(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173827
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】異常判定システム及び異常判定方法
(51)【国際特許分類】
G01M 17/007 20060101AFI20241205BHJP
B60C 23/00 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
G01M17/007 J
B60C23/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024088942
(22)【出願日】2024-05-31
(31)【優先権主張番号】P 2023090998
(32)【優先日】2023-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000110251
【氏名又は名称】トピー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100211122
【弁理士】
【氏名又は名称】白石 卓也
(72)【発明者】
【氏名】残間 俊典
(72)【発明者】
【氏名】津久井 慎吾
(57)【要約】
【課題】ホイールに取り付けられた圧電素子が発電した際の電圧を基にホイールの異常を判定する。
【解決手段】実施形態の異常判定システム1は、ホイール3と、ホイール3に取り付けられた圧電素子10と、圧電素子10が発電した際の電圧が閾値から外れた場合にホイール3の異常を判定する判定部と、を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホイールと、
前記ホイールに取り付けられた圧電素子と、
前記圧電素子が発電した際の電圧が閾値から外れた場合に前記ホイールの異常を判定する判定部と、を含む、
異常判定システム。
【請求項2】
前記判定部は、前記ホイールに取り付けられ、前記圧電素子が発電した際の電力により作動する、
請求項1に記載の異常判定システム。
【請求項3】
前記判定部は、前記ホイールを備えた車両が走行中に前記異常を判定する、
請求項1又は2に記載の異常判定システム。
【請求項4】
前記ホイールに取り付けられ、前記圧電素子が発電した際の電力を蓄える蓄電部を更に備える、
請求項1又は2に記載の異常判定システム。
【請求項5】
前記ホイールに取り付けられ、前記蓄電部に蓄えられた前記電力により作動し、前記異常を発信する発信部を更に備える、
請求項4に記載の異常判定システム。
【請求項6】
前記判定部は、走行時の前記ホイールの締結部の緩みを判定する、
請求項1又は2に記載の異常判定システム。
【請求項7】
ホイールを回転させる回転工程と、
前記ホイールに取り付けられた圧電素子が発電した際の電圧が閾値から外れた場合に前記ホイールの異常を判定する判定工程と、を含む、
異常判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異常判定システム及び異常判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ホイールに圧電素子を配置する技術がある。例えば、特許文献1には、ホイールのリムの外周面に圧電センサを貼り付けた例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ホイールの締結部であるナットの緩み等の異常を、ホイールに取り付けた振動センサ(例えば、加速度センサ)により検知する技術がある。しかし、このような技術ではなく、ホイールに取り付けられた圧電素子が発電した際の電圧を基にホイールの異常を判定することが要求されている。
【0005】
そこで本発明は、ホイールに取り付けられた圧電素子が発電した際の電圧を基にホイールの異常を判定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明の一態様に係る異常判定システムは、ホイールと、前記ホイールに取り付けられた圧電素子と、前記圧電素子が発電した際の電圧が閾値から外れた場合に前記ホイールの異常を判定する判定部と、を含む。
【0007】
(2)上記(1)の態様において、前記判定部は、前記ホイールに取り付けられ、前記圧電素子が発電した際の電力により作動してもよい。
【0008】
(3)上記(1)又は(2)の態様において、前記判定部は、前記ホイールを備えた車両が走行中に前記異常を判定してもよい。
【0009】
(4)上記(1)から(3)の何れかの態様において、異常判定システムは、前記ホイールに取り付けられ、前記圧電素子が発電した際の電力を蓄える蓄電部を更に備えてもよい。
【0010】
(5)上記(4)の態様において、異常判定システムは、前記ホイールに取り付けられ、前記蓄電部に蓄えられた前記電力により作動し、前記異常を発信する発信部を更に備えてもよい。
【0011】
(6)上記(1)から(5)の何れかの態様において、前記判定部は、走行時の前記ホイールの締結部の緩みを判定してもよい。
【0012】
(7)本発明の一態様に係る異常判定方法は、ホイールを回転させる回転工程と、前記ホイールに取り付けられた圧電素子が発電した際の電圧が閾値から外れた場合に前記ホイールの異常を判定する判定工程と、を含む。
【発明の効果】
【0013】
上記(1)の態様の異常判定システムは、ホイールと、ホイールに取り付けられた圧電素子と、圧電素子が発電した際の電圧が閾値から外れた場合にホイールの異常を判定する判定部と、を含む。
本態様によれば、ホイールに取り付けられた圧電素子が発電した際の電圧を基にホイールの異常を判定することができる。
【0014】
上記(2)の態様によれば、判定部は、ホイールに取り付けられ、圧電素子が発電した際の電力により作動することで、以下の効果を奏する。
ホイール内でシステムを実現することができる。
【0015】
上記(3)の態様によれば、判定部は、ホイールを備えた車両が走行中に異常を判定することで、以下の効果を奏する。
車両の走行中に異常を判定することができる。
【0016】
上記(4)の態様によれば、異常判定システムは、ホイールに取り付けられ、圧電素子が発電した際の電力を蓄える蓄電部を更に備えることで、以下の効果を奏する。
蓄電部に蓄えられた電力を利用することができる。
【0017】
上記(5)の態様によれば、異常判定システムは、ホイールに取り付けられ、蓄電部に蓄えられた電力により作動し、異常を発信する発信部を更に備えることで、以下の効果を奏する。
蓄電部に蓄えられた電力を用いて異常を発信することができる。
【0018】
上記(6)の態様によれば、判定部は、走行時のホイールの締結部の緩みを判定することで、以下の効果を奏する。
ホイールの異常として、走行時のホイールの締結部の緩みを判定することができる。
【0019】
上記(7)の態様の異常判定方法は、ホイールを回転させる回転工程と、ホイールに取り付けられた圧電素子が発電した際の電圧が閾値から外れた場合にホイールの異常を判定する判定工程と、を含む。
本態様によれば、ホイールに取り付けられた圧電素子が発電した際の電圧を基にホイールの異常を判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】実施形態の異常判定システムの一例を示すフロー図。
【
図2】実施形態の車両に搭載されたホイールの一例を示す概略構成図。
【
図3】実施形態の異常判定方法の一例を示すフローチャート。
【
図4】実施形態の緩み検知の事前検証であるFEM解析結果の一例を示す図。
【
図6】
図5のVI-VI断面図であって、圧電素子の取り付け位置を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。実施形態においては、異常判定システムとして、トラック等の貨物自動車(車両の一例)におけるホイールの締結部の緩みを異常として判定するシステムを挙げて説明する。
【0022】
<異常判定システム>
図1は、実施形態の異常判定システム1の一例を示すフロー図である。
図2は、実施形態の車両2に搭載されたホイール3の一例を示す概略構成図である。
図1及び
図2を併せて参照し、異常判定システム1は、車両2のホイール3を含む。例えば、ホイール3は、不図示の車両側ハブに対して、締結部であるボルト及びナットにより固定されている。ホイール3は、車両側ハブの回転に従って車両側ハブと一体に回転する。
【0023】
異常判定システム1は、圧電素子10、判定部11、蓄電部12及び発信部13を更に含む。圧電素子10、判定部11、蓄電部12及び発信部13の各々は、ホイール3に取り付けられる。
【0024】
例えば、圧電素子10、判定部11、蓄電部12及び発信部13の各々は、ホイール3のリムドロップ部に配置されてもよい。リムドロップ部は、ホイール3のリムの外周面において周回方向に延在する連続した凹形状の凹部である。なお、圧電素子10、判定部11、蓄電部12及び発信部13の各々の配置態様は、上記に限らず、設計仕様に応じて変更することができる。
【0025】
圧電素子10は、圧力を加えることで電圧が発生するピエゾ素子である。圧電素子10は、圧電体に圧力を加えることで生じる歪みに応じて電圧が発生する。
【0026】
例えば、判定部11は、制御基板であるセンシング(セーフテイ)ホイール基板に搭載されてもよい。例えば、判定部11は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサである処理部の一例である。図示はしないが、センシング(セーフテイ)ホイール基板には、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)及びこれらの組合せ等の記憶部、並びに、他の装置とのインターフェース回路である入出力部等が搭載される。
【0027】
判定部11は、圧電素子10が発電した際の電圧が閾値から外れた場合にホイール3の異常を判定する。圧電素子10が発電した際の電圧が閾値から外れた場合には、圧電素子10が発電した際の電圧が閾値上限(閾値範囲の上限値)を超えた場合、及び、圧電素子10が発電した際の電圧が閾値下限(閾範囲の下限値)を下回った場合の両方が含まれる。
【0028】
例えば、判定部11は、圧電素子10が発電した際の電力により作動する。例えば、判定部11は、ホイール3の回転による変形により、圧電素子10が発電した際の電圧が閾値から外れた場合にホイール3の異常を判定する。例えば、車両走行時のホイール3への入力があると、判定部11は、ホイール3の正常又は異常(例えば、ナットの緩み)を判定する。この判定は、例えば、ホイール3のひずみ分布に基づいて行われる。
【0029】
例えば、車輪が接地して回転している場合、車両荷重が加わっている下側部分だけでなく、その他の領域でも弾性変形する。例えば、圧電素子10は、ホイール3の周回方向に一定の周期で間欠配置されてもよい。これにより、接地している下側部分に位置する圧電素子10だけでなく、それ以外に位置する圧電素子10も効率的に発電することができる。
【0030】
例えば、判定部11は、ホイール3を備えた車両2が走行中に異常を判定する。例えば、判定部11は、車両2が所定速度以下の低速で走行中に異常を判定してもよい。なお、判定部11が異常を判定する車両2速度は、上記に限らず、設計仕様に応じて変更することができる。
【0031】
蓄電部12は、圧電素子10が発電した際の電力を蓄える。例えば、蓄電部12は、センシング(セーフテイ)ホイール基板における電力充放電基板に搭載されてもよい。例えば、蓄電部12は、リチウムイオン二次電池、ニッケル水素二次電池などの二次電池を含んで構成される。なお、蓄電部12の構成態様は、上記に限らず、設計仕様に応じて変更することができる。
【0032】
発信部13は、蓄電部12に蓄えられた電力により作動し、異常を発信する。例えば、発信部13は、センシング(セーフテイ)ホイール基板における異常信号発信器に搭載されてもよい。例えば、異常信号発信器が発信した信号は、無線通信により、車体側の異常信号受信器が受信する。例えば、異常信号受信器が受信した信号は、車両操縦に利用される。
【0033】
例えば、異常信号発信器には、電圧分布の変動に関する信号が送られる。例えば、電圧分布の変動は、ホイール3のひずみによる電圧変動である。例えば、電圧分布の変動を捉える処理は、周波数変換(例えば、ホイール3の回転速度による周波数解析での変換)により行ってもよい。例えば、電圧変動による判断を行う際のしきい値は、車両2の走行速度以外の周波数の振幅の変化に基づいて設定してもよい。
【0034】
例えば、異常信号発信器(発信部13に相当)は、ホイール3においてバルブがある部位に対して180°反対の部位(言い換えると、ホイール3の径方向反対側の部位)に配置されてもよい。これにより、ホイール3においてバルブがある部位の近傍に異常信号発信器が配置された場合と比較して、ホイール3の重量バランスを良くすることができる。なお、異常信号発信器の配置態様は、上記に限らず、設計仕様に応じて変更することができる。
【0035】
<異常判定方法>
図3は、実施形態の異常判定方法の一例を示すフローチャートである。
図3を併せて参照し、異常判定方法は、ホイール3を回転させる回転工程と、ホイール3に取り付けられた圧電素子10が発電した際の電圧が閾値から外れた場合にホイール3の異常を判定する判定工程と、を含む。
【0036】
例えば、ステップS1では、ホイール3を回転させる。例えば、異常判定システム1は、ホイール3を備えた車両2を走行させることで、ホイール3を回転させる。ステップS1の後、ステップS2に移行する。
【0037】
例えば、ステップS2では、ホイール3に取り付けられた圧電素子10が発電した際の電圧が閾値から外れたか判定する。例えば、判定部11は、ホイール3のひずみによる電圧分布の変動に基づいて、ホイール3の正常又は異常(例えば、ナットの緩み)を判定する。
【0038】
ステップS2においてホイール3に取り付けられた圧電素子10が発電した際の電圧が閾値から外れたと判定した場合(ステップS2のYES)、ステップS3に移行する。一方、ステップS2においてホイール3に取り付けられた圧電素子10が発電した際の電圧が閾値から外れていないと判定した場合(ステップS2のNO)、ステップS2の前に戻る。
【0039】
例えば、ステップS3では、ホイール3の異常を判定する。例えば、ホイール3の異常として、ナットの緩みを判定する。
以上のフローにより、異常判定方法の処理が終了する。
【0040】
<緩み検知の事前検証であるFEM解析結果>
図4は、実施形態の緩み検知の事前検証であるFEM解析結果の一例を示す図である。
図4において、矩形の枠部は、ホイールにおいて拘束ありの部分を示す。
FEM解析の締結条件は、ホイールの全周拘束あり、及び、半周拘束なし2条件(反荷重入力側拘束なし、荷重入力側拘束なし)を含む3条件とした。これら各条件でFEM解析を実施した際のホイールの変形量を比較した。
【0041】
本発明者の解析結果、半周拘束なし2条件では、拘束ありの部位以外で、ホイールの変形量が大きくなることが確認された。半周拘束なし2条件は、ホイールの締結部の緩みが発生した場合に相当する。ホイールの締結部の緩みが発生した場合、定常状態(締結部緩みなしに相当)と比較して、ホイールのリム及びディスク共に変形量が大きくなることが確認された。
【0042】
上述の通り、本実施形態のホイール3は車両2に搭載されるため、車輪が接地して回転している場合、ホイール3は荷重を受けながら回転する。ホイール3が回転することで、応力(ひずみ)が発生する。例えば、ナット緩みなし(定常状態)とナット緩みあり(異常)との間では、ホイール3の応力分布(ひずみ分布)が変化する。この変化を利用して、ナット緩みを判定するとよい。例えば、上記のFEM解析結果のデータを予め取得しておき、この取得したデータに基づいて、ナットの緩みを判定してもよい。
【0043】
ところで、従来の技術としては、ナットの緩み等の異常を、ホイールに取り付けた振動センサ(例えば、加速度センサ)により検知する技術がある。しかし、このような技術は実用化に至っていない。また、振動センサは加速度を測定しているため、実車ベースで考えた場合、外乱の因子を容易に拾ってしまう可能性が高い。そのため、緩み判定の精度が不十分となる場合がある。
【0044】
これに対し本実施形態では、圧電素子10が発電した際の電圧が閾値から外れた場合にホイール3の異常を判定することで、外乱の因子を拾ってしまう可能性は低い。そのため、緩み判定の精度が不十分となる可能性は低い。
【0045】
<作用効果>
以上説明したように、上記実施形態の異常判定システム1は、ホイール3と、ホイール3に取り付けられた圧電素子10と、圧電素子10が発電した際の電圧が閾値から外れた場合にホイール3の異常を判定する判定部11と、を含む。
この構成によれば、ホイール3に取り付けられた圧電素子10が発電した際の電圧を基にホイール3の異常を判定することができる。
例えば、ホイール3の異常として、ホイール3の締結部の緩みの現象を判定することができる。
【0046】
上記実施形態では、判定部11は、ホイール3に取り付けられ、圧電素子10が発電した際の電力により作動する。
この構成によれば、ホイール3内でシステムを実現することができる。
【0047】
上記実施形態では、判定部11は、ホイール3を備えた車両2が走行中に異常を判定する。
この構成によれば、車両2の走行中に異常を判定することができる。
【0048】
上記実施形態では、異常判定システム1は、ホイール3に取り付けられ、圧電素子10が発電した際の電力を蓄える蓄電部12を更に備える。
この構成によれば、蓄電部12に蓄えられた電力を利用することができる。
例えば、構築されたシステムにおいて電池交換が不要となる。
【0049】
上記実施形態では、異常判定システム1は、ホイール3に取り付けられ、蓄電部12に蓄えられた電力により作動し、異常を発信する発信部13を更に備える。
この構成によれば、蓄電部12に蓄えられた電力を用いて異常を発信することができる。
【0050】
上記実施形態では、判定部11は、走行時のホイール3の締結部の緩みを判定する。
この構成によれば、ホイール3の異常として、走行時のホイール3の締結部の緩みを判定することができる。
【0051】
上記実施形態の異常判定方法は、ホイール3を回転させる回転工程と、ホイール3に取り付けられた圧電素子10が発電した際の電圧が閾値から外れた場合にホイール3の異常を判定する判定工程と、を含む。
この方法によれば、ホイール3に取り付けられた圧電素子10が発電した際の電圧を基にホイール3の異常を判定することができる。
【0052】
<変形例>
上記実施形態では、判定部は、ホイールに取り付けられる例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、判定部は、ホイールに取り付けられなくてもよい。例えば、判定部は、ホイールを備えた車両の車体側に取り付けられてもよい。例えば、判定部の配置態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0053】
上記実施形態では、判定部は、圧電素子が発電した際の電力により作動する例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、判定部は、圧電素子が発電した際の電力とは別の電力により作動してもよい。例えば、判定部は、不図示のバッテリの電力により作動してもよい。例えば、判定部の作動態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0054】
上記実施形態では、判定部は、ホイールを備えた車両が走行中に異常を判定する例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、判定部は、ホイールを備えた車両が走行中に異常を判定しなくてもよい。例えば、判定部は、ホイールを備えた車両が停止中に異常を判定してもよい。例えば、判定部が異常を判定する態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0055】
上記実施形態では、異常判定システムは、ホイールに取り付けられ、圧電素子が発電した際の電力を蓄える蓄電部を更に備える例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、蓄電部は、ホイールに取り付けられなくてもよい。例えば、異常判定システムは、蓄電部を備えなくてもよい。例えば、蓄電部の設置態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0056】
上記実施形態では、異常判定システムは、ホイールに取り付けられ、蓄電部に蓄えられた電力により作動し、異常を発信する発信部を更に備える例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、発信部は、ホイールに取り付けられなくてもよい。例えば、異常判定システムは、発信部を備えなくてもよい。例えば、発信部の設置態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0057】
上記実施形態では、異常判定システムとして、トラック等の貨物自動車におけるホイールの締結部の緩みを異常として判定するシステムを例に挙げて説明したが、これに限らない。例えば、ホイールとしては、商用車等に使用される大型のホイールに限らず、乗用車用や作業車両のホイールに適用することもできる。例えば、ホイールの適用態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0058】
上記実施形態では、制御基板であるセンシング(セーフテイ)ホイール基板に搭載される判定部として、ナット緩みを判定する例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、判定部は、エアー漏れ検知に関する異常の判定に適用してもよい。例えば、判定部は、ホイールの亀裂や、ホイールの過剰使用、過負荷異常などに利用されてもよい。例えば、判定部の適用態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0059】
上記実施形態では、圧電素子は、ホイールのリムドロップ部(リム)に配置される例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、圧電素子は、ホイールのディスクに配置されてもよい。ディスクは、車両側ハブに取り付けられるハブ取付部と、ハブ取付部からリムへ向かって延びる連結部と、を備える。ハブ取付部には、周方向に等間隔をあけて複数の取付孔(ナットの締結部)が形成される。連結部には、周方向に等間隔をあけて複数の飾り孔が形成されてもよい。連結部は、ハブ取付部の外周縁からリムに向かって拡径するように形成されてもよい。例えば、圧電素子は、ディスクのハブ取付部に配置されてもよいし、連結部に配置されてもよい。例えば、圧電素子は、ディスクの連結部においてハブ取付部よりも外周側(リム側)に離れた位置に配置されることが好ましい。これにより、圧電素子がディスクのハブ取付部に配置される場合の課題(ハブ取付部内側に配置される場合に生じ得るドラムブレーキ等の干渉問題、及び、ハブ取付部外側にホイールを更に取り付ける場合にそのホイールとの間で生じる干渉問題)を回避することができる。
【0060】
例えば、圧電素子は、平板形状に形成されてもよいし、湾曲形状(例えば円弧形状)に形成されてもよい。圧電素子は、種々の形状を採用することができるが、取り付け対象の形状に合わせた形状に形成されることが好ましい。例えば、圧電素子は、取り付け対象が平面形状の場合は対応する平板形状(対応する平面に沿う形状)に形成され、取り付け対象が曲面形状の場合は対応する湾曲形状(対応する曲面に沿う形状)に形成されることが好ましい。これにより、取り付け対象への圧電素子の設置面積を確保することができるため、圧電素子を配置しやすい。例えば、ディスクの連結部の外側が曲面形状の場合、圧電素子は対応する曲面に沿う湾曲形状に形成されることが好ましい。これにより、圧電素子が平板形状に形成される場合と比較して、対応する曲面に沿わせやすいため、圧電素子を配置しやすい。
【0061】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明はこれらに限定されることはなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能であり、上述した変形例を適宜組み合わせることも可能である。
【実施例0062】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0063】
[実施例]
本発明に係る異常判定システムに関し、試験を実施し、圧電素子が発電した際の電圧が閾値から外れた場合にホイールの異常を判定することの再現性を検証した。
図5は、実施例の試験で用いたホイールの正面図である。
実施例では、ホイールとして、ディスクのハブ取付部に周方向に等間隔をあけて10個の取付孔(ナットの締結部(1)~(10))が形成され、ディスクの連結部に周方向に等間隔をあけて10個の飾り孔が形成されたものを用いた。実施例では、ホイールに取り付ける圧電素子として、円弧形状の圧電素子(以下「素子1」で示す場合がある。)を用いた。実施例では、ナットの締結部(3)の近傍に素子1を配置した。
【0064】
図6は、
図5のVI-VI断面図であって、圧電素子の取り付け位置を示す図である。
実施例では、ディスクの連結部においてハブ取付部よりも外周側(リム側)に離れた位置(
図6に示す設置位置)に素子1を取り付けた。実施例では、
図6に示す設置位置の曲面に沿わせて素子1を配置した。
【0065】
実施例では、ホイールにタイヤを装着してホイールを所定時間回転させることで試験を行った。タイヤのサイズは、275/80R22.5とした。ホイールの回転速度は、15km/hとした。他の試験条件(ナット締結トルク、荷重、エア圧)は、表1に示す。
【0066】
【0067】
実施例では、表1に示す3水準とし、水準1の仕様はベンチマークとしてBM(ゆるみなし)、水準2の仕様は「素子近傍(3)ゆるみ」(ナットの締結部(3)のみ手締め)、水準3の仕様は「荷重増」(BMに対して2倍の荷重)とした。なお、手締めは、工具を使わずに手でナットを締めることを意味する。ナット締結トルクは、手締め以外は600N・mとした。荷重は、荷重増以外はタイヤの定格荷重16.9kNとした。エア圧は、タイヤの定格エア圧900kPaとした。
【0068】
上記した条件で試験を行い、素子1の電圧出力(表1に示すBM比)を得た。なお、素子1の電圧出力は周期的に変わるため、その最大値と最小値の差の絶対値(表1に示す|MAX-MIN|)をとった。BM比は、ベンチマーク(水準1)の上記差を基準としたときの各水準2,3の上記差の増加率を意味する。
【0069】
表1に示すように、水準2では、BMに対して電圧が大きくなったことを確認できた。水準2の結果に基づいて所定の閾値を設定することで、圧電素子が発電した際の電圧が上記閾値から外れた場合にホイールの異常(素子近傍(3)のナットのゆるみ)を判定することは再現可能と判断できた。
【0070】
水準3では、BMに対して電圧が大きくなったこと、及び、増加率が水準2よりも大きくなったことを確認できた。水準3の結果に基づいて所定の閾値を設定することで、圧電素子が発電した際の電圧が上記閾値から外れた場合にホイールの異常(過負荷異常)を判定することは再現可能と判断できた。
【0071】
以上、実施例により本発明をより具体的に説明したが、実施例では、圧電素子が発電した際の電圧が閾値から外れた場合にホイールの異常を判定することは再現可能と判断できた。