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特開2024-173990リース管理装置、リース管理方法、及びそのプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173990
(43)【公開日】2024-12-13
(54)【発明の名称】リース管理装置、リース管理方法、及びそのプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 30/02 20230101AFI20241206BHJP
【FI】
G06Q30/02
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024165311
(22)【出願日】2024-09-24
(62)【分割の表示】P 2020179752の分割
【原出願日】2020-10-27
(71)【出願人】
【識別番号】302064762
【氏名又は名称】株式会社日本総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】大杉 聡史
(72)【発明者】
【氏名】和合 玲奈
(72)【発明者】
【氏名】小森 大海
(72)【発明者】
【氏名】森 毅
(72)【発明者】
【氏名】笠原 美冬
(72)【発明者】
【氏名】金坂 一樹
(57)【要約】
【課題】リースサービスにIoT技術を活用した新しいプラットフォームを提供する。
【解決手段】リース物件を管理するリース管理装置が、リース物件に組み込まれ、又は付加されるIoT機器から、リース物件のリース情報を受信し、リース情報記憶手段に蓄積するリース情報受信手段と、リース情報記憶手段に蓄積されたデータの価値又はデータの相関関係を分析するリース情報分析手段と、リース情報に関するデータを公開とするか非公開とするかを設定する公開/非公開設定手段と、非公開のデータは当該リース物件のメーカー及びユーザに通知し、公開のデータは許可された範囲内で外部に公表するデータ公表手段と、を備える。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リース物件を管理するためのリース管理システムであって、
前記リース物件に組み込まれ、又は付加されるIoT機器から、前記リース物件のリース情報を受信し、リース情報記憶手段に蓄積するリース情報受信手段と、
前記リース情報記憶手段に蓄積されたデータの価値又はデータの相関関係を分析するリース情報分析手段と、を備え、
前記リース情報分析手段は、前記蓄積されたリース情報のアクセス頻度、同種類のリース物件のデータ蓄積希望の件数にしたがって、当該リース情報のデータの価値を判定することを特徴とするリース管理システム。
【請求項2】
前記リース情報分析手段と通信し、前記リース情報に関するデータを公開とするか非公開とするかを前記データの提供元が設定する公開/非公開設定手段と、
前記非公開のデータは当該リース物件のメーカー及びユーザに通知し、前記公開のデータは許可された範囲内で外部に公表するデータ公表手段と、
前記ユーザ、前記メーカー、その他のデータ利用者から、リース物件に関するデータの蓄積希望を受けるデータ蓄積希望受付手段を備えることを特徴とする、請求項1に記載のリース管理システム。
【請求項3】
前記ユーザからのデータ提供の対価として、又は前記データの価値に基づいて、リース料の割引金額を算出するリース料割引算出手段を更に備えることを特徴とする請求項2に記載のリース管理システム。
【請求項4】
前記リース情報分析手段は、前記蓄積されたデータをあらゆる組み合わせで分析を行い、有意な相関関係があると認められたデータの組み合わせを抽出する。又は、同一ユーザが同時期に複数の機器をリースしている場合、当該リース物件の利用データにより、前記複数の機器のデータの相関関係を抽出することを特徴とする請求項1から3までのいずれか1項に記載のリース管理システム。
【請求項5】
前記ユーザ、前記メーカー、前記データ利用者、その他の事業者から、リース物件に関するデータの売り込みを受け付けるデータ売込受付手段を更に備えることを特徴とする請求項2に記載のリース管理システム。
【請求項6】
前記リース物件は、ソフトウェア、電子コンテンツを含むことを特徴とする請求項1から5までのいずれか1項に記載のリース管理システム。
【請求項7】
リース物件を管理するためのリース管理方法であって、
前記リース物件に組み込まれ、又は付加されるIoT機器から、前記リース物件のリース情報を受信し、リース情報記憶手段に蓄積するステップと、
前記リース情報記憶手段に蓄積されたデータの価値又はデータの相関関係を分析するステップと、
前記分析するステップは、前記蓄積されたリース情報のアクセス頻度、同種類のリース物件のデータ蓄積希望の件数にしたがって、当該リース情報のデータの価値を判定するステップと、
をコンピュータが実行することを特徴とするリース管理方法。
【請求項8】
請求項7に記載の各ステップをコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リース管理装置、リース管理方法、及びそのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、物を所有せずに、リースを利用する企業や個人が増えている。リースとは、長期間の貸し出しサービスのことで、借りる側が借りたいと思っている商品を指定し、それをリース会社が代わりに購入し、借りる側は、毎月定額をリース会社に支払うことで、その商品を借り受けることができるサービスである。一方、リースと似た概念でレンタルがあるが、レンタルとは、短期間の貸し出しサービスのことで、レンタル会社が用意した品物を不特定多数に貸し出すサービスである。そのため、リースでは借りる側が借りたい商品を指定して用意してもらえるが、レンタルでは借りる側がいつでも借りたいものを借りられるわけではない。したがって、ビジネスの世界では企業の9割の会社がリースを利用しているとのデータもある。そのため、リース物件を管理するための管理装置や管理システムに関する特許文献がいくつか知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、太陽光発電システムの所有権の移動に対応するリース情報管理装置が開示されている。この管理装置は、太陽光発電システムを事業会社が転リースする先の顧客とのリース期間を示す情報を含むリース契約情報、太陽光発電システムのリース料に係る情報を含む入金情報、及び、事業会社が太陽光発電システムの所有権を有するか否かに係る情報を含む所有権情報を記憶する記憶部と、顧客が事業会社と新たなリース契約を結んだ際に、リース契約情報を記憶部に格納するリース契約情報格納部と、リース契約情報に含まれるリース期間の満了を検知するリース期間満了検知部と、顧客からの入金情報を記憶部に格納する入金情報格納部と、リース期間満了検知部によるリース期間の満了の検知と入金情報とに基づいて、太陽光発電システムの所有権情報を変更する所有権情報変更部と、を備えるものである。
【0004】
また、特許文献2には、農機を遠隔地間においても効率的な共同利用ができる農機シェアリース実行システムが開示されている。このシステムは、リース物件である農機を、シェアリース契約をしたチ-ムの農家に貸し出し、順次使い廻して、各農家にリース料を請求するもので、リース実行サーバと農機に装備された移動体端末とを有し、移動体端末は農機の稼働開始時刻及び終了時刻、これらの時刻における農機の位置稼働データをリース実行サーバに送信し、リース実行サーバは、農機情報、利用者及びその圃場情報、作業計画情報を含む利用条件データ及び位置稼働データを受付け、農機の利用料金を算出し、農家による希望貸出日数、不稼働基準日、希望作業面積及び希望作業面積に対応する基準作業時間により基本料金を算出するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-91338号公報
【特許文献2】特開2016-218809号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、最近、「モノのインターネット」と呼ばれるIoT(Internet of Things)が注目されている。IoTとは、あらゆるモノがインターネット経由で通信することを意味する。例えば、ドアが「今、開いている」、工場内の機械が「調子が悪い。故障しそうだ」、植物が「水が欲しい」、猫の首輪が「今トイレにいる」等とつぶやき始める。これらの情報をインターネットを介して、様々な場所で活用することが可能となる。しかしながら、上記のような特許文献では、IoTの技術を活用したリース物件のサービスの仕組みは知られていない。
【0007】
したがって、本発明では、上記のような課題にかんがみ、リースサービスにIoT技術を活用した新しいプラットフォームを提供すること目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は、以下のような解決手段を提供する。
【0009】
(1)リース物件を管理するためのリース管理システムであって、前記リース物件に組み込まれ、又は付加されるIoT機器から、前記リース物件のリース情報を受信し、リース情報記憶手段に蓄積するリース情報受信手段と、前記リース情報記憶手段に蓄積されたデータの価値又はデータの相関関係を分析するリース情報分析手段と、を備え、前記リース情報分析手段は、前記蓄積されたリース情報のアクセス頻度、同種類のリース物件のデータ蓄積希望の件数にしたがって、当該リース情報のデータの価値を判定することを特徴とするリース管理システム。
【0010】
(2)前記リース情報分析手段と通信し、前記リース情報に関するデータを公開とするか非公開とするかを前記データの提供元が設定する公開/非公開設定手段と、前記非公開のデータは当該リース物件のメーカー及びユーザに通知し、前記公開のデータは許可された範囲内で外部に公表するデータ公表手段と、前記ユーザ、前記メーカー、その他のデータ利用者から、リース物件に関するデータの蓄積希望を受けるデータ蓄積希望受付手段を備えることを特徴とする、(1)に記載のリース管理システム。
【0011】
(3)前記ユーザからのデータ提供の対価として、又は前記データの価値に基づいて、リース料の割引金額を算出するリース料割引算出手段を更に備えることを特徴とする(2)に記載のリース管理システム。
【0012】
(4)前記リース情報分析手段は、前記蓄積されたデータをあらゆる組み合わせで分析を行い、有意な相関関係があると認められたデータの組み合わせを抽出する。又は、同一ユーザが同時期に複数の機器をリースしている場合、当該リース物件の利用データにより、前記複数の機器のデータの相関関係を抽出することを特徴とする(1)から(3)までのいずれかに記載のリース管理システム。
【0013】
(5)前記ユーザ、前記メーカー、前記データ利用者、その他の事業者から、リース物件に関するデータの売り込みを受け付けるデータ売込受付手段を更に備えることを特徴とする(2)に記載のリース管理システム。
【0014】
(6)前記リース物件は、ソフトウェア、電子コンテンツを含むことを特徴とする(1)から(5)までのいずれかに記載のリース管理システム。
【0015】
(7)リース物件を管理するためのリース管理方法であって、前記リース物件に組み込まれ、又は付加されるIoT機器から、前記リース物件のリース情報を受信し、リース情報記憶手段に蓄積するステップと、前記リース情報記憶手段に蓄積されたデータの価値又はデータの相関関係を分析するステップと、前記分析するステップは、前記蓄積されたリース情報のアクセス頻度、同種類のリース物件のデータ蓄積希望の件数にしたがって、当該リース情報のデータの価値を判定するステップと、をコンピュータが実行することを特徴とするリース管理方法。
【0016】
(8)上記(7)に記載の各ステップをコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、リースサービスにIoT技術を活用した新しいプラットフォームを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態に係るリースを用いた新プラットフォームの概念を示す図である。
図2】本発明の実施形態に係るリースを用いた新プラットフォームの概念(続)を示す図である。
図3】本発明の実施形態に係るパッケージ型リースを説明するための図である。
図4】本発明の実施形態に係るデータ活用の案を示す図である。
図5】本発明の実施形態に係るリース管理装置の機能ブロックを示す図である。
図6】本発明の実施形態に係るリース情報記憶手段に格納されるデータの具体例の概要を示す図である。
図7】本発明の実施形態に係るリース情報の蓄積処理及び公表処理のフローを示す図である。
図8】本発明の実施形態に係るリース情報のデータ価値及び相対関係の分析の処理フローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、実施形態)について詳細に説明する。
【0020】
図1図2は、本発明の実施形態(以下、本システムと呼ぶ)に係るリースを用いた新プラットフォームの概念を示す図である。リースとは、既に述べたように、ユーザが選択した機械設備等をリース会社が代わりに購入し、そのユーザに対し中長期賃貸することであるが、従来のリースの仕組みは図1(a)に示すように、リース会社がメーカーとリース商材(リース物件)となる機器の売買契約を結び、その機器の所有権の移転を受け、借り手となるユーザとリース契約を結び、リース期間の間、リース料の支払いを受ける。
【0021】
図1(b)は、本システムのリースを用いた新プラットフォームの概念を示す図である。
リース利用者であるユーザは、リース料を安くしたいという願望を持っている。一方、リース物件の機器メーカーは、IT活用のために、いろいろな情報がほしいといった願望を持っている。そこでリース会社がプラットフォームとなり、ユーザに対しては、リースしたIoT機器からデータを受け取る代わりに、リース料の割引や新たな機器の提案を行う。メーカーに対しては、ユーザから受信したデータを提供する代わりに情報使用料を受け取る。すなわち、本システムは、複数のユーザからデータを集めることで情報のプラットフォームとして機能する。リース料を割り引くことでデータを収集し、データの提供や分析によるコンサルタントによって収益化を行うことができる。
【0022】
また、リース会社は、既に述べたように、メーカーに対して他社データやその分析結果を提供することで、利用料の支払いを受け、ユーザに対してデータの提供を受ける代わりに、リース料の割引を受ける。さらに、図2に示すように、リース会社はメーカーでもないユーザでもない第三者であるデータ利用者にも会社データの分析結果の提供やコンサルタント業務を行うようにもできる。これは、従来のリース会社では考えられなかったことである。
【0023】
なお、リースやレンタルに類するものにサブスクリプションという概念がある。サブスクリプションとは、一定の金額を支払うことで、契約に定められている期間中、何度でもサービスが受けられるもので、雑誌の定期購読、インターネットの通信サービス、携帯電話のプラン、ソフトウェアの使用料などでよく利用される。一般にサブスクリプションの対象は、上記のようなサービスや無体物であるが、PCなどの有体物にソフトウェアをパッケージ化してサブスクリプション契約をし、まとめて利用料を支払うような形態もある。
【0024】
本システムでは、サブスクリプションの無体物もリース物件とすることができるものとする。したがって、本明細書では、サブスクリプションもリースに含まれるものとする。ただし、著作権のある物件は、その著作権をリース会社が譲渡を受けているか、使用許諾を受けているものとする。以下、本システムが、プラットフォーム自らの価値を向上させるため、備える機能を説明する。
【0025】
(データの価値の提示機能)
本システム上に保存されたIoTデータは、公開/非公開の設定が可能となっているものとし、非公開にしているIoTデータ保有者に、「貴方のデータは、市場で求められているものなので、参照可能とすることで毎月の収入を得ることが可能です。」などと通知する。
【0026】
(データ利用の提案機能)
まだリースユーザでない非ユーザから、IoTデータの売り込みを受け付ける。このようにすることで、本システムを、リース由来のデータだけにとどまらない「IoTデータプラットフォーム」とすることができる。また、売り込まれたデータに価値があることが分かれば、そのIoTデータを出力可能な機器をリース商品のラインナップに加える。
【0027】
(相関関係の公表機能)
定期的にデータを分析、解析して得られた優位性のある相関関係を公表する。すなわち、プラットフォームに保存されたデータをあらゆる組み合わせで分析を行い、有意な相関関係があると認められたデータの組み合わせを記憶しておき、定期的にそのデータの組み合わせを公表する。そのようにすることで、新たなユーザを誘引できる。記憶することは絶やさず、常に情報を発信することで、定期的にプラットフォームにアクセスさせる効果もある。
【0028】
(機器リース依頼の受付機能)
プラットフォームで公表されていないIoTデータの蓄積の希望を受け付ける手段を用意する。もしも、データは記憶されているが非公開のままであるものであれば、データ保有者に公開をオファーし、希望のデータを送信できない場合は、当該データを出力可能なIoT機器をリース商品のラインナップに加える。
【0029】
(パッケージ型リース提案機能)
図3は、パッケージ型リースを説明するための図である。従来型のリースでは使用設備や機器を利用者に自由に選択してもらっていたが、パッケージ型リースとは、想定される複数設備や機器をあらかじめパッケージ化して提供することである。例えば、会議室の備品一式(PC、ディスプレイ、スピーカ、マイク、ホワイトボード、録画用カメラ)をパッケージとしてリースする。利用が向上している機器があれば、他のパッケージリースのユーザにも利用が伸びている機器のリースを組み替えてパッケージリースするなどのオファーをすることが可能となる。またの、会議室の備品として、更にワイヤレスディスプレイ、電子ホワイトボード、ワイヤレススピーカ、などを提案することができる。パッケージの提案には、複数の機器が一緒にリースされたデータなどを参考にすることができる。パッケージ型リースにより同一企業の複数設備のデータが取得可能になる。また、パッケージ型リースにより、リ-ス料金の割引などが可能となる。
【0030】
(データ活用の具体案)
図4は、本システムのデータ活用の案を示す図である。ここでは、データ活用の具体例として気象データ(日照時間、風力等)と産業機器データから自動化の促進に活用する案の概略が示されている。すなわち、リース会社は、図示するように、トラクターの走行データ、太陽発電の日照データ、風力発電の風力データ、畜産業の畜産データ、船舶の運航データ、航空機の飛行データ(図示せず)、気象データ(図示せず)などをリース会社に蓄積し、蓄積されたデータを活用して、ドローンによる農業作業の全自動化、畜産業の効率最大化、漁業の全自動化などに貢献することができることを示している。
【0031】
例えば、畜産データとして、出産を控えた母親牛の体温、血圧、心拍数、血糖値などのバイタルデータを、牛に装着又は体内に埋め込まれたIoT機器から取得し、子牛の出産直後の健康状況を予測して、出産後まもなく子牛が死亡するような事故を防ぎ、畜産業の効率最大化につなげることができる。また、日照データ、気象データ、風力データ、トラクターの走行データ、航空機の飛行データなどから、農業地域の作物の色づき状態、土壌の状態、温度、風向きなどを監視し、農薬を噴霧する場所と時期を最適化し農薬の量を減らし、収穫物が最大になるような農業作業の全自動化に寄与することができる。また、航空機からの海面の映像、飛行データ、船舶の運行データなどから、魚群の位置を正確に追跡して漁獲量が最大になるような漁業の全自動化につなげることができる。いずれも単独の企業では到底できないようなことを、リース会社がリースした様々な機器から得られる様々なIoTデータを組み合わせたプラットフォームを構築することで実現できる。
【0032】
(本システムのメリット)
リースを受ける企業にとってのメリットは、(1)データ提供の対価としての割引をリース会社から受けられる、(2)IoT機器利用による効率化、(3)データを元にしたコンサルタント業務を他社から受ける機会が得られる、(4)リース会社からパックで複数のリース商品をまとめて導入することができる、などである。
【0033】
また、メーカー企業にとってのメリットは、(1)リース会社を通じたより多くのユーザのデータの享受ができる、(2)自社機器以外のデータのリクエストをリース会社に出すことができる、(3)市場データとの関連性を得ることができる、などである。
【0034】
また、リース会社にとってのメリットは、(1)取扱商品の種類や取引企業の多さにより、大量・多用なデータが得られる、(2)複数機器を同時リースすることなどができる、(3)ここで得られたデータを、メーカー・外部コンサルなどへ提供でき、自らがコンサル事業に乗り出し活用することができ、(4)新たな情報の掛け合わせによる新商品(新-ス物件)開発への貢献ができるなどである。
【0035】
(本システムの機能ブロック)
以下、図5図6を用いて、本システムを実現するためのシステム構成について詳しく説明する。以降の図においては、機能ブロック間の矢印は、データの流れ方向、又は処理の流れ方向を表す。
【0036】
図5は、本システムのリース管理装置100の機能ブロックを示す図である。図示するように、このリース管理装置100は、リース情報を管理する装置であって、大きく分けて、データ受付手段110、リース情報記憶手段120、公開/非公開設定手段125、リース情報分析手段130、データ公表手段140、リース料割引算出手段150を備えている。以下、各手段について順に説明する。
【0037】
データ受付手段110は、メーカー10、ユーザ20、データ利用者30などから、データを受信したり、要望を受信したりする手段であって、リース情報受信手段111、データ蓄積希望受付手段112、データ売込受付手段113を含んでいる。
【0038】
リース情報受信手段111は、リース物件に組み込まれ、又は付加されるIoT機器から、リース物件のリース情報(リースデータ)を受信し、リース情報記憶手段120に蓄積する。すなわち、ユーザ20にリース中の機器21(IoTに対応した機器)から、機器のIoTデータを逐次受信し、リース情報記憶手段120に格納する。リース機器がIoTに対応していない場合は、IoTに対応した機器(インターネットに接続可能なデバイス)をリース会社が付加してもよい。ここで受信するIoTデータは、機器の稼働状態、動作中の詳細データ、内蔵カメラの映像、故障データなどがあるが、詳しくは後述する。
【0039】
データ蓄積希望受付手段112は、メーカー10(メーカーのシステム)、ユーザ20(ユーザの端末)、データ利用者30(その端末)から、データの蓄積希望を受け付ける。ここで希望を受け付けるデータは、リース会社が所有していない機器のデータであり、新たにリースの開始を希望する機器又はデータの取得を希望する機器である。データ売込受付手段113は、リース会社が所有していないIoT機器のデータのユーザ、メーカー、データ利用者、その他の事業者から売り込みを受け付ける。リースを希望する機器がIoTに対応していない場合は、その機器とローカル接続可能なIoT機器とセットにしてリースを提案することもできる。
【0040】
リース情報記憶手段120は、ユーザ20(ユーザの端末)から受信したIoTデータを格納するデータベースであり、機器種類、機器ID、リース中のユーザID、リース期間、IoTデータの種類及び機器の実際の使用中のデータ、設置場所などが格納される(具体例は図6参照)。リース情報記憶手段120は、ユーザ企業の業種、規模、地域などに分類されていてもよい。なお、図6中のCAN(Controller Area Network)データとは、ISO11898で規格化された自動車LANの標準プロトコルに位置づけられた規格であり、例えば、アクセス開度、ワーパーの作動、ブレーキ操作、ハンドル操作、等のデータを取得可能である。
【0041】
公開/非公開設定手段125は、リース情報記憶手段120に格納されたデータを外部に公開するか否かを、データの提供元(場合によってはリース会社も)が設定できる機能を持っている。公開/非公開の設定は受信したときのデータ別であってもよいし、各データの項目別であってもよい。例えば図6の例では、ユーザ名、リース期間などは非公開とし、他の項目は公開とするなどが設定できる。また、この設定は、データの提供後であってもいつでもデータの提供元によって変更が可能である。また、公開する先、公開期間などを設定することも可能である。このことにより、公開する場合であっても許可された範囲内で行われる。なお、公開/非公開の設定情報はリース情報記憶手段120に格納される。
【0042】
リース情報分析手段130は、データ価値分析手段131、データ相関関係分析手段132、パッケージリース提示手段143を含んでいる。
【0043】
データ価値分析手段131は、リース情報記憶手段120に格納されたデータを分析して「データ価値」を抽出する。ここで「データ価値」は、そのデータからどの程度有用な情報が得られるか、又は、そのデータを欲している利用者がどの程度いるかで判定される。この判定は、すべて自動的になされるものでなく、最終的に人間が「データ価値」を判定するときの参考となる分析データを提示することで行われてもよい。なお、既に述べたように、非公開にしているデータ保有者に、「貴方のデータは、市場で求められているものなので、公開することで毎月の収入を得ることが可能」などと通知することもできる。
【0044】
リース料割引算出手段150は、ユーザに対するリース料の割引額を算出する。既に述べたように、リース会社はユーザに対しては、リースしたIoT機器からデータを受け取る代わりに、リース料の割引を行う。ここで、リース料割引算出手段150は、リース料の割引金額を、ユーザからのデータ提供の対価として決定してもよいし、データ価値分析手段131により抽出された「データ価値」に基づいて決定してもよい。
【0045】
データ相関関係分析手段132は、リース情報記憶手段120に格納された機器のデータの「相関関係」を分析する。つまり、蓄積されたデータをあらゆる組み合わせで分析を行い、有意な相関関係があると認められたデータの組み合わせを記憶しておき、定期的にそのデータの組み合わせを公表する。この相関関係の分析は、分野や機器に捕らわれず行われてもよい。そうすることで、例えば、スーパマーケットにおいて、オムツとビールが一緒に売れることが多いというような相関関係のあるデータを抽出する。
【0046】
また、データ相関関係分析手段132は、複数の機器を組み合わせてパッケージとしてリースする機器の候補を抽出することも可能である。例えば、オフィスにおいて、同一ユーザからコピー機、電話機、パソコンが同時にリースされたケースを抽出し、特定の機器の組み合わせが同時にリースされる傾向を抽出し、その確率を算出する。また、先に述べたPCのように、特定のハードウェアと特定のソフトウェアの組み合わせも相関関係が高いと考えられる。このような相関関係を抽出することで意外な組み合わせを発掘することができる。
【0047】
データ公表手段140は、データ価値提示手段141、データ相関関係提示手段142、パッケージリース提示手段143を備えている。それぞれの提示手段は、リース情報分析手段130が分析した結果、データ価値、機器相関関係、パッケージリースに関するデータを、許可された範囲で外部に提示する機能を有する。
【0048】
以上で図5図6の説明を終わるが、上記の本システムの機能構成は、あくまで一例であり、一つの機能ブロック(データベース及び機能処理部)を分割したり、複数の機能ブロックをまとめて一つの機能ブロックとして構成したりしてもよい。各機能処理部は、装置に内蔵されたCPU(Central Processing Unit)が、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、SSD(Solid State Drive)、ハードディスク等の記憶装置に格納されたコンピュータ・プログラムを読み出し、CPUにより実行されたコンピュータ・プログラムによって実現される。すなわち、各機能処理部は、このコンピュータ・プログラムが、記憶装置に格納されたデータベース(DB;Data Base)やメモリ上の記憶領域からテーブル等の必要なデータを読み書きし、場合によっては、関連するハードウェア(例えば、入出力装置、表示装置、通信インターフェース装置)を制御することによって実現される。また、本発明の実施形態におけるデータベース(DB)は、商用データベースであってよいが、単なるテーブルやファイルの集合体をも意味し、データベースの内部構造自体は問わないものとする。
【0049】
(処理フロー)
以下、図7図8を用いて、本システムの処理を更に詳細に説明する。なお、以降の処理フロー図(フローチャート)においては、各ステップの入力と出力の関係を損なわない限り、各ステップの処理順序を入れ替えてもよい。
【0050】
図7は、本システムのリース情報の蓄積処理及び公表処理のフローを示す図である。本システムのリース管理装置100(以下、単に管理装置)は、まずステップS10において、リース契約中のリース物件(無体物含む)のリストを取得する。次にステップS11において、リース物件の機器がIoT対応か否かをチェックする。IoT対応とは、機器の状態のデータや外部から取得したデータを、インターネットを介して外部に送信できる機能を持つことをいう。IoT対応の機器の場合は、ステップS12において、その機器から直接データを取得する。リース物件がIoT対応でない場合は、ステップS13に移り、周辺機器にIoT対応の機器があるか否かをチェックする。周辺にもIoT対応の機器がない場合はここではなにもせず、ステップS21に飛び、次の未処理の機器のチェックに移る。周辺にIoT対応の機器がある場合は、ステップS14において、その周辺機器からデータを取得する。
【0051】
ここで周辺機器とは、IoT未対応の機器の状態を取得可能な機器を意味する。例えば、パッケージでリースされた複数の機器のうち、インターネット接続可能な機器の一つが他のインターネット接続ができない機器の状態のデータをローカルに取得可能であれば、そのネットワーク機器が周辺機器となる。また、リース物件がソフトウェアや電子コンテンツである場合は、そのソフトウェアやコンテンツをインストールしたPCなどが周辺機器である。
【0052】
管理装置は、ステップS12の後、次にステップS15に移り、取得したデータに設定された送信条件がある場合は、そのデータ送信条件を満たすか否かをチェックする。データ送信条件とは、そのデータを送るタイミングをあらかじめ規定したものである。例えば、リアルタイム性が要求されるデータであれば、即時にそのデータをメーカー等に送信するが(ステップS16)、そうでない場合は、所定のタイミング(例えば、毎日〇時とか、1週間ごととか)が来るまでデータを蓄積し(ステップS17)、次のタイミングでそれまでに蓄積された未送信のデータを送信する。このようにすることで通信負荷が軽減される。
【0053】
管理装置は、次にステップS18において、メーカーやユーザ以外のデータ利用者がいるか否かをチェックする。データ利用者がいない場合は、ステップS21に飛び、次の未処理の機器のチェックに移る。データ利用者がいる場合は、ステップS19において、データ送信条件があり、かつ、その送信条件を満たす場合は、データ利用者にそのデータを即時に送信する(ステップS20)。送信条件を満たしていない場合は、図示は省略するが、次のタイミングが来るまでデータを蓄積する。なお、ここで蓄積されるデータは、ステップS17で蓄積されるデータと一致しなくともよい。データ利用者は、必ずしもメーカー等が必要なデータと同じような詳細データまでは必要としない場合もあるからである。
【0054】
最後に、管理装置は、ステップS21において、未処理の機器かあるか否かをチェックし、未処理の機器があればステップS11に戻るが、未処理の機器がなければ処理を終了する。なお、図7の処理は、データ受信とデータ送信を同時に行うようにしたが、データ受信と送信を別々のプロセスで行うようにしてもよい。以上で図7の説明を終わる。
【0055】
図8は、本システムのリース情報のデータ価値及び相対関係の解析の処理フローを示す図である。管理装置は、まずステップS30において、リース情報記憶手段120からデータを読み出す。そして、ステップS31において、データのアクセス頻度やデータ蓄積希望に応じてデータ価値スコアを更新する。データ価値スコアとは、データの価値を表す指標で、そのデータに外部からアクセスされた頻度やその種類のデータの蓄積希望数にしたがって判定される。また、そのデータ自体の希少性があれば、それも考慮されるようにしてもよい。
【0056】
管理装置は、続いてステップS32において、蓄積されたデータをあらゆる組み合わせで分析を行い、有意な相関関係があると認められたデータの組み合わせを抽出する。優位な相関関係とは、例えば、同時期に使用される機器のデータ、排他的に使用される機器のデータ、季節や天候の機器のデータ、地域により明らかな差が認められる機器のデータなどのいずれも想定の範囲を超えた場合の相関関係である。
【0057】
管理装置は、更にステップS33において、同一ユーザが同時期に複数の機器をリースしているか否かをチェックする。この条件にあてはまるものがあればステップS34に移るが、なければステップS35に飛ぶ。パッケージ型リースの場合は必ずこの条件にあてはまるが、複数の機器を別々にリースした場合も、この条件にあてはまることがある。
【0058】
そして、管理装置は、ステップS34において、蓄積されたデータ(リース情報の利用データ)から相関関係のあるリース物件(リース機器)を抽出する。例えば、PCとマッサージ機のような異なる分野と考えられているものでも、一緒に使用される確率が高い機器として抽出する。ここで参照されるデータは全く異なる分野の商品であってもよい。これは、先に述べたようなオムツとビールのように一見無関係な商品であっても、相関関係が見いだせることがあるからである。
【0059】
最後に、管理装置は、ステップS35において、未処理のデータかあるか否かをチェックし、未処理のデータがあればステップS31に戻るが、未処理のデータがなければ処理を終了する。なお、図8の処理は、データ価値の分析と機器相関関係の抽出を同時に行うようにしたが、データ価値の分析と機器相関関係の分析を別々のプロセスで行うようにしてもよい。以上で図8の説明を終わる。
【0060】
(実施形態の効果)
以下、本システムが奏する効果をまとめる。本システムによれば、リースサービスにIoT技術を活用した新しいプラットフォームを提供することができる。本システムは、中核となる管理装置によって実現される。管理装置は、具体的には、リースされたIoT機器から、リース情報を取得し、記憶手段に蓄積し、蓄積されたデータの価値又はデータの相関関係を分析する。また、リース情報に関するデータを公開とするか非公開とするかを設定し、非公開のデータを当該リース物件のメーカーやユーザに通知し、公開を許可されたデータは許可された範囲内で外部に公表することができる。ここで、リース物件は、ソフトウェアのような無体物であってもよい。
【0061】
また、リース情報を分析することにより、蓄積されたデータの価値を、そのデータに外部からアクセスされた頻度やその種類のデータの蓄積希望の件数にしたがって判定することができる。また、同一ユーザが同時期に複数の機器をリースしているか否かをチェックすることなどにより、機器の相関関係のデータを抽出することができる。いずれも蓄積されたデータの付加価値を高めることができる。
【0062】
また、外部からデータの蓄積希望を受け付けることで、この受け付け状況により、新たなリース物件の導入やIoTに対応してない機器のIoT化を進めることができる。また、データ売込受付手段は、外部からデータそのものを受け付け、リースしてない機器の情報も集めることができる。いずれもリース危機の不足を補うものである。
【0063】
なお、上記の実施形態では、主にリースについて説明したが、本発明の仕組みは、リースと同じ概念であるレンタルにもそのまま適用が可能である。リースとレンタルは、機器をユーザの求めに応じてリース会社が購入して貸し出すか、リース会社が既に所有している機器を貸し出すかの違い、及び貸出期間に差があるだけである。
【0064】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲に限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。また、そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。なお、上記の実施形態では、本発明を物の発明として、リース管理装置について説明したが、本発明は、方法の発明(リース管理方法)又はコンピュータ・プログラムの発明としても捉えることができる。
【符号の説明】
【0065】
10 メーカー
20 ユーザ
21 リース機器
30 データ利用者
100 リース管理装置
110 データ受付手段
111 リース情報受信手段
112 データ蓄積希望受付手段
113 データ売込受付手段
120 リース情報記憶手段
125 公開/非公開設定手段
130 リース情報分析手段
131 データ価値分析手段
132 データ相関関係分析手段
140 データ公表手段
141 データ価値提示手段
142 データ相関関係提示手段
143 パッケージリース提示手段
150 リース料割引算出手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8