(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173854
(43)【公開日】2024-12-13
(54)【発明の名称】波長可変レーザ
(51)【国際特許分類】
H01S 5/14 20060101AFI20241205BHJP
H01S 5/026 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
H01S5/14
H01S5/026 610
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090489
(22)【出願日】2023-05-31
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)Beyond 5G研究開発促進事業 委託研究 令和4年度、国立研究開発法人情報通信研究機構「研究開発課題名:Beyond 5G 超高速・大容量ネットワークを実現する小型低電力波長変換・フォーマット変換技術の研究開発 研究開発項目1 小型波長変換・フォーマット変換用低電力デジタル信号処理技術の研究開発 研究開発項目2 小型波長変換・フォーマット変換用フロントエンド技術の研究開発 副題:大容量光ネットワークの利用効率向上に向けた小型低電力波長変換・フォーマット変換技術の研究開発」産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】高橋 森生
【テーマコード(参考)】
5F173
【Fターム(参考)】
5F173AB33
5F173AB45
5F173AD30
5F173AR06
5F173AR14
5F173MF12
5F173MF27
(57)【要約】
【課題】レーザ用半導体光増幅器に光増幅用導波路を結合するために光路を分岐する光学素子を備える波長可変レーザを提供する。
【解決手段】半導体で光を増幅する第1の光増幅用導波路の両端が無反射終端端面である同一の素子端面にあるように配置された半導体光増幅素子と、素子端面で第1の光増幅用導波路の両端と接続する2つの光導波路素子と、第1の2×2分岐部と、を備え、2つの光導波路素子は、第1の2×2分岐部の一方の片側2ポートと接続する、波長可変レーザを提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体で光を増幅する第1の光増幅用導波路の両端が無反射終端端面である同一の素子端面にあるように配置された半導体光増幅素子と、
前記素子端面で前記第1の光増幅用導波路の両端と接続する2つの光導波路素子と、
第1の2×2分岐部と、を備え、
前記2つの光導波路素子は、前記第1の2×2分岐部の一方の片側2ポートと接続する、波長可変レーザ。
【請求項2】
前記第1の2×2分岐部の他方の片側2ポートの一方は、反射型波長可変フィルタと接続される、請求項1に記載の波長可変レーザ。
【請求項3】
前記第1の2×2分岐部の他方の片側2ポートの他方は、第2の光増幅用導波路の一端と接続されている、請求項1に記載の波長可変レーザ。
【請求項4】
前記第1の光増幅用導波路は、レーザ用半導体光増幅器であり、
前記第2の光増幅用導波路は、光出力用半導体光増幅器である、請求項3に記載の波長可変レーザ。
【請求項5】
前記第1の光増幅用導波路は、前記第2の光増幅用導波路と同一の半導体チップに形成されている、請求項3に記載の波長可変レーザ。
【請求項6】
前記第2の光増幅用導波路の他端は、前記半導体チップの無反射終端端面と接続される、請求項5に記載の波長可変レーザ。
【請求項7】
前記第1の2×2分岐部は、50%で分岐しない、請求項1に記載の波長可変レーザ。
【請求項8】
前記第1の2×2分岐部は、方向性結合器である、請求項1に記載の波長可変レーザ。
【請求項9】
前記半導体チップは、第3の光増幅用導波路と、第4の光増幅用導波路と、を備え、
前記第3の光増幅用導波路は、両端が第2の2×2分岐部の一方の片側2ポートと接続され、
前記第4の光増幅用導波路の一端は、前記第2の2×2分岐部の他方の片側2ポートの他方と接続されている、請求項5に記載の波長可変レーザ。
【請求項10】
前記第2の2×2分岐部の他方の片側2ポートの一方は、反射型波長可変フィルタと接続される、請求項9に記載の波長可変レーザ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は波長可変レーザに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体チップ上に形成された導波路型の波長可変レーザが開発されている。特許文献1は、レーザが出力される第1反射部と、第1反射部とともにレーザ共振器を構成する第2反射部と、第1反射部と第2反射部との間に設けられた利得部と、を備える導波路型の波長可変レーザが開示されている。波長可変レーザは、第1反射部と第2反射部との間で、光路が実質的に180度の角度で折り返しをするように導波路が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記波長可変レーザの光出力強度をさらに強めるため、あるいは光出力強度を所望の値に調整するために、上記波長可変レーザをさらなる光増幅用導波路と接続することは開示されていない。したがって、本開示の目的は、導波路型波長可変レーザに光増幅用導波路を結合するために光路を分岐する光学素子を備える波長可変レーザを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の波長可変レーザは、
半導体で光を増幅する第1の光増幅用導波路の両端が無反射終端面である同一の素子端面にあるように配置された半導体光増幅素子と、
前記素子端面で前記第1の光増幅用導波路の両端と接続する2つの光導波路素子と、を備え、
前記2つの光導波路素子は、第1の2×2分岐の一方の片側2ポートと接続する、波長可変レーザである。
【発明の効果】
【0006】
本開示により、レーザ用半導体光増幅器に光増幅用導波路を結合するために光路を分岐する光学素子を備える波長可変レーザが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施の形態1にかかる波長可変レーザの構成を示すブロック図である。
【
図2】実施の形態1にかかる波長可変レーザの構成を示す概略図である。
【
図3】実施の形態2にかかる波長可変レーザの構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
実施の形態
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。しかしながら、特許請求の範囲にかかる発明を以下の実施の形態に限定するものではない。また、実施の形態で説明する構成の全てが課題を解決するための手段として必須であるとは限らない。説明の明確化のため、以下の記載及び図面は、適宜、省略、及び簡略化がなされている。各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。
【0009】
(実施の形態1にかかる波長可変レーザの説明)
図1は、実施の形態1にかかる波長可変レーザの構成を示すブロック図である。
図2は、実施の形態1にかかる波長可変レーザの構成を示す概略図である。
図1及び2を参照しながら、実施の形態1にかかる波長可変レーザを説明する。波長可変レーザ100は、波長を変えることができる半導体レーザである。
【0010】
図1及び2に示されるように、波長可変レーザ100は、第1の光増幅用導波路101を備える半導体光増幅素子と、2つの光導波路素子102と、第1の2×2分岐部103と、を備える。
図2に示されるように、波長可変レーザ100は、さらに反射型波長可変フィルタ104と、第2の光増幅用導波路105とを備える。
【0011】
第1の光増幅用導波路101は、半導体チップ106に形成された、レーザ光を発振するためのレーザ用半導体光増幅器である。レーザ光は、例えば波長が1500nm程度の赤外光である。第1の光増幅用導波路101は、U字型をして両端が半導体チップ106の同一の素子端面にあるように配置される。素子端面は、無反射終端端面(AR(Anti-Reflection))である。
【0012】
2つの光導波路素子102は、素子端面で第1の光増幅用導波路101の両端と接続される。2つの光導波路素子102は、第1の光増幅用導波路101に入射するまたは第1の光増幅用導波路101から出射するレーザ光を通す。
【0013】
第1の2×2分岐部103は、片側2ポートが両端に配置された分岐部である。第1の2×2分岐部103の一方の片側2ポートは、2つの光導波路素子102と接続される。
【0014】
このような構成により、レーザ用半導体光増幅器に光増幅用導波路を結合するために光路を分岐する光学素子を備える波長可変レーザが提供される。また、レーザ用半導体光増幅器がU字型に結合されているので、構成上の過剰な光損失なくレーザ光を増幅できる。
【0015】
さらに、第1の2×2分岐部103の他方の片側2ポートの一方は、反射型波長可変フィルタ104と接続される。反射型波長可変フィルタ104は、入射してきたレーザ光の波長を選択して反射する。したがって、U字型の第1の光増幅用導波路101と反射型波長可変フィルタ104の間をレーザ光が往復し、増幅される。
【0016】
このとき、第1の2×2分岐部103は、50%で分岐しない。50%で分岐すると、レーザ共振器内部の全部の光が反射型波長可変フィルタ104に入射してしまうため、レーザ光をレーザ共振器外部に取り出せないからである。したがって、この第1の2×2分岐部103は、分岐比を50%以外に調整できる方向性結合器であることが好ましい。
【0017】
第1の2×2分岐部103の他方の片側2ポートの他方は、第2の光増幅用導波路105と接続される。第2の光増幅用導波路105は、半導体を用いてレーザ光を増幅する光出力用半導体光増幅器である。第2の光増幅用導波路105の両端は、無反射終端端面が形成される。そのため、第2の光増幅用導波路105の一方から入射したレーザ光は、第2の光増幅用導波路105で増幅されて第2の光増幅用導波路105の他方から出射される。
【0018】
半導体チップ106は、例えばInPなどの半導体材料を基板として、GaAsおよび所望の不純物(AlやPなど)などを用いて形成された、電流注入により光利得を発現する光増幅用導波路などで構成される。第2の光増幅用導波路105は、第1の光増幅用導波路101と同一の半導体チップ106に形成される。第2の光増幅用導波路105が第1の光増幅用導波路101と同一の半導体チップ106に形成されることで、波長可変レーザを小型化することができる。また、第2の光増幅用導波路105が第1の光増幅用導波路101と同一の半導体チップ106に形成されることで、同一の波長の光の増幅を効率よく行える。
【0019】
(実施の形態2にかかる波長可変レーザの説明)
図3は、実施の形態2にかかる波長可変レーザの構成を示す概略図である。
図3を参照しながら、実施の形態2にかかる波長可変レーザを説明する。
【0020】
図3に示されるように、波長可変レーザ300は、第1の光増幅用導波路301を備える半導体光増幅素子と、2つの光導波路素子302と、第1の2×2分岐部303と、を備える。波長可変レーザ300は、さらに反射型波長可変フィルタ304と、第2の光増幅用導波路305とを備える。
【0021】
波長可変レーザ300は、さらに第3の光増幅用導波路306を備える半導体光増幅素子と、2つの光導波路素子307と、第2の2×2分岐部308と、を備える。波長可変レーザ300は、さらに反射型波長可変フィルタ309と、第4の光増幅用導波路310とを備える。
【0022】
波長可変レーザ300の第1の光増幅用導波路301、2つの光導波路素子302と、第1の2×2分岐部303は、それぞれ波長可変レーザ100の第1の光増幅用導波路101、2つの光導波路素子102と、第1の2×2分岐部103と同じ光学素子である。また、波長可変レーザ300の反射型波長可変フィルタ304と第2の光増幅用導波路305は、波長可変レーザ100の反射型波長可変フィルタ104と、第2の光増幅用導波路105と同じである。したがって、説明を省略する。
【0023】
第3の光増幅用導波路306は、第1の光増幅用導波路101と同じレーザ用半導体光増幅器である。また、第2の2×2分岐部308は、第1の2×2分岐部103と同じ分岐部である。第2の2×2分岐部308は、50%で分岐しない。第2の2×2分岐部308は、分岐比を50%以外に調整できる方向性結合器であることが好ましい。第3の光増幅用導波路306の両端は、第2の2×2分岐部308の一方の片側2ポートと2つの光導波路素子307を介して接続される。
【0024】
第4の光増幅用導波路310は、第2の光増幅用導波路105と同じ光出力用半導体光増幅器である。したがって、第4の光増幅用導波路310の一端は、第2の2×2分岐部308の他方の片側2ポートの他方と接続される。また、第4の光増幅用導波路310の他端は、無反射終端端面と接続される。そのため、第4の光増幅用導波路310の一端から入射されたレーザ光は、第4の光増幅用導波路310で増幅され、第4の光増幅用導波路310の他端から出射される。
【0025】
反射型波長可変フィルタ309は、反射型波長可変フィルタ104と同じ反射型波長可変フィルタである。したがって、第2の2×2分岐部の他方の片側2ポートの一方は、反射型波長可変フィルタ309と接続される。
【0026】
第3の光増幅用導波路306及び第4の光増幅用導波路310は、第1の光増幅用導波路301及び第2の光増幅用導波路305と同一の半導体チップ311に形成される。このような構成により、マルチチャネルの波長可変レーザ300を同一の半導体チップ311に形成できる。そのため波長可変レーザ300を小型化できる。
【0027】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、実施の形態2を構成する光学素子の接続が、実施の形態1を構成する光学素子の接続と同じであれば、本開示の範囲にあるものとする。
【0028】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のように記載されうるが、以下には限られない。
(付記1)
半導体で光を増幅する第1の光増幅用導波路の両端が無反射終端端面である同一の素子端面にあるように配置された半導体光増幅素子と、
前記素子端面で前記第1の光増幅用導波路の両端と接続する2つの光導波路素子と、
第1の2×2分岐部と、を備え、
前記2つの光導波路素子は、前記第1の2×2分岐部の一方の片側2ポートと接続する、波長可変レーザ。
(付記2)
前記第1の2×2分岐部の他方の片側2ポートの一方は、反射型波長可変フィルタと接続される、付記1に記載の波長可変レーザ。
(付記3)
前記第1の2×2分岐部の他方の片側2ポートの他方は、第2の光増幅用導波路の一端と接続されている、付記1に記載の波長可変レーザ。
(付記4)
前記第1の光増幅用導波路は、レーザ用半導体光増幅器であり、
前記第2の光増幅用導波路は、光出力用半導体光増幅器である、付記3に記載の波長可変レーザ。
(付記5)
前記第1の光増幅用導波路は、前記第2の光増幅用導波路と同一の半導体チップに形成されている、付記3に記載の波長可変レーザ。
(付記6)
前記第2の光増幅用導波路の他端は、前記半導体チップの無反射終端端面と接続される、付記5に記載の波長可変レーザ。
(付記7)
前記第1の2×2分岐部は、50%で分岐しない、付記1に記載の波長可変レーザ。
(付記8)
前記第1の2×2分岐部は、方向性結合器である、付記1に記載の波長可変レーザ。
(付記9)
前記半導体チップは、第3の光増幅用導波路と、第4の光増幅用導波路と、を備え、
前記第3の光増幅用導波路は、両端が第2の2×2分岐部の一方の片側2ポートと接続され、
前記第4の光増幅用導波路の一端は、前記第2の2×2分岐部の他方の片側2ポートの他方と接続されている、付記5に記載の波長可変レーザ。
(付記10)
前記第2の2×2分岐部の他方の片側2ポートの一方は、反射型波長可変フィルタと接続される、付記9に記載の波長可変レーザ。
(付記11)
前記第3の光増幅用導波路は、レーザ用半導体光増幅器であり、
前記第4の光増幅用導波路は、光出力用半導体光増幅器である、付記9に記載の波長可変レーザ。
(付記12)
前記第3の光増幅用導波路の他端は、前記半導体チップの前記無反射終端端面と接続される、付記9に記載の波長可変レーザ。
(付記13)
前記第2の2×2分岐部は、50%で分岐しない、付記9に記載の波長可変レーザ。
(付記14)
前記第2の2×2分岐部は、方向性結合器である、付記9に記載の波長可変レーザ。
【符号の説明】
【0029】
100 波長可変レーザ、101 第1の光増幅用導波路、102 2つの光導波路素子、103 第1の2×2分岐部、104 反射型波長可変フィルタ、105 第2の光増幅用導波路、300 波長可変レーザ、301 第1の光増幅用導波路、302 2つの光導波路素子、303 第1の2×2分岐部、304 反射型波長可変フィルタ、305 第2の光増幅用導波路、306 第3の光増幅用導波路、307 2つの光導波路素子、308 第2の2×2分岐部、309 反射型波長可変フィルタ、310 第4の光増幅用導波路