。8つのボルト孔34及び8つのボルト孔44のうち、左右一対のボルト孔34a及び左右一対のボルト孔44aのみが、第1治具10の前板11、並びに、第2治具20の前板21及び後板22の何れにも干渉していない。なお、ボルト締結の作業を従来よりも容易にする観点では、このときに8つのボルト孔34と8つのボルト孔44とが完全に連通する状態になっていなくてもよく、作業者が手作業でフランジ43の位置を調整してボルト孔34とボルト孔44とを連通させ得る状態となっていれば、十分である。
【0030】
次いで、図7に示すように、左右一対のボルト53が、前側から、左右一対のボルト孔44a及び左右一対のボルト孔34aにこの順に挿通され(図7の白矢印を参照)、且つ、挿通された左右一対のボルト53に左右一対のナット54が規定トルクで締め付けられることで(図8参照)、配管30のフランジ33及び配管40のフランジ43(即ち、配管30及び配管40)が、仮固定(仮締め)される。これにより、配管接続治具1(第1治具10+第2治具20)を取り外しても、配管40が配管30に保持される(配管30から脱落しない)。
【0031】
次いで、図9に示すように、左右一対のボルト51及びナット52による締結を解除して、配管接続治具1(第1治具10+第2治具20)が配管30から取り外される(図9の白矢印を参照)。次いで、6本のボルト53が、左右一対のボルト孔34a,44a以外の残りのボルト孔44,34にこの順に挿通され(図9の白矢印を参照)、且つ、挿通された各ボルト53にナット54が規定トルクで締め付けられる。これにより、配管30のフランジ33及び配管40のフランジ43(即ち、配管30及び配管40)が、完全に固定(本締め)されることで、一対の配管30,40のフランジ33,43同士のボルト締結が完了する。
【0032】
<作用・効果>
以上、本実施形態に係る配管接続治具1によれば、配管30を上下方向に沿って挟むように第1治具10及び第2治具20を配置した上で、連結部(ボルト51及びナット52)で第1治具10及び第2治具20を連結することで、第1治具10及び第2治具20を、配管30から下方に脱落しないように配管30に固定できる。更に、第2治具20の保持部(底板23)は、一対の配管30,40のフランジ33,43同士を位置合わせした状態で、配管40を保持することができる。よって、配管30が機器2に固定されていることで、作業者が手で配管40を支えなくても、配管接続治具1によって配管40をフランジ33,43同士のボルト締結に適した位置に保持できる。更に、第1治具10及び第2治具20は、ボルト締結の際に用いる複数のボルト孔34,44のうち、左右一対のボルト孔34a,44aのみと干渉しない。よって、そのように干渉しない左右一対のボルト孔34a,44aにボルト53を通して一対のフランジ33,43を仮締めした後、配管接続治具1を配管30から取り外して、残りのボルト孔34,44にボルト53を通して一対のフランジ33,43を本締めすることで、一対の配管30,40を接続できる。このように、本実施形態に係る配管接続治具1は、一対の配管30,40のフランジ面が鉛直方向(上下方向)に沿って延びる姿勢での作業に適している。
【0033】
更に、第1治具10は、配管30の第1部分31の上部を嵌め込み可能な切欠き部14,15を有し、第2治具20は、配管30の第1部分31の下部を嵌め込み可能な切欠き部26を有する。よって、第1治具10及び第2治具20を連結部(ボルト51及びナット52)で連結することで、上下方向における配管接続治具1の移動だけでなく、左右方向における配管接続治具1の位置ズレを抑制できる。これにより、一対のフランジ面の位置合わせの精度を向上できるため、一対の配管30,40を接続する作業の作業性を高められる。
【0034】
更に、第2治具20の保持部(底板23)は、配管30のフランジ33の下端に沿って配管40に向けて前方に延び、且つ、配管40のフランジ43を載せ置き可能な形状を有する。よって、第2治具20の保持部(底板23)に配管40のフランジ43を載せ置くことで、一対のフランジ33,43が位置合わせされる。これにより、複雑な工程を要することなく一対のフランジ33,43の位置合わせが可能となるため、一対の配管30,40を接続する作業の作業性を高められる。
【0035】
<他の形態>
なお、本発明は上記各実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0036】
例えば、上記実施形態では、第1治具10が、前板11及び後板12を有している。これに対し、第1治具10は、前板11のみを有してもよい。更に、上記実施形態では、第1治具10の前板11の下端縁に切欠き部14が設けられ、後板12の下端縁に切欠き部15が設けられている。これに対し、第1治具10の前板11及び後板12に切欠き部を設けなくてもよい。
【0037】
更に、上記実施形態では、第1治具10と第2治具20とが別体であり、ボルト51及びナット52で連結されている。これに対し、図10に示すように、第1治具10と第2治具20とが一体であるように(即ち、共通の連続した板状体であるように)配管接続治具1が構成されてもよい。図10に示す例では、第1治具10の上板13と第2治具20底板23とが、連結板61で連結されている。即ち、図1図9に示す例における第1治具10の前板11と第2治具20の後板22とが、一体の(共通の)連結板61に置き換えられている。更に、連結板61の左縁部から右方に向けて窪むように、切欠き部14が設けられている。図10に示す例では、配管30の第1部分31を切欠き部14に嵌め込むことで、配管接続治具1を配管30に取り付けることができる。
【0038】
ここで、上述した本発明に係る配管接続治具1の実施形態の特徴をそれぞれ以下[1]~[3]に簡潔に纏めて列記する。
【0039】
[1]
フランジ(33,43)が管部(31,41)の端部に設けられた一対の配管(30,40)をフランジ面が上下方向に沿って延びる姿勢でボルト締結して接続するために用いる配管接続治具(1)であって、
一方の前記配管(30)を上下方向に沿って挟むように、前記一方の前記配管(30)の上方に配置可能な第1治具部(10)と、前記一方の前記配管(30)の下方に配置可能な第2治具部(20)と、
前記第1治具部(10)と前記第2治具部(20)とを連結する連結部(51,52)と、を備え、
前記第1治具部(10)及び前記第2治具部(20)は、
前記一方の前記配管(30)を挟むように配置されたときに前記一方の前記配管(30)の前記フランジ(33)が有する複数のボルト孔(34)のうちの少なくとも一つ(34a)に干渉しない形状を有し、
前記第1治具部(10)及び前記第2治具部(20)の少なくとも一方は、
前記一対の前記配管(30,40)の前記フランジ(33,43)同士が位置合わせされた状態にて他方の前記配管(40)を保持可能な保持部(23)を有する、
配管接続治具(1)。
【0040】
上記[1]の構成の配管接続治具によれば、一方の配管を上下方向に沿って挟むように第1治具部及び第2治具部を配置し、連結部で第1治具部及び第2治具部が連結されることで、第1治具部及び第2治具部を、一方の配管に対して上下方向に位置ズレしないように(特に、下方に脱落しないように)固定できる。更に、第1保持部及び第2治具部の少なくとも一方が有する保持部は、一対の配管のフランジ同士を位置合わせした状態で、他方の配管を保持することができる。よって、一方の配管が機器等に固定された固定配管であれば、作業者が手で他方の配管(非固定配管)を支えなくても、配管接続治具によって他方の配管の脱落を防ぎながら、フランジ同士のボルト締結に適した位置に双方の配管を保持できる。更に、第1治具部及び第2治具部は、ボルト締結の際に用いる複数のボルト孔の少なくとも一つに干渉しない。よって、そのように干渉しないボルト孔にボルトを通してフランジ同士を仮締結した後、配管接続治具を取り外して、残りのボルト孔にボルトを通してフランジ同士を本締結することで、一対の配管を適正に接続できる。このように、本構成の配管接続治具は、一対の配管のフランジ面が上下方向に沿って延びる姿勢での配管同士の接続に適している。
【0041】
[2]
上記[1]に記載の配管接続治具(1)において、
前記第1治具部(10)及び前記第2治具部(20)は、互いに独立した別体の部材であり、
前記連結部(51,52)は、前記第1治具部(10)と前記第2治具部(20)とを着脱可能に連結する、
配管接続治具(1)。
【0042】
上記[2]の構成の配管接続治具によれば、第1治具部と第2治具部とが別体であることで、一方の配管の太さ等によらず、第1治具部と第2治具部とで適正に一方の配管を上下方向に沿って挟んだ状態で、配管接続治具を一方の配管に固定することができる。
【0043】
[3]
上記[2]に記載の配管接続治具(1)において、
前記第1治具部(10)は、
前記一方の前記配管(30)の前記管部(31)の上側部分を嵌め込み可能な第1凹部(14,15)を有し、
前記第2治具部(20)は、
前記一方の前記配管(30)の前記管部(31)の下側部分を嵌め込み可能な第2凹部(26)を有する、
配管接続治具(1)。
【0044】
上記[3]の構成の配管接続治具によれば、第1治具部は、一方の配管の管部の上部を嵌め込み可能な第1凹部を有し、第2治具部は、一方の配管の管部の下部を嵌め込み可能な第2凹部を有する。よって、第1治具部及び第2治具部を連結部で連結することで、上下方向における配管接続治具の移動だけでなく、上下方向に交差する方向における配管接続治具の位置ズレを抑制できる。これにより、一対のフランジ面の位置合わせの精度を向上できるため、一対の配管を接続する作業の作業性を高められる。
【0045】
[4]
上記[1]に記載の配管接続治具(1)において、
前記保持部(23)は、
前記一方の前記配管(30)の前記フランジ(33)の下端に沿って前記他方の前記配管(40)に向けて延び、且つ、前記他方の前記配管(40)の前記フランジ(43)の下端を載せ置き可能な形状を有する、
配管接続治具(1)。
【0046】
上記[4]の構成の配管接続治具によれば、第2治具部の保持部は、一方の配管のフランジの下端に沿って他方の配管に向けて延び、且つ、他方の配管のフランジを載せ置き可能な形状を有する。よって、第2治具部の保持部に他方の配管のフランジを載せ置くことで、一対のフランジが位置合わせされる。これにより、複雑な工程を要することなく一対のフランジの位置合わせが可能となるため、一対の配管を接続する作業の作業性を高められる。
【符号の説明】
【0047】
1 配管接続治具
10 第1治具(第1治具部)
14 切欠き部(第1凹部)
15 切欠き部(第1凹部)
20 第2治具(第1治具部)
23 底板(保持部)
26 切欠き部(第2凹部)
30 配管(一方の配管)
31 第1部分(管部)
33 フランジ
34 ボルト孔
34a ボルト孔
40 配管(他方の配管)
41 第1部分(管部)
43 フランジ
51 ボルト(連結部)
52 ナット(連結部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10