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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024174047
(43)【公開日】2024-12-13
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/78 20060101AFI20241206BHJP
   H01L 29/12 20060101ALI20241206BHJP
【FI】
H01L29/78 652F
H01L29/78 652T
H01L29/78 652J
H01L29/78 653A
H01L29/78 652Q
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024166787
(22)【出願日】2024-09-25
(62)【分割の表示】P 2020110963の分割
【原出願日】2020-06-26
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003889
【氏名又は名称】弁理士法人酒井総合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥村 啓樹
(57)【要約】
【課題】ゲートパッド領域でアバランシェ電流の集中をなくして、ゲートパッド領域の信頼性を向上できる半導体装置を提供する。
【解決手段】半導体装置は、活性部40とゲートパッド部50とを有する第1導電型の半導体基板1と、第1導電型の第1半導体層2と、第2導電型の第2半導体層6と、を有する。活性部40は、第1導電型の第1半導体領域7と、第1トレンチ16aと、ゲート絶縁膜9と、第1ゲート電極10と、層間絶縁膜11と、第2導電型の第2半導体領域3と、を備える。ゲートパッド部50は、第2トレンチ16bと、絶縁膜9bと、第2ゲート電極10bと、第2導電型の第4半導体領域3bと、ゲート電極パッド14と、を備える。ゲート電極パッド14と半導体基板1との間には、多結晶シリコン膜が設けられる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性部とゲートパッド部とを含む半導体装置であって、
第1導電型の第1半導体層と、
前記第1半導体層のおもて面上に選択的に設けられた第2導電型の第2半導体層と、
を備え、
前記活性部は、
前記第2半導体層の表面に設けられたソース電極と、
前記ソース電極の下部に設けられ、第1方向に延在する第1トレンチと、
前記第2半導体層の表面層に選択的に設けられ、前記第1トレンチの側壁の一部に接する第1導電型のソース領域と、
を備え、
前記ゲートパッド部は、
前記第2半導体層の上方に設けられたゲート電極パッドと、
前記ゲート電極パッドの下部に設けられ、前記第1方向に延在する第2トレンチと、
前記第2トレンチの底面に接するように設けられた第2導電型の第1ベース領域と、
を備え、
前記第2トレンチは、前記第1トレンチとつながっており、
前記第2半導体層は、前記活性部から前記ゲートパッド部にかけて連続して設けられることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記第2トレンチの側壁に、前記第2トレンチと前記第1ベース領域とをつなぐ、第2導電型の第2ベース領域をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第2ベース領域は、前記第2トレンチの両側の側壁に設けられていることを特徴とする請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第2ベース領域は、前記第1方向に複数設けられていることを特徴とする請求項2に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第2ベース領域は、前記第2トレンチの一方の側壁に連続して設けられていることを特徴とする請求項2に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第1トレンチの底部に接するように設けられた第2導電型の第3ベース領域をさらに備えることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第3ベース領域は前記第1ベース領域と連続につながっていることを特徴とする請求項6に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記第1トレンチの側壁に、前記第1トレンチと前記第3ベース領域とをつなぐ、第2導電型の第4ベース領域をさらに備えることを特徴とする請求項6に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記第4ベース領域は、前記第1方向に複数設けられていることを特徴とする請求項8に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記ソース電極は、上面視で、前記第1方向において前記ゲート電極パッドを挟んでいることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記第2トレンチは両端ともに前記第1トレンチにつながっていることを特徴とする請求項1または10に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記ゲート電極パッドに接続されるワイヤーを備えることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項13】
前記ワイヤーは、前記第1の方向と実質的に平行であることを特徴とする請求項12に記載の半導体装置。
【請求項14】
前記第1トレンチの内部に絶縁膜を介して設けられた第1電極と、
前記第2トレンチの内部に絶縁膜を介して設けられた第2電極と、
前記ゲートパッド部において、隣り合う前記第2電極を覆う層間絶縁膜と、
を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項15】
前記ゲート電極パッドの直下には必ず前記層間絶縁膜があることを特徴とする請求項14に記載の半導体装置。
【請求項16】
前記第1電極および前記第2電極は、ゲート電極であることを特徴とする請求項14に記載の半導体装置。
【請求項17】
前記第1電極および前記第2電極は多結晶シリコン膜であることを特徴とする請求項14に記載の半導体装置。
【請求項18】
前記第1電極および前記第2電極は高融点金属を含むことを特徴とする請求項14に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
炭化珪素(SiC)は、シリコン(Si)に代わる次世代の半導体材料として期待されている。炭化珪素を半導体材料に用いた半導体素子(以下、炭化珪素半導体装置とする)は、シリコンを半導体材料に用いた従来の半導体素子と比較して、オン状態における素子の抵抗を数百分の1に低減可能であることや、より高温(200℃以上)の環境下で使用可能なこと等、様々な利点がある。これは、炭化珪素のバンドギャップがシリコンに対して3倍程度大きく、シリコンよりも絶縁破壊電界強度が1桁近く大きいという材料自体の特長による。
【0003】
炭化珪素半導体装置としては、現在までに、ショットキーバリアダイオード(SBD:Schottky Barrier Diode)、プレーナゲート構造やトレンチゲート構造の縦型MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor:絶縁ゲート型電界効果トランジスタ)が製品化されている。
【0004】
プレーナゲート構造は、半導体基板のおもて面上に平板状にMOSゲートを設けたMOSゲート構造である。トレンチゲート構造は、半導体基板(半導体チップ)のおもて面に形成したトレンチ内にMOSゲートを埋め込んだMOSゲート構造であり、トレンチの側壁に沿って半導体基板のおもて面と直交する方向にチャネル(反転層)が形成される。このため、半導体基板のおもて面に沿ってチャネルが形成されるプレーナゲート構造と比べて、単位面積当たりの単位セル(素子の構成単位)密度を増やすことができ、単位面積当たりの電流密度を増やすことができるため、コスト面で有利である。
【0005】
従来の炭化珪素半導体装置の構造について、トレンチ型MOSFETを例に説明する。図15は、従来の炭化珪素半導体装置の活性領域の構造を示す断面図である。図15では、オン時に電流の流れる活性領域140の構造を示す。図15に示すように、トレンチ型MOSFET170では、n+型炭化珪素基板101のおもて面にn-型炭化珪素エピタキシャル層102が堆積される。n-型炭化珪素エピタキシャル層102のn+型炭化珪素基板101側に対して反対側の表面側は、n型高濃度領域105が設けられている。n-型炭化珪素エピタキシャル層102には、トレンチ116の底面全体を覆うように第1p+型ベース領域103が選択的に設けられている。
【0006】
また、MOS構造部として、p型炭化珪素エピタキシャル層106、n+型ソース領域107、p+型コンタクト領域108、ゲート絶縁膜109、ゲート電極110、層間絶縁膜111、ソース電極112、裏面電極113、トレンチ116、ソース電極パッド(不図示)およびドレイン電極パッド(不図示)が設けられている。ソース電極112は、n+型ソース領域107、p型炭化珪素エピタキシャル層106上に設けられ、ソース電極112上にソース電極パッドが設けられている。
【0007】
トレンチ116の底面に、第1p+型ベース領域103を設けることで、トレンチ116の底面に電界が集中することを防ぎ、ゲート絶縁膜109を保護している。一方、耐圧を保持するためには、第1p+型ベース領域103をフローティングではなく、ソース電極112と設置して、同電位にする必要がある。このため、トレンチ116のチャネルの側壁の一部に第2p+型ベース領域104を選択的に設ける構造が知られている。これにより、パンチスルーを防ぎ、耐圧を保持できる。第2p+型ベース領域104は、トレンチ116のm面の側壁に設けることで、移動度が高いa面をチャネルに使用することができる。さらに、第2p+型ベース領域104に設けることでトレンチ116の間にp型領域を設ける必要がなくなり、セルピッチを縮小させることができる。
【0008】
また、ゲートトレンチの底面に接するように電界緩和領域を設けることで、半導体装置がオフ状態のときにゲートトレンチ底面に印加される電界を緩和できる半導体装置が知られている(下記、特許文献1参照)。また、非素子領域には、底面がドリフト層に達する第2トレンチを設け、第2トレンチ内に内面絶縁膜を介して低抵抗領域を設けることにより容量が形成され、高速スイッチング時に、第2トレンチ下方の第2緩和領域を通過する変位電流が低抵抗領域に分岐され、変位電流に起因した電位降下の大きさを抑制できる半導体装置が知られている(下記、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2019-195081号公報
【特許文献2】国際公開2019/159351号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
図16は、従来の炭化珪素半導体装置のゲートパッド領域の第1の構造を示す断面図である。また、図17は、従来の炭化珪素半導体装置のゲートパッド領域の第2の構造を示す断面図である。ゲートパッド領域150では、活性領域140と同様に、n+型炭化珪素基板101のおもて面上に、n-型炭化珪素エピタキシャル層102およびp型炭化珪素エピタキシャル層106が設けられている。p型炭化珪素エピタキシャル層106上に層間絶縁膜111を介して、ゲート電極パッド114が設けられている。図17のように、層間絶縁膜111中にゲート電極配線115が設けられてもよい。n+型炭化珪素基板101の裏面には裏面電極113が設けられている。
【0011】
図16および図17に示すように、従来のトレンチ構造では、ゲートパッド領域150には、トレンチ構造が設けられていない。このため、第1p+型ベース領域103および第2p+型ベース領域104を設けることができない。これにより、ゲートパッド領域150では、p型炭化珪素エピタキシャル層106とn-型炭化珪素エピタキシャル層102とのpn界面は、活性領域140より、p型炭化珪素エピタキシャル層106の表面から浅い位置になり、ゲートパッド領域150のpn界面に電界が集中するようになる。このため、ゲートパッド領域150でアバランシェ降伏し、耐圧が保持できず、ゲートパッド領域150の信頼性が悪化するという課題がある。
【0012】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、ゲートパッド領域でアバランシェ電流の集中をなくして、ゲートパッド領域の信頼性を向上できる半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した課題を解決し、本発明の目的を達成するため、この発明にかかる半導体装置は、次の特徴を有する。半導体装置は、活性部とゲートパッド部とを含む半導体装置であって、第1導電型の第1半導体層と、前記第1半導体層のおもて面上に選択的に設けられた第2導電型の第2半導体層と、を備える。前記活性部は、前記第2半導体層の表面に設けられたソース電極と、前記ソース電極の下部に設けられ、第1方向に延在する第1トレンチと、前記第2半導体層の表面層に選択的に設けられ、前記第1トレンチの側壁の一部に接する第1導電型のソース領域と、を備える。前記ゲートパッド部は、前記第2半導体層の上方に設けられたゲート電極パッドと、前記ゲート電極パッドの下部に設けられ、前記第1方向に延在する第2トレンチと、前記第2トレンチの底面に接するように設けられた第2導電型の第1ベース領域と、を備える。前記第2トレンチは、前記第1トレンチとつながっており、前記第2半導体層は、前記活性部から前記ゲートパッド部にかけて連続して設けられる。
【0014】
上述した発明によれば、ゲートパッド領域にもトレンチおよびトレンチの底面を覆う第1p+型ベース領域(第2導電型の第2半導体領域)が設けられている。これにより、活性領域とゲートパッド領域とで、n-型炭化珪素エピタキシャル層(第1導電型の第1半導体層)と第1p+型ベース領域とのpn界面が、炭化珪素半導体基体の表面から同じ深さになる。このため、ゲートパッド領域にアバランシェ電流が集中することがなくなり、ゲートパッド領域の耐圧を保持できるようになり、ゲート絶縁膜の信頼性を向上することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明にかかる半導体装置によれば、ゲートパッド領域でアバランシェ電流の集中をなくして、ゲートパッド領域の信頼性を向上できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の活性領域の構造を示す断面図である。
図2】実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置のゲートパッド領域の第1の構造を示す断面図である。
図3】実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置のゲートパッド領域の第2の構造を示す断面図である。
図4】実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置のゲートパッド領域の第3の構造を示す断面図である。
図5】実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置のゲートパッド領域の第4の構造を示す断面図である。
図6】実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置のゲートパッド領域の第5の構造を示す断面図である。
図7】実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の構造を示す上面図である。
図8】実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である(その1)。
図9】実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である(その2)。
図10】実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である(その3)。
図11】実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である(その4)。
図12】実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である(その5)。
図13】実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置の活性領域とゲートパッド領域の構造を示す断面図である。
図14】実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置の構造を示す上面図である。
図15】従来の炭化珪素半導体装置の活性領域の構造を示す断面図である。
図16】従来の炭化珪素半導体装置のゲートパッド領域の第1の構造を示す断面図である。
図17】従来の炭化珪素半導体装置のゲートパッド領域の第2の構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる半導体装置の好適な実施の形態を詳細に説明する。本明細書および添付図面においては、nまたはpを冠記した層や領域では、それぞれ電子または正孔が多数キャリアであることを意味する。また、nやpに付す+および-は、それぞれそれが付されていない層や領域よりも高不純物濃度および低不純物濃度であることを意味する。なお、以下の実施の形態の説明および添付図面において、同様の構成には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、本明細書では、ミラー指数の表記において、“-”はその直後の指数につくバーを意味しており、指数の前に“-”を付けることで負の指数をあらわしている。そして、同じまたは同等との記載は製造におけるばらつきを考慮して5%以内まで含むとするのがよい。
【0018】
(実施の形態1)
本発明にかかる半導体装置は、ワイドバンドギャップ半導体を用いて構成される。実施の形態1においては、ワイドバンドギャップ半導体として例えば炭化珪素(SiC)を用いて作製(製造)された炭化珪素半導体装置について、トレンチ型MOSFET70を例に説明する。図1は、実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の活性領域の構造を示す断面図である。
【0019】
実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置は、主電流が流れる活性領域40の外周部に、活性領域40の周囲を囲んで耐圧を保持するエッジ終端領域やゲート電極と接続されるゲートパッド領域50が設けられている。図1では、トレンチ型MOSFET70の活性領域40のみを示している。
【0020】
図1に示すように、トレンチ型MOSFET70は、半導体基板のおもて面(後述するp型炭化珪素エピタキシャル層6側の面)側にトレンチゲート構造のMOSゲートを備えている。炭化珪素半導体基体は、炭化珪素からなるn+型炭化珪素基板(第1導電型の半導体基板)1上にn-型炭化珪素エピタキシャル層(第1導電型の第1半導体層)2を順にエピタキシャル成長させてなる。また、n型高濃度領域5をn型炭化珪素エピタキシャル層2上にエピタキシャル成長させてもよい。
【0021】
トレンチゲート構造のMOSゲートは、p型炭化珪素エピタキシャル層(第2導電型の第2半導体層)6、n+型ソース領域(第1導電型の第1半導体領域)7、p+型コンタクト領域8、トレンチ(第1トレンチ)16a、ゲート絶縁膜9およびゲート電極(第1ゲート電極)10で構成される。なおp+型コンタクト領域8は設けられなくてもよい。
【0022】
具体的には、トレンチ16aは、半導体基板のおもて面から深さ方向yにp型炭化珪素エピタキシャル層6を貫通して、n型高濃度領域5(n型高濃度領域5が設けられていない場合は、n-型炭化珪素エピタキシャル層2、以下(2)と称する)に達する。深さ方向yとは、半導体基板のおもて面から裏面へ向かう方向である。トレンチ16aは、ストライプ状に配置されている(図7参照)。
【0023】
トレンチ16aの内部には、トレンチ16aの内壁に沿ってゲート絶縁膜9が設けられ、ゲート絶縁膜9上にトレンチ16aの内部に埋め込むようにゲート電極10が設けられている。1つのトレンチ16a内のゲート電極10と、当該ゲート電極10を挟んで隣り合うメサ領域17a(隣り合うトレンチ16a間の領域)と、でメイン半導体素子の1つの単位セルが構成される。図1では、3つのトレンチMOS構造のみを図示しているが、さらに多くのトレンチ構造のMOSゲート(金属-酸化膜-半導体からなる絶縁ゲート)構造が並列に配置されていてもよい。
【0024】
-型炭化珪素エピタキシャル層2のソース側(後述するソース電極12側)の表面層に、p型炭化珪素エピタキシャル層6に接するようにn型領域(以下、n型高濃度領域とする)5が設けられていてもよい。n型高濃度領域5は、キャリアの広がり抵抗を低減させる、いわゆる電流拡散層(Current Spreading Layer:CSL)である。このn型高濃度領域5は、例えば、トレンチ16aの内壁を覆うように、基板おもて面(半導体基板のおもて面)に平行な方向に一様に設けられている。n型高濃度領域5は、p型炭化珪素エピタキシャル層6との界面から、トレンチ16aの底面に達しない位置まで設けられている。n型高濃度領域5は、トレンチ16aの底面よりも深く、かつ後述する第1p+型ベース領域3の底面よりも浅い位置まで設けてもよい。
【0025】
-型炭化珪素エピタキシャル層2の内部には、第1p+型ベース領域(第2導電型の第2半導体領域)3が選択的に設けられていてもよい。第1p+型ベース領域3は、トレンチ16aの底面および底面コーナー部のうち少なくとも底面を覆う。トレンチ16aの底面コーナー部とは、トレンチ16aの底面と側壁との境界である。
【0026】
第1p+型ベース領域3とn-型炭化珪素エピタキシャル層2とのpn接合は、トレンチ16aの底面よりもドレイン側に深い位置に形成されている。第1p+型ベース領域3のドレイン側端部の深さ位置は、第1p+型ベース領域3とn-型炭化珪素エピタキシャル層2とのpn接合がトレンチ16aの底面よりもドレイン側に深い位置にあればよく、設計条件に合わせて種々変更可能である。第1p+型ベース領域3により、トレンチ16aの底面に沿った部分でゲート絶縁膜9に高電界が印加されることを防止することができる。
【0027】
トレンチ16aの延在方向に平行な第1の方向(z方向)と直交する第2の方向(x方向)における少なくとも一方のトレンチ側壁に接するようにn-型炭化珪素エピタキシャル層2(n型高濃度領域5が設けられている場合は、n-型炭化珪素エピタキシャル層2およびn型高濃度領域5、以下(2、5)と称する)内に、第2p+型ベース領域(第2導電型の第3半導体領域)4が設けられていてもよい。一方のトレンチ側壁は、m面であってもよく、a面であってもよい。
【0028】
第2p+型ベース領域(第2導電型の第3半導体領域)4は、p型炭化珪素エピタキシャル層6と第1p+型ベース領域3と接するように設けられる。図1のように、第2p+型ベース領域4は、底面が第1p+型ベース領域3と同じ深さで、n-型炭化珪素エピタキシャル層2と接し、上面は、後述するn+型ソース領域7に接していてもよい。第2p+型ベース領域4により、第1p+型ベース領域3とp型炭化珪素エピタキシャル層6とを電気的に接続して、第1p+型ベース領域3をフローティングではなく、ソース電極12と同電位にしている。これにより、パンチスルーを防ぎ、耐圧を保持できる。
【0029】
第2p+型ベース領域4は、n-型炭化珪素エピタキシャル層2(2、5)内で、トレンチ16aの延在方向に平行な第1の方向に間隔を空けて複数設けられる形態でもよい。この場合、第1の方向でトレンチ16aの一方の側壁は、第2p+型ベース領域4とn-型炭化珪素エピタキシャル層2(2、5)と交互に接するようになる。
【0030】
また、第2p+型ベース領域4は、間隔を空けずに、トレンチ16aの一方の側壁に一つ設けてもよい。この場合、第1の方向でトレンチ16aの一方の側壁は、第2p+型ベース領域4に接するようになる。
【0031】
p型炭化珪素エピタキシャル層6の内部には、n+型ソース領域7とp+型コンタクト領域8が選択的に設けられている。n+型ソース領域7は、トレンチ16aの側壁のゲート絶縁膜9に接し、トレンチ16aの側壁のゲート絶縁膜9を介してゲート電極10に対向する。
【0032】
層間絶縁膜11は、ゲート電極10を覆うように、半導体基板のおもて面全面に設けられている。層間絶縁膜11には、層間絶縁膜11を深さ方向yに貫通して基板おもて面に達するコンタクトホールが開口されている。
【0033】
ソース電極(第1電極)12は、層間絶縁膜11に開口されたコンタクトホール内において半導体基板(n+型ソース領域7)にオーミック接触し、かつ層間絶縁膜11によりゲート電極10と電気的に絶縁されている。ソース電極12上に、ソース電極パッド(不図示)が設けられている。ソース電極12はn+型ソース領域7とp+型コンタクト領域8とオーミック接触する。p+型コンタクト領域8が設けられていない場合、ソース電極12はn+型ソース領域7とp型炭化珪素エピタキシャル層6とオーミック接触する。
【0034】
半導体基板の裏面に、ドレイン電極となる裏面電極(第2電極)13が設けられている。裏面電極13上には、ドレイン電極パッド(不図示)が設けられている。
【0035】
図2は、実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置のゲートパッド領域の第1の構造を示す断面図である。ゲートパッド領域50では、活性領域40と同様に、n+型炭化珪素基板1のおもて面上に、n-型炭化珪素エピタキシャル層2およびp型炭化珪素エピタキシャル層6が設けられている。ゲートパッド領域50でのn+型炭化珪素基板1、n-型炭化珪素エピタキシャル層2、p型炭化珪素エピタキシャル層6のそれぞれの厚さ、不純物濃度は、活性領域のn+型炭化珪素基板1、n-型炭化珪素エピタキシャル層2、p型炭化珪素エピタキシャル層6と同じである。また、ゲートパッド領域50のp型炭化珪素エピタキシャル層6は、活性領域40のp型炭化珪素エピタキシャル層6とつながっている。
【0036】
実施の形態1では、ゲートパッド領域50に、トレンチ(第2トレンチ)16b、ゲート絶縁膜(絶縁膜)9bおよびゲート電極(第2ゲート電極)10bで構成されるトレンチゲート構造が設けられている。ゲートパッド領域50でのトレンチ16bの幅、深さは、活性領域40でのトレンチ16aの幅、深さと同じである。また、ゲートパッド領域50においては、隣り合うトレンチ16bの間のメサ領域17bの、半導体基板の表面にもゲート絶縁膜16bが設けられている。
【0037】
また、n-型炭化珪素エピタキシャル層2の内部には、第1p+型ベース領域(第2導電型の第4半導体領域)3bが選択的に設けられていてもよい。第1p+型ベース領域3bは、活性領域40と同様に、トレンチ16bの底面および底面コーナー部のうち少なくとも底面を覆う。ゲートパッド領域50での第1p+型ベース領域3bの幅、深さは、活性領域40での第1p+型ベース領域3の幅、深さと同じである。
【0038】
層間絶縁膜11は、ゲート絶縁膜9bを介して半導体基板のおもて面全面に設けられ、層間絶縁膜11上に、ゲート電極10と電気的に接続するゲート電極パッド14が設けられている。半導体基板の裏面に、ドレイン電極となる裏面電極13が設けられている。裏面電極13上には、ドレイン電極パッド(不図示)が設けられている。また、n-型炭化珪素エピタキシャル層2のソース側の表面層に、p型炭化珪素エピタキシャル層6に接するようにn型高濃度領域5が設けられていてもよい。
【0039】
このように、実施の形態1では、ゲートパッド領域50にもトレンチ16bが設けられ、トレンチ16bの底面を覆う第1p+型ベース領域3bが設けられている。これにより、活性領域40とゲートパッド領域50とで、n-型炭化珪素エピタキシャル層2と第1p+型ベース領域3、3bとのpn界面が、炭化珪素半導体基体の表面から同じ深さになる。このため、ゲートパッド領域50にアバランシェ電流が集中することがなくなり、ゲートパッド領域50の耐圧を保持できるようになり、ゲート絶縁膜9の信頼性を向上することができる。
【0040】
ここで、ゲートパッド領域50のトレンチ16bは、活性領域40のトレンチ16aとつながっていても、つながっていなくともよい。トレンチ16bをトレンチ16aとつなげる場合、第1p+型ベース領域3bを活性領域40の第1p+型ベース領域3とつなげることで、簡単に第1p+型ベース領域3bをソース電極12と同電位にすることができる。トレンチ16bをトレンチ16aとつなげない場合、トレンチ16bの幅や深さをトレンチ16aよりも大きくすることができる。また、第1p+型ベース領域3bの不純物濃度を、活性領域40の第1p+型ベース領域3よりも高くすることができる。これによりトレンチ16bにホールが集中しやすくなり、ホールの制御が容易になる。
【0041】
図3は、実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置のゲートパッド領域の第2の構造を示す断面図である。図3に示すように、ゲートパッド領域50で、層間絶縁膜11Aは、p型炭化珪素エピタキシャル層6を覆うように、ゲート絶縁膜9bを介して半導体基体のおもて面全面に設けられている。層間絶縁膜11Aには、層間絶縁膜11Aを深さ方向yに貫通して基板おもて面に達するコンタクトホールが開口されている。ゲートパッド領域50において、半導体基体のおもて面全面に、多結晶シリコン(Poly-Si)により構成されるゲート電極配線(多結晶シリコン膜)15が設けられる。ゲート電極配線15は、多結晶シリコン以外に、チタンやタングステンなどの高融点金属やそのシリサイド、窒化物、およびこれらの積層膜を用いてもよい。ゲート電極配線15は、層間絶縁膜11Aに設けられたコンタクトホール内においてゲート電極10にオーミック接触し、かつ層間絶縁膜11Aによりp型炭化珪素エピタキシャル層6と電気的に絶縁されている。
【0042】
ゲート電極配線15上に、層間絶縁膜11Bを介して、ゲート電極パッド14が設けられている。つまり、ゲート電極パッド14とn+型炭化珪素基板1との間に、ゲート電極配線15として多結晶シリコン膜が全面に設けられている。ゲート電極配線15とゲート電極パッド14は、電気的に接続される。図3では、ゲートパッド領域50の層間絶縁膜11Bにはコンタクトホールを設けずに、ゲートパッド領域50以外の部分でゲート電極配線15とゲート電極パッド14とが接続されている。この場合、ゲート電極パッド14にワイヤーを接合する際の接合面積が減少することがないというメリットがある。さらに、ゲート電極パッド14の直下には必ず層間絶縁膜11Bがあるため、下部の素子構造に対するダメージが少ない。また、ゲートパッド領域50の層間絶縁膜11Bにコンタクトホールを設け、コンタクトホールを介して、ゲート電極配線15とゲート電極パッド14とが電気的に接続することも可能である。この場合、ゲート電極パッド14とゲート電極配線15との間の層間絶縁膜11Bを大きく開口することができ、ゲート電極パッド14とゲート電極配線15との間のコンタクト抵抗を下げることができる。
【0043】
このように、ゲートパッド領域50において、ゲート電極パッド14の下部全面にゲート電極配線15を設けることで、ゲート電極パッド15の表面を平らにすることができ、ゲート電極パッド14にワイヤーを接合する際の接合面積を増やすことができる。さらに、ゲート電極パッド14下のゲート電極配線15の断面積が大きくなるためゲート抵抗(Rg)を下げることができる。
【0044】
図4は、実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置のゲートパッド領域の第3の構造を示す断面図である。図4に示すように、ゲートパッド領域50でも、トレンチ16bの側壁の一部に第2p+型ベース領域(第2導電型の第5半導体領域)4bが選択的に設けられている。第2p+型ベース領域4bは、p型炭化珪素エピタキシャル層6と第1p+型ベース領域3bと接するように設けられる。ゲートパッド領域50での第2p+型ベース領域4bの幅、深さは、活性領域40での第2p+型ベース領域4の幅、深さと同じである。
【0045】
ゲートパッド領域50のp型炭化珪素エピタキシャル層6は、第1の方向(z方向)において、活性領域40のp型炭化珪素エピタキシャル層6まで連続してつながっている(図7参照)。このため、活性領域40と同様に、第2p+型ベース領域4bにより、第1p+型ベース領域3bとp型炭化珪素エピタキシャル層6と電気的に接続して、第1p+型ベース領域3bをフローティングではなく、ソース電極12と同電位にしている。これにより、パンチスルーを防ぎ、耐圧を保持できる。
【0046】
活性領域40と同様に、第2p+型ベース領域4bは、n-型炭化珪素エピタキシャル層2内で、トレンチ16bの延在方向に平行な第1の方向に間隔を空けて複数設けられる形態でもよい。この場合、第1の方向でトレンチ16bの一方の側壁は、第2p+型ベース領域4bとn-型炭化珪素エピタキシャル層2と交互に接するようになる。また、第2p+型ベース領域4bは、間隔を空けずに、トレンチ16bの一方の側壁に一つ設けてもよい。この場合、第1の方向でトレンチ16bの一方の側壁は、第2p+型ベース領域4bに接するようになる。
【0047】
図5は、実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置のゲートパッド領域の第4の構造を示す断面図である。図5に示すように、ゲートパッド領域50において、半導体基体のおもて面全面にゲート電極配線15が設けられ、トレンチ16bの側壁の一部に第2p+型ベース領域4bが選択的に設けられている。このように、第4の構造は、第2の構造と第3の構造の特徴を有しており、第2の構造と第3の構造の両方の効果を有している。
【0048】
図6は、実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置のゲートパッド領域の第5の構造を示す断面図である。図6に示すように、トレンチ16bの側壁の両側に第2p+型ベース領域4bが選択的に設けられている。ゲートパッド領域50のトレンチ16bは、MOSゲートとして機能せず、チャネルを形成する必要がなく、側壁の両側に第2p+型ベース領域4bを設けることができる。これにより、図4の第3の構造よりも、パンチスルーを防ぎ、耐圧を保持できる。また、図示をしていないが、図6の構造でも、ゲートパッド領域50において、半導体基体のおもて面全面にゲート電極配線15を設けることも可能である。
【0049】
図7は、実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の構造を示す上面図である。図7において、ソース電極12の下部の領域が活性領域40であり、ゲート電極パッド14の下部の領域がゲートパッド領域50となる。また、ゲートパッド領域50のp型炭化珪素エピタキシャル層6は、活性領域40のp型炭化珪素エピタキシャル層6とつながっている。図7のように、ゲートパッド領域50のトレンチ16bの延在方向(x方向)は、活性領域40のトレンチ16aの延在方向と同一向きで設けられていることが好ましい。また、ゲートパッド領域50でのトレンチ16bの延在方向は、ゲート電極パッド14に接続されるワイヤーと平行な方向であることが好ましい。例えば、このワイヤーの一端は、トレンチ型MOSFET70のx方向の外側の位置Aにあり、位置Aとゲート電極パッド14とがワイヤーで接続される。これにより、ゲート電極パッド14にワイヤーを接合する際に、層間絶縁膜11が破壊される等のシェルクラックが発生することを防止できる。
【0050】
(実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の製造方法)
次に、実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の製造方法について説明する。図8図12は、実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である。
【0051】
まず、n型の炭化珪素でできたn+型炭化珪素基板1を用意する。そして、このn+型炭化珪素基板1のおもて面上に、n型の不純物、例えば窒素原子をドーピングしながら炭化珪素でできた下部n-型炭化珪素エピタキシャル層2aをエピタキシャル成長させる。ここまでの状態が図8に示されている。
【0052】
次に、下部n-型炭化珪素エピタキシャル層2aの表面上に、フォトリソグラフィ技術によって所定の開口部を有するイオン注入用マスクを例えば酸化膜で形成する。そして、アルミニウム等のp型の不純物を、酸化膜の開口部に注入し、第1p+型ベース領域3、3bを形成する。
【0053】
次に、下部n-型炭化珪素エピタキシャル層2aの表面上に、窒素等のn型の不純物をドーピングしながら炭化珪素でできた上部n-型炭化珪素エピタキシャル層2bをエピタキシャル成長させる。下部n-型炭化珪素エピタキシャル層2aと上部n-型炭化珪素エピタキシャル層2bとを併せて、n-型炭化珪素エピタキシャル層2となる。
【0054】
次に、イオン注入用マスクの一部を除去し、開口部に窒素等のn型の不純物をイオン注入し、n-型炭化珪素エピタキシャル層2の表面領域の一部に、n型高濃度領域5を形成してもよい。ただし、このn型高濃度領域5が基板全面に形成される場合と、形成されない場合がある。ここまでの状態が図9に示されている。
【0055】
次にn-型炭化珪素エピタキシャル層2の表面上に、エピタキシャル成長によりp型炭化珪素エピタキシャル層6を形成する。p型炭化珪素エピタキシャル層6をエピタキシャル成長により形成した後、p型炭化珪素エピタキシャル層6にさらにアルミニウム等のp型の不純物を、p型炭化珪素エピタキシャル層6のチャネル領域にイオン注入を行ってもよい。
【0056】
次に、p型炭化珪素エピタキシャル層6の表面上に、フォトリソグラフィによって所定の開口部を有するイオン注入用マスクを例えば酸化膜で形成する。この開口部に窒素(N)、リン(P)等のn型の不純物をイオン注入し、p型炭化珪素エピタキシャル層6の表面の一部にn+型ソース領域7を形成する。n+型ソース領域7は活性領域40のみに形成する。次に、n+型ソース領域7の形成に用いたイオン注入用マスクを除去する。新たなイオン注入用マスクを形成し、アルミ(Al)やボロン(B)などのp型の不純物をイオン注入することで、隣り合うn+型ソース領域7の間にp+型コンタクト領域8を形成する。p+型コンタクト領域8は活性領域40のみに形成する。ここまでの状態が図10に示されている。
【0057】
次に、p型炭化珪素エピタキシャル層6の表面上に、フォトリソグラフィによって所定の開口部を有するトレンチ形成用マスクを例えば酸化膜で形成する。次に、ドライエッチングによってp型炭化珪素エピタキシャル層6を貫通し、n-型炭化珪素エピタキシャル層2に達するトレンチ16a、16bを形成する。トレンチ16a、16bの底部はn-型炭化珪素エピタキシャル層2に形成された第1p+型ベース領域3に達する。トレンチ16aは活性領域40に、トレンチ16bはゲートパッド領域50に形成する。次に、トレンチ形成用マスクを除去する。
【0058】
次に、アルミニウム等のp型の不純物を、トレンチ16aの開口部から斜めイオン注入し、トレンチ16aの側壁の一部に第2p+型ベース領域4を形成する。トレンチ16bの側壁に第2p+型ベース領域4bを同時に形成してもよい。
【0059】
次に、1700℃程度の不活性ガス雰囲気で熱処理(アニール)を行い、第1p+型ベース領域3,3b、第2p+型ベース領域4、p+型コンタクト領域8およびn+型ソース領域7の活性化処理を実施する。なお、上述したように1回の熱処理によって各イオン注入領域をまとめて活性化させてもよいし、イオン注入を行うたびに熱処理を行って活性化させてもよい。ここまでの状態が図11に示されている。
【0060】
次に、n+型ソース領域7の表面と、トレンチ16a、16bの底部および側壁と、に沿ってゲート絶縁膜9を形成する。このゲート絶縁膜9は、酸素雰囲気中において1000℃程度の温度の熱酸化によって形成してもよい。また、このゲート絶縁膜9は高温酸化(High Temperature Oxide:HTO)等のような化学反応によって堆積する方法で形成してもよい。
【0061】
次に、ゲート絶縁膜9上に、例えばリン原子がドーピングされた多結晶シリコン膜を設ける。この多結晶シリコン膜はトレンチ16a、16b内を埋めるように形成してもよい。この多結晶シリコン膜をフォトリソグラフィによりパターニングし、トレンチ16a、16b内部に残すことによって、ゲート電極10を形成する。ここまでの状態が図12に示されている。
【0062】
次に、ゲート絶縁膜9およびゲート電極10を覆うように、例えばリンガラスを1μm程度の厚さで成膜し、層間絶縁膜11を形成する。層間絶縁膜11およびゲート絶縁膜9をフォトリソグラフィによりパターニングしn+型ソース領域7およびp型炭化珪素エピタキシャル層6を露出させたコンタクトホールを形成する。その後、熱処理(リフロー)を行って層間絶縁膜11を平坦化する。また、層間絶縁膜11にコンタクトホールを形成した後に、チタン(Ti)または窒化チタン(TiN)またはチタンと窒化チタンの積層からなるバリアメタルを形成してもよい。この場合、バリアメタルにもn+型ソース領域7を露出させるコンタクトホールが設けられる。ゲート配線電極15を形成する場合、例えばリン原子がドーピングされた多結晶シリコン膜と、層間絶縁膜11Bとして例えばリンガラスを1μm程度の厚さで形成する工程がこの後に追加される。
【0063】
次に、層間絶縁膜11に設けられたコンタクトホール内および層間絶縁膜11上にソース電極12となる導電性の膜を形成する。導電性の膜は、例えばニッケル(Ni)膜である。その後、例えば970℃程度の温度で熱処理を行って、コンタクトホール内部のニッケル膜をシリサイド化してソース電極12とする。その後、未反応のニッケル膜を選択的に除去して、例えばコンタクトホール内にのみソース電極12を残す。
【0064】
次に、コンタクトホールを埋め込むようにソース電極パッド(不図示)を形成する。ソース電極パッドを形成するために堆積した金属層の一部をゲート電極パッド14としてもよい。n+型炭化珪素基板1の裏面には、裏面電極13のコンタクト部にスパッタ蒸着などを用いてニッケル(Ni)膜、チタン(Ti)膜などの金属膜を形成する。この金属膜は、Ni膜、Ti膜を複数組み合わせて積層してもよい。その後、金属膜がシリサイド化してオーミックコンタクトを形成するように、高速熱処理(RTA:Rapid Thermal Annealing)などのアニールを施す。その後、例えばTi膜、Ni膜、金(Au)を順に積層した積層膜などの厚い膜を電子ビーム(EB:Electron Beam)蒸着などで形成し、裏面電極13を形成する。
【0065】
上述したエピタキシャル成長およびイオン注入においては、n型不純物(n型ドーパント)として、例えば、炭化珪素に対してn型となる窒素(N)やリン(P)、ヒ素(As)、アンチモン(Sb)などを用いればよい。p型不純物(p型ドーパント)として、例えば、炭化珪素に対してp型となるホウ素(B)やアルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、タリウム(Tl)などを用いればよい。このようにして、図1に示すトレンチ型MOSFET70が完成する。ここでは、ゲートパッド領域50として、第2の構造の場合の例を示したが、他の構造も同様に形成することができる。
【0066】
以上、説明したように、実施の形態1によれば、ゲートパッド領域にもトレンチおよびトレンチの底面を覆う第1p+型ベース領域が設けられている。これにより、活性領域とゲートパッド領域とで、n-型炭化珪素エピタキシャル層と第1p+型ベース領域とのpn界面が、炭化珪素半導体基体の表面から同じ深さになる。このため、ゲートパッド領域にアバランシェ電流が集中することがなくなり、ゲートパッド領域の耐圧を保持できるようになり、ゲート絶縁膜の信頼性を向上することができる。
【0067】
(実施の形態2)
図13は、実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置の活性領域とゲートパッド領域の構造を示す断面図である。図14は、実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置の構造を示す上面図である。図13は、図14のA-A’断面の断面図である。実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置が実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置と異なるのは、ゲートパッド領域50のトレンチ16bの幅は、活性領域40のトレンチ16aの幅よりも広く、ゲートパッド領域50にトレンチ16bが1つのみ設けられていることである。
【0068】
ゲートパッド領域50のトレンチ16bでは、トレンチ16bの大きさはゲート電極パッド14よりも一回り大きい。つまり、トレンチ16bの幅はゲート電極パッド14の幅よりも少し広く、トレンチ16bの奥行き(z方向の長さ)はゲート電極パッド14の奥行きよりも少し長い。そしてゲート電極パッド14の裏面電極13側には、層間絶縁膜11を介してトレンチ16b内のゲート電極10として多結晶シリコン膜が全面に広がっている。ゲート電極10は、ゲート電極パッド14よりも1回り小さくともよい。例えば、ゲート電極10の各辺がゲート電極パッド14よりも10%小さい程度であれば、実質上、多結晶シリコン膜がゲート電極パッド14の下部の全面に広がっていると見なすことができる。ゲート電極10には、多結晶シリコンの他、チタンやタングステンなどの高融点金属やそのシリサイド、窒化物、およびこれらの積層膜を用いることができる。ここで、層間絶縁膜11にコンタクトホールが設けられ、トレンチ16b内のゲート電極10とゲート電極パッド14とが電気的に接続されていてもよい。これにより、トレンチ16bの下部での第1p+型ベース領域3とのコンタクトが容易になり、実施の形態1よりも、ゲートパッド領域50でのゲート絶縁膜9の保護能力が高くなっている。ゲートパッド領域50のトレンチ16bでも、実施の形態1の第3の構造のように、一方の側壁に第2p+型ベース領域4が選択的に設けられていてもよい。また、実施の形態1の第5の構造のように、両方の側壁に第2p+型ベース領域4が選択的に設けられていてもよい。
【0069】
また、活性領域40の最外周のトレンチ16aは、ゲートパッド領域40側にn+型ソース領域7が設けられておらず、p型炭化珪素エピタキシャル層6と接触している。これにより、ゲートパッド領域50の第1p+型ベース領域3からホール(正孔)を容易に引き抜くことができる。
【0070】
トレンチ16bの底面の全域に第1p+型ベース領域3bが設けられている。トレンチ16bの幅が広いことより、トレンチ16bの下に形成される第1p+型ベース領域3bは、活性領域40のトレンチ16aの下に形成される第1p+型ベース領域3より不純物濃度が高くなる。これは、トレンチ16bをトレンチ16aと同じ製法で形成しても、イオン注入により注入される不純物がマスクの側壁に吸収される割合が低いためである。さらに、トレンチ16bの幅が広いことより、トレンチ16aより深く形成されるようになる。このように、不純物濃度が高く、深さが深い第1p+型ベース領域3bを設けることより、トレンチ16bにホールが集中しやすくなり、ホールの制御が容易になる。例えば、図13では、幅の広いトレンチ16bが1つだけであるが、幅の広いトレンチ16bが2つ以上であってもよい。この場合、トレンチ16bの間の領域に、ホールを引き抜く構造を設けることができ、ホールの制御を行うことができる。
【0071】
(実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置の製造方法)
実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置は、実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の製造方法において、ゲートパッド領域50でトレンチ16bを形成する際、活性領域40のトレンチ16aの幅よりも広く、1つまたは2つ以上形成することで、製造することが可能である。また、図9におけるイオン注入で第1p+型ベース領域3bを形成する工程に替えて、トレンチ16a、16bの形成後にトレンチ16a、16bの底面にイオン注入することで、不純物濃度が高く、深さが深い第1p+型ベース領域3bを形成することが可能である。
【0072】
以上、説明したように、実施の形態2によれば、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。さらに、実施の形態2では、ゲートパッド領域では、トレンチの幅は、活性領域のトレンチの幅より広く設けられている。これにより、トレンチの下部での第1p+型ベース領域とのコンタクトが容易になり、実施の形態1よりも、ゲートパッド領域でのゲート絶縁膜の保護能力が高くなっている。
【0073】
以上において本発明は本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であり、上述した各実施の形態において、例えば各部の寸法や不純物濃度等は要求される仕様等に応じて種々設定される。また、上述した各実施の形態では、ワイドバンドギャップ半導体として炭化珪素を用いた場合を例に説明しているが、炭化珪素以外の例えば窒化ガリウム(GaN)などのワイドバンドギャップ半導体にも適用可能である。また、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)等のワイドバンドギャップ半導体以外の半導体にも適用可能である。また、各実施の形態では第1導電型をn型とし、第2導電型をp型としたが、本発明は第1導電型をp型とし、第2導電型をn型としても同様に成り立つ。
【産業上の利用可能性】
【0074】
以上のように、本発明にかかる炭化珪素半導体装置および炭化珪素半導体装置の製造方法は、インバータなどの電力変換装置や種々の産業用機械などの電源装置や自動車のイグナイタなどに使用されるパワー半導体装置に有用である。
【符号の説明】
【0075】
1、101 n+型炭化珪素基板
2、102 n-型炭化珪素エピタキシャル層
2a 下部n-型炭化珪素エピタキシャル層
2b 上部n-型炭化珪素エピタキシャル層
3、3b、103 第1p+型ベース領域
4、4b、104 第2p+型ベース領域
5、105 n型高濃度領域
6、106 p型炭化珪素エピタキシャル層
7、107 n+型ソース領域
8、108 p+型コンタクト領域
9、9b、109 ゲート絶縁膜
10、10b、110 ゲート電極
11、111 層間絶縁膜
12、112 ソース電極
13、113 裏面電極
14、114 ゲート電極パッド
15、115 ゲート電極配線
16a、16b、116 トレンチ
40 140 活性領域
50 150 ゲートパッド領域
70、170 トレンチ型MOSFET
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17