(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173993
(43)【公開日】2024-12-13
(54)【発明の名称】太陽光発電システム用反射体
(51)【国際特許分類】
H02S 40/22 20140101AFI20241206BHJP
【FI】
H02S40/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024165459
(22)【出願日】2024-09-24
(62)【分割の表示】P 2022579495の分割
【原出願日】2022-01-27
(31)【優先権主張番号】P 2021015113
(32)【優先日】2021-02-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】320010572
【氏名又は名称】株式会社ニチモ
(71)【出願人】
【識別番号】000108719
【氏名又は名称】タキロンシーアイ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000207562
【氏名又は名称】タキロンシーアイシビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067323
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 教光
(74)【代理人】
【識別番号】100124268
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 典行
(72)【発明者】
【氏名】日浦 一朗
(72)【発明者】
【氏名】中井 貴暁
(72)【発明者】
【氏名】大西 康平
(72)【発明者】
【氏名】日向 雄紀
(57)【要約】
【課題】発電効率を向上させ、敷地面積の削減も可能とし、構築やメンテナンス等のコストを削減しながら発電量を増やすことを可能とする。また、優れた耐候性を有する太陽光発電システム用反射体を提供することにある。
【解決手段】架台3を介し上面の発電面6を太陽光入射方向に向けて所定角度に傾斜させて複数設置される両面入射型の太陽光発電パネル2を備える太陽光発電システムに用いられる反射体であって、反射体4は、太陽光の直射光及び散乱光を太陽光発電パネル2の下面の発電面12に向けて反射させる光反射率の高い色のシート素材よりなる光反射面を有した反射層14と、防草シート材よりなる防草層15と、からなり、反射層14と防草層15とが積層一体形成されており、反射体4の厚さが、1.0mm以上である。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
架台を介し上面の発電面を太陽光入射方向に向けて所定角度に傾斜させて複数設置される両面入射型の太陽光発電パネルを備える太陽光発電システムに用いられる反射体であって、
該反射体は、
太陽光の直射光及び散乱光を前記太陽光発電パネルの下面の発電面に向けて反射させる光反射率の高い色のシート素材よりなる光反射面を有した反射層と、
防草シート材よりなる防草層と、
からなり、前記反射層と前記防草層とが積層一体形成されており、
該反射体の厚さが、1.0mm以上であることを特徴とする太陽光発電システム用反射体。
【請求項2】
前記光反射面は、白色であることを特徴とする請求項1記載の太陽光発電システム用反射体。
【請求項3】
前記光反射面は、金属層で形成されることを特徴とする請求項1記載の太陽光発電システム用反射体。
【請求項4】
前記光反射面は、太陽光のうち500~1000nmの波長の光反射率が70%以上であるとともに、5000~20000nmの波長の平均光反射率が15%以下であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1つに記載の太陽光発電システム用反射体。
【請求項5】
前記反射体を構成する反射層の表面が遮水性を有し、該反射体の遮水係数を1.0×10-11 m/sec以下としたことを特徴とする請求項1~4のいずれか1つに記載の太陽光発電システム用反射体。
【請求項6】
前記反射体は、透水性を備え、該反射体の透水係数を1.0×10-5~1.0m/secとしたことを特徴とする請求項1~4のいずれか1つに記載の太陽光発電システム用反射体。
【請求項7】
前記反射層の表面には、紫外線劣化防止層を有することを特徴とする請求項1~6のいずれか1つに記載の太陽光発電システム用反射体。
【請求項8】
前記反射層は、熱可塑性樹脂と白色顔料からなることを特徴とする請求項2記載の太陽光発電システム用反射体。
【請求項9】
前記熱可塑性樹脂は、オレフィン系樹脂からなることを特徴とする請求項8記載の太陽光発電システム用反射体。
【請求項10】
前記オレフィン系樹脂は、低密度ポリエチレンおよび直鎖状低密度ポリエチレンの少なくとも一種からなることを特徴とする請求項9記載の太陽光発電システム用反射体。
【請求項11】
前記防草層は、熱可塑性樹脂と黒色顔料からなることを特徴とする請求項2記載の太陽光発電システム用反射体。
【請求項12】
前記熱可塑性樹脂は、オレフィン系樹脂からなることを特徴とする請求項11記載の太陽光発電システム用反射体。
【請求項13】
前記オレフィン系樹脂は、低密度ポリエチレンおよび直鎖状低密度ポリエチレンの少なくとも一種からなることを特徴とする請求項12記載の太陽光発電システム用反射体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光発電システム用反射体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、太陽光発電システムとしては、太陽光発電パネルを地面に多数並べ、大規模発電を行うメガソーラーというシステムがある。
このメガソーラーは、下記特許文献1,2に示されるように、広大な敷地に多数の太陽光発電パネルが設置されるものであり、各太陽光発電パネルは、それぞれ所定の角度に傾斜された状態で架台を介して配置されている。
【0003】
このような多数の太陽光発電パネルにて構成される太陽光発電システムは、屋外の広大な敷地に設置されることから、メンテナンスに多大な労力が必要であり、すなわち発電効率の低下を招くようことがないように、例えば、太陽光発電パネル下の敷地面から生える雑草の発生を抑制する作業等が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-228736号公報
【特許文献2】特開2015-216766号公報
【特許文献3】特開2019-068795号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような、敷地面から生える雑草は、生育が進み伸びることで太陽光発電パネルを覆ってしまう不具合が発生し、すなわち太陽光を遮って発電面への太陽光の入射量が減少してしまう問題があり、これに対して行われる雑草の除去は、人手による排除すなわち抜去作業や、除草剤を撒くことで行われ、すなわち作業者が必要となることから、その施工作業は多大な時間を要する課題を有する。また、雑草は簡単に途絶えることなく再び生えてくることから、何度も除草の作業を行わなければならず、メンテナンス作業として非常に煩雑なものである。さらに、除草剤を用いることは、周辺の自然破壊にもなるおそれがある。そして、このような作業を軽減させるために、除草後に敷地面をコンクリートで覆ってしまう方法や、地面に対して雑草の発育を阻害させる防草シートを敷設する方法なども行われていたが、煩雑な施工作業であり、経費の削減が求められている。
【0006】
一方、広大な敷地に多数の太陽光発電パネルを設置することは、十分な発電量を確保する上で必要であり、出力が1MW(1メガワット=1000kW)以上の発電量を持つ大規模発電施設を設置するためには、ひとつの区画で、かつ、平らな敷地面を必要とする。そのため、例えば敷地面積当たりの発電効率の高い設置状態を実現すべく模索されている。このような発電効率の向上のために、上記特許文献3のような反射性マルチシートを地面に敷き、裏面にも発電機能を有する太陽光発電パネルを用いて、地面からの反射光を発電に利用するものもあるが、上記した雑草対策に対しては繁茂することに対し抑制されるものの、太陽光を到達しにくくするのみで雑草の排除や抜去作業は免れないものであり、メンテナンスコストを要することでさらなる改善が望まれていた。また、反射性マルチシートの敷地面側は樹脂フィルムで構成されているため、平坦でない地面に設置する場合にシートの反射面も平坦ではなくなるため、反射率が低下し、太陽光発電パネルの裏面に入射する光が減少するおそれがある。さらに平坦でない地面への設置ではシートが破損するおそれもある。
【0007】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、その目的は、発電効率を向上させ、敷地面積の削減も可能とし、構築やメンテナンス等のコストを削減しながら発電量を増やすことを可能とする太陽光発電システムに用いられる太陽光発電システム用反射体を提供することにある。また、優れた耐候性を有する太陽光発電システム用反射体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
次に、上記の課題を解決するための手段を、実施の形態に対応する図面を参照して説明する。
本発明の請求項1記載の太陽光発電システム用反射体4は、架台3を介し上面の発電面6を太陽光入射方向に向けて所定角度に傾斜させて複数設置される両面入射型の太陽光発電パネル2を備える太陽光発電システムに用いられる反射体であって、
該反射体4は、
太陽光の直射光及び散乱光を前記太陽光発電パネル2の下面の発電面12に向けて反射させる光反射率の高い色のシート素材よりなる光反射面を有した反射層14と、
防草シート材よりなる防草層15と、
からなり、前記反射層14と前記防草層15とが積層一体形成されており、
前記反射体4の厚さが、1.0mm以上であることを特徴とする。
【0009】
この太陽光発電システム用反射体では、両面入射型の太陽光発電パネル2の下面の発電面12に対して、光反射率の高いシート材を具備した反射体4にて、太陽光の直射光及び散乱光を反射させて入射させることから、発電効率を向上させることができる。また、反射体4には、防草層15を備えていることで、敷地面からの雑草の発生を抑制し、これによりメンテナンス作業の削減、及びそのコストを削減する。
さらに、この反射体4によれば、平坦でない地面に設置する場合においても、反射面が平坦或いは平坦に近いなだらかな面となるため、反射率が低下せず、太陽光発電パネルの下面の発電面12に入射する光が減少しない。
【0010】
本発明の請求項2記載の太陽光発電システム用反射体は、請求項1に記載の太陽光発電システム用反射体であって、
前記光反射面は、白色であることを特徴とする。
【0011】
この太陽光発電システム用反射体では、光反射面が白色で構成されることで、太陽光の直射光や散乱光のうち発電に用いられる波長の光を下面発電面12に良好に反射光として入射させることができ、発電効率を向上させることができる。
【0012】
本発明の請求項3記載の太陽光発電システム用反射体は、請求項1に記載の太陽光発電システム用反射体であって、
前記光反射面は、金属層で形成されることを特徴とする。
【0013】
この太陽光発電システム用反射体では、光反射面が金属層で構成されることで、太陽光の直射光や散乱光を下面発電面12に良好に反射光として入射させることができ、発電効率を向上させることができる。
【0014】
本発明の請求項4記載の太陽光発電システム用反射体は、請求項1~3のいずれか1つに記載の太陽光発電システム用反射体であって、
前記光反射面は、太陽光のうち500~1000nmの波長の光反射率が70%以上であるとともに、5000~20000nmの波長の平均光反射率が15%以下であることを特徴とする。
【0015】
この太陽光発電システム用反射体では、太陽光のうち可視光~短波長側の近赤外線領域の光を反射させ、遠赤外線領域側の光反射率が低いことから、太陽光発電パネルの温度上昇を防ぐことができ、発電効率を低下させることがない。
【0016】
本発明の請求項5記載の太陽光発電システム用反射体は、請求項1~4のいずれか1つに記載の太陽光発電システム用反射体であって、
前記反射体4を構成する反射層の表面が遮水性を有し、該反射体4の遮水係数を1.0×10-11 m/sec以下としたことを特徴とする。
【0017】
この太陽光発電システム用反射体では、敷地面に敷設される反射体の反射層表面に遮水性を備えることにより、反射体4の表面に雨水が留まらず、反射体の外方へと導くこととなる。これにより反射層14の表面が汚れにくく、メンテナンスの頻度を抑えることとなる。
【0018】
本発明の請求項6記載の太陽光発電システム用反射体は、請求項1~4のいずれか1つに記載の太陽光発電システム用反射体であって、
前記反射体4は、透水性を備え、該反射体4の透水係数を1.0×10-5~1.0m/secとしたことを特徴とする。
【0019】
この太陽光発電システム用反射体では、敷地面に敷設される反射体4に透水性を備えることで、雨水を通過させ敷地面へと導き、反射体4の表面に雨水が留まらないようになる。これにより、発電効率を低下させることがない。
【0020】
本発明の請求項7記載の太陽光発電システム用反射体は、請求項1~6のいずれか1つに記載の太陽光発電システム用反射体であって、
前記反射層の表面には、紫外線劣化防止層を有することを特徴とする。
【0021】
この太陽光発電システム用反射体では、紫外線劣化防止層によって、反射層の紫外線劣化を防ぎ、すなわち太陽光に含まれる紫外線領域の光の照射による劣化を防いで反射体の寿命を延ばし、交換間隔、メンテナンス間隔を延ばすことができる。
【0022】
本発明の請求項8記載の太陽光発電システム用反射体は、請求項2記載の太陽光発電システム用反射体であって、
前記反射層は、熱可塑性樹脂と白色顔料からなることを特徴とする。
【0023】
この太陽光発電システム用反射体では、光反射層が白色で構成されることとなり、太陽光の直射光や散乱光のうち、発電に用いられる波長の光を下面発電面に良好に反射光として入射させることができ、発電効率を向上させることができる。
また、平坦でない地面に設置する場合においても、シートの反射面が平坦である為、反射率が低下せず、太陽光発電パネルの裏面に入射する光が減少しない。
【0024】
本発明の請求項9記載の太陽光発電システム用反射体は、請求項8記載の太陽光発電システム用反射体であって、
前記熱可塑性樹脂は、オレフィン系樹脂からなることを特徴とする。
【0025】
この太陽光発電システム用反射体では、反射層が機械的強度に優れる構成となる。
【0026】
本発明の請求項10記載の太陽光発電システム用反射体は、請求項9記載の太陽光発電システム用反射体であって、
前記オレフィン系樹脂は、低密度ポリエチレンおよび直鎖状低密度ポリエチレンの少なくとも一種からなることを特徴とする。
【0027】
この太陽光発電システム用反射体では、反射層の構成をエチレン系樹脂シートの中でも柔軟性・施工性に優れたものとすることができる。
【0028】
本発明の請求項11記載の太陽光発電システム用反射体は、請求項2記載の太陽光発電システム用反射体であって、
前記防草層は、熱可塑性樹脂と黒色顔料からなることを特徴とする。
【0029】
この太陽光発電システム用反射体では、防草層を黒色のシート体とすることで、不織布よりも密度が大きくでき、雑草に体積当たりの重量ストレスを効率的に与えることができて、雑草の枯死を促進する。
【0030】
本発明の請求項12記載の太陽光発電システム用反射体は、請求項11記載の太陽光発電システム用反射体であって、
前記熱可塑性樹脂は、オレフィン系樹脂からなることを特徴とする。
【0031】
この太陽光発電システム用反射体では、防草層が機械的強度に優れる構成となる。
【0032】
本発明の請求項13記載の太陽光発電システム用反射体は、請求項12記載の太陽光発電システム用反射体であって、
前記オレフィン系樹脂は、低密度ポリエチレンおよび直鎖状低密度ポリエチレンの少なくとも一種からなることを特徴とする。
【0033】
この太陽光発電システム用反射体では、防草層の構成をエチレン系樹脂シートの中でも柔軟性・施工性に優れたものとすることができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明に係る請求項1記載の太陽光発電システム用反射体によれば、両面入射型太陽光発電パネルの下面の発電面に対して、光反射率の高いシート材を具備した反射体にて、太陽光の直射光及び散乱光を反射させて入射させることから、発電効率を向上させ、発電量を向上させることできる効果がある。そして、発電量の向上により、太陽光発電パネルの設置数を削減でき、敷地面の削減を促進することが可能となる。
また、反射体には、敷地面に接する防草層を備えていることで、敷地面からの雑草の発生を抑制することとなり、これにより雑草の抜去などのメンテナンス作業の削減、及びそのコストを削減することができる。
さらに、この反射体によれば、平坦でない地面に設置する場合においても、反射面が平坦或いは平坦に近いなだらかな面となるため、反射率が低下せず、太陽光発電パネルの下面の発電面に入射する光が減少しない。
【0035】
本発明に係る請求項2記載の太陽光発電システム用反射体によれば、光反射面が白色で構成されることで、太陽光の直射光や散乱光のうち、発電に用いられる波長の光を下面発電面に良好に反射光として入射させることができ、発電効率を向上させることができる。
【0036】
本発明に係る請求項3記載の太陽光発電システム用反射体によれば、光反射面が金属層で構成されることで、太陽光の直射光や散乱光を下面発電面に良好に反射光として入射させることができ、発電効率を向上させることができる。
【0037】
本発明に係る請求項4記載の太陽光発電システム用反射体によれば、太陽光のうち可視光~短波長側の近赤外線領域の光を反射させ、遠赤外線領域側の光反射率が低いことから、太陽光発電パネルの温度上昇を防ぐことができ、発電効率を低下させることがない効果を得られる。
【0038】
本発明に係る請求項5記載の太陽光発電システム用反射体によれば、反射体の表面に遮水性を備えることにより、反射体の表面に雨水が留まらず、反射体の外方へと導くことができ、これにより反射層の表面が汚れにくく、メンテナンスの頻度を抑えることが可能となる。
【0039】
本発明に係る請求項6記載の太陽光発電システム用反射体によれば、敷地面に敷設される反射体に透水性を備えることで、雨水を通過させ敷地面へと導き、反射体の表面に雨水が留まらないようになる。これにより、発電効率を低下させることがない効果を得られる。
【0040】
本発明に係る請求項7記載の太陽光発電システム用反射体によれば、紫外線劣化防止層によって、反射層の紫外線劣化を防ぎ、すなわち太陽光に含まれる紫外線領域の光の照射による劣化を防ぎ、反射体の寿命を延ばして、交換間隔やメンテナンス間隔を延ばすことができる。
【0041】
本発明に係る請求項8記載の太陽光発電システム用反射体によれば、光反射層が白色で構成されることとなり、太陽光の直射光や散乱光のうち、発電に用いられる波長の光を下面発電面に良好に反射光として入射させることができ、発電効率を向上させることができる。
【0042】
本発明に係る請求項9記載の太陽光発電システム用反射体によれば、反射層が機械的強度に優れる構成となる。
【0043】
本発明に係る請求項10記載の太陽光発電システム用反射体によれば、反射層の構成をエチレン系樹脂シートの中でも柔軟性・施工性に優れたものとすることができる。
【0044】
本発明に係る請求項11記載の太陽光発電システム用反射体によれば、防草層を黒色のシート体とすることで、不織布よりも密度が大きくでき、雑草に体積当たりの重量ストレスを効率的に与えることができて、雑草の枯死を促進する。
【0045】
本発明に係る請求項12記載の太陽光発電システム用反射体によれば、防草層が機械的強度に優れる構成となる。
【0046】
本発明に係る請求項13記載の太陽光発電システム用反射体によれば、防草層の構成をエチレン系樹脂シートの中でも柔軟性・施工性に優れたものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【
図1】本発明の第一の実施形態に係る太陽光発電システムの概略斜視図である。
【
図2】本発明の第二の実施形態に係る太陽光発電システムの概略斜視図である。
【
図3】太陽光発電システムの一部拡大側面図である。
【
図4】太陽光発電システムの作用を示す一部拡大概略側面図である。
【
図5】反射シートの一例における分光反射測定の試験結果である波長と光反射率の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下、本発明に係る第一の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る太陽光発電システムの概略を示す斜視図である。
本実施形態に係る太陽光発電システム1は、太陽光発電パネル2と、架台3と、反射体4と、を主要な構成として有する。
【0049】
太陽光発電パネル2は、複数の太陽電池セルを一体化しモジュール化して構成されたもので、本実施形態では、表裏両面に太陽電池セルが設けられ、発電面が両面となる両面入射型太陽光発電パネルよりなる。
図1に示すように、太陽光発電パネル2は縦横に複数並列されるとともに横方向に長尺となって連結され、後述する架台3に載置されることで太陽電池アレイ5を構成し、この太陽電池アレイ5が奥行方向に複数列となって所望の広さの敷地に配置される。この太陽電池アレイ列は、所謂メガソーラー(大規模太陽光発電)を構成し、すなわち、少なくとも1MW以上の出力を得られる数の太陽光発電パネル群となる。
【0050】
各太陽電池アレイ5同士は、所定の間隔を空けて配置される。この間隔は、複数列となって設置される各太陽電池アレイ5の太陽光発電パネル2の上面発電面6が互いに太陽光の直射光の影とならないように、且つ、メンテナンスなどの際に作業者が十分に通り抜けられる間隔とされる。
【0051】
太陽光発電パネル2としては、様々な構成のものがあるが、例えば、ジンコソーラー社製Swanシリーズや、JAソーラー社製MBB両面PERCハーフセルダブルガラスモジュール、トリナソーラー社製Duomax Twin、カナディアンソーラー社製HiKu5シリーズ、ロンジソーラー社製LR4-72HBDシリーズ、ハンファQセルズ社製Q.PEAK DUO、ライセンエネルギー社製ダブルガラス両面発電単結晶PERCモジュール、Golden Concord Holdings Limited(GCL)製GCL-M6/72GDなどが好適に用いられ、いずれも裏面である下面発電面12による発電で1枚あたりの発電量がおよそ20%増加するものである。
【0052】
図3は、太陽光発電システムの一部拡大側面図である。
太陽電池アレイ5は、上述した太陽光発電パネル2と、この太陽光電池パネル2を上部に載置する架台3とで構成され、敷地面7に配設される。
【0053】
架台3は、支柱8と横架材9と連結ブラケット10等で構成され、それぞれがボルトや溶接などの手段で連結固定される。また、架台3は、地面7に設置される基礎11によって固定される。
【0054】
架台3は、太陽光発電パネル2が連結ブラケット10にて固定され、太陽光発電パネル2の発電面が水平から例えば30°程度に傾斜して設けられる。この傾斜角度は、設置場所の緯度や環境などの条件により考慮され決定されるが、例えば、日本など北半球の高緯度地域では、上面の発電面6を南に向けて傾斜し、架台3に固定される。
架台3の高さは、敷地面7から、傾斜したパネル2の下端縁2aまでの高さを0.8m以上となるよう設定され、架台3の下部に十分な空間を確保している。この空間は、太陽光発電パネル2の下面発電面12のための光通過空間13となる。
【0055】
反射体4は、架台3の下部で太陽光発電パネル2の下面の発電面12に対向して敷地面7に配設される。
反射体4は、シート状であり、上面となる反射層14と、下面となる防草層15とで構成され、これら各層が一体化された積層構成となっている。
【0056】
第一の実施形態においては、反射体4を構成する反射層14の表面が遮水性を有する。
反射層14は、太陽光の直射光及び散乱光のうち、発電に用いられる波長の光を反射させる光反射率の高い色のシート素材よりなり、本実施形態では表面を白色で構成した反射シートとされる。この反射シートは、厚みが0.5~3.0mm、好ましくは1.0mmや1.5mmの樹脂製シートやゴムシートなど、柔軟な素材よりなり、例えば、樹脂製シートの素材としては、ポリエチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート、塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、フッ素樹脂、ナイロン樹脂などとされる。そして、表面が白色とされ、反射シート自体の素材としての白色、或いは表面を白色の塗膜などとされている。
この遮水性を備えた反射シートは、遮水係数が1.0×10-11 m/sec以下とされ、良好に雨水や水滴を表面から外方へ導くことが可能である。ここで「遮水係数」は、日本遮水工協会が定める遮水シートの自主規格における「透水係数」のことであるが、本発明においては後述する透水係数と混同するおそれがあるため、「遮水係数」と記載する。この遮水係数は、JIS Z 0208「防湿包装材料の透湿度試験方法(カップ法)」に準拠し、透湿度を求めた後、「遮水工技術・管理マニュアル」(日本遮水工協会発行:2019年5月版)の「6.4.8 透水係数の算出」に記載の算出式により得られ、上記した数値によれば透水性が低く、すなわち遮水性が高いことが分かる。
【0057】
反射シートの表面は、好ましくは撥水性を備えており、撥水性を有することで、雨水を弾き、反射シート表面から水滴を外方へ導き出しやすくなっている。また、反射シートは、耐薬品、耐熱、防火防炎、難燃、耐寒、耐放射線、熱伝導率、摩耗、摩擦、帯電防止などの機能を有していることが好ましい。さらに表面に透明な保護層を設けてもよい。なお、反射シートの表面に撥水性を備える構成は次のとおりである。例えば、一つ目の方法としては、反射シートに撥水剤を含有させる方法がある。二つ目の方法としては、反射シートの表面に撥水剤からなる表面処理剤の塗布を行う方法がある。
【0058】
ここで、上述した反射シート表面が光反射率の高い白色である点について、より具体的に述べると、太陽光発電パネル2の発電面は太陽光が照射されることで発電するが、発電面に対して太陽光の全波長域を受光する必要はなく、赤外線域は必要としない。一方、赤外線域の太陽光は、太陽光発電パネル2に対して発熱現象が起き、発電面が50℃を超えると発電効率を低下させる原因となる。
このことから、反射シートの表面において、太陽光のうち可視光~短波長側の近赤外線領域の光を反射させることが好ましく、例えば、反射シート表面を白色とするとともに、その表面に赤外線除去膜が設けられ、例えば1000nm以上の領域の近赤外線、遠赤外線を除去、或いは吸収するフィルターのような膜が設けられて、赤外線領域の光を太陽光発電パネル2へ反射しない構成とする。
また、太陽光に含まれる紫外線により反射シートが劣化しやすくなるため、反射シートの表層に紫外線吸収剤を配合させたり、紫外線劣化防止のコーティングを施して紫外線劣化防止層を設ける構成としてもよい。
【0059】
なお、上記のような反射シートとして、例えば、太陽光のうち500~1000nmの波長の光反射率が70%以上であり、2300nm以上の波長の光反射率が低いとともに、5000~20000nmの波長の平均光反射率が15%以下、好ましくは5000~20000nmの波長の平均光反射率が10%以下と低く、短波長赤外線~中波長赤外線、そして長波長赤外線(熱赤外線)や遠赤外線と言われる帯域の光が反射されない特性を備えたシートが好適であり、また、例えば、反射シート表面を白色とするとともに、その表面に赤外線除去膜が設けられ、好ましくは1000nm以上の領域の近赤外線、遠赤外線を除去、或いは吸収するフィルターのような膜が設けられて、赤外線領域の光を太陽光発電パネル2へ反射しない構成としてもよい。
【0060】
具体的な反射シートとしては、例えば、表面に白色顔料を有する白色層、裏面に黒色顔料を有する黒色層からなるオレフィン系樹脂で構成されるタキロンシーアイ株式会社製ビノンメタロバリアーSLS(商品名)が好適に用いられる。この場合、反射シート自体も遮光率が99%程度であり、防草効果も期待できる。
【0061】
この反射シート(ビノンメタロバリアーSLS(商品名))によるJIS R 1693-2:2012に準拠したフーリエ変換赤外分光光度計(FTIR)による分光反射測定の試験結果を以下に示す。
[試験装置]
・FTIR装置(Perkin Elmer製System2000型)
・積分球:(Labsphere製 RSA-PE-200-ID)球内部は金によりコーティング
・積分球入射口径:φ16mm
・測定部口径:φ24mm
[測定条件]
・測定領域:370~7800cm
-1(有効範囲400~6000cm
-1)
・積算回数:200回
・光源:MIR
・検出器MIR-TGS
・分解能:16cm
-1
・Beam splitter:optimized KBr
・光源から検出器までの光路には、N
2 ガスを充満させパージを行った。
[条件]
・室温にて反射スペクトルを測定した。
なお、積分球を使用して測定した。
これら測定はJIS R 1693-2:2012に準拠する。
[測定結果]
図5に室温での分光反射率スペクトルを波長と光反射率の関係としてグラフにて示す。この
図5に示される通り、5000~20000nmの波長の平均光反射率が10%以下と低く、短波長赤外線~中波長赤外線、長波長赤外線(熱赤外線)や遠赤外線と言われる帯域の光が反射されない特性が分かる。
【0062】
防草層15は、遮光性の高い防草シートよりなり、例えば不織布が用いられる。
この防草層15となる防草シートは、熱ストレス、重量ストレス、光合成阻害によるストレス、という環境ストレスを雑草に与えて、雑草の枯死を促進するシート材である。
このような防草シートは、具体的な素材としては、ポリエステル繊維などの長繊維不織布や、ポリエチレン繊維、ポリアミド繊維、アラミド繊維、アクリル繊維、炭素繊維、ポリウレタン繊維、綿糸、毛糸、絹糸、麻、羊毛、などが素材とされ、これらを単体で、或いは2種以上を組合せて形成されるものとされる。また、防草シートには透水性を有さない樹脂製シートを用いてもよい。反射体4を平坦でない地面へ設置する場合には、地面の凹凸により反射層14が破損しないようクッション性の高い織布や不織布を用いることがより好ましい。
【0063】
上記のような防草シートとしては、例えば、不織布であって、波長400nm以上700nm以下の範囲で1nm毎に測定した各波長の光透過率が10%以下、突刺抵抗10~30N、目付量が100~400g/m2 とされるものが好ましい。
透水性を有さない樹脂製シートとしては厚みが0.5~3.0mm、好ましくは1.0mmや1.5mmの樹脂製シートやゴムシートなど、柔軟な素材よりなり、例えば、樹脂製シートの素材としては、ポリエチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート、塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、フッ素樹脂、ナイロン樹脂などとされる。
【0064】
具体的な防草シートとしては、例えば、不織布としては以下の3つが挙げられる。
<例1>
例えば、単位面積あたりの質量が150~260g/m2 、厚さ0.4~0.6mm、密度0.4g/cm3 、引張強度縦方向290~790N/5cm、引張強度横方向190~500N/5cm、伸度縦方向15~30%、伸度横方向15~25%、引裂強度縦方向80N、引裂強度横方向100N、透水係数8.0×10-5~1.0×10-4m/sec、突刺抵抗17~20N、遮光率95%という特性データを有する東レ株式会社製アクスター・マントル防草シート(商品名)が好適に用いられる。
<例2>
また、この防草シートとしては、一般的に太陽光を遮る能力である遮光率が95%以上とされるシートとされ、例えば、重さ約310g/m2 、0.7kPa押圧時の厚さ約3.8mm、2kPa押圧時の厚さ約3.5mm、引張強さ縦方向約1200N/5cm、引張強さ緯方向約920N/5cm、縦方向伸び率約70%、横方向伸び率約80%、引裂強さ縦方向約250N、引裂強さ横方向約240N、水温15℃における透水係数4.4×10-3m/sec、破裂強さ約3200kPaとされる不織布よりなる東洋紡株式会社製9321N(商品名)が好適に用いられる。
<例3>
目付が2kg/m2 以上とされて、雑草に対して重量ストレスを与え、波長400nm以上800nm以下の範囲で1nm毎に測定した各波長の光透過率が10%以下で、太陽光を吸収し除草シートの下の雑草の光合成を抑制する、太陽光を吸収して防草シート自体の温度を上昇させて、防草シートの下の雑草に対して熱ストレスを与えるようなものが好ましい。
【0065】
そして、反射層14である反射シートを表面に、防草層15である防草シートを裏面として、一体化させ、積層構造としてシート状の反射体4を得る。
反射シートと防草シートとの一体化としては、押出成型装置を用いて、両シートを2層一体となるよう共押出成型させる工程で反射体4として得る方法や、反射シートと防草シートとをラミネート装置を用いる熱ラミネートにて積層一体化させる方法などとされる。さらに、反射シートと防草シートとを熱プレス装置にて熱圧着させる方法、或いは反射シートと防草シートとを接着剤などを用いて全面を接着、点状や線状に接着などとして貼り合わせて一体化し、反射体4としてもよい。
【0066】
このシート状の反射体4は、例えば、幅長1.0~2.5m、長さ10~100mに形成されて、巻回状態などで製造され保管、そして運搬される。そして、反射体4の敷設時には巻回状態から巻き戻され、敷地面7に展開されて、また幅方向に複数並列されて互いを接続し固定させることで、敷地面7を隙間無く覆うようになっている。
【0067】
次に、本発明に係る第二の実施形態について
図2を参照して説明する。
図2は、本発明の第二の実施形態に係る太陽光発電システムの概略斜視図である。
第二の実施形態においては、太陽光発電パネル2と、架台3は第一の実施形態と同様のものを用いることが可能である。
【0068】
第二の実施形態においては、反射体4を構成する反射層14が透水性を有する。
反射層14が透水性を有することにより、雨水を敷地面に速やかに浸透させることが可能となる。このような透水機能を有する反射シートには、織布または不織布、或いは遮水性を有する樹脂製シートやゴムシートに多数の穿孔部16が貫通形成される構成が用いられる。穿孔部16が形成されることで、反射シートは、その厚み方向に透水性を有した構造となる。穿孔部16は、通水性の良好な内径よりなる貫通孔とされ、一部または全面に形成される。
【0069】
反射層14は、太陽光の直射光及び散乱光のうち、発電に用いられる波長の光を反射させる光反射率の高い色のシート素材よりなる。
具体的な不織布の素材としては、ポリエステル繊維などの長繊維不織布や、ポリエチレン繊維、ポリアミド繊維、アラミド繊維、アクリル繊維、炭素繊維、ポリウレタン繊維、綿糸、毛糸、絹糸、麻、羊毛、などが素材とされ、これらを単体で、或いは2種以上を組合せて形成されるものとされる。
また、波長400nm以上700nm以下の範囲で1nm毎に測定した各波長の光透過率が10%以下、突刺抵抗10~30N、目付量が100~400g/m2 とされるものが好ましい。
上述の穿孔部16を具備する遮水性を有するシートとしては、厚みが0.5~3.0mm、好ましくは1.0mmや1.5mmの樹脂製シートやゴムシートなど、柔軟な素材よりなり、例えば、樹脂製シートの素材としては、ポリエチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート、塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、フッ素樹脂、ナイロン樹脂などとされる。
【0070】
防草層15は、遮光性の高い防草シートを用いることが好ましい。例えば不織布が用いられる。
具体的な素材としては、ポリエステル繊維などの長繊維不織布や、ポリエチレン繊維、ポリアミド繊維、アラミド繊維、アクリル繊維、炭素繊維、ポリウレタン繊維、綿糸、毛糸、絹糸、麻、羊毛、などが素材とされ、これらを単体で、或いは2種以上を組合せて形成されるものとされる。
不織布の他にエンボス型立体構造シートやネットなどの立体網状体を排水芯材として、不織布と一体化して用いることもできる。
十分な防草効果を得るには遮光性のため防草層を構成する少なくともひとつの層は黒色などの濃い色で構成されることが好ましい。もっとも、反射層の遮光性が十分である場合には防草シートが遮光性を有する必要はない。
【0071】
具体的な防草シートとしては、例えば、不織布としては以下の3つが挙げられる。
<例1>
例えば、単位面積あたりの質量が150~260g/m2 、厚さ0.4~0.6mm、密度0.4g/cm3 、引張強度縦方向290~790N/5cm、引張強度横方向190~500N/5cm、伸度縦方向15~30%、伸度横方向15~25%、引裂強度縦方向80N、引裂強度横方向100N、透水係数8.0×10-5~1.0×10-4m/sec、突刺抵抗17~20N、遮光率95%という特性データを有する東レ株式会社製アクスター・マントル防草シート(商品名)が好適に用いられる。
<例2>
また、この防草シートとしては、一般的に太陽光を遮る能力である遮光率が95%以上とされるシートとされ、例えば、重さ約310g/m2 、0.7kPa押圧時の厚さ約3.8mm、2kPa押圧時の厚さ約3.5mm、引張強さ縦方向約1200N/5cm、引張強さ緯方向約920N/5cm、縦方向伸び率約70%、横方向伸び率約80%、引裂強さ縦方向約250N、引裂強さ横方向約240N、水温15℃における透水係数4.4×10-3m/sec、破裂強さ約3200kPaとされる不織布よりなる東洋紡株式会社製9321N(商品名)が好適に用いられる。
<例3>
目付が2kg/m2 以上とされて、雑草に対して重量ストレスを与え、波長400nm以上800nm以下の範囲で1nm毎に測定した各波長の光透過率が10%以下で、太陽光を吸収し除草シートの下の雑草の光合成を抑制する、太陽光を吸収して防草シート自体の温度を上昇させて、防草シートの下の雑草に対して熱ストレスを与えるようなものが好ましい。
【0072】
そして、反射層14である反射シートを表面に、防草層15である防草シートを裏面として、一体化させ、積層構造としてシート状の反射体4を得る。
反射シートと防草シートとの一体化としては、反射シートと防草シートとをラミネート装置を用いる熱ラミネートにて積層一体化させる方法、反射シートと防草シートとを熱プレス装置にて熱圧着させる方法、反射シートと防草シートとを接着剤などを用いて全面を接着、点状や線状に接着などとして貼り合わせて一体化する方法、或いはニードルパンチなどによって一体化する方法により反射体4としてもよい。
【0073】
このシート状の反射体4は、例えば、幅長1.0~2.5m、長さ10~100mに形成されて、巻回状態などで製造され保管、そして運搬される。そして、反射体4の敷設時には巻回状態から巻き戻され、敷地面7に展開されて、また幅方向に複数並列されて互いを接続し固定させることで、敷地面7を隙間無く覆うようになっている。
【0074】
本実施形態における反射体4は全体として一定の透水性が必要とされる。反射体4の表面から裏面への透水性を透水係数として表すことができ、1.0×10-5~1.0m/secとされ、良好に雨水などをシート下面に導くこととなる。さらに透水係数が5.0×10-5~1.0m/secとされるものが好ましい。透水係数が下限値以上であれば、雨水をシート下面に導く効果が高まる。また、透水係数が上限値以下であれば反射体の重量ストレスが十分発揮され、良好な防草効果を得ることができ、さらに地面の凹凸に対するクッション性も得ることができる。この透水係数は、JIS A 1218「土の透水試験方法」に準拠する方法で測定することができる。
【0075】
この反射体4には、黒色のエンボス型立体構造シートを排水芯材とし、長繊維スパンボンド不織布を保護材として層状に一体に構成した通水性、耐薬品性の優れたシート材、例えばダイプラ株式会社製・ジオフロー(商品名)などのシート材を用いることができる。また、ネットなどの立体網状体を上下から不織布で挟んで構成されたシートを基材として構成してもよい。
【0076】
次に、本発明に係る第三の実施形態について説明する。
なお、この第三の実施形態において、上述した第一の実施形態で示した部位と同等の部材には同一の符号を付すとともに
図1を参照し説明する。
この第三の実施形態は、上述した第一の実施形態と同様に、反射体4は、架台3の下部で太陽光発電パネル2の下面の発電面12に対向して敷地面7に配設される。
反射体4は、シート状であり、上面となる反射層14と、下面となる防草層15とで構成され、これら各層が一体化された積層構成となっている。
【0077】
反射層14は、太陽光の直射光及び散乱光のうち、発電に用いられる波長の光を反射させる光反射率の高い白色などの色の素材よりなり、樹脂製シートやゴムシートなど柔軟な素材で構成される反射シートとされる。
また防草層15は、遮水性、遮光性を備え、例えば黒色の素材よりなり、樹脂製シートやゴムシートなど柔軟な素材で構成される防草シートとされる。
そして、これら反射シートと防草シートとは積層一体化され、1枚のシート材とされ反射体4を構成する。
【0078】
反射体4は、厚さが1.0~2.0mmとされ、好ましくは1.0~1.3mmとされ、その厚みのうちの反射層14となる厚みが0.4mm程度が好ましい。
この第三の実施形態においても、反射体4を構成する反射層14の表面が遮水性を有した構成となり、遮水係数が1.0×10-11 m/sec以下とされ、良好に雨水や水滴を表面から外方へ導くことが可能となる。また、反射層14と防草層15とは、ともに遮光性を有しており、防草効果を得ることが可能となる。
【0079】
この第三の実施形態における反射層14を構成する樹脂素材としては、熱可塑性樹脂とオレフィン系樹脂と白色顔料とを所定の重量%で配合したものである。
熱可塑性樹脂としては、オレフィン系樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ゴム、熱可塑性エラストマ、ポリスチレン樹脂、フッ素樹脂、ナイロン樹脂などとされ、好ましくは、オレフィン系樹脂であり、より好ましくは、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンである。
オレフィン系樹脂としては、低密度ポリエチレン、チーグラー触媒を使用した直鎖状低密度ポリエチレン、メタロセン触媒を使用した直鎖状低密度ポリエチレン等のエチレン系樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ホモポリプロピレン、ランダムプロピレン共重合体等のポリプロピレン樹脂などとされる。特にメタロセン触媒を使用した直鎖状低密度ポリエチレンを少なくとも1種以上用いることが好ましい。
白色顔料としては、酸化チタン、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、酸化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸バリウム、シリカ、アルミナ、カオリン、クレー、タルク、白土、水酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、白色中空樹脂エマルジョンなどとされ、好ましくは、酸化チタンとされる。
なお、この反射層14には、上記樹脂や顔料の他に、耐候剤、例えば紫外線吸収剤や光安定剤が配合される。
【0080】
防草層15を構成する樹脂素材としては、熱可塑性樹脂とオレフィン系樹脂と黒色顔料とを所定の重量%で配合したものである。
熱可塑性樹脂及びオレフィン系樹脂については、上記反射層14を構成する樹脂素材と同等とされる。
黒色顔料としては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャネルブラック等のカーボンブラック類、銅酸化物、鉄酸化物等の金属類、アニリンブラック等の有機顔料などとされ、好ましくは、カーボンブラック類とされる。
【0081】
そして、反射層14となる反射シートを表面に、防草層15となる防草シートを裏面として、一体化させ、積層構造としてシート状の反射体4を得る。一体化された反射体4は、表面が白色であり裏面が黒色のシート材となる。
反射シートと防草シートとの一体化としては、押出成型装置を用いて、両シートを2層一体となるよう共押出成型させる工程で反射体4として得る方法や、反射シートと防草シートとをラミネート装置を用いる熱ラミネートにて積層一体化させる方法などとされる。さらに、反射シートと防草シートとを熱プレス装置にて熱圧着させる方法、或いは反射シートと防草シートとを接着剤などを用いて全面を接着、点状や線状に接着などとして貼り合わせて一体化し、反射体4としてもよい。
【0082】
このシート状の反射体4は、例えば、幅長1.0~2.5m、長さ10~100mに形成されて、巻回状態などで製造され保管、そして運搬される。そして、反射体4の敷設時には巻回状態から巻き戻され、敷地面7に展開されて、また幅方向に複数並列されて互いを接続し固定させることで、敷地面7を隙間無く覆うようになっている。
【0083】
また、防草層15として、さらに第一の実施形態と同様に不織布を積層する構成としてもよい。その場合、重さ約310g/m2 、0.7kPa押圧時の厚さ約3.8mm、2kPa押圧時の厚さ約3.5mm、引張強さ縦方向約1200N/5cm、引張強さ緯方向約920N/5cm、縦方向伸び率約70%、横方向伸び率約80%、引裂強さ縦方向約250N、引裂強さ横方向約240N、水温15℃における透水係数4.4×10-3m/sec、破裂強さ約3200kPaとされる不織布が好適に用いられる。この不織布よりなる防草層が構成される場合には、上述した第一の実施形態と同様に、反射層14を表面に、不織布を裏面として、接合法として、熱プレス法、熱エンボス接着法、ホットメルト接着剤による接着、超音波接着法、高周波接着法などを用いて貼り合わせて一体化させ、積層構造としてシート状の反射体4を得る。
【0084】
第三の実施形態である反射シートと防草シートとが積層一体化された1枚のシート材である反射体は、以下の物性を有することが好ましい。
【0085】
反射体は、引裂き強度が60N以上300N以下であることが好ましく、70N以上250N以下であることがより好ましい。また、90N以上200N以下であることがさらに好ましい。引裂き強度を下限値以上とすることで衝撃によって破れにくい反射体を得ることができる。引裂き強度を上限値以下とすることで反射体が柔軟性を有し、平坦でない地面に設置する場合においても、反射面が平坦或いは平坦に近いなだらかな面となることが可能である。
【0086】
反射体は上記したように幅方向の端部同士を重ね合わせて溶着接合体として用いられるが、その反射体同士の接合部せん断強度が70N/cm以上400N/cm以下であることが好ましい。さらに100N/cm以上300N/cm以下であることがより好ましい。この接合部せん断強度を下限値以上にすることで、施工時に重ね合わせ部分からシート同士が剥がれることが抑制される。また、接合部せん断強度を上限値以下とすることで、重ね合わせ部分が柔軟性を有し、平坦でない地面に設置する場合においても、反射面が平坦或いは平坦に近いなだらかな面となることが可能である。
【0087】
反射体は、引張強さが140N/cm以上1000N/cm以下であることが好ましく、200N/cm以上800N/cm以下であることがより好ましい。引張強さを下限値以上にすることで、反射体は十分な強度を有し、施工性に優れる。また、引張強さを上限値以下にすることで、反射体が柔軟性を有し、平坦でない地面に設置する場合においても、反射面が平坦或いは平坦に近いなだらかな面となることが可能である。
さらに、この反射体を長期間使用した状態、すなわち長期耐候後の引張強さが100N/cm以上1000N/cm以下であることが好ましく、200N/cm以上800N/cm以下であることがより好ましい。長期耐候後の引張強さを上記範囲にすることで反射体が十分な耐候性を有し、長期間にわたり強度と柔軟性のバランスを保つことが可能となり、交換頻度を低減することができる。
【0088】
反射体は、引張破断時の伸びが300%以上1000%以下であることが好ましく、400%以上900%以下であることがより好ましい。600%以上800%以下であることがさらに好ましい。引張破断時の伸びを下限値以上にすることで、反射体は柔軟性を有し、平坦でない地面に設置する場合においても、反射面が平坦或いは平坦に近いなだらかな面となることが可能である。また、引張強さを上限値以下にすることで、反射体が十分な強度を有し、施工性に優れる。
さらに、この反射体を長期間使用した状態、すなわち長期耐候後の引張破断時の伸びが250以上1000%以下であることが好ましく、400%以上900%以下であることがより好ましい。500%以上800%以下であることがさらに好ましい。長期耐候後の引張破断時の伸びを上記範囲内にすることで反射体が十分な耐候性を有し、長期間にわたり強度と柔軟性のバランスを保つことが可能となり、交換頻度を低減することができる。
【0089】
反射体は、長期間使用した状態、すなわち長期耐候後の可視光反射率が55%以上であることが好ましく、65%以上であることがより好ましい。70%以上であることがさらに好ましい。長期耐候後の可視光反射率が上記数値以上とすることで反射体が十分な耐候性を有し、長期間にわたり太陽光発電パネルの下面の発電面に効率よく反射光を入射させることができ、発電効率を維持することができる。
【0090】
反射体は、使用する前後、すなわち長期耐候状態となる以前と長期耐候後における赤外線反射率が1%以上15%以下であることが好ましく、3%以上10%以下であることがより好ましい。長期耐候の前後における赤外線反射率を上記範囲内にすることで赤外線領域の波長の光による太陽光発電パネルが発熱するのを抑制し、発電効率の低下を防ぐことができる。
【0091】
以下、第三の実施形態の実施例について説明する。
なお、以下に説明する実施例において、反射層14と防草層15とをそれぞれ構成する配合剤について、熱可塑性樹脂をPE1、オレフィン系樹脂をPE2、白色顔料をW-MB、黒色顔料をB-MB、耐候剤をUV-MBと略して説明する。
【0092】
[配合剤]
実施例に用いた配合剤は以下の通りである。
・PE1=融点:98℃、MFR:2.0g/10min(JIS K 7210-1、温度190℃、荷重2.16kg)、密度:0.908g/cm3のメタロセン直鎖状低密度ポリエチレン
・PE2=融点:111℃、MFR:0.35g/10min(JIS K 7210-1、温度190℃、荷重2.16kg)、密度:0.922g/cm3 の高圧法低密度ポリエチレン、物性項目として、基本物性のMFRが0.35g/10min(JIS K 7210-1、温度190℃、荷重2.16kg)、密度が922kg/m3 、機械的性質として、引張破壊応力が20MPa、引張破壊伸びが650%、引張衝撃強度が470KJ/m2 、曲げ剛性率が225MPa、デュロメータ硬さが55D、環境応力亀裂抵抗が9Hr、熱的性質として、ビカット軟化温度が97℃、融解温度(DSC)が111℃、とされ、無添加、高強度の特徴を有する
・W-MB=密度:2.5g/cm3 の二酸化チタン83wt%含有ポリエチレンマスターバッチ
・UV-MB=融点:110℃、密度:0.995g/cm3 のヒンダードアミン系光安定剤(コハク酸ジメチル・1-(2ヒドロキシエチル)-4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジン重縮合物)20wt%含有ポリエチレンマスターバッチ
・B-MB=カーボンブラック40wt%含有低密度ポリエチレンマスターバッチ
【0093】
[製造手順]
<実施例1>
反射層14としてPE1を59重量%、PE2を27重量%、W-MBを9重量%、UV-MBを5重量%混合し、防草層15としてPE1を75重量%、PE2を19重量%、B-MBを6重量%混合した。それぞれ別の押出機に投入し、共押出法にて反射層14が0.40mm、防草層15が0.74mmである総厚さ1.14mmの反射体を製造した。
<実施例2>
上記と同様の手順で、PE1を45重量%、PE2を36重量%、W-MBを9重量%、UV-MBを10重量%として、反射層14が0.40mm、防草層15が0.74mmである総厚さ1.14mmの反射体を製造した。
<実施例3>
上記と同様の手順で、反射層14としてPE1を73重量%、PE2を18重量%、W-MBを9重量%混合し、UV-MBは配合しなかった。また、防草層15としてPE1を74重量%、PE2を18重量%、B-MBを8重量%混合した。反射層14が0.31mm、防草層15が1.19mmである総厚さ1.5mmの反射体を製造した。
これら実施例のそれぞれの配合を表1に示す。
【0094】
【0095】
[評価]
上記製造手順にて製造した3つの実施例の反射体を下記項目に従い評価した。その結果を表2に示す。
<試験項目1:引裂き強度>
各実施例の反射体を用いて、「遮水工技術・施工管理マニュアル」(日本遮水工協会発行:2019年5月版)の「6.合成ゴムおよび剛性樹脂系遮水シート試験方法」に記載の「6.6引裂試験」に準拠して引裂き強度を測定した。
【0096】
<試験項目2:シート同士の接合部せん断強度>
各実施例において製造した反射体をそれぞれ2枚用意し、これら2枚の反射体の端部同士を120mmの重ね代幅で重ね、ライスター社製ツイニー型自動溶着機を用いて、500℃の熱風を当てながらロール(15mm×2列の押圧部を有する)で加圧し、溶着接合体を得た。その後、室温まで冷却した。この重ね代の位置で、重ね代を中心に重ね方向に長さ250mm、幅25mmに裁断し得られた帯状の各実施例ごとのサンプルを用いて、引張速度200mm/minの破断時の最大荷重を測定した。
以下の式より引張強さを計算し、シート同士の接合部せん断強度とした。
引張強さ(N/cm)=最大荷重(N)÷サンプル片の幅(cm)
【0097】
<試験項目3:引張強さ・試験項目4:引張破断時の伸び>
各実施例の反射体を用いて、「遮水工技術・施工管理マニュアル」(日本遮水工協会発行:2019年5月版)の「6.合成ゴムおよび剛性樹脂系遮水シート試験方法」に記載の「6.5引張試験」に準拠して引張強さおよび引張破断時の伸びを測定した。
なお、サンプルは暴露試験(長期耐候試験)の前後で採取し、それぞれ測定をおこなった。暴露試験は以下のとおり。
暴露試験:スガ試験機株式会社製のサンシャインウェザーメーター(型番:サンシャインウェザーメーターS80BBR)を用いてJIS A 1415-1999及びJIS K 7350-4-1996に準拠し、下記条件で試験をおこなった。
・試験条件
ブラックパネル温度:63±3℃
相対湿度:50±5%
サンプル表面の放射照度:255±10%w/m2 (波長域300~700nm)
水噴霧サイクル:水噴射18±0.5分、水噴射停止102±0.5分
照射時間:3000時間
【0098】
<試験項目5:可視光(360~830nm)反射率>
各実施例の反射体を上記暴露試験したサンプルを20×20mmに裁断し得られたサンプルを用いて、日立ハイテクサイエンス製の分光光度計(UH4150)を使用し、積分球を用いて波長190~2500nmの範囲における反射層14の全反射率を測定した。酸化アルミニウム(Al2O3白板)を標準試料として波長範囲360~830nmにおける全反射率を平均し、これを可視光反射率とした。測定はN=3で実施した。
(可視光反射率測定の使用装置)
・φ60mm積分球使用、内面塗布スペクトラロン
・波長範囲:190~2500nm
・スキャンスピード:600nm/min
・スリット幅:5nm
・サンプリング間隔:5nm
・測定環境:室温(25℃)、大気中
・使用機器:日立分光光度計:UH4150(日立ハイテクサイエンス製)
【0099】
<試験項目6:赤外線(3.2~19.8μm)反射率
各実施例の反射体を20×20mmに裁断し得られたサンプルを用いて、パーキンエルマージャパン製のフーリエ変換赤外分光分析装置(Spotlight400)を用い、金ミラーを標準とした相対反射率を測定することにより、波長1.3~20.0μmの範囲における反射層の正反射率を測定した。赤外線領域3.2~19.8μmにおける正反射率を平均し、これを赤外線反射率とした。測定はN=3で実施した。なお、サンプルは上記暴露試験前後で採取し、それぞれ測定をおこなった。
(赤外線反射率の使用装置)
・金ミラーを標準とした相対反射率測定(正反射率測定)
・入射角度:23度
・スキャン回数:64回
・波長範囲:1.3~20.0μm(7800~500cm-1)
・光源:MIR
・検出器:MCT
・ビームスプリッタ:OptKBr
・サンプリング間隔:2cm-1
・測定環境:室温(20℃)、大気中
・使用機器:FT-IR Spotlight400(パーキンエルマー製)
【0100】
<試験項目7:反射層の外観>
各実施例の反射体を上記暴露試験したサンプルとして用い、反射層14をマイクロスコープにより倍率50倍で観測し、クラックの発生および剥離の発生具合を評価した。
◎:クラックの発生が見られない
○:クラックは発生するが反射層の剥離は生じない
×:クラックが多数発生し、反射層の剥離が生じる
【0101】
各実施例の反射体の上記した各評価結果を表2に示す。
【0102】
【0103】
暴露後の結果として、耐候剤(UV-MB)の配合が無い実施例3に比べ、耐候剤が配合されている実施例1及び実施例2の反射体の引張り強さ、引っ張り破断時の伸び、可視光反射率、赤外線反射率がそれぞれ低下せず、耐候性に優れていることがわかる。また、可視光反射率において、3000時間後の劣化促進状況を拡大写真にて確認したところ、実施例3では表面の状態としてクラックの発生が確認されたが、反射層14の剥離は生じず、いずれの反射体でも使用には問題がない。
一方、実施例1及び実施例2では顕著なクラックの出現が無く、このことから耐候剤の配合により劣化が抑止され、光反射率の低下を抑えられることが知見できた。すなわち、太陽光発電システムに用いる反射体4として好適である結果を得られた。
【0104】
なお、上述の反射体の構成では、表面となる反射層を構成する反射シートの表面を白色とした例で説明したが、この反射シートを構成する太陽光の直射光及び散乱光を反射させる光反射率の高い色のシート素材として、金属層を表面に形成してもよい。この金属層付反射シートは、表面が金属層による金属光沢色とされる。
【0105】
例えば、アルミ箔などの金属箔を表面に形成した金属箔付反射シートとして構成してもよい。この金属箔付反射シートでは、その基材として、例えば、上述した樹脂製シートとされ、この基材である樹脂製シートの一方の面となる表面に、厚さ0.5~1.0mmの金属箔を形成して構成される。
なお、金属箔とした場合に、太陽光を全反射してしまうことから、上述のように赤外線領域の光も反射することから熱対策が必要となる。このことから、光沢すなわち鏡面のような正反射とならないように艶消しコーティングを施したり、表面をシボ加工などの粗面として形成したり、上記同様に赤外線を除去、或いは吸収するフィルターやコーティングを備えることが好ましい。
【0106】
また、金属箔の他に、金属被膜を樹脂シートに成膜させる構成としても良く、蒸着や塗装、メッキなどの手段で反射面を形成することとしてもよい。
さらに、上記のアルミニウム以外に、酸化チタン、アルミナ、タルク、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、シリカ、マイカ粉、粉末ガラス、粉末ニッケル、粉末アルミニウムなどの粉末から選ばれる少なくとも1種の光反射剤を膜状に形成し、シルバー色から白色に近い色合いで構成してもよい。
また、上記した金属層等の表面に透明な保護膜をコーティングにより形成してもよい。この保護膜は、例えば、樹脂素材、例えばポリエチレン樹脂などよりなり、塗膜などとされ、撥水性や防汚性を備えるためにも好ましい構成となる。
【0107】
次に、上述した太陽光発電システム1の設置手順を説明する。
なお、以下に説明する手順は、既に旧来の太陽光発電システムが構築されており、これを本発明の太陽光発電システム1に置き換え、その敷地及び架台を再利用する、所謂リフォームの手順となる。
【0108】
先ず、敷地内の除草が行われる。敷地内では、太陽光発電パネルの下部、架台の下部に雑草が生えている場合があることから、これを刈り取るなどして除去作業が行われる。
次に、雑草の根を除去する。雑草は、根から再び生え伸びる可能性があるため、できるだけ土中の根を除去すべきである。また、ここで除草剤を撒くこととしてもよい。
【0109】
次に、架台3下への反射体4の敷設を行う。
架台3を構成する基礎11が地中に埋設状態であれば、その基礎11の部分に対応してシート状の反射体4をくり抜き、基礎11を避けながら敷地面7に敷設を行う。このときの反射体4は、防草層15を下向きに、反射層14を上向きにして、出来るだけ密着するように敷地面7を覆う。また、反射体4は、架台3が設置されている部分、及びその最外周よりもさらに外側へ約2m幅で敷きつめられる。反射体4は、所定の間隔でピン状の留め具17を貫通させて地面に固定される。なお、上記したように反射体4が巻回状態であれば、巻き戻しながら敷きつめ、幅方向には互いが接合されるように接着や溶着により固定を行う。
【0110】
次に、既存の太陽光発電パネルの撤去を行う。
架台3に接続され固定されている既存の太陽光発電パネルを架台3から取り外し、全て撤去を行う。このとき電気的に接続されている部分も抜去する。
【0111】
次に本実施形態の太陽光発電パネルである両面入射型太陽光発電パネル2を取り付ける。既に架台3は組み立てられていることから、架台3に対して新たな太陽光発電パネル2を載置し連結固定を順次行う。このとき、傾斜角度を改める必要があれば、その角度を調整し、固定する。
その後、各太陽光発電パネル2の電気的接続などを行い、完成となる。
【0112】
次に、上記した構成の作用を説明する。
本実施形態に係る太陽光発電システム1では、既存の片面のみの太陽光発電パネルを、両面入射型発電パネル2に置き換え、敷地面7に太陽光の直射光や散乱光を反射させる反射体4を敷設させることで、発電量を増やすことが可能となる。
【0113】
すなわち、既存の太陽光発電システムの太陽光発電パネルが、発電面が片面のみであり発電量が1枚あたり250Wである場合に、1000kW(1MW)を得るためには4000枚が必要であるが、本実施形態の場合、1枚あたり両面で320Wの発電量が得られる両面入射型太陽光発電パネル2であれば、同じ4000枚を設置することで、1280kWの発電量を得ることができ、定格出力発電量での比較であるが1.28倍の発電量の増加となる。
【0114】
このことから、置き換え以前と同様に1000kWの発電量を得るには、本実施形態での太陽光発電システム1の場合には上記の太陽光発電パネル2では3125枚で得ることが可能となり、つまり、太陽光発電パネル2の1枚あたりの大きさ(サイズ)はほぼ同じ寸法であることから、太陽光発電パネル2全体の合計面積として約22%減少させることが可能となる。
すなわち、再構築時に、設置面積、及び太陽光発電パネル2の枚数を減らして以前と同じ発電量を構成することができることとなり、以前の敷地を狭め縮小させて同程度の発電量を得ることが可能な太陽光発電システム1を構築することが可能となる。
【0115】
太陽光発電パネルは、実際に照射された太陽光エネルギーを電力エネルギーへどの程度変換できるか、その割合を変換効率として表す。
例えば、既存の片面発電型の太陽光発電パネルとして、SANIX社製SRM296P-72N(以下パネルAと称す)では定格出力が296Wで変換効率が15.2%であり、両面発電型の太陽光発電パネルとして、トリナソーラー社製TSM-440DEG17M(以下パネルBと称す)では定格出力が440Wで変換効率が19.9%である。このことから、パネルAに比べパネルBのほうが変換効率が向上しており、単位面積m2 あたりの発電量が多く、単体でみても省スペース化が図れることが判り、すなわち構築のためのコストを抑え削減することが可能となる。
【0116】
これらの太陽光発電パネル(上記パネルAとパネルB)を、合計の出力数を略同等として比較すると、パネルAでは18枚、パネルBでは12枚となり、パネルAによれば5328W、パネルBによれば5280Wである。これら数値には48Wの差異があるが、これをパネル出力あたりの発電量を比較するために、パネルAの実際の発電量2361WをパネルBに合わせ換算すると発電量は5280÷5328×2361=2339Wとなる。このパネルAの発電量=2339Wと、パネルBの実際の発電量3374Wと比較すると3374÷2339より144.2%の向上となることがわかる。
パネルBでは、裏面も発電する製品であり、本発明の反射体4を含む構成によって、さらに発電効率を向上させていることから、さらに省スペース化を図ることが可能であり、コスト削減の実現となる。
【0117】
両面入射型太陽光発電パネルは、片面のみ発電の太陽光発電パネルと比べて、両面の発電面によって発電量が30~50%程度向上が可能である。
このことから、太陽光発電システム1として、発電電力の売電収入を増額させることができるものである。
例えば、斜面日射量が3.5時間の場合1MW当たりの年間発電量が、上面の発電面のみで1,277,500kwhで有る場合に、FIT(固定価格買取制度)40円とすると、51,100,000円の売電収入となることが見込まれる。
そして、本発明の太陽光発電システム1、すなわち両面に発電面6,12を備え、反射体4を具備するシステムでの発電量30%増となると、66,430,000円の売電収入となって、差額15,330,000円の年間収益増となる。
このシステムにて15年間の売電期間が残っている場合、約2.3億円の売電増となる。
【0118】
図4は、太陽光発電システムの作用を示す一部拡大概略側面図である。
このように、本実施形態の太陽光発電システム1では、設置された両面入射型太陽光発電パネル2の上面の発電面6には太陽光の直射光が入射し、下面の発電面12には反射層14によって反射する太陽光の直射光及び散乱光の反射光が高反射率で入射して、これら両面の発電面6,12によって発電となる。反射体4は、架台3の下部の光通過空間13や、配置された架台3の外側周囲における敷地面7に敷設されていることで、所定の距離空間を介して太陽光発電パネル2の下面発電面12に対し、反射光が良好に当り、この下面発電面12による発電を促すこととなる。
【0119】
これにより本実施形態の太陽光発電システム1によれば、両面入射型太陽光発電パネル2によって、従来よりも発電量を向上させることができ、限られた敷地スペースで可能な限り多くの発電量を得る場合にも有効であり、環境に配慮した太陽光発電システム1を構築することができる。
【0120】
また、本実施形態の太陽光発電システム1の反射体4によれば、敷地面7の雑草の発生が防草層15によって抑制され、雑草の除去のために必要であった費用や人件費等、そのメンテナンスのための時間や費用を削減することができ、従来のような雑草による発電面への影響が無くなることで、発電量の低下を起こすことが無く、コストの大幅な削減となる。
【0121】
なお、上述した本実施形態の反射体4の構成として、単に白色の防草シートのみ単独で用いることとしても、太陽光の直射光や散乱光を良好に反射させることができず、十分な発電量を得ることはできないものである。また、十分な防草効果を得るためには、黒色などの濃い色で構成されなくては、雑草の枯死を促進させることができない。つまり、反射体として防草シートを単層で用いても、有効な量の太陽光を反射させることはできない。よって、単層の防草シートでは、本発明の反射層を兼ねることは不可能である。また、単なる防草シートは防汚性も十分に得られる構成ではなく、メンテナンスを考慮すると本発明のような太陽光発電システムに使用することができないものである。
【0122】
本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、実施形態の各構成を相互に組み合わせることや、明細書の記載、並びに周知の技術に基づいて、当業者が変更、応用することも本発明の予定するところであり、保護を求める範囲に含まれる。
【0123】
例えば上記の構成例では、既存の太陽光発電システム、すなわち、片面型太陽光発電パネルで構成されたシステムを、本発明の構成に置き換える場合を説明したが、この太陽光発電システム1では、新規に設置する場合でも良い。
この場合、敷地面7への反射体4の敷設から施工を始め、架台3の設置、両面入射型太陽光発電パネル2の取り付け、という手順で設置を終わらせることが可能となる。
このとき、設置される敷地7に対し、必要な発電量から算出して、太陽光発電パネル2の枚数を算出すればよく、従来よりも本発明の太陽光発電システム1では発電量が増すことから、敷地面積を少なくして構成させることが可能となる。
【0124】
また、反射体4の表面を、白色とした例としたが、この反射層14の色としては、上記の色に限定されることはなく、淡いグレー色、明度の高い色、色彩・色調などでも良く、太陽光の直射光や散乱光を良好に反射させる、すなわち光反射率の高いものとすることができれば良い。例えば、明るい緑色や、緑色をベースとした色、色彩・色調や、迷彩色など模様等があるものとすれば、周囲に木々などのある環境への違和感を減らしながら太陽光の直射光や散乱光を良好に反射することができ、太陽光発電パネル2の下面の発電面12に対して有効である。
【0125】
さらに、反射層14を構成する反射シートを、樹脂シートを基材に、金属層を表面に形成した例について述べたが、光反射が良好であれば良いことから、これに限定することはなく、たとえば、繊維に光沢剤が含浸されている織布や、添加されている織布、経糸や緯糸に光沢のある繊維を絡めて構成させる織布や、そのような繊維を用いた不織布など、シート状に形成されるものであれば良い。
【0126】
従って、本実施形態に係る太陽光発電システム1によれば、発電量を向上させることができ、敷地面積の削減、縮小を可能として、構築のコストを削減可能となる。また、雑草の抑制が行われることから、メンテナンスコストも削減できる。
【符号の説明】
【0127】
1…太陽光発電システム
2…両面入射型太陽光発電パネル(太陽光発電パネル)
3…架台
4…反射体
6…上面発電面
7…敷地面
12…下面発電面
13…光通過空間
14…反射層
15…防草層
16…穿孔部