(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173835
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】音響検査デバイスおよび動作方法
(51)【国際特許分類】
G01N 29/04 20060101AFI20241205BHJP
G01N 29/44 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
G01N29/04
G01N29/44
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024089188
(22)【出願日】2024-05-31
(31)【優先権主張番号】63/470,360
(32)【優先日】2023-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/540,737
(32)【優先日】2023-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】390041542
【氏名又は名称】ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100154922
【弁理士】
【氏名又は名称】崔 允辰
(74)【代理人】
【識別番号】100207158
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 研二
(72)【発明者】
【氏名】リチャード・ユジーン・クラッセン
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー・フィリップ・ウッドフィールド
(72)【発明者】
【氏名】ルーク・ザ・グエン
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム・アンドリュー・シャープ・ザ・セカンド
(72)【発明者】
【氏名】ニコラス・リー・ヴァン・ザント
【テーマコード(参考)】
2G047
【Fターム(参考)】
2G047AA05
2G047BC02
2G047BC03
2G047CA01
2G047CB03
2G047DA01
2G047DA02
2G047GE01
2G047GE02
2G047GG20
2G047GG28
2G047GG30
2G047GG33
2G047GH06
(57)【要約】
【課題】材料サンプルのマイクロテクスチャ領域(MTR)などの微細構造特性を決定するのに有用な音響検査システムおよび方法を提供する。
【解決手段】いくつかの実施形態において、材料サンプルの材料特性を決定する方法は、材料サンプルの表面の一部に沿って表面音響波を生成するために、1つまたは複数の圧電素子を含む凹面を有するトランスデューサから、結合媒体を通って材料サンプルの表面に音響波を送信するステップを含む。凹面の1つまたは複数の圧電素子は、音響送信器または音響受信器の少なくとも1つとして動作し得る。方法は、材料サンプルの表面から反射された表面音響波を凹面において受信するステップも含む。次いで、方法は、表面音響波の特性に基づいて材料サンプルの少なくとも1つの材料特性を決定するステップを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
音響送信器および音響受信器として動作する1つまたは複数の圧電素子を含む凹面を有するトランスデューサと、
前記トランスデューサと材料サンプルの表面との間の空間を満たす結合媒体と、
前記トランスデューサと通信する制御ユニットと、を備え、
前記制御ユニットが、少なくとも1つのプロセッサと少なくとも1つのメモリデバイスとを含み、
前記少なくとも1つのメモリデバイスが、前記少なくとも1つのプロセッサによって実行されると、前記少なくとも1つのプロセッサに、
音響波が前記結合媒体を通って前記材料サンプルの表面の一部に沿って伝搬し、表面音響波として再び前記凹面に送信されるように、前記トランスデューサに前記凹面から前記音響波を生成させることと、
前記凹面において受信された前記表面音響波を示すデータにアクセスすることと、
前記データに基づいて前記材料サンプルの少なくとも1つの材料特性を決定することと、を行わせる命令を記憶している、
検査システム。
【請求項2】
前記凹面が、送信モードと受信モードとの間で切り替わる単一の圧電素子である、請求項1に記載の検査システム。
【請求項3】
前記凹面が、音響送信器として動作する第1の複数の圧電素子と、音響受信器として動作する、前記第1の複数の圧電素子から離間された第2の複数の圧電素子とを含み、前記音響波が、前記第1の複数の圧電素子から前記第2の複数の圧電素子へと単一方向に伝搬する、請求項1に記載の検査システム。
【請求項4】
前記トランスデューサの凹面に結合されたマスクをさらに含む請求項1に記載の検査システム。
【請求項5】
前記少なくとも1つの材料特性が、前記材料サンプルの粒子サイズ、粒子構造、粒子配向、粒子形状、マイクロテクスチャ領域の存在、マイクロテクスチャ領域のサイズ、マイクロテクスチャ領域の強度、マイクロテクスチャ領域の配向、マクロテクスチャ、転位含有量、および残留弾性圧縮応力または引張応力のうちの1つまたは複数を含む、請求項1に記載の検査システム。
【請求項6】
前記材料サンプルに対する前記トランスデューサの位置を示すセンサをさらに含む請求項1に記載の検査システム。
【請求項7】
前記命令が、実行されると、前記少なくとも1つのプロセッサに、前記トランスデューサに複数の音経路角度において音響波を生成させる請求項1に記載の検査システム。
【請求項8】
前記凹面が、周縁部によって境界付けられた半球面または矩形曲面であり、前記凹面の周縁部が、前記音響送信器または前記音響受信器として動作する、請求項1に記載の検査システム。
【請求項9】
材料サンプルの表面の一部に沿って表面音響波を生成するために、音響送信器および音響受信器として動作する1つまたは複数の圧電素子を含む凹面を有するトランスデューサから、結合媒体を通して前記材料サンプルの表面に音響波を送信するステップと、
前記材料サンプルの表面から反射された前記表面音響波を前記凹面において受信するステップと、
前記表面音響波の特性に基づいて前記材料サンプルの少なくとも1つの材料特性を決定するステップと、を含み、
前記少なくとも1つの材料特性が、粒子サイズ、粒子配向、粒子形状、マイクロテクスチャ領域の存在、マイクロテクスチャ領域のサイズ、マイクロテクスチャ領域の強度、マイクロテクスチャ領域の配向、マクロテクスチャ、転位含有量、および残留弾性圧縮応力または引張応力のうちの1つまたは複数を含む、検査方法。
【請求項10】
前記音響波の送信が、単一の点において、前記材料サンプルの表面にわたる複数の方向に前記音響波を送信することを含む、請求項9に記載の検査方法。
【請求項11】
前記表面音響波の特性に基づく統計的相関を通じて、前記材料サンプルの少なくとも1つの材料特性を決定するステップをさらに含む請求項9に記載の検査方法。
【請求項12】
前記材料サンプルの粒子構造特性の応答を最適化するために、前記音響波の周波数または伝播方向のうちの少なくとも1つを選択するステップをさらに含む請求項9に記載の検査方法。
【請求項13】
前記表面音響波の特性が、前記表面音響波の到着時間、伝搬時間、または振幅のうちの少なくとも1つを含む、請求項9に記載の検査方法。
【請求項14】
前記表面音響波の特性が、前記材料サンプルの領域全体にわたる表面音響波応答の2次元または3次元表現に取り込まれた幾何学的特徴を含む、請求項9に記載の検査方法。
【請求項15】
前記少なくとも1つの材料特性が、前記材料サンプルの粒子サイズ、粒子構造、粒子配向、粒子形状、マイクロテクスチャ領域の存在、マイクロテクスチャ領域のサイズ、マイクロテクスチャ領域の強度、マイクロテクスチャ領域の配向、マクロテクスチャ、転位含有量、および残留弾性圧縮応力または引張応力のうちの1つまたは複数を含む、請求項9に記載の検査方法。
【請求項16】
前記少なくとも1つの材料特性に基づいて、前記材料サンプルの合否を決定するステップをさらに含む請求項9に記載の検査方法。
【請求項17】
製造システムに、前記少なくとも1つの材料特性に基づいて、製造プロセスのパラメータを調整させるステップをさらに含む、請求項9に記載の検査方法。
【請求項18】
音響検査デバイスから材料サンプルに関する表面音響波データを受信するステップと、
前記材料サンプルのマイクロテクスチャ領域(MTR)レベルを予測する音響スコアを決定するステップであって、前記音響スコアが前記表面音響波データに基づいて決定される、ステップと、
前記音響スコアに基づいて、前記材料サンプルの合否を決定するステップと、を含む検査方法。
【請求項19】
前記表面音響波データが、表面音響波の特性を含み、前記表面音響波の特性が、前記材料サンプルの領域全体にわたる表面音響波応答の2次元または3次元表現に取り込まれた幾何学的特徴を含む、請求項18に記載の検査方法。
【請求項20】
標準化された表面音響波データを取得するために、前記表面音響波データを標準化するステップをさらに含み、前記音響スコアが、前記標準化された表面音響波データに基づいて決定された情報エントロピーの尺度、または前記標準化された音響波データに基づいて決定されたグレーレベル共起行列(G)に基づいて決定される、請求項18に記載の検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれている、2023年9月27日に出願した米国仮出願第63/540737号および2023年6月1日に出願した米国仮出願第63/470360号の優先権を主張するものである。
【0002】
これらの教示は、一般に、構成要素を検査するためのシステムおよび方法に関し、より詳細には、音響検査装置およびその動作方法に関する。
【背景技術】
【0003】
様々な産業における構成要素は、構成要素の特性、性能、または予想寿命に影響を与える可能性のある特性または特徴について検査され得る。航空産業においては、様々な構成要素が、チタン合金などの金属合金から形成され得る。しかしながら、特定の金属合金は、合金から形成された構成要素の性能を低下させる可能性があるマイクロテクスチャ領域(MTR: micro-texture region)などの微細構造を含む場合がある。したがって、そのような材料の微細構造特性を評価するための検査デバイスおよび方法を有することが有用である場合がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Venkatesh V, Noraas R, Pilchak A, Tamirisa S, Calvert K, Salem A, et al., Data driven tools and methods for microtexture classification and dwell fatigue life prediction in dual phase titanium alloys, MATEC Web Conf. 2020;321:11091
【非特許文献2】Pilchak, A.L., Shank, J., Tucker, J.C. et al., A dataset for the development, verification, and validation of microstructure-sensitive process models for near-alpha titanium alloys, Integr. Mater. Manuf. Innov. 5, 259-276 (2016)
【発明の概要】
【0005】
特に図面と併せて検討されるとき、以下の詳細な説明で説明する音響検査デバイスおよび動作方法の提供により、様々なニーズが少なくとも部分的に満たされる。当業者に向けられた、その最良の形態を含む本明細書の態様の完全かつ可能な開示が、添付の図を参照する本明細書に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】実施形態に係る検査システムの概略図である。
【
図2】
図2Aは、実施形態に係るトランスデューサを含む検査デバイスの概略図である。
図2Bは、
図2Aのトランスデューサの端部の概略図である。
図2Cは、異なる音経路角度において
図2Aの検査デバイスによって実行される走査の概略図である。
【
図3】
図3Aは、実施形態に係るトランスデューサを有する代替検査デバイスの概略図である。
図3Bは、
図3Aのトランスデューサの下端の概略図である。
【
図4】
図4Aは、実施形態に係るマスクを含む検査デバイスの側面図である。
図4Bは、
図4Aの検査デバイスの斜視図である。
【
図5A】実施形態に係る材料サンプルを検査する方法のフロー図である。
【
図5B】実施形態に係る材料サンプルを検査する方法のフロー図である。
【
図5C】実施形態に係る材料サンプルを検査する方法のフロー図である。
【
図5D】実施形態に係る材料サンプルを検査する方法のフロー図である。
【
図6A】2つの異なる結晶構造を通過する音響波の概略図である。
【
図7A】サンプルを走査する表面波の概略図である。
【
図7B】サンプルを走査する表面波の概略図である。
【
図8】実施形態に係る構成要素を検査する方法のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
図中の要素は、簡潔さおよび明瞭さのために示されており、必ずしも縮尺通りに描かれているわけではない。例えば、図中の要素のうちのいくつかの寸法および/または相対的位置は、本教示の様々な実施形態の理解を向上させるのを助けるために、他の要素に対して誇張されている場合がある。また、商業的に実現可能な実施形態において有用または必要である、一般的であるがよく理解されている要素は、本教示のこれらの様々な実施形態のより妨げられない図を容易にするために、しばしば描かれていない。特定の動作および/またはステップは、特定の発生順序で記述または描写されている場合があるが、当業者は、順序に関するそのような特定性が実際には要求されないことを理解するであろう。
【0008】
場合によっては、構成要素の微細構造特性を決定することは、電子後方散乱回折(EBSD: electron backscatter diffraction)などの破壊試験を伴う。一般に、EBSD試験用の材料サンプルも高度に準備され、例えば、サンプルを鏡面仕上げに研磨することを伴う場合がある。一般的に言えば、本開示の様々な態様は、結晶構造を有する材料から形成された構成要素の微細構造特性を検出するための非破壊的手法を示す。非破壊検査は、検査プロセス中に構成要素への損傷を回避しながら、構成要素を評価し得る。非破壊検査は、構成要素を損傷しないので、構成要素は、検査後に依然として使用することができ、動作状態に戻し得、コストを削減し得る。さらに、本明細書で説明する音響検査システムおよび方法は、高度に準備されない(例えば、鏡面仕上げに研磨される必要がない)単純な表面に対して実行され得て、ピーニングおよび機械加工された表面を評価することができる。
【0009】
本明細書で使用される用語および表現は、異なる特定の意味が本明細書で別途記載されている場合を除き、上述の技術分野の当業者によってそのような用語および表現に与えられる通常の技術的意味を有する。本明細書で使用される「または」という単語は、特に明記しない限り、接続構文ではなく離接構文を有するものとして解釈されるものとする。「結合された」、「固定された」、「取り付けられた」などの用語は、特に明記しない限り、直接的な結合、固定、または取り付け、ならびに1つまたは複数の中間構成要素または特徴を介した間接的な結合、固定、または取り付けの両方を指す。
【0010】
単数形での記載は、文脈上特に断らない限り、複数の場合を含む。
【0011】
本明細書および特許請求の範囲全体にわたって使用される近似の文言は、関連する基本機能の変化を生じることなく、許容される範囲で変化する可能性がある任意の定量的表現を修飾するために適用される。したがって、「約」、「おおよそ」、および「実質的」などの用語によって修飾された値は、指定された正確な値に限定されるべきではない。少なくともいくつかの例において、近似の文言は、値を測定するための機器の精度、または構成要素および/もしくはシステムを構築もしくは製作するための方法もしくは機械の精度に対応する場合がある。例えば、近似の文言は、2倍のマージン内にあることを示す場合がある。
【0012】
ここで図に目を向けると、
図1は、材料サンプル102を検査するために使用され得る検査システム100を示す。検査システム100は、材料サンプル102の1つまたは複数の特性を決定するために使用され得る。いくつかの態様において、材料特性は、材料サンプル102の微細構造に関連する場合がある。材料サンプル102は、検査システム100によって検出され得る、亀裂、空隙、材料異常(異なる密度または係数の領域)、介在物などの不連続特性を含む場合がある。材料サンプル102は、亀裂、空隙などではないが、同様に検査システム100によって検出され得る微細構造特性も有する場合がある。微細構造特性は、連続特性であり得る。微細構造特性(例えば、非不連続型特性)は、不連続特性とともにシステムによって検出され得る。検査システム100を使用して推測され得る材料特性は、限定はしないが、粒子(結晶)サイズ、粒子(結晶)配向、粒子形状、MTRの存在、MTRのサイズ、MTRの強度、MTRの配向、マクロテクスチャ、転位含有量、残留弾性圧縮応力、または引張応力などを含み得る。いくつかの例において、材料特性は、チタン合金におけるMTR特性、合金における粒子サイズ、合金、例えばニッケル合金におけるテクスチャ領域である。材料特性は、サイズ、形状、強度、密度、周波数、配向、配向の広がり、隣接領域特性、または体積分率などの任意のMTR特性であり得る。チタンに加えて、本明細書で説明する手法は、限定はしないがニッケルを含む他の合金にも適用することができる。
【0013】
MTRは、同様の結晶配向を有する粒子の集合体を指す場合がある。マクロテクスチャは、サンプル軸に対して好ましい結晶配向を有するMTRまたは粒子を指す場合がある。マクロテクスチャは、疲労強度および引張強度の差異を引き起こす場合もある。材料特性が変化すると、合金の性能が影響を受ける場合があることに留意すべきである。例えば、チタン合金においてMTRのサイズおよび/または強度が増加すると、室温保持疲労特性が低下する。同様に、チタン合金において、マクロテクスチャが強まると(サンプル中の結晶c軸配向の強さによって測定される)、0.2%降伏強度および極限引張強度が増加する。ニッケル合金において、粒子サイズが増加すると、疲労特性が低下する。
【0014】
検査システム100は、検査デバイス104と、レコーダ110と、1つまたは複数のデータベース118(以下、単数形でデータベース118と呼ぶ)と、計算デバイス124と、制御ユニット128とを含む。検査システム100およびその様々な構成要素は、ユーザインターフェース144を介して動作および制御され得る。
【0015】
材料サンプル102は、立方晶ジルコニアなどの結晶構造を有する材料、またはチタン合金、ニッケル合金、アルミニウム合金、鋼などの金属合金から形成され得る。しかし、本明細書で説明するデバイスおよび方法は、材料を横切って進行する表面音響波の特性が材料特性の関数として、および/または材料の粒子(結晶)内のある方向に変化する任意の材料に適用され得ることが考えられる。材料サンプル102は、任意の適切な形状、サイズ、または形態であり得る。材料サンプル102は、部品(part)もしくは構成要素(component)であり得て、またはいくつかの態様において、部品または構成要素を製作するための押し出し、鍛造、圧延、機械加工などの別の処理動作において原料として使用されるビレット、プレート、鍛造品、または押し出し品などの原材料であり得る。検査システム100を使用して、部品または処理中の原材料の任意の表面が走査され得る。ビレット、鍛造品、または部品のスライスまたは直線状のサンプルが材料サンプル102として機能し得ることも考えられる。したがって、検査デバイス104は、原材料が構成要素を製造または他の方法で形成するために使用される前に、原材料の材料特性を検出することができる場合がある。このようにして、材料特性は、材料品質を確立し、原材料が特定の構成要素において使用するのに適しているかどうかを判定するために使用することができる。構成要素を形成する前に試験することは、製造の労力を費やす前に、構成要素を形成するために適切な材料が使用されることを保証し、製造された部品または構成要素に対する試験の必要性を軽減し得る。
【0016】
チタン合金などの金属合金のビレットおよび構成要素の鍛造処理は、MTRのサイズおよび配置などの、金属合金の材料特性に影響を与え得る。例えば、MTRは、チタン合金がベータトランザス(例えば、高温ベータ相が最後に低温アルファ相に変換し始める温度)未満に冷却されるビレット変換中に形成され得、その後、ビレットの加工中および/またはベータトランザス未満の温度における構成要素鍛造中に成形され得る。ビレット加工、構成要素鍛造加工、液体加熱処理からの冷却速度などのいくつかの要因が、MTRの形成および成形に影響を与え得る。したがって、材料サンプル102は、MTRなどの材料特性が形成された後、部品を形成するための金属合金の熱機械的処理における任意の時点で採取され得ることが考えられる。例えば、材料サンプル102は、ビレットの端部スライス、鍛造部品(例えば、ファンディスク)のマイクロスライス、鍛造部品の表面、または金属合金の熱機械的処理の任意のステップの前もしくは後にビレット、鍛造品、または部品から採取された任意の他の適切なサンプルであり得る。いくつかの手法において、材料サンプル102は、ガスタービンエンジンの部品または構成要素(例えば、組み立て前の部品もしくは構成要素、またはガスタービンエンジンから分解された部品もしくは構成要素)でもあり得る。
【0017】
図1の図示の実施形態において、検査デバイス104は、マスク107が結合されたトランスデューサ106と、走査デバイス108と、結合媒体109とを含む。トランスデューサ106は、音響送信器部と、音響受信器部とを含む。音響送信器部は、材料サンプル102の領域を音響波で励起するための任意の適切なデバイスであり得る。音響送信器部は、音響波またはパルスを生成または放出する任意の励起源、エネルギー源、または振動源であり得る。音響波は、超音響波であり得る。音響受信器部は、音響波および/またはその特性を受信、測定、定量化、または他の方法で検出するための任意の適切なデバイスであり得る。音響受信器部は、入ってくる音波またはパルスを、入ってくる音波を示す電気測定信号(例えば、音響信号)に変換し得る。いくつかの構成において、音響受信器部および音響送信器部は、単一の圧電デバイス内に含まれる、かつ/または単一の圧電デバイスによって実装される(例えば、
図2Aおよび
図2Bを参照)。そのような単一の圧電デバイスにおいて、トランスデューサ106は、送信モードと受信モードとの間で切り替え得る。他の構成において、音響受信器部および音響送信器部は、別個の圧電デバイスである(例えば、
図3Aおよび
図3Bを参照)。
【0018】
いくつかの態様において、音響送信器部および音響受信器部は、単一の中心周波数とそれに関連する帯域幅とを使用して動作し得る。他の態様において、音響送信器部および音響受信器部は、周波数の範囲を掃引することによって動作し得る。トランスデューサ106の音響送信器部および音響受信器部は、最大約2ギガヘルツの周波数を使用して動作し得、いくつかの態様において、約0.5MHzと約100MHzとの間、または約30MHzと約50MHzとの間の周波数を使用して動作し得る。材料サンプル102を構成する材料の結晶サイズに対応する材料中の波長を有する周波数を選択することが望ましい場合がある。
【0019】
マスク107は、トランスデューサ106に直接結合される。マスク107は、音響波を遮断する任意の構造であり得る。いくつかの態様において、マスク107は、材料サンプル102の表面にわたる音経路角度を制御するように成形される。マスク107は、トランスデューサ106の音響送信器部の音響エネルギーの方向または音経路角度を選択することを可能にする。本明細書で使用される音経路角度は、材料サンプル102の表面にわたる基準線に対する材料サンプル102の表面にわたる角度を指す。例えば、基準線は、サンプル座標軸のうちの1つ、または材料の流れの方向に対応し得る。音経路角度を
図2Cに示す。例示的なマスクを
図4Aおよび
図4Bに示す。マスク107は、音経路角度を設定するための1つの例示的な構成であることを理解すべきである。複数の音響送信器および音響受信器の中から選択することは、音経路角度を設定するための別の例示的な手法である(
図3Aおよび
図3B)。
図3Aおよび
図3Bのトランスデューサ構成において、音経路角度は、音響送信器および音響受信器のペアを選択することによって設定され得るので、マスク107は、含まれなくともよいことが考えられる。いくつかの手法において、マスク107は、マスク107によって覆われている圧電能動素子の部分を含めないことによって省略され得る。
【0020】
走査デバイス108は、材料サンプル102に対するトランスデューサ106の位置を調整するように構成される。走査デバイス108は、可動プラットフォーム、ターンテーブル、または材料サンプル102を保持し、および/または移動することができる別のデバイスを含み得る。走査デバイス108は、トランスデューサ106を移動するように動作可能なロボットアームなどのデバイスも含み得る。走査デバイス108は、互いに連動して動作する2つの別個の制御可能なデバイスであり得る。いくつかの手法において、走査デバイス108は、音経路角度を調整するようにも構成され得る。
【0021】
結合媒体109は、トランスデューサ106と材料サンプル102との間に配置される。材料サンプル102またはその一部は、結合媒体109内に浸漬され得、または結合媒体109で湿潤され得る。結合媒体109は、トランスデューサ106の音響送信器部と音響受信器部との間の伝搬ギャップと、トランスデューサ106と材料サンプル102の表面との間の空間とを満たし得る。いくつかの手法において、トランスデューサの音響送信器部および音響受信器部を取り囲む空間と、材料サンプル102の表面とが、結合媒体109で満たされ得る。結合媒体109は、水などの液体、または油もしくは溶液などの別の流体カプラントであり得る。いくつかの態様において、結合媒体109は、ペースト、ゲル、または特定の態様において固体でもあり得る。結合媒体109は、トランスデューサ106から材料サンプル102への音響エネルギーの伝達を助け得る。結合媒体109は、音響波の伝達を改善するために、トランスデューサ106から材料サンプル102への音響波の伝播に効率的な経路を提供する。例えば、音響エネルギーは、空気または固体をうまく伝わらない場合がある。例えば、トランスデューサ106と材料サンプル102との間にインピーダンスの不整合が存在する場合があり、音響エネルギーは、材料サンプル102を貫通するのではなく、トランスデューサ106に向かって反射される場合がある。結合媒体109は、トランスデューサ106と材料サンプル102とをまたぐブリッジとして機能し得、空気を置換し、音響エネルギーが材料サンプル102に伝達されることを可能にする。結合媒体109は、トランスデューサ106から材料サンプル102に伝達される音響エネルギーを増加または最大化するのを助け得る。
【0022】
レコーダ110は、検査デバイス104と作動的に通信しており、特に、トランスデューサ106と通信しているが、検査デバイス104の任意の構成要素とも通信し得る。レコーダ110は、検査デバイス104によって収集、生成、または他の方法で受信された任意のデータ(例えば、表面音響波データ)を記録し得る。レコーダ110は、符号化された音響信号および/またはその特性を適切な記憶媒体上に記録するための音響信号レコーダであり得る。いくつかの手法において、レコーダ110は、符号化された音響信号および/またはその特性をデータベース118内に記録し得る。レコーダ110は、トランスデューサ106の音響受信器部によって受信された音響波を示す信号を取得するように構成される。
【0023】
いくつかの手法において、レコーダ110は、音響波の特性を含み得る表面音響波データを記録し得る。表面音響波データは、音響受信器部によって受信された音響波の伝搬時間112、信号振幅113、信号振幅の時系列115、到着時間116、および/または位置117などの、音響波の特性を含み得る。伝搬時間112は、トランスデューサ106からの音響波の伝達時間と、トランスデューサ106による反射音響波の受信時間との間の差を含み得る。信号振幅113は、トランスデューサ106によって受信された音響波を表す信号の強度を表し得、波の高さによって表されるような音響波の強度を示し得る。信号振幅の時系列115は、様々な信号振幅がトランスデューサ106によって検出または受信された一連の時間を含み得る。到着時間116は、反射音響波がトランスデューサ106において受信された時間を示し得る。位置117は、材料サンプル102に対するトランスデューサ106の位置を示し得る。表面音響波データは、音響波データの特性として、材料サンプル102の領域全体にわたる表面音響波応答の2次元または3次元表現に取り込まれたサイズまたはアスペクト比などの幾何学的特徴も含み得る。信号振幅の時系列115は、音響波が分裂し、複数の到着時間が存在する(例えば、複数の伝搬時間を有する)場合、到着イベントのシーケンスを提供する。いくつかの手法において、レコーダ110はまた、走査デバイス108と通信し得、検査デバイス104に対する材料サンプル102の位置および/または音経路角度に関するデータを記録し得る。さらに別の手法において、レコーダ110は、1つまたは複数のタイプのデータが記録された時間に関連付けられた時間データも記録し得る。例えば、レコーダ110は、1つまたは複数の信号が検査デバイス104によって取得または受信されたとき、および/または1つまたは複数の音響波が送信されたときに関する時間データを記録し得る(例えば、送信と受信との間の差が、伝搬時間である)。レコーダ110は、例えば、音響データが取得された材料サンプル102上の場所および/または音経路角度などの、材料サンプル102上の位置を示す位置データも記録し得る。レコーダ110はまた、検査デバイス104によって受信された波形全体またはその一部をAスキャンまたはBスキャンとして記録し得る。波形の形状は、サイズ、強度などのMTR特性を示し得る。
【0024】
データベース118は、検査システム100によって収集または使用される1つまたは複数のタイプのデータ(例えば、表面音響波データ)を含み得る。例えば、データベース118は、検査デバイス104によって収集、生成、および/または他の方法で受信された1つまたは複数のタイプのデータを含み得る。別の例において、データベース118は、レコーダ110によって記録されたデータ(
図1における記録されたデータ120など)を含み得る。さらに別の例において、データベース118は、計算デバイス124によって計算または他の方法で決定されたデータ(
図1における計算されたデータ122など)を含み得る。上述のように、データベース118は、単一のデータベースである必要はなく、1つまたは複数のデータベースを含み得る。
【0025】
計算デバイス124は、材料サンプル102の少なくとも1つの特性を決定するように構成される。計算デバイス124は、少なくとも部分的に、レコーダ110によって記録されたデータ120に基づいて、かつ/またはデータベース118内に含まれるデータに基づいて、少なくとも1つの特性を決定し得る。
【0026】
いくつかの手法において、計算デバイス124は、レコーダ110によって記録された直接値を使用するように構成され得る。例えば、計算デバイス124は、検査デバイス104から取得された以下のタイプのデータ、すなわち、伝搬時間112、信号振幅113、信号振幅の時系列115、到着時間116、位置117、音経路角度(
図2Bを参照)のうちの1つもしくは複数、またはその組合せを使用するように構成され得る。1つの手法において、計算デバイス124は、レコーダ110によって記録された直接値(またはその絶対値)がしきい値を満たす(例えば、超える)かどうかを判定し得る。別の手法において、計算デバイス124は、異なる音経路角度において特定の位置において収集されたデータを比較し得る。
【0027】
追加的または代替的に、計算デバイス124は、レコーダ110によって記録されたデータ120の統計的相関または他のデータ分析を実行するように構成され得る。例えば、計算デバイス124は、標準偏差、平均値、中央値、広がり、分散、フーリエ変換などを決定するように構成され得る。計算デバイス124は、時間の分析パラメータ、位置の統計、伝搬時間の統計、および/または信号振幅の統計を決定し得、複数の関心領域からのデータを一緒にビニングすること、または中央値フィルタもしくはガウスフィルタなどの様々なフィルタリング技法の適用を含み得る。特定の態様において、計算デバイス124は、以下の1つまたは複数を決定するように構成され得る。
【0028】
材料サンプル102上の1つまたは複数の関心領域に関する伝搬時間の標準偏差。
【0029】
材料サンプル102上の1つまたは複数の関心領域に関する伝搬時間の平均値。
【0030】
材料サンプル102上の1つまたは複数の関心領域に関する伝搬時間の最大値。
【0031】
材料サンプル102上の1つまたは複数の関心領域に関する信号振幅の標準偏差。
【0032】
材料サンプル102上の1つまたは複数の関心領域に関する振幅の平均値。
【0033】
材料サンプル102上の1つまたは複数の関心領域に関する振幅の最大値。
【0034】
材料サンプル102に関する伝搬時間の時間的変動の空間的変動。
【0035】
材料サンプル102に関する信号振幅の時間的変動の空間的変動。
【0036】
時間領域信号のフーリエシーケンス。
【0037】
振幅信号および/または伝搬時間信号の空間表現に関するフーリエシーケンス。
【0038】
いくつかの手法において、計算デバイス124は、例えば、材料サンプル102の表面を横切って伝搬する音響波の速度を決定するために、新しい測定値を計算するためにデータを組み合わせ得る。別の例は、粒子(結晶)の格子配向を推定するために、特定の位置における異なる音経路角度に関する速度計算を比較することであり得る。計算デバイス124は、さらに、サンプル内の粒子の相対的な格子配向を示す画像を形成するために、複数の位置に関する計算結果を組み合わせ得る。次いで、この画像は、さらに、MTRなどのサンプル内の微細構造の特徴のサイズ、形態、および/または強度を計算するために処理され得る。計算デバイス124は、レコーダ110によって記録された伝搬時間と、伝搬ギャップ(例えば、音響波が材料サンプル102の表面を横切って伝搬する距離)とに基づいて、速度を決定し得る。
【0039】
いくつかの手法において、計算デバイス124は、電子後方散乱回折(EBSD)からのデータを使用して較正され得る。例えば、伝搬時間などの、レコーダ110によって記録されたデータ120は、電子後方散乱回折(EBSD)によって決定された微細構造の特徴などの材料の特性に相関し得る。このようにして、計算デバイス124は、材料の表面を横切って伝搬する音響波の特性に基づいて、材料の特性を自動的に決定または識別し得る。
【0040】
制御ユニット128は、検査デバイス104、特にトランスデューサ106と作動的に通信する。制御ユニット128は、トランスデューサ106を動作するように構成され得、特に、トランスデューサ106の音響送信器部および音響受信器部を操作して、音響波の送信および受信を制御し得る。いくつかの態様において、制御ユニット128は、タイミング、周波数、および/または音経路角度を制御するように構成される。いくつかの手法において、制御ユニット128は、材料サンプル102に対するトランスデューサ106の位置を調整するために走査デバイス108を制御するようにも構成される。
【0041】
制御ユニット128は、典型的には、1つまたは複数のプロセッサ136および/またはマイクロプロセッサを備える。メモリ130は、検査システム100および検査デバイス104またはその部品の機能を実装するために制御ユニット128および/または1つもしくは複数のプロセッサ136によって実行される動作コードまたは命令134のセットを記憶する。いくつかの実施形態において、メモリ130は、材料サンプル102を検査するために必要であり得るデータ132の一部またはすべても記憶し得る。
【0042】
制御ユニット128は、1つまたは複数のプロセッサ136として実装され得る。同様に、メモリ130は、1つまたは複数のプロセッサ可読および/またはコンピュータ可読媒体などの1つまたは複数のメモリデバイスとして実装され得、RAM、ROM、EEPROM、フラッシュメモリ、および/もしくは他のメモリ技術などの揮発性ならびに/または不揮発性媒体を含むことができる。さらに、メモリ130は、制御ユニット128の内部にあるように示されているが、メモリ130は、内部メモリ、外部メモリ、または内部メモリと外部メモリとの組合せとすることができる。追加的に、制御ユニット128は、典型的には、充電可能であり得るおよび/または外部電源から電力を受け取り得る電源(図示せず)を含む。
【0043】
ユーザインターフェース144は、検査システム100の1つまたは複数の構成要素を制御するために使用され得る。ユーザインターフェース144は、ユーザ入力および/または出力表示のために使用され得る。例えば、ユーザインターフェース144は、1つまたは複数のボタン、ノブ、セレクタ、スイッチ、キー、タッチ入力表面、オーディオ入力、および/またはディスプレイなどの任意の公知の入力/出力(I/O)デバイス138を含み得る。追加的に、ユーザインターフェース144は、限定はしないが、通信情報、ステータス情報、注文情報、配送情報、通知、エラー、状態、および/または他のそのような情報をユーザに伝えるために、ライト、視覚インジケータ、表示画面などの1つまたは複数の出力表示デバイスを含み得る。同様に、いくつかの実施形態において、ユーザインターフェース144は、ユーザによって口頭で発せられた音声コマンドもしくは要求を受信し、かつ/または音声コンテンツ、警告などを出力することができるオーディオシステムを含み得る。
【0044】
いくつかの手法において、検査システム100は、さらに、製造システム129と通信し得る。製造システム129は、任意の製造システムであり得、いくつかの非限定的な例において、構成要素の熱機械的処理、部品の製造、または構成要素もしくは部品を形成するために使用される原材料の製造を実行する任意のシステムであり得る。いくつかの態様において、製造システム129は、材料サンプル102を形成するため、または材料サンプル102と同様の材料組成(例えば、同様の合金組成、結晶構造など)を有する構成要素、部品または原材料を形成するために使用される。製造システム129は、例えば、構成要素もしくは部品を形成するため、または材料の熱機械的処理を他の方法で実行するために、1つまたは複数の製造プロセスを実行し得る。検査システム100は、製造システム129に製造プロセスのフィードバックを提供し得る。例えば、計算デバイス124によって決定された材料特性126は、製造システム129によって実行される製造プロセスのパラメータを調整するために使用され得る。例えば、計算デバイス124が、材料サンプル102が高いMTR強度を有するか、または許容できない微細構造を有すると判定した場合、検査システム100は、製造システム129によって実行される製造プロセスのパラメータ(例えば、ビレットの端部において切り取られるべき材料の量)の調整を引き起こし得る。
【0045】
いくつかの手法において、検査システム100によって検出される材料特性は、材料サンプル102のMTR特性を含み得る。MTR特性は、材料サンプル102内のMTRの特性、および/またはMTRの存在を示す材料サンプル102の特性であり得る。例えば、材料特性は、材料サンプルの粒子サイズ、粒子構造、粒子配向、粒子形状、マイクロテクスチャ領域の存在、マイクロテクスチャ領域のサイズ、マイクロテクスチャ領域の強度、マイクロテクスチャ領域の配向、マクロテクスチャ、転位含有量、残留弾性圧縮応力、または引張応力のうちの1つまたは複数を含み得る。
【0046】
動作中、検査デバイス104は、材料サンプル102の少なくとも1回の走査を実行する。走査中、検査デバイス104、特にトランスデューサ106の音響送信器部は、音響波を送信または生成する。音響波は、材料サンプル102の表面に沿って伝搬してトランスデューサ106の受信器部によって受信される表面音響波を生成するために、結合媒体109を通って材料サンプル102の表面に伝搬する。音響受信器部は、音響波が材料サンプル102の表面と相互作用した後に音響波を検出する。
【0047】
制御ユニット128は、表面音響波を示すデータなどの、トランスデューサ106の音響受信器部によって取得されたデータにアクセスし得る。さらに、制御回路は、表面音響波を示すデータに基づいて、材料サンプルの少なくとも1つの材料特性を決定し得る。
【0048】
材料サンプル102の音響伝播特性は、音響波が材料サンプル102を通ってまたは横切って伝搬する方法に影響を与える場合がある。材料の種類、形成方法、微細構造の特徴(例えば、MTR)、および他の要因が、音響波が伝搬する方法に影響を与える場合がある。音響波の速度は、材料サンプル102内に存在するMTRのサイズおよび強度などの、材料サンプル102の材料特性の関数として変化する場合がある。例えば、音速は、材料サンプルの弾性率に比例する。チタン合金などの結晶性材料において、弾性率は、典型的にはミラーブラヴェ指数では[0001]と呼ばれるc軸または基底極に対する材料における配向によって影響を受ける。したがって、チタン合金、例えば、材料サンプル102における結晶のc軸に対する配向の角度は、材料サンプル102を通って伝搬する音響波の速度にも影響を与える場合がある。この速度変動は、粒子の[0001]軸の絶対配向、またはサンプル表面に対する粒子群の平均[0001]配向を計算するために測定および使用することができる。別の例において、音響波の振幅は、材料サンプル102内の転位の存在またはMTR領域の強度に基づいて変動する場合がある。このようにして、音響波は、材料サンプル102の特性に関する情報を明らかにするか、または他の方法で示し得る。
【0049】
いくつかの手法において、検査デバイス104は、材料サンプル102の表面上の複数の異なる位置において走査を実行し得る。いくつかの態様において、検査デバイス104は、材料サンプル102の表面全体または表面の大部分を走査し得る。材料サンプルの表面上の各位置または点において、検査デバイス104は、複数の異なる音経路角度、いくつかの態様では3つ以上の異なる音経路角度において走査を実行し得る。すなわち、トランスデューサ106の音響送信器部は、単一の点において複数の走査を実行し得、音響送信器部は、単一の点において、材料サンプルの表面にわたる複数の方向に音響波を送信する。いくつかの手法において、検査デバイス104は、各位置において少なくとも4つの音経路角度において走査を実行する。
【0050】
特定の音伝播方向および/または音経路角度は、サンプルの伝搬時間値の改善された解像度またはコントラストを提供し得る。例えば、音響波の特定の音伝播方向および/または音経路角度は、材料サンプル102の粒子構造特性の応答を最適化または他の方法で改善するように選択され得る。いくつかの手法において、音経路角度は、材料サンプル102がビレットである場合にはビレットの金属の流れに、または材料サンプル102が鍛造品である場合には鍛造品の金属の流れに整列するように(例えば、
図4Bにおけるスリット198の位置を介して)調整され得る。他の手法において、音経路角度は、材料サンプル102の1つまたは複数の特性に基づいて調整され得る。
【0051】
検査システム100は、トランスデューサ106によって生成された音響波の伝播方向に平行な表面波速度における変化を介して、サンプルの結晶配向における変化を検出し得る。所与の伝播方向において、速度だけでは、関心領域内の材料(例えば、粒子)の配向に関する一意の解を提供するのに十分ではない場合がある。画像内の最大速度は、ビーム伝播方向と平行な[0001]を有する粒子に対応する場合があるが、最小速度は、表面の法線から表面におけるビーム伝播方向に対して90°までのどこかの[0001]に対応する場合がある。同様に、中間ビーム速度は、表面に対して中間の角度における[0001]で配向されたMTRに対応する場合があるか、または両極端の中間にある平均速度を有する異なる配向における粒子の混合物である可能性がある。検査システム100は、EBSD逆極点図マップに類似する空間的に相関する結晶学的データを抽出するために、追加のデータ処理を実行し得る。
【0052】
材料サンプル102内の所与の場所について、複数の音響波伝播方向(例えば、音経路角度)で一連の音響走査が収集され得る。所与の点において測定された速度は、表面に対する[0001]の傾斜の関数として変動すると予測され、表面に対して垂直な[0001]を有する領域は、異なる伝播角度でも変化しないが、表面に対して傾斜した[0001]を有する領域は、可変の波の伝播速度を示す。伝播速度のこの変動は、表面に対する[0001]の傾斜を決定するために使用することができる。
【0053】
図2Aに目を向けると、マスク165を含む検査デバイス150が示されている。
図2Aは、検査デバイス150の断面側面図を提供する。検査デバイス150は、検査デバイス104に対応し得、材料サンプル160は、
図1の材料サンプル102に対応し得る。検査デバイス150は、トランスデューサ152を含む。トランスデューサ152は、円筒形状であるが、他の実施形態では、トランスデューサ152は、他の適切な形状であり得る。トランスデューサ152は、凹面156を有する。トランスデューサ152は、材料サンプル160の表面に隣接して取り付けられる。トランスデューサ152の凹面156は、トランスデューサ152の端部に配置される。
【0054】
図2Aに示すように、凹面156は、材料サンプル160の表面から距離166だけ離間している。トランスデューサ152の凹面156は、周縁部159によって境界付けられた半球状または非半球状の表面であり得る。一例において、非半球面は、曲面を有する凹状の矩形ストリップであり得る。そのようなストリップは、湾曲した角部を有していても有していなくてもよい。トランスデューサ152の凹面156の周縁部159は、音響送信器部157と音響受信器部158とを含む。音響送信器部157および音響受信器部158は、それらの間に伝搬ギャップを作成する。音響送信器部157は、音響受信器部158と対向する。この実施形態において、音響送信器部157および音響受信器部158は、単一の圧電デバイスの一部である。
【0055】
凹面156は、トランスデューサ152の能動素子であり、音響送信器と音響受信器の両方として動作する単一の圧電素子である。凹面156は、動作中に送信モードと受信モードとの間で切り替わり得る。圧電素子は、トランスデューサ152が音響波を生成するために圧電素子(例えば、凹面156)を作動させるように動作する送信モードで動作し得る。圧電素子は、受信(またはリスニング)モードでも動作し、このモードにおいて、トランスデューサ152は、音響波が材料サンプル160の表面で反射し、圧電素子(例えば、凹面156)に跳ね返るのを待つ。凹面156に電気エネルギーを印加することは、凹面156を膨張および収縮させ、凹面156を振動させる。凹面156の振動は、トランスデューサ152の音響送信器部157から材料サンプル160に伝搬する音響波を結果として生じる。能動素子の厚さは、音響波の周波数を決定し得る。音響波は、材料サンプル160の表面を横切って伝搬する。音響波は、凹面156に反射され、トランスデューサ152の音響受信器部158に戻る。
【0056】
凹面156は、圧電材料であるので、音響波が凹面156に到達すると、動きが電気信号に変換される。音響波が超音波である場合、電気信号は、超音波波形と呼ばれる場合がある。トランスデューサ152は、特定のパルス繰り返し率において音響波を放射し得る。パルス(例えば、音響波の送信)は、音響波が、次のパルスが生成される前に材料サンプル160に到達してトランスデューサ152に戻るのに十分な時間を有するように、パルス間の時間を可能にするために離間され得る。音響波がまた音響送信器部157と音響受信器部158との間で反対方向または2方向に材料サンプル160を横切って伝搬し得るように、音響送信器部157が音響受信器として機能し得、音響受信器部158が音響送信器として機能し得ることも考えられる。
【0057】
音響送信器部157は、音響波を生成または送信する。図示のように、トランスデューサ152の音響送信器部157によって生成された音響波は、入射角164において材料サンプル160の表面に衝突する。入射角164は、音響波が伝搬ギャップ162を横切って材料サンプル160の表面を横切って伝搬するようなものである。いくつかの手法において、入射角は、約20度と約40度との間である。他の手法において、入射角は、約25度と約35度との間である。さらに他の手法において、入射角は、約28度と約32度との間であり、いくつかの態様において、入射角は、約30度である。凹面156の曲率半径は、音響エネルギーを集束させ、材料サンプル160の表面を横切って伝搬する表面音響波(Raleigh波)を結果として生じる特定の入射角を達成するように選択され得る。曲率半径は、入射角に対応し得、したがって、入射角の前述の範囲は、曲率半径にも適用されることが考えられる。例えば、曲率半径は、約20度と約40度との間でもあり得る。
【0058】
伝搬ギャップ162は、音響波が材料サンプル160の表面を横切って伝搬する距離である。音響波は、伝搬ギャップ162を横切って伝播し、トランスデューサ152の音響受信器部158によって受信される。伝搬ギャップ162にわたる音響波の伝搬時間は、材料サンプル160の微細構造などの特性によって影響を受ける。例えば、結晶粒構造のサイズおよび配向は、伝搬ギャップ162にわたる音響波の伝搬時間に影響を与える場合がある。
【0059】
検査デバイス150は、さらに、結合媒体(
図2Aに示さず)を含む。いくつかの手法において、伝搬ギャップ162と、材料サンプル160と、凹面156とを取り囲む空間は、結合媒体で満たされる。いくつかの手法において、検査デバイス150全体は、結合媒体(
図1の結合媒体109など)内に浸漬される。いくつかの手法において、凹面156の全体を浸漬する第1のボリューム161Aが、結合媒体で満たされる。他の手法において、音響送信器部157と音響受信器部158との間の空間を包含し、この空間を通って音響波がトランスデューサ152と材料サンプル160の表面との間を伝搬し得る第2のボリューム161Bが、結合媒体で満たされる。
【0060】
図2Bは、
図2Aのトランスデューサ152の端面図である。トランスデューサ152の下端は、凹面156を含む。凹面156の周縁部159は、マスク165が結合された環状縁部である。凹面156の周縁部159の一部は、マスク165によって遮られる。マスク165は、音響送信器部157から音響受信器部158への経路を作成するスリット167を含む。スリット167は、音響送信器部157から音響受信器部158に音響波を導くか、または向けるのを助け得る。いくつかの手法において、マスク165は、マスク165によって覆われる圧電能動素子の部分を含めないことによって省略され得る。
【0061】
図2Cは、
図2Aの材料サンプル160の上面の一部の上面図である。特に、
図2Cは、検査デバイス150によって送信および受信される音響波に関する様々な音経路角度を示す。図示のように、検査デバイス150は、複数の異なる音経路角度において走査を実行し得る。
図2Cに示す例示的な例において、検査デバイス150は、0度の音経路角度における走査と、45度の音経路角度における走査と、90度の音経路角度における走査と、135度の音経路角度における走査とを含む4つの走査を実行する。音響送信器部157と音響受信器部158との間の方向は、音経路角度を決定または設定するために使用される。
図2Cに示す特定の音経路角度は、限定的ではなく、検査デバイス150は、角度の任意の組合せおよび任意の数の異なる角度において走査を実行し得ることを理解すべきである。異なる音経路角度における表面音響波の速度を比較することは、粒子(結晶)の格子配向を推定することを可能にし得ると考えられる。
【0062】
図3Aは、代替構成を有する検査デバイス170を示す。
図3Aは、検査デバイスの断面側面図を提供する。検査デバイス170は、検査デバイス104に対応し得、材料サンプル180は、
図1の材料サンプル102に対応し得る。検査デバイス170は、凹面174を有するトランスデューサ172を含む。この例において、トランスデューサ172は、円筒形状である。トランスデューサ172は、材料サンプル180の表面に隣接して取り付けられる。
【0063】
トランスデューサ172は、音響受信器部178から離間された音響送信器部176を含む凹面174を含む。この例において、音響送信器部176および音響受信器部178は、別個の圧電素子である(一方、
図2Aおよび
図2Bは、単一の圧電素子内に音響送信器部と音響受信器部とを含む)。音響送信器部176は、音響受信器部178と対向して配置される。音響送信器部176は、1つまたは複数の音響送信器を含み得る。同様に、音響受信器部178は、1つまたは複数の音響受信器を含み得る。
【0064】
音響送信器部176は、音響波を生成または送信する。図示のように、音響送信器部176によって生成された音響波は、入射角182で材料サンプル180の表面に衝突する。入射角182は、音響波が伝搬ギャップ186を横切って材料サンプル180の表面を横切って伝搬するようなものである。いくつかの手法において、入射角は、約20度と約40度との間、約25度と約35度との間、約28度と約32度との間であり、いくつかの態様では、入射角は、約30度である。凹面174の曲率半径は、材料サンプル180の表面を横切って伝搬する表面音響波(Raleigh波)を結果として生じる特定の入射角を達成するように選択され得る。次いで、音響波は、トランスデューサ172の音響受信器部178によって受信される。
【0065】
検査デバイス170は、さらに、材料サンプル180に対するトランスデューサ172の位置を示すためのセンサ179を含む。センサ179は、凹面174と材料サンプル180の表面との間の距離184を感知、検出、または他の方法で決定し得る。センサ179は、音響送信器および音響受信器として機能する圧電デバイスであり得る。したがって、センサ179は、サンプルに音響波を送信し、サンプルからの反射波を受信し得る。次いで、材料サンプル180に行き、センサ179に戻る音響波の伝搬時間、および水などの結合媒体を通る音速は、距離184を決定するために使用され得る。いくつかの実施形態において、センサ179は、材料サンプル180がトランスデューサ172に対して水平であることを確実にするためにも使用され得る。例えば、センサ179は、トランスデューサ172と材料サンプル180との間の距離184を測定するために使用され得る。材料サンプル180の水平は、距離184が材料サンプル180の表面全体にわたる様々な点において実質的に同じになるまで、またはそうでなければ、材料サンプル180に沿った複数の点において実質的に同じになるまで調整され得る。これを達成するために、材料サンプル180の水平は、サンプルの表面に沿った様々な点において伝搬時間が実質的に同じになるまで調整され得る。材料サンプル180の表面は、実質的に平坦であり得ることが考えられる。
【0066】
距離184は、音響波が音響送信器部176と音響受信器部178との間を伝搬する伝搬距離を決定するために使用され得る。伝搬距離は、第1の距離177A、伝搬ギャップ186、および第2の距離177Cの合計によって示される。第1の距離177Aは、音響送信器部176と材料サンプル180の表面との間に延在する。第2の距離177Cは、材料サンプル180の表面と音響受信器部178との間に延在する。いくつかの手法において、伝搬距離は、距離184がわかっている場合、1つまたは複数の幾何学的公式を介して決定され得る。伝搬ギャップ186も、距離184がわかっている場合、1つまたは複数の幾何学的公式を使用することによって決定され得る。伝搬ギャップ186は、伝搬時間とともに、材料サンプル180の表面を横切って伝搬する表面音響波の速度を決定するために使用される。
【0067】
検査デバイス170は、さらに、結合媒体(
図3Aには示さず)を含む。いくつかの手法において、伝搬ギャップ186と、材料サンプル180と、凹面174とを取り囲む空間は、結合媒体で満たされる。いくつかの手法において、検査デバイス170全体は、結合媒体内に浸漬される。いくつかの手法において、凹面174の全体を浸漬する第1のボリューム171Aが、結合媒体で満たされる。他の手法において、音響送信器部176と音響受信器部178との間の空間を包含し、この空間を通じて音響波がトランスデューサ172と材料サンプル180の表面との間を伝搬し得る第2のボリューム171Bが、結合媒体で満たされる。
【0068】
図3Bは、
図3Aのトランスデューサ172の底面図である。トランスデューサ172の下端は、凹面174を含む。凹面174は、マスクを含まない。
図3Bは、この実施形態では音響送信器のアレイを含む音響送信器部176と、音響受信器のアレイを含む音響受信器部178とを示す。音響送信器部176および音響受信器部178は、凹面174の各反対側に配置される。音響波が材料サンプル180を横切って同時に反対方向に伝搬し得るように、音響送信器部176が音響受信器として機能し得、音響受信器部178が音響送信器として機能し得ることも考えられる。
【0069】
図4Aおよび
図4Bは、本明細書で説明する検査デバイスにおいて使用され得るトランスデューサ190を示す。トランスデューサ190は、取り付け部192と凹面194とを含む。凹面194は、音響送信器部と音響受信器部とを含む。取り付け部192は、トランスデューサ190を別の構造体に取り付けるかまたは結合するための任意の適切な構造体、機構、またはデバイスであり得る。取り付け部192は、トランスデューサホルダとして機能し得る。いくつかの例において、取り付け部192は、音響検査のために使用される浸漬タンクの一部に結合される。例えば、取り付け部192は、検査されるべき材料サンプルに対してトランスデューサ190を移動させるために浸漬タンクに取り付けられたロボットアームまたは他の構造体に結合され得る。トランスデューサ190を移動させるために使用することができる他の構造体は、例えば、駆動システムを介して移動するマストを含む。そのようなマストは、直線的なX-Yスキャナであり得、またはジンバルおよび/もしくは旋回角度制御を有し得る。浸漬タンクは、結合媒体(
図1の結合媒体109)を含み得る。トランスデューサ190への電気的接続は、取り付け部192の内部を通して提供され得るが、電気的接続はまた、外部配線から供給され得る。
【0070】
図示のように、取り付け部192は、別の構造体の相補的なねじ部によって受け入れられる雄ねじを含む。例えば、取り付け部192は、浸漬タンクに取り付けられたロボットアームに結合され得る。トランスデューサ190は、トランスデューサの取り付け部192上のねじを別の構造体のねじ部に対してねじ込むかまたは緩めることによって、例えば、マスク196の一部と、したがって音経路角度とを調整するために回転させることができる。音経路角度は、マスク196を異なるマスクに交換すること、マスク196をトランスデューサ190に取り付けるために摩擦嵌合ゴムキャップを使用すること、または材料サンプルが載るターンテーブルもしくは取り付け部の回転などの浸漬タンクの機械的能力を使用することによっても調整することができることも考えられる。
【0071】
トランスデューサ190は、マスク196を含み得る。マスク196は、トランスデューサ190の遠位端に結合される。
図4Bに示す実施形態において、マスク196は、凹面194の周縁部に結合される。マスク196は、それに形成されたスリット198を含む。スリット198は、音響波が伝搬し得る経路を提供するマスク196の開口部である。マスク196は、スリット198を通して音を導くように形成される。マスク196は、任意の適切な材料で製作され得、トランスデューサ190の音響送信器部(またはその一部)からトランスデューサ190の音響受信器部(またはその一部)に音を導くために任意の適切なサイズまたは形状であり得る。トランスデューサ190は、マスク196の位置を調整するために、取り付け部192を介して回転され得る。トランスデューサ190を回転することは、音経路角度を調整するようにスリット198を再配置する。
【0072】
本明細書で説明する音響検査デバイスは、他の適切なマスク構成を使用し得る。また、トランスデューサ190は、音経路角度を調整するためにマスク196を使用するが、音響波の伝搬を方向付けるかまたは制限するための他の適切な操作機能、デバイス、または手法が用いられ得ると考えられる。いくつかの手法において、マスク196は、マスクによって覆われた圧電能動素子の部分を含めないことによって省略され得る。
【0073】
次に
図5A~
図5Dに目を向けると、材料サンプル202を検査するための方法200が示されている。いくつかの手法において、材料サンプル202は、
図1を参照して説明した材料サンプル102である。材料サンプル202は、ビレットから切り出された矩形の棒または円形のスライスなどの任意の適切な形態または形状であり得る。
図5A~
図5Dに示す材料サンプル202は、矩形の棒であるが、他の例では、材料サンプル202は、異なる形状にすることができる。方法200は、
図1の検査システム100を使用し得る。したがって、制御ユニット128、レコーダ110、検査デバイス104、および計算デバイス124は、方法200の1つまたは複数のステップを実行するように構成され得る。
【0074】
ブロック204において、方法200は、第1の音経路角度において材料サンプル202を走査するステップを含む。走査は、材料サンプル202の表面に沿って音響波を送信することと、表面音響波の特性を監視することとを含む。前述のように、いくつかの実施形態において、検査デバイス104は、材料サンプル202を走査し得る。走査動作において、トランスデューサ106の送信器部は、音響波を送信し得、トランスデューサ106の受信器部は、音響波を受信し得る。レコーダ110は、表面音響波の特性を記録する。検査デバイス104は、第1の音経路角度において複数の走査を実行し得、複数の走査は、材料サンプル202の表面全体にわたる多数の異なる位置または点において発生する。いくつかの手法において、走査デバイス108は、材料サンプル202の表面全体にわたる様々な位置において走査を実行するために、材料サンプル202および/またはトランスデューサ106の位置を調整し得る。
【0075】
画像204Aは、検査デバイス104が材料サンプル202を走査した後にレコーダ110によって記録されたデータの例示的な2D画像である。特に、画像204Aは、材料サンプル202の表面全体にわたる様々な位置において実行された走査からの伝搬時間を示す。画像204Aの矩形形状は、材料サンプル202の矩形表面のうちの1つに対応する。
【0076】
ブロック206において、方法200は、検査デバイス104を介して、追加の音経路角度における追加の走査を実行するステップを含む。いくつかの手法において、トランスデューサ106は、追加の音経路角で走査を実行するために回転される。
【0077】
第1の画像206A、第2の画像206B、第3の画像206C、および第4の画像206Dは、材料サンプルの追加の走査からのレコーダ110によって記録されたデータの例示的な2D画像である。第1の画像206Aは、第1の音経路角度(例えば、0°の音経路角度)で実行された走査からのデータを含む。第2の画像206Bは、第2の音経路角度(例えば、45°の音経路角度)で実行された走査からのデータを含む。第3の画像206Cは、第3の音経路角度(例えば、90°の音経路角度)で実行された走査からのデータを含む。第4の画像206Dは、第4の音経路角度(例えば、135°の音経路角度)で実行された走査からのデータを含む。
【0078】
ブロック208からブロック212までのステップのうちの1つまたは複数は、
図1を参照して説明した制御ユニット128などの制御ユニットによって実行され得る。
【0079】
ブロック208において、方法200は、特定の関心位置において異なる音経路角度において取得されたデータを比較するために、異なる走査からのデータを整列させるステップを含む。例えば、材料サンプル202上の位置208Aにおいて、第1の音経路角度における走査からの(例えば、第1の画像206Aからの)データが、第2の音経路角度における走査からの(例えば、第2の画像206Bからの)データ、第3の音経路角度における走査からの(例えば、第3の画像206Cからの)データ、および第4の音経路角度における走査からの(例えば、第4の画像206Dからの)データと整列される。
【0080】
ブロック210において、方法200は、整列されたデータを正弦関数にフィッティングするステップを含み、正弦波の位相シフトは、結晶のc軸の角度に比例する。例えば、グラフ210Aは、各音経路角度において位置208Aにおいて行われた走査に関する伝搬時間を提供する。特に、グラフ210Aは、音波角度の関数として伝搬時間をプロットする。グラフ210Aは、A0+A×sin(2×(θ-φ))の形式の正弦関数にフィッティングされた伝搬時間データも示し、ここで、A0=平均伝搬時間(ToT)であり、A=ToTの振幅であり、θ=音響伝播方向角度であり、φ=位相シフトである。このフィッティング手順は、通常の最小二乗法、または正弦関数のデータへの最適なフィットを決定することができる任意の他の手法とすることができる。
【0081】
ブロック212において、方法200は、マッピング212Aを作成または生成するために、ブロック210からのデータを材料サンプル202の表面にマッピングするステップを含む。例えば、正弦関数が小さい位相シフト値を有する場合、位置は、マッピングにおいて第1の色、陰影、または他のインジケータでマークされる。第2の位置におけるデータに関する正弦関数がより大きい位相シフト値を有する場合、第2の位置は、マッピングにおいて第2の色、陰影、または他のインジケータでマークされる。マッピングは、3つ以上の色、陰影、またはインジケータを含み得ると考えられる。
【0082】
マッピング212Aは、ブロック210からのデータを材料サンプル202の表面上の位置にマッピングすることによって作成されたマッピングの例示である。薄い陰影または濃い陰影の大きい領域は、材料サンプル202内のMTRを示し得る。色または強度が一定である大きい領域は、材料構造の結成が同じ方向に整列されている領域を示し得る。
【0083】
図6Aおよび
図6Bは、送信器から受信器まで2つの異なる結晶構造218、220を通過する音響波を示し、結晶配向が材料を通って伝搬する音響波の伝搬時間にどのように影響するかを示す。
図6Aに示すように、音響波224は、音響波226が第1の結晶構造218の表面を横切って移動するよりも速く、第2の結晶構造220の表面を横切って移動する。音響波224および音響波226の速度の差は、少なくとも部分的に、第1の結晶構造218および第2の結晶構造220における異なる粒子(結晶)配向に起因する。結果として、音響波224は、一定の時間量にわたって音響波226よりも遠くまで伝搬する。丸で囲まれた数字の1は、一定の時間量にわたって音響波224が第2の結晶構造220を横切って伝播した距離を示す。丸で囲まれた数字の2は、同じ一定の時間量にわたって音響波226が第1の結晶構造218を横切って伝播した距離を示す。
【0084】
図6B中のグラフ222は、受信器によって受信された音響波の到着時間のグラフを提供する。第2の結晶構造220を通過する(より速い音響速度を有する)音響波の到着時間は、第1の結晶構造218を通過する音響波の到着時間よりも前である。グラフ222上の丸で囲まれた数字の1は、第2の結晶構造220を横切って伝搬した音響波224の到着時間を示す。グラフ222上の丸で囲まれた数字の2は、第1の結晶構造218を横切って伝搬した音響波226の到着時間を示す。音響波224は、音響波226よりも速い速度で伝搬するので、音響波226よりも早く受信器に到達する。
【0085】
図7Aおよび
図7Bは、一連のMTRを含むサンプル上を走査する表面音響波を示す概略図である。
図7A中の
図250は、一連のMTR256を通って音響送信器から音響受信器に進む音響波254を示す。各MTR256の軸は、音響波の方向に対して異なる角度(参照番号258によって示される角度を参照)において配向される。
図7Bの表面波
図252は、音響波がMTR256を通って伝搬する相対速度を示す。表面波
図252におけるMTRは、濃い方から薄い方まで陰影が付けられている。最も濃い陰影260は、音響波が音響送信器から音響受信器に進むまでの最も短い伝搬時間を示し、したがって、最も速い速度を有する音響波を示す。最も短い伝搬時間は、MTR主軸が音響波の方向と平行であることに起因する場合がある。最も薄い陰影262は、音響波が音響送信器から音響受信器に進むまでの最も長い伝搬時間を示し、したがって、最も遅い速度を有する音響波を示す。最も長い伝搬時間は、MTR主軸が音響波の方向に対して垂直であることに起因する場合がある。図示のように、MTRの軸が音響波の伝播方向に整列されている場合(例えば、MTRの軸が音響波の方向に対して0度の角度にある場合)、伝搬時間は、最短になる。本明細書で説明するシステムおよび方法は、材料サンプル内のMTRの存在を検出するために、そこを通って伝搬する音響波に対するMTRの影響を活用する。
【0086】
図8は、本明細書で説明する手法による構成要素を検査する方法のフローチャートである。いくつかの手法において、方法は、
図1の検査システム100、
図2Aの検査デバイス150、および/または
図3Aの検査デバイス170を使用して実施され得る。
【0087】
ブロック280において、方法は、トランスデューサの音響送信器部に、結合媒体を通して材料サンプルの表面に音響波を送信させるステップを含む。トランスデューサの音響送信器部は、トランスデューサの凹面の縁部に隣接して配置され得る。いくつかの手法において、トランスデューサは、
図1を参照して説明したトランスデューサ106であり得る。例えば、制御ユニット128は、トランスデューサ106に、結合媒体109を通して材料サンプル102に音響波を送信させる。いくつかの例において、
図2Aおよび
図2Bのトランスデューサ152の音響送信器部157は、材料サンプル102に音響波を送信し得る。したがって、
図8の方法を実行するために使用されるトランスデューサは、単一の圧電デバイス内に音響送信器部157と音響受信器部158とを含め得る。さらに別の例において、
図3Aおよび
図3Bのトランスデューサ172の音響送信器部176は、材料サンプル102に音響波を送信し得る。したがって、
図8の方法を実行するために使用されるトランスデューサはまた、別個の圧電デバイスとして音響送信器部176と音響受信器部178とを含み得る。
【0088】
ブロック282において、方法は、表面音響波を示す少なくとも1つの信号を受信するステップを含む。トランスデューサの音響受信器部は、表面音響波を受信し、音響波を示す信号を生成する。音響受信器は、トランスデューサの凹面の縁部に沿って配置され得る。例えば、トランスデューサ106は、音響波を受信し、制御ユニット128によって間接的にまたは直接受信される信号を生成し得る。いくつかの例において、
図2Aおよび
図2Bのトランスデューサ152の音響受信器部158は、音響波を受信し、そのような波を示す信号を生成し得る。さらに別の例において、
図3Aおよび
図3Bのトランスデューサ172の音響受信器部178は、音響波を受信し、そのような波を示す信号を生成し得る。
【0089】
ブロック284において、方法は、表面音響波の特性に基づいて、例えば、表面音響波を示す少なくとも1つの信号の特性に基づいて、材料サンプルの少なくとも1つの材料特性を決定するステップを含む。いくつかの手法において、
図1を参照して説明した計算デバイス124などの計算デバイスは、信号に基づいて材料特性を決定し得る。例えば、計算デバイス124は、信号の振幅または到着時間に基づいて材料特性を決定し得る。いくつかの例において、表面音響波の特性は、音響受信器部によって受信された音響信号の伝搬時間、信号振幅、信号振幅の時系列、到着時間、および/または位置のうちの少なくとも1つを含み得る。いくつかの例において、表面音響波の特性は、材料サンプルの領域全体にわたる表面音響波応答の2次元または3次元表現に取り込まれたサイズまたはアスペクト比などの幾何学的特徴を含み得る。
【0090】
ブロック286において、方法は、少なくとも1つの材料特性に基づいて、材料サンプルを受け入れるかまたは拒否するか(合否)を決定するステップを含む。いくつかの例において、この動作は、計算デバイス124などの計算デバイスによって実施される。計算デバイス124は、材料サンプルを受け入れるかまたは拒否するか(合否)を決定するために、材料特性をしきい値と比較し得る。一例において、計算デバイス124は、材料サンプルを受け入れるかまたは拒否するか(合否)を決定するために、材料サンプルがMTR強度に関するしきい値を超えているかまたは下回っているかを判定し得る。
【0091】
いくつかの手法において、方法は、製造システムに、少なくとも1つの材料特性に少なくとも部分的に基づいて製造プロセスのパラメータを調整させるステップをさらに含み得る。製造プロセスは、材料サンプルを形成したプロセス、または材料サンプルの材料組成と類似する材料組成を有する部品、構成要素、または材料を製作するプロセスであり得る。このようにして、
図8の方法は、材料サンプルの材料特性に基づいて製造プロセスのフィードバックを提供するために使用され得、製造プロセスを改善または最適化するために製造プロセス(例えば、ビレットの端部において切り取られるべき材料の量)を調整し得る。いくつかの例において、この動作は、製造システム129によって実施される。例えば、制御ユニット128は、製造システム129に製造システム129のパラメータを調整させ得る。
【0092】
図9に、追加の例示的な検査方法を提供する。方法300は、材料サンプルを評価するために表面音響波データを使用する。特に、方法は、材料サンプルを受け入れるかまたは拒否するか(合否)を決定するために、材料サンプルのMTR特性などの1つまたは複数の材料特性を予測する音響スコアを活用する。
【0093】
方法300において使用される表面音響波データは、1つまたは複数の音響検査システムまたはデバイスを使用して取得され得る。1つまたは複数の音響検査システムまたはデバイスは、限定はしないが、本明細書で説明する音響検査システムまたはデバイスを含み得る。一例において、検査システム100は、表面音響波データを取得するために使用され得る。
【0094】
ブロック310において、方法300は、音響検査デバイスから材料サンプルに関する表面音響波データを受信するステップを含む。一例において、
図1の制御ユニット128は、検査デバイス104から材料サンプル102に関する表面音響波データを受信し得る。特に、制御ユニット128の計算デバイス124は、表面音響波データを受信し得る。いくつかの手法において、
図9の方法において用いられる表面音響波データは、音響波形(例えば、音響検査デバイスのトランスデューサによって受信された音響信号)の1つまたは複数の特性を含む。表面音響波データは、音響受信器部によって受信された音響信号の伝搬時間112、信号振幅113、信号振幅の時系列115、到着時間116、および/または位置117などの、
図1に示す表面音響波走査からの音響信号の1つまたは複数のパラメータを含み得る。
【0095】
1つの非限定的な例において、表面音響波データは、材料サンプルの表面の一部に沿って表面音響波を生成するために、1つまたは複数の圧電素子を含む凹面を有するトランスデューサから、結合媒体を通して材料サンプルの表面に音響波を送信させることによって取得される。1つまたは複数の圧電素子は、音響送信器または音響受信器の少なくとも1つとして動作し得る。表面音響波データは、さらに、材料サンプルの表面から反射された表面音響波を凹面において受信することによって取得される。
【0096】
ブロック320において、方法300は、表面音響波データに基づいて音響スコアを決定するステップを含む。音響スコアは、材料サンプルのMTRレベルの予測子である値または他のパラメータである。MTRレベルは、MTRのサイズ、形状、強度、密度、周波数、配向、配向の広がり、隣接領域特性、もしくは体積分率などの任意のMTR特性であり得、または1つもしくは複数のMTR特性から導出された値もしくは他のパラメータであり得る。一例において、
図1の制御ユニット128は、表面音響波データに基づいて音響スコアを決定し得る。特に、制御ユニット128の計算デバイス124は、音響スコアを決定し得る。材料サンプルの表面音響波データに基づいて材料サンプルに関する音響スコアを計算または決定するための例示的な方法について、以下でさらに説明する。音響スコアは、表面音響波データを使用する任意の統計計算に基づき得、方法300は、シャノンもしくはレニーエントロピーなどの情報エントロピー、またはグレーレベル共起行列(G)を使用する、以下に詳述する例示的な方法に限定されないと考えられる。
【0097】
ここで説明するのは、表面音響波データに基づいて材料サンプルに関する音響スコアを決定するための例示的な方法である。方法は、任意の統計計算、例えば、材料サンプル上の1つもしくは複数の関心領域に関する伝搬時間の標準偏差、材料サンプル上の1つもしくは複数の関心領域に関する伝搬時間の平均値、材料サンプル上の1つもしくは複数の関心領域に関する伝搬時間の最大値、材料サンプル上の1つもしくは複数の関心領域に関する信号振幅の標準偏差、材料サンプル上の1つもしくは複数の関心領域に関する振幅の平均値、材料サンプル上の1つもしくは複数の関心領域に関する振幅の最大値、材料サンプルに関する伝搬時間の時間的変動の空間的変動、材料サンプルに関する信号振幅の時間的変動の空間的変動、時間領域信号のフーリエシーケンス、または振幅信号および/もしくは伝搬時間信号の空間表現に関するフーリエシーケンスに基づき得る。そのような統計的方法、ならびに信号変動を測定するより複雑な方法は、音響スコアの決定に適用可能であり得る。第1の例示的な方法は、シャノンエントロピー(H)の計算に基づく。第2の例示的な方法は、グレーレベル共起行列(G)に基づく。表面音響波データに基づいて音響スコアを計算するための任意の適切な方法が用いられ得ると考えられる。これらの方法は、2次元表面音響波データに適用され得、または全波形表面音響波データに適応され得る。
【0098】
表面音響波データは、振幅、伝搬時間、振幅の時系列、または振幅値もしくは伝搬時間値の空間的に相関する配置など、音響検査デバイスのトランスデューサによって受信される音響信号の1つまたは複数の特性を含み得る。音響信号の値は、超音波波形からC走査データ行列に抽出され得る。音響信号の値は、信号中の様々な時点において記録され得る。C走査データ行列は、データ値の2次元行列として表され得る、材料サンプルの構造の空間的に相関する表現である。一例において、空間的に相関する表現は、時間データ(例えば、(x、y、時間)データ)を含み得る。C走査行列内のデータ値は、材料サンプルの材料特性に関する情報を表す。C走査行列内のデータは、画像として視覚化することができ、行列内の各セルは、材料サンプル上の特定の場所に対応する。画像内のグレースケールまたはカラー値は、信号特性の測定値の大きさに対応する。
【0099】
統計的方法によって音響スコアを計算する前に、表面音響波データ(Y)は、まず標準化または正規化され得る。表面音響波データのセットを標準化または正規化することは、例えば、各点から平均値を減算することによって、セット内の各点を平均値に対してセンタリングすることと、標準偏差によって各データ点をスケーリングすることとを含み得る。一例において、表面音響波データ(Y)は、以下の式に従って標準化され得る。
【0100】
【0101】
ここで、Y’は、標準化された表面音響波データであり、μは、表面音響波データの平均値であり、σは、表面音響波データの標準偏差である。位置および時系列音響波データは、別々の方法で標準化され得る。一例において、時系列データの標準化は、参照サンプルとの比較に基づき得る。標準化後、標準化された音響波データ(Y’)は、外れたデータ点を補正し、ノイズ低減を適用するためにさらに処理され得る。標準化された音響波データ(Y’)はまた、いくつかの離散データレベルを有する画像に変換され得る。画像は、例えば、材料サンプルの断面上の様々な位置におけるMTRレベルを示し得る。
【0102】
図10Aは、低いMTRレベルを有する材料サンプルに関する標準化された表面音響波データ(Y’)のC走査画像である。
図10Bは、高いMTRレベルを有する材料サンプルに関する標準化された表面波音響データ(Y’)のC走査画像である。より高いMTRレベルを有する領域は、より大きく、より良好に整列されているMTRを有し、より低いMTRレベルを有する領域は、より小さく、あまり整列されていないMTRを有する。
【0103】
第1の例示的な方法において、材料サンプルに関する音響スコア
【0104】
【0105】
は、情報エントロピーの尺度に基づいて計算または決定される。1つのそのような尺度は、シャノンエントロピー(H)から計算され得る。シャノンエントロピー(H)は、標準化された表面音響波データ(Y’)から計算される。シャノンエントロピー(H)は、表面音響波データにおける不確実性またはランダム性の尺度として機能し得る。エントロピーの他の尺度も使用され得る。1つのそのような追加の例はレニーエントロピーである。
【0106】
一例において、音響スコアコンピュータプログラム
【0107】
【0108】
は、シャノンエントロピー(H)を介して計算され得、以下の式を介して計算され得て、
【0109】
【0110】
ここで、Aは、データが収集される材料サンプルの領域または材料サンプルのサブ領域であり、piは、領域A内の点がY’におけるi番目のレベルに等しい値を有する確率である。音響スコア
【0111】
【0112】
は、音響検査デバイスによって実行された音響走査における各領域に関するHの値から計算される。
【0113】
エントロピー尺度の別の例において、音響スコア
【0114】
【0115】
は、以下の式を介してレニーエントロピーを介して計算され得、
【0116】
【0117】
ここで、αは、0と∞との間の任意の定数である。α=0、α=1、α→∞の場合、H(A,α)は、極限をとることによって評価され得る。α=1の場合、限界は、シャノンエントロピー(H)と同じメトリックに収束する。
【0118】
複数の材料サンプルについてMTR値
【0119】
【0120】
を音響スコア
【0121】
【0122】
と相関させることによって、以下の式によって表される逆モデルを構築することができ、
【0123】
【0124】
ここで、
【0125】
【0126】
は、MTR値
【0127】
【0128】
の予測推定値であり、fは、複数の材料サンプルについて取得されたMTR値
【0129】
【0130】
データおよび音響スコア
【0131】
【0132】
データから構築された回帰モデルである。MTR値
【0133】
【0134】
は、電子後方散乱回折(EBSD)走査から収集されたデータを介して取得される測定値であり得る。1つの非限定的な例において、約10~15mm×約10~15mmある視界からのデータが収集され、MTRに対応する同様の配向を有する関心領域の領域を定義するために、セグメント化アルゴリズムが使用される。参照により組み込まれている非特許文献1や非特許文献2に記載されているEBSDデータからMTRをセグメント化する(またはMTR値を決定する)ための手法の1つまたは複数が使用され得る。これらの2つの参考文献は、セグメント化されたMTRの特性から生成された性能指数または複数の性能指数と室温保持疲労特性との間の関係について説明している。MTR特性と音響スコアとの間の関係を考慮する場合、配向不整角度、サイズしきい値などの、代替の性能指数および/または代替のMTRセグメント化定義がより適切である場合がある。
【0135】
【0136】
は、所与の用途の目的に応じて、様々なパラメータのいずれかを表すことができることに留意すべきである。
【0137】
第2の例示的な方法において、標本サンプルに関する音響スコア
【0138】
【0139】
は、グレーレベル共起行列(G)に基づいて計算または決定される。グレーレベル共起行列(G)は、標準化された表面音響波データ(Y’)から計算される。グレーレベル共起行列(G)は、点P1=(x,y,t)とその隣接点P2=(x+Δx,y+Δy,t)との間の強度関係の尺度であり、ここで、tは、データがサンプリングされる時間である。この手法は、生の表面波音響データ、標準化された音響波データ、または音響波データの他の変換に適用され得ることが考えられる。
【0140】
一例において、グレーレベル共起行列(G)は、以下の式によって定義されるように、その値(pi,j)が、P1がiの強度を有し、P2がjの強度を有する結合確率を含む正方行列であり、
【0141】
【0142】
ここで、Nは、確率を正規化する定数であり、Aは、Y’内のデータの一部またはすべてを含むサブセットであり、xおよびyは、領域A内の点の座標であり、ΔxおよびΔyは、指定された距離オフセットであり、iおよびjは、Y’内のデータの強度レベルである。
【0143】
音響スコア
【0144】
【0145】
のこの第2の推定値は、以下の式によって結合確率pi,jから導出され得、
【0146】
【0147】
ここで、W(i,j)は、iおよびjに基づく重み関数であり、一例は、W(i,j)=|i-j|である。hは、調整関数であり、一例は、
【0148】
【0149】
などの平方根関数である。これらの音響スコア
【0150】
【0151】
の値から、上記で提示した
【0152】
【0153】
に関する式の手順は、以下の式によって表されるように、同様の回帰モデルを構築するために繰り返すことができる。
【0154】
【0155】
1つの他の例示的な方法において、音響スコア
【0156】
【0157】
は、振幅データのC走査における特徴のサイズ、形状、もしくはアスペクト比、伝搬時間データ、または振幅データの時系列に基づく計算値であり、統計計算fnは、基本統計値、シャノンもしくはレニーエントロピー、またはグレーレベル共起行列(GLCM)値を含む任意の演算であり続ける。
【0158】
図9に戻ると、ブロック330において、方法は、音響スコアに基づいて材料サンプルを受け入れるかまたは拒否するか(合否)を決定するステップを含む。音響スコアは、上記で
図10Aおよび
図10Bを参照して説明した方法および式によって計算された音響スコア
【0159】
【0160】
であり得る。一例において、
図1の制御ユニット128は、音響スコアに基づいて材料サンプルを受け入れるかまたは拒否するか(合否)を決定し得る。特に、制御ユニット128の計算デバイス124は、音響スコアに基づいて材料サンプルを受け入れるかまたは拒否するか(合否)を決定し得る。音響スコアは、材料サンプルを受け入れるかまたは拒否するか(合否)を決定するために、しきい値スコアまたはしきい値範囲と比較され得る。しきい値スコアまたはしきい値範囲は、許容可能な音響スコア値を反映し得る。しきい値範囲内に入る音響スコアは、材料サンプルが取得された材料が使用またはさらなる処理に適していることを反映し得る。材料サンプルに関する音響スコアがしきい値範囲外である場合、材料サンプルは、拒否され得る。
【0161】
材料サンプルに関する音響スコアは、材料サンプルに関するMTR値を予測し得る。
図11A~
図11Cは、複数の材料サンプルについて、音響スコア
【0162】
【0163】
(表面波超音波試験またはSWUTスコアとも呼ばれる)とMTR値
【0164】
【0165】
(スコアとも呼ばれる)とを相関させた例示的な散布図を示す。
図11A~
図11Cに示すMTR値
【0166】
【0167】
は、複数の材料サンプルの各々に対して実行されたEBSD試験から決定された。
図11A~
図11Cに示す音響スコア
【0168】
【0169】
は、本明細書で説明する方法を使用して、それぞれの材料サンプルに関する音響波データ(Y)に基づいて、複数の材料サンプルの各々について決定された。
図11A~
図11Cの散布図は、材料サンプルに関するMTR値を予測するために、本明細書で説明する方法によって決定された音響スコアを使用することの信頼性を検証する。
図11Aにおいて、音響スコア
【0170】
【0171】
は、シャノンエントロピー(H)を使用して決定された。
図11Bにおいて、音響スコア
【0172】
【0173】
は、第1の重み関数
【0174】
【0175】
と調整関数h(x)=xとを適用して、グレーレベル共起行列(G)を使用して決定された。
図11Cにおいて、音響スコア
【0176】
【0177】
は、第2の重み関数W(i,j)=1とh(x)=h(ΣΣx)=ΣΣx2とを適用して、グレーレベル共起行列(G)を使用して決定された。材料サンプルおよび検査システムの特性に応じて、多数の他の重み関数および調整関数も使用され得る。
【0178】
本開示のさらなる態様は、以下の項によって提供される。
【0179】
音響送信器および音響受信器として動作する1つまたは複数の圧電素子を含む凹面を有するトランスデューサと、トランスデューサと材料サンプルの表面との間の空間を満たす結合媒体と、トランスデューサと通信する制御ユニットとを備え、制御ユニットが、少なくとも1つのプロセッサと少なくとも1つのメモリデバイスとを含み、少なくとも1つのメモリデバイスは、少なくとも1つのプロセッサによって実行されると、少なくとも1つのプロセッサに、音響波が結合媒体を通って材料サンプルの表面の一部に沿って伝搬し、表面音響波として再び凹面に送信されるように、トランスデューサに凹面から音響波を生成させることと、凹面において受信された表面音響波を示すデータにアクセスすることと、データに基づいて材料サンプルの少なくとも1つの材料特性を決定することと、を行わせる命令を記憶する、検査システム。
【0180】
少なくとも1つの材料特性が、材料サンプルの粒子サイズ、粒子構造、粒子配向、粒子形状、マイクロテクスチャ領域の存在、マイクロテクスチャ領域のサイズ、マイクロテクスチャ領域の強度、マイクロテクスチャ領域の配向、マクロテクスチャ、転位含有量、および残留弾性圧縮応力または引張応力のうちの1つまたは複数を含む、任意の前項の検査システム。
【0181】
凹面が、送信モードと受信モードとの間で切り替わる単一の圧電素子である、任意の前項の検査システム。
【0182】
凹面が、音響送信器として動作する第1の複数の圧電素子と、音響受信器として動作する、第1の複数の圧電素子から離間された第2の複数の圧電素子とを含み、音響波が、第1の複数の圧電素子から第2の複数の圧電素子へと単一方向に伝搬する、任意の前項の検査システム。
【0183】
結合媒体が、水または別の流体カプラントである、任意の前項の検査システム。
【0184】
トランスデューサが、約0.5MHzと約100MHzとの間の周波数を使用して動作する、任意の前項の検査システム。
【0185】
トランスデューサが、単一の中心周波数とそれに関連する帯域幅とを使用すること、または周波数の範囲を掃引することの少なくとも1つによって動作する、任意の前項の検査システム。
【0186】
凹面が、約20度と約40との間の曲率半径を有する、任意の前項の検査システム。
【0187】
トランスデューサの凹面に結合されたマスクをさらに含む、任意の前項の検査システム。
【0188】
少なくとも1つの材料特性が、チタン合金におけるマイクロテクスチャ領域の特性、合金における粒子サイズの特性、またはニッケル合金におけるテクスチャ領域の特性である、任意の前項の検査システム。
【0189】
材料サンプルに対するトランスデューサの位置を示すセンサをさらに含む、任意の前項の検査システム。
【0190】
命令が、実行されると、少なくとも1つのプロセッサに、トランスデューサに複数の音経路角度において音響波を生成させるようにさせる、任意の前項の検査システム。
【0191】
凹面が、周縁部によって境界付けられた半球面または矩形曲面であり、凹面の周縁部が、音響送信器または音響受信器の少なくとも1つとして動作する、任意の前項の検査システム。
【0192】
材料サンプルの表面の一部に沿って表面音響波を生成するために、1つまたは複数の圧電素子を含む凹面を有するトランスデューサから、結合媒体を通って材料サンプルの表面に音響波を送信するステップであって、1つまたは複数の圧電素子が音響送信器および音響受信器として動作する、ステップと、材料サンプルの表面から反射された表面音響波を凹面において受信するステップと、表面音響波の特性に基づいて材料サンプルの少なくとも1つの材料特性を決定するステップであって、少なくとも1つの材料特性が、粒子サイズ、粒子配向、粒子形状、マイクロテクスチャ領域の存在、マイクロテクスチャ領域のサイズ、マイクロテクスチャ領域の強度、マイクロテクスチャ領域の配向、マクロテクスチャ、転位含有量、および残留弾性圧縮応力または引張応力のうちの1つまたは複数を含む、ステップと、を含む検査方法。
【0193】
少なくとも1つの材料特性が、材料サンプルの粒子サイズ、粒子構造、粒子配向、粒子形状、マイクロテクスチャ領域の存在、マイクロテクスチャ領域のサイズ、マイクロテクスチャ領域の強度、マイクロテクスチャ領域の配向、マクロテクスチャ、転移含有量、および残留弾性圧縮応力または引張応力のうちの1つまたは複数を含む、任意の前項の検査方法。
【0194】
音響波の送信が、単一の点において、材料サンプルの表面にわたる複数の方向に音響波を送信することを含む、任意の前項の検査方法。
【0195】
表面音響波の特性に基づく統計的相関を通じて、材料サンプルの少なくとも1つの材料特性を決定するステップをさらに含む、任意の前項の検査方法。
【0196】
表面音響波の特性が、材料サンプルの領域全体にわたる表面音響波応答の2次元または3次元表現に取り込まれた幾何学的特徴を含む、任意の前項の検査方法。
【0197】
材料サンプルの粒子構造特性の応答を最適化するために、音響波の周波数または伝播方向のうちの少なくとも1つを選択するステップをさらに含む、任意の前項の検査方法。
【0198】
表面音響波の特性が、表面音響波の到着時間、伝搬時間、または振幅のうちの少なくとも1つを含む、任意の前項の検査方法。
【0199】
少なくとも1つの材料特性が、材料サンプルの粒子構造である、任意の前項の検査方法。
【0200】
少なくとも1つの材料特性に基づいて、材料サンプルの合否を決定するステップをさらに含む、任意の前項の検査方法。
【0201】
製造システムに、少なくとも1つの材料特性に基づいて、製造プロセスのパラメータを調整させるステップをさらに含む、任意の前項の検査方法。
【0202】
音響送信器および音響受信器として動作する1つまたは複数の圧電素子を含む凹面を有するトランスデューサに、音響波が結合媒体を通って材料サンプルの表面の一部に沿って伝搬し、表面音響波として再び凹面に送信されるように、凹面から音響波を送信させるステップと、表面音響波を示すデータにアクセスさせるステップと、データに基づいて、材料サンプルの少なくとも1つの材料特性を決定させるステップと、少なくとも1つの材料特性に基づいて、材料サンプルの合否を決定するステップとを含む、検査方法。
【0203】
少なくとも1つの材料特性が、材料サンプルの粒子サイズ、粒子構造、粒子配向、粒子形状、マイクロテクスチャ領域の存在、マイクロテクスチャ領域のサイズ、マイクロテクスチャ領域の強度、マイクロテクスチャ領域の配向、マクロテクスチャ、転位含有量、および残留弾性圧縮応力または引張応力のうちの1つまたは複数を含む、任意の前項の検査方法。
【0204】
製造システムに、少なくとも部分的に1つの材料特性に基づいて、製造プロセスのパラメータを調整させるステップをさらに含む、任意の前項の検査方法。
【0205】
音響検査デバイスから材料サンプルに関する表面音響波データを受信するステップと、材料サンプルのマイクロテクスチャ領域(MTR)レベルを予測する音響スコアを決定するステップであって、音響スコアが表面音響波データに基づいて決定される、ステップと、音響スコアに基づいて、材料サンプルの合否を決定するステップとを含む検査方法。
【0206】
材料サンプルが、ビレット、鍛造品、または製造部品の少なくとも一部である、任意の前項の検査方法。
【0207】
標準化された表面音響波データを取得するために、表面音響波データを標準化するステップをさらに含む、任意の前項の検査方法。
【0208】
音響スコアが、標準化された表面音響波データに基づいて決定された情報エントロピーの尺度に基づいて決定される、任意の前項の検査方法。
【0209】
音響スコアが、標準化された音響波データに基づいて決定されたシャノンエントロピーまたはレニーエントロピーに基づいて決定される、任意の前項の検査方法。
【0210】
音響スコアが、標準化された音響波データに基づいて決定されたグレーレベル共起行列(G)に基づいて決定される、任意の前項の検査方法。
【0211】
表面音響波データが、材料サンプルの表面の一部に沿って表面音響波を生成するために、1つまたは複数の圧電素子を含む凹面を有するトランスデューサから、結合媒体を通して材料サンプルの表面に音響波を送信させることであって、1つまたは複数の圧電素子が音響送信器および音響受信器として動作する、ことと、材料サンプルの表面から送信された表面音響波を凹面において受信することとによって取得される、任意の前項の検査方法。
【0212】
音響波データが、表面音響波の特性を含み、音響波の特性が、材料の領域全体にわたる表面音響波応答の2次元または3次元表現に取り込まれた幾何学的特徴を含む、任意の前項の検査方法。
【0213】
本開示の追加の態様は、以下の項によって提供される。
[項1]
音響送信器および音響受信器として動作する1つまたは複数の圧電素子を含む凹面を有するトランスデューサと、
前記トランスデューサと材料サンプルの表面との間の空間を満たす結合媒体と、
前記トランスデューサと通信する制御ユニットと、を備え、
前記制御ユニットが、少なくとも1つのプロセッサと少なくとも1つのメモリデバイスとを含み、
前記少なくとも1つのメモリデバイスが、前記少なくとも1つのプロセッサによって実行されると、前記少なくとも1つのプロセッサに、
音響波が前記結合媒体を通って前記材料サンプルの表面の一部に沿って伝搬し、表面音響波として再び前記凹面に送信されるように、前記トランスデューサに前記凹面から前記音響波を生成させることと、
前記凹面において受信された前記表面音響波を示すデータにアクセスすることと、
前記データに基づいて前記材料サンプルの少なくとも1つの材料特性を決定することと、を行わせる命令を記憶している、
検査システム。
[項2]
前記凹面が、送信モードと受信モードとの間で切り替わる単一の圧電素子である、項1に記載の検査システム。
[項3]
前記凹面が、音響送信器として動作する第1の複数の圧電素子と、音響受信器として動作する、前記第1の複数の圧電素子から離間された第2の複数の圧電素子とを含み、前記音響波が、前記第1の複数の圧電素子から前記第2の複数の圧電素子へと単一方向に伝搬する、項1または2に記載の検査システム。
[請求項4]
前記トランスデューサの凹面に結合されたマスクをさらに含む項1から3のいずれか一項に記載の検査システム。
[項5]
前記少なくとも1つの材料特性が、前記材料サンプルの粒子サイズ、粒子構造、粒子配向、粒子形状、マイクロテクスチャ領域の存在、マイクロテクスチャ領域のサイズ、マイクロテクスチャ領域の強度、マイクロテクスチャ領域の配向、マクロテクスチャ、転位含有量、および残留弾性圧縮応力または引張応力のうちの1つまたは複数を含む、項1から4のいずれか一項に記載の検査システム。
[項6]
前記材料サンプルに対する前記トランスデューサの位置を示すセンサをさらに含む項1から5のいずれか一項に記載の検査システム。
[項7]
前記命令が、実行されると、前記少なくとも1つのプロセッサに、前記トランスデューサに複数の音経路角度において音響波を生成させる項1から6のいずれか一項に記載の検査システム。
[項8]
前記凹面が、周縁部によって境界付けられた半球面または矩形曲面であり、前記凹面の周縁部が、前記音響送信器または前記音響受信器として動作する、項1から7のいずれか一項に記載の検査システム。
[項9]
材料サンプルの表面の一部に沿って表面音響波を生成するために、音響送信器および音響受信器として動作する1つまたは複数の圧電素子を含む凹面を有するトランスデューサから、結合媒体を通して前記材料サンプルの表面に音響波を送信するステップと、
前記材料サンプルの表面から反射された前記表面音響波を前記凹面において受信するステップと、
前記表面音響波の特性に基づいて前記材料サンプルの少なくとも1つの材料特性を決定するステップと、を含み、
前記少なくとも1つの材料特性が、粒子サイズ、粒子配向、粒子形状、マイクロテクスチャ領域の存在、マイクロテクスチャ領域のサイズ、マイクロテクスチャ領域の強度、マイクロテクスチャ領域の配向、マクロテクスチャ、転位含有量、および残留弾性圧縮応力または引張応力のうちの1つまたは複数を含む、検査方法。
[項10]
前記音響波の送信が、単一の点において、前記材料サンプルの表面にわたる複数の方向に前記音響波を送信することを含む、項9に記載の検査方法。
[項11]
前記表面音響波の特性に基づく統計的相関を通じて、前記材料サンプルの少なくとも1つの材料特性を決定するステップをさらに含む項9または10に記載の検査方法。
[項12]
前記材料サンプルの粒子構造特性の応答を最適化するために、前記音響波の周波数または伝播方向のうちの少なくとも1つを選択するステップをさらに含む項9から11のいずれか一項に記載の検査方法。
[項13]
前記表面音響波の特性が、前記表面音響波の到着時間、伝搬時間、または振幅のうちの少なくとも1つを含む、項9から12のいずれか一項に記載の検査方法。
[項14]
前記表面音響波の特性が、前記材料サンプルの領域全体にわたる表面音響波応答の2次元または3次元表現に取り込まれた幾何学的特徴を含む、請求項9から13のいずれか一項に記載の検査方法。
[項15]
前記少なくとも1つの材料特性が、前記材料サンプルの粒子サイズ、粒子構造、粒子配向、粒子形状、マイクロテクスチャ領域の存在、マイクロテクスチャ領域のサイズ、マイクロテクスチャ領域の強度、マイクロテクスチャ領域の配向、マクロテクスチャ、転位含有量、および残留弾性圧縮応力または引張応力のうちの1つまたは複数を含む、請求項9から14のいずれか一項に記載の検査方法。
[項16]
前記少なくとも1つの材料特性に基づいて、前記材料サンプルの合否を決定するステップをさらに含む項9から15のいずれか一項に記載の検査方法。
[項17]
製造システムに、前記少なくとも1つの材料特性に基づいて、製造プロセスのパラメータを調整させるステップをさらに含む、請求項9から16のいずれか一項に記載の検査方法。
[項18]
音響検査デバイスから材料サンプルに関する表面音響波データを受信するステップと、
前記材料サンプルのマイクロテクスチャ領域(MTR)レベルを予測する音響スコアを決定するステップであって、前記音響スコアが前記表面音響波データに基づいて決定される、ステップと、
前記音響スコアに基づいて、前記材料サンプルの合否を決定するステップと、を含む検査方法。
[項19]
前記表面音響波データが、表面音響波の特性を含み、前記表面音響波の特性が、前記材料サンプルの領域全体にわたる表面音響波応答の2次元または3次元表現に取り込まれた幾何学的特徴を含む、項18に記載の検査方法。
[項20]
標準化された表面音響波データを取得するために、前記表面音響波データを標準化するステップをさらに含み、前記音響スコアが、前記標準化された表面音響波データに基づいて決定された情報エントロピーの尺度、または前記標準化された音響波データに基づいて決定されたグレーレベル共起行列(G)に基づいて決定される、項18または19に記載の検査方法。
【符号の説明】
【0214】
100 検査システム
102 材料サンプル
104 検査デバイス
106 トランスデューサ
107 マスク
108 走査デバイス
109 結合媒体
110 レコーダ
112 伝搬時間
113 信号振幅
115 信号振幅の時系列
116 到着時間
117 位置
118 データベース
120 記録データ
122 計算データ
124 計算デバイス
126 材料特性
128 制御ユニット
129 製造システム
130 メモリ
132 データ
134 命令
136 プロセッサ
138 入力/出力(I/O)デバイス
144 ユーザインターフェース
150 検査デバイス
152 トランスデューサ
156 凹面
157 音響送信器部
158 音響受信器部
159 周縁部
160 材料サンプル
161A 第1のボリューム
161B 第2のボリューム
162 伝搬ギャップ
164 入射角
165 マスク
166 距離
167 スリット
170 検査デバイス
171A 第1のボリューム
171B 第2のボリューム
172 トランスデューサ
174 凹面
176 音響送信器部
177A 第1の距離
177B 伝搬ギャップ
177C 第2の距離
178 音響受信器部
179 センサ
180 材料サンプル
182 入射角
184 距離
186 伝搬ギャップ
190 トランスデューサ
192 取り付け部
194 凹面
196 マスク
198 スリット
202 材料サンプル
204A 画像
206A 第1の画像
206B 第2の画像
206C 第3の画像
206D 第4の画像
210A グラフ
212A マッピング
218 第1の結晶構造
220 第2の結晶構造
222 グラフ
224 音響波
226 音響波
250 図
252 表面波図
254 音響波
256 MTR
258 角度
260 最も濃い陰影
262 最も薄い陰影
【外国語明細書】