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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173838
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】バルブ装置
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/122 20060101AFI20241205BHJP
   F16K 27/00 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
F16K31/122
F16K27/00 Z
F16K27/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024089560
(22)【出願日】2024-05-31
(31)【優先権主張番号】P 2023091975
(32)【優先日】2023-06-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000157946
【氏名又は名称】岩井機械工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】595050374
【氏名又は名称】スーパーレジン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101236
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100166914
【弁理士】
【氏名又は名称】山▲崎▼ 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】中村 圭吾
(72)【発明者】
【氏名】江波戸 誠
(72)【発明者】
【氏名】小田部 真
(72)【発明者】
【氏名】望月 芳彦
(72)【発明者】
【氏名】大▲橋▼ 孝行
【テーマコード(参考)】
3H051
3H056
【Fターム(参考)】
3H051AA01
3H051BB03
3H051CC13
3H051DD07
3H051EE08
3H051FF02
3H051FF14
3H056AA02
3H056BB32
3H056CA01
3H056CB02
3H056CD04
3H056DD03
3H056DD04
3H056DD07
3H056GG04
(57)【要約】
【課題】破壊を抑制しつつ軽量化することでメンテナンス作業を容易に行うことができるバルブ装置を提供することを目的とする。
【解決手段】弁室12と、前記弁室12に連通する入口部13及び出口部14と、弁体30と、を具備するバルブ本体2と、前記弁体30に接続されたシリンダロッド70を有し、前記シリンダロッド70を空気圧により駆動して前記弁体30を前記弁座15に対して移動するエアシリンダ3と、を具備するバルブ装置1において、前記エアシリンダ3は、前記シリンダロッド70が設けられたピストン60と、前記ピストン60が収容されるシリンダ室54を有するシリンダ50と、を具備し、前記シリンダ50は、筒状のシリンダ本体51と、前記シリンダ本体51の両側の開口を塞ぐ2個のキャップ52と、を具備し、前記シリンダ本体51は、繊維強化プラスチックからなる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁室と、前記弁室に連通する流路を形成する入口部及び出口部と、前記弁室に設けられた弁座に対して当接及び離反可能に設けられた弁体と、を具備するバルブ本体と、
前記弁体に接続されたシリンダロッドを有し、前記シリンダロッドを空気圧により駆動して前記弁体を前記弁座に対して移動するエアシリンダと、を具備するバルブ装置において、
前記エアシリンダは、
前記シリンダロッドが設けられたピストンと、
前記ピストンが収容されるシリンダ室を有するシリンダと、を具備し、
前記シリンダは、筒状のシリンダ本体と、前記シリンダ本体の両側の開口を塞ぐ2個のキャップと、を具備し、
前記シリンダ本体は、繊維強化プラスチックからなる、
ことを特徴とするバルブ装置。
【請求項2】
前記繊維強化プラスチックは、炭素繊維強化プラスチックである、
ことを特徴とする請求項1に記載のバルブ装置。
【請求項3】
前記シリンダ本体と前記キャップとは、リングを介して固定され、
前記リングは、前記キャップの外周部に固定されると共に、前記シリンダ本体の内周面に接着剤を介して接着され、
前記リングの前記シリンダ本体に接着される外周面は、外径が漸小するテーパ面を有し、
前記シリンダ本体の前記リングに接着される内周面は、内径が漸小するテーパ面を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載のバルブ装置。
【請求項4】
前記シリンダ本体と前記キャップとは、リングを介して固定され、
前記リングは、前記キャップの外周面に固定されると共に、前記シリンダ本体の内周面に接着剤を介して接着される、
ことを特徴とする請求項1に記載のバルブ装置。
【請求項5】
前記シリンダ本体は、前記キャップの外周面から前記キャップの前記シリンダ室とは反対側を向く面まで屈曲されて延設された延設部を有し、
前記シリンダ本体の内周面と前記延設部とが、前記キャップに接着剤を介して接着されている、
ことを特徴とする請求項1に記載のバルブ装置。
【請求項6】
前記キャップの外周面に固定される筒状のリングと、
前記リングに設けられた第1係合部と、
前記シリンダ本体に設けられ、前記第1係合部に係合する第2係合部と、を備え、
前記シリンダ本体に前記リング及び前記キャップを装着する方向を第1方向とし、当該方向の反対を第2方向とし、
前記第1係合部は、内側に向けて弾性変形が可能であり、
前記第2係合部は、
前記シリンダ本体の一部であり相対的に内径が大きい大径部と、
前記シリンダ本体の一部であり、前記大径部よりも第2方向側に位置し、前記大径部よりも相対的に内径が小さい小径部とを有し、
前記小径部は、前記第1係合部の外径よりも小さい内径を有し、
前記大径部は、前記第1係合部の外径よりも大きい内径を有し、
前記第1係合部は、内側に弾性変形して前記小径部を挿通し、弾性変形が解除されて前記大径部に係合する、
ことを特徴とする請求項1に記載のバルブ装置。
【請求項7】
前記第1係合部は、前記リングの開口から前記第2方向に向かって形成された複数のスリットによって分割されることにより形成され、
前記第1係合部のそれぞれは、前記リングの周方向に亘り、前記リングの外周面から外側に向けて突出するように形成されている、
ことを特徴とする請求項6に記載のバルブ装置。
【請求項8】
前記キャップは、第1方向側の一部である押さえ部を有し、
前記押さえ部は、前記大径部に係合した前記第1係合部に対向し、前記第1係合部の弾性変形を規制する、
ことを特徴とする請求項7に記載のバルブ装置。
【請求項9】
前記第1係合部は、第1方向に向かって外径が漸減する第1テーパ面を有し、
前記第2係合部は、第1方向に向かって内径が漸減する第2テーパ面を有する、
ことを特徴とする請求項6に記載のバルブ装置。
【請求項10】
前記シリンダ本体の内周面と前記リングの外周面とは、接着剤で接着されている、
ことを特徴とする請求項6から請求項9の何れか一項に記載のバルブ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気圧によって動作するエアシリンダと、バルブ本体と、を具備するバルブ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
流路の開閉を行うバルブを、空気圧によって動作するエアシリンダによって駆動させるバルブ装置が知られている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0003】
エアシリンダは、空気圧によってシリンダ内のピストンを移動させて動作するため、シリンダには強度及び剛性が高い材料が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平09-144903号公報
【特許文献2】特開2022-182185号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のバルブ装置は重量が重く、バルブ装置を取り外して清掃や動作確認を行うなどのメンテナンス作業が困難であるという問題がある。
【0006】
また、エアシリンダには、空気の漏れを防ぐと共に高い空気圧によって破壊されない材料で形成する必要があり、重量が軽い材料を安易に採用するのは困難であるという問題がある。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑み、破壊を抑制しつつ軽量化することでメンテナンス作業を容易に行うことができるバルブ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する本発明の態様は、弁室と、前記弁室に連通する流路を形成する入口部及び出口部と、前記弁室に設けられた弁座に対して当接及び離反可能に設けられた弁体と、を具備するバルブ本体と、前記弁体に接続されたシリンダロッドを有し、前記シリンダロッドを空気圧により駆動して前記弁体を前記弁座に対して移動するエアシリンダと、を具備するバルブ装置において、前記エアシリンダは、前記シリンダロッドが設けられたピストンと、前記ピストンが収容されるシリンダ室を有するシリンダと、を具備し、前記シリンダは、筒状のシリンダ本体と、前記シリンダ本体の両側の開口を塞ぐ2個のキャップと、を具備し、前記シリンダ本体は、繊維強化プラスチックからなる、ことを特徴とするバルブ装置にある。
【0009】
かかる態様では、シリンダ本体を繊維強化プラスチックで形成することで、シリンダ本体を軽量化して、流体を処理する装置から取り外し易くし、点検、清掃、消耗品の交換などのメンテナンスを容易に行うことができる。また、シリンダ本体を繊維強化プラスチックで形成することで、シリンダ本体の剛性及び強度を高くすることができ、シリンダ本体がシリンダ室内の空気圧によって破壊されるのを抑制することができる。また、シリンダ本体の腐食を抑制することができる。
【0010】
また、前記繊維強化プラスチックは、炭素繊維強化プラスチックである、ことが好ましい。これによれば、シリンダ本体を軽量化することができると共に、剛性及び強度を向上することができる。
【0011】
また、前記シリンダ本体と前記キャップとは、リングを介して固定され、前記リングは、前記キャップの外周部に固定されると共に、前記シリンダ本体の内周面に接着剤を介して接着され、前記リングの前記シリンダ本体に接着される外周面は、外径が漸小するテーパ面を有し、前記シリンダ本体の前記リングに接着される内周面は、内径が漸小するテーパ面を有する、ことが好ましい。これによれば、テーパ面を接着することで、シリンダ本体とリングとの接着面積を増大させて接着強度を向上し、シリンダ本体及び接着界面がシリンダ室内の気圧の変化によって破壊されるのを抑制することができると共に、接着界面からの空気の漏れ等を抑制することができる。
【0012】
また、前記シリンダ本体と前記キャップとは、リングを介して固定され、前記リングは、前記キャップの外周面に固定されると共に、前記シリンダ本体の内周面に接着剤を介して接着される、ことが好ましい。これによれば、シリンダ本体とキャップとをリングを介して強固に固定することができる。
【0013】
また、前記シリンダ本体は、前記キャップの外周面から前記キャップの前記シリンダ室とは反対側を向く面まで屈曲されて延設された延設部を有し、前記シリンダ本体の内周面と前記延設部とが、前記キャップに接着剤を介して接着されている、ことが好ましい。これによれば、延設部を設けると共に延設部をキャップに接着することで、接着強度を向上し、シリンダ本体及び接着界面がシリンダ室内の気圧の変化によって破壊されるのを抑制することができると共に、接着界面からの空気の漏れ等を抑制することができる。
【0014】
また、前記キャップの外周面に固定される筒状のリングと、前記リングに設けられた第1係合部と、前記シリンダ本体に設けられ、前記第1係合部に係合する第2係合部と、を備え、前記シリンダ本体に前記リング及び前記キャップを装着する方向を第1方向とし、当該方向の反対を第2方向とし、前記第1係合部は、内側に向けて弾性変形が可能であり、前記第2係合部は、前記シリンダ本体の一部であり相対的に内径が大きい大径部と、前記シリンダ本体の一部であり、前記大径部よりも第2方向側に位置し、前記大径部よりも相対的に内径が小さい小径部とを有し、前記小径部は、前記第1係合部の外径よりも小さい内径を有し、前記大径部は、前記第1係合部の外径よりも大きい内径を有し、前記第1係合部は、内側に弾性変形して前記小径部を挿通し、弾性変形が解除されて前記大径部に係合することが好ましい。かかる態様では、シリンダ本体を繊維強化プラスチックで形成することで、シリンダ本体を軽量化して、流体を処理する装置から取り外し易くし、点検、清掃、消耗品の交換などのメンテナンスを容易に行うことができる。また、シリンダ本体を繊維強化プラスチックで形成することで、シリンダ本体の剛性及び強度を高くすることができ、シリンダ本体がシリンダ室内の空気圧によって破壊されるのを抑制することができる。また、シリンダ本体の腐食を抑制することができる。また接着剤を用いずに、シリンダ本体にリングを固定することができる。
【0015】
また、前記第1係合部は、前記リングの開口から前記第2方向に向かって形成された複数のスリットによって分割されることにより形成され、前記第1係合部のそれぞれは、前記リングの周方向に亘り、前記リングの外周面から外側に向けて突出するように形成されていることが好ましい。第1係合部を内側に変形させやすい構成であるので、より一層容易にシリンダ本体にリングを取り付けることができる。
【0016】
また、前記キャップは、第1方向側の一部である押さえ部を有し、前記押さえ部は、前記大径部に係合した前記第1係合部に対向し、前記第1係合部の弾性変形を規制することが好ましい。第1係合部が大径部に係合した状態を維持することができるので、リングがシリンダ本体から外れてしまうことをより確実に抑制することができる。
【0017】
また、前記第1係合部は、第1方向に向かって外径が漸減する第1テーパ面を有し、前記第2係合部は、第1方向に向かって内径が漸減する第2テーパ面を有することが好ましい。このため、リングを第1方向に進行させれば、第1係合部は第2テーパ面から内側へ曲げる力を受ける。したがって、リングを第1方向に進行させれば第1係合部は内側に曲がるので小径部に挿通させやすい。
【0018】
また、前記シリンダ本体の内周面と前記リングの外周面とは、接着剤で接着されていることが好ましい。より確実に接触界面からの空気の漏れ等を抑制することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、破壊を抑制しつつ軽量化することでメンテナンス作業を容易に行うことができるバルブ装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態1に係るバルブ装置の閉弁状態を示す断面図。
図2】本発明の実施形態1に係るバルブ装置の開弁状態を示す断面図。
図3】本発明の実施形態1に係るエアシリンダの要部を拡大した断面図。
図4】本発明の実施形態2に係るエアシリンダの断面図。
図5】本発明の実施形態3に係るエアシリンダの断面図。
図6】本発明の実施形態4に係るエアシリンダの断面図。
図7】本発明の実施形態4に係るエアシリンダの分解斜視図。
図8】本発明の実施形態4に係る装着中におけるエアシリンダの要部を拡大した断面図。
図9】本発明の実施形態4に係る装着時におけるエアシリンダの要部を拡大した断面図。
図10】本発明の実施形態4の変形例に係るエアシリンダの要部を拡大した断面図。
図11】本発明の実施形態4の変形例に係るエアシリンダの要部を拡大した断面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0022】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係るバルブ装置1の閉弁状態を示す断面図である。図2は、本発明の実施形態1に係るバルブ装置1の開弁状態を示す図である。図3は、エアシリンダの要部を拡大した断面図である。
【0023】
図1及び図2に示すように、バルブ装置1は、バルブ本体2と、エアシリンダ3と、を具備し、バルブ本体2の弁軸部32と、エアシリンダ3のシリンダロッド70とは、ジョイントロッド4によって固定されている。
【0024】
<バルブ本体>
バルブ本体2は、流路部材10と固定部材20と弁体30とダイアフラム40とを具備する。
【0025】
流路部材10は、内部に流路11が設けられたいわゆる弁箱である。流路11は、弁室12、入口部13及び出口部14を具備する。
【0026】
弁室12は、入口部13に連通する部分に弁口12aを有する。弁口12aは、内周面が入口部13に向かって徐々に内径が漸小するように傾斜したテーパ状となっている。この弁口12aのテーパ状の内周面が弁座15となっている。
【0027】
入口部13は、図1中右側に開口し、出口部14は、図1中下側に開口する。つまり、入口部13から流入した液体は、弁室12を介して略90度に曲げられて、出口部14から流出される。これら入口部13及び出口部14のそれぞれには、不図示の配管が接続される。
【0028】
流路部材10の入口部13とは反対側には、弁室12と外部とを連通する開口部16が設けられており、開口部16は、固定部材20によって塞がれている。
【0029】
弁体30は、弁体部31と弁軸部32と当接部33とを具備する。
【0030】
弁体部31は、円形の板状部材からなる。また、弁体部31の弁座15に対向する部分には、ゴムやエラストマー等の弾性材料で形成された当接部33が固定されている。当接部33は、弁体部31の弁座15に向かう側の面に周方向に亘って連続して設けられており、弁軸部32の径方向において、当接部33の厚さは、弁座15に向かって徐々に漸減する形状を有する。つまり、当接部33の径方向の断面形状は略三角形状を有し、三角形状の頂点が弁座と相対向して設けられている。
【0031】
弁軸部32は、一端が弁体部31に固定されている。本実施形態では、弁軸部32と弁体部31とは、一体部材からなる。もちろん、弁体部31と弁軸部32とは別体のものを固定したものであってもよい。弁軸部32は、取付部34を有する。取付部34は、弁軸部32と同軸であり、弁軸部32からジョイントロッド4側へ突出している。取付部34の側面にはネジ溝が切られている。さらに、弁軸部32は、取付部34側の一部が縮径した段差部35を有する。
【0032】
ダイアフラム40は、可撓性を有する樹脂で形成された部材であり、中央には第1挿通孔41が設けられている。また、バックプレート42は、中央に段差状に開口した第3挿通孔43が設けられている。第3挿通孔43のうち内径の狭い部分を第3挿通孔43a、内径の広い部分を第3挿通孔43bとする。バックプレート42の第3挿通孔43bには、ジョイントロッド4が嵌合している。
【0033】
取付部34は、第1挿通孔41及び第3挿通孔43を挿通し、ジョイントロッド4の一端部に設けられたネジ孔4aに螺合することで、ジョイントロッド4と締結されている。また、取付部34がジョイントロッド4のネジ孔4aに螺合することで、ダイアフラム40の第1挿通孔41の縁部が段差部35とバックプレート42とによって挟持される。また、ダイアフラム40の周縁部は、固定部材20と流路部材10に設けられた突起部17とによって挟持される。このように挟持されたダイアフラム40は、弁室12の開口部16と、弁軸部32との間を封止している。つまり、ダイアフラム40は、弁室12内の液体が、開口部16側から外部に漏出するのを防ぐ。なお、特に図示しないが、段差部35とダイアフラム40の第1挿通孔41の縁部との間や、固定部材20と突起部17との間には、外部に液体が漏出するのを防ぐOリングを設けるのが好ましい。
【0034】
固定部材20は、ジョイントロッド4が挿通する第2挿通孔21と、第2挿通孔21に連通し、バックプレート42が収容可能な凹形状を有するバックプレート収容部22と、を具備する。固定部材20は、第2挿通孔21にジョイントロッド4が挿通し、バックプレート収容部22にバックプレート42が収容された状態で、流路部材10の開口部16側にクランプ23によって固定される。
【0035】
また、固定部材20は、ジョイントロッド4とエアシリンダ3のシリンダロッド70とを接続するための接続空間24を有する固定部25を有する。固定部25は、接続空間24の側面の一部を外部に連通するための固定用開口部26を有する。この固定部25のエアシリンダ3側の側壁には、シリンダロッド70を挿通するための第4挿通孔27が設けられている。
【0036】
固定部材20は、固定部25が、エアシリンダ3のキャップ52に固定ネジ28によって固定される。
【0037】
弁体30は、ジョイントロッド4を介して接続したエアシリンダ3の駆動により、図1及び図2中左右方向に進退移動する。図1に示すように、弁体30が右方向に移動した状態では、弁体30が、当接部33を弁座15に当接した状態で弁口12aを塞ぐ。この状態を閉弁状態と称する。
【0038】
図2に示すように、弁体30が左方向に移動した状態では、弁体30が、当接部33を弁座15から離反した状態で弁口12aを開放する。この状態を開弁状態と称する。このような閉弁状態及び開弁状態の弁体30の移動と共にダイアフラム40が可撓変形する。
【0039】
<エアシリンダ>
エアシリンダ3は、シリンダ50と、ピストン60と、シリンダロッド70と、を具備する。
【0040】
シリンダ50は、シリンダ本体51と2個のキャップ52と2個のリング53とを具備する。シリンダ本体51とキャップ52とはリング53を介して固定されている。
【0041】
シリンダ本体51は、内部にシリンダ室54を有する筒状、本実施形態では、円筒状とする。なお、シリンダ本体51は、円筒状に限定されず、楕円筒状等であってもよい。このようなシリンダ本体51は、繊維強化プラスチック(FRP:Fiber Reinforced Plastics)で形成されている。特に、シリンダ本体51は、繊維として炭素繊維を含む炭素繊維強化プラスチック(CFRP:Carbon Fiber Reinforced Plastics)で形成するのが好ましい。シリンダ本体51としてFRP、特にCFRPを用いることでシリンダ本体51を軽量化することができると共に剛性及び強度を高くすることができ、シリンダ本体51がシリンダ室54内の空気圧によって破壊されるのを抑制することができる。また、FRPは腐食しないため、シリンダ本体51にバルブ本体2により流量を制御される液体が接触したとしても、シリンダ本体51が腐食により破壊されるのを抑制することができる。なお、シリンダ本体51に用いるFRP、特にCFRPの母材となる樹脂材料や繊維材料の大きさ及び含有量等は公知の材料を用いることができる。
【0042】
2個のキャップ52は、シリンダ本体51の左右両側の開口をそれぞれ塞ぐ。本実施形態では、図1及び図2中、シリンダ本体51の左側の開口を塞ぐキャップ52を第1キャップ52Aと称し、図1及び図2中、シリンダ本体51の右側の開口、つまり、バルブ本体2側の開口を塞ぐキャップ52を第2キャップ52Bと称する。以降、第1キャップ52Aと第2キャップ52Bとを区別しない場合には、キャップ52と称する。第1キャップ52A及び第2キャップ52Bは、同一形状を有するキャップ52を互いに反転して利用している。このため、第1キャップ52Aと第2キャップ52Bとを作り分けることや在庫を管理する必要がなくコストを低減することができる。
【0043】
このようなキャップ52は、円形状を有する板状部材からなり、外周に向かって段階的に厚さが薄くなる形状を有する。本実施形態では、キャップ52は、中央部に第1部分52aと、第1部分52aの外側に第1部分52aよりも厚さが薄い第2部分52bと、第2部分52bの外側に第2部分52bよりも厚さが薄い第3部分52cと、を具備する。キャップ52のシリンダ室54側の面には、第1部分52a、第2部分52b及び第3部分52cの厚さの差によって段差が形成されている。
【0044】
また、キャップ52のシリンダ室54とは反対側の面には、少なくとも2個のネジ孔52dが設けられている。第2キャップ52Bのネジ孔52dに固定部材20が固定ネジ28を介して固定される。なお、第1キャップ52Aのネジ孔52dは、不図示のバルブヘッドを固定ネジによって固定するために利用される。バルブヘッドは、特に図示しないが、シリンダ室54に供給する圧搾エアの流れを切り替えるための電磁弁、バルブ本体2の開弁状態及び閉弁状態を検出するセンサー、バルブ本体2の作動状態を表示する表示機器、電磁弁の駆動や作動状態の表示を制御する電装部品などをケースに収容した部品である。
【0045】
また、キャップ52は、シリンダ室54側に外径が小さい小径部52eと、シリンダ室54とは反対側に小径部52eよりも大きな外径の大径部52fと、を有する。そして、キャップ52の外周には、小径部52eと大径部52fとの間に段差が形成されている。また、小径部52eの外周面には、ネジ溝が切られている。
【0046】
このようなキャップ52は、例えば、ステンレス綱などの金属で形成されている。キャップ52は、シリンダ本体51に環状のリング53を介して固定される。
【0047】
リング53は、内面にキャップ52の小径部52eに螺合するネジ溝が切られており、リング53とキャップ52とは螺合することで固定される。また、図3に示すように、リング53は、外周面がシリンダ本体51の内周面と接着剤58によって接着される。リング53の外周面は、シリンダロッド70の軸方向に平行な第1水平面53aと、第1水平面53aに連続してキャップ52とは反対側の端部に向かって外径が徐々に漸小する第1テーパ面53bと、を具備する。また、リング53の第1水平面53aの第1テーパ面53bとは反対側の端部には、第1水平面53aよりも外周に向かって突出する突起部53cが設けられている。リング53とシリンダ本体51とを接着剤58で接着するためにリング53をシリンダ本体51の端部に挿入する際に、突起部53cがシリンダ本体51の開口縁部に当接し、リング53のシリンダ本体51内への挿入が規制されて挿入方向の位置決めが行われる。
【0048】
一方、シリンダ本体51の両端部の内周面は、リング53の第1水平面53a及び第1テーパ面53bに沿って凹んだ形状を有する。つまり、シリンダ本体51の端部の内周面には、シリンダロッド70の軸方向に水平な第2水平面51aと、第2水平面51aに連続して内径が徐々に漸小する第2テーパ面51bとを具備する。そして、リング53の第1水平面53aとシリンダ本体51の第2水平面51aとの間と、リング53の第1テーパ面53bとシリンダ本体51の第2テーパ面51bとの間と、が接着剤58によって接着されている。
【0049】
このようにリング53とシリンダ本体51との接着界面に第1テーパ面53b及び第2テーパ面51bを設けることで、シリンダ本体51とリング53とを接着するための接着面積を増大させて、接着強度を向上し、シリンダ室54内の空気がシリンダ本体51とリング53との間から外部に漏出するのを抑制することができると共に、外部の空気がシリンダ本体51とリング53との間からシリンダ室54内に入り込むのを抑制することができる。ちなみに、シリンダ本体51とリング53との接着界面を水平面のみで構成してもよいが、第1テーパ面53b及び第2テーパ面51bを設けた場合に較べて、接着面積が減少してしまう。つまり、シリンダ本体51とリング53との接着面に、第1テーパ面53b及び第2テーパ面51bを設けることで、水平面のみを設けた場合に比べて接着面積を増大させて接着強度を向上することができる。もちろん、シリンダ本体51とリング53との接着面は、第1水平面53aおよび第2水平面51aを設けずに、全ての領域が第1テーパ面53b及び第2テーパ面51bで構成されていてもよい。また、第1テーパ面53b及び第2テーパ面51bは、断面形状が凸曲面状、又は凹曲面状に設けられたものであってもよい。
【0050】
ちなみに、シリンダ本体51にリング53が接着された際に、シリンダ本体51のリング53よりも内側の内周面とリング53の内周面とが略面一となる。これにより、詳しくは後述するピストン60の外周面に固定されたOリングが、リング53とシリンダ本体51との内周面に摺接する際に、段差によって削れて寿命が短くなることを抑制することができる。
【0051】
また、このようにシリンダ本体51とリング53とが接着剤58によって接着された状態で、リング53にキャップ52を螺合する。これにより、シリンダ本体51とキャップ52とはリング53を介して固定される。このようにリング53とキャップ52とを螺合させて締結することで、シリンダ本体51からキャップ52を容易に取り外すことができる。したがって、エアシリンダ3を容易に分解して、内部の清掃やOリングなどの消耗品の交換などのメンテナンスを容易に行うことができる。
【0052】
また、キャップ52の中央には、第5挿通孔55が設けられている。第5挿通孔55にシリンダロッド70が挿通される。なお、キャップ52の第5挿通孔55の内面部分には、不図示のブッシュやOリングを設けることが好ましい。
【0053】
また、キャップ52には、厚さ方向に貫通する貫通孔56が設けられている。キャップのシリンダ室54とは反対側の面には、貫通孔56に連通して空気をシリンダ室54に供給又は排出するための接続口を有する接続部57が固定される。接続部57には、不図示の配管を介して給気する空気圧縮機や給気量及び排気量を調整する弁装置等が取り付けられる。なお、貫通孔56は、キャップ52に固定部材20及びバルブヘッド等が取り付けられた際に、邪魔にならない位置、本実施形態では、第3部分52cに設けられている。
【0054】
ピストン60は、円形の板状部材からなり、シリンダ室54内にシリンダロッド70の軸方向に移動可能に配置されている。また、ピストン60の中央には、第5挿通孔55と同軸となる固定孔61が貫通して設けられている。ピストン60の固定孔61にシリンダロッド70が挿通された状態で固定されている。つまり、シリンダロッド70は、両端が2個のキャップ52の外側に配置されるように、キャップ52の第5挿通孔55に挿通されている。
【0055】
ピストン60は、固定孔61が設けられた固定部62と、固定部62の外側に固定部よりも厚さが薄いバネ受け部63と、を具備する。
【0056】
ピストン60は、第1キャップ52Aに対向する面に、固定部62とバネ受け部63との厚さの差によって段差が形成されている。また、バネ受け部63は、第1キャップ52Aを向く面に開口する凹部64が設けられている。また、ピストン60の外周面には、外周面に開口する凹形状を有する保持部65が設けられており、保持部65内には、Oリング66が保持されている。ピストン60は、保持部65に保持されたOリング66をシリンダ本体51の内周面に摺接させながら移動することで、シリンダ室54のピストン60によって区切られた2つの空間の間の気密を保つようになっている。
【0057】
ピストン60と第1キャップ52Aとの間には、コイルバネからなる第1バネ67及び第2バネ68が設けられている。第1バネ67は、外径が第2バネ68よりも小さく、一端が第1キャップ52Aの第2部分52bに当接し、他端がピストン60のバネ受け部63に当接することで、ピストン60を第1キャップ52Aに対して第2キャップ52B側に向かって付勢する。
【0058】
また、第2バネ68は、内径が第1バネ67よりも大きく、一端が第1キャップ52Aの第3部分52cに当接し、他端がピストン60の凹部64の底面に当接することで、ピストン60を第1キャップ52Aに対して第2キャップ52B側に向かって付勢する。これら第1バネ67及び第2バネ68は、第1キャップ52Aに設けられた段差及びピストン60に設けられた段差によってそれぞれ当接位置がズレ難いようになっている。
【0059】
このようなエアシリンダ3では、シリンダ室54のピストン60で区切られた2つの空間の一方に空気を供給することで、2つの空間に圧力差を生じさせて、圧力差によってピストン60をシリンダ50に対して図中左方向に移動して開弁する。
【0060】
具体的には、第2キャップ52Bの接続部57からシリンダ室54に空気を供給すると共に、第1キャップ52Aの接続部57からシリンダ室54内の空気を外部に排出することで、シリンダ室54のピストン60で区切られた2つの空間に圧力差を生じさせて、ピストン60を第1バネ67及び第2バネ68の付勢力に抗して図中左側、すなわち、第1キャップ52A側に移動する。これにより、図2に示すように、ピストン60に固定されたシリンダロッド70を左方向に駆動し、バルブ本体2を開弁状態とする。
【0061】
また、第2キャップ52Bの接続部57からの空気の供給を停止することで、第1バネ67及び第2バネ68の付勢力によってピストン60を図中右方向、すなわち、第2キャップ52B側に移動する。これにより、図1に示すように、ピストン60に固定されたシリンダロッド70を右方向に駆動し、バルブ本体2を閉弁状態とする。つまり、「シリンダロッド70を空気圧により駆動する」とは、バルブ本体2を開弁及び閉弁する際の少なくとも一方を空気圧によって駆動するものを含む。なお、閉弁状態において、弁体30の弁座15への押圧力を高めるために、第1キャップ52Aの接続部57から空気を供給するようにしてもよい。これにより、第1バネ67及び第2バネ68の付勢力に加えて、空気圧によってピストン60を押圧し、弁体30を弁座15に高い圧力で押圧して、流路11を確実に閉弁することができる。
【0062】
なお、シリンダ室54のピストン60で区切られた空間からの空気の排出は、ピストン60の移動によって当該空間内の圧力が常に大気圧となるような排気であってもよいが、例えば、当該空間が負圧になるように接続部57から空気を吸引するように排気させてもよい。このように当該空間が負圧となるように空気を排気することで、ピストン60をより強い力で移動させることができる。
【0063】
以上説明したように、本実施形態のバルブ装置1では、エアシリンダ3のシリンダ本体51をFRPで形成したため、エアシリンダ3及びバルブ装置1全体の重量を小さくすることができる。このため、流体を処理する装置からバルブ装置1を容易に取り外すことができ、バルブ装置1の点検、清掃、消耗品の交換などのメンテナンスを容易に行うことができる。また、バルブ装置1の重量が小さいため、流体を処理する装置にバルブ装置1を容易に取り付けることができる。
【0064】
また、シリンダ本体51がFRPからなるため、シリンダ本体51の強度及び剛性を向上して、シリンダ室54の空気圧の変化によってシリンダ本体51が破壊されるのを抑制することができる。
【0065】
さらに、リング53及びシリンダ本体51の第1テーパ面53b及び第2テーパ面51bを接着剤58で接着するようにしたため、シリンダ本体51とリング53との接着面積を増大させて、リングとシリンダ本体との接着強度を向上することができる。したがって、シリンダ室54内の空気がリング53とシリンダ本体51との間から漏れることや、リング53とシリンダ本体51との間からシリンダ室54内に空気が入り込むのを抑制することができる。したがって、エアシリンダ3を空気圧によって高精度に駆動させて、バルブ本体2を高精度に制御することができる。
【0066】
(実施形態2)
図4は、本発明の実施形態2に係るバルブ装置のエアシリンダの断面図である。なお、上述した実施形態と同様の部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0067】
図4に示すように、本実施形態のバルブ装置1のエアシリンダ3のシリンダ50は、シリンダ本体51と2個のキャップ52と2個のリング53とを具備する。
【0068】
シリンダ本体51の外周面とキャップ52の外周面とが、リング53の内周面と固定されている。シリンダ本体51とリング53とは、接着剤58によって接着されている。また、キャップ52の外周面とリング53の内周面とには、ネジ溝が切られており、キャップ52とリング53とは螺合することで固定される。
【0069】
シリンダ本体51は、上述した実施形態1と同様に、FRP、特に、CFRPからなる。このため、シリンダ本体51を軽量化してエアシリンダ3を軽量化することができる。また、シリンダ本体51をFRP、特に、CFRPで形成することで、シリンダ本体51の剛性及び強度を高くすることができ、シリンダ本体51がシリンダ室54内の空気圧によって破壊されるのを抑制することができる。また、シリンダ本体51の腐食を抑制することができる。さらに、リング53をシリンダ本体51の外側に設けることで、リング53がシリンダ本体51とキャップ52との接続部分を補強して、さらにシリンダ本体51の変形を抑制し、シリンダ本体51とキャップ52との接続部分が破壊されるのを抑制することができる。
【0070】
(実施形態3)
図5は、本発明の実施形態3に係るバルブ装置のエアシリンダの断面図である。なお、上述した実施形態と同様の部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0071】
図5に示すように、本実施形態のバルブ装置1のエアシリンダ3のシリンダ50は、シリンダ本体51と2個のキャップ52とを具備する。
【0072】
シリンダ本体51は、キャップ52の外周面に接着されている。また、シリンダ本体51の第1キャップ52A側の端部は、第1キャップ52Aの外周面からシリンダ室54とは反対側を向く面に沿って屈曲して延設された延設部51cを具備する。延設部51cは、第1キャップ52Aのシリンダ室54とは反対側を向く面と接着剤58を介して接着されている。
【0073】
なお、シリンダ本体51の第2キャップ52B側の端部には、延設部51cは設けられていないため、シリンダ本体51のシリンダ室54に第2キャップ52Bを接着する前に、第2キャップ52B側の開口からピストン60を挿入することができる。
【0074】
このような構成のエアシリンダ3であっても、シリンダ本体51を上述した実施形態1と同様に、FRP、特に、CFRPで形成することで、軽量化することができると共に強度及び剛性を確保して、気圧の変化による破壊や空気の漏出を抑制することができる。
【0075】
なお、本実施形態では、シリンダ本体51に延設部51cを設けるようにしたが、特にこれに限定されず、延設部51cを設けずに、シリンダ本体51と2個のキャップ52とを接着剤58で接着してもよい。つまり、図5に示すシリンダ本体51と第2キャップ52Bとを接着剤58で接着する構造を、シリンダ本体51と第1キャップ52Aとを接着する部分に採用した構成のエアシリンダ3であってもよい。
【0076】
(実施形態4)
図6は本実施形態4に係るバルブ装置のエアシリンダの断面図であり、図7はエアシリンダの分解斜視図であり、図8はリングを装着中のエアシリンダの要部を拡大した断面図であり、図9はリング及びキャップを装着したエアシリンダの要部を拡大した断面図である。図9にはキャップ52Bを示してあるがキャップ52Aについても同様の構成である。なお、上述した実施形態と同様の部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0077】
本実施形態のエアシリンダ3は、シリンダ本体100とリング110とが接着剤ではなく係合部によって固定されている点で上述した実施形態1-3と相違する。
【0078】
シリンダ本体100及びリング110は実施形態1-3と同様に筒状に形成されており、リング110は、その外周面がシリンダ本体100の内周面に接触するようにして装着されている。シリンダ本体100に対してリング110及びキャップ52を装着させるために移動する方向を第1方向とする。そして、その逆方向、すなわちシリンダ本体100からリング110及びキャップ52が取り外される方向を第2方向とする。
【0079】
シリンダ本体100は、第1方向から第2方向に向けて、第2係合部102、先端部103を有している。第2係合部102は、リング110の第1係合部111に係合する部分であり、詳細は後述する。先端部103は、シリンダ本体100の先端側(第2方向側)の一部であって内径Diが一定である部分である。
【0080】
リング110は、第1方向から第2方向に向けて、第1係合部111、縮径部112、基端部113を有している。縮径部112は、リング110の基端部113から第1方向に向けて外径が縮小した部分である。第1係合部111については後述する。基端部113は、リング110の基端側(第2方向側)の一部であって外径Doが一定である部分である。内径Diと外径Doはほぼ同じか内径Diが外径Doより若干大きい。なお、リング110は、実施形態1-3と同様に、内周面にキャップ52の小径部52eに螺合するネジ溝が切られており、リング110と後述するキャップ52とは螺合することで固定される。
【0081】
リング110は、図7に示すように、先端側(第1方向側)の開口から第2方向に向かって複数のスリット115が形成されている。スリット115により、リング110の先端側の開口部が複数に分割されており、それぞれが第1係合部111となっている。図7に示す例では、リング110には4個のスリット115が形成されており、それらのスリット115に分割された4個の第1係合部111が形成されている。
【0082】
また、リング110はステンレスなどの弾性変形可能な材料から形成されている。リング110の開口にスリット115が形成されることで、第1係合部111の外側から内側へ力が作用すると、第1係合部111の先端側が内側へ曲がりやすくなっている。その力が解除されると第1係合部111は元の形状に戻る。以後、第1係合部111に力が作用して内側に曲がった状態を変形状態、力が解除されて元の形状にある状態を通常状態と称する。
【0083】
キャップ52はリング110の内側に挿入され、リング110と螺合する事で固定される。図9に示すように、キャップ52をリング110に固定した状態において、キャップ52の先端側(第1方向側)の一部分を押さえ部59と称する。同状態において、押さえ部59は、第1係合部111とほぼ同一位置にある。押さえ部59が第1係合部111と同一位置にあるとは、押さえ部59が第1係合部111の全体又は一部に対向していることをいう。同図の例では、押さえ部59が第1係合部の一部に対向(接触)している。押さえ部59は、詳細は後述するが、第1係合部111が内側へと変形する事を抑える為のものである。
【0084】
第1係合部111は、リング110の外周面に設けられており、シリンダ本体100の内周面に接触する。本実施形態では、リング110の周方向に亘り、リング110の外周面から側方(図9ではシリンダ本体100の内周面側)へ向けて突出するように形成された部分が第1係合部111となっている。上述したようにスリット115により分割された複数の第1係合部111がリング110に設けられている。
【0085】
また、第1係合部111は、第1方向に向かって外径Lが漸減する第1テーパ面121を有している。また、リング110の外周面は、後述の第2テーパ面122に接触する第4テーパ面124を有する。第4テーパ面124は、縮径部112の内面である。さらに、第1係合部111は、非テーパ面111aを有している。非テーパ面111aは、シリンダ本体100に向く面のうち第1テーパ面121以外の部分である。ここでは非テーパ面111aは平面状とされている。リング110の外径の最も大きい部分(以下、最大外径Dr)は、第1係合部111の非テーパ面111aの部分となっている。
【0086】
第2係合部102は、シリンダ本体100に設けられており、第1係合部111に係合する。本実施形態では、第2係合部102は、大径部104と小径部105を有している。
【0087】
大径部104は、シリンダ本体100の一部であり、小径部105と比べて相対的に内径が大きい部分である。詳細には、大径部104は、第2方向から第1方向に向かって内径が漸増する漸増部104a、漸減部104cに連続し、第1方向に向かって内径が一定長の凹部104bと、凹部104bに連続し、第1方向に向かって内径が漸減する漸減部104cとから構成されている。
【0088】
大径部104において最も広い内径を第1内径D1と称する。図9に示すようにリング110がシリンダ本体100に装着された状態では、大径部104は、第1係合部111の表面に沿うように形成されている。つまり、大径部104のうち凹部104b、漸減部104cの表面が第1係合部111の表面に接触しており、シリンダ本体100は第1係合部111を内側に曲げる力を作用させないような形状となっている。なお大径部104は、第1係合部111の表面に接触せず、僅かな隙間があってもよい。
【0089】
小径部105は、シリンダ本体100の一部であり、大径部104よりも第2方向側に位置し、大径部104よりも相対的に内径が小さい部分である。詳細には、小径部105は、第2方向から第1方向に向かって内径が漸減するガイド部105aと、ガイド部105aと大径部104との間の凸部105bとを有している。ガイド部105aの内面を第2テーパ面122と称する。また、シリンダ本体100には第1テーパ面121に接触する第3テーパ面123を有する。第3テーパ面123は、漸減部104cの内面である。
【0090】
小径部105において最も狭い内径を第2内径D2と称する。同図の例では凸部105bの内径が第2内径D2となっている。大径部104よりも相対的に小径部105の内径が小さいとは、第2内径D2が第1内径D1より小さいことをいう。図8に示すように、小径部105の第2内径D2は、変形状態の第1係合部111が挿通可能な程度の内径となっている。図9に示すように、小径部105の第2内径D2は、通常状態の第1係合部111の外径である最大外径Drよりも小さい。
【0091】
このようなシリンダ本体100へのリング110の装着は次のように行われる。図8に示すように、まず、リング110の第1係合部111がシリンダ本体100の第2テーパ面122に接触する。リング110の第1係合部111はスリット115により内側へ変形可能となっている。したがって、第1係合部111は第1方向に進行するとガイド部105aによって外側から内側へ力が作用し、内側へ変形する。このような変形により、第1係合部111は、小径部105(凸部105b)を乗り越えて、第1方向へと進むことが出来る。第1係合部111には第1テーパ面121が設けられ、第2係合部102の小径部105には第2テーパ面122が設けられている。このため、リング110を第1方向に進行させれば、第1係合部111は第2テーパ面122から内側へ曲げる力を受ける。したがって、リング110を第1方向に進行させれば第1係合部111は内側に曲がるので小径部105に挿通させやすい。
【0092】
図9に示すように、第1係合部111が第2係合部102の大径部104の内側に収容され、リング110の第4テーパ面124がシリンダ本体100の第2テーパ面122に接触する。このように第1係合部111が小径部105を乗り越え、大径部104に到達した状態では、第1係合部111には外側から内側へ作用していた力が解除され、元の形状に戻る。次に、リング110をシリンダ本体100に装着した状態でリング110にキャップ52を螺合して固定する。
【0093】
キャップ52がリング110に螺合した状態では、キャップ52の先端である押さえ部59が第1係合部111に対向する位置となる。押さえ部59は、第1係合部111が内側に曲がることを規制する。第1係合部111が内側に曲がらないので第1係合部111は小径部105を第2方向側へ乗り越えることができず、リング110がシリンダ本体100から抜けないようになっている。
【0094】
シリンダ本体100がCFRPなどの変形しにくい材料で形成されているので、シリンダ本体100を軽量化して、流体を処理する装置から取り外し易くし、点検、清掃、消耗品の交換などのメンテナンスを容易に行うことができる。また、シリンダ本体100を繊維強化プラスチックで形成することで、シリンダ本体の剛性及び強度を高くすることができ、シリンダ本体100がシリンダ室54内の空気圧によって破壊されるのを抑制することができる。
【0095】
ここで、シリンダ本体100は、CFRPなど炭素繊維で形成されており、強度が高いのでリング110を受け入れる側の開口が拡径しない。したがって仮に第1係合部111が内側に変形しなければ、第1係合部111は小径部105によって第1方向への移動が阻止され、シリンダ本体100にリング110を装着することはできない。
【0096】
しかしながら、リング110は第1係合部111がスリット115により内側に変形可能であるので、第1係合部111が小径部105を乗り越え、大径部104に収まった状態(第2係合部102に係合した状態)とすることができる。そして、キャップ52をリング110の内側に装着することで、押さえ部59により第1係合部111が内側に変形することが規制される。これにより、リング110を第2方向へ移動させようとしても、第1係合部111が小径部105を乗り越えることができない。したがってシリンダ室54内の空気圧がリング110及びキャップ52を第2方向へ押圧しても、シリンダ本体100にリング110及びキャップ52が装着された状態を維持することができる。このように変形しにくい炭素繊維で作製されたシリンダ本体100であっても、キャップ52をシリンダ本体100にリング110を介して固定することができる。
【0097】
リング110には、スリット115が形成されており、このスリット115により分割された第1係合部111のそれぞれが内側に曲がりやすくなっている。これにより、シリンダ本体100の内部にリング110を装着させやすくすることができる。
【0098】
図10~11を用いて、係合部についての変形例を例示する。
上述した実施形態4では、シリンダ本体100やリング110は第1~第4テーパ面を有していたが、このような態様に限定されない。図10に示すように、リング110に第1係合部111、シリンダ本体100に第2係合部102を設け、それぞれテーパ面を有さない形状とする。また実施形態4と同様に第1係合部111が内側(同図の下側)へ弾性変形可能となっている。このような構成であっても、シリンダ本体100へ、第1係合部111を内側に曲げた状態でリング110を装着し、不図示のキャップをリング110へ装着することで、それらを固定することができる。また、第1係合部111と第2係合部102が係合することで、シリンダ本体100からリング110が取り外されることを抑制することができる。
【0099】
図11に示すように、シリンダ本体100に第3テーパ面123を設けず、リング110に第4テーパ面124を設けなくてもよい。また実施形態4と同様に第1係合部111が内側(同図の下側)へ弾性変形可能となっている。このような構成であっても、シリンダ本体100へ、第1係合部111を内側に曲げた状態でリング110を装着し、不図示のキャップをリング110へ装着することで、それらを固定することができる。また、第1係合部111と第2係合部102が係合することで、シリンダ本体100からリング110が取り外されることを抑制することができる。
【0100】
特に図示しないが、シリンダ本体100に第3テーパ面123を設けず、リング110に第4テーパ面124を設けた構成としてもよいし、シリンダ本体100に第3テーパ面123を設け、リング110に第4テーパ面124を設けない構成としてもよい。また、シリンダ本体100の内周面とリング110の外周面との間には、第1係合部111、第2係合部102の表面を含めて実施形態1-3と同様に接着剤を設けてもよい。
【0101】
(他の実施形態)
以上本発明の各実施形態について説明したが、本発明の基本的な構成は上述したものに限定されるものではない。
【0102】
例えば、上述した各実施形態では、エアシリンダ3に第1バネ67及び第2バネ68の2個のバネを設けるようにしたが、バネの数は特にこれに限定されず、1個であってもよく、3個以上の複数のバネを設けるようにしてもよい。
【0103】
また、上述した各実施形態では、第1バネ67及び第2バネ68の付勢力によってバルブ本体2を閉弁し、空気圧によってバルブ本体2を開弁するようにしたが、特にこれに限定されず、第1バネ67及び第2バネ68の付勢力によってバルブ本体2を開弁し、空気圧によってバルブ本体2を閉弁するようにしてもよい。このような構成とする場合には、バルブ本体2に対して、エアシリンダ3を取り付ける方向を左右逆転させればよい。つまり、第1キャップ52A側からシリンダロッド70を突出させて、第1キャップ52Aの外側でシリンダロッド70とジョイントロッド4とを接続することで、第1バネ67及び第2バネ68の付勢力によってバルブ本体2を開弁し、空気圧によってバルブ本体2を閉弁することができる。
【0104】
また、上述した各実施形態のエアシリンダ3は、シリンダ室54のピストン60で区切られた2つの空間の一方に空気を供給し、空気圧によって開弁するようにしたが、特にこれに限定されず、第1バネ67及び第2バネ68を設けずに、シリンダ室54のピストン60で区切られた2つの空間のそれぞれに空気を供給及び排出することで、ピストン60を移動させる、所謂、複動式のエアシリンダであってもよい。
【0105】
また、上述した実施形態1では、リング53とシリンダ本体51との接着界面には、第1水平面53a及び第1テーパ面53bと、第2水平面51a及び第2テーパ面51bとを設けるようにしたが、特にこれに限定されず、リング53の外周面及びシリンダ本体51の内周面のそれぞれに、周方向に亘って連続して突出する凸部を、1つ又は軸方向に一定の間隔を空けて複数設けるようにしてもよい。このように凸部を設けることで、シリンダ本体51とリング53との接着面積を増大させることができると共にアンカー効果によって接着強度を向上することができる。
【0106】
また、上述した各実施形態では、バルブ本体2は、ダイアフラム40によって弁室12と開口部16とが連通しないように封止したが、特にこれに限定されない。例えば、ダイアフラム40を用いずに、エアシリンダ3のキャップ52及びシリンダロッド70と同様の構造となるように、弁軸部32又はジョイントロッド4をブッシュやOリングでシールするようにしてもよい。
【0107】
また、上述した各実施形態では、流路部材10は、出入口が略90度に交わった、いわゆるL型としたが、これに限定されない。一直線上に並んだ流路から分岐した、いわゆるT型としてもよい。もちろん、流路部材10は、L型やT型以外の形状であってもよい。また、流路部材10は、入口が一つ、出口が複数あり、弁体で液体の出口を切り替えることが可能な構成としてもよい。
【符号の説明】
【0108】
1…バルブ装置、2…バルブ本体、3…エアシリンダ、4…ジョイントロッド、10…流路部材、11…流路、12…弁室、12a…弁口、13…入口部、14…出口部、15…弁座、16…開口部、17…突起部、20…固定部材、21…第2挿通孔、22…バックプレート収容部、23…クランプ、24…接続空間、25…固定部、26…固定用開口部、27…第4挿通孔、28…固定ネジ、30…弁体、31…弁体部、32…弁軸部、33…当接部、34…取付部、35…段差部、40…ダイアフラム、41…第1挿通孔、42…バックプレート、43…第3挿通孔、43a…第3挿通孔、43b…第3挿通孔、50…シリンダ、51、100…シリンダ本体、51a…第2水平面、51b…第2テーパ面、51c…延設部、52…キャップ、52a…第1部分、52A…第1キャップ、52b…第2部分、52B…第2キャップ、52c…第3部分、52d…ネジ孔、52e…小径部、52f…大径部、53、110…リング、53a…第1水平面、53b…第1テーパ面、53c…突起部、54…シリンダ室、55…第5挿通孔、56…貫通孔、57…接続部、58…接着剤、60…ピストン、61…固定孔、62…固定部、63…バネ受け部、64…凹部、65…保持部、66…Oリング、67…第1バネ、68…第2バネ、70…シリンダロッド、102…第2係合部、111…第1係合部、121…第1テーパ面、122…第2テーパ面、123…第3テーパ面、124…第4テーパ面
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