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特開2024-173983混合物から個々の抗体を定量する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173983
(43)【公開日】2024-12-13
(54)【発明の名称】混合物から個々の抗体を定量する方法
(51)【国際特許分類】
   C07K 1/20 20060101AFI20241206BHJP
   C07K 16/00 20060101ALI20241206BHJP
   C07K 16/10 20060101ALI20241206BHJP
   G01N 30/88 20060101ALI20241206BHJP
   G01N 30/26 20060101ALI20241206BHJP
【FI】
C07K1/20
C07K16/00
C07K16/10
G01N30/88 J
G01N30/26 A
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024165111
(22)【出願日】2024-09-24
(62)【分割の表示】P 2022124958の分割
【原出願日】2017-08-08
(31)【優先権主張番号】62/375,887
(32)【優先日】2016-08-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】597160510
【氏名又は名称】リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】REGENERON PHARMACEUTICALS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】リュー、ディンジャン
(72)【発明者】
【氏名】ルオ、リン
(72)【発明者】
【氏名】シュー、ロン
(57)【要約】
【課題】2つ以上の抗体分子を含んだ混合物から抗体分子の量を定量する方法に関する。
【解決手段】その方法は、疎水性相互作用クロマトグラフィ高速液体クロマトグラフィ(HIC-HPLC)によって前記混合物から前記2つ以上の抗体分子のそれぞれを分離することと、各抗体分子の量を定量することとを含み、各抗体分子の分子量は、前記混合物中の他の抗体分子の15kDa以内であり、各抗体分子は、カイトおよびドリトルの疎水性指標で約0.25単位を超えるだけ前記混合物中の別の抗体分子と異なるか、あるいはHIC-HPLCで単独で分析される場合、前記抗体分子のそれぞれは、前記混合物中の別の抗体分子とほとんど重複せずに異なる分析時間で溶出するかのいずれか一方またはその両方である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の抗体を含んだ混合物から抗体の量を定量する方法であって、前記方法は、
疎水性相互作用クロマトグラフィ高速液体クロマトグラフィ(HIC-HPLC)を使用して前記混合物中の前記複数の抗体のそれぞれを分離することと、
前記HIC-HPLCからクロマトグラフを生成することと、
前記混合物中の各抗体の量を定量することと
を含み、前記混合物中の各抗体の溶出に対して、前記クロマトグラフは、前記クロマトグラフ中の他のピークとは重複しないピークを示し、前記混合物中の各抗体の分子量は、前記混合物中の他の抗体の分子量の15kDa以内であり、HIC-HPLCで個々に分析される場合、前記混合物中の各抗体は、前記混合物中の別の抗体とは異なる分析時間で溶出し、前記混合物中の前記複数の抗体は、ヒト患者における感染症を治療するように構成されている、方法。
【請求項2】
前記混合物中の第1の抗体はHIC-HPLC分析の間の第1の分析時間で溶出し、前記混合物中の第2の抗体はHIC-HPLC分析の間の第2の分析時間で溶出し、前記第1の分析時間および前記第2の分析時間は重複していない、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記HIC-HPLCは、約pH5.0~約pH7.0の緩衝液中で行われる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記複数の抗体は3つの抗体を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記混合物中の各抗体の表面疎水性は、タンパク質構造または構造的モデルに基づいて算出される表面疎水性、硫酸アンモニウムまたはPEG8000中の溶解性についての高速スクリーニング、あるいは親和性捕捉自己相互作用ナノ粒子分光法(AC-SINS)による分子相互作用についての高速スクリーニングからなる群から選択される1つ以上の方法によって判定される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記混合物中の第1の抗体および前記混合物中の第2の抗体は少なくとも90%相同なタンパク質配列を有するか、あるいは、
前記第1の抗体および前記第2の抗体は、これらのタンパク質配列によって判定される場合に互いに約0.6以内の等電点(pI)を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記混合物中の前記抗体のうちの1つ以上はモノクローナル抗体であり、特にヒトモノクローナル抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記混合物中の前記抗体のうちの2つ以上は同じアイソタイプであるか、互いの変異体であり、且つ/又は同じ抗原に結合する、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記混合物は合剤組成物であり、特に前記合剤組成物は、ヒト患者におけるMERS、ヒト患者におけるエボラ出血熱、及び/又はヒト患者における黄斑変性症を治療するように構成されている、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記合剤組成物は医薬製品中に含まれる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
複数の抗体を含んだ混合物から抗体の量を定量する方法であって、前記方法は、
疎水性相互作用クロマトグラフィ高速液体クロマトグラフィ(HIC-HPLC)を使用して前記混合物中の前記複数の抗体のそれぞれを分離することであって、前記混合物は、ヒト患者におけるウイルス感染を治療するように構成された合剤組成物であり、前記混合物中の各抗体の分子量は、前記混合物中の別の各抗体の分子量の15kDa以内であることと、
前記混合物中の各抗体の量を定量することと、
前記HIC-HPLCからクロマトグラフを生成することと
を含み、前記混合物中の各抗体の溶出に対して、前記クロマトグラフは、前記クロマトグラフ中の他のピークとは重複しないピークを示す、方法。
【請求項12】
前記混合物中の各抗体は、ウイルスのスパイクタンパク質に対するものである、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記スパイクタンパク質は、エボラウイルス又はコロナウイルスのスパイクタンパク質である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記ウイルス感染は、エボラウイルス感染、コロナウイルス感染、又はジカウイルス感染である、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記合剤組成物は2つ又は3つの抗体を含む、請求項11又は14に記載の方法。
【請求項16】
前記抗体はヒトモノクローナル抗体である、請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、治療用抗体の合剤(co-formulation)のためのアッセイの分野に関する。
【背景技術】
【0002】
単一ではなく複数のモノクローナル抗体(mAb)を患者に投与すると、患者の診断的または治療的適応および有効性が改善される場合がある。これらのmAbは、単一の医薬製品(DP)中および患者に投与されるDP中に共配合されてもよい。
【0003】
規制当局は、DP中に混合される合剤原薬(cFDS)中の個々のmAb、またはDP自体を定量する方法を求めている。2つ以上の抗体分子を分離して各mAbの濃度を測定する方法を開発することは、それら抗体分子が類似の分子量、タンパク質構造および電荷特性を有する可能性があるために困難である。
【発明の概要】
【0004】
本開示は、複数の抗体を含んだ混合物から抗体の量を定量する方法を含む。いくつかの態様において、本方法はとりわけ、疎水性相互作用クロマトグラフィ高速液体クロマトグラフィ(HIC-HPLC)を使用して混合物中の複数の抗体のそれぞれを分離することと、混合物中の各抗体の量を定量することとを含んでもよく、混合物中の各抗体の分子量は、混合物中の他の抗体の分子量の15kDa以内であり、混合物中の各抗体の表面疎水性は、カイトおよびドリトル(Kyte & Doolittle)の疎水性指標で約0.25単位を超えるだけ混合物中の別の抗体の表面疎水性と異なるか、あるいはHIC-HPLCで個々に分析される場合、混合物中の各抗体は、混合物中の別の抗体とは異なる分析時間で溶出するかのいずれか一方またはその両方である。
【0005】
いくつかの実施形態において、混合物中の各抗体の表面疎水性は、カイトおよびドリトルの疎水性指標で約0.5~約1.0単位だけ混合物中の別の各抗体の表面疎水性と異なる。さらなる実施形態において、混合物中の各抗体の表面疎水性は、タンパク質構造または構造的モデルに基づく表面疎水性の算出、硫酸アンモニウムまたはPEG8000中の溶解性についての高速スクリーニング、あるいは親和性捕捉自己相互作用ナノ粒子分光法(AC-SINS)による分子相互作用についての高速スクリーニングによって判定される。
【0006】
追加的な実施形態において、混合物中の第1の抗体はHIC-HPLC分析の間の第1の分析時間で溶出し、混合物中の第2の抗体はHIC-HPLC分析の間の第2の分析時間で溶出し、第1および第2の分析時間は重複していない。さらなる実施形態において、混合物中の第1の抗体および混合物中の第2の抗体は少なくとも90%相同なタンパク質配列を有し、これらのタンパク質配列によって判定される場合に第1の抗体および第2の抗体は少なくとも90%相同なタンパク質構造を有するか、あるいは、これらのタンパク質配列によって判定される場合に第1の抗体および第2の抗体は互いに約0.6以内の等電点(pI)を有する。
【0007】
いくつかの態様において、複数の抗体は3つの抗体を含む。さらなる実施形態において、混合物中の1つ以上の抗体はモノクローナル抗体である。さらなる実施形態において、混合物中の1つ以上の抗体はヒトモノクローナル抗体である。他の実施形態において、混合物中の2つ以上の抗体は同じアイソタイプである。いくつかの実施形態において、混合物中の2つ以上の抗体は互いの変異体である。さらなる実施形態において、混合物中の2つ以上の抗体は同じ抗原に結合する。
【0008】
いくつかの実施形態において、混合物は合剤組成物(co-formulated composition)である。追加の実施形態において、合剤組成物は、ヒト患者におけるMERSを治療するように構成されている。さらなる実施形態において、合剤組成物は、ヒト患者におけるエボラ出血熱を治療するように構成されている。さらなる実施形態において、合剤組成物は、ヒト患者における黄斑変性症を治療するように構成されている。さらなる実施形態において、合剤組成物中の2つ以上の抗体は、ヒト患者における感染症を治療するように構成されている。いくつかの実施形態において、合剤組成物は、医薬製品中に含まれる。
【0009】
いくつかの実施形態において、HIC-HPLCは、約pH5.0~約pH7.0の緩衝液中で行われる。さらなる実施形態において、本方法は、HIC-HPLCからクロマトグラフを生成することをさらに含み、混合物中の各抗体の溶出に対して、クロマトグラフは、クロマトグラフ中の他のピークとは重複しないピークを示す。
【0010】
本開示はまた、複数の抗体を含んだ混合物から抗体の量を定量する方法を含み、その方法は、疎水性相互作用クロマトグラフィ高速液体クロマトグラフィ(HIC-HPLC)を使用して混合物中の複数の抗体のそれぞれを分離することであって、混合物中の各抗体の分子量は、混合物中の別の各抗体の分子量の15kDa以内であることと、混合物中の各抗体の量を定量することと、HIC-HPLCからクロマトグラフを生成することとを含み、混合物中の各抗体の溶出に対して、クロマトグラフは、クロマトグラフ中の他のピークとは重複しないピークを示す。いくつかの実施形態において、複数の抗体のうちの1つ以上はヒトモノクローナル抗体である。さらなる実施形態において、混合物中の各抗体の表面疎水性は、カイトおよびドリトルの疎水性指標で約0.25単位を超えるだけ混合物中の別の抗体の表面疎水性と異なるか、あるいはHIC-HPLCで個々に分析される場合、混合物中の各抗体は、混合物中の別の抗体とは異なる分析時間で溶出するかのいずれか一方またはその両方である。
【0011】
本開示のこれらおよび他の態様に従って、多数の他の態様および実施形態が提供される。本開示の他の特徴および態様は、以下の詳細な説明および添付の特許請求の範囲からより完全に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
本明細書に組み込まれてその一部を構成する添付の図面は、様々な例を示し、明細書と共に本開示の原理を説明するのに役立つ。本明細書に記載の実施形態または実施例の任意の特徴(例えば、装置、方法など)は、任意の他の実施形態または実施例と組み合わせてもよく、本開示に含まれる。
図1】抗エボラmAbを含んだ合剤のHIC-HPLC分析の例示的なクロマトグラフである。
図2】抗MERSmAbを含んだ合剤のHIC-HPLC分析の例示的なクロマトグラフである。
図3】抗MERSmAbを含んだ合剤のHIC-HPLC分析の例示的なクロマトグラフである。
図4】抗MERSmAbを含んだ合剤のHIC-HPLC分析の例示的なクロマトグラフである。
図5】抗MERSmAbを含んだ合剤のHIC-HPLC分析の例示的なクロマトグラフである。
図6】抗MERSmAbを含んだ合剤のHIC-HPLC分析の例示的なクロマトグラフである。
図7】抗MERSmAbを含んだ合剤のHIC-HPLC分析の例示的なクロマトグラフである。
図8】抗MERSmAbを含んだ合剤のHIC-HPLC分析の例示的なクロマトグラフである。
図9】抗エボラmAbを含んだ合剤のHIC-HPLC分析の例示的なクロマトグラフである。
図10】HIC-HPLCの線形性のプロットであり、個々の抗エボラmAb分析の量に対するピーク面積をプロットしている。
図11】範囲のプロットであり、個々の抗エボラmAb分析の量に対するmAbの回復率をプロットしている。
図12】異なる混合物サンプルロットを用いたHIC-HPLCの正確度のプロットであり、個々の抗エボラmAb分析の量に対するmAbの回復率をプロットしている。
図13】個々の抗エボラmAbの異なる比率を用いたHIC-HPLCの正確度のプロットであり、個々の抗エボラmAb分析の量に対するmAbの回収率をプロットしている。
図14】cFDS中のmAbの貯蔵安定性のプロットであり、月単位の貯蔵時間に対する個々の抗エボラmAbの量をプロットしている。
図15】抗エボラmAbを含んだ合剤の陽イオン交換超高圧液体クロマトグラフィ(CEX-UPLC)分析の例示的なクロマトグラフを示す。
図16】CEX-UPLCの線形性のプロットであり、個々の抗エボラmAbの量に対するピーク面積をプロットしている。
図17】抗エボラmAbを含んだ合剤のサイズ排除超高圧液体クロマトグラフィ(SE-UPLC)分析の例示的なクロマトグラフを示す。
図18】抗エボラmAbを含んだ合剤の例示的な画像化キャピラリー等電点電気泳動(iCIEF)プロファイルを示す。
図19】抗エボラmAbを含んだ合剤の逆相超高圧液体クロマトグラフィ(RP-UPLC)分析の例示的なクロマトグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
「抗体」という用語は、「免疫グロブリン」という用語と互換的に使用されることがある。簡単に言えば、それは2つの軽鎖ポリペプチドおよび2つの重鎖ポリペプチドを含む抗体全体を称してもよい。全抗体は、IgM、IgG、IgA、IgD、およびIgE抗体を含む異なる抗体アイソタイプを含む。用語「抗体」は、例えば、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体(mAb)、キメラ化抗体またはキメラ抗体、ヒト化抗体、霊長類化抗体、脱免疫化抗体、および完全ヒト抗体を含んでもよい。抗体は、例えば、ヒト、非ヒト霊長類(例えば、オランウータン、ヒヒ、またはチンパンジー)、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコ、ウサギ、モルモット、スナネズミ、ハムスター、ラット、およびマウスなどの哺乳類の様々な種のうちの任意から作製または誘導されてもよい。抗体は、精製抗体または組換え抗体であってもよい。抗体はまた、少なくとも1つの免疫グロブリンドメインを含有する人工タンパク質または抗体様タンパク質(例えば、融合タンパク質)であってもよい。人工タンパク質または抗体様タンパク質はまた、二重特異性抗体もしくは三重特異性抗体、または二量体、三量体もしくは多量体抗体、または二重特異性抗体、DVD-Ig、CODV-Ig、Affibody(登録商標)、またはNanobody(登録商標)であってもよい。
【0014】
「抗体の変異体」、「抗体変異体」などの用語は、変異体抗体が他の抗体の欠失変異体、挿入変異体、および/または置換変異体であるという点で別の抗体とは異なる抗体を称する。
【0015】
本明細書において使用される「ヒト抗体」という用語は、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列に由来する可変領域および定常領域を有する抗体を含むことを意図している。ヒトmAbは、例えば、CDR、特にCDR3において、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列によってコード化されないアミノ酸残基(例えば、生体外でのランダムまたは部位特異的変異誘発または生体内での体細胞変異によって導入された変異)を含んでもよい。しかしながら、本明細書で使用されるような「ヒト抗体」という用語は、他の哺乳動物種(例えばマウス)の生殖細胞系に由来するCDR配列がヒトFR配列に移植されているmAbを含むことを意図しない。この用語は、非ヒト哺乳動物において、または非ヒト哺乳動物の細胞において組換え的に産生された抗体を含む。この用語は、ヒト被験者から単離された抗体や、あるいはヒト被験者において生成された抗体を含むことを意図していない。
【0016】
本明細書中で使用される場合、用語「治療する」、「治療すること」、または「治療」とは、2つ以上の抗体の合剤を治療が必要な被験者に処方することにより、少なくとも1つの症状または疾患もしくは状態の兆候の程度の軽減または改善を称する。この用語は、疾患の進行の阻害を含む。この用語にはまた、疾患のポジティブな予後も含まれる。
【0017】
「予防する」、「予防すること」または「予防」という用語は、2つ以上の抗体の合剤を投与した際の、疾患もしくは状態の発現、またはその疾患もしくは状態の任意の症状または兆候の阻害を称する。
【0018】
「例えば」および「などの」という用語およびこれらの文法上の等価物については、他に明示的に述べられていない限り、「および限定なしに」という語句が続くことが理解される。本明細書中で使用される場合、用語「約」および記号「~」は、実験誤差による変動を説明することを意味する。本明細書において報告されているすべての測定値は、他に明示的に述べられていない限り、その用語が明示的に使用されているかどうかにかかわらず、用語「約」によって修飾されると理解される。本明細書で使用されるように、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈上他に明確に指示されない限り、複数の言及を含む。
【0019】
他に規定されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。方法および材料は、本発明における使用のために本明細書に記載されている。当該分野で公知の他の好適な方法および材料もまた使用されてもよい。材料、方法、および実施例は例示にすぎず、限定することを意図しない。本明細書で言及されたすべての出版物、特許出願、特許、配列、データベース入力、および他の参考文献は、その全体が参照により組み込まれる。矛盾する場合、定義を含む本明細書が支配することとなる。
【0020】
モノクローナル抗体分子などの抗体分子は、患者(ヒト患者を含む)における1つ以上の疾患または状態を治療するために共配合することができる。「患者」および「被験者」という用語は、本明細書において互換的に使用される。
【0021】
共配合された医療製品(DP)は、2つ以上(例えば3つ)のヒトモノクローナル抗体(mAb)分子を含有する合剤原薬(cFDS)(本明細書では合剤とも呼ばれる)を含んでもよい。cFDSは、精製mAbを所定の割合で混合することにより調製される。規制機関は、cFDS中の個々のmAbをそれぞれ定量する方法を求めている。
【0022】
合剤中のmAb分子は、互いに類似していてもよく、それらは、類似のタンパク質構造および電荷特性を有するほぼ同じ分子量(例えば、約145kDa)の免疫グロブリン(IgG1など)であってもよい。
【0023】
合剤中の類似のmAb分子を定量するための本明細書に開示の方法は、正確かつ精密で再現性があり、品質管理環境での使用に好適で、高価な装置を使用せず、そして面倒な試料調製を必要としない。
【0024】
方法
本開示は、2つ以上の抗体分子を含んだ混合物から抗体分子の量を定量する方法を提供する。本方法は、疎水性相互作用クロマトグラフィ高速液体クロマトグラフィ(HIC-HPLC)によって混合物から2つ以上の抗体分子のそれぞれを分離することと、各抗体分子の量を定量することとを含んでもよく、各抗体分子の分子量は、混合物中の他の抗体分子の15kDa以内であり、各抗体分子は、カイトおよびドリトルの疎水性指標(例えば、カイトおよびドリトル、J.Mol.Biol.、第157巻、105~132ページ(1982年)を参照)で約0.25単位を超えるだけ混合物中の別の抗体分子と異なるか、あるいはHIC-HPLCで単独で分析される場合、抗体分子のそれぞれは、混合物中の別の抗体分子とはほとんど重複せずに異なる分析時間で溶出するかのいずれか一方またはその両方である。特定の実施形態において、例えば、各抗体分子の相対疎水性は、カイトおよびドリトルの疎水性指標で約0.5~約1.0単位だけ混合物中の別の各抗体分子と異なる。他の特定の実施形態において、HIC-HPLCで単独で分析される場合、抗体分子のそれぞれは、混合物中の別の抗体分子とほとんど重複せずに異なる分析時間で溶出する。特定の実施形態において、混合物は、複数の抗体分子(例えば、2つ、3つ、4つ、または5つの抗体分子)を含む。
【0025】
混合物からの2つの抗体分子は、HIC-HPLCで分析される場合、吸収性対溶出時間による抗体分子の溶出プロファイルを監視するクロマトグラフにおいて有意な重複を有し、これは、2つの抗体分子が近い時間で溶出し、結果として抗体分子が精製されないようなカラム内の不十分な分離となる(例えば、50%未満の純度)ことを示す。そのような場合、その有意な重複のために個々の抗体を完全に定量することはできない。いくつかの実施形態において、混合物からの2つの抗体分子は、HIC-HPLCで分析される場合、吸収性対溶出時間による抗体分子の溶出プロファイルを監視するクロマトグラフにおいてほとんどまたは全く重複を有さず、抗体分子は、近くない時間で溶出し、結果として抗体分子が実質的に精製されるような分離となり、それぞれ少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の純度である。
【0026】
いくつかの実施形態において、本明細書で開示の方法は、「抗体分子」とも称される抗体の個々の集団を、2つ以上の異なる抗体の集団を含んだ抗体の混合物から定量するために使用され、異なる集団は、それらの間に少なくとも1つのアミノ酸配列の差異を有する。いくつかの実施形態において、抗体の集団は、抗体の混合物中の別の集団のものと同じアミノ酸配列を有してもよいが、それらは、翻訳後修飾において異なってもよい。特定の実施形態において、混合物は、合剤原薬(cFDS)などのまたはそれを含む合剤組成物である。特定の実施形態において、混合物は賦形剤を含む。特定の実施形態において、混合物はスクロースを含み、mAb分子を含んだスクロース原薬であってもよい。抗体混合物中の各抗体は、互いに1、2、3、4、5、10、または15キロダルトン(kDa)以内の類似の分子量を有するであろう。他の態様において、全抗体の平均分子量は約150kDaであろう。この方法はまた、類似の分子量を有する2つ以上のトラップ分子と共に使用されることができる。特定のさらなる実施形態において、合剤組成物はVEGFトラップを含む。(例えば、その全体が参照により本明細書に組み入れられる米国特許第9265827号明細書および米国特許出願公開第14/943490号明細書を参照。)この方法はまた、貯蔵安定性を監視する際に混合物(例えば、合剤)中のmAbのそれぞれの濃度を監視するためにも使用されてもよい。特定の実施形態において、本方法は、逆相高圧液体クロマトグラフィ(HPLC)または超高圧液体クロマトグラフィ(UPLC)などの別のクロマトグラフィ方法によっては分離することができない抗体分子を分離するために使用される。
【0027】
疎水性相互作用クロマトグラフィ(HIC)は、抗体の表面疎水性の差異に基づいて、減少する塩勾配で抗体を分離する。HICを用いる分離は、抗体とクロマトグラフィマトリックスに結合した疎水性リガンドとの間の可逆的相互作用に基づく。タンパク質およびペプチドの疎水性アミノ酸は、通常分子表面から離れて位置しているが、生体分子は、媒体上の疎水性リガンドとの相互作用を可能にするために露出したいくつかの疎水性基を有する。疎水性相互作用は、高いイオン強度を有する緩衝液によって増強される。
【0028】
限定するものではないが、Dionex ProPac HIC-10、mAbPac HIC-10、mAbPac HIC-20、mAbPac HIC-Butyl(Dionex、サーモフィッシャーサイエンティフィック社、サニーベール、CA)を含んだ任意の好適なHIC-HPLCカラムを本明細書に開示の方法に採用してもよい。緩衝剤は、任意の好適な緩衝剤であってもよい。特定の実施形態において、HIC-HPLCは、約pH5.0~約pH7.0、または約pH6.0~約pH7.0、または約6.5~約7.5の緩衝液pH中で行われる。特定の実施形態において、カラムは、Dionex MabPac HIC-10(100×4.6mm、5μm、孔径1000A°)およびProPac HIC-10(100×4.6mm、5μm、孔径300A°)である。
【0029】
2つ以上の抗体を含んだ混合物をHIC-HPLCで分析する。抗体は、別々の時間(分析時間)で溶出する。抗体は、UVスペクトルの、例えば280nmでそれらの吸光度を測定することにより監視される。クロマトグラフを使用して分析結果を監視および記録することができる。特定の実施形態において、HIC-HPLCにおいて使用される緩衝液は、100mMリン酸緩衝液中の1M硫酸アンモニウム(100%~0%)の異なる勾配である。
【0030】
特定の実施形態において、抗体分子は、280nmでのそれらの吸光度を標準曲線と比較することにより定量される。標準曲線は、例えば280nmの吸光度で、HIC-HPLC分析から既知の濃度で既知の抗体の吸光度を判定することによって構築されてもよい。吸光度(または「光学密度」)が大きいほど、タンパク質濃度は高くなる。抗体の既知濃度についてのこれらのデータを用いて標準曲線を作成し、濃度をX軸にプロットし、HIC-HPLC分析からの抗体の溶出プロファイルのクロマトグラフから得られた吸光度をY軸にかける。標準曲線からの抗体を含んだ未知の濃度の2つ以上の抗体を含む試料を分析する。データを解析するために、抗体をHIC-HPLCにより分離する。抗体の溶出プロファイルをクロマトグラフに表示し、分光光度計により経時的に監視する吸光度で抗体濃度を表現する。溶出時間(分析時間)によって識別される各抗体の吸光度は、標準曲線上の対応する吸光度の値を求めるために使用される。標準曲線上のその点に対応するX軸値は、試料中のその抗体の濃度である。
【0031】
現在の開示のいくつかの態様において、本明細書に開示の混合物中の個々の抗体を定量するための方法は、混合物中の各抗体の相対表面疎水性がカイトおよびドリトルの疎水性指標で約0.5~約1.0単位など約0.25単位を超えるだけ混合物中の別の各抗体と異なる場合に有用であってもよい。抗体の相対表面疎水性は、いくつかの方法によって判定/推定されてもよい。
【0032】
例えば、HIC-HPLCは、異なる抗体分子の相対表面疎水性を判定するために使用されてもよい。抗体分子のそれぞれをHIC-HPLCで単独で分析し、各抗体の分析時間(溶出時間)を判定する。
【0033】
特定の実施形態において、混合物中の抗体間の表面疎水性の差異は、以下の方法のうちの1つ以上、すなわち、タンパク質構造または構造的モデルに基づく表面疎水性の算出、硫酸アンモニウムまたはPEG8000中の溶解性についての高速スクリーニング、および親和性捕捉自己相互作用ナノ粒子分光法(AC-SINS)による分子相互作用についての高速スクリーニングのうちの1つ以上によって判定される。
【0034】
相対表面疎水性は、抗体の既知の構造(例えば、結晶構造またはNMR構造に基づく)または構造モデルに基づいて算出されてもよい。そのような計算方法は、当技術分野において公知である。
【0035】
相対表面疎水性は、例えば、硫酸アンモニウムまたはPEG8000におけるような疎水性を増大する条件における溶解度についての高速スクリーニング方法により抗体分子の溶解度を判定することによって算出/推定されてもよい。タンパク質の溶解度が高いほど疎水性は低くなる。(例えば、クレイマー(Kramer)ら、Biophysical Journal、第102巻、4月、1907~1915ページ(2012年)を参照。)
相対表面疎水性は、親和性捕捉自己相互作用ナノ粒子分光法(AC-SINS)による分子相互作用についての高速スクリーニングによって算出/推定されてもよい。(例えば、エステップ(Estep)ら、mAbs、第7巻、3、553~561ページ(2015年)を参照。)AC-SINSは、金ナノ粒子をポリクローナル抗ヒト抗体でコーティングし、これらの複合体を使用してヒトmAbを固定化し、抗体複合体のプラズモン波長を硫酸アンモニウム濃度の関数として測定することによってmAb自己相互作用を評価するアプローチである。
【0036】
他の特定の実施形態では、説明された方法を使用して分離可能な混合物中の抗体は、以下の方法のうちの1つ以上、すなわち、配列および他の既知のタンパク質構造に基づくタンパク質構造または構造的モデル化、タンパク質配列に基づいて算出されるタンパク質全体電荷、タンパク質配列に基づいて算出される疎水性、タンパク質シーケシングのうちの1つ以上によって判定されるように、類似のサイズまたは全体電荷を有する。
【0037】
特定の実施形態において、混合物中の抗体は、配列および他の既知のタンパク質構造に基づいて、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%の相同タンパク質構造または構造モデルを有する。特定の実施形態において、混合物中の抗体は、互いの3、4、または5、10、または15基本単位以内の算出されたタンパク質電荷特性を有し、タンパク質電荷特性は、タンパク質配列に基づいて算出される。特定の実施形態において、混合物中の2つ以上の抗体は、それらのタンパク質配列間で少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%の同一性を有する。
【0038】
一態様において、本明細書に開示されるようなHIC-HPLCを用いて混合物中の抗体を定量する方法は、タンパク質構造、配列ベースの構造モデル、タンパク質配列、およびタンパク質構造の他の既知の態様によって算出または推定される抗体分子間に大きな差異がある場合、それほど有用ではない。抗体の疎水性プロファイルに差異がある場合、それでもHIC-HPLCを使用する方法は、抗体種の分離を促進してもよい。
【0039】
別の態様において、本明細書に開示されるようにHIC-HPLCを使用して混合物中の抗体を定量する方法は、各抗体分子のタンパク質配列に基づいて算出される各抗体分子のタンパク質の全体電荷特性により算出/推定される抗体分子間に大きな差異がある場合、それほど有用ではない。抗体の疎水性プロファイルに差異がある場合、それでもHIC-HPLCを使用する方法は、抗体種の分離を促進してもよい。
【0040】
別の態様において、本明細書に開示されるようにHIC-HPLCを使用して混合物中の抗体を定量する方法は、タンパク質電荷またはサイズを調べることによって算出/推定される抗体分子間に大きな差異がある場合、それほど有用ではない。抗体の疎水性プロファイルに差異がある場合、それでもHIC-HPLCを使用する方法は、抗体種の分離を促進してもよい。
【0041】
特定の実施形態において、混合物中の抗体の1つ以上はモノクローナル抗体である。特定の実施形態において、モノクローナル抗体の1つ以上はヒトモノクローナル抗体である。特定の実施形態において、抗体分子の2つ以上は同じアイソタイプのものである。特定の実施形態において、抗体分子の2つ以上は互いの変異体である。さらに特定の他の実施形態において、抗体分子の2つ以上は同じ抗原に結合する。mAbは、全抗体分子であってもよい。
【0042】
特定の実施形態において、混合物は合剤組成物である。特定のさらなる実施形態において、合剤組成物は、ヒト患者における中東呼吸器症候群(MERS)の治療に有効である2つ以上のmAbを含む。MERSコロナウイルス(MERS-CoV)に対する抗体は、例えば、米国特許出願公開第14/717760号明細書および国際公開第2015/179535号(A1)に開示されている。特定のさらなる実施形態において、合剤組成物は、ヒト患者におけるエボラ出血熱を治療するのに有効であるmAbを含む。エボラウイルスに対する抗体は、例えば、2016年1月25日に出願された米国特許出願公開第15/005334号明細書に開示されている。特定のさらなる実施形態において、合剤組成物は、ヒト患者における黄斑変性症の治療に有効なmAbを含む。特定のさらなる実施形態において、合剤組成物は、米国特許仮出願第62/302907号明細書に開示されているmAbアリロクマブおよびエビナクマブを含む。特定の実施形態において、合剤組成物は、PD1抗体および他の免疫腫瘍抗体産物、例えば、二重特異性抗体を含む。(例えば、米国仮出願第62/270749号明細書、米国特許出願公開第15/386443号明細書、および米国特許出願公開第15/386453号明細書におけるPD-1およびCD3xCD20の開示、および米国仮出願第62/365006号明細書および米国特許出願公開第15/289032号明細書におけるPD-1およびLag3の開示を参照。)特定の実施形態において、合剤組成物は抗ジカウイルス抗体を含む。(例えば、米国仮出願第62/363546号明細書を参照。)特定のさらなる実施形態において、合剤組成物はトレボグルマブおよびアクチビンA抗体を含む。(例えば、米国特許第8871209号明細書を参照。)特定の実施形態において、合剤組成物中の2つ以上の抗体は、ヒト患者における感染症を治療することができる。本段落における上記に引用した特許文献のそれぞれの開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0043】
合剤中の抗MERS mAbは、例えば、MERS-CoVのスパイクタンパク質(例えば、MERS-CoV単離物EMC/2012のスパイクタンパク質)に結合してもよい。スパイクタンパク質のエピトープは、スパイクタンパク質の受容体結合ドメイン(例えば、GenBankアクセッション番号AFS88936.1のアミノ酸367~606から選択されるアミノ酸)内であってもよい。合剤組成物中の抗MERS mAbは、MERS-CoVスパイクタンパク質に結合する完全ヒトモノクローナル抗体、GenBankアクセッション番号AFS88936.1のアミノ酸残基367~606から選択されるMERS-CoVスパイクタンパク質の受容体結合ドメイン内の1つ以上のアミノ酸残基と相互作用するもの、表面プラズモン共鳴アッセイで測定して、18.5nM未満の解離定数(Ko)でMERS-CoVスパイクタンパク質に結合するもの、またはMERS-CoVスパイクタンパク質のジペプチジルペプチダーゼ4(DPP4)への結合を90%超ブロックするものであってもよい。
【0044】
合剤組成物は、同じまたは異なる標的に対する2つ以上の抗体を含む任意の組成物であってもよく、ヒト患者を含む患者における同じまたは異なる疾患または状態を治療するのに有効である。
【0045】
医薬組成物および製剤
2つ以上の抗体分子を含有する組成物は、被験者に投与するための医薬組成物(例えば、DP)として配合されてもよい。医薬組成物は、例えば3つの抗体分子を含むことができる。任意の好適な医薬組成物および製剤、ならびに製剤化に適切な方法および好適な経路および好適な投与部位は、本発明の範囲内である。また、特に明記しない限り、任意の好適な投与量および投与頻度が検討される。
【0046】
合剤中のmAbは、同時投与される前に当該分野で公知の方法によって精製される。2つ以上の抗体の合剤は、任意の好適な合剤であってもよい。
医薬組成物/合剤は、薬学的に許容される担体(すなわち、賦形剤)を含んでもよい。「薬学的に許容される担体」とは、ありとあらゆる溶媒、分散媒、コーティング剤、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤、希釈剤、流動促進剤などを称し、これらを含む。組成物は、薬学的に許容される塩、例えば、酸付加塩または塩基付加塩を含むことができる(例えば、ベルジュ(Berge)ら、J Pharm Sci、第66巻、1~19ページ(1977年)を参照)。組成物は、スクロースを含むことができ、あるいは適切な場合にはコーティングされうる。
【0047】
特定の実施形態において、タンパク質組成物は、溶液、マイクロエマルジョン、分散液、リポソーム、凍結乾燥ケーキ、固体などとして安定化および配合することができる。無菌注射用溶液は、必要に応じて2つ以上のmAbを必要量で上に列挙した成分の1つまたは組み合わせと共に適切な溶媒中に組み込み、続いて濾過滅菌することによって調製することができる。全体的に、分散液は、基本的な分散媒および上に列挙したものからの必要な他の成分を含有する無菌ビヒクルに2つ以上のmAb分子を組み込むことによって調製される。溶液の適切な流動性は、例えば、レシチンのようなコーティングの使用により、分散液の場合には必要な粒径の維持により、および界面活性剤の使用により維持することができる。注射用組成物の長期吸収は、吸収を遅らせる試薬、例えば、モノステアリン酸塩、およびゼラチンを組成物中に含めることによってもたらすことができる。
【0048】
実施例
本発明をよりよく理解するために、以下の実施例を記載する。これらの実施例は、説明の目的のためのみであり、そして本発明の範囲を限定するものとして決して解釈されるべきではない。
【0049】
実施例1および3~7において使用された合剤中の抗エボラmAbは、全部の、完全なヒトIgG1モノクローナル抗体である。3つのmAb(mAb A、mAb B、およびmAb C)は、類似の分子量(例えば、約145kDa)、タンパク質構造、および電荷特性(例えば、タンパク質配列によって判定される場合、約0.6以下のpIの差異)を有する。mAb Aの等電点(pI)は9.0であると判定され、mAb BのpIは8.5であると判定され、mAb CのpIは9.1であると判定される。
【0050】
実施例2で使用した合剤中の抗MERS mAbは、全部の、完全なヒト抗エボラmAbである。2つのmAbは、類似の分子量(例えば、互いに約15kDa以内)および電荷特性を有する。(米国特許出願公開第2015/0337029号明細書、国際公開第2015/179535号(A1)、および米国特許出願公開第14/717760号明細書を参照し、それぞれの開示内容は、参照により本明細書に組み込まれている。)
実施例1
HIC-HPLC法を用いて、最初に3つのmAbを合剤から分離し、次に抗体をそれぞれ定量することによって、合剤から類似の分子量、タンパク質構造、および電荷特性を有する3つの抗エボラモノクローナル抗体(mAb1、mAb2、およびmAb3)を定量する。
【0051】
Dionex ProPac HIC-10カラム、カタログ番号063655(Dionex、サーモフィッシャーサイエンティフィック社、サニーベール、CA)、4.6×100mmを使用する。
【0052】
移動相の調製
移動相は、移動相Aおよび移動相Bを含む。移動相Aは、7.0のpHで1Mのリン酸アンモニアおよび100mMのリン酸を含む。移動相Aの調製は、13.8gのリン酸ナトリウム一塩基性一水和物(NaH2PO4.H2O)および132.1gのリン酸アンモニアを800mLのMilliQに溶解することと、50%NaOHでpHを7.0に調整することと、容量を1000mLにすることと、0.22μMフィルタを通して溶液を濾過することとを含む。移動相Bは、7.0のpHで100mMのリン酸塩を含む。移動相Bの調製は、13.8gのリン酸ナトリウム一塩基性一水和物(NaHPO.H0)を900mLのMilliQに溶解することと、50%NaOHでpHを7.0に調整することと、容量を1000mLにすることと、0.22μMフィルタを通して溶液を濾過することとを含む。
【0053】
HIC-HPLC法
HIC-HPLCは、0.5mL/分の流速で上記カラムを流動させる。カラム温度は30℃に保ち、合剤試料温度は5℃である。カラムの停止時間は40分である。流出液の280nm紫外線の吸光度を、UV検出器を用いて監視する。以下の表1は、カラム分析時間にわたって導入される移動相組成勾配の割合として移動相Aおよび移動相Bの混合を示す。
【0054】
3つの個々のmAbによる較正
3つの個々のmAbについての結果を較正するために、FDS中の既知量の各mAbが分析される。既知濃度の各mAbを有するFDSを調製し、濃度を逆相(RP)クロマトグラフィまたはSolo VPE(登録商標)分光法(例えば、シーテクノロジーズ社)のいずれかによって測定する。各mAbの既知のFDSは次のとおりである。
【0055】
較正シーケンス用の対照試料も用意されている。対照配列は、Solo VPE(登録商標)分光法(例えば、シーテクノロジーズ社)によって測定されるように50.31mg/mLの濃度を有する。対照試料の1回の注入は12.0μL(603.72μg)である。
【0056】
以下の表2は、mAb FDSのそれぞれの使用された較正試料を列挙する。
【0057】
較正シーケンスが実行される。較正シーケンス中、mAb FDSの20~24回の注入毎に、および各注入シーケンスの終わりに、対照試料の1回の注入が各サンプルセットの始めに導入される(例えば、mAb1FDS注入のセット、mAb2FDS注入のセット、またはmAb3FDS注入のセット)。
【0058】
1回の較正シーケンスの間に、既知量の各mAbの1回の注入が行われる。別の較正シーケンスの間に、既知量の各mAbの4回の注入が注入の再現性を判定するために行われる。
【0059】
各mAbについて標準検量線を作成する。各mAbの検量線は、R≧0.999を有し、同量の各mAbの反復注入の変動性は≦1%である。
対照仕様
既知の各mAb FDSの対照HIC-HPLC分析を行う。既知の各mAb FDSの回収率は、HIC-HPLCにより濃度を測定し、次いでHIC-HPLCにより測定された濃度を表2の既知mAb濃度で割ることにより算出される。回収率は、3つの既知mAb FDSのすべてについて既知濃度の90~110%であると算出されている。
【0060】
未知の試料
合計600μgのmAb(例えば、12μLの50mg/mLのmAb試料)を有するサンプル合剤をHIC-HPLCに流す。例えば、合計600μgのmAbを含む12μLの合剤には、200μg/注入の個々のmAbを3回注入するのと同じ量が含まれる。合剤中の個々のmAbは、mAb1、mAb2、およびmAb3である。
【0061】
試料の2連の分析を行い、そして合剤中の個々のmAbの平均濃度(mg/mL)および各mAb対mAbの総量の比を報告する。
図1は、この合剤のHIC-HPLC分析を示すクロマトグラフである。各mAbは、別々の線で描かれており、cFDSも全体として線で描かれている。3つの抗体は、HIC-HPLCにより十分に分離されており、ピークはほとんど重複しない。
【0062】
実施例2
複数のHIC-HPLC法を用いて、最初に2つのmAbを合剤から分離し、次にそれらをそれぞれ定量することによって、合剤から類似の分子量および電荷特性を有する2つの抗MERSモノクローナル抗体を定量する。
【0063】
mAb原薬
2つのmAb(mAb1およびmAb2)原薬が組み合わされる。mAb1原薬は、pH5.5の52.3mg/mlのmAb1および10mM Hisを含む(リジェネロンファーマシューティカルズ社、タリータウン、NY)。mAb2原薬は、pH6.0の40.4mg/ml mAb2および10mM Hisを含み、5%(w/v)スクロース(リジェネロンファーマシューティカルズ社、タリータウン、NY)を含む。
【0064】
HIC-HPLC法
7つのHIC-HPLC法が行われる。それぞれの方法において、50μg(mAb1およびmAb2)の試料をロードする。流出液を280nmのUV検出を用いて監視する。移動相には、2種類の溶媒がさまざまな割合で使用される。溶媒AはpH5.5の1M(NH)SO 20mM酢酸塩であり、溶媒BはpH5.5の20mM酢酸塩である。
【0065】
1. 方法1
【0066】
図2は、この分析のクロマトグラフを示す。2つの抗体は、多少離れているが、かなり重複している。
2. 方法2 1分あたり0.5%
【0067】
図3は、この分析のクロマトグラフを示す。2つの抗体は、多少離れているが、かなり重複している。
3. 方法3 1分あたり0.2%
【0068】
図4は、この分析のクロマトグラフを示す。2つの抗体は、多少離れているが、かなり重複している。
4. 方法4 1分あたり2%
【0069】
図5は、この分析のクロマトグラフを示す。2つの抗体は、多少分離されているが、それでも多少の重複を有する。
5. 方法5 1分あたり1%
【0070】
図6は、この分析のクロマトグラフを示す。2つの抗体は、多少分離されているが、多少の重複を有する。
6. 方法6 1分あたり1%
【0071】
図7は、この分析のクロマトグラフを示す。2つの抗体は、多少分離されているが、多少の重複を有する。
7. 方法7 1分あたり0.5%
【0072】
図8は、この分析のクロマトグラフを示す。2つの抗体は、多少分離されているが、多少の重複を有する。
実施例3
類似の分子量、タンパク質構造、および電荷特性を有する3つの抗エボラmAbを含んだ合剤のHIC分離を開発し、Agilent 1100HPLCシステムで評価する。
【0073】
HIC-HPLC法は、二液型移動相(移動相A(100mMリン酸、1M硫酸アンモニウム、pH7.0)および移動相B(100mMリン酸、pH7.0)を含む)を有するDionex ProPac HIC-10カラムを0.5mL/分の流速で使用する。HIC法は、各mAbについて5点の検量線を使用して認定されている。正確度(回収率)は、測定された濃度を各mAbの理論濃度と比較することによって判定される。600~0mMの硫酸アンモニウムの勾配を使用してカラムを分析する。
【0074】
図9は、HIC-HPLC分析のクロマトグラフを示す。3つの異なるピークから分かるように、3つの抗体はよく分離されており、それらのピークはほとんどまたは全く重複していない。
【0075】
HIC-HPLCの再現性と精度
再現性は、目標量の75%、100%、125%、150%の3組でcFDSの試料を解析することによって評価される(600μg/cFDSの注入)。再現性の相対標準偏差(RSD)は、≦0.2%と判定されている。
【0076】
再現性試験は、異なるロットのカラムと異なるバッチの移動相とを使用して、異なる日に繰り返される。中間精度のRSDは、≦1.7%と判定されている。
【0077】
HIC-HPLCの線形性
線形性は、cFDS試料の試料を9段階(75~1200μgのcFDS、25~400μgの個々のmAb)で3回解析することによって判定される。注入量に対する個々のmAbのピーク面積のプロット(図10)は、以下の線形曲線をもたらす。75~300μgでは、R≧0.999、25~400μgでは、R≧0.98である。
【0078】
HIC-HPLCの範囲
範囲は、この方法が許容可能な精度(≦1.7%)、正確度(93~106%の回収率)および直線性(R≧0.999)を実証することができる最低濃度と最高濃度との間の間隔である。範囲は、cFDS試料で300~900μg(個々のmAbについて100~300μg)と判定されている。図11は、mAbの回収率対個々のmAbの量のプロットである。
【0079】
異なるcFDSのロットにわたるHIC-HPLCの正確度
日内精度および日間精度(cFDSロット#1)、および範囲調査(cFDSロット#2)から得られたデータを使用して方法の正確度を評価する。図12は、個々のmAbの量に対するmAbの回収率のプロットである。回収率は、目標量の75%、100%、125%、150%で93~106%以内である(600μgの総タンパク質、200μgの各mAb)。正確度(回収率)は、93%~106%であると判定されている。
【0080】
cFDS中の個々のmAbのさまざまな比率にわたるHIC-HPLCの正確度
CFDSは、個々のmAbの1:1:1、2:1:1、1:2:1、1:1:2混合によって配合される。各cFDSは、目標量の100%(600μg/注入、n=3)で解析される。図13は、異なるcFDS比における個々のmAbに対するmAbの回収率である。回収率は、94~106%以内であり、再現性は、≦0.3%である。
【0081】
合剤開発におけるHIC-HPLCの応用
合剤またはDP中のmAbのそれぞれを定量するためのHIC-HPLCの使用は、合剤開発において様々な用途を有してもよい。例えば、合剤またはDP中の各mAbの濃度は、貯蔵安定性試験において監視されてもよい。
【0082】
図14は、DP中の3つのmAbの貯蔵安定性を時間(月)の関数として監視するチャートである。HIC-HPLCを用いて、1年間にわたる6時点で3つのmAbのそれぞれの量、従って濃度を定量する。この研究におけるある時点からの例示的なデータポイントの組は、16.6mg/mLでのmAb Aの濃度、17.5mg/mLでのmAb Bの濃度、および17.1mg/mLでのmAb Cの濃度の測定を含む。この場合には、貯蔵安定性は、監視された期間にわたって、mAbのそれぞれの濃度(≦4%)に明らかな変化がないことを示している。
【0083】
HIC-HPLC法は、100~300μg(個々のmAb)の範囲で、許容可能な再現性(≦0.2%)、中間精度(≦1.7%)、正確度(93%~106%回収率)、線形性(R≧0.999)を有し、cFDSおよびDP中の3種類のmAbのそれぞれの濃度を判定するために使用できる。
【0084】
HIC-HPLC法は、共配合DSおよびDP中の3つのmAbのそれぞれを定量するための放出方法として使用することができる。この方法は、配合開発を支援するためにも使用できる。
【0085】
実施例4
類似の分子量、タンパク質構造、および電荷特性を有する3つの抗エボラmAbを含んだ合剤の陽イオン交換超高圧液体クロマトグラフィ(CEX-UPLC)分離を開発し、評価する。
【0086】
CEX-UPLC法は、200mMのMES緩衝液およびpH6.5の10~120mMのNaCl勾配を含んだ移動相を有するYMC-BioPro SP-Fカラムを使用する。3つのmAb分子(mAb A、mAb B、mAb C)のそれぞれについて6点標準検量線を作成する。各検量線の線形性は、R≧0.99を有するように判定される。3つのmAb分子は、CEX-UPLCを用いて合剤(すなわち混合物)から分離され、そしてUPLCのクロマトグラフが生成される。クロマトグラフは、mAb AとmAb Cとの間にいくらかの重複がある各mAbの分離を示す。
【0087】
この方法の再現性は、合剤試料を3つの異なる量(150μg、225μg、および300μg)で3回解析することによって評価される。正確度(回収率)は、各試料の測定濃度を理論値と比較することによって判定される。各mAbの直線的な定量範囲は、mAb Aを除いて、各抗体について50~100μgであると判定され、R≧0.973および75%~91%の正確度である。
【0088】
図15は、合剤からの3つのmAbの分離のCEX-UPLC分析のクロマトグラフを示す。3つの抗体は、mAb AとmAb Cとの間にわずかな重複を伴って分離される。
【0089】
CEX-UPLCの再現性および正確度
再現性は、cFDSの試料を目標量の5つの異なる割合(25%~100%)(600μg/注入のcFDS)で3回解析することによって評価される。再現性のRSDは、3.7%~21.4%の間であると判定される。
【0090】
CEX-UPLCの線形性
再現性試験のデータを使用して、CEX-UPLC法の範囲と線形性を評価する。注入量に対する個々のmAbのピーク面積のプロット(図16)は、一般に、各mAbについて線形曲線をもたらす。ただし、mAbのRSDは10%を超えるため、100μgでのmAb Aのデータポイントは、mAb Aには100μgまで伸びる直線曲線が存在すると結論づけるのに十分なほど統計的に有意ではない。
【0091】
CEX-UPLCの範囲
総抗体量が150~300μgのcFDS試料では、再現性(RSD≦10%)、正確度(>80%)、および線形性(R≧0.97)が示される。しかしながら、CEX-UPLCの範囲は、HIC-HPLCの場合ほど明確には示されていない。
【0092】
CEX-UPLC法では、いくつかの重複を有するそれらの電荷特性に基づいて3つのmAbを分離する。重複は、方法の手動統合が必要であることを意味する。CEX-UPLCの精度、正確度、および範囲は、HIC-HPLCほど最適ではない。
【0093】
実施例5
類似の分子量を有する3つの抗エボラmAbを含んだ合剤のSE-UPLCを評価する。SE-UPLCは、サイズによってmAbを分離する。Waters Acquity
H UPLCシステムが使用される。2つのWaters BEH200 SECカラムが直列にリンクされている。移動相は、pH6.0の10mMリン酸緩衝液、および1M過塩素酸塩を含む。図17は、SE-UPLCのクロマトグラムである。図示されるように、3つのmAbの溶出時間の間には有意な重複がある。よって、SE-UPLCは、類似の分子量の3つの抗MERS mABを分離するための次善の方法である。
【0094】
実施例6
類似の分子量、タンパク質構造、および電荷特性を有する3つの抗エボラmAbを含んだ合剤のiCIEFを評価する。iCIEFは、タンパク質を等電点(pI)で分離する。ProteinSimple iCE3電荷変異体分析器を使用する。両性電解質として4%pH3~10Pharmalyte(登録商標)を使用し、緩衝液として2M尿素を使用する。図18は、これらの仕様を使用して生成されたiCIEFプロファイルを示す。図示されるように、mAb AとmAb Cとの溶出時間の間に有意な重複がある。よって、iCIEFは、3つの抗MERS mABを分離するための次善の方法である。
【0095】
実施例7
類似の分子量の、タンパク質構造、および電荷特性を有する3つの抗エボラmAbを含んだ合剤のRP-UPLCを評価する。RP-UPLCは、疎水性によってmAbを分離する。Waters Acquity UPLCシステムが使用される。ZORBAX 300SB-C8カラムを使用し、カラムを80℃で分析する。移動相は、0.1%TFA中60~90%アセトニトリルを含む。図19は、RP-UPLCのクロマトグラムを示す。図示されるように、mAb AとmAb Bとの溶出時間の間に有意な重複がある。よって、RP-UPLCは、類似の分子量の3つの抗MERS mABを分離するための次善の方法である。
【0096】
実施形態
前述の説明は、本発明の例示的な実施形態のみを開示している。
本発明をその詳細な説明と併せて説明してきたが、前述の説明は、例示を意図したものであり、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲を限定するものではないことを理解されたい。他の態様、利点、および修正は、添付の特許請求の範囲内にある。よって、本発明の特定の特徴のみを図示し説明してきたが、当業者には多くの修正および変更が想起されよう。したがって、添付の特許請求の範囲は、本発明の真の趣旨の範囲内に入るようなすべてのそのような修正形態および変更形態を網羅するように意図されていることを理解されたい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
【手続補正書】
【提出日】2024-10-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の抗体を含む共配合医薬製品から抗体を定量する方法であって、前記方法は、
前記複数の抗体中の各抗体について標準曲線を作成することと、
疎水性相互作用クロマトグラフィ高速液体クロマトグラフィ(HIC-HPLC)を用いて前記複数の抗体中の各抗体を分離することであって、前記複数の抗体中の各抗体はPD-1、CD3、CD20およびLAG3から選ばれる1つ以上のタンパク質に結合することと、
各抗体を分離した後、前記標準曲線を使用して各抗体の量を定量すること
とを含む方法。
【請求項2】
前記複数の抗体のうちの1つ以上が二重特異性抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
HIC-HPLCで個々に分析される場合、各抗体は前記複数の抗体中の他の抗体とは異なる分析時間で溶出する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記複数の抗体が3つのヒトモノクローナル抗体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記複数の抗体中の各抗体の分子量は、前記複数の抗体中の他の抗体の分子量の15kDa以内である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
クロマトグラフを生成する前に前記複数の抗体中の各抗体の表面疎水性を測定することをさらに含み、前記表面疎水性は、タンパク質構造または構造的モデルに基づく表面疎水性の算出、硫酸アンモニウムまたはPEG8000中の溶解性についての高速スクリーニング、あるいは親和性捕捉自己相互作用ナノ粒子分光法(AC-SINS)による分子相互作用についての高速スクリーニングから選ばれる1つ以上の方法により判定される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記共配合医薬製品中の第1の抗体はHIC-HPLC分析の間の第1の分析時間で溶出し、前記共配合医薬製品中の第2の抗体は同じHIC-HPLC分析の間の第2の分析時間で溶出し、前記第1の分析時間と前記第2の分析時間は重複しない、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記共配合医薬製品はMERS、エボラ出血熱または黄斑変性症を治療するように構成されている、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
複数の抗体を含む混合物から抗体の量を定量する方法であって、前記方法は、
疎水性相互作用クロマトグラフィ高速液体クロマトグラフィ(HIC-HPLC)を用いて前記混合物中の前記複数の抗体のそれぞれを分離することであって、前記混合物は共配合医薬製品であり、前記共配合医薬製品中の2つ以上の抗体はヒト患者における感染症を治療するように構成され、前記混合物中の前記複数の抗体のうちの各抗体は同じ抗原に結合し、前記混合物中の第1の抗体はHIC-HPLC分析の間の第1の分析時間で溶出し、前記混合物中の第2の抗体は同じHIC-HPLC分析の間の第2の分析時間で溶出し、前記第1の分析時間と前記第2の分析時間は重複しないことと、
前記混合物中の各抗体の量を定量することと
を含み、前記抗体の表面疎水性に基づいて、前記混合物中の各抗体は前記混合物中の他の各抗体とは異なる分析時間で溶出する、方法。
【請求項10】
前記複数の抗体中の各抗体は、前記複数の抗体中の他の各抗体とは少なくとも1つのアミノ酸が異なる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第2の抗体は前記第1の抗体の欠失変異体、挿入変異体、または置換変異体である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の抗体と前記第2の抗体のタンパク質配列は少なくとも95%相同である、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記第1の抗体と前記第2の抗体の等電点(pI)は互いに約0.6以内である、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記複数の抗体が3つの抗体を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記共配合医薬製品はMERS、エボラ出血熱または黄斑変性症を治療するように構成されている、請求項9に記載の方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0096
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0096】
実施形態
前述の説明は、本発明の例示的な実施形態のみを開示している。
本発明をその詳細な説明と併せて説明してきたが、前述の説明は、例示を意図したものであり、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲を限定するものではないことを理解されたい。他の態様、利点、および修正は、添付の特許請求の範囲内にある。よって、本発明の特定の特徴のみを図示し説明してきたが、当業者には多くの修正および変更が想起されよう。したがって、添付の特許請求の範囲は、本発明の真の趣旨の範囲内に入るようなすべてのそのような修正形態および変更形態を網羅するように意図されていることを理解されたい。
[付記1]
複数の抗体を含んだ混合物から抗体の量を定量する方法であって、前記方法は、
疎水性相互作用クロマトグラフィ高速液体クロマトグラフィ(HIC-HPLC)を使用して前記混合物中の前記複数の抗体のそれぞれを分離することと、
前記HIC-HPLCからクロマトグラフを生成することと、
前記混合物中の各抗体の量を定量することとを含み、前記混合物中の各抗体の溶出に対して、前記クロマトグラフは、前記クロマトグラフ中の他のピークとは重複しないピークを示し、前記混合物中の各抗体の分子量は、前記混合物中の他の抗体の分子量の15kDa以内であり、HIC-HPLCで個々に分析される場合、前記混合物中の各抗体は、前記混合物中の別の抗体とは異なる分析時間で溶出し、前記混合物中の前記複数の抗体は、ヒト患者における感染症を治療するように構成されている、方法。
[付記2]
前記混合物中の第1の抗体はHIC-HPLC分析の間の第1の分析時間で溶出し、前記混合物中の第2の抗体はHIC-HPLC分析の間の第2の分析時間で溶出し、前記第1の分析時間および前記第2の分析時間は重複していない、付記1に記載の方法。
[付記3]
前記HIC-HPLCは、約pH5.0~約pH7.0の緩衝液中で行われる、付記1又は2に記載の方法。
[付記4]
前記複数の抗体は3つの抗体を含む、付記1~3のいずれか一つに記載の方法。
[付記5]
前記混合物中の各抗体の表面疎水性は、タンパク質構造または構造的モデルに基づいて算出される表面疎水性、硫酸アンモニウムまたはPEG8000中の溶解性についての高速スクリーニング、あるいは親和性捕捉自己相互作用ナノ粒子分光法(AC-SINS)による分子相互作用についての高速スクリーニングからなる群から選択される1つ以上の方法によって判定される、付記1~4のいずれか一つに記載の方法。
[付記6]
前記混合物中の第1の抗体および前記混合物中の第2の抗体は少なくとも90%相同なタンパク質配列を有するか、あるいは、
前記第1の抗体および前記第2の抗体は、これらのタンパク質配列によって判定される場合に互いに約0.6以内の等電点(pI)を有する、付記1~5のいずれか一つに記載の方法。
[付記7]
前記混合物中の前記抗体のうちの1つ以上はモノクローナル抗体であり、特にヒトモノクローナル抗体である、付記1に記載の方法。
[付記8]
前記混合物中の前記抗体のうちの2つ以上は同じアイソタイプであるか、互いの変異体であり、且つ/又は同じ抗原に結合する、付記1~7のいずれか一つに記載の方法。
[付記9]
前記混合物は合剤組成物であり、特に前記合剤組成物は、ヒト患者におけるMERS、ヒト患者におけるエボラ出血熱、及び/又はヒト患者における黄斑変性症を治療するように構成されている、付記1~8のいずれか一つに記載の方法。
[付記10]
前記合剤組成物は医薬製品中に含まれる、付記9に記載の方法。
[付記11]
複数の抗体を含んだ混合物から抗体の量を定量する方法であって、前記方法は、
疎水性相互作用クロマトグラフィ高速液体クロマトグラフィ(HIC-HPLC)を使用して前記混合物中の前記複数の抗体のそれぞれを分離することであって、前記混合物は、ヒト患者におけるウイルス感染を治療するように構成された合剤組成物であり、前記混合物中の各抗体の分子量は、前記混合物中の別の各抗体の分子量の15kDa以内であることと、
前記混合物中の各抗体の量を定量することと、
前記HIC-HPLCからクロマトグラフを生成することとを含み、前記混合物中の各抗体の溶出に対して、前記クロマトグラフは、前記クロマトグラフ中の他のピークとは重複しないピークを示す、方法。
[付記12]
前記混合物中の各抗体は、ウイルスのスパイクタンパク質に対するものである、付記1~10のいずれか一つに記載の方法。
[付記13]
前記スパイクタンパク質は、エボラウイルス又はコロナウイルスのスパイクタンパク質である、付記12に記載の方法。
[付記14]
前記ウイルス感染は、エボラウイルス感染、コロナウイルス感染、又はジカウイルス感染である、付記11に記載の方法。
[付記15]
前記合剤組成物は2つ又は3つの抗体を含む、付記11又は14に記載の方法。
[付記16]
前記抗体はヒトモノクローナル抗体である、付記15に記載の方法。