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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024174078
(43)【公開日】2024-12-13
(54)【発明の名称】賞品払出装置
(51)【国際特許分類】
   A63F 7/02 20060101AFI20241206BHJP
   A63F 5/04 20060101ALI20241206BHJP
【FI】
A63F7/02 354
A63F5/04 685
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024167774
(22)【出願日】2024-09-26
(62)【分割の表示】P 2020195734の分割
【原出願日】2020-11-26
(71)【出願人】
【識別番号】000001432
【氏名又は名称】グローリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】弁理士法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀尾 昭博
(72)【発明者】
【氏名】中島 宏
(72)【発明者】
【氏名】石塚 卓也
(72)【発明者】
【氏名】村山 慶恵
(72)【発明者】
【氏名】喜多村 雅志
(72)【発明者】
【氏名】池野 成高
(57)【要約】
【課題】小型化を図れる賞品払出装置を提供する。
【解決手段】賞品払出装置1は、開口11Aを有する筐体11、および開口Aを開閉する扉13を有し、賞品の払出口13Bが設けられた装置本体3と、筐体11内に設けられ、賞品を収納する収納部と、収納部から繰り出された賞品を受け取って払出口13Bまで移動する移動部54とを含む。移動部54が扉13に一体化されている。扉13が、内部空間11Bを有している。払出口13Bが内部空間11Bに連通している。移動部54が内部空間11Bを移動する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口を有する筐体、および前記開口を開閉する扉を有し、賞品の払出口が設けられた装置本体と、
前記筐体内に設けられ、賞品を収納する収納部と、
前記収納部から繰り出された賞品を受け取って前記払出口まで移動する移動部とを含み、
前記移動部が前記扉に一体化されている、賞品払出装置。
【請求項2】
前記扉が、内部空間を有し、
前記払出口が前記内部空間に連通しており、
前記移動部が前記内部空間を移動する、請求項1に記載の賞品払出装置。
【請求項3】
前記移動部が、昇降可能であり、
前記扉が上面を有し、
前記払出口が前記扉の前記上面に形成されている、請求項1または2に記載の賞品払出装置。
【請求項4】
前記装置本体が、前記収納部を含む収容ユニットをさらに含み、
前記開口は、前記収容ユニットを引き出すための開口である、請求項1~3のいずれか一項に記載の賞品払出装置。
【請求項5】
前記払出口は、1つだけ設けられる、請求項1~4のいずれか一項に記載の賞品払出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、賞品払出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
賞品払出装置の一例として、下記特許文献1は、パチンコ店等の遊技店に設置される賞品払出機を開示している。賞品払出機は、左右方向に並ぶ複数の収納部と、これらの収納部を収容するボックス状の本体とを含む。各収納部は、パチンコ玉等の遊技媒体と交換される賞品を収納する。各収納部は、賞品を繰り出す繰出部と、繰出部によって繰り出された賞品が載せられる払出部とを含む。本体の天板には、左右方向に並ぶ複数の開口が設けられており、各開口の真下に、対応する収納部が1つずつ配置されている。収納部では、繰出部によって繰り出された賞品が払出部に載せられると、払出部が上昇し、払出部上の賞品が、この収納部に対応する開口から露出されるので、遊技店の店員や遊技客は、開口から賞品を取り出すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-25822号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
賞品払出装置の小型化は、常に望まれており、特許文献1の物品払出機でも小型化のための対策が講じられている。しかし、この物品払出機では、本体の天面において賞品が払い出される開口が、各収納部に応じて複数存在するうえに、繰り出された賞品を開口まで搬送する払出部が収納部毎に設けられているので、小型化に限界がある。
【0005】
この発明は、かかる背景のもとにおいてなされたものであり、小型化を図れる賞品払出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態は、開口を有する筐体、および前記開口を開閉する扉を有し、賞品の払出口が設けられた装置本体と、前記筐体内に設けられ、賞品を収納する収納部と、前記収納部から繰り出された賞品を受け取って前記払出口まで移動する移動部とを含む、賞品払出装置を提供する。
【0007】
本発明の一実施形態では、前記移動部が前記扉に一体化されている。そして、前記扉が、内部空間を有していてもよい。前記払出口が前記内部空間に連通していてもよい。前記移動部が前記内部空間を移動してもよい。
【0008】
また、本発明の一実施形態では、前記移動部が、昇降可能である。そして、前記扉が上面を有していてもよい。前記払出口が前記扉の前記上面に形成されていてもよい。
【0009】
また、本発明の一実施形態では、前記装置本体が、前記収納部を含む収容ユニットをさらに含む。そして、前記開口が、前記収容ユニットを引き出すための開口であってもよい。
【0010】
また、本発明の一実施形態では、前記払出口が、1つだけ設けられる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一実施形態によれば、賞品払出装置の小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係る賞品払出装置の模式的な斜視図である。
図2】賞品払出装置に用いられる通い箱の斜視図である。
図3】賞品払出装置の装置本体の内部の模式的な右側面図である。
図4】賞品払出装置の電気的構成を示すブロック図である。
図5】扉を開いた状態における賞品払出装置の模式的な斜視図である。
図6】補充処理のために収納ユニットを引き出した状態における賞品払出装置の模 式的な斜視図である。
図7】補充処理のために収納ユニットを引き出した状態における装置本体の内部の 模式的な右側面図である。
図8】計数識別処理の際における装置本体の内部の模式的な右側面図である。
図9図8のA-A矢視断面図である。
図10図8において二点鎖線で囲まれた領域Bの拡大図である。
図11】繰出払出処理の際における装置本体の内部の模式的な右側面図である。
図12】繰出払出処理の際における装置本体内の繰出部の模式的な右側面図である 。
図13】繰出部の模式的な右側面図である。
図14】繰出部の模式的な右側面図である。
図15】繰出払出処理の際における装置本体の内部の模式的な右側面図である。
図16】繰出払出処理の際における装置本体の内部の模式的な右側面図である。
図17】繰出払出処理の際における装置本体の内部の模式的な右側面図である。
図18】繰出払出処理により払い出される賞品の払出パターンの第1例を示す図で ある。
図19】賞品の払出パターンの第2例を示す図である。
図20】賞品の払出パターンの第3例を示す図である。
図21】賞品の払出パターンの第4例を示す図である。
図22】賞品の払出パターンの第5例を示す図である。
図23】賞品の払出パターンの第6例を示す図である。
図24】賞品の払出パターンの第7例を示す図である。
図25】賞品の払出パターンの第8例を示す図である。
図26】賞品の払出パターンの第9例を示す図である。
図27】賞品払出装置を含む遊技システムの概念図である。
図28】賞品の取り忘れが発生した場合における遊技システムでの処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下には、図面を参照して、この発明の実施形態について具体的に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る賞品払出装置1の模式的な斜視図である。賞品払出装置1は、例えばパチンコ店等の遊技店に設置される。賞品払出装置1は、その上部をなすターミナルユニット2と、ターミナルユニット2の下側に配置された装置本体3とを含む。
【0014】
ターミナルユニット2は、特殊賞品と呼ばれる賞品Pの在庫データ等について管理機能を主に有するPOS端末である。ターミナルユニット2の正面領域には、例えば液晶のタッチパネルによって構成された表示操作部4が設けられている。表示操作部4は、表示部と操作部とに分かれていてもよい。ターミナルユニット2の正面領域には、遊技店から遊技客に発行されたカードが出し入れされるカード出入口2Aと、レシートが発行されるレシート発行口2Bとが形成されている。カードには、遊技客が遊技によって獲得したパチンコ玉等の遊技媒体の数が関連付けられる。カードには、遊技を開始又は継続するために遊技媒体と交換されるプリペイド価値も関連付けられてもよい。
【0015】
賞品Pの一例は、例えば数ミリ程度の厚さを有するカードである。この実施形態では、大賞品、中賞品及び小賞品といった、金銭価値に応じた3種類の賞品Pが登場するが、大賞品よりも金銭価値の高い特大賞品が存在してもよい。賞品Pの表面の色は、賞品Pの種類毎に異なっている。一例として、大賞品の表面は赤色であり、中賞品の表面は青色であり、小賞品の表面は緑色である。賞品Pは、通い箱5に収容された状態にて市場に流通する。
【0016】
この実施形態では、賞品払出装置1は、遊技店における無人の賞品交換コーナーに配置されて、賞品Pの交換のための手続きが遊技客自身によって行われるセルフタイプである。この場合、遊技客は、カードをターミナルユニット2のカード出入口2Aに挿入してから表示操作部4を操作することによって、賞品Pの払出指示を賞品払出装置1に入力する。これにより、装置本体3は、払出指示に応じた種類及び個数(この実施形態では「枚数」)の賞品Pを払い出し、ターミナルユニット2は、賞品Pの在庫データを更新する。遊技客は、カード出入口2Aから返却されたカードと、装置本体3から払い出された賞品Pとを受け取る。なお、以下の説明では、賞品払出装置1がセルフタイプであることを前提としているが、賞品払出装置1の周辺に遊技店の店員がいて、この店員が、賞品払出装置1から賞品Pを一旦受け取った後に遊技客に手渡ししてもよい。
【0017】
装置本体3は、賞品Pを払い出す賞品払出機であるとともに、賞品Pを保管する機能を有する賞品保管機でもある。装置本体3は、その外殻をなすボックス状に形成された筐体11と、筐体11内に設けられた複数の繰出ユニット(収容ユニット)12と、筐体11によって支持された扉13とを含む。
【0018】
なお、図1の紙面の左右方向は、装置本体3の左右方向Xと一致し、図1の紙面に略直交する方向は、装置本体3の前後方向Yと一致し、図1の紙面の上下方向は、装置本体3の上下方向Zと一致している。左右方向X及び前後方向Yは、横方向に含まれる。左右方向Xは、左側X1と右側X2とを含み、前後方向Yは、図1の紙面の手前側に一致した前側Y1と、図1の紙面の奥側に一致した後側Y2とを含み、上下方向Zは、上側Z1と下側Z2とを含む。なお、図2以降において左右方向Xや上下方向Zの図示がない図では、その図の左右方向が左右方向Xと同じであり、その図の上下方向が上下方向Zと同じである(図27等参照)。
【0019】
筐体11は、縦長のボックス状に形成されている。筐体11は、天壁14と、底壁15と、左右一対の側壁16と、後壁17とを有する。天壁14及び底壁15のそれぞれは、矩形の板状である。一対の側壁16のそれぞれは、上下方向Zに長い長方形の板状であり、左側X1の側壁16は、天壁14及び底壁15の左端間に架設されていて、右側X2の側壁16は、天壁14及び底壁15の右端間に架設されている。後壁17は、上下方向Zに長い長方形の板状であり、天壁14及び底壁15の後端間に架設されていて、一対の側壁16の後端間にも架設されている。筐体11の前面には、天壁14、底壁15及び一対の側壁16のそれぞれの前端によって縁取られた開口11Aが形成されている(図5も参照)。開口11Aは、筐体11の内部空間11Bに連通している。
【0020】
繰出ユニット12は、賞品Pを通い箱5ごと収納するものである。この実施形態では、3つの繰出ユニット12が、筐体11の内部空間11Bにおいて上下方向Zに並んでいる。各繰出ユニット12は、筐体11における各側壁16によって前後方向Yへスライド可能に支持されている。図1に示すように筐体11内に完全に収容された状態における各繰出ユニット12は、前後方向Yにおける収容位置にある。各繰出ユニット12は、筐体11の開口11Aを通って、収容位置よりも前側Y1の引出位置(図6参照)へ引き出し可能である。筐体11には、各繰出ユニット12を収容位置においてロックしたり、そのロックを解除したりする電動のユニットロック機構18(図4参照)が設けられている。ユニットロック機構18として、電磁ロック等を用いることができる。
【0021】
繰出ユニット12について詳しく説明するのに先立って、通い箱5について説明する。図2は、通い箱5の斜視図である。通い箱5は、所定方向に長手のボックス状に形成されていて、例えば樹脂製である。通い箱5は、対向配置された一対の側壁21と、一対の側壁21間に架設された複数の区画壁22と、底壁23とを一体的に含む。
【0022】
一対の側壁21は、通い箱5の長手方向Lにおいて長手の略長方形の板状に形成されていて、それぞれの板厚方向に沿って対向するように平行に配置されている。一対の側壁21の対向方向は、通い箱5において長手方向Lに直交する短手方向Sである。また、通い箱5の深さ方向Dは、長手方向L及び短手方向Sの両方に直交している。
【0023】
区画壁22は、この実施形態では6つ設けられ、各区画壁22は、長手方向Lに一致した板厚方向を有する略矩形の板状に形成されている。2つの区画壁22が、一対の側壁21において長手方向Lにおける一端縁間と他端縁間とに1つずつ架設され、残り4つの区画壁22が、長手方向Lに等間隔で並んだ状態で一対の側壁21の途中部間に架設されている。そのため、通い箱5には、大きさの等しい略直方体状の5つの収容空間24が、長手方向Lに等間隔で並んで形成されている。
【0024】
底壁23は、深さ方向Dに一致した板厚方向を有し、長手方向Lにおいて長手の略長方形の板状に形成されている。底壁23は、深さ方向Dにおける一方側(図2では下側)から各側壁21及び各区画壁22に対して接続されていて、各収容空間24を当該一方側から塞いでいる。各収容空間24において深さ方向Dにおける他方側(図2では上側)の端部は、略矩形状の出入口25として、当該他方側へ開放されている。
【0025】
通い箱5は、出入口25とは別に設けられた開口部26を含む。開口部26は、長手方向Lにおいて各収容空間24と同じ位置に一対ずつ、この実施形態では5対設けられている。つまり、開口部26は、短手方向Sにおける通い箱5の両側において、5つずつ長手方向Lに等間隔で並んで設けられている。各対における2つの開口部26は、長手方向Lにおいて同じ位置にあって、短手方向Sにおける通い箱5の中心を基準として対称になるように構成されている。各開口部26は、収容空間24を外部に露出させるスリット状であり、短手方向Sにおける底壁23の端部を切り欠きつつ、短手方向Sにおいて当該端部と同じ側にある側壁21を深さ方向Dに沿って切り欠いて、出入口25の手前まで直線状に延びている。
【0026】
賞品Pを収容して流通しているときの通い箱5の姿勢は、図2に示すように各出入口25が上を向いた基本姿勢である。賞品Pは、出入口25を介して各収容空間24に収容される。各収容空間24の大きさが等しいので、賞品Pは、所定枚数ずつ、この実施形態では20枚ずつ各収容空間24に収容される。そのため、通い箱5全体では、最大で100枚の賞品Pを収容できる。複数の賞品Pは、それぞれの板厚方向が短手方向Sと一致して底壁23から起立した姿勢で、各収容空間24に積層状態にて収容され、その状態の各賞品Pでは、出入口25側の部分が出入口25からはみ出ている。また、前述した所定枚数の賞品Pが収容された収容空間24(図2における右端の収容空間24を参照)では、短手方向Sの両端に位置する賞品Pの一部が、短手方向Sにおける同じ側の開口部26から露出されている。1つの通い箱5に収容される複数枚の賞品Pの種類は、この実施形態では大賞品、中賞品及び小賞品のいずれか一種類であるが、収容空間24毎に賞品Pの種類が異なってもよい。
【0027】
次に、繰出ユニット12について詳しく説明する。図3は、装置本体3の内部の模式的な右側面図である。以下では、上下方向Zに並ぶ3つの繰出ユニット12のうち、最下位の繰出ユニット12を「下ユニット12A」といい、真ん中の繰出ユニット12を「中ユニット12B」といい、最上位の繰出ユニット12を「上ユニット12C」という。
【0028】
下ユニット12Aを参照して、各繰出ユニット12は、その外殻をなすボックス状に形成された筐体31を含む。筐体31の上面には、略矩形状の装填口31Aと、装填口31Aを開閉する略矩形板状の扉31Bとが設けられている。扉31Bは、その前端部に設けられたヒンジ31Cを介して筐体31に連結されていて、ヒンジ31Cまわりに回動することによって開閉される。筐体31の前面のほぼ全域には、筐体31の内部空間31Fを前側Y1へ露出させる開口31Dが形成されている。筐体31の前面において開口31Dよりも上側Z1の領域には、取っ手31Eが設けられている(図5参照)
【0029】
各繰出ユニット12の筐体31の内部空間31Fには、左右一対の搬送体32と、複数(ここでは4つ)の収納部33とが設けられている。各搬送体32は、無端状のチェーン又はベルトによって構成されており、左右方向Xから見て例えば略矩形の環状をなしている。搬送体32は、モータ(図示せず)等の駆動部の駆動力を受けることによって、左右方向Xから見て時計回り及び反時計回りのそれぞれの方向へ向けて周回移動する。この駆動部と搬送体32とは、移動機構34を構成する。
【0030】
各収納部33は、左右方向Xに長手のトレイ状である。各収納部33の内部空間は、左右方向Xに長手となった通い箱5をちょうど収容できる大きさを有する。上向き姿勢の収納部33(例えば、図3の下ユニット12Aにおける上側Z1の収納部33を参照)には、その上面を全域に亘って開放した出入口33Aと、前後の両側壁のそれぞれを切り欠いたスリット状の開口部(図示せず)とが形成されている。この開口部は、収納部33の前壁及び後壁において、通い箱5の開口部26(図2参照)に合致する位置に同数形成され、左右方向Xに並んで配置されている。
【0031】
各収納部33には、通い箱5が1つずつ装填される。これにより、通い箱5内の賞品Pは、収納部33内に収納されるとともに、繰出ユニット12内にも収納される。通い箱5が装填された収納部33では、前述した開口部と通い箱5の開口部26とが1つずつ整合している。また、この実施形態では、同じ種類の賞品Pが1つの通い箱5内に収納されるので、1つの収納部33には、同じ種類の賞品Pが装填され、1つの繰出ユニット12には、同じ種類の賞品Pが収納される。一例として、下ユニット12Aには大賞品だけが収納され、中ユニット12Bには中賞品だけが収納され、上ユニット12Cには小賞品だけが収納される。もちろん、各繰出ユニット12において、収納部33毎に賞品Pの種類が異なってもよい。
【0032】
これらの収納部33は、左右一対の搬送体32の周回方向Rに沿って環状に並んで配置された状態で、これらの搬送体32の間に架設されている。そのため、移動機構34が作動することによって左右の搬送体32が周回移動すると、これらの収納部33は、搬送体32とともに周回移動する。搬送体32及び収納部33の周回移動を「ロータリー動作」ということがある。また、各収納部33は、搬送体32との連結部分において、左右方向Xに延びる回動軸線(図示せず)まわりに回動自在である。
【0033】
各繰出ユニット12には、搬送体32の周回領域における後下側の隅付近に位置する収納部33を一時的に後向き姿勢まで傾倒させる第1姿勢変更機構35と、搬送体32の周回領域における前下側の隅付近に位置する収納部33を一時的に前向き姿勢まで傾倒させる第2姿勢変更機構36とが設けられている。第1姿勢変更機構35及び第2姿勢変更機構36のそれぞれは、ガイドレール等によって構成される。各収納部33は、途中で後向き姿勢になったり前向き姿勢になったりするものの、原則として、上向き姿勢を維持するように回動しながら、ゴンドラのように周回移動する。
【0034】
各繰出ユニット12の筐体31の内部空間31Fの後端部には、検出ユニット37が配置されている。検出ユニット37は、検出部38と、検出部38を支持するホルダ39とを含む。検出部38は、いわゆるカラーセンサであり、ホルダ39の前面に設けられている。検出ユニット37は、筐体31の後壁31Gによって支持されており、ステッピングモータ等の駆動部(図示せず)の駆動力を受けて昇降する。その際、検出部38は、最寄りの収納部33に収納された通い箱5内の賞品Pの種類及び枚数を検出する。詳しくは、後述する。
【0035】
各繰出ユニット12の筐体31の内部空間31Fにおいて搬送体32及び収納部33よりも下側Z2の領域には、繰出機構41が設けられている。繰出機構41は、収納部33から賞品Pを繰り出す繰出部42を含む。繰出ユニット12が複数(この実施形態では3つ)存在するので、繰出部42も、賞品払出装置1の全体では複数存在する。これらの繰出ユニット12が上下方向Zに並んでいるので、複数の繰出部42も上下方向Zに並んでいる。このような構成であれば、水平方向における賞品払出装置1の小型化を図ることができる。また、各繰出ユニット12では、収納部33は、繰出部42毎に複数(この実施形態では4つ)設けられ、繰出部42と、対応する4つの収納部33とは、1つの繰出ユニット12を構成している。各繰出ユニット12において、繰出機構41に設けられる繰出部42は、この実施形態では1つだけだが、複数の繰出部42が左右方向Xに並んで設けられてもよい。
【0036】
繰出部42は、左右方向Xから見て略三角形の環状をなす無端状の繰出ベルト43と、繰出ベルト43の内側において略三角形の各頂点部分に1つずつ配置されたローラ44と、例えばウレタンで構成された外周面を有する繰出ローラ45と、繰出ローラ45に対向する対向ローラ46とを含む。これらのローラは、左右方向Xに延びる中心軸線を有するローラである。繰出ベルト43の外周面には、爪状の押出片43Aが突出して設けられている。押出片43Aは、この実施形態では1つだけ設けられているが、複数の押出片43Aが等間隔に並んで設けられてもよい。繰出ベルト43は、少なくもいずれかのローラ44がモータ等の駆動部(後述する第1駆動部83であり、図12参照)により駆動回転されることによって、周回移動する。繰出ローラ45は、当該駆動部により駆動回転される。つまり、繰出ベルト43及び繰出ローラ45は、同じ駆動部の駆動力によって連動する。
【0037】
繰出機構41の全体は、モータ等の駆動部(図示せず)の駆動力を受けることによって、繰出位置と退避位置との間で、繰出ローラ45の直上に位置する回動軸(図示せず)まわりに回動可能である。繰出機構41が繰出位置にあるときには繰出部42も繰出位置にあり、繰出機構41が退避位置にあるときには繰出部42も退避位置にある。つまり、繰出部42は、繰出機構41の回動に応じて繰出位置と退避位置との間で移動可能である。繰出位置にある繰出部42では、図3に示すように、繰出ベルト43が繰出ローラ45及び対向ローラ46よりも後側Y2に位置し、2つのローラ44が前後方向Yに並んで、残り1つのローラ44が当該2つのローラ44よりも下側Z2に位置して、繰出ベルト43において当該2つのローラ44間の平坦部43Bが前後方向Yに沿って水平になっている。また、対向ローラ46が繰出ローラ45に上側Z1から対向していて、平坦部43Bが、繰出ローラ45と対向ローラ46との間と同じ高さ位置にある。繰出位置にある繰出部42は、モータ等の駆動部(図示せず)の駆動力を受けることによって左右方向Xにスライド可能である。
【0038】
待機状態における繰出機構41は、繰出位置にある。繰出機構41は、右側面視において繰出位置から時計回りに約30度以上回動すると、通い箱5が装填された各収納部33の周回軌跡を回避した退避位置(図7参照)に配置される。繰出機構41が退避位置にあるとき、繰出部42も退避位置にある。退避位置は、繰出位置から前側Y1や下側Z2へ退避した位置である。退避位置の繰出部42では、繰出ベルト43が繰出ローラ45及び対向ローラ46よりも下側Z2に位置し、繰出ベルト43の平坦部43Bが上下方向Z(具体的には斜め下側)に沿っていて、対向ローラ46が繰出ローラ45に後側Y2から対向している。
【0039】
扉13は、筐体11の開口11Aを塞ぎ得る大きさを有する縦長のボックス状であり、図3に示すように開口11Aを閉じた閉位置(図1も参照)において前後方向Yに扁平である。扉13の左端は、ヒンジ50(図5参照)を介して筐体11に連結されていて、ヒンジ50まわりに回動可能である。閉位置にある扉13が、平面視にて時計回りに回動すると、開位置に配置されて開口11Aの全域を前側Y1へ露出させる(図5参照)。以下では、特に断りがない場合には、扉13が閉位置にあることを前提として説明する。筐体11には、扉13を閉位置においてロックしたり、そのロックを解除したりする電動の扉ロック機構51(図4参照)が設けられている。扉ロック機構51として、電磁ロック等を用いることができる。
【0040】
扉13の上面13Aは、筐体11の上面、つまり天壁14の上面とほぼ同じ高さ位置にある。上面13Aには、左右方向Xに長手の払出口13Bが1つだけ設けられている(図5も参照)。そのため、払出口13Bが複数設けられる場合と比べて、賞品払出装置1の小型化を図ることができる。払出口13Bは、扉13の内部空間13Cに連通している。扉13は、払出口13Bを開閉する1枚のシャッタ52をさらに含む。シャッタ52は、左右方向Xに長手の板状に形成されている。シャッタ52は、払出口13Bを閉じた閉位置(図1も参照)と、天壁14の真下の空間まで後退して払出口13Bを開いた開位置(図17参照)との間で前後方向Yにスライド可能である。天壁14の真下の空間は、筐体11の内部空間11Bの上端部である。シャッタ52は、筐体11又は扉13に設けられたモータ等の駆動部(図示せず)の駆動力によって開閉される。
【0041】
扉13の後面のほぼ全域は、開放されている。そのため、扉13の内部空間13Cは、収容位置にある各繰出ユニット12の筐体31の前面の開口31Dを介して筐体31の内部空間31Fに連通している。内部空間13Cには、各繰出ユニット12内の賞品Pを払出口13Bに払い出す払出機構53が設けられている。つまり、筐体11の開口11Aを開閉する扉13には、払出機構53が一体化されている。これにより、賞品払出装置1の一層の小型化を図ることができる。
【0042】
払出機構53は、移動部54を含む。移動部54は、上下方向Zに一致した板厚方向を有して左右方向Xに長い長方形の板状のエレベータである。移動部54は、左右方向Xに並ぶ複数の受取部55に区画される。移動部54は、この実施形態では一体物であり、隣り合う受取部55の境界は点線で示してある(図5参照)。受取部55は、通い箱5の収容空間24と同数(ここでは5つ)設けられている。移動部54は、モータ等の駆動部(図示せず)の駆動力を受けることによって、扉13の内部空間13Cの下端付近に設定された待機位置と、内部空間13Cの上端に設定された払出位置との間にて昇降する。
【0043】
図4は、賞品払出装置1の電気的構成を示すブロック図である。賞品払出装置1は、決定部及び払出部の一例としての制御部61を含む。制御部61は、CPUやROMやRAM等によって構成され、タイマ等を内蔵している。なお、後述する他の制御部についても同様である。制御部61は、例えばターミナルユニット2に内蔵されている。ターミナルユニット2は、カードを処理するカード処理部62と、レシート発行部63とをさらに含む。カード処理部62は、カード出入口2A(図1参照)に挿入されたカードを取り込んで、このカードから必要な情報を読み取ったり、読取後のカードをカード出入口2Aから排出したりする。レシート発行部63は、プリンタによって構成され、レシートを印刷してレシート発行口2Bに発行する。
【0044】
制御部61には、ターミナルユニット2の表示操作部4、カード処理部62及びレシート発行部63のそれぞれが電気的に接続されている。また、制御部61には、ターミナルユニット2のシャッタ52に関連した電気部品(前述した駆動部)が電気的に接続されている。制御部61には、各繰出ユニット12における移動機構34、検出部38及び繰出機構41のそれぞれに関連した電気部品(前述した駆動部やセンサ等)が電気的に接続されている。制御部61には、ユニットロック機構18及び扉ロック機構51のそれぞれに関連した電気部品も電気的に接続されている。
【0045】
制御部61は、これらの電気部品の動作を制御することによって、賞品Pを補充する補充処理と、装置本体3の各繰出ユニット12内の賞品Pを計数及び識別する計数識別処理と、各繰出ユニット12内の賞品Pを繰り出して機外(つまり筐体11の外)に払い出す繰出払出処理とを実行する。これらの処理に関連して、制御部61は、表示操作部4に必要な情報を表示したり、店員や遊技客による表示操作部4の操作に応じた指示を受け付けたり、遊技客のカードをカード処理部62によって処理したり、レシートをレシート発行部63によって発行したりする。
【0046】
装置本体3は、記憶部64をさらに備えている。記憶部64は、不揮発性メモリやハードディスクドライブといった記憶デバイスによって構成されている。記憶部64は、制御部61に電気的に接続されている。記憶部64は、各繰出ユニット12の各収納部33に装填された通い箱5内の賞品Pの種類及び収納枚数(在庫数ともいう)等を収容空間24毎に記憶している。また、記憶部64は、過去の異常履歴や賞品Pの払出履歴等の様々な情報も記憶している。
【0047】
以下では、補充処理、計数識別処理及び繰出払出処理について、この順番に説明する。補充処理の場合には、店員は、表示操作部4を操作することによって、補充処理の対象となる繰出ユニット12を1つ選択する。すると、制御部61は、選択された繰出ユニット12についてのユニットロック機構18によるロックを解除することによって、この繰出ユニット12の引出位置までの引き出しを許可するとともに、扉ロック機構51による扉13のロックも解除する。
【0048】
次に、店員が、図5に示すように扉13を開位置まで開き、ロックが解除された繰出ユニット12の取っ手31Eを掴んで前側Y1に引くと、この繰出ユニット12は、図6に示す引出位置まで引き出される(図6の下ユニット12Aを参照)。このように、一度に引き出させる繰出ユニット12は、1つだけである。
【0049】
引出位置まで引き出された繰出ユニット12では、筐体31の上面の扉31Bが、装置本体3の筐体11よりも前側Y1、つまり筐体11の外に配置されている。この状態において、店員が、この繰出ユニット12の扉31Bを開いて装填口31Aを上側Z1に開放する。扉31Bが開くのに先立って制御部61が搬送体32を周回移動させ、これにより、図7に示すように、空の状態にある1つの収納部33が、装填口31Aの真下に配置される。空の収納部33とは、通い箱5が装填されていない収納部33、又は、エンプティもしくはニアエンプティの状態の通い箱5が装填された収納部33を指す。装填口31Aの真下に配置された収納部33は、出入口33Aが上側Z1を向いた装填位置にある。なお、搬送体32が周回移動している繰出ユニット12では、繰出機構41が、周回移動中の搬送体32や収納部33に接触しないように、退避位置に配置される(下ユニット12Aを参照)。
【0050】
店員は、賞品Pを収容した基本姿勢の状態の通い箱5を、図7の太線矢印で示すように下降させて装填口31Aを通過させ、装填位置にある収納部33の出入口33Aに上側Z1から挿入する。これにより、通い箱5が、装填位置の収納部33に装填され、通い箱5内の賞品Pは、繰出ユニット12内に装填される。なお、通い箱5及び収納部33の一方に設けられた位置決めリブ(図示せず)が、他方に設けられた位置決め溝(図示せず)に嵌まり込むことによって、通い箱5と、この通い箱5が装填された収納部33とが互いに位置決めされる。装填位置の収納部33に通い箱5が装填されてから扉31Bが閉じられると、他の空の収納部33が装填位置に配置されるように、制御部61が搬送体32を周回移動させてもよい。
【0051】
店員が、収納部33に通い箱5を装填された後に扉31Bを閉じて、引出位置の繰出ユニット12の取っ手31Eを掴んで収容位置まで戻すと、制御部61は、この繰出ユニット12を、ユニットロック機構18によって収容位置にてロックする。これにより、この繰出ユニット12についての補充処理が終了する。
【0052】
店員は、各繰出ユニット12の前面に設けられた取っ手31Eを操作することによって、繰出ユニット12を引出位置まで引き出したり、収容位置まで押し込んだりすることができる。なお、繰出ユニット12の移動は、店員の手動によって行われてもよいし、筐体11内に設けられたDCモータやステッピングモータ等の駆動装置により自動的に行われてもよい。
【0053】
計数識別処理の場合、図8における下ユニット12A参照して、制御部61は、搬送体32を周回移動させる。すると、繰出ユニット12において、計数識別処理の対象となる収納部33が、検出ユニット37に接近すると、第1姿勢変更機構35により、出入口33Aが後側Y2を向いた後向き姿勢に傾倒する。なお、後向き姿勢の収納部33では、セットされた通い箱5の出入口25からの賞品Pの脱落を防止するために、出入口33Aが真横でなく、僅かに斜め上側を向いている。
【0054】
図8の下ユニット12Aでは、後側下端にある収納部33が後向き姿勢にあって、この収納部33の出入口33Aが後側Y2を向いている。また、この収納部33に装填された通い箱5も、出入口25が後側Y2を向いた後向き姿勢にあって、通い箱5内の賞品Pは、上下方向Zに積層された状態で、出入口25から後側Y2へはみ出しており、当該賞品Pの後端面が検出ユニット37側(厳密には斜め上側)を向いている。
【0055】
このように収納部33が上向き姿勢から横向き姿勢に変わって検出ユニット37に接近すると、制御部61は、搬送体32の周回移動を停止する。このとき、繰出ユニット12では、検出ユニット37における検出部38が、後向き姿勢の収納部33に装填された通い箱5の各収容空間24に対して1つずつ左右方向Xにおいて同じ位置にある(図9参照)。この状態において、制御部61は、検出ユニット37を、例えば下端の待機位置から上昇させる。その際、各検出部38が、当該通い箱5において左右方向Xで同じ位置にある収容空間24に後側Y2から対向しながら上昇する。検出部38は、左右方向Xで同じ位置にある収容空間24に収容されて上下方向Zに積層された状態にある賞品Pを下側Z2から順に1つずつ非接触にて計数及び識別する。
【0056】
図10を参照して、検出部38の一例は、前述したカラーセンサであり、LEDによって構成された発光部71と、発光部71が発した白色光の反射光を受ける受光部72と、受光部72が受けた光を分析する分析部73とを含む。この場合、発光部71が、被検知物である賞品Pに対して光H1を照射し、その反射光H2を受光部72が受ける。分析部73は、受光部72が受けた反射光をRGB値に変換して分析し、この分析結果に基づいて、賞品Pを計数したり、賞品Pの真偽や種類を識別したりする。
【0057】
具体的には、分析部73は、反射光のRGB値において赤色成分をあらわすRデータを検出する分析部73Rと、RGB値において緑色成分をあらわすGデータを検出する分析部73Gと、RGB値において青色成分をあらわすBデータを検出する分析部73Bとを含む。図10では、賞品P及び検出部38が左側に図示され、検出部38の検出結果が右側に図示されている。検出部38の上昇に伴い、検出部38は、図10の右側に示すようなRデータ、Gデータ及びBデータのそれぞれの波形W1を出力する。
【0058】
それぞれの波形W1は、通い箱5において上下方向Zに積層された賞品Pの後端部の凸形状を光H1によってなぞったものに相当するので、連続する複数の凸形状の輪郭にほぼ一致する。そのため、それぞれの波形W1では、隣り合う賞品Pの境界(隙間)に相当する部分にてデータが急変することによって、比較的大きな谷V1があらわれる。検出部38は、これらの波形W1のうち、顕著に大きな谷Vがあらわれた波形W1を選択し、この波形W1の谷V1の数をカウントすることによって賞品Pを計数する。谷V1のカウント値に1を足した値が賞品Pの枚数である。
【0059】
いずれの波形W1においても谷V1が小さい場合には、検出部38は、Rデータ、Gデータ及びBデータを全て加算したものに相当する合計値の波形W2を生成する。波形W2において隣り合う賞品Pの境界に相当する部分には、個々の波形W1の谷V1よりも大きな谷V2があらわれるので、検出部38は、谷V2の数をカウントすることによって賞品Pを正確に計数することができる。谷V2のカウント値に1を足した値が賞品Pの枚数である。
【0060】
検出部38は、0.1mm上昇する度に賞品Pにおける1パルス分のRGB値を取得する。そのため、厚さが3mmの賞品Pであれば、検出部38は、1枚の賞品Pにおいて30パルス分ものRGB値を取得して、各パルスのRGB値に基づいて色判別を行い、これらの色判別結果に基づいて、1枚の賞品Pの真偽や種類を識別する。具体的には、1枚の賞品Pについての30パルスのうち、規定数以上のパルスにおける色判別結果が所定の色(例えば赤色)であれば、検出部38は、この賞品Pの種類を赤色の大賞品と識別する。このように分解能が高い検出部38は、例えば厚さが1.5mmと比較的薄い賞品Pや、透明部分が多い賞品Pであっても、種類を正確に識別することができる。
【0061】
上昇する検出部38が、後向き姿勢の収納部33に装填された通い箱5の各収容空間24における全ての賞品Pについての計数及び識別が完了して、待機位置まで下降すると、計数識別処理が終了する。このように、1つの検出部38によって賞品Pの計数及び識別の両方が可能である。そのため、検出部38に関する省スペースや、計数識別処理の処理速度の向上を図ることができる。
【0062】
計数識別処理は、全ての繰出ユニット12において一度に実行されてもよいし、店員による表示操作部4での操作によって選択された所定の繰出ユニット12において個別に実行されてもよい。また、計数識別処理は、各繰出ユニット12において、全ての収納部33に装填された通い箱5について実行されてもよいし、店員によって指定された収納部33に装填された通い箱5のみについて実行されてもよい。いずれにせよ、制御部61は、計数識別処理の度に、装置本体3内の各収納部33における賞品Pの在庫数を更新する。
【0063】
各繰出ユニット12内の各収納部33における賞品Pの在庫データ(賞品Pの種類及び在庫数)は、収納部33毎に割り当てられた識別情報に関連付けてテーブル(図示せず)にまとめられ、記憶部64に記憶されている。特に、収納部33にセットされた通い箱5において左右方向Xに並ぶ収容空間24のそれぞれにおける賞品Pの在庫データが、各収納部33における賞品Pの在庫データの内訳として記憶部64に記憶されている。なお、識別情報を記憶したICチップが賞品Pに内蔵されていて、検出部38は、非接触でICチップから識別情報を読み取ることによって、賞品Pの真偽や種類を識別してもよい。
【0064】
図11を参照して、繰出払出処理について説明する。繰出払出処理は、通い箱5から移動部54の受取部55上に賞品Pを1枚ずつ繰り出す繰出処理と、繰出処理によって繰り出された移動部54上の賞品Pを払出口13Bから機外へ払い出す払出処理とを含む。遊技客が、賞品払出装置1の前側Y1に位置し、ターミナルユニット2の表示操作部4を操作して払出指示を入力すると、制御部61は、まず、繰出処理を行う。具体的には、下ユニット12Aを参照して、制御部61は、搬送体32を周回移動させる。これにより、繰出処理の対象となる収納部33が、払出機構53の移動部54に接近すると、第2姿勢変更機構36により、出入口33Aが前側Y1を向いた前向き姿勢に傾倒する。なお、前向き姿勢の収納部33では、セットされた通い箱5の出入口25からの賞品Pの脱落を防止するために、出入口33Aが真横でなく、僅かに斜め上側を向いている。
【0065】
図11の下ユニット12Aでは、前側上端にある収納部33が前向き姿勢にあって、この収納部33の出入口33Aが前側Y1を向いている。また、この収納部33に装填された通い箱5も、出入口25が前側Y1を向いた前向き姿勢にあって、通い箱5内の賞品Pは、上下方向Zに積層された状態で、出入口25から前側Y1へはみ出しており、当該賞品Pの前端面が扉13側(厳密には斜め上側)を向いている。
【0066】
図11に示すように、前向き姿勢の収納部33に装填された通い箱5内における最下位の賞品Pが、繰出位置にある繰出機構41における繰出部42の繰出ベルト43の平坦部43Bとほぼ同じ高さ位置になると、制御部61は、搬送体32の周回移動を停止する。このとき、繰出位置にある繰出部42が、この通い箱5の真下に配置される。
【0067】
次いで、制御部61は、待機位置から移動部54を上昇させて移動部54の上面を繰出ベルト43の平坦部43Bとほぼ同じ高さ位置に配置した後に、繰出部42における繰出ベルト43を周回移動させて繰出ローラ45を回転させる。このとき、繰出機構41では、右側面視において繰出ベルト43が反時計回りに周回移動して繰出ローラ45が反時計回りに回転する。周回移動する繰出ベルト43に設けられた押出片43Aが、繰出ベルト43の平坦部43Bにおいて前側Y1へ水平移動する。その際、押出片43Aが、前向き姿勢の収納部33に装填された通い箱5の開口部26(図2参照)に進入して、当該通い箱5の収容空間24内の最下位の賞品Pを引っ掛けて前側Y1へ押し出す。このように、繰出位置にある繰出部42は、前向き姿勢にある1つの収納部33から賞品Pを繰り出す。
【0068】
前側Y1へ繰り出された賞品Pは、駆動回転される繰出ローラ45に接触することによって繰出ローラ45と対向ローラ46との間を通って移動部54側へ押し出され、移動部54において左右方向Xで同じ位置にある1つの受取部55上に載る。そして、繰出ベルト43の周回移動と繰出ローラ45の回転が繰り返されることによって、前向き姿勢の収納部33に装填された通い箱5において各繰出部42の真上に位置する収容空間24内の賞品Pが、下側Z2の賞品Pから順に1つずつ繰り出されて、受取部55上に集積される。
【0069】
なお、繰り出された賞品Pが受取部55において上側Z1に集積されるように、賞品Pの繰り出しの度に、制御部61は、移動部54を待機位置から徐々に下降させる。また、制御部61は、搬送体32を僅かに周回移動させることによって、前向き姿勢の収納部33を一時上昇させ、その間に繰出部42を左右方向Xに移動させる。その後、制御部61は、搬送体32を逆向きに周回移動させることによって収納部33を元の位置まで下降させれば、先ほど賞品Pを繰り出した元の収容空間24とは別の収容空間24の賞品Pを繰出部42によって繰り出すことができる。この場合、当該別の収容空間24から繰り出された賞品Pは、移動部54において先ほどの受取部55とは別の受取部55に集積される。
【0070】
繰出部42について詳説する。図12は、繰出処理中における繰出部42の模式的な右側面図である。繰出部42が繰出位置にあることを前提として、繰出部42の繰出ベルト43の内側に配置された3つのローラ44のうち、繰出ローラ45に最も近いローラ44を第1ローラ44Aといい、第1ローラ44Aよりも後側Y2に位置するローラ44を第2ローラ44Bといい、第1ローラ44A及び第2ローラ44Bよりも下側Z2に位置するローラ44を第3ローラ44Cという。繰出ベルト43と、これら3つのローラ44とは、ベルトユニット80を構成する。第2ローラ44Bと繰出ローラ45とは、環状の伝達ベルト81によって連結されている。
【0071】
繰出部42は、フレーム82と、フレーム82に取り付けられた第1駆動部83、カウントレバー84、第1センサ85、第2センサ86及び第2駆動部87と、ラックアンドピニオン機構88とをさらに含む。フレーム82は、繰出ローラ45、対向ローラ46及びベルトユニット80を支持している。ベルトユニット80は、フレーム82によって支持された状態において、第1ローラ44Aよりも繰出ローラ45側に位置する回動軸(図示せず)まわりに上下に回動可能である。第1駆動部83が発生した駆動力は、繰出ローラ45に伝達されて繰出ローラ45を回転させるとともに、伝達ベルト81を介して第2ローラ44Bにも伝達されて繰出ベルト43を周回移動させる。そのため、前述したように繰出ベルト43及び繰出ローラ45が連動する。
【0072】
カウントレバー84は、左右方向Xに延びる軸線まわりに前後方向Yに揺動可能である。カウントレバー84の上端部をなす先端部84Aは、繰出ローラ45と対向ローラ46との間のゲート空間Gに配置されている。第1センサ85は、カウントレバー84において先端部84Aとは反対側の根元部(図示せず)によって検知光が遮光される遮光センサである。第2センサ86は、点線で示す待機位置にあるときの押出片43Aによって検知光が遮光される遮光センサである。
【0073】
第2駆動部87は、例えばステッピングモータによって構成される。ラックアンドピニオン機構88は、ベルトユニット80の一部としてベルトユニット80の回動方向に沿って湾曲しながら下側Z2へ延びるラック88Aと、フレーム82によって支持されたピニオン88Bとを含む。ラック88Aとピニオン88Bとが噛み合っている。第2駆動部87の駆動力が減速歯車(図示せず)を介してピニオン88Bに伝達されることにより、ピニオン88Bが回転するので、ピニオン88Bの回転に連動してベルトユニット80が上下に回動する。制御部61は、第2駆動部87に入力するパルス数を調整することによって、ベルトユニット80の位置を変更することができる。ベルトユニット80の位置が変更されることによって、繰出ベルト43の押出片43Aの高さ位置が調整される。なお、ベルトユニット80を第1ローラ44Aまわりに回動させるのでなく、直線的にスライドさせてもよい。
【0074】
繰出処理では、前述したように、制御部61が繰出ベルト43を周回移動させて繰出ローラ45を回転させるので、繰出ベルト43の押出片43Aが、待機位置から出発して通い箱5の開口部26に進入し、最下位の賞品Pを引っ掛けて前側Y1へ押し出す。これにより、この賞品Pは、繰出ローラ45と対向ローラ46との間のゲート空間Gを通って移動部54の受取部55に受け渡される。
【0075】
ゲート空間Gを通る賞品Pがカウントレバー84の先端部84Aを押し下げることによってカウントレバー84が揺動し、カウントレバー84の根元部が第1センサ85の検知光を遮光する。これにより、第1センサ85は、1枚の賞品Pがゲート空間Gに存在することを検出する。賞品Pがゲート空間Gを通過すると先端部84Aが押し下げられなくなるので、カウントレバー84が逆向きに揺動して、カウントレバー84の根元部が第1センサ85の検知光を遮光しなくなる。これにより、第1センサ85は、1枚の賞品Pがゲート空間Gを通過したことを検出する。その後、待機位置に戻った押出片43Aが第2センサ86の検知光を遮光すると、制御部61は、通い箱5内において最下位にあった1枚の賞品Pが正常に繰り出されて受取部55に受け渡されたと判断する。
【0076】
図12に示すように通い箱5内の賞品Pが水平になっている場合には、ベルトユニット80は、繰出ベルト43の平坦部43Bが水平になった通常位置にある。そのため、通い箱5の開口部26に進入した押出片43Aと、通い箱5内の最下位の賞品Pにおける前後の端部と、ゲート空間Gとが同じ高さ位置にある。そのため、押出片43Aは、この賞品Pの後端部に確実に接触して賞品Pをゲート空間Gまで押し出し、繰出ローラ45は、この賞品Pを確実に受取部55に受け渡すことができる。
【0077】
図13に示すように、最下位の賞品P1がゲート空間Gで詰まって、通い箱5内の残りの賞品Pが後下がりに傾いてしまう詰まりエラーが想定される。詰まりエラーが発生すると、繰出ベルト43の周回移動によって押出片43Aが待機位置に戻って第2センサ86の検知光を遮光させても、賞品P1がゲート空間Gに滞留することによって第1センサ85の検知光が遮光されたままである。第1センサ85及び第2センサ86の両方の検知光が遮光された状態が発生すると、制御部61は、詰まりエラーが発生したと判断する。
【0078】
詰まりエラーを解消するためには、繰出ローラ45が回転することによってゲート空間G内の賞品P1を前側Y1へ脱出させる必要がある。しかし、繰出ローラ45の回転と繰出ベルト43の周回移動とが同期しているので、賞品P1がゲート空間Gから脱出する前に繰出ベルト43の押出片43Aが後続の賞品P2を前側Y1へ押し出すと、ゲート空間G内に複数の賞品Pが詰まってしまうおそれがある。
【0079】
そこで、制御部61は、第2駆動部87を作動させて、ベルトユニット80を、図13に示す退避位置まで下降させる。すると、繰出ローラ45の回転に連動して繰出ベルト43が周回移動しても、押出片43Aが後続の賞品P2に届かないので、賞品P2を前側Y1へ押し出すことができない。このように繰出ベルト43を空転させることによって繰出ローラ45の駆動と繰出ベルト43の駆動とを擬似的に分離することにより、繰出ローラ45によるゲート空間Gからの賞品P1の脱出を優先することができる。
【0080】
通い箱5内における最下位の賞品P(図12参照)が、その後端部が上側Z1にずれるように反り返っている場合には、通い箱5の開口部26に進入した押出片43Aが、この賞品Pの後端部よりも低い位置にあって賞品Pの後端部に接触できないことにより、掛かり代が無くなるので、空振りエラーが発生する。空振りエラーが発生すると、最下位の賞品Pがゲート空間Gに到達しないまま、繰出ベルト43の周回移動によって押出片43Aが待機位置に戻って第2センサ86の検知光を遮光する。第1センサ85の検知光が遮光されることなく第2センサ86の検知光が遮光されると、制御部61は、空振りエラーが発生したと判断する。
【0081】
空振りを解消するためには、押出片43Aを最下位の賞品Pの後端部と同じ高さ位置に配置して、適正な掛かり代を確保する必要がある。そこで、制御部61は、第2駆動部87を作動させて、ベルトユニット80を、図14に示すリトライ位置まで上昇させる。すると、繰出ベルト43が周回移動したとき、押出片43Aが最下位の賞品P3に接触して前側Y1へ押し出すことができる。
【0082】
以上のように、制御部61は、必要に応じて詰まりエラーや空振りエラーを解消しながら通い箱5内の賞品Pを移動部54上に繰り出す。今まで横向き姿勢にあった収納部33(図11の下ユニット12Aを参照)にセットされた通い箱5における全ての収容空間24が空になると、制御部61は、図15に示すように、別の繰出ユニット12(図15では中ユニット12B)の繰出機構41の繰出部42まで移動部54を上昇させる。中ユニット12Bでは、繰出機構41が繰出位置にあり、1つの収納部33が繰出部42上において前向き姿勢にあって、この収納部33にセットされた通い箱5からの賞品Pの繰り出しが可能である。そのため、制御部61は、この収納部33にセットされた通い箱5から移動部54上に賞品Pを繰り出す。
【0083】
制御部61は、このように下ユニット12Aから移動部54を移動させて中ユニット12Bから賞品Pを繰り出す際において、下ユニット12Aでの繰出準備として、下ユニット12Aの繰出機構41を一旦退避位置まで回動させてから搬送体32を周回移動させ、別の通い箱5が装填された収納部33を前向き姿勢にする。その後、図16に示すように、制御部61は、下ユニット12Aの繰出機構41を繰出位置に戻すとともに、中ユニット12Bからの賞品Pが繰り出された移動部54を下降させる。そして、制御部61は、下ユニット12Aにおいて前向き姿勢にある収納部33にセットされた通い箱5から移動部54上に賞品Pを繰り出す。このように1つの繰出ユニット12(今回の説明では下ユニット12A)において搬送体32の周回移動を挟んで複数の収納部33から賞品Pを繰り出すことを、「ロータリー跨ぎ」という。
【0084】
ロータリー跨ぎが必要な場合には、前述したように、移動部54がいずれかの繰出ユニット12の繰出部42まで移動して当該繰出部42からの賞品Pの受け取りを終えるまでの間に、他の繰出ユニット12では、繰出部42が繰出位置と退避位置との間にて移動し、複数の収納部33が周回移動する。その後、移動部54は、当該他の繰出ユニット12の繰出部42からの賞品Pを受け取る。このように、複数の繰出ユニット12の賞品Pをまとめて払い出す場合には、制御部61は、移動部54が繰出ユニット12(今回の説明では中ユニット12B)の繰出部42まで移動して当該繰出部42からの賞品Pの受け取りを終えるまでの時間を有効利用して、他の繰出ユニット12(今回の説明では下ユニット12A)では、賞品Pを繰り出すための準備をする。
【0085】
つまり、制御部61は、中ユニット12Bの賞品Pの繰り出しと、下ユニット12Aでの繰出準備とを並行して実行するので、繰出処理を最短時間で完了させることができ、これにより、遊技客と賞品払出装置1との間における取引時間を短縮できる。また、このように繰出処理を最短時間で完了させることができるのであれば、各繰出ユニット12に決まった一種類の賞品Pを収納せずに、複数種類の賞品Pをまとめて収納することができるので、各繰出ユニット12における賞品Pの種類を遊技店の運用に応じて最適化できる。これにより、補充処理の回数を低減して店員の負担を軽減できる。
【0086】
必要数の賞品Pが移動部54上に繰り出されると、繰出処理が完了する。すると、制御部61は、払出処理を開始する。具体的には、制御部61は、シャッタ52を、図17に示す開位置までスライドさせる。これにより、扉13の上面13Aの払出口13Bが上側Z1へ開放される。そして、制御部61は、移動部54を、図17に示す払出位置まで上昇させる。移動部54は、払出位置まで上昇することによって払出口13Bまで移動する。つまり、移動部54は、複数の繰出ユニット12の繰出部42のそれぞれから順に賞品Pを受け取ってから、払出口13Bまで上昇する。これにより、移動部54の各移動部54上に繰り出された賞品Pが、払出口13Bから上側Z1に露出されることによって機外へ払い出される。
【0087】
このように、移動部54は、縦に複数搭載された繰出ユニット12の繰出部42に対して共通の移動部であって、複数の繰出ユニット12の繰出部42のそれぞれが繰り出す賞品Pを受け取る。そのため、繰出部42毎に移動部54を設けることによって移動部54が多数存在する場合と比べて、賞品払出装置1の小型化を図ることができる。さらに、昇降可能な移動部54であれば、その移動軌跡を上下方向Zに沿わせることができる。これにより、水平方向における賞品払出装置1の一層の小型化を図ることができる。
【0088】
そして、遊技客が払出口13Bにおける移動部54上の賞品Pを直接受け取ると、制御部61は、移動部54を待機位置まで下降させ、今まで開位置にあったシャッタ52を閉位置までスライドさせる。これにより、払出処理が終了し、一連の繰出払出処理が完了する。払出口13Bが1つだけなので、遊技客による賞品Pの取り忘れを防止し、賞品Pの受け取りにかかる時間を短縮できる。また、払出口13Bが扉13に設けられることから、賞品払出装置1の前側Y1に位置する遊技客にとって払出口13Bが近くなるので、払出口13Bに払い出された賞品Pを容易に受け取ることができる。また、1つの移動部54が各繰出ユニット12から賞品Pを受け取って払出口13Bまで搬送する場合には、複数の部材が各繰出ユニット12から賞品Pを受け取って搬送する場合と比べて、当該複数の部材間に生じるつなぎ目を減らせるので、当該つなぎ目で賞品Pが詰まるようなエラーを抑制できる。
【0089】
図18図26のそれぞれは、繰出払出処理により払い出される賞品の払出パターンの一例を示す図である。移動部54が払出位置まで上昇したとき、1つの払出口13Bでは、移動部54における5つの受取部55が左右方向Xに並んでおり、これにより、この払出口13Bは、左右方向Xに並ぶ複数(この実施形態では5つ)の払出区画13Dに区分けされている。
【0090】
以下では、5つの払出区画13Dのそれぞれを、左端から順に、払出区画13DA、払出区画13DB、払出区画13DC、払出区画13DD及び払出区画13DEということがある。これらの払出区画13Dのそれぞれは、5つの受取部55のうち、左右方向Xで同じ位置にあるいずれか1つの受取部55と対応している。互いに対応する払出区画13D及び受取部55のペアは、各繰出ユニット12の収納部33にセットされる通い箱5における5つの収容空間24(図2参照)のうち、左右方向Xで同じ位置にあるいずれか1つの収容空間24と対応している。
【0091】
図18図26のそれぞれでは、「大」と記された賞品Pは大賞品を指し、「中」と記された賞品Pは中賞品を指し、「小」と記された賞品Pは小賞品を指している。それぞれの払出区画13Dでは、受取部55上に積層できる賞品Pの上限数が、賞品Pの取り出し易さを考慮して設定されている。例えば、厚さが3mmの賞品Pの場合には、上限数が10枚である。そのため、それぞれの払出区画13Dには、所定の上限数まで複数の賞品Pを積層することができる。
【0092】
制御部61は、繰出払出処理に先立って遊技客から払出指示が入力されると、この払出指示に応じた種類及び枚数の賞品Pについての払出パターンを、記憶部64に記憶された在庫データから決定する。この払出パターンは、5つの払出区画13Dのうち賞品Pの払出先となる払出区画13Dの数が最少となるような当該払出先と、当該払出先に払い出す賞品Pの種類及び枚数とについての情報である。制御部61は、決定した払出パターンに基づいて繰出払出処理を実行する。そのため、繰出払出処理における払出処理では、払出先となった払出区画13Dに対応する受取部55が、収納部33内の賞品Pを受け取って当該払出区画13Dまで搬送する。そのため、制御部61及び受取部55は、収納部33内の賞品Pを払出先に払い出す払出部の一例として機能する。このように払出先が最少の払出区画13Dによって構成される場合には、遊技客は、払出先に払い出された賞品Pを見落としにくいうえに、手間をかけずに賞品Pを受け取ることができる。そのため、賞品払出装置1では、賞品Pの取り忘れを防止して使い勝手の向上を図れる。以下では、具体例を挙げて説明する。
【0093】
図18に示すように一種類の賞品Pを上限数以下だけ払い出す場合には、制御部61は、これらの賞品Pがいずれか1つの払出区画13Dに積層状態でまとめて払い出されるような払出パターンを決定し、この払出パターンが実現されるように繰出払出処理を実行する。払出先となる払出区画13Dには、複数の賞品Pが積層状態にて払い出される。これにより、遊技客は、1つの払出区画13Dに払い出された複数の賞品Pをまとめて受け取ることができるので、賞品払出装置1では、使い勝手の一層の向上を図れる。なお、この実施形態では、左端の払出区画13DAが払出先として優先的に選ばれるが、他の払出区画13DAが払出先として優先的に選ばれてもよい。以降の具体例でも同様である。
【0094】
図19に示すように一種類の賞品Pを上限数よりも多く払い出す場合には、制御部61は、これらの賞品Pが複数の払出区画13Dに分かれて払い出されるような払出パターンを決定し、この払出パターンが実現されるように繰出払出処理を実行する。図19では、上限数分の賞品Pが1つの払出区画13DAに積層状態で払い出されて、余った端数分の賞品Pが隣の払出区画13DBに払い出されるが、払出区画13DA及び払出区画13DBには、賞品Pが均等に分けて払い出されてもよい。
【0095】
払出先となる複数の払出区画13Dは、図19に示すように隣り合っているとよい。つまり、払出先となる払出区画13Dが複数存在する場合には、制御部61は、これらの払出区画13Dが隣り合うような払出パターンを決定する。このように、隣り合う最少の払出区画13Dによって払出先が構成される場合には、遊技客は、払出先に払い出された賞品Pを一層見落としにくいうえに、一層容易に賞品Pを受け取ることができる。そのため、賞品払出装置1では、賞品Pの取り忘れを防止して使い勝手の一層の向上を図れる。なお、状況によっては、払出先となる複数の払出区画13Dが隣り合わずに離れていてもよい。以降の具体例でも同様である。
【0096】
図20に示すように複数種類の賞品Pを合計で上限数以下だけ払い出す場合には、制御部61は、これらの賞品Pがいずれか1つの払出区画13Dにおいて種類毎に分かれた状態かつ積層状態にて払い出されるような払出パターンを決定する。その際、制御部61は、種類毎に分かれた賞品Pが価値の順(大賞品、中賞品、小賞品の順、又は、その逆の順)で下側Z2から並ぶようにする。そして、制御部61は、この払出パターンが実現されるように繰出払出処理を実行する。この実施形態では、下ユニット12Aに大賞品が収納されて中ユニット12Bに中賞品が収納されて上ユニット12Cに小賞品が収納される都合上、払出区画13Dには、賞品Pが下側Z2から大賞品、中賞品、小賞品の順に積層される。遊技客は、払出区画13Dに積層状態にて払い出された賞品Pにおける種類毎の内訳を容易に把握できる。そのため、賞品払出装置1では、使い勝手の一層の向上を図れる。
【0097】
図21に示すように複数種類の賞品Pを合計では上限数よりも多く払い出す場合には、払出先となる払出区画13Dは複数存在する。この場合、制御部61は、これらの賞品Pが最少の複数の払出区画13Dのそれぞれにおいて種類毎に分かれた状態かつ積層状態にて払い出されるような払出パターンを決定する。その際、制御部61は、同一の種類の賞品Pが複数の払出区画13Dに分かれて払い出されないように、払出パターンを決定する。払い出す賞品Pのうち多数を占める種類の賞品P(図21では大賞品)の数が上限数以下であれば、制御部61は、この種類の賞品Pが1つの払出区画13Dにまとまるようにし、残りの種類の賞品P(図21では小賞品及び中賞品)が別の払出区画13Dにおいて価値の順に並ぶようにする。そして、制御部61は、この払出パターンが実現されるように繰出払出処理を実行する。この場合、遊技客は、複数の払出区画13Dに払い出された賞品Pにおける種類毎の内訳を容易に把握できる。そのため、賞品払出装置1では、使い勝手の一層の向上を図れる。
【0098】
図22に示すように複数種類の賞品Pを合計では上限数よりも多く払い出す場合において、多数を占める種類の賞品P(図22では大賞品)の数が上限数よりも多ければ、制御部61は、この種類の賞品Pが複数の払出区画13Dに分かれて払い出されるような払出パターンを決定する。その際、制御部61は、この種類の上限数分の賞品Pが1つの払出区画13Dにまとまるようにし、この種類の賞品Pの残りと、他の種類の賞品P(図22では小賞品及び中賞品)とが別の払出区画13Dにおいて価値の順に並ぶようにする。そして、制御部61は、この払出パターンが実現されるように繰出払出処理を実行する。
【0099】
賞品Pの在庫数が減ってきたうえに、払出指示における賞品の種類及び枚数が多い場合には、以上で説明したような自由な払出パターンの実現が困難になることが想定される。これを考慮して、制御部61は、記憶部64に記憶された在庫データに基づいて、以下の手順にて払出パターンを決定する。まず、制御部61は、複数種類の賞品Pを1つの払出区画13Dにまとめて払い出す第1払出パターン(図20及び図23参照)の良否を演算する。払出パターンの良否に関し、払出処理の際に移動部54が払出口13Bまで一度上昇するだけで全ての賞品Pを払い出せる場合の払出パターンは良(OK)であり、払出処理の際に移動部54が払出口13Bまで一度上昇するだけでは全ての賞品Pを払い出せない場合の払出パターンは否(NG)である。
【0100】
第1払出パターンがNGである場合には、制御部61は、同じ種類の賞品Pを複数の払出区画13Dに分割することなく、賞品Pを複数の払出区画13Dに分けて払い出す第2払出パターン(図21参照)の良否を演算する。
【0101】
第2払出パターンがNGである場合には、制御部61は、いずれか1種類の賞品P(例えば大賞品)を1つの払出区画13Dと別の払出区画13Dとに分割して払い出して他の種類の賞品Pを当該別の払出区画13Dにも払い出す第3払出パターン(図24参照)の良否を演算する。第3払出パターンの場合、1つの払出区画13Dに大賞品だけが積層されて、別の払出区画13Dには、残りの大賞品と全ての中賞品と全ての小賞品とがこの順に積層される。
【0102】
このように、払出先となる払出区画13Dが複数存在するものの、これらの払出区画13Dの数が最少となる場合には、制御部61は、同一種類の賞品Pが複数の払出区画13Dに分かれて払い出されるような第3払出パターンを決定する。この場合には、払い出される賞品Pの種類毎の内訳の把握しやすさよりも、払出先となる払出区画13Dの少なさが優先されるので、遊技客は、払出先に払い出された賞品Pを見落としにくいうえに、手間をかけずに賞品Pを受け取ることができる。そのため、賞品払出装置1では、賞品Pの取り忘れを防止して使い勝手の向上を図れる。
【0103】
第3払出パターンがNGである場合には、制御部61は、2種類の賞品P(例えば大賞品及び中賞品)のそれぞれを1つの払出区画13Dと別の払出区画13Dとに分割して払い出して、他の種類の賞品P(小賞品)を当該別の払出区画13Dにも払い出す第4払出パターン(図25参照)の良否を演算する。第4払出パターンの場合、1つの払出区画13Dに大賞品と中賞品とがこの順に積層されて、別の払出区画13Dには、残りの大賞品と残りの中賞品と全ての小賞品とがこの順に積層される。
【0104】
第4払出パターンがNGである場合には、制御部61は、全て種類のそれぞれにおける賞品Pを1つの払出区画13Dと別の払出区画13Dとに分割して払い出す第5払出パターン(図26参照)の良否を演算する。第5払出パターンの場合、複数の払出区画13Dのそれぞれにおいて、大賞品と中賞品と小賞品とがこの順に積層される。第5払出パターンがNGである場合には、制御部61は、払出先となる払出区画13Dを1つ増やしたうえで第2~第5払出パターンについての演算を繰り返すことによって最適な払出パターンを決定する。なお、払出区画13Dを5つ(最大数)まで増やしても、移動部54が払出口13Bまで一度上昇するだけでは全ての賞品Pを払い出せない場合には、制御部61は、複数回の移動部54を昇降させることを踏まえて第1~第5払出パターンについての演算を繰り返すことによって最適な払出パターンを決定する。そして、制御部61は、最終的に決定した払出パターンに基づいて繰出払出処理を実行する。
【0105】
このように、制御部61は、払出先となる払出区画13D及び移動部54の昇降回数が最少となるような払出パターンを決定することによって、賞品Pを、極力少ない払出区画13Dに集約して最少の払出回数にて払い出す。セルフタイプでない賞品払出装置の場合には、担当の店員が賞品払出装置から払い出された賞品Pの現物を種類毎に遊技客に提示してから、これらの賞品Pを重ねて遊技客に手渡す運用が一般的である。遊技客のみで賞品Pの交換処理を行うセルプタイプである賞品払出装置1では、賞品Pの現物を種類毎に遊技客に提示する必要はなく、複数種類の賞品Pが払出区画13Dに集約して積層状態で払い出されるので、遊技客は、少ない動作にて賞品Pを受け取ることができる。これにより、複数種類の賞品Pをかき集める労力を極力かけずに済むし、賞品Pの取り忘れを防止できる。なお、制御部61は、繰出払出処理の一環として、払い出される賞品Pの情報を表示操作部4に表示する等によって遊技客に報知してもよい。
【0106】
また、左端又は右端の払出区画13D(この実施形態では、左端の払出区画13DA)から順に賞品Pが優先的に払い出されるようにすれば、各繰出ユニット12内の各通い箱5でも左端又は右端の収容空間24の賞品Pから順に減っていく。これにより、賞品Pの収容数が端数になった収容空間24を極力少なくすることができ、店員は、各通い箱5における賞品Pの目視での在庫確認を容易に実施できる。
【0107】
各繰出ユニット12の各収納部33には、セットする通い箱5における賞品Pの種類が予め定められていて記憶部64に記憶されていてもよい。補充処理の際において、指定された種類とは異なる種類の賞品Pを収容した通い箱5が収納部33にセットされると、その後の計数識別処理において、制御部61は、この収納部33における賞品Pの種類が間違っていることを記憶部64に一時記憶する。制御部61は、その後の繰出払出処理では、賞品Pの種類が間違った収納部33を払出対象外とした縮退運転を行うことによって、繰出払出処理を継続してもよい。なお、通い箱5における収容空間24のそれぞれにおける賞品Pの種類の正否が記憶部64に一時記憶されてもよく、その場合には、個々の収納部33において、賞品Pの種類が間違った収容空間24だけを払出対象外として、他の収容空間24の賞品Pについては、正常賞品として払い出してもよい。
【0108】
払出対象外となる収容空間24として、このように賞品Pの種類に間違いがあった収容空間24の他に、賞品Pの収容数が僅か(例えば5枚未満)であることによって精度上の都合により計数識別処理ができなかった収容空間24が挙げられる。さらに、賞品Pの計数結果が不明である収容空間24や、前述した詰まりエラーや空振りエラーが発生した収容空間24も挙げられる。このような払出対象外の収容空間24が存在しても、賞品払出装置1は、エラーダウンすることなく縮退運転されるので、遊技客を待たすことなく取引を継続できる。払出対象外となる収容空間24についての対応は、遊技客の取引がない空きタイミングに実施されればよい。
【0109】
図27は、賞品払出装置1を含む遊技システム90の概念図である。遊技システム90は、賞品払出装置1に対する上位装置であるサーバ91をさらに含む。サーバ91は、1つだけ存在してもよいし、複数のサーバによって構成されてもよい。遊技システム90は、遊技客のカードに関連付けられたプリペイド価値を現金精算するための精算機92をさらに含んでもよい。精算機92には、遊技客によってカードが出し入れされるカード出入口92Aと、紙幣の精算金が出金される紙幣出金口92Bと、硬貨の精算金が出金される硬貨出金口92Cとが設けられている。精算機92は、賞品払出装置1の近くに設置されてもよい。賞品払出装置1及び精算機92のそれぞれは、無線又は有線の通信ネットワークNを介して、サーバ91に対して通信可能に接続されている。
【0110】
賞品払出装置1及び精算機92は、どちらも、遊技者がセルフでの取引を行う装置であるので、賞品払出装置1では、遊技者による賞品Pやカードの取り忘れが発生するおそれがあり、精算機92では、遊技者によるカードや精算金の取り忘れが発生するおそれがある。そこで、賞品払出装置1及び精算機92のそれぞれは、取り忘れが発生した場合に忘れ物を回収して後で持ち主に返却できる機能を有する。この機能により、取り忘れに対応する店員の負担を軽減することができる。
【0111】
賞品Pやカードや精算金(以下では「対象物」と総称することがある)の取り忘れに関し、賞品払出装置1及び精算機92のそれぞれは、対象物の残留を検出する残留センサ93と、付近の人の存在を検出する人感センサ94とを含む(図4参照)。賞品払出装置1では、対象物の排出後に、遊技客による操作がないまま所定時間が経過したのに残留センサ93が対象物(例えば払出口13Bにおける賞品P)の残留を検出すると、制御部61が、対象物の取り忘れが発生したと判断する。別の例として、対象物の排出後に、人感センサ94が付近の遊技客を検出しないのに残留センサ93が対象物の残留を検出すると、制御部61が、対象物の取り忘れが発生したと判断してもよい。
【0112】
また、賞品Pの排出後に、遊技客による賞品Pの取り出しから、普通ではありえない短時間のうちに新たなカードがカード出入口2Aに挿入されると、制御部61が賞品Pの取り忘れが発生したと判断してもよい。この場合は、次の遊技客が、前の遊技客が取り忘れた賞品Pを抜き取ってすぐに自分のカードをカード出入口2Aに挿入した状況を想定している。以上の取り忘れの判断について、精算機92に備えられた制御部95も、制御部61と同様の処理をしてもよい。
【0113】
図28は、賞品Pの取り忘れが発生した場合の処理を示すフローチャートである。賞品払出装置1の制御部61は、払出処理において移動部54上の賞品Pの取り忘れが発生したと判断すると(ステップS1)、移動部54を待機位置まで下降させてシャッタ52を閉位置までスライドさせることによって、当該賞品Pを装置本体3内に回収して賞品払出装置1をエラーダウンさせる(ステップS2)。その際、制御部61は、表示操作部4での表示やブザー等によってエラーダウンを店員に報知したり、今回の払出処理において賞品Pの取り忘れが発生したという取り忘れ情報を記憶部64に記憶したりする。取り忘れ情報は、今回の払出処理の履歴に紐付いて記憶部64に記憶される。さらに、取り忘れ情報は、今回の払出処理の履歴に紐付いてサーバ91に送信されて、サーバ91でも記憶される(ステップS3)。今回の払出処理の履歴には、賞品Pを取り忘れた遊技客を特定するための情報、例えば遊技客のカードの識別情報も含まれている。
【0114】
装置本体3内に回収された賞品Pは、引き続き移動部54上にある。賞品Pの取り忘れに気付いてすぐに戻ってきた遊技客がカードをカード出入口2Aに挿入した場合には、制御部61は、エラーダウン及び報知を終了して、再びシャッタ52を開位置までスライドさせて移動部54を払出位置まで上昇させることによって賞品Pを速やかに払出口13Bから遊技客に返却する。この場合の取り忘れ情報には、賞品Pが遊技客に返却済である旨が記憶される。
【0115】
報知を受けて駆け付けた店員は、表示操作部4を操作することによってエラーダウン及び報知を終了して扉13を開位置(図5参照)まで開き、先ほど回収された賞品Pを移動部54上から取り出す。そして、店員は、当該賞品Pを収納していた繰出ユニット12を引出位置まで引き出して(図6参照)、当該賞品Pを、当該繰出ユニット12内の通い箱5に戻し、この繰出ユニット12を収容位置まで戻す。
【0116】
そして、店員は、今回戻した賞品Pのデータを、賞品Pの在庫データとは分けて記憶部64にて管理されるように表示操作部4を操作する。これに応じて、制御部61は、今回の取り忘れられた賞品Pのデータを取り忘れ情報に反映して、記憶部64にて在庫データとは別に管理する(ステップS4)。この際、制御部61は、同様に取り忘れ情報を更新するようにサーバ91に通知するので、通知を受けたサーバ91は、今回の取り忘れ情報を更新する(ステップS5)。なお、取り忘れられて装置本体3内に回収された賞品Pが移動部54とは別のリジェクト部(図示せず)に回収される構成が設けられる賞品払出装置1では、エラーダウンが発生せずに取引が継続できてもよい。
【0117】
賞品Pの取り忘れた遊技客が、当日又は翌日以降にカードをカード出入口2Aに挿入すると、制御部61は、このカードに紐付いた払出処理の履歴を参照する。または、遊技客から取り忘れの賞品Pの返却依頼を受けた店員が表示操作部4を操作することに応じて、制御部61が、この遊技客のカードに紐付いた払出処理の履歴を参照してもよい。当該履歴に紐付いた取り忘れ情報が存在すると、制御部61は、この取り忘れ情報において取り忘れられた賞品Pのデータに基づいて繰出払出処理を実行し、当該賞品Pを払出口13Bから遊技客に返却する(ステップS6)。その際、遊技客が賞品Pの取り忘れに気付いていない場合を考慮して、制御部61は、前回に賞品Pの取り忘れがあった旨を表示操作部4等によって遊技客に報知してもよい。この報知内容には、取り忘れがあった賞品Pのデータ(種類や枚数)が含まれてもよい。
【0118】
カードの挿入による賞品Pの自動返却でなく、返却依頼を受けた店員が、扉13を開いて繰出ユニット12を引き出して繰出ユニット12内の賞品Pを遊技客に手渡しで返却してもよい。なお、取り忘れ情報には、賞品Pを取り忘れた遊技客の画像(監視カメラ等の撮影データ)が含まれて、この画像による本人認証を経てから賞品Pが遊技客に返却されてもよい。
【0119】
以上のように取り忘れられた賞品Pの返却が完了すると、制御部61は、その旨を記憶部64における当該賞品Pの取り忘れ情報に反映する(ステップS7)。この際、制御部61は、同様に取り忘れ情報を更新するようにサーバ91に通知するので、通知を受けたサーバ91は、今回の取り忘れ情報を、賞品Pが遊技客に返却済として更新する(ステップS8)。
【0120】
カード出入口2Aに排出されたカードが取り忘れられた場合には、制御部61は、賞品Pの取り忘れの場合と同様の処理を実行すればよい。ただし、取り忘れられたカードは、装置本体3内に設けられたリジェクト部(図示せず)に回収されるとよい。精算機92において、カード出入口92Aに排出されたカードが取り忘れられた場合や、紙幣出金口92Bや硬貨出金口92Cに排出された精算金が取り忘れられた場合には、制御部95は、賞品払出装置1での賞品Pの取り忘れの場合と同様の処理を実行すればよい。ただし、取り忘れられたカードや精算金は、精算機92内においてカードや精算金に応じて別々に設けられたリジェクト部(図示せず)に回収されるとよい。
【0121】
賞品Pを遊技店に納品する問屋が存在し、問屋(厳密には問屋のスタッフ)は、賞品Pを、通い箱5に詰めた状態で遊技店に持ち込む。問屋が賞品払出装置1の表示操作部4を操作すると、装置本体3内にて収容位置に配置された繰出ユニット12のロックが解除されるので、問屋は、扉13を開いて収容位置の繰出ユニット12を引き出して、賞品Pを繰出ユニット12に補充することができる。賞品Pの補充を終えた問屋が繰出ユニット12を引出位置まで戻して扉13を閉じると、問屋による賞品払出装置1への賞品Pの補充が完了する。
【0122】
以上のように、問屋が賞品Pを賞品払出装置1に補充する運用では、人手不足に悩む店員の業務削減を図ることができる。ここで、問屋が、賞品Pの補充業務だけでなく、補充後の賞品Pの在庫を管理する業務も担当すれば、店員の業務削減を一層図ることができるこの場合、賞品払出装置1内の賞品Pの在庫は、引き続き問屋の在庫(問屋の所有物)であり、賞品払出装置1から遊技客に払い出された賞品Pについては、遊技店に納品された賞品Pとして、遊技店から問屋に対価が支払われる。一方、賞品払出装置1からの賞品Pの払い出しについては、店員の担当業務のままである。
【0123】
このように互いに別の組織である問屋と遊技店とが賞品払出装置1の賞品Pを取り扱う場合、賞品払出装置1では、問屋及び店員のそれぞれに対して、賞品払出装置1の表示操作部4の操作についての権限が設定されていることが望ましい。具体的には、問屋には、賞品払出装置1に賞品Pを補充する補充処理のための表示操作部4の第1操作と、賞品払出装置1内の賞品Pの在庫を確認する計数識別処理のための表示操作部4の第2操作と、賞品払出装置1内で発生した賞品Pのジャム等のエラーを解除するエラー解除処理のための表示操作部4の第3操作とが認められている。
【0124】
一方、店員には、賞品払出装置1内の賞品Pを遊技客に払い出す繰出払出処理のための表示操作部4の第4操作だけが、原則として認められている。逆に、問屋には、第4操作が認められておらず、店員には、第1操作及び第2操作は認められておらず、第3操作は、以降で説明する制限を前提として認められる。これら第1~第4操作についての権限と、問屋IDと、店員に割り当てられた店員IDとの関係は、賞品払出装置1の記憶部64に記憶されている。そのため、賞品払出装置1の制御部61は、表示操作部4によって入力される問屋ID又は店員IDに応じて、動作モードを切り替える。
【0125】
例えば、遊技店の営業開始前のタイミング等において、賞品Pの納品のために問屋がやって来て、賞品払出装置1の表示操作部4によって問屋IDを入力すると、賞品払出装置1の制御部61は、問屋IDによる認証を実行した後に、補充処理、計数識別処理及びエラー解除処理が可能である旨の案内画面を表示操作部4に表示する。そこで、問屋が表示操作部4の第1操作を行うと、制御部61がユニットロック機構18による繰出ユニット12のロックを解除するので、問屋は、収容位置にある繰出ユニット12を賞品払出装置1から引き出して繰出ユニット12に賞品Pを補充することができる。
【0126】
問屋が賞品Pを補充した繰出ユニット12を収容位置に戻してから表示操作部4の第2操作を行うと、制御部61は、計数識別処理として、検出部38によって繰出ユニット12への賞品Pの補充数を計数し、その計数結果をレシート発行部63によって印刷して在庫リストを作成し、レシート発行口2Bに発行する。制御部61は、この補充数に基づく請求書をレシート発行部63によって印刷してレシート発行口2Bに発行してもよい。このように補充数に基づいて賞品Pの請求額が確定してもよいし、その後の繰出払出処理によって賞品Pが払い出される度に請求額が自動加算されてもよい。自動加算後の請求額が、その時点において確定した最新の請求額である。このように請求額が確定するタイミングが、表示操作部4による操作によって補充時(入庫時)と払出時(出庫時)とのどちらかに設定できてもよい。確定した請求額の情報は、賞品払出装置1によって問屋に自動通知されてもよい。
【0127】
賞品払出装置1においてエラーが発生すると、問屋は、表示操作部4の第3操作を行う。これにより、制御部61がユニットロック機構18による繰出ユニット12のロックを解除するので、問屋は、繰出ユニット12を引き出してエラーを解除することができる。店員による第3操作が認められてもよい。店員による表示操作部4の第3操作でなく、遊技店からの連絡を受けた問屋からの遠隔操作によって、繰出ユニット12のロックが解除されてもよい。または、店員が、問屋から通知された時限式のワンタイムパスワードを表示操作部4で入力することによって、繰出ユニット12のロックが解除されてもよい。いずれにせよ、店員は、ロックが解除された繰出ユニット12を引き出して、エラー解除のために賞品Pを取り除いて補充し直すことができる。
【0128】
店員が賞品Pを補充した繰出ユニット12を収容位置に戻してから表示操作部4を操作すると、制御部61は、計数識別処理を実行することによって繰出ユニット12内の賞品Pの在庫数を計数する。在庫数がエラーの発生前後において一致すれば、賞品払出装置1は通常状態に復帰するので、その後に賞品払出処理を実行できる。一方、在庫数がエラーの発生前後において一致しなければ、その旨が履歴として記憶部64に記憶されたり、必要に応じて問屋に通報されたりすることを条件として、賞品払出装置1は通常状態に復帰する。在庫数がエラーの発生前後において一致しない場合は、問屋の立会があるまで、賞品払出装置1は通常状態に復帰しなくてもよい。
【0129】
この発明は、以上の実施形態の内容に限定されるものではなく、請求項に記載の範囲内において種々の変更が可能である。また、以上に説明した様々な特徴は、適宜組み合わせることができる。
【0130】
例えば、この実施形態ではターミナルユニット2と装置本体3とがセットになることによって賞品払出装置1を構成しているが、ターミナルユニット2は、装置本体3から独立して設けられた装置であってもよい。
【符号の説明】
【0131】
1 賞品払出装置
3 装置本体
11 筐体
11A 開口
11B 内部空間
12 繰出ユニット(収容ユニット)
13 扉
13B 払出口
33 収納部
42 繰出部
54 移動部
P 賞品
Z 上下方向
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