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特開2024-173914電撃方式による種子の発芽成育システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173914
(43)【公開日】2024-12-13
(54)【発明の名称】電撃方式による種子の発芽成育システム
(51)【国際特許分類】
   A01C 1/00 20060101AFI20241206BHJP
【FI】
A01C1/00 C
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023092005
(22)【出願日】2023-06-03
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-12-18
(71)【出願人】
【識別番号】521083016
【氏名又は名称】半田 三郎
(74)【代理人】
【識別番号】100158229
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 恒雄
(72)【発明者】
【氏名】半田 三郎
【テーマコード(参考)】
2B051
【Fターム(参考)】
2B051AA01
2B051AB01
2B051BA02
2B051BA04
2B051BB11
(57)【要約】
【課題】硬実種子にも水分を含んだ球根類にも適用できる種子の発芽率向上と生育促進が行える種子の発芽成育システムを提供することを目的とする。
【解決手段】高電圧発生手段と、接地金属電極とを備え、接地金属電極上に種子を置き、種子に高電圧発生手段により高電圧インパルスを種子に印加して放電すること、接地金属電極上に置かれた種子は、所定の時間水に浸漬されていることを特徴とする種子の発芽成育システムである。高電圧発生手段は、高電圧インパルス発生回路、又は、圧電素子を備えている。高電圧インパルスは、1~5kVであり、少なくとも1個以上の高電圧インパルスが種子に印加される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高電圧発生手段と、
接地金属電極と、
を備え、
前記接地金属電極上に種子を置き、前記種子に前記高電圧発生手段により、高電圧インパルスを前記種子に印加して放電すること、
前記接地金属電極上に置かれた前記種子は、所定の時間、水に浸漬されていること、
を特徴とする種子の発芽成育システム。
【請求項2】
前記高電圧発生手段は、高電圧インパルス発生回路、又は、圧電素子を備えていること、
を特徴とする請求項1に記載の種子の発芽成育システム。
【請求項3】
前記高電圧インパルスは1~5kVであり、少なくとも1個以上の高電圧インパルスが前記種子に印加されること、
特徴とする請求項1に記載の種子の発芽成育システム。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種子の発芽と成長を促進する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
種子の発芽には、水分、温度、酸素と栄養物が必要である。種子は水分を吸収することで膨潤し、休眠状態から覚醒し発芽する。種子の発芽には適切な温度範囲が必要であり、多くの種子はそれぞれ適切な温度において最もよく発芽する。酸素は種子の呼吸に必要であり、エネルギーの産生と根の成長に重要な役割を果たす。種子内には胚と栄養組織が含まれており、栄養組織は胚の成長に必要な栄養素を提供し、適切な栄養素の供給が発芽には重要である。また、種皮が硬い硬実種子については、種に傷をつける事で芽が出やすくなる。
【0003】
さらに、発芽に関して電気的刺激を与えてその影響を評価する実験は古くから行われており、高電圧の印加が利用されている。高電圧の利用では,土壌や大気中へ高電圧を印加する場合と、植物に直接高電圧印加する場合がある。液肥や土壌などの培地に高電圧印加した場合は、有機物や無機物がイオン化され、化学的活性物質の生成が植物の成長に影響を与えるものと考えられる。また,植物の種子に直接印加した場合,流れる電流の大きさが影響するものと考えられる。
【0004】
高電圧利用の例としては、火花放電や継続的に電流を流す方法がある。火花放電は25-60kVで高圧電流を1~3μSの短時間流せば、除草や間引きや果物の熟成促進などに有効だという。継続的に流す方法は、例えば15kV,54kWの高電圧を、電極を直接植物に接触させて流し、樹木の刈り込みや根菜類の葉を枯らすのに使用されている。
【0005】
植物の種子の発芽にも利用されており、例えば、特許文献1には、高電圧を発生する電源部と、発生した高電圧を印加する放電側電極と接地側電極を有する処理装置とを備え、処理装置の電極間に種子を介在させて、電極間でパルスストリーマ放電を発生させる種子の発芽率向上用装置を用い、電極間に種子を介在させて、パルスストリーマ放電を発生させて、種子を所定の時間処理した後、発芽条件下において発芽させる方法が開示されている。
【0006】
印加電圧は、50kV(可能な範囲:50~60kV)で、パルス立ち上がり時間:40~50nS(可能な範囲:30~100nS)、パルス幅:80~100nS(可能な範囲:40~400nS)であり、処理時間:10秒、30秒、1分、3分、5分、10分、15分としている。
【0007】
特許文献2には、クロッカス属植物に対して開花促進を図るため、球根電圧印加装置を用いて、接地台の上に発芽前の複数の球根を配置し、電源から所定の電位が付与された電極を頭頂部に接触させてサフランの球根に電圧を印加した後、この球根の植え付けを行うことにより、開花が促進させる方法が開示されている。
【0008】
印加電圧は、DCを0.5kV、1.0kV、2.0kV、3.0kV(正電圧印加グループ)と、-0.5kV、-1.0kV、-2.0kV、-3.0kV(負電圧印加グループ)と、60HzのACを0.5kV、1.0kV、1.5kV(交流印加グループ)で行い、1秒程度球根の頭頂部やその周辺に直接電圧を印加することでより確実にその効果が表れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2001-136812号公報
【特許文献2】特開2016-202040号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
植物の種子の発芽率向上や発芽促進の方法は従来から様々な方法が提案されているが、特定の種子に対しての効果が主である。例えば特許文献1で使用されている種子は、玄米、野菜や果物の種子、花の種子等のいわば硬実種子であり、印加電圧は50kVと高い。特許文献2は、クロッカス属植物の種子を対象としており、印加電圧は0.5~3kVであり特許文献1より低いが、硬実種子には適用できない。
【0011】
本発明は、硬実種子にも水分を含んだ球根類にも適用できる種子の発芽率向上と生育促進が行える種子の発芽成育システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記の課題を解決するために、以下の技術的手段を用いている。
【0013】
(1)高電圧発生手段と、接地金属電極とを備え、接地金属電極上に種子を置き、種子に高電圧発生手段により、高電圧インパルスを種子に印加して放電すること、接地金属電極上に置かれた種子は、所定の時間、水に浸漬されていることを特徴とする種子の発芽成育システムである。
(2)高電圧発生手段は、高電圧インパルス発生回路、又は、圧電素子を備えている。
(3)高電圧インパルスは1~5kVであり、少なくとも1個以上の高電圧インパルスが種子に印加される。
【発明の効果】
【0014】
本発明の種子の発芽成育システムにより、球根類から硬実種子まで、幅広い種子の発芽率向上と発育を促進することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明による種子の発芽成育システムを示す概略図である。
図2】高電圧発生手段を示す具体例である。
図3】圧電素子銃30の取り扱いと種子20への放電状態を説明する図である。
図4】種子20としてオクラを使用して実施した実施例を示している。
図5】実施例1に対して、オクラの種子20を30粒として確認した例を示している。
図6】種子20としてフレンチビーン(いんげん豆)を使用して実施した実施例を示している。
図7】実施例3に対して、フレンチビーン(いんげん豆)の種子20を18粒として確認した例を示している。
図8】12日後の電撃方式とノーマル状態におけるいんげん豆が発芽し成長して苗となった状態の全体像を示す図である。
図9】種子20としてかぼちゃを使用して実施した実施例を示している。
図10】種子20としてブロッコリーを使用して実施した実施例を示している。
図11】種子20としてスイカを使用して実施した実施例を示している。
図12】種子20としてナスを使用して実施した実施例を示している。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、水に浸漬後の種子に電気的な刺激を与えて、発芽及び発芽後の生育を促進する「電撃方式による種子の発芽成育システム」である。以下図面を参照しながら、本発明について説明する。なお、本実施形態における構成要素は適宜、既存の構成要素等との置き換えが可能であり、また、他の既存の構成要素との組合せをする様々なバリエーションが可能である。従って、本実施形態の記載をもって、特許請求の範囲に記載された発明の内容を限定するものではない。
【0017】
図1は、本発明による種子の発芽成育システムを示す概略図である。種子の発芽成育システム10は、高圧発生手段12と、接地金属電極18とを備え、接地金属電極18上に種子20を置き、種子20に高電圧発生手段12で発生させた高電圧インパルス放電ピン16から放電する。この高電圧発生手段12で発生させた高電圧インパルス放電ピン16から放電することを、電撃方式と呼ぶ。接地金属電極18上に置かれた種子20は、水24を入れた容器22に、所定の時間浸漬した後に接地金属電極18上に置かれている。種子20の浸漬時間は、種子20の種類にもよるが、5~6時間程度である。種子が球根類のように水分を含有している場合は、浸漬時間が少なくてもよい。
【0018】
高圧発生手段12で発生される高電圧インパルスは、1~5kVであること、が好ましい。この高電圧発生手12段は、電子素子を組み合わせた高電圧インパルス発生回路、又は、衝撃により高電圧を発生する圧電素子を備えている。これにより、高電圧インパルスを瞬間的に発生させることができる。
【0019】
図2は、高電圧発生手段を示す具体例である。高電圧発生手段12は、圧電素子であり、以下、圧電素子銃30と呼ぶ、図2(A)は、圧電素子銃30の全体を示す図である。圧電素子銃30は、圧電着火タイプのライターを改造した。図2(B)は、圧電素子銃30の側面カバーを外した状態であり、内部構造を示している。圧電素子34に接続されているワイヤーのうち、ノズルの金属部分に繋がっている方を外して延長し、先端にクリップ36を付ける。このクリップ36で、金属製の皿やトレイ、即ち、接地金属電極18に繋ぐ事ができる。圧電素子銃30のトリガー32は、瞬間的に圧電素子に衝撃を与えるためのスイッチであり、トリガー32を引くことにより高電圧インパルスが発生する。
【0020】
図3は、圧電素子銃30の取り扱いと種子20への放電状態を説明する図である。図3(A)は、圧電素子銃30を手に取って、トリガー32に親指を当てた状態である。接地金属電極18には種子2が置かれており、圧電素子銃30のクリップ34が接続されている。放電ピン16を種子20に近づけて、トリガー32を押すと高電圧インパルスが発生し、種子20との間で放電する。トリガー32と種子20距離は5~6mmであり、1~2kVの電圧が発生する。
【0021】
図3(B)は、放電ピン16と種子20の間で放電が発生している状態を示す図である。ここでは、4個の放電例を示しているが、右から2番目の放電例を拡大して放電の様子を示している。放電ピン16の先端部と種子20の間の放電ストリームの様子が白く表れている。
【0022】
本発明による電撃方式による種子の発芽成育システム10は、以下の手順で実施される。
(1)植物の種子を必要量用意する。
(2)用意した種子20を水24の入った容器22に入れ、5~6時間浸漬する。
(3)必要量の鉢を準備し、土を入れる。
(4)水24に5~6時間浸漬した種子20を接地金属電極18に置き、圧電素子銃30で電撃、即ち、放電ピンから種子に高電圧インパルスを印加し放電させる。電撃は、確実性を考えて2~3回行う。
(5)電撃後の種子20を、鉢に蒔き、土に水24をかける。
(6)発芽には水24が欠かせないため、朝と夕方に土に水24が十分に浸透するませ霧吹き等で水24を与える。
(7)発芽とその後の成長を観察する。
【実施例0023】
図4は、種子20としてオクラを使用して実施した実施例を示している。電撃方式の効果を確認するため、水に浸漬後に電撃を加えないノーマル状態でオクラの種子20を蒔いた場合についても実施した。種子20の数は、各9粒である。図4では、種まき後の日数、実施時の写真と状況を示している。実施時の写真は、左側がノーマル状態で、右側が、電撃方式による状態である。状況は、発芽数と発芽率、発芽後の大きさ(平均値)をノーマル状態と電撃方式による状態を示している。
【0024】
観察結果として、種子20を蒔いてから、3日後に発芽して、電撃状態での発芽数は7粒で、発芽率は77.8%であり、ノーマル状態での発芽数は2粒で、発芽率は22.2%であった。この時の大きさは、電撃方式では1.5cm、ノーマル状態で0.5cmであった。4日後には、電撃方式では発芽数が9粒となり100%発芽した。
【0025】
ノーマル状態での発芽は、4日後に3粒発芽し、発芽率は33.3%となり、5日後に6粒発芽し、発芽率は66.7%となったが、その後は残りの種子20の発芽はなかった。結果は、電撃方式での発芽は、ノーマル状態に対して早期に発芽し、発芽率も高く100%発芽し、電撃方式の効果は明らかある。
【0026】
発芽後の成長は、電撃方式では4日後に4.0cm、5日後に7.0cm、6日後に10.0cm、7日後に12.0cm、8日後に15.0cmであるのに対して、ノーマル状態では、4日後に1.0cm、5日後に1.5cm、6日後に2.0cm、7日後に7.0cm、8日後に10.0cmであった。明らかに、電撃方式での発芽後の成長は、ノーマル状態に対して成長が促進されている結果となった。
【実施例0027】
図5は、実施例1に対して、オクラの種子20を30粒として確認した例を示している。電撃方式の効果を確認するため、水に浸漬後に電撃を加えないノーマル状態でのオクラの種子20も30粒蒔いた場合について実施した。図5では、種まき後の日数、実施時の写真と状況を示している。実施時の写真は、左側がノーマル状態で、右側が、電撃方式による状態である。状況は、発芽数と発芽率、発芽後の大きさ(平均値)をノーマル状態と電撃方式による状態を示している。
【0028】
観察結果として、種子20を蒔いてから、電撃方式では3日後に17粒、56.7%の種子20が発芽し、ノーマル状態での発芽は4日後であり、7粒、23.3%が発芽した。電撃方式での発芽は、4日後に26粒、86.6%で、5日後には30粒全部、100%発芽した。ノーマル状態では、5日後に14粒、46.7%、6日後に22粒、73.3%、7日後に24粒、80%となったが、その後、残りの種子20は発芽しなかった。結果は、種子20が9粒の場合と略同様の発芽率であり、ノーマル状態が80.0%の発芽率であったのに対して、電撃方式での発芽は、早期に発芽し、発芽率も100%発芽し、電撃方式の効果は明らかある。
【0029】
発芽後の成長は、電撃方式では大きさが平均値で3日後に発芽した日は0.5cm、4日後に2.5cm、5日後に7.0cm、6日後に9.0cm、7日後に11.0cm、8日後に14.0cmであった。ノーマル状態では、大きさが平均値で4日後の発芽した日で0.7cm、5日後に2.0cm、6日後に4.0cm、7日後に7.0cm、8日後に9.0cmであった。種子20が9粒の場合と略同様に、明らかに電撃方式での発芽後の成長は、ノーマル状態に対して成長が促進されている結果となった。
【実施例0030】
図6は、種子20としてフレンチビーン(いんげん豆)を使用して実施した実施例を示している。電撃方式の効果を確認するため、水に浸漬後に電撃を加えないノーマル状態でオクラの種子20を蒔いた場合についても実施した。種子20の数は、各9粒である。図5では、種まき後の日数、実施時の写真と状況を示している。実施時の写真は、左側がノーマル状態で、右側が、電撃方式による状態である。状況は、発芽数と発芽率、発芽後の大きさ(平均値)をノーマル状態と電撃方式による状態を示している。
【0031】
観察結果として、電撃方式では種子20を蒔いてから2日後に5粒、55.6%発芽したのに対して、ノーマル状態では4日後に3粒、33.3%の発芽であった。電撃方式での発芽は、3日後に8粒、88.9%、5日後に9粒、100%発芽した。ノーマル状態の発芽は、5日後に5粒、55.6%、6日以降は新たに発芽せず5粒、55.6%のままであった。結果は、ノーマル状態が80.0%の発芽率であったのに対して、電撃方式での発芽は、早期に発芽し、発芽率も100%発芽し、電撃方式の効果は明らかである。
【0032】
発芽後の成長は、電撃方式では大きさが平均値で2日後に発芽した日は3.0cm、3日後に8.0cm、4日後に12.0cm、5日後に15.0cm、6日後に21.0cmであった。ノーマル状態では、大きさが平均値で4日後の発芽した日で2.0cm、5日後に3.0cm、6日後に5.0cmであった。明らかに、電撃方式での発芽後の成長は、ノーマル状態に対して成長が促進されている結果となった。
【実施例0033】
図7は、実施例3に対して、フレンチビーン(いんげん豆)の種子20を18粒として確認した例を示している。電撃方式の効果を確認するため、水に浸漬後に電撃を加えないノーマル状態でのオクラの種子20も30粒蒔いた場合について実施した。図7では、種まき後の日数、実施時の写真と状況を示している。実施時の写真は、左側2鉢がノーマル状態で、右側2鉢が、電撃方式による状態である。状況は、発芽数と発芽率、発芽後の大きさ(平均値)をノーマル状態と電撃方式による状態を示している。
【0034】
観察結果として、種子20を蒔いてから、電撃方式では2日後に3粒、16.7%の種子20が発芽し、ノーマル状態での発芽は4日後であり、7粒、23.3%が発芽した。電撃方式での発芽は、3日後に10粒、55.6%で、4日後に14粒、77.8%、5日~6日後も14粒、77.8%で、7日後に15粒、83.3%となった。ノーマル状態では、5日後に11粒、61.1%、6日後に12粒、66.7%、7日後も12粒、66.7%であった。結果は、ノーマル状態が66.7%の発芽率であったのに対して、電撃方式での発芽率は、83.3%と発芽率が良く、早期に発芽した。電撃方式の効果は明らかである。
【0035】
発芽後の成長は、電撃方式では大きさが平均値で2日後に発芽した日と3日後は0.5cm、4日後に2.0cm、5日後に4.0cm、6日後に10.0cm、7日後に14.0cmであった。ノーマル状態では、大きさが平均値で4日後の発芽した日で0.7cm、5日後に2.0cm、6日後に4.0cm、7日後に7.0cmであった。
【0036】
図8は、12日後の電撃方式とノーマル状態におけるいんげん豆が発芽し成長して苗となった状態の全体像を示す図である。苗は、鉢から抜いて水洗いしている。電撃方式による苗は、土表面から上の大きさが2本平均で35.0cm、種子20からの大きさは、37.0cmであった。これに対して、ノーマル状態による苗は、土表面から上の大きさが2本平均で22.0cm、種子20からの大きさは、24.0cmであった。明らかに電撃方式での発芽後の成長は、ノーマル状態に対して成長が促進されている結果となった。
【実施例0037】
図9は、種子20としてかぼちゃを使用して実施した実施例を示している。電撃方式の効果を確認するため、水に浸漬後に電撃を加えないノーマル状態でかぼちゃの種子20を蒔いた場合についても実施した。種子20の数は、各8粒である。図9では、種まき後の日数、実施時の写真と状況を示している。実施時の写真は、左側がノーマル状態で、右側が、電撃方式による状態である。状況は、発芽数と発芽率、発芽後の大きさ(平均値)をノーマル状態と電撃方式による状態を示している。
【0038】
観察結果として、電撃方式では種子20を蒔いてから2日後に4粒、50.0%発芽したのに対して、ノーマル状態では2日後に2粒、25.0%の発芽であった。電撃方式での発芽は、3日後には8粒、100%発芽した。ノーマル状態の発芽は、3日後に5粒、62.5%であり、4日以降は発芽しなかった。結果は、電撃方式での発芽率は、ノーマル状態が62.5%の発芽率であったのに対して、100%と発芽率が良く、早期に発芽した。電撃方式の効果は明らかである。
【0039】
発芽後の成長は、電撃方式では大きさが平均値で2日後に発芽した日は3.0cm、3日後に6.0cm、4日後に12.0cm、5日後に15.0cm、6日後に19.0cmであった。ノーマル状態では、大きさが平均値で2日後の発芽した日で2.0cm、3日後に4.0cm、4日後に7.0cm、5日後に8.0cm、6日後に13.0cmであった。明らかに、電撃方式での発芽後の成長は、ノーマル状態に対して成長が促進されている結果となった。
【実施例0040】
図10は、種子20としてブロッコリーを使用して実施した実施例を示している。電撃方式の効果を確認するため、水に浸漬後に電撃を加えないノーマル状態でかぼちゃの種子20を蒔いた場合についても実施した。種子20の数は、各30粒である。図10では、種まき後の日数、実施時の写真と状況を示している。実施時の写真は、左側がノーマル状態で、右側が、電撃方式による状態である。状況は、発芽数と発芽率、発芽後の大きさ(平均値)をノーマル状態と電撃方式による状態を示している。
【0041】
観察結果として、電撃方式では種子20を蒔いてから4日後に18粒、60.0%発芽したのに対して、ノーマル状態では4日後に9粒、30.0%の発芽であった。電撃方式での発芽は、5日後に24粒、80.0%発芽し、その後発芽しなかった。ノーマル状態の発芽は、5日後に17粒、56.7%、6日後に25粒、83.3%発芽し6日以降は発芽しなかった。結果は、電撃方式での発芽率は、ノーマル状態が60.0%の発芽率であったのに対して、83.3%と発芽率が良く、早期に発芽した。電撃方式の効果は明らかである。
【0042】
発芽後の成長は、電撃方式では大きさが平均値で4日後に発芽した日は0.8cm、5日後に2.0cm、6日後に7.0cm、7日後に10.0cm、8日後に11.5cmであった。ノーマル状態では、大きさが平均値で4日後の発芽した日で0.5cm、5日後に1.5cm、6日後に5.5cm、7日後に8.0cm、8日後に10.0cmであった。明らかに、電撃方式での発芽後の成長は、ノーマル状態に対して成長が促進されている結果となった。
【実施例0043】
図11は、種子20としてスイカを使用して実施した実施例を示している。電撃方式の効果を確認するため、水に浸漬後に電撃を加えないノーマル状態でスイカの種子20を蒔いた場合についても実施した。種子20の数は、各10粒である。図11では、種まき後の日数、実施時の写真と状況を示している。実施時の写真は、左側がノーマル状態で、右側が、電撃方式による状態である。状況は、発芽数と発芽率、発芽後の大きさ(平均値)をノーマル状態と電撃方式による状態を示している。
【0044】
観察結果として、電撃方式では種子20を蒔いてから4日後に5粒、50.0%発芽したのに対して、ノーマル状態では4日後に3粒、30.0%の発芽であった。電撃方式での発芽は、5日後に10粒、100%発芽した。ノーマル状態の発芽は、5日後に7粒、70.0%となったが、その後発芽しなかった。結果は、電撃方式での発芽率は、ノーマル状態が70.0%の発芽率であったのに対して、83.3%と発芽率が良く、早期に発芽した。電撃方式の効果は明らかである。
【0045】
発芽後の成長は、電撃方式では大きさが平均値で4日後に発芽した日は1.0cm、5日後に7.0cm、6日後に10.0cm、7日後に13.0cmであった。ノーマル状態では、大きさが平均値で4日後の発芽した日で0.7cm、5日後に3.0cm、6日後に8.0cm、7日後に10.0cmであった。明らかに、電撃方式での発芽後の成長は、ノーマル状態に対して成長が促進されている結果となった。
【実施例0046】
図12は、種子20としてナスを使用して実施した実施例を示している。電撃方式の効果を確認するため、水に浸漬後に電撃を加えないノーマル状態でナスの種子20を蒔いた場合についても実施した。種子20の数は、各10粒である。図12では、種まき後の日数、実施時の写真と状況を示している。実施時の写真は、左側がノーマル状態で、右側が、電撃方式による状態である。状況は、発芽数と発芽率、発芽後の大きさ(平均値)をノーマル状態と電撃方式による状態を示している。
【0047】
観察結果として、電撃方式では種子20を蒔いてから6日後に9粒、90.0%発芽したのに対して、ノーマル状態では6日後に3粒、30.0%の発芽であった。電撃方式での発芽は、7日後に10粒、100%発芽した。ノーマル状態の発芽は、6日以降も変わらず3粒、30.0%の発芽であった。結果は、電撃方式での発芽率は、ノーマル状態が30.0%の発芽率であったのに対して、100%と発芽率が良く、早期に発芽した。電撃方式の効果は明らかである。
【0048】
発芽後の成長は、電撃方式では大きさが平均値で6日後に発芽した日は0.8cm、7日後に3.0cm、8日後に4.0cm、9日後に5.5cm、10日後に6.5cm、11日後に7.0cmであった。ノーマル状態では、大きさが平均値で6日後の発芽した日で0.5cm、7日後に1.5cm、8日後に3.0cm、9日後に4.5cm、10日後に5.0cm、11日後に6.0cmであった。明らかに、電撃方式での発芽後の成長は、ノーマル状態に対して成長が促進されている結果となった。
【0049】
種子20の発芽は、呼吸やエネルギー生成を行い細胞分裂や細胞伸長が始まり、幼根が外種皮を押して動かし土の下方に成長を始め、そして幼根は水や無機塩類を吸収する根毛を形成し、幼根が定着すると幼芽が出始め発芽する。そうすると、本発明の電撃方式は、細胞に電気的な刺激を与えて、細胞分裂や細胞伸長を促すものと推定される。細胞に電気的な刺激を与える効果的なタイミングは、一連の実施例から、種子20を水に浸漬することにより細胞分裂や細胞伸長が始まる初期段階がいいものと思われる。これにより、少なくとも1回の電撃で効果が現れ、発芽率が向上し、成長も促進すると考えられる。
【0050】
電気刺激が種子20の発芽率に与える影響は、植物の種類によっても異なるが、実施した結果ではいずれも発芽率が向上することが明らかとなった。もちろん電圧や電流の強度、刺激の時間の長さも効果に影響する。適切な電圧、電流の強度や刺激時間を選ぶことが重要である。
【0051】
発芽後の植物の成長も、電気的刺激の効果が現れている。植物の成長は、根からの水分と養分の吸収によっている。水分の吸収は、根細胞の内側と外側の溶液濃度差で発生した浸透圧により行われる。植物の根の細胞膜は、一種の半透膜で、根細胞内のイオンと有機酸などの濃度が外界土壌溶液より高いために、土壌より低い水ポテンシャルを保って浸透圧が発生し、土壌溶液中の水分が浸透圧により、根細胞膜を通過して根細胞に入る。
【0052】
植物の根による養分吸収は、水分の吸収とは別のプロセスで行われている。根が吸収できるのはプラスのイオン状態の養分である。このイオン状態の養分を取り込むのが、根細胞の細胞膜に存在するイオンチャネルとイオントランスポーターである。共にタンパク質で構成されている。プラスの電荷を持つイオ状態の養分は、このようなイオン輸送タンパク質を介する必要がある。根細胞に取り込まれたイオン状態の養分は、根の導管に入り、水と一緒に茎や葉に供給される。
【0053】
イオン状態の養分を作り出すのが電流発生菌と呼ばれるシュワネラ菌やジオバクター菌等である。電流発生菌は土壌中のどこにも存在し、有機物を分解して電子を放出し、プラスのイオン状態とする。この電流発生菌で生成されたイオン状態の養分が植物を成長させている。電流発生菌による有機物の分解は、種子20への電撃とは関係がなく、いわば、イオン状態となった養分を吸収する機能を活性化させることが、電撃方式により、植物の成長に効果を与えていると考えられる。
【0054】
細胞に電気的な刺激を与える効果的なタイミングは、発芽に対して種子20を水に浸漬することにより細胞分裂や細胞伸長が始まる初期段階とすることにより効果があったが、これは植物の成長に対しても影響し、その効果が持続していることを示す結果が得られたものと思われる。
【0055】
本発明による電撃方式は、種子20を水に浸漬することにより、細胞分裂や細胞伸長が始まる初期段階に電撃を行うことが発芽と成長に効果的であることが明らかとなった。
【0056】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。
【符号の説明】
【0057】
10 種子の発芽成育システム
12 高電圧発生手段
14 圧電素子
16 放電ピン
18 接地金属電極
20 種子
22 容器
24 水
30 圧電素子銃
32 トリガー
34 クリップ



図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【手続補正書】
【提出日】2023-11-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高電圧発生手段と接地金属電極を使用し、
前記接地金属電極上に種子を置き、前記高電圧発生手段により、高電圧インパルスを前記種子に印加して放電すること、
前記種子は、細胞分裂や細胞伸長が始まる初期段階となるまでの所定の時間、水に浸漬した後に、前記接地金属電極上に置かれていること、
を特徴とする種子の発芽成育方法
【請求項2】
前記高電圧発生手段は、圧電素子と、前記圧電素子に瞬間的に衝撃を与えるためのスイッチであるトリガーを備えた高電圧インパルス発生回路であること、
を特徴とする請求項1に記載の種子の発芽成育方法
【請求項3】
前記高電圧インパルスは1~5kVであり、高電圧インパルス発生回路は、前記トリガーを引くことにより1個の前記高電圧インパルスを発生させ、少なくとも1個以上の高電圧インパルスが前記種子に印加されること、
特徴とする請求項2に記載の種子の発芽成育方法