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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024174045
(43)【公開日】2024-12-13
(54)【発明の名称】警報装置
(51)【国際特許分類】
   G08B 17/00 20060101AFI20241206BHJP
【FI】
G08B17/00 H
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024166756
(22)【出願日】2024-09-25
(62)【分割の表示】P 2020064777の分割
【原出願日】2020-03-31
(31)【優先権主張番号】P 2019103342
(32)【優先日】2019-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】島田 佳武
(57)【要約】
【課題】小型化を図りやすい警報装置を提供する。
【解決手段】警報装置10は、ハウジング1と、起動ユニット2と、表示灯3と、スピーカ5と、回路基板4と、を備える。起動ユニット2は、ハウジング1の前面101に配置される操作面211を含む押ボタン21、及び押ボタン21に連動する可動子22を有する。起動ユニット2は、操作面211が押されるように押ボタン21が操作されることで、可動子22が第1位置から第2位置に移動する。表示灯3は、ハウジング1の前面101に配置される。表示灯3は、正面視において操作面211を囲む環状に形成される発光部311を有する。スピーカ5は、ハウジング1に収容される。回路基板4は、ハウジング1に収容される。回路基板4は、可動子22の第1位置から第2位置への移動をトリガにスピーカ5に警報音を出力させる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
前記ハウジングの前面に配置される操作面を含む押ボタン、及び前記押ボタンに連動する可動子を有し、前記操作面が押されるように前記押ボタンが操作されることで、前記可動子が第1位置から第2位置に移動する起動ユニットと、
前記ハウジングの前面に配置され、正面視において前記操作面を囲む環状に形成される発光部を有する表示灯と、
前記ハウジングに収容されるスピーカと、
前記ハウジングに収容され、前記可動子の前記第1位置から前記第2位置への移動をトリガに前記スピーカに警報音を出力させる回路基板と、を備える、
警報装置。
【請求項2】
前記ハウジングは、蓄電池を収容する電池収容部を有する、
請求項1に記載の警報装置。
【請求項3】
前記蓄電池の試験用の操作を受け付ける試験用操作部を更に備える、
請求項2に記載の警報装置。
【請求項4】
前記試験用操作部は、前記ハウジングの前面のうち、前記スピーカと前記表示灯との間となる位置に配置される、
請求項3に記載の警報装置。
【請求項5】
前記ハウジングは、
ボディと、
前記操作面と前記表示灯とが露出するように前記ボディの前面を覆うカバーと、を有し、
前記電池収容部は、前記ボディの前面側において、前記カバーに覆われる部分に設けられている、
請求項2~4のいずれか1項に記載の警報装置。
【請求項6】
前記可動子を前記第1位置から前記第2位置に戻すための復旧ボタンを更に有し、
前記復旧ボタンは、正面視において、前記発光部と前記操作面との間に配置されている、
請求項1~5のいずれか1項に記載の警報装置。
【請求項7】
前記表示灯は、前記発光部を含む灯体カバーを有し、
前記灯体カバーは、前記発光部から外側に張り出した周辺部を有し、
前記周辺部が前記ハウジングに取り付けられる、
請求項1~6のいずれか1項に記載の警報装置。
【請求項8】
前記ハウジングの前面のうちの前記スピーカに対応する特定領域に対応する位置に取り付けられる化粧部材を更に備え、
前記ハウジングの前壁のうち前記特定領域には、音出力孔が形成されており、
前記化粧部材には、前記音出力孔と連通する複数の透過孔が形成されている、
請求項1~7のいずれか1項に記載の警報装置。
【請求項9】
前記表示灯は、
前記ハウジング内に収容され、前記回路基板に設けられた光源部と、
前記光源部の光により発光する前記発光部と、を有する、
請求項1~8のいずれか1項に記載の警報装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に警報装置に関し、より詳細には、押ボタンを含む起動ユニットと表示灯とを備えた警報装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、建物の壁面に設けられる機器収納箱に、火災発信機等を収納することが記載されている。火災発信機は、押ボタン(押釦スイッチ)等を備えた火災発信機本体をカバー体にて略覆ってなる。火災発見者は、この火災発信機の押ボタンを強く押すことにより、管理人室等に設置され火災発信機とは配線にて接続された火災受信機に火災発生を知らせる信号が送信される。また、それに伴って火災発信機近傍に設けられるスピーカから警報音が発せられることで、周囲の人に火災発生を知らせることができる。
【0003】
特許文献1に記載の機器収納箱には、火災発信機に加えて、警報発生時に点灯する表示灯(警報灯)、及び警報音を発生するスピーカ(音響部)を収納することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-141536号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の機器収納箱では、その下端部に押ボタンを含む火災発信機が配置され、その上端部に表示灯が配置され、火災発信機と表示灯との間にスピーカが配置されているため、警報装置(機器収容箱)の小型化が困難である。
【0006】
本開示は、上記事由に鑑み点されており、小型化を図りやすい警報装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る警報装置は、ハウジングと、起動ユニットと、表示灯と、スピーカと、回路基板と、を備える。前記起動ユニットは、前記ハウジングの前面に配置される操作面を含む押ボタン、及び前記押ボタンに連動する可動子を有する。前記起動ユニットは、前記操作面が押されるように前記押ボタンが操作されることで、前記可動子が第1位置から第2位置に移動する。前記表示灯は、前記ハウジングの前面に配置される。前記表示灯は、正面視において前記操作面を囲む環状に形成される発光部を有する。前記スピーカは、前記ハウジングに収容される。前記回路基板は、前記ハウジングに収容される。前記回路基板は、前記可動子の前記第1位置から前記第2位置への移動をトリガに前記スピーカに警報音を出力させる。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、小型化を図りやすい、という利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態1に係る警報装置を示す正面図である。
図2図2Aは、同上の警報装置の露出設置される場合の外観斜視図である。図2Bは、同上の警報装置の埋込設置される場合の外観斜視図である。
図3図3は、同上の警報装置の分解斜視図である。
図4図4Aは、比較例に係る警報装置の壁への設置状態を表す模式図である。図4Bは、実施形態1に係る警報装置の露出設置による壁への設置状態を表す模式図である。図4Cは、同上の警報装置の埋込設置による壁への設置状態を表す模式図である。
図5図5は、同上の警報装置の起動ユニットの分解斜視図である。
図6図6は、同上の警報装置の要部の断面図である。
図7図7は、同上の警報装置の要部の斜視図である。
図8図8は、同上の警報装置のカバー、起動ユニット及び表示灯の分解斜視図である。
図9図9は、同上の警報装置の灯体カバー、導光部材及び拡散部材の分解斜視図である。
図10図10は、同上の警報装置の表示灯を示す斜視図である。
図11図11は、同上の警報装置の内器の分解斜視図である。
図12図12Aは、同上の警報装置の回路基板の斜視図である。図12Bは、同上の警報装置の回路基板の正面図である。
図13図13Aは、同上の内器の正面図である。図13Bは、同上の内器の右側面図である。図13Cは、同上の内器の背面図である。
図14図14は、同上の内器の構成部品の位置関係を示す概略図である。
図15図15は、同上の警報装置の一部破断した斜視図である。
図16図16は、同上の警報装置の取付ボックスの斜視図である。
図17図17は、同上の警報装置において取付ボックスに内器が組み合わされた状態を示す正面図である。
図18図18Aは、同上の取付ボックスに対する内器の取付構造を示し、一部破断した要部の斜視図である。図18Bは、同上の取付ボックスに対する内器の取付構造を示す要部の斜視図である。
図19図19は、同上の警報装置において内器にカバーが組み合わされた状態を示す背面図である。
図20図20は、同上の内器に対するカバーの取付構造を示す要部の斜視図である。
図21図21Aは、同上の警報装置のカバー、灯体カバー、ベース部材及び押ボタンの寸法関係を示す分解状態の断面図である。図21Bは、同上の警報装置のカバー、灯体カバー、ベース部材及び押ボタンの寸法関係を示す組立状態の断面図である。
図22図22Aは、同上の内器の防水エリアを模式的に示す正面図である。図22Bは、同上の内器の防水エリアを模式的に示す背面図である。
図23図23Aは、同上の警報装置の防水構造を示す要部の斜視図である。図23Bは、同上の警報装置の防水構造を示し、一部破断した要部の斜視図である。
図24図24Aは、同上の警報装置の防水構造を示す要部の斜視図である。図24Bは、図24Aの領域A1を示す一部破断した拡大図である。
図25図25Aは、実施形態1の第1変形例に係る警報装置の要部を示す正面図である。図25Bは、実施形態1の第2変形例に係る警報装置の要部を示す正面図である。
図26図26Aは、実施形態2に係る警報装置の要部を示す断面図である。図26Bは、同上の警報装置の表示灯を示す斜視図である。
図27図27は、実施形態3に係る警報装置の分解斜視図である。
図28図28は、同上の警報装置の内器の斜め前方から見た分解斜視図である。
図29図29は、同上の警報装置の内器の斜め後方から見た分解斜視図である。
図30図30Aは、同上の警報装置の要部を示す断面図である。図30Bは、図30Aの領域Z1の概略拡大図である。
図31図31は、同上の警報装置のカバーの斜め後方から見た分解斜視図である。
図32図32Aは、同上の警報装置のカバーの要部を後方から見た概略図である。図32Bは、同上の警報装置のカバーの要部を前方から見た概略図である。
図33図33は、同上の警報装置の音源を再生してスピーカから音が出力される様子を示す概念図である。
図34図34Aは、実施形態1に係る警報装置のスピーカのスピーカ特性、及び実施形態3に係る警報装置の薄型のスピーカのスピーカ特性を示す説明図である。図34Bは、実施形態3に係る警報装置のスピーカから出力される警報音の周波数を示す説明図である。
図35図35Aは、実施形態3に係る警報装置の要部を示す斜視図である。図35Bは、同上の警報装置の要部の分解斜視図である。
図36図36Aは、実施形態3の第1変形例に係る警報装置のカバーの要部を後方から見た概略図である。図36Bは、図36AのX1-X1線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施形態1)
(1)概要
まず、本実施形態に係る警報装置10の概要について、図1を参照して説明する。
【0011】
本実施形態に係る警報装置10は、押ボタン21を含む起動ユニット2と表示灯3とを備えた装置である。本開示でいう「警報装置」は、例えば、火災等の災害の防止、災害による被害の拡大の防止、又は被災からの復旧等の目的で施設に設置される装置である。起動ユニット2は、人が火災を発見した場合に押ボタン21が手動で操作されるユニットである。表示灯3は、例えば、常時点灯することで、警報装置10の位置を明示する。
【0012】
このような警報装置10は、施設に用いられる。本実施形態では、警報装置10が、例えば、オフィスビル、学校、福祉施設、商業施設、テーマパーク、病院、ホテル又は工場等の非住宅の施設に用いられる場合を例示するが、この例に限らず、警報装置10は、集合住宅又は戸建住宅等の施設に用いられてもよい。警報装置10は、屋内での使用に限らず、例えば、公園又はグランド等の屋外施設における特定の空間で使用されてもよい。
【0013】
警報装置10は、施設の壁等に設置される。警報装置10は、壁等に対して、警報装置10の略全体が露出した状態で設置(露出設置)されてもよいし、警報装置10の後部が埋め込まれた状態で設置(埋込設置)されてもよい。詳しくは後述するが、本実施形態では基本的には、警報装置10が「露出設置」される場合を例に説明する。
【0014】
本実施形態に係る警報装置10は、ハウジング1と、起動ユニット2と、表示灯3と、回路基板4(図3参照)と、を備えている。起動ユニット2は、操作面211を含む押ボタン21、及び押ボタン21に連動する可動子22(図3参照)を有している。操作面211は、ハウジング1の前面101に配置される。起動ユニット2は、操作面211が押されるように押ボタン21が操作されることで、可動子22が第1位置から第2位置に移動する(図6参照)。表示灯3は、ハウジング1の前面101に配置される発光部311を有する。回路基板4は、ハウジング1に収容される。回路基板4は、可動子22の第1位置から第2位置への移動をトリガに発報信号を出力する。
【0015】
ここで、本実施形態に係る警報装置10では、発光部311は、正面視において操作面211を囲む環状に形成されている。
【0016】
また、本実施形態に係る警報装置10では、表示灯3は、発光部311に加えて、光源部32(図6参照)と、導光部材33(図3参照)と、を更に有する。光源部32は、ハウジング1内に収容される。導光部材33は、光源部32からの光を発光部311に導くことにより発光部311を発光させる。
【0017】
また、本実施形態に係る警報装置10は、ハウジング1、起動ユニット2、表示灯3及び回路基板4に加えて、スピーカ5を更に備えている。スピーカ5は、ハウジング1に収容されている。スピーカ5は、発報信号を受けて警報音を出力する。スピーカ5は、操作面211及び発光部311のいずれよりも上方(Z軸の正の方向)に位置する。
【0018】
上述した警報装置10によれば、発光部311は、正面視において操作面211を囲む環状に形成されている。したがって、起動ユニット2(の操作面211)、及び表示灯3(の発光部311)は、ハウジング1の前面101の1箇所にまとめて配置されることになる。つまり、発光部311の内側に操作面211が配置されるので、表示灯3(発光部311)と操作面211(押ボタン21)とが別々に配置される構成に比較して、ハウジング1の小型化を図りやすくなる。
【0019】
また、上記警報装置10によれば、表示灯3は、発光部311に加えて、光源部32及び導光部材33を更に有している。そのため、光源部32の出力光が発光部311に直接的に入射するのではなく、導光部材33を介して発光部311に入射することになり、発光部311の全域において比較的均一な発光状態を実現可能しやすくなる。すなわち、光源部32が発光部311を後方から直接的に照らす構成に比べて、正面視において、光源部32が存在する位置と光源部32が存在しない位置との間で輝度差が生じにくいため、いわゆる「つぶつぶ感」が生じにくい。その結果、発光部311における輝度のばらつきを小さく抑えることができる、という利点がある。
【0020】
また、上記警報装置10によれば、警報音を出力するスピーカ5は、操作面211及び発光部311のいずれよりも上方(Z軸の正の方向)に位置する。すなわち、ハウジング1には、起動ユニット2(の操作面211)、表示灯3(の発光部311)及びスピーカ5が配置されているところ、これらの中では、スピーカ5が最も高い位置に配置されている。そのため、ハウジング1の下端部に起動ユニット2(の操作面211)が配置され、ハウジング1の上端部に表示灯3(の発光部311)が配置され、両者の間にスピーカ5が配置される構成に比べて、スピーカ5を高い位置に配置しやすい。つまり、ハウジング1の設置位置が同じであるとすれば、スピーカ5を操作面211及び発光部311のいずれよりも上方に配置することで、より高い位置にスピーカ5が配置されることになる。その結果、スピーカ5の配置を従来よりも高く設定しやすく、適正高さに近い位置にスピーカを配置しやすい、という利点がある。
【0021】
(2)詳細
以下、本実施形態に係る警報装置10の構成について、図1図24Bを参照して説明する。
【0022】
(2.1)前提
警報装置10は、起動ユニット2、表示灯3、回路基板4及びスピーカ5を、一つのハウジング1に備えている。そのため、警報装置10は、人の操作を受け付ける起動ユニット2の機能だけでなく、表示灯3にて表示を行う機能、及びスピーカ5から警報音を出力する機能を有する、「複合装置」である。複合装置は、火災発信機とは異なり、表示の機能及び警報音の出力機能が一体に備わっている。これに対して、火災発信機と音響装置とが組み合わされた総合盤(機器収容箱)のような防災機器も存在するが、この種の防災機器と、複合装置からなる警報装置10との間には、少なくとも下記5つの相違点がある。
【0023】
まず、1つ目の相違点として、複合装置である警報装置10は、起動ユニット2が可動子22を第1位置から第2位置に移動させ、起動ユニット2とは別の回路基板4にて、この可動子22の移動をトリガに発報信号を出力する。つまり、複合装置である警報装置10においては、起動ユニット2は、電子回路を有していないため、押ボタン21の操作に応じて電気信号(発報信号)を出力するのではなく、可動子22の移動という機械的な出力を行う。これに対して、総合盤のような防災機器では、火災発信機が電子回路を有しており、火災発信機自体が、押ボタンの操作に応じて電気信号を出力する。そのため、複合装置である警報装置10の起動ユニット2は電子回路を内蔵しない分だけ、火災発信機よりも小型に構成されている。
【0024】
2つ目の相違点として、複合装置である警報装置10は、基本的には、それ単独でも動作可能に構成されているのに対して、総合盤のような防災機器は、自動火災報知システムの受信機と協働する機器である。つまり、総合盤のような防災機器は、例えば、熱感知器、煙感知器又は炎感知器等の感知器と、感知器からの発報信号(火災信号)を受信する受信機と、を備える自動火災報知システムの一構成要素として用いられる。
【0025】
3つ目の相違点として、複合装置である警報装置10は、後述する蓄電池7(図3参照)を備えており、停電時等で外部からの電力供給が停止した状況においても、蓄電池7の電力にて動作可能である。これに対して、総合盤のような防災機器は、自動火災報知システムの受信機からの電力供給により動作する。
【0026】
4つ目の相違点として、複合装置である警報装置10は、音響装置として、電子音からなる警報音を出力するスピーカ5を有している。つまり、スピーカ5は、回路基板4に実装されている音響回路により駆動され、音響回路からの電気信号を受けて警報音を出力(再生)する。これに対して、総合盤のような防災機器は、音響装置としてベルを備えており、電子音ではなくベルが鳴動することによって警報音を出力する。
【0027】
5つ目の相違点として、複合装置である警報装置10は、押ボタン21を有する起動ユニット2とは別に、試験用の操作を受け付ける試験用操作部8(図1参照)を更に備えている。試験用操作部8は、蓄電池7の動作試験用である。つまり、試験用操作部8に対する操作がなされると、警報装置10は、蓄電池7の残量試験等の動作試験を行う。これに対して、総合盤のような防災機器には、試験用操作部は設けられていない。
【0028】
また、本実施形態では一例として、警報装置10は、施設の壁W1(図4A図4C参照)に設置される。つまり、施設の壁W1は、警報装置10が取り付けられる取付対象を構成する。特に、本実施形態では、警報装置10が、施設の外壁からなる壁W1に設置されることを想定する。つまり、警報装置10の使用環境としては、屋外での使用を想定する。
【0029】
また、本実施形態では基本的には、警報装置10が「露出設置」される場合を例に説明する。露出設置では、警報装置10は、壁W1に固定される取付ボックス6(図2A参照)を用いて、壁W1に設置される。
【0030】
以下では、警報装置10が取付対象である壁W1に取り付けられた状態での、水平面に対して垂直な(直交する)方向を「上下方向」とし、上下方向における下方を「下方」として説明する。また、壁W1の厚み方向を「前後方向」とし、壁W1から見て警報装置10側を「前方」として説明する。さらに、警報装置10を正面から見て右方を「右方」、左方を「左方」として説明する。図面中では、互いに直交するX軸、Y軸及びZ軸の3軸を用いて方向を示している。X軸は左右方向に相当し、X軸の正の方向が「右方」に相当する。Y軸は前後方向に相当し、Y軸の正の方向が「後方」に相当する。Z軸は上下方向に相当し、Z軸の正の方向が「上方」に相当する。ただし、図面中のX軸、Y軸及びZ軸は、説明のために表記しているに過ぎず、実体を伴わない。また、これらの方向は警報装置10の使用方向(取付方向)を限定する趣旨ではない。
【0031】
また、特に断りが無い限り、本開示でいう「上方」及び「下方」等の方向は、警報装置が、壁等の取付対象に設置された状態での方向を意味する。つまり、「上方」はZ軸の正の方向であって、「下方」はZ軸の負の方向である。例えば、「AはBよりも上方に位置する」とは、警報装置が設置された状態で、AがBよりも上方に位置することを意味し、言い換えれば、AがBよりも高い位置(床面又は地面から遠い位置)にあることを意味する。
【0032】
また、本開示でいうスピーカ5の配置に関しての「適正高さ」とは、人がスピーカ5から出力された音を認識しやすくなる上下方向の位置(高さ)を意味する。すなわち、一般的な人の耳の高さに近い高さが、スピーカ5の配置に関しての「適正高さ」となり得る。一方で、警報装置10には、押ボタン21が配置されており、比較的背の低い子供でも押ボタン21を操作できるように、警報装置10の取付高さについても適正な高さが決められている。警報装置10について、このような適正な取付高さを満足すると、一般的な成人の伸長よりもやや低い位置に警報装置10が取り付けられることになる。そのため、例えば、スピーカ5が警報装置10の上下方向の中心付近にあるとすれば、スピーカ5の位置は適正高さよりもやや低くなる。これに対して、本実施形態に係る警報装置10では、警報装置10の中でも、起動ユニット2(の操作面211)及び表示灯3(の発光部311)のいずれよりも高い位置にスピーカ5が配置あるので、適正高さに近い位置にスピーカ5を配置しやすくなる。
【0033】
また、本開示でいう「中心」は、周囲から等距離にあるような点(中心点)とその周りの部分を含んでおり、つまり実質的に中心である場合を含みうる。例えば、AがBの中心にあるという場合、Aの中心点とBの中心点とは完全には一致していなくてもよい。つまり、AがBの中心にあるという場合、Aの中心点とBの中心点とは略一致していればよく、Aの中心点とBの中心点とは僅かにずれた位置にあってもよい。
【0034】
また、本開示でいう「面一」は、厳密に同一平面にある場合だけでなく、略同一平面にある場合、つまり実質的に面一である場合も含んでいる。例えば、AがBと面一であるという場合、AとBとは完全には同一平面になくてもよい。つまり、AがBと面一であるという場合、AはBと略同一平面にあればよく、AがBより僅かに突出している(出っ張っている)か、AがBより僅かに凹んでいてもよい。
【0035】
(2.2)全体構成
まず、警報装置10の全体構成について、図1図4Cを参照して説明する。
【0036】
本実施形態では、警報装置10は、上述したように起動ユニット2及び表示灯3を備えている。ハウジング1には、起動ユニット2及び表示灯3の他、例えば、回路基板4及びスピーカ5が収容される。
【0037】
また、本実施形態では、上述したように、警報装置10は、警報装置10の略全体が露出した状態となる「露出設置」により、取付対象である施設の壁W1に設置される。露出設置では、警報装置10は、壁W1に固定される取付ボックス6(図2A参照)に対して取り付けられることで、壁W1に設置される。本実施形態では、取付ボックス6は警報装置10の構成要素に含むこととする。つまり、本実施形態に係る警報装置10は、ハウジング1、起動ユニット2、表示灯3、回路基板4及びスピーカ5に加えて、取付ボックス6を更に備えている。ただし、取付ボックス6は、警報装置10の構成要素に含まれなくてもよい。
【0038】
本実施形態に係る警報装置10は、上述したように、起動ユニット2、表示灯3、回路基板4及びスピーカ5を、一つのハウジング1に備える「複合装置」である。また、警報装置10は、ハウジング1、起動ユニット2、表示灯3、回路基板4、スピーカ5及び取付ボックス6に加えて、蓄電池7(図3参照)及び試験用操作部8を更に備えている。
【0039】
基本的には、警報装置10は、回路基板4に対して外部電源(例えば系統電源)から供給される電力で動作する。そして、警報装置10は、通常状態においては、表示灯3を常時点灯させることで、警報装置10の位置を明示する。さらに、警報装置10は、起動ユニット2の押ボタン21が押操作可能になっており、押ボタン21が押されることにより、通常状態から発報状態に移行する。つまり、人が火災等の異常を発見した場合に、起動ユニット2の押ボタン21を押すことで、警報装置10を起動して警報装置10の動作状態を通常状態から発報状態に切り替える。
【0040】
すなわち、警報装置10は、可動子22の第1位置から第2位置への移動をトリガにして、回路基板4が発報信号を出力することで、その動作状態が通常状態から発報状態に切り替わる。警報装置10が発報状態になると、発報信号を受けてスピーカ5が警報音(電子音)を出力する。発報信号は、警報装置10に接続されている外部装置(例えば自動火災報知システムの受信機等)に送信される。さらに、警報装置10が発報状態になると、表示灯3が点滅点灯してもよい。
【0041】
起動ユニット2の復旧ボタン23(図1参照)が操作されると、警報装置10の動作状態は発報状態から通常状態に切り替わる。また、警報装置10は、停電等により、外部電源(例えば系統電源)から回路基板4への電力供給が停止すると、蓄電池7に蓄積されている電力を用いて、上記と同様の動作を実現する。そのため、警報装置10は、それ単独でも動作可能である。さらに、警報装置10は、試験用操作部8に対する操作がなされると、蓄電池7の残量試験等の動作試験を行う。
【0042】
ところで、本実施形態に係る警報装置10においては、人の操作を受け付けるための操作系の機能は、正面視において、ハウジング1の前面101における上下方向(Z軸方向)の中心C1よりも下方に集約して配置されている。具体的には、警報装置10は、起動ユニット2の押ボタン21、及び試験用の操作を受け付ける試験用操作部8を、操作系の機能として備えている。そのため、押ボタン21の操作面211は、ハウジング1の前面101における上下方向の中心C1よりも下方に位置する。さらに、試験用操作部8についても、ハウジング1の前面101における上下方向の中心C1よりも下方に位置する。
【0043】
このように、操作系の機能が、ハウジング1の前面101における上下方向(Z軸方向)の中心C1よりも下方に集約して配置されることで、例えば、子供等の比較的に背が低い人であっても、操作系の機能を使いやすくなる。一般的に、この種の警報装置10は、その中心C1が、床(又は地面)から、150cm程度の高さとなるように設置される。よって、上記配置によれば、操作系の機能(押ボタン21及び試験用操作部8)は、150cm以下の高さに位置することとなり、操作性が向上する。
【0044】
具体的には、警報装置10が設置された状態において、操作系の機能(押ボタン21及び試験用操作部8)は、床(又は地面)から80cm以上150cm以下の高さにあることが好ましい。ここで、押ボタン21の操作面211の中心点は、床(又は地面)から80cm以上150cm以下の高さに位置することがより好ましい。言い換えれば、押ボタン21の操作面211の中心点が、床(又は地面)から80cm以上150cm以下の高さに位置するように、警報装置10の設置高さが決定されることが好ましい。
【0045】
また、試験用操作部8は、ハウジング1の前面101のうち、スピーカ5と表示灯3との間となる位置に配置されている。つまり、本実施形態では、試験用操作部8は、起動ユニット2の押ボタン21よりも上方に配置されており、更にその上方に、スピーカ5が配置されている。
【0046】
図2Aは、露出設置される場合の警報装置10の外観斜視図である。露出設置においては、警報装置10は、前面が開口した箱状の取付ボックス6の前面を、ハウジング1で塞ぐように、取付ボックス6にハウジング1が組み合される。これにより、警報装置10は、全体として略直方体状の外観を有する。
【0047】
一方、図2Bは、埋込設置される場合の警報装置10の外観斜視図である。つまり、警報装置10は、その後部が取付対象である施設の壁W1に埋め込まれた状態で、取付対象である施設の壁W1に設置される場合には、取付ボックス6は用いられない。そのため、ハウジング1が警報装置10の外郭を構成する。これにより、警報装置10は、全体として、正面視において後部が一回り小さくなった外観を有する。
【0048】
図3は、警報装置10(取付ボックス6を含む)の分解斜視図である。図3から明らかなように、ハウジング1は、ボディ11と、カバー12と、を有している。カバー12は、ボディ11の前面を覆うようにボディ11に取り付けられる。これらボディ11及びカバー12で囲まれる空間内に、蓄電池7等が収容される。詳しくは後述するが、カバー12は、ねじ131及びインサートナット132にて、ボディ11に固定される。
【0049】
さらに、ボディ11は、平板部111と、平板部111の後面から後方に突出する収容部112と、収容部112の後面を塞ぐ裏蓋部113と、を有している。これら平板部111、収容部112及び裏蓋部113で囲まれる空間内に、回路基板4及びスピーカ5等が収容される。平板部111と収容部112とは一体化されている。裏蓋部113は、複数本(ここでは7本)のねじ114にて、収容部112に固定される。
【0050】
回路基板4の前面には、トランス42、コンデンサ43、及び複数(ここでは3つ)のヒューズ44が実装される。さらに、ヒューズ44に関しては、ボディ11(平板部111)の前面側から、回路基板4に対するヒューズ44の着脱が可能となるように、ヒューズクリップ45にて保持されている。また、ボディ11(平板部111)の前面側(つまりボディ11及びカバー12で囲まれる空間内)には、予備のヒューズ46が保持される。
【0051】
起動ユニット2及び表示灯3は、ハウジング1のカバー12に取り付けられる。起動ユニット2及び表示灯3は、ハウジング1の下端部に配置されている。また、起動ユニット2は、ハウジング1の前壁であるカバー12に対して、後面側から取り付けられる。ここで、起動ユニット2は、カバー12との間に表示灯3の一部を挟み込むようにして、カバー12に取り付けられる。言い換えれば、表示灯3は、ハウジング1の前壁であるカバー12と起動ユニット2との間に挟まれることで、ハウジング1の前壁(カバー12)に取り付けられる。
【0052】
そして、カバー12の下端部には、円形状に開口する貫通孔121が形成されている。起動ユニット2及び表示灯3は、カバー12に取り付けられた状態で、少なくとも一部がこの貫通孔121を通してカバー12の前面(ハウジング1の前面101)側に露出する。起動ユニット2は、少なくとも押ボタン21の操作面211が、貫通孔121を通して前面101側に露出する。表示灯3は、少なくとも発光部311が、貫通孔121を通して前面101側に露出する。そのため、起動ユニット2及び表示灯3は、ハウジング1内に完全に収容されるのではなく、少なくとも一部をハウジング1の外部に露出させた状態で、ハウジング1に保持される。
【0053】
詳しくは後述するが、本実施形態では、表示灯3の発光部311は、ハウジング1の前面101における少なくとも発光部311の周囲と面一である。さらに、表示灯3の発光部311は、押ボタン21の操作面211と面一である。そのため、表示灯3の発光部311、及び押ボタン21の操作面211は、いずれもハウジング1の前面101における少なくとも発光部311の周囲と面一である。また、ボディ11の下端部には、通線口115が開口しているため、少なくとも起動ユニット2については、通線口115を通してハウジング1の後面からも露出する。
【0054】
取付ボックス6は、上述したように、前面が開口した箱状に形成されている。この開口面(取付ボックス6の前面)を、ハウジング1で塞ぐように、取付ボックス6にハウジング1(ボディ11及びカバー12)が組み合される。実際には、ハウジング1のうちのボディ11が取付ボックス6に取り付けられた後、ボディ11に対してカバー12が取り付けられることにより、取付ボックス6にハウジング1が組み合される。取付ボックス6の上端部64には、ハウジング1との隙間を埋めるパッキン61が取り付けられる。取付ボックス6の後壁及び下壁には、通線用の通線孔65が形成されている。
【0055】
ハウジング1(ボディ11及びカバー12)、及び取付ボックス6は、例えば、ポリカーボネート(PC)樹脂、ASA(Acrylonitrile Styrene Acrylate)樹脂、PC/ABS(Acrylonitrile Butadiene Styrene)アロイ樹脂、又はABS樹脂等の樹脂製である。
【0056】
図4A図4Cは、比較例としての警報装置10Xと、本実施形態に係る警報装置10の壁W1への設置状態を表す模式図である。図4Aは、比較例としての警報装置10Xを示し、図4Bは、本実施形態に係る警報装置10の露出設置による設置状態を示し、図4Cは、本実施形態に係る警報装置10の埋込設置による設置状態を示す。
【0057】
ここでは、比較例として、図4Aに示すように、ボディ11X及びカバー12Xを含むハウジング1Xと、表示灯3Xと、を備える警報装置10Xを想定する。さらに、ここでは、比較例の警報装置10Xとしては、取付ボックス6Xを用いて露出設置される場合を想定する。比較例における表示灯3Xは、透光性を有するドーム状の灯体カバーを有し、灯体カバーの後方に配置された光源からの光により灯体カバーを直接的に照らす構成を採用している。この場合、灯体カバーの表面において、輝度のばらつきが生じやすい。しかも、このような構成では、ハウジング1Xの前面101Xから、表示灯3Xが大きく突出することになる。したがって、壁W1からの表示灯3Xの突出量(高さ)L2は、壁W1からのハウジング1Xの前面101Xの突出量(高さ)L1よりも更に大きくなる(L2>L1)。結果的に、比較例に係る警報装置10Xでは、取付対象である壁W1からの突出量(高さ)が比較的大きくなる。特に、通路(廊下を含む)等の比較的狭い幅の空間に警報装置10Xが設置されている場合、この空間(通路等)内に警報装置10Xが張り出すことで、この空間(通路等)を通る人にとって警報装置10Xが邪魔になりやすい。
【0058】
これに対して、本実施形態に係る警報装置10は、同じ露出設置であったとしても、表示灯3の発光部311は、ハウジング1の前面101における少なくとも発光部311の周囲と面一であるので、図4Bに示すように、表示灯3による出っ張りが生じない。つまり、本実施形態に係る警報装置10では、取付ボックス6を用いて、取付対象である壁W1に取り付けられた状態でも、壁W1からの表示灯3の突出量(高さ)L3は、比較的小さく抑えられる。ただし、壁W1からのハウジング1の前面101の突出量L3内に、表示灯3を収めるために、通常ならばハウジング1の前後方向の寸法が大きくなると考えられる。本実施形態に係る警報装置10では、後述する低背化の工夫により、ハウジング1の前後方向の寸法も小さく抑えている。その結果、本実施形態に係る警報装置10では、壁W1からのハウジング1の前面101の突出量L3を、比較例における壁W1からのハウジング1Xの前面101Xの突出量L1よりも小さくすることを可能とする。
【0059】
また、本実施形態に係る警報装置10が、埋込設置される場合には、図4Cに示すように、壁W1からのハウジング1の前面101の突出量(高さ)L4を更に小さく抑えることが可能である。つまり、埋込設置においては、取付対象である壁W1に施工孔W11を空け、この施工孔W11内にハウジング1の後部を挿入するようにして、ハウジング1の一部(後部)が壁W1に埋め込まれた状態で警報装置10が設置される。厳密には、警報装置10は、ボディ11における平板部111の後面、及びカバー12の後面を壁W1に当てた状態で、ボディ11の収容部112を施工孔W11に挿入するようにして、壁W1に取り付けられる。つまり、平板部111の後面及びカバー12の後面は、壁W1における施工孔W11の周囲に接触する。屋外で使用される場合には、この部分、つまり平板部111の後面及びカバー12の後面と壁W1との間に、防水用のシーリングが施されることが好ましい。また、このような埋込設置においては、図4Cに示すように、壁W1内(壁裏)に配置されたスイッチボックスB1を用いて、警報装置10が取り付けられる。つまり、ハウジング1は、取付ボックス6に代えてスイッチボックスB1に対して取り付けられることで、取付対象である壁W1に固定される。
【0060】
(2.3)起動ユニットの構成
次に、起動ユニット2の構成について図5図8を参照して説明する。
【0061】
起動ユニット2は、図5に示すように、押ボタン21及び可動子22に加えて、復旧ボタン23、ベース部材24、一対の可動板25、一対のばね26及び蓋27を有している。蓋27は、複数本(ここでは4本)のねじ28にて、ベース部材24に固定される。
【0062】
ベース部材24は、ハウジング1に固定される。ベース部材24は、円環状の環状プレート241を含んでいる。ここで、ベース部材24は、環状プレート241をハウジング1の前面101側に露出させるように、ハウジング1のカバー12に固定される。つまり、ベース部材24のうち、ハウジング1に固定された状態でハウジング1の前面101側に露出する部分が、環状プレート241を構成する。ベース部材24は、環状プレート241から外側に張り出した張出部243を含んでおり、張出部243が複数本(ここでは4本)のねじ29(図8参照)にてハウジング1のカバー12に固定される。
【0063】
ベース部材24の中央部であって、環状プレート241の内側となる部位には、押ボタン21の操作面211を露出させるための丸孔244が形成されている。さらに、環状プレート241における丸孔244の上方には、復旧ボタン23を露出させるための孔246が形成されている。
【0064】
ベース部材24は、その後面側に収容室245を有している。ベース部材24の収容室245には、押ボタン21、可動子22、復旧ボタン23、一対の可動板25及び一対のばね26が収容される。蓋27は、収容室245の後面を塞ぐように、ベース部材24に対して固定される。
【0065】
ベース部材24は、ハウジング1と同様に、例えば、ポリカーボネート樹脂、ASA樹脂、PC/ABSアロイ樹脂、又はABS樹脂等の樹脂製である。
【0066】
可動子22は、押ボタン21に連動する。つまり、操作面211が押されるように押ボタン21が操作されることで、可動子22は第1位置から第2位置に移動する。可動子22は、一対の軸片221を有している。一対の軸片221は、可動子22の左右方向(X軸方向)の両端部に設けられている。可動子22は、一対の軸片221が蓋27に支持されることで、一対の軸片221を中心に回転可能な状態で、蓋27に保持される。具体的には、可動子22は、一対の軸片221を通る回転軸Ax1(図6参照)を中心にして回転することで、第1位置と第2位置との間を移動する。
【0067】
本実施形態では、押ボタン21が後述する定常位置にある状態で、可動子22は第1位置にあり、押ボタン21が後述する操作位置にある状態で、可動子22は第2位置にある。言い換えれば、押ボタン21が定常位置から操作位置に移動するのに伴って、可動子22は第1位置から第2位置に移動する。
【0068】
起動ユニット2では、可動子22の第1位置から第2位置への移動が、出力として取り出される。すなわち、起動ユニット2は、内部に電子回路等を含んでおらず、可動子22の移動という形で、メカ的(機械的)な出力を行うユニットである。このような起動ユニット2の出力、つまり可動子22の第1位置から第2位置への移動は、後述する回路基板4が発報信号を出力するためのトリガとなる。言い換えれば、回路基板4は、起動ユニット2の出力(可動子22の第1位置から第2位置への移動)をトリガに、発報信号を出力する。
【0069】
具体的には、可動子22は、回路基板4に設けられている接点部47を駆動する。接点部47は、図7に示すように、固定接点471と、可動接点472と、押し子473と、を有している。固定接点471は、回路基板4の基板本体41に固定されている。可動接点472は、固定接点471から離れる離間位置と、固定接点471に接触する接触位置との間を移動可能である。本実施形態では一例として、可動接点472は、常時は離間位置に位置するばね接点からなる。また、本実施形態では一例として、接点部47は、固定接点471及び可動接点472を一対ずつ有している。押し子473は、これら一対の可動接点472に跨って固定されている。つまり、接点部47は常開(ノーマリオフ)型の接点であって、押し子473に外力が加わって、一対の可動接点472が、その弾性力に抗して接触位置に移動することをもってオンする。可動子22は、第1位置から第2位置へ移動する際に、押し子473を押すことで、接点部47をオフからオンにする。
【0070】
一対の可動板25は、上下方向(Z軸方向)における押ボタン21の両側に配置される。各可動板25は、舌片251と、外端部252と、一対の軸片254と、一対の引掛片255と、を有している。舌片251は、各可動板25のうち上下方向(Z軸方向)において押ボタン21側の端部に設けられている。外端部252は、各可動板25のうち上下方向(Z軸方向)において押ボタン21とは反対側の端部に設けられている。一対の軸片254は、各可動板25の左右方向(X軸方向)の両端部に設けられている。一対の引掛片255は、各可動板25における外端部252の左右方向(X軸方向)の両側に設けられている。各可動板25は、一対の軸片254が蓋27に支持されることで、一対の軸片254を中心に回転可能な状態で、蓋27に保持される。また、各可動板25における外端部252の近傍には、復旧ボタン23と結合するための結合孔253が形成されている。
【0071】
一対のばね26は、左右方向(X軸方向)における押ボタン21の両側に配置される。各ばね26は、引っ張りばねであって、その長手方向(上下方向)の両端部が、一対の可動板25の引掛片255にそれぞれ引っ掛けられる。つまり、各ばね26の長手方向の一端部は、一方の可動板25の引掛片255に引っ掛けられ、各ばね26の長手方向の他端部は、他方の可動板25の引掛片255に引っ掛けられる。これにより、一対のばね26は、一対のばね26が架け渡された一対の可動板25の引掛片255同士を、互いに近づける向きの弾性力を発生する。
【0072】
復旧ボタン23は、可動子22を第1位置から第2位置に戻すための部材である。復旧ボタン23は、一対の可動板25のうちの一方(本実施形態では上方)の可動板25の結合孔253に挿入されることで、この可動板25と結合される。押ボタン21が操作位置にある状態で、復旧ボタン23が後方(Y軸の正の方向)に押されることをもって、操作位置にある押ボタン21が定常位置に復旧(移動)する。つまり、押ボタン21の操作状態(操作位置にある状態)は、復旧ボタン23の操作によって解除される。
【0073】
押ボタン21は、ハウジング1の前面101に配置される操作面211を有している。押ボタン21は、環状プレート241の内側の丸孔244内に配置されるようにして、ベース部材24に組み付けられる。押ボタン21は、操作面211が後方(Y軸の正の方向)に比較的強く押されることをもって操作される。押ボタン21の操作面211は、環状プレート241の前面の中心に配置されている。本実施形態では、押ボタン21の操作面211は、環状プレート241の内周に比べて径が小さい円形状である。さらに、本実施形態では、正面視において、押ボタン21の操作面211の中心点と環状プレート241の中心点とが一致する。つまり、押ボタン21の操作面211は、環状プレート241の同心円状である。
【0074】
押ボタン21は、定常位置と操作位置との間で移動可能に構成されている。押ボタン21が定常位置にある状態では、図6に示すように、押ボタン21の操作面211は環状プレート241の前面と略面一になる。押ボタン21が定常位置にある状態で、操作面211が後方に押されることにより、押ボタン21は操作位置に移動する。押ボタン21が操作位置にある状態では、図6に想像線(二点鎖線)で示すように、押ボタン21の操作面211は環状プレート241の前面に対して後方に窪むことになる。押ボタン21は、自己保持型のボタンであって、一旦、操作位置に移動すると、自動的には定常位置に復帰せず、復旧ボタン23が操作されることをもって定常位置に復帰する。
【0075】
より詳細には、押ボタン21は、操作面211が形成された円盤部212と、円盤部212の後面から後方に突出する突出部213と、を有している。突出部213の上下方向(Z軸方向)の両端面には、引掛凹部214が形成されている。一対の引掛凹部214には、一対の可動板25の舌片251が挿入されることで、舌片251が引掛凹部214に引っ掛かる。そのため、押ボタン21が定常位置と操作位置との間を移動するのに伴って、一対の可動板25が駆動される。
【0076】
押ボタン21の押操作時における起動ユニット2の動作、及び押ボタン21の復旧時における起動ユニット2の動作について、図6及び図7を参照して説明する。
【0077】
定常位置にある押ボタン21の操作面211が押されると、矢印A1で示すように、押ボタン21が後方(Y軸の正の方向)に移動し、これに伴って、一対の可動板25が回転する。このとき、一対の可動板25は、各舌片251が後方(Y軸の正の方向)に移動し、かつ各外端部252が前方(Y軸の負の方向)に移動するように、矢印A2の向きに回転する。しかも、一対の可動板25が回転する際に、一対の可動板25が略前後方向に対して直交する姿勢となった時点で、一対のばね26が最も伸びるため、この時点の前後で、一対の可動板25が一対のばね26に引っ張られて回転する方向が反転する。そして、一対のばね26から作用する力の反転により、一対の可動板25が矢印A2の向きに継続的に回転する。そのため、一対の可動板25に連動して押ボタン21が操作位置まで移動し、かつ外端部252に押された可動子22が回転する。このとき、可動子22は、回転軸Ax1を中心にして、その上端部が後方(Y軸の正の方向)に移動するように、矢印A3の向きに回転する。つまり、可動子22は第1位置から第2位置に移動する。その結果、可動子22の上端部にて、接点部47の押し子473が押されて、可動接点472が固定接点471に接触する。結果的に、接点部47がオンする。
【0078】
一方、押ボタン21が操作位置にある状態では、環状プレート241の前面から復旧ボタン23が前方(Y軸の負の方向)に突出する。この状態で、復旧ボタン23が押されると、復旧ボタンが後方(Y軸の正の方向)に移動し、これに伴って、一対の可動板25が回転する。このとき、一対の可動板25は、各舌片251が前方(Y軸の負の方向)に移動し、かつ各外端部252が後方(Y軸の正の方向)に移動するように、矢印A2とは反対の向きに回転する。そして、一対のばね26から一対の可動板25に作用する力の反転により、一対の可動板25に連動して押ボタン21が定常位置まで移動し、かつ外端部252が可動子22から離間する。このとき、可動子22は、可動接点472の弾性力で押し戻され、回転軸Ax1を中心にして、その上端部が前方(Y軸の負の方向)に移動するように、矢印A3とは反対の向きに回転する。つまり、可動子22は第2位置から第1位置に移動する。その結果、可動子22から接点部47の押し子473に加わる力が解除されて、可動接点472が固定接点471から離間する。結果的に、接点部47がオフする。
【0079】
このように構成される起動ユニット2は、図8に示すように、ハウジング1の前壁(カバー12)に後面側から取り付けられる。すなわち、起動ユニット2は、少なくとも一部をハウジング1の前壁(カバー12)の後面に対向させるようにハウジング1の前壁に取り付けられる。このとき、起動ユニット2は、少なくともベース部材24の張出部243をカバー12の後面における貫通孔121の周囲に対向させた状態で、複数本のねじ29にてカバー12に固定される。ここで、ベース部材24(張出部243)は、上述したように、カバー12との間に表示灯3の一部を挟み込むようにして、カバー12に取り付けられる。
【0080】
その結果、起動ユニット2及び表示灯3は、カバー12に取り付けられた状態で、少なくとも一部がこの貫通孔121を通してカバー12の前面(ハウジング1の前面101)側に露出する。起動ユニット2は、少なくとも押ボタン21(操作面211)、及び環状プレート241が、貫通孔121を通して前面101側に露出する。
【0081】
(2.4)表示灯の構成
次に、表示灯3の構成について図6図8図10を参照して説明する。
【0082】
表示灯3は、図6に示すように、発光部311に加えて、光源部32と、導光部材33と、を更に有している。光源部32は、ハウジング1内に収容される。導光部材33は、光源部32からの光を発光部311に導くことにより発光部311を発光させる。
【0083】
本実施形態では、表示灯3は、発光部311を含む灯体カバー31を有している。つまり、発光部311は、灯体カバー31の一部である。また、本実施形態では、表示灯3は、中間部材34及び拡散部材35を更に備えている。
【0084】
灯体カバー31は、正面視円環状に形成されている。ここで、灯体カバー31は、発光部311をハウジング1の前面101側に露出させるように、ハウジング1のカバー12に固定される。つまり、灯体カバー31のうち、ハウジング1に固定された状態でハウジング1の前面101側に露出する部分が、発光部311を構成する。灯体カバー31は、発光部311から外側に張り出した周辺部312を含んでおり、周辺部312が、起動ユニット2と共にハウジング1のカバー12に固定される。
【0085】
すなわち、本実施形態では、上述したように、起動ユニット2のベース部材24(張出部243)は、カバー12との間に表示灯3の一部(周辺部312)を挟み込むようにして、カバー12に取り付けられる(図8参照)。そのため、表示灯3のうちの灯体カバー31は、起動ユニット2のベース部材24とカバー12との間に挟み込まれた状態で、起動ユニット2と共にハウジング1に固定される。そして、灯体カバー31がハウジング1に固定された状態で、少なくとも発光部311が、貫通孔121を通して前面101側に露出する。このように、表示灯3は、発光部311を含む灯体カバー31を有している。そして、起動ユニット2は、ハウジング1の前壁(カバー12)との間に灯体カバー31を挟んでハウジング1の前壁に取り付けられている。
【0086】
灯体カバー31のうち、少なくとも発光部311として機能する部位は透光性を有しており、導光部材33からの光が発光部311を通して前方(Y軸の負の方向)に出力される。これにより、発光部311が発光することとなり、表示灯3を前方から見た人にとっては円環状の光が見える。本実施形態では一例として、灯体カバー31は、透光性を有し、赤色に着色されたPC樹脂、ASA樹脂、PC/ABSアロイ樹脂、又はABS樹脂等の樹脂製である。
【0087】
灯体カバー31の中央部であって、発光部311の内側となる部位には、起動ユニット2(押ボタン21及び環状プレート241)を露出させるための透孔313が形成されている。これにより、表示灯3が起動ユニット2と組み合わされた状態では、押ボタン21の操作面211及び環状プレート241が透孔313を通して灯体カバー31の前面側に露出する。
【0088】
ここにおいて、表示灯3が起動ユニット2と共にハウジング1(カバー12)に固定された状態では、表示灯3の発光部311は、ハウジング1(カバー12)の前面101における少なくとも発光部311の周囲と面一である。つまり、貫通孔121を通してカバー12の前面101側に露出する発光部311の前面と、前面101における貫通孔121の周辺部位とは面一である。本実施形態では、ハウジング1の前面101は平面(平坦面)であるので、ハウジング1の前面101の略全域が、表示灯3の発光部311と面一となる。
【0089】
さらに、表示灯3の発光部311は、押ボタン21の操作面211とも面一である。つまり、透孔313を通して灯体カバー31の前面側に露出する押ボタン21の操作面211及び環状プレート241のうちの少なくとも操作面211と、表示灯3の発光部311の前面とは面一である。また、本実施形態では、正面視において、発光部311と操作面211との間に位置する環状プレート241についても、発光部311と面一である。つまり、透孔313を通して灯体カバー31の前面側に露出する環状プレート241についても、表示灯3の発光部311の前面と面一である。
【0090】
そのため、本実施形態では、貫通孔121を通してカバー12の前面101側に露出する、発光部311と環状プレート241と操作面211とは面一である(略同一平面にある)。さらに、発光部311とハウジング1の前面101とは面一であるので、結果的に、ハウジング1の前面101と発光部311と環状プレート241と操作面211とは全て面一となる。このような形状によれば、ハウジング1の前面101からの出っ張りがないため、本実施形態に係る警報装置10では、取付対象である壁W1からの突出量(高さ)L3,L4は、比較的小さく抑えられる(図4B及び図4C参照)。しかも、ハウジング1の前面101には窪みが生じないため、ハウジング1の内部空間を、起動ユニット2及び表示灯3等の収容に有効に活用でき、ハウジング1自体の寸法を比較的小さく抑えることができる。さらに、ハウジング1の前面101に窪みが生じないことで、ハウジング1の前面101に汚れが溜まりにくく、警報装置10のメンテナンスの手間を軽減できる。
【0091】
上記より、発光部311は、ハウジング1の前面101に配置される。発光部311は、正面視において操作面211を囲む環状である。本開示でいう「環状」は、押ボタン21の操作面211を概ね囲む形状であればよく、操作面211の周方向の全長に亘って連続する閉ループ形状に限らず、例えば、周方向の一部が開放された形状であってもよい。さらに、「環状」は、円形状(円環状)に限らず、例えば、楕円形状及び多角形状等であってもよい。
【0092】
本実施形態では、発光部311は、環状プレート241よりも径が大きい円環状に形成されている。言い換えれば、正面視において、発光部311の内側に、起動ユニット2の環状プレート241及び押ボタン21(操作面211)が位置する。このように、表示灯3が起動ユニット2と組み合わされた状態では、正面視において、表示灯3の発光部311で囲まれた領域に、起動ユニット2が位置する。したがって、表示灯3が点灯し、発光部311が発光することで、起動ユニット2の位置が明示される。
【0093】
特に、本実施形態では、操作面211は、発光部311で囲まれる領域の中心に位置する。つまり、本実施形態では、押ボタン21の操作面211は、環状プレート241の前面の中心に配置されている。しかも、押ボタン21の操作面211は、環状プレート241の内周に比べて径が小さい円形状である。そして、環状プレート241の周囲には、円環状の発光部311が位置している。ここで、操作面211は、発光部311と同心円状である。要するに、本実施形態では、正面視において、押ボタン21の操作面211の中心点と円環状の発光部311の中心点とが一致する。そのため、押ボタン21の操作面211、環状プレート241及び発光部311は同心円状となる。
【0094】
さらに、正面視において、発光部311と操作面211との間に位置する環状プレート241には、上述したように、復旧ボタン23を露出させるための孔246が形成されている。そのため、復旧ボタン23は、正面視において、発光部311と操作面211との間に配置されることになる。よって、復旧ボタン23は、押ボタン21の操作面211と共に、円環状の発光部311で囲まれることになる。
【0095】
また、灯体カバー31の後面側には、背面視において円環状の溝部314が形成されている。溝部314には、導光部材33が収容される。導光部材33は、発光部311のほぼ全域に亘って発光するように、灯体カバー31の前面の外周縁に沿った円環状に形成されている。導光部材33は前方(Y軸の負の方向)に向けて光を出力することにより、上述したように導光部材33からの光が灯体カバー31の発光部311を通して前方に出力される。
【0096】
ここで、導光部材33は、溝部314に収容された状態で、灯体カバー31と起動ユニット2との間に挟まれるようにして、ハウジング1のカバー12に固定される。つまり、本実施形態では、表示灯3は、灯体カバー31を有している。灯体カバー31は発光部311を含んでいる。そして、起動ユニット2は、灯体カバー31との間に導光部材33を挟んで導光部材33を保持している。本実施形態では、上述したように、起動ユニット2は、少なくとも一部(ベース部材24の張出部243)をハウジング1の前壁(カバー12)の後面に対向させるようにハウジング1の前壁に取り付けられる。そこで、図8に示すように、起動ユニット2は、少なくともベース部材24の張出部243と、カバー12の後面における貫通孔121の周囲との間に、灯体カバー31を挟むようにして、灯体カバー31と共にカバー12に固定される。このとき、ベース部材24の張出部243と灯体カバー31との間に、導光部材33を挟むことにより、導光部材33が保持される。
【0097】
光源部32は、図10に示すように、複数(ここでは4つ)の発光素子321を有している。これら4つの発光素子321は、上下方向(Z軸方向)に2個ずつ、左右方向(X軸方向)に2個ずつ、となるように、正面視においてマトリクス状に配置されている。図10は、光源部32、中間部材34、及び導光部材33の相対的な位置関係を示す図である。図10においては、発光部311を含む灯体カバー31は、想像線(二点鎖線)で示している。
【0098】
本実施形態では一例として、複数の発光素子321の各々は、赤色光を出力する表面実装型のチップLED(Light Emitting Diode)からなる。複数の発光素子321は、図6に示すように、回路基板4の基板本体41の前面に配置(実装)されている。したがって、基板本体41上の配線用導体を通して、光源部32に電力供給されることにより、複数の発光素子321が発光し、複数の発光素子321から赤色光が出力される。
【0099】
中間部材34は、回路基板4に設けられている光源部32からの光を、導光部材33まで導光するための部材である。中間部材34は、一例としてアクリル樹脂等の透明樹脂の成形品であって、光源部32の出力光を取り込んで、中間部材34の内部を通して導光部材33まで導く、つまり導光する部材である。
【0100】
ここで、本実施形態では、中間部材34と導光部材33とは別体である。つまり、中間部材34と導光部材33とは、物理的に分離されている。本実施形態では、導光部材33は、灯体カバー31と共にハウジング1のカバー12に固定され、中間部材34は、例えば、ハウジング1のボディ11に固定される。これにより、ボディ11とカバー12とが組み合わされて初めて、導光部材33(後述する入射部331)に対向する位置に中間部材34が配置され、中間部材34は、光源部32からの光を導光部材33に導光可能となる。
【0101】
また、中間部材34は、図10に示すように、第1導光部341と、第2導光部342と、を有している。第1導光部341は、光源部32からの光を、ハウジング1の前面101に直交する軸(Y軸)に沿って導光する。第2導光部342は、第1導光部341から出力される光をハウジング1の前面101に沿って導光する。すなわち、中間部材34は、第1導光部341と第2導光部342とで、全体として略L字状に形成されている。これにより、中間部材34では、光源部32からの光を、前方(Y軸の負の方向)に導光し、更に下方(Z軸の負の方向)に導光することが可能である。
【0102】
また、中間部材34は、第1導光部341と第2導光部342との結合部位に、反射面343を有している。反射面343は、第1導光部341から入射した光を第2導光部342に向けて反射する。反射面343は、前端に近づくほど下方(Z軸の負の方向)に位置するように、水平面に対して略45度の角度で傾斜した傾斜面である。そのため、中間部材34の内部を通る光は、第1導光部341と第2導光部342との結合部位において、反射面343にて下方に向けて反射されることとなる。これにより、中間部材34内を通る光を、効率的に導光することが可能である。
【0103】
拡散部材35は、導光部材33の前面と灯体カバー31との間に配置されている。拡散部材35は、光拡散性及び透光性(光透過性)を有している。拡散部材35は、一例として透過性光拡散部材を含んだ透光性のPC樹脂等の成形品であって、導光部材33の前面を覆う円環状に形成されている。これにより、導光部材33の前面から前方に出力される光が、拡散部材35を拡散しながら透過し、更に灯体カバー31を透過することにより、灯体カバー31の前面の少なくとも一部から前方に出力される。このとき、正面視においては、灯体カバー31の前面のうち、前後方向において拡散部材35と重なる部位が光って見えることになり、この部位が発光部311として機能する。つまり、導光部材33を収納する灯体カバー31の少なくとも一部は、透光性を有し発光部311を構成する。
【0104】
以下に、導光部材33の構成についてより詳細に説明する。
【0105】
導光部材33は、上述したように、灯体カバー31と起動ユニット2のベース部材24(張出部243)との間の空間に収納される。ここで、導光部材33の前面を覆う灯体カバー31は、赤色に着色された透光性の樹脂成形品である。一方、導光部材33の後面を覆うベース部材24(張出部243)は、赤色に着色された不透明の樹脂成形品である。
【0106】
導光部材33は、一例としてアクリル樹脂等の透明樹脂の成形品であって、光源部32の出力光を取り込んで、導光部材33の内部を通して発光部311まで導く、つまり導光する部材である。導光部材33は、発光部311の後方に位置しており、前後方向において発光部311と重なる環状に形成されている。本実施形態では、発光部311は灯体カバー31の前面の内周側に形成された円環状の領域であるので、導光部材33は、発光部311と同様の円環状に形成されている。
【0107】
導光部材33は、発光部311の周方向における一箇所(本実施形態では下端部)から、光源部32の出力光を取り込み、導光部材33の周方向に導光し、導光部材33の前面から出力する。
【0108】
導光部材33は、図9に示すように、入射部331と、円筒状の筒体部332と、出射部333と、を有している。入射部331は、光源部32からの光を筒体部332に取り込むための部位であって、筒体部332の上端部に設けられている。すなわち、導光部材33は、発光部311の周方向における1箇所(下端部)に、光源部32からの光が入射する入射部331を有している。出射部333は、筒体部332から光を取り出すための部位であって、筒体部332の前方に設けられている。本実施形態では、出射部333は、正面視において円環状であって、かつ前後方向を厚み方向とする板状の部材からなる。筒体部332は、出射部333の後面から後方に突出する形で、出射部333と一体に形成されている。
【0109】
入射部331は、筒体部332の外周面の一部から突出する。本実施形態では、入射部331は、筒体部332の外周面のうち上端となる位置から、上方(Z軸の正の方向)に突出する。入射部331の先端面(上面)には、中間部材34の第2導光部342が対向するように配置される。中間部材34は、入射部331に向けて出力光が出力される向きで、入射部331の上方に配置されている。これにより、光源部32から出力された光が、中間部材34を通して、入射部331に入射する。
【0110】
上述したように、本実施形態では、導光部材33は、入射部331を有している。入射部331は、導光部材33において、光源部32からの光が入射する部位である。光源部32は、回路基板4に設けられている。中間部材34は、光源部32からの光を入射部331に導光する。そのため、光源部32が設けられた回路基板4と、導光部材33とが離れていても、両者間に中間部材34が介在することで、光源部32からの光は中間部材34を通して導光部材33に入射することになる。このように、中間部材34は、光源部32から導光部材33までの光路を形成する。
【0111】
ここで、導光部材33は、光源部32からの光を、正面視において導光部材33の周方向の両周りに導くように構成されている。本実施形態では、上述したように光源部32からの光を筒体部332に取り込むための入射部331が、筒体部332の上端部に設けられている。そのため、入射部331から筒体部332に導入された光は、背面視において筒体部332内を時計回りの光路で進む光(光線束)と、反時計回りの光路で進む光(光線束)とに分かれて、筒体部332の下端部に到達する。実際には、各光路を通る光は、筒体部332の内周面及び外周面で反射を繰り返しながら、筒体部332内を進む。
【0112】
また、導光部材33は、光源部32から導光部材33に入射した光を導光部材33の周方向に沿う向きの光に変換する光学ミラー334(図9参照)を更に備えている。本実施形態では、上述したように導光部材33は、入射部331から筒体部332に導入された光を2つの光路に分けて導光するため、導光部材33には一対の光学ミラー334が設けられている。一対の光学ミラー334は、筒体部332の外周面における入射部331の裏面となる位置に設けられ、正面視において下方に開放された略V字状となる一対の平面からなる。一対の光学ミラー334の各々は、その表面が鏡面加工され、入射部331の先端面(上面)に対して略45度の角度で傾斜しており、一対の光学ミラー334は略90度の角度で互いに交差する。これにより、光源部32から入射部331に入射した光は、一対の光学ミラー334のいずれかで、導光部材33の周方向に沿う向き(右向き又は左向き)に反射され、2つの光路のいずれかに振り分けられる。
【0113】
ここにおいて、光源部32(発光素子321)から離れる程に前後方向における導光部材33の厚みが小さくなるように、導光部材33の後面(筒体部332の後面)は導光部材33の前面に対して傾斜している。そのため、導光部材33における筒体部332の前後方向の寸法は一定ではなく、入射部331から離れる程、つまり筒体部332の下端部に近づく程に、筒体部332の前後方向の寸法が小さくなる。
【0114】
さらに、導光部材33は、導光部材33の後面(筒体部332の後面)に形成された複数の導光溝335を有している。複数の導光溝335は、正面視における筒体部332の中心点から放射状に延びるように形成された溝であって、各々の底面は鏡面加工されている。これら複数の導光溝335は、入射部331から見て筒体部332の周方向の両周りに、それぞれ略等間隔で並ぶように形成されている。複数の導光溝335の各々は、入射部331から遠い方の内側面が筒体部332の周方向に対して略直交する鋸歯状に形成されている。さらに、複数の導光溝335は同一形状ではなく、入射部331から離れる程に導光溝335が深くなるように構成されている。
【0115】
上述したような構成により、導光部材33は、筒体部332の後面に入射する光を、導光溝335の底面にて効率的に前方に向けて反射することができ、筒体部332の前方の出射部333からの光の取出効率の向上を図ることができる。しかも、入射部331から離れる程に導光溝335が深くなるので、入射部331からの距離の違いによる輝度のばらつきを小さく抑えることができる。
【0116】
ところで、本実施形態では、導光部材33の前面と灯体カバー31(発光部311)との間には、光拡散性及び透光性を有する拡散部材35が設けられている。そこで、導光部材33は、拡散部材35後面の全域に対して、極力均一に光が入射するように、以下のような構成を採用している。
【0117】
すなわち、導光部材33の出射部333は、図10に示すように、筒体部332に比べて、筒体部332の径方向(以下、「幅方向」ともいう)における寸法が大きく設定されている。さらに、出射部333の前面には、断面V字状の溝336が出射部333の周方向の全周に亘って形成されている。溝336の底面は、鏡面加工されている。これにより、出射部333では、筒体部332から入射した光を幅方向に広げることが可能である。
【0118】
つまり、筒体部332から出射部333に入射した光は、溝336の底面で幅方向の両側に向けて反射され、更に出射部333における幅方向の両端面にて前方に向けて反射される。これにより、出射部333の幅方向の略全域から光が取り出されることになり、拡散部材35後面の全域に対して、極力均一に光が入射する。拡散部材35に入射した光は拡散部材35を透過する際に拡散されるので、拡散部材35の前面は、全域に亘って略均一に発光することになる。言い換えれば、拡散部材35の前面は面発光する。
【0119】
上記構成によれば、正面視において環状の発光部311を発光させながらも、光源部32の出力光が発光部311に直接的に入射するのではなく、導光部材33を介して発光部311に入射する。よって、発光部311の周方向において比較的均一な発光状態を実現可能である。しかも、拡散部材35の前方に設定された円環状の発光部311が発光することとなり、表示灯3を前方から見た人にとっては円環状の光が見える。このとき、実際には、透光性を有する発光部311の奥(後方)にある拡散部材35の前面が面発光しているので、表示灯3を前方から見ると、灯体カバー31の内側が光っているように見え、深みのある光に見える。
【0120】
(2.5)内器の構成
次に、内器100の構成について図11図14を参照して説明する。
【0121】
本開示でいう内器100は、ハウジング1のうちのボディ11、及びボディ11に収容される部品(回路基板4及びスピーカ5等)を含む。つまり、内器100は、起動ユニット2及び表示灯3と共に、カバー12と組み合わされる。
【0122】
内器100は、図11に示すように、ボディ11と、回路基板4と、スピーカ5と、蓄電池7(図13A参照)と、試験用操作部8と、を有している。
【0123】
ボディ11は、上述したように、平板部111と、収容部112と、裏蓋部113と、を有している。これら平板部111、収容部112及び裏蓋部113で囲まれる空間内に、回路基板4及びスピーカ5等が収容される。収容部112は、少なくとも後面が開口した筒状であって、平板部111と一体化されている。裏蓋部113は、複数本(ここでは7本)ねじ114にて、収容部112に固定される。
【0124】
回路基板4は、プリント配線板からなる基板本体41と、基板本体41に実装される種々の電子部品と、を有している。基板本体41に実装される種々の電子部品は、図12A及び図12Bに示すように、トランス42、コンデンサ43及び複数(ここでは3つ)のヒューズ44に加えて、接点部47、端子部48及びコネクタ49等を含む。さらに、基板本体41には、スイッチ82が実装されている。スイッチ82は、操作子81(図11参照)と共に、試験用操作部8を構成する。
【0125】
端子部48は、複数(ここでは6つ)の端子481を含んでいる。複数の端子481の各々は、ねじ端子である。端子部48は、基板本体41の前面における下端部に配置されている。複数の端子481は、基板本体41の前面の下端縁に沿って一列に並べて配置されている。ここで、ボディ11の平板部111において、通線口115の直上には、後方に窪んだ「窪み」が形成されている。この窪みの底面には、ボディ11(平板部111)を前後方向に貫通する複数(ここでは6つ)の端子孔119(図11参照)が形成されている。そして、回路基板4がボディ11に組み付けられた状態では、複数の端子481は、それぞれ複数の端子孔119を通して、ボディ11の前面側に露出する。このような構成により、回路基板4がボディ11に組み付けられた状態では、ボディ11の前面において通線口115に臨む位置に、端子部48が露出することになる。よって、端子部48には、通線口115を通してボディ11の前面側に引き込まれた配線が接続可能である。
【0126】
コネクタ49は、蓄電池7を電気的に接続するためのコネクタである。コネクタ49は、基板本体41の前面における上端部に配置されている。基板本体41におけるコネクタ49の下方には、丸孔411が形成されている。
【0127】
スピーカ5は、ボディ11の後面におけるスピーカ配置部116内に収容される。スピーカ配置部116は、収容部112内に配置されている。スピーカ配置部116の底面には、ボディ11(平板部111)を前後方向に貫通する孔が形成されている。スピーカ5は、スピーカ配置部116の底面との間にバッフルリング51を挟んだ状態で、複数本(ここでは2本)のねじ53により、ボディ11に固定される。スピーカ5の前面は防水シートで覆われていることが好ましく、この場合、防水シートは、例えば、バッフルリング51とボディ11との間に挟まれることで固定される。
【0128】
スピーカ5の後部は、基板本体41の丸孔411に挿入される。これにより、収容部112内に、スピーカ5及び回路基板4が収容された状態では、スピーカ5の後部は、丸孔411を通して回路基板4の後面から突出する。スピーカ5の後面は、バッフル板52を介して、裏蓋部113に押し当てられる。
【0129】
また、カバー12において、スピーカ5に対向する位置には、音出力孔122(図8参照)が形成されている。さらに、カバー12の前面101には、音出力孔122を覆うように、微小な孔が多数形成された第1シート124が貼り付けられる(図8参照)。これにより、スピーカ5から出力される音は、ハウジング1の前面101における第1シート124付近から、ハウジング1の外部に出力されることになる。
【0130】
試験用操作部8は、操作子81及びスイッチ82を有している。操作子81は、ボディ11を貫通して、ボディ11の前面側に突出する。また、カバー12において、操作子81に対向する位置には、角孔123(図8参照)が形成されている。さらに、カバー12の前面101には、角孔123を覆うように、第2シート125が貼り付けられる(図8参照)。これにより、操作子81は、ハウジング1の前面101における第2シート125越しに、ハウジング1の外部から操作可能となる。操作子81が押操作されることで、スイッチ82が間接的に操作される。
【0131】
また、ボディ11(平板部111)のうち、接点部47に対応する位置には、ボディ11を前後方向に貫通する操作孔117が形成されている。操作孔117には、接点部47の押し子473が挿入される。これにより、ボディ11の前面側から、回路基板4上の接点部47(可動接点472)が操作可能となる。
【0132】
そして、接点部47は、押し子473に外力が加わって、一対の可動接点472が、その弾性力に抗して接触位置に移動することをもってオンする。回路基板4は、接点部47がオンすると、発報信号を出力する。ここで、起動ユニット2の可動子22が第1位置から第2位置へ移動することで、押し子473に外力が加わる。したがって、可動子22の第1位置から第2位置への移動をトリガに、発報信号が出力されることになる。そして、スピーカ5は、発報信号を受けて警報音を出力する。
【0133】
ところで、図13Aに示すように、ボディ11の前面における上端部には、電池収容部118が形成されている。電池収容部118は、後方に窪んだ凹所であって、蓄電池7を収容する。ボディ11にカバー12が取り付けられた状態では、電池収容部118の前方はカバー12によって覆われる。よって、電池収容部118内の蓄電池7は、ボディ11とカバー12との間に挟まれるようにして、ハウジング1内に収容されることになる。電池収容部118の下方には、回路基板4上のコネクタ49が露出している。そのため、電池収容部118内の蓄電池7と、コネクタ49とをつなぐケーブルを比較的短くできる。
【0134】
また、内器100には、図13A図13Cに示すように、通線口115に加えて、ボディ11を前後方向(Y軸方向)に貫通する孔として、複数(ここでは4つ)の取付孔141、及び複数(ここでは4つ)の固定孔142が形成されている。さらに、内器100には、ボディ11を前後方向(Y軸方向)に貫通する孔として、複数(ここでは2つ)の引掛孔143が形成されている。複数の取付孔141は、露出設置において、ボディ11(ハウジング1)を取付ボックス6に取り付けるために用いられる孔である。複数の取付孔141は、埋込設置において、ボディ11(ハウジング1)をスイッチボックスB1(図4C参照)に取り付けるために用いられる孔である。複数の引掛孔143は、露出設置において、ボディ11(ハウジング1)を取付ボックス6に仮保持するために用いられる孔である。取付孔141、固定孔142及び引掛孔143は、平板部111のうち収容部112から外方に張り出した部位、具体的には、平板部111の左右方向(X軸方向)の両端部に形成されている。さらに、内器100は、平板部111の左右方向(X軸方向)の両端部に、カバー12とボディ11とを機械的に結合するための複数(ここでは4つ)の保持部16を有している。
【0135】
さらに、ボディ11の前面における下端部(通線口115の下方)の中央部には、インサートナット132が配置されている。このインサートナット132に対して、カバー12を通してねじ131が締め付けられることにより、カバー12がボディ11に固定されることになる。
【0136】
また、詳しくは「(2.7)防水構造」の欄で説明するが、ボディ11には、回路基板4等に液体が付着することを抑制するための防水構造として、第1庇部151及び第2庇部152が形成されている。第1庇部151及び第2庇部152は、ボディ11の前面に形成されている。
【0137】
図14は、内器100の構成部品の位置関係を示す概略図である。図14では、ボディ11における平板部111及び収容部112の図示を省略し、回路基板4、スピーカ5、蓄電池7及び裏蓋部113を図示している。図14から明らかなように、蓄電池7は、回路基板4の上方(Z軸の正の方向)に位置する。すなわち、ハウジング1に収容される蓄電池7と、回路基板4とは、ハウジング1の前面101に沿う一方向(ここでは上下方向)に並んで配置されることになる。つまり、本実施形態では、上述したように、ボディ11の前面の上端部に形成された凹所からなる電池収容部118に、蓄電池7が収容されるため、収容部112に収容される回路基板4の上方に蓄電池7が位置する。
【0138】
このように、ハウジング1の前面101に沿う一方向において、蓄電池7と回路基板4とが並べて配置されることで、蓄電池7と回路基板4とが前後方向(Y軸方向)に重なる場合に比べて、ハウジング1の低背化を図ることができる。つまり、蓄電池7は、内器100の構成部品の中でも特に背が高く(前後方向の寸法が大きく)、蓄電池7の高さ内に回路基板4を配置することで、蓄電池7及び回路基板4を収容するハウジング1の前後方向の寸法を比較的小さく抑えられる。結果的に、蓄電池7と回路基板4とが前後方向に並んで配置される場合に比べて、ハウジング1を低背化することができ、上述した「低背化の工夫」が具現化される。
【0139】
また、スピーカ5は、回路基板4の一部と前後方向(Y軸方向)に重なる位置に配置される。つまり、スピーカ5は、上述したように、その後部を基板本体41の丸孔411(図12B参照)に挿入するようにして、回路基板4に対して前方(Y軸の負の方向)から組み合われる。特に、スピーカ5は、正面視において回路基板4の上半分(上下方向における中心よりも上側)と重なるように配置されている。このような配置によれば、蓄電池7は、スピーカ5よりも上方に位置することになる。つまり、蓄電池7は、上述したように回路基板4の上方に位置するので、回路基板4の一部と前後方向に重なるスピーカ5との相対的な位置関係を見ても、蓄電池7はスピーカ5の上方に位置することになる。
【0140】
また、ボディ11の前面において通線口115に臨む位置に、端子部48が露出するように、端子部48は、基板本体41の前面における下端部に配置されている。言い換えれば、回路基板4は、回路基板4の下端部に、配線を接続するための端子部48を有している。このような端子部48の配置によれば、通線口115を通して、端子部48の下方からボディ11の前面側に引き込まれる配線を、端子部48に接続することが可能である。したがって、配線を伝って液体(水等)が端子部48に到達することを抑制しやすい。
【0141】
(2.6)警報装置の組み立て方
次に、警報装置10の組み立て方について図15図21Bを参照して説明する。ここでは、警報装置10が取付ボックス6を用いて露出設置される場合を想定する。
【0142】
警報装置10は、起動ユニット2及び表示灯3が取り付けられたカバー12と、内器100と、取付ボックス6と、の3つのブロックに大別される。そして、警報装置10の設置時においては、これら3つのブロック(カバー12、内器100及び取付ボックス6)は、図15に示すように組み合わされる。
【0143】
つまり、内器100は、取付ボックス6の前面を塞ぐように、取付ボックス6に対して組み合わされる。具体的には、内器100は、ボディ11の平板部111にて取付ボックス6の開口面(前面)を塞ぐような形で、取付ボックス6に対して機械的に結合される。このとき、内器100の一部(収容部112及び裏蓋部113等)は、取付ボックス6内に収まることになる。
【0144】
その後、起動ユニット2及び表示灯3が取り付けられた状態のカバー12が、ボディ11の前面を覆うように、内器100に対して組み合われる。これにより、ボディ11にカバー12が機械的に結合されて、ボディ11及びカバー12からなるハウジング1が構成される。このとき、ボディ11の下端部(端子部48の下方)に形成された通線口115を通して、少なくとも起動ユニット2については、ハウジング1の後面から(取付ボックス6内に)露出する。
【0145】
ここで、図15に示すように、起動ユニット2の後面は内器100に接しておらず、起動ユニット2と内器100との間には隙間G1が確保されている。そのため、起動ユニット2の後面に内器100が当たることによって、起動ユニット2ごとカバー12が前方に押されるようなことがなく、起動ユニット2の取付公差に起因した、カバー12の歪み又は浮きを抑制することができる。
【0146】
以下、内器100と取付ボックス6との結合構造について、図16図18Bを参照して、より詳細に説明する。
【0147】
すなわち、取付ボックス6は、図16に示すように、前面が開口した箱状に形成されている。取付ボックス6は、正面視において、左右方向(X軸方向)よりも上下方向(Z軸方向)に長い、つまり縦長の長方形状に形成されている。取付ボックス6は、複数(ここでは4つ)の固定ボス62と、複数(ここでは2つ)の仮保持部63と、を有している。複数の固定ボス62は、取付ボックス6に対して内器100を固定するために用いられる。複数の固定ボス62は、取付ボックス6の後壁の前面の四隅から前方に突出する。複数の仮保持部63は、取付ボックス6に対して内器100を仮保持するために用いられる。複数の仮保持部63は、取付ボックス6の後壁の前面における左右方向(X軸方向)の両端部のうちの上下方向(Z軸方向)の中央部から前方に突出する。つまり、2つの仮保持部63のうちの一方の仮保持部63は、取付ボックス6の後壁の前面の右端部に設けられた2つの固定ボス62の間に位置し、他方の仮保持部63は、取付ボックス6の後壁の前面の右端部に設けられた2つの固定ボス62の間に位置する。
【0148】
取付ボックス6に内器100が組み合わされた状態では、図17に示すように、正面視において、内器100は取付ボックス6の略全域と重なる。ここで、複数の固定ボス62は、ボディ11に形成された複数の取付孔141と、一対一で対応する位置に配置されている。また、複数の仮保持部63は、ボディ11に形成された複数の引掛孔143と、一対一で対応する位置に配置されている。そのため、ボディ11の各引掛孔143に対して、取付ボックス6の各仮保持部63を差し込むことで、取付ボックス6にて内器100(ボディ11)が仮保持される。さらに、図17の状態で、ボディ11の各取付孔141を通して、取付ボックス6の各固定ボス62にねじを締め付ければ、取付ボックス6に対して内器100(ボディ11)が固定される。
【0149】
より詳細には、仮保持部63は、図18Aに示すように、取付ボックス6の後壁から前方(Y軸の負の方向)に延びる第1片631と、第1片631の先端部から上方(Z軸の正の方向)に延びる第2片632と、を有している。つまり、仮保持部63は、第1片631と第2片632とで、全体として側面視略L字状に形成されている。取付ボックス6に内器100が組み合わされた状態では、このような仮保持部63は、ボディ11の引掛孔143に差し込まれる。このとき、仮保持部63の第2片632が、ボディ11における引掛孔143の開口周縁に引っ掛かることになり、取付ボックス6からのボディ11の脱落が防止される。このように、仮保持部63は、ハウジング1(ボディ11)に引っ掛かることによりハウジング1(ボディ11)を仮保持し、これによって内器100を仮保持する。
【0150】
ただし、仮保持部63は、取付ボックス6に対して内器100を本固定するのではなく、あくまで仮保持するだけである。本開示でいう「本固定」は、内器100が取付ボックス6に対して相対的に移動しないように完全に固定された状態を意味する。本開示でいう「仮保持」は、内器100が取付ボックス6に保持されてはいるものの、取付ボックス6に対して相対的に移動可能な状態を意味する。要するに、仮保持部63は、ハウジング1(ボディ11)に引っ掛かっているだけであって、内器100(ボディ11)は、仮保持部63にて仮保持された状態でも、少なくとも取付ボックス6に対して上方(Z軸の正の方向)に移動し得る状態にある。
【0151】
また、固定ボス62は、図18Bに示すように、ねじ孔621と、ねじ孔621の下方に位置するダボ622と、を有している。取付ボックス6に内器100が組み合わされた状態では、このような固定ボス62のねじ孔621は、ボディ11の取付孔141の背後に位置する。本実施形態では、取付孔141は、大径孔と、大径孔より小径の小径孔と、が一体に形成された「だるま孔」である。そのため、取付孔141の大径孔にねじの頭部を通すことにより、ねじがねじ孔621に対して途中まで差し込まれた状態であっても、内器100が取付ボックス6に対して着脱可能になる。
【0152】
さらに、固定ボス62のダボ622は、図18Bのように、取付孔141に差し込まれることにより、取付ボックス6に対する内器100の左右方向(X軸方向)への移動を規制する。このような固定ボス62が、取付ボックス6の四隅に設けられていることで、正面視において、取付ボックス6に対する内器100の傾き(回転)が抑制される。
【0153】
このような構成によれば、警報装置10を設置する作業者が、取付ボックス6に内器100を取り付ける際には、まず仮保持部63をハウジング1(ボディ11)に引っ掛けることで、取付ボックス6に内器100を仮保持させることが可能である。そして、内器100が仮保持された状態で、ボディ11の取付孔141を通して、取付ボックス6の固定ボス62にねじを締め付ければ、取付ボックス6に対して内器100(ボディ11)が固定(本固定)される。したがって、作業者は、ねじを締め付けるときに、内器100を手で支えておく必要がなく、作業性が向上する。
【0154】
また、仮保持部63は、取付ボックス6における上下方向(Z軸方向)の中央部に位置するので、内器100(ボディ11)に引っ掛かることで、取付ボックス6に対する内器100の浮き上がりを抑制する機能を持つ。つまり、取付ボックス6にボディ11が本固定された状態でも、仮保持部63がボディ11に引っ掛かったままである。そのため、例えば、ボディ11又は取付ボックス6に歪みが生じても、取付ボックス6の上下方向の中央部付近において、仮保持部63がボディ11に引っ掛かっていることで、ボディ11が取付ボックス6から浮き上がることを抑制できる。結果的に、取付ボックス6と内器100(ボディ11)との間に必要以上の隙間が生じることを抑制できる。
【0155】
以下、内器100とカバー12との結合構造について、図19及び図20を参照して、より詳細に説明する。
【0156】
すなわち、カバー12は、図19に示すように、後面が開口した薄箱に形成されている。カバー12は、正面視において、左右方向(X軸方向)よりも上下方向(Z軸方向)に長い、つまり縦長の長方形状に形成されている。カバー12は、その上壁の下面から下方に突出するリブ18を有している。リブ18は、左右方向に延びており、カバー12の上壁の下面のうち左右方向の両端部を除く範囲に形成されている。このリブ18により、カバー12の上壁の下面には、下方に開放された凹部181(図23B参照)が形成されることになる。詳しくは、「(2.7)防水構造」の欄で説明するが、凹部181は、カバー12の上壁の後端部から下方に突出するリブ18と、カバー12の前壁とで挟まれた領域からなる。
【0157】
また、カバー12は、右側壁及び左側壁の各内周面から内側に突出する複数(ここでは4つ)の突起126を有している。複数の突起126は、カバー12とボディ11とを機械的に結合するための構造である。
【0158】
ここで、内器100にカバー12が組み合わされた状態では、図19に示すように、ボディ11の上端部17が凹部181に挿入される。言い換えれば、カバー12は、下方に開放された凹部181を有し、ボディ11の上端部17が凹部181に挿入された状態で、カバー12がボディ11に取り付けられる。これにより、内器100にカバー12が組み合わされた状態では、カバー12のリブ18がボディ11の上端部17に引っ掛かることになり、内器100(ボディ11)からのカバー12の脱落が防止される。さらに、この状態で、カバー12の前面側から、ねじ131を、ボディ11のインサートナット132に締め付ければ、内器100(ボディ11)に対してカバー12が固定される。
【0159】
内器100にカバー12が取り付けられた状態では、図19に示すように、背面視において、内器100はカバー12の略全域と重なる。ここで、複数の突起126は、ボディ11に形成された複数の保持部16と、一対一で対応する位置に配置されている。そのため、ボディ11の各保持部16に対して、カバー12の各突起126が引っ掛かることで、ボディ11に対してカバー12が機械的に結合される。つまり、各保持部16は、スナップフィット方式によりボディ11とカバー12とを機械的に結合する。
【0160】
より詳細には、保持部16は、図20に示すように、梁部161と、梁部161から外側に向けて突出する突片162と、を有している。梁部161は、弾性を有している。カバー12がボディ11に対して嵌め込まれると、保持部16は、梁部161の弾性を利用して、突片162が突起126を乗り越えるようにして、突片162が突起126に引っ掛かる。これにより、保持部16は、ボディ11及びカバー12を機械的に結合する。本実施形態では、保持部16は、平板部111の左側面及び右側面の各々に2つずつ設けられている。よって、ボディ11にカバー12が取り付けられた状態では、保持部16はカバー12に覆われて正面から見えなくなる。
【0161】
ここで、保持部16は、その突片162の形状、例えば、傾斜角度等により、ボディ11及びカバー12間の結合強度を調整している。本実施形態では、保持部16によるボディ11及びカバー12間の結合強度は、比較的小さくなるように設定されている。そのため、カバー12は、ボディ11に対して取り外し可能な状態で結合されることになる。
【0162】
また、保持部16は、ボディ11における上下方向(Z軸方向)の中央部付近に位置するので、カバー12に引っ掛かることで、内器100に対するカバー12の浮き上がりを抑制する機能を持つ。そのため、例えば、ボディ11又はカバー12に歪みが生じても、カバー12の上下方向の中央部付近において、保持部16がカバー12に引っ掛かっていることで、カバー12がボディ11から浮き上がることを抑制できる。結果的に、カバー12と内器100(ボディ11)との間に必要以上の隙間が生じることを抑制できる。
【0163】
以上説明した構成によれば、正面視におけるカバー12の長手方向(上下方向)の両端部は、結合構造にてボディ11に固定される。そして、正面視におけるカバー12の長手方向(上下方向)の両端部の間の少なくとも一部は、ボディ11と嵌め合されることによりボディ11に保持されている。本実施形態では、結合構造は、凹部181に対してボディ11の上端部17が挿入された構造と、ねじ131及びインサートナット132と、で具現化されている。また、カバー12がボディ11と嵌め合されることによりボディ11に保持されるための構造は、スナップフィット方式の保持部16により具現化されている。
【0164】
ところで、上述した通り、本実施形態では、発光部311と環状プレート241と操作面211とは面一である(略同一平面にある)。さらに、発光部311とハウジング1の前面101とについても面一である。このように、ハウジング1の前面101と発光部311と環状プレート241と操作面211とを面一とするための構成について、図21A及び図21Bを参照して説明する。図21A及び図21Bは、図15の破断面に相当する断面図であって、カバー12、灯体カバー31、ベース部材24及び押ボタン21のみを図示し、それ以外の部材の図示を省略している。また、図21Aは、カバー12、灯体カバー31、ベース部材24及び押ボタン21の分解状態の断面図であって、図21Bは、カバー12、灯体カバー31、ベース部材24及び押ボタン21の組立状態の断面図である。
【0165】
すなわち、本実施形態では、図21Aに示すように、カバー12、灯体カバー31、ベース部材24及び押ボタン21の4つの部材については、以下の寸法関係が採用されている。まず、カバー12の前壁における貫通孔121の周囲の厚み寸法を「D1」とし、灯体カバー31における周辺部312の前面から発光部311の前面までの高さを「D2」とすれば、「D1=D2」の寸法関係が成立する。また、灯体カバー31における透孔313の内周面の前後方向の寸法を「D3」とし、ベース部材24における張出部243の前面から環状プレート241の前面までの高さを「D4」とすれば、「D3=D4」の寸法関係が成立する。さらに、ベース部材24における丸孔244の内周面の前後方向の寸法を「D5」とし、押ボタン21における操作面211の周囲の段差の高さを「D6」とすれば、「D5=D6」の寸法関係が成立する。
【0166】
上記寸法関係により、カバー12、灯体カバー31、ベース部材24及び押ボタン21が組み合わされた状態(組立状態)では、図21Bに示すように、ハウジング1の前面101と発光部311と環状プレート241と操作面211とが面一となる。つまり、「D1=D2」の寸法関係によれば、貫通孔121を通してカバー12の前面101側に露出する発光部311の前面と、前面101における貫通孔121の周辺部位とは面一になる。さらに、「D3=D4」の寸法関係によれば、透孔313を通して灯体カバー31の前面側に露出する環状プレート241の前面と、表示灯3の発光部311の前面とは面一になる。そして、「D5=D6」の寸法関係によれば、丸孔244を通してベース部材24の前面側に露出する押ボタン21の操作面211と、ベース部材24における環状プレート241の前面とは面一になる。
【0167】
(2.7)防水構造
次に、警報装置10の防水構造について図22A図24Bを参照して説明する。
【0168】
「(2.5)内器の構成」の欄でも説明したように、回路基板4及びスピーカ5等の構成部品は、基本的には、平板部111、収容部112及び裏蓋部113で囲まれる空間内に収容されている。ただし、回路基板4等は、完全に密閉された空間に配置されるのではなく、例えば、回路基板4のうち、少なくとも端子部48(複数の端子481)及びコネクタ49は、ボディ11の前面側に露出する。また、収容部112の後面についても、裏蓋部113にて密封されている訳ではなく、収容部112の後面と裏蓋部113との間には僅かに隙間が空いている。
【0169】
そして、警報装置10を屋外に設置して使用する場合には、内器100の表面に液体(水等)が付着することがある。そこで、内器100には、所定部位への液体の浸入を抑制することで、回路基板4等に液体が付着することを抑制するための防水構造が適用される。具体的には、内器100(ボディ11)には、図22A及び図22Bに示すように、液体の浸入を防止すべき第1防水エリアWP1及び第2防水エリアWP2が設定される。第1防水エリアWP1は液体の浸入を抑制すべき領域であって、第2防水エリアWP2は液体の浸入をより確実に抑制すべき領域である。つまり、第2防水エリアWP2については、第1防水エリアWP1に比較してより高い防水性能が求められる。図22A及び図22B中の網掛領域は、第1防水エリアWP1及び第2防水エリアWP2の各々を模式的に示す領域である。
【0170】
第1防水エリアWP1は、ボディ11の前面のうち、左右方向(X軸方向)の両端部に形成される。第1防水エリアWP1においては、ボディ11の前面に付着した液体が、上述した取付孔141及び固定孔142等を通って、ボディ11の背面側に回り込むことを抑制するための、防水構造が適用されている。具体的には、ボディ11の前面には、上述したように第1庇部151が形成されている。第1庇部151は、取付孔141及び固定孔142の上方に位置し、ボディ11の前面を伝う液体が、取付孔141及び固定孔142に浸入しにくくする機能を有する。これにより、ボディ11の前面において、第1庇部151の下方には、取付孔141及び固定孔142等を含む第1防水エリアWP1が形成されることになる。
【0171】
第2防水エリアWP2は、ボディ11の前面のうち、左右方向(X軸方向)の中央部に形成される。第2防水エリアWP2においては、ボディ11の前面に付着した液体が、回路基板4に付着することを抑制するための、防水構造が適用されている。つまり、第2防水エリアWP2は、回路基板4を含む領域である。具体的には、ボディ11の前面には、上述したように第2庇部152が形成されている。第2庇部152は、収容部112の上方に位置し、ボディ11の前面を伝う液体が、収容部112に浸入しにくくする機能を有する。そのため、ボディ11の前面において、左右方向の中央部には、収容部112を含む第2防水エリアWP2が形成されることになる。
【0172】
さらに、本実施形態では、図23A及び図23Bに示すように、ボディ11とカバー12との継ぎ目からの液体の浸入を抑制するための構造も採用されている。具体的には、ボディ11の上端部17が、カバー12の凹部181に挿入された状態で、カバー12がボディ11に取り付けられることにより、ボディ11とカバー12との継ぎ目からハウジング1内への液体の浸入が抑制される。言い換えれば、カバー12の上壁の後端部から下方に突出するリブ18が、ボディ11の上端部17に対して被さるように組み合わされるため、背面視においては、ボディ11とカバー12との継ぎ目がリブ18にて覆われることになる。このように、リブ18(凹部181)は、ボディ11からのカバー12の脱落を防止する機能に加えて、ボディ11とカバー12との継ぎ目からの液体の浸入を抑制する機能も有している。本実施形態では、図23Aに示すように、カバー12の上壁の下面のうち左右方向の両端部を除く範囲R10にのみ、リブ18が形成されている。これにより、少なくともボディ11の前面のうち、左右方向の中央部には、液体が浸入しにくい第2防水エリアWP2が形成される。
【0173】
以上説明した構成により、ハウジング1は、正面視において、回路基板4の左右方向(X軸方向)の両側に形成された流路R1を有することになる。さらに、ハウジング1は、少なくとも回路基板4の上方に配置され、ハウジング1内に浸入した液体を流路R1に流す庇部(第1庇部151及び第2庇部152)を有する。すなわち、ハウジング1内に浸入した液体は、正面視において、少なくとも第2防水エリアWP2を避けるように、回路基板4の左右方向の両側の流路R1を流れることになる。ハウジング1内に浸入した液体が流れる流路R1は、図22Aに示すように、第2防水エリアWP2の両側に、第1防水エリアWP1を避けて形成されることになる。
【0174】
また、第2防水エリアWP2は、図22Bに示すように、収容部112の内側(内部)にも形成されている。ハウジング1の背面にも液体が付着することがあるところ、収容部112の内側の防水性は、以下のようにして実現される。
【0175】
すなわち、図24Aに示すように、ボディ11における平板部111の後面からは、収容部112が突出している。収容部112の上面153には、左右方向(X軸方向)の中央部が最も高く、左右方向の両端側ほど低くなるような勾配が付されている。さらに、収容部112の後端部には、上面153から上方に突出する鍔部154が形成されている。この構成によれば、図24Aに示すように、カバー12のリブ18からボディ11における平板部111の後面に伝った液体S1は、収容部112の左右方向の両側に流れることになる。
【0176】
さらに、図24Bに示すように、収容部112と裏蓋部113との継ぎ目からの液体の浸入を抑制するための構造も採用されている。図24Bは、図24Aの領域A1を示す一部破断した拡大図である。具体的には、裏蓋部113の上端部156が、収容部112の下方に開放された凹部157に挿入された状態で、裏蓋部113が収容部112に取り付けられることにより、収容部112と裏蓋部113との継ぎ目からハウジング1内への液体の浸入が抑制される。言い換えれば、収容部112の後面の下位後端縁から下方に突出するリブ155が、裏蓋部113の上端部156に対して被さるように組み合わされるため、背面視においては、収容部112と裏蓋部113との継ぎ目がリブ155にて覆われることになる。このように、リブ155(凹部157)は、収容部112と裏蓋部113との継ぎ目からの液体の浸入を抑制する機能を有している。この構成によれば、図24Bに示すように、収容部112の後面に付着した液体S1は、収容部112と裏蓋部113との継ぎ目からハウジング1内へは浸入せず、裏蓋部113の後面へと流れることになる。
【0177】
(3)変形例
実施形態1は、本開示の様々な実施形態の一つに過ぎない。実施形態1で参照する図面は、いずれも模式的な図であり、図中の各構成要素の大きさ及び厚さそれぞれの比が、必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。実施形態1は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。
【0178】
(3.1)第1変形例
実施形態1の第1変形例に係る警報装置10は、図25Aに示すように、起動ユニット2Aにおける復旧ボタン23Aの形状及び配置が、実施形態1に係る警報装置10と相違する。
【0179】
すなわち、本変形例では、ハウジング1の前面101の一部に配置される円形領域が、円形領域の一の直径に沿って2つの領域に分割されている。これら2つの領域は、それぞれ操作面211A及び復旧ボタン23Aの前面となる。つまり、図25Aの例では、環状プレート241の内側の円形領域が、上下方向に2分割されている。そして、2分割された領域のうち、下側の領域は押ボタン21Aの操作面211Aとなり、上側の領域は復旧ボタン23Aの前面となる。ここで、操作面211Aは、環状プレート241の内側の円形領域の半分以上の面積を占めている。つまり、操作面211Aは、復旧ボタン23Aの前面よりも大きな面積を有している。
【0180】
本変形例の構成によれば、円環状の発光部311と同じ円形領域の中に、押ボタン21A(操作面211A)及び復旧ボタン23Aを収めることができるので、円を基調とする統一されたデザインを採用可能となる。しかも、復旧ボタン23Aは、押ボタン21Aに隣接して配置されるので、押ボタン21Aが操作位置にある状態での復旧ボタン23Aの操作がしやすくなる。
【0181】
(3.2)第2変形例
実施形態1の第2変形例に係る警報装置10は、図25Bに示すように、表示灯3における発光部311の配置が、実施形態1に係る警報装置10と相違する。
【0182】
すなわち、本変形例では、発光部311は、ハウジング1の前面101において、押ボタン21の操作面211に隣接して配置されている。つまり、発光部311は、操作面211のすぐ外側に配置されている。そして、環状プレート241は、正面視において操作面211及び発光部311を囲む形状に形成されている。つまり、本変形例では、ハウジング1の前面101において、操作面211の周囲に発光部311が位置し、発光部311の周囲に環状プレート241が位置している。
【0183】
このように、発光部311は、正面視において操作面211を囲む環状であればよく、正面視において、発光部311と操作面211との間に環状プレート241が位置することは、警報装置10に必須の構成ではない。さらに、図25Bの例において、発光部311の周囲に環状プレート241が位置することは必須ではなく、環状プレート241は適宜省略されてもよい。
【0184】
(3.3)その他の変形例
以下、第1変形例及び第2変形例以外の変形例を列挙する。
【0185】
警報装置10は、屋外での使用に限らず、屋内で使用されてもよい。警報装置10が屋内に設置される場合には、警報装置10は、防水仕様であることは必須でなく、防水のための構成は適宜初略可能である。ただし、警報装置10が屋内に設置される場合であっても、警報装置10は防水仕様であってもよい。
【0186】
また、中間部材34と導光部材33とが別体であることは警報装置10に必須の構成ではなく、中間部材34は導光部材33と一体であってもよい。例えば、中間部材34及び導光部材33が同一材料で形成されることにより、中間部材34及び導光部材33と一体化することが可能である。あるいは、二色成型により、異物材料からなる中間部材34及び導光部材33を一体化することも可能である。
【0187】
また、ハウジング1の前面101と発光部311と環状プレート241と操作面211とが全て面一であることは、警報装置10において必須の構成ではない。例えば、ハウジング1の前面101と発光部311とが面一で、環状プレート241と操作面211とは発光部311に対して突出した又は窪んだ位置にあってもよい。あるいは、例えば、発光部311と環状プレート241と操作面211とは面一で、発光部311はハウジング1の前面101に対して突出した又は窪んだ位置にあってもよい。
【0188】
また、正面視において、発光部311と操作面211との間に環状プレート241が位置することは、警報装置10において必須の構成ではなく、環状プレート241は適宜省略されてもよい。この場合、環状プレート241を除いて、例えば、ハウジング1の前面101と発光部311と操作面211とが全て面一であってもよい。
【0189】
また、端子部48における各端子481は、ねじ端子に限らず、差込式の端子であってもよく、例えば、配線が挿入されるだけで配線の接続が行われる、いわゆる速結端子であってもよい。
【0190】
また、起動ユニット2と内器100との間には隙間G1が確保されていなくてもよく、起動ユニット2の後面は内器100に接していてもよい。この場合、起動ユニット2の押ボタン21が押操作された際に起動ユニット2に掛かる力を、内器100にて受けることが可能である。
【0191】
(実施形態2)
本実施形態に係る警報装置10Aは、図26A及び図26Bに示すように、表示灯3Aの構成が、実施形態1に記載の警報装置10と相違する。以下、実施形態1と同様の構成については、共通の符号を付して適宜説明を省略する。図26Bは、光源部32、及び導光部材33の相対的な位置関係を示す図である。図26Bにおいては、発光部311を含む灯体カバー31は、想像線(二点鎖線)で示している。
【0192】
本実施形態では、表示灯3Aにおいて、中間部材34(図10参照)が省略されている。そして、光源部32は、導光部材33の入射部331に対して直接的に光を出射する。要するに、本実施形態では、導光部材33は、光源部32からの光が入射する入射部331を有している。そして、光源部32は、入射部331に対向する位置に配置され、入射部331に向けて光を出力する。
【0193】
具体的には、本実施形態では、光源部32を構成する複数の発光素子321は、図26Aに示すように、LED基板36に実装されている。LED基板36は、回路基板4とは別の基板であって、回路基板4に対しては、電線(ケーブル)にて電気的に接続される。LED基板36は、導光部材33の上方であって、入射部331の先端面(上面)に対向する位置に配置されている。LED基板36は、複数の発光素子321の実装面を下方(Z軸の負の方向)に向けて、配置されている。
【0194】
この構成によれば、中間部材34での損失が生じない分、光源部32の光を効率的に導光部材33に入射することが可能である。
【0195】
また、実施形態2の変形例として、LED基板36に複数の発光素子321が実装されている場合でも、光源部32と入射部331との間に、中間部材34が介在してもよい。
【0196】
実施形態2で説明した構成(変形例を含む)は、実施形態1で説明した種々の構成(変形例を含む)と適宜組み合わせて採用可能である。
【0197】
(実施形態3)
本実施形態に係る警報装置10Bは、図27図32Bに示すように、主としてスピーカ5周辺の構成が、実施形態1に係る警報装置10と相違する。以下、実施形態1と同様の構成については、共通の符号を付して適宜説明を省略する。
【0198】
図27は、取付ボックス6と、ボディ11と、カバー12と、を分離した状態の分解斜視図である。警報装置10Bは、図27から明らかなように、例えば、蓄電池7の向き等、スピーカ5周辺以外の構成についても、実施形態1に係る警報装置10と相違する点がある。また、図27の例では、固定ボス62のねじ孔621に、ボディ11を固定するための固定ねじ66が装着されている。さらに、図27の例では、取付ボックス6の上壁及び下壁の各々に形成された通線孔65には、通線孔65を塞ぐキャップ67が装着されている。
【0199】
以下、本実施形態に係る警報装置10Bの、実施形態1に係る警報装置10との主な相違点について、項目別に説明する。
【0200】
(1)スピーカの固定構造
まず、本実施形態に係る警報装置10Bにおける、スピーカ5の固定に係る構造について説明する。
【0201】
本実施形態に係る警報装置10Bでは、実施形態1に比較して、薄型のスピーカ5が用いられている。具体的には、本実施形態のスピーカ5は、厚みを有する円盤状に形成されており、厚み方向の両面は略平坦である。つまり、本実施形態のスピーカ5には、実施形態1で示したスピーカ5のように、ボイスコイル及びマグネットを含む後部、つまり回路基板4の丸孔411に挿入される部位のような、大きな出っ張りはない(図11参照)。さらに、本実施形態のスピーカ5は、実施形態1のスピーカ5に比較して、正面視の寸法(面積)が小さい。ここでは、スピーカ5は、正面視において略円形状であるので、本実施形態のスピーカ5の直径の方が、実施形態1のスピーカ5の直径よりも、小さいことになる。このような薄型のスピーカ5は、実施形態1のスピーカ5に比較して、小型化及び軽量化を図りやすい。そのため、ハウジング1の内部空間においてスピーカ5が占める空間を小さく抑えやすく、さらに内器100全体を軽量化しやすい。
【0202】
このような薄型のスピーカ5を警報装置10Bに採用するに当たり、本実施形態では、スピーカ5の固定に係る構造、つまり、スピーカ5の固定構造が、実施形態1に係る警報装置10と相違する。
【0203】
すなわち、本実施形態では、図28及び図29に示すように、スピーカ5は、ボディ11の平板部111と回路基板4の基板本体41との間に収容される。具体的には、実施形態1と同様に、ボディ11の平板部111の後面であって、収容部112で囲まれた領域には、スピーカ配置部116が形成されている。スピーカ配置部116は、スピーカ5を配置するための部位である。
【0204】
要するに、ハウジング1は、ボディ11と、カバー12と、を有している。カバー12は、ボディ11の前面を覆うように、ボディ11に取り付けられる。そして、ボディ11は、回路基板4の前面401(図30A参照)と対向する部位に、スピーカ5を配置するためのスピーカ配置部116を有している。本実施形態では、スピーカ配置部116は、スピーカ5の形状に対応する円形状の窪みからなる。そのため、スピーカ5は、後方(回路基板4側)から、スピーカ配置部116としての円形状の窪み内にはめ込まれるようにして、スピーカ配置部116に配置される。ここで、スピーカ5は、音の取出し面となる前面を、スピーカ配置部116の底面に向けて、スピーカ配置部116に配置される。そして、スピーカ配置部116の底面には、ボディ11(平板部111)を前後方向に貫通する孔が形成されているため、スピーカ5から出力される音は、スピーカ配置部116の底面の孔を通して、ボディ11の前面から前方に出力される。
【0205】
ここで、スピーカ5は、図28及び図29に示すように、バッフル部材としてのバッフルリング51と共に、スピーカ配置部116にはめ込まれる。バッフルリング51は、一例として、樹脂製である。バッフルリング51は、スピーカ5の前面の外周部と略同一径の円環状である。スピーカ5及びバッフルリング51がスピーカ配置部116に配置された状態では、スピーカ5の前面とスピーカ配置部116の底面との間には、バッフルリング51が介在する。つまり、本実施形態に係る警報装置10Bは、バッフル部材(バッフルリング51)を備えており、バッフル部材(バッフルリング51)は、スピーカ5の前面の外周部とスピーカ配置部116との間に挟まれる。これにより、スピーカ5の前面の外周部とスピーカ配置部116との隙間がバッフル部材(バッフルリング51)にて埋まることになり、この隙間からの音漏れが抑制される。結果的に、スピーカ5から出力される音は、比較的効率よく、スピーカ配置部116の底面の孔を通して、ボディ11の前面から前方に出力される。
【0206】
また、本実施形態では、スピーカ5は、ボディ11に直接的にねじで固定されるのではなく、スピーカ押付部54にて、スピーカ配置部116に対して押し付けられることによって、ボディ11に固定される。スピーカ押付部54は、図28及び図29に示すように、ボディ11の裏蓋部113の一部から前方に突出する凸部541を含んでいる。ここでは一例として、凸部541は、裏蓋部113と一体であって、中空の円柱状(円筒状)に形成されている。また、裏蓋部113は、凸部541の周囲に、撓み部542を有している。ここでは一例として、撓み部542は、凸部541の周囲の円環状の領域に形成され、裏蓋部113における撓み部542他の部位、つまり撓み部542の周囲に比べて厚みが小さい薄肉部からなる。そのため、撓み部542は、裏蓋部113における他の部位(撓み部542以外の部位)に比較して撓みやすい。
【0207】
スピーカ押付部54は、回路基板4に形成されている孔412を通して、回路基板4の後面側(裏蓋部113側)から前面401側に凸部541を貫通させる。孔412は、回路基板4の基板本体41に対して、実施形態1の丸孔411(図11参照)に代えて形成されている。つまり、孔412には、スピーカ5自体が挿入されるのではなく、スピーカ押付部54の凸部541が挿入されるのであって、孔412の開口面積は丸孔411の開口面積に比べて小さく抑えられる。スピーカ押付部54は、孔412を通して回路基板4の前面401から突出する凸部541の先端(前面)を、スピーカ5の後面に押し当てることにより、スピーカ配置部116に対してバッフルリング51越しにスピーカ5を押し付ける。このようにスピーカ押付部54にてスピーカ配置部116にスピーカ5を押し付けた状態で、裏蓋部113が、複数本(ここでは7本)のねじ114にて、収容部112に固定されることにより、ボディ11にスピーカ5が固定される。
【0208】
すなわち、本実施形態に係る警報装置10Bは、スピーカ配置部116に対して、回路基板4側からスピーカ5を押し付けるスピーカ押付部54を備えている。これにより、スピーカ配置部116とスピーカ5との間の隙間からの音漏れが生じにくく、スピーカ5から出力される音を効率的に取り出しやすくなる。
【0209】
ここで、ボディ11は、実施形態1と同様に、平板部111と、平板部111の後面から後方に突出する収容部112と、収容部112の後面を塞ぐ裏蓋部113と、を有している。そして、これら平板部111、収容部112及び裏蓋部113で囲まれる空間内に、回路基板4及びスピーカ5等が収容される。つまり、ボディ11は、スピーカ5から見てスピーカ配置部116とは反対に位置する裏蓋部113を有している。スピーカ押付部54は、裏蓋部113の一部からスピーカ配置部116に向けて突出する凸部541を含んでいる。スピーカ押付部54は、凸部541の先端にてスピーカ5をスピーカ配置部116に押し付ける。これにより、裏蓋部113の組み立てに伴い、スピーカ押付部54にてスピーカ配置部116に対してスピーカ5を押し付けることが可能となる。また、回路基板4は、裏蓋部113とスピーカ5との間に位置している。凸部541は、回路基板4に形成されている孔412を貫通する。これにより、裏蓋部113とスピーカ配置部116との間隔を比較的小さく抑えながらも、凸部541の高さを確保しやすく、スピーカ5を押し付けやすくなる。
【0210】
また、裏蓋部113は、凸部541の周囲に、撓み部542を有している。撓み部542は、裏蓋部113における他の部位に比較して撓みやすい。ここで、図30Aに示すように、裏蓋部113の前面からの凸部541の突出量は、裏蓋部113の前面からスピーカ5の後面までの距離以上に設定されている。そのため、ボディ11又はスピーカ5において公差等による寸法のばらつきは、撓み部542が撓むことによって吸収可能である。特に、本実施形態では、裏蓋部113の前面からの凸部541の突出量は、裏蓋部113の前面からスピーカ5の後面までの距離よりも大きく設定されている。そのため、裏蓋部113が収容部112に固定された状態では、スピーカ押付部54の凸部541からスピーカ5に対しては常に与圧がかかることとなり、スピーカ配置部116とスピーカ5との間に隙間がより生じにくい。
【0211】
ところで、スピーカ5から出力される音は、ハウジング1の前壁としてのカバー12に形成されている音出力孔122(図31参照)を通して、ハウジング1の外部に出力される。本実施形態では、スピーカ5が、ハウジング1の内部空間において、音出力孔122に近い位置に配置されることで、スピーカ5から出力される音を、ハウジング1の外部に対して効率的に出力可能とする。ここでは、図30Aに示すように、スピーカ5は、ハウジング1における前後方向の中心C10と、ハウジング1の前面101との間に位置する。つまり、ハウジング1を前後方向において中心C10にて二等分したときに、スピーカ5は、中心C10とハウジング1の前面101との間に収まる。言い換えれば、スピーカ5は、ハウジング1の内部空間のうち、ハウジング1の前後方向の中心C10よりも前方の位置、つまりハウジング1の前半分に収まる。図30Aにおいて、中心C10は、ハウジング1を前後方向に二等分するときの中心位置であって、ハウジング1の前面101から中心C10までの距離L11と、ハウジング1の後面(裏蓋部113の後面)から中心C10までの距離L12と、は等しい。ここで、ハウジング1の前後方向の中心C10は、ハウジング1の内部空間(ボディ11の内部空間)における前後方向の中心C10であってもよい。特に、本実施形態では、薄型のスピーカ5を採用しているので、ハウジング1の前後方向の寸法を比較的小さく抑えながらも、更にそのハウジング1の前半分にスピーカ5を収めることが可能である。
【0212】
さらに、本実施形態では、スピーカ5は、前後方向において回路基板4の前面401よりも前方に位置する。つまり、スピーカ5は、回路基板4の前面401に対して前後方向に間隔を空けた位置に配置される。特に、本実施形態では、上述したようにスピーカ押付部54の凸部541は、回路基板4に形成されている孔412を貫通することで、回路基板4の前面401から前方に突出する。そして、この凸部541の先端がスピーカ5に接触するので、スピーカ5が直接的に回路基板4に接触せず、スピーカ5と回路基板4の前面401との間には十分な隙間が確保され、スピーカ5から回路基板4に応力が作用しにくい。そのため、スピーカ5から回路基板4に作用する応力により、基板本体41、又は基板本体41に実装される種々の電子部品へのストレスが生じにくい、という利点がある。
【0213】
さらに、本実施形態では、スピーカ配置部116は、図30Aに示すように、スピーカ止め55を有している。スピーカ止め55は、孔が形成されているスピーカ配置部116の底面に設けられており、少なくとも前方へのスピーカ5の移動を規制する。すなわち、スピーカ配置部116は、スピーカ止め55を有している。スピーカ止め55は、スピーカ5の前面の一部を前方に露出させつつ、スピーカ5の前面の一部と対向することで、前方へのスピーカ5の移動を規制する。本実施形態では、スピーカ止め55は、ボディ11の平板部111と一体に形成されている。スピーカ止め55は、図28に示すように、平板部111を前後方向に貫通する孔内に形成されており、ここでは一例として、格子状の格子部551を含んでいる。さらに、スピーカ止め55は、図30Aに示すように、スピーカ5の前面の外周部と、バッフルリング51を介して対向しており、スピーカ5の前面の外周部からの音漏れを抑制する。
【0214】
(2)スピーカ周辺の防水構造
次に、本実施形態に係る警報装置10Bにおける、スピーカ5周辺の防水構造について説明する。
【0215】
本実施形態に係る警報装置10Bでは、図30A図31に示すように、ハウジング1の前壁としてのカバー12のうち、スピーカ5に対応する特定領域R100に、音出力孔122が形成されている。音出力孔122は、上述したように、スピーカ5から出力される音をハウジング1の外部に出力するための孔である。具体的には、図30Aに示すように、カバー12のうち、ボディ11の平板部111を挟んでスピーカ5と対向する位置には、カバー12を前後方向に貫通する音出力孔122が形成されている。
【0216】
警報装置10Bを屋外に設置して使用する場合には、ハウジング1の表面に液体(水等)が付着することがある。そこで、音出力孔122から浸入した液体が、ハウジング1内に収容されているスピーカ5等の内器100に到達することを抑制するための防水構造として、警報装置10Bは、防水シート103を備えている。防水シート103は、図31に示すように、カバー12のうち音出力孔122が形成されている特定領域R100の形状に合わせて形成され、カバー12の後面の特定領域R100に貼り付けられる。これにより、防水シート103は、カバー12のうち音出力孔122が形成されている特定領域R100と、スピーカ5との間に配置されることになる。言い換えれば、防水シート103は、音出力孔122を塞いでいる。防水シート103は、一例として樹脂製のシートであって、音出力孔122からスピーカ5へと浸入する液体を遮蔽する。防水シート103の厚みは、一例として10μm以上30μm以下程度である。
【0217】
要するに、本実施形態に係る警報装置10Bは、ハウジング1に収容され、発報信号を受けて警報音を出力するスピーカ5を備えている。ハウジング1の前壁(カバー12)のうちスピーカ5に対応する特定領域R100には、音出力孔122が形成されている。そして、特定領域R100とスピーカ5との間には、音出力孔122からスピーカ5へと浸入する液体を遮蔽する防水シート103が配置されている。ここで、特定領域R100と防水シート103との間には、図30Bに示すように、少なくとも防水シート103の振動を許容する空隙G10がある。図30Bは、図30Aの領域Z1の概略拡大図である。つまり、防水シート103は、ハウジング1の前壁としてのカバー12の後面に貼り付けけられているが、カバー12の後面に対して密着するように貼り付けられるのはなく、カバー12(特定領域R100)の後面との間に、空隙G10を形成する。特定領域R100と防水シート103との間の空隙G10は、少なくとも防水シート103の振動を許容する程度の寸法である。一例として、空隙G10の前後方向の寸法方は、防水シート103の厚みよりも大きい。
【0218】
すなわち、防水シート103が音出力孔122を塞いでいるので、防水シート103による音出力孔122からの音の取出し効率の低下を抑制するためには、防水シート103とカバー12との間に空隙G10があることが好ましい。つまり、ハウジング1の外部に取り出される音の音圧を極力大きく確保するためには、防水シート103が振動可能な状態とすることが好ましい。そして、空隙G10の範囲内で防水シート103が振動することで、防水シート103が全く振動できない状態に比較すると、防水シート103越しに音が伝わりやすくなり、防水シート103にて音圧が低下しにくくなる。よって、空隙G10は、スピーカ5から出力される音による防水シート103の振動を阻害しない程度の寸法を有することが好ましい。
【0219】
また、本実施形態では、図31に示すように、カバー12の前面101のうちの特定領域R100に対応する位置には、化粧部材102が貼り付けられる。化粧部材102は、一例として樹脂製のシート状の部材であって、音出力孔122を覆い、かつ角孔123を覆う。つまり、本実施形態の化粧部材102は、実施形態1の音出力孔122を覆う第1シート124(図8参照)、及び角孔123を覆う第2シート125(図8参照)に代えて用いられている。言い換えれば、1枚のシート状の化粧部材102が、第1シート124及び第2シート125の代わりに用いられている。化粧部材102には、実施形態1の第1シート124と同様に、微小な透過孔105が複数形成されている。これら複数の透過孔105は、音出力孔122と連通する。したがって、スピーカ5から出力される音は、ハウジング1(カバー12)の音出力孔122及び複数の透過孔105を通して、ハウジング1の前面101(厳密には化粧部材102の前面)から出力されることになる。
【0220】
このように、本実施形態に係る警報装置10Bは、化粧部材102を備えている。化粧部材102は、ハウジング1の前面101のうちの特定領域R100に対応する位置に取り付けられる。そして、化粧部材102には、音出力孔122と連通する複数の透過孔105が形成されている。さらに、ハウジング1は、複数の透過孔105と重複しない位置に、正面視において音出力孔122を複数の区域に区分けする仕切桟127を有している。
【0221】
より詳細には、図32Aに示すように、特定領域R100は、中央部R101と、中央部R101を囲む外周部R102と、を有している。図32Aは、カバー12の要部を後方から見た図であって、図32Aでは、防水シート103の図示を省略している。特定領域R100は、一例として、多角形(図32Aの例では五角形)状である。音出力孔122は、特定領域R100のうちの中央部R101に形成されている。そして、特定領域R100のうちの外周部R102には、防水シート103をハウジング1の前壁(カバー12)に接着するための接着部104が設けられている。つまり、防水シート103は、特定領域R100の中央部R101には接着されておらず、中央部R101を囲む外周部R102でのみ接着されている。
【0222】
本実施形態では一例として、接着部104は、防水シート103以上の厚みを有する両面粘着テープからなる。このように、防水シート103は、接着部104にて、ハウジング1の前壁(カバー12)に取り付けられている。接着部104は、特定領域R100の中央部R101を囲むように特定領域R100の外周部R102に設けられている。これにより、防水シート103は、防水シート103の外周部でのみハウジング1(カバー12)に接着され、少なくとも防水シート103の中央部において、接着部104の厚み以上の空隙G10をカバー12との間に形成する。
【0223】
また、ハウジング1(カバー12)は、音出力孔122を複数の区域に区分けする仕切桟127を有している。仕切桟127は、上下方向(Z軸方向)と左右方向(X軸方向)とのそれぞれに延びる部位を含んでおり、これにより全体として格子状に形成されている。本実施形態では一例として、仕切桟127は、上下方向に延びる部位及び左右方向に延びる部位を2本ずつ有している。よって、音出力孔122は、仕切桟127によって、上下方向に3分割、かつ左右方向に3分割された、合計9つの区域に区分けされる。ここでは、音出力孔122は、全ての区域が同形状となるのではなく、上下方向においては、3つの区域のうち中央の区域が最も広く、左右方向においても、3つの区域のうち中央の区域が最も広くなるように区分けされている。
【0224】
ここで、化粧部材102に形成された複数の透過孔105の各々は、円形状に開口している。そして、これら複数の透過孔105は、上下方向に複数個、かつ左右方向に複数個並ぶことにより、全体として格子点状に配置されている。本実施形態では一例として、化粧部材102には、上下方向に7個ずつ、左右方向に10個ずつで、合計70個の透過孔105が形成されている。
【0225】
仕切桟127は、化粧部材102に形成された複数の透過孔105と前後方向において重複しない位置にある。言い換えれば、仕切桟127は、化粧部材102に形成された複数の透過孔105のうち、隣接する2つの透過孔105の間を通るように配置されている。これにより、図32Aに示すように、複数の透過孔105は、仕切桟127にて区分けされた各区域に分散されて配置されることになり、複数の透過孔105のいずれも仕切桟127にて塞がれることがない。このように、音出力孔122と連通する複数の透過孔105が、仕切桟127にて塞がれないので、スピーカ5から出力される音は、仕切桟127で遮られずに、ハウジング1の前面101から出力されやすくなる。
【0226】
また、本実施形態に係る警報装置10Bでは、図32Bに示すように、化粧部材102は、ダミー孔106を有している。ダミー孔106は、化粧部材102を貫通せず、複数の透過孔105の少なくとも1つ(の透過孔105)を模している。本実施形態では、化粧部材102に複数のダミー孔106が設けられているが、ダミー孔106は、化粧部材102に少なくとも1つ設けられていればよい。ダミー孔106は、「孔」とはいうものの、見かけ上、透過孔105を模しているだけであって、構造的に化粧部材102を貫通した「孔」ではない。要するに、化粧部材102には、化粧部材102を貫通する複数の透過孔105と、化粧部材102を貫通しない少なくとも1つのダミー孔106と、を有している。
【0227】
より詳細には、ダミー孔106は、化粧部材102の表面(前面)に描画された黒色の図形(ここでは円形)からなる。つまり、ダミー孔106は、透過孔105に似た見た目となるように、例えば印刷又は塗装等により、化粧部材102の表面に描かれている。特に、本実施形態では、正面視において透過孔105の奥に除く部材は黒色であるため、黒色の図形で描かれたダミー孔106は、透過孔105との見分けがつきにくい。このようなダミー孔106は、例えば化粧部材102のうち複数の透過孔105が形成された領域を包囲する環状に並べて複数設けられている。しかも、複数のダミー孔106の間隔は、複数の透過孔105の間隔と同一の間隔であるため、よりダミー孔106と透過孔105との見分けがつきにくい。図32Bの例では、複数のダミー孔106は、複数の透過孔105が形成された領域の上方、下方、左方及び右方にそれぞれ1列ずつ配置されているが、この例に限らず、例えば、上方及び下方のいずれかに複数列配置されてもよい。ここで、カバー12のうち複数のダミー孔106に重複する位置には、音出力孔122は形成されていない。つまり、ダミー孔106は、正面視においてスピーカ5からはみ出す位置に設けられている。
【0228】
このようなダミー孔106があることで、警報装置10Bを見る人にとっては、スピーカ5のサイズよりも広範囲にわたって透過孔105があるように見え、実際のサイズよりも大きなスピーカ5がハウジング1内に収容されているように見える。
【0229】
(3)スピーカの出力音
次に、本実施形態に係る警報装置10Bにおける、スピーカ5の出力音について説明する。
【0230】
本実施形態に係る警報装置10Bでは、上述したように、実施形態1に比較して薄型のスピーカ5を用いている。このような薄型のスピーカ5では、音の出力特性として、実施形態1のスピーカ5とは異なる特性を持つ。一方で、警報装置10Bとして要求される性能を鑑みると、実施形態1の警報装置10Aと同等の音圧で警報音を出力可能となるように、本実施形態では、スピーカ5の出力音に関して、以下に説明する構成を採用する。
【0231】
すなわち、本実施形態に係る警報装置10Bは、上述したように、ハウジング1に収容され、発報信号を受けて警報音を出力するスピーカ5を備えている。ここで、スピーカ5は、第1出力音と、第2出力音と、を同時に出力する。第2出力音は、第1出力音よりも高い周波数の音である。具体的には、第1出力音は、実施形態1に係る警報装置10においてスピーカ5が警報音として出力する出力音と同一周波数の音である。一方、第2出力音は、第1出力音のn倍(nは2以上の整数)の周波数の音である。つまり、第2出力音は、第1出力音を基本波とする第n高調波である。
【0232】
ここにおいて、本実施形態では、図33に示すように、第1出力音及び第2出力音を含む音源501を再生することによって、スピーカ5が第1出力音と第2出力音とを同時に出力する。図33は、音源501を再生してスピーカ5から音(第1出力音及び第2出力音)が出力される様子を示す概念図である。ここにおいて、図33に示すように、本実施形態に係る警報装置10Bは、スピーカ5に加えて、音源501及びアンプ502を備えている。音源501は、第1出力音と第2出力音とを再生するためのデータを記録した非一時的記録媒体であって、回路基板4に実装されている。アンプ502は、音源501の再生時に音源501から出力される音声信号Si3を増幅する。アンプ502での増幅後の音声信号Si3がスピーカ5に入力されることで、スピーカ5が駆動され、スピーカ5から出力音が出力される。
【0233】
すなわち、本実施形態では、音源501が第1出力音及び第2出力音を含むので、図33に示すように、音源501から出力される音声信号Si3は、第1出力音に対応する第1信号Si1と第2出力音に対応する第2信号Si2との合成信号からなる。言い換えれば、音源501において第1信号Si1のみが再生された場合、スピーカ5からは第1出力音のみが出力される。同様に、音源501において第2信号Si2のみが再生された場合、スピーカ5からは第2出力音のみが出力される。本実施形態では、音源501には、第1信号Si1及び第2信号Si2を合成した音声信号Si3が記録されているため、この音源501を再生することで、スピーカ5からは第1出力音と第2出力音とが同時に出力される。
【0234】
ところで、本実施形態に係る警報装置10Bでは、上述したように、実施形態1に比較して薄型のスピーカ5を用いているため、実施形態1のスピーカ5と比較して、高い周波数帯での音圧が大きくなるような、音の出力特性を持つ。図34Aでは、縦軸を音圧、横軸を周波数として、実施形態1のスピーカ5のスピーカ特性をグラフGr1、本実施形態の薄型のスピーカ5のスピーカ特性をグラフGr2で示す。すなわち、図34Aに示すように、本実施形態の薄型のスピーカ5は、実施形態1のスピーカ5の特性に比較して、高い周波数帯での音圧は高く、低い周波数帯での音圧は低い。より詳細には、特定周波数f1よりも低い周波数帯を第1周波数帯B1とし、特定周波数f1以上の周波数帯を第2周波数帯B2とした場合に、本実施形態の薄型のスピーカ5は、第2周波数帯B2において、比較的高い音圧を実現可能である。つまり、本実施形態の薄型のスピーカ5は、実施形態1のスピーカ5の特性に比較して、第2周波数帯B2の音圧は高く、第1周波数帯B1での音圧は低い。
【0235】
このように、比較的高い周波数帯(第2周波数帯B2)を得意とする薄型のスピーカ5を用いているので、本実施形態では、スピーカ5は、第1出力音と、第1出力音よりも高い周波数の第2出力音と、を同時に出力することが好ましい。これにより、スピーカ5は、第1出力音の周波数の音を出力しながらも、第1出力音に重畳される第2出力音にて音圧を稼ぐことができる。結果的に、本実施形態に係る警報装置10Bは、薄型のスピーカ5を用いながらも、警報音の音圧を維持することが可能である。つまり、高調波である第2出力音の音圧が大きくなることで、第1出力音と第2出力音との合成音である、スピーカ5からの出力音全体の音圧が大きくなり、実施形態1のスピーカ5と比較しても音圧の遜色が抑えられる。
【0236】
さらに、本実施形態では、第1出力音の周波数帯は可変である。特に、本実施形態では、第2出力音は第1出力音を基本波とする高調波であるので、第1出力音の周波数帯が変化すれば、これに合わせて第2出力音の周波数帯も変化する。具体的には、音源501を再生することによって出力される第1信号Si1及び第2信号Si2の各々の周波数を連続的に変化させることで、第1出力音及び第2出力音の周波数を連続的に変化させる。スピーカ5から出力される音の周波数帯が変化すれば、一定の周波数の音が出力される場合に比較して、人が警報音に気づきやすくなる。
【0237】
また、本実施形態では、上述したように、スピーカ5に固有のスピーカ特性により、第1周波数帯B1と、第2周波数帯B2と、が規定される。第2周波数帯B2は、スピーカ5に入力される電気信号の振幅に対して音圧の比率が第1周波数帯B1よりも高くなる周波数帯である。ここで、図34Bに示すように、スピーカ5は警報音を繰り返し出力し、1回の警報音において第1出力音の周波数帯は、第1周波数帯B1と、第2周波数帯B2と、を含む複数の周波数帯間で変化する。そして、1回の警報音において、第1周波数帯B1の期間よりも、第2周波数帯B2の期間の方が長い。
【0238】
図34Bでは、縦軸を周波数、横軸を時間として、スピーカ5から出力される警報音の周波数を示している。図34Bに示す例では、1回の警報音の周期T1の中で、第1周波数帯B1の期間T11よりも、第2周波数帯B2の期間T12の方が、2倍以上の長さを有する。つまり、1回の警報音の中で、特定周波数f1未満の音を出力する期間T11に比較して、特定周波数f1以上の音を出力する期間T12は、2倍以上の長さを有している。このように、1回の警報音の中で、スピーカ5が比較的得意とする周波数帯(ここでは第2周波数帯B2)の期間T12が、スピーカ5が比較的不得意な周波数帯(ここでは第1周波数帯B1)の期間T11よりも長いことで、警報音の出力効率が高くなる。
【0239】
(4)その他の相違点
次に、本実施形態に係る警報装置10Bにおける、スピーカ5周辺以外の構成であって、実施形態1に係る警報装置10との主な相違点について説明する。
【0240】
本実施形態に係る警報装置10Bでは、図35A及び図35Bに示すように、光源部32は、回路基板4に対して切離し可能に電気的に接続されている。また、光源部32は、ハウジング1に対して取外し可能に取り付けられている。これにより、光源部32は、交換可能に構成されている。具体的には、本実施形態では、実施形態2と同様に、光源部32を構成する複数の発光素子321は、LED基板36に実装されている。ただし、本実施形態では、光源部32は2つの発光素子321にて構成されている。LED基板36は、回路基板4とは別の基板であって、回路基板4に対しては、コネクタにて、切離し可能に電気的に接続される。LED基板36は、導光部材33の上方であって、入射部331の先端面(上面)に対向する位置に配置されている。LED基板36は、複数の発光素子321の実装面を下方(Z軸の負の方向)に向けて、配置されている。
【0241】
さらに、本実施形態に係る警報装置10Bは、LED基板36を覆う光源カバー37を備えている。光源カバー37は、ボディ11の平板部111に対して、取外し可能に取り付けられる。光源カバー37には、光源部32を構成する発光素子321に対応する位置に、光源部32からの光を通すための孔371が形成されている。つまり、光源カバー37がボディ11に取り付けられた状態であっても、光源カバー37を通して光源部32からの光は、導光部材33の入射部331に到達する。
【0242】
光源カバー37は、左右方向(X軸方向)の両端面から突出する差込片372を有している。ボディ11の平板部111における、一対の差込片372に対応する位置には一対の差込溝373が形成されている。したがって、光源カバー37は、一対の差込溝373に一対の差込片372を差し込むようにして、平板部111に対して前方から取り付け可能である。そして、光源カバー37がボディ11から取り外されることによって、LED基板36が露出し、LED基板36を取外し可能な状態となる。LED基板36についても、光源カバー37と同様に、平板部111に対して前方から取り付け可能である。
【0243】
上述したように、本実施形態では、実施形態1と同様に、中間部材34(図10参照)が省略されており、光源部32は、導光部材33の入射部331に対して直接的に光を出射する。要するに、本実施形態では、光源部32は、入射部331に対向する位置に配置され、入射部331に向けて光を出力する。そのため、中間部材34での損失が生じない分、光源部32の光を効率的に導光部材33に入射することが可能である。さらに、光源部32は、回路基板4、ハウジング1及び導光部材33のいずれからも独立したLED基板36に設けられているので、回路基板4、ハウジング1及び導光部材33等はそのままに光源部32のみを交換することが可能である。結果的に、警報装置10Bのメンテナンス性が向上する。
【0244】
(5)変形例
実施形態3は、本開示の様々な実施形態の一つに過ぎない。実施形態3で参照する図面は、いずれも模式的な図であり、図中の各構成要素の大きさ及び厚さそれぞれの比が、必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。実施形態3は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。
【0245】
(5.1)第1変形例
実施形態3の第1変形例では、図36A及び図36Bに示すように、防水シート103を接着するための接着部104と音出力孔122との位置関係が、実施形態3に係る警報装置10Bと相違する。図36Bは、図36AのX1-X1線断面図である。
【0246】
すなわち、本変形例では、接着部104のうち音出力孔122の下方(Z軸の負の方向)に位置する部位の上端縁と、音出力孔122の下端縁とで、上下方向(Z軸方向)の位置が一致する。さらに、複数の透過孔105のうち最下段に位置する透過孔105の下端縁と、接着部104のうち音出力孔122の下方に位置する部位の上端縁とでも、上下方向(Z軸方向)の位置が一致する。したがって、図36Bに示すように、接着部104のうち音出力孔122の下方に位置する部位の上端縁と、音出力孔122の下端縁と、複数の透過孔105のうち最下段に位置する透過孔105の下端縁と、は面一である。
【0247】
そのため、仮に複数の透過孔105のうちのいずれかを通して、音出力孔122内に液体(水等)が浸入することがあっても、液体は、複数の透過孔105のうち最下段に位置する透過孔105からハウジング1外に排出可能である。つまり、本変形例の構成によれば、音出力孔122内に浸入した液体が、カバー12の後面と防水シート103との間の隙間に溜まりにくい。
【0248】
また、本開示でいう「位置が一致」は、厳密に同一の位置にある場合だけでなく、略同一の位置にある場合、つまり実質的に一致である場合も含んでいる。例えば、AとBとで上下方向の位置(高さ)が一致するという場合、上下方向においてAとBとは完全には同一の位置(高さ)になくてもよい。つまり、AとBとで上下方向の位置が一致するという場合、AはBと略同一の高さにあればよく、上下方向において、AがBより僅かに突出している(出っ張っている)か、AがBより僅かに凹んでいてもよい。
【0249】
(5.2)その他の変形例
以下、実施形態3における第1変形例以外の変形例を列挙する。
【0250】
実施形態3に係る警報装置10Bは、人の操作を受け付ける起動ユニット2の機能だけでなく、表示灯3にて表示を行う機能、及びスピーカ5から警報音を出力する機能を有する、「複合装置」であることとして説明したが、この例に限らない。すなわち、警報装置10Bの各構成は、例えば、火災発信機と音響装置とが組み合わされた総合盤(機器収容箱)のような、「複合装置」以外の防災機器にも適用可能である。
【0251】
警報装置10Bが、総合盤のような防災機器である場合、起動ユニット2(火災発信機)が電子回路を有しており、起動ユニット2(火災発信機)自体が、押ボタン21の操作に応じて電気信号(発報信号)を出力する。さらに、総合盤のような防災機器からなる警報装置10Bは、それ単独でも動作するのではなく、自動火災報知システムの受信機と協働する。つまり、総合盤のような防災機器からなる警報装置10Bは、例えば、熱感知器、煙感知器又は炎感知器等の感知器と、感知器からの発報信号(火災信号)を受信する受信機と、を備える自動火災報知システムの一構成要素として用いられる。さらに、総合盤のような防災機器からなる警報装置10Bは、蓄電池7の電力にて動作するのではなく、自動火災報知システムの受信機からの電力供給により動作する。さらに、総合盤のような防災機器からなる警報装置10Bは、音響装置としてスピーカ5に代えてベルを備え、電子音ではなくベルが鳴動することによって警報音を出力してもよい。さらに、総合盤のような防災機器からなる警報装置10Bは、試験用の操作を受け付ける試験用操作部8が省略されていてもよい。
【0252】
また、実施形態3に係る警報装置10Bにおいて、「(4)その他の相違点」で説明したように光源部32が、回路基板4とは別のLED基板36に実装されていることは、必須の構成ではない。つまり、実施形態3に係る警報装置10Bにおいても、実施形態1と同様に、回路基板4に光源部32が実装され、光源部32からの光が中間部材34にて導光部材33まで導光されてもよい。
【0253】
また、バッフル部材は、バッフルリング51のような円環状の部材に限らず、例えば、多角形状等であってもよい。バッフル部材は、樹脂製に限らず、例えば、木製、セラミック製又は金属製等でもよい。
【0254】
また、撓み部542は、裏蓋部113における他の部位に比較して撓みやすければよく、薄肉部に限らない。例えば、撓み部542は、梁状であってもよいし、又は、裏蓋部113における他の部位に比較して弾性率の低い材料にて形成されていてもよい。
【0255】
また、実施形態2では、スピーカ5の後面には凸部541の先端が直接的に接触しているが、スピーカ5の後面と凸部541の先端との間にはバッフル板52(図11参照)が介在してもよい。
【0256】
また、接着部104は、防水シート103以上の厚みを有する両面粘着テープに限らず、防水シート103未満の厚みを有する両面粘着テープであってもよいし、両面粘着テープ以外であってもよい。接着部104は、ハウジング1の前壁(カバー12)に対して防水シート103を取り付けるための手段であればよく、例えば接着剤であってもよいし、レーザ溶着等の溶着部であってもよい。
【0257】
また、第2出力音は、第1出力音よりも高い周波数の音であればよく、第1出力音を基本波とする第n高調波に限らない。
【0258】
実施形態3で説明した構成(変形例を含む)は、実施形態1又は実施形態2で説明した種々の構成(変形例を含む)と適宜組み合わせて採用可能である。
【0259】
(まとめ)
以上説明したように、第1の態様に係る警報装置(10,10A,10B)は、ハウジング(1)と、起動ユニット(2,2A)と、表示灯(3,3A)と、回路基板(4)と、を備える。起動ユニット(2,2A)は、ハウジング(1)の前面(101)に配置される操作面(211,211A)を含む押ボタン(21,21A)、及び押ボタン(21,21A)に連動する可動子(22)を有する。起動ユニット(2,2A)は、操作面(211,211A)が押されるように押ボタン(21,21A)が操作されることで、可動子(22)が第1位置から第2位置に移動する。表示灯(3,3A)は、ハウジング(1)の前面(101)に配置される発光部(311)を有する。回路基板(4)は、ハウジング(1)に収容される。回路基板(4)は、可動子(22)の第1位置から第2位置への移動をトリガに発報信号を出力する。発光部(311)は、正面視において操作面(211,211A)を囲む環状に形成されている。
【0260】
この態様によれば、起動ユニット(2,2A)、及び表示灯(3,3A)は、ハウジング(1)の前面(101)の1箇所にまとめて配置されることになる。つまり、発光部(311)の内側に操作面(211,211A)が配置されるので、表示灯(3,3A)と起動ユニット(2,2A)とが別々に配置される構成に比較して、ハウジング(1)の小型化を図りやすくなる。
【0261】
第2の態様に係る警報装置(10,10A,10B)では、第1の態様において、発光部(311)は、ハウジング(1)の前面(101)における少なくとも発光部(311)の周囲と面一である。
【0262】
この態様によれば、ハウジング(1)の前面(101)からの表示灯(3,3A)による出っ張りが生じず、取付対象からの表示灯(3,3A)の突出量を比較的小さく抑えられる。
【0263】
第3の態様に係る警報装置(10,10A,10B)では、第1又は2の態様において、発光部(311)は、操作面(211,211A)と面一である。
【0264】
この態様によれば、操作面(211,211A)が発光部(311)より奥まった位置にある場合に比べて、操作面(211,211A)が操作しやすくなる。
【0265】
第4の態様に係る警報装置(10,10A,10B)では、第1~3のいずれかの態様において、正面視において、発光部(311)と操作面(211,211A)との間には環状プレート(241)が位置する。発光部(311)は、環状プレート(241)の前面と面一である。
【0266】
この態様によれば、ハウジング(1)の前面(101)に窪みが生じにくく、ハウジング(1)の内部空間を、有効に活用でき、ハウジング(1)自体の寸法を比較的小さく抑えることができる。さらに、ハウジング(1)の前面(101)に汚れが溜まりにくく、ハウジング(1)のメンテナンスの手間を軽減できる。
【0267】
第5の態様に係る警報装置(10,10A,10B)では、第1~4のいずれかの態様において、操作面(211,211A)は、発光部(311)で囲まれる領域の中心に位置する。
【0268】
この態様によれば、発光部(311)の光を頼りに操作面(211,211A)の位置を特定する場合でも、操作面(211,211A)の位置を特定しやすくなる。
【0269】
第6の態様に係る警報装置(10,10A,10B)では、第1~5のいずれかの態様において、発光部(311)は円環状である。操作面(211,211A)は、発光部(311)と同心円状である。
【0270】
この態様によれば、発光部(311)の光を頼りに操作面(211,211A)の位置を特定する場合でも、操作面(211,211A)の位置を特定しやすくなる。
【0271】
第7の態様に係る警報装置(10,10A,10B)は、第1~6のいずれかの態様において、起動ユニット(2,2A)は、可動子(22)を第1位置から第2位置に戻すための復旧ボタン(23,23A)を更に有する。復旧ボタン(23,23A)は、正面視において、発光部(311)と操作面(211,211A)との間に配置されている。
【0272】
この態様によれば、復旧ボタン(23,23A)を配置することで、発光部(311)と操作面(211,211A)との間のスペースを有効活用できる。
【0273】
第8の態様に係る警報装置(10,10A,10B)では、第7の態様において、ハウジング(1)の前面(101)の一部に配置される円形領域が、円形領域の一の直径に沿って2つの領域に分割されている。2つの領域は、それぞれ操作面(211,211A)及び復旧ボタン(23,23A)の前面となる。
【0274】
この態様によれば、操作面(211,211A)及び復旧ボタン(23,23A)の前面が全体として円形領域を構成するため、押ボタン(21,21A)及び復旧ボタン(23,23A)の収まりがよくなる。
【0275】
第9の態様に係る警報装置(10,10A,10B)では、第1~8のいずれかの態様において、起動ユニット(2,2A)は、少なくとも一部をハウジング(1)の前壁の後面に対向させるようにハウジング(1)の前壁に取り付けられている。
【0276】
この態様によれば、起動ユニット(2,2A)をハウジング(1)に取り付けやすくなる。
【0277】
第10の態様に係る警報装置(10,10A,10B)では、第9の態様において、表示灯(3,3A)は、発光部(311)を含む灯体カバー(31)を有する。起動ユニット(2,2A)は、ハウジング(1)の前壁との間に灯体カバー(31)を挟んでハウジング(1)の前壁に取り付けられている。
【0278】
この態様によれば、起動ユニット(2,2A)とは別に灯体カバー(31)を取り付ける場合に比べて、組立性が向上する。
【0279】
第11の態様に係る警報装置(10,10A,10B)は、第1~10のいずれかの態様において、スピーカ(5)を更に備える。スピーカ(5)は、ハウジング(1)に収容され、発報信号を受けて警報音を出力する。ハウジング(1)の前壁(カバー12)のうちスピーカ(5)に対応する特定領域(R100)には、音出力孔(122)が形成されている。特定領域(R100)とスピーカ(5)との間には、音出力孔(122)からスピーカ(5)へと浸入する液体を遮蔽する防水シート(103)が配置されている。特定領域(R100)と防水シート(103)との間には、少なくとも防水シート(103)の振動を許容する空隙(G10)がある。
【0280】
この態様によれば、防水シート(103)にて、音出力孔(122)からスピーカ(5)へと浸入する液体を遮蔽しながらも、防水シート(103)の振動が許容されるので、防水シート(103)でのスピーカ(5)からの出力音の低減量を小さく抑えやすい。
【0281】
第12の態様に係る警報装置(10,10A,10B)では、第11の態様において、防水シート(103)は、接着部(104)にてハウジング(1)の前壁に取り付けられている。接着部(104)は、特定領域(R100)の中央部(R101)を囲むように特定領域(R100)の外周部(R102)に設けられている。
【0282】
この態様によれば、防水シート(103)は、特定領域(R100)の中央部(R101)には接着されておらず、中央部(R101)を囲む外周部(R102)でのみ接着される。そのため、特定領域(R100)の中央部(R101)での防水シート(103)の振動が阻害されにくい。
【0283】
第13の態様に係る警報装置(10,10A,10B)では、第12の態様において、接着部(104)のうち音出力孔(122)の下方に位置する部位の上端縁と、音出力孔(122)の下端縁とで、上下方向の位置が一致する。
【0284】
この態様によれば、音出力孔(122)内に液体(水等)が浸入することがあっても、液体は、隙間に溜まりにくい。
【0285】
第14の態様に係る警報装置(10,10A,10B)は、第11~13のいずれかの態様において、化粧部材(102)を更に備える。化粧部材(102)は、ハウジング(1)の前面(101)のうちの特定領域(R100)に対応する位置に取り付けられる。化粧部材(102)には、音出力孔(122)と連通する複数の透過孔(105)が形成されている。ハウジング(1)は、複数の透過孔(105)と重複しない位置に、正面視において音出力孔(122)を複数の区域に区分けする仕切桟(127)を有する。
【0286】
この態様によれば、音出力孔(122)と連通する複数の透過孔(105)が、仕切桟(127)にて塞がれないので、スピーカ(5)からの出力音は、仕切桟(127)で遮られずに、ハウジング(1)の前面(101)から出力されやすくなる。
【0287】
第15の態様に係る警報装置(10,10A,10B)では、第14の態様において、化粧部材(102)は、ダミー孔(106)を有する。ダミー孔(106)は、化粧部材(102)を貫通せず、複数の透過孔(105)の少なくとも1つを模している。
【0288】
この態様によれば、スピーカ(5)のサイズよりも広範囲にわたって透過孔(105)があるように見せかけることができ、実際のサイズよりも大きなスピーカ(5)がハウジング(1)内に収容されているように見せかけることができる。これにより、視覚的に、スピーカ(5)から大きな音が出力されるような安心感を与えることができる。
【0289】
第2~15の態様に係る構成については、警報装置(10,10A,10B)に必須の構成ではなく、適宜省略可能である。
【符号の説明】
【0290】
1 ハウジング
2,2A 起動ユニット
3,3A 表示灯
4 回路基板
5 スピーカ
10,10A,10B 警報装置
21,21A 押ボタン
22 可動子
23,23A 復旧ボタン
31 灯体カバー
101 ハウジングの前面
102 化粧部材
103 防水シート
104 接着部
105 透過孔
106 ダミー孔
122 音出力孔
211,211A 操作面
241 環状プレート
311 発光部
R100 特定領域
R101 中央部
R102 外周部
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