(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024174038
(43)【公開日】2024-12-13
(54)【発明の名称】自動走行制御システム
(51)【国際特許分類】
G05D 1/43 20240101AFI20241206BHJP
G05D 1/648 20240101ALI20241206BHJP
G05D 1/81 20240101ALI20241206BHJP
G05D 1/248 20240101ALI20241206BHJP
A01B 69/00 20060101ALI20241206BHJP
G05D 1/246 20240101ALN20241206BHJP
【FI】
G05D1/43
G05D1/648
G05D1/81
G05D1/248
A01B69/00 303V
G05D1/246
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024166592
(22)【出願日】2024-09-25
(62)【分割の表示】P 2021205488の分割
【原出願日】2021-12-17
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】大久保 樹
(72)【発明者】
【氏名】久保田 祐樹
(57)【要約】
【課題】目標走行経路に沿った自動走行を精度良く行うことを目的とする。
【解決手段】目標走行経路TLに沿って自動走行を行う作業車の自動走行制御システムであって、作業車が手動走行した際の手動走行状況を取得する状況取得部50と、少なくとも機体の位置Pおよび走行方位に基づいて目標走行経路TLに沿って作業車が走行するように自動走行制御を行う走行制御部37とを備え、走行経路算出部35が生成する目標走行経路TLは、作業車があらかじめ手動走行した走行軌跡に基づいて生成された既走走行経路を含み、走行制御部37は、既走走行経路に沿って走行する際には、機体の位置Pに加えて前記手動走行状況に基づいて走行を制御する操舵考慮モードを有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
目標走行経路に沿って自動走行を行う作業車の自動走行制御システムであって、
前記作業車の機体の位置および走行方位を算出する機体位置算出部と、
前記作業車が手動走行した際の手動走行状況を取得する状況取得部と、
取得された前記手動走行状況を記憶する記憶部と、
前記目標走行経路を生成する走行経路算出部と、
少なくとも前記機体の位置および前記走行方位に基づいて前記目標走行経路に沿って前記作業車が走行するように自動走行制御を行う走行制御部とを備え、
前記走行経路算出部が生成する前記目標走行経路は、前記作業車があらかじめ前記手動走行した走行軌跡に基づいて生成された既走走行経路を含み、
前記走行制御部は、前記既走走行経路に沿って走行する際には、前記機体の位置に加えて前記手動走行状況に基づいて走行を制御する自動走行制御システム。
【請求項2】
前記手動走行状況は、前記手動走行した際の、操舵状況、車輪状況、および機体方位状況の少なくとも何れかを含み、
前記操舵状況は前記作業車に対する操向操作を受け付けるステアリングハンドルの操作角度であり、前記車輪状況は前記作業車が有する前輪の切れ角であり、前記機体方位状況は前記走行軌跡における前記機体の進行方向の変化である請求項1に記載の自動走行制御システム。
【請求項3】
前記走行制御部は、前記既走走行経路に沿って前記機体の進行方向を変更する際に、前記機体の位置に加えて前記手動走行状況に基づいて走行を制御する前記自動走行制御を行う請求項1または2に記載の自動走行制御システム。
【請求項4】
前記走行制御部は、前記進行方向の変更の開始位置の前後の前記経路要素のなす角度が所定の角度以上である場合に、前記機体の位置に加えて前記手動走行状況に基づいて走行を制御する前記自動走行制御を行う請求項3に記載の自動走行制御システム。
【請求項5】
前記走行制御部は、前記進行方向の変更の開始位置の前後の前記経路要素における前記目標方位のなす角度が所定の角度以上である場合に、前記機体の位置に加えて前記手動走行状況に基づいて走行を制御する前記自動走行制御を行う請求項3に記載の自動走行制御システム。
【請求項6】
前記走行制御部は、前記機体の位置に加えて前記手動走行状況に基づいて走行を制御する前記自動走行制御を行う際に、前記目標走行経路に沿った前記進行方向の変更の開始位置よりも手前から前記自動走行制御が開始されるように制御する請求項3から5のいずれか一項に記載の自動走行制御システム。
【請求項7】
前記手動走行状況は、前記手動走行した際の、操舵状況、車輪状況、および機体方位状況の少なくとも何れかを含み、
前記走行制御部は、前記機体の位置に加えて前記手動走行状況に基づいて走行を制御する前記自動走行制御を行う際に、前記操舵状況、前記車輪状況、および前記機体方位状況の少なくともいずれかに基づいて前記目標走行経路を補正する請求項3から5のいずれか一項に記載の自動走行制御システム。
【請求項8】
前記走行経路算出部は、前記走行軌跡のうちの、前記進行方向の変更の際の前進走行中の前進走行軌跡および後進走行中の進走行軌跡から、前記目標走行経路として方向変更経路を生成し、
前記走行制御部は、前記進行方向の変更の際には、前記方向変更経路に沿って前記作業車が走行するように前記自動走行制御を行う請求項3から7のいずれか一項に記載の自動走行制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、目標走行経路に沿って自動走行を行う作業車の自動走行を制御する自動走行制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されるように、田植機等の作業車は圃場に生成された目標走行経路に沿って自動走行しながら作業を行う。ここで、目標走行経路は屈曲する箇所を含み、作業車は屈曲箇所で進行方向変更を行う。進行方向変更は、作業車が屈曲箇所(進行方向変更の開始位置)に到達すると目標走行経路に沿って走行するように、自動操舵制御が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、急激に屈曲する箇所では、自動操舵制御が困難な場合があり、作業車が目標走行経路から外れ、適切に自動走行できない場合があった。
【0005】
本発明は、目標走行経路に沿った自動走行を精度良く行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態に係る自動走行制御システムは、目標走行経路に沿って自動走行を行う作業車の自動走行制御システムであって、前記作業車の機体の位置および走行方位を算出する機体位置算出部と、前記作業車が手動走行した際の手動走行状況を取得する状況取得部と、取得された前記手動走行状況を記憶する記憶部と、前記目標走行経路を生成する走行経路算出部と、少なくとも前記機体の位置および前記走行方位に基づいて前記目標走行経路に沿って前記作業車が走行するように自動走行制御を行う走行制御部とを備え、前記走行経路算出部が生成する前記目標走行経路は、前記作業車があらかじめ前記手動走行した走行軌跡に基づいて生成された既走走行経路を含み、前記走行制御部は、前記既走走行経路に沿って走行する際には、前記機体の位置に加えて前記手動走行状況に基づいて走行を制御する。
また、上記目的を達成するために、本発明の一実施形態に係る自動走行制御システムは、目標走行経路に沿って自動走行を行う作業車の自動走行制御システムであって、前記作業車の機体の位置および走行方位を算出する機体位置算出部と、前記作業車が手動走行した際の、操舵状況、車輪状況、および機体方位状況の少なくともいずれかを取得する状況取得部と、取得された前記操舵状況、前記車輪状況、および前記機体方位状況の少なくともいずれかを記憶する記憶部と、複数の経路要素とそれぞれの前記経路要素における前記機体の進行方向を示す目標方位とを含む前記目標走行経路を生成する走行経路算出部と、少なくとも前記機体の位置および前記走行方位に基づいて前記目標走行経路に沿って前記作業車が走行するように自動走行制御を行う走行制御部とを備え、前記走行経路算出部が生成する前記目標走行経路は、前記作業車があらかじめ前記手動走行した走行軌跡に基づいて生成された既走走行経路を含み、前記走行制御部は、前記既走走行経路に沿って走行する際には、前記機体の位置に加えて前記操舵状況、前記車輪状況、および前記機体方位状況の少なくともいずれかを考慮して走行を制御する操舵考慮モードを有する。
【0007】
既走走行経路は、走行軌跡の近似直線として生成される。そのため、進行方向変更箇所は直線状の経路要素(既走走行経路)の交点となり、急激な進行方向変更が必要となる場合が生じ、経路要素に沿って進行方向変更を行うことが困難な場合がある。つまり、手動走行における進行方向変更の軌跡より経路要素が外側に位置し、経路要素に沿って走行すると、進行方向変更が遅れる場合がある。
【0008】
進行方向変更に際して手動走行の際の操舵状況、車輪状況、および機体方位状況の少なくともいずれかを考慮することにより、急激に進行方向変更される経路であっても、進行方向変更が遅れることが抑制され、精度良く目標走行経路に沿った自動走行を行うことが可能となる。
【0009】
また、前記操舵状況は前記作業車に対する操向操作を受け付けるステアリングハンドルの操作角度であり、前記車輪状況は前記作業車が有する前輪の切れ角であり、前記機体方位状況は前記走行軌跡における前記機体の進行方向の変化であっても良い。
【0010】
手動走行の操向操作を行うステアリングハンドル10の操作角度、前輪の切れ角、および、走行軌跡における機体の進行方向の変化の少なくともいずれかを考慮することにより、手動走行に沿った位置で進行方向変更を開始することができ、進行方向変更が遅れることが抑制され、精度良く目標走行経路に沿った自動走行を行うことが可能となる。
【0011】
また、前記走行制御部は、前記既走走行経路に沿って前記機体の進行方向を変更する際に、前記操舵考慮モードにより前記自動走行制御を行うことが好ましい。
【0012】
これにより、操舵状況等を考慮する必要性の高い進行方向変更の際に操舵状況等を考慮することができるため、精度良く目標走行経路に沿った自動走行を行うことが可能となる。
【0013】
また、前記走行制御部は、前記進行方向の変更の開始位置の前後の前記経路要素のなす角度が所定の角度以上である場合に、前記操舵考慮モードにより前記自動走行制御を行っても良い。
【0014】
進行方向変更の開始が目標走行経路に対して遅れるのは、急激な進行方向変更が行われる箇所である。急激な進行方向変更が行われる箇所は、進行方向変更箇所の前後の経路要素のなす角度が大きい箇所である。
【0015】
そのため、上記構成によると、適切な個所で操舵考慮モードに移行することができ、精度良く目標走行経路に沿った自動走行を行うことが可能となる。
【0016】
また、前記走行制御部は、前記進行方向の変更の開始位置の前後の前記経路要素における前記目標方位のなす角度が所定の角度以上である場合に、前記操舵考慮モードにより前記自動走行制御を行っても良い。
【0017】
急激な進行方向変更が行われる箇所は、進行方向変更箇所の前後の経路要素における目標方位のなす角度が大きい箇所である。そのため、上記構成によると、適切な個所で操舵考慮モードに移行することができ、精度良く目標走行経路に沿った自動走行を行うことが可能となる。
【0018】
また、前記走行制御部は、前記操舵考慮モードにより前記自動走行制御を行う際に、前記目標走行経路に沿った前記進行方向の変更の開始位置よりも手前から前記自動走行制御が開始されるように制御することが好ましい。
【0019】
このような構成により、進行方向変更の開始が遅れることが抑制され、精度良く目標走行経路に沿った自動走行を行うことが可能となる。
【0020】
また、前記走行制御部は、前記操舵考慮モードにより前記自動走行制御を行う際に、前記操舵状況、前記車輪状況、および前記機体方位状況の少なくともいずれかに基づいて前記目標走行経路を補正しても良い。
【0021】
このような構成により、操舵状況等が考慮された目標走行経路に沿って自動走行(自動操舵)されるため、精度良く目標走行経路に沿った自動走行を行うことが可能となる。
【0022】
また、前記走行経路算出部は、前記走行軌跡のうちの、前記進行方向の変更の際の前進走行中の前進走行軌跡および後進走行中の後進走行軌跡から、前記目標走行経路として方向変更経路を生成し、前記走行制御部は、前記進行方向の変更の際には、前記方向変更経路に沿って前記作業車が走行するように前記自動走行制御を行っても良い。
【0023】
このような構成により、操舵状況等が考慮された方向変更経路に沿って自動走行(自動操舵)されるため、精度良く目標走行経路に沿った自動走行を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図2】自動作業走行に係る機能ブロックの構成を例示する図である。
【
図4】周回走行における進行方向変更と外側周回経路の生成とを説明する図である。
【
図5】周回走行における進行方向変更と外側周回経路の生成とを説明する図である。
【
図7】目標走行経路に沿った自動走行を説明する図である。
【
図11】分割経路要素において合成目標方位を生成する構成例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の作業車として、自動走行しながら圃場FLに苗を植え付ける田植機を例に説明する。
【0026】
ここで、理解を容易にするために、本実施形態では、特に断りがない限り、「前」(
図1に示す矢印Fの方向)は機体前後方向(走行方向)における前方を意味し、「後」(
図1に示す矢印Bの方向)は機体前後方向(走行方向)における後方を意味するものとする。また、左右方向または横方向は、機体前後方向に直交する機体横断方向(機体幅方向)を意味し、「左」は
図1における紙面の手前の方向、「右」は
図1における紙面の奥向きの方向を意味するものとする。
【0027】
〔全体構造〕
図1に示すように、田植機は、乗用型で四輪駆動形式の機体1を備える。機体1は、機体1の後部に昇降揺動可能に連結された平行四連リンク形式のリンク機構13、リンク機構13を揺動駆動する油圧式の昇降リンク13a、リンク機構13の後端部領域にローリング可能に連結される苗植付装置3、および、機体1の後端部領域から苗植付装置3にわたって架設されている施肥装置4等を備える。
【0028】
機体1は、走行のための機構として車輪12、エンジン2、および主変速装置である油圧式の無段変速装置9を備える。無段変速装置9は、例えばHST(Hydro-Static Transmission:静油圧式無段変速装置)である。車輪12は、操舵可能な左右の前輪12Aと、操舵不能な左右の後輪12Bとを有する。エンジン2から出力される動力は、走行用伝達機構を介して無段変速装置9に伝えられ、無段変速装置9から前輪12A、後輪12B、作業装置1C(苗植付装置3、施肥装置4等)等にも伝達される。エンジン2および無段変速装置9は、機体1の前部に搭載される。
【0029】
苗植付装置3は、一例として8条植え形式に構成される。苗植付装置3は、苗載せ台21、8条分の植付機構22等を備える。なお、この苗植付装置3は、図示されていない各条クラッチの制御により、2条植え、4条植え、6条植え等の形式に変更可能である。
【0030】
苗載せ台21は、8条分のマット状苗を載置する台座である。苗載せ台21は、マット状苗の左右幅に対応する一定ストロークで継続的に左右方向に往復移動(横送り)し、所定の横送り回数の横送りにより苗載せ台21が左右のストローク端に達する毎に、苗載せ台21上の各マット状苗を苗載せ台21の下端に向けて所定のピッチ(縦送り量)で縦送りする。8個の植付機構22は、ロータリ式で、植え付け条間に対応する一定間隔で左右方向に配置される。そして、各植付機構22は、植付クラッチ(図示せず)が伝動状態に移行されることによりエンジン2から動力が伝達され、苗載せ台21に載置された各マット状苗の下端から一株分の苗(植付苗)を切り取って、整地後の泥土部に所定の株間で植え付ける。これにより、苗植付装置3の作動状態では、苗載せ台21に載置されたマット状苗から苗を取り出して水田の泥土部に植え付けることができる。
【0031】
施肥装置4は、粒状または粉状の肥料を貯留するホッパ25(貯留部)と、ホッパ25から肥料を繰り出す繰出機構26と、繰出機構26によって繰り出された肥料を搬送すると共に肥料を圃場FL(
図2参照)に排出する施肥ホース28とを有する。ホッパ25に貯留された肥料が、繰出機構26によって所定量ずつ繰り出されて施肥ホース28へ送られて、ブロワ27の搬送風によって施肥ホース28内を搬送され、作溝器29から圃場FLへ排出される。このように、施肥装置4は圃場FLに肥料を供給する。
【0032】
図1に示すように、機体1は、その後部側領域に運転部14を備える。運転部14は、前輪操舵用のステアリングハンドル10、無段変速装置9の変速操作を行うことで車速を調節する主変速レバー7A、副変速装置の変速操作を可能にする副変速レバー7B、苗植付装置3の昇降操作と作動状態の切り換え等を可能にする作業操作レバー11、各種の情報を表示(報知)してオペレータに報知(出力)すると共に、各種の情報の入力を受け付けるタッチパネルを有し、着脱可能な情報端末5、および、オペレータ(運転者・作業者)用の運転座席16等を備える。副変速レバー7Bは、走行車速を、作業中の作業速と移動中の移動速とに切り替える操作に用いられる。例えば、圃場間の移動は移動速で行われ、植付作業等は作業速で行われる。さらに、運転部14の前方に、予備苗を収容する予備苗収納装置17Aが予備苗支持フレーム17に支持される。
【0033】
さらに、機体1は測位ユニット8を備える。測位ユニット8は、機体1の位置および方位を算出するための測位データを出力する。測位ユニット8には、全地球航法衛星システム(GNSS)の衛星からの電波を受信する衛星測位モジュール8Aと、機体1の三軸の傾きや加速度を検出する慣性計測モジュール8Bが含まれている。測位ユニット8は、予備苗支持フレーム17の上部に支持される。測位ユニット8が取得する測位データに基づいて、機体の位置Pが断続的に算出され、記憶される。
【0034】
〔自動走行〕
自動走行により、田植機が圃場FLに苗植付作業を行う自動作業走行について
図1を参照しながら
図2~
図7を用いて説明する。
【0035】
まず、田植機の自動作業走行を行うための機能の構成について、
図2を用いて説明する。
【0036】
田植機は、機体1に、自動作業走行を制御する制御ユニット30を備える。制御ユニット30は、測位ユニット8、ステアリングハンドル10、車輪12、作業装置1C等との間でデータ通信が可能である。制御ユニット30は、機体位置算出部33、走行経路算出部35、走行制御部37、作業制御部38、および記憶部40を備える。
【0037】
機体位置算出部33は、測位ユニット8から測位データ取得し、測位データに基づいて、所定の時間毎に断続的に機体の位置Pと機体の位置Pにおける機体1の走行方位とを算出する。
【0038】
走行経路算出部35は、圃場FLの外周(外縁)に沿った外周走行の際に算出された機体の位置Pに基づいて、圃場マップを生成する。さらに、走行経路算出部35は、自動走行の目標走行経路TLを生成する。目標走行経路TLは、複数の経路要素を含み、経路要素毎に経路要素に沿う方向である目標方位TDが含まれる。
【0039】
走行制御部37は、自動走行および手動走行における、操舵制御および駆動制御を行う。操舵制御において、走行制御部37は、自動走行の際には目標走行経路TLに沿って走行するように前輪12Aを制御し、手動走行の際には運転者のステアリングハンドル10に対する操作に応じて前輪12Aを制御する。自動走行の際には、走行制御部37は、走行中の経路要素に対応する目標方位TDと一致するように機体1の走行方位を制御する。
【0040】
作業制御部38は、運転者の操作、あるいはあらかじめ設定されたプログラムに応じて、作業装置1Cの動作を制御する。
【0041】
記憶部40は、生成された目標走行経路TLや作業装置1Cを自動制御するプログラム、機体の位置P等の各種情報を記憶する。
【0042】
次に、
図2~
図7を用いて、目標走行経路TLを生成し、目標走行経路TLに沿った自動走行(自動操舵)を行う構成について説明する。
【0043】
本実施形態における田植機は、手動走行および自動走行を選択的に行うことができる。
手動走行(手動作業走行)と自動走行(自動作業走行)とは、運転部14に配置される自動・手動切替スイッチ(図示せず)を切り替えることにより選択される。
【0044】
田植機が苗植付作業を行う際には、まず、圃場FLの外周(外縁)に沿って、運転者が手動操作で、田植機を走行させる(外周走行)。
図3に示すように、走行経路算出部35は、この外周走行によって、圃場FLの外周形状(圃場マップ)を生成し、圃場FLを外周領域OAと内部領域IAに区分する。また、この際、圃場FLの外周辺のうちの一辺または指定された複数辺が、田植機にマット状苗や肥料、薬剤、燃料等の農業資材を補給するための補給辺SLとして設定される。
【0045】
図2~
図5に示すように、圃場マップが生成されると、走行経路算出部35は、田植機が作業走行を行う目標走行経路TLを設定する。目標走行経路TLは、目標走行経路TL上に設定される複数の経路要素と、各経路要素において目標走行経路TLに沿う方向である目標方位TD(
図7参照)とが含まれる。経路要素は、少なくとも2つのノードLNを繋ぐ直線(近似直線)から形成される。ノードLNは、測位ユニット8が取得する測位データに基づいて断続的に算出される機体の位置Pの少なくとも一部に対応する。
【0046】
内部領域IAでは、目標走行経路TLとして、内部往復経路IPLと旋回経路とが生成される。内部往復経路IPLは、圃場FLの一つの辺に略平行な経路要素であり、旋回経路は2つの内部往復経路IPLを繋ぐ経路である。内部往復経路IPLは、内部領域IAの全体をくまなく作業走行する走行経路である。自動作業走行は内部往復経路IPLに沿って行われる。内部往復経路IPLを繋ぐ旋回経路の旋回走行は、あらかじめ定められた手法により自動走行で行われる。なお、内部往復経路IPLは屈曲しても良く、その場合、内部往復経路IPLは複数の経路要素が含まれることとなる。
【0047】
外周領域OAでは、圃場FLの外周(外縁)に沿って外周領域OA内を1または複数回周回する周り植え走行が行われる。例えば、周り植え走行を行う経路(目標走行経路TL)として、内側周回経路IRLと外側周回経路ORLの2つの走行経路が生成される。内側周回経路IRLと外側周回経路ORLとを作業走行することにより、外周領域OAの全体の作業走行が行われる。内側周回経路IRLは無人自動作業走行または有人自動作業走行(人が搭乗した状態での自動作業走行)で作業走行が行われ、外側周回経路ORLは手動作業走行または有人自動作業走行で作業走行が行われる。また、モード選択によって、内側周回経路IRLが手動作業走行で作業走行が行われたり、外側周回経路ORLが無人自動走行で作業走行が行われたりする構成とされても良い。
【0048】
ここで、手動走行による圃場FLの外周走行において、圃場FLの角部等で機体1の進行方向を変更(以下、単に「進行方向変更」と称す)する際には、機体1は、以下のように走行される。
図4に例示されるように、圃場FLの角部で進行方向変更を行う際には、まず、機体1は、圃場FLの外周に沿って圃場FLの端部(角部)の近傍まで走行する。
この際の走行は、走行軌跡ML1のようになる。次に、機体1は、走行軌跡ML2に示されるように後進する。次に、機体1は、ステアリングハンドル10が操作されて、走行軌跡ML3に示されるように前進しながら走行する。そして、機体1は、ステアリングハンドル10が操作されて、走行軌跡ML4に示されるように走行軌跡ML1の終端位置まで後進しながら走行する。なお、
図4では、後進走行は破線で示される。これにより、機体1の進行方向変更が終了し、機体1は、走行軌跡ML1の終端位置を走行軌跡ML5の始端位置として、圃場FLの外周に沿って走行軌跡ML5のように走行する。
【0049】
なお、外周走行において、機体位置算出部33は、測位ユニット8が取得する測位データに基づいて、機体の位置Pを断続的に算出し、記憶部40に記憶する。そのため、機体の位置Pは、走行軌跡(ML1~ML5)に沿う位置に連なることになる。そして、走行経路算出部35は、進行方向変更に係る走行軌跡(ML2~ML4)における機体の位置Pを用いず、走行軌跡ML1における機体の位置Pの少なくとも一部であるノードLNから算出された近似直線(既走走行経路)と、走行軌跡ML5における機体の位置Pの少なくとも一部であるノードLNから算出された近似直線(既走走行経路)とから、外側周回経路ORLを生成する。そのため、外側周回経路ORLは、走行軌跡ML1および走行軌跡ML5と略一致する経路となる。すなわち、外側周回経路ORLは、外周走行における進行方向変更に係る走行軌跡(ML2~ML4)は考慮されず、外周走行において実際に直線状に走行された走行軌跡ML1および走行軌跡ML5に沿って生成される。
【0050】
走行経路算出部35は、算出された機体の位置Pから任意の方法でノードLNを抽出しても良いが、機体の位置Pを所定の数毎に抽出してノードLNとしても良い。また、走行経路算出部35は、走行した順に機体の位置Pを繋ぐ直線を生成し、隣接する直線のなす角度に基づいて、直線のなす角度が所定以下となる機体の位置Pが削除されることによりノードLNを生成しも良い。この場合、機体1が直線に近い走行を行うと、生成された経路要素において、始端位置と終端位置に対応するノードLNが生成されることとなる。
【0051】
なお、圃場FLの角部以外にも、圃場FLの外周辺が屈曲し、屈曲した経路で進行方向変更が行われる場合ある。また、圃場FLの畦際に水口等の障害物OB(
図9参照)があり、外周走行において障害物OBを回避するように進行方向変更が行われる場合もある。
例えば、
図5に示すように、圃場FLの外周辺が屈曲する場合、機体1は、圃場FLの外周辺に沿って直進走行(走行軌跡ML6)した後、外周辺の屈曲部分の近傍で、ステアリングハンドル10が操作されて前進による進行方向変更(走行軌跡ML7)を行い、再び圃場FLの外周辺に沿って直進走行(走行軌跡ML8)を行う。
【0052】
図5に例示される外周走行が行われた場合も、走行経路算出部35は、進行方向変更に係る走行における機体の位置Pを用いず、直進走行の際の機体の位置Pである、走行軌跡ML6における機体の位置Pおよび走行軌跡ML8における機体の位置Pの少なくとも一部をノードLNとして外側周回経路ORLを生成する。すなわち、外側周回経路ORLは、走行軌跡ML6におけるノードLNから算出された近似直線(既走走行経路)と、走行軌跡ML8におけるノードLNから算出された近似直線(既走走行経路)とから生成される。
【0053】
圃場FLの外周辺が屈曲する領域での外周走行や障害物OBを回避する外周走行において、進行方向変更は、前進による進行方向変更に限らず、前進と後進を繰り返す進行方向変更が行われても良い。この場合も、走行経路算出部35は、進行方向変更に係る機体の位置P(ノードLN)を外側周回経路ORLの生成には用いず、走行軌跡ML6における機体の位置Pおよび走行軌跡ML8における機体の位置P(ノードLN)を用いて外側周回経路ORLを生成する。
【0054】
ここで、外側周回経路ORLは、上述のように外周走行の走行軌跡に基づいて生成される場合に限らず、内側周回経路IRLと同様に、生成された圃場マップに基づいて生成されても良い。
【0055】
なお、機体位置算出部33は、
図6に示すように、機体1の重心位置CPが機体の位置Pとなるように、測位ユニット8で取得された測位データを変換することにより算出する。自動走行は機体の位置Pに基づいて行われるため、この重心位置CPは自動走行における機体1の制御点となる。機体1の重心位置CPは、例えば、後車軸の中心である。
【0056】
図7に示すように、走行制御部37は、目標走行経路TLに沿った自動走行の際には、目標走行経路TL上の経路要素に対する目標方位TDと、経路要素を走行中の機体1の方位(機体1の進行方向)とに基づいて、自動走行(自動操舵)を制御する。具体的には、走行制御部37は、走行中の機体の位置Pに対応する経路要素における目標方位TDに機体1の方位(機体1の進行方向)が一致するように、機体1を自動操舵する。
【0057】
図7の例では、走行制御部37は、目標走行経路TLの第一経路要素TL1を走行中は、第一経路要素TL1における目標方位TD1に機体1の方位(機体1の進行方向)が向くように自動操舵を行う。そして、目標方位TDが変化する位置(屈曲位置 進行方向変更の開始位置)である機体1が第一経路要素TL1の終端位置(第二経路要素TL2の始端位置)に到達すると、走行制御部37は、第二経路要素TL2における目標方位TD2に機体1の方位(機体1の進行方向)が向くように自動操舵(進行方向変更)を行う。このようにして、機体1は、目標走行経路TLに沿って自動走行する。
【0058】
上述のように、走行制御部37は、目標走行経路TLに沿った自動走行を、目標方位TDと機体1の走行方位(機体1の進行方向)とに基づいて制御する。目標方位TDおよび機体1の走行方位は、走行中の機体の位置Pに基づいて決定されるため、第二経路要素TL2の始端位置(屈曲位置 進行方向変更の開始位置)に機体1が到達して初めて、第二経路要素TL2における目標方位TD2に基づく操舵制御(進行方向変更)が開始される。そのため、第二経路要素TL2での走行が開始された際に遅れて操舵制御が開始される場合があり、隣り合う経路要素のなす角度に相当する隣り合う経路要素の目標方位TDのなす角度(角度の差=屈曲角度)が大きくなると、適切に進行方向変更が行われず、進行方向変更後の経路要素の特に走行の初期に経路要素に沿った走行が困難な場合がある。
【0059】
そのため、目標方位TDに基づく進行方向変更の際には、適切な進行方向変更が行われるような操舵制御が行われる。以下、操舵制御の実施形態について説明する。
【0060】
〔実施形態1〕
以下、
図2~
図5,
図8,
図9を用いて、実施形態1に係る操舵制御について説明する。
【0061】
本実施形態では、外周走行を行う際に、機体の位置Pと共に、ステアリングハンドル10の操舵角度SAが操舵状況として記憶される。そして、既走行経路を自動走行する際に、少なくとも進行方向変更において、操舵角度SAを考慮して自動走行制御(操舵制御)が行われる。
【0062】
図5に示すように、圃場FLに沿って直進走行から弧を描くような進行方向変更を行い、再び直進走行が行われる場合がある。目標走行経路TLとして、直線的な走行経路が生成されるため、このような走行が行われると2つの直線状の外側周回経路ORLが生成される。しかしながら、進行方向変更の際には、実際の走行軌跡ML7は、機体の位置Pnのように外側周回経路ORLの内側に位置することになる。つまり、外周走行の際には、2つの外側周回経路ORLの交点より手前から進行方向変更が始まっている。その結果、外側周回経路ORLに沿って操舵制御が行われると、2つの外側周回経路ORLの交点から進行方向変更が開始されるため、進行方向変更が遅れることとなる。
【0063】
本実施形態によると、少なくとも進行方向変更の際に、外周走行の際のステアリングハンドル10の操舵角度SAを考慮することができるため、ステアリングハンドル10が操作され始めた位置を考慮し、2つの外側周回経路ORLの交点(進行方向変更の開始位置)より手前から進行方向変更の操舵制御を開始することができる。その結果、操舵制御が遅れることが抑制され、精度良く目標走行経路TLに沿った自動走行を行うことが可能となる。
【0064】
具体的には、
図2に示すように、制御ユニット30は、操舵状況取得部50(状況取得部)をさらに備える。
【0065】
操舵状況取得部50は、手動走行による外周走行の際に、ステアリングハンドル10の操舵角度SA(操舵状況)を取得し、機体の位置Pと紐づけて記憶部40に記憶する。
【0066】
走行制御部37は、自動走行を行う際に、通常モードと操舵考慮モードとを備える。通常モードは、走行中の機体の位置Pにおける経路要素に対応する目標方位TDと機体1の走行方位が一致するように操舵制御が行われるモードである。操舵考慮モードは、少なくとも進行方向変更の際に、機体1の位置Pと走行方位に加えて、操舵角度SAを考慮して操舵制御が行われるモードである。
【0067】
外周走行において、機体1が圃場FLの外周の直線部分に沿って走行している際は、ステアリングハンドル10の操舵角度SAは微調整の範囲である。外周走行において、機体1が圃場FLの外周が折れ曲がった領域に沿って走行している際は、ステアリングハンドル10の操舵角度SAは大きくなる。
【0068】
そのため、走行制御部37は、既走走行経路である外側周回経路ORLを走行している際に、記憶部40に記憶された、走行中の機体の位置Pに対応する操舵角度SAを参照し、操舵角度SAが所定の角度以上となる位置に到達すると、あるいは到達する所定の距離だけ手前において、進行方向変更を行う領域であると認識して、操舵考慮モードに移行する。そして、走行制御部37は、次の外側周回経路ORL(既走走行経路)における目標方位TDに向けて走行方向が変化するように操舵制御を開始する。
【0069】
これにより、隣り合う外側周回経路ORL(経路要素)の交点である進行方向変更の開始位置より手前から進行方向変更が開始され、進行方向変更の開始が遅れることが抑制され、進行方向変更後の外側周回経路ORLに沿った自動走行を精度良く行うことができる。
【0070】
なお、操舵考慮モードへの移行は、ステアリングハンドル10の操舵角度SAが所定の角度以上の場合に行われるのに限らず、ステアリングハンドル10の操舵角度SAの単位時間当たりの変化量が所定の値以上になった場合に行われても良い。
【0071】
また、操舵考慮モードへの移行は、ステアリングハンドル10の操舵角度SAに基づいて行われる場合に限らず、目標走行経路TLに基づいて行われ、操舵考慮モードでの操舵制御においてステアリングハンドル10の操舵角度SAが考慮されても良い。この場合、操舵考慮モードへの移行は、例えば、隣り合う外側周回経路ORL(経路要素)の交点(進行方向変更の開始位置)の前後の経路要素のなす角度、または、隣り合う外側周回経路ORL(経路要素)の交点(進行方向変更の開始位置)の前後の経路要素に対応する目標方位TDのなす角度が、所定の角度以上の場合に行われる。そして、隣り合う外側周回経路ORL(経路要素)の交点の前後の経路要素のなす角度、または、目標方位TDのなす角度が、所定の角度以上の場合、走行制御部37は、操舵考慮モードに移行し、操舵角度SAを考慮して進行方向変更の開始位置の手前から進行方向変更を開始する。
【0072】
なお、操舵考慮モードにおいて、隣り合う外側周回経路ORL(経路要素)の交点より手前から進行方向変更が開始される例について説明したが、操舵考慮モードにおいて、進行方向変更の開始位置は変更されず、進行方向変更後の外側周回経路ORLにおける目標方位TDへ機体1の進行方向を変更する操舵制御が通常モードに比べて急峻に行われても良い。
【0073】
また、操舵考慮モードは、圃場FLの角部における進行方向変更等、任意の進行方向変更の際に実施される。
【0074】
例えば、
図4に示すように、圃場FLの角部においては、ステアリングハンドル10が操作されながら前進と後進とが繰り返される。
【0075】
既走走行経路である外側周回経路ORLでの自動走行の際に、走行制御部37は、操舵状況として、ステアリングハンドル10が操作されながら前進と後進とが行われた走行であることを確認した場合に、進行方向変更が行われた箇所であると判断し、操舵考慮モードに移行することができる。また、走行制御部37は、操舵考慮モードにおいて、操舵状況である前進と後進およびその際のステアリングハンドル10の操作量(操舵角度SA・操舵角度SAの変化量等)に応じて、早期に操舵制御を開始したり、急峻に操舵を行ったりする等の操舵制御を行うことができる。
【0076】
〔実施形態1の別実施形態〕
(1)操舵考慮モードは、操舵制御を調整する構成に限らず、目標走行経路TLを補正する構成であっても良い。つまり、進行方向変更後の目標走行経路TL(外側周回経路ORL)に沿って精度良く自動走行を行うために、走行制御部37は、進行方向変更前後の外側周回経路ORL(経路要素)を滑らかに繋ぐように、進行方向変更前後の外側周回経路ORL(経路要素)を、操舵状況に基づいて補正しても良い。
【0077】
例えば、
図4に示すように、圃場FLの角部においては、外周走行の際には、走行軌跡ML2,走行軌跡ML3,走行軌跡ML4のような軌跡でステアリングハンドル10が操作されながら前進と後進とが行われる。しかしながら、目標走行経路TLにおける外側周回経路ORL(経路要素)は、上述のように、走行軌跡ML1および走行軌跡ML5の近似直線として求められる。そのため、適切な進行方向変更が困難となり、精度良く目標走行経路TLに沿った自動走行が行えない場合があった。
【0078】
また、
図5に示すように、圃場FLの外周辺が屈曲した領域においては、外周走行の際には、走行軌跡ML7のような軌跡でステアリングハンドル10が操作されながら進行方向変更が行われる。しかしながら、目標走行経路TLにおける外側周回経路ORL(経路要素)は、上述のように、走行軌跡ML6および走行軌跡ML8の近似直線として求められる。そのため、適切な進行方向変更が困難となり、精度良く目標走行経路TLに沿った自動走行が行えない場合があった。
【0079】
本実施形態における操舵考慮モードでは、走行制御部37は、外周走行におけるステアリングハンドル10の操作状況から外周走行における走行経路を予測する。そして、走行制御部37は、予測された走行経路に基づいて、進行方向変更前後の経路要素を滑らかに繋ぐように、進行方向変更前後の経路要素および目標方位TDを補正する。
【0080】
このような構成により、走行経路の交点において急激に目標方位TDが切り替わるような場合でも、徐々に目標方位TDが切り替わるように目標走行経路TLが補正されるため、適切に進行方向変更を行い、精度良く目標走行経路TLに沿った自動走行を行うことができる。
【0081】
(2)操舵考慮モードは、操舵制御を調整する構成に限らず、操舵状況に基づいて、進行方向変更の際の目標走行経路TLが生成される構成であっても良い。
【0082】
走行経路算出部35は、目標走行経路TLを生成する際に、記憶部40に記憶された操舵角度SA(操舵状況)を読み出し、上述のように操舵考慮モードに移行すべき進行方向変更箇所を検出する。走行経路算出部35は、操舵考慮モードに移行すべきと判断した進行方向変更箇所における目標走行経路TLの生成の際に、操舵考慮モードとして、操舵状況に基づいて、進行方向変更に係る経路要素および目標方位TDを含む目標走行経路TLを生成する。
【0083】
例えば、外周走行において
図5に示すような前進による進行方向変更が行われた場合、
図8に示すように、走行経路算出部35は、操舵考慮モードとして、走行軌跡ML7に係る走行での操舵状況に基づいて、走行軌跡ML7に沿うような2つの外側周回経路ORLを繋ぐ1または複数の方向変更経路TLR(既走走行経路)を生成する。方向変更経路TLRは、経路要素と経路要素に対応する目標方位TDとを含む。
【0084】
走行経路算出部35は、外側周回経路ORLの生成の際に用いられなかった機体の位置Pの少なくとも一部を順に繋いて方向変更経路TLR(既走走行経路)を生成する。
【0085】
同様に、外周走行において
図4に示すような前進と後進による進行方向変更が行われた場合にも、走行経路算出部35は、走行軌跡ML2,走行軌跡ML3,走行軌跡ML4に沿った、1または複数の方向変更経路TLRを生成する。
【0086】
このような方向変更経路TLRを生成することにより、外周走行における走行軌跡に近い目標走行経路TLを生成することができる。その結果、精度良く目標走行経路TLに沿った自動走行を行うことができる。
【0087】
ここで、外周走行において、障害物OBを避けるために進行方向変更が行われる場合がある。実際の自動走行でも、障害物OBを回避する必要があるため、目標走行経路TLとして、方向変更経路TLRを生成することが適切である。
【0088】
例えば、
図9に示すように、障害物OBを回避するように、ステアリングハンドル10が操作されながら前進と後進とが繰り返されることにより進行方向変更が行われた場合、走行経路算出部35は、進行方向変更の走行軌跡に沿うような方向変更経路TLRを、操舵状況に基づいて生成する。
【0089】
このような構成により、目標走行経路TLは、障害物OBを回避する経路として生成され、目標走行経路TLに沿った自動走行を行うことにより、障害物OBを回避する自動走行を行うことができる。
【0090】
(3)実施形態1および上記各別実施形態において、操舵状況は、ステアリングハンドル10の操作角度(操舵角度SA)やステアリングハンドル10の操作量(操舵角度SAの変化量等)とすることができる。また、操舵考慮モードへの移行は、操舵状況に限らず、操舵状況、車輪状況、および機体方位状況の少なくともいずれかを考慮して行われても良い。車輪状況は、前輪12Aの操舵角度SA(切れ角)や、左右の前輪12Aの回転数差である。機体方位状況は機体1の進行方向の変化状況であり、機体の位置Pの変化から求められる手動走行での走行軌跡における機体1の進行方向の変化から求められても良く、目標走行経路TLにおける目標方位TDの差から求められても良い。この場合、制御ユニット30は、車輪状況および機体方位状況を取得する状況取得部を備える。操舵状況取得部50は、状況取得部の一例であり、状況取得部は、操舵状況、車輪状況、および機体方位状況の少なくともいずれかを取得する。さらに、車輪12に代わり走行装置としてクローラが設けられる場合には、車輪状況として、左右のクローラの回転数差が取得される。
また、ステアリングハンドル10に代わり操作レバー等の操舵操作具が用いられても良く、操舵操作具の操作角度・操作量を操舵状況として用いることもできる。
【0091】
(4)実施形態1および上記各別実施形態において、操舵考慮モードを実施する既走走行経路は、外周走行の走行経路に沿った経路要素のみならず、作業走行の以前に圃場FLを走行した際の走行経路に沿った経路要素であっても良い。例えば、前年以前の田植作業において走行した内部往復経路IPLや内側周回経路IRLが今回行う作業走行の目標走行経路TLとされても良い。その場合、前年以前の内部往復経路IPLや内側周回経路IRLの走行の際の操舵状況が操舵考慮モードにおいて利用される。
【0092】
〔実施形態2〕
以下、
図2,
図10,
図11を用いて、実施形態2に係る操舵制御について説明する。
【0093】
本実施形態では、目標走行経路TLに沿った自動走行の際に、現在走行中の経路要素である走行中経路要素LCにおける目標方位TD(走行中目標方位)と、以降に通過する予定の1または複数の経路要素(走行先経路要素LA)における目標方位TD(走行先目標方位)とが合成されて合成目標方位TDMが生成され、現在走行中の経路要素において、合成目標方位TDMに機体1(
図1参照)の進行方向を一致させるように、自動走行(自動操舵)が制御される。
【0094】
例えば、走行制御部37は、走行中目標方位と次に通過する(進行方向に隣接する)経路要素(走行先経路要素LA)における走行先目標方位とを合成して合成目標方位TDMを生成し、記憶部40に記憶する。そして、走行制御部37は、現在走行中の位置において、機体1の進行方向が合成目標方位TDMに一致するように、自動走行(自動操舵)を制御する。
【0095】
このような構成により、走行先経路要素LAの目標方位TD(走行先目標方位)が加味されて進行方向変更が行われるため、進行方向変更箇所において、急激に進行方向変更が開始されることが抑制される。
【0096】
上記構成において、さらに、進行方向変更の前後の経路要素の長さが所定の長さ以下の場合のみ、走行制御部37は合成目標方位TDMを生成する構成であっても良い。
【0097】
あるいは、走行制御部37は、走行中目標方位および走行先目標方位を所定の案文率で合成し、案分率を、現在の機体の位置Pと次に走行する経路要素である走行先経路要素LA(進行方向変更の開始点)との距離に応じて決定しても良い。
【0098】
この場合、
図10に示すように、現在の機体の位置Pが走行先経路要素LAに近づく程、走行先目標方位の案文率が高くなる。例えば、現在の機体の位置Pから走行先経路要素LAまでの距離がn1である場合、走行中目標方位の案文率:走行先目標方位の案文率=80%:20%となり、n2(<n1)である場合、走行中目標方位の案文率:走行先目標方位の案文率=70%:30%となり、n3(<n2)である場合、走行中目標方位の案文率:走行先目標方位の案文率=60%:40%となり、走行中経路要素LCの終端部では、走行中目標方位の案文率:走行先目標方位の案文率=50%:50%となる。
【0099】
このような構成により、走行先経路要素LAから離れた位置においては、走行先目標方位の影響が小さくなるため、徐々に合成目標方位TDMが走行先目標方位に近づくようになり、急峻な進行方向変更が抑制されて適切に進行方向変更が行われる。その結果、走行先経路要素LAから機体1が外れることが抑制され、精度良く目標走行経路TLに沿った自動走行が行われる。そのため、走行先経路要素LAに対して機体1が外側に膨らむことが抑制され、圃場FLの畦や障害物OB(
図9参照)等と接触することが抑制される。
【0100】
なお、走行制御部37は、複数の走行先目標方位が合成される場合、走行中経路要素LCから離れる走行先目標方位程、案文率を低く設定する。
【0101】
〔実施形態2の別実施形態〕
(1)実施形態2において、
図11に示すように、走行制御部37は、走行中経路要素LCまたは、走行中経路要素LCおよび走行先経路要素LAを、所定の距離毎に分割し、複数の所定の長さの分割経路要素TLDを生成しても良い。走行制御部37は、それぞれの分割経路要素TLDの分割目標方位TDDを、分割元である走行中経路要素LCまたは走行先経路要素LAの目標方位TDとする。
【0102】
そして、走行制御部37は、少なくとも進行方向変更前後の分割経路要素TLDにおいて、分割目標方位TDDを合成して合成目標方位TDMを生成する。走行制御部37は、走行中の分割経路要素TLDにおいて、機体1の進行方向が合成目標方位TDMとなるように自動走行(自動操舵)を制御する。
【0103】
なお、上記実施形態2のように、走行制御部37は、合成目標方位TDMの生成に際し、案分率を設けても良く、案分率を進行方向変更箇所までの距離に応じて変更しても良い。
【0104】
以上のように、経路要素を分割して分割経路要素TLDを生成し、分割経路要素TLDに対して合成目標方位TDMを生成することにより、より進行方向変更の近傍において操舵制御を行うことができ、過剰に走行先目標方位に影響されることなく、より適切な合成目標方位TDMを生成することができる。その結果、より精度良く目標走行経路TLに沿った自動走行を行うことができる。
【0105】
(2)上記別実施形態(1)において、分割経路要素TLDの長さは可変であっても良い。例えば、分割経路要素TLDの長さは進行方向変更箇所に近づくほど短くしても良い。
これにより、過剰に走行先目標方位に影響されることなく、より精度良く合成目標方位TDMを生成することができる。
【0106】
また、これとは別に、あるいはこれと同時に、分割経路要素TLDの長さは、走行先経路要素LAの走行先目標方位と走行中経路要素LCの走行中目標方位との方位差が大きいほど長くしても良い。これにより、進行方向変更の角度が大きいほど、進行方向変更の手前から操舵制御を開始することができ、より精度良く目標走行経路TLに沿った自動走行を行うことができる。
【0107】
(3)上記実施形態2、および別実施形態(1),(2)において、合成目標方位TDMは走行制御部37が合成する構成に限らず、走行経路算出部35等、任意の機能ブロックが合成しても良い。同様に分割経路要素TLDの生成も走行制御部37が生成する構成に限らず、走行経路算出部35等、任意の機能ブロックが合成しても良い。
【0108】
〔別実施形態〕
(1)別実施形態を含む各実施形態において、制御ユニット30を構成する各機能ブロックのうちの一部または全部は、機体1に設けられる構成に限らず、情報端末5または、機体1と通信可能な状態で機体1の外部に設けられる管理コンピュータ等に設けられても良い。
【0109】
(2)別実施形態を含む各実施形態において、制御ユニット30は上記のような機能ブロックから構成されるものに限定されず、任意の機能ブロックから構成されても良い。例えば、制御ユニット30の各機能ブロックはさらに細分化されても良く、逆に、各機能ブロックの一部または全部がまとめられても良い。また、制御ユニット30の機能は、上記機能ブロックに限らず、任意の機能ブロックが実行する方法により実現されても良い。また、制御ユニット30の機能の一部または全部は、ソフトウエアで構成されても良い。ソフトウエアに係るプログラムは、記憶部40等の任意の記憶装置に記憶され、制御ユニット30が備えるCPU等のプロセッサ、あるいは別に設けられたプロセッサにより実行される。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明は、田植機に限らず、コンバインやトラクタを始め、作業地を自動走行する各種の作業車の自動走行に適用することができる。
【符号の説明】
【0111】
1 機体
10 ステアリングハンドル
12A 前輪
33 機体位置算出部
35 走行経路算出部
37 走行制御部
40 記憶部
50 操舵状況取得部(状況取得部)
P 機体の位置
SA 操舵角度(操舵状況)
TD 目標方位
TL 目標走行経路
TLR 方向変更経路