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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173913
(43)【公開日】2024-12-13
(54)【発明の名称】椅子
(51)【国際特許分類】
   A47C 27/12 20060101AFI20241205BHJP
   A47C 7/02 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
A47C27/12 E
A47C7/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023091944
(22)【出願日】2023-06-02
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 1.展示日 2022年11月7日-30日 展示会名、開催場所 オカムラグランドフェア2023 オカムラガーデンコートショールーム(東京都千代田区紀尾井町4-1ホテルニューオータニ ガーデンコート3階) 公開者 株式会社オカムラ 2.展示日 2022年11月29日-12月2日 展示会名、開催場所 オカムラフェアin大阪 オカムラ大阪ショールーム(大阪府大阪市北区大深町4-20グランフロント大阪) 公開者 株式会社オカムラ 3.展示日 2022年12月13日 展示会名、開催場所 オカムラフェアin仙台 オカムラ仙台ショールーム(宮城県仙台市青葉区花京院1-1-20花京院スクエア12階) 公開者 株式会社オカムラ 4.展示日 2022年12月14日-15日 展示会名、開催場所 オカムラフェアin福岡 株式会社オカムラ福岡ショールーム(福岡県福岡市博多区博多駅前1-3-3明治安田渡部ビル1階) 公開者 株式会社オカムラ 5.展示日 2023年4月26日-28日 展示会名、開催場所 オルガテック東京2023 東京ビッグサイト(東京都江東区有明3丁目11-1) 公開者 株式会社オカムラ 6.ウェブサイトの掲載日 令和4年11月 7日 ウェブサイトのアドレス https://www.okamura.co.jp/corporate/news/product/2022/contessa_20th.html 7.ウェブサイトの掲載日 令和4年11月 7日 ウェブサイトのアドレス https://www.okamura.co.jp/solutions/office/heartbeatoffice2023/newproducts/
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 8.ウェブサイトの掲載日 令和4年11月 7日 ウェブサイトのアドレス https://product.okamura.co.jp/ext/DispCate.do?volumeName=00001&lv0=%E3%83%81%E3%82%A7%E3%82%A2%EF%BC%8F%E3%82%BD%E3%83%95%E3%82%A1&lv2=%E3%82%BF%E3%82%B9%E3%82%AF%E3%83%81%E3%82%A7%E3%82%A2&lv3=%E3%82%B3%E3%83%B3%E3%83%86%E3%83%83%E3%82%B5+%E3%82%BB%E3%82%B3%E3%83%B3%E3%83%80 9.ウェブサイトの掲載日 令和4年11月 7日 ウェブサイトのアドレス https://www.okamura.co.jp/corporate/sustainability/greenwave/product/ 10.ウェブサイトの掲載日 令和4年11月 7日 ウェブサイトのアドレス https://www.okamura.co.jp/product/seating/contessa20th/sp/ 11.ウェブサイトの掲載日 令和4年11月 7日 ウェブサイトのアドレス https://gmd.okamura.jp/iportal/CatalogViewInterfaceStartUpAction.do?method=startUp&mode=PAGE&volumeID=OKM05&catalogId=27936770000&pageGroupId=166&catalogCategoryId=&designConfirmFlg= 12.ウェブサイトの掲載日 令和4年11月 7日 ウェブサイトのアドレス https://www.okamura.co.jp/product/seating/contessa20th/sp/en.html 13.ウェブサイトの掲載日 令和4年11月 7日 ウェブサイトのアドレス https://www.okamura.com.vn/ghe-dieu-hanh-contessa-ii-circular
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 14.ウェブサイトの掲載日 令和4年11月 7日 ウェブサイトのアドレス https://www.okamura.com.vn/vi/ghe-dieu-hanh-contessa-ii-circular 15.ウェブサイトの掲載日 令和4年11月 7日 ウェブサイトのアドレス https://siamokamura.com/product/contessa-ii/ 16.ウェブサイトの掲載日 令和5年3月28日 ウェブサイトのアドレス https://mailchi.mp/4794478177f6/20contessa-monthly-magazine?e=393b61cf21 17.ウェブサイトの掲載日 令和5年5月22日 ウェブサイトのアドレス https://www.okamura.com/zh_ap/etc/design-shanghai-2023/ 18.ウェブサイトの掲載日 令和4年11月 7日 ウェブサイトのアドレス https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000026.000103401.html 19.ウェブサイトの掲載日 令和4年11月 7日 ウェブサイトのアドレス https://www.watch.impress.co.jp/docs/news/1496844.html 20.ウェブサイトの掲載日 令和4年11月12日 ウェブサイトのアドレス https://kagunews.co.jp/page/detail/4977 21.ウェブサイトの掲載日 令和4年12月12日 ウェブサイトのアドレス https://www.kensetsunews.com/web-kan/769202 22.ウェブサイトの掲載日 令和5年 2月23日 ウェブサイトのアドレス https://project.nikkeibp.co.jp/ESG/atcl/column/00006/021000241/ 23.ウェブサイトの掲載日 令和5年 3月29日 ウェブサイトのアドレス https://www.youtube.com/watch?v=Szl9PqnuhMw
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 24.ウェブサイトの掲載日 令和5年 4月17日 ウェブサイトのアドレス https://circular.yokohama/2023/04/17/okamura-circular-design/ 25.発行日 令和4年11月28日 刊行物 近代家具11月号 26.発行日 令和5年2月8日 刊行物 日経ESG 2023年3月号
(71)【出願人】
【識別番号】000000561
【氏名又は名称】株式会社オカムラ
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(72)【発明者】
【氏名】宮坂 望
【テーマコード(参考)】
3B096
【Fターム(参考)】
3B096AB07
3B096AD04
(57)【要約】
【課題】水平リサイクル可能かつ座り心地のよい椅子を提供する。
【解決手段】椅子は、背凭れ、座および脚を備えた椅子である。座は、熱可塑性樹脂からなる網状構造体により形成されて厚みを持つクッション31と、クッション31を支持する座板と、クッションを覆う外被と、を有する。クッション31の上面31bは、第1の硬度を有し、着座者の臀部を支持する第1箇所P1と、平面視で第1箇所P1の外側に位置し、第1の硬度よりも高い第2の硬度を有する第2箇所P2と、平面視で第2箇所P2の外側に位置し、第2の硬度よりも高い第3の硬度を有する第3箇所P3と、を有する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
背凭れ、座および脚を備えた椅子において、
前記座は、
熱可塑性樹脂からなる網状構造体により形成されたクッションと、
前記クッションを支持する座板と、
前記クッションを覆う外被と、
を有し、
前記クッションの上面は、
第1の硬度を有し、着座者の臀部を支持する第1箇所と、
平面視で前記第1箇所の外側に位置し、前記第1の硬度よりも高い第2の硬度を有する第2箇所と、
平面視で前記第2箇所の外側に位置し、前記第2の硬度よりも高い第3の硬度を有する第3箇所と、
を有する、
椅子。
【請求項2】
前記クッションは、前記第1箇所の前方に位置し、前記第1の硬度以下の硬度を有する前方箇所をさらに有する
請求項1に記載の椅子。
【請求項3】
前記クッションの前記上面における硬度の分布は、上下方向から見て前記クッションの下面における硬度の分布と一致している、
請求項1または請求項2に記載の椅子。
【請求項4】
前記クッションは、
前記第1箇所を含むとともに、前記上面における左右方向の中心上に間隔を有する一対の第1領域と、
前記一対の第1領域の間に位置し、前記上面における左右方向の中央部を含む中央領域と、
を有し、
前記中央領域の硬度は、前記第1の硬度よりも高い、
請求項1または請求項2に記載の椅子。
【請求項5】
前記クッションは、前記座板の外側縁に沿って配置され、前記外側縁に係合する凸部を有する、
請求項1または請求項2に記載の椅子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、椅子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、硬度が座の位置に応じて変化した椅子がある(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、座り心地のよい椅子として、硬質部と、身体より荷重を受ける受圧領域の少なくとも一部に設けられる前記硬質部より軟らかい軟質部とを具備するクッション材を座に用いた椅子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-289999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで近年では、事務用椅子において資源を半永久的に使用する水平リサイクル可能な部材を用いて製造されることが望まれている。しかしながら、上記従来の椅子では熱硬化性樹脂である発泡ウレタンをクッション材の原料としている。このため、従来の椅子は、クッション材の廃棄物をチップウレタンに加工して用途の限定された材料としてリサイクルしたり、燃料としてサーマルリサイクルしたりすることが可能な一方で、リサイクル前と同一の製品として水平リサイクルすることができない。したがって、従来の椅子では、廃棄物を水平リサイクル原料として再利用するが困難である。
【0005】
そこで本発明は、水平リサイクル可能かつ座り心地のよい椅子を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様に係る椅子は、背凭れ、座および脚を備えた椅子において、前記座は、熱可塑性樹脂からなる網状構造体により形成されたクッションと、前記クッションを支持する座板と、前記クッションを覆う外被と、を有し、前記クッションの上面は、第1の硬度を有し、着座者の臀部を支持する第1箇所と、平面視で前記第1箇所の外側に位置し、前記第1の硬度よりも高い第2の硬度を有する第2箇所と、平面視で前記第2箇所の外側に位置し、前記第2の硬度よりも高い第3の硬度を有する第3箇所と、を有する。
【0007】
第1の態様によれば、着座者の臀部は、平面視で内側に向かうに従い座に深く沈み込み、包み込まれるような状態になる。この状態で、着座者の臀部においてクッションへの沈み込みが浅い部分ほどクッションの硬度が高い箇所に支持される。よって、着座時には臀部が外側にずれにくく、安定的な状態で着座することになる。したがって、座り心地のよい椅子が得られる。
さらに、クッションが熱可塑性樹脂からなる網状構造体により形成されているので、クッションが発泡ウレタンにより形成された場合と異なり、クッションの廃棄物を水平リサイクル原料として再利用することができる。
以上により、水平リサイクル可能かつ座り心地のよい椅子を提供できる。
また、クッションが網状構造体により形成されたことで通気性を容易に確保できるとともに、樹脂製であることも相まって洗浄のしやすさも確保できる。
【0008】
本発明の第2の態様に係る椅子は、上記第1の態様に係る椅子において、前記クッションは、前記第1箇所の前方に位置し、前記第1の硬度以下の硬度を有する前方箇所をさらに有していていもよい。
【0009】
第2の態様によれば、着座者の大腿部が当たる前方箇所が第1の硬度以下の硬度に設定されるので、着座者の大腿部にクッションにおける硬度の低い部分が当接することになる。したがって、大腿部への圧迫感が軽減される。よって、座り心地をより一層向上させることができる。
【0010】
本発明の第3の態様に係る椅子は、上記第1の態様または第2の態様に係る椅子において、前記クッションの前記上面における硬度の分布は、上下方向から見て前記クッションの下面における硬度の分布と一致していてもよい。
【0011】
第3の態様によれば、クッションの硬度を発現させる構造がクッションを上下方向に貫通するように設けられる。仮に硬度の分布がクッションの上面を基準とした深さ位置に応じて変化すると、臀部が沈み込んだ際に着座者の臀部が当たる面積の大きさに応じて座り心地が変化し得る。したがって、第3の態様によれば、着座者の体型や体重などによらず一定の座り心地が得られる。
【0012】
本発明の第4の態様に係る椅子は、上記第1の態様から第3の態様のいずれかの態様に係る椅子において、前記クッションは、前記第1箇所を含むとともに、前記上面における左右方向の中心上に間隔を有する一対の第1領域と、前記一対の第1領域の間に位置し、前記上面における左右方向の中央部を含む中央領域と、を有し、前記中央領域の硬度は、前記第1の硬度よりも高くてもよい。
【0013】
第4の態様によれば、第1の硬度を有する第1領域により臀部が沈み込む座り心地を得つつ、第1の硬度よりも高い第4の硬度を有する中央領域により臀部をより一層ずれにくく保持できる。したがって、座り心地をより一層向上させることができる。また、クッションの左右方向の中央部が第1の硬度を有する構成と比較して、クッションのへたりを抑制することができる。
【0014】
本発明の第5の態様に係る椅子は、上記第1の態様から第4の態様のいずれかの態様に係る椅子において、前記クッションは、前記座板の外側縁に沿って配置され、前記外側縁に係合する凸部を有していてもよい。
【0015】
第5の態様によれば、凸部が座板の外側縁に係合し、座板に対してクッションをずれにくくすることができる。したがって、座板にクッションを安定して支持させることができる。
また、外被と座板の外側縁との間に凸部を介在させることで、外被が凸部を挟んで座板の外側縁に張力を有した状態で当接するので、座板の外側縁が角張った形状である場合でも、外被を破損しにくくすることができる。
さらに、凸部に指を掛けることができ、作業者がクッションを把持する際の手掛かりにしやすくなる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、水平リサイクル可能かつ座り心地のよい椅子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第1実施形態に係る椅子を側方から見た斜視図である。
図2】第1実施形態に係る椅子を後方(背凭れ側)から見た斜視図である。
図3】第1実施形態に係る座の左右方向の中心位置における左右方向に直交する断面を示す図である。
図4】第1実施形態に係る座の拡大断面図であって、図3のIV部を示す。
図5】網状構造体の構造を示す図である。
図6】第1実施形態に係るクッションの上面における硬度の分布を示す図である。
図7図3に示すクッションの断面において網状構造体の構造毎の分布を示す図である。
図8】第1実施形態の第1変形例に係るクッションの上面における硬度の分布を示す図である。
図9】第1実施形態の第2変形例に係るクッションの上面における硬度の分布を示す図である。
図10】第1実施形態の第3変形例に係るクッションの上面における硬度の分布を示す図である。
図11】第2実施形態に係る椅子を前方から見た斜視図である。
図12】第2実施形態に係るクッションの上面における硬度の分布を示す図である。
図13】第2実施形態の変形例に係るクッションの上面における硬度の分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお以下の説明では、同一または類似の機能を有する構成に同一の符号を付す。そして、それら構成の重複する説明は省略する場合がある。また、以下の説明において、前後上下左右等の向きは、椅子に正規姿勢で着座した人(着座者)の向きと同一とする。すなわち、着座者が前を向く方向を「前方」と称し、その反対方向を「後方」と称する。さらに、各図中において、矢印UPは上方、矢印FRは前方、矢印LHは左方をそれぞれ示している。
【0019】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係る椅子1を側方から見た斜視図である。図2は、第1実施形態に係る椅子1を後方(背凭れ側)から見た斜視図である。
図1および図2に示すように、第1実施形態の椅子1は、床面F上に設置される脚2と、脚2の上部に設置されるボックス状の支基3と、支基3の上部に取り付けられた座受部材4と、座受部材4の上部に前後方向に位置調整可能に支持された座6と、支基3の左右両側部に枢支されて支基3内の不図示のリクライニング機構により傾動し得る側面視略L字状の背凭れ支持体7と、背凭れ支持体7の上部の前面側に取り付けられた背凭れ本体8と、背凭れ支持体7の下部の前縁に取り付けられ、着座者の肘先が載せ置かれる左右一対の肘掛け10と、を備えている。背凭れ支持体7と背凭れ本体8とは、着座者の背部の荷重を支持する背凭れ9を構成している。
【0020】
脚2は、床面Fに接する接地部を有する。脚2は、接地部から座6に向けて延び、着座荷重を座6から床面Fに逃がす。脚2は、キャスタ21A付きの多岐脚21と、多岐脚21の中央部より起立し昇降機構であるガススプリング(不図示)を内蔵する脚柱22と、を有している。
【0021】
脚柱22は、外筒23および内筒24を備える。外筒23は、脚柱22の下部を構成する。外筒23は、多岐脚21に回転不能に嵌合して支持されている。内筒24は、脚柱22の上部を構成する。内筒24の上端部は、支基3を固定して支持する。内筒24の下部は、外筒23に水平方向で回転可能に支持されている。
【0022】
支基3には、脚柱22の昇降調整機構、および背凭れ9のリクライニング機構が内蔵されている。
【0023】
座受部材4は、支基3の上部に揺動可能に連結されている。座受部材4は、背凭れ支持体7の傾動動作に連動して前後方向に変位するようになっている。座受部材4は、左右一対の側部フレーム部26を有している。左右の側部フレーム部26は、相互に平行になるように配置されている。左右の各側部フレーム部26の上部には、座6を前後方向に摺動自在に支持するため案内レールが突設されている。本実施形態において、脚2、支基3および座受部材4は、座6を下方から支持する支持構造体5を構成している。
【0024】
座6は、着座者の臀部から大腿部にわたる部分を支持する。座6は、着座荷重を受け止める硬質樹脂製の座板30(図3参照)と、座板30の下面における左右方向に離間した位置に設けられた一対のフレーム受部34と、を有している。座板30は、その平面視形状が座6の平面視形状と略一致するように、円形状または矩形状の平面視形状に形成されている。左右の各フレーム受部34は、座受部材4の左右の側部フレーム部26と対応する位置に設けられ、前後方向に沿って延出している。フレーム受部34は、側部フレーム部26の案内レールよりも前後方向に長尺に形成されている。左右のフレーム受部34は、座板30と一体部品として構成されている。ただし、フレーム受部34は座板30と別体部品として形成して、座板30に固定手段によって固定するようにしても良い。座6の詳細については後述する。
【0025】
背凭れ支持体7の主要部は、アルミニウム合金等の金属材料により形成されている。背凭れ支持体7は、左右方向に離間して配置された左右一対の主フレーム72と、左右方向に延出して主フレーム72の上端部同士を連結する連結フレーム73と、を備えている。左右の主フレーム72は、側面視が略L字状に形成されており、座6の後部下方位置から上方に起立する起立部72aと、起立部72aの下端から湾曲しつつ前方に延びる前向き腕部72bと、を有している。前向き腕部72bの前端部は、前述のように支基3に設けられたリクライニング機構の軸に結合されている。また、左右の主フレーム72の起立部72aは、上方に向かうにつれて両者の離間幅が次第に広がるように左右方向外側に傾斜している。
【0026】
背凭れ本体8は、着座者の背部を支持する。背凭れ本体8は、樹脂製の背凭れ枠75と、背凭れ枠75に張設されて着座者の背中からの入力荷重を直接受ける張材76と、を有している。背凭れ枠75は、左右の枠辺75sの離間幅が下方に向かって次第に窄まり、かつ、左右の枠辺75sの上端部同士が左右方向に延出する上部側の枠辺75uによって連結される逆三角形状の正面視形状に形成されている。背凭れ枠75の左右の各枠辺75sには、上部寄り領域から後方側に向かって突出する上部連結アーム77と、下部寄り領域から後方側に向かって突出する下部連結アーム78と、が延設されている。上部連結アーム77は、背凭れ支持体7の左右の対応する主フレーム72の起立部72aのうちの上部領域に連結され、下部連結アーム78は、背凭れ支持体7の左右の対応する主フレーム72の起立部72aのうちの下部領域に連結されている。
【0027】
座6について、主に図3および図4を参照して詳述する。図3は、第1実施形態に係る座6の左右方向の中心位置における左右方向に直交する断面を示す図である。図4は、第1実施形態に係る座6の拡大断面図であって、図3のIV部を示す。なお図3では、中綿33および外被32の図示を省略している。
座板30は、外周部に設けられた係止爪30aを有する。係止爪30aは、座板30の底面に設けられている。係止爪30aは、座板30の外側縁30b側に突出している。例えば、係止爪30aは、座板30の外側縁30bに沿って間隔をあけて複数設けられている。
【0028】
座6は、上記の座板30に加えて、座板30の上方に配置されたクッション31と、クッション31を覆う外被32と、クッション31と外被32との間に介在する中綿33と、をさらに備える。
【0029】
クッション31は、座板30の上面に沿って配置され、座板30に支持されている。クッション31は、上下方向に厚みを持ち、着座面である上面31bと、座板30の上面に対向する下面31cとを有する。クッション31の全体は、一体に形成されている。クッション31は、熱可塑性樹脂からなる網状構造体により形成されている(図5参照)。熱可塑性樹脂としては、ポリエチレンを原料とした単一素材が適用される。網状構造体は、複数の繊維(または糸状樹脂)が絡み合うことで、所望の形状を有する単一の部材に成形されたものである。例えば、複数の繊維は、互いに溶融により結合するように絡み合っている。クッション31は、網状構造体の繊維同士の間に空隙を有しており、その空隙が縮小するように網状構造体の繊維が弾性変形することで、クッション性を発現させている。クッション31は、硬度の分布を持つ。例えば、クッション31の硬度は、網状構造体の繊維の密度に応じて変化する。ただし、クッション31の硬度は、網状構造体の繊維の太さに応じて変化してもよい。
【0030】
クッション31は、上方から見て座板30の全体に重なるように配置されている。クッション31は、下方に突出した凸部31aを有する。凸部31aは、クッション31の底部の外周部に設けられている。クッション31のうち平面視で座板30よりも外側に張り出した位置に設けられている。凸部31aは、クッション31の全周にわたって設けられている。ただし、凸部31aは、クッション31の外周部の一部のみに設けられていてもよい。凸部31aは、座板30の外側縁30bに沿って配置されている。凸部31aは、クッション31が座板30に対してその上面に沿った変位を規制されるように、座板30の外側縁30bに係合する。
【0031】
中綿33は、クッション31を覆うように設けられている。中綿33は、クッション31を直接覆う。中綿33は、クッション31に非接合とされているが、縫合やタッキング等の除去可能な接合手段により、クッション31に接合されていてもよい。中綿33は、不織布により形成されている。中綿33は、クッション31を覆うことで、クッション31の外表面の凹凸が座6の外表面に現れることを抑制している。なおクッション31の外表面の凹凸は、網状構造体の繊維および空隙などにより形成されるものである。中綿33を形成する不織布は、クッション31を形成する網状構造体と比較して、繊維同士の隙間が小さいものが使用される。ただし不織布の繊維同士の隙間は中綿33の全体にわたって均一でなくてもよく、網状構造体と比較して、隙間の大きさの最頻値または平均値が小さければよい。
【0032】
中綿33は、クッション31における座板30に覆われていない部分をまとめて覆う。中綿33は、クッション31を覆う前の状態では、平面視でクッション31よりも大きいシート状に形成されている。中綿33は、クッション31の上方からクッション31の側方を通り、クッション31の凸部31aを下方で跨いで座板30の下方に回り込んでいる。中綿33の外周縁部は、座板30の外周部の下方に位置する。中綿33の外周縁部には、袋状の紐材挿通部33aが略全周にわたって設けられている。紐材挿通部33aの内側には、有端の紐材が挿通されている。紐材は、中綿33の外周縁部が平面視で座板30の外形よりも小さくなるように、中綿33の外周縁部を引き締めている。紐材の両端部は、紐材挿通部33aに形成された引出口を通じて外側に引き出されて互いに固定されている。紐材挿通部33aは、座板30の係止爪30aに係止されている。
【0033】
外被32は、座6の外表面のうち上面および側面を一体に形成する。側面は、上下方向に直交する方向を向く面である、外被32は、中綿33の外表面の全体を覆うことにより、クッション31のうち中綿33に覆われた部分を覆っている。外被32は、布材やビニールレザー材、天然レザー材等から形成されている。
【0034】
外被32は、中綿33と同様の形状を有しており、クッション31の上方からクッション31の側方を通り、クッション31の凸部31aを下方で跨いで座板30の下方に回り込んでいる。外被32の外周縁部には、内側に紐材が挿通される袋状の紐材挿通部32aが略全周にわたって設けられている。紐材は、外被32の外周縁部が平面視で座板30の外形、望ましくは中綿33の外周縁部よりも小さくなるように、外被32の外周縁部を引き締めている。紐材の両端部は、紐材挿通部32aに形成された引出口を通じて外側に引き出されて互いに固定されている。紐材挿通部33aは、座板30の係止爪30aに係止されている。なお、外皮32の外周縁部および中綿33の外周縁部は、クッション31の凸部31aを挟んで座板30の外側縁30bに張力を有した状態で当接するので、座板30の外側縁30bが角張った形状である場合でも、破損しにくい。
【0035】
ここで、クッション31の硬度について図6を参照して説明する。図6は、第1実施形態に係るクッション31の上面31bにおける硬度の分布を示す図である。なお、以下の説明におけるクッション31の硬度は、高分子計器株式会社製のゴム硬度計(型番:アスカーゴム硬度計F型)を用いて計測を行った数値である。
【0036】
クッション31の上面31b、および下面31cの硬度の分布について説明する。なお本実施形態においては、クッション31の上面31bの硬度の分布は、左右対称とされており、尚且つ、クッション31の下面31cの硬度分布と高さ方向で一致している。換言すれば、クッション31の上面31bにおいてある硬度に設定された領域の下方に、クッション31の下面31cにおける、同一の硬度の領域が配置されている。なお、以下の説明では、クッション31の上面31bの硬度分布のみ説明する。クッション31の上面31bの各領域を、上面31bの硬度の分布に応じて以下のように定義する。なお本実施形態では、後述する領域は、平面視で前後方向または左右方向に直線状に延びる境界線により互いに区切られている。クッション31の上面31bは、一対の第1領域R1と、第2領域R2と、第3領域R3と、を備える。
【0037】
各第1領域R1は、着座者の臀部を支持する領域である。第1領域R1における全ての箇所は、着座者の臀部から大腿部の後部にわたる範囲内の何れかの部位を支持する。第1領域R1には、着座者の坐骨を支持する箇所が含まれる。つまり、第1領域R1は、クッション31に作用する着座荷重の分布において着座荷重が極大となる最荷重点から前後左右に広がる領域である。第1領域R1は、クッション31の上面31bの外縁よりも内側に位置する。各第1領域R1は、矩形状の平面視形状を有する。一対の第1領域R1は、クッション31の上面31bにおける左右方向の中心上に間隔を有する。各第1領域R1は、クッション31の上面31bにおける前後方向の中心を含む。各領域R1の前後方向の大きさについて、クッション31の上面31bにおける前後方向の中心に対する前方の部分は後方の部分よりも大きい。
【0038】
第2領域R2は、平面視で一対の第1領域R1の外側に隣接する。外側とは、基準となる位置から平面視でクッション31の上面31bの外縁に向かう方向である。つまり、第2領域R2は、第1領域R1から平面視でクッション31の上面31bの外縁に向かう方向にある。第2領域R2は、クッション31の上面31bの外縁よりも内側に位置する。第2領域R2は、一対の第1領域R1をまとめて囲う。図示の例では、第2領域R2は、前方に開放されたU字状の平面視形状を有しており、一対の第1領域R1を後方および左右両側から囲う。第2領域R2において、前後方向に延びる左右両側部の左右方向の大きさは、左右方向に延びる後部の前後方向の大きさよりも小さい。
【0039】
第3領域R3は、着座荷重が直接作用しない領域を含む。第3領域R3は、平面視で第2領域R2の外側に隣接する。つまり、第3領域R3は、第2領域R2から平面視でクッション31の上面31bの外縁に向かう方向にある。第3領域R3は、第2領域R2を挟んで一対の第1領域R1の反対側に位置し、第2領域R2を囲う。図示の例では、第3領域R3は、前方に開放されたU字状の平面視形状を有しており、第2領域R2を後方および左右両側から囲う。第3領域R3は、クッション31の上面31bの外周部を含む。すなわち、第3領域R3は、クッション31の上面31bの外縁の少なくとも一部を含む。図示の例では、第3領域R3は、クッション31の上面31bの左右両側縁を含むとともに、クッション31の上面31bの前縁および後縁それぞれに対して前後方向に間隔をあけている。第3領域R3において、前後方向に延びる左右両側部の左右方向の大きさは、左右方向に延びる後部の前後方向の大きさよりも大きい。
【0040】
一対の第1領域R1、第2領域R2、および第3領域R3の定義は、以下のように換言される。第3領域R3は、クッション31の上面31bの外周部を含む外周領域である。一対の第1領域R1は、第3領域R3の内側にある中央領域である。内側とは、基準となる位置から、平面視でクッション31の上面31bの中心に向かう方向である。一対の第1領域R1は、クッション31の上面31bにおける左右方向の中心を挟んで左右両側にある。第2領域R2は、第3領域R2と第1領域R1との間にある中間領域である。第2領域R2は、第3領域R3の内側に隣接するとともに、第1領域R1の外側に隣接する。
【0041】
第1領域R1、第2領域R2および第3領域R3が左右方向に並ぶ前後方向の位置において、第1領域R1および第3領域R3の左右方向の大きさは、第2領域R2の左右方向の大きさよりも大きい。第1領域R1、第2領域R2および第3領域R3が前後方向に並ぶ左右方向に位置において、第2領域R2の前後方向の大きさは、第1領域R1の前後方向の大きさよりも小さく、第3領域R3の前後方向の大きさよりも大きい。
【0042】
第1領域R1、第2領域R2および第3領域R3の硬度は、以下のように設定される。ここで、第1仮想半直線L1、第1箇所P1、第2箇所P2および第3箇所P3が定義される。第1箇所P1は、第1領域R1における任意の点である。第1仮想半直線L1は、平面視で第1箇所P1から外側に延び、第1領域R1、第2領域R2および第3領域R3を連続して通る。図6では、第1仮想半直線L1の例として、第1箇所P1から左右方向の外側に延びる第1仮想半直線L1を示している。例えば、第1仮想半直線は、第1箇所P1から後方に延びていてもよい。第2箇所P2は、第2領域R2のうち、第1仮想半直線L1上の任意の点である。第3箇所P3は、第3領域R3のうち、第1仮想半直線L1上の任意の点である。つまり、第2箇所P2は第1箇所P1よりも外側に位置し、第3箇所P3は第2箇所P2よりも外側に位置する。第1箇所P1は、第1の硬度を有する。第2箇所P2は、第2の硬度を有する。第2の硬度は、第1の硬度よりも高い。第3箇所P3は、第3の硬度を有する。第3の硬度は、第2の硬度よりも高い。
【0043】
第1領域R1は、全体で均一な硬度を有する。第2領域R2は、全体で均一な硬度を有していてもよいし、硬度の分布を有していてもよい。例えば、第2領域R2における前後方向に延びる左右両側部は、前端から後方に向かうに従い硬度が高くなるように形成されていてもよい。例えば、第2領域R2における左右方向に延びる後部は、左右方向の中心から左右方向の外側に向かうに従い硬度が高くなるように形成されていてもよい。これらの場合、第2領域R2は、互いに硬度が相違する複数の小領域を備えていてもよいし、硬度が連続して変化するように形成されていてもよい。本実施形態では、第2領域R2における全ての箇所の硬度は、第1領域R1の硬度よりも高い。第3領域R3も第2領域R2と同様である。
【0044】
第1箇所P1、第2箇所P2および第3箇所P3が上記のように配置されるので、クッション31は以下の構成を有する。クッション31は、着座者の臀部が当たる位置に第1の硬度を有し、第1の硬度の外側に第2の硬度を有し、第2の硬度の外側に第3の硬度を有している。
【0045】
クッション31の上面31bは、第4領域R4(中央領域)と、第5領域R5と、第6領域R6と、をさらに備える。
第4領域R4は、クッション31の上面31bにおける左右方向の中央部を含む。第4領域R4は、一対の第1領域R1の間の領域である。第4領域R4は、クッション31の上面31bにおける左右方向の中心を含む。第4領域R4の硬度は、以下のように設定される。ここで、第4箇所P4が上記の第1箇所P1に関連して定義される。第4箇所P4は、第4領域R4のうち、平面視で第1箇所P1から左右方向の内側に延び、第1領域R1および第4領域R4を連続して通る第2仮想半直線L2上の任意の点である。第4箇所P4は、第4の硬度を有する。第4の硬度は、第1の硬度よりも高ければよいが、望ましくは、第2の硬度以上で、第3の硬度以下であることが望ましい。本実施形態では、第4領域R4は、均一な硬度を有する。第4領域R4が第1領域R1に対して上記のように配置されるので、クッション31は、左右方向の中央部に、第1の硬度よりも高い硬度を有する。
【0046】
第5領域R5は、着座者の大腿部の前部を支持する。第5領域R5は、平面視で一対の第1領域R1の前方に位置する。第5領域R5は、クッション31の上面31bの前縁を含む。第5領域R5は、左右方向に延びている。第5領域R5は、第1領域R1、第2領域R2、第3領域R3および第4領域R4の前方に隣接する。第5領域R5の硬度は、以下のように設定される。ここで、第5箇所P5(前方箇所)が上記の第1箇所P1に関連して定義される。第5箇所P5は、第5領域R5のうち、平面視で第1箇所P1から前方に延び、第1領域R1および第5領域R5を連続して通る第3仮想半直線L3上の任意の点である。第5箇所P5は、第5の硬度を有する。第5の硬度は、第1の硬度以下である。本実施形態では、第5の硬度は、第2の硬度よりも低ければよいが、望ましくは、第1の硬度よりも低いことが望ましい。さらに、第5領域R5は、第2領域R2に隣接する箇所で、第2領域R2のうち第5領域R5と隣接する箇所の硬度よりも低い硬度を有する。第5領域R5のうち第3領域R3および第4領域R4それぞれに隣接する箇所も同様である。本実施形態では、第5領域R5の全体の硬度が、第1の硬度以下である。第5領域R5のうち、第1領域R1の前方に位置する箇所の硬度は、他の箇所の硬度よりも低い。第5領域R5が第1領域R1に対して上記のように配置されるので、クッション31は、着座者の臀部が当たる位置の前方に、第1の硬度以下の硬度を有する。
【0047】
第6領域R6は、平面視で一対の第1領域R1の後方に位置する。第6領域R6は、クッション31の上面31bの後縁を含む。第6領域R6は、左右方向に延びている。第6領域R6は、第3領域R3の後方に隣接する。第6領域R6の任意箇所は、第3領域R3のうち該任意箇所と隣接する箇所の硬度よりも低い硬度を有する。本実施形態では、第6領域R6の全体の硬度が、第1の硬度以下である。
【0048】
さらに、クッション31の凸部31aは、成型後の熱処理等により、第1の硬度よりも高い硬度を有する。本実施形態では、凸部31aの全体は、第1領域R1の全ての箇所の硬度よりも高い硬度を有し、第3の硬度と同等の硬度を有している。なお、凸部31aは、第3の硬度以上の硬度を有していてもよい。なお、第1の硬度以下である硬度を有する第5領域R5に形成される凸部31aも、第3の硬度と同等の硬度を有している。
【0049】
図7は、図3に示すクッション31の断面において網状構造体の構造毎の分布を示す図である。
図7に示すように、クッション31において、クッション性を発現させるための構造が上下方向に貫通している。クッション性を発現させるための構造は、網状構造体の繊維の密度や、繊維の太さ等である。これにより、クッション31は、上面31bにおける硬度分布と、下面31cにおける硬度の分布とが上下方向から見て一致するように形成されている。これにより、クッション31の上下同位置に、少なくとも第1の硬度、第2の硬度および第3の硬度のそれぞれが設けられている。ただし、クッション31の底部に設けられた凸部31aは、その隣接する箇所に対して異硬度に形成されていてもよい。
【0050】
以上に説明したように、本実施形態の椅子1のクッション31の上面31bは、第1の硬度を有し、着座者の臀部を支持する第1箇所P1と、平面視で第1箇所P1の外側に位置し、第1の硬度よりも高い第2の硬度を有する第2箇所P2と、平面視で第2箇所P2の外側に位置し、第2の硬度よりも高い第3の硬度を有する第3箇所P3と、を有する。この構成によれば、着座者の臀部は、平面視で内側に向かうに従い座6に深く沈み込み、包み込まれるような状態になる。本実施形態では、着座者の臀部は、左右方向の外側および後方から包み込まれるような状態になる。この状態で、着座者の臀部においてクッション31への沈み込みが浅い部分ほどクッション31の硬度が高い箇所に支持される。よって、着座時には臀部が外側にずれにくく、安定的な状態で着座することになる。したがって、座り心地のよい椅子1が得られる。
【0051】
さらに、クッション31が熱可塑性樹脂からなる網状構造体により形成されているので、クッション31が発泡ウレタンにより形成された場合と異なり、クッション31の廃棄物を水平リサイクル原料として再利用することができる。
以上により、水平リサイクル可能かつ座り心地のよい椅子1を提供できる。
また、クッション31が網状構造体により形成されたことで通気性を容易に確保できるとともに、樹脂製であることも相まって洗浄のしやすさも確保できる。
【0052】
クッション31は、第1箇所P1の前方に位置し、第1の硬度以下の硬度を有する第5箇所P5をさらに有する。この構成によれば、着座者の大腿部が当たる第5箇所P5が第1の硬度以下の硬度に設定されるので、着座者の大腿部にクッション31における硬度の低い部分が当接することになる。したがって、大腿部への圧迫感が軽減される。よって、座り心地をより一層向上させることができる。
【0053】
クッション31の上面31bにおける硬度の分布は、上下方向から見てクッション31の下面31cにおける硬度の分布と一致している。この構成によれば、クッション31の硬度を発現させる構造がクッション31を上下方向に貫通するように設けられる。仮に硬度の分布がクッション31の上面31bを基準とした深さ位置に応じて変化すると、臀部が沈み込んだ際に着座者の臀部が当たる面積の大きさに応じて座り心地が変化し得る。したがって、本実施形態によれば、着座者の体型や体重などによらず一定の座り心地が得られる。
【0054】
クッション31は、第1箇所P1を含むとともに、上面31bにおける左右方向の中心上に間隔を有する一対の第1領域R1と、一対の第1領域の間に位置し、前記上面における左右方向の中央部を含む第4領域R4と、を有する。第4領域R4の硬度は、第1の硬度よりも高い。この構成によれば、第1の硬度を有する第1領域R1により臀部が沈み込む座り心地を得つつ、第1の硬度よりも高い第4の硬度を有する第4領域R4により臀部をより一層ずれにくく保持できる。したがって、座り心地をより一層向上させることができる。また、クッション31の左右方向の中央部が第1の硬度を有する構成と比較して、クッション31のへたりを抑制することができる。
【0055】
クッション31は、座板30の外側縁30bに沿って配置され、外側縁30bに係合する凸部31aを有する。この構成によれば、凸部31aが座板30の外側縁30bに係合し、座板30に対してクッション31をずれにくくすることができる。特に本実施形態では凸部31aの硬度が第1の硬度よりも高いので、上記の作用がより効果的に得られる。したがって、座板30にクッション31を安定して支持させることができる。
さらに、凸部31aに指を掛けることができ、作業者がクッション31を把持する際の手掛かりにしやすくなる。
【0056】
座6は、クッション31と外被32との間に介在する中綿33を備える。この構成によれば、クッション31の外表面の凹凸が外被32に及ぶことを抑制できる。これにより、クッション31の外表面の凹凸が座6の外表面に現れにくくして、クッション31を網状構造体により形成したことで座り心地が悪化することを抑制できる。
【0057】
なお上記第1実施形態では、クッション31の上面31bに第4領域R4が設けられているが、この構成に限定されない。図8に示すように、クッション31の上面31bの一対の第1領域R1が互いに隣接して一体化し、第4領域R1が設けられていなくてもよい。
【0058】
また、上記第1実施形態では、クッション31の上面31bの第2領域R2および第3領域R3が平面視で前方を除く3方向から第1領域R1を囲んでいるが、この構成に限定されず、図9または図10に示すように構成されてもよい。図9に示すように、第2領域R2は、一対の第1領域R1をまとめて囲う。第2領域R2は、矩形枠状の平面視形状を有する。すなわち、第2領域R2は、一対の第1領域R1を前後方向の両側および左右両側から囲う。第3領域R3は、第2領域R2を囲う。第3領域R3は、矩形枠状の平面視形状を有する。すなわち、第3領域R3は、第2領域R2を前後方向の両側および左右両側から囲う。この構成であっても、一対の第1領域R1の前方に第5領域R5が設けられていることが望ましい。ただし、図10に示すように、第5領域R5および第6領域R6が設けられていなくてもよい。この場合、第3領域R3は、クッション31の上面31bの外縁の全体を含む。なお、第2領域R2および第3領域R3は、第1領域R1の後方に設けられていなくてもよい。
【0059】
[第2実施形態]
図11は、第2実施形態に係る椅子101を前方から見た斜視図である。なお、以下で説明する以外の構成は、第1実施形態と同様である。
【0060】
図11に示すように、第2実施形態の椅子101は、複数の利用者が横方向に並んで着座できるベンチである。椅子101は、脚102と、着座者の臀部を支持する座106と、着座者の背部を支持する背凭れ109と、を備えている。
【0061】
脚102は、接地部を有する。脚102は、接地部から上方に延びて、着座荷重を座106から床面Fに逃がす。脚102は、椅子101の左右両側部で前後に一対設けられている。座106は、脚102に支持されている。座106は、左右方向に長く、前後方向に短い平面視矩形状に形成されている。背凭れ109は、座106の後端部から上方に向かって延びるよう形成されている。
【0062】
座106は、外被132と、外被132に覆われたクッション131(図12参照)と、クッション131と外被132との間に介在する中綿(不図示)と、クッション131を下方から支持する座板(不図示)と、を備える。クッション131は、第1実施形態のクッション31と同様に、熱可塑性樹脂からなる網状構造体により形成されている。クッション131は、硬度の分布を持つ。
【0063】
クッション131の硬度について図12を参照して説明する。図12は、第2実施形態に係るクッション131の上面131bにおける硬度の分布を示す図である。なお本実施形態においては、クッション131の上面131bの硬度の分布は、左右対称とされている。クッション131の上面131bの各領域を、上面131bの硬度の分布に応じて以下のように定義する。なお本実施形態では、後述する領域は、平面視で左右方向に直線状に延びる境界線により互いに区切られている。クッション131の上面131bは、第1領域R1と、第2領域R2と、第3領域R3と、を備える。
【0064】
各第1領域R1は、着座者の臀部を支持する領域である。第1領域R1における全ての箇所は、着座者の臀部を支持する。第1領域R1は、クッション131の上面131bの前縁よりも内側(後方)に位置する。第1領域R1は、前後方向に一定の幅を有し、クッション131の上面131bの全長にわたって左右方向に延びている。第1領域R1は、クッション131の上面131bにおける前後方向の中心を含む。
【0065】
第2領域R2は、平面視で第1領域R1の外側に隣接する。第2領域R2は、クッション131の上面131bの前縁よりも内側(後方)に位置する。第2領域R2は、第1領域R1の全体に前方で隣接している。第2領域R2は、前後方向に一定の幅を有し、クッション131の上面131bの全長にわたって左右方向に延びている。
【0066】
第3領域R3は、平面視で第2領域R2の外側に隣接する。第3領域R3は、第2領域R2を挟んで一対の第1領域R1の反対側に位置する。第3領域R3は、クッション131の上面131bの前縁よりも内側(後方)に位置する。第3領域R3は、第2領域R2の全体に前方で隣接している。第3領域R3は、前後方向に一定の幅を有し、クッション131の上面131bの全長にわたって左右方向に延びている。
【0067】
第1領域R1、第2領域R2および第3領域R3の硬度は、以下のように設定される。ここで、第1仮想半直線L1、第1箇所P1、第2箇所P2および第3箇所P3が定義される。第1箇所P1は、第1領域R1における任意の点である。第1仮想半直線L1は、平面視で第1箇所P1から外側に延び、第1領域R1、第2領域R2および第3領域R3を連続して通る。本実施形態では、第1仮想半直線L1は、第1領域R1、第2領域R2および第3領域R3の上記の位置関係により、第1領域R1の第1箇所P1から、左右方向に対して前方に傾斜した方向に延びる。図12では、第1仮想半直線L1の例として、第1箇所P1から前方に延びる第1仮想半直線L1を示している。第2箇所P2は、第2領域R2のうち、第1仮想半直線L1上の任意の点である。第3箇所P3は、第3領域R3のうち、第1仮想半直線L1上の任意の点である。つまり、第2箇所P2は第1箇所P1よりも前方に位置し、第3箇所P3は第2箇所P2よりも前方に位置する。第1箇所P1は、第1の硬度を有する。第2箇所P2は、第2の硬度を有する。第2の硬度は、第1の硬度よりも高い。第3箇所P3は、第3の硬度を有する。第3の硬度は、第2の硬度よりも高い。
【0068】
第1領域R1は、全体で均一な硬度を有していてもよいし、硬度の分布を有していてもよい。例えば、第1領域R1は、椅子101の着座可能な最大人数に応じて、左右方向に周期性のある硬度の分布を有していてもよい。第2領域R2および第3領域R3も第1領域R1と同様である。本実施形態では、第2領域R2における全ての箇所の硬度は、第1領域R1の硬度よりも高い。第3領域R3も第2領域R2と同様である。
【0069】
第1箇所P1、第2箇所P2および第3箇所P3が上記のように配置されるので、クッション131は以下の構成を有する。クッション131は、着座者の臀部が当たる位置に第1の硬度を有し、第1の硬度の外側に第2の硬度を有し、第2の硬度の外側に第3の硬度を有している。
【0070】
クッション131の上面131bは、第5領域R5をさらに備える。
【0071】
第5領域R5は、着座者の大腿部の前部を支持する。第5領域R5は、平面視で第1領域R1の前方に位置する。第5領域R5は、クッション131の上面131bの前縁を含む。つまり、第5領域R5は、第3領域R3に前方で隣接している。第5領域R5は、左右方向に延びている。第5領域R5の硬度は、以下のように設定される。ここで、第5箇所P5が上記の第1箇所P1に関連して定義される。第5箇所P5は、第5領域R5のうち、平面視で第1箇所P1から前方に延び、第1領域R1および第5領域R5を連続して通る第3仮想半直線L3上の任意の点である。第5箇所P5は、第5の硬度を有する。第5の硬度は、第1の硬度以下である。本実施形態では、第5領域R5の全体の硬度が、第1の硬度以下である。第5領域R5が第1領域R1に対して上記のように配置されるので、クッション131は、着座者の臀部が当たる位置の前方に、第1の硬度以下の硬度を有する。
【0072】
以上に説明したように、本実施形態の椅子101の座106は、熱可塑性樹脂からなる網状構造体により形成されたクッション131を有するので、第1実施形態と同様の効果を奏する。これに加えて本実施形態では、着座者の臀部は、前方から包み込まれるような状態になる。よって、着座時には臀部が外側にずれにくく、安定的な状態で着座することになる。したがって、座り心地のよい椅子101が得られる。
【0073】
さらに、クッション131は、第1箇所P1の前方に位置し、第1の硬度以下の硬度を有する第5箇所P5をさらに有する。この構成によれば、着座者の大腿部が当たる第5箇所P5が第1の硬度以下の硬度に設定されるので、着座者の大腿部にクッション131における硬度の低い部分が当接することになる。したがって、大腿部への圧迫感が軽減される。よって、座り心地をより一層向上させることができる。
【0074】
なお図示の例では、第1領域R1の全体が、クッション131の上面131bの後縁に対して前後方向に間隔をあけている。この場合、第1領域R1とクッション131の上面131bの後縁との間の領域は、第2の硬度を有することが望ましい。これにより、第1領域R1からクッション131の後端に向けて硬度の変化が抑えられるので、第1領域R1を下方に沈み込ませやすくすることができる。
【0075】
なお、上記第2実施形態では、クッション131の上面131bには第5領域R5が設けられているが、この構成に限定されない。図13に示すように、第3領域R3がクッション131の上面131bの前縁を含むように形成されていてもよい。
【0076】
なお、本発明は、図面を参照して説明した上述の実施形態に限定されるものではなく、その技術的範囲において様々な変形例が考えられる。
例えば、上記実施形態では、椅子が背凭れを有しているが、これに限定されず、背凭れを有していない椅子の座に本発明を適用することもできる。
【0077】
上記実施形態では、クッションを形成する網状構造体がポリエチレンを原料としているが、網状構造体の原料はこれに限定されず、公知の熱可塑性樹脂を単体、または複数種で混合して用いることができる。網状構造体の原料として使用できる熱可塑性樹脂は、例えば、ポリエチレンの他に、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエステルなどである。熱可塑性樹脂により網状構造体を形成することで、使用後のクッションを水平リサイクルして、再び網状構造体の原料として利用することができる。
【0078】
上記実施形態では、脚および座が別部材とされているが、この構成に限定されない。すなわち、脚および座は一体に形成されていてもよい。また、脚および座は、外被に一体に覆われていてもよい。
【0079】
上記実施形態では、座および外被の間に中綿が介在しているが、この構成に限定されない。すなわち、外被が座を直接覆っていてもよい。
【0080】
上記実施形態では、クッションの上面の各領域が硬度の分布に応じて直線状に延びる境界線により区切られている。なお、クッションが発泡ウレタンである場合は、硬化後の硬度が異なるように設定されている複数種のウレタンの原液が、液状のまま金型内に注入されるため、硬化後のそれぞれの領域同士の境界線は曲線状になるのに対して、上記実施形態のクッションにおいては、クッションの上面の各領域の境界線が直線状になっている。クッション上面の各領域は、多数本の角度が異なる直線により形成された折れ線状に延びる境界線により区切られているようにすることも可能である。ただし、各領域を区切る境界線の少なくとも一部は曲線状に延びていてもよい。
【0081】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上述した各実施形態および各変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0082】
1,101…椅子 2,102…脚 6,106…座 9,109…背凭れ 30…座板 30b…外側縁 31,131…クッション 31a…凸部 31b,131b…上面 31c…下面 32,132…外被 P1…第1箇所 P2…第2箇所 P3…第3箇所 P5…第5箇所(前方箇所) R1…第1領域 R4…中央領域(第4領域)
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