(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173813
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】膜加湿器
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04119 20160101AFI20241205BHJP
H01M 8/04 20160101ALI20241205BHJP
【FI】
H01M8/04119
H01M8/04 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024088372
(22)【出願日】2024-05-30
(31)【優先権主張番号】10 2023 205 080.3
(32)【優先日】2023-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】506292974
【氏名又は名称】マーレ インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】MAHLE International GmbH
【住所又は居所原語表記】Pragstrasse 26-46, D-70376 Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー イェアガー
(72)【発明者】
【氏名】マティアス オアトマン
(72)【発明者】
【氏名】ラルフ フロマー
(72)【発明者】
【氏名】ペーター ノヴァク
(72)【発明者】
【氏名】エーファ ベンデル
(72)【発明者】
【氏名】トビアス バウムガート
【テーマコード(参考)】
5H127
【Fターム(参考)】
5H127AC02
5H127BB02
5H127BB34
5H127EE17
(57)【要約】 (修正有)
【課題】燃料電池システム用の膜加湿器を提供する。
【解決手段】複数の平たい膜(3)と、弾性変形可能な材料から成る少なくとも1つの圧縮部材(16)とを積層させた膜スタック(2)から構成される燃料電池システム用の膜加湿器であって、圧縮部材(16)が、膜スタック(2)の温度に起因する変化を補償する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池システム用の膜加湿器(1)であって、
前記膜加湿器(1)は、複数の平たい膜(3)を含む膜スタック(2)を有し、
前記膜スタック(2)の前記膜(3)は、積層方向(ST)に互いに間隔をあけて積層されており、
前記膜スタック(2)は、前記積層方向(ST)に対して平行に向けられた4つの通流可能な側面(6a,6b,7a,7b)と、前記積層方向(ST)に対して横方向に向けられた2つの通流不能な端面(8a,8b)とを有し、
前記膜加湿器(1)は、支持ケージ(9)を有し、該支持ケージ(9)内に前記膜スタック(2)が収容されており、
前記通流可能な側面(6a,6b,7a,7b)は、前記支持ケージ(9)を通って通流可能になっている、膜加湿器(1)において、
前記膜スタック(2)は、弾性変形可能な材料から成る少なくとも1つの圧縮部材(16)を有し、各該圧縮部材(16)は、前記膜スタック(2)内で前記膜(3)と共に積層されており、かつ
前記膜スタック(2)の前記積層方向(ST)に規定される長さの、温度に起因する変化を、前記支持ケージ(9)内の各前記圧縮部材(16)により補償することができる
ことを特徴とする、膜加湿器(1)。
【請求項2】
前記膜スタック(2)の前記積層方向(ST)に規定される長さの、最大±2%の大きさの温度に起因する変化を、前記支持ケージ(9)内の各前記圧縮部材(16)により補償することができる、請求項1記載の膜加湿器(1)。
【請求項3】
各前記圧縮部材(16)の前記材料は、軟弾性的に変形可能であり、かつ/または
各前記圧縮部材(16)の前記材料は、独立気泡型であり、かつ/または
各前記圧縮部材(16)の前記材料は、エチレン・プロピレン・ジエンゴムから形成されており、かつ/または
各前記圧縮部材(16)は、1.5kPa以上の弾性率を有し、かつ/または
各前記圧縮部材(16)は、25±6ショアのショア硬度を有し、かつ/または
各前記圧縮部材(16)は、前記積層方向(ST)において規定された1~4mmの厚さを有し、かつ/または
各前記圧縮部材(16)は、前記積層方向(ST)において規定された10%~30%の加圧を有し、かつ/または
各圧縮部材(16)は、前記積層方向(ST)に最大70%加圧可能であり、かつ/または
各前記圧縮部材(16)は、5%未満の吸水性を有し、かつ/または
各前記圧縮部材(16)は、35±15kPaの圧縮応力において25%の圧縮を有し、かつ/または95±25kPaの圧縮応力において50%の圧縮を有し、かつ/または
各前記圧縮部材(16)は、23℃の温度および50%の湿度において、30分後には65%以下の圧縮ひずみを有し、24時間後には20%以下の圧縮ひずみを有し、かつ/または40℃の温度および50%の湿度において、30分後には85%以下の圧縮ひずみを有し、24時間後には40%以下の圧縮ひずみを有している、
請求項1または2記載の膜加湿器(1)。
【請求項4】
各前記圧縮部材(16)は、前記膜スタック(2)の最後の膜(3)に当接しており、かつ前記膜スタック(2)の前記最後の膜(3)と前記支持ケージ(9)との間に配置されている、請求項1から3までのいずれか1項記載の膜加湿器(1)。
【請求項5】
前記膜スタック(2)の前記膜(3)は、前記積層方向(ST)において2つのグループに分けられており、各前記圧縮部材(16)は、前記膜(3)の前記2つのグループの間に配置されている、請求項1から4までのいずれか1項記載の膜加湿器(1)。
【請求項6】
各前記圧縮部材(16)は、それぞれ隣り合う前記膜(3)に材料結合式に結合、好適には接着されている、請求項1から5までのいずれか1項記載の膜加湿器(1)。
【請求項7】
各前記圧縮部材(16)は、前記積層方向(ST)に対して横方向に向けられたプレート(17)により図示されており、各前記プレート(17)と、前記膜スタック(2)の各前記膜(3)とは、前記積層方向(ST)に対して横方向に同一形状かつ同一面積である、請求項1から6までのいずれか1項記載の膜加湿器(1)。
【請求項8】
各前記圧縮部材(16)は、前記積層方向(ST)に対して横方向に向けられた4つのプレート状の角隅部材(18)により図示されており、各該角隅部材(18)は、前記膜スタック(2)の角隅領域(19)に配置されている、請求項1から7までのいずれか1項記載の膜加湿器(1)。
【請求項9】
個々の隣り合う前記膜(3)の間かつ/または個々の隣り合う前記膜(3)に接して、各1つの通流可能なスペーサ(4)が配置されており、
各前記角隅部材(18)と各前記スペーサ(4)とは、前記積層方向(ST)に対して横方向の1つの共通の平面内に配置されており、かつ
各前記角隅部材(18)と各前記スペーサ(4)とは共に、それぞれ隣り合う前記膜(3)の全面を被覆している、
請求項8記載の膜加湿器(1)。
【請求項10】
請求項1から9までのいずれか1項記載の膜加湿器(1)用の複数の平たい膜(3)を含む膜スタック(2)において、
前記膜スタック(2)の前記膜(3)は、積層方向(ST)に互いに間隔をあけて積層されており、
前記膜スタック(2)は、前記積層方向(ST)に対して平行に向けられた4つの通流可能な側面(6a,6b,7a,7b)と、前記積層方向(ST)に対して横方向に向けられた2つの通流不能な端面(8a,8b)とを有し、
前記膜スタック(2)は、弾性変形可能な材料から成る少なくとも1つの圧縮部材(16)を有し、各該圧縮部材(16)は、前記膜スタック(2)内で前記膜(3)と共に積層されており、かつ
前記膜スタック(2)の前記積層方向(ST)に規定される長さの、温度に起因する変化を、各前記圧縮部材(16)により補償することができる、
膜スタック(2)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に記載の、複数の平たい膜を含む膜スタックを備えた燃料電池システム用の膜加湿器に関する。本発明は、膜加湿器用の膜スタックにも関する。
【0002】
膜加湿器は一般に、複数の膜から成る1つの膜スタックと、この膜スタックを収容する支持ケージとを含む。膜スタックの膜は、積層方向に互いに間隔をあけて積層されているため、膜同士の間には、積層方向に対して横方向に通流可能な通路が形成されている。この場合、これらの膜は互いに接着されており、これにより、膜スタック内の通路は、燃料電池システムから流れる湿った排気と、燃料電池システムに流れる乾燥した給気との交差流を形成している。全体的に膜スタックは、積層方向に対して平行に向けられた4つの通流可能な側面と、積層方向に対して横方向に向けられた2つの通流不能な端面とを有している。この場合、膜スタックは、通流可能な側面が支持ケージを貫通して通流可能であり続けるように、支持保持器内に収容されている。動的負荷と熱負荷とに基づき、膜スタックの内部で膜と膜の接着部とに作用する力が発生する。したがって、膜の接着部は十分な弾性を有している必要があると共に、それにもかかわらず、給気の、排気からの十分な封止が保証されていなければならない。同時に、接着部の機械的負荷を最小限にするために、膜は、膜スタックにおいて十分固定的にまとめられていなければならない。
【0003】
したがって本発明の課題は、上位概念に記載の形式の膜加湿器用に、上述の欠点が克服される、改良されたまたは少なくとも代替的な実施形態を提供することにある。また本発明の課題は、膜加湿器用の相応する膜スタックを提供することにもある。
【0004】
この課題は本発明に基づき、独立請求項の対象により解決される。有利な実施形態は従属請求項の対象である。
【0005】
本発明は、膜および膜の接着部に作用する力を、圧縮可能な部材により補償する、という一般的な思想に基づいている。
【0006】
本発明による膜加湿器は、燃料電池システム用に想定もしくは設計されている。この場合、膜加湿器は、複数の平たい膜を含む膜スタックを有しており、この場合、膜スタックの膜は、積層方向に互いに間隔をあけて積層されている。これにより、膜スタックは、積層方向に対して平行に向けられた4つの通流可能な側面と、積層方向に対して横方向に向けられた2つの通流不能な端面とを有している。さらに、膜加湿器は支持ケージを有している。膜スタックは、支持ケージ内に収容されており、この場合、通流可能な側面は、支持ケージを貫通して通流可能になっている。本発明では、膜スタックは、弾性変形可能な材料から成る少なくとも1つの圧縮部材を有している。材料は、特に弾性変形可能なポリマー、特に弾性変形可能な発泡体であってもよい。この場合、各圧縮部材は、膜スタック内で膜と共に積層されている。この場合、支持ケージ内の膜スタックの積層方向に規定される長さの、温度に起因する変化を、各圧縮部材により補償することができる。
【0007】
膜スタックの膜は、膜スタックにおいて互いに間隔をあけて積層されており、これにより、膜同士の間に、積層方向に対して横方向に通流可能な複数の通路が形成されている。個々の隣り合う膜の間かつ/または個々の隣り合う膜に接して、各1つの通流可能なスペーサが配置されていてもよい。スペーサにより、特に個々の隣り合う膜同士の間の間隔を維持することができる。好適には、膜は矩形であり、互いに同一に形成されている。この場合、個々の膜は互いに接着されていてもよく、これにより、膜スタック内の個々の通路は、燃料電池システムから流れる湿った排気と、燃料電池システムに流れる乾燥した給気との交差流を形成するようになっている。換言すると、個々の膜は互いに接着されていてもよく、これにより、専ら膜スタックの互いに反対の側に位置する側面だけが互いに空気案内式に接続されている、もしくは流体接続されている、もしくは通流可能に接続されている。この場合、個々の膜は、空気非透過性かつ水蒸気透過性であるため、給気および排気は、混合することなく交差流で膜スタックを通流すると共に、個々の膜を通じて互いに湿分を交換することができるようになっている。この場合、燃料電池システムから流れる湿った排気により、燃料電池システムに向かって流れる乾燥した給気に加湿することができる。
【0008】
膜スタックの膜は、積層方向に相接して積層されているため、膜スタックは、積層方向に対して平行に向けられた4つの通流可能な側面と、積層方向に対して横方向に向けられた2つの通流不能な端面とを有している。通流不能な端面は、特に積層方向においてそれぞれ最後の膜により形成されていてもよい。膜自体は空気非透過性ひいては通流不能であるため、膜スタックの端面も通流不能である。
【0009】
膜スタックは支持ケージ内に、通流可能な側面が支持ケージを通って通流可能に保たれるように収容されている。支持ケージは、例えば2つのフレームと2つの閉鎖板とを有していてもよく、これらは互いに固く結合されて1つの直方体形の構造体を形成している。この場合、膜スタックは、支持ケージ内に相対移動不能にかつ相対回動不能に収容されていてもよく、もしくは支持ケージにより外部に対して少なくとも部分的に取り囲まれていてもよい。各フレームは、膜スタックの互いに反対の側に位置する通流可能な側面のうちの2つを縁部側において取り囲んでいてもよく、2つの閉鎖板は、膜スタックの通流不能な端面に当接していてもよい。支持ケージは、膜スタックを安定化させることができると共に、膜加湿器のケーシング内での膜スタックの封止を簡単にすることができる。支持ケージは、例えばプラスチックから形成されていてもよい。支持ケージは、膜スタックに材料結合式に結合、例えば接着されていてもよい。
【0010】
膜加湿器は、ケーシングを有していてもよく、支持ケージは、収容された膜スタックと共にケーシング内に収容されていてもよい。支持ケージは、膜スタックの通流可能な側面が、ケーシング内で-場合により別の別個のシールにより-互いに気密に分離されているように形成されておりかつ/またはケーシング内に配置されていてもよい。ケーシングは、外部からケーシングの内部空間内に通じる4つの通流可能なゲートを有していてもよく、この場合、各ゲートは、膜スタックの通流可能な各側面に対応して配置されていてもよい。この場合、2つのゲートが、燃料電池システムに向かって流れる乾燥した給気用の入口と出口とを形成してもよく、2つのゲートが、燃料電池システムから流れる湿った排気用の入口と出口とを形成してもよい。この場合、膜加湿器内で、給気と排気とが混合することなしに、専ら膜スタックのみを通流すると共に、互いに湿分を交換することができるようになっている。
【0011】
膜スタックと支持ケージとは、それぞれ異なる材料から成っており、積層方向において規定される長さの、温度に起因した互いに異なる変化を有している。各圧縮部材は、膜と共に膜スタック内に積層されており、支持ケージの内部における膜スタックの温度に起因した変化を補償することができる。特に、膜スタックの積層方向に規定される長さの、最大±2%の大きさの温度に起因する変化を、支持ケージ内の各圧縮部材により補償することができる。各圧縮部材は、取付け時に例えば10%~30%だけ圧縮されていてもよい。この場合、各圧縮部材は、特に支持ケージ内の膜スタックの圧縮を緩和することができる。これにより、膜の接着部を保護し、全体として膜スタックの耐用年数を延長することができる。
【0012】
各圧縮部材は、弾性変形可能な材料から形成されており、この場合、材料は、弾性的または軟弾性的に変形可能であってもよい。材料は、特に弾性変形可能なポリマー、特に弾性変形可能な発泡体であってもよい。各圧縮部材の材料は、独立気泡型であってもよく、かつ/またはエチレン・プロピレン・ジエンゴムから形成されていてもよい。各圧縮部材は、積層方向において規定された1~4mmの厚さを有していてもよい。各圧縮部材は、積層方向において規定された10%~30%の加圧を有していてもよく、もしくは積層方向において10%~30%だけ加圧されていてもよい。各圧縮部材は、例えば1.5kPa以上の弾性率および/または25±6ショアのショア硬度を有していてもよい。各圧縮部材は、5%未満の吸水性を有していてもよく、かつ/または積層方向に最大70%加圧可能であってもよい。各圧縮部材は、例えば35±15kPaの圧縮応力において25%の圧縮を有していてもよく、かつ/または95±25kPaの圧縮応力において50%の圧縮を有していてもよい。各圧縮部材は、23℃の温度および50%の湿度において、30分後には65%以下の圧縮ひずみを有していてもよく、24時間後には20%以下の圧縮ひずみを有していてもよい。各圧縮部材は、40℃の温度および50%の湿度において、30分後には85%以下の圧縮ひずみを有していてもよく、24時間後には40%以下の圧縮ひずみを有していてもよい。
【0013】
膜スタックは、圧縮部材を1つだけ有していてもよい。択一的に、膜スタックは複数の-つまり、正確には2つまたは正確には3つまたは正確には4つ以上の-圧縮部材を有していてもよい。この場合、各圧縮部材は、膜スタック内で積層方向に分散されて、もしくは複数の膜により互いに隔離されて配置されていてもよい。個々の圧縮部材は、互いに異なる形状および/または積層方向に対して横方向に規定された互いに異なる面および/または積層方向において規定された互いに異なる厚さおよび/または互いに異なる構造および/または互いに異なる性質を有していてもよい。さらに個々の圧縮部材は、互いに異なる材料から形成されていてもよい。
【0014】
各圧縮部材は、膜スタックの最後の膜に当接していてもよく、かつ膜スタックの最後の膜と支持ケージとの間に配置されていてもよい。択一的に、膜スタックの膜は、積層方向において2つのグループに分けられていてもよく、各圧縮部材は、膜の2つのグループの間に配置されていてもよい。
【0015】
膜加湿器の1つの可能な実施形態では、膜スタックは、例えば正確には2つの圧縮部材を有していてもよい。両圧縮部材は、積層方向において最後の両方の膜に当接していてもよく、これにより、それぞれ積層方向において支持ケージと最後の膜との間に配置されていてもよい。膜加湿器の1つの可能な別の実施形態では、膜スタックは、上述の圧縮部材に対して追加的に、1つの別の圧縮部材を有していてもよい。この別の圧縮部材は、膜スタック内の中央において膜同士の間に配置されていてもよい。膜加湿器の別の実施形態も考えられる、ということは自明である。
【0016】
各圧縮部材は、それぞれ隣り合う膜に材料結合式に結合、好適には接着されていてもよい。各圧縮部材が、膜スタック内で隣り合う2つの膜の間に配置されている場合、各圧縮部材は、隣り合う2つの膜に材料結合式に結合、好適には接着されていてもよい。各圧縮部材が、積層方向において膜スタックの最後の膜に配置されている場合、各圧縮部材は、専らこの膜にのみ材料結合式に結合、好適には接着されていてもよい。
【0017】
各圧縮部材は、例えば積層方向に対して横方向に向けられたプレートにより図示されていてもよい。この場合、各プレートと、膜スタックの各膜とは、積層方向に対して横方向に同一形状かつ同一面積であってもよい。択一的に、各圧縮部材は、積層方向に対して横方向に向けられた4つのプレート状の角隅部材により図示されていてもよい。この場合、各角隅部材は、膜スタックの角隅領域に配置されていてもよい。角隅領域では、それぞれ隣り合う膜同士のそれぞれの接着部が積層方向に重なり合っているため、膜スタックは角隅領域において特に剛性になっている。各4つの角隅部材により、角隅領域における膜スタックの長さの、温度に起因する変化が補償され得、これにより、膜スタックの接着部が保護され得る。各角隅部材は、任意の形状を有していてもよく、積層方向に対して横方向に、例えば正方形または矩形であってもよい。
【0018】
個々の隣り合う膜の間かつ/または個々の隣り合う膜に接して、各1つの通流可能なスペーサが配置されていてもよい。各スペーサは、特に個々の膜同士の間の間隔を維持することができる。各圧縮部材がプレートにより図示されている場合、プレートが、隣り合う膜同士の間のスペーサを代替し得る。各圧縮部材が4つの角隅部材により図示されている場合、各角隅部材と各スペーサとは、積層方向に対して横方向の1つの共通の平面内に配置されていてもよい。各角隅部材と各スペーサとは共に、それぞれ隣り合う膜の全面を被覆していてもよい。スペーサは、例えば積層方向に対して横方向に十字形に形成されていてもよい。この場合、各角隅部材は積層方向に対して横方向に矩形または正方形であってもよく、スペーサの十字形状を補足して矩形を形成していてもよい。
【0019】
本発明は、上述の膜加湿器用の複数の平たい膜を含む膜スタックにも関する。上述のように、膜スタックの膜は、積層方向に互いに間隔をあけて積層されている。これにより、膜スタックは、積層方向に対して平行に向けられた4つの通流可能な側面と、積層方向に対して横方向に向けられた2つの通流不能な端面とを有している。この場合、膜スタックは、弾性変形可能な材料から成る少なくとも1つの圧縮部材を有している。この材料は、特に弾性変形可能なポリマー、特に弾性変形可能な発泡体であってもよい。各圧縮部材は、膜スタック内に膜と共に積層されており、積層方向において規定される膜スタックの長さの温度に起因する変化が、各圧縮部材により補償可能である。繰り返しを避けるために、ここでは上述の説明を参照されたい。
【0020】
本発明のその他の重要な特徴および利点は、従属請求項、図面および付属の図面に基づく図面の説明から明らかである。
【0021】
上述した特徴およびさらに後述する特徴は、それぞれ記載された組合せにおいてだけでなく、他の組合せにおいても、または単独でも、本発明の範囲から逸脱することなしに使用可能である、ということは自明である。
【0022】
本発明の好適な実施例を図示し、以下の説明においてより詳しく説明する。この場合、同一の参照符号は、同一または類似のコンポーネント、または機能的に同一のコンポーネントに関係する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明による膜加湿器を第1の実施形態で概略的に示す断面図である。
【
図2】
図1に示した膜加湿器の膜スタックを概略的に示す断面図である。
【
図3】
図2に示した膜スタックの断面を拡大して概略的に示す部分図である。
【
図4】膜加湿器を第1の実施形態で概略的に示す別の断面図である。
【
図5】
図4に示した膜加湿器の膜スタックを概略的に示す別の断面図である。
【
図6】
図5に示した膜スタックの別の断面を拡大して概略的に示す部分図である。
【
図7】第1の実施形態の膜加湿器をケーシングなしで概略的に示す分解図である。図である。
【
図8】第1の実施形態の膜加湿器をケーシングなしで概略的に示す分解図である。図である。
【
図9】第1の実施形態の膜加湿器をケーシングなしで概略的に示す分解図である。図である。
【
図10】第1の実施形態の膜加湿器をケーシングなしで概略的に示す分解図である。図である。
【
図11】第1の実施形態の膜加湿器の膜スタックを概略的に示す分解図である。
【
図12】
図11に示した分解図を拡大して概略的に示す部分図である。
【
図13】第1の実施形態の膜加湿器の膜スタックを概略的に示す分解図である。
【
図14】本発明による膜加湿器の膜スタックを第2の実施形態で概略的に示す分解図である。
【
図15】第2の実施形態の膜加湿器の膜スタックの個々の層を概略的に示す平面図である。
【
図16】第2の実施形態の膜加湿器の膜スタックの個々の層を概略的に示す平面図である。
【
図17】第2の実施形態の膜加湿器の膜スタックの個々の層を概略的に示す平面図である。
【
図18】第2の実施形態の膜加湿器の膜スタックの個々の層を概略的に示す平面図である。
【0024】
図1には、膜スタック2を備えた、燃料電池用の本発明による膜加湿器1の第1の実施形態の断面図が示されている。
図2には、
図1に示した膜加湿器の膜スタック2の断面図が示されている。
図3には、
図2に示した膜スタック2の拡大部分が示されている。
図4には、第1の実施形態の膜加湿器1の別の断面図が示されている。
図5には、
図4に示した膜加湿器1の膜スタック2の別の断面図が示されている。
図6には、
図5に示した膜スタック2の別の断面図の拡大部分が示されている。
【0025】
膜加湿器1の膜スタック2は、直方体形であり、複数の平たい正方形の膜を含む。膜3は、積層方向STに互いに間隔をあけて積層されており、-特に
図3および
図6から判るように-対毎に、通流可能なスペーサ4により互いに分離されている。個々の膜3とスペーサ4とは、接着剤5により互いに接着されており、これにより、個々の膜3の間に通流可能な通路6および7が成形されている。膜3は、空気非透過性かつ水蒸気透過性である。
【0026】
これにより膜スタック2は、積層方向STに対して平行に向けられた4つの通流可能な側面6a,6bおよび7a,7bと、積層方向STに対して横方向もしくは垂直方向に向けられた2つの通流不能な端面8a,8bとを有している。通流可能な通路6,7は、積層方向STにおいて互い違いに、交差流になるように配置されている。この場合、通路6は、膜スタック2を貫通して側面6aと6bとを互いに通流可能に接続している、もしくは流体接続している、もしくは空気案内式に接続しており、側面7aおよび7bからは接着剤5により流体的に切り離されている。通路7は、膜スタック2を貫通して側面7aと7bとを互いに通流可能に接続している、もしくは流体接続している、もしくは空気案内式に接続しており、側面6aおよび6bからは接着剤5により流体的に切り離されている。
【0027】
さらに、膜加湿器1は、直方体形の支持ケージ9を有しており、支持ケージ9内に膜スタック2が収容されている。この場合、支持ケージ9と膜スタック2とは互いに接着されており、これにより、通流可能な側面6a,6bと側面7a,7bとは、支持ケージ9内で互いに流体的に、もしくは気密に分離されている。支持ケージ9は、積層方向STに対して平行に向けられておりかつ通流可能な側面6a,6bに対応して配置された2つのフレーム10a,10bと、積層方向STに対して横方向もしくは垂直方向に向けられておりかつ両端面8a,8bに対応して配置された2つの閉鎖板12a,12bとを有している。この場合、各フレーム10a,10bは、各側面6a,6bの縁部側を取り囲んでおり、この場合、側面6a,6bおよび7a,7bは、支持ケージ9を通って通流可能に保たれる。閉鎖板12a,12bは、膜スタック2の端面8a,8bに当接している。
【0028】
さらに、膜加湿器1はケーシング13を有しており、ケーシング13内に支持ケージ9が膜スタック2と共に収容されている。この場合、ケーシング13は、それぞれ側面6a,6bおよび7a,7bのうちの1つに対応して配置された合計4つのゲート14-
図1~
図6では4つのゲートのうちの1つしか見えていない-を有している。この場合、支持ケージ9は、通流可能な各側面6a,6bおよび7a,7bならびに個々のゲート14が互いに流体的にもしくは気密に分離されているように加工成形されており、かつ/またはケーシング13内に収容されてシール15により封止されている。
【0029】
膜加湿器1では、例えば、燃料電池システムに向かって流れる乾燥した給気が、燃料電池システムから流れる湿った排気により加湿され得る。このとき、湿った排気は、それぞれ一方のゲート14を介してケーシング13内の側面6aに供給され、膜スタック2の通路6を通って案内され、側面6bのそれぞれ他方のゲート14を介してケーシング13から導出され得る。このとき、乾燥した給気は、それぞれ一方のゲート14を介してケーシング13内の側面7aに供給され、膜スタック2の通路7を通って案内され、側面7bのそれぞれ他方のゲート14を介してケーシング13から導出され得る。このとき、湿った排気と乾燥した給気とは、混合することなく膜加湿器1を通流し、この場合、通路6および7を通流する際に、乾燥した給気は、空気不透過性かつ水蒸気透過性の膜3を通る湿った排気により加湿される。
【0030】
膜スタック2はさらに、弾性変形可能な材料-ここでは発泡体-から成る正確には3つの圧縮部材16を有している。発泡体は、特に独立気泡型かつ軟弾性であってもよい。発泡体の独立気泡構造は、吸水量の低下をもたらし、発泡体の軟弾性的な構造は、各圧縮部材16の高い圧縮性をもたらす。各圧縮部材16は、その高い圧縮性に基づき、温度に起因した、積層方向STにおける膜スタック2の変化を緩和することができ、これにより、温度に起因した膜スタック2の変化にかかわらず、膜スタック2は、支持ケージ9に確実に接着された状態に保たれる。各圧縮部材16は、それぞれ隣接する膜3に接着されている。
【0031】
膜加湿器1の第1の実施形態では、圧縮部材16はプレート17により図示されている。この場合、各プレート17は、積層方向STに対して横方向に向けられており、膜スタック2の膜3と、同一形状かつ同一面積になるように形成されている。この場合、3つのプレート17のうちの2つは、積層方向STにおいて膜スタック2の最後の膜3に当接している。この場合、両長手方向端部側のプレート17は、膜スタック2の端面8a,8bを形成しており、支持ケージ9の閉鎖板12a,12bと、膜スタック2のそれぞれ最後の膜3との間に位置している。この場合、各長手方向端部側の圧縮部材16は、閉鎖板12a,12bに接着されていてもよい。3つのプレート17のうちの1つは、膜スタック2の中央において2つの隣り合う膜3の間に配置されており、各膜3の間のスペーサ4を代替することができる。
【0032】
図1~
図3では、膜加湿器1および膜スタック2は、側面7a,7bに対して平行に向けられた平面において断面されている。
図4~
図6では、膜加湿器1および膜スタック2は、側面6a,6bに対して平行に向けられた平面において断面されている。
【0033】
図7には膜スタック2および支持ケージ9の分解図が示されており、
図8には膜スタック2および支持ケージ9の図が示されている。圧縮部材16-ここではプレート17-は、膜スタック2内の中央と、長手方向端部側とに配置されている。さらに、支持ケージ9の両閉鎖プレート12a,12bが示されており、これらの閉鎖プレート12a,12bは、膜スタック2の端面8a,8bに、-ここでは各プレート17に-当接している。
【0034】
図9には膜スタック2および支持ケージ9の分解図が示されており、
図10には膜スタック2および支持ケージ9の図が示されている。ここでは、環状のシール15を備えた支持ケージ9の2つのフレーム10aおよび10bが示されており、シール15は、膜スタック2の側面6a,6bに配置されている。フレーム10a,10bは、両側面6a,6bを縁部側において取り囲んでおり、膜スタック2に接着されていてもよい。
【0035】
図11には膜スタック2の分解図が示されており、
図12には、
図11に示した分解図の拡大部分が示されている。
図11および
図12では、特に複数の膜3が接着剤5により互い違いに接着されていることが認められ、これにより、膜スタック2内に通路6および7が形成される。ここでも認められるように、個々の膜3の間にはスペーサ4が配置されていて、一緒に接着されている。
【0036】
図13には、第1の実施形態の膜加湿器1の膜スタック2の分解図が示されている。ここでは特に、膜スタック2内の層形成が認められる。
【0037】
図14には、第2の実施形態の本発明による膜加湿器1の膜スタック2の分解図が示されている。
図1~
図13に示した第1の実施形態とは異なり、ここでは膜スタック2の圧縮部材16が異なって加工成形されている。ここでは各圧縮部材16が、4つの矩形の板状の角隅部材18により図示されており、これらの角隅部材18は、各膜3の角隅領域19に配置されていて、膜3に接着されている。
図14には、長手方向端部側の圧縮部材16の4つの角隅部材18のうちの1つだけが示されている。その他の点では、膜加湿器1の第1の実施形態と第2の実施形態とは一致している。
【0038】
図15~
図18には、第2の実施形態の膜加湿器1の膜スタック2の個々の層の平面図が示されている。
図15~
図18では、膜スタック2が、図平面から徐々に積み上げられ、膜スタック2の中央に配置された圧縮部材16が膜スタック2に組み込まれる。
【0039】
図15には、膜スタック2の中央に位置する膜3の平面図が示されており、この膜3には接着剤5が、通路6を形成するために被着されている。
図16には、
図15に示した膜3に接着された、積層方向STにおいて次に位置する膜3の平面図が示されている。膜スタック2の角隅領域19において、膜3には接着剤5が被着される。
図17には、
図16に示した膜3の平面図が示されており、この場合、ここでは角隅領域19に、膜スタック2の中央に配置された圧縮部材16の角隅部材18が配置されている。接着剤5により、角隅部材18は膜3に接着されている。
図18には、
図17に示した膜3の平面図が示されており、この場合、ここでは膜3に、十字状に切り抜かれたスペーサ部材4が配置されている。十字状のスペーサ部材4と4つの角隅部材18とは、膜3の面と同一の、1つの共通の面を形成している。角隅部材18上には接着剤5が被着されていてもよく、角隅部材18に次の膜3が接着され得る。次いで、膜スタック2が引き続き形成され得る。
【外国語明細書】