(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173812
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】軽量且つ頑丈な時計部品
(51)【国際特許分類】
G04B 37/22 20060101AFI20241205BHJP
A44C 5/02 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
G04B37/22 A
G04B37/22 J
G04B37/22 B
A44C5/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024088297
(22)【出願日】2024-05-30
(31)【優先権主張番号】23176779.9
(32)【優先日】2023-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】599091346
【氏名又は名称】ロレックス・ソシエテ・アノニム
【氏名又は名称原語表記】ROLEX SA
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】弁理士法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブルーノ リシーキ
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ モンドー
(57)【要約】
【解決手段】
少なくとも1つの多孔質コアを含み、多孔質コアは、第一素材を含むまたは第一素材に基づき、固形の第一素材の相対密度の80%以下の、または60%以下の、または50%以下の相対密度を有する、部品、特に時計部品であって、少なくとも1つの多孔質コアは、自身の表面における自身の多孔性が、自身の表面から離れた自身の多孔性よりも低い、少なくとも1つの領域を有する、部品、特に時計部品。
【選択図】
図4a
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの多孔質コアを含み、前記多孔質コアは、第一素材を含むまたは第一素材に基づき、固形の前記第一素材の相対密度の80%以下の、または60%以下の、または50%以下の相対密度を有する、部品、特に時計部品であって、
前記少なくとも1つの多孔質コアは、自身の表面における自身の多孔性が、自身の表面から離れた自身の多孔性よりも低い、少なくとも1つの領域を有する、
部品、特に時計部品。
【請求項2】
前記少なくとも1つの領域の前記低多孔性は、任意の表面被覆を含まない、外面から測定される、1から500μmの間の、または10から200μmの間の、または20から100μmの厚さにわたり前記表面上で延長する、
請求項1に記載の部品。
【請求項3】
前記少なくとも1つの多孔質コアの前記第一素材は、特にFe、Mg、Al、Ti、Au、Pd、Pt、Ni、Si及びまたはCoといった元素を含む、金属、または金属合金、または金属超合金である、及びまたは非晶質または部分的に非晶質合金である、またはポリマーである、またはセラミック、特にアルミナまたはジルコニアに基づくセラミックである、
請求項1または2に記載の部品。
【請求項4】
前記少なくとも1つの多孔質コアは、金属発泡体の形状を取る、または特に格子、TPMS、胞状、気泡、または小柱状タイプの、規則的または不規則的多孔質フレームワーク製のスケルトンである、
請求項1から3のいずれか一項に記載の部品。
【請求項5】
前記少なくとも1つの領域の前記表面の前記多孔性の度合いは、0.5%以下、または0.1%以下、または0.05%以下、または0.01%以下である、及びまたは前記少なくとも1つの領域の前記表面の前記相対密度は、固形の前記第一素材の前記相対密度の90%以上、または99%以上である、
請求項1から4のいずれか一項に記載の部品。
【請求項6】
300HV以上の、または500HV以上の、または600HV以上の、または900HV以上の、前記少なくとも1つの領域の表面硬度を有する、
請求項1から5のいずれか一項に記載の部品。
【請求項7】
前記少なくとも1つの多孔質コアは、前記少なくとも1つの領域の前記表面において、前記表面から離れた前記孔の寸法以下の前記寸法の孔を有する、及びまたは前記少なくとも1つの領域の孔のない表面を含む、及びまたは前記少なくとも1つの領域において自身の表面と自身の少なくとも1つのコアとの間の自身の厚みにわたり非均一多孔性を、特に前記表面から中心に向かって増加する、前記孔の前記寸法の傾斜を有する、
請求項1から6のいずれか一項に記載の部品。
【請求項8】
前記少なくとも1つの多孔質コアは、孔を含み、前記少なくとも1つの多孔質コアの前記孔の大部分、または全部、またはほぼ全部は、充填素材により、特にポリマーといった弾性素材により充填される、
請求項1から7のいずれか一項に記載の部品。
【請求項9】
前記少なくとも1つの領域の前記表面上に配置された、特に500nmから20μmの間の厚さを有する、金属または金属合金の、装飾層を形成する表面被覆を含み、前記表面被覆は、任意で、テクスチャ付け、研磨、サンドブラスト、またはサテン表面仕上げを含む、
請求項1から8のいずれか一項に記載の部品。
【請求項10】
小型時計ケースまたはブレスレットの形状を取る部品といった、装飾的時計部品である、
請求項1から9のいずれか一項に記載の部品。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載の少なくとも1つの部品を含む、時計。
【請求項12】
第一素材を含むまたは第一素材に基づき、固形の前記第一素材の相対密度の80%以下の、または60%以下の、または50%以下の相対密度を有する、少なくとも1つの多孔質コアを製造するステップを含み、前記少なくとも1つの多孔質コアは、自身の表面における自身の多孔性が、自身の表面から離れた自身の多孔性よりも低い、少なくとも1つの領域を有する、
部品、特に時計部品の製造方法。
【請求項13】
前記少なくとも1つの多孔質コアを製造する前記ステップは、金属発泡体製の、または特に格子、TPMS、胞状、気泡、または小柱状タイプの、規則的または不規則的多孔質フレームワーク製のスケルトンの形状の少なくとも1つの多孔質コアを形成する、前記第一素材製のまたは前記第一素材に基づく固形ブランクの化学腐食のステップまたは付加製造のステップを含む、
請求項12に記載の部品の製造方法。
【請求項14】
特にサンドブラストまたはレーザ、とりわけピコ秒またはフェムト秒レーザの使用により、特に前記少なくとも1つの多孔質コアの前記表面の前記孔の少なくとも一部を閉鎖することで、前記少なくとも1つの多孔質コアの前記少なくとも1つの領域の前記表面の密度を高めるための、レーザまたは熱または機械的処理のステップを含む、
請求項12または13に記載の部品の製造方法。
【請求項15】
前記部品の前記表面に、テクスチャ付け、研磨、サンドブラスト、またはサテンタイプの最終表面状態を得るために、研削及びまたは研磨及びまたはミクロビーズブラスト及びまたは装飾の最終ステップを含む、
請求項12から14のいずれか一項に記載の部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時計部品、特に装飾的時計部品、またはより一般的には時計分野外のものを含む、あらゆるその他の部品に関する。本発明はまた、少なくとも1つの当該時計部品を含む、時計、特に腕時計に関する。本発明はまた、当該時計部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
時計部品、そしてより具体的には装飾的時計部品は、矛盾する場合もある多数の機械的性質を組み合わせる必要がある。例えば、時計部品は、
- 時計の装着が快適であるように、軽量である、
- 高級時計の高い審美的基準に合致するよう、完璧であるのと同時に、非常に洗練されている、
- 時計部品が、いつまでも同じ外観を、そしてより一般的にはその機械的性質の全てを維持するよう、時計が曝される外部応力に耐えるため、頑丈である、
必要がある。
【0003】
実務上、既存の解決策は、これら性質の間の妥協を意味する。このため、時計部品は、一般的には、軽量であり且つ硬いこともある素材から、固形ピースとして製造される。しかしながら、既存の解決策には制限があり、時計部品の性質及びまたは外観を最適化することを可能にする、新たな解決策を特定することが求められる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、先行技術を超える改善を提供する、軽量且つ頑丈な部品を、とりわけ時計部品を得る解決策を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このため、本発明は、少なくとも1つの多孔質コアを含み、前記多孔質コアは、第一素材を含むまたは第一素材に基づき、固形の前記第一素材の前記相対密度の80%以下の、または60%以下の、または50%以下の相対密度を有する、部品、特に時計部品であって、前記少なくとも1つの多孔質コアは、自身の表面における自身の多孔性が、自身の表面から離れた自身の多孔性よりも低い、少なくとも1つの領域を有する、部品、特に時計部品に基づく。
【0006】
本発明はまた、第一素材を含むまたは第一素材に基づき、固形の前記第一素材の前記相対密度の80%以下の、または60%以下の、または50%以下の相対密度を有する、多孔質コアを製造するステップを含み、前記多孔質コアは、自身の表面における自身の多孔性が、自身の表面から離れた自身の多孔性よりも低い、少なくとも1つの領域を有する、部品、特に時計部品の製造方法に基づく。
【0007】
本発明は、より具体的には、請求項により定義される。
【0008】
本発明のこうした目的、特徴、及び利点は、添付の図面を参照して説明される、特定の非限定的実施形態についての以下の説明において、詳細に開示される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態にかかる、部品の、特に時計部品の製造方法の第一ステップで得られた、基本格子構造を図示する。
【
図2】
図2は本発明の他の実施形態にかかる、部品の、特に時計部品の製造方法の第一ステップで得られた、TPMS(三重周期極小曲面)タイプの基本構造を図示する。
【
図3a】
図3aは、本発明の実施形態の2つの変形例にそれぞれかかる、時計部品の製造方法の第一ステップの結果として得られた、小型時計胴部ケースの多孔質コアを図示する。
【
図3b】
図3bは、本発明の実施形態の2つの変形例にそれぞれかかる、時計部品の製造方法の第一ステップの結果として得られた、小型時計胴部ケースの多孔質コアを図示する。
【
図4a】
図4aは、本発明の実施形態の第三変形例にかかる、時計部品の製造方法の第一ステップの結果として得られた、胴部ケースのブランクの多孔質コアの二つの図を示す。
【
図4b】
図4bは、本発明の実施形態の第三変形例にかかる、時計部品の製造方法の第一ステップの結果として得られた、胴部ケースのブランクの多孔質コアの二つの図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のコンセプトは、非常に軽量であるが、頑丈である、少なくとも1つの多孔質コアを含む、部品を提案することからなる。とりわけ、時計部品は、本質的には、多孔質コアであってよい。本発明の特定のバージョンによれば、部品の少なくとも1つの部分または領域は、多孔質コアを有してもよく、時計部品の残部は、あらゆる他の構造を、特に従来の構造を有してもよい。更に、部品は、その表面の全部または一部を、換言すれば、表面から離れた、部品のより内側に向かって測定される多孔性よりも、その表面において低い多孔性を有する、少なくとも1つの領域を含む。
【0011】
いずれの場合でも、部品は、非常に頑丈である上に可能な限り軽量であり、少なくとも減少された表面多孔性の領域において、任意で非常に硬いため、結果として得られるのは、妥協の必要のない部品である。加えて、有利には、部品の表面仕上げは、非常に魅力的な外観を有するものである。任意で、部品は、装飾層の、とりわけ繊細装飾表面層の形状を取る、表面被覆を含んでもよい。変形実施形態によれば、層は、とりわけセラミック-金属複合材料に基づく、またはポリマー-セラミック複合材料に基づく、硬い層であってもよい。
【0012】
本明細書中、「素材に基づく」の表現は、当該素材の含有量が少なくとも50重量%である事実を示すために用いられることを注記する。
【0013】
本発明の一実施形態にかかる時計部品の製造方法を、以下に詳細に説明する。
【0014】
方法は、最初に、固形の第一素材の相対密度の、80%以下の、または60%以下の、または50%以下の相対密度を有する、第一素材製のまたは第一素材に基づく、多孔質コアを製造する第一ステップを含む。多孔質コアの相対密度は、このように、固形の第一素材の相対密度に対して、非常に低い。当該相対密度は、多孔質コアの全体または平均相対密度である。
【0015】
当該第一ステップは、方法のいくつかの変形実施形態を用いて実施される。
【0016】
特定の変形実施形態によれば、多孔質コアを製造するステップは、第一素材製の固形ブランクの化学腐食のステップを含む。このため、当該第一変形実施形態において、方法の第一ステップは、第一素材製のまたは第一素材に基づく、時計部品のコアの固形ブランクを製造する第一サブステップを含む。その後、方法の第一ステップは、結果として多孔質コアを形成するため、第一素材製の固形ブランクの化学腐食の第二サブステップを含む。このような多孔質コアは、発泡体の形状を、例えば金属発泡体の形状を取っても良い。
【0017】
他の特定の変形実施形態によれば、多孔質コアを製造するステップは、その後金属発泡体の形状で固化される、液体金属内での泡の形成に基づいてもよい。
【0018】
更に他の特定の変形実施形態によれば、多孔質コアを製造するステップは、成形素材で形成された多孔質体内への液体金属の浸透の技術に基づいてもよい。金属の固化後、多孔質体を形成する成形素材は除去される。
【0019】
更に他の特定の変形実施形態によれば、多孔質コアを製造するステップは、第一素材製のまたは第一素材に基づく多孔質コアを直接形成するための、付加製造ステップを含む。例えば、粉末床溶解結合の技術は、正確な構造と孔の開口の良好な定義と異方性の良好な制御を有する、制御されたアーキテクチャを製造することを可能にする。
【0020】
全ての場合において、多孔質コアは、固形の第一素材の相対密度の、80%以下の、または60%以下の、または50%以下の、相対密度を有する。換言すれば、多孔質コアは、時計部品の多孔質コアと同一体積を占め全体が同じ第一素材製の固形ピースを形成するボディの質量に対して、80%以下の、または60%以下の、または50%以下の質量を有する。
【0021】
多孔質コアは、本発明によれば、多数の態様を示してもよい。例えば、多孔質コアは、特に格子タイプの、規則的または不規則的多孔質フレームワーク製のタイプのスケルトンを有する多孔質コア、またはTPMS(三重周期極小曲面)として既知の構造、または胞状、気泡、または小柱状構造であってもよい。特に、多孔質コアは、例えば、金属発泡体製であってもよい。
【0022】
多孔質コアは、多数の素材を含んでもよい。例えば、特にFe、Mg、Al、Ti、Au、Pd、Pt、Ni、Si、及びまたはCoのうちの1以上の元素を含む、金属または金属合金の、または金属超合金の形態の、第一素材を含むまたは第一素材に基づく多孔質コアであってもよい。当該第一素材はまた、非晶質または部分的非晶質合金、またはセラミック、例えばアルミナまたはジルコニアに基づくセラミックであってもよい。
【0023】
多孔質コアの変形実施形態によれば、多孔質コアはいくつかの異なる素材製であってもよい。好ましくは、多孔質コアは、上述のように第一素材に基づく、換言すれば当該第一素材で形成された構造は、全体としての多孔質コア内で最大の重量を有し、好ましくは多孔質コアの少なくとも50重量%を占める。いくつかの素材を有する変形実施形態において、多孔質コアは、多孔質コアの中心と多孔質コアの表面との間で、層状に構造化された異なる素材を含んでもよい。この特定の変形例において、多孔質コアは、全ての場合において、いくつかの素材の多孔質構造を有し、当該素材の全てで形成された多孔質構造の相対密度は、その全体が当該第一素材で形成された固形ピースとしての同一構造の相対密度の、80%以下、または60%以下、または50%以下である。
【0024】
本明細書において、多孔質コアの相対密度は、多孔質コアで形成されたスケルトン全体の平均相対密度に対応するものであり、第一素材またはコアを構成する素材の相対密度には対応しない。このため、多孔質コアの相対密度は、多孔質コアの多孔性または多孔性の度合いの関数である。
【0025】
このため、
図1は、例として、当該第一ステップで多孔質コアを製造するために用いられてもよい、様々な格子構造を有する、基本構造を示す。
図2も同様に、本発明の第一ステップの文脈で製造されてもよい、TPMS構造のいくつかの基本構造を示す。
【0026】
例示的実施形態によれば、多孔質コアは、無作為構造を有する、換言すれば不規則な態様で、無作為の位置及び寸法の孔を含む、発泡体であってもよい。他の例示的実施形態によれば、多孔質コアは、例えば反復的フレームワークを形成する構造を有する、三次元フレームワーク(「格子」)といった、規則的な非無作為構造を有してもよい。これは、上述の格子構造の場合である。
【0027】
このように、構造は、相当な機械的強度を提供する一方で、最大多孔性を得るために、選択されてもよい。
【0028】
変形実施形態によれば、多孔質コアは、全体重量を最小化するためだけでなく、1以上の他の機能を発揮するために設計される。例えば、多孔質コアは、最大の機械的応力またはひずみを体験する可能性が高い特定の領域において、最適な機械的強度を提供するよう、設計されてもよい。このように、多孔質コアの構造は、例えば該当する領域において機械的補強を形成するような、多孔質コアを形成するまたは多孔質コアに含まれる第一素材の特定の非均一分布のおかげで、こうした高い応力に抵抗するよう適合され、こうした高い応力に耐え得るように最適に備えられてもよい。特に時計部品が小型時計胴部ケースまたはケースの場合に、多孔質コアの構造を設計する際に検討されてもよい他の機械的機能に関して、(例えばハウジングまたはケース内の小型時計ムーブメントを防護するため)衝撃を吸収するよう適合された領域について、(例えば小型時計ムーブメントをケースまたは胴部ケース内に組み立てるための)当該時計部品を他の部品と組み立てる領域について、時計部品の密封を補強する領域について、または(例えば小型時計ムーブメントから発せられる音を伝達するための)音の伝達の領域について、言及する。代替的にまたは追加で、時計部品の、特に例えばブレスレット留め金のカバープレートの形状の時計部品の場合に、弾性変形を可能にする、柔軟領域について言及する。これら柔軟領域は、当該時計部品を他の部品と組み立てる際に使用されてもよい。
【0029】
本発明によれば、多孔質コアは、表面から離れた場合よりも、より密度が高い及びまたは硬い、表面において特に魅力的な形状を有するように、自身の中心に対して自身の表面近くに、より小さいサイズの孔を含んでもよい。さらに一般的には、多孔質コアは、特に自身の中心と自身の表面の間で差異を有する、非均一構造を、特に非均一多孔性を有してもよい。この差異は、表面から中心に向かって増加する、孔の寸法の勾配からなってもよい。とりわけ、多孔質コアの表面、または多孔質コアの所定の層は、孔がなくてもよい、または非常に少ない孔を有してもよい。加えてまたは代替的に、考えられる層は、コアの表面上に、または当該表面近くに存在する孔を閉鎖することを可能にする、スキンを構築するよう、コアの表面に形成されてもよい。上述の多孔質コアの変形例の全部または一部は、もちろん、組み合わされてもよい。当該形状の多孔質コアは、自身の中心より多孔性が低い、任意で表面において高密度であり多孔質ではない、任意で比較的硬く、自身の中心より硬い、軽量であるが、魅力的な表面外観を有する部品を形成可能にする。当該多孔質コアの表面は、時計部品の外面に対応する、多孔質コアの外面、特に可視面であってもよい。
【0030】
多孔質コアの当該表面は、外面であってもよい。実際、構造は、装飾層の、とりわけ繊細装飾表面層の形状を取る表面被覆の付着を最適化するよう設計されてもよい。
【0031】
特に、例えば物理的気相成長法(PVD)、または化学蒸着(CVD)、または電子層成長法(ALD)の方法で堆積された、外面が当該装飾層により任意で被覆された時計部品を、特に胴部ケースまたはケースを得ることが可能である。例えば好ましくは500nmから20μmの間の厚さの、例えばAu、Ag、Pt、Pdタイプの金属または金属合金の、例えばPVDによりコア上に堆積され、特定の外観または色を示すことが意図される層が、第一層上に追加されてもよい。当該表面被覆の一つの利点は、高級時計の高い基準に合致する、装飾層を形成することを可能にする事実に存在する。更に、表面被覆は、特に魅力的な外観を有するように、特に第一素材では達成できない色または効果を有するように、設計されてもよい。
【0032】
変形実施形態によれば、製造方法は、有利には、多孔質コアと任意の表面被覆との間の境界面において、表面被覆の付着を最適化するため、混合された多孔質コアと表面被覆のそれぞれの素材を含む、移行領域を形成することを可能にする。
【0033】
変形実施形態によれば、製造方法はまた、所定の素材により、多孔質コアの孔の大部分を、または全てをまたはほぼ全てを充填するステップを含んでもよい。この場合、多孔質コアは、依然、充填素材を含まない本件構造と定義され、部品は、多孔質コアと充填素材の組み合わせからなる。充填素材は、有利には、ポリマーといった、弾力素材である。
【0034】
有利には、孔を充填する当該ステップは、衝撃を消散させ、従って多孔質コアで形成されたスケルトンを最適に保護することを可能にする素材を含むコアが更に設けられた、本発明にかかる部品を提案することを可能にする。
【0035】
全ての場合において、製造方法は、中間レーザまたは熱または機械処理の任意の追加ステップを実施してもよく、その機能は、特に多孔質コアの表面において孔の少なくとも一部を閉鎖することにより、多孔質コアの表面の密度を高くすることである。これは、例えば、サンドブラスト作業またはレーザを、とりわけピコ秒またはフェムト秒レーザを使用した作業であってもよい。他の追加処理は、多孔質コアの表面粗さを増加することからなってもよい。更に他の追加処理は、洗浄または清掃またはプラズマ処理または接着促進剤の堆積からなってもよい。より一般的には、追加ステップは、多孔質コアの表面を改善または制御することが予測される。全ての場合において、方法は、部品の少なくとも一部の領域において、多孔質コアの当該表面から離れた部分の多孔性に対して減少された多孔性を有する表面を形成することを可能にする。
【0036】
製造方法は、任意である、補完的処理を含んでもよい。
【0037】
特に、方法は、例えばあらゆる表面欠陥を除去することで、特定の審美的外観を与え、その最終形状を最適化するために、特に表面状態及びまたは多孔質コアの表面の少なくとも一部の色に関して、または被覆層の表面に関して、任意の仕上げステップを実施してもよい。このような方法は、更に表面に特定の機能性を与えることができる。このようなステップは、研削及びまたは研磨及びまたはミクロビーズブラスト及びまたは仕上げ及びまたは装飾及びまたは着色のステップであってもよい。ステップは、例えばピコ秒またはフェムト秒レーザを用いて、機械的に及びまたは電気化学的に及びまたは光学手段により、実施されてもよい。当該仕上げステップを実施するために、各種技術を組み合わせることができる。仕上げステップは、例えば、テクスチャ付けされ、研磨され、サンドブラストされた、またはサテンタイプの、及びまたは特定の色を有する、またはこれら状態の組み合わせの、最終表面状態を有する、時計部品を得ることを可能にする。
【0038】
図3a及び3bは、腕時計のケースの製造の特定の例の文脈において、本発明にかかる製造方法の第一ステップの適用を図示する。
図3a及び
図3bは、このため、2つの変形実施形態にかかる、方法の第一ステップから得られた、小型時計ケースの多孔質コアを図示する。両方の場合において、当該多孔質コアは、チタンである第一素材を用いた付加製造により、それぞれのメッシュ寸法が500μm(
図3a)及び200μm(
図3b)のメッシュ構造で製造される。対応する多孔性の度合いは、それぞれ70%と48%である。密度は、それぞれ1.6g/cm
3と2.3g/cm
3である。変形例として、同一構造を有するが、より軽量である多孔質コアを得るために、チタンの代わりに、使用される第一素材は、マグネシウムMgまたはアルミニウムAlまたはMgに基づく合金またはAlに基づく合金またはTiに基づく合金であってもよいことを注記する。具体的には、1.7g/cm
3の密度と、約50%の多孔性を有するMg合金によれば、0.80~0.85g/cm
3の見かけ密度を有する多孔質コアを得ることが可能になる。また、固形の合金の相対密度よりも厳密に低い相対密度の貴金属製の部品を得るために、金(Au)、またはパラジウム(Pd)、またはプラチナ(Pt)に基づく貴金属合金の使用を予測することも可能である。更に、セラミックの相対密度よりも厳密に低い相対密度のセラミック製の部品を得るために、ジルコニアといったセラミックの使用を予測することも可能である。
【0039】
本発明は、より一般的には、本発明にかかる製造方法で得られた部品に、特に時計部品に関するが、もちろん上記説明のものに限定されるものではない。
【0040】
このため、本発明は、第一素材を含む多孔質コアを含む、あらゆる部品を、特にあらゆる時計部品を、形成することを可能にし、多孔質コアは、固形の第一素材の相対密度の80%以下の、または60%以下の、または50%以下の相対密度を有し、少なくとも1つの多孔質コアは、自身の表面における自身の多孔性が、自身の表面から離れた自身の多孔性よりも低い、少なくとも1つの領域を有する。
【0041】
多孔質コアの表面の全部または一部、特に多孔質コアの少なくとも一領域は、特に高い相対密度を有するように設計される。このため、多孔質コアの表面の相対密度は、特に、固形の第一素材の相対密度の、90%以上、または99%以上であってもよい。
【0042】
このため、有利には、多孔質コアの表面は、0.5%以下の、または0.1%以下の、または0.05%以下の、または0.01%以下の、多孔性の度合いを有してもよい。ここで、多孔性の度合いは、審美性と機能性の結果を有することを注記する。多孔性から生じる欠陥の寸法に応じて、例えば研磨した表面は多孔性を強調し、これは縁における不規則な光の反射により明らかになるかもしれない。更に、多孔性は、表面の機能性に有害である場合があり、表面を浸透性にし、このため(熱、化学品、等に対する)保護バリアとしては無効となることがある。このため、低い多孔性を有する部品の表面と、任意で可能な限り低い多孔性を有する多孔質コアの表面を得ることは有益である。
【0043】
更に、多孔質コアの表面は、最終時計部品の頑健性に寄与するのに十分な厚さを有してもよい。多孔質コアの表面の厚さとは、高い相対密度及びまたは低い多孔性を有する領域、特に固形の第一素材の相対密度の90%以上の、または99%以上の、相対密度の表面の領域、及びまたは0.5%以下の、または0.1%以下の、または0.05%以下の、または0.01%以下の、多孔性の度合いを有する表面における領域の、厚さを意味する。もちろん、多孔質コアの表面が低い多孔性を有する領域は、多孔質コアの外面から所定の厚みにわたり配置される。有利には、当該厚さは、部品が可能な限り軽量であることを保証するため、非常に小さく、これは有利には、「表面」の文言は、測定が体積にわたり実施されても、この文脈で適用可能なことを意味する。有利には、当該厚さは、例えば表面が研削、仕上げ及びまたは研磨処理が行われた後の、完成時計部品上で、1から500μmの間、または10から200μmの間、または20から100μmの間である。厚さは、多孔質コアの表面に任意で追加されたあらゆる表面被覆を無視して測定される。更に、多孔質コアの当該表面は、テクスチャ付けされた、研磨された、サンドブラストされた、またはサテンの、表面仕上げを有してもよい。このような表面処理後に、得られた多孔質コアの表面の厚さは、当初得られた厚さよりも低い場合がある。例えば、150から200μmの間の厚さを有する多孔質コアの表面の場合、機械的研磨またはレーザテクスチャ付けは、当該最終厚みを、約80μmに減少することもある。
【0044】
多孔質コアの表面は、任意で、非常に硬く設計される。このため、表面は、300HV以上の、または500HV以上の、または600HV以上の、または900HV以上の表面硬度を有してもよい。代替的にまたは加えて、多孔質コアの表面は、任意で、魅力的な外見を、特に第一素材から形成された多孔質コアでは達成できない色または効果を有するように設計されてもよい。
【0045】
上述のように、製造方法は、有利には、多孔質コアの表面の性質及びまたは付着を最適化するために、多孔質コアと多孔質コアの表面との間の境界面に、移行領域を形成することを可能にする。
【0046】
任意の表面被覆は、第一素材と同一であっても異なってもよい、第二素材を含んでもよい。
【0047】
上述の方法は、多数の素材と両立可能であるという利点を有する。例えば、多孔質コアの第一素材は、特にFe、Mg、Al、Ti、Au、Pd、Pt、Ni、Si及びまたはCoから選ばれた1以上の元素を含む、金属または金属合金、または金属超合金であってもよい。当該第一素材はまた、非晶質または部分的に非晶質合金またはポリマー、またはセラミック、例えばアルミナまたはジルコニアに基づくセラミックであってもよい。
【0048】
本発明は、あらゆる部品に、とりわけあらゆる時計部品に、特に小型時計胴部ケースやブレスレットの形状を取る部品といった、あらゆる装飾部品に、特に適している。
【0049】
更に、本発明の特定のバージョンによれば、部品の、特に時計部品の少なくとも1つの部分または領域は、本発明にかかる多孔質コアを有してもよく、部品の残りは他の、特に従来の構造を有してもよい。このため、本発明はまた、部分的な多孔質コアを、換言すれば一定の部分のみが多孔質であるコアを、または互いに1つ以上の非多孔質部分により接続されたいくつかの多孔質コアを含む、時計部品に関する。変形例として、時計部品は、自身の多孔性の構造の意味で、及びまたは自身の素材または複数の素材の意味で、異なるいくつかの多孔性部分で構成されるコアを含んでもよい。全ての場合において、時計部品は、少なくとも1つの多孔質コアを含む。換言すれば、時計部品のコアは、全体がまたは部分的に当該少なくとも1つの多孔質コアで構成されてもよい。
【0050】
例として、
図4a及び
図4bは、多孔質コアを形成する部分を有する、胴部ケース1のブランクを図示する。これら部分は、例えば、ケースの側部2または突起3を予め表してもよい。これら多孔質コアは、固形の第一素材の相対密度の、80%以下の、または60%以下の、または50%以下の相対密度を有する、第一素材を含む、または第一素材に基づく。
図4a及び
図4bにかかる実施形態の多孔質コアは、高い応力に曝される、または大幅に露出される部分に補強領域を形成するため、個体の、非多孔質縁部5を含むことを注記する。他の表面領域は、有利には多孔質コアの全表面は、上述のように、低い多孔性の表面を得るために、本発明に応じて処理される。
【0051】
本発明はまた、このような少なくとも1つの時計部品を含む、時計に、特に腕時計に関する。
【0052】
最後に、本発明は、これまでは達成されていなかった、部品の、特に装飾用時計部品の2つの主要目的を組み合わせることを可能にする。本発明は、十分な性能の、すなわち強い及びまたは硬い及びまたは魅力的な表面を有する、軽量部品と、機械的に頑丈な部品の両方を得ることを可能にする。本発明はまた、例えばレーザテクスチャ付けを用いて、多孔質コアの低多孔性の表面、または当該表面上に堆積された任意の装飾被覆を処理すること、及びまたは、やすり掛け、サテン仕上げ、または研磨といった表面状態及び仕上げを得ることを可能にする。
【0053】
本発明は、時計部品を参照して説明された。もちろん本発明は、例えば自動車、航空、宇宙、医学、等の、軽量且つ頑丈な部品を有することが有益な、その他の分野においても用いることができる。
【符号の説明】
【0054】
1 胴部ケース
2 側部
3 突起
5 非多孔質縁部
【外国語明細書】