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特開2024-173923完全に水素化された分岐スチレン系ブロックコポリマー
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  • 特開-完全に水素化された分岐スチレン系ブロックコポリマー 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173923
(43)【公開日】2024-12-13
(54)【発明の名称】完全に水素化された分岐スチレン系ブロックコポリマー
(51)【国際特許分類】
   C08F 8/04 20060101AFI20241206BHJP
   C08F 297/04 20060101ALI20241206BHJP
【FI】
C08F8/04
C08F297/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024089833
(22)【出願日】2024-06-03
(31)【優先権主張番号】63/505,440
(32)【優先日】2023-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】523064398
【氏名又は名称】クレイトン・ポリマーズ・ネーデルラント・ベー・フェー
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロバート・ベニング
(72)【発明者】
【氏名】クレア・ミラー
(57)【要約】
【課題】完全に水素化された分岐ブロックコポリマー(f-HbBC)が開示される。
【解決手段】f-HbBCは(S-B)X(s-B)、(s-B)X、及びこれらの混合の一般構造を有するラジアルブロックコポリマーの混合物を含む。水素化に先立って、各ブロックS及び「s」はビニル芳香族モノマーのポリマーブロックであり、ブロックBは共役ジエンモノマーのポリマーブロックである。ラジアルブロックコポリマーの混合物は少なくとも70重量%のポリ(ビニルシクロヘキサン)含量及び<30重量%の共役ジエンモノマーの水素化されたポリマーブロックを含む。混合物中の1つ以上のラジアルブロックコポリマーは少なくとも120kg/molの分子量を有し、混合物中の少なくとも60%のラジアルブロックコポリマーは>100kg/molの分子量を有する。混合物は<40重量%の(s-B)X構造を含有する。f-HbBCは>145℃のT及び>1.20の多分散性指数を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(S-B)X(s-B)、(s-B)X、及びこれらの混合の一般構造を有するラジアルブロックコポリマーの混合物を含む完全に水素化された分岐ブロックコポリマーであって、
水素化に先立って、
各ブロックS及び「s」は独立してビニル芳香族モノマーのポリマーブロックであり、
各ブロックBは共役ジエンモノマーのポリマーブロックであり、
Xはカップリング剤の残基であり、
m>n、n≧1、m=1~20、z=2~4、m+n≧3であり、
水素化後、
前記ラジアルブロックコポリマーがGPC曲線で多数のピークを示し、
前記混合物が、該混合物の総重量を基準にして、少なくとも70重量%のポリ(ビニルシクロヘキサン)含量及び30重量%未満の共役ジエンモノマーの水素化されたポリマーブロックを含み、
前記混合物中のラジアルブロックコポリマーの少なくとも60%が>100kg/molの分子量(M)を有し、残りが<100kg/molの分子量(M)を有し、
前記混合物中のラジアルブロックコポリマーの少なくとも30%が少なくとも100kg/molの分子量(M)を有し、残りが<100kg/molの分子量(M)を有し、
前記混合物の40重量%未満が(s-B)Xの一般構造を有し、
前記完全に水素化された分岐ブロックコポリマーが、
1.20~3.0の多分散性指数、
145~200℃のガラス転移温度(T)、
260℃、5kgの荷重で測定して0.1~35g/10分のMFR、及び
25℃で測定して20~50kJ/mのノッチなしシャルピー衝撃強さ
を有する、
完全に水素化された分岐ブロックコポリマー。
【請求項2】
前記混合物が、1:1~20:1の、(s-B)Xの構造を有するラジアルブロックコポリマーに対する(S-B)X(s-B)の構造を有するラジアルブロックコポリマーの重量比を有する、請求項1に記載の完全に水素化された分岐ブロックコポリマー。
【請求項3】
少なくとも1種のラジアルブロックコポリマーが、120~250kg/molの分子量(M)を有する、請求項1又は2に記載の完全に水素化された分岐ブロックコポリマー。
【請求項4】
分子量(M)>100kg/molのラジアルブロックコポリマーが少なくとも1つのブロックSを有し、分子量(M)<100kg/molのラジアルブロックコポリマーがブロックSを有しない、請求項1又は2に記載の完全に水素化された分岐ブロックコポリマー。
【請求項5】
前記完全に水素化された分岐ブロックコポリマーが、1.20~3.0の多分散性指数を有する、請求項1又は2に記載の完全に水素化された分岐ブロックコポリマー。
【請求項6】
ラジアルブロックコポリマーが、ラジアルブロックコポリマーの総重量を基準にして、50~80重量%の(S-B)X(s-B)及び20~40重量%の(s-B)Xを含む、請求項1又は2に記載の完全に水素化された分岐ブロックコポリマー。
【請求項7】
ラジアルブロックコポリマーが、ラジアルブロックコポリマーの総重量を基準にして、70~85重量%の(S-B)X(s-B)及び(s-B)X構造を含む、請求項1又は2に記載の完全に水素化された分岐ブロックコポリマー。
【請求項8】
各ブロックS、「s」、及びBが、独立して、プロトンNMRにより測定して>95%のレベルに水素化され、前記完全に水素化された分岐ブロックコポリマーが、70~95%のポリ(ビニルシクロヘキサン)含量を有する、請求項1又は2に記載の完全に水素化された分岐ブロックコポリマー。
【請求項9】
前記完全に水素化された分岐ブロックコポリマーが、該完全に水素化された分岐ブロックコポリマーの総重量を基準にして、15~25重量%の量で組み合わせられた、(s-B)4、(s-B)3、(s-B)2及びこれらの混合から選択される他のアーム分布と、S-B、s-B及びこれらの混合から選択されるカップリングしてないアームとをさらに含む、請求項1又は2に記載の完全に水素化された分岐ブロックコポリマー。
【請求項10】
ブロックSが、110~140kg/molの分子量(M)を有し、ブロック「s」が、7~12kg/molの分子量(M)を有する、請求項1又は2に記載の完全に水素化された分岐ブロックコポリマー。
【請求項11】
水素化に先立って、70~95%のポリスチレン含量を有する、請求項1又は2に記載の完全に水素化された分岐ブロックコポリマー。
【請求項12】
前記カップリング剤が、ポリエポキシド、ポリイソシアネート、ポリアミン、ポリアルデヒド、ポリハライド、ポリ無水物、ポリケトン、ポリポキシエステル、ポリエステル、及びこれらの混合物からなる群から選択され、前記完全に水素化された分岐ブロックコポリマーが、70~90%のカップリング効率を有する、請求項1又は2に記載の完全に水素化された分岐ブロックコポリマー。
【請求項13】
145~200℃のガラス転移温度(T)を有する、請求項1又は2に記載の完全に水素化された分岐ブロックコポリマー。
【請求項14】
1mm~4mmの範囲の厚さを有するフィルムに形成されたとき、ASTM D1003により測定して<15%の曇価を示す、請求項1又は2に記載の完全に水素化された分岐ブロックコポリマー。
【請求項15】
1500~3000Mpaの曲げ弾性率、
125~180℃のVICAT軟化点、
20~50kJ/mのノッチなしシャルピー衝撃、
260℃、5kg荷重で測定されて0.1~35g/10分のメルトフローインデックス、及び
射出成形後<4%の収縮率(縦方向)
の少なくとも1つを有する、請求項1又は2に記載の完全に水素化された分岐ブロックコポリマー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、完全に水素化された分岐ブロックコポリマー、その調製方法及び用途に関する。
【背景技術】
【0002】
低い曇価、高い曲げ弾性率及び高い硬度をもつ物品用に考案されたモノビニル置換された芳香族ブロックの高分子量(MW)部分及び低分子量部分を有する非対称の分岐したポリマーを含む、分岐した多峰性(又は多モード)ポリマーは当技術分野で公知である。ビニル芳香族ポリマーは、その対応する水素化されてないポリマーより高いガラス転移温度(T)の透明で強靭なプラスチックを生成するために続いて水素化された。これらの材料をさらに強化するために、ビニル芳香族化合物及び共役ジエンの水素化されたブロックコポリマーが開発された。しかしながら、より高いT及び比較的低い曇価を有するポリマー材料がまだ望まれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
(要旨)
高い水素化レベル並びに改良された加工性、機械的及び光学的な特性をもつブロックコポリマー、特に完全に水素化された分岐ブロックコポリマーに対するニーズがまだ存在する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
1つの態様において、本開示は(S-B)X(s-B)、(s-B)X及びこれらの混合の一般構造を有するラジアルブロックコポリマーの混合物を含む、から本質的になる、又はからなる完全に水素化された分岐ブロックコポリマー(f-HbBC)に関する。水素化に先立って、各ブロックS及び「s」は独立してビニル芳香族モノマーのポリマーブロックであり、各ブロックBは共役ジエンモノマーのポリマーブロックであり、Xはカップリング剤の残基であり、m>n、n≧1、m=1~20、z=2~4、m+n≧3である。水素化後、ラジアルブロックコポリマーはGPC曲線で多数のピークを示す。混合物は、混合物の総重量を基準にして少なくとも70重量%のポリ(ビニルシクロヘキサン)含量、及び30重量%未満の共役ジエンモノマーの水素化されたポリマーブロックを含む。混合物中のラジアルブロックコポリマーの少なくとも60%は>100kg/molの分子量(M)を有し、残りは<100kg/molの分子量(M)を有する。混合物中のラジアルブロックコポリマーの少なくとも30%は少なくとも100kg/molの分子量(M)を有し、残りは<100kg/molの分子量(M)を有する。混合物の40重量%未満は(s-B)Xの一般構造を有する。f-HbBCは>1.20の多分散性指数、>145℃のガラス転移温度(T)、260℃、5kgの荷重で測定して>0.1g/10分のMFR、及び25℃で測定して少なくとも20kJ/mのノッチなしシャルピー(Charpy)衝撃強さを有する。
【0005】
第2の態様において、混合物の(s-B)Xの構造を有するラジアルブロックコポリマーに対する(S-B)X(s-B)の構造を有するラジアルブロックコポリマーの重量比は1:1~20:1である。
【0006】
第3の態様において、少なくとも1種のラジアルブロックコポリマーは120~250kg/molの分子量(M)を有する。
【0007】
第4の態様において、ラジアルブロックコポリマーの混合物は60~80%の>100kg/molの分子量(M)を有するラジアルブロックコポリマー及び20~40%の<100kg/molの分子量(M)を有するラジアルブロックコポリマーを含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1はラジアルブロックコポリマーの混合物を有するf-HbBCのある実施形態のゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)曲線であり、異なる構造がGPC曲線の多数のモード(ピーク)により表されている。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の用語が本明細書を通して使用される。
【0010】
「から本質的になる」は、特許請求の範囲に記載の組成物が主として規定の物質を含有し、ただし特許請求の範囲に記載の本発明の新規な特徴又は機能に実質的に影響しない付加的な成分を許容し、その付加的な成分が存在するならば<30%又は<20%又は<10%の量であることを意味する。
【0011】
「[A、B及びCなどの群]の少なくとも1つ」又は「[A、B及びCなどの群]のいずれか」は、その群の単一のメンバー、その群の1つより多くのメンバー、又はその群のメンバーの組合せを意味する。例えば、A、B及びCの少なくとも1つは、例えば、Aのみ、Bのみ若しくはCのみ、並びにA及びB、A及びC、B及びC;若しくはA、B及びC、又はA、B及びCのその他のあらゆる全ての組合せを含む。別の例において、A及びBの少なくとも1つはAのみ、Bのみ、並びにA及びBを意味する。
【0012】
「A、B又はC」として提示される実施形態のリストは、Aのみ、Bのみ、Cのみ、「A若しくはB」、「A若しくはC」、「B若しくはC」又は「A、B若しくはC」の実施形態を含むと解釈するべきである。
【0013】
「A、B又はCのいずれか」は、A、B又はCの1つの選択肢を意味する。
【0014】
「A、B及びCのいずれか」は、A、B及びCの1つ以上の選択肢を意味する。
【0015】
「ビニル含量」は、ブタジエンの場合1,2-付加を介して、又はイソプレンの場合3,4-付加を介して重合して、ポリマー骨格に隣接したモノ置換されたオレフィン又はビニル基を生じる共役ジエンの含量を意味する。ビニル含量は、プロトンNMRにより測定され得る。
【0016】
%CEと表される「カップリング効率」は、カップリングしたポリマーの重量%及びカップリングしてないポリマーの重量%の値を用いて計算される。カップリングしたポリマー及びカップリングしてないポリマーの重量%は示差屈折率検出器の出力を用いて測定される。特定の溶出体積での信号の強度は、その溶出体積で検出されるポリスチレン標準に対応する分子量の物質の量に比例する。カップリングしたポリマーに対応するMW範囲にまたがる曲線の下の面積はカップリングしたポリマーの重量%を表し、カップリングしてないポリマーについても同様である。%CEは、100×(カップリングしたポリマーの重量%/カップリングしたポリマーの重量%+カップリングしてないポリマーの重量%)で与えられる。カップリング効率はまた、GPCからデータを計算し、(2アーム、3アーム、4アーム、等のコポリマーを含む)全てのカップリングしたポリマーのGPC曲線下の積分された面積を、カップリングした及びカップリングしてない両方のポリマーのGPC曲線下の積分された面積で割ることによってもまた測定され得る。
【0017】
「水素化レベル」は、水素化の際に飽和されることになる最初の不飽和結合の%を意味する。水素化されたビニル芳香族ポリマーの水素化のレベルは、プロトンNMRを用いて測定され得る。水素化されたジエンポリマーの水素化レベルは、プロトンNMRを用いて測定され得る。
【0018】
ブロックコポリマーの「ポリスチレン含量」又はPSCは、全てのビニル芳香族ブロックの分子量の和をブロックコポリマー全体の分子量で割ることにより計算される、ブロックコポリマー中のビニル芳香族、例えばポリスチレンの重量%を意味する。PSCは、プロトンNMRなどのあらゆる適切な方法を用いて測定され得る。
【0019】
「ポリ(ビニルシクロヘキサン)含量」又は「PVCH含量」は、ブロックコポリマー中のビニルシクロヘキサンの重量%を意味する。ビニルシクロヘキサンはブロックコポリマー内でビニル芳香族ブロックの水素化により形成される。PVCH含量は全てのビニルシクロヘキサンブロックの分子量の和をブロックコポリマー全体の分子量で割ることにより計算される。PVHC含量は、プロトンNMRによって測定され得る。
【0020】
「分子量」又はMWは、ポリマーブロック又はブロックコポリマーのkg/mol単位のスチレン当量分子量を意味する。MWは、例えばASTM D5296に従って行なわれるように、ポリスチレン較正標準を用いてゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定され得る。GPC検出器は紫外線若しくは屈折率検出器又はこれらの組合せであることができる。クロマトグラフは市販のポリスチレン分子量標準を用いて較正される。そのように較正されたGPCを用いて測定されるポリマーのMWはスチレン当量分子量又は見かけの分子量である。本明細書で示されるMWはGPCトレースのピークで測定され、一般にMと表されるスチレン当量「ピーク分子量」といわれる。
【0021】
ポリマーの「多分散性指数」又はPDIは、ポリマー鎖の大きさの範囲の指標としての、ポリマーの分子量の分布の程度である。PDIは、重量平均分子量(M)と数平均分子量(M)の比として計算される:PDI=M/M
【0022】
「ラジアル」は星形、対称に分岐した形状、又は非類似に分岐した形状、又は非対称に分岐した形状を意味し、これらと互換的に使用されている。
【0023】
本開示は、他の特徴の中でも優れた高温耐性及び光学的性質(例えば、曇価<10%)を有することで特徴付けられる完全に水素化された分岐ブロックコポリマー(f-HbBC)に関する。
【0024】
(完全に水素化された分岐ブロックコポリマー(f-HbBC))
f-HbBCは(S-B)X(s-B)、(s-B)X及びこれらの混合の一般構造を有するラジアルブロックコポリマーの混合物を含み、すなわちいくつかのラジアルコポリマーは(S-B)X(s-B)の構造を有し、いくつかは(s-B)Xの構造を有することを意味する。Xはカップリング剤の残基である。「n」、「m」及び「z」の指定は構造の各々における「アーム」又は「分岐」の数を意味する。複数の実施形態において、m>n、(m+n)は≧3であり、zは2~4の範囲であり、n≧1、m>0、m≧nである。複数の実施形態において、(m+n)は3~4の範囲であり、zは3~4の範囲である。
【0025】
複数の実施形態において、各々の(S-B)X(s-B)又は(s-B)Xは独立して2~25又は2~20又は2~15又は2~10又は2~7の範囲の数のアーム(分岐)を有する。
【0026】
複数の実施形態において、構造(S-B)X(s-B)を有するラジアルブロックコポリマーはm=nを有し、その値は1~20又は2~15又は3~10又は4~8の範囲である。
【0027】
複数の実施形態において、構造(S-B)X(s-B)を有するラジアルブロックコポリマーはラジアルブロックコポリマーの総重量を基準にして50~80又は50~70又は55~65又は>50又は<75重量%の量で存在し、n=1~2、m=1~3であり、ただしm+n=2~4である。
【0028】
複数の実施形態において、f-HbBCは他のアーム分布、例えば(s-B)、(s-B)、(s-B)等、及びカップリングしてないアーム(例えば、S-B及び/又はs-B)をf-HbBCの総重量を基準にして15~25又は15~20又は10~15又は8~12又は<25重量%の量で含有する。
【0029】
複数の実施形態において、z=2~4の構造(s-B)Xを有するラジアルブロックコポリマーは、ラジアルブロックコポリマーの総重量を基準にして20~40又は20~35又は20~30又は<40又は<35又は<30重量%の量で存在する。
【0030】
複数の実施形態において、組み合わせた(S-B)X(s-B)及び(s-B)X構造を有するラジアルブロックコポリマーはラジアルブロックコポリマーの総重量を基準にして>70又は>75又は70~85又は75~85又は70~80重量%の量で存在する。
【0031】
複数の実施形態において、f-HbBCは1:1~20:1又は1.5:1~15:1又は1.8:1~10:1又は2:1~5:1又は2.2:1~4:1又は>1又は>1.5の範囲の(s-B)Xに対する(S-B)X(s-B)の重量比を有する。
【0032】
複数の実施形態において、水素化の前、各々のブロックS及び「s」は独立してビニル芳香族モノマーのポリマーブロックであり、各々のブロックBは共役ジエンモノマーのポリマーブロックである。
【0033】
複数の実施形態において、ビニル芳香族モノマーはスチレン、オルト-メチルスチレン、パラ-メチルスチレン、パラ-エチルスチレン、パラ-n-プロピルスチレン、パラ-イソ-プロピルスチレン、パラ-tertブチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、アルファ-メチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン、パラ-デシルスチレンの異性体、パラ-ドデシルスチレンの異性体及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0034】
複数の実施形態において、共役ジエンモノマーはイソプレン、1,3-ブタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1-フェニル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、3-ブチル-1,3-オクタジエン、ファルネセン、ミルセン、ピペリレン、シクロヘキサジエン及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0035】
複数の実施形態において、ラジアルブロックコポリマーの混合物は混合物の総重量を基準にして少なくとも70又は>75又は>80又は>85又は<95又は70~95又は70~85又は70~80重量%の量のポリ(ビニルシクロヘキサン)(PVCH)含量を含む。PVCH含量はブロックS及び「s」の水素化の結果である。複数の実施形態において、ラジアルブロックコポリマーの混合物は混合物の総重量を基準にして<30又は<25又は<20又は5~30又は10~25又は15~30又は1~20重量%の量で共役ジエンモノマーの水素化されたポリマーブロックを含む。
【0036】
複数の実施形態において、f-HbBCは70~90%又は72~85%又は70~80%又は>70%又は<90%のカップリング効率(CE)を有する。
【0037】
複数の実施形態において、ラジアルブロックコポリマーの混合物は、GPC及び/又はh-NMRにより測定して少なくとも120又は>130又は>140又は>145又は120~250又は130~220又は140~200kg/molの分子量(M)を有するラジアルブロックコポリマーを少なくとも30%又は>35%又は>40%含有し、残りは<120kg/molの分子量(M)を有する。
【0038】
複数の実施形態において、ラジアルブロックコポリマーの混合物は、>100又は>105又は>110、>120又は>140又は100~700又は120~680kg/molの分子量(M)を有するラジアルブロックコポリマーを少なくとも60%又は>65%又は>68%又は>70%又は60~80%含む。複数の実施形態において、ラジアルブロックコポリマーの混合物は、<100kg/mol又は<95又は<90、<85又は<80又は5~100又は6~90又は10~85又は5~80kg/molの分子量(M)を有するラジアルブロックコポリマーを≦40%又は<35%又は<32%又は<30%又は20~40%含む。
【0039】
複数の実施形態において、ブロックSはブロック「s」の分子量(M)より高い分子量(M)を有する。複数の実施形態において、ブロックSは水素化に先立って100~150又は105~145又は110~140又は100~140又は110~150又は110~130又は110~120kg/molの分子量(M)を有する。複数の実施形態において、ブロック「s」は水素化に先立って5~15又は6~14又は7~12又は8~11又は>5又は<13kg/molの分子量(M)を有する。
【0040】
複数の実施形態において、f-HbBCは、水素化の先及び後に、f-HbBCの総重量を基準にして30~80又は35~75又は40~70又は45~65又は50~60又は>35又は<75重量%のビニル含量を有する。ビニル含量は水素化工程によってあまり変化しない(例えば、水素化前の値と比較して<10%変化する)ことに留意すべきである。
【0041】
複数の実施形態において、f-HbBCは完全に水素化されており、すなわち各々のブロックS及び「s」は>90%又は>92%又は>95%又は>97%又は>98%又は>99%又は100%までの水素化レベルを有する。水素化後、重合したブロックS及び「s」はポリ(ビニルシクロヘキサン)(PVCH)になる。各ブロックBは>90%又は>92%又は>95%又は>97%又は>98%又は>99%又は100%までの水素化レベルを有する。
【0042】
複数の実施形態において、f-HbBCは少なくとも70又は>75又は>80又は>85又は<95又は70~95又は70~85又は70~80重量%の水素化前の総ポリスチレン含量(PSC)及び水素化後の総PVCH含量を有する。
【0043】
複数の実施形態において、f-HbBCは30~800又は50~750又は60~700又は70~680又は30~680kg/molの分子量(M)を有する。
【0044】
複数の実施形態において、f-HbBCはGPCで測定して>1.20又は>1.40又は>1.50又は>1.70又は>1.80又は1.20~3.0又は1.30~2.80又は1.50~2.50又は1.60~2.0の多分散性指数(PDI)を有する。
【0045】
(f-HbBCを調製する方法)
f-HbBCは、開始剤の存在下溶液中(溶媒中)モノマーの逐次(又は連続的)重合、モノマー及び開始剤の段階的添加、続いて得られたブロックコポリマーのカップリング剤によるカップリング、及び最後の水素化段階により調製することができる。
【0046】
f-HbBCはまた、上記工程段階に従ってラジアルブロックコポリマーを別々に作成し、次いで溶液又は固体形態で一緒にブレンド又は混合して、全てのラジアルブロックコポリマーがその場で1つのポット内で作成されたf-HbBCと類似の性質をもつf-HbBCを形成することによって調製されてもよいということに留意すべきである。
【0047】
複数の実施形態において、f-HbBC構造(S-B)X(s-B)のブロック(S)は最初逐次重合で1種以上の重合開始剤による反応において必要に応じてビニル芳香族モノマーを添加してブロックを所望のMまで成長させて形成され、同時に((s-B)内の)より小さいブロック「s」を作成する。例えば、第1の開始剤供給及び第1のスチレン供給が行なわれてポリスチレンブロック(S)を生成し、続いて第2の開始剤供給及び第2のスチレン供給が行なわれ、スチレンブロックの2つの集団Ss及び「s」が生じる。第2の開始剤は第1の開始剤と同一又は異なることができる。第2の開始剤供給は第1の供給スチレンの重合後であるが、第2のスチレン供給量の添加の前又は同時である。
【0048】
本質的に全てのスチレンモノマーが消費され、所望の分子量のポリスチレンブロックが得られた後、共役ジエンモノマーが投入される。重合が続いてビニル芳香族/(アルファ-アルキルスチレン)コポリマーブロックセグメントが共役ジエンモノマー(及び順次任意選択的にビニル芳香族モノマー)と反応させられて構造(S-B)及び(s-B)を有する中間のブロックコポリマーを形成する。この時点で、適切なカップリング剤の投入によりカップリングが利用されてカップリングしたポリマー混合物(S-B)X(s-B)及び(s-B)Xの形成を引き起こすことができる。
【0049】
逐次重合段階の工程条件はアニオン重合で使用されるものと類似であり、好ましくは-30℃~150℃又は10℃~100℃又は30℃~90℃、不活性雰囲気中、例えば窒素中、又は0.5~65バールの圧力下である。重合反応は、温度、モノマー濃度、ポリマーの分子量、等を含めた要因に依存して5分~5時間又は<12時間続けることができる。
【0050】
カップリング反応の終了後、重合反応混合物は、任意選択的にプロトン供与体停止剤、例えば水、二酸化炭素、水素、アルコール、フェノール又は線状飽和脂肪族モノ-若しくはジ-カルボン酸で処理されて、水素化に先立ってポリマー開始剤と反応させる。
【0051】
複数の実施形態において、重合は通例溶媒、例えばエーテル、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、などの存在下で行なわれる。複数の実施形態において、混合溶媒系が飽和炭化水素及び直鎖又は環状エーテルと共に使用される。
【0052】
複数の実施形態において、重合段階で使用される溶媒の量はモノマー/溶媒混合物の総重量を基準にして50~90重量%である。
【0053】
複数の実施形態において、ポリマー中のビニル含量を所望のレベルに増大するために共重合変性剤が使用される。変性剤は共重合中コモノマーの組み込みの効率を改良するのに役立つ。例は極性変性剤、例えばジメチルエーテル、ジエチルエーテル、エチルメチルエーテル、エチルプロピルエーテル、等、及びキレート極性変性剤、例えば限定されないがジエトキシプロパン(DEP)、1,2-ジオキシ-エタン(ジオキソ)、1.2-ジメトキシ-エタン及びオルト-ジメトキシ-ベンゼン(ODMB)、等を含む。必要とされる変性剤の量はタイプに依存し、例えば非キレート極性変性剤、例えばジエチルエーテル(DEE)は通例溶媒プラス変性剤の重量を基準にして2~20又は4~8重量%の比較的高いレベルで最も効果的である。キレート極性変性剤、例えばDEP又はODMBが使用されるならば、50~1000ppm又は400~1000ppm又は500~700ppmのより低い量で使用される。
【0054】
重合開始剤の例はオルガノモノアルカリ金属化合物「RM」を含み、ここでRは4~8個の炭素原子を含有するアルキル、シクロアルキル又はアリール基、例えばn-ブチル基であり、Mはアルカリ金属、例えばリチウム、例えばアルキルリチウム化合物及び他の有機リチウム化合物、例えばs-ブチルリチウム、n-ブチルリチウム、t-ブチルリチウム、アミルリチウム、などであり、例えばm-ジイソプロペニルベンゼンのジ-sec-ブチルリチウム付加物などのジ開始剤を含む。複数の実施形態において、開始剤はs-ブチルリチウム及び/又はn-ブチルリチウムである。複数の実施形態において、開始剤は重合されるモノマーの総重量%を基準にして0.002~5又は0.005~4.5又は0.01~4又は0.015~3.8又は0.02~3.5重量%の量で使用される。
【0055】
カップリング剤の例は中でもジ-又はマルチビニルアレーン化合物;ジ-又はマルチエポキシド;ジ-又はマルチイソシアネート;ジ-又はマルチアルコキシシラン;ジ-又はマルチイミン;ジ-又はマルチアルデヒド;ジ-又はマルチケトン;アルコキシスズ化合物;ジ-又はマルチハライド、例えばハロゲン化ケイ素及びハロシラン;モノ-、ジ-又はマルチ無水物;ジ-又はマルチエステル、例えばモノアルコールのポリカルボン酸とのエステル;一価のアルコールとジカルボン酸とのエステルであるジエステル;一塩基酸とグリセロールなどのポリアルコールとのエステルであるジエステル;及び2種以上のかかる化合物の混合物を含む。カップリング剤は、ジビニルベンゼン、ジクロロエタン、ジブロモブタン、及びカルボン酸のエステルから選択することができる。
【0056】
シランをベースとするカップリング剤の例はビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリプロポキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルエトキシジメトキシシラン、ビニルエトキシジプロポキシシラン、プロペニルエトキシジメトキシシラン、プロペニルエトキシジプロポキシシラン又はこれらの混合物を含む。複数の実施形態において、カップリング剤はテトラ-アルコキシシラン、例えばテトラ-メトキシシラン、及びテトラ-エトキシシラン、又はトリ-アルコキシシラン、例えばメチルトリメトキシシランである。
【0057】
カップリング剤の他の例はポリエポキシド、ポリイソシアネート、ポリアミン、ポリアルデヒド、ポリハライド、ポリ無水物、ポリケトン、ポリポキシエステル、ポリエステル、及びこれらの混合物を含む。複数の実施形態において、カップリング剤はエポキシド化植物油、例えばエポキシド化大豆油、例えばアクリレート化エポキシド化大豆油、エポキシド化亜麻仁油及びこれらの混合物から選択される。
【0058】
複数の実施形態において、カップリング剤は重合されるモノマーの総重量を基準にして1~15又は2~14又は3~12又は5~10の量で使用される。
【0059】
逐次重合後、ポリマーは、水素化触媒の存在下、<350℃又は<250℃又は<100℃又は>50℃の温度及び500~900又は<1000又は>450psigの水素化圧力で水素化される。
【0060】
複数の実施形態において、水素化反応は重合反応に使用されたのと同じ溶媒又は異なる溶媒中で行なわれる。通例、重合段階から得られたポリマー溶液は、水素化に先立って、追加の溶媒でさらに希釈されて、水素化前の溶液の総重量を基準にして5~50又は10~40重量%の溶媒中ポリマーの重量とされる。
【0061】
複数の実施形態において、水素化は、触媒変性剤の不在下で、>90%の脂肪族不飽和が還元され、<30%の芳香族不飽和が還元されるまで起こる。この時点で複数の実施形態において、触媒変性剤、例えばルイス(Lewis)塩基、弱い有機酸、アルコール、アミン、等が加えられ、水素化が100~200℃又は175~225℃の上昇した温度、≧1000、1100~2000又は1200~1800psigの圧力下で>40%又は>75%の芳香族不飽和が還元されるまで続く。水素化段階の完了後、>95%又は>98%又は>99%の脂肪族不飽和が還元され、芳香族不飽和が少なくとも40%還元される。複数の実施形態において、各々のブロックB、S及び「s」の>95%の水素化レベルが独立に得られる。
【0062】
水素化期間の終了後、触媒残渣は、抽出、沈殿、ろ過又はその他の手段のいずれかにより除去することができる。水素化混合物は次いで、溶媒をフラッシュする又はポリマーを蒸気及び/又は熱水で凝固させるなどによりf-HbBCを回収するために処理される。
【0063】
水素化触媒の例は遷移金属触媒、例えばニッケル、コバルト又はこれらの組合せを含む。触媒は、分散したサブミクロン若しくはコロイド粒子として存在するあらゆる不均一系触媒、又は均一触媒であることができる。複数の実施形態において、触媒は、ニッケル又はコバルトカルボン酸塩又はアルコキシドを元素の周期表のI-A、II-A及びIII-B族から選択される金属のアルキル又は水素化物(「共触媒」)と組み合わせることにより調製される。複数の実施形態において、触媒はコバルト又はニッケルカルボン酸塩を他の金属アルキル、例えばn-ブチルリチウム及びsec-ブチルリチウムを含めたLiアルキル又は金属水素化物、例えば水素化リチウム及び水素化アルミニウムリチウムと反応させることにより形成される。反応の結果、コロイド懸濁液のように溶媒中に懸濁されて無限に留まるサブミクロン粒子が形成される。
【0064】
アルミニウムアルキル化合物の例は式RAlY3-nの有機アルミニウム化合物を含み、式中のRはC~C10又はC~Cの炭化水素基であり、Yは水素又はRであり、ここでRはRとは異なるC~C10の炭化水素基であり、nは1~3である。複数の実施形態において、アルミニウムアルキル化合物はトリアルキルアルミニウム化合物である。複数の実施形態において、アルミニウムアルキル化合物は1:1~20:1又は1:1~5:1又は1:1~2:1のコバルトに対するアルミニウムのモル比を有する。
【0065】
可溶性のニッケル又はコバルト化合物の例はニッケルカルボン酸塩、例えばオクタン酸ニッケル、ステアリン酸ニッケル、デカン酸ニッケル、ニッケルアセチルアセタノエート、ナフテン酸ニッケル、オクタン酸ニッケル;並びにコバルトカルボン酸塩、例えばステアリン酸コバルト、オクタン酸コバルト及びバーサチック酸コバルトを含む。複数の実施形態において、使用される触媒はコバルト及びニッケル(nick)触媒、例えばコバルトカルボン酸塩とニッケルカルボン酸塩の混合物である。複数の実施形態において、コバルト触媒が使用され、コバルトの量は水素化触媒中に存在する金属全体のモル基準で少なくとも10%又は25~75%又は少なくとも50%である。
【0066】
複数の実施形態において、水素化触媒は8~10族金属化合物を適切な溶媒中20~100℃の温度で1~120分1種以上のアルミニウムアルキルと接触させることにより調製される。適切な溶媒は脂肪族炭化水素、例えばヘキサン、ヘプタン、オクタンなど、脂環式炭化水素、例えばシクロペンタン、シクロヘキサンなど、アルキル置換脂環式炭化水素、例えばメチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン、メチルシクロオクタンなど、芳香族炭化水素、例えばベンゼン、ヒドロ芳香族炭化水素、例えばデカリン、テトラリンなど、アルキル置換芳香族炭化水素、例えばトルエン、キシレンなどを含む。
【0067】
(f-HbBCの特性)
複数の実施形態において、f-HbBCはASTM 4065に従ってDMAにより測定して>145℃又は>150℃又は>155℃又は>160℃又は145~200℃又は150~190℃又は155~180℃又は160~190℃のTを有する。
【0068】
複数の実施形態において、f-HbBCはASTM D1238に従って260℃、5kg荷重で測定して>0.1又は>0.5又は<10又は0.1~35又は0.5~25又は1~20又は1.5~15又は0.5~10g/10分のメルトフローレート(MFR)を有する。
【0069】
複数の実施形態において、f-HbBCはASTM D1525に従って測定して>125℃又は>130℃又は125~180℃又は130~160℃又は125~150℃のVICAT軟化点を有する。
【0070】
複数の実施形態において、f-HbBCはASTM D790に従って測定して少なくとも1500又は>1600又は>1700又は1500~3000又は1550~2500又は1600~2200又は1650~2000又は1600~1850MPaの曲げ弾性率を有する。
【0071】
複数の実施形態において、f-HbBCはASTM E23に従って25℃で測定して少なくとも20又は20~50又は25~45又は30~40又は20~40又は30~50kJ/mのノッチなしシャルピー衝撃を有する。
【0072】
複数の実施形態において、f-HbBCは射出成形後ASTM D955に従って測定して<4%又は<3.5%又は<3%又は<2.5%又は<2%又は0.5~4%又は0.6~2%の収縮率(縦方向)を有する。
【0073】
複数の実施形態において、フィルムがf-HbBCから調製される。複数の実施形態において、フィルムは10μm~5mm又は50μm~3mm又は100μm~2mm又は1mm~4mmの厚さを有する。
【0074】
複数の実施形態において、フィルムはASTM D1003に従って測定されて<15%又は<12%又は<10%又は<8%の曇価を有する。
【0075】
(用途)
高い光学及び高温耐性特性をもつf-HbBCは多くの用途、例えば光学フィルム、カメラに使用されるレンズ、携帯電話、投射機、センサー、照明用途、例えばTVバックライティングに使用される高輝度LED、LCD、交通信号灯及び自動車用ライト並びに一般的照明目的に特に有用である。f-HbBCはまた、優れたUV耐性が要求される有機薄膜太陽電池用途にも適している。f-HbBCはその高いTによりハイパワーレンズ用途に適している。f-HbBCはまた、多くの透明な医療機器用途及び梱包用途においてポリプロピレン、ポリエチレン、環状オレフィンポリマー及びコポリマー、ポリアミド等の他のポリマーのための変性剤としても使用されてもよい。その他の用途は二次加工品、熱成形品、押出成形品、射出成形品、フィルム、及び発泡体を含む。
【実施例0076】
以下の実施例は限定的でないことが意図されている。
【0077】
実施例の測定方法は以下を含む:
ガラス転移温度(T)は、ASTM 4065に従ってTA機器DMA Q800を用いて引張り振動モードにおいて振動数1Hz及び歪み振幅1%で動的機械分析(DMA)により測定した。硬い相(ビニル芳香族モノマーから得られたブロック)のTを表す最も高い温度でのtan δピークがf-HbBCのTと考えられる。
【0078】
f-HbBC内のラジアルブロックコポリマーはGPC及びプロトンNMRを用いることにより確認されてもよい。代表的なGPCカラムはPolymer Laboratories製であり(PL-GPC)、温度範囲は30~220℃で、マルチヒーターオーブンを含有していて温度を0.05℃以内に調節する。ラジアルブロックコポリマーは、GPC曲線の多数のピークによって示すことができる(例えば分子量、量、等)。
【0079】
実施例で使用した成分は以下を含む:
CE-1は、特開2021-042329号公報に開示されている65mol%の水素化されたポリスチレン(水素化レベル>99%)及び35mol%の水素化された共役ジエンポリマーブロック(水素化レベル>99%)を有するペンタブロックコポリマー(ポリシクロヘキシルエチレン-エチレン-1-ブテン-ポリシクロヘキシルエチレン)である。
【0080】
CE-2は、米国特許第3639517号明細書に開示されているスチレン及びブタジエンの多モード分岐ブロックコポリマーである。
【0081】
(実施例1 - 水素化されてない分岐ブロックコポリマー前駆体)
水素化されてない分岐ブロックコポリマー(又は前駆体ポリマー)の調製は以下の通り行なった。458lbs.のシクロヘキサン及び89lbs.のスチレンを反応器容器に投入した。s-ブチルリチウムのシクロヘキサン中およそ12重量%溶液0.77lbs.を加えて重合を開始した。反応温度を60℃より低く維持するような速度で追加の60lbs.のスチレンを加えた。スチレンの重合完了後、追加の4.65lbs.のs-ブチルリチウム溶液を加えた。得られた溶液を41lbs.のシクロヘキサンフラッシュと共に77lbs.のスチレンと混合して、最初のポリスチレンブロックの鎖延長により高分子量鎖の集団、及び第2の供給開始剤との反応から生じた低分子量鎖の集団を生成した。
【0082】
供給したスチレンの重合完了後、75lbs.のブタジエンを加え、重合させて高分子量の高いポリスチレン含量鎖(S-B)及びより低い分子量のより低いポリスチレン含量鎖(s-B)の集団を生じさせた。これらの鎖を、1lbs.のエポキシド化大豆油を加え、続いて0.03lbs.のメタノールを加えて完全な終了を確実にすることによって、カップリングした。
【0083】
(実施例2 - f-HbBCポリマー)
実施例1で調製した前駆体ポリマー90グラムをシクロヘキサンに溶かして10重量%溶液とした。このポリマー溶液及びシクロヘキサン溶液中6~9グラムのコバルト水素化触媒を反応器に投入した。温度及び圧力を16時間かけて徐々に200℃及び80psigに増大し、その間27グラムの追加の触媒をポリスチレンの変換率が>97%になるまで加えた。溶液を酸性の水と接触させて金属を抽出した後中和した。0.05重量%の各酸化防止剤Irganox 1010及びIrgafos 168を加え、f-HbBC((S-B)X(s-B)及び(s-B)Xの混合物;n≧1、m+n≧3、z=2~4)を沈殿により回収し、真空オーブンで乾燥した。ジエン及びポリスチレンの残留不飽和はそれぞれ<2%及び<3%であった。
【0084】
f-HbBCのGPC分析は図1に示した通りであり、71%のラジアルブロックコポリマーが>100kg/molの分子量(M)を有し、29%のラジアルブロックコポリマーが<100kg/molの分子量(M)を有する。
【0085】
f-HbBCの組成の詳細を表1に示す。表2はf-HbBC及び比較例の特性を比較する。
【0086】
【表1】
【0087】
f-HbBCが従来技術のブロックポリマー、ペンタブロック(CE-1)及び多モード分岐ブロックコポリマー(CE-2)と比較される。
【0088】
【表2】
【0089】
示されているように、実施例2のf-HbBCは比較例CE-1と比べてずっと良好なシャルピー衝撃(ノッチなし)及びTを示し、なお低い曇価値を保持する。比較例CE-2などのポリスチレンブロック(水素化されてない)のTはホモポリスチレンの理論的な最高Tである105℃を超えることができないということは公知である。
【0090】
本明細書で使用されるとき、用語「含む(comprising)」は、その用語の後に特定される要素若しくは段階を含むが、いずれのかかる要素若しくは段階も網羅的ではなく、またある実施形態は他の要素若しくは段階を含むことができるということを意味する。本明細書で様々な態様を記載するために用語「含む(comprising)」及び「含む(including)」が使用されてきたが、本開示のより特定の態様を提供するために「含む(comprising)」及び「含む(including)」の代わりに用語「から本質的になる(consisting essentially of)」及び「からなる(consisting of)」が使用されてもよく、同様に開示されている。
図1
【外国語明細書】