(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173809
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】電源回路、電子機器および制御方法
(51)【国際特許分類】
H02J 7/10 20060101AFI20241205BHJP
G06F 1/26 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
H02J7/10 B
H02J7/10 H
G06F1/26 303
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024088254
(22)【出願日】2024-05-30
(31)【優先権主張番号】202310623394.5
(32)【優先日】2023-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】523107950
【氏名又は名称】レノボ・(ベイジン)・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205785
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】川上 淳平
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 寛之
(72)【発明者】
【氏名】永多 望
(72)【発明者】
【氏名】▲譚▼ 越
【テーマコード(参考)】
5B011
5G503
【Fターム(参考)】
5B011DA02
5B011EA02
5B011EA04
5B011EA05
5B011GG14
5G503AA01
5G503BA03
5G503BB01
5G503CA02
5G503CA12
5G503EA05
(57)【要約】
【課題】システムにおいて電力が消費される場合でも満充電状態で、より正確に充電を終了する。
【解決手段】電源回路は、電源から供給される直流電力のうち、システムに要求されるシステム電力を前記システムに供給し、残された電力である充電電力をバッテリに充電し、
バッテリのセル電圧が所定の検出電圧以上であり、かつ、充電電力の充電電流が所定の検出電流以下となるときバッテリの充電状態を満充電と判定し、バッテリへの特定の充電状態のもとで得られるセル電圧に基づいて充電状態を満充電と判定する時点におけるセル電圧を第2検出電圧として推定し、記所定の検出電圧を予め定めた第1検出電圧から前記第2検出電圧に更新する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源から供給される直流電力のうち、システムに要求されるシステム電力を前記システムに供給し、残された電力である充電電力をバッテリに充電し、
前記バッテリのセル電圧が所定の検出電圧以上であり、かつ、前記充電電力の充電電流が所定の検出電流以下となるとき前記バッテリの充電状態を満充電と判定する電源回路であって、
前記バッテリへの特定の充電状態のもとで得られる前記セル電圧に基づいて前記充電状態を満充電と判定する時点における前記セル電圧を第2検出電圧として推定し、
前記所定の検出電圧を予め定めた第1検出電圧から前記第2検出電圧に更新する
電源回路。
【請求項2】
前記システム電力を前記システムに供給せずに前記充電電力を前記バッテリに充電するとき、前記充電状態を満充電と判定する時点における前記セル電圧を前記第2検出電圧として定める
請求項1に記載の電源回路。
【請求項3】
前記バッテリへの充電方式が一定の充電電流で充電を行う第1充電モードから一定の充電電圧で充電を行う第2充電モードに変更されるとき、
前記バッテリへの充電電圧、前記セル電圧および前記充電電流に基づいて前記電源回路から前記バッテリへの回路抵抗値を測定し、
前記充電電圧から前記回路抵抗値と前記検出電流により降下した電圧を前記第2検出電圧として定める
請求項1に記載の電源回路。
【請求項4】
前記バッテリへの充電時間が所定の基準充電時間を超えても前記充電状態を満充電と判定しないとき、前記所定の検出電圧を前記第1検出電圧に変更する
請求項1に記載の電源回路。
【請求項5】
前記バッテリを備える
請求項1に記載の電源回路。
【請求項6】
請求項1に記載の電源回路を備える
電子機器。
【請求項7】
電源から供給される直流電力のうち、システムに要求されるシステム電力を前記システムに供給し、残された電力である充電電力をバッテリに充電し、
前記バッテリのセル電圧が所定の検出電圧以上であり、かつ、前記充電電力の充電電流が所定の検出電流以下となるとき前記バッテリの充電状態を満充電と判定する電源回路の制御方法であって、
前記電源回路は、
前記バッテリへの特定の充電状態のもとで得られる前記セル電圧に基づいて前記充電状態を満充電と判定する時点における前記セル電圧を第2検出電圧として推定し、
前記所定の検出電圧を予め定めた第1検出電圧から前記第2検出電圧に更新する
制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源回路、電子機器および制御方法、例えば、バッテリの充電に関する。
【背景技術】
【0002】
バッテリパック(電池パック)は、PC(Personal Computer)、タブレット端末、スマートフォンなどの情報機器、その他各種の電子機器に備わることがある。電子機器は、外部から電力が供給されない場合でも、バッテリパックに充電された電力を消費して動作可能とする。バッテリパックは、電源回路、例えば、システム充電IC(Integrated Circuit)による制御のもとで、AC(Alternating Current)アダプタからバッテリ(二次電池)に充電される。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の充電方法は、電流が制限される定電圧電源によって二次電池を充電する方法において、二次電池の充電を所定の条件を外れてから一定時間さらに充電を行う二次電池の充電方法である。所定の条件は、二次電池の電池電圧が所定の電圧になること、または、二次電池の充電電流が所定の電流になることである。
【0004】
システムからバッテリへの充電方式には、システム非動作充電(system off charge、オフチャージ(off charge)とも呼ばれる)とシステム動作充電(system operation charge、オンチャージ(on charge)とも呼ばれる)がある。システム非動作充電は、システムに対して電力を給電せず、バッテリだけに充電する方式である。システム動作充電とは、システムに対して電力を給電しながらバッテリにも充電する方式である。システム非動作充電では、ACアダプタから供給される供給電流Itotalのほぼ全部がバッテリに充電される。コントローラは、バッテリに生ずるセル電圧が予め定めた検出電圧(テーパ電圧(taper voltage)とも呼ばれる)以上となり、かつ、充電電流が予め定めた検出電流(テーパ電流(taper current)とも呼ばれる)以下となる条件を満たすとき、バッテリの充電状態が満充電状態に達したと判定し、充電を終了する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、システム動作充電では、供給される充電電流Itotalのうち必要とされる電流がシステム電流Isysとしてシステムに給電される。バッテリには、供給電流Itotalからシステムに供給するシステム電流Isysが除かれ、残された電流Itotal-Isysが供給される。そのため、供給される電流は、バッテリにおける要求を満たさなくなることがある。特に、定格電力が低いACアダプタを用いる場合、バッテリに充電される充電電力の減少が顕著になることがある。このような状況のもとでは、セル電圧がテーパ電圧以上となり、かつ、充電電流がテーパ電流以下となる条件を満たす場合であっても、バッテリに蓄積された電荷の容量が、本来期待される満充電状態における容量(満充電容量)よりも小さくなることがある。
【0007】
一因として、テーパ電圧としてシステムから供給されるシステム電圧の定格値よりも所定のマージンだけ低い電圧が設定されていることが考えられる。充電電流がテーパ電流以下となることで、固定されたテーパ電圧に依拠して満充電判定がなされると、バッテリに蓄積される電荷容量が満充電容量よりも低くなることがある。テーパ電圧は、バッテリやシステムの回路抵抗値に依存するが、これらの回路抵抗値には個体差がある。安全性または安定性を確保するため、設計段階では個体差を考慮して、個々の機材に必要以上に大きいマージンを設定されがちである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願は上記の課題を解決するためになされたものであり、本願の一態様に係る電源回路は、電源から供給される直流電力のうち、システムに要求されるシステム電力を前記システムに供給し、残された電力である充電電力をバッテリに充電し、前記バッテリのセル電圧が所定の検出電圧以上であり、かつ、前記充電電力の充電電流が所定の検出電流以下となるとき前記バッテリの充電状態を満充電と判定する電源回路であって、前記バッテリへの特定の充電状態のもとで得られる前記セル電圧に基づいて前記充電状態を満充電と判定する時点における前記セル電圧を第2検出電圧として推定し、前記所定の検出電圧を予め定めた第1検出電圧から前記第2検出電圧に更新する。
【0009】
上記の電源回路は、前記システム電力を前記システムに供給せずに前記充電電力を前記バッテリに充電するとき、前記充電状態を満充電と判定する時点における前記セル電圧を前記第2検出電圧として定めてもよい。
【0010】
上記の電源回路は、前記バッテリへの充電方式が一定の充電電流で充電を行う第1充電モードから一定の充電電圧で充電を行う第2充電モードに変更されるとき、前記バッテリへの充電電圧、前記セル電圧および前記充電電流に基づいて前記電源回路から前記バッテリへの回路抵抗値を測定し、前記充電電圧から前記回路抵抗値と前記検出電流により降下した電圧を前記第2検出電圧として定めてもよい。
【0011】
上記の電源回路は、前記バッテリへの充電時間が所定の基準充電時間を超えても前記充電状態を満充電と判定しないとき、前記所定の検出電圧を前記第1検出電圧に変更してもよい。
【0012】
上記の電源回路は、前記バッテリを備えてもよい。
【0013】
本願の第2態様に係る電子機器は、上記の電源回路を備えてもよい。
【0014】
本願の第3態様に係る制御方法は、電源から供給される直流電力のうち、システムに要求されるシステム電力を前記システムに供給し、残された電力である充電電力をバッテリに充電し、前記バッテリのセル電圧が所定の検出電圧以上であり、かつ、前記充電電力の充電電流が所定の検出電流以下となるとき前記バッテリの充電状態を満充電と判定する電源回路の制御方法であって、前記電源回路は、前記バッテリへの特定の充電状態のもとで得られる前記セル電圧に基づいて前記充電状態を満充電と判定する時点における前記セル電圧を第2検出電圧として推定し、前記所定の検出電圧を予め定めた第1検出電圧から前記第2検出電圧に更新する。
【発明の効果】
【0015】
本願の実施形態によれば、システムにおいて電力が消費される場合でも満充電状態で、より正確に充電を終了することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本実施形態に係る電子機器のハードウェア構成例を示す概略ブロック図である。
【
図2】本実施形態に係る回路配置例を示す概略ブロック図である。
【
図3】充電時におけるセル電圧と充電電流の時間経過の第1例を示す図である。
【
図4】充電時におけるセル電圧、充電電圧および充電電流の時間経過の第2例を示す図である。
【
図5】本実施形態に係る充電制御処理を例示するフローチャートである。
【
図6】本実施形態に係る検出電圧設定処理の第1例を示すフローチャートである。
【
図7】本実施形態に係る検出電圧設定処理の第2例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本願の実施形態について、図面を参照して説明する。まず、本願の実施形態に係る電子機器1の概要について説明する。電子機器1は、電源回路33を備える。電源回路33は、直流電源から供給される直流電力のうち、システムに要求されるシステム電力をシステムに供給し、残された充電電力をバッテリに充電する。電源回路33は、バッテリのセル電圧が所定のテーパ電圧以上であり、かつ、充電電力の充電電流が所定の検出電流以下となるときバッテリの充電状態を満充電と判定する。本実施形態では、テーパ電圧を固定値とせず、可変値とする。ここで、電源回路33は、バッテリへの充電条件が特定の充電条件を満たすとき、セル電圧に基づいて満充電時におけるテーパ電圧を第2テーパ電圧として推定する。電源回路33は、所定のテーパ電圧を予め定めた第1テーパ電圧から前記第2テーパ電圧に更新する。
【0018】
本実施形態に係る電子機器1は、典型的には持ち運びに便利な大きさおよび重量を有し、バッテリに蓄えられた電力を消費する電子機器となりうる。電子機器1は、PC、スマートフォン、タブレット端末のいずれの形態の情報機器であってもよい。電子機器1は、直流電源からの常時の電力供給が困難な環境に設置される機器、例えば、計測器、監視装置、などのいずれであってもよい。以下の説明では、電子機器1がパーソナルコンピュータ(PC:Personal Computer)である場合を主とする。また、本願において、「システム」とは、電子機器1のうち、電源回路33から供給される電力を消費するデバイス、即ち、負荷を指すことがある。電子機器1が情報機器である場合、通例、そのコンピュータシステム(ホストシステムとも呼ばれる)における消費電力が電子機器1の処理の大部分を占める。
【0019】
図1は、本実施形態に係る電子機器1のハードウェア構成例を示す概略ブロック図である。電子機器1は、CPU11、メインメモリ12、ビデオサブシステム13、ディスプレイ14、PCH(Platform Controller Hub)21、BIOS(Basic Input Output System;基本入出力システム)メモリ22、補助記憶装置23、WLAN(Wireless Local Area Network;無線構内ネットワーク)カード25、USB(Universal Serial Bus)コネクタ26、EC(Embedded Controller、エンベデッドコントローラ)31、入力部32、電源回路33、バッテリパック34、および、電源ボタン38を備える。
【0020】
CPU11は、電子機器1に備わるシステムデバイスの中核をなすプロセッサである。CPU11は、ソフトウェア(プログラム)に記述された命令で指示される種々の演算処理を実行するプロセッサである。CPU11は、例えば、OS(Operating System)、BIOS、アプリケーションプログラム(本願では、「アプリ」または「アプリケーション」と呼ぶ)など、各種のソフトウェアで指示される処理を実行する。なお、ソフトウェアに記述された指令(コマンド)で指示される処理を実行することを、「ソフトウェアを実行する」と呼ぶことがある。
【0021】
メインメモリ12は、プロセッサの実行プログラムの読み込み領域として、または、実行プログラムの処理データを書き込むための作業領域として利用される書き込み可能メモリである。メインメモリ12は、例えば、複数個のDRAM(Dynamic Random Access Memory)チップで構成される。実行プログラムには、OS、周辺機器などのハードウェアを操作するための各種ドライバ、各種サービス/ユーティリティ、アプリ等が含まれる。
【0022】
CPU11、および、メインメモリ12は、電子機器1の中核となるコンピュータシステム、つまり、ホストシステムをなすシステムデバイスとして機能する。電子機器1のコンピュータシステムは、ハードウェアとしてシステムデバイスと、OS、スケジュール・タスクなどのソフトウェアを含んで構成される。
【0023】
ビデオサブシステム13は、CPU11の制御に従って画像処理を実行する。ビデオサブシステム13は、ビデオコントローラとビデオメモリ(図示せず)を備える。ビデオコントローラは、CPU11から入力される描画命令に従って画像処理を行い、描画情報を生成し、生成した描画情報をビデオメモリ(図示せず)に書き込む。ビデオコントローラは、ビデオメモリから描画情報を読み出して、読み出した描画情報を示す表示データをディスプレイ14に出力する(画像処理)。
他方、CPU11は、OS上でグラフィックドライバを実行して、ビデオサブシステム13の動作を制御する。CPU11は、OS、アプリ、その他のプログラムで描画命令をビデオサブシステム13に出力し画像処理を実現させる。
【0024】
ディスプレイ14は、CPU11から出力された表示データに基づく表示画面を表示する。ディスプレイ14は、例えば、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)、OLED(Organic Light Emitting Diode、有機発光ダイオード)ディスプレイなどのいずれであってもよい。
【0025】
PCH21は、1個または複数のコントローラを備え、複数のデバイスと各種のデータを入出力できるように接続可能とする。PCH21は、例えば、USB、シリアルATA(Advanced Technology Attachment)、SPI(Serial Peripheral Interface)バス、PCI(Peripheral Component Interconnect)バス、PCI-Expressバス、および、LPC(Low Pin Count)などのバスコントローラのいずれか1個または組み合わせである。接続先となる複数のデバイスは、例えば、後述するBIOSメモリ22、補助記憶装置23、WLANカード25、USBコネクタ26、および、EC31が該当する。
【0026】
BIOSメモリ22は、電気的に書き換え可能な不揮発性メモリで構成される。かかる不揮発メモリとして、例えば、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、および、フラッシュROM(Read Only Memory)などが該当する。BIOSメモリ22は、BIOS、EC31その他のデバイスの動作を制御するためのファームウェアなどを記憶する。BIOSは、システムデバイスの基本的な入出力を行うためのファームウェアである。本願では、UEFI(Unified Extensible Firmware Interface)に規定された仕様に従って定義されたファームウェアもBIOSの概念に含まれうる。
【0027】
補助記憶装置23は、各種のデータを持続的に記憶する。記憶されるデータは、CPU11、その他のデバイスにより実行されうる各種のプログラム、パラメータ、各種処理に用いられるデータ、各種処理により取得されるデータが含まれる。補助記憶装置23は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、および、SSD(Solid State Drive)などのいずれであってもよい。補助記憶装置23は、各種の不揮発性メモリを含んで構成される。不揮発性メモリとして、例えば、フラッシュメモリが用いられる。各種のプログラムには、例えば、OS、ドライバ、ファームウェア、アプリ、などの何れか1個または組み合わせが含まれうる。
【0028】
WLANカード25は、ワイヤレス(無線)LAN、または、ワイヤレスLANを経由して他のネットワークに接続して、接続先との機器との間で、各種のデータを送受信可能とする。
USBコネクタ26は、USBを利用して各種の周辺機器類を接続するためのコネクタである。
【0029】
EC31は、電子機器1の中核をなすホストシステムの動作状態に関わらず、各種デバイス(周辺装置やセンサ等)の状況を監視して制御するワンチップマイコン(One-Chip Microcomputer)である。EC31は、CPU11とは別個のCPU、メインメモリ12とは別個のRAMの他、ROM、複数チャネルのA/D(Analog-to-Digital)入力端子、D/A(Digital-to-Analog)出力端子、タイマおよびデジタル入出力端子(図示せず)を備える。EC31のデジタル入出力端子には、入力部32、および、電源回路33などが接続されており、EC31は、これらの動作を制御可能とされている。
EC31は、電子機器1を構成する各デバイスの動作状態を監視し、デバイスごとに消費電力を上回るように動作に要する電力量(本願では、「デバイス電力」と呼ぶことがある)を定める。デバイス電力の合計が、システム電力に相当する。監視対象のデバイスには、電子機器1のシステムデバイス、主に、CPU11も含まれる。EC31は、各デバイスのデバイス電力を示すシステム電力要求を電源回路33に出力する。後述するように、デバイス電力に相当する電力が電源回路33からシステムを構成する各デバイスに供給される。
【0030】
入力部32は、ユーザの操作を検出し、検出した操作に応じた操作信号をEC31に出力する入力デバイスを備える。入力部32には、例えば、キーボード、および、タッチパッドなどが該当する。入力部32をなすタッチセンサは、表示部をなすディスプレイ14と重なり合い、タッチパネルとして構成されてもよい。
【0031】
電源回路33には、AC(Alternating Current)アダプタ37から直流電力が供給される。電源回路33は、EC31に制御に従って、供給される直流電力のうち、システムに要求されるシステム電力をシステムに供給する。電源回路33は、EC31から通知されるシステム電力要求でデバイスごとに指示されるデバイス電力に相当する電力を、当該デバイスに供給する。電源回路33は、電子機器1のシステム全体として、システム電力に相当する電力を供給する。電源回路33は、供給される直流電力のうち、システム電力を除いて残された電力を充電電力としてバッテリパック34に充電する。
【0032】
電源回路33は、充電回路332(
図2)と変換器(図示せず)を備える。充電回路332は、バッテリパック34における充電状態に応じて充電電力をバッテリパック34に充電する。充電回路332は、バッテリパック34のセル電圧が所定のテーパ電圧以上であり、かつ、充電電力の充電電流が所定のテーパ電流以下となるときバッテリパック34の充電状態を満充電と判定する。本願では、充電状態が満充電の状態に達したか否かを判定すること、または、その判定結果を「満充電判定」と呼ぶことがある。充電回路332は、満充電判定がなされるとき、バッテリパック34への充電を停止する。
【0033】
変換器は、ACアダプタ37から自器に供給される電力の電圧を各デバイスで要求される電圧に変換する。変換器は、電圧を変換した電力を、電圧が変換された電力を要求されるデバイスに供給する。
【0034】
バッテリパック34は、1個または複数個のバッテリ(二次電池、セル、などとも呼ばれる)と測定回路342(図示せず)。測定回路342は、バッテリの充電状態として充電電圧と充電電流を測定し、測定した充電電圧と充電電流を示す充電状態情報を電源回路33に通知する。バッテリには、電源回路33から供給される充電電力が蓄積される。
【0035】
ACアダプタ37は、外部電源から供給される交流電力を電圧が一定となる直流電力に変換し、変換された電力を電源回路33に供給する。ACアダプタ37は、電源回路33と制御信号を入出力可能に接続される。ACアダプタ37は、電源回路33を含む電子機器1の筐体と着脱可能とする装着具を備える。ACアダプタ37は、USBコネクタ26と物理的に着脱可能に接続されてもよい。
【0036】
電源ボタン38は、押下操作が受け付けられる都度、電子機器1の全体への電力供給の有無(Power ON/OFF)を制御する。電源ボタン38は、押下を示す押下信号をEC31に出力する。EC31は、電子機器1が電源断(電力供給なし)であるときに電源ボタン38から押下信号が入力されるとき、電源回路33に対し、電子機器1の各デバイスへの電力供給を開始させる(電源投入)。EC31は、電子機器1が通電(電力供給あり)されているときに電源ボタン38から押下信号が入力されるとき、電源回路33に対し、電子機器1の各デバイスへの電力供給を停止する(電源断)。
【0037】
次に、本実施形態に係る回路構成例について説明する。
図2は、本実施形態に係る回路配置例を示す概略ブロック図である。
電源回路33は、充電回路332およびFET334a、334b、334cを備える。バッテリパック34は、測定回路342、FET344a、344b、ヒューズ346およびセルCL01、CL02を備える。
電力線は、ACアダプタ37からFET334a、334b、334c、344a、344bおよびヒューズ346を経由してセルCL01の正極に電気的に接続される。セルCL01、CL02は直列に接続される。セルCL02の負極は、抵抗素子Rを介して接地されている(GND)。これにより、セルCL01、CL02の逆接、その他、負極に対する予期しない電圧の印加によるセルCL01、CL02の損傷を回避または軽減することができる。
【0038】
FET(Field Effect Transistor,電界効果トランジスタ)334aは、分岐点336からACアダプタ37への電流の逆流を防止する。FET334bは、充電回路332による制御に従い、ACアダプタ37から分岐点336への電流を調整する。FET334cは、充電回路332による制御に従い、分岐点336とバッテリパック34との間の導通の有無を切り替える。FET344aは、測定回路342の制御に従い、セルCL01、CL02から放電される電流を制御する。FET344bは、測定回路342の制御に従い、セルCL01、CL02に充電される電流を制御する。
【0039】
FET334aのソース電極(以下、「S電極」と呼ぶことがある)、ドレイン電極(以下、「D電極」と呼ぶことがある)、ゲート電極(以下、「G電極」と呼ぶことがある)には、それぞれACアダプタ37、FET334bのD電極、充電回路332に電気的に接続される。FET334aは、G電極に印加される電圧を0Vよりも有意に高くならないように維持することで、FET334bからACアダプタ37への電流の逆流を阻止することができる。
【0040】
FET334bのS電極、D電極、G電極には、それぞれ分岐点336、FET334aのD電極、充電回路332に電気的に接続される。G電極に印加される正の電位を高くすることで、ACアダプタ37から流入する電流を増加することができる。
【0041】
FET334cのS電極、D電極、G電極には、それぞれバッテリパック34、分岐点336、充電回路332に電気的に接続される。FET334cは、充電回路332からG電極に開閉制御信号が印加されることにより、分岐点336からバッテリパック34への導通の有無(ON/OFF)が制御される。開閉制御信号は、2段階の電位をとりうる二値信号である。2段階の電位のうち、低い方を低電位(L)、高い方を高電位(H)と呼ぶ。低電位は、例えば、0Vから所定範囲内の電位となる。高電位は、低電位から有意に高い正電位である。充電回路332は、バッテリパック34に充電する場合、FET334cのG電極に高電位を有する開閉制御信号を印加し、充電を行わない場合、FET334cのG電極に高電位を有する開閉制御信号の印加を停止する。
【0042】
分岐点336は、ACアダプタ37から供給される直流電力の一部となるシステム電力をシステムに供給し、その残りの充電電力を、FET334cを経由してバッテリパック34に供給する。供給される直流電力の総電流値Itotalは、システム電力の電流値であるシステム電流Isysと充電電力の電流値である充電電流Ibatとの和に相当する。
【0043】
FET344aのS電極、D電極、G電極には、それぞれ電源回路33、FET344bのD電極、測定回路342に電気的に接続される。FET344aは、G電極に印加される正の電位を高くすることでセルCL01から放電される電力の電流を増加することができる。
FET344bのS電極、D電極、G電極には、それぞれヒューズ346、FET344aのD電極、測定回路342に電気的に接続される。FET344bは、G電極に印加される正の電位を高くすることで電源回路33からセルCL01、CL02に充電される電力の電流を増加することができる。
【0044】
FET334bのS電極、D電極、G電極には、それぞれ分岐点336、FET334aのD電極、充電回路332に電気的に接続される。G電極に印加される正の電位を高くすることで、ACアダプタ37から流入する電流を増加することができる。
ヒューズ346は、所定の限界値を超える電流を検出するとき、自部を流れる電流を遮断する。これにより、セルCL01、CL02に流入または流出する過大な電流が阻止される。
【0045】
充電回路332、測定回路342は、それぞれEC31と信号線を用いて接続される。信号線には、データ信号線(DAT)とクロック信号線(CLK)が含まれる。データ信号線は、制御信号、その他のデータの伝送に用いられる。クロック信号線は、クロック信号の伝送に用いられる。充電回路332、測定回路342は、それぞれEC31から入力されるクロック信号を用いてEC31と同期する。信号線として、例えば、システム管理バス(SMB:System Management Bus)が用いられる。
【0046】
充電回路332には、測定回路342からEC31を経由して充電状態情報が入力される。充電回路332は、充電状態情報で示される充電状態に基づいてバッテリパック34への充電を制御する。充電回路332は、主な充電方式として、定電流(CC:Constant Current)充電と定電圧(CV:Constant Voltage)充電を実現する。CC充電は、予め設定した一定の充電電流値で充電する充電モードを指す。CC充電によれば、比較的大きい電流での充電を可能とし、バッテリパック34におけるセルの電荷の蓄積に伴い起電力が増加し、抵抗が低下する。CC充電は、バッテリパック34に充電する充電電圧Vchargeが一定の充電電圧値に達していない段階で行われることがある。
【0047】
CV充電は、予め設定した一定の充電電圧で充電する充電モードを指す。CV充電は、充電電圧Vchargeが所定の充電電圧Vcharge,CVに達した時点で開始され、以降、充電電圧Vchargeが一定値Vcharge,CVに維持される。この段階では、バッテリパック34の内部のセル電圧Vcellが充電電圧Vchargeよりも低くなりがちである。CV充電によれば、バッテリパック34の内部のセル電圧Vcellを充電電圧Vchargeに近づき、充電電流が減少する。満充電判定は、CV充電中になされうる。
【0048】
充電回路332は、バッテリパック34のセル電圧V
cellが所定のテーパ電圧以上であり、かつ、充電電力の充電電流I
batが所定のテーパ電流I
tp以下となるとき満充電判定を行う。充電回路332は、満充電判定を行うとき、バッテリパック34への充電を停止する。所定のテーパ電圧の初期値として、第1テーパ電圧V
tp,1を充電回路332に予め設定しておく。
図4の例では、第1テーパ電圧V
tp,1として、例えば、満充電状態における充電電圧V
charge,CVよりも予め定めた微小なマージン電圧(例えば、50~200mV)ΔVだけ低い電圧の設計値が用いられうる。
【0049】
充電回路332は、バッテリパック34への充電条件が特定の充電条件を満たすとき、その時点におけるバッテリパック34のセル電圧Vcellに基づいて満充電時におけるテーパ電圧を第2テーパ電圧Vtp,2として推定する。電源回路33は、満充電判定に用いる所定のテーパ電圧として第1テーパ電圧Vtp,1から推定した第2テーパ電圧Vtp,2に更新する。電源回路33は、バッテリパック34への総充電時間が所定の基準充電時間(例えば、8~20時間)を越えても、バッテリパック34の充電状態が満充電とならない場合、所定のテーパ電圧を第2テーパ電圧Vtp,2から第1テーパ電圧Vtp,1に変更する。第2テーパ電圧Vtp,2の推定法については、後述する。充電回路332は、例えば、システム充電IC(System Charger IC)である。
【0050】
測定回路342は、セルCL01、CL02への充電状態を測定する回路である。測定回路342は、セルCL01の正極における電位をセル電圧Vcellとして測定し、電源回路33から流入する電流を充電電流Ibatとして測定する。測定回路は、測定したセル電圧Vcellと充電電流Ibatを示す充電状態情報を、EC31を経由して充電回路332に出力する。充電回路332は、測定回路342から入力される充電状態情報に示される充電状態に基づいて充電を制御する。
【0051】
測定回路342は、FET344a、FET344bそれぞれのG電極に印加する電位を調整することにより、それぞれセルCL01からの放電、セルCL02への充電を制御する。測定回路342は、例えば、バッテリ残量ゲージIC(Battery Fuel Gauge Integrated Circuit)である。ACアダプタ37から電力が供給されないとき、EC31は、測定回路342にシステム電流Isysを通知し、セルCL01、CL02からシステム電流Isysに相当する電流を放電させる。
【0052】
次に、第2テーパ電圧Vtp,2の推定方法について説明する。推定方法の第1例は、オフチャージにおける満充電検出時におけるセル電圧Vcellを第2テーパ電圧Vtp,2として定める手法である。充電回路332は、EC31から通知されるシステム電力要求でシステム電力がゼロであること、または、システム電力不要であることをもって、充電方式がシステム非動作充電であること、つまり、システムに電力が供給されない状態での充電を判定することができる。充電回路332には、EC31を経由して測定回路342からセル電圧Vcellが通知される。充電回路332は、第1テーパ電圧Vtp,1に代え、新たに定めた第2テーパ電圧Vtp,2を用いて、満充電判定を行う。
【0053】
図3の例では、セル電圧V
cellが第1テーパ電圧V
tp,1を越えた後であっても、バッテリが満充電状態に達していない段階でのオフチャージでは、充電電流I
batがテーパ電流I
tpを上回った状態で、時間経過に従って減少する。そのため、直ちに満充電判定はなされない。オンチャージでは、システムでの電力消費により、充電電流I
batが低下し、テーパ電流I
tpを一時的に下回ることがある。満充電判定において第1テーパ電圧V
tp,1を用いる場合、セルCL01、CL02が満充電状態に達していないにも関わらず、セルCL01、CL02の状態が満充電状態と誤判定される。
しかしながら、テーパ電圧として第2テーパ電圧V
tp,2を用いることで、充電電流I
batがテーパ電流I
tpを一時的に下回っても、セル電圧V
cellが第2テーパ電圧V
tp,2に達していないため、直ちに満充電判定はなされない。このように、オフチャージ時に検出された第2テーパ電圧V
tp,2をセル電圧V
cellと比較できることで正しく満充電判定がなされる。また、現実に検出したセル電圧V
cellを第2テーパ電圧V
tp,2として採用することで個体差を解消することができる。
【0054】
推定方法の第2例は、充電モードをCC充電からCV充電に変更するとき、電源回路33からセルCL01への経路における回路抵抗と所定のテーパ電流I
tpに基づく電圧降下V
dpにより、一定の充電電圧V
charge,CVから降下した電圧を第2テーパ電圧V
tp,2として定める手法である。
図4の例では、充電モードは、充電電圧V
chargeがCV充電に係る予め定めた一定の充電電圧V
charge,CVに達するときにCC充電からCV充電に変更される。EC31は、分岐点336における電圧を充電電圧V
chargeとして測定する。EC31は、充電電圧V
chargeが一定の充電電圧V
charge,CVに達したと判定するとき、CC充電からCV充電への充電モード変更指示を充電回路332に通知する。充電回路332は、EC31から充電モード変更指示が入力されるとき、充電モードをCC充電からCV充電に変更する。充電回路332は、この時点における充電電圧V
charge,CVからセル電圧V
cellへの電圧降下V
dp(=V
charge,CV-V
cell)を充電電流I
batで除算して回路抵抗R
cirを算出することができる。
図2の例では、分岐点336からセルCL01の正極までの経路における回路抵抗R
cirは、FET334c、344a、344bとヒューズ346により生ずる。充電回路332は、充電電圧V
charge,CVから回路抵抗R
cirでのテーパ電流I
tpによる電圧降下R
cir×I
tpを差し引き、第2テーパ電圧V
tp,2を定めることができる。
【0055】
次に、本実施形態に係る充電制御処理の例について説明する。
図5は、本実施形態に係る充電制御処理を例示するフローチャートである。
図5の処理は、バッテリパック34への充電中に実行される。
(ステップS102)充電回路332は、測定回路342から通知されるセル電圧V
cellを監視し、セル電圧V
cellがその時点において設定されているテーパ電圧V
tp以上となるか否かを判定する。本実施形態では、テーパ電圧V
tpは、第1テーパ電圧V
tp,1と第2テーパ電圧V
tp,2のいずれか一方となりうる。セル電圧V
cellがテーパ電圧V
tp以上と判定される場合(ステップS102 YES)、ステップS104の処理に進む。テーパ電圧V
tp未満と判定される場合(ステップS102 NO)、ステップS102の処理を繰り返す。
【0056】
(ステップS104)充電回路332は、充電電流I
batが所定のテーパ電流I
tp以下となるか否かを判定する。テーパ電流I
tp以下と判定される場合(ステップS104 YES)、ステップS106の処理に進む。テーパ電流I
tpを超えると判定される場合(ステップS104 NO)、ステップS102の処理に戻る。
(ステップS106)充電回路332は、バッテリパック34の充電状態を満充電状態と判定し、バッテリパック34への充電を停止する。このとき、充電回路332は、高電位(H)を有する開閉制御信号のFET334cのG電極への印加を停止し、充電電力を遮断する。その後、
図5の処理を終了する。
【0057】
次に、本実施形態に係るテーパ電圧設定処理の例について説明する。
図6、
図7の処理は、テーパ電圧V
tpの初期値として、第1テーパ電圧V
tp,1が予め充電回路332に設定されている場合を例にする。
図6は、本実施形態に係るテーパ電圧設定処理の第1例を示すフローチャートである。
(ステップS202)充電回路332は、その時点における充電状態がオフチャージであるか否か判定する。充電回路332は、例えば、分岐点336からバッテリパック34に向かう充電電流I
batが有意に0Aよりも大きい正値であり、かつ、EC31から通知されるシステム電力要求によりシステム電力が要求されない場合、オフチャージと判定し、それ以外の場合、オフチャージではないと判定することができる。オフチャージと判定する場合(ステップS202 YES)、ステップS204の処理に進む。オフチャージではないと判定する場合(ステップS202 NO)、テーパ電圧を変更せずに、ステップS202の処理を繰り返す。
【0058】
(ステップS204)充電回路332は、第1テーパ電圧V
tp,1と予め設定されたテーパ電流I
tpを用いて、満充電判定を行う(
図5)。りバッテリパック34の充電状態が満充電状態と判定されるとき(ステップS204 YES)、ステップS206の処理に進む。充電状態が満充電状態に達していないと判定されるとき(ステップS204 NO)、テーパ電圧を変更せずに、ステップS202の処理に戻る。
【0059】
(ステップS206)測定回路342は、セル電圧Vcellを測定し、充電回路332に通知する。
(ステップS208)充電回路332は、測定回路342から通知されるセル電圧Vcellを第2テーパ電圧Vtp,2として定め、満充電判定に用いるテーパ電圧Vtpを第1テーパ電圧Vtp,1から第2テーパ電圧Vtp,2に変更する。
(ステップS210)充電回路332は、充電開始からの総充電時間が一定時間以内に満充電状態に達するか否かを判定する。一定時間を越えても満充電状態に達しないと判定される場合(ステップS210 YES)、テーパ電圧Vtpを第1テーパ電圧Vtp,1に変更し、ステップS202の処理に戻る。満充電状態に達すると判定される場合(ステップS210 NO)、第2テーパ電圧Vtp,2を変更せず、ステップS210の処理を繰り返す。
【0060】
図7は、本実施形態に係るテーパ電圧設定処理の第2例を示すフローチャートである。
(ステップS302)充電回路332は、その時点における充電状態が充電中であるか否か判定する。充電回路332は、例えば、分岐点336からバッテリパック34に向かう充電電流I
batが有意に0Aよりも大きい正値である場合、充電中と判定し、それ以外の場合、充電中ではないと判定することができる。充電中と判定する場合(ステップS302 YES)、ステップS304の処理に進む。充電中ではないと判定する場合(ステップS302 NO)、第1テーパ電圧V
tp,1を変更せずに、ステップS302の処理を繰り返す。
【0061】
(ステップS304)充電回路332は、EC31からの充電モード変更指示の入力の有無を監視し、充電モードがCC充電からCV充電に変化したか否かを判定する。CV充電に変更したと判定される場合(ステップS304 YES)、ステップS306の処理に進む。CV充電に変更していないと判定される場合(ステップS304 NO)、第1テーパ電圧Vtp,1を変更せずに、ステップS302の処理に戻る。
【0062】
(ステップS306)充電回路332は、その時点における充電電圧Vchargeとセル電圧Vcellの電位差と充電電流Ibatから回路抵抗Rcirを算出する。ここで、測定回路342は、セル電圧Vcellを測定し、充電回路332に通知する。充電回路332は、充電電圧Vchargeと充電電流Ibatを測定する。
(ステップS308)充電回路332は、回路抵抗Rcirに基づきテーパ電流Itpによる電圧降下Rcir×Itpを充電電圧Vchargeから差し引いて第2テーパ電圧Vtp,2を算出し、満充電判定に用いるテーパ電圧Vtpを第1テーパ電圧Vtp,1から第2テーパ電圧Vtp,2に変更する。
(ステップS310)充電回路332は、総充電時間が一定時間以内に満充電状態に達するか否かを判定する。一定時間を越えても満充電状態に達しないと判定される場合(ステップS310 YES)、テーパ電圧Vtpを第1テーパ電圧Vtp,1に変更し、ステップS302の処理に戻る。満充電状態に達すると判定される場合(ステップS310 NO)、第2テーパ電圧Vtp,2を変更せず、ステップS310の処理を繰り返す。
【0063】
以上に説明したように、本実施形態に係る電源回路33は、電源から供給される直流電力のうち、システムに要求されるシステム電力を前記システムに供給し、残された電力である充電電力をバッテリ(例えば、バッテリパック34)に充電し、バッテリのセル電圧が所定の検出電圧(即ち、テーパ電圧)以上であり、かつ、充電電力の充電電流が所定の検出電流以下(即ち、テーパ電流)となるときバッテリの充電状態を満充電と判定する。電源回路33は、バッテリへの特定の充電条件のもとで得られるセル電圧に基づいて充電状態を満充電と判定する時点におけるセル電圧を第2検出電圧(例えば、第2テーパ電圧)として推定し、所定の検出電圧を予め定めた第1検出電圧(例えば、第1テーパ電圧)から第2検出電圧に更新する。
この構成により、特定の充電条件を満たすときのバッテリのセル電圧に基づいて推定される満充電時におけるセル電圧が、バッテリの充電状態が満充電に達したことを判定するための検出電圧として定まる。そのため、システムにおける電力消費により、充電電流が一時的に低下する場合であっても、計測されるセル電圧が満充電時におけるセル電圧に達しない場合には、満充電との誤判定を回避することができる。そのため、より確実に満充電状態に達するまでバッテリへの充電を継続することができる。また、現実に検出された充電条件に基づくセル電圧から第2検出電圧が推定されるため、個体差に関わらず、個々の電気的特性に適合した満充電状態を検出することができる。
【0064】
電源回路は、システム電力をシステムに供給せずに充電電力をバッテリに充電するとき、充電状態を満充電と判定する時点におけるセル電圧を第2検出電圧として定めてもよい。
この構成により、システムにおける電力消費による一時的な充電電流を回避して、満充電状態が検出され、その時点におけるセル電圧が第2検出電圧として、満充電状態の判定に用いられる。そのため、充電電流が一時的に低下する場合であっても、セル電圧が第2検出電圧を越えない場合には、満充電状態の誤検出を回避することができる。
【0065】
電源回路は、バッテリへの充電方式が一定の充電電流で第1充電モード(CC充電)から一定の充電電圧で充電する第2充電モード(CV充電)に変更されるとき、バッテリへの充電電圧、セル電圧および充電電流に基づいて電源回路からバッテリへの回路抵抗値を測定し、充電電圧から回路抵抗値と検出電流により降下した電圧を第2検出電圧として定めてもよい。
この構成により、充電モードの変更時における充電電圧からセル電圧への電圧降下と充電電流から定まる回路抵抗値と検出電流に基づいて、満充電状態における電圧降下、ひいてはセル電圧が第2検出電圧として推定される。そのため、充電電流が一時的に低下する場合であっても、セル電圧が第2検出電圧を越えない場合には、満充電状態の誤検出を回避することができる。
【0066】
電源回路は、バッテリへの充電時間が所定の基準充電時間を超えても充電状態を満充電と判定しないとき、所定の検出電圧を第1検出電圧に変更してもよい。
この構成により、充電時間が長期にわたっても第2検出電圧を用いて満充電状態が検出されない場合には、第2検出電圧が解除され、第1検出電圧が満充電判定に用いられる。そのため、満充電状態に達しても検出できない第2検出電圧を排除することができる。
【0067】
なお、電源回路33は、バッテリパック34を備え、単一の電源回路33として一体に構成されてもよい。バッテリパック34に備わるセルの個数は、2個に限られず、1個、または、3個以上であってもよい。バッテリパック34が複数のセルを備える場合、それらのセルの一部または全部は並列に接続されてもよい。
【0068】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成は上述の実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。上述の実施形態において説明した各構成は、任意に組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0069】
1…電子機器、11…CPU、12…メインメモリ、13…ビデオサブシステム、14…ディスプレイ、21…PCH、22…BIOSメモリ、23…補助記憶装置、25…WLANカード、26…USBコネクタ、31…EC、32…入力部、33…電源回路、34…バッテリパック、37…ACアダプタ、38…電源ボタン、332…充電回路、FET334a、334b、334c…FET、342…測定回路、344a、344b…FET、346…ヒューズ、CL01、CL02…セル、R…抵抗素子