(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173938
(43)【公開日】2024-12-13
(54)【発明の名称】組み合わせ療法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/7036 20060101AFI20241206BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20241206BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241206BHJP
A61K 31/155 20060101ALI20241206BHJP
A61K 31/255 20060101ALI20241206BHJP
A61K 31/4168 20060101ALI20241206BHJP
A61K 31/175 20060101ALI20241206BHJP
A61K 31/4188 20060101ALI20241206BHJP
A61K 31/15 20060101ALI20241206BHJP
【FI】
A61K31/7036
A61P31/04
A61P43/00 121
A61K31/155
A61K31/255
A61K31/4168
A61K31/175
A61K31/4188
A61K31/15
【審査請求】有
【請求項の数】19
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024150442
(22)【出願日】2024-09-02
(62)【分割の表示】P 2021541324の分割
【原出願日】2019-09-25
(31)【優先権主張番号】1815579.6
(32)【優先日】2018-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(71)【出願人】
【識別番号】519340400
【氏名又は名称】インペリアル・カレッジ・イノベーションズ・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】IMPERIAL COLLEGE INNOVATIONS LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】サーキーズ,ピーター
(57)【要約】
【課題】抗生物質及びアルキル化薬の組み合わせ療法並びに医薬としての及び病原体のコントロールのためのその使用の提供。
【解決手段】本発明は、病原体による感染症を処置するのに使用するための治療上の組み合わせを提供する。治療上の組み合わせは、アミノグリコシド系抗生物質及びアルキル基により核酸の単一のヌクレオチドを置換する核酸モノアルキル化薬を含み、治療上の組み合わせは、前記アミノグリコシド系抗生物質を欠く以外は同一の組成物と比較した場合に、病原体の抑制の向上を提供するか、又は治療上の組み合わせは、前記核酸モノアルキル化薬を欠く以外は同一の組成物と比較した場合に、病原体の抑制の向上を提供し、並びに前記方法を実行するためのキットを含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
病原体による感染症を処置するのに使用するための治療上の組み合わせであって
a.アミノグリコシド系抗生物質と、
b.アルキル基により核酸の単一のヌクレオチドを置換する核酸モノアルキル化薬と、
を含み、
前記アミノグリコシド系抗生物質を欠く以外は同一の組成物と比較した場合に、病原体の抑制の向上を提供するか、又は
前記核酸モノアルキル化薬を欠く以外は同一の組成物と比較した場合に、病原体の抑制の向上を提供する、治療上の組み合わせ。
【請求項2】
前記アミノグリコシド系抗生物質は、前記核酸モノアルキル化薬の前に、それと同時に、又はそれに続いて投与される、請求項1に記載の使用のための治療上の組み合わせ。
【請求項3】
前記病原体は、細菌である、請求項1又は請求項2に記載の使用のための治療上の組み合わせ。
【請求項4】
前記病原体は、アルキル化されたヌクレオチド付加物からアルキル基を除去するポリペプチドをコードする1つ以上の遺伝子を欠く、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用のための治療上の組み合わせ。
【請求項5】
前記アルキル化されたヌクレオチド付加物は、3meC、3meG、3meA、8-オキソ-G、O2-アルキルチミン、O4-アルキルチミン、O6-メチルグアニン、及びO6-エチルグアニンから選択される1つ以上である、好ましくは、3meC、3meG、3meA、O2-アルキルチミン、O4-アルキルチミン、O6-メチルグアニン、及びO6-エチルグアニンから選択される1つ以上である、請求項4に記載の使用のための治療上の組み合わせ。
【請求項6】
前記遺伝子は、alkA及びalkBから選択される1つ以上である、好ましくはalkBである、請求項4又は請求項5に記載の使用のための治療上の組み合わせ。
【請求項7】
前記病原体は、細胞の核酸内のアルキル化されたヌクレオチド付加物の存在に対して、前記細胞の耐性を促進するポリペプチドをコードする1つ以上の遺伝子を欠き、好ましくは、前記アルキル化されたヌクレオチド付加物は、3meC、3meG、3meA、8-オキソ-G、O2-アルキルチミン、O4-アルキルチミン、O6-メチルグアニン、及びO6-エチルグアニンから選択される1つ以上である、請求項1~6のいずれか一項に記載の使用のための治療上の組み合わせ。
【請求項8】
前記1つ以上の遺伝子は、Ada、OGT、RecA、DinB、及びUmuCDから選択される、請求項7に記載の使用のための治療上の組み合わせ。
【請求項9】
前記病原体は、サルモネラ(好ましくはS.エンテリカ(S.enterica))細菌、シュードモナス(好ましくは緑膿菌(P.aeruginosa))細菌、及びマイコバクテリウム(好ましくは結核菌(M.tuberculosis))細菌から選択される1つ以上である、請求項1~8のいずれか一項に記載の使用のための治療上の組み合わせ。
【請求項10】
前記アミノグリコシド系抗生物質は、カナマイシン、アミカシン、トブラマイシン、ジベカシン、ゲンタマイシン、シソマイシン、ネチルマイシン、ネオマイシン、及びストレプトマイシン又はその塩から選択される1つ以上である、好ましくは、カナマイシン、アミカシン、トブラマイシン、ジベカシン、シソマイシン、ネチルマイシン、ネオマイシン、及びストレプトマイシン又はその塩から選択される1つ以上である、請求項1~9のいずれか一項に記載の使用のための治療上の組み合わせ。
【請求項11】
前記アミノグリコシド系抗生物質は、カナマイシンである、請求項1~10のいずれか一項に記載の使用のための治療上の組み合わせ。
【請求項12】
前記核酸モノアルキル化薬は、N-メチル-N’-ニトロ-N-ニトロソグアニジン(MNNG)、メタンスルホン酸メチル(MMS)、ダカルバジン、メチルニトロソ尿素(MMU)、メタンスルホン酸エチル(EMS)、テモゾロミド(TMZ)、エチルニトロソ尿素(ENU)、ジエチルニトロソアミン(DEN)、及びN-ニトロソ-N-メチル尿素(NMU)から選択される1つ以上である、請求項1~11のいずれか一項に記載の使用のための治療上の組み合わせ。
【請求項13】
前記核酸モノアルキル化薬は、メタンスルホン酸メチル(MMS)である、請求項1~12のいずれか一項に記載の使用のための治療上の組み合わせ。
【請求項14】
前記核酸モノアルキル化薬は、アルキル基により核酸のヌクレオチドを置換して、3meC、3meG、3meA、8-オキソ-G、O2-アルキルチミン、O4-アルキルチミン、O6-メチルグアニン、及びO6-エチルグアニンから選択される1つ以上のアルキル化されたヌクレオチド付加物、好ましくは、3meC、3meG、3meA、O2-アルキルチミン、O4-アルキルチミン、O6-メチルグアニン、及びO6-エチルグアニンから選択される1つ以上のアルキル化されたヌクレオチド付加物をもたらす、請求項1~13のいずれか一項に記載の使用のための治療上の組み合わせ。
【請求項15】
インビトロにおける消毒薬としての薬の組み合わせの使用であって、
前記薬の組み合わせが、
a.アミノグリコシド系抗生物質と、
b.アルキル基により核酸の単一のヌクレオチドを置換する核酸モノアルキル化薬と、
を含み、
前記薬の組み合わせが、前記アミノグリコシド系抗生物質を欠く以外は同一の組成物と比較した場合に、病原体の抑制の向上を提供するか、又は
前記薬の組み合わせが、前記核酸モノアルキル化薬を欠く以外は同一の組成物と比較した場合に、病原体の抑制の向上を提供する、使用。
【請求項16】
前記薬の組み合わせを、病原体を含む場所、病原体を含むことが疑われる場所に、又は病原体を含むリスクがある場所に投薬することを含む、請求項15に記載の使用。
【請求項17】
前記投薬は、約1mM~約200mMの前記場所での前記アミノグリコシド系抗生物質及び前記核酸モノアルキル化薬の局所的な濃度、好ましくは
a.約80mM~約120mMの前記アミノグリコシド系抗生物質の局所的な濃度及び/又は
b.約1mM~約40mMの前記核酸モノアルキル化薬の局所的な濃度
を提供することを含む、請求項16に記載の使用。
【請求項18】
アミノグリコシド系抗生物質によって病原体の抑制を向上させるための核酸モノアルキル化薬の使用であって、前記核酸モノアルキル化薬が、アルキル基により核酸の単一のヌクレオチドを置換する核酸モノアルキル化薬である、使用。
【請求項19】
癌を処置するのに使用するための治療上の組み合わせであって、
a.アミノグリコシド系抗生物質と、
b.アルキル基により核酸の単一のヌクレオチドを置換する核酸モノアルキル化薬と、
を含み、
前記アミノグリコシド系抗生物質を欠く以外は同一の組成物と比較した場合に、癌の抑制の向上を提供するか、又は
前記核酸モノアルキル化薬を欠く以外は同一の組成物と比較した場合に、癌の抑制の向上を提供する、治療上の組み合わせ。
【請求項20】
前記癌は、膠芽腫(たとえば多形性膠芽腫)、急性骨髄性白血病、乳癌、白血病、リンパ腫、ホジキン病、多発性骨髄腫、肉腫、肺癌(小及び/又は非小細胞肺癌)、卵巣癌、星状細胞腫、骨肉腫、非ホジキンリンパ腫、慢性リンパ性白血病、骨髄腫、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、小細胞肺癌、神経芽細胞腫、精巣癌、軟部組織肉腫、骨原性肉腫、膀胱癌、小細胞肺癌、子宮頸癌、膵癌、神経内分泌腫瘍、真性赤血球増加症、骨髄様化生、線維肉腫、横紋筋肉腫、島細胞がん、髄様甲状腺癌、未分化星状細胞腫、頭頸部癌、食道癌、胃癌、前立腺癌、中皮腫、及び子宮内膜癌から選択される1つ以上である、請求項19に記載の使用のための治療上の組み合わせ。
【請求項21】
前記癌の癌細胞(たとえば腫瘍)は、参照標準におけるDNMTの発現レベルよりも高いDNMTの発現レベルを含み、前記参照標準は、健康な細胞由来のものである、請求項19又は20に記載の使用のための治療上の組み合わせ。
【請求項22】
前記癌の癌細胞(たとえば腫瘍)は、参照標準におけるalkBの発現レベルよりも高いalkBの発現レベルを含み、前記参照標準は、健康な細胞由来のものである、請求項19~21のいずれか一項に記載の使用のための治療上の組み合わせ。
【請求項23】
a.アミノグリコシド系抗生物質と、
b.アルキル基により核酸の単一のヌクレオチドを置換する核酸モノアルキル化薬と、
を含むキット。
【請求項24】
前記アミノグリコシド系抗生物質及び前記核酸モノアルキル化薬は、同じ組成物内に又は別々の組成内に含まれる、請求項23に記載のキット。
【請求項25】
a.病原体による感染症を処置するための方法においてキットを使用するための説明書、
b.インビトロにおける消毒薬としてキットを使用するための説明書、
c.病原体を抑制するためのインビトロにおける方法においてキットを使用するための説明書、及び/又は
d.癌を処置するための方法においてキットを使用するための説明書、
をさらに含む、請求項23又は24に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗生物質及びアルキル化薬の組み合わせ療法並びに医薬としての及び病原体のコントロールのためのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
DNAのアルキル化は、転移因子(TE)、サイレンシング、及び遺伝子調節などのような重要な機能と共に、真核生物における重要な調節メカニズムである。特に、シトシンの5位でのDNAメチル化(5-メチルシトシン、5meC)は、真核生物において鍵となるエピジェネティックなマークであり、これは、DNAメチルトランスフェラーゼ(DNMT)活性を介して、DNA複製を通して維持することができる。
【0003】
化学療法は、特定のDNAアルキル化現象が有毒であるという事実を活用したものであり(3-メチルシトシン、3meCなど)、このように、癌細胞に細胞毒性をもたらすDNA損傷の導入を誘発するためにアルキル化薬を使用してきた。そのような化学療法は、たとえばプリン環の第7番目の窒素原子での、アルキル基によるグアニンの置換を通常もたらすアルキル化抗腫瘍薬の使用にもっぱら集中してきた。
【0004】
しかしながら、そのようなアルキル化薬は、主として、それらの使用を、定められた療法(たとえば癌療法)に制限した代表的なアルキル化薬の危険な性質のために、抗菌剤としてごく普通のものとして実用化されることはなかった。発明者らの知る限り、アルキル化薬が、感染症(たとえば細菌感染症)のごく普通の処置として使用されたという報告はなく、特に、このような処置には、化学療法において見られるアルキル化薬の副作用を同様にもたらす投薬量は必要とされない。このことを実証してみたところ、発明者らは、野生型の細菌の成長が、アルキル化薬の存在下において抑制されないことを発見した(実施例1を参照)。後者は、有毒なDNAアルキル化をコントロールする/逆転させる、細胞(たとえば細菌細胞)中の酵素の存在によって、悪化することがあり、そのような酵素によって影響を及ぼされ得るアルキル化薬の用量では効力が低くなることがある。実際に、有毒な3-メチルシトシン(3meC)のアルキル化は、AlkB(及びそのホモログ)によって逆転し、発明者らは、このメカニズムが、驚くべきことに「オフターゲットの」3meCアルキル化(AlkBによってコントロールされる)及び5meCアルキル化をもたらすDNAメチルトランスフェラーゼ活性と共に進化したように思われることを、最近発見した。
【0005】
そのため、アルキル化薬を有する組成物の細胞毒性効果を向上させ、化学療法を超える、療法におけるそれらの実用性を可能にする手段及び方法が必要とされる。
【0006】
本発明は、1つ以上の上述の問題について検討する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、抗生物質(たとえばアミノグリコシド系抗生物質)が、単官能性アルキル化薬(たとえばモノアルキル化薬(monoalkylating agent))と相乗的に作用して、有毒な組み合わせをもたらし、これらの薬の組み合わせとの接触の後に細胞傷害活性を増加させるように使用することができるという驚くべき発見に基づく。したがって、本発明の独創性に富んだ発見は、組み合わせ療法が、現存している化学療法剤の効力を増加させるだけでなく、病原性感染症、病原体全般を標的にするためにも用いることができるというものである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
一態様において、本発明は、病原体による感染症を処置するために使用するための治療上の組み合わせであって、
a.抗生物質及び
b.アルキル基(たとえばメチル基)により核酸の単一のヌクレオチドを置換する核酸モノアルキル化薬
を含む、治療上の組み合わせを提供する。
【0009】
本発明の別の態様は、病原体による感染症を有する対象を処置するための方法であって、対象に治療上の組み合わせを投与することを含み、前記治療上の組み合わせは、
a.抗生物質(好ましくはアミノグリコシド系抗生物質)及び
b.アルキル基(たとえばメチル基)により核酸の単一のヌクレオチドを置換する核酸モノアルキル化薬
を含む、方法を提供する。
【0010】
別の態様において、
a.抗生物質(好ましくはアミノグリコシド)及び
b.アルキル基により核酸の単一のヌクレオチドを置換する核酸モノアルキル化薬
を含む、治療上の組み合わせ(たとえば組成物)が、提供される。
【0011】
一実施形態において、前記抗生物質は、アミノグリコシド系抗生物質、ペニシリン系抗生物質、セファロスポリン系抗生物質、マクロライド系抗生物質、フルオロキノロン系抗生物質、スルホンアミド系抗生物質、及びテトラサイクリン系抗生物質又はその組み合わせから選択される1つ以上である。一実施形態において、前記抗生物質は、アミノグリコシド系抗生物質、ペニシリン系抗生物質、セファロスポリン系抗生物質、マクロライド系抗生物質、フルオロキノロン系抗生物質、スルホンアミド系抗生物質、又はその組み合わせから選択される1つ以上である。
【0012】
好ましい実施形態において、前記抗生物質は、アミノグリコシド系抗生物質である。
【0013】
一態様において、本発明は、病原体による感染症を処置するために使用するための治療上の組み合わせであって、前記治療上の組み合わせは、
a.アミノグリコシド系抗生物質及び
b.アルキル基により核酸の単一のヌクレオチドを置換する核酸モノアルキル化薬
を含む、治療上の組み合わせを提供する。
【0014】
別の態様において、
a.アミノグリコシド系抗生物質及び
b.アルキル基により核酸の単一のヌクレオチドを置換する核酸モノアルキル化薬
を含む、治療上の組み合わせ(たとえば組成物)が、提供される。
【0015】
以下の実施形態及び定義は、本明細書において記載される本発明の任意の態様又は実施形態に、たとえば、本明細書において記載される任意の方法、使用、組成物、治療上の組み合わせ、使用のための治療上の組み合わせ、使用のための薬の組み合わせ、キット、又は使用のためのキットについての任意の態様又は実施形態に当てはめられてもよい。
【0016】
一実施形態において、治療上の組み合わせは、前記抗生物質を欠く以外は同一の組成物と比較した場合に、病原体の抑制の向上を提供する(好ましくは、抗生物質は、アミノグリコシド系抗生物質である)。一実施形態において、治療上の組み合わせは、前記核酸モノアルキル化薬(アルキル基により核酸の単一のヌクレオチドを置換する)を欠く以外は同一の組成物と比較した場合に、病原体の抑制の向上を提供する。
【0017】
一実施形態において、治療上の組み合わせは、前記抗生物質を欠く以外は同一の組成物と比較した場合に、病原体による感染症の抑制の向上を提供する(好ましくは、抗生物質は、アミノグリコシド系抗生物質である)。一実施形態において、治療上の組み合わせは、前記核酸モノアルキル化薬(アルキル基により核酸の単一のヌクレオチドを置換する)を欠く以外は同一の組成物と比較した場合に、病原体による感染症の抑制の向上を提供する。
【0018】
「病原体による感染」という用語は、「病原体によって引き起こされる感染」という用語と同じ意味で使用されてもよい。
【0019】
「核酸モノアルキル化薬」という用語は、本明細書において、「単官能性アルキル化薬」という用語と同じ意味で使用される。前記用語は、メチル基などのようなアルキル基により、核酸(又はより詳細には前記核酸のヌクレオチド)を置換する薬を指す。好ましくは、核酸モノアルキル化薬(たとえば単官能性アルキル化薬)は、単一のアルキル基(たとえばメチル基)により、単一のヌクレオチドを置換する。
【0020】
本明細書において記載される「核モノアルキル化薬」は、アルキル基により、核酸の単一のヌクレオチドを置換する核モノアルキル化薬である。
【0021】
そのようなモノアルキル化薬によって引き起こされるヌクレオチドアルキル化は、前記薬が細胞毒性を引き起こすような、永久的なものとなることがあるDNA損傷の形態である。モノアルキル化薬は、核酸アルキル化薬の1つの大まかな分類であり、もう一つの分類は、「二官能性アルキル化薬」である。二官能性アルキル化薬は、通常、アルキル基により、少なくとも2つのヌクレオチドを置換する。
【0022】
二官能性アルキル化薬は、構造的にも、機能的にも、単官能性アルキル化薬とは別である。たとえば、モノアルキル化薬は、通常、ヌクレオチドを置換するための(前記アルキル基により)単一のアルキル基を有するが、二官能性アルキル化薬は、通常、ヌクレオチドを置換するための、少なくとも2つのそのようなアルキル基を有する。さらに、DNAに接触した際に、二官能性アルキル化薬は、通常、鎖内及び/又は鎖間架橋を引き起こし、これは、2つの異なるヌクレオチドに(たとえば2つの異なる鎖に)存在する2つの異なるアルキル置換基の間の相互作用によるものと理解されている。
【0023】
そのようなアルキル化薬によって引き起こされる異なるタイプのDNA損傷はまた、前記損傷を取り除く又はそれに耐えるためのDNA修復の異なるモード(たとえば異なるDNA修復経路)をも必要とする。たとえば、3meCなどのような単一のアルキル化ヌクレオチド(モノアルキル化薬)は、除去されることがあり(たとえば塩基切除修復によって)又は修復されることがあり(たとえばアルキル基のAlkB触媒による除去を介して)、細胞生存が可能になることがある。対照的に、鎖間架橋修復メカニズムは、複雑で、DNA複製機構にとって非常にやっかいな障害となることが理解されている。たとえば、架橋DNA(二官能性アルキル化薬によって引き起こされる)の効率的な修復のためには、FA修復、NER、損傷乗り越え合成(TLS)、及びHR修復の組み合わせが必要となることがある。
【0024】
このように、モノアルキル化薬は、好都合なことに、本発明の治療上の組み合わせが用いられる対象にとって、それほど有毒でないことがあり(二官能性アルキル化薬と比べて)、対象の細胞は、通常、結果として生じるDNA損傷を除去する/修復する能力がすぐれているのに対して、標的細胞(たとえば病原体)は、そのような結果として生じるDNA損傷を除去する/修復する能力がそれほど十分にない(たとえば、病原体がalkbホモログを欠く場合)。このように、治療上の組み合わせの効果は、病原体(たとえば細菌)に対して特異的であることがあり、(感染した)対象の細胞に対して「オフターゲットの」影響をそれほど引き起こさないことがある(モノアルキル化薬の代わりに二官能性アルキル化薬を含む以外は同一の組み合わせと比べて)。
【0025】
一実施形態において、核酸モノアルキル化薬は、単一のアルキル基(たとえば単一の反応性アルキル基)を含む。
【0026】
一実施形態において、本明細書において記載される核酸モノアルキル化薬は、DNA鎖内及び/又は鎖間架橋を引き起こさない(たとえばDNAに接触した際に)。
【0027】
一実施形態において、本明細書において記載される核酸モノアルキル化薬は、SN1及び/又はSN2型の薬である。たとえば、核酸モノアルキル化薬は、SN1型の薬であってもよい。その代わりに(又はそのうえ)、核酸モノアルキル化薬は、SN2型の薬であってもよい。
【0028】
「処置すること」という用語は、感染症が処置される(たとえば、感染症が除去される)、抑制される、若しくは低下するか又は感染症の症状が低下することを意味してもよい。好ましくは、前記処置することは、治療上の組み合わせの投与の直前よりも、本発明の治療上の組み合わせが投与される対象の感染のレベルが低下している臨床エンドポイントを提供するために使用される。
【0029】
本明細書において使用される「処置する」又は「処置すること」という用語は、予防的処置(たとえば疾患の発症を予防するための)及び是正処置(疾患をすでに患っている対象の処置)を包含する。好ましくは、本明細書において使用される「処置する」又は「処置すること」は、是正処置を意味する。「処置する」又は「処置すること」という用語は、疾患及び/又は感染症並びにその症状の両方を処置することを包含する。いくつかの実施形態では、「処置する」又は「処置すること」は、疾患及び/又は感染症の症状に関連している。
【0030】
そのため、本発明の治療上の組み合わせは、治療有効量又は予防有効量で対象に投与されてもよい。
【0031】
「治療有効量」は、疾患及び/又は感染症(又はその症状)を処置するために対象に単独で又は組み合わせて投与された場合に、疾患及び/又は感染症又はその症状の前述の処置を達成するのに十分である治療上の組み合わせの任意の量である。
【0032】
「予防有効量」は、対象に単独で又は組み合わせて投与された場合に、疾患及び/又は感染症(又はその症状)の発症又は再発を阻害するか又は遅延させる、治療上の組み合わせの任意の量である。いくつかの実施形態では、予防有効量は、完全に、疾患及び/又は感染症の発症又は再発を予防する。発症を「阻害すること」は、疾患及び/又は感染症(又はその症状)の発症の可能性を小さくすること又は完全に発症を予防することを意味する。
【0033】
理論によって束縛されることを望むものではないが、抗生物質(アミノグリコシド系抗生物質)は、核酸モノアルキル化薬の活性を向上させると考えられるか又は逆もまた同様である。したがって、これらの薬(たとえば医薬品)の組み合わせにより処置される細胞又は病原体(たとえば細菌)は、モノアルキル化薬単独で処置される細胞又は病原体と比較して、核酸(たとえばヌクレオチド)アルキル化(たとえば3meCを引き起こす)のレベルの増加を受け、細胞又は病原体の成長は、その結果として、有毒な核酸損傷のために抑制される。したがって、抗生物質(たとえばアミノグリコシド系抗生物質)による処置は、モノアルキル化薬に対する細胞/病原体の感度を高め、その効力を改善してもよい(又は逆もまた同様)。この相乗作用は、アミノグリコシド系抗生物質に対して感受性である細菌細胞に限られず(たとえばコニカルメカニズム(conical mechanism)を介して)、実際に、試験された例示的なアミノグリコシド系抗生物質に対して抵抗性を有する細菌細胞(たとえば抵抗性を与える遺伝子を含む)において観察されている(実施例1を参照)。
【0034】
したがって、一態様において、アルキル基により単一のヌクレオチドを置換する核酸モノアルキル化薬によって核酸の(たとえば前記核酸のヌクレオチドの)アルキル化を向上させるための抗生物質の使用が、提供される。前記核酸は、RNAであってもDNAであってもよい(好ましくはDNA)。
【0035】
一態様において、さらなる核酸モノアルキル化薬によって核酸の(たとえば前記核酸のヌクレオチドの)アルキル化を向上させるためのアミノグリコシド系抗生物質の使用が、提供される。前記核酸は、RNAであってもDNAであってもよい(好ましくはDNA)。
【0036】
核酸モノアルキル化薬の活性を向上させる(たとえば相乗効果的に向上させる)抗生物質(たとえばアミノグリコシド系抗生物質)についてのこの新たに発見された有用性は、特に驚くべきことであり、たとえば、アミノグリコシド系抗生物質は、これまで、リボソーム活性の破壊物質として主に用いられてきた(細胞毒性を誘発する方法と別のメカニズム)。したがって、発明者らは、新しい技術的応用分野をつきとめただけでなく(すなわち、従来の抗生物質療法の分野を超える)、前記分野での予想外の技術的効果をもつきとめた(すなわち、核酸モノアルキル化薬の活性の向上)。
【0037】
好都合なことに、この組み合わせ療法(使用のための治療上の組み合わせ)は、普通はそのような抗生物質に対して不活性である(非応答性である)細胞/生物(たとえば非細菌性細胞/生物又は抗生物質抵抗性の細菌)を標的にするための、そのような抗生物質の意図的な使用を提供する。さらに、組み合わせの相乗的な性質により、より低用量の抗生物質及びアルキル化薬が、用いられてもよく、したがって、使い過ぎによる抗生物質抵抗性(公衆衛生への根深い脅威)の発生のリスクを低下させてもよい。実際に、本発明は、免疫無防備状態の対象に対する、長期にわたる抗生物質レジメンの処方の必要性を低下させる。
【0038】
多くの抗生物質が比較的廉価であるので、本発明の治療上の組み合わせの向上は、療法に必要とされる、通常高価なモノアルキル化薬の量の減少により、公衆衛生機関及び患者にとってかなりのコスト削減策となる。
【0039】
さらに、本発明は、従来の用量では毒性があるためにめったに使用されない抗生物質を臨床で使用することを可能にする。実際に、治療上の組み合わせは(必要な治療用量を下げることによって)、そのような抗生物質の用途を広げる。
【0040】
組み合わせ療法の構成成分の投薬/投与の順序は、変えることができる。抗生物質(たとえばアミノグリコシド系抗生物質)及び核酸モノアルキル化薬は、単一の組成物の一部として又は別々の組成物内で、同時に投与することができる(たとえば、ともに、相乗作用を実現するためのそれぞれ特定の最適な用量で)。たとえば、モノアルキル化薬は、第1の組成物中に存在してもよく(たとえば対象に対する静脈内投与のための)、抗生物質は、第2の組成物中に存在してもよい(たとえば対象に対する経口投与のための)。
【0041】
さらに、抗生物質(好ましくはアミノグリコシド系抗生物質)及び核酸モノアルキル化薬は、異なる時間に投与されてもよい(たとえば、アミノグリコシド系抗生物質は、アルキル化薬に対する細胞の感度を高めるために先に投与されてもよい)。したがって、さらなる実施形態では、アミノグリコシド系抗生物質及び核酸モノアルキル化薬は、別々の組成物内で、異なる時間に対象に投与される。
【0042】
一実施形態において、抗生物質(好ましくはアミノグリコシド系抗生物質)は、核酸モノアルキル化薬の前に投与される。一実施形態において、抗生物質は、核酸モノアルキル化薬と同時に投与される。一実施形態において、抗生物質は、モノアルキル化薬に続いて投与される。
【0043】
一実施形態において、アミノグリコシド系抗生物質は、核酸モノアルキル化薬の前に投与される。一実施形態において、アミノグリコシド系抗生物質は、核酸モノアルキル化薬と同時に投与される。一実施形態において、アミノグリコシド系抗生物質は、核酸モノアルキル化薬に続いて投与される。
【0044】
適切には、治療上の組み合わせは、対象に投与される。「対象」、「個人」、及び「患者」という用語は、哺乳動物対象を指すために、本明細書において区別なく使用される。一実施形態において、「対象」は、ヒト、コンパニオンアニマル(たとえばイヌ、ネコ、及び/又はウサギなどのようなペット)、家畜(たとえばブタ、ヒツジ、ウシ、及び/又はヤギ)、並びに/又はウマである。好ましい実施形態において、対象は、ヒトである。
【0045】
一実施形態において、感染症は、急性感染症である。一実施形態において、感染症は、慢性感染症である。
【0046】
本発明の方法において、対象は、感染症を有するとして以前に診断されていなくてもよい。その代わりに、対象は、感染症を有するとして以前に診断されていてもよい。対象はまた、疾患リスク因子を表す対象であっても、感染症の症状がない対象であってもよい。対象はまた、感染症を患っているか又は感染症にかかるリスクがある対象であってもよい。一実施形態において、対象は、感染症のための療法を以前に投与されたことがある。
【0047】
好都合なことに、本発明の治療上の組み合わせの相乗的性質を考慮すれば、最低限の用量の抗生物質が、投与されてもよく、これは、従来より、特定の使用及び/又は投与のためにのみ処方されてきた抗生物質(たとえばアミノグリコシド系抗生物質)の使用におけるよりすぐれた柔軟性を可能にする。
【0048】
適切には、感染症を抑制するための治療上の組み合わせの効力と宿主の非感染細胞(たとえば感染した対象の健康な細胞)に対する損傷とのバランスを保つ、治療上の組み合わせの用量が、選ばれてもよい。好ましくは、ヒト対象に(たとえばヒト細胞に)有毒でない治療上の組み合わせの用量が、使用されてもよい。いくつかの抗生物質が高用量で副作用を引き起こすことがある-たとえば、あるアミノグリコシド系抗生物質(たとえばカナマイシン)は、高用量で聴器毒性を引き起こすので、これは特に好都合である。したがって、本発明の治療上の組み合わせは、聴器毒性の発生のリスクを予防するように使用されてもよい。
【0049】
相乗的な組み合わせとして用いられる場合の抗生物質(たとえばアミノグリコシド系抗生物質)及び核酸モノアルキル化薬の有用性の広がりを例示するために、本発明は、病原体を抑制するための、たとえば消毒薬としての一般的な使用のための抗生物質(たとえばアミノグリコシド系抗生物質)及び核酸モノアルキル化薬の組み合わせを包含する。構成成分どうしの間の相乗効果は、比較的低い濃度の抗生物質及び核酸モノアルキル化薬(又はアルキル化様薬)を含む比較的薄い組成物/溶液(又は任意の他の配合物)が、病原体に投薬されてもよく、それでも、別の方法ではずっと高濃度の個々の構成成分でのみ可能であると思われる同様の(又はよりすぐれた)レベルの抑制を実現することを意味する。
【0050】
一態様において、消毒薬(好ましくはインビトロ消毒薬)としての薬の組み合わせの使用であって、前記薬の組み合わせ(たとえば消毒薬)は、
a.抗生物質及び
b.アルキル基により核酸の単一のヌクレオチドを置換する核酸モノアルキル化薬
を含む、使用が、提供される。
【0051】
一態様において、消毒薬としての薬の組み合わせの使用であって、前記薬の組み合わせ(たとえば消毒薬)は、
a.アミノグリコシド系抗生物質及び
b.アルキル基により核酸の単一のヌクレオチドを置換する核酸モノアルキル化薬
を含む、使用が、提供される。
【0052】
一実施形態において、薬の組み合わせは、前記アミノグリコシド系抗生物質を欠く以外は同一の組成物と比較した場合に、病原体の抑制の向上を提供する。そのうえ又はその代わりに、薬の組み合わせは、前記核酸モノアルキル化薬を欠く以外は同一の組成物と比較した場合に、病原体の抑制の向上を提供してもよい。
【0053】
適切には、前記使用は、病原体を含む場所に、病原体を含むことが疑われる場所に、又は病原体を含むリスクがある場所に、前記消毒薬(たとえば治療上の組み合わせ)を投薬することを含んでいてもよい。
【0054】
「消毒薬」という用語は、病原体を抑制する配合物(たとえば組成物又は溶液)を指す。消毒薬としてのそのような使用は、病原体(たとえば微生物)の細胞壁を破壊するための使用又は病原体の代謝を妨げるための使用に限定されない。実際に、本発明は、病原体の核酸に有毒なアルキル化による損傷を引き起こすことによって、消毒の好都合な手段を提供し、このようにして利用可能な消毒液の幅を広げる。
【0055】
「抑制する」又は「抑制すること」という用語は、病原体(又は他の標的細胞)「の成長を阻害する」又は「を死滅させる」ことを意味してもよい。「阻害する」又は「阻害すること」という用語は、病原体(又は他の標的細胞/生物)「の成長を妨害する」という用語と同義である。一実施形態において、本発明の治療上の組み合わせは、病原体(若しくは他の標的細胞/生物)「を死滅させ」てもよいか又は病原体(若しくは他の標的細胞/生物)「を死滅させるために使用されてもよい」。「抑制すること」という用語はまた、たとえば病原体(又は他の標的細胞/生物)による混入を予防するための前処置として投薬される場合に、病原体(又は他の標的細胞/生物)の成長を予防することをも包含する。
【0056】
さらなる態様において、病原体の成長を抑制するためのインビトロにおける方法であって、抗生物質及び核酸モノアルキル化薬(アルキル基により核酸の単一のヌクレオチドを置換する)の組み合わせを含む消毒薬を場所に対して投薬することを含み、前記場所は、
i.病原体を含む場所
ii.病原体を含むことが疑われる場所、又は
iii.病原体を含むリスクのある場所
である、インビトロにおける方法が、提供される。
【0057】
さらなる態様において、病原体の成長を抑制するためのインビトロにおける方法であって、アミノグリコシド系抗生物質及び核酸モノアルキル化薬(アルキル基により単一のヌクレオチドを置換する)の組み合わせを含む消毒薬を場所に対して投薬することを含み、前記場所は、
i.病原体を含む場所
ii.病原体を含むことが疑われる場所、又は
iii.病原体を含むリスクのある場所
である、インビトロにおける方法が、提供される。
【0058】
一実施形態において、本発明の薬の組み合わせ及び/又は消毒薬は、医療機器、寝具、家具、壁、若しくは病院の床などのような床又はその組み合わせから選択される1つ以上の場所に投薬されてもよい又は使用されてもよい。
【0059】
適した医療機器は、把持装置、鉗子、並びに/若しくはオクルーダー(たとえば血管及び他の器官用の)、持針器(たとえば縫合針を保持するための)、牽引子(たとえば皮膚を開くための)、機械式カッター(たとえばメス、ランセット、ドリルビット、やすり、トロカール、Ligasure、超音波振動メス、外科鋏、骨鉗子等)、注射針、挿管器、又はその組み合わせから選択される1つ以上であってもよい。
【0060】
一実施形態において、本発明の使用又は方法は、約1mM~約200mM(たとえば約20mM~180mM、約40mM~160mM、約60mM~140mM、又は約80mM~120mM)の場所での抗生物質(好ましくはアミノグリコシド系抗生物質)及び核酸モノアルキル化薬の局所的な濃度を提供することを含む。
【0061】
適切には、約80mM~約120mM(たとえば約85mM~115mM、約90mM~110mM、又は約95mM~100mM)の場所での抗生物質(好ましくはアミノグリコシド系抗生物質)の局所的な濃度が、提供されてもよい。一実施形態において、約1mM~約40mM(たとえば約5mM~35mM、10mM~30mM、又は15mM~25mM)の場所での核酸モノアルキル化薬の局所的な濃度が、提供されてもよい。
【0062】
好ましい実施形態において、約80mM~約120mM(たとえば約85mM~115mM、約90mM~110mM、又は約95mM~100mM)の場所での抗生物質(好ましくはアミノグリコシド系抗生物質)の局所的な濃度及び約1mM~約40mM(たとえば約5mM~35mM、10mM~30mM、又は15mM~25mM)の場所でのアルキル化薬の局所的な濃度が、提供されてもよい。
【0063】
一態様において、抗生物質(好ましくはアミノグリコシド系抗生物質)によって病原体の抑制を向上させるための核酸モノアルキル化薬の使用であって、前記核酸モノアルキル化薬は、アルキル基により核酸の単一のヌクレオチドを置換する核酸モノアルキル化薬である、使用が、提供される。
【0064】
一態様において、核酸モノアルキル化薬によって病原体の抑制を向上させるための抗生物質(好ましくはアミノグリコシド系抗生物質)の使用であって、前記核酸モノアルキル化薬は、アルキル基により核酸の単一のヌクレオチドを置換する核酸モノアルキル化薬である、使用が、提供される。
【0065】
一態様において、抗生物質の殺菌力を向上させるための核酸モノアルキル化薬の使用であって、前記核酸モノアルキル化薬は、アルキル基により核酸の単一のヌクレオチドを置換する核酸モノアルキル化薬である、使用が、提供される。
【0066】
一態様において、アミノグリコシド系抗生物質の殺菌力を向上させるための核酸モノアルキル化薬の使用であって、前記核酸モノアルキル化薬は、アルキル基により核酸の単一のヌクレオチドを置換する核酸モノアルキル化薬である、使用が、提供される。
【0067】
別の態様において、核酸モノアルキル化薬による核酸へのアルキル化による損傷(たとえば3meC)の導入を促進する(たとえば向上させる)ための抗生物質の使用であって、前記核酸モノアルキル化薬は、アルキル基により核酸の単一のヌクレオチドを置換する、使用が、提供される。
【0068】
別の態様において、核酸モノアルキル化薬による核酸へのアルキル化による損傷(たとえば3meC)の導入を促進する(たとえば向上させる)ためのアミノグリコシド系抗生物質の使用であって、前記核酸モノアルキル化薬は、アルキル基により単一のヌクレオチドを置換する、使用が、提供される。
【0069】
本発明の治療上の組み合わせ又は消毒薬は、キットの一部として適切に提供されてもよく、これは、たとえば、ラベルがつけられていてもよいか又はキットの適した使用を概説する取扱説明書を含んでいてもよい。
【0070】
一態様において、
a.抗生物質及び
b.アルキル基により核酸の単一のヌクレオチドを置換する核酸モノアルキル化薬
を含むキットが、提供される。
【0071】
一態様において、
a.アミノグリコシド系抗生物質及び
b.アルキル基により核酸の単一のヌクレオチドを置換する核酸モノアルキル化薬
を含むキットが、提供される。
【0072】
前記キットは、抗生物質(好ましくはアミノグリコシド系抗生物質)及び核酸モノアルキル化薬を含有するためのケースをさらに含んでいてもよい。
【0073】
一態様において、前記キットは、病原体によって引き起こされる感染症を処置するために使用されるものであってもよい。別の態様において、前記キットは、消毒薬として使用されるものであってもよい。さらなる態様において、前記キットは、病原体を抑制するためのインビトロにおける方法において使用されるものであってもよい。
【0074】
一実施形態において、アミノグリコシド系抗生物質及び核酸モノアルキル化薬は、同じ組成物内に含まれる。別の実施形態において、アミノグリコシド系抗生物質及び核酸モノアルキル化薬は、別々の組成物内に含まれる。
【0075】
一実施形態において、キットは、病原体による感染症を処置するための方法においてキットを使用するための説明書を含んでいてもよい。前記説明書は、たとえば、投与される治療上の組み合わせの最適な用量、治療上の組み合わせを投与する最適な回数、最適な投与方法、又は病原性感染症を処置するために(たとえば伝染病を処置するために)本発明の治療上の組み合わせを使用することに関連する任意の他の情報を含んでいてもよい。
【0076】
前記説明書は、ラベルの一部として又はキットと一緒に若しくは別々に提供される取扱説明書の一部として提供されてもよい。
【0077】
一実施形態において、キットは、消毒薬としてキットを使用するための説明書を含んでいてもよい。前記説明書は、たとえば、消毒薬として投薬される治療上の組み合わせの最適な濃度、消毒薬を投薬するための最適な回数、最適な投薬方法、又は消毒薬として本発明の治療上の組み合わせを使用することに関連する任意の他の情報を含んでいてもよい。
【0078】
一実施形態において、キットは、病原体を抑制するためのインビトロにおける方法においてキットを使用するための説明書を含んでいてもよい。
【0079】
消毒薬として又は病原体を抑制するためのインビトロにおける方法において使用するために提供されるキットは、適切には、すぐ使用できる(RTU)キットであってもよい。したがって、一実施形態において、キットは、消毒薬として使用するための又は病原体を抑制するためのインビトロにおける方法において使用するためのRTUキットであってもよい。消毒薬(たとえばアミノグリコシド系抗生物質及び核酸モノアルキル化薬を含む)は、関心のある場所に前記消毒薬を噴霧する、注入する、塗布する、又はすり込むことによって投薬されてもよい。
【0080】
感染症の治療上の組み合わせはまた、創傷を保護するか又は縫合するための材料に提供されてもよい。たとえば、本発明の治療上の組み合わせは、創傷被覆材(たとえば包帯及び/又は硬膏)、ゲージ、縫合糸、又はその組み合わせに提供されてもよい。
【0081】
核酸アルキル化による損傷が、多数の生物/微生物において毒性をもたらすことがあるので、本発明は、驚くべきことに、細菌の範囲を超えた生物におけるアミノグリコシド系抗生物質の使用を可能にする。
【0082】
したがって、一実施形態において、病原体は、細菌、ウイルス、原生生物、菌類、蠕虫、又はその組み合わせから選択される1つ以上であってもよい。
【0083】
一実施形態において、病原体は、細菌、原生生物、菌類、蠕虫、又はその組み合わせから選択される1つ以上であってもよい。
【0084】
好ましい実施形態において、前記病原体は、細菌である。
【0085】
前記細菌は、サルモネラ(Salmonella)種、シュードモナス(Pseudomonas)種、マイコバクテリウム(Mycobacterium)種、エシェリキア(Escherichia)種、プロテウス(Proteus)種、セラチア(Serratia)種、クレブシエラ(Klebsiella)種、アシネトバクター(Acinetobacter)種、又はその組み合わせから選択される1つ以上であってもよい。
【0086】
好ましくは、前記病原体は、サルモネラ(Salmonella)種、シュードモナス(Pseudomonas)種、マイコバクテリウム(Mycobacterium)種、又はその組み合わせから選択される1つ以上である。
【0087】
前記サルモネラ(Salmonella)種は、S.ボンゴリ(S.bongori)、S.エンテリカ(S.enterica)、又はその組み合わせから選択される1つ以上であってもよい。適切には、前記サルモネラ(Salmonella)種は、S.エンテリカ(S.enterica)(たとえばネズミチフス菌(S.enterica serovar Typhimurium))であってもよい。
【0088】
前記シュードモナス(Pseudomonas)種は、緑膿菌(P.aeruginosa)、P.アルカリゲネス(P.alcaligenes)、P.アンギリセプチカ(P.anguilliseptica)、P.アルゼンチネンシス(P.argentinensis)、P.ボルボリ(P.borbori)、P.シトロネロリス(P.citronellolis)、P.フラベッセンス(P.flavescens)、P.メンドシナ(P.mendocina)、P.ニトロレデュセンス(P.nitroreducens)、P.オレオボランス(P.oleovorans)、P.シュードアルカリゲネス(P.pseudoalcaligenes)、P.レシノボランス(P.resinovorans)、P.ストラミネア(P.straminea)、又はその組み合わせから選択される1つ以上であってもよい。適切には、前記シュードモナス(Pseudomonas)は、緑膿菌(P.aeruginosa)(たとえば緑膿菌(P.aeruginosa)PAO1)であってもよい。
【0089】
前記マイコバクテリウム(Mycobacterium)種は、M.アフリカヌム(M.africanum)、M.ボビス(M.bovis)、M.ボビス(M.bovis)BCG、M.カネッティ(M.canetti)、M.カプラエ(M.caprae)、M.ミクロティ(M.microti)、M.ムンギ(M.mungi)、M.オリギス(M.orygis)、M.ピンニペディ(M.pinnipedii)、M.スリカタエ(M.suricattae)、結核菌(M.tuberculosis)から選択される1つ以上であってもよい。適切には、前記マイコバクテリウム(Mycobacterium)は、結核菌(M.tuberculosis)であってもよい。
【0090】
前記エシェリキア(Escherichia)種は、E.アルベルティイ(E.albertii)、大腸菌(E.coli)、E.フェルグソニー(E.fergusonii)、E.ハーマンニイ(E.hermannii)、E.マーモタエ(E.marmotae)、E.バルネリス(E.vulneris)、又はその組み合わせから選択される1つ以上であってもよい。適切には、前記エシェリキア(Escherichia)種は、大腸菌(E.coli)であってもよい。
【0091】
前記プロテウス(Proteus)種は、P.ハウセリ(P.hauseri)、P.ミラビリス(P.mirabilis)、P.ミクソファシエンス(P.myxofaciens)、P.ペンネリ(P.penneri)、P.ブルガリス(P.vulgaris)、又は組み合わせから選択される1つ以上であってもよい。適切には、前記プロテウス(Proteus)種は、P.ブルガリス(P.vulgaris)であってもよい。
【0092】
前記セラチア(Serratia)種は、S.マルセセンス(S.marcescens)であってもよい。
【0093】
前記クレブシエラ(Klebsiella)種は、K.アエロゲネス(K.aerogenes)、K.グラニュロマティス(K.granulomatis)、K.オキシトカ(K.oxytoca)、K.ミシガネンシス(K.michiganensis)、肺炎桿菌(K.pneumoniae)、K.クアシプネウモニアエ(K.quasipneumoniae)、K.グリモンティ(K.grimontii)、K.バリイコーラ(K.variicola)、又はその組み合わせから選択される1つ以上であってもよい。適切には、前記クレブシエラ(Klebsiella)種は、肺炎桿菌(K.pneumoniae)であってもよい。
【0094】
前記アシネトバクター(Acinetobacter)種は、A.アルベンシス(A.albensis)、A.アピス(A.apis)、A.バウマンニ(A.baumannii)、A.ベイジェリンキイ(A.beijerinckii)、A.ブレジニエ(A.bereziniae)、A.ボヘミカス(A.bohemicus)、A.ボイシエリ(A.boissieri)、A.ブーヴェティイ(A.bouvetii)、A.ブリソウイイ(A.brisouii)、A.カルコアセティカス(A.calcoaceticus)、A.セルティカス(A.celticus)、A.コリスチニレシステンス(A.colistiniresistens)、A.コウルバリニイ(A.courvalinii)、A.デフルビイ(A.defluvii)、A.ディスパーセス(A.disperses)、A.ジジュクスホールニアエ(A.dijkshoorniae)、A.エクイ(A.equi)、A.ガンデンシス(A.gandensis)、A.ゲルネリ(A.gerneri)、A.ガンドンジェンシス(A.guangdongensis)、A.グイロウイアエ(A.guillouiae)、A.ジレンベルギイ(A.gyllenbergii)、A.ヘモリティカス(A.haemolyticus)、A.ハービネンシス(A.harbinensis)、A.インディカス(A.indicus)、A.ジュニー(A.junii)、A.コーキイ(A.kookii)、A.ラクツカエ(A.lactucae)、A.ラーバエ(A.larvae)、A.ルオフィイ(A.lwoffii)、A.モデスタス(A.modestus)、A.ネクタリス(A.nectaris)、A.ノソコミアリス(A.nosocomialis)、A.パルブス(A.parvus)、A.パキスタネンシス(A.pakistanensis)、A.ポプリ(A.populi)、A.プロテオリチカス(A.proteolyticus)、A.ピッティー(A.pittii)、A.ピスシコラ(A.piscicola)、A.プラゲンシス(A.pragensis)、A.プロテオリチカス(A.proteolyticus)、A.プヤンゲンシス(A.puyangensis)、A.キングフェンゲンシス(A.qingfengensis)、A.ラディオレジステンス(A.radioresistens)、A.ルディス(A.rudis)、A.シンドレリ(A.schindleri)、A.セイフェルティ(A.seifertii)、A.ソリ(A.soli)、A.タンドイイ(A.tandoii)、A.チェルンベルギアエ(A.tjernbergiae)、A.タウネリ(A.towneri)、A.ウルシンジイ(A.ursingii)、A.バリアビリス(A.variabilis)、A.ベネチアヌス(A.venetianus)、A.ビビアニイ(A.vivianii)、又はその組み合わせから選択される1つ以上であってもよい。適切には、前記アシネトバクター(Acinetobacter)種は、A.バウマンニ(A.baumannii)であってもよい。
【0095】
一実施形態において、病原体は、菌類である。適切には、前記菌類は、カンジダ(Candida)種である。
【0096】
前記カンジダ(Candida)種は、C.アルビカンス(C.albicans)、C.アスカラフィダラム(C.ascalaphidarum)、C.アムフィキシアエ(C.amphixiae)、C.アンタルクティカ(C.Antarctica)、C.アルゲンテア(C.argentea)、C.アトランティカ(C.atlantica)、C.アトモスファエリカ(C.atmosphaerica)、C.アウリス(C.auris)、C.ブラッタエ(C.blattae)、C.ブロメリアセアルム(C.bromeliacearum)、C.カルポフィラ(C.carpophila)、C.カルワヤリス(C.carvajalis)、C.セラムビシダラム(C.cerambycidarum)、C.カウリオデス(C.chauliodes)、C.コリダリス(C.corydalis)、C.ドッセイ(C.dosseyi)、C.デュブリニエンシス(C.dubliniensis)、C.エルガテンシス(C.ergatensis)、C.フルクツス(C.fructus)、C.グラブラタ(C.glabrata)、C.フェルメンタチ(C.fermentati)、C.グイルリエルモンディイ(C.guilliermondii)、C.ハエムロニイ(C.haemulonii)、C.フミリス(C.humilis)、C.インセクタメンス(C.insectamens)、C.インセクトルム(C.insectorum)、C.インテルメディア(C.intermedia)、C.エッフレシイ(C.jeffresii)、C.ケフィル(C.kefyr)、C.ケロセネアエ(C.keroseneae)、C.クルセイ(C.krusei)、C.ルシタニアエ(C.lusitaniae)、C.リキソソフィラ(C.lyxosophila)、C.マルトセ(C.maltose)、C.マリナ(C.marina)、C.メムブラニファシエンス(C.membranifaciens)、C.モギイ(C.mogii)、C.オレオフィラ(C.oleophila)、C.オレゴネンシス(C.oregonensis)、C.パラプシロシス(C.parapsilosis)、C.クエルシトルサ(C.quercitrusa)、C.ルゴセ(C.rugose)、C.サケ(C.sake)、C.シェハテア(C.shehatea)、C.テムノキラエ(C.temnochilae)、C.テヌイス(C.tenuis)、C.テアエ(C.theae)、C.トレランス(C.tolerans)、C.トロピカリス(C.tropicalis)、C.ツキヤエ(C.tsuchiyae)、C.シノラボランチウム(C.sinolaborantium)、C.ソヤエ(C.sojae)、C.スブハシイ(C.subhashii)、C.ウイスワナティイ(C.viswanathii)、C.ウチリス(C.utilis)、C.ウバツベンシス(C.ubatubensis)、及びC.ゼムプリニナ(C.zemplinina)から選択される1つ以上であってもよい。適切には、前記カンジダ(Candida)種は、C.アルビカンス(C.albicans)であってもよい。
【0097】
別の実施形態において、前記病原体は、蠕虫である。前記蠕虫は、環形動物(Annelida)門、扁形動物(Platyhelminthes)門、線形動物(Nematoda)門、及び鉤頭動物(Acanthocephala)門から選択される1つ以上であってもよい。
【0098】
一実施形態において、前記蠕虫は、寄生性扁形動物である。前記寄生性扁形動物は、条虫綱(Cestoda)、吸虫綱(Trematoda)、及び単生類(Monogenea)から選択される1つ以上であってもよい。
【0099】
一実施形態において、前記蠕虫は、寄生性線形動物である。前記寄生性線形動物は、回虫(回虫属(Ascaris))、フィラリア、鉤虫、蟯虫(蟯虫属(Enterobius))、及び鞭虫(トリクリス・トリキウラ(Trichuris trichiura))から選択される1つ以上であってもよい。
【0100】
好ましい実施形態において、病原体は、アルキル化されたヌクレオチド付加物からアルキル基を除去するポリペプチドをコードする1つ以上の遺伝子を欠く。たとえば、病原体は、アルキル化されたヌクレオチド付加物からアルキル基を除去するポリペプチドをコードするalka又はalkb遺伝子を欠いてもよい。好ましい実施形態において、病原体は、アルキル化されたヌクレオチド付加物からアルキル基を除去するポリペプチドをコードするalkb遺伝子を欠いてもよい。
【0101】
本明細書において記載される1つ以上の遺伝子を欠く病原体又は細胞に対する言及は、非機能的ポリペプチド(又は機能が低下したポリペプチド)をコードする前記遺伝子の突然変異形態を含む病原体又は細胞を含む。
【0102】
一実施形態において、前記アルキル化されたヌクレオチド付加物は、3meC、3meG、3meA、8-オキソ-G、O2-アルキルチミン、O4-アルキルチミン、O6-メチルグアニン、及びO6-エチルグアニンから選択される1つ以上である。一実施形態において、前記アルキル化されたヌクレオチド付加物は、3meC、3meG、3meA、O2-アルキルチミン、O4-アルキルチミン、O6-メチルグアニン、及びO6-エチルグアニンから選択される1つ以上である。
【0103】
AlkBタンパク質は、アルキル化による損傷の直接的な回復に関与するタンパク質である(発明者らが説明したように、3meCの回復を含む)。AlkB遺伝子は、もともと大腸菌(E.coli)において発見された。大腸菌(E.coli)AlkB遺伝子と高い配列同一性を有する及び/又はそれと同じ若しくは同様の機能を有するタンパク質を発現する遺伝子は、「AlkBホモログ」と呼ばれる。したがって、本明細書において使用されるalkBという用語は、alkBホモログを含む。したがって、alkbを欠く病原体又は細胞に対する言及は、そのホモログ(alkbホモログ)を欠く病原体又は細胞を含む。同様に、alkbを欠く病原体又は細胞に対する言及は、そのホモログ(alkbホモログ)を欠く細胞を含む。alkaという用語はまた、alkaホモログをも含む。
【0104】
一実施形態において、病原体は、細胞の核酸内のアルキル化されたヌクレオチド付加物の存在に対する細胞の耐性を促進するポリペプチドをコードする1つ以上の遺伝子を欠いてもよい。たとえば、病原体は、細胞の核酸内のアルキル化されたヌクレオチド付加物の存在に対する細胞の耐性を促進するポリペプチドをコードするAda、OGT、RecA、DinB、及び/又はUmuCD遺伝子を欠いてもよい。
【0105】
Ada及びOGTは、8-オキソグアニン(8-オキソ-G)を修復する酵素であり、これは、グアニンのアルキル化損傷から結果として生じる;AlkAは、3-メチルグアニン(3meG)及び3-メチルアデニン(3meA)を修復する;RecAは、DNA損傷の耐性を促進する;並びにDinB及びUmuCD(損傷乗り越えDNAポリメラーゼ)は、細胞がアルキル化による損傷をすり抜けるのを可能にする。
【0106】
本明細書において使用されるAda、OGT、RecA、DinB、及びUmuCDという用語は、それぞれ、Ada、OGT、RecA、DinB、及びUmuCDホモログを含む。
【0107】
大腸菌(Escherichia coli)AlkBタンパク質は、鉄-及び2-オキソグルタル酸依存性オキシゲナーゼであり、主に、DNAにおける1-メチルアデニン及び3-メチルシトシン傷害の修復を担う(たとえば、
図2に示すように、核酸からアルキル基を除去する)。AlkBホモログはまた、多くの原核生物及び真核生物の種においても存在する。たとえば、AlkBの9つのヒト相同体、すなわち、Alkb相同体1(NCBI Gene ID:8846)、ヒストンh2aジオキシゲナーゼ、ALKBH2(GeneID:121642)、ALKBH3(GeneID:221120)、ALKBH4(NCBI GeneID:54784)、ALKBH5(NCBI GeneID:54890)、ALKBH6(NCBI GeneID:84964)、ALKBH7(NCBI GeneID:84266)、ALKBH8(NCBI GeneID:91801)、及びFTO(NCBI GeneID:79068)が、存在することが知られている。
【0108】
DNMT(DNAメチルトランスフェラーゼ)は、核酸の(たとえばDNAのCpG部位での)アルキル化(たとえばメチル化)を触媒する酵素である。
【0109】
たとえば、核酸のヌクレオチドは、アルキル化されて、5meC及び/又は3meCなどのようなヌクレオチド付加物をもたらしてもよい。
【化1】
【0110】
発明者らは、DNAがメチル化されていることがわかっている(たとえば遺伝子調節のエピジェネティックなコントロールの一部として)生物が、大抵、細菌酵素AlkB(たとえばALKB2)のホモログを持っていること及びそのようなそのホモログは、DNAメチル化活性を有していない生物(又は種)において失われていることを最近発見した。
【0111】
興味深いことに、緑膿菌(P.aeruginosa)は、進化の中で、比較的最近になってAlkBを失っており、したがって、本発明の治療上の組み合わせに特に適した標的であってもよい。緑膿菌(P.aeruginosa)は、慢性の肺の病(たとえば嚢胞性線維症)を有する対象にとって大きな健康上の問題となるので、本発明の治療上の組み合わせは、そのような患者において感染症を処置するのに特に適していてもよい。したがって、一実施形態において、治療上の組み合わせは、嚢胞性線維症などのような、慢性の肺の病を有する患者において、病原体による感染症を処置するために使用されてもよい。
【0112】
同様に、結核菌(M.tuberculosis)は、AlkBホモログを欠き、3’位のシトシンをアルキル化する(たとえばメチル化する)ことができるので、本発明の治療上の組み合わせが、結核(TB)を処置するのに特に適していてもよい。
【0113】
核酸アルキル化(たとえばモノアルキル化)のコントロール/回復/耐性のための遺伝子を欠くいかなる病原体(たとえば感染性生物)も、本発明の治療上の組み合わせによる攻撃を特に受けやすいことがある。したがって、一実施形態において、本発明の治療上の組み合わせにより標的にされる病原体(たとえば細菌、ウイルス、原生生物、菌類、及び/又は蠕虫)は、AlkA、AlkB、Ada、OGT、RecA、DinB、UmuCD、又はその組み合わせから選択される遺伝子を欠いてもよい。適切には、病原体は、AlkB遺伝子を欠く。
【0114】
したがって、病原性感染症を有する対象は、感染症の病原体が前記遺伝子の1つ以上を欠くかどうかに基づいて層別化されてもよく、前記対象は、本発明の治療上の組み合わせに特に適したレシピエントとして選ばれてもよい。
【0115】
大腸菌(E.coli)遺伝子AlkA、AlkB、Ada、OGT、RecA、DinB、UmuCDに対する言及は、そのホモログ(たとえば様々なドメイン、門、綱、目、科、又は属に存在するホモログ)を含む。当業者は、相同遺伝子を同定する及び/又は分類するのに適したツール及び技術を認識している(たとえば、下記の「配列同一性」の段落を参照)。
【0116】
例示的なAlkb配列は、配列番号1(NCBI Reference Sequence:NC_000913.3に相当する)において提供される。Alkbホモログは、配列番号1の配列に対して、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、又は少なくとも90%の配列同一性を示してもよい。たとえば、Alkbホモログは、配列番号1の配列に対して、少なくとも80%又は少なくとも90%の配列同一性を示してもよい。適切には、Alkbホモログは、配列番号1の配列に対して、少なくとも90%の配列同一性を示してもよい。
【0117】
好ましい実施形態において、本発明の治療上の組み合わせにより標的にされる病原体(たとえば細菌、ウイルス、原生生物、菌類、及び/又は蠕虫)は、AlkB又はそのホモログを欠いてもよい。
【0118】
一実施形態において、病原体(好ましくはAlkBホモログを欠く病原体)は、センモウヒラムシ(Trichoplax adherens)、マンソン住血吸虫(Schistosoma mansoni)、マレー糸状虫(Brugia malayi)、及びクロアシマダニ(Ixodes scapularis)から選択される1つ以上の後生動物である。
【0119】
本発明の治療上の組み合わせが投薬されてもよい非病原性後生動物の生物は、エノムルス・ブレウィス(Enoplus brevis)、線虫(Caenorhabditis elegans)、ヒプシビウム・ドゥヤルジニ(Hypsibium dujardini)、オオミジンコ(Daphnia magna)、ミツバチ(Apis mellifera)、アメリカマツノキクイムシ(Dendroctonus ponderosae)、オオカバマダラ(Danaus plexippus)、及びキイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)を含む。
【0120】
一実施形態において、病原体(好ましくは、AlkBホモログを欠く病原体)は、赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica)、腟トリコモナス(Trichomonas vaginalis)、ヒトブラストシスチス(Blastocystis hominis)、リーシュマニア(Leishmania)種、及びランブル鞭毛虫(Giardia lamblia)から選択される1つ以上の原生生物である。
【0121】
本発明の治療上の組み合わせが投薬されてもよい非病原性原生生物の生物は、フォンチクラ・アルバ(Fonticula alba)、キイロタマホコリカビ(Dictyostelium discoideum)、コナミドリムシ(Chlamydomonas reinhardtii)、クリトモナス・パラメジウム(Crytomonas paramedium)、ビンカムリ(Paulinella chromatophora)、ナンノクロロプシス・ガジタナ(Nannochloropsis gaditana)、テトラヒメナ(Tetrahymena)種を含む。
【0122】
一実施形態において、病原体(好ましくは、AlkBホモログを欠く病原体)は、エンセファリトゾーン・クニクリ(Encephalitozoon cuniculi)、ノセマ・アピス(Nosema apis)、ナメマ・セラナエ(Namema ceranae)、ウィッタフォルマ・カルネアエ(Vittaforma carneae)、エンテロシトソアン・ビエネウシ(Enterocytosoan bieneusi)、スプラグエア・ロフィイ(Spraguea lophii)、ウアウラ・クリクリス(Vavra culiculis)、エドハルザルディア・アエデス(Edharzardia aedes)、ネマトシダ・パリシイ(Nematocida parisii)、ラゼラ(Razella)種、パラシテラ・パラシチカ(Parasitella parasitica)、リキテイミア・ラモセ(Lichteimia ramose)、スポリソリウム・スシタミネウム(Sporisorium scitamineum)、カワラタケ(Trametes versicolor)、及びケシワウロコタケ(Punctularia strigosozonata)から選択される1つ以上の菌類である。
【0123】
一実施形態において、病原体(好ましくは、AlkBホモログを欠く病原体)は、ドレクスレラ・ステノブロカ(Drechslera stenobrocha)及びカンジダ・アルビカンス(Candida albicans)又はその組み合わせから選択される1つ以上の子嚢菌である。
【0124】
本発明の治療上の組み合わせが投薬されてもよい非病原性子嚢菌生物は、分裂酵母(Schizosaccharomyces pombe)及び出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)又はその組み合わせを含む。
【0125】
一実施形態において、病原体(好ましくは、AlkBホモログを欠く病原体)は、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)NCGM2209、らい菌(Mycobacterium leprae)TN、トロフェリマ・ウィッペリ(Tropheryma whipplei)TW08/27、及びマイコバクテリウム・ウルセランス(Mycobacterium ulcerans)Agy99又はその組み合わせから選択される1つ以上のアクチノバクテリア(Actinobacteria)である。
【0126】
一実施形態において、病原体(好ましくは、AlkBホモログを欠く病原体)は、リケッチア・リケッチイ(Rickettsia rickettsii)株ハウケ(Hauke)、エーリキア・カニス(Ehrlichia canis)株ジェイク(Jake)、バルトネラ・ヘンセラ(Bartonella henselae)株ヒューストン-1(Houston-1)、エーリキア・シャフェンシス(Ehrlichia chaffeensis)株アーカンソー(Arkansas)、及び塹壕熱菌(Bartonella quintana)株トゥールーズ(Toulouse)又はその組み合わせから選択される1つ以上のアルファプロテオバクテリアである。
【0127】
一実施形態において、病原体(好ましくは、AlkBホモログを欠く病原体)は、肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)GA04375、ストレプトコッカス・アガラクチア(Streptococcus agalactiae)BSU247、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)亜種アウレウスMSHR1132、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)NIH051668、リステリア菌(Listeria monocytogenes)FSL J2-071、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)ERV103、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)TX0133C、リステリア・インノクア(Listeria innocua)Clip11262、炭疽菌(Bacillus anthracis)株A0442、セレウス菌(Bacillus cereus)Rock1-3、化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)MGAS315、及びスタフィロコックス・サプロフィチクス(Staphylococcus saprophyticus)亜種サプロフィチクス(saprophyticus)ATCC 15305、又はその組み合わせから選択される1つ以上の桿菌(Bacilli)である。
【0128】
一実施形態において、病原体(好ましくは、AlkBホモログを欠く病原体)は、バクテロイデス・フラギリス(Bacteroides fragilis)HMW 615である。
【0129】
一実施形態において、病原体(好ましくは、AlkBホモログを欠く病原体)は、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)M04-240196及び淋菌(Neisseria gonorrhoeae)PID1又はその組み合わせから選択される1つ以上のベータプロテオバクテリア(Betaproteobacteria)である。
【0130】
一実施形態において、病原体(好ましくは、AlkBホモログを欠く病原体)は、肺炎クラミジア(Chlamydophila pneumoniae)J138、トラコーマクラミジア(Chlamydia trachomatis)F/SotonF3、及びオウム病クラミジア(Chlamydia psittaci)NJ1又はその組み合わせから選択される1つ以上のクラミジア(Chlamydiae)である。
【0131】
一実施形態において、病原体(好ましくは、AlkBホモログを欠く病原体)は、ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)A株ATCC 3502、クロストリジウム・ディフィシレ(Clostridium difficile)NAP08、ウエルチ菌(Clostridium perfringens)株13、及び破傷風菌(Clostridium tetani)E88又はその組み合わせから選択される1つ以上のクロストリジウム(Clostridia)である。
【0132】
一実施形態において、病原体(好ましくは、AlkBホモログを欠く病原体)は、アシネトバクター・バウマンニ(Acinetobacter baumannii)ATCC 17978、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)LESB58、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)22.4-21、野兎病菌(Francisella tularensis)亜種ツラレンシス(tularensis)SCHU S4、ステノトロフォモナス・マルトフィリア(Stenotrophomonas maltophilia)R551-3、仮性結核菌(Yersinia pseudotuberculosis)IP 31758、ペスト菌(Yersinia pestis)次亜種オリエンタリス(Orientalis)株BA200901799、レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)株レンズ(Lens)、ステノトロフォモナス(Stenotrophomonas)種SKA14、及びコレラ菌(Vibrio cholera)CIRS 101又はその組み合わせから選択される1つ以上のガンマプロテオバクテリア(Gammaproteobacteria)である。
【0133】
一実施形態において、病原体(好ましくは、AlkBホモログを欠く病原体)は、ウレアプラズマ・ウレアリチカム(Ureaplasma urealyticum)血清型4株ATCC 27816及び肺炎マイコプラスマ(Mycoplasma pneumoniae)M129又はその組み合わせから選択される1つ以上のモリクテス(Mollicutes)である。
【0134】
一実施形態において、病原体(好ましくは、AlkBホモログを欠く病原体)は、カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)亜種ジェジュニ(jejuni)LMG 23218及びピロリ菌(Helicobacter pylori)SouthAfrica7又はその組み合わせから選択される1つ以上のプロテオバクテリア(Proteobacteria)である。
【0135】
一実施形態において、病原体(好ましくは、AlkBホモログを欠く病原体)は、梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum)亜種パリダム(pallidum)株ニコルズ(Nichols)、レプトスピラ・サンタロサイ(Leptospira santarosai)株2000027870、ボレリア・ブルグドルフェリ(Borrelia burgdorferi)29805、レプトスピラ・インテロガンス(Leptospira interrogans)血清型コペンハゲニ(Copenhageni)株Fiocruz LV2791、レプトスピラ・ウエイリイ(Leptospira weilii)血清型トパーズ(Topaz)株LT2116、レプトスピラ・ノグキイ(Leptospira noguchii)株2006001870、ボレリア・アフゼリ(Borrelia afzelii)PKo、回帰熱ボレリア(Borrelia recurrentis)A1、及びボレリア・ガリニ(Borrelia garinii)PBr又はその組み合わせから選択される1つ以上のスピロカエチア(Spirochaetia)である。
【0136】
誤解を避けるために、病原体は、AlkBホモログを含んでいてもよい。AlkB/AlkBホモログの保護的な役割(核酸からのアルキル化による損傷の除去における)並びにDNMT酵素(たとえばDNMT1及び/又はDNMT2)のアルキル化(たとえばメチル化)の役割を考慮すれば、AlkB発現と比べて高レベルのDNMT発現を有する病原体は、本発明の治療上の組み合わせに対して、特に感受性であってもよい。当業者は、遺伝子の発現を決定するための方法を理解しており、これは、たとえばマイクロアレイ分析、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCT)、ノーザンブロット、遺伝子発現のシリアル分析(Serial Analysis of Gene Expression)(SAGE)、蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)、及び/又はRNA-シークエンシング(RNA-seq)を介して実現されてもよい。
【0137】
前記遺伝子発現は、絶対的な遺伝子発現であっても、相対的な遺伝子発現であってもよい。相対的発現の決定は、適した標準/参照遺伝子(たとえばハウスキーピング遺伝子)の発現と比べたDNMT遺伝子の発現及び/又はAlkBホモログ遺伝子の発現を分析することを含んでいてもよい。
【0138】
一実施形態において、病原体は、AlkBホモログ遺伝子発現に対して高い比のDNMT遺伝子発現を含む。一実施形態において、DNMT遺伝子発現対AlkBホモログ遺伝子発現の比は、約2:1、約5:1、約10:1、約15:1、約20:1、約25:1、約30:1、約35:1、約40:1、約45:1、及び約50:1から選択される1つ以上である。
【0139】
さらに、細菌の(特に結核菌(M.tuberculosis)の)多くの株は、あるアミノグリコシド系抗生物質(特にカナマイシン)に対して抵抗性を有することが報告されており、したがって、そのような抗生物質を、本発明の治療上の組み合わせの一部として意図的に使用することができること(たとえば治療上の組み合わせの向上)により、そのような抵抗性の株を特に適した標的にする。
【0140】
前記「病原体の抑制の向上」の評価は、以下の実施例を参照することによって実証され、実施例(たとえば実施例1)において記載される手法を使用して評価されてもよい。たとえば、実施例1は、治療上の組み合わせの構成成分の1つにより(又はどちらによっても)処置しないサンプルと共に、治療上の組み合わせにより処置したサンプルにおけるコロニー形成単位(CFU)の数を測定する方法を記載する。これは、本発明の治療上の組み合わせとアミノグリコシド系抗生物質若しくは核酸モノアルキル化薬(又はその両方)を欠く以外は同一の組成物との間の、病原体抑制の直接的な比較を可能にする。
【0141】
一実施形態において、B細胞悪性疾患の抑制は、2つの主要な活性化合物(たとえばアミノグリコシド系抗生物質及び核酸モノアルキル化薬)の組み合わせについて得られる「CFU」値が、本発明のアミノグリコシド系抗生物質又は核酸モノアルキル化薬が不在である(がそれ以外は同一の条件下の)場合に得られる「CFU」値よりも低い場合、向上しているとみなされる。
【0142】
したがって、一実施形態において、病原体の抑制の向上は、本発明のアミノグリコシド系抗生物質及び核酸モノアルキル化薬の組み合わせについて得られる「CFU」値を、同じ条件下で、本発明のアミノグリコシド系抗生物質又は核酸モノアルキル化薬が不在の同じ配合物/組成物について得られた「CFU」値と比較することによって、決定されてもよい。
【0143】
一実施形態において、本発明は、本発明のアミノグリコシド系抗生物質が不在であるか又は核酸モノアルキル化薬が不在であるが、それ以外は同じ条件下の同じ配合物(たとえば組成物)によって提供されるCFU値がよりも、少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、又は95%(好ましくは少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%;より好ましくは少なくとも約10%)低いCFU値を提供する。
【0144】
一実施形態において、本発明の治療上の組み合わせは、病原体の相乗的抑制を表してもよい。
【0145】
本明細書において使用される「相乗的」という用語は、表される病原体の抑制が、その1つ1つの合計よりもすぐれていることを意味する。言い換えれば、病原体の抑制は、相加的なものを超える。
【0146】
核酸(たとえばDNA)がアルキル化されてもよい任意の細胞(たとえば腫瘍)又は生物は、本発明の治療上の組み合わせによって標的にされてもよい。したがって、本発明の治療上の組み合わせは、癌を患っている対象における腫瘍を抑制するために好都合に使用されてもよい。
【0147】
より詳細には、本発明の治療上の組み合わせは、核酸モノアルキル化薬の投与を伴う化学療法の効力を増加させるためにさらに使用されてもよい。アミノグリコシドが、従来より、そのような癌療法の一部として(たとえばその補助薬として)使用されていないので、これは、非常に驚くべきことである。
【0148】
したがって、さらなる態様において、癌を処置するのに使用するための治療上の組み合わせであって、
a.抗生物質及び
b.アルキル基により核酸の単一のヌクレオチドを置換するさらなる核酸モノアルキル化薬
を含む、治療上の組み合わせが、提供される。
【0149】
別の態様において、癌を処置するのに使用するための治療上の組み合わせであって、
a.アミノグリコシド系抗生物質及び
b.アルキル基により核酸の単一のヌクレオチドを置換するさらなる核酸モノアルキル化薬
を含む、治療上の組み合わせが、提供される。
【0150】
一実施形態において、治療上の組み合わせは、前記アミノグリコシド系抗生物質を欠く以外は同一の組成物と比較した場合に、癌の(好ましくは癌細胞の、より好ましくは腫瘍の)抑制の向上を提供する。一実施形態において、治療上の組み合わせは、前記核酸モノアルキル化薬を欠く以外は同一の組成物と比較した場合に、癌の(好ましくは癌細胞の、より好ましくは腫瘍の)抑制の向上を提供する。
【0151】
適切には、前記治療上の組み合わせは、対象に投与されてもよい。対象は、癌を有するとして以前に診断されていなくてもよい。その代わりに、対象は、癌を有するとして以前に診断されていてもよい。対象はまた、疾患リスク因子を表す対象であっても、癌の症状がない対象であってもよい。対象はまた、癌を患っているか又は癌になるリスクがある対象であってもよい。一実施形態において、対象は、癌のための療法を以前に投与されたことがある。
【0152】
療法の方法が癌を処置するための方法である実施形態において、癌細胞の損傷を最大にし且つ非癌細胞の損傷を最小にする治療上の組み合わせの投薬量が、選ばれてもよい。
【0153】
一実施形態において、前記癌は、膠芽腫(たとえば多形性膠芽腫)、急性骨髄性白血病、乳癌、白血病、リンパ腫、ホジキン病、多発性骨髄腫、肉腫、肺癌(小及び/又は非小細胞肺癌)、卵巣癌、星状細胞腫、骨肉腫、非ホジキンリンパ腫、慢性リンパ性白血病、骨髄腫、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、小細胞肺癌、神経芽細胞腫、精巣癌、軟部組織肉腫、骨原性肉腫、膀胱癌、小細胞肺癌、子宮頸癌、膵癌、神経内分泌腫瘍、真性赤血球増加症、骨髄様化生、線維肉腫、横紋筋肉腫、島細胞がん、髄様甲状腺癌、未分化星状細胞腫、頭頸部癌、食道癌、胃癌、前立腺癌、中皮腫、及び子宮内膜癌から選択される1つ以上である。
【0154】
好ましい実施形態において、前記癌は、膠芽腫、急性骨髄性白血病、及び乳癌から選択される1つ以上であってもよい。
【0155】
適切には、前記乳癌は、BRCA欠損(たとえばBRCA1及び/又はBRCA2欠損)であってもよい。
【0156】
興味深いことに、DNMT活性は、急性骨髄性白血病(AML)の病因において重要であるので、AMLは、本発明の治療上の組み合わせの特に適した標的であってもよい。したがって、一実施形態において、前記癌は、急性骨髄性白血病である。
【0157】
前記癌の癌細胞(たとえば腫瘍)は、参照標準におけるDNMTの発現レベルよりも高いDNMTの発現レベルを含んでいてもよく、参照標準は、健康な細胞由来のものである。好ましくは、健康な細胞は、非癌細胞である。
【0158】
前記癌の癌細胞(たとえば腫瘍)は、参照標準におけるalkbの発現レベルよりも高いalkBの発現レベルを含んでいてもよく、参照標準は、健康な細胞由来のものである。好ましくは、健康な細胞は、非癌細胞である。
【0159】
癌は、DNMT遺伝子発現対AlkBホモログ遺伝子発現の比によって層別化されてもよい。たとえば、癌の癌細胞は、AlkBホモログ遺伝子発現のレベルと比べて、高レベルのDNMT遺伝子発現を有していてもよい。
【0160】
一実施形態において、癌細胞は、AlkBホモログ遺伝子発現に対して高い比のDNMT遺伝子発現を含む。一実施形態において、DNMT遺伝子発現対AlkBホモログ遺伝子発現の比は、約2:1、約5:1、約10:1、約15:1、約20:1、約25:1、約30:1、約35:1、約40:1、約45:1、及び約50:1から選択される1つ以上である。
【0161】
一実施形態において、癌細胞は、非癌細胞(たとえば健康な細胞)におけるAlkBホモログ遺伝子の発現と比べて、AlkBホモログ遺伝子の発現が減少している。一実施形態において、癌細胞は、非癌細胞(たとえば健康な細胞)におけるDNMT遺伝子の発現と比べて、DNMT遺伝子の発現が増加している。一実施形態において、癌細胞は、非癌細胞におけるAlkBホモログ遺伝子の発現と比べて、AlkBホモログ遺伝子の発現が減少しており且つ非癌細胞におけるDNMT遺伝子の発現と比べて、DNMT遺伝子の発現が増加している。
【0162】
一実施形態において、前記AlkBホモログは、Alkb相同体1、ヒストンh2aジオキシゲナーゼ、ALKBH2、ALKBH3、ALKBH4、ALKBH5、ALKBH6、ALKBH7、ALKBH8、及びFTO又はその組み合わせから選択される1つ以上である。適した実施形態において、前記AlkBホモログは、ALKBH2である。
【0163】
一実施形態において、前記DNMTは、DNMT1、DNMT3A、及びDNMT3Bから選択される1つ以上である。
【0164】
適切には、前記非癌細胞は、癌(たとえば癌である腫瘍)が存在する同じ器官及び/又は組織由来の細胞である。
【0165】
一態様において、
a.抗生物質及び
b.アルキル基により、核酸の単一のヌクレオチドを置換するさらなる核モノアルキル化薬
を含む、癌を処置するための方法において使用するためのキットが、提供される。
【0166】
一態様において、
a.アミノグリコシド系抗生物質及び
b.アルキル基により核酸の単一のヌクレオチドを置換するさらなる核酸モノアルキル化薬
を含む、癌を処置するための方法において使用するためのキットが、提供される。
【0167】
前記キットは、抗生物質(たとえばアミノグリコシド系抗生物質)及びモノアルキル化薬を含有するためのケースをさらに含んでいてもよい。
【0168】
一実施形態において、抗生物質及びモノアルキル化薬は、同じ組成物内に含まれる。別の実施形態において、抗生物質及びモノアルキル化薬は、別々の組成物内に含まれる。一実施形態において、アミノグリコシド系抗生物質及びモノアルキル化薬は、同じ組成物内に含まれる。別の実施形態において、アミノグリコシド系抗生物質及びモノアルキル化薬は、別々の組成物内に含まれる。
【0169】
一実施形態において、キットは、癌を処置するための方法においてキットを使用するための説明書を含んでいてもよい。前記説明書は、たとえば、投与される治療上の組み合わせの最適な用量、治療上の組み合わせを投与する最適な回数、最適な投与方法、又は癌を処置するために治療上の組み合わせを使用することに関連する任意の他の情報を含んでいてもよい。
【0170】
前記説明書は、ラベルの一部として又はキットと一緒に若しくは別々に提供される取扱説明書の一部として提供されてもよい。
【0171】
以下の実施形態及び定義は、本明細書において記載される本発明の任意の態様(又は他の実施形態)に、たとえば、本明細書において記載される任意の方法、使用、組成物、治療上の組み合わせ、使用のための治療上の組み合わせ、使用のための薬の組み合わせ、キット、又は使用のためのキットに当てはめられてもよい。
【0172】
一実施形態において、本発明の治療上の組み合わせは、経口、静脈内、筋肉内、皮下、及び皮内投与又はその組み合わせから選択される1つ以上によって投与されてもよい。抗生物質(たとえばアミノグリコシド系抗生物質)及び核酸モノアルキル化薬は、同じ又は別々の手段によって投与されてもよい。たとえば、抗生物質(アミノグリコシド系抗生物質)は、経口的に投与されてもよく、核酸モノアルキル化薬は、静脈内に投与されてもよい。
【0173】
抗生物質のアミノグリコシド系の分類は、約10の様々な抗生物質からなり、それぞれ、共通の作用メカニズムを有する。アミノグリコシドは、主として、30Sリボソームサブユニット内の16SリボソームRNAのアミノアシル部位に結合することによって作用し、これは、遺伝子コードの誤読、したがって転座の阻害をもたらす。mRNAの結合及び50Sリボソームサブユニットの合体などのような、ペプチド合成に必要とされる初めのステップは、中断されないが、翻訳の精度を保証するためのメカニズムの破壊のために、伸長が起こらない。結果として生じる抗菌活性は、感受性の好気性グラム陰性桿菌に対して、通常殺菌性である。アミノグリコシドの最も一般的な臨床上の用途は、好気性グラム陰性桿菌によって引き起こされる深刻な感染症の処置のためのものである。
【0174】
一実施形態において、アミノグリコシドは、カナマイシン(たとえばカナマイシンA)、アミカシン、トブラマイシン、ジベカシン、ゲンタマイシン、シソマイシン、ネチルマイシン、ネオマイシン、ストレプトマイシン、又はその組み合わせから選択される1つ以上である。そのような抗生物質は、多くの場合、塩形態で使用され/投与され、このように、アミノグリコシド系抗生物質の任意の塩が、本発明によって包含される。
【0175】
一実施形態において、アミノグリコシドは、カナマイシン(たとえばカナマイシンA)、アミカシン、トブラマイシン、ジベカシン、シソマイシン、ネチルマイシン、ネオマイシン、ストレプトマイシン、又はその組み合わせから選択される1つ以上である。
【0176】
前記ネオマイシンは、ネオマイシンB、ネオマイシンC、又はネオマイシンE(たとえばパロモマイシン)の1つ以上であってもよい。
【0177】
好ましい実施形態において、アミノグリコシド系抗生物質は、カナマイシン(たとえばカナマイシンA)及びネオマイシンから選択される1つ以上である。適切には、前記アミノグリコシド系抗生物質は、カナマイシン(たとえばカナマイシンA)である。
【0178】
一実施形態において、ペニシリン系抗生物質は、ベンジルペニシリン(ペニシリンG)、プロカインベンジルペニシリン(プロカインペニシリン)、ベンザチンベンジルペニシリン(ベンザチンペニシリン)、及びフェノキシメチルペニシリン(ペニシリンV)、又はその組み合わせから選択される1つ以上である。
【0179】
一実施形態において、セファロスポリン系抗生物質は、セファゾリン、セファクロル、セフジニル、セフチン(ceftin)、セフロキシム、セファドロキシル、セファレキシン、セフェピム、セフトリアキソン、セフィキシム、及びセフタロリンフォサミル又はその組み合わせから選択される1つ以上である。
【0180】
一実施形態において、マクロライド系抗生物質は、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、エリスロマイシン、フィダキソマイシン、及びテリスロマイシン又はその組み合わせから選択される1つ以上である。
【0181】
一実施形態において、フルオロキノロン系抗生物質は、シプロフロキサシン、デラフロキサシン、ゲミフロキサシン、レボフロキサシン、モキシフロキサシン、ノルフロキサシン、及びオフロキサシン又はその組み合わせから選択される1つ以上である。
【0182】
一実施形態において、スルホンアミド系抗生物質は、スルファセタミド、スルファジアジン、スルファジミジン、スルファフラゾール(スルフィソキサゾール)、スルフィソミジン、スルファメトキサゾール、スルファモキソール、スルファニトラン、スルファジメトキシン、スルファメトキシピリダジン、スルファメトキシジアジン、スルファドキシン、スルファメトピラジン、及びテレフチル(terephtyl)並びにその組み合わせから選択される1つ以上である。
【0183】
一実施形態において、テトラサイクリン系抗生物質は、テトラサイクリン、クロルテトラサイクリン、オキシテトラサイクリン、デメクロサイクリン、リメサイクリン、メクロサイクリン、メタサイクリン、ミノサイクリン、ロリテトラサイクリン、チゲサイクリン、及びドキシサイクリン又はその組み合わせから選択される1つ以上である。
【0184】
一実施形態において、核酸モノアルキル化薬は、N-メチル-N’-ニトロ-N-ニトロソグアニジン(MNNG)、メタンスルホン酸メチル(MMS)、ダカルバジン、メチルニトロソ尿素(MMU)、メタンスルホン酸エチル(EMS)、テモゾロミド(TMZ)、エチルニトロソ尿素(ENU)、ジエチルニトロソアミン(DEN)、及びN-ニトロソ-N-メチル尿素(NMU)から選択される1つ以上である。
【0185】
一実施形態において、核モノアルキル化薬は、ダカルバジン、メチルニトロソ尿素(MMU)、メタンスルホン酸エチル(EMS)、テモゾロミド(TMZ)、エチルニトロソ尿素(ENU)、ジエチルニトロソアミン(DEN)、及びN-ニトロソ-N-メチル尿素(NMU)から選択される1つ以上である。
【0186】
好ましい実施形態において、前記アルキル化薬は、テモゾロミド(TMZ)である。
【0187】
メタンスルホン酸メチル(PubChem CID:4156)は、通常、N7-デオキシグアノシン及びN3-デオキシアデノシンでDNAをメチル化し、また、DNA塩基中の他の酸素原子及び窒素原子でメチル化してもよく、また、核酸のホスホジエステル連結をメチル化してもよい。
【0188】
メタンスルホン酸メチル(MMS)は、以下の構造を有してもよい。
【化2】
【0189】
メタンスルホン酸エチル(PubChem CID:6113)は、以下の構造を有してもよい。
【化3】
【0190】
テモゾロミド(PubChem CID:5394)は、以下の構造を有してもよい。
【化4】
【0191】
エチルニトロソ尿素(PubChem CID:12967)は、以下の構造を有してもよい。
【化5】
【0192】
N-ニトロソ-N-メチル尿素(NMU)(PubChem CID:12699)は、以下の構造を有してもよい。
【化6】
【0193】
N-メチル-N’-ニトロ-N-ニトロソグアニジン(PubChem CID:6261)は、以下の構造を有してもよい。
【化7】
【0194】
ダカルバジン(PubChem CID:2942)は、以下の構造を有してもよい。
【化8】
【0195】
ジエチルニトロソアミン(PubChem CID:5921)は、以下の構造を有してもよい。
【化9】
【0196】
そのような核酸モノアルキル化薬は、通常、核酸が、前記モノアルキル化薬と接触した場合に、前記核酸(たとえば核酸の塩基/ヌクレオチド)のアルキルによる置換をもたらす。
【0197】
「アルキル」(「アルキル基」及び「アルキル置換基」という用語と同義)は、飽和又は不飽和の直鎖又は分岐炭化水素鎖であってもよい。アルキル基は、1~18の炭素原子を有する、たとえば、アルキル基は、C1~C18基であってもよい又はC1~C12基、C1~C6基、若しくはC1~C4基である。低級アルキル基は、通常、1~6の炭素を有していてもよい(また、直鎖であっても分岐であってもよい鎖であってもよい)。アルキル基は、ゼロ分岐(たとえば直鎖である)、1分岐、2分岐、又は2つ以上の分岐を有していてもよい。一実施形態において、アルキル基は、飽和されていてもよい。別の実施形態において、アルキル基は、不飽和であってもよい。一実施形態において、不飽和アルキルは、1つの二重結合、2つの二重結合、2つを超える二重結合、及び/又は1つの三重結合、2つの三重結合、若しくは2つを超える三重結合を有していてもよい。アルキル鎖は、任意選択で、1つの置換基(たとえば、アルキル基は単一置換である)又は1~2の置換基又は1~3の置換基又は1~4の置換基等により置換されてもよい。置換基は、ヒドロキシ、アミノ、アルキルアミノ、ボロニル(boronyl)、カルボキシ、ニトロ、シアノ、又はその組み合わせからなる群から選択される1つ以上であってもよい。1つ以上のヘテロ原子を組み込むアルキル基は、ヘテロアルキル基と呼ばれてもよい。
【0198】
一実施形態において、アルキル基は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、ヘプチル、ノニル、デシル、又はその組み合わせから選択される1つ以上であってもよい。適切には、アルキル基は、メチル、エチル、又はその組み合わせから選択される1つ以上であってもよい(好ましくはメチル)。
【0199】
一実施形態において、アルキル化薬は、メタンスルホン酸メチル(MMS)、MMU、メタンスルホン酸エチル(EMS)、テモゾロミド(TMZ)、エチルニトロソ尿素(ENU)、及びメチルニトロソ尿素(NMU)から選択される1つ以上である。
【0200】
そのような核酸モノアルキル化薬の多くは、以前に、化学療法の一部としてのみ使用されたことがある。したがって、本発明は、そのような薬の好都合なさらなる、すなわち、細菌の抑制のための用途を提供する。
【0201】
一実施形態において、核酸モノアルキル化薬は、ニトロソ尿素であってもよい。適切には、ニトロソ尿素は、MMU、ENU、NMU、又はその組み合わせから選択される1つ以上であってもよい。
【0202】
一実施形態において、前記核酸モノアルキル化薬は、MNNGであり、前記アミノグリコシド系抗生物質は、カナマイシン、アミカシン、トブラマイシン、ジベカシン、ゲンタマイシン、シソマイシン、ネチルマイシン、ネオマイシン、及びストレプトマイシン又はその塩から選択される1つ以上である。
【0203】
一実施形態において、前記核酸モノアルキル化薬は、MMSであり、前記アミノグリコシド系抗生物質は、カナマイシン、アミカシン、トブラマイシン、ジベカシン、ゲンタマイシン、シソマイシン、ネチルマイシン、ネオマイシン、及びストレプトマイシン又はその塩から選択される1つ以上である。
【0204】
一実施形態において、前記核酸モノアルキル化薬は、ダカルバジンであり、前記アミノグリコシド系抗生物質は、カナマイシン、アミカシン、トブラマイシン、ジベカシン、ゲンタマイシン、シソマイシン、ネチルマイシン、ネオマイシン、及びストレプトマイシン又はその塩から選択される1つ以上である。
【0205】
一実施形態において、前記核酸モノアルキル化薬は、MMUであり、前記アミノグリコシド系抗生物質は、カナマイシン、アミカシン、トブラマイシン、ジベカシン、ゲンタマイシン、シソマイシン、ネチルマイシン、ネオマイシン、及びストレプトマイシン又はその塩から選択される1つ以上である。
【0206】
一実施形態において、前記核酸モノアルキル化薬は、EMSであり、前記アミノグリコシド系抗生物質は、カナマイシン、アミカシン、トブラマイシン、ジベカシン、ゲンタマイシン、シソマイシン、ネチルマイシン、ネオマイシン、及びストレプトマイシン又はその塩から選択される1つ以上である。
【0207】
一実施形態において、前記核酸モノアルキル化薬は、TMZであり、前記アミノグリコシド系抗生物質は、カナマイシン、アミカシン、トブラマイシン、ジベカシン、ゲンタマイシン、シソマイシン、ネチルマイシン、ネオマイシン、及びストレプトマイシン又はその塩から選択される1つ以上である。
【0208】
一実施形態において、前記核酸モノアルキル化薬は、ENUであり、前記アミノグリコシド系抗生物質は、カナマイシン、アミカシン、トブラマイシン、ジベカシン、ゲンタマイシン、シソマイシン、ネチルマイシン、ネオマイシン、及びストレプトマイシン又はその塩から選択される1つ以上である。
【0209】
一実施形態において、前記核酸モノアルキル化薬は、DENであり、前記アミノグリコシド系抗生物質は、カナマイシン、アミカシン、トブラマイシン、ジベカシン、ゲンタマイシン、シソマイシン、ネチルマイシン、ネオマイシン、及びストレプトマイシン又はその塩から選択される1つ以上である。
【0210】
一実施形態において、前記核酸モノアルキル化薬は、NMUであり、前記アミノグリコシド系抗生物質は、カナマイシン、アミカシン、トブラマイシン、ジベカシン、ゲンタマイシン、シソマイシン、ネチルマイシン、ネオマイシン、及びストレプトマイシン又はその塩から選択される1つ以上である。
【0211】
好ましい実施形態において、本発明の核酸モノアルキル化薬は、DNAモノアルキル化薬である。そのような核酸/DNAモノアルキル化薬は、核酸のみ(又はたとえばDNAのみ)をアルキル化するモノアルキル化薬に限定されない。たとえば、モノアルキル化薬は、ポリペプチドなどのような、別の分子をアルキル化することができてもよい。
【0212】
適切には、アミノグリコシド系抗生物質は、核酸モノアルキル化薬と相乗作用を示して、そのような薬の組み合わせが投薬される細胞(たとえば細菌細胞)又は生物において起こる核酸アルキル化(たとえば有毒なDNAアルキル化)の量の増加をもたらす。したがって、アミノグリコシド系抗生物質は、モノアルキル化薬の存在下において核酸のアルキル化を向上させてもよい。さらなる実施形態において、アミノグリコシドは、核酸モノアルキル化薬の核酸アルキル化活性を向上させて、核酸(たとえばヌクレオチド)アルキル化を増加させる。好ましくは、前記核酸アルキル化は、有毒なDNAアルキル化である。
【0213】
一実施形態において、核酸モノアルキル化薬は、アルキル基により核酸のヌクレオチドを置換して、1つ以上のヌクレオチド付加物、好ましくは、3-メチルシトシン(3meC)、3-メチルグアニン(3meG)、3-メチルアデニン(3meA)、8-オキソグアニン(8-オキソ-G)、O2-アルキルチミン、O4-アルキルチミン、O6-メチルグアニン、O6-エチルグアニン、又は任意のその組み合わせから選択される1つ以上のヌクレオチド付加物をもたらす。
【0214】
一実施形態において、核酸モノアルキル化薬は、アルキル基によりヌクレオチド(たとえば核酸の)を置換して、3-メチルシトシン(3meC)、3-メチルグアニン(3meG)、3-メチルアデニン(3meA)、O2-アルキルチミン、O4-アルキルチミン、O6-メチルグアニン、O6-エチルグアニン、又は任意のその組み合わせから選択される1つ以上のヌクレオチド付加物をもたらす。
【0215】
一実施形態において、核酸モノアルキル化薬は、第3位で(たとえば第3番目の窒素で)メチル基によりシトシンを置換して(たとえばメチル化して)、ヌクレオチド付加物3meCをもたらす。
【0216】
一実施形態において、核酸モノアルキル化薬は、アルキル基により、第3位で(たとえば第3番目の窒素で)グアニンを置換して(たとえばメチル化して)、ヌクレオチド付加物3meGをもたらす。
【0217】
一実施形態において、核酸モノアルキル化薬は、アルキル基により第3位で(たとえば第3番目の窒素で)でアデニンを置換して(たとえばメチル化して)、3meAをもたらす。
【0218】
一実施形態において、核酸モノアルキル化薬は、アルキル基によりO2位でチミンを置換して(たとえばアルキル化して)、O2-アルキルチミンをもたらす。
【0219】
一実施形態において、核酸モノアルキル化薬は、アルキル基によりO4位でチミンを置換して(たとえばアルキル化して)、ヌクレオチド付加物O4-アルキルチミンをもたらす。
【0220】
一実施形態において、核酸モノアルキル化薬は、アルキル基によりO6位でチミンを置換して(たとえばアルキル化して)、ヌクレオチド付加物O6-アルキルチミンをもたらす。
【0221】
一実施形態において、核酸モノアルキル化薬は、アルキル基によりO6位でグアニンを置換して(たとえばメチル化して)、ヌクレオチド付加物O6-メチルグアニンをもたらす。
【0222】
一実施形態において、核酸モノアルキル化薬は、アルキル基によりO6位でグアニンを置換して(たとえばメチル化して)、ヌクレオチド付加物O6-エチルグアニンをもたらす。
【0223】
一実施形態において、核酸モノアルキル化薬は、ヌクレオチド又は核酸を置換して、3meC、3meG、3meA、8-オキソ-G、O2-アルキルチミン、O4-アルキルチミン、O6-メチルグアニン、及びO6-エチルグアニンから選択される1つ以上のヌクレオチド付加物をもたらす。
【0224】
抗生物質/アミノグリコシド抗生物質及び核酸モノアルキル化薬の任意の組み合わせは、本発明によって包含される。たとえば、治療上の組み合わせ又は組成物は、複数のアミノグリコシド及び/又は複数の核酸モノアルキル化薬を含んでいてもよい。様々な組み合わせが、処置される疾患/病原体/感染症に基づいて選ばれてもよく、様々な組み合わせが、特定の疾患に最適であってもよい。本発明の治療上の組み合わせ/組成物内に包含される広範な抗生物質/アミノグリコシド系抗生物質及び核酸モノアルキル化薬を考慮すれば、これは、多数の感染症、さらには、多数の様々な病原体によって引き起こされるこの分類内の多数の感染症(たとえば細菌、ウイルス、菌類等の感染)の処置の向上を可能にする。
【0225】
一実施形態において、治療上の組み合わせは、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、又は10のアミノグリコシド系抗生物質を含んでいてもよい。たとえば、治療上の組み合わせは、少なくとも2、3、4、又は5のアミノグリコシド系抗生物質を含んでいてもよい。
【0226】
一実施形態において、治療上の組み合わせは、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10の核酸モノアルキル化薬を含んでいてもよい。たとえば、治療上の組み合わせは、少なくとも2、3、4、又は5の核酸モノアルキル化薬を含んでいてもよい。
【0227】
配列同一性
本明細書において記載される遺伝子又はポリペプチドに対する言及は、そのホモログを含む。当業者はまた、相同な/類似の核酸/ポリペプチド配列を同定するために適切な配列アライメントを用いる方法を理解している。
【0228】
全体的な方法、局所的な方法、及びハイブリッド方法、たとえばセグメントアプローチ方法などを含むが、これらに限定されない、種々の配列アライメント方法のいずれも、同一性パーセントを決定するために、使用することができる。同一性パーセントを決定するためのプロトコールは、当業者の範囲内のごく普通の手順である。全体的な方法は、分子の初めから終わりまで配列をアライメントし、個々の残基のペアのスコアを合計することによって及びギャップペナルティーを課すことによって最も良いアライメントを決定する。非限定的な方法は、たとえば、CLUSTAL W、たとえばJulie D. Thompson et al., CLUSTAL W: Improving the Sensitivity of Progressive Multiple Sequence Alignment Through Sequence Weighting, Position- Specific Gap Penalties and Weight Matrix Choice, 22(22) Nucleic Acids Research 4673-4680 (1994)を参照、及び反復改良法、たとえばOsamu Gotoh, Significant Improvement in Accuracy of Multiple Protein. Sequence Alignments by Iterative Refinement as Assessed by Reference to Structural Alignments, 264(4) J. MoI. Biol. 823-838 (1996)を参照、を含む。局所的な方法は、インプット配列のすべてによって共有される1つ以上の保存モチーフを同定することによって、配列をアライメントする。非限定的な方法は、たとえば、Match-box、たとえばEric Depiereux and Ernest Feytmans, Match-Box: A Fundamentally New Algorithm for the Simultaneous Alignment of Several Protein Sequences, 8(5) CABIOS 501 -509 (1992)を参照、Gibbs sampling、たとえばC. E. Lawrence et al., Detecting Subtle Sequence Signals: A Gibbs Sampling Strategy for Multiple Alignment, 262(5131 ) Science 208-214 (1993)を参照、Align-M、たとえばIvo Van WaIIe et al., Align-M - A New Algorithm for Multiple Alignment of Highly Divergent Sequences, 20(9) Bioinformatics:1428-1435 (2004)を参照、を含む。
【0229】
このように、配列同一性パーセントは、従来の方法によって決定される。たとえばAltschul et al., Bull. Math. Bio. 48: 603-16, 1986及びHenikoff and Henikoff, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:10915-19, 1992を参照。簡単に述べると、2つのアミノ酸配列が、下記に示されるように(アミノ酸は標準的な一文字コードによって示される)、Henikoff and Henikoff(同書)の10のギャップオープニングペナルティー、1のギャップエクステンションペナルティー、及び「blosum 62」スコアリングマトリックスを使用してアライメントスコアを最適化するようにアライメントされる。
【0230】
配列同一性を決定するためのアライメントスコア
【化10】
【0231】
同一性パーセントは、次いで、次のように算出される。
【数1】
【0232】
実質的に相同なポリペプチドは、1つ以上のアミノ酸置換、欠失、又は追加を有するとして特徴付けられる。これらの変化は、好ましくは軽微な類いのものである、すなわち、保存的アミノ酸置換(下記を参照)及びポリペプチドのフォールディング又は活性に著しく影響を及ぼさない他の置換、通常1~約30アミノ酸のわずかな欠失、並びにアミノ末端メチオニン残基、約20~25残基以下の小さなリンカーペプチド、又はアフィニティータグなどのようなわずかなアミノ又はカルボキシ末端伸張である。
【0233】
特に定義されない限り、本明細書において使用される技術用語及び科学用語はすべて、本開示が属する当技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。Singleton, et al., DICTIONARY OF MICROBIOLOGY AND MOLECULAR BIOLOGY, 20 ED., John Wiley and Sons, New York (1994)及びHale & Marham, THE HARPER COLLINS DICTIONARY OF BIOLOGY, Harper Perennial, NY (1991)は、本開示で使用される用語の多くについての一般的な辞書を当業者に提供する。
【0234】
本開示は、本明細書において開示される例示的な方法及び材料によって限定されず、本明細書において記載されるものと同様の又は等価な任意の方法及び材料は、本開示の実施形態を実施するか又は試験するのに使用することができる。数の範囲は、範囲を定めている数を含む。特に明記しない限り、それぞれ、いずれの核酸配列も、左から右に5’~3’方向に書かれており、アミノ酸配列は、左から右にアミノ~カルボキシ方向に書かれている。
【0235】
本明細書において提供される見出しは、本開示のさまざまな態様又は実施形態を限定するものではない。
【0236】
アミノ酸は、アミノ酸の名称、三文字の略語、又は1文字の略語を使用して、本明細書において参照される。「タンパク質」という用語は、本明細書において使用されるように、タンパク質、ポリペプチド、及びペプチドを含む。本明細書において使用されるように、「アミノ酸配列」という用語は、「ポリペプチド」という用語及び/又は「タンパク質」という用語と同義である。いくつかの場合では、「アミノ酸配列」という用語は、「ペプチド」という用語と同義である。いくつかの場合では、「アミノ酸配列」という用語は、「酵素」という用語と同義である。「タンパク質」及び「ポリペプチド」という用語は、本明細書において区別なく使用される。本開示及び請求項において、アミノ酸残基の従来の一文字及び三文字コードが、使用されてもよい。アミノ酸の3文字コードは、IUPACIUB Joint Commission on Biochemical Nomenclature(JCBN)に従って定義されるとおりである。ポリペプチドが、遺伝子コードの縮重のために2つ以上のヌクレオチド配列によってコードされてもよいこともまた理解される。
【0237】
用語の他の定義は、明細書の全体にわたって記されていてもよい。例示的な実施形態をさらに詳細に記載する前に、本開示が記載される特定の実施形態に限定されず、このように、変更されてもよいことが理解されるべきである。本開示の範囲が添付の特許請求の範囲によってのみ定められるので、本明細書において使用される術語は、特定の実施形態を記載する目的のみのためにあり、限定するようには意図されないこともまた、理解されるべきである。
【0238】
値の範囲が提供される場合、文脈が明確に指示しない限り、その範囲の上限値と下限値との間の、下限値の単位の10分の1までのそれぞれの介在値もまた、明確に開示されることが理解される。所定の範囲における任意の所定の値又は介在値とその所定の範囲における任意の他の所定の値又は介在値との間のそれぞれのより小さな範囲が、本開示内に包含される。これらのより小さな範囲の上限値及び下限値は、独立して、範囲に含まれてもよく又は除外されてもよく、所定の範囲における任意の明確に除外される限界値に従って、より小さな範囲において限界値のどちらかが含まれる、どちらも含まれない、又は両方とも含まれるそれぞれの範囲もまた、本開示内に包含される。所定の範囲が、一方又は両方の限界値を含むのに対して、それらの含まれる限界値の一方又は両方を除外する範囲もまた、本開示に含まれる。
【0239】
本明細書及び添付の請求項において使用されるように、文脈が明確に指示しない限り、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、複数形の指示物を含むことに注意しなければならない。したがって、たとえば、「アルキル化薬」に対する言及は、複数のそのような薬を含み、「アミノグリコシド系抗生物質」に対する言及は、1つ以上のアミノグリコシド系抗生物質及び当業者らに知られているその等価物に対する言及を含む、などとする。
【0240】
本明細書において論じられる刊行物は、本出願の出願日前のそれらの開示に限って提供される。そのような刊行物が、本明細書に添付される請求項に対する先行技術を構成するという許可として解釈されるようなものは本明細書において何もない。
【0241】
図面の簡単な説明
本発明の実施形態は、ここで、単なる例として、以下の図及び実施例の参照と共に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0242】
【
図1】
図1は、細菌の抑制における、アルキル化薬及びアミノグリコシド系抗生物質の組み合わせの相乗的効果を示す図である。エラーバーは、少なくとも3回の繰り返しについての標準偏差を示す。CFU=コロニー形成単位。左の4本のバーは、野生型(WT)細胞に相当する。右の4本のバーは、alkb-/-細胞に相当する(alkb)。
【
図2】
図2は、カナマイシンと組み合わせた二官能性アルキル化薬ロムスチンに対して、WTとalkB突然変異体との間に感受性における差がないことを示す図である。wt=野生型、alkb=alkb突然変異体(非機能的alkb)。「生存可能なコロニーロムスチン/未処置」=DMSO処置の後のコロニーに対するロムスチン処置の後に観察されるコロニーの比。
【
図3】
図3は、DNAメチルトランスフェラーゼ活性によるアルキル化による損傷の導入のためのモデルを示す概略図を示す図である。主たる活性は、5meCの導入であるが(濃い矢印)、3meCもまた、低含量の副産物(薄い矢印)として導入される。3meCは、真核生物においてALKB2の活性によって除去され、ALKB2は、細菌AlkBに対して相同である。
【実施例0243】
実施例
材料及び方法
大腸菌(E.coli)におけるmSSSIの過剰発現
カナマイシン抵抗性遺伝子(ネオマイシンホスホトランスフェラーゼIIをコードする)を含有するmSSSI発現プラスミドpAIT2は、New England Biolabsから寄贈された。このプラスミドは、IPTG誘発性のpTacプロモーターのコントロール下で、mSSSIメチルトランスフェラーゼ(DNMT)を発現する。
【0244】
標準的なCaCl2形質転換を、alkB遺伝子(ALKB)の欠失を有していない(WT)又は有する大腸菌(E.coli)株C2353(NEB)の中にpAIT2プラスミドを導入するために使用した。両方のバックグラウンドにおけるmSSSI遺伝子の基本的な活性を、HpaII及びMspIを使用するメチル感受性制限消化を使用することによって検証した。
【0245】
DNMT過剰発現の非存在下におけるカナマイシン抵抗性に対するアルキル化による損傷の効果を試験するために、これもまたカナマイシン抵抗性遺伝子を持つ標準タンパク質発現プラスミドpET28aを、ネガティブコントロールとして使用した。C2353への形質転換は、pAIT2と同様とした。
【0246】
実施例1-アルキル化薬感受性アッセイは細菌の成長の抑制におけるアミノグリコシドのアルキル化薬との相乗作用を示す
例示的なアミノグリコシド系カナマイシンと例示的なアルキル化薬MMSとの間の相乗作用が、実証される。
【0247】
大腸菌(E.coli)株は、0.6のODに達するまで、37℃でLuria Bertani(LB)培地において単一のコロニーから成長させた。細菌は、次いで、異なる処置に対して異なる一定分量に分離し、5分間3000毎分回転数(rpm)で遠心分離し、ペレットダウンさせた。細菌を、次いで、50ug/mlのカナマイシンあり又はなしの、20mMメタンスルホン酸メチル(MMS;シグマアルドリッチ(Sigma-Aldrich))を補足した又は補足しなかったLB培地中に再懸濁した。37℃で30分後、細菌は、LB中でくまなく洗浄して、MMSを除去し、50ug/mlのカナマイシンあり又はなしのLBで平板培養した。感受性は、コロニー形成単位(CFU)の数を算出し、10を底とする対数を求めることによってアッセイした。実験は、それぞれの条件について3回繰り返し、平均値及び標準偏差をプロットした。有意差は、両側t検定を使用して算出した。
【0248】
図1に示すように、20mMの低用量のMMSに対して、WT大腸菌(E.coli)が耐性を示し、細菌の成長に対して最低限の効果しかない。MMSに対する感受性は、カナマイシンと同時に処置した際に増加し、DNMTを発現する細菌ではなおさらそうであった。驚くべきことに、これらの細菌がカナマイシン抵抗性をコードするプラスミドを持っていた場合であっても、MMSとカナマイシンとの間の相乗作用のように、この感受性は、alkB突然変異体において著しく増加した。この感受性及び相乗作用は、DNMT(有毒なアルキル化による損傷をDNAに導入することができる酵素、
図2を参照)の過剰発現に際して、なおさらに増加し、カナマイシンがMMSと相乗作用を示して、有毒な3meCアルキル化による損傷のDNAへの導入を増加させることを示唆した。
【0249】
実施例2-カナマイシンと組み合わせた二官能性アルキル化薬ロムスチンに対してWTとalkB突然変異体との間で感受性の差がない
この実験は、ロムスチンをMMSの代わりに使用したことを除いて、実施例1と同様の方法で実行した。
【0250】
細胞を、0.8のODまで、LB+50ug/mlカナマイシンにおいて成長させ、20mMのロムスチン(実施例1に従って同様の方法で)又はDMSO(コントロール)により2時間処置した。細胞は、カナマイシン抵抗性遺伝子(ネオマイシンホスホトランスフェラーゼIIをコードする)を発現した。
【0251】
生存は、未処置コントロール(DMSOコントロール)と比べたコロニー数として測定した。結果を
図2に示す。それぞれのバーは、生物学的反復実験であり、両側t検定からのp値は、0.93であった。ロムスチン+カナマイシンの組み合わせに対するAlkBの過剰な感受性は、見られなかった。
【0252】
上記の本明細書において言及される刊行物はすべて、参照によって本明細書に援用される。本発明について記載される方法及びシステムの様々な修飾及び変更は、本発明の範囲及び精神から逸脱することなく当業者に明らかであろう。本発明が特定の好ましい実施形態に関連して記載されたが、主張される本発明がそのような特定の実施形態に不当に限定されないことを理解されたい。実際に、生化学及びバイオテクノロジー又は関係する分野の当業者らに明白である、本発明を実行するために記載されたモードのさまざまな修飾は、以下の請求項の範囲内にあることが意図される。
【0253】
配列
配列番号1(大腸菌(E.coli)株、K-12 alkb;NCBI Reference Sequence:NC_000913.3)
【化11】
前記アルキル化されたヌクレオチド付加物は、3meC、3meG、3meA、8-オキソ-G、O2-アルキルチミン、O4-アルキルチミン、O6-メチルグアニン、及びO6-エチルグアニンから選択される1つ以上である、好ましくは、3meC、3meG、3meA、O2-アルキルチミン、O4-アルキルチミン、O6-メチルグアニン、及びO6-エチルグアニンから選択される1つ以上である、請求項1又は2に記載の使用のための治療組成物。
前記アミノグリコシド系抗生物質は、カナマイシン、アミカシン、トブラマイシン、ジベカシン、ゲンタマイシン、シソマイシン、ネチルマイシン、ネオマイシン、及びストレプトマイシン又はその塩から選択される1つ以上である、好ましくは、カナマイシン、アミカシン、トブラマイシン、ジベカシン、シソマイシン、ネチルマイシン、ネオマイシン、及びストレプトマイシン又はその塩から選択される1つ以上である、請求項1~7のいずれか一項に記載の使用のための治療組成物。
前記核酸モノアルキル化薬は、N-メチル-N’-ニトロ-N-ニトロソグアニジン(MNNG)、メタンスルホン酸メチル(MMS)、ダカルバジン、メチルニトロソ尿素(MMU)、メタンスルホン酸エチル(EMS)、及びテモゾロミド(TMZ)から選択される1つ以上である、請求項1~11のいずれか一項に記載の使用のための治療組成物。
前記核酸モノアルキル化薬は、アルキル基により核酸のヌクレオチドを置換して、3meC、3meG、3meA、8-オキソ-G、O2-アルキルチミン、O4-アルキルチミン、O6-メチルグアニン、及びO6-エチルグアニンから選択される1つ以上のアルキル化されたヌクレオチド付加物、好ましくは、3meC、3meG、3meA、O2-アルキルチミン、O4-アルキルチミン、O6-メチルグアニン、及びO6-エチルグアニンから選択される1つ以上のアルキル化されたヌクレオチド付加物をもたらす、請求項1~12のいずれか一項に記載の使用のための治療組成物。